説明

ベンゾチアゾール誘導体、およびアデノシンA2Aレセプターに関連する疾患の処置におけるその使用

本発明は、一般式(I)で示される化合物、および薬学的に許容され得るその酸付加塩に関する。本化合物は、A2Aレセプターに関連する疾病の処置に用い得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般式I:
【0002】
【化9】

【0003】
[式中、Rは、非置換であるか、もしくはヒドロキシルで置換されたC5〜C6シクロアルキルであるか、またはエチル、イソブチルもしくはメトキシエチルであるか、またはテトラヒドロピラン−4−イルもしくは−(CH2n−テトラヒドロフラン−2もしくは3−イルであるか、または5−ヒドロキシビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−イルであり;
Xは、CHまたはNであり;
nは、0または1である]
で示される化合物、および薬学的に許容され得るその酸付加塩に関する。
【0004】
驚くべきことに、一般式Iの化合物は、アデノシンレセプターリガンドであることが見出された。具体的には、本発明の化合物は、A2Aレセプターに対する良好な親和性、およびA1およびA3レセプターに対する高い選択性を有する。
【0005】
アデノシンは、特異的な細胞表面レセプターと作用し合うことによって、広範囲の生理学的機能を調整する。薬物標的としてのアデノシンレセプターの能力は、1982年に初めて精査された。アデノシンは、生物活性ヌクレオチドであるアデノシン三リン酸(ATP)、アデノシン二リン酸(ADP)、アデノシン一リン酸(AMP)およびサイクリックアデノシン一リン酸(cAMP)、ならびに生化学的メチル化剤であるS−アデノシル−L−メチオニン(SAM)には構造的にも代謝上も、また補酵素NAD、FADおよび補酵素Aには構造的に、またRNAにも関連する。アデノシンとこれらの関連化合物とは、相まって、細胞性代謝の多くの側面の調節、および異なる中枢神経系の活動の調整に重要である。
【0006】
アデノシンに対するレセプターは、A1、A2A、A2BおよびA3レセプターとして分類されていて、Gタンパク質共役型レセプターのファミリーに属する。アデノシンによるアデノシンレセプターの活性化は、シグナル伝達機序を開始させる。これらの機序は、レセプター関連Gタンパク質に依存する。アデノシンレセプターサブタイプは、それぞれ、古典的には、cAMPを第二メッセンジャーとして利用する、アデニル酸シクラーゼエフェクター系を特徴としている。A1およびA3レセプターは、Giタンパク質と共役して、アデニル酸シクラーゼを阻害して、細胞のcAMPレベルの低下へと導くが、A2AおよびA2Bレセプターは、Gsタンパク質と共役し、アデニル酸シクラーゼを活性化して、細胞のcAMPレベルの上昇へと導く。A1レセプター系は、ホスホリパーゼCの活性化、およびカリウムおよびカルシウム双方のイオンチャンネルの調整を包含する。A3サブタイプは、アデニル酸シクラーゼとのその会合に加えて、ホスホリパーゼCも刺激し、そうしてカルシウムイオンチャンネルを活性化する。
【0007】
1レセプター(326〜328アミノ酸)は、様々な種(イヌ科、ヒト、ラット、イヌ、ニワトリ、ウシ、モルモット)からクローニングされており、哺乳動物間の配列同一性は、90〜95%であった。A2Aレセプター(409〜412アミノ酸)は、イヌ科、ラット、ヒト、モルモットおよびマウスからクローニングされた。A2Bレセプター(332アミノ酸)は、ヒトおよびマウスからクローニングされており、ヒトA2BとヒトA1およびA2Aレセプターとの相同性は、45%であった。A3レセプター(317〜320アミノ酸)は、ヒト、ラット、イヌ、ウサギおよびヒツジからクローニングされた。
【0008】
1およびA2Aレセプターサブタイプは、エネルギー供給のアデノシンによる調節に相補的な役割を演じると提唱されている。ATPの代謝産物であるアデノシンは、細胞から拡散し、アデノシンレセプターを局所的に活性化して、酸素要求を低下させるか(A1)、または酸素供給を増大させて(A2A)、組織内のエネルギー供給:要求の均衡を強める。両サブタイプの作用は、組織に利用できる酸素の量を増加させ、酸素の短期的不均衡によって生じる損傷から細胞を保護することである。内在アデノシンの重要な機能の一つは、低酸素症、虚血、低血圧および発作活動のような外傷の際の損傷を防止することである。
【0009】
更に、ラットA3レセプターを発現するマスト細胞とのアデノシンレセプターアゴニストの結合は、イノシトール三リン酸および細胞内カルシウム濃度の上昇を招いて、炎症メジエーターの抗原で誘導される分泌を強化することが知られている。したがって、A3レセプターは、喘息発作その他のアレルギー性応答に介在する役割を果たす。
【0010】
アデノシンは、ニューロモジュレーターであって、生理学的な脳機能を多面的に調整することができる。内在アデノシンは、エネルギー代謝と神経活動との連結点であって、行動の状況および(病態)生理学的な状態に応じて変動する。エネルギーの要求の増大と利用可能性の低下という状態(たとえば、低酸素症、低血糖、および/または過剰な神経活動)の下で、アデノシンは、強力な防護性フィードバック機序を提供する。アデノシンレセプターとの相互作用は、てんかん、睡眠、運動障害(パーキンソンまたはハンチントン病)、アルツハイマー病、うつ病、精神分裂病または中毒のような、数多くの神経科および精神科疾患における治療的介入のための有望な標的を意味する。神経伝達物質放出の増大は、低酸素症、虚血および発作のような外傷に追随する。これらの神経伝達物質は、究極的には、神経変性および神経死の原因となって、脳の損傷または個体の死を生じる。したがって、アデノシンの中心的阻害効果を模倣する、アデノシンA1アゴニストは、神経防護物質として役立つ可能性がある。アデノシンは、興奮性ニューロンからのグルタミン酸放出を阻害し、ニューロン発火を阻害する内在性抗痙攣剤として提唱されている。したがって、アデノシンアゴニストは、抗てんかん剤として用い得る。アデノシンアンタゴニストは、CNSの活性を刺激し、認知強化剤として有効であると判明している。選択的A2aアンタゴニストは、たとえばアルツハイマー病における様々な形態の痴呆、および神経変性性障害、たとえば卒中の処置に治療効能を有する可能性を有する。アデノシンA2aレセプターアンタゴニストは、線条体GABA作用性ニューロンの活性を調整し、滑らかで、良く協調させた運動を調節して、パーキンソン症状に対する強力な治療を提供する。アデノシンは、鎮静、催眠、精神分裂病、不安、疼痛、呼吸、抑うつおよび薬物中毒(アンフェタミン、コカイン、アヘン様物質、エタノール、ニコチン、カンナビノイド)に関与する数多くの生理学的過程にも関係している。したがって、アデノシンレセプターに作用する薬物は、鎮静剤、筋弛緩剤、抗精神病薬、不安寛解剤、鎮痛剤、呼吸刺激剤、抗うつ薬として、また薬物中毒を処置するのに治療効能を有する可能性を有する。ADHD(注意不足活動亢進症)の処置にも用い得る。
【0011】
心血管系におけるアデノシンに関する重要な役割は、心臓保護剤としてのそれである。内在アデノシンのレベルは、虚血および低酸素症に応じて上昇し、外傷の間および後に心組織を防護する(前条件付け)。A1レセプターに作用することによって、アデノシンA1アゴニストは、心筋虚血および再灌流によって生じる傷害に対して防護し得る。アドレナリン作動性機能に対するA2aレセプターの調整性の影響は、冠状動脈疾患および心不全のような、様々な障害に関する意味を有し得る。A2aアンタゴニストは、強化された抗アドレナリン性応答が望ましい状況、たとえば急性心筋虚血の際に治療上の利益があり得る。A2aレセプターでの選択的なアンタゴニストは、上室性不整脈を終わらせる際のアデノシンの有効性も増強し得る。
【0012】
アデノシンは、レニン放出、糸球体濾過速度および腎血流をはじめとする、腎機能の多くの態様を調整する。アデノシンの腎臓への影響を打ち消す化合物は、腎臓防護剤としての可能性を有する。更に、アデノシンA3および/またはA2Bアンタゴニストは、喘息その他のアレルギー性応答の処置、または糖尿病および肥満の処置に役立つ可能性がある。
【0013】
無数の文書、たとえば下記の刊行物が、アデノシンレセプターに関する最新の知識を記載している:
【0014】
【表1】

【0015】
本発明の目的は、式Iの化合物それ自体、アデノシンA2レセプターに関連する疾患の処置のための医薬を製造するための、式Iの化合物および薬学的に許容され得るその塩の使用、その製造、本発明による化合物に基づく医薬、ならびのその製造はもとより、アデノシン系の調整に基づく疾病、たとえばアルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、神経防護、精神分裂病、不安、疼痛、呼吸欠乏、うつ病、薬物中毒(たとえばアンフェタミン、コカイン、オピオイド、エタノール、ニコチン、カンナビノイド)、または喘息、アレルギー性応答、低酸素症、虚血、発作および物質乱用に対する、制御もしくは防止における式Iの化合物の使用である。更に、本発明の化合物は、鎮静剤、筋弛緩剤、抗精神病薬、抗てんかん剤、抗痙攣剤、ならびに冠状動脈疾患および心不全のような障害に対する心臓保護剤として役立ち得る。本発明による最も好ましい適用は、A2Aレセプター拮抗活性に基づき、かつ中枢神経系の障害を包含するもの、たとえばアルツハイマー病、一定の抑うつ性障害、薬物中毒、神経防護およびパーキンソン病ならびにADHDの治療または予防である。
【0016】
用語「薬学的に許容され得る酸付加塩」は、無機および有機酸、たとえば塩酸、硝酸、硫酸、リン酸、クエン酸、ギ酸、フマル酸、マレイン酸、酢酸、コハク酸、酒石酸、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸などとの塩を包含する。
【0017】
本願の好適化合物は、Rが、ヒドロキシルで場合により置換されたC5〜C6シクロアルキルである、式Iの化合物、たとえば下記の化合物である:
(trans)−[4−メトキシ−7−(テトラヒドロ−ピラン−4−イル)−ベンゾチアゾール−2−イル]−カルバミン酸4−ヒドロキシ−シクロヘキシルエステル、
(4−メトキシ−7−モルホリン−4−イル−ベンゾチアゾール−2−イル)−カルバミン酸シクロヘキシルエステル、
(trans)−(4−メトキシ−7−モルホリン−4−イル−ベンゾチアゾール−2−イル)−カルバミン酸4−ヒドロキシ−シクロヘキシルエステル、
(cis)−(4−メトキシ−7−モルホリン−4−イル−ベンゾチアゾール−2−イル)−カルバミン酸4−ヒドロキシ−シクロヘキシルエステル又は
(cis/trans)−(4−メトキシ−7−モルホリン−4−イル−ベンゾチアゾール−2−イル)−カルバミン酸3−ヒドロキシ−シクロペンチルエステル
【0018】
好ましいのは、Rがエチル、イソブチルまたはメトキシエチルである、式Iの更なる化合物、たとえば下記の化合物である:
[4−メトキシ−7−(テトラヒドロ−ピラン−4−イル)−ベンゾチアゾール−2−イル]−カルバミン酸エチルエステル、
(4−メトキシ−7−モルホリン−4−イル−ベンゾチアゾール−2−イル)−カルバミン酸2−メトキシ−エチルエステル
又は
(4−メトキシ−7−モルホリン−4−イル−ベンゾチアゾール−2−イル)−カルバミン酸イソブチルエステル
【0019】
本願の好適化合物は、Rがテトラヒドロピラン−4−イルまたは−(CH2n−テトラヒドロフラン−2もしくは3−イルである、式Iの化合物、たとえば下記の化合物である:
(4−メトキシ−7−モルホリン−4−イル−ベンゾチアゾール−2−イル)−カルバミン酸テトラヒドロ−ピラン−4−イルエステル、
(R)−(4−メトキシ−7−モルホリン−4−イル−ベンゾチアゾール−2−イル)−カルバミン酸テトラヒドロ−フラン−3−イルエステル、
[4−メトキシ−7−(テトラヒドロ−ピラン−4−イル)−ベンゾチアゾール−2−イル]−カルバミン酸テトラヒドロ−フラン−2−イル−メチルエステル又は
[4−メトキシ−7−(テトラヒドロ−ピラン−4−イル)−ベンゾチアゾール−2−イル]−カルバミン酸(S)−(テトラヒドロ−フラン−3−イル)エステル
【0020】
好ましいのは、Rが5−ヒドロキシビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−イルである、下記の化合物、たとえば下記の化合物である:
(rac)−(exo,exo)−(4−メトキシ−7−モルホリン−4−イルベンゾチアゾール−2−イル)カルバミン酸5−ヒドロキシビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−イルエステル。
【0021】
式Iの本化合物及びそれらの薬学的に許容され得る塩は、当技術の公知の方法、例えば以下に記載の方法であって、
(a)式II:
【化10】


で示される化合物を、式III:
【化11】


で示される化合物と反応させて、式I:
【化12】


[式中、RおよびXは、上記に示された意味を有する]
で示される化合物を得る工程、または
(b)式IV:
【化13】


で示される化合物を式V:
【化14】


で示される化合物と反応させて、式I:
【化15】


[式中、RおよびXは、定義されたとおりであり、Lは、ハロゲン、−O−フェニルまたはO−低級アルキルのような離脱基である]
で示される化合物を得る工程、および
望みであれば、得られた化合物を薬学的に許容され得る酸付加塩へと転換する工程
を含む方法によって製造される。
【0022】
実施例1〜13、ならびに下記のスキーム1および2で、式Iの化合物の製造をより詳しく説明する。
【0023】
出発材料は、公知化合物であるか、または当技術に公知の方法に従って製造し得る。
【0024】
式Iの化合物の製造
中間体である7−(モルホリン−4−イル)−4−メトキシベンゾチアゾール−2−イルアミンおよび7−(テトラヒドロピラン−4−イル)−4−メトキシベンゾチアゾール−2−イルアミンは、WO01/97786に開示された方法に従って製造し得る。式(II)の中間体を用いた式(I)の化合物の製造も、WO01/97786に記載されている。
【0025】
【化16】

【0026】
式(VII)の化合物の製造
式(VI)の臭化アリール化合物を、パラジウム触媒、好ましくはジクロロ(1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン)パラジウム(II)ジクロロメタン付加物、および過剰量の酢酸カリウムを含有する有機溶媒、好ましくはジメチルスルホキシド中で、僅かに過剰量のビス(ピナコラト)二ホウ素と反応させる。反応は、高い温度、好ましくは約80℃で、約2〜24時間、好ましくは約2時間実施する。式(VII)の生成物を、慣用の手段によって単離し、好ましくは、クロマトグラフィーまたは再結晶によって精製する。
【0027】
式(VIII)の化合物の製造
式(VIII)の化合物を製造する一方法は、パラジウム触媒、好ましくはジクロロ(1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン)パラジウム(II)ジクロロメタン付加物、および無機塩基、好ましくは炭酸ナトリウムの存在下での、臭化ビニル、ヨウ化ビニルまたはビニルトリフラート化合物による式(VII)の化合物の処理による。反応は、溶媒の混合物、好ましくはエタノール、トルエンおよび水の混合物中で実施する。反応は、高い温度、好ましくは約80℃で、約0.1〜2時間、好ましくは約20分間実施する。式(VIII)の生成物を、慣用の手段によって単離し、好ましくは、クロマトグラフィーまたは再結晶によって精製する。出発臭化ビニル、ヨウ化ビニルまたはビニルトリフラート化合物は、たとえばFlukaから、商業的に入手し得るか、または当技術に周知の方法に従って製造してもよい。
【0028】
式(IX)の化合物の製造
式(IX)の化合物は、水素化触媒、好ましくは木炭担持10%パラジウムの存在下での、式(VIII)の化合物の水素化によって製造し得る。これらの反応は、様々な有機溶媒、たとえばメタノール、エタノールまたはテトラヒドロフラン、好ましくはメタノール中で、室温で、かつ1気圧またはそれ以上の圧力、好ましくは1気圧で、16〜72時間、好ましくは約72時間実施し得る。式(IX)の生成物を、慣用の手段によって単離し、好ましくは、クロマトグラフィーまたは再結晶によって精製する。
【0029】
式(X)の化合物の製造
アセトン中のロダン化アンモニウムの溶液に、塩化ベンゾイル、および2−メトキシ−5−(テトラヒドロピラン−4−イル)フェニルアミン(IX)の溶液を加える。反応は、還流下で約20分間実施する。生成物である1−ベンゾイル−3−[2−メトキシ−5−(テトラヒドロピラン−4−イル)フェニル]チオ尿素(X)を、慣用の手段によって単離する。
【0030】
式(XI)の化合物の製造
メタノール中の1−ベンゾイル−3−[2−メトキシ−5−(テトラヒドロピラン−4−イル)フェニル]チオ尿素(X)の溶液に、ナトリウムメチラート溶液を加え、撹拌を、室温で約1時間続ける。生成物(XI)である[2−メトキシ−5−(テトラヒドロピラン−4−イル)フェニル]チオ尿素を、慣用の手段によって単離する。
【0031】
式(XII)の化合物の製造
酢酸中の[2−メトキシ−5−(テトラヒドロピラン−4−イル)フェニル]チオ尿素(XI)の溶液に、臭化水素酸を加え、撹拌を、80℃で約30分間続ける。次いで、DMSOを滴加し、反応混合物を、80℃で更に30分間撹拌する。生成物(XII)である4−メトキシ−7−(テトラヒドロピラン−4−イル)ベンゾチアゾール−2−イルアミンを、慣用の手段によって単離する。
【0032】
式(Ib)の化合物の製造
4−メトキシ−7−(テトラヒドロピラン−4−イル)ベンゾチアゾール−2−イルアミン(XII)を、初めに、WO01/97786中に(4−メトキシ−7−フェニルベンゾチアゾール−2−イル)カルバミン酸ベンジルエステルについて記載されたとおり、クロロギ酸フェニルと、次いで、N−エチルジイソプロピルアミン、およびスキーム2にも図示したとおり、ジメチルスルホキシド中の式HO−Rの対応するアルコールと、約50℃で2時間反応させる。
【0033】
【化17】

【0034】
RおよびXは、上記のとおりであり、Lは、ハロゲン、−O−フェニルまたはO−低級アルキルのような離脱基である。
【0035】
化合物の単離および精製
本明細書に記載された化合物ならびに中間体の単離および精製は、望みであれば、たとえば濾過、抽出、晶出、カラムクロマトグラフィー、薄層クロマトグラフィー、厚層クロマトグラフィー、分取低圧もしくは高圧液体クロマトグラフィー、またはこれらの手順の組合せのような、適切ないかなる分離または精製手順によっても実施することができる。適切な分離および単離手順の具体的な例示は、本明細書の以下の製造例および実施例を参照することによってなされることができる。しかし、同等なその他の分離または単離手順も、当然、用いることができる。
【0036】
式Iの化合物の塩
式Iの化合物は、たとえば、基Rが脂肪族または芳香族アミン部分のような塩基性の基を有する場合に、塩基性であり得る。そのような場合、式Iの化合物は、対応する酸付加塩へと転換し得る。
【0037】
転換は、少なくとも化学量論量の適切な酸、たとえば塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸など、ならびに酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、シュウ酸、リンゴ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、ショウノウ酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、サリチル酸などのような有機酸による処理によって達成する。代表的には、遊離塩基を、ジエチルエーテル、酢酸エチル、クロロホルム、エタノールまたはメタノールなどのような不活性有機溶媒に溶解し、類似の溶媒中で酸を加える。温度は、0〜50℃に保つ。得られる塩は、自発的に沈澱するか、またはより極性の低い溶媒により、溶液から取り出し得る。
【0038】
式Iの塩基性化合物の酸付加塩は、少なくとも化学量論的当量の、水酸化ナトリウムまたはカリウム、炭酸カリウム、重炭酸カリウム、アンモニアなどのような適切な塩基による処理によって、対応する遊離塩基へと転換し得る。
【0039】
式Iの化合物、および薬学的に使用できるその付加塩は、貴重な薬理学的特性を保有する。具体的には、本発明の化合物は、アデノシンレセプターリガンドであり、アデノシンA2Aレセプターに対して高い親和性を有することが見出されている。
【0040】
以下に示す試験に従って、化合物を調べた。
【0041】
ヒトアデノシンA2Aレセプター
ヒトアデノシンA2Aレセプターを、セムリキ森林熱ウイルス発現系を用いる組換えによって、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞で発現させた。細胞を採集し、遠心分離によって2回洗浄し、ホモジナイズし、再び遠心分離によって洗浄した。洗浄した最終的な膜ペレットを、120mMNaCl、5mMKCl、2mMCaCl2、および10mMMgCl2を含有するトリス(50mM)緩衝液(pH7.4)(緩衝液A)に懸濁させた。[3H]−SCH−58261[Dionisotti et al., 1997, Br. J. Pharmacol., 121, 353](1nM)による結合アッセーを、96穴プレート中、膜タンパク質2.5μg、Ysi−ポリ-L-リシンSPAビーズ0.5mg、および0.1単位のアデノシンデアミナーゼの存在下で、緩衝液Aの最終体積を200μlとして実施した。非特異的結合は、キサンチンアミン同族体(XAC;2μM)を用いて定義した。化合物を、10μM〜0.3nMの10段階の濃度で試験した。アッセーは、すべて、二重に実施し、少なくとも2回繰り返した。アッセー用プレートを、室温で1時間温置してから、遠心分離し、次いで、Packard Topcountシンチレーション計数機を用いて、結合リガンドを決定した。IC50値は、非線形曲線適合プログラムを用いて算出し、Ki値は、Cheng-Prusoff式を用いて算出した。
【0042】
本願の化合物のpKi値は、7.6〜8.7の範囲内であった。最も好ましい化合物は、>8.0というpKi値を示した。
【0043】
【表2】

【0044】
式Iの化合物、および式Iの化合物の薬学的に許容され得る塩は、たとえば製剤の形態で、医薬として用いることができる。該製剤は、たとえば錠剤、コーティング錠、糖衣錠、ハードおよびソフトゼラチンカプセル剤、液剤、乳剤または懸濁剤の形態で、経口的に投与することができる。しかし、投与は、たとえば坐薬の形態で、経直腸的に、たとえば注射液の形態で、非経口的に実施することもできる。
【0045】
式Iの化合物は、製剤の製造のために、薬学的に不活性の無機または有機担体とともに加工することができる。錠剤、コーティング錠、糖衣錠およびハードゼラチンカプセル剤のためのそのような担体としては、たとえば乳糖、トウモロコシ澱粉またはその誘導体、タルク、ステアリン酸またはその塩などを用いることができる。ソフトゼラチンカプセル剤に適切な担体は、たとえば、植物油、蝋、脂肪、半固体および液体ポリオールなどである。しかし、ソフトゼラチンカプセル剤の場合は、活性物質の性質に応じて、通常は担体を必要としない。液剤およびシロップ剤の製造に適切な担体は、たとえば、水、ポリオール、グリセリン、植物油などである。坐薬に適切な担体は、たとえば、天然および硬化油、蝋、脂肪、半固体および液体ポリオールなどである。
【0046】
更に、該製剤には、保存料、可溶化剤、安定剤、湿潤剤、乳化剤、甘味料、着色料、香味料、浸透圧を変えるための塩、緩衝剤、遮蔽剤または抗酸化剤を含有させることができる。治療上有用なその他の物質も、更に含有させることができる。
【0047】
式Iの化合物、または薬学的に許容され得るその塩、および治療上不活性の担体を含有する医薬も、それを製造する方法と同様に本発明の目的であって、該方法は、式Iの化合物、および/または薬学的に許容され得る酸付加塩の1種類以上、ならびに望みであれば、治療上有用な1種類以上のその他の物質を、治療上不活性の1種類以上の担体とともに製剤化する工程を含む。
【0048】
本発明によれば、式Iの化合物および薬学的に許容され得るその塩は、アデノシンレセプターアンタゴニスト活性に基づく疾病、たとえばアルツハイマー病、パーキンソン病、神経保護、精神分裂病、不安、疼痛、呼吸欠乏、うつ病、喘息、アレルギー性応答、低酸素症、虚血、発作および物質乱用の制御または予防に役立つ。更に、本発明の化合物は、鎮静剤、筋弛緩剤、抗精神病薬、抗てんかん剤、抗けいれん剤および心保護剤として、また対応する医薬の生産のために役立ち得る。
【0049】
本発明によれば、最も好ましい適応症は、中枢神経系の障害を包含するもの、たとえば一定の抑うつ性障害、神経保護およびパーキンソン病の治療または予防である。
【0050】
投与量は、広い限度内で変えることができ、当然、特定の症例のそれぞれにおける個別的な必要条件へと調整しなければならないと思われる。経口投与の場合、成人向けの投与量は、1日につき、一般式Iの化合物約0.01mg〜約1,000mg、または薬学的に許容され得るその塩の相当する量に変えることができる。この日次投与量は、1回の用量としてか、または分割された用量で投与することができ、加えて、上限は、それが指示されるべきと判明したとき、上回ることもできる。
【0051】
【表3】

【0052】
製造手順
1.第1、2、3および4品目を混合し、純水を用いて造粒。
2.顆粒を50℃で乾燥。
3.顆粒を適切な適切な粉砕装置に通す。
4.第5品目を加え、3分間混合し;適切なプレスで打錠。
【0053】
【表4】

【0054】
製造手順
1.第1、2および3品目を適切な混合機内で30分間混合。
2.第4および5品目を加え、3分間混合。
3.適切なカプセルに充填。
【0055】
下記の製造例および実施例は、本発明を例示するが、その範囲を限定しようとするものではない。
【0056】
実施例1
(trans)−[4−メトキシ−7−(テトラヒドロピラン−4−イル)ベンゾチアゾール−2−イル]カルバミン酸4−ヒドロキシシクロヘキシルエステル
4−メトキシ−7−(テトラヒドロピラン−4−イル)ベンゾチアゾール−2−イルアミン(69mg、0.26mmol)を、初めに、WO01/97786中に(4−メトキシ−7−フェニルベンゾチアゾール−2−イル)カルバミン酸ベンジルエステルについて記載されたとおり、クロロギ酸フェニルと、次いで、N−エチルジイソプロピルアミン(0.090ml、0.52mmol)、およびジメチルスルホキシド(10ml)中の(trans)−シクロヘキサン−1,4−ジオール(60mg、0.52mmol)と、50℃で2時間反応させた。次いで、ジクロロメタン100mlを加え、混合物を飽和炭酸ナトリウム水溶液で抽出し、有機相を乾燥かつ蒸発させた。フラッシュクロマトグラフィーによる精製(シリカ、ジクロロメタン/メタノールで溶離)によって、標記化合物を白色固体として得た(収量7%)。MS:m/e=407(M+H+)、融点:282〜284℃。
【0057】
実施例1の一般的方法に従って、実施例2〜11の化合物を製造した。
【0058】
実施例2
[4−メトキシ−7−(テトラヒドロピラン−4−イル)ベンゾチアゾール−2−イル]カルバミン酸エチルエステル
4−メトキシ−7−モルホリン−4−イルベンゾチアゾール−2−イルアミンおよびエタノールを用いて、標記化合物を白色固体として得た(収量35%)。MS:m/e=337(M+H+)、融点:170〜174℃。
【0059】
実施例3
(4−メトキシ−7−モルホリン−4−イルベンゾチアゾール−2−イル)カルバミン酸2−メトキシエチルエステル
4−メトキシ−7−モルホリン−4−イルベンゾチアゾール−2−イルアミンおよび2−メトキシエタノールを用いて、標記化合物を乳白色固体として得た(収量52%)。MS:m/e=368(M+H+)、融点:149〜152℃。
【0060】
実施例4
(4−メトキシ−7−モルホリン−4−イルベンゾチアゾール−2−イル)カルバミン酸イソブチルエステル
4−メトキシ−7−モルホリン−4−イルベンゾチアゾール−2−イルアミンおよびイソブタノールを用いて、標記化合物を黄色結晶として得た(収量12%)。MS:m/e=366(M+H+)、融点:164〜168℃。
【0061】
実施例5
(4−メトキシ−7−モルホリン−4−イルベンゾチアゾール−2−イル)カルバミン酸シクロヘキシルエステル
4−メトキシ−7−モルホリン−4−イルベンゾチアゾール−2−イルアミンおよびシクロヘキサノールを用いて、標記化合物を白色固体として得た(収量60%)。MS:m/e=392(M+H+)、融点:177〜179℃。
【0062】
実施例6
(trans)−(4−メトキシ−7−モルホリン−4−イルベンゾチアゾール−2−イル)カルバミン酸4−ヒドロキシシクロヘキシルエステル
4−メトキシ−7−モルホリン−4−イルベンゾチアゾール−2−イルアミンおよび
を用いて、標記化合物を白色泡状物として得た(収量14%)。MS:m/e=408(M+H+)、融点:176〜179℃。MS:m/e=407.49(M+H+
【0063】
実施例7
(cis)−(4−メトキシ−7−モルホリン−4−イルベンゾチアゾール−2−イル)カルバミン酸4−ヒドロキシシクロヘキシルエステル
4−メトキシ−7−モルホリン−4−イルベンゾチアゾール−2−イルアミンおよび(cis)−シクロヘキサン−1,4−ジオールを用いて、標記化合物を無色の結晶として得た(収量40%)。MS:m/e=408(M+H+)、融点:204〜206℃。
【0064】
実施例8
(4−メトキシ−7−モルホリン−4−イルベンゾチアゾール−2−イル)カルバミン酸テトラヒドロピラン−4−イルエステル
4−メトキシ−7−モルホリン−4−イルベンゾチアゾール−2−イルアミンおよびテトラヒドロピラン−4−オールを用いて、標記化合物を白色固体として得た(収量7%)。MS:m/e=394(M+H+)、融点:187〜188℃。
【0065】
実施例9
(rac)−(exo,exo)−(4−メトキシ−7−モルホリン−4−イルベンゾチアゾール−2−イル)カルバミン酸5−ヒドロキシビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−イルエステル
4−メトキシ−7−モルホリン−4−イルベンゾチアゾール−2−イルアミンおよび(rac)−(exo,exo)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,5−ジオールを用いて、標記化合物を白色固体として得た(収量10%)。MS:m/e=420(M+H+)、融点:193〜194℃。
【0066】
実施例10
(R)−(4−メトキシ−7−モルホリン−4−イルベンゾチアゾール−2−イル)カルバミン酸テトラヒドロフラン−3−イルエステル
4−メトキシ−7−モルホリン−4−イルベンゾチアゾール−2−イルアミンおよび(R)−テトラヒドロフラン−3−オールを用いて、標記化合物を白色結晶として得た(収量33%)。MS:m/e=380(M+H+)、融点:198〜200℃。
【0067】
実施例11
(cis/trans)−(4−メトキシ−7−モルホリン−4−イルベンゾチアゾール−2−イル)カルバミン酸3−ヒドロキシシクロペンチルエステル
4−メトキシ−7−モルホリン−4−イルベンゾチアゾール−2−イルアミンおよび(cis/trans)−シクロペンタン−1,3−ジオールを用いて、標記化合物を白色固体として得た(収量42%)。MS:m/e=394(M+H+)、融点:188〜189℃。
【0068】
実施例12
[4−メトキシ−7−(テトラヒドロピラン−4−イル)ベンゾチアゾール−2−イル]カルバミン酸テトラヒドロフラン−2−イルメチルエステル
7−(テトラヒドロピラン−4−イル)−4−メトキシベンゾチアゾール−2−イルアミンおよび(テトラヒドロフラン−2−イル)メタノールを用いて、標記化合物を白色固体として得た(収量8%)。MS:m/e=393(M+H+)、融点:175〜180℃。
【0069】
実施例13
[4−メトキシ−7−(テトラヒドロピラン−4−イル)ベンゾチアゾール−2−イル]カルバミン酸(S)−(テトラヒドロフラン−3−イル)エステル
7−(テトラヒドロピラン−4−イル)−4−メトキシベンゾチアゾール−2−イルアミンおよび(S)−テトラヒドロフラン−3−オールを用いて、標記化合物を白色固体として得た(収量13%)。MS:m/e=379(M+H+)、融点:195〜200℃。
【0070】
中間体
実施例14
4−メトキシ−7−(テトラヒドロピラン−4−イル)ベンゾチアゾール−2−イルアミン(X)
(a)2−(4−メトキシ−3−ニトロフェニル)−4,4,5,5−テトラメチル[1,3,2]ジオキサボロラン(VII)
DMSO25ml中の4−ブロモ−2−ニトロアニソール(VI)1.30g(5.60mmol)の撹拌溶液に、ビス(ピナコラト)ジボラン1.57g(6.16mmol)、ジクロロ(1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン)パラジウム(II)ジクロロメタン付加物123mg(0.17mmol)、および酢酸カリウム1.65g(16.8mmol)を加えた。混合物を、80℃で2時間加熱し、次いで室温まで冷却し、水に注ぎ込み、酢酸エチルで三回抽出した。併せた有機相を、硫酸ナトリウム上で乾燥し、真空下で濃縮した。フラッシュクロマトグラフィー(1/2の酢酸エチル/ヘキサン、次いで酢酸エチル)によって、2−(4−メトキシ−3−ニトロフェニル)−4,4,5,5−テトラメチル[1,3,2]ジオキサボロラン(VII)1.39gを乳白色固体として得た。ES−MSm/e(%):280(M+H+、100)。
【0071】
(b)4−(4−メトキシ−3−ニトロフェニル)−3,6−ジヒドロ−2H−ピラン(VIII)
エタノール33mlおよびトルエン82ml中の2−(4−メトキシ−3−ニトロフェニル)−4,4,5,5−テトラメチル[1,3,2]ジオキサボロラン(VII)4.36g(15.6mmol)およびトリフルオロメタンスルホン酸3,6−ジヒドロ−2H−ピラン−4−イルエステル3.30g(14.2mmol)の撹拌溶液に、ジクロロ(1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン)パラジウム(II)ジクロロメタン付加物580mg(0.71mmol)を加えた。混合物を80℃に加熱し、2M炭酸ナトリウム水溶液16.5ml(33.0mmol)を滴加した。反応混合物を、80℃で20分間撹拌し、次いで室温まで冷却し、水に注ぎ込み、酢酸エチルで三回抽出した。併せた有機相を、硫酸ナトリウム上で乾燥し、真空下で濃縮した。フラッシュクロマトグラフィー(1/4の酢酸エチル/ヘキサン)によって、4−(4−メトキシ−3−ニトロフェニル)−3,6−ジヒドロ−2H−ピラン(VIII)2.00g(60%)を明黄色固体として得た。ES−MSm/e(%):253(M+NH4+、100)、236(M+H+、24)。
【0072】
(c)2−メトキシ−5−(テトラヒドロピラン−4−イル)フェニルアミン(IX)
メタノール70mlおよびジクロロメタン70ml中の4−(4−メトキシ−3−ニトロフェニル)−3,6−ジヒドロ−2H−ピラン(VIII)3.30g(14.0mmol)の撹拌溶液に、1スパーテルの木炭担持10%パラジウムを加え、次いで、混合物を、水素雰囲気下、室温で20分間撹拌した。次いで、混合物を、ジクロロメタンで洗浄しつつ濾過し、濾液を真空下で濃縮して、2−メトキシ−5−(テトラヒドロピラン−4−イル)フェニルアミン(IX)2.75g(95%)を乳白色の結晶質固体として得た。ES−MSm/e(%):208(M+H+、100)。
【0073】
(d)1−ベンゾイル−3−[2−メトキシ−5−(テトラヒドロピラン−4−イル)フェニル]チオ尿素(X)
アセトン60ml中のロダン化アンモニウム1.11g(14.6mmol)の撹拌溶液に、塩化ベンゾイル1.54ml(13.3mmol)を滴加し、混合物を、還流にて10分間加熱した。次いで、アセトン30ml中の2−メトキシ−5−(テトラヒドロピラン−4−イル)フェニルアミン2.75g(13.3mmol)の溶液を滴加し、反応混合物を、還流にて更に10分間加熱した。次いで、混合物を、室温まで冷却し、重炭酸ナトリウム溶液に注ぎ込み、ジクロロメタンで三回抽出した。併せた有機相を、硫酸ナトリウム上で乾燥し、真空下で濃縮した。フラッシュクロマトグラフィー(1/1の酢酸エチル/ヘキサン)、次いでエーテル中での摩砕によって、1−ベンゾイル−3−[2−メトキシ−5−(テトラヒドロピラン−4−イル)フェニル]チオ尿素3.25g(66%)を白色固体として得た。ES−MSm/e(%):371(M+H+、100)。
【0074】
(e)[2−メトキシ−5−(テトラヒドロピラン−4−イル)フェニル]チオ尿素(XI)
メタノール45ml中の1−ベンゾイル−3−[2−メトキシ−5−(テトラヒドロピラン−4−イル)フェニル]チオ尿素3.25g(8.77mmol)の撹拌溶液に、5.3Mナトリウムメチラート溶液0.25ml(1.32mmol)を滴加し、撹拌を室温で1時間続けた。次いで、混合物を、水に注ぎ込み、酢酸エチルで三回抽出した。併せた有機相を、硫酸ナトリウム上で乾燥し、真空下で濃縮した。フラッシュクロマトグラフィー(酢酸エチル)によって、[2−メトキシ−5−(テトラヒドロピラン−4−イル)フェニル]チオ尿素1.90g(81%)を白色泡状物として得た。ES−MSm/e(%):267(M+H+、100)。
【0075】
(f)4−メトキシ−7−(テトラヒドロピラン−4−イル)ベンゾチアゾール−2−イルアミン(XII)
80℃に加熱した酢酸20ml中の[2−メトキシ−5−(テトラヒドロピラン−4−イル)フェニル]チオ尿素1.90g(7.13mmol)の撹拌溶液に、臭化水素酸1.45ml(8.27mmol)(酢酸中5.7Mの溶液)を滴加し、撹拌を80℃で30分間続けた。次いで、DMSO0.56ml(7.85mmol)を滴加し、反応混合物を、80℃で更に30分間撹拌した。次いで、混合物を、室温まで冷却し、重炭酸ナトリウム溶液に徐々に注ぎ込み、酢酸エチルを加えた。混合物を、室温で10分間撹拌し、得られた結晶を、濾過によって捕集し、酢酸エチルで洗浄した。母液相を分離させ、有機相を、真空下で5mlまで濃縮した。得られた結晶の第二のクロップを、濾過によって捕集し、第一のクロップと併せて、4−メトキシ−7−(テトラヒドロピラン−4−イル)ベンゾチアゾール−2−イルアミン920mg(49%)を白色固体として得た。ES−MSm/e(%):265(M+H+、100)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式I:
【化1】


[式中、Rは、非置換であるか、もしくはヒドロキシルで置換されたC5〜C6シクロアルキルであるか、またはエチル、イソブチルもしくはメトキシエチルであるか、またはテトラヒドロピラン−4−イルもしくは−(CH2n−テトラヒドロフラン−2もしくは3−イルであるか、または5−ヒドロキシビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−イルであり;
Xは、CHまたはNであり;
nは、0または1である]
で示される化合物、および薬学的に許容され得るその酸付加塩。
【請求項2】
一般式I:
【化2】


[式中、Rは、非置換であるか、もしくはヒドロキシルで置換されたC5〜C6シクロアルキルであるか、またはエチル、イソブチルもしくはメトキシエチルであるか、またはテトラヒドロピラン−4−イルもしくはテトラヒドロフラン−3−イルであるか、または5−ヒドロキシビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−イルであり;
Xは、CHまたはNである]
で示される化合物、および薬学的に許容され得るその酸付加塩。
【請求項3】
Rが、ヒドロキシルで場合により置換されたC5〜C6シクロアルキルである、請求項1記載の式Iの化合物。
【請求項4】
化合物が、
(trans)−[4−メトキシ−7−(テトラヒドロ−ピラン−4−イル)−ベンゾチアゾール−2−イル]−カルバミン酸4−ヒドロキシ−シクロヘキシルエステル、
(4−メトキシ−7−モルホリン−4−イル−ベンゾチアゾール−2−イル)−カルバミン酸シクロヘキシルエステル、
(trans)−(4−メトキシ−7−モルホリン−4−イル−ベンゾチアゾール−2−イル)−カルバミン酸4−ヒドロキシ−シクロヘキシルエステル、
(cis)−(4−メトキシ−7−モルホリン−4−イル−ベンゾチアゾール−2−イル)−カルバミン酸4−ヒドロキシ−シクロヘキシルエステル、又は
(cis/trans)−(4−メトキシ−7−モルホリン−4−イル−ベンゾチアゾール−2−イル)−カルバミン酸3−ヒドロキシ−シクロペンチルエステル
である、請求項3記載の式Iの化合物。
【請求項5】
Rが、エチル、イソブチルまたはメトキシエチルである、請求項1記載の式Iの化合物。
【請求項6】
化合物が、
[4−メトキシ−7−(テトラヒドロ−ピラン−4−イル)−ベンゾチアゾール−2−イル]−カルバミン酸エチルエステル、
(4−メトキシ−7−モルホリン−4−イル−ベンゾチアゾール−2−イル)−カルバミン酸2−メトキシ−エチルエステル
又は
(4−メトキシ−7−モルホリン−4−イル−ベンゾチアゾール−2−イル)−カルバミン酸イソブチルエステル
である、請求項4記載の式Iの化合物。
【請求項7】
Rが、テトラヒドロピラン−4−イルまたは−(CH2n−テトラヒドロフラン−2もしくは3−イルである、請求項1記載の式Iの化合物。
【請求項8】
化合物が、
(4−メトキシ−7−モルホリン−4−イル−ベンゾチアゾール−2−イル)−カルバミン酸テトラヒドロ−ピラン−4−イルエステル、
(R)−(4−メトキシ−7−モルホリン−4−イル−ベンゾチアゾール−2−イル)−カルバミン酸テトラヒドロ−フラン−3−イルエステル、
[4−メトキシ−7−(テトラヒドロ−ピラン−4−イル)−ベンゾチアゾール−2−イル]−カルバミン酸テトラヒドロ−フラン−2−イル−メチルエステル、又は
[4−メトキシ−7−(テトラヒドロ−ピラン−4−イル)−ベンゾチアゾール−2−イル]−カルバミン酸(S)−(テトラヒドロ−フラン−3−イル)エステル
である、請求項7記載の式Iの化合物。
【請求項9】
Rが、5−ヒドロキシビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−イルである、請求項1記載の式Iの化合物。
【請求項10】
化合物が、(rac)−(exo,exo)−(4−メトキシ−7−モルホリン−4−イルベンゾチアゾール−2−イル)カルバミン酸5−ヒドロキシビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−イルエステルである、請求項9記載の式Iの化合物。
【請求項11】
請求項1〜10に記載の式Iの化合物を製造する方法であって、
(a)式II:
【化3】


で示される化合物を、式III:
【化4】


で示される化合物と反応させて、式I:
【化5】


[式中、RおよびXは、上記に示された意味を有する]
で示される化合物を得る工程、または
(b)式IV:
【化6】


で示される化合物を式V:
【化7】


で示される化合物と反応させて、式I:
【化8】


[式中、RおよびXは、上記に定義されたとおりであり、Lは、ハロゲン、−O−フェニルまたはO−低級アルキルのような離脱基である]
で示される化合物を得る工程、および
望みであれば、得られた化合物を薬学的に許容され得る酸付加塩へと転換する工程
を含む方法。
【請求項12】
請求項10に記載の方法または同等の方法によって製造された、請求項1〜10のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項13】
請求項1〜10のいずれか一項に記載の1種類以上の化合物と、薬学的に許容され得る賦形剤とを含有する医薬。
【請求項14】
アデノシンレセプターに関連する疾患を処置するための、請求項13記載の医薬。
【請求項15】
疾患を処置するための、請求項1〜10のいずれか一項に記載の化合物の使用。
【請求項16】
アデノシンA2Aレセプターに関連する疾患を処置するための相当する医薬の製造のための、請求項1〜10のいずれか一項に記載の化合物の使用。
【請求項17】
上に記載された限りの発明。

【公表番号】特表2007−502848(P2007−502848A)
【公表日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−529817(P2006−529817)
【出願日】平成16年5月14日(2004.5.14)
【国際出願番号】PCT/EP2004/005179
【国際公開番号】WO2004/103367
【国際公開日】平成16年12月2日(2004.12.2)
【出願人】(591003013)エフ.ホフマン−ラ ロシュ アーゲー (1,754)
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN−LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
【Fターム(参考)】