説明

ホイールローダ

【課題】 ホイールローダにおいて、キャブを機体フレームに取付けたままの状態で、後輪を覆うリヤフェンダーを着脱できるようにする。
【解決手段】 サイドフレーム22L、22Rに、キャブが取付支持される前側キャブ取付座17および後側キャブ取付座18L、18Rを固着する一方、該キャブ取付座17、18L、18Rにキャブ11を取付けた状態で、後輪を覆うリヤフェンダー27L、27Rをキャブ取付座17、18L、18Rの外方側からサイドフレーム22L、22Rに着脱自在に止着するように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積込み作業や除雪作業を行うホイールロ−ダの技術分野に属するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、この種ホイールロ−ダは、走行装置として前輪および後輪を備えると共に、これら前後輪を覆うフェンダーが設けられている。ところで、ホイールローダのなかには、例えば機体重量が2トン〜3トン程度の小型の機種もあるが、この様な小型のホイールローダにおいても、オペレータの作業環境を向上させるため、運転席部をキャブで覆うことが要求されることがある。しかるに、小型のものでは、スペース的に余裕がないため、キャブを機体フレームに取付けるための取付スペースの確保に苦慮することになる。
そこで従来、後輪を覆うリヤフェンダー内に後支柱を設けると共に、キャブの後支枠の下端部をリヤフェンダーを介して後支柱に締着するようにした技術が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開平7−3842号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかるに、前記従来のものでは、キャブの後支枠がリヤフェンダーを介して支持されているため、リヤフェンダーが傷付いたり破損したりした場合に、キャブを取外さなければリヤフェンダーを交換することができず、リヤフェンダーの交換作業が面倒であって作業性に劣るといういう問題があり、ここに本発明が解決しようとする課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、上記の如き実情に鑑みこれらの課題を解決することを目的として創作されたものであって、請求項1の発明は、機体フレームに、キャブが取付支持されるキャブ取付座を固着する一方、該キャブ取付座にキャブを取付けた状態で、後輪を覆うリヤフェンダーをキャブ取付座の外方側から機体フレームに着脱自在に止着したことを特徴とするものである。
そして、この様にすることにより、リヤフェンダーが傷付いたり破損したりした場合に、キャブをキャブ取付座に取付けたままの状態でリヤフェンダーの交換を行えることになって、交換作業が容易となり作業性に優れる。
請求項2の発明は、請求項1において、キャブ取付座の左右外端部に、リヤフェンダーの上面部が着脱自在に止着されるフェンダー取付部を設けたことを特徴とするものである。
そして、この様にすることにより、リヤフェンダーを取付ける場合に、まずリヤフェンダー上面部をフェンダー取付板に止着することで、リヤフェンダーは位置決めされた状態でフェンダー取付板に支持されることになり、而して以降の取付け作業が容易となって、更なる作業性の向上に寄与できる。
請求項3の発明は、請求項1または2において、キャブ取付座は、補強部材により補強された状態で機体フレームに固着されることを特徴とするものである。
そして、この様にすることにより、キャブの機体フレーム側への取付けが強固なものとなって、転倒等の非常時においてもキャブを有効に保護できる。
請求項4の発明は、請求項1乃至3の何れか一つの請求項において、キャブ取付座は、キャブの前側支柱が取付支持される前側キャブ取付座と、キャブの後側支柱が取付支持される後側キャブ取付座とに分割される一方、前側キャブ取付座の上面側にキャブフロアが載置されることを特徴とするものである。
そして、この様にすることにより、前側キャブ取付座がキャブフロアを支持する支持部材を兼ねることになって、キャブフロアを強度アップされた状態で機体フレームに組付けることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0005】
次に、本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。図面において、1はホイールローダであって、該ホイールローダ1は、後輪2が設けられる後部車両1Aと、前輪3が設けられる前部車両1Bとを、連結部1Cを介して左右揺動自在に連結して構成されている。そして、後部車両1Aには、エンジン(図示せず)等の機械装置が収納されるエンジンルーム4、オペレータが座するシート5やステアリングホイール6等が配される運転席部、カウンタウエイト7、図示しない燃料タンク、作動油タンク等の各種部材が設けられる一方、前部車両1Bには、バケット8やアーム9等から構成される作業装置10が装着されている等の基本的構成は従来通りである。
【0006】
11は前記運転席部を覆うキャブであって、該キャブ11は、左右の前側支柱12L、12Rおよび左右の後側支柱13L、13R、左右の前側支柱12L、12R間に設けられるフロントガラス14、左右の後側支柱13L、13R間に設けられるリヤガラス15、前側支柱12L、12Rと後側支柱13L、13Rとの間に設けられるドア16等を備えて構成されるが、左右の前側支柱12L、12Rおよび左右の後側支柱13L、13Rの下端部には、後述する前側キャブ取付座17および左右の後側キャブ取付座18L、18Rに取付支持される取付台19L、19R、20L、20Rがそれぞれ固着されている。
【0007】
一方、21は後部車両1Aの基台となる機体フレームであって、該機体フレーム21は、前後方向を向く左右一対のサイドフレーム22L、22R、該左右のサイドフレーム22L、22R間に支架される連結フレーム23等から構成されると共に、左右のサイドフレーム22L、22Rの前端部間には、前記連結部1Cが取付支持される上下の支持フレーム24A、24Bが支架されている。
【0008】
さらに、左右のサイドフレーム22L、22Rの前部および前後方向中間部の上端縁には、前側キャブ取付座17および左右の後側キャブ取付座18L、18Rが係合する凹部22La、22Ra、22Lb、22Rbが形成されている。
【0009】
前側キャブ取付座17は、キャブ11の左右幅と略等しい左右幅に設計されているが、その左右両端部が左右のサイドフレーム22L、22Rから左右外方に突出し、且つ上面部がサイドフレーム22L、22Rの上端と略面一状になる状態で、左右のサイドフレーム22L、22Rの凹部22La、22Raに係合固着される。さらに、該前側キャブ取付座17のサイドフレーム22L、22Rへの固着は、前側キャブ取付座17の下面とサイドフレーム22L、22Rの左右外側面とのあいだに支架される補強プレート25aによって補強される。そして、この前側キャブ取付座17の上面の左右両側部に、前記キャブ11の左右の前側支柱12L、12R下端部の取付台19L、19Rが載置されてボルト26a止めされる左右の取付座面17La、17Raが形成されている。
【0010】
また、後側キャブ取付座18L、18Rは左右に分割されており、その上面部がサイドフレーム22L、22Rの上端と略面一状になる状態で、左右のサイドフレーム22L、22Rの凹部22Lb、22Rbにそれぞれ係合固着される。さらに、該後側キャブ取付座18L、18Rのサイドフレーム22L、22Rへの固着は、後側キャブ取付座18L、18Rの下面とサイドフレーム22L、22Rの左右外側面とのあいだに支架される補強プレート25b、およびサイドフレーム22L、22Rの左右内方側に立設される補強支柱25cによって補強される。そして、この左右の後側キャブ取付座18L、18Rの上面に、キャブ11の左右の後側支柱13L、13R下端部の取付台20L、20Rが載置されてボルト26b止めされる取付座面18La、18Raがそれぞれ形成されている。
【0011】
さらに、前記左右の後側キャブ取付座18L、18Rの左右外端部には、後述する左右のリヤフェンダー27L、27Rが取付けられる左右のフェンダー取付板28L、28Rが、左右の後側キャブ取付座18L、18Rから左右外方に突出する状態で固着されている。
【0012】
一方、29は前記キャブ11の床面を形成するキャブフロアであって、該キャブフロア29は、前側が前述の前側キャブ取付座17の上面部に載置され、後側が左右のサイドフレーム22L、22Rの上端部に固着される左右のフロア取付用アングル30L、30Rの上面部に載置された状態で、前側キャブ取付座17およびフロア取付用アングル30L、30Rにボルト31止めされることで機体フレーム21に組付けられるが、該キャブフロア29を組み付けた状態で、キャブフロア29の前端部が前側キャブ取付座17の前端位置よりも若干前方に位置し、またキャブフロア29の後端部が後側キャブ取付座18L、18Rの前端部に略当接するように設計されている。
【0013】
さらに、前記キャブフロア29は、前側キャブ取付座17の左右の取付座面17La、17Raの上方となる部位に切欠き29La、29Raが形成されていて、該切欠き29La、29Raから左右の取付座面17La、17Raが露出している。而してキャブ11は、機体フレーム21にキャブフロア29を組み付けた状態で、前側支柱12L、12R下端部の取付台19L、19Rを、前側キャブ取付座17の取付座面17La、17Raに載置してボルト26a止めすると共に、後側支柱13L、13R下端部の取付台20L、20Rを、後側キャブ取付座18R、18Lの取付座面18La、18Raに載置してボルト26b止めすることにより、機体フレーム21に取付支持される構成となっている。
【0014】
一方、前記左右のリヤフェンダー27L、27Rは、左右の後輪2、2の上方および前後方を覆うものであって、キャブフロア29の上面部と略面一状となってカウンタウエイト7にまで至る上面部27La、27Raと、該上面部27La、27Raの左右内側端から折曲形成されて左右のサイドフレーム22L、22Rの左右外側面部に当てがわれる左右内側面部27Lb、27Rbと、上面部27La、27Raの左右外側端から折曲形成され、略半円弧形状の内周縁を有する左右外側面部27Lc、27Rcとを備えて構成される。そして、該左右のリヤフェンダー27L、27Rは、その上面部27La、27Raを前記左右の後側キャブ取付座18L、18Rに固着された左右のフェンダー取付板28L、28Rにボルト32止めすると共に、左右内側面部27Lb、27Rbを左右のサイドフレーム22L、22Rの左右外側面部にボルト33止めすることで、後側キャブ取付座18L、18Rの外方側から着脱自在に止着できるようになっており、而して、キャブ11の前側支柱12L、12Rおよび後側支柱13L、13Rを前側キャブ取付座17および後側キャブ取付座18L、18Rに取付支持せしめたままの状態で、つまりキャブ11を機体フレーム21に組付けたままの状態で、リヤフェンダー27L、27Rを着脱できる構成になっている。
【0015】
叙述の如く構成された本形態において、キャブ11は、その前側支柱12L、12Rおよび後側支柱13L、13Rが、サイドフレーム22L、22Rに固着される前側キャブ取付座17および後側キャブ取付座18L、18Rに取付支持される一方、左右の後輪2、2を覆うリヤフェンダー27L、27Rは、キャブ11を前側キャブ取付座17および後側キャブ取付座18L、18Rに取付けたままの状態で、後側キャブ取付座18L、18Rの左右外方側からサイドフレーム22L、22Rに着脱自在に止着されることになる。
この結果、リヤフェンダー27L、27Rが傷付いたり破損したりした場合に、キャブ11を機体フレーム21に組付けたままの状態でリヤフェンダー27L、27Rの交換を行えることになって、交換作業が容易となり作業性に優れる。
【0016】
さらにこのものでは、後側キャブ取付座18L、18Rの左右外端部に、リヤフェンダー27L、27Rの上面部27La、27Raが着脱自在に止着されるフェンダー取付板28L、28Rが設けられているから、リヤフェンダー27L、27Rを取付ける場合に、まずリヤフェンダー上面部27La、27Raをフェンダー取付板28L、28Rにボルト32止めすることで、リヤフェンダー27L、28Rは位置決めされた状態でフェンダー取付板28L、28Rに支持されることになり、而して以降のボルト33止め作業が容易となって、更なる作業性の向上に寄与できる。
【0017】
またこのものにおいて、キャブ11が取付支持されるキャブ取付座は、キャブ11の左右の前側支柱12L、12Rが取付支持される前側キャブ取付座17と、左右の後側支柱13L、13Rがそれぞれ取付支持される左右の後側キャブ取付座18L、18Rとに分割されていると共に、前側キャブ取付座17の上面側にはキャブフロア29が載置されることになる。而して、前側キャブ取付座17がキャブフロア29を支持する支持部材を兼ねることになって、キャブフロア29は強度アップされた状態で機体フレーム21に組付けられることになる。
さらに、上記前側キャブ取付座17および後側キャブ取付座18L、18Rは、補強プレート25a、25b、補強支柱25cで補強された状態でサイドフレーム22L、22Rに固着されており、これにより、キャブ11の機体フレーム21側への取付けが強固なものとなって、転倒等の非常時においてもキャブ11を有効に保護できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】ホイールローダの側面図である。
【図2】図1のX−Xで断面したキャブの水平断面図である。
【図3】(X)は図2のX−X端面図、(Y)は図2のY−Y矢視図である。
【図4】機体フレームの側面図である。
【図5】機体フレームの平面図である。
【図6】図5のX−X断面図である。
【図7】機体フレームにキャブフロアおよびリヤフェンダーを組付けた状態を示す側面図である。
【図8】機体フレームにキャブフロアおよびリヤフェンダーを組付けた状態を示す平面図である。
【符号の説明】
【0019】
1 ホイールローダ
2 後輪
11 キャブ
17 前側キャブ取付座
18L、18R 後側キャブ取付座
21 機体フレーム
22L、22R サイドフレーム
25a、25b 補強プレート
25c 補強支柱
27L、27R リヤフェンダー
28L、28R フェンダー取付板
29 キャブフロア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体フレームに、キャブが取付支持されるキャブ取付座を固着する一方、該キャブ取付座にキャブを取付けた状態で、後輪を覆うリヤフェンダーをキャブ取付座の外方側から機体フレームに着脱自在に止着したことを特徴とするホイールローダ。
【請求項2】
請求項1において、キャブ取付座の左右外端部に、リヤフェンダーの上面部が着脱自在に止着されるフェンダー取付部を設けたことを特徴とするホイールローダ。
【請求項3】
請求項1または2において、キャブ取付座は、補強部材により補強された状態で機体フレームに固着されることを特徴とするホイールローダ。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか一つの請求項において、キャブ取付座は、キャブの前側支柱が取付支持される前側キャブ取付座と、キャブの後側支柱が取付支持される後側キャブ取付座とに分割される一方、前側キャブ取付座の上面側にキャブフロアが載置されることを特徴とするホイールローダ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−193062(P2006−193062A)
【公開日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−7463(P2005−7463)
【出願日】平成17年1月14日(2005.1.14)
【出願人】(000190297)新キャタピラー三菱株式会社 (1,189)
【Fターム(参考)】