説明

ホームギャップフィラー装置

【課題】設置作業を容易にかつ迅速に行えるようにし、これにより設置コストの低減及び設置所要時間の短縮を可能とするホームギャップフィラー装置を提供する。
【解決手段】電源ライン64をデジタル放送波の受信信号と通常の電源とにより共用する場合に、信号重畳部63にて電源ライン64に受信信号を重畳する前に、周波数変換器81により受信信号をUHF帯から減衰の少ないVHF帯に周波数変換し、再送信アンテナ側の周波数変換器で電源ライン64及び電源コンセント61−1〜61−3を介して送られたVHF帯の信号を元のUHF帯に変換するようにしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば屋内で地上デジタル放送波を中継するために用いられる地上デジタル放送のホームギャップフィラー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
次世代のデジタル放送システムとして、現在の地上波によるテレビジョン帯域を利用した地上デジタル放送の開発が進められている。この地上デジタル放送システムでは、放送サービスエリアの拡大及び難視聴地域の解消を目的として、ギャップフィラー対策の実施が検討されている。
このギャップフィラー対策では、放送波が届かないエリアごとにギャップフィラーと呼ばれる中継装置を設置するようにしている(例えば特許文献1及び特許文献2)。
【0003】
ところで、上記地上デジタル放送システムでは、アナログ放送システムにもあるように、テレビジョン受信機の室内用受信アンテナでデジタル放送波を受信できるものも要望されている。このような放送システムにあっても、放送サービスエリア以外に屋内における難視聴地域の解消を目的としたギャップフィラー対策の実施も検討されることになる。
そこで、屋内において、受信場所に制限を受けることなく地上デジタル放送波を既知の屋内用受信アンテナを備えた放送受信機に受信させるための地上デジタル放送のホームギャップフィラー装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−101032号公報
【特許文献2】特開2003−78492号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記ホームギャップフィラー装置は、簡易な構成であるため、安価であるという利点がある。ところで、このホームギャップフィラー装置が普及してくると、屋内に簡単に設置できるようにしたものも求められることになる。しかしながら、現状では、アンテナの設置作業手順が複雑であるため、設置完了まで多くの手間と時間がかかると共に、設置コストがかかる。
【0006】
また、ホームギャップフィラー装置の再送信アンテナが故障した場合に、ホームギャップフィラー装置全体を交換しなければならない。
【0007】
そこで、この発明の目的は、設置作業を容易にかつ迅速に行えるようにし、これにより設置コストの低減及び設置所要時間の短縮を可能としたホームギャップフィラー装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態によれば、デジタル放送波を、放送受信機に設置される既知の屋内用受信アンテナで受信させるために使用されるホームギャップフィラー装置において、屋外に設置され、前記地上デジタル放送波を受信する受信アンテナと、前記受信アンテナからの受信信号を増幅して当該受信信号と同一周波数の再送信号を生成する増幅器と、屋内に配置される電子機器に対し動作に必要な電源を供給するための電源コンセントと、前記増幅器の出力を放送帯域の第1の周波数帯から該第1の周波数帯に比して低い第2の周波数帯に変換する第1の周波数変換器と、前記第1の周波数変換器の出力を電源コンセントに対し電源を供給するための電源ラインに送出する伝送手段と、前記電源コンセントに対し着脱自在に接続するための接続部と、前記第1の周波数変換器から出力され前記伝送手段により伝送される再送信号を前記接続部を介して受信し、屋内へ送信する送信部とを有する再送信アンテナと、前記再送信アンテナに設けられ、前記接続部により得られる前記電源ラインからの信号から電源成分を除去するフィルタ部と、前記再送信アンテナに設けられ、前記フィルタ部の出力信号を前記第1の周波数帯に変換して前記送信部に供給する第2の周波数変換器とを備える。
【発明の効果】
【0009】
以上詳述したようにこの発明によれば、設置作業を容易にかつ迅速に行えるようにし、これにより設置コストの低減及び設置所要時間の短縮を可能としたホームギャップフィラー装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】この発明に係るホームギャップフィラー装置の構成を示すブロック図。
【図2】この発明の第1の実施形態における増幅器と電源コンセントとの接続構成を示す概略構成図。
【図3】この発明の第1の実施形態における再送信アンテナを横から見て示した図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、この発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
図1は、この発明に係るホームギャップフィラー装置の構成を示すブロック図である。
図1において、送信所から到来する地上デジタル放送波は、屋外に取り付けられた受信アンテナ11によって受信され、その受信信号がフィーダー12を介して増幅器13に供給される。増幅器13は、入力された受信信号を所定の振幅レベルまで増幅し、この増幅した信号を再送信号として屋内の壁又は天井に設置される再送信アンテナ14に出力する。すると、再送信アンテナ14は、入力された再送信号を再送信波として屋内に放射する。
そして、屋内に設置されたテレビジョン受像機21では、既知の簡易受信アンテナ22で再送信波を受信し、その放送コンテンツを再生表示する。
【0012】
(第1の実施形態)
図2は、この発明の第1の実施形態における増幅器13と電源コンセントとの接続構成を示す概略構成図であり、図3は再送信アンテナ14を横から見て示した図である。
【0013】
各部屋には、それぞれ電源コンセント61−1〜61−3が備え付けられており、これら電源コンセント61−1〜61−3には、通常の電子機器に対し電源を供給するための差込口62−1〜62−3のみが設けられている。
【0014】
また、増幅器13と電源コンセント61−1〜61−3との間には、信号重畳部63が介在される。信号重畳部63は、例えば絶縁用キャパシタから成り、増幅器13の出力信号を各電源コンセント61−1〜61−3に電源を供給するための電源ライン64に重畳するためのものである。また、電源ライン64上の無線周波成分との重畳点の右側に、低周波数成分(電源成分)のみを通過させるチョークコイル65が設けられている。このチョークコイル65は、電源成分に重畳された無線周波成分が屋外に流出されることを防ぐためのものである。
【0015】
さらに、再送信アンテナ14には、電源コンセント61−1〜61−3の差込口62−1〜62−3に差し込むための接続ピン71が設けられるとともに、この接続ピン71とアンテナエレメント41a,41bとの間にフィルタ部72が介在される。フィルタ部72は、例えば絶縁用キャパシタから成り、電源ライン64からの信号から電源成分(例えば50Hz)を阻止し無線周波成分(例えば300MHz〜3GHz)を通過させるいわゆる高域フィルタとして動作するものである。
【0016】
増幅器13と信号重畳部63との間に、周波数変換器81が介在されることになる。この周波数変換器81は、増幅器13の出力信号をUHF(Ultra High Frequency)帯からVHF(Very High Frequency)帯に周波数変換して信号重畳部63に供給する。
【0017】
また、再送信アンテナ14において、アンテナエレメント41a,41bとフィルタ部72との間に、周波数変換器91が介在されることになる。この周波数変換器91は、フィルタ部72の出力信号をVHF帯からUHF帯に周波数変換してアンテナエレメント41a,41bに供給する。
【0018】
次に、上記構成における動作について説明する。
電源ライン64を電源と無線周波数の信号とで共用する場合に、電源ライン64における高周波領域の減衰が大きくなる。そこで、本第4の実施形態では、信号重畳部63にて増幅器13で増幅されたデジタル放送波の受信信号を電源ライン64に重畳する前に、周波数変換器81により受信信号を例えばVHF帯のようなより減衰が少ない周波数領域に変換し、再送信アンテナ14側の周波数変換器91により元のUHF帯に戻すようにしている。
【0019】
以上のように上記第1の実施形態では、電源ライン64をデジタル放送波の受信信号と通常の電源とにより共用する場合に、信号重畳部63にて電源ライン64に受信信号を重畳する前に、周波数変換器81により受信信号をUHF帯から減衰の少ないVHF帯に周波数変換し、再送信アンテナ14側の周波数変換器91で電源ライン64及び電源コンセント61−1〜61−3を介して送られたVHF帯の信号を元のUHF帯に変換するようにしている。
【0020】
従って、電源ライン64におけるデジタル放送波の受信信号の転送を電源成分による影響を受けることなく確実に行うことができる。
【0021】
(その他の実施形態)
なお、この発明は上記実施形態に限定されるものではない。実施形態では、再送信アンテナとして半波長ダイポール形式のものを用いた例を示したが、他のアンテナ形式を使用してもよい。
【0022】
さらに、上記実施形態では、再送信アンテナに設けられる接続ピンを差込口に差し込む構成例について説明したが、ピン形状以外のものであってもよい。
【0023】
その他、ホームギャップフィラー装置の構成、再送信アンテナの種類及び構成、再送信アンテナの接続構成等についても、この発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施できる。
【符号の説明】
【0024】
11…受信アンテナ、12…フィーダー、13,43…増幅器、14…再送信アンテナ、15…分配器、21…テレビジョン受像機、22…簡易受信アンテナ、61−1〜61−3…電源コンセント、62−1〜62−3…差込口、41a,41b…アンテナエレメント、71…接続ピン、63…信号重畳部、72…フィルタ部、81,91…周波数変換器。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
デジタル放送波を、放送受信機に設置される既知の屋内用受信アンテナで受信させるために使用されるホームギャップフィラー装置において、
屋外に設置され、前記地上デジタル放送波を受信する受信アンテナと、
前記受信アンテナからの受信信号を増幅して当該受信信号と同一周波数の再送信号を生成する増幅器と、
屋内に配置される電子機器に対し動作に必要な電源を供給するための電源コンセントと、
前記増幅器の出力を放送帯域の第1の周波数帯から該第1の周波数帯に比して低い第2の周波数帯に変換する第1の周波数変換器と、
前記第1の周波数変換器の出力を電源コンセントに対し電源を供給するための電源ラインに送出する伝送手段と、
前記電源コンセントに対し着脱自在に接続するための接続部と、前記第1の周波数変換器から出力され前記伝送手段により伝送される再送信号を前記接続部を介して受信し、屋内へ送信する送信部とを有する再送信アンテナと、
前記再送信アンテナに設けられ、前記接続部により得られる前記電源ラインからの信号から電源成分を除去するフィルタ部と、
前記再送信アンテナに設けられ、前記フィルタ部の出力信号を前記第1の周波数帯に変換して前記送信部に供給する第2の周波数変換器とを具備することを特徴とするホームギャップフィラー装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−176882(P2011−176882A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−120995(P2011−120995)
【出願日】平成23年5月30日(2011.5.30)
【分割の表示】特願2005−155975(P2005−155975)の分割
【原出願日】平成17年5月27日(2005.5.27)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(508330685)株式会社フジテレビジョン (13)
【出願人】(000109668)DXアンテナ株式会社 (394)
【Fターム(参考)】