説明

ボイラプラント

【課題】ベンチュリスクラバーを用いることなく、排ガス中の水銀の除去率を向上する。
【解決手段】石炭を富酸素の燃焼用ガスにより燃焼して発生した排ガス中の煤塵を集塵装置5で捕集し、集塵装置5から排出される排ガス中の硫黄酸化物を湿式脱硫装置15で除去し、湿式脱硫装置から排出される排ガスにハロゲン又はハロゲン化合物を添加装置37で添加し、添加装置37から排出される排ガス中の水銀を水銀酸化装置39でハロゲン又はハロゲン化合物と反応させて水に溶けやすい酸化水銀に酸化し、水銀酸化装置39から排出される排ガス中の水分を水銀除去装置で凝縮させ、少なくとも凝縮水に酸化水銀を吸収させて排ガスから除去する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボイラプラントに係り、特に、石炭を富酸素の燃焼用ガスにより燃焼させる酸素燃焼式のボイラの排ガスから水銀を除去する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、石炭を酸素燃焼して発生した排ガス中の窒素酸化物を脱硝装置で除去し、排ガス中の煤塵を集塵装置で捕集し、排ガス中の硫黄酸化物を脱硫装置で除去し、排ガス中の水分と水蒸気を乾燥装置で除去した後、排ガスを冷却して排ガス中の二酸化炭素を回収するボイラプラントが提案されている。また、石炭を酸素燃焼すると火炎温度が高くなるから、回収した二酸化炭素で酸素を希釈して燃焼用ガスを生成し、火炎温度が高くなることを抑制している。しかし、特許文献1に記載の技術は、排ガス中の水銀を除去することは考慮されていない。
【0003】
一方、特許文献2には、石炭を空気燃焼して発生した排ガスに含まれる酸化水銀(Hg2+)を、湿式脱硫装置の脱硫用吸収液に吸収させて排ガスから除去する技術が提案されている。特に、同文献によれば、湿式脱硫装置で吸収させた酸化水銀(Hg2+)が、脱硫用吸収液中の還元性物質により溶解性の低い金属水銀(Hg)に還元されて排ガスに再放出するから、湿式脱硫装置から排出された排ガスを水銀酸化触媒が充填された酸化装置に導入し、再放出した金属水銀を水に溶けやすい酸化水銀に酸化した後、ベンチュリスクラバーの吸収液に吸収させて排ガスから除去するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5―231609号公報
【特許文献2】特開2008―302345号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献2のようなベンチュリスクラバーは、排ガス流路を絞って排ガスの流速を上げ、流速を上げたベンチュリー部に吸収液を噴出して高速のガス流により吸収液を微細化させ、吸収液と酸化水銀の接触可能性を上げるものであるから、水銀の除去率を高めるには、ベンチュリー部の排ガスの速度を高くしなければならないので圧力損失が大きいという問題がある。
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、ベンチュリスクラバーを用いることなく、排ガス中の水銀の除去率を向上することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明のボイラプラントは、石炭を富酸素の燃焼用ガスにより燃焼させる酸素燃焼式のボイラと、ボイラから排出される排ガス中の煤塵を捕集する集塵装置と、集塵装置から排出される排ガス中の硫黄酸化物を除去する湿式脱硫装置と、湿式脱硫装置から排出される排ガスにハロゲン又はハロゲン化合物を添加する添加装置と、添加装置から排出される排ガス中の水銀をハロゲン又はハロゲン化合物と反応させて酸化する触媒層を備える水銀酸化装置と、水銀酸化装置から排出される排ガス中の水分を凝縮させ、少なくとも凝縮水に酸化水銀を吸収させて排ガスから除去する水銀除去装置と、水銀除去装置から排出される排ガス中の二酸化炭素を回収する二酸化炭素回収装置を備えることを特徴とする。
【0008】
これによれば、水銀除去装置の上流側で排ガス中の金属水銀を酸化して水に溶けやすい酸化水銀に変換しているので、水銀除去装置で排ガス中の水分を凝縮させ、この凝縮水に酸化水銀を吸収させて排ガスから除去できるから、圧力損失が大きいベンチュリスクラバーを用いることなく、排ガス中の水銀の除去率を向上できる。また、湿式脱硫装置の後流側で金属水銀を酸化しているから、湿式脱硫装置で吸収された後、還元されて再放出される金属水銀を除去できる。なお、石炭を酸素燃焼すると火炎温度が高くなるので、例えば、集塵装置の下流側の排ガスを分岐して酸素供給装置から供給される酸素を希釈して燃焼用ガスを生成し、この燃焼用ガスで石炭を燃焼することができる。
【0009】
また、水銀除去装置は、排ガスを圧縮する圧縮装置と、圧縮装置で圧縮された排ガスを冷却して排ガス中の水分を凝縮させる冷却装置とで構成することができる。
【0010】
また、水銀除去装置は、湿式脱硫装置を用いることができる。つまり、水銀酸化装置の下流側に他の湿式脱硫装置を配置し、この湿式脱硫装置の脱硫用吸収液と排ガスを接触させ、排ガス中の水分の凝縮水と脱硫用吸収液の混合液に排ガス中の酸化水銀を吸収させて排ガスから除去できる。この場合、脱硫用吸収液に吸収させる硫黄酸化物が多いと、脱硫用吸収液中の亜硫酸の濃度が高くなり酸化水銀が還元され再放出されるので、水銀酸化装置の後段の湿式脱硫装置の硫黄酸化物の吸収量が酸化水銀の還元が抑制される範囲になるように、水銀酸化装置の前段の湿式脱硫装置で硫黄酸化物を除去することが好ましい。
【0011】
一方、湿式脱硫装置から排出される排ガスの温度が低く排ガス中の水蒸気が飽和状態になると、湿式脱硫装置の後段の水銀酸化装置の触媒層で結露が生じやすくなり、触媒の性能、耐久性の低下等が生じるおそれがある。この場合、水銀酸化装置の前段の湿式脱硫装置から排出される排ガスを水蒸気の飽和温度を超える温度に加熱し、加熱した排ガスを水銀酸化装置に導入することが好ましい。
【0012】
また、水銀酸化装置から未反応のハロゲン又はハロゲン化合物が排出されると、後流側の配管及び装置が腐食するおそれがあるから、水銀酸化装置から排出される排ガス中の水銀濃度又はハロゲン濃度に基づいてハロゲン又はハロゲン化合物の添加量を調整し、水銀酸化装置から未反応のハロゲン又はハロゲン化合物が排出されることを抑制することが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ベンチュリスクラバーを用いることなく、排ガス中の水銀の除去率を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態1のボイラプラントの概略図である。
【図2】図1の湿式脱硫装置の概略図である。
【図3】実施形態1のボイラプラントの変形例の概略図である。
【図4】本発明の実施形態2のボイラプラントの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施の形態に基づいて説明する。
(実施形態1)
図1に示すように、実施形態1のボイラプラントには、石炭を富酸素の燃焼用ガスにより燃焼させる酸素燃焼式のボイラ1が設けられている。ボイラ1で石炭を燃焼させて発生した水蒸気は、図示していない蒸気タービンに供給されて蒸気タービンを駆動するようになっている。
【0016】
ボイラ1から排出された排ガスは、燃焼に用いる酸素を希釈する循環排ガスと熱交換して循環排ガスを加熱するエアヒータ3に導かれるようになっている。エアヒータ3から排出された排ガスは、排ガス中の煤塵を捕集する集塵装置5に導かれるようになっている。集塵装置5の下流側の排ガス流路には、排ガスを分岐する分配器6が設けられている。分配器6には、分岐した循環排ガスが通流する排ガス循環ライン7が接続されている。排ガス循環ライン7には、循環用ファン9が設けられている。排ガス循環ライン7はエアヒータ3を介して、排ガス混合器11に接続されている。排ガス混合器11は、酸素混合器13で混合された石炭、例えば、微粉炭と酸素の混合物に循環排ガスを混合して酸素を希釈して燃焼用ガスを生成するようになっている。
【0017】
集塵装置5から排出され循環排ガスが分岐された残りの排ガスは、排ガス中の硫黄酸化物を除去する湿式脱硫装置15に導かれるようになっている。湿式脱硫装置15は、図2に示すように、例えば、縦型筒状の湿式脱硫装置15であり、底部側の入口ダクト17から排ガスを導入し、頂部側の出口ダクト19から排ガスを排出するようになっている。湿式脱硫装置15内には、排ガスに脱硫用吸収液21を噴霧するノズル23が設けられている。ノズル23には、脱硫用吸収液21をノズル23に循環させる循環ポンプ25が接続され、湿式脱硫装置15の底部に貯留された脱硫用吸収液21を循環させるようになっている。湿式脱硫装置15の脱硫用吸収液21が貯留される位置には、酸化用空気が供給され、硫黄酸化物と脱硫用吸収液21との反応により生じた生成物を酸化させるようになっている。湿式脱硫装置15から排出された排ガスは、排ガス中の二酸化炭素を回収する二酸化炭素回収装置27に導かれるようになっている。
【0018】
次に、実施形態1の特徴構成を説明する。湿式脱硫装置15の下流側には、湿式脱硫装置15から排出された排ガスを加熱する熱交換器33が設けられている。熱交換器33内には、熱楳が通流する熱楳流路34が設けられている。熱楳流路34は、エアヒータ3と集塵装置5の間に設けられた熱交換器35に熱楳を導き、熱交換器35を通流する排ガスにより加熱された熱楳を熱交換器33に導くようになっている。
【0019】
熱交換器33から排出された排ガスは、ハロゲン又はハロゲン化合物、例えば、塩素を添加する添加装置37に導かれるようになっている。添加装置37には、図示していない塩素の添加量を調整する調整装置が備えられている。添加装置37から排出された排ガスは、排ガス中の金属水銀と塩素を反応させて金属水銀を酸化水銀に酸化する触媒層を備える水銀酸化装置39に導かれるようになっている。なお、水銀を酸化する触媒層は、例えば、TiO、SiO、ZrO、Al及びゼオライトのうち少なくとも1つを担体とし、この担体上にPt、Ru、Rh、Pd、Ir、V、W、Mo、Ni、Co、Fe、Cr、Cu及びMnのうち、少なくとも1つを活性成分として担持したものを用いることができる
【0020】
水銀酸化装置39から排出された排ガスは、排ガス中の金属水銀の濃度を検出する検出装置41を通過して、二酸化炭素回収装置27に導かれるようになっている。検出装置41は、添加装置37の図示していない調整装置に接続され、検出した金属水銀濃度に基づいて塩素の添加量を調整するようになっている。二酸化炭素回収装置27は、圧縮装置43と、圧縮装置43から排出された排ガスが導かれる冷却装置45と、冷却装置45から排出された排ガスが導かれる圧縮装置47とにより構成されている。圧縮装置43は、導入された排ガスを圧縮するようになっている。冷却装置45は、圧縮装置43で圧縮された排ガスを冷却して排ガス中の水分を凝縮させるとともに、凝縮水に排ガス中の酸化水銀を吸収させるようになっている。圧縮装置47は、冷却装置45を通過した排ガスをさらに圧縮して二酸化炭素を液化して回収するようになっている。
【0021】
このように構成される実施形態1のボイラプラントの動作を説明する。酸素混合器13で混合された石炭と酸素の混合物は、排ガス混合器11に導入され、循環排ガスライン7から供給される循環排ガスと混合される。これにより、循環排ガスで酸素が希釈されて燃焼用ガスが生成される。酸素を希釈する循環排ガス量は、例えば、ボイラ1内の火炎温度が石炭を空気燃焼した場合の火炎温度になる範囲に調整され、例えば、排ガスの7〜8割を循環させて酸素を希釈する。
【0022】
ボイラ1から排出された排ガスは、エアヒータ3に導入され排ガス循環ライン7を通流する循環排ガスを熱交換により加熱する。エアヒータ3から排出された、例えば、160℃〜200℃に降温された排ガスは、集塵装置5に導入されて排ガス中の煤塵が除去される。集塵装置5から排出された排ガスは、分配器6により循環排ガスが分岐された後、湿式脱硫装置15に導入される。湿式脱硫装置15に導入された排ガスには、ノズル23から脱硫用吸収液21が噴霧される。脱硫用吸収液21として、例えば、炭酸カルシウム水溶液を用いると、排ガス中の硫黄酸化物、例えば、二酸化硫黄が脱硫用吸収液21に吸収されて亜硫酸に変換される。これにより、排ガス中の二酸化硫黄が除去される。脱硫用吸収液21中の亜硫酸は、脱硫用吸収液21中の炭酸カルシウムと反応して亜硫酸カルシウムに変換される。この亜硫酸カルシウムは、脱硫用吸収液21とともに湿式脱硫装置15の底部に溜まり、底部に供給された酸化用空気により酸化されて硫酸カルシウムに変換される。硫酸カルシウムは、湿式脱硫装置15の図示していない排出口から排出される。
【0023】
次に、実施形態1の特徴動作を説明する。湿式脱硫装置15で、例えば、70℃に降温した排ガスは、熱交換器33内を通流する熱楳との熱交換により排ガス中の水蒸気の飽和温度を超える温度に加熱される。これにより、水銀酸化装置39の触媒層で結露が生じることを抑制できる。熱交換器33に通流する熱楳は、熱楳流路34を循環して熱交換器35に導かれ、排ガスとの熱交換により加熱される。この際、熱楳との熱交換により熱交換器35から排出される排ガスは、例えば、90〜130℃に降温される。
【0024】
熱交換器33から排出された排ガスには、添加装置37で塩素が添加される。塩素が添加された排ガスは、水銀酸化装置39の触媒層の存在下で排ガス中の金属水銀が塩素により酸化され、水に溶けやすい酸化水銀に変換される。この際、湿式脱硫装置15から再放出された金属水銀も酸化水銀に変換される。水銀酸化装置39から排出された排ガスは、検出装置41を通過することで排ガス中の金属水銀濃度が検出される。この検出値に基づいて、水銀酸化装置39から排出される排ガス中の金属水銀濃度が、例えば、0.2μg/mN以下になるように塩素の添加量が調整される。これにより、過剰の塩素が添加されることを抑制できるので、水銀酸化装置39から排出される未反応の塩素を低減でき、水銀酸化装置39の下流側の配管及び装置等が塩素により腐食することを抑制できる。
【0025】
検出装置41を通過した排ガスは、二酸化炭素回収装置27の圧縮装置43に導入され、所定の圧力になるように圧縮される。圧縮された排ガスは、冷却装置45に導入され、排ガス中の水分が凝縮する温度に冷却される。この際、排ガス中の酸化水銀は水に溶けやすいので、凝縮水に吸収されて排ガスから除去される。冷却装置45から排出された排ガスは、圧縮装置47でさらに圧縮され、排ガス中の二酸化炭素が液化される。この場合、必要ならば冷却装置を設けて、二酸化炭素の液化を促進できる。これにより、ボイラプラントから排出される排ガスの二酸化炭素を低減できる。なお、酸化水銀を吸収した凝縮水は、冷却装置45から排出されて適宜処理される。
【0026】
また、冷却装置45に導入された排ガス中の酸化水銀を凝縮水に吸収させることで、例えば、冷却装置45内に付着する水銀が低減され、水銀による冷却装置45の腐食を抑制できる。つまり、金属水銀により腐食される金属、例えば、アルミニウム合金で冷却装置45を形成すると、アルミニウム合金に水銀が付着してアマルガム化してアルミニウム合金が腐食するから、冷却装置45の凝縮水に酸化水銀を吸収させることで、アルミニウム合金に水銀が付着して腐食することを抑制できる。
【0027】
なお、ボイラ1とエアヒータ3の間に脱硝装置を配置し、排ガス中の硫黄酸化物を除去する構成とすることができる。
【0028】
また、塩素分を含む石炭を燃焼すると、排ガス中に塩素が含まれ、この塩素により金属水銀を酸化水銀に変換できるが、実施形態1のように湿式脱硫装置15の下流側に水銀酸化装置39を配置すると、排ガス中の塩素が湿式脱硫装置15で除去されるので、実施形態1のように湿式脱硫装置15から排出された排ガスに塩素を添加することが好ましい。
【0029】
また、添加装置37から添加されるハロゲンは塩素に限定されず、臭素等を排ガスに添加できる。また、ハロゲン化水素等、金属水銀を酸化水銀に酸化できるハロゲン化合物を排ガスに添加できる。
【0030】
また、検出装置41は、排ガス中の金属水銀濃度を検出させているが、これに代えて、排ガス中の塩素濃度を検出し、検出した塩素濃度に基づいて添加装置37の塩素の添加量を調整できる。この場合、予め排ガス中の塩素濃度と水銀酸化特性との関係を測定し、水銀酸化装置39から排出される排ガス中の金属水銀濃度が0.2μg/mN以下になる塩素濃度を求め、求めた塩素濃度と検出された塩素濃度に基づいて塩素の添加量を調整する構成とすることができる。
【0031】
また、集塵装置5から排出された排ガスを分岐する構成に代えて、湿式脱硫装置15から排出された排ガスを分岐する構成とすることができる。
【0032】
また、熱交換器35の位置は、実施形態1の位置に限定されず、例えば、図3に示すように、湿式脱硫装置15の上流側であって、分配器6(排ガス分岐部)の下流側に配置することができる。
【0033】
このように、実施形態1によれば、水銀酸化装置39から排出される排ガス中の水分を凝縮させ、その凝縮水に排ガス中の酸化水銀を吸収させて排ガスから除去することができる。特に、二酸化炭素回収装置27の上流側で金属水銀を水に溶けやすい酸化水銀に変換しているから、二酸化炭素回収装置27の圧縮装置43と冷却装置45を水銀除去装置として利用でき、圧力損失が大きいベンチュリースクラバを用いることなく、水銀の除去率を向上できる。
【0034】
(実施形態2)
図4を用いて、実施形態2のボイラプラントを説明する。実施形態2が実施形態1と相違する点は、湿式脱硫装置15とは別の湿式脱硫装置51を水銀酸化装置39の後段に配置している点である。その他の構成は、実施形態1と同一であるから、同一の符号を付して説明を省略する。
【0035】
後段の湿式脱硫装置51は、排ガスに脱硫用吸収液を噴霧して接触させ、排ガス中の水分の凝縮水と酸化水銀を脱硫用吸収液に吸収させるようになっている。つまり、脱硫用吸収液に排ガス中の水分の凝縮水が吸収されて脱硫用吸収液と凝縮水の混合液となり、この混合液に排ガス中の酸化水銀が吸収されて、排ガスから酸化水銀が除去される。
【0036】
これによれば、水銀除去装置として、湿式脱硫装置51を使用できるので、圧力損失の大きなベンチュリスクラバーを用いることなく、排ガス中の水銀の除去率を向上できる。つまり、湿式脱硫装置一台では、硫黄酸化物を吸収して発生した亜硫酸により、脱硫用吸収液に吸収させた酸化水銀が金属水銀に還元されて再放出するから水銀の除去率が悪い。特に、排ガスを循環させる酸素燃焼の場合、排ガスとともに排ガス中の水分して排ガスの水分濃度が高くなり湿式脱硫装置の温度が上がる等の理由により、湿式脱硫装置から再放出する金属水銀が増加する。そこで、水銀酸化装置39の前段の湿式脱硫装置15で排ガス中の硫黄酸化物のほとんどを除去し、水銀酸化装置39の後段の湿式脱硫装置51の脱硫用吸収液に吸収される硫黄酸化物濃度を低減することで、湿式脱硫装置51で吸収した酸化水銀が再放出する現象を抑制でき、湿式脱硫装置を水銀除去装置に使用できる。
【0037】
なお、湿式脱硫装置51は、湿式脱硫装置15と同じ構成の湿式脱硫装置を用いることができる。
【符号の説明】
【0038】
1 ボイラ
5 集塵装置
15 湿式脱硫装置
27 二酸化炭素回収装置
33 熱交換器
37 添加装置
39 水銀酸化装置
41 検出装置
43 圧縮装置
45 冷却装置
51 湿式脱硫装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
石炭を富酸素の燃焼用ガスにより燃焼させる酸素燃焼式のボイラと、該ボイラから排出される排ガス中の煤塵を捕集する集塵装置と、該集塵装置から排出される排ガス中の硫黄酸化物を除去する湿式脱硫装置と、該湿式脱硫装置から排出される排ガスにハロゲン又はハロゲン化合物を添加する添加装置と、該添加装置から排出される排ガス中の水銀を前記ハロゲン又は前記ハロゲン化合物と反応させて酸化する触媒層を備える水銀酸化装置と、該水銀酸化装置から排出される排ガス中の水分を凝縮させ、少なくとも凝縮水に酸化水銀を吸収させて排ガスから除去する水銀除去装置と、該水銀除去装置から排出される排ガス中の二酸化炭素を回収する二酸化炭素回収装置を備えてなるボイラプラント。
【請求項2】
請求項1に記載のボイラプラントにおいて、
前記水銀除去装置は、排ガスを圧縮する圧縮装置と、該圧縮装置で圧縮された排ガスを冷却して排ガス中の水分を凝縮させる冷却装置を備え、該冷却装置で凝縮させた凝縮水に酸化水銀を吸収させて排ガスから除去することを特徴とするボイラプラント。
【請求項3】
請求項1に記載のボイラプラントにおいて、
前記水銀除去装置は、前記湿式脱硫装置と別に備えられる他の湿式脱硫装置であり、該他の湿式脱硫装置は、脱硫用吸収液と排ガスを接触させ、排ガス中の水分の凝縮水と脱硫用吸収液の混合液に酸化水銀を吸収させて排ガスから除去することを特徴とするボイラプラント。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載のボイラプラントにおいて、
前記水銀酸化装置の上流側に前記排ガスを加熱する加熱装置が備えられ、該加熱装置で加熱された排ガスを前記水銀酸化装置に導入することを特徴とするボイラプラント。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載のボイラプラントにおいて、
前記水銀酸化装置から排出される排ガス中の水銀濃度又はハロゲン濃度を検出する検出装置と、該検出装置の検出値に基づいて前記ハロゲン又は前記ハロゲン化合物の添加量を調整する調整装置を備えてなることを特徴とするボイラプラント。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−194286(P2011−194286A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−61420(P2010−61420)
【出願日】平成22年3月17日(2010.3.17)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成21年度、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構委託研究、産業活力再生特別措置法第30条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000005441)バブコック日立株式会社 (683)
【Fターム(参考)】