説明

ペダル装置

【課題】重量およびコストを軽減するとともに搭載性に優れるペダル装置を提供することである。
【解決手段】上記した目的を解決するために、本発明における課題解決手段は、車両2に揺動自在に取付けられたアクセルペダル3と、当該アクセルペダル3と車両2との間に介装される緩衝器4とを備えたペダル装置1において、アクセルペダル3が、車両に回転自在に軸支されるシャフト3aと、シャフト3aから伸びるアクセルレバー3bと、アクセルレバー3bの先端3dに設けた踏み込み用のプレート3cとを備え、緩衝器4は、アクセルペダル3におけるシャフト3aよりプレート側に連結される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペダル装置の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のペダル装置にあっては、たとえば、車両に揺動可能に取付けられるアクセルペダルと、アクセルペダルと車両との間に介装されてアクセルペダルを戻り位置に附勢するリターンスプリングと、アクセルペダルの踏力(踏み応え)を変更する踏力変更手段とを備えて構成されているものがある。
【0003】
アクセルペダルは、車両に回転自在に軸支されるシャフトと、シャフトから伸びるアクセルレバーと、アクセルレバーの先端に設けた踏み込み用のプレートとを備えて構成されている。そして、踏力変更手段は、アクセルペダルにおけるシャフトに設けた摩擦部材と、車両側に取付けたアクチュエータによって上記摩擦部材に離接可能とされる摩擦部材とを備えて構成されており、アクセルペダルの踏力を大きくする場合には、摩擦部材同士を強く接触させ、反対に小さくする場合には摩擦部材同士を離すか接触面圧を小さくするようにしている。
【0004】
このようなペダル装置にあっては、アクセルペダルの踏み込み側の踏力と戻り側の踏力にヒステリシスを持たせて、運転者のペダルワークに伴う疲労を軽減したり、エンジンの回転数や車速に応じて踏力を調節して、運転特性の変化を運転者に容易に理解させるようにしたりしている(たとえば、特許文献1,2参照)。
【0005】
また、特に、特許文献1に開示されたペダル装置にあっては、アクセルペダルが戻り位置、すなわち、アクセルオフの状態からのストローク量とエンジン回転数との関係から、燃料消費量が非常に大きくなるストローク量を予め把握しておき、アクセルペダルのストローク量が上記燃料消費大となるストローク量に達すると踏力を大きくして運転者に燃費の悪化を知らしめるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−132225号公報
【特許文献2】特開2004−314871号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述の従来のペダル装置にあっては、シャフトに対してこれを回転させないように摩擦力を付与するようになっているので、運転者がプレートを踏み込んで当該プレートが変位する最中には、アクセルレバーの先端には運転者から踏力が作用するとともに、シャフトへの付け根となる基端にはシャフトを回転させまいとする摩擦力とリターンスプリングの上記踏み込みに対する反力によるモーメントが作用することになり、アクセルペダルを踏み込む際には、アクセルレバーに大きな曲げモーメントが作用する。
【0008】
したがって、従来のペダル装置では、アクセルレバーの強度、剛性を上記曲げモーメントに耐えうるように設計しなくてはならず、重量が重くなり、コストの増加を招くとともに、装置が大型となって搭載性に問題があった。
【0009】
そこで、本発明は、上記不具合を改善するために創案されたものであって、その目的とするところは、重量およびコストを軽減するとともに搭載性に優れるペダル装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記した目的を解決するために、本発明におけるペダル装置は、車両に揺動自在に取付けられたアクセルペダルと、当該アクセルペダルと車両との間に介装される緩衝器とを備えたペダル装置において、アクセルペダルが、車両に回転自在に軸支されるシャフトと、シャフトから伸びるアクセルレバーと、アクセルレバーの先端に設けた踏み込み用のプレートとを備え、緩衝器は、アクセルペダルにおけるシャフトよりプレート側に連結されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明のペダル装置によれば、アクセルレバーの全体の強度、剛性を高く設定しなければならない従来のペダル装置に比較して、アクセルレバーにおける緩衝器の連結部位からシャフトまでの部位の強度、剛性を低く設定できることになり、ペダル装置の重量およびコストを軽減でき、また、アクセルレバーにおける緩衝器の連結部位からシャフトまでの部位の強度、剛性を低く設定できる分、アクセルレバーを小型化することができ、車両への搭載性も向上することになる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】一実施の形態におけるペダル装置の概略図である。
【図2】一実施の形態のペダル装置における緩衝器の断面図である。
【図3】一実施の形態の一変形例におけるペダル装置の概略図である。
【図4】一実施の形態の他の変形例におけるペダル装置の緩衝器の断面図である。
【図5】一実施の形態の別の変形例におけるペダル装置の緩衝器の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明におけるペダル装置を図に基づいて説明する。一実施の形態におけるペダル装置1は、図1に示すように、車両2に揺動可能に取付けられるアクセルペダル3と、アクセルペダル3と車両2との間に介装される緩衝器4とを備えて構成されている。
【0014】
以下、各部について詳細に説明する。アクセルペダル3は、シャフト3aと、シャフト3aから伸びるアクセルレバー3bと、アクセルレバー3bの先端3dに設けられて運転者が実際に踏み込むためのプレート3cとを備えて構成されており、車両2には、シャフト3aを回転自在に軸支するブラケット5が設けられていて、アクセルレバー3bとブラケット5との間にはアクセルペダル3を附勢してプレート3cをアクセルオフの位置へ戻すリターンスプリング6が介装されている。
【0015】
したがって、アクセルペダル3は、シャフト3cを回転軸として車両2に対して揺動することができるようになっていて、運転者の踏み込みが無いと、リターンスプリング6の附勢力によって図1に示したアクセルオフの位置に戻されるようになっている。すなわち、アクセルペダル3の回転方向のうち、運転者によって踏み込まれてアクセルペダル3が図1中反時計回りに回転する方向を踏み込み方向とし、反対に、アクセルペダル3が踏み込まれてから図1中時計回り方向へ回転してアクセルオフの位置に戻る方向を戻り方向としている。
【0016】
そして、たとえば、アクセルペダル3の位置をシャフト3aの回転位置をセンシングすることで検知して、得られたアクセルペダル3の位置から図外の制御装置が車両2に設けられた図外のエンジンのスロットル開度を制御するようになっている。
【0017】
他方、緩衝器4は、車両2とアクセルペダル3におけるシャフト3aよりプレート3c側との間に介装されており、詳しくは、車両2とアクセルレバー3bの中間部3eに対して回転可能に連結されていて、アクセルペダル3の揺動に応じて車両2とアクセルペダル3に対して姿勢を変えながら伸縮することができるようになっている。
【0018】
また、緩衝器4は、図2に示すように、シリンダ7と、シリンダ7内に摺動可能に挿入されてシリンダ7内に二つの作動室R1,R2を隔成するピストン8と、シリンダ7内に移動可能に挿入されて一端がピストン8に連結されるピストンロッド9とを備えて構成される片ロッド型に設定されており、上記作動室R1,R2内には流体として気体が充填されている。なお、ピストンロッド9の外周はシリンダ7に設けたシール10によって密にシールされ、流体の外部流出が防止されている。
【0019】
さらに、この実施の形態の場合、アクセルペダル3がアクセルオフの位置にある状態において、ピストン8がシリンダ7に対して採りうる最も上方に位置して、伸びきり状態となるように設定されており、ストロークの無駄を省いて伸縮型の緩衝器4の全長を極力短くして狭い搭載スペースへの搭載を容易ならしめている。なお、図2では、説明の都合上、ピストン8がシリンダ7の中間に位置している状態にある緩衝器4を示している。
【0020】
そして、ピストン8には、上記作動室R1,R2同士を連通する通路8aが設けられていて、当該通路8aは、通過する気体の流れに抵抗を与えるようになっている。したがって、緩衝器4は、シリンダ7に対してピストン8が移動する際に、圧縮側の作動室R1(R2)から膨張側の作動室R2(R1)へ通路8aを介して気体が移動すると、この気体の流れに通路8aで抵抗を与えて所定の圧力損失を生じさせて作動室R1と作動室R2の圧力に差を生じせしめて、ピストン8の移動を妨げる減衰力を発揮するようになっている。
【0021】
このように構成された緩衝器4は、具体的には、図1に示すように、シリンダ7の端部に設けた円環状のブラケット7aを車両2に設けた軸2aに回転可能に連結し、ピストンロッド9の先端に設けた円環状のブラケット9aをアクセルレバー3bの中間部3eに設けた軸3fに回転可能に連結してあって、緩衝器4の伸縮方向をアクセルペダル3の揺動方向に一致させてある。なお、緩衝器4とアクセルペダル3の連結にあたり、アクセルレバー3b以外にもプレート3cに連結してもよく、シリンダ7をアクセルペダル3へ連結しピストンロッド9を車両2に連結するようにしてもよい。また、緩衝器4と、車両2およびアクセルペダル3とを回転自在に連結するに際しては、アクセルペダル3の移動を妨げることが無い方向に回転することができるように連結されるが、上記ブラケット7a,9aと軸2a,3fとの連結以外にも、たとえば、ボールジョイント、トラニオン、クレビスといった回転を許容しつつこれらを連結することが可能な継手を使用することができる。
【0022】
それゆえ、運転者がアクセルペダル3の位置を変更しようと当該アクセルペダル3を踏み込む踏力を変化させる場合に、アクセルペダル3の移動に応じて緩衝器4が減衰力を発揮することになるので、アクセルペダル3の急峻な移動が抑制されることになる。すると、アクセルペダル3の動きを抑制する緩衝器4が発生する減衰力が付与される分、アクセルペダル3の動きが緩慢となって、エンジンにおける回転数の急激な増減が回避され、エンジンにおける燃料消費量を低減することができる。
【0023】
そして、緩衝器4は、アクセルペダル3のシャフト3aよりプレート3c側となるアクセルレバー3bに連結されているので、プレート3bに作用する踏力と、緩衝器4が発生する減衰力およびリターンスプリング6のアクセルペダル3の踏み込みに対する反力によって生じる曲げモーメントは、アクセルレバー3bの先端3dから緩衝器4の連結部位である中間部3eには作用するものの、アクセルレバー3bの中間部3eからシャフト3aの付け根である基端3gには、緩衝器4が発生する減衰力による曲げモーメントは作用しないので、アクセルレバー3bの中間部3eから基端3gまでの強度、剛性を先端3dから中間部3eまでの強度、剛性より低く設定することができる。
【0024】
したがって、アクセルレバー3bの全体の強度、剛性を高く設定しなければならない従来のペダル装置に比較して、アクセルレバー3bにおける緩衝器4の連結部位からシャフト3aまでの部位の強度、剛性を低く設定できることになり、ペダル装置1の重量およびコストを軽減でき、また、アクセルレバー3bにおける緩衝器4の連結部位からシャフト3aまでの部位の強度、剛性を低く設定できる分、アクセルレバー3bを小型化することができ、車両2への搭載性も向上することになる。
【0025】
上述したところから理解できるように、緩衝器4のアクセルペダル3への連結部位は、プレート3cへ近ければ近いほど、アクセルレバー3bの強度、剛性を低く設定する部位が長くなるので、ペダル装置1の重量およびコストの軽減効果および車両2への搭載性の向上効果も高くなり、プレート3cに緩衝器4を連結するようにすれば、アクセルレバー3bの全長全ての強度、剛性を低く設定でき、ペダル装置1の重量およびコストの軽減効果および車両2への搭載性の向上効果が最も高くなる。
【0026】
また、アクセルペダル3の動きに応じて踏み応えである踏力を付与するのは緩衝器4であって、磨耗を引き起こす摩擦部材を用いておらず、長期間に亘って交換やメンテナンスを実施しなくとも機能が損なわれないので、メンテナンスの機会と経費の削減が可能となる。
【0027】
なお、この実施の形態の場合、緩衝器4の作動室R1,R2内には、アクセルペダル3がアクセルオフの位置にある状態において、作動室R1,R2内の圧力が大気圧以上となるように気体が封入されていて、緩衝器4の伸長方向をアクセルペダル3の戻り方向に一致させてある。
【0028】
上述のように、アクセルペダル3がアクセルオフの位置にある状態において、作動室R1,R2内の圧力が大気圧以上となるように気体が封入されていることに加えて、緩衝器4が作動室R1内のみにピストンロッド9が挿入される片ロッド型に設定されていて、作動室R1内の圧力と作動室R2内の圧力を受けるピストン8の受圧面積が作動室R1側より作動室R2側の方が大きいため、緩衝器4には常に伸長しようとする力が作用している。それゆえ、緩衝器4は、アクセルペダル3がアクセルオフの位置へ戻る際に、途中でアクセルペダル3の戻りを停止させてしまうようなことが無い。
【0029】
そしてさらに、この緩衝器4の場合、作動室R1,R2内に充填される流体は気体とされているので、万が一、シリンダ7外へ流出するようなことがあっても、車両2における車内を汚すことがない。また、気体を用いることで、流体を液体とした場合に必要となるリザーバや気室を設けずともよい構成を採用することが可能となって、緩衝器4を小型化することができ、車両への搭載性が向上する。
【0030】
これに対して、緩衝器4に使用する流体を液体とすることも可能であり、その場合には、シリンダ7から出没するピストンロッド9の体積分のシリンダ内容積変化を補償する図示しないリザーバあるいはエア室を設けるようにすればよい。
【0031】
また、緩衝器4が図示したように片ロッド型に設定される場合、上述したように、アクセルペダル3がアクセルオフの位置にある状態において、作動室R1,R2内の圧力が大気圧以上となるようにし、伸長方向をアクセルペダル3の戻り方向に一致させておくことによって、緩衝器4は伸長する推力を常時発生するので、緩衝器4をリターンスプリング6として機能させることで、リターンスプリング6を省略することができる。このことは、緩衝器4に使用する流体が気体であっても液体であっても実現できる。
【0032】
なお、リターンスプリング6の機能を緩衝器4に集約しない場合、たとえば、図3に示すように、緩衝器4の圧縮方向をアクセルペダル3の戻り方向に一致させるようにしてもよい。このように、圧縮方向をアクセルペダル3の戻り方向に一致させる場合、アクセルペダル3がアクセルオフの位置にあるときに緩衝器4が最圧縮状態となるように設定することで緩衝器4の全長を短くすることができ、車両2への搭載性が向上する。この場合にあっても、緩衝器4のアクセルペダル3への連結部位をシャフト3aよりプレート3c側とすることで、アクセルレバー3bの強度、剛性を低く設定することができ、ペダル装置の重量、コストを低減することができるとともに、車両2への搭載性も向上させることができる。この図3に示したペダル装置の場合にあっても、緩衝器4のアクセルペダル3への連結部位がプレート3cに近ければ近いほど、アクセルレバー3bの強度、剛性を低く設定する部位が長くなるので、ペダル装置1の重量およびコストの軽減効果および車両2への搭載性の向上効果も高くなる。
【0033】
また、リターンスプリング6の機能を緩衝器4に集約しない場合、緩衝器4をピストンロッド9が両方の作動室R1,R2内に挿入される、いわゆる両ロッド型の緩衝器に設定するようにしてもよく、この場合、緩衝器4は無負荷状態で伸長側にも圧縮側に推力を発揮しないので、伸長側と圧縮側のどちらでもアクセルペダル3の戻り方向に一致させてもよい。ここで、緩衝器4の伸長方向をアクセルペダル3の戻り方向に一致させるとは、緩衝器4が伸長するとアクセルペダル3が戻り方向へ移動することを意味しているのであって、実際の緩衝器4の伸長方向の軸線とアクセルペダル3の戻り方向の軸線とを完全に一致させることのみを意味しているものではない。
【0034】
ところで、ペダル装置には、図4に示すように、アクセルペダル3の戻り方向への回転に対しては減衰力を発揮しない片効きの緩衝器11を用いることも可能である。
【0035】
この緩衝器11は、図4に示すように、ピストン12に二つの通路12a,12bを設け、一方の通路12aの出口端には減衰弁13を設け、他方の通路12bの出口端には逆止弁14を設け、シリンダ7内に摺動自在にフリーピストン15を挿入してシリンダ7内に気室Gを設け、作動室R1,R2内に充填する流体を液体とした点が、上述の緩衝器4と異なっている。なお、緩衝器11における他の各部の構成は、緩衝器4の構成と同様であるので、緩衝器4と同様の構成については説明が重複するので、同じ符号を付するのみとして詳細な説明を省略することとする。
【0036】
そして、この緩衝器11では、減衰弁13によって、通路12aが作動室R2からピストンロッド9が挿入されている作動室R1へ向かう液体の流れのみを許容する一方通行に設定され、減衰弁13が通過する液体の流れに抵抗を与えるようになっている。他方、通路12bは、逆止弁14によって、ピストンロッド9が挿入されている作動室R1から作動室R2へ向かう液体の流れのみを許容する一方通行に設定され、逆止弁14が通過する液体の流れに殆ど抵抗を与えないようになっている。
【0037】
この緩衝器11の場合、シリンダ7内にピストンロッド9が出入りすることにともなって生じる作動室R1,R2の合算容積の増減を、フリーピストン15のシリンダ7に対する変位によって気室Gを拡縮させることで補償している。
【0038】
また、緩衝器11は、この場合、緩衝器4と同様に、伸長方向をアクセルペダル3の戻り方向に一致させて、アクセルペダル3と車両2との間に介装される。
【0039】
したがって、気室G内の圧力で作動室R1,R2内を加圧しておくことにより、緩衝器11でアクセルペダル3を戻り方向に附勢することができ、この実施の形態にあっても、リターンスプリング6を省略することも可能である。
【0040】
なお、作動室R1,R2内に充填される液体としては、たとえば、油のほか、水や水溶液といった各種の液体を使用することができる。
【0041】
このように構成された緩衝器11は、作動室R2から作動室R1へ向かう液体の流れに対しては逆止弁14が開弁せずに通路12aのみを有効として減衰弁13で抵抗を与え、作動室R1から作動室R2へ向かう液体の流れに対しては逆止弁14が通路12bを開放してこれを殆ど抵抗無く許容するので、圧縮作動時には減衰力を発揮するものの伸長作動時には減衰力を殆ど発揮しないようになっている。
【0042】
したがって、アクセルペダル3の踏み込み方向への動きに対しては緩衝器11が発生する減衰力によって踏み応えが重くなり、反対に、アクセルペダル3の戻り方向への動きに対しては緩衝器11が減衰力を発揮しないので踏み応えが軽くなる。
【0043】
それゆえ、燃料消費量が増大する方向へのアクセルペダル3の操作に対しては踏力を大きくすることができ、また、アクセルペダル3の戻りを妨げないので、より効果的に燃料消費を低減することができる。
【0044】
そして、アクセルペダル3の動きに応じて踏み応えである踏力を付与するのは緩衝器11であるので、磨耗を引き起こす摩擦部材を用いておらず、長期間に亘って交換やメンテナンスを実施しなくとも機能が損なわれないので、メンテナンスの機会と経費の削減が可能となるのは上述の緩衝器4と同様である。
【0045】
なお、上述したところでは、緩衝器11は、圧縮作動時には減衰力を発揮するものの伸長作動時には減衰力を殆ど発揮しないようになっているが、反対に、伸長作動時には減衰力を発揮するものの圧縮作動時には減衰力を殆ど発揮しないように設定される場合、つまり、減衰弁13と逆止弁14の向きを逆とする構成を採用する場合、アクセルペダル3の戻り方向と緩衝器の圧縮方向を一致させればよい。
【0046】
また、減衰弁13が、オリフィスである場合には、ピストン速度の自乗に比例して減衰力が発生する特性から、緩衝器11の急激な圧縮に対しては非常に大きな減衰力が発生され、他方、緩衝器11の緩慢な圧縮に対しては非常に小さな減衰力が発生されることになり、アクセルペダル3の急峻な踏み込み方向への移動に対しては踏力を大きくし、アクセルペダル3の緩慢な踏み込み方向への移動に際しては踏力を小さくすることができるので、運転者に対して燃料消費量の増加する運転であることを踏力の増加をもって知らしめることができ、運転者に燃料消費量の多いアクセルペダル操作であることを知覚させて、運転者のアクセルペダル操作を燃料消費量が少なくなるように矯正することができる。
【0047】
なお、減衰弁13をオリフィスのみとしたときに、オリフィス口径にもよるが、アクセルペダル3の急峻な踏み込みに対して緩衝器11の減衰力が過剰となる虞がある場合には、オリフィスと並列してリリーフ弁を設けるようにしてもよい。具体的には、減衰弁13を通路12aの出口端を開閉するリーフバルブとしてこれをリリーフ弁とし、リーフバルブの外周やピストン12にオリフィスを設けておくといった構成を採用すればよい。また、上述した緩衝器4の通路8aにオリフィスを設けることが可能であることは当然である。
【0048】
さらに、通路に設けられる減衰弁を可変減衰弁とされてもよい。具体的にはたとえば、図5に示したように、緩衝器16における作動室R3とリザーバRとを連通する通路17の途中に可変減衰弁18を設けてある。
【0049】
緩衝器16は、シリンダ21と、シリンダ21内に摺動自在に挿入されてシリンダ21内にピストンロッド23が挿入される作動室R3とピストンロッド23の挿入されない作動室R4を隔成するピストン22と、シリンダ21内に移動自在に挿入されて一端がピストン22に連結されるピストンロッド23と、シリンダ21の外周を覆うとともにシリンダ21との間にリザーバRを形成する外筒24と、シリンダ21と外筒24との間に介装されてリザーバRと作動室R4とを仕切る仕切部材25と、環状であってシリンダ21と外筒24の一端を閉塞するとともにピストンロッド23を摺動自在に軸支するロッドガイド26と、ロッドガイド26に設けられて作動室R3とリザーバRとを連通する通路17と、仕切部材25に設けられてリザーバRから作動室R4へ向かう流体の流れのみを許容する一方通行通路27と、ピストン22に設けられて作動室R4から作動室R3へ向かう流体の流れのみを許容する一方通行通路28とを備えて構成されている。
【0050】
このように構成された緩衝器16にあっては、伸長する場合、作動室R3内の流体が通路17を介してリザーバRへ移動するとともに、拡大する作動室R4内には一方通行通路27を介してリザーバRから流体が供給され、反対に、圧縮する場合、圧縮される作動室R4内の流体は一方通行通路27がリザーバRへの移動を妨げるので、全てが一方通行通路28を介して作動室R3へ流入し、ピストンロッド23がシリンダ21内に侵入する体積分の流体が作動室R3で過剰となって通路17を介してリザーバRへ移動する。
【0051】
すなわち、この緩衝器16にあっては、流体が作動室R3、作動室R4およびリザーバRを順に一方通行で循環するユニフロー型に設定されていて、伸縮時に通路17を通過する流体の流れに可変減衰弁18で抵抗を与えて減衰力を発生するようになっている。なお、ピストンロッド23の断面積をピストン22の断面積の2分の1に設定すると、緩衝器16の伸縮時に通路17を通過する流体の流量が等しくなるので、可変減衰弁18における抵抗を同じくすれば、緩衝器16が発生する減衰力を伸圧両側で略等しくすることができる。このように緩衝器16のように、緩衝器をユニフロー型に設定することも可能であり、上述の緩衝器4,11においてもユニフロー型の構成を採用することができ、緩衝器16においても緩衝器4,11のような構成を採用して作動室R1,R2を連通する通路8a,12aに可変減衰弁18を設ける構成とすることができる。なお、ユニフロー型に設定することで、緩衝器16内での流体の移動方向は一方向となるので、緩衝器16の減衰力発生応答性がよく、運転者に違和感を知覚させることもない。
【0052】
また、可変減衰弁18は、たとえば、詳しくは図示しないが、ソレノイドと、ソレノイドによって駆動される弁体と、通路17の途中に設けた弁座とを備えていて、ソレノイドは発生する推力を弁体に作用させて、流路面積を可変としたり、開弁圧を変更したりすることによって、可変減衰弁18を通過する流体の流れに与える抵抗を調節することができるようになっている。
【0053】
なお、可変減衰弁18の構成については、任意であり、弁体の駆動についてもソレノイド以外にも、モータを利用して送り螺子機構の要領で弁体を駆動してもよいし、また、可変減衰弁18がロータリバルブ、つまり、筒状であって側部に透孔を備えた弁体と、当該弁体を収容するとともに弁体の透孔に対向可能な孔を備えたハウジング(多くの場合、中空のピストンロッドとされる)とを備えて、弁孔の透孔とハウジングの孔との重なり度合によって流路面積を調整するバルブである場合、弁体をステッピングモータで駆動するとしてもよく、弁体の構造に適した駆動源を採用すればよい。
【0054】
そして、可変減衰弁18は、たとえば、図外の制御装置の制御下におかれ、制御装置がアクセルペダル操作に応じて緩衝器16に発生させるべき減衰力を求めて、求めた減衰力通りに緩衝器16に減衰力を発揮させて、アクセルペダル3の踏み応えである踏力を調節するようになっている。また、アクセルペダル操作のほか、エンジン回転数や車速といった運転状況に基づいてアクセルペダル3の踏み応えを調節してもよい。
【0055】
このように緩衝器16が可変減衰弁18を備えて、減衰力を調節することができるので、アクセルペダル3の踏力をアクセルペダル操作に応じて、あるいは運転状況に応じて変更することができるので、燃料消費量が増加するようなアクセルペダル操作や運転状況となる場合にアクセルペダル3の踏力を大きくし、運転者に対して燃料消費量の増加する運転であることを踏力の増加をもって知らしめることができ、運転者に燃料消費量の多いアクセルペダル操作であることを知覚させて、運転者のアクセルペダル操作を燃料消費量が少なくなるように矯正することができる。なお、少なくとも、アクセルペダル3の戻り方向への回転に対して、可変減衰弁18が流路面積を最大として、緩衝器16が減衰力を最低とする場合には、アクセルペダル3の戻りを妨げないので、より効果的に燃料消費を低減することができる。さらに、燃料消費量の増加を招かないアクセルペダル操作や運転状況となる場合には踏み込み方向および戻し方向の両方にてアクセルペダル3の踏力を小さくするようにすれば、運転者のアクセルペダル操作の邪魔をせずに、燃料消費量の低減効果を得ることができる。
【0056】
また、一定速度で走行しており、アクセルペダル3が一定の位置に維持されるような場合には、可変減衰弁18で通路17の流路面積を小さくして、緩衝器16を伸縮させにくくし、運転者がアクセルペダル3の位置を一定に維持するために踏みつける力を軽減することもできる。
【0057】
さらには、可変減衰弁18にて、通路17を完全に閉塞することができる場合には、緩衝器16の伸縮を阻止して運転者がアクセルペダル3の位置を一定に維持するために踏みつける力をより一層軽減することもできるとともに、車両の盗難を検知する検知手段を設ける場合には、盗難を検知すると緩衝器16を伸縮不能な状態としてアクセルペダル3をアクセルオフの位置にロックしてアクセルペダル操作を不能として盗難防止に役立てることも可能となる。
【0058】
そして、この緩衝器16を使用する場合にあっても、アクセルペダル3の動きに応じて踏み応えである踏力を付与するのは緩衝器16であるので、磨耗を引き起こす摩擦部材を用いておらず、長期間に亘って交換やメンテナンスを実施しなくとも機能が損なわれないので、メンテナンスの機会と経費の削減が可能となるのは上述の緩衝器4と同様である。
【0059】
上述したところでは、減衰弁を可変減衰弁とすることで、緩衝器の減衰力を調節するようにしているが、流体を電気粘性流体とする場合には、上記した各緩衝器4,11,16の通路に可変減衰弁を設ける代わりに通路に大きさを変更可能な電界を作用させるようにしてもよく、また、流体を磁気粘性流体とする場合には、上記した各緩衝器4,11,16の通路に可変減衰弁を設ける代わりに通路に大きさを変更可能な磁界を作用させて減衰力を調節できるようにしてもよい。
【0060】
また、緩衝器は、片ロッド型および両ロッド型以外にもシリンダ外にリザーバを設けておけばラム型とされてもよい。
【0061】
以上で、ペダル装置の各実施の形態についての説明を終えるが、本発明の範囲は図示されまたは説明された詳細そのものには限定されない。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明はペダル装置に利用可能である。
【符号の説明】
【0063】
1 ペダル装置
2 車両
2a 軸
3 アクセルペダル
3a シャフト
3b アクセルレバー
3c プレート
3d アクセルレバーにおける先端
3e アクセルレバーにおける中間部
3f 軸
3g アクセルレバーにおける基端
4,11,16 緩衝器
5 ブラケット
6 リターンスプリング
7,21 シリンダ
7a,9a ブラケット
8,12,22 ピストン
8a,12a,12b,17 通路
9,23 ピストンロッド
10 シール
13 減衰弁
14 逆止弁
15 フリーピストン
18 可変減衰弁
24 外筒
25 仕切部材
26 ロッドガイド
27,28 一方通行通路
G 気室
R リザーバ
R1,R2,R3,R4 作動室

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に揺動自在に取付けられたアクセルペダルと、当該アクセルペダルと車両との間に介装される緩衝器とを備えたペダル装置において、アクセルペダルが、車両に回転自在に軸支されるシャフトと、シャフトから伸びるアクセルレバーと、アクセルレバーの先端に設けた踏み込み用のプレートとを備え、緩衝器は、アクセルペダルにおけるシャフトよりプレート側に連結されることを特徴とするペダル装置。
【請求項2】
緩衝器は、アクセルレバーの途中に連結されるとともに、アクセルレバーの緩衝器の連結部位よりシャフト側の強度および剛性を緩衝器の連結部位のプレート側の強度および剛性より低く設定したことを特徴とする請求項1に記載のペダル装置。
【請求項3】
緩衝器は、プレートに連結されることを特徴とする請求項1に記載のペダル装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−66708(P2012−66708A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−213367(P2010−213367)
【出願日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【出願人】(000000929)カヤバ工業株式会社 (2,151)
【Fターム(参考)】