説明

ホイール回転位置検出装置及びホイール6分力測定システム

【課題】低コスト且つ簡易な構成により、ホイールの回転位置を検出するホイール回転位置検出装置、及びホイールに加わる外力を6分力荷重計の検出値とホイールの回転位置の検出値とに基づいて算出するホイール6分力測定装置を提供する。
【解決手段】ホイールリム60の側面のホイール3の回転軸を中心とする円周上に、第1の間隔をもって設けられた複数の磁気センサユニット80〜87と、ホイールディスク61が締結されるハブ30を回転自在に保持するナックルに取り付けられた非回転部材70のホイール3の回転時に磁気センサユニット80〜87と対向する位置に、前記第1の間隔の範囲で前記第1の間隔よりも短い第2の間隔で設けられた複数個の磁石90と、複数の磁気センサユニット80〜87による磁石90の検出回数の計数値に基づいて、ホイール3の回転位置を把握する回転位置把握手段とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホイールの回転位置を検出するホイール回転位置検出装置、及び車両走行時にホイールが受ける外力を測定するホイール6分力測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、タイヤのホイールに6分力荷重計を取り付けて車両を走行させ、走行中の6分力荷重計の検出値により、ホイールが路面から受ける外力を直交する3軸(x:車両走行方向、y:車軸方向、z:鉛直方向)方向の分力、及びその回りの3モーメント(Mx,My,Mz)を測定するホイール6分力測定装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
かかる測定装置においては、6分力荷重計は第1の軸を車軸方向に合わせて取り付けられ、該第1の軸と直交する第2の軸の鉛直方向からの傾き(θ)を検出するために、ロータリーエンコーダ等のホイールの回転位置を検出する手段が備えられている。そして、6分力荷重計の検出データに、該傾き(θ)に基づく回転座標変換を施して、上記直交3軸方向の分力(Fx,Fy,Fz)、及びその回りの3モーメント(Mx,My,Mz)が算出される。
【特許文献1】特開2002−39744号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ホイール6分力測定装置においては、上述したようにホイールの回転位置を検出する手段を備える必要がある。しかし、ホイールの回転位置の検出手段として一般的なロータリーエンコーダは高価である。さらに、上記特許文献1に記載されたホイール6分力測定装置においては、回転位置の検出手段をホイール内に収めているため、ホイールやハブの形状に応じた角度検出装置を専用に設計する必要があり、角度検出手段の構成が複雑になると共にコストも高くなるという不都合がある。
【0005】
そこで、本発明は、低コスト且つ簡易な構成により、ホイールの回転位置を検出するホイール回転位置検出装置、及びホイールに加わる外力を6分力荷重計の検出値とホイールの回転位置の検出値とに基づいて算出するホイール6分力測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上記目的を達成するためになされたものであり、本発明のホイール回転位置検出装置は、タイヤが装着されるホイールリムと車両のハブへの取り付け部であるホイールディスクとを有するホイールの回転位置を検出する回転位置検出装置であって、前記ホイールと一体に回転する回転部分と、前記ホイールを回転自在に保持する保持部材に設けられた非回転部分とのうちのいずれか一方の、前記ホイールの回転軸を中心とする所定円周上に第1の間隔をもって設けられた複数の磁気センサユニットと、前記回転部分と前記非回転部分のうちの前記磁気センサユニットが設けられていない側の、前記ホイールの回転時に前記磁気センサユニットと対向する位置に、前記第1の間隔の範囲に前記第1の間隔よりも短い第2の間隔をもって配設された複数の磁石と、前記複数の磁気センサユニットによる前記磁石の検出信号に基づいて、前記ホイールの回転位置を把握する回転位置把握手段とを備えたことを特徴とする。
【0007】
かかる本発明によれば、前記ホイールと共に回転する回転部分と前記ホイールを回転自在に保持する非回転部分のうちのいずれか一方に、比較的コストの安い前記磁気センサユニットを複数設けることにより、前記磁気センサユニットと対向する該回転部分又は該非回転部分には、前記第1の間隔の範囲内で複数の磁石を設ければよい。そして、前記ホイールの回転に伴って、前記複数の磁気センサユニットにより前記磁石が連続的に検出され、前記回転把握手段は各磁気センサの検出信号から前記ホイールの回転位置を把握することができる。この場合、前記複数の磁気センサユニットが設けられた前記所定円周上の全ての部分に亘って磁石を設ける必要がなく、コストを抑えた簡易な構成により前記ホイールの回転位置を検出することができる。
【0008】
また、前記磁気センサユニットは、検出した磁気の大きさ及び方向に応じた磁気検出信号を出力する2個の磁気検出素子を、第3の間隔をもって前記所定円周上に配置して構成され、前記磁石は、前記第3の間隔の2倍の間隔をもって、前記磁気検出素子と対向する磁極の向きを交互に反転させて配設され、前記回転位置把握手段は、前記磁気センサユニットの2個の前記磁気検出素子の磁気検出信号により、前記ホイールの回転方向を把握することを特徴とする。
【0009】
かかる本発明によれば、詳細は後述するが、前記磁気センサユニットを構成する前記2個の磁気検出素子から出力される磁気検出信号は、90度の位相差を有する2相の正弦波となる。そして、前記ホイールの回転方向に応じて、該2相の正弦波のうちの位相が進む正弦波が切り換わる。そのため、前記回転位置把握手段は、前記2個の磁気検出素子の磁気検出信号から、前記ホイールの回転方向を把握することができる。
【0010】
また、前記複数の磁気センサユニットのうちのいずれかが、原点位置検出用センサとして予め設定され、前記回転位置把握手段は、該原点位置検出用センサにより前記磁石のうちの所定番目の磁石が検出された位置を前記ホイールの回転原点位置として、前記ホイールの回転位置を把握することを特徴とする。
【0011】
かかる本発明によれば、前記ホイールの回転原点位置を検出するための検出手段を別個に備える必要がないため、ホイール回転位置検出装置のコストをさらに抑制することができる。
【0012】
また、前記磁気検出信号を、前記磁気検出信号の変動範囲内で所定位相間隔ごとに設定された複数段階の閾値と比較し、前記磁気検出信号のレベルが上昇するときは、次の段階の閾値以上となるごとに出力レベルを反転させ、前記磁気検出信号のレベルが低下するときには、手前の段階の閾値以下となるごとに出力を反転させて、パルス信号を出力する逓倍手段を備え、前記回転位置把握手段は、該逓倍手段の出力パルス数の計数値に基づいて前記ホイールの回転位置を把握することを特徴とする。
【0013】
かかる本発明によれば、前記逓倍手段により前記磁気検出信号の1周期が複数個のパルス信号に分解して出力され、前記回転位置把握手段により該パルス信号の計数値に基づいて前記ホイールの回転位置が把握されるため、前記ホイールの回転位置の検出分解能を高めることができる。そして、これにより、前記ホイールの回転位置を精度良く検出することができる。
【0014】
また、前記磁気検出信号の振幅の変化に応じて、前記複数段階の閾値を補正する閾値補正手段を備えたことを特徴とする。
【0015】
かかる本発明によれば、周囲環境の変化等により前記磁気検出信号の振幅が変化した場合に、該変化に応じて前記複数段階の閾値を補正することによって、前記逓倍手段により出力されるパルス信号の周期の変動が抑制されるため、前記磁気検出信号の振幅の変化の影響による前記ホイールの回転位置の検出精度の悪化を防止するこができる。
【0016】
また、前記磁気センサユニットが設けられる前記回転部分は前記ホイールリムの内周面であり、前記保持部材は前記ホイールディスクが締結されるハブが接続された車軸を前記ホイールリムの内側で回転自在に保持するナックルであって、前記磁石が設けられる前記非回転部分は該ナックルの外周部分であることを特徴とする。
【0017】
かかる本発明によれば、既設部材である前記ホイールリムと前記ナックルを利用してホイール回転位置検出装置を前記ホイールリムの内側で構成することができる。この場合、前記磁気センサユニットや磁石を設けるための専用の部材が不要であるため、かかる部材により車両の幅が大きくなり、公道走行に問題が生じることを防止することができる。
【0018】
また、本発明のホイール6分力測定システムは、タイヤが装着されるホイールリムとハブへの取り付け部であるホイールディスクとを有するホイールが、車両走行時に受ける外力を測定するホイール6分力測定システムであって、前記ホイールディスクに装着されて、直交3軸(u,v,w)方向の分力(Fu,Fv,Fw)及びその回りのモーメント(Mu,Mv,Mw)を検出する6分力荷重計と、前記ホイールと一体に回転する回転部分に、前記ホイールの回転軸を中心とする所定円周上に第1の間隔をもって設けられた複数の磁気センサユニットと、前記ホイールを回転自在に保持する保持部材に設けられた非回転部分の、前記ホイールの回転時に前記磁気センサユニットと対向する位置に、前記第1の間隔の範囲で前記第1の間隔よりも短い第2の間隔をもって配設された複数の磁石と、前記6分力荷重計による分力(Fu,Fv,Fw)及びモーメント(Mu,Mv,Mw)の検出データと、前記磁気センサユニットによる前記磁石の検出データとを送信する送信手段と、該送信手段から送信された前記磁気センサユニットによる前記磁石の検出データを受信して、前記複数の磁気センサユニットによる前記磁石の検出回数の計数値に基づいて、前記ホイールの回転位置を把握する回転位置把握手段と、前記送信手段から送信された前記6分力荷重計による分力(Fu,Fv,Fw)及びモーメント(Mu,Mv,Mw)の検出データを受信して、該分力(Fu,Fv,Fw)及び該モーメント(Mu,Mv,Mw)に対して、前記回転位置把握手段により把握された前記ホイールの回転位置に基づく回転座標変換を行って、車両進行方向の分力(Fx)及び回りのモーメント(Mx)と、車軸方向の分力(Fy)及びその回りのモーメント(My)と、鉛直方向の分力(Fz)及びその回りのモーメント(Mz)とを把握するホイール6分力把握手段とを備えたことを特徴とする。
【0019】
かかる本発明によれば、前記6分力荷重計が前記ホイールディスクに装着され、前記磁気センサユニットも前記ホイールと共に回転する回転部分に設けられる。そのため、前記6分力荷重計の検出データと前記磁気センサユニットの検出データの双方を、前記送信手段により送信することができ、前記磁気センサユニットを前記ホイールを回転自在に保持する非回転部分に設けた場合のように、前記6分力荷重計の検出データを送信する手段と前記磁気センサユニットの検出データを送信する手段を別個に設ける必要がない。そして、前記回転位置把握手段により前記ホイールの回転位置を把握して、前記ホイール6分力把握手段により、固定座標の分力(Fx,Fy,Fz)及びモーメント(Mx,My,Mz)を把握することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明の実施の形態について、図1〜図7を参照して説明する。図1はホイール6分力測定システムの全体構成図及び6分力荷重計の装着状態の説明図、図2はホイール回転位置検出装置の構成図、図3はホイール回転位置検出装置の作動説明図、図4は磁気センサユニットに備えられた磁気検出素子から出力される磁気検出信号の推移を示したグラフ、図5はデータ転送ユニットの構成図、図6は磁気検出信号及び逓倍により生成したA相パルス信号及びB相パルス信号の出力の推移を示したグラフ、図7はホイール回転位置検出装置の他の実施の形態における構成図である。
【0021】
図1を参照して、ホイール6分力測定システムは、車両1の走行時にタイヤ2を介してホイール3が路面から受ける外力を、車両進行方向のx軸と車軸方向のy軸と鉛直方向のz軸という直交3軸方向の3分力(Fx,Fy,Fz)と、これらの軸回りの3モーメント成分(Mx,My,Mz)により測定するものであり、6分力荷重計4と、後述するホイール回転位置検出装置(図2参照)と、後述するデータ転送ユニット(図5参照)と、データロガー10とにより構成される。
【0022】
そして、直交3分力(Fu,Fv,Fw)とその回りの3モーメント成分(Mu,Mv,Mw)を検出する6分力荷重計4は、v軸の方向を車軸方向(y軸方向)に合わせてタイヤ2のホイール3に装着される。
【0023】
図1(b)を参照して、6分力荷重計4は、ホイール3のホイールディスク61に穿設されたネジ穴20に、6分力荷重計4の貫通穴21を介してボルト22を螺着することによりホイールディスク61に締結される。車両1の車軸(図示しない)に連結されたハブ30にはボルト31が立設されており、ボルト31をハブアダプタ40の貫通穴41に貫通させてナット42を螺着させることにより、ハブアダプタ40がハブ30に締結される。そして、ハブアダプタ40に立設されたボルト43を、6分力荷重計4の貫通穴50に貫通させ、ワッシャ51を嵌めてナット52を螺着することにより、6分力荷重計4がハブアダプタ40に締結される。
【0024】
なお、6分力荷重計4による直交3分力(Fu,Fv,Fw)とその回りの3モーメント成分(Mu,Mv,Mw)の検出データは、後述するデータ転送ユニット100(図5参照)により、データロガー10に無線送信される。
【0025】
次に、6分力荷重計4による回転座標系の直交3分力(Fu,Fv,Fw)とその回りの3モーメント成分(Mu,Mv,Mw)の検出データから、測定対象である静止座標系の直交3分力(Fx,Fy,Fz)とその回りの3モーメント成分(Mx,My,Mz)を求めるには、鉛直方向(z軸方向)に対するu軸方向の傾きθを検出して、座標変換処理を行う必要がある。そこで、図2に示したように、ホイール3のホイールリム60の側面に、45度の間隔をもって、磁気検出素子80aと80bからなる磁気センサユニット80と、磁気検出素子81aと81bからなる磁気センサユニット81と、磁気検出素子82aと82bからなる磁気センサユニット82と、磁気検出素子83aと83bからなる磁気センサユニット83と、磁気検出素子84aと84bからなる磁気センサユニット84と、磁気検出素子85aと85bからなる磁気センサユニット85と、磁気検出素子86aと86bからなる磁気センサユニット86と、磁気検出素子87aと87bからなる磁気センサユニット87とが設けられている。
【0026】
また、ホイール3が装着されるハブ30と連結された車軸(図示しない)を回転自在に保持するナックル(図示しない)の一部であるか又はナックルに装着された部材である非回転部材70のホイールリム60の側面と対向する面には、9個の磁石90が配設されている。そして、磁石90と磁気センサユニット80〜87は、ホイール3をハブに締結してホイール3を回転させたときに、磁石90が磁気センサユニット80〜87と対向して、磁石90が磁気センサユニット80〜87により検出される位置に設けられている。
【0027】
また、図3(a)に示したように、磁石90は磁気センサユニット80〜87と対向する面の磁極の向き(N極、S極)を交互に反転させて配設されており、隣接する磁石90間の間隔W2は、各磁気センサユニット80〜87における磁気検出素子間の間隔W1の2倍に設定されている。また、図3(b)に示したように、磁石90はホイール3の全周に亘る位置に対応して配設されておらず、隣接する磁気センサユニットの間隔に対応した間隔mの範囲内にのみ配設されている。
【0028】
そして、このように磁気センサユニット80〜87が配設されたホイール3を、図3(a)及び図3(b)のL1の方向に回転させると、図4に示したように、各磁気センサユニット80〜87の磁気検出素子80a〜87aから、順次磁気検出信号が出力される。
【0029】
図4は、図3(b)を参照して、磁気検出ユニット80の磁気検出素子80aが図中L1の方向の先頭の磁石90a(本発明の所定番目の磁石に相当する)と対向した位置を、ホイール3の回転位置θの原点位置(θ=0度、静止座標系のz軸と回転座標系のu軸の向きが一致する位置)として、ホイール3を回転させたときの磁気検出素子80a〜87aの磁気検出信号の推移を示している。
【0030】
なお、奇数番目の磁気検出素子81a,83a,85a,87aについては磁気検出信号の出力波形を反転させた上で、磁気検出素子81a〜87aの出力波形を加算することで、図4に示したように、ホイール3の1回転に亘る連続波形を得ることができる。
【0031】
この場合、0<θ≦45度の範囲では磁気検出素子80aによる磁石90の検出個数(=磁気検出信号の極値の数)を計数し、45度<θ≦90度の範囲では磁気検出素子81aによる磁石90の検出個数を計数し、90度<θ≦135度の範囲では磁気検出素子82aによる磁石90の検出個数を計数し、135度<θ≦180度の範囲では磁気検出素子83aによる磁石90の検出個数を計数し、180度<θ≦225度の範囲では磁気検出素子84aによる磁石90の検出個数を計数し、225度<θ≦270度の範囲では磁気検出素子85aによる磁石90の検出個数を計数し、270度<θ≦315度の範囲では磁気検出素子86aによる磁石90の検出個数を計数し、315度<θ≦360度の範囲では磁気検出素子87aによる磁石90の検出個数を計数する。
【0032】
そして、磁気検出素子80a〜87aによる原点位置(θ=0度)からの磁石90の計数値の累計値をCT1とすると、ホイール3の回転位置θは以下の式(1)により算出することができる。
【0033】
θ = CT1×5(度) ・・・・・(1)
また、ホイールリム60の内周面又はホイールディスク61の裏面のホイール3と一体に回転する部分には、図5に示したデータ転送ユニット100が設けられている。データ転送ユニット100は、マイクロコンピュータ103と無線通信ユニット110を備えた電子ユニットであり、6分力荷重計4及び磁気センサユニット80〜87と接続されている。そして、マイクロコンピュータ103は、バッファアンプ101とA/Dコンバータ102を介して、6分力荷重計4から出力される分力(Fu,Fv,Fw)とモーメント(Mu,Mv,Mw)のアナログ検出信号をデジタルデータ化して入力する。
【0034】
また、マイクロコンピュータ103は、磁気センサユニット80〜87の磁気検出素子(図中MS)80a,80b,…,87a,87bから出力されるアナログの磁気検出信号を、バッファアンプ104及びA/Dコンバータ105を介して、デジタルデータ化して入力する。そして、マイクロコンピュータ103は、入力した分力(Fu,Fv,Fw)及びモーメント(Mu,Mv,Mw)の検出信号のデータと、磁気検出信号のデータを、無線通信ユニット110を介してデータロガー10に無線送信する。
【0035】
データロガー10は、データ転送ユニット100との間で無線によるデータ通信を行う機能を有し、データ転送ユニット100から受信した磁気検出信号のデータに基づいてホイール3の回転位置θを把握する回転位置把握手段11と、データ転送ユニット100から受信した分力(Fu,Fv,Fw)及びモーメント(Mu,Mv,Mw)に対して、該回転位置θに基づく座標変換を行って静止座標系の分力(Fx,Fy,Fz)及びモーメント(Mx,My,Mz)を把握するホイール6分力把握手段12とを備えている。
【0036】
回転位置把握手段11は、各磁気センサユニット80〜87の磁気検出素子80a,80b〜87a,87bの磁気検出信号データを、磁気検出信号の変動幅(−A0〜A0、図6参照)内で設定した閾値E1(=A0sinπ/5),E2(=A0sinπ/10),E3(=0),E4(=−A0sinπ/10),E5(=−A0sinπ/5)と比較して、A相及びB相の5逓倍パルス信号を得る。なお、このようにA相及びB相の5逓倍パルス信号を生成する機能が、本発明の逓倍手段に相当する。
【0037】
図6に示したグラフの上段は、例えば磁気センサユニット80の磁気検出素子80aの磁気検出信号Maと、磁気検出素子80bの磁気検出信号Mbの変化を示したものであり、横軸がホイール3の回転位置(θ)に設定され、縦軸が磁気検出信号のレベル(A)に設定されている。
【0038】
また、図6に示したグラフの下段は、MaとMbを上述した5段階の閾値E1〜E5と比較して、Ma,Mbのレベルが上昇する過程では該レベルが次の段階の閾値以上となる毎に、また、該レベルが低下する過程では該レベルが手前の段階の閾値以下となる毎に、出力を交互に反転させて生成した5逓倍のA相パルス信号とB相パルス信号を示している。ここで、図6はホイール3が図3(a)及び図3(b)のL1の方向に回転しているときの磁気検出素子80aと80bの磁気検出信号と、5逓倍のA相パルス信号とB相パルス信号の推移を示しており、この場合は、A相パルス信号の位相はB相パルス信号に対して90度進んでいる。
【0039】
一方、ホイール3が図3(a)及び図3(b)のL1と逆の方向に回転しているときには、A相パルス信号の位相がB相パルス信号に対して90度遅れる。そのため、このようにA相パルス信号とB相パルス信号を生成して、どちらの位相が進んでいるかを確認することにより、回転位置把握手段11は、ホイール3の回転方向を検知することができる。
【0040】
ここで、5逓倍パルス信号(A相パルス出力及びB相パルス出力)の1パルスあたりの角度は、10度/5=2度となる。そして、A相パルス出力及びB相パルス出力の1周期はHIGHとLOWの期間によって2分割されているので1度の分解能を得ることができる。さらに、A相パルス出力とB相パルス出力の位相差が0.5度に相当することを利用して、結果的に0.5度の分解能で回転位置を検知することができる。このようにして、回転位置把握手段11は、A相パルス出力及びB相パルス出力の組み合わせにより、0.5度の分解能を有するパルス信号のカウントアップ/カウントダウンを行なって、ホイール3の回転位置を把握する。
【0041】
なお、E1〜E5は固定値としてもいいが、A0の変動に応じて変更するようにしてもよい。また、閾値の設定を5段階よりも細かく設定することにより、逓倍数を増加させて角度検出の分解能を高めることができる。
【0042】
回転位置把握手段11は、0<θ≦45度の範囲では磁気検出素子80a,80bの磁気検出信号に基づく5逓倍パルス信号(A相パルス出力及びB相パルス出力)の組み合わせによる0.5度の分解能を有するパルス信号を計数し、45度<θ≦90度の範囲では磁気検出素子81a,81bの磁気検出信号に基づく5逓倍パルス信号の組み合わせによる0.5度の分解能を有するパルス信号を計数し、90度<θ≦135度の範囲では磁気検出素子82a,82bの磁気検出信号に基づく5逓倍パルス信号の組み合わせによる0.5度の分解能を有するパルス信号を計数し、135度<θ≦180度の範囲では磁気検出素子83a,83bの磁気検出信号に基づく5逓倍パルス信号の組み合わせによる0.5度の分解能を有するパルス信号を計数する。
【0043】
また、同様に、回転位置把握手段11は、180度<θ≦225度の範囲では磁気検出素子84a,84bの磁気検出信号に基づく5逓倍パルス信号の組み合わせによる0.5度の分解能を有するパルス信号を計数し、225度<θ≦270度の範囲では磁気検出素子85a,85bの磁気検出信号に基づく5逓倍パルス信号の組み合わせによる0.5度の分解能を有するパルス信号を計数し、270度<θ≦315度の範囲では磁気検出素子86a,86bの磁気検出信号に基づく5逓倍パルス信号の組み合わせによる0.5度の分解能を有するパルス信号を計数し、315度<θ≦360度の範囲では磁気検出素子87a,87bの磁気検出信号に基づく5逓倍パルス信号の組み合わせによる0.5度の分解能を有するパルス信号を計数する。
【0044】
そして、回転位置把握手段11は、ホイール3の回転位置θの原点(θ=0度)からの各磁気検出素子80a,80b〜87a,87bの磁気検出信号に応じた5逓倍パルス信号の組み合わせによる0.5度の分解能を有するパルス信号を計数し、計数値の累積値CT5に基づいて、以下の式(2)によりホイール3の回転位置θを把握する。
【0045】
θ=CT5×0.5(度) ・・・・・(2)
次に、図7を参照して、磁気センサ80〜87と磁石90の他の取付け態様として、磁気センサ80〜87をホイールリム60の内周面に配設し、車両のナックル(図示しない)等に装着した非回転部材95に、ホイール3がハブ(図示しない)に装着されたときに磁気センサ80〜87と対向する位置に磁石90を配設する構成としてもよい。この場合にも、図2に示した態様と同様に、ホイール3の回転に応じて磁気センサ80〜87から磁気検出信号を得ることができる。
【0046】
なお、本実施の形態では、磁気センサユニット80〜87をホイール3側(回転部分側)に設けて磁石90をナックル側(非回転部分側)に設けたが、逆に磁気センサユニット80〜87をナックル側に設けて磁石をホイール側に設けるようにしてもよい。
【0047】
また、磁気センサユニット80〜87をホイール3のホイールリム60に設けたが、ホイール3の回転軸を中心とする円周上であれば、ホイールディスク61等の他の回転部分に設けてもよい。
【0048】
また、本実施の形態では、データ転送ユニット100からデータロガー10に、6分力力荷重計4による分力(Fu,Fv,Fw)及びモーメント(Mu,Mv,Mw)の検出データと、磁気センサユニット80〜87による磁気検出信号のデータを無線送信したが、スリップリングを用いて有線送信するようにしてもよい。
【0049】
また、本実施の形態では、データロガー10に回転位置把握手段11とホイール6分力把握手段12を備えたが、回転位置把握手段11をデータ転送ユニット100に設けてもよい。この場合、マイクロコンピュータ103は、ホイール3の回転位置θを把握しながら、6分力荷重計4による分力(Fu,Fv,Fw)及びモーメント(Mu,Mv,Mw)の検出データの入力タイミングを決定することができる。
【0050】
また、回転位置把握手段11と共に、ホイール6分力把握手段12をデータ転送ユニット100に設けてもよい。この場合、データ転送ユニット100からデータロガー10に、静止座標系の分力(Fx,Fy,Fz)及びモーメント(Mx,My,Mz)の測定データを送信することができるため、データロガー10における演算処理の負担を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】ホイール6分力測定システムの全体構成図及び6分力荷重計の装着状態の説明図。
【図2】ホイール回転位置検出装置の構成図。
【図3】ホイール回転位置検出装置の作動説明図。
【図4】磁気センサユニットに備えられた磁気検出素子から出力される磁気検出信号の推移を示したグラフ。
【図5】データ転送ユニットの構成図。
【図6】逓倍により生成したA相パルス信号及びB相パルス信号の出力の推移を示したグラフ。
【図7】ホイール回転位置検出手段の他の実施の形態における構成図。
【符号の説明】
【0052】
1…車両、2…タイヤ、3…ホイール、4…6分力荷重計、10…データロガー、11…回転位置把握手段、12…ホイール6分力把握手段、30…ハブ、40…ハブアダプタ、60…ホイールリム、61…ホイールディスク、70…非回転部材、80〜87…磁気センサユニット、80a〜87a…磁気検出素子、80b〜87b…磁気検出素子、90…磁石、95…非回転部材、100…データ転送ユニット、110…無線通信ユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤが装着されるホイールリムと車両のハブへの取り付け部であるホイールディスクとを有するホイールの回転位置を検出する回転位置検出装置であって、
前記ホイールと一体に回転する回転部分と、前記ホイールを回転自在に保持する保持部材に設けられた非回転部分とのうちのいずれか一方の、前記ホイールの回転軸を中心とする所定円周上に第1の間隔をもって設けられた複数の磁気センサユニットと、
前記回転部分と前記非回転部分のうちの前記磁気センサユニットが設けられていない側の、前記ホイールの回転時に前記磁気センサユニットと対向する位置に、前記第1の間隔の範囲に前記第1の間隔よりも短い第2の間隔をもって配設された複数の磁石と、
前記複数の磁気センサユニットによる前記磁石の検出信号に基づいて、前記ホイールの回転位置を把握する回転位置把握手段とを備えたことを特徴とするホイール回転位置検出装置。
【請求項2】
前記磁気センサユニットは、検出した磁気の大きさ及び方向に応じた磁気検出信号を出力する2個の磁気検出素子を、第3の間隔をもって前記所定円周上に配置して構成され、
前記磁石は、前記第3の間隔の2倍の間隔をもって、前記磁気検出素子と対向する磁極の向きを交互に反転させて配設され、
前記回転位置把握手段は、前記磁気センサユニットの2個の前記磁気検出素子の磁気検出信号により、前記ホイールの回転方向を把握することを特徴とする請求項1記載のホイール回転位置検出装置。
【請求項3】
前記複数の磁気センサユニットのうちのいずれかが、原点位置検出用センサとして予め設定され、
前記回転位置把握手段は、該原点位置検出用センサにより前記磁石のうちの所定番目の磁石が検出された位置を前記ホイールの回転原点位置として、前記ホイールの回転位置を把握することを特徴とする請求項1又は請求項2記載のホイール回転位置検出装置。
【請求項4】
前記磁気検出信号を、前記磁気検出信号の変動範囲内で所定位相間隔ごとに設定された複数段階の閾値と比較し、前記磁気検出信号のレベルが上昇するときは、次の段階の閾値以上となるごとに出力レベルを反転させ、前記磁気検出信号のレベルが低下するときには、手前の段階の閾値以下となるごとに出力を反転させて、パルス信号を出力する逓倍手段を備え、
前記回転位置把握手段は、該逓倍手段の出力パルス数の計数値に基づいて前記ホイールの回転位置を把握することを特徴とする請求項1から請求項3のうちいずれか1項記載のホイール回転位置検出装置。
【請求項5】
前記磁気検出信号の振幅の変化に応じて、前記複数段階の閾値を補正する閾値補正手段を備えたことを特徴とする請求項4記載のホイール回転位置検出装置。
【請求項6】
前記磁気センサユニットが設けられる前記回転部分は前記ホイールリムの内周面であり、前記保持部材は前記ホイールディスクが締結されるハブが接続された車軸を前記ホイールリムの内側で回転自在に保持するナックルであって、前記磁石が設けられる前記非回転部分は該ナックルの外周部分であることを特徴とする請求項1から請求項5のうちいずれか1項記載のホイール回転位置検出装置。
【請求項7】
タイヤが装着されるホイールリムとハブへの取り付け部であるホイールディスクとを有するホイールが、車両走行時に受ける外力を測定するホイール6分力測定システムであって、
前記ホイールディスクに装着されて、直交3軸(u,v,w)方向の分力(Fu,Fv,Fw)及びその回りのモーメント(Mu,Mv,Mw)を検出する6分力荷重計と、
前記ホイールと一体に回転する回転部分に、前記ホイールの回転軸を中心とする所定円周上に第1の間隔をもって設けられた複数の磁気センサユニットと、
前記ホイールを回転自在に保持する保持部材に設けられた非回転部分の、前記ホイールの回転時に前記磁気センサユニットと対向する位置に、前記第1の間隔の範囲で前記第1の間隔よりも短い第2の間隔をもって配設された複数個の磁石と、
前記6分力荷重計による分力(Fu,Fv,Fw)及びモーメント(Mu,Mv,Mw)の検出データと、前記磁気センサユニットによる前記磁石の検出データとを送信する送信手段と、
該送信手段から送信された前記磁気センサユニットによる前記磁石の検出データを受信して、前記複数の磁気センサユニットによる前記磁石の検出回数の計数値に基づいて、前記ホイールの回転位置を把握する回転位置把握手段と、
前記送信手段から送信された前記6分力荷重計による分力(Fu,Fv,Fw)及びモーメント(Mu,Mv,Mw)の検出データを受信して、該分力(Fu,Fv,Fw)及び該モーメント(Mu,Mv,Mw)に対して、前記回転位置把握手段により把握された前記ホイールの回転位置に基づく回転座標変換を行って、車両進行方向の分力(Fx)及び回りのモーメント(Mx)と、車軸方向の分力(Fy)及びその回りのモーメント(My)と、鉛直方向の分力(Fz)及びその回りのモーメント(Mz)とを把握するホイール6分力把握手段とを備えたことを特徴とするホイール6分力測定システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−208082(P2006−208082A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−18188(P2005−18188)
【出願日】平成17年1月26日(2005.1.26)
【出願人】(000151520)株式会社東京測器研究所 (29)
【Fターム(参考)】