説明

ボールペン用油性インキ組成物及びそれを収容したボールペン、ボールペンセット

【課題】 筆記直後に筆跡を擦っても筆跡が紙面の空白部分に転移して紙面を汚染することなく、筆跡を良好に変色させることのできるボールペン用油性インキ組成物及びそれを収容したボールペンを提供する。
【解決手段】 可逆熱変色性マイクロカプセル顔料と、主溶剤として20℃における蒸気圧が5mmHg未満の有機溶剤とからなり、前記マイクロカプセル顔料は色濃度−温度曲線に関して有色状態と無色状態の互変性を呈し、完全消色温度Tが45〜90℃の範囲にあるボールペン用油性インキ組成物、前記インキ組成物を収容してなるボールペン。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はボールペン用油性インキ組成物及びそれを収容したボールペン、ボールペンセットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、(イ)電子供与性呈色性有機化合物、(ロ)電子受容性化合物(ハ)前記(イ)、(ロ)による電子授受反応を可逆的に生起させる反応媒体である化合物からなる可逆熱変色性組成物を内包したマイクロカプセル顔料を水性媒体中に分散した筆記具用インキ組成物を充填した筆記具が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
前記筆記具は、紙面上に温度変化により可逆的に色変化を呈する筆跡を形成できるものの、筆跡の乾燥性に乏しいため、筆記直後に指や摩擦体を適用して筆跡を擦ると、筆跡が紙面の空白部分に転移して紙面を汚染し、筆跡の変色機能を十分に発現できなかった。
【特許文献1】特開平1−54081号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、筆記直後に指や摩擦体を適用して筆跡を擦った際、良好に筆跡を変色させることのできる利便性に富むボールペン用油性インキ組成物及びそれを収容したボールペン、ボールペンセットに関する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、(イ)電子供与性呈色性有機化合物、(ロ)電子受容性化合物、(ハ)前記(イ)、(ロ)の呈色反応をコントロールする反応媒体からなる可逆熱変色性組成物を内包させた可逆熱変色性マイクロカプセル顔料と、主溶剤として20℃における蒸気圧が5mmHg未満の有機溶剤とから少なくともなり、前記可逆熱変色性マイクロカプセル顔料が、色濃度−温度曲線に関して有色状態と無色状態の互変性を呈し、該顔料は有色状態から温度が上昇する過程では、温度Tに達すると消色し始め、温度Tより高い温度T以上の温度域で完全に無色状態となり、無色状態から温度が下降する過程では、温度Tより低い温度Tに達すると着色し始め、温度Tより低い温度T以下の温度域で完全に着色状態となるヒステリシス特性を示し、温度Tが45〜90℃の範囲にあるボールペン用油性インキ組成物を要件とする。
更には、前記可逆熱変色性マイクロカプセル顔料の温度Tは−50〜0℃の範囲にあること、温度Tは50〜90℃の範囲にあること、前記可逆熱変色性マイクロカプセル顔料は、色濃度−温度曲線に関して40℃乃至100℃のヒステリシス幅(ΔH)を示すこと、前記主溶剤の溶解度パラメーターが13以下であること、(イ)、(ロ)の呈色反応をコントロールする反応媒体である前記(ハ)成分が下記一般式(1)で示される化合物であること等を要件とする。
【化1】

〔式中、Rは水素原子又はメチル基を示し、mは0〜2の整数を示し、X、Xのいずれか一方は−(CHOCOR又は−(CHCOOR、他方は水素原子を示し、nは0〜2の整数を示し、Rは炭素数4以上のアルキル基又はアルケニル基を示し、Y及びYは水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、メトキシ基、又は、ハロゲンを示し、r及びpは1〜3の整数を示す。〕
更には、前記ボールペン用油性インキ組成物を収容してなるボールペン、キャップを備えてなる前記ボールペン、前記ボールペン用油性インキ組成物を、ボールを抱持したボールペンチップを備えたボールペンレフィル内に収容してなり、出没機構の作動によって前記ボールペンレフィルの筆記先端部が軸筒前端開口部から出没するボールペン、軸筒内にボールを抱持したボールペンチップを備えた複数本のボールペンレフィルを収容してなり、出没機構の作動によっていずれかのボールペンレフィルの筆記先端部が軸筒前端開口部から出没するボールペン、摩擦部材を備えてなるボールペン等を要件とする。
更には、前記ボールペンと、摩擦体とからなるボールペンセットを要件とする。
【発明の効果】
【0005】
本発明は、筆記直後に指や摩擦体を適用して筆跡を擦った際、筆跡が紙面の空白部分に転移して紙面を汚染することなく、筆跡を良好に変色させることのできる利便性に富むボールペン用油性インキ組成物及びそれを収容したボールペンを提供できる。
【0006】
前記ボールペン用油性インキ組成物中に含まれる着色剤は、(イ)電子供与性呈色性有機化合物、(ロ)電子受容性化合物、及び(ハ)前記両者の呈色反応の生起温度を決める反応媒体の三成分を少なくとも含む可逆熱変色性組成物をマイクロカプセルに内包させた可逆熱変色性マイクロカプセル顔料である。
前記マイクロカプセル顔料としては、所定の温度を境としてその前後で変色し、高温側変色点以上の温度域で消色状態、低温側変色点以下の温度域で発色状態を呈し、前記両状態のうち常温域では特定の一方の状態しか存在せず、もう一方の状態は、その状態が発現するのに要した熱又は冷熱が適用されている間は維持されるが、前記熱又は冷熱の適用がなくなれば常温域で呈する状態に戻る、小さなヒステリシス幅(ΔH=1〜7℃)を有するマイクロカプセル顔料を用いることができる(図1参照)。
【0007】
また、温度変化による着色濃度の変化をプロットした曲線の形状が、温度を変色温度域より低温側から上昇させていく場合と、逆に変色温度域より高温側から下降させていく場合とで大きく異なる経路を辿って変色し、完全発色温度(t)以下の低温域での発色状態、完全消色温度(t)以上の高温域での消色状態が、特定温度域(t〜tの間の温度域)で択一的に保持される、大きなヒステリシス幅(ΔH=8〜100℃)を有する色彩記憶性を備えたマイクロカプセル顔料を用いることもできる(図2参照)。
【0008】
前記マイクロカプセル顔料の色濃度−温度曲線におけるヒステリシス特性について説明する。
図2において、縦軸に色濃度、横軸に温度が表されている。温度変化による色濃度の変化は矢印に沿って進行する。ここで、Aは完全消色状態に達する温度t(以下、完全消色温度と称す)における濃度を示す点であり、Bは消色を開始する温度t(以下、消色開始温度と称す)における濃度を示す点であり、Cは発色を開始する温度t(以下、発色開始温度と称す)における濃度を示す点であり、Dは完全発色状態に達する温度t(以下、完全発色温度と称す)における濃度を示す点である。
また、線分EFの長さが変色のコントラストを示す尺度であり、tとtの中点の温度と、tとtの中点の温度との差がヒステリシスの程度を示す温度幅〔ヒステリシス幅(ΔH)〕であり、このΔH値が小さいと変色前後の両状態のうち常温域では特定の一方の状態しか存在しえない。また、前記ΔH値が大きいと変色前後の各状態の保持が容易となる。
【0009】
前記可逆熱変色性マイクロカプセル顔料は、完全消色温度tを指による擦過、摩擦体による摩擦熱等の身近な加熱により得られる温度、即ち45〜90℃、好ましくは50〜80℃、より好ましくは60〜80℃の範囲に特定する。
ここで、何故完全消色温度(t)が45〜90℃であるかを説明すると、完全消色温度(t)が45℃以上であれば、変色させる前に環境温度によって筆跡が変色することはなく、変色前の状態は通常の使用状態において維持される。更に、摩擦により筆跡を消去する場合、完全消色温度(t)が95℃以下であれば、筆記面に形成された筆跡上を摩擦部材や摩擦体による数回の擦過による摩擦熱で十分に消去できる。
完全消色温度(t)が95℃を越える温度の場合、摩擦部材や摩擦体による摩擦で得られる摩擦熱が完全消色温度に達し難くなるため、容易に変色し難くなり、摩擦回数が増加したり、或いは、荷重をかけ過ぎて摩擦する傾向にあるため、筆記面を傷めてしまう虞がある。
よって、前記温度設定は筆記面に形成された筆跡を摩擦により変色させるボールペンには重要な要件であり、利便性と実用性を満足させることができる。
前述の完全消色温度(t)の温度設定において、環境温度によって変色しないためにはより高い温度であることが好ましく、しかも、摩擦による摩擦熱が完全消色温度(t)を越えるようにするためには低い温度であることが好ましい。
よって、完全消色温度(t)は、好ましくは50〜85℃、より好ましくは60〜80℃である。
また、完全消色温度(t)以上に加熱して変色させた状態が通常の使用状態において維持されるためには、完全発色温度(t)を冷凍室、寒冷地等でしか得られない温度、即ち−50〜0℃、好ましくは−40〜−5℃、より好ましくは−30〜−10℃とし、ΔH値を50〜100℃に特定することにより、常態(日常の生活温度域)で呈する色彩の保持に有効に機能させることができる。
【0010】
以下に前記(イ)、(ロ)、(ハ)成分について例示する。
本発明の(イ)成分である電子供与性呈色性有機化合物としては、ジフェニルメタンフタリド類、フェニルインドリルフタリド類、インドリルフタリド類、ジフェニルメタンアザフタリド類、フェニルインドリルアザフタリド類、フルオラン類、スチリノキノリン類、ジアザローダミンラクトン類等が挙げられる。
以下にこれらの化合物を例示する。
3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)−6−ジメチルアミノフタリド、3−(4−ジエチルアミノフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)フタリド、3,3−ビス(1−n−ブチル−2−メチルインドール−3−イル)フタリド、3,3−ビス(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−4−アザフタリド、3−(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4−アザフタリド、3−〔2−エトキシ−4−(N−エチルアニリノ)フェニル〕−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4−アザフタリド、3,6−ジフェニルアミノフルオラン、3,6−ジメトキシフルオラン、3,6−ジ−n−ブトキシフルオラン、2−メチル−6−(N−エチル−N−p−トリルアミノ)フルオラン、3−クロロ−6−シクロヘキシルアミノフルオラン、2−メチル−6−シクロヘキシルアミノフルオラン、2−(2−クロロアニリノ)−6−ジ−n−ブチルアミノフルオラン、2−(3−トリフルオロメチルアニリノ)−6−ジエチルアミノフルオラン、2−(N−メチルアニリノ)−6−(N−エチル−N−p−トリルアミノ)フルオラン、1,3−ジメチル−6−ジエチルアミノフルオラン、2−クロロ−3−メチル−6−ジエチルアミノフルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−ジエチルアミノフルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−ジ−n−ブチルアミノフルオラン、2−キシリジノ−3−メチル−6−ジエチルアミノフルオラン、1,2−ベンツ−6−ジエチルアミノフルオラン、1,2−ベンツ−6−(N−エチル−N−イソブチルアミノ)フルオラン、1,2−ベンツ−6−(N−エチル−N−イソアミルアミノ)フルオラン、2−(3−メトキシ−4−ドデコキシスチリル)キノリン、スピロ〔5H−(1)ベンゾピラノ(2,3−d)ピリミジン−5,1′(3′H)イソベンゾフラン〕−3′−オン,2−(ジエチルアミノ)−8−(ジエチルアミノ)−4−メチル−、スピロ〔5H−(1)ベンゾピラノ(2,3−d)ピリミジン−5,1′(3′H)イソベンゾフラン〕−3′−オン,2−(ジ−n−ブチルアミノ)−8−(ジ−n−ブチルアミノ)−4−メチル−、スピロ〔5H−(1)ベンゾピラノ(2,3−d)ピリミジン−5,1′(3′H)イソベンゾフラン〕−3′−オン,2−(ジ−n−ブチルアミノ)−8−(ジエチルアミノ)−4−メチル−、スピロ〔5H−(1)ベンゾピラノ(2,3−d)ピリミジン−5,1′(3′H)イソベンゾフラン〕−3′−オン,2−(ジ−n−ブチルアミノ)−8−(N−エチル−N−i−アミルアミノ)−4−メチル−、スピロ〔5H−(1)ベンゾピラノ(2,3−d)ピリミジン−5,1′(3′H)イソベンゾフラン〕−3′−オン,2−(ジ−n−ブチルアミノ)−8−(ジ−n−ブチルアミノ)−4−フェニル、3−(2−メトキシ−4−ジメチルアミノフェニル)−3−(1−ブチル−2−メチルインドール−3−イル)−4,5,6,7−テトラクロロフタリド、3−(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4,5,6,7−テトラクロロフタリド、3−(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−3−(1−ペンチル−2−メチルインドール−3−イル)−4,5,6,7−テトラクロロフタリド等を挙げることができる。
更には、蛍光性の黄色乃至赤色の発色を発現させるのに有効なピリジン系、キナゾリン系、ビスキナゾリン系化合物等を用いることもできる。
【0011】
前記(ロ)成分である電子受容性化合物としては、活性プロトンを有する化合物群、偽酸性化合物群(酸ではないが、組成物中で酸として作用して成分(イ)を発色させる化合物群)、電子空孔を有する化合物群等がある。
活性プロトンを有する化合物を例示すると、フェノール性水酸基を有する化合物としては、モノフェノール類からポリフェノール類があり、さらにその置換基としてアルキル基、アリール基、アシル基、アルコキシカルボニル基、カルボキシ基及びそのエステル又はアミド基、ハロゲン基等を有するもの、及びビス型、トリス型フェノール等、フェノール−アルデヒド縮合樹脂等を挙げることができる。又、前記フェノール性水酸基を有する化合物の金属塩であってもよい。
以下にこれらの化合物を例示する。
フェノール、o−クレゾール、ターシャリーブチルカテコール、ノニルフェノール、n−オクチルフェノール、n−ドデシルフェノール、n−ステアリルフェノール、p−クロロフェノール、p−ブロモフェノール、o−フェニルフェノール、p−ヒドロキシ安息香酸n−ブチル、p−ヒドロキシ安息香酸n−オクチル、レゾルシン、没食子酸ドデシル、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、4,4−ジヒドロキシジフェニルスルホン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、1−フェニル−1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−メチルブタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−メチルプロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)n−ヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)n−ヘプタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)n−オクタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)n−ノナン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)n−デカン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)n−ドデカン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エチルプロピオネート、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−メチルペンタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)n−ヘプタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)n−ノナン等を挙げることができる。
前記フェノール性水酸基を有する化合物が最も有効な熱変色特性を発現させることができるが、芳香族カルボン酸及び炭素数2〜5の脂肪族カルボン酸、カルボン酸金属塩、酸性リン酸エステル及びそれらの金属塩、1、2、3−トリアゾール及びその誘導体から選ばれる化合物等であってもよい。
【0012】
前記(イ)、(ロ)成分による電子授受反応を特定温度域において可逆的に生起させる反応媒体の(ハ)成分について例示する。
前記(ハ)成分としては、アルコール類、エステル類、ケトン類、エーテル類、酸アミド類を挙げることができる。
前記(ハ)成分として、色濃度−温度曲線に関し、大きなヒステリシス特性(温度変化による着色濃度の変化をプロットした曲線が、温度を低温側から高温側へ変化させる場合と、高温側から低温側へ変化させる場合で異なる)を示して変色する、色彩記憶性を示す可逆熱変色性組成物が得られる5℃以上50℃未満のΔT値(融点−曇点)を示すカルボン酸エステル化合物、例えば、分子中に置換芳香族環を含むカルボン酸エステル、無置換芳香族環を含むカルボン酸と炭素数10以上の脂肪族アルコールのエステル、分子中にシクロヘキシル基を含むカルボン酸エステル、炭素数6以上の脂肪酸と無置換芳香族アルコール又はフェノールのエステル、炭素数8以上の脂肪酸と分岐脂肪族アルコール又はエステル、ジカルボン酸と芳香族アルコール又は分岐脂肪族アルコールのエステル、ケイ皮酸ジベンジル、ステアリン酸ヘプチル、アジピン酸ジデシル、アジピン酸ジラウリル、アジピン酸ジミリスチル、アジピン酸ジセチル、アジピン酸ジステアリル、トリラウリン、トリミリスチン、トリステアリン、ジミリスチン、ジステアリン等が用いられる。
【0013】
また、炭素数9以上の奇数の脂肪族一価アルコールと炭素数が偶数の脂肪族カルボン酸から得られる脂肪酸エステル化合物、n−ペンチルアルコール又はn−ヘプチルアルコールと炭素数10乃至16の偶数の脂肪族カルボン酸より得られる総炭素数17乃至23の脂肪酸エステル化合物も有効である。
具体的には、酢酸n−ペンタデシル、酪酸n−トリデシル、酪酸n−ペンタデシル、カプロン酸n−ウンデシル、カプロン酸n−トリデシル、カプロン酸n−ペンタデシル、カプリル酸n−ノニル、カプリル酸n−ウンデシル、カプリル酸n−トリデシル、カプリル酸n−ペンタデシル、カプリン酸n−ヘプチル、カプリン酸n−ノニル、カプリン酸n−ウンデシル、カプリン酸n−トリデシル、カプリン酸n−ペンタデシル、ラウリン酸n−ペンチル、ラウリン酸n−ヘプチル、ラウリン酸n−ノニル、ラウリン酸n−ウンデシル、ラウリン酸n−トリデシル、ラウリン酸n−ペンタデシル、ミリスチン酸n−ペンチル、ミリスチン酸n−ヘプチル、ミリスチン酸n−ノニル、ミリスチン酸n−ウンデシル、ミリスチン酸n−トリデシル、ミリスチン酸n−ペンタデシル、パルミチン酸n−ペンチル、パルミチン酸n−ヘプチル、パルミチン酸n−ノニル、パルミチン酸n−ウンデシル、パルミチン酸n−トリデシル、パルミチン酸n−ペンタデシル、ステアリン酸n−ノニル、ステアリン酸n−ウンデシル、ステアリン酸n−トリデシル、ステアリン酸n−ペンタデシル、エイコサン酸n−ノニル、エイコサン酸n−ウンデシル、エイコサン酸n−トリデシル、エイコサン酸n−ペンタデシル、ベヘニン酸n−ノニル、ベヘニン酸n−ウンデシル、ベヘニン酸n−トリデシル、ベヘニン酸n−ペンタデシル等を挙げることができる。
【0014】
また、ケトン類としては、総炭素数が10以上の脂肪族ケトン類が有効であり、2−デカノン、3−デカノン、4−デカノン、2−ウンデカノン、3−ウンデカノン、4−ウンデカノン、5−ウンデカノン、2−ドデカノン、3−ドデカノン、4−ドデカノン、5−ドデカノン、2−トリデカノン、3−トリデカノン、2−テトラデカノン、2−ペンタデカノン、8−ペンタデカノン、2−ヘキサデカノン、3−ヘキサデカノン、9−ヘプタデカノン、2−ペンタデカノン、2−オクタデカノン、2−ノナデカノン、10−ノナダカノン、2−エイコサノン、11−エイコサノン、2−ヘンエイコサノン、2-ドコサノン、ラウロン、ステアロン等を挙げることができる。
また、総炭素数が12乃至24のアリールアルキルケトン類、例えば、n−オクタデカノフェノン、n−ヘプタデカノフェノン、n−ヘキサデカノフェノン、n−ペンタデカノフェノン、n−テトラデカノフェノン、4−n−ドデカアセトフェノン、n−トリデカノフェノン、4−n−ウンデカノアセトフェノン、n−ラウロフェノン、4−n−デカノアセトフェノン、n−ウンデカノフェノン、4−n−ノニルアセトフェノン、n−デカノフェノン、4−n−オクチルアセトフェノン、n−ノナノフェノン、4−n−ヘプチルアセトフェノン、n−オクタノフェノン、4−n−ヘキシルアセトフェノン、4−n−シクロヘキシルアセトフェノン、4−tert−ブチルプロピオフェノン、n−ヘプタフェノン、4−n−ペンチルアセトフェノン、シクロヘキシルフェニルケトン、ベンジル−n−ブチルケトン、4−n−ブチルアセトフェノン、n−ヘキサノフェノン、4−イソブチルアセトフェノン、1−アセトナフトン、2−アセトナフトン、シクロペンチルフェニルケトン等を挙げることができる。
【0015】
また、エーテル類としては、総炭素数10以上の脂肪族エーテル類が有効であり、ジペンチルエーテル、ジヘキシルエーテル、ジヘプチルエーテル、ジオクチルエーテル、ジノニルエーテル、ジデシルエーテル、ジウンデシルエーテル、ジドデシルエーテル、ジトリデシルエーテル、ジテトラデシルエーテル、ジペンタデシルエーテル、ジヘキサデシルエーテル、ジオクタデシルエーテル、デカンジオールジメチルエーテル、ウンデカンジオールジメチルエーテル、ドデカンジオールジメチルエーテル、トリデカンジオールジメチルエーテル、デカンジオールジエチルエーテル、ウンデカンジオールジエチルエーテル等を挙げることができる。
【0016】
また、前記(ハ)成分として、特開2006−137886号公報に記載されている下記一般式(1)で示される化合物が好適に用いられる。
【化1】

〔式中、Rは水素原子又はメチル基を示し、mは0〜2の整数を示し、X、Xのいずれか一方は−(CHOCOR又は−(CHCOOR、他方は水素原子を示し、nは0〜2の整数を示し、Rは炭素数4以上のアルキル基又はアルケニル基を示し、Y及びYは水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、メトキシ基、又は、ハロゲンを示し、r及びpは1〜3の整数を示す。〕
前記式(1)で示される化合物のうち、Rが水素原子の場合、より広いヒステリシス幅を有する可逆熱変色性組成物が得られるため好適であり、更にRが水素原子であり、且つ、mが0の場合がより好適である。
なお、式(1)で示される化合物のうち、より好ましくは下記一般式(2)で示される化合物が用いられる。
【化2】

式中のRは炭素数8以上のアルキル基又はアルケニル基を示すが、好ましくは炭素数10〜24のアルキル基、更に好ましくは炭素数12〜22のアルキル基である。
前記化合物として具体的には、オクタン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチル、ノナン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチル、デカン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチル、ウンデカン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチル、ドデカン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチル、トリデカン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチル、テトラデカン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチル、ペンタデカン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチル、ヘキサデカン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチル、ヘプタデカン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチル、オクタデカン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチルを例示できる。
【0017】
更に、前記(ハ)成分として、特開2006−188660号公報に記載されている下記一般式(3)で示される化合物を用いることもできる。
【化3】

(式中、Rは炭素数8以上のアルキル基又はアルケニル基を示し、m及びnはそれぞれ1〜3の整数を示し、X及びYはそれぞれ水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、ハロゲンを示す。)
前記化合物として具体的には、オクタン酸1,1−ジフェニルメチル、ノナン酸1,1−ジフェニルメチル、デカン酸1,1−ジフェニルメチル、ウンデカン酸1,1−ジフェニルメチル、ドデカン酸1,1−ジフェニルメチル、トリデカン酸1,1−ジフェニルメチル、テトラデカン酸1,1−ジフェニルメチル、ペンタデカン酸1,1−ジフェニルメチル、ヘキサデカン酸1,1−ジフェニルメチル、ヘプタデカン酸1,1−ジフェニルメチル、オクタデカン酸1,1−ジフェニルメチルを例示できる。
【0018】
更に、前記(ハ)成分として下記一般式(4)で示される化合物を用いることもできる。
【化4】

(式中、Xは水素原子、炭素数1乃至4のアルキル基、メトキシ基、ハロゲン原子のいずれかを示し、mは1乃至3の整数を示し、nは1乃至20の整数を示す。)
前記化合物としては、マロン酸と2−〔4−(4−クロロベンジルオキシ)フェニル)〕エタノールとのジエステル、こはく酸と2−(4−ベンジルオキシフェニル)エタノールとのジエステル、こはく酸と2−〔4−(3−メチルベンジルオキシ)フェニル)〕エタノールとのジエステル、グルタル酸と2−(4−ベンジルオキシフェニル)エタノールとのジエステル、グルタル酸と2−(4−ベンジルオキシフェニル)エタノールとのジエステル、グルタル酸と2−(4−ベンジルオキシフェニル)エタノールとのジエステル、グルタル酸と2−〔4−(4−クロロベンジルオキシ)フェニル)〕エタノールとのジエステル、アジピン酸と2−(4−ベンジルオキシフェニル)エタノールとのジエステル、アジピン酸と2−(4−ベンジルオキシフェニル)エタノールとのジエステル、アジピン酸と2−(4−ベンジルオキシフェニル)エタノールとのジエステル、ピメリン酸と2−(4−ベンジルオキシフェニル)エタノールとのジエステル、スベリン酸と2−(4−ベンジルオキシフェニル)エタノールとのジエステル、スベリン酸と2−〔4−(3−メチルベンジルオキシ)フェニル)〕エタノールとのジエステル、スベリン酸と2−〔4−(4−クロロベンジルオキシ)フェニル)〕エタノールとのジエステル、スベリン酸と2−〔4−(2,4−ジクロロベンジルオキシ)フェニル)〕エタノールとのジエステル、アゼライン酸と2−(4−ベンジルオキシフェニル)エタノールとのジエステル、セバシン酸と2−(4−ベンジルオキシフェニル)エタノールとのジエステル、1,10-デカンジカルボン酸と2−(4−ベンジルオキシフェニル)エタノールとのジエステル、1,18-オクタデカンジカルボン酸と2−(4−ベンジルオキシフェニル)エタノールとのジエステル、1,18-オクタデカンジカルボン酸と2−〔4−(2−メチルベンジルオキシ)フェニル)〕エタノールとのジエステルを例示できる。
【0019】
前記(イ)、(ロ)、(ハ)成分の配合割合は、濃度、変色温度、変色形態や各成分の種類に左右されるが、一般的に所望の変色特性が得られる成分比は、(イ)成分1に対して、(ロ)成分0.1〜50、好ましくは0.5〜20、(ハ)成分1〜800、好ましくは5〜200の範囲である(前記割合はいずれも質量部である)。
ここで、前記可逆熱変色性マイクロカプセル顔料中、或いは、インキ中に非熱変色性の染料、顔料等の着色剤を配合して、有色(1)から有色(2)への互変的色変化を呈することもできる。
【0020】
前記可逆熱変色性組成物のマイクロカプセル化は、界面重合法、界面重縮合法、in Situ重合法、液中硬化被覆法、水溶液からの相分離法、有機溶媒からの相分離法、融解分散冷却法、気中懸濁被覆法、スプレードライング法等があり、用途に応じて適宜選択される。更にマイクロカプセルの表面には、目的に応じて更に二次的な樹脂皮膜を設けて耐久性を付与したり、表面特性を改質させて実用に供することもできる。
【0021】
前記マイクロカプセル顔料の平均粒子径は0.5〜5.0μm、好ましくは1〜4μm、より好ましくは1〜3μmの範囲である。
前記マイクロカプセル顔料の粒子径が5.0μmを越えるとボールペンチップからの流出性が低下し易く、0.5μm未満では高濃度の発色性を示し難くなる。
また、可逆熱変色性組成物とマイクロカプセル壁膜の比率については、可逆熱変色性組成物:壁膜=7:1〜1:1(質量比)、好ましくは6:1〜1:1、より好ましくは5:1〜1:1の範囲である。
可逆熱変色性組成物の壁膜に対する比率が前記範囲より大になると、壁膜の厚みが肉薄となり過ぎ、圧力や熱に対する耐性の低下を生じ易く、壁膜の可逆熱変色性組成物に対する比率が前記範囲より大になると発色時の色濃度及び鮮明性の低下を生じ易くなる。
【0022】
前記可逆熱変色性マイクロカプセル顔料は、インキ組成物全量に対し、10〜50質量%、好ましくは13〜40質量%、更に好ましくは15〜30質量%配合することができる。
10質量%未満では発色濃度が不十分であり、50質量%を越えるとインキ流出性が低下し、筆記性能が阻害され易くなる。
【0023】
有機溶剤としては、主溶剤として20℃における蒸気圧が5mmHg(=667Pa)未満の有機溶剤が用いられる。
有機溶剤は、一般的に水や水溶性有機溶剤と比較して疎水性が大きく、紙への浸透性に優れるため、紙面に筆記すると溶剤が紙内部に浸透して短時間で筆跡を固着させることができる。そのため、指や摩擦体を用いて筆記直後に筆跡を擦っても筆跡が溶剤の影響により紙面の空白部分に転移することなく、筆跡の変色機能を十分に発現させることができる。
更に、水性インキのように紙を形成する繊維中に水が浸透して紙面に凹凸を発生させることもないため、見栄えを損なうことがないと共に、水(20℃における蒸気圧が17.5mmHg)に較べて蒸気圧が小さく、揮発性が低いため、前記有機溶剤を用いたインキを収容したボールペンは、ボールペンチップを外気に長時間晒した状態で長期間放置してもインキが乾燥し難く、インキの乾燥に起因するカスレや筆記不能の発生を抑えるような耐ドライアップ性(キャップオフ性能)にも優れる。
以下に、20℃における蒸気圧が5mmHg未満の有機溶剤を例示する。
アルコール、グリコール類としては、ベンジルアルコール、ラウリルアルコール、トリデシルアルコール、イソトリデシルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、1,3−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2,4−ペンタンジオール、3−メチル−1,3−ブタンジオール、2,5−ヘキサンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、2,4−ヘプタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール(分子量200〜700)、ポリプロピレングリコール(分子量200〜700)、低分子量のポリエチレングリコール・ポリプロピレングリコールブロックポリマー等が挙げられる。
グリコールエーテル類としては、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノt−ブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノ−2−エチルブチルエーテル、エチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル、エチレングレールモノエチルベンジルエーテル、エチレングリコールモノα‐メチルベンジルエーテル、エチレングリコールモノα,α´ジメチルベンジルエーテル、エチレングリコールモノメチルフェニルエーテル異性体混合物、エチレングリコールモノジメチルフェニルエーテル異性体混合物、エチレングリコールモノエチルフェニルエーテル異性体混合物、エチレングリコールモノメチルベンジルエーテル異性体混合物、エチレングリコールモノエチルベンジルエーテル異性体混合物、エチレングリコールモノシクロヘキシルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノフェニルエーテル、プロピレングリコールモノベンジルエーテル、プロピレングリコールモノシクロヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノ2−エチルヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノシクロヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノベンジルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノベンジルフェニルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノフェニルエーテル、ジプロピレングリコールモノベンジルエーテル、ジプロピレングリコールモノシクロヘキシルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノフェニルエーテル、テトラエチレングリコールモノブチルエーテル、3−メチル−3−メトキシ−1−ブタノール、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル等が挙げられる。
グリコールエーテルアセテート類としては、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、エチレングリコールブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールブチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、3−メトキシブチルアセテート等が挙げられる。
グリコールジアセテート類としては、エチレングリコールジアセテート、プロピレングリコールジアセテート等が挙げられる。
エステル類としては、酢酸−2−メチルペンチル、酢酸−1−メチルアミル、酢酸ヘプチル、酢酸オクチル、酢酸−2−エチルヘキシル、酢酸ノニル、酢酸デシル、酪酸ブチル、乳酸−n−ブチル、乳酸アミル、アジピン酸オクチル、セバシン酸ジブチル、セバシン酸ジオクチル、トリアセチン、γ−ブチロラクトン等が挙げられる。
窒素含有溶剤としては、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン、N−2−ヒドロキシエチル−2−ピロリドン、N−シクロヘキシル−2−ピロリドン等が挙げられる。
前記有機溶剤のうち、20℃における蒸気圧が2mmHg(=267Pa)未満の有機溶剤が好ましく、1mmHg(=133Pa)未満がより好ましい。前記した低揮発性の有機溶剤を主溶剤として用いることにより、ボールペンの耐ドライアップ性を大きく向上させることができるため、キャップを要しない出没式ボールペンへの適用性も満たしている。
また、ボールペンに収容した状態で水が蒸発してインキ中の顔料分比率が上昇し、筆跡のかすれを生じ易い水性インキと比較して、本発明の溶剤を用いた油性インキはボールペンに収容した状態で有機溶剤が蒸発し難いため、インキ中の顔料分比率が上昇し難く、よって、インキ中におけるマイクロカプセル顔料の含有量を増加させて実用に供することができ、筆跡濃度を向上させることもできる。
更に、前記有機溶剤のうち溶解度パラメーター(SP値)が13以下、好ましくは12以下、より好ましくは11以下の溶剤を主溶剤として用いることにより、インキの紙面への浸透性をいっそう向上させることができ、筆記直後の筆跡の変色機能をより向上させることができる。
前記溶解度パラメーターを満たす有機溶剤としては、芳香環やエーテル基、エステル基等の疎水性基を有する有機溶剤が挙げられる。
前記有機溶剤は主溶剤として用いられるが、これはインキ組成物全量に対して20質量%以上含まれる有機溶剤であって、好ましくは20〜85質量%、より好ましくは30〜85質量%である。
20質量%未満では、溶剤の紙へ浸透性を満足させ難く、短時間での筆跡の固着性を満足させ難くなると共に、耐ドライアップ性(キャップオフ性能)も損ない易くなる。
一方、85質量%を越えると、マイクロカプセル顔料や樹脂等の添加剤の含有量が少なくなり、筆跡濃度の低下や筆跡の定着性を損なうことがある。なお、前記有機溶剤は二種以上を併用して用いることもできる。
【0024】
前記インキ組成物中には、必要により樹脂、剪断減粘性付与剤、潤滑剤を添加することができる。
前記樹脂としては、ケトン樹脂、ケトン−ホルムアルデヒド樹脂、アミド樹脂、アルキッド樹脂、ロジン変性樹脂、ロジン変性フェノール樹脂、フェノール樹脂、キシレン樹脂、ポリビニルピロリドン、α−及びβ−ピネン・フェノール重縮合樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、アクリル樹脂、スチレンマレイン酸共重合物、セルロース誘導体、ポリビニルピロリドン、ポリビニルピロリドン−ポリ酢酸ビニル共重合樹脂、ポリビニルアルコール、デキストリンを例示でき、紙面への固着性や粘性付与のために用いられる。
【0025】
前記剪断減粘性付与剤は、マイクロカプセル顔料の凝集、沈降を抑制することができると共に、筆跡の滲みを抑制することができる。
更に、前記インキを充填する筆記具がボールペン形態の場合、不使用時のボールとチップの間隙からのインキ漏れだしを防止したり、筆記先端部を上向き(正立状態)で放置した場合のインキの逆流を防止することができる。
前記剪断減粘性付与剤としては、架橋型アクリル樹脂、架橋型アクリル樹脂のエマルションタイプ、非架橋型アクリル樹脂、架橋型N−ビニルカルボン酸アミド重合体又は共重合体、非架橋型N−ビニルカルボン酸アミド重合体又は共重合体、水添ヒマシ油、脂肪酸アマイドワックス、酸化ポリエチレンワックス等のワックス類、ステアリン酸、パルミチン酸、オクチル酸、ラウリン酸のアルミニウム塩等の脂肪酸金属塩、ジベンジリデンソルビトール、N−アシルアミノ酸系化合物、スメクタイト系無機化合物、モンモリロナイト系無機化合物、ベントナイト系無機化合物、ヘクトライト系無機化合物、シリカ等を例示できる。
なお、前記剪断減粘性付与剤は併用することもできるし、ポリマーについては樹脂として用いることもできる。
【0026】
前記潤滑剤としては、オレイン酸等の高級脂肪酸、長鎖アルキル基を有するノニオン性界面活性剤、ポリエーテル変性シリコーンオイル、チオ亜燐酸トリ(アルコキシカルボニルメチルエステル)やチオ亜燐酸トリ(アルコキシカルボニルエチルエステル)等のチオ亜燐酸トリエステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル又はポリオキシエチレンアルキルアリールエーテルのリン酸モノエステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル又はポリオキシエチレンアルキルアリールエーテルのリン酸ジエステル、或いは、それらの金属塩、アンモニウム塩、アミン塩、アルカノールアミン塩を例示できる。
【0027】
前記インキ組成物は、ボールペンチップを筆記先端部に装着したボールペンに充填して実用に供される。
ボールペン自体の構造、形状は特に限定されるものではなく、例えば、軸筒内部に収容した繊維束からなるインキ吸蔵体にインキを含浸させ、筆記先端部にインキを供給する構造、軸筒内部に直接インキを収容し、櫛溝状のインキ流量調節部材や繊維束からなるインキ流量調節部材を介在させる構造、軸筒内にインキ組成物を充填したインキ収容管を有し、該インキ収容管はボールを先端部に抱持したチップに連通しており、さらにインキの端面にはインキ逆流防止体組成物(液栓)が密接している構造のボールペンを例示できる。
【0028】
前記ボールペンは、キャップを備えたボールペンの他、出没式のボールペンであってもよい。
出没式のボールペンの構造、形状は特に限定されるものではなく、ボールペンレフィルに設けられたボールペンチップが外気に晒された状態で軸筒内に収納されており、出没機構の作動によって軸筒開口部から突出する構造であれば全て用いることができる。
出没機構の操作方法としては、例えば、ノック式、回転式、スライド式等が挙げられる。
前記ノック式は、軸筒後端部や軸筒側面にノック部を有し、該ノック部の押圧により、ボールペンチップを軸筒前端開口部から出没させる構成、或いは、軸筒に設けたクリップ部を押圧にすることにより、ボールペンチップを軸筒前端開口部から出没させる構成を例示できる。
前記回転式は、軸筒後部に回転部を有し、該回転部を回すことによりボールペンチップを軸筒前端開口部から出没させる構成を例示できる。
前記スライド式は、軸筒側面にスライド部を有し、該スライドを操作することによりボールペンチップを軸筒前端開口部から出没させる構成、或いは、軸筒に設けたクリップ部をスライドさせることにより、ボールペンチップを軸筒前端開口部から出没させる構成を例示できる。
前記出没式のボールペンは軸筒内に複数のボールペンレフィルを収容してなり、出没機構の作動によっていずれかのボールペンレフィルの筆記先端部が軸筒前端開口部から出没する複合タイプのボールペンであってもよい。
なお、前記ボールペンレフィルを構成するインキ収容管や軸筒は樹脂製であってもよいし、金属製であってもよい。
ボールペンチップの構造は、汎用の機構が有効であり、金属製のパイプの先端近傍を外面より内方に押圧変形させて形成したボール抱持部にボールを抱持する機構、金属材料のドリル等による切削加工により、チップ部を形成して、ボール抱持部にボールを抱持する機構、バネ体によりボールを前方に付勢させた機構、或いは、金属又はプラスチック製チップ内部に樹脂製のボール受け座を設けた機構を例示できる。
前記ボールは、超硬合金、ステンレス鋼、ルビー、セラミック、樹脂、ゴム等の0.1〜2.0mm径程度のものが適用できるが、好ましくは0.2〜1.5mm、より好ましくは0.3〜1.0mmのものが用いられる。
【0029】
前記インキ逆流防止体組成物は不揮発性液体又は難揮発性液体からなる。
具体的には、ワセリン、スピンドル油、ヒマシ油、オリーブ油、精製鉱油、流動パラフィン、ポリブテン、α−オレフィン、α−オレフィンのオリゴマーまたはコオリゴマー、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、アミノ変性シリコーンオイル、ポリエーテル変性シリコーンオイル、脂肪酸変性シリコーンオイル等があげられ、一種又は二種以上を併用することもできる。
【0030】
前記不揮発性液体及び/又は難揮発性液体には、ゲル化剤を添加して好適な粘度まで増粘させることが好ましく、表面を疎水処理したシリカ、表面をメチル化処理した微粒子シリカ、珪酸アルミニウム、膨潤性雲母、疎水処理を施したベントナイトやモンモリロナイトなどの粘土系増粘剤、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸亜鉛等の脂肪酸金属石鹸、トリベンジリデンソルビトール、脂肪酸アマイド、アマイド変性ポリエチレンワックス、水添ひまし油、脂肪酸デキストリン等のデキストリン系化合物、セルロース系化合物を例示できる。
更に、前記液状のインキ逆流防止体組成物と、固体のインキ逆流防止体を併用することもできる。
なお、前記ボールペンの形態は前述したものに限らず、相異なる形態のペン体を装着させたり、相異なる色調のインキを導出させるペン体を装着させたツインタイプのボールペンであってもよい。
【0031】
前記インキ組成物を収容したボールペンにより形成される筆跡は、指による摩擦、摩擦部材や摩擦体の適用により変色させることができる。
前記摩擦部材や摩擦体としては、弾性感に富み、摩擦時に適度な摩擦を生じて摩擦熱を発生させることのできるエラストマー、プラスチック発泡体等の弾性体が好適であるが、プラスチック成形体、石材、木材、金属、布帛であってもよい。
なお、消しゴムを使用して筆跡を摩擦することもできるが、摩擦時に消しカスが発生するため、好ましくは前述のような摩擦部材や摩擦体が用いられる。
前記摩擦部材や摩擦体の材質としては、シリコーン樹脂やSEBS樹脂(スチレンエチレンブタジエンスチレンブロック共重合体)が好適に用いられるが、シリコーン樹脂は摩擦により消去した部分に樹脂が付着し易く、繰り返し筆記した際に筆跡がはじかれる傾向にあるため、SEBS樹脂がより好適に用いられる。
前記摩擦部材は筆記具に固着させることにより、携帯性に優れる。
前記摩擦部材を固着する箇所は、筆記先端部を覆うキャップの先端部(頂部)、或いは、軸筒の後端部が挙げられる。
また、ボールペン、別体の任意形状の摩擦体とからなるボールペンセットを構成することもできる。
【実施例】
【0032】
以下の表にボールペン用油性インキ組成物の配合を示す。
なお、表中の数値は質量%を示す。
【0033】
【表1】

【0034】
【表2】

【0035】
表中の原料の内容を注番号に沿って説明する。
(1)BASF社製、商品名:Luvitec VA64
(2)BASF社製、商品名:Luvitec K90
(3)蒸気圧(20℃):0.01mmHg、SP値:11.5
(4)蒸気圧(20℃):0.01mmHg、SP値:9.7
(5)蒸気圧(20℃):0.01mmHg以下、SP値:9.6
(6)蒸気圧(20℃):0.01mmHg、SP値:12.1
(7)蒸気圧(20℃):0.05mmHg、SP値:14.2
(8)蒸気圧(20℃):6.2mmHg、SP値:11.6
(9)蒸気圧(20℃):9.8mmHg、SP値:10.4
(10)三晶(株)製、商品名:ケルザン
(11)第一工業製薬(株)製、商品名:プライサーフM208B、ポリオキシエチレンオクチルエーテルリン酸エステルのエタノールアミン塩
(12)蒸気圧(50℃):0.0025mmHg、SP値:16.5
(13)蒸気圧(20℃):17.5mmHg、SP値:23.5
【0036】
表中の可逆熱変色性マイクロカプセル顔料は以下の方法により調製した。
可逆熱変色性マイクロカプセル顔料A
(イ)成分として2−(2−クロロアニリノ)−6−ジ−n−ブチルアミノフルオラン5.0部、(ロ)成分として1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン5.0部、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)n−デカン10.0部、(ハ)成分としてカプリン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチル50.0部からなる可逆熱変色性組成物を均一に加温溶解し、壁膜材料として芳香族多価イソシアネートプレポリマー30.0部、助溶剤40.0部を混合した溶液を、8%ポリビニルアルコール水溶液中で微小滴になるように乳化分散し、加温しながら攪拌を続けた後、水溶性脂肪族変性アミン2.5部を加え、更に攪拌を続けて可逆熱変色性マイクロカプセル顔料懸濁液を得た。
前記懸濁液からマイクロカプセル顔料を遠心分離により単離し、黒色から無色に変色する可逆熱変色性マイクロカプセル顔料Aを得た(平均粒子径:2μm)。
前記マイクロカプセル顔料Aは、T(完全発色温度):−22℃、T(発色開始温度):−14.0℃、T(消色開始温度):40.0℃、T(完全消色温度):58.0℃、T(TとTの中点の温度、T+T/2):−18.0℃、T(TとTの中点の温度、T+T/2):49.0℃、ΔH(ヒステリシス幅:T−T):67.0℃の変色特性を示した。
【0037】
可逆熱変色性マイクロカプセル顔料B
(イ)成分として、1,3−ジメチル−6−ジエチルアミノフルオラン2.3部、1、2ベンツ−6−(N−エチル−N−イソブチルアミノ)フルオラン0.7部、(ロ)成分として、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン5.0部、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)n−デカン10.0部、(ハ)成分としてカプリン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチル50.0部からなる可逆熱変色性組成物を均一に加温溶解し、壁膜材料として芳香族多価イソシアネートプレポリマー30.0部、助溶剤40.0部を混合した溶液を、8%ポリビニルアルコール水溶液中で微小滴になるように乳化分散し、加温しながら攪拌を続けた後、水溶性脂肪族変性アミン2.5部を加え、更に攪拌を続けて可逆熱変色性マイクロカプセル顔料懸濁液を得た。
前記懸濁液からマイクロカプセル顔料を遠心分離により単離し、赤色から無色に変色する可逆熱変色性マイクロカプセル顔料Bを得た(平均粒子径:2μm)。
前記マイクロカプセル顔料BはT:−20℃、T:−12.0℃、T:36.0℃、T:60.0℃、T:−16.0℃、T:48.0℃、ΔH:64.0℃の変色特性を示した。
【0038】
ボールペン用インキ組成物の調製
前記マイクロカプセル顔料(乾燥物、予め冷却して発色させたもの)を用いて、実施例1乃至5及び比較例1乃至3で示した配合物を混合し、1時間攪拌することにより、ボールペン用インキ組成物が得られる。
【0039】
ボールペンの作製
各実施例、比較例のインキ組成物を、直径0.7mmのボールを抱持するステンレススチール製チップがポリプロピレン製パイプの一端に嵌着されたインキ収容管に充填し、ボールペンレフィルを得た。
前記ボールペンレフィルを軸筒に組み込み、キャップを装着してボールペンを得た。
なお、軸筒後端にはSEBS樹脂製の摩擦部材を固着してなる。
前記ボールペンを用いて紙面に筆記して得られる筆跡は、摩擦部材により摩擦すると消色し、この状態は通常の室温(25℃)下で保持することができた。また、筆跡を消色させた紙面を冷凍庫に入れて−22℃以下に冷却すると、再び文字部分が発色し、前記変色挙動を繰り返し再現することができた。
【0040】
前記ボールペンを用いて、以下の試験を行った。
耐ドライアップ性試験
キャップを外した状態の前記ボールペンを25℃の室温下で10日間放置した後、筆記を行ない、筆跡の状態を目視により観察した。
筆跡乾燥性試験
前記ボールペンを用いて上質紙に筆記し、筆記から5秒後に摩擦体で摩擦した際の筆跡の状態を目視により観察した。
耐ドライアップ性試験及び筆跡乾燥性試験の結果を以下の表に示す。
【0041】
【表3】

【0042】
尚、前記表中の判定結果は以下の通り。
耐ドライアップ性試験
◎:均一でかすれのない良好な筆跡が得られる。
○:かすれのない筆跡が得られる。
△:筆跡が若干かすれる。
×:筆跡に著しいかすれが見られる。
筆跡乾燥性試験
◎:インキによる紙面や摩擦体の汚れが無く、筆跡を完全に消去できる。
○:摩擦体が若干汚れるが、インキによる紙面の汚れは見られない。
△:インキにより摩擦体と紙面がわずかに汚れる。
×:インキによる紙面と摩擦体の汚れが著しい。
【0043】
実施例6
出没式ボールペンの作製
実施例1のインキ組成物を、直径0.7mmのボールを抱持するステンレススチール製チップがポリプロピレン製パイプの一端に嵌着されたインキ収容管に充填してボールペンレフィルを得た。
前記ボールペンレフィルを軸筒内に組み込み、出没機構の作動によってボールペンレフィルの筆記先端部が軸筒前端開口部から出没する出没式ボールペンを得た。
前記出没式ボールペンを25℃で30日間放置した後、筆記しても筆跡がかすれることなく良好に筆記することができた。
【0044】
実施例7
出没式ボールペンの作製
実施例3のインキ組成物を、直径0.5mmのボールを抱持するステンレススチール製チップがポリプロピレン製パイプの一端に嵌着されたインキ収容管に充填してボールペンレフィルを得た。
前記ボールペンレフィルを軸筒内に組み込み、出没機構の作動によってボールペンレフィルの筆記先端部が軸筒前端開口部から出没する出没式ボールペンを得た。
前記出没式ボールペンを25℃で30日間放置した後、筆記しても筆跡がかすれることなく良好に筆記することができた。
【0045】
実施例8
出没式ボールペンの作製
実施例1のインキ組成物を、直径0.5mmのボールを抱持するステンレススチール製チップがポリプロピレン製パイプの一端に嵌着されたインキ収容管に充填してボールペンレフィルを得た。
実施例3のインキ組成物を、直径0.5mmのボールを抱持するステンレススチール製チップがポリプロピレン製パイプの一端に嵌着されたインキ収容管に充填してボールペンレフィルを得た。
前記複数のボールペンレフィルを軸筒内に組み込み、出没機構の作動によっていずれかのボールペンレフィルの筆記先端部が軸筒前端開口部から出没する出没式ボールペン(複合式ボールペン)を得た。
前記出没式ボールペンを25℃で30日間放置した後、筆記しても筆跡がかすれることなく良好に筆記することができた。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】可逆熱変色性マイクロカプセル顔料の温度−色濃度曲線の説明図である。
【図2】色彩記憶性を有する可逆熱変色性マイクロカプセル顔料の温度−色濃度曲線の説明図である。
【符号の説明】
【0047】
完全発色温度
発色開始温度
消色開始温度
完全消色温度
ΔH ヒステリシス幅

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(イ)電子供与性呈色性有機化合物、(ロ)電子受容性化合物、(ハ)前記(イ)、(ロ)の呈色反応をコントロールする反応媒体からなる可逆熱変色性組成物を内包させた可逆熱変色性マイクロカプセル顔料と、主溶剤として20℃における蒸気圧が5mmHg未満の有機溶剤とから少なくともなり、前記可逆熱変色性マイクロカプセル顔料が、色濃度−温度曲線に関して有色状態と無色状態の互変性を呈し、該顔料は有色状態から温度が上昇する過程では、温度Tに達すると消色し始め、温度Tより高い温度T以上の温度域で完全に無色状態となり、無色状態から温度が下降する過程では、温度Tより低い温度Tに達すると着色し始め、温度Tより低い温度T以下の温度域で完全に着色状態となるヒステリシス特性を示し、温度Tが45〜90℃の範囲にあるボールペン用油性インキ組成物。
【請求項2】
前記可逆熱変色性マイクロカプセル顔料の温度Tは−50〜0℃の範囲にある請求項1記載のボールペン用油性インキ組成物。
【請求項3】
前記可逆熱変色性マイクロカプセル顔料は、色濃度−温度曲線に関して40℃乃至100℃のヒステリシス幅(ΔH)を示す請求項1又は2記載のボールペン用油性インキ組成物。
【請求項4】
前記主溶剤の溶解度パラメーターが13以下である請求項1乃至3のいずれか一項に記載のボールペン用油性インキ組成物。
【請求項5】
(イ)、(ロ)の呈色反応をコントロールする反応媒体である前記(ハ)成分が下記一般式(1)で示される化合物である請求項1乃至4のいずれか一項に記載のボールペン用油性インキ組成物。
【化1】

〔式中、Rは水素原子又はメチル基を示し、mは0〜2の整数を示し、X、Xのいずれか一方は−(CHOCOR又は−(CHCOOR、他方は水素原子を示し、nは0〜2の整数を示し、Rは炭素数4以上のアルキル基又はアルケニル基を示し、Y及びYは水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、メトキシ基、又は、ハロゲンを示し、r及びpは1〜3の整数を示す。〕
【請求項6】
前記請求項1乃至5のいずれか一項に記載のボールペン用油性インキ組成物を収容してなるボールペン。
【請求項7】
キャップを備えてなる請求項6記載のボールペン。
【請求項8】
請求項1乃至5のいずれか一項に記載のボールペン用油性インキ組成物を、ボールを抱持したボールペンチップを備えたボールペンレフィル内に収容してなり、出没機構の作動によって前記ボールペンレフィルの筆記先端部が軸筒前端開口部から出没するボールペン。
【請求項9】
軸筒内にボールを抱持したボールペンチップを備えた複数本のボールペンレフィルを収容してなり、出没機構の作動によっていずれかのボールペンレフィルの筆記先端部が軸筒前端開口部から出没する請求項8記載のボールペン。
【請求項10】
摩擦部材を備えてなる請求項6乃至9のいずれか一項に記載のボールペン。
【請求項11】
請求項6乃至9のいずれか一項に記載のボールペンと、摩擦体とからなるボールペンセット。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−292935(P2009−292935A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−147624(P2008−147624)
【出願日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【出願人】(000111890)パイロットインキ株式会社 (832)
【Fターム(参考)】