説明

ボタン穴かがりミシン

【課題】ボタン穴かがり縫いの作業性を向上できるボタン穴かがりミシンを提供する。
【解決手段】ボタン穴かがりミシン(20)は、縫い針(41)を支持した状態で上下動する針棒(40)と、上下方向及び水平方向に移動可能に配設され、下降位置において被縫製物の縫い位置近傍を押さえる布押さえ(70)と、前記針棒を旋回させる旋回手段(旋回モータ84)と、縫い糸を交換する際に前記針棒を旋回手段により180°旋回させる指令信号を出力する操作手段(交換モードキー90d)を備えたボタン穴かがりミシンにおいて、前記操作手段が操作される毎に、前記針棒を180°反転させるように前記旋回手段を制御する制御手段(CPU13)を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボタン穴の周縁部にかがり縫いを行なうためのボタン穴かがりミシンに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に被縫製物である布に直線状やいわゆる鳩目状の切込み(ボタン穴)を設け、このボタン穴の周囲に一連のかがり縫いを行なうことでボタン穴かがり縫いを形成するミシン(ボタン穴かがり縫いミシン)が知られている。
このミシンは、通常、被縫製物にボタン穴を形成するために、被縫製物を上下方向から挟む位置に配設される一対の布切りメス及びメス受け、被縫製物を上面に載置した状態で水平面内の任意の位置に移動可能な布送り台、被縫製物を布送り台上面に押さえ付けると共に、布送り台と一体に移動する布押さえ等を備える。
【0003】
図9に示すように、前記布押さえ100は、押さえ腕101及び、この押さえ腕の一方の端部側に配設される押さえ足102を備えている。押さえ腕101の他方側の端部は、複数の連結部材103を介して、布送り台104下方のエアシリンダ105に連結しており、エアシリンダ105を駆動させることで押さえ足102を略上下方向に移動可能な構造となっている。
そして、被縫製物を布押さえ100により布送り台104上に保持した状態で、例えばミシンアーム側に取り付けられたメス受け及び布切りメスのいずれか一方を、ミシン本体側に取り付けられた他方に向けて下降させることで、被縫製物にボタン穴を形成する構造となっている。
また、最近は、このメス受けまたは布切りメスの駆動を従来のソレノイド等のアクチュエータに代えて、パルスモータ等のモータにより行う構成のボタン穴かがりミシンも知られている。
また、鳩目穴を持つボタン穴の周囲にかがり縫い目を形成することが可能なボタン穴かがりミシンにおいては、鳩目部の周囲にかがり縫い目を形成するときに針棒を旋回させながらかがり縫いを形成するミシンが知られているが、このようなミシンにおいては縫い糸を交換する場合に、この針棒旋回機能を利用して針の目穴の糸挿入方向が作業者側に向くように旋回させる操作手段を備え、作業者がこの操作手段を操作することにより縫い糸の交換時に針を旋回させることが行われていた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、一般的に布押さえは、布切りメスやメス受けをその左右両側から挟む位置に配設されるため、形成するボタン穴の形状に合わせて布切りメスやメス受けを交換する際に、この布押さえが邪魔になり、交換作業の効率を低下させるという問題があった。
また、メス受けまたは布切りメスの駆動を布切りモータにより行う構成のミシンにおいては、上昇位置にあるメス受けまたは布切りメスを着脱する際にも布切りモータが通電されており、ミシンの電源を切断しない限り装着位置を確認するためにメス受けまたは布切りメスを手動で動かすことができず、これも交換作業の効率を低下させる原因となっていた。
さらに、縫い糸を交換する場合には、新しい縫い糸の先端を針の目穴に通す方法の他に、それまで使用していた縫い糸を縫い針の針穴に通したまま糸駒から針に連なる経路上の、例えば糸駒付近で切断し、この切断部と新しい縫い糸を結び、それまで使用していた糸の切断した部分の他方側の端部を引っ張ることにより、新しい糸を針の目穴に通して縫い糸を交換する方法がある。しかし、従来、縫い糸を交換する際に行われていた針棒の旋回は、針の目穴の糸挿入方向が作業者側に向くように針棒を旋回させるのみであったので、前者の方法で糸を交換する場合は都合が良いが、後者の方法で糸を交換する場合には作業者と反対の方向に糸を引っ張らねばならず極めて作業性の悪いものとなっていた。
【0005】
本発明の課題は、上述の事情を考慮したものであり、ボタン穴かがり縫いの作業性を向上できるボタン穴かがりミシンを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するため、請求項1記載のボタン穴かがりミシン(20)は、縫い針(41)を支持した状態で上下動する針棒(40)と、上下方向及び水平方向に移動可能に配設され、下降位置において被縫製物の縫い位置近傍を押さえる布押さえ(70)と、前記針棒を旋回させる旋回手段(旋回モータ84)と、縫い糸を交換する際に前記針棒を旋回手段により180°旋回させる指令信号を出力する操作手段(交換モードキー90d)を備えたボタン穴かがりミシンにおいて、前記操作手段が操作される毎に、前記針棒を180°反転させるように前記旋回手段を制御する制御手段(CPU13)を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、縫い糸を交換する際に、操作手段を操作する毎に針棒を180°反転させることができるので、糸の交換方法に応じた方向に針を向けることができ、糸交換作業が効率的に行える。すなわち、新しい縫い糸の先端を針の目穴に通して縫い糸を交換する場合は、針の目穴の糸挿入側を作業者の方向に向けて糸通しを行うことができ、それまで使用していた糸に新しい糸を結んで縫い糸を交換する場合は、針の目穴の糸挿入側とは反対側、すなわち引っ張る糸が出てくる側を作業者の方向に向けた状態で糸を引っ張ることができ糸の交換が容易に行える。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】実施の形態にかかるミシンの要部側面図である。
【図2】実施の形態にかかるミシンの要部側面図である。
【図3】実施の形態にかかるミシンの要部側面図である。
【図4】実施の形態にかかるミシンの要部正面図である。
【図5】ミシンの構造を示すブロック図である。
【図6】操作パネルを示す図面である。
【図7】ミシンの制御方法を示すフローチャートである。
【図8】ミシンの制御方法を示すフローチャートである。
【図9】一般的な布押さえ及び布送り台を示す要部側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図を用いて本発明にかかるボタン穴かがりミシン20について説明する。
なお、図1及び図4に示すように、以下の説明において上下方向とは針棒40の軸方向を指し、前後方向とは布送り方向を指し、左右方向とは水平面内で、前後方向に直交する方向を指す。
【0010】
図1及び図5に示すように、穴かがりミシン20(以降、単に「ミシン20」ともいう。)はミシンフレーム30、針棒40、布切り手段50、送り台60、布押さえ70、各種アクチュエータからなる駆動部80を備え、制御装置(制御手段)10が駆動部80の各種アクチュエータの駆動を制御する構造となっている。
ミシンフレーム30は、略矩形の箱状をなすベッド部31、ベッド部31の後方側から上方に起立する縦胴部32、縦胴部32の上部側から前方に延出するミシンアーム33等から概略構成される。そして、このミシンフレーム30の内部に、ミシン20を構成する各種機構(針棒40、布切り手段50、送り台60、布押さえ70等)を駆動させるための駆動部80(後述する主軸モータ81、X軸モータ82等)を格納している。なお、駆動部80による各種機構の具体的な駆動方法については周知の技術であるため詳しい説明を省略する。
【0011】
針棒40は、ミシンアーム33の先端部分に上下方向に沿って配設され、その下端部分において縫い針41を支持し、縫い針41と一体に上下動、左右方向への揺動、軸回りの回動可能となっている。
【0012】
布切り手段50は、布にボタン穴を形成するために設けられ、可動部材としてのメス受け51と、固定布切り部材としての布切りメス52を備える。
メス受け51は、ミシンアーム33の下面側から下方に突出して配設され、ミシンアーム33内部に格納されている布切りモータ85により、上下方向に移動可能となっている。
また、メス受け51は、形成するボタン穴の形状に対応して複数用意され、ミシンアーム33側に脱着可能となっている。なお、符号51aはメス受け51を取り付けるための取付け用ねじである。
【0013】
布切りメス52はベッド部31に、メス受け51に対向して配設される。これらメス受け51と布切りメス52の間に布を配置した状態で、メス受け51を下方に移動させ、布切りメス52と合致させることで布に所定の形状のボタン穴を形成することができる。
【0014】
送り台60は、その上面に布を載置した状態で、布を前後左右方向の任意の位置に移動させるための装置である。
送り台60は薄い矩形状の箱体をなし、後述するX軸モータ82、Y軸モータ83に連結され、制御装置10がこれらモータの駆動を制御することにより任意の位置に移動する。これにより送り台60に載置した布の所定位置にボタン穴を形成でき、また、ボタン穴かがり縫い目を形成することができる。
また、送り台60の上面には右送り板61及び左送り板62が、前後方向に延在するミシンの軸線(縫い針41の上下軌道を通った前後方向の線)を中心にして、左右対称に配設されている。
【0015】
布押さえ70は、右布押さえ71と左布押さえ72を備え、これら右布押さえ71及び左布押さえ72により布を送り台60に押さえつけると共に、送り台60と一体に移動する部材である。なお、右布押さえ71と左布押さえ72はミシンの軸線を中心にして左右に対向して配置され、軸線に対して対称な形状を備えるので、以下の説明においては、右布押さえ71のみについて説明する。
右布押さえ71は、押さえ腕71a及び押さえ足71bを備える。
押さえ腕71aは、送り台60に配設される支持部63に軸支される。そして、押さえ腕71aの一方の端部において略矩形状の板体である押さえ足71bを軸支し、他方の端部において、複数の連結部材を介して、送り台60下方側に配設される布押さえシリンダ86に連結している。
【0016】
従って、布押さえシリンダ86を駆動させることで、右布押さえ71を、軸63aを中心として布送り面に直交する平面内で回転させることができる。
なお、右布押さえ71を最も下方側に移動させた状態、即ち、図2において軸63aを中心として押さえ腕71aを反時計回りに回転させた状態において、押さえ足71bと布送り台60上面の右送り板61とが当接する構造となっている。
布押さえ70がこのような構造を備えるので、ボタン穴形成の際に、布のボタン穴が形成される部分の左右両側を押さえることができ、また、ボタン穴かがり縫いの際に、形成されたボタン穴の左右両側を押さえた状態で、布送り台60と一体に移動することができる。
【0017】
次に、図5のブロック図を参照して制御装置10の構成について説明する。
制御装置10は、ROM11、RAM12、CPU13等からなる。
制御装置10にはインターフェイス(I/F)14を介して操作パネル90、押さえスイッチ91、スタートスイッチ92が接続され、また、主軸モータ81、X軸モータ82、Y軸モータ83、旋回モータ(旋回手段)84、布切りモータ(布切り駆動手段)85、布押さえシリンダ86等からなる駆動部80の各種アクチュエータが接続されている。
【0018】
また、インターフェイス14と主軸モータ81、X軸モータ82、Y軸モータ83、旋回モータ84、布切りモータ85との間には、各モータを駆動させるための主軸モータ駆動回路81a、X軸モータ駆動回路82a、Y軸モータ駆動回路83a、旋回モータ駆動回路84a、布切りモータ駆動回路85aが介在し、インターフェイス14と布押さえシリンダ86との間には布押さえシリンダ駆動電磁弁86aが介在している。
また、制御装置10にはインターフェイス14を介してX軸モータ82、Y軸モータ83、旋回モータ84、布切りモータ85のそれぞれの原点位置を検出するためのX軸原点センサ82b、Y軸原点センサ83b、旋回原点センサ84b、布切り原点センサ85bが接続されている。
【0019】
ROM11は、駆動部80の各種アクチュエータの駆動を制御するための駆動制御プログラムを格納している。
RAM12は、予め設定されている各縫い形状(縫いパターン)に対応した、後述する複数のパターンデータを格納し、また、操作パネル90でパターンデータが変更された場合は、変更されたパターンデータを記憶する。また、RAM12は、前記駆動制御プログラムに基づいてCPU13により算出された、例えば縫い目に関する布送り量等に関するデータ(縫い目データ)を一時的に記憶する。
パターンデータとは、例えば、縫い長さ、針数等のボタン穴かがり縫いを形成する場合に必要となる一連の設定データを指す。なお、これらデータは操作パネル90において任意に変更可能である。
【0020】
CPU13は、設定されたパターンデータ及び駆動制御プログラムに基づいて各針落ち点における布送り量や針の旋回量などからなる縫い目データを算出する。そして、この縫い目データに基づき、各駆動回路を介して各モータ等の駆動を制御する。
また、図示はしないが、CPU13は、例えば糸切りやルーパー等、ミシン20の他の構成部品の駆動制御や、これら構成部品が正常に作動しているか否かの確認等も行なう。
操作パネル90には、図6に示すように、各縫いパターン毎に決められているパターンナンバーを選択し、表示するためのパターンナンバー操作部90a、選択された縫いパターンのパターンデータを表示し、必要であればパターンデータの変更を行うためのデータ操作部90b、ボタン穴かがり縫いに関する各種データ設定後、準備状態にするための準備キー90c、メス受け51や糸Sの交換時に選択される交換モードキー90dが配設される。
【0021】
押さえスイッチ91は布押さえ70を上下動させる際に選択されるスイッチである。
スタートスイッチ92はボタン穴かがり縫いを実行する際に選択されるスイッチである。
主軸モータ駆動回路81aは主軸モータ81の駆動を制御することで針棒40、ルーパーの駆動機構を制御するために設けられる。なお、主軸モータ81には針位置を検出するための検出器(図示せず)が設けられているので、後述するように、CPU13により算出された縫い目データに基づき、針位置に同期した送り台60の移動や、針棒40及びルーパーの旋回が可能となっている。
【0022】
X軸モータ駆動回路82aとY軸モータ駆動回路83aはそれぞれX軸モータ82とY軸モータ83の駆動を制御することで、送り台60のX軸方向(左右方向)とY軸方向(前後方向)の移動を制御するために設けられる。
旋回モータ駆動回路84aは、例えば、鳩目穴かがり縫い目の鳩目部分など、縫い目を放射状に形成する際に、針棒40及びルーパーを回転させるために、旋回モータ84の駆動を制御するために設けられる。
布切りモータ駆動回路85aは布切りモータ85の駆動を制御することでメス受け51を上下動するために設けられる。布切りモータ駆動回路85aは、CPU13から出力されるモータ電流オフ信号を受け、布切りモータ85への供給電流を遮断(オフ)する。このように布切りモータ85への電流が遮断された場合は、布切りモータ85に連結するメス受け51を手動により上下動させることができるようになる。
なお、図1〜図4に示すプーリ87は、この時メス受け51を上下動させるために設けられており、図示しない連結機構によりメス受け51に連結され、布切りモータ85への供給電流が遮断されているときに手廻しすることによりメス受け51を上下動させることができる。
【0023】
次に、図7及び図8のフローチャートを参照して、本実施の形態にかかる制御装置10によるミシンの制御方法について説明する。
まず、図7に示すメインルーチンにおいて、操作パネル90のパターンナンバー操作部90a及びデータ操作部90bで、ボタン穴かがり縫いに必要となる各種データを設定する(ステップS100)。
次に準備キー90cの操作を監視し(ステップS101)、ここでYesの場合、つまり準備キー90cがオン操作されると、布押さえ70が下降し、布送り台60上面に当接した状態となり(ステップS102)、ステップS103に移る。Noの場合は、ステップS100に戻り、再びデータ設定可能となり、準備キー90cがオン操作されるまで待機状態となる。
【0024】
ステップS103において、各原点センサにより布送り台60、針棒40、ルーパー、メス受け51などの原点位置を検出するための原点検索が行われる。
そして、ステップS104において、布を送り台60にセットし易いように、送り台60を、前方に設定されているいわゆるセット位置まで移動させ、ステップS105において、布押さえ70を上昇させる。なお、この状態では、図1に示すようにミシン20を側面視した場合にメス受け51は上昇位置にあり、布押さえ70の押さえ腕71aがメス受け51、特に取付けねじ51aに重なった状態となっている。
ステップS106において、交換モードキー90dの操作を監視し、Noの場合、つまり交換モードキー90dがオン操作されず、布切り台や縫い針41の交換の必要がない場合はステップS108に移る。また、Yesの場合、つまり交換モードキー90dがオン操作された場合は、図8に示す交換モードサブルーチンに移る(ステップS107)。
【0025】
交換モードサブルーチンでは、図2に示すように、まず布押さえ70が下降し(ステップS200)、送り台60が、後方に設定されている原点位置まで移動すると共に、針棒40及びルーパーが原点位置から軸回りに略180°旋回し(ステップS201)、布切りモータ85の電流をオフにする(ステップS202)。そして、交換モードキー90dの操作を監視する(ステップS203)。
この間に、作業者はメス受け51とともに縫い針41や縫い糸Sを交換する。なお、布切りモータ85の電流はオフになっているので、上昇位置にあるメス受け51を、プーリ87を手廻しすることにより、手動で上下動させ、メス受け51の装着位置あるいは布切り位置を確認することができる。
交換作業終了中、所望の縫い糸の変更方法に対応させるために作業者が針棒40の向きを再び旋回させたい場合は、ステップS203においてYes、つまり交換モードキー90dをオン操作する。また、No、つまり針棒40の向きを旋回させる必要がない場合交換モードキー90dはオン操作されず、ステップS207に移る。
【0026】
そして、ステップS204において、針棒40が原点位置にあるか否かを検出する。
ここでYes、つまり針棒40が原点位置にある場合は、針棒40を軸回りに略180°旋回させる(ステップS205)。そしてNo、つまり針棒40が原点位置になく、180°旋回した位置にある場合は針棒40を原点位置まで旋回させる(ステップS206)(図3を参照)。
このように、ステップS203において交換モードキー90dをオン操作する毎に針棒40を略180°反転させる指令信号が出力され、それによって針棒40が180°反転するので、作業者は縫い針41の交換や、糸Sの交換を速やかに行うことができる。
【0027】
ステップS207では準備キー90cの操作が監視され、No、つまり準備キー90cがオン操作されない場合はステップS203に戻り、準備キー90cがオン操作されるまで待機状態となる。
そしてYes、つまり準備キー90cがオン操作されると布切りモータ85に電流が供給され(ステップS208)、交換後のメス受け51に対する原点位置の検索が行われる(ステップS209)。
そして、送り台60を再びセット位置まで移動させると共に、針棒40及びルーパーを原点位置まで旋回させる(ステップS210)。なお、ステップS210において、針棒40及びルーパーが原点位置にある場合は旋回されない。
その後、布押さえ70を上昇させることで(ステップS211)、交換モードサブルーチンが終了し、ステップS106にもどる。
【0028】
そして、上述のように、ステップS106においてNo、つまり交換モードキー90dがオン操作されない場合は、ステップS108において押さえスイッチ91の操作を監視する。そして、No、つまり押さえスイッチ91がオン操作されない場合はステップS106に移り、押さえスイッチ91がオン操作されるまで待機状態となり、Yes、つまり押さえスイッチ91がオン操作されると布押さえ70が下降し、布を押さえ台に押さえつける(ステップS109)。なお、この時点までにセット位置にある送り台60に布をセットしておく。
この時点で布をセットし直したい場合はステップS110においてYes、つまり押さえスイッチ91がオン操作され、布押さえ70が上昇し(ステップS111)、ステップS106に戻る。
そして、ステップS110においてNo、つまり押さえスイッチ91がオン操作されない場合は、スタートスイッチ92の操作を監視する(ステップS112)。
【0029】
ステップS112においてNo、つまりスタートスイッチ92がオン操作されない場合は、ステップS110に戻り、スタートスイッチ92がオン操作されるまで待機状態となり、Yes、つまりスタートスイッチ92がオン操作された場合は、メス受け51を下降させ、送り台60に押さえつけられた状態の布にボタン穴を形成し、ボタン穴かがり縫いを実行し(ステップS113)、ボタン穴かがり縫い完了後ステップS114に移る。
ステップS114において、送り台60、針棒40、ルーパーなどはボタン穴かがり縫いが完了した時点の位置に存在しているので、送り台60をセット位置に移動させると共に、針棒40とルーパーを原点位置に移動させる。
そして、布押さえ70を上昇させ(ステップS115)、ステップS106に戻る。
以上でミシンの制御装置10による一連の制御が終了する。
【0030】
本実施の形態にかかるボタン穴かがりミシン20によれば、メス受け51を交換する際に、交換モードキー90dをオン操作するだけで布押さえ70が下方、つまり、側面視した場合に布押さえ70がメス受け51、特に取付け用ねじ51aと重ならない位置に移動すると共に、送り台60が原点位置まで移動し、送り台60に配設される布押さえ70がメス受け51から離れる方向に移動する。従って、メス受け51の交換時に布押さえ70が邪魔にならず、交換作業が容易となる。
また、布押さえ70が下降すると共に、送り台60の原点位置まで移動することから、布押さえ70が縫い針41から離れる位置に移動することになり、糸交換作業や糸通し作業が容易となる。
また、布押さえ70を移動させるための新たな装置を設ける必要がなく、通常のボタン穴かがり縫いミシンが備えている一般的な送り台60を利用して布押さえ70をメス受け51から離すことができる。従って、ミシンの製造コストを抑えることができる。
【0031】
また、メインルーチンでの交換モードキー90dのオン操作により針棒40が軸回りにほぼ180°旋回する。従って、通常ミシン20の前方に位置している作業者は、例えば縫い針41に糸Sを通す際に、手前側から通すことが可能となり、糸交換作業が容易となる。
また、交換モードサブルーチンでの交換モードキー90dのオン操作毎に、針棒40を軸回りに略180°反転させることができる。従って、例えば、糸Sを交換する際に、それまで使用していた糸Sを縫い針41に通したままの状態で、その糸Sの経路上の、例えば糸駒付近を切断し、切断した部分と新しい糸Sの端部とを結び、それまで使用していた糸Sの切断した部分の他方側の端部を引っ張ることで新しい糸Sを縫い針41に通す場合でも、例えば、縫い針41を所望の向きに旋回させることにより縫い糸Sを引っ張る方向を引っ張りやすい方向(図3の矢印A方向)が可能となり、糸交換作業の作業性を向上させることができる。
【0032】
また、布切りモータ85の電流オフにより、メス受け51は手動で上下動可能となるので、例えばメス受け51を布切りメス52に近い位置まで手動で下降させることで、布切りメス52との位置の確認ができ、ボタン穴を精度良く形成することができる。
【0033】
なお、本実施の形態においては、ボタン穴かがりミシン20が送り台60を備え、この送り台60と共に布押さえ70が移動するものとしたが、これに限らず、送り台60を備えないものとしても良い。この場合は、メス受け51の交換時に布押さえ70が下方に移動することで交換作業の作業性を向上させることができる。
また、本実施の形態においては、可動部材としてのメス受け51と、固定部材としての布切りメス52が配設された場合について説明したが、これに限らず、可動部材としての布切りメス52と、固定部材としてのメス受け51とが配設されるものとしても良い。
【0034】
また、メス受け51の交換時に布押さえ70が下降し、さらに送り台60が原点位置に移動するとき、あるいは布切りモータ85への通電を遮断するときに、交換モードキー90dを操作する毎に針棒40を180°反転させるものとしたが、これに限らず、布押さえ70や送り台60の移動および、布切りモータ85への通電を遮断せず、交換モードキー90dを操作する毎に針棒40が180°反転するのみとしてもよい。
また、メス受け51の交換時に布押さえ70が下降し、さらに送り台60が原点位置に移動するものとしたが、これに限らず、例えば、布押さえ70や送り台60が移動せずに、布切りモータ85の電流オフにより、メス受け51を手動で上下動可能となるものとしても良く、また、この際に針棒40を旋回させることが可能な構造を備えているものとしてもよい。
また、本発明にかかるボタン穴かがりミシンにおいては、ボタン穴かがり縫いの順序を問わない。つまり、布にボタン穴を形成した後、ボタン穴の周囲にかがり縫いを施すいわゆる先メスか、布の所定の場所にかがり縫いを施した後、ボタン穴を形成するいわゆる後メスかを問わない。
また、制御装置10によるボタン穴かがりミシン20の制御方法は発明の実施の形態に示したものに限定されず、本発明の趣旨の範囲内で変更可能である。
【符号の説明】
【0035】
10 制御手段(CPU)
20 ボタン穴かがりミシン
33 ミシンアーム
40 針棒
41 縫い針
50 布切り手段
51 メス受け
52 布切りメス
60 送り台
70 布押さえ
82 X軸モータ
83 Y軸モータ
84 旋回手段(旋回モータ)
85 布切り駆動手段(布切りモータ)
86 布押さえシリンダ
90d 操作手段(交換モードキー)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
縫い針を支持した状態で上下動する針棒と、上下方向及び水平方向に移動可能に配設され、下降位置において被縫製物の縫い位置近傍を押さえる布押さえと、前記針棒を旋回させる旋回手段と、縫い糸を交換する際に前記針棒を旋回手段により略180°旋回させる指令信号を出力する操作手段を備えたボタン穴かがりミシンにおいて、
前記操作手段が操作される毎に、前記針棒を略180°反転させるように前記旋回手段を制御する制御手段を備えることを特徴とするボタン穴かがりミシン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−115652(P2011−115652A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−62125(P2011−62125)
【出願日】平成23年3月22日(2011.3.22)
【分割の表示】特願2001−115723(P2001−115723)の分割
【原出願日】平成13年4月13日(2001.4.13)
【出願人】(000003399)JUKI株式会社 (1,557)
【Fターム(参考)】