説明

ボンダーキャップ

【課題】ワイヤハーネスに組み付けた際のワイヤハーネスの外形寸法の増大を抑止して、ワイヤハーネスの車両搭載性を向上させることができるボンダーキャップを提供すること。
【解決手段】有底筒状に形成されて電線束のボンダーに被冠装着されるボンダーキャップのキャップ本体10の外周の周方向に離間した2箇所以上に、キャップ本体10の肉厚を薄肉化する溝11,12を、キャップ本体10の中心軸線に沿って形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両等に配索されるワイヤハーネス上のボンダーに被冠装着されるボンダーキャップに関する。
【背景技術】
【0002】
図7〜図9は、従来のボンダーキャップを示したものである。
ここに示したボンダーキャップ100は、下記特許文献1に開示されたもので、キャップ本体110と、ハーネス固定部120と、を備える。これらのキャップ本体110とハーネス固定部120は、絶縁性樹脂により一体形成される。
【0003】
キャップ本体110は、一端が閉塞され他端が開放した有底筒状に形成されて、ワイヤハーネスの幹線から分岐した電線束130のボンダー131に被冠装着される。ここで、ボンダー131とは、電線束130を構成している複数本の電線132の導体端部132a同士を溶接して一体化させた集中溶接端の呼称である。
【0004】
キャップ本体110は、ボンダー131が周囲の金属などと不用意に接触しないように収容する。従来の場合、キャップ本体110は、図9に示すように、横断面形状が、略真円形に形成されている。
【0005】
また、図7に示したキャップ本体110は、先端側に、治具挿通穴111が直径方向に貫通形成されている。この治具挿通穴111は、図7に示すように、ワイヤハーネスの布線処理時に、ボンダーキャップ100を布線治具160に仮止めするために使用される。
【0006】
ハーネス固定部120は、キャップ本体110の開放端縁の一部の領域からキャップ本体110の中心軸線方向(図7の矢印X1方向)に沿って舌状に延出した部位である。このハーネス固定部120は、キャップ本体110がボンダー131から脱落することを防止するために、粘着テープ140により電線束130に結束される。
【0007】
このようなボンダーキャップ100は、通常、構成する電線132の本数が異なる多種のボンダー131に共通使用できるように、口径Dに余裕を持たせている。そのため、構成する電線132の本数が少ないボンダー131にボンダーキャップ100を装着した場合には、図10に示すように、収容する電線束130の外形がキャップ本体110の口径Dよりも顕著に小さくなり、図11に示すように電線束130の周囲に大きな空隙170が残ってしまうことが少なくない。
【0008】
ボンダーキャップ100が装着された電線束130は、図12に示すように、キャップ本体110を粘着テープ90により幹線のワイヤハーネス180に固定することで、幹線のワイヤハーネス180に一体化された状態にして、幹線のワイヤハーネス180と一体に配索される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平9−205719号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところが、車両等に配索されるワイヤハーネスの場合、配索スペースが制限されることが多く、ワイヤハーネスの外径をできるだけ小さく製造することが重要な課題となる。
【0011】
しかし、従来のボンダーキャップ100は、キャップ本体110が単純な円筒体で、剛性が高い。そのため、図12に示したようにキャップ本体110を粘着テープ90で幹線のワイヤハーネス180に締結した際、図11に示したようにキャップ本体110内に大きな空隙170が残っている状態でもキャップ本体110が潰れ難い。
【0012】
従って、幹線のワイヤハーネス180に固定されたキャップ本体110は、図13に示したように、電線132の周囲に大きな空隙170を残した状態にしか潰れず、ボンダーキャップ100を組み付けたワイヤハーネス180大径化により、ワイヤハーネス180における車両搭載性の低下という問題が生じていた。
【0013】
そこで、本発明の目的は、上記課題を解消することに係り、ワイヤハーネスに組み付けた際のワイヤハーネスの外形寸法の増大を抑止して、ワイヤハーネスの車両搭載性を向上させることができるボンダーキャップを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の前述した目的は、下記の構成により達成される。
(1)一端が閉塞され他端が開放した有底筒状に形成されて電線束のボンダーに被冠装着されるキャップ本体と、前記キャップ本体の開放端縁の一部の領域から前記キャップ本体の中心軸線方向に沿って舌状に延出して前記電線束に結束されるハーネス固定部と、を備えるボンダーキャップであって、
前記キャップ本体の外周の周方向に離間した2箇所以上に、前記キャップ本体の肉厚を薄肉化する溝を、前記キャップ本体の中心軸線に沿って形成したことを特徴とするボンダーキャップ。
【0015】
(2)前記溝が、前記キャップ本体の中心を通る線分上に対向する位置を対にして、複数対形成されていることを特徴とする上記(1)に記載のボンダーキャップ。
【0016】
上記(1)の構成によれば、ボンダーに被冠装着されるキャップ本体は、溝の位置で可撓性が高くなり、テープ巻きによって作用する締め付け力によって、周壁が偏平形状に潰れ易い。
【0017】
そのため、当該ボンダーキャップを装着した電線束を幹線のワイヤハーネスの外周にテープ巻き等により固定する場合には、キャップ本体の内側に無駄な空隙が残らない状態にキャップ本体の周壁がテープ巻きによって潰れて、キャップ本体の外径をボンダーの外形寸法に相応して縮減することができる。
【0018】
従って、ワイヤハーネスに組み付けた際のワイヤハーネスの外形寸法の増大を抑止して、ワイヤハーネスの車両搭載性を向上させることができる。
【0019】
また、上記(2)の構成によれば、テープ巻きにより周壁が潰れる際に、周壁が対を成すそれぞれの溝の箇所で折れ曲がり、周壁が収容する電線束の断面形状に相応した偏平形状に潰れ易くなり、ワイヤハーネスに組み付けた際のワイヤハーネスの外形寸法の軽減が図り易くなる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によるボンダーキャップによれば、ボンダーに被冠装着されるキャップ本体は、溝の位置で可撓性が高くなり、テープ巻きによって作用する締め付け力によって、周壁が偏平形状に潰れ易い。
【0021】
そのため、当該ボンダーキャップを装着した電線束を幹線のワイヤハーネスの外周にテープ巻き等により固定する場合には、キャップ本体の内側に無駄な空隙が残らない状態にキャップ本体の周壁がテープ巻きによって潰れて、キャップ本体の外径をボンダーの外形寸法に相応して縮減することができる。
【0022】
従って、ワイヤハーネスに組み付けた際のワイヤハーネスの外形寸法の増大を抑止して、ワイヤハーネスの車両搭載性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に係るボンダーキャップの第1実施形態の側面図である。
【図2】図1に示したボンダーキャップのB−B断面図である。
【図3】図2に示したキャップ本体がテープ巻きによって潰れた状態の説明図である。
【図4】本発明に係るボンダーキャップの第2実施形態の側面図である。
【図5】図4に示したボンダーキャップのC−C断面図である。
【図6】図5に示したキャップ本体がテープ巻きによって潰れた状態の説明図である。
【図7】従来のボンダーキャップの布線治具に仮止めした状態の斜視図である。
【図8】図7に示したボンダーキャップの電線束に被冠装着された状態の縦断面図である。
【図9】図8のA−A断面図である。
【図10】構成する電線の数量が定格数よりも少ないボンダーに被冠装着されたボンダーキャップの側面図である。
【図11】図10のA矢視図である。
【図12】電線束に装着された従来のボンダーキャップが幹線のワイヤハーネスに固定された状態の説明図である。
【図13】幹線のワイヤハーネスに固定された従来のボンダーキャップの潰れ状態の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明に係るボンダーキャップの好適な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0025】
図1〜図3は本発明に係るボンダーキャップの第1実施形態を示したもので、図1は本発明に係るボンダーキャップの第1実施形態の側面図、図2は図1に示したボンダーキャップのB−B断面図、図3は図2に示したキャップ本体がテープ巻きによって潰れた状態の説明図である。
【0026】
この第1実施形態のボンダーキャップ1は、図1に示すように、キャップ本体10と、ハーネス固定部20と、を備える。これらのキャップ本体10とハーネス固定部20は、適宜に可撓性を有した絶縁性樹脂材料により一体成形される。
【0027】
キャップ本体10は、一端が閉塞され他端が開放した有底円筒状に形成されて、図2に示すように、複数の電線31から構成される電線束30のボンダー(不図示)に被冠装着される。
【0028】
ハーネス固定部20は、キャップ本体10の開放端縁10aの一部の領域からキャップ本体10の中心軸線方向(図1の矢印X2方向)に沿って舌状に延出した部位である。このハーネス固定部20は、キャップ本体10がボンダーから脱落することを防止するために、不図示の粘着テープ等により、電線束30に結束・固定される。
【0029】
本実施形態の場合、キャップ本体10には、キャップ本体10の肉厚を薄肉化する2対の溝11,12が、外周の周方向に離間して形成されている。それぞれの溝11,12は、断面形状がV字状を成す溝である。また、それぞれの溝11,12は、キャップ本体10の中心軸線O(図1及び図2参照)に沿って延在するように、キャップ本体10の外周に形成されている。
【0030】
一対の溝11は、図2に示すように、キャップ本体10の中心を通る線分Y1上に対向する2つの位置P1,P2に形成されている。また、残る一対の溝12は、図2に示すように、キャップ本体10の中心を通る線分Y2上に対向する2つの位置P3,P4に形成されている。
【0031】
即ち、それぞれの溝11,12は、図2に示すように、キャップ本体10の中心を通る線分Y1、Y2上に対向する位置を対にして、形成されている。
【0032】
以上に説明した第1実施形態のボンダーキャップ1によれば、ボンダーに被冠装着されるキャップ本体10は、溝11,12の位置で可撓性が高くなり、テープ巻きによって作用する締め付け力によって、図3に示すように周壁が偏平形状に潰れ易い。
【0033】
そのため、当該ボンダーキャップ1を装着した電線束30を幹線のワイヤハーネスの外周にテープ巻き等により固定する場合には、キャップ本体10の内側に無駄な空隙が残らない状態にキャップ本体10の周壁がテープ巻きによって図3に示すように潰れて、キャップ本体10の外径をボンダーの外形寸法に相応して縮減することができる。
【0034】
従って、ワイヤハーネスに組み付けた際のワイヤハーネスの外形寸法の増大を抑止して、ワイヤハーネスの車両搭載性を向上させることができる。
【0035】
また、本実施形態のボンダーキャップ1では、2対の溝11,12は、キャップ本体10の中心を通る線分Y1、Y2上に対向する位置を対にして、形成されている。
【0036】
そのため、テープ巻きにより周壁が潰れる際に、周壁が対を成すそれぞれの溝11,12の箇所で折れ曲がり、図3に示すように、キャップ本体10の周壁が収容する電線束30の断面形状に相応した偏平形状に潰れ易くなり、ワイヤハーネスに組み付けた際のワイヤハーネスの外形寸法の軽減が図り易くなる。
【0037】
このとき、キャップ本体10の周壁は、一対の溝11の幅が広がるように変形し、一対の溝12の幅が狭くなるように変形する。
【0038】
図4〜図6は本発明に係るボンダーキャップの第2実施形態を示したもので、図4は本発明に係るボンダーキャップの第2実施形態の側面図、図5は図4に示したボンダーキャップのC−C断面図、図6は図2に示したキャップ本体10がテープ巻きによって潰れた状態の説明図である。
【0039】
この第2実施形態のボンダーキャップ1Aにおいて、第1実施形態のボンダーキャップ1と共通する構成については、同番号を付して説明を省略する。
【0040】
この第2実施形態のボンダーキャップ1Aは、キャップ本体10の肉厚を薄肉化する溝を、3対の溝11,12,13に増やすと共に、周壁を各溝11,12,13の部位で屈曲した6角形の筒状構造にしたものである。
【0041】
このように対となる溝の数量を増やすと、キャップ本体10の周壁が更に潰れ易くなり、図6に示すように、電線束30をより偏平な形状で収容することが可能になり、ワイヤハーネスに組み付けた際のワイヤハーネスの外形寸法の軽減が更に図り易くなる。
【0042】
なお、本発明のボンダーキャップは、前述した各実施形態に限定されるものでなく、適宜な変形,改良等が可能である。
【0043】
例えば、キャップ本体に装備する溝の数量は、上記実施形態に限定するものではなく、2以上の任意数に設定することができる。
【符号の説明】
【0044】
1 ボンダーキャップ
10 キャップ本体
10a 開放端縁
11,12,13 溝
20 ハーネス固定部
30 電線束

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端が閉塞され他端が開放した有底筒状に形成されて電線束のボンダーに被冠装着されるキャップ本体と、前記キャップ本体の開放端縁の一部の領域から前記キャップ本体の中心軸線方向に沿って舌状に延出して前記電線束に結束されるハーネス固定部と、を備えるボンダーキャップであって、
前記キャップ本体の外周の周方向に離間した2箇所以上に、前記キャップ本体の肉厚を薄肉化する溝を、前記キャップ本体の中心軸線に沿って形成したことを特徴とするボンダーキャップ。
【請求項2】
前記溝が、前記キャップ本体の中心を通る線分上に対向する位置を対にして、複数対形成されていることを特徴とする請求項1に記載のボンダーキャップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−182104(P2012−182104A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−46109(P2011−46109)
【出願日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】