説明

ポジ型レジスト材料及びこれを用いたパターン形成方法

【解決手段】カルボキシル基の水素原子が環構造を有する酸不安定基で置換されている(メタ)アクリレートの繰り返し単位を含む重量平均分子量が1,000〜500,000の範囲である高分子化合物と、ジヒドロキシナフタレンのノボラック樹脂と、光酸発生剤とを含有するポジ型レジスト材料。
【効果】本発明のポジ型レジスト材料は、高反射の段差基板上での解像性と埋め込み特性と密着性に優れ、高解像性を有し、露光後のパターン形状とエッジラフネスが良好である。従って、特に超LSI製造用あるいはEB描画によるフォトマスクの微細パターン形成材料として好適なポジ型レジスト材料、特には化学増幅ポジ型レジスト材料を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポジ型レジスト材料、特にイオンインプランテーションプロセスに用いられる化学増幅ポジ型レジスト材料のベース樹脂として好適な高分子化合物を用いたポジ型レジスト材料、及びパターン形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、LSIの高集積化と高速度化に伴い、パターンルールの微細化が求められている中、現在汎用技術として用いられている光露光では、光源の波長に由来する本質的な解像度の限界に近づきつつある。レジストパターン形成の際に使用する露光光として、1980年代には水銀灯のg線(436nm)もしくはi線(365nm)を光源とする光露光が広く用いられた。更なる微細化のための手段として、露光波長を短波長化する方法が有効とされ、1990年代の64Mビット(加工寸法が0.25μm以下)DRAM(ダイナミック・ランダム・アクセス・メモリー)以降の量産プロセスには、露光光源としてi線(365nm)に代わって短波長のKrFエキシマレーザー(248nm)が利用された。しかし、更に微細な加工技術(加工寸法が0.2μm以下)を必要とする集積度256M及び1G以上のDRAMの製造には、より短波長の光源が必要とされ、10年ほど前からArFエキシマレーザー(193nm)を用いたフォトリソグラフィーが本格的に検討されてきた。当初ArFリソグラフィーは180nmノードのデバイス作製から適用されるはずであったが、KrFリソグラフィーは130nmノードデバイス量産まで延命され、ArFリソグラフィーの本格適用は90nmノードからである。更に、NAを0.9にまで高めたレンズと組み合わせた65nmノードデバイスの検討が行われている。次の45nmノードデバイスには露光波長の短波長化が推し進められ、波長157nmのF2リソグラフィーが候補に挙がった。しかしながら、投影レンズに高価なCaF2単結晶を大量に用いることによるスキャナーのコストアップ、ソフトペリクルの耐久性が極めて低いためのハードペリクル導入に伴う光学系の変更、レジスト膜のエッチング耐性低下等の種々問題により、F2リソグラフィーの先送りと、ArF液浸リソグラフィーの早期導入が提唱された。
【0003】
ArF液浸リソグラフィーにおいては、投影レンズとウエハーの間に水を含浸させることが提案されている。193nmにおける水の屈折率は1.44であり、NA(開口数)1.0以上のレンズを使ってもパターン形成が可能で、理論上はNAを1.44近くにまで上げることができる。当初、水温変化に伴う屈折率変化による解像性の劣化やフォーカスのシフトが指摘された。水温を1/100℃以内にコントロールすることと、露光によるレジスト膜からの発熱による影響もほぼ心配ないことが確認され、屈折率変化の問題が解決された。水中のマイクロバブルがパターン転写されることも危惧されたが、水の脱気を十分に行うことと、露光によるレジスト膜からのバブル発生の心配がないことが確認された。1980年代の液浸リソグラフィーの初期段階では、ステージを全て水に浸ける方式が提案されていたが、高速スキャナーの動作に対応するために投影レンズとウエハーの間のみに水を挿入し、水の給排水ノズルを備えたパーシャルフィル方式が採用された。水を用いた液浸によって原理的にはNAが1以上のレンズ設計が可能になったが、従来の屈折率系による光学系では巨大なレンズになってしまい、レンズが自身の自重によって変形してしまう問題が生じた。よりコンパクトなレンズ設計のために反射屈折(Catadioptric)光学系が提案され、NA1.0以上のレンズ設計が加速された。NA1.35のレンズと強い超解像技術の組み合わせで45nmノードのデバイスの量産が行われている。
【0004】
CMOSデバイスのpウエルとnウエルを形成するためKrFレジストパターンをマスクにしてイオンを打ち込んで形成される場合があるが、微細化の進行と共にArFレジストパターンが検討されるようになってきた。イオンインプラントのためには、レジストパターンのスペース部分の基板面が現れている必要がある。レジスト膜の下に反射防止膜(BARC)層が存在すると、BARC層によってイオンがトラップされてしまうのである。しかしながら、BARC無しでフォトレジスト膜をパターニングすると、基板反射による定在波が発生し、現像後のレジストパターンの側壁に強い凹凸が生じてしまう。定在波による凹凸をスムージングによって滑らかにするために、酸の拡散を大きくするための酸拡散し易い分子量の小さい酸が発生する酸発生剤(PAG)や高温PEBの適用が効果的とされている。KrF露光のイオンインプラントレジストパターンが解像する200〜300nmの寸法では酸拡散の増大によって解像性が劣化することがなかったが、ArF露光のイオンインプラントレジストパターンが解像する200nm以下の寸法では酸の拡散によって解像性が劣化したりプロキシミティーバイアスが大きくなったりするため、好ましいことではない。
【0005】
フォトレジスト膜自体に吸収を持たせることによって定在波の発生を防止するダイ入りレジストは、最も古典的な方法であり、i線やg線のノボラックレジストから検討されてきた。ArF露光に用いられる吸収成分としてはベンゼン環がベースポリマーへ導入されたり、ベンゼン環を有する添加剤の検討が行われている。しかしながら、吸収成分によって完全に定在波を防止することはできないし、吸収を大きくすると定在波は低減するもののレジストパターンの断面が台形のテーパー形状になってしまう問題が生じる。
【0006】
ナフタレン環はベンゼン環よりもエッチング耐性が高いために、レジストポリマーへの適用が試みられている(特許文献1,2:特許第3829913号公報、特許第3796568号公報)。特にヒドロキシ基を有するナフタレン環やアセナフテンは、ラクトン環だけを密着性基として用いた場合よりも基板への密着性が向上するメリットがある。
【0007】
酸不安定基を有するメタクリレートをクレゾールノボラックとブレンドしたKrF露光でパターンを形成するイオンインプランテーションレジスト材料が提案されている(特許文献3:米国特許第5372912号明細書)。この場合、安価なクレゾールノボラック樹脂を用いることができる価格的なメリットがあるが、クレゾールノボラック樹脂の強い吸収のためにArF露光には適用することができない。
【0008】
酸不安定基で置換又は未置換のヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシナフタレンを添加したイオンインプランテーションレジスト材料が提案されている(特許文献4:特開2007−79552号公報)。モノマー成分を添加することによって、段差基板上での埋め込み特性を向上させることができる。しかしながら、ナフタレンは昇華性があるためにベーク中にナフタレン成分が蒸発し、ホットプレートの天板に付着する問題を引き起こすリスクがある。
ナフタレン環、アセナフテンを有するイオンインプランテーションレジスト材料が提案されている(特許文献5:特開2008−197606号公報)。ナフタレンを有するモノマー及びアセナフチレンを、酸不安定基を有するモノマー及びラクトンを有する密着性基のモノマーと共重合した高分子化合物をベースポリマーとして用いている。ここで、ナフタレンがヒドロキシ基を有している場合は基板密着性が向上するが、埋め込み特性が向上することはない。
【0009】
t−ブチル(メタ)アクリレートとノボラック樹脂をブレンドした厚膜レジスト材料が提案されている(特許文献6:特開2008−249993号公報)。ここでノボラック樹脂としてジヒドロキシナフタレンを用いたノボラック樹脂が挙げられている。しかしながら、イオンインプランテーション用途とした場合、酸不安定基がt−ブチルでは溶解阻止能が不足するためにリソグラフィー特性が劣り、イオンを打ち込んだときのマスク機能が劣る問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特許第3829913号公報
【特許文献2】特許第3796568号公報
【特許文献3】米国特許第5372912号明細書
【特許文献4】特開2007−79552号公報
【特許文献5】特開2008−197606号公報
【特許文献6】特開2008−249993号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は上記事情に鑑みなされたもので、高反射基板上でパターンを形成するための吸収を有し、露光後のパターン形状と密着性と段差基板での埋め込み特性が良好であるポジ型レジスト材料、特に化学増幅ポジ型レジスト材料、及びパターン形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、近年要望されるArF露光でパターンを形成した後にイオンインプランテーションを行うためのレジスト材料を得るべく鋭意検討を重ねた結果、環状の酸不安定基を有する(メタ)アクリレートとジヒドロキシナフタレンのノボラック樹脂をブレンドしたベース樹脂をポジ型レジスト材料、特に化学増幅ポジ型レジスト材料のベース樹脂として用いれば極めて有効であることを知見し、本発明を完成させたものである。
【0013】
即ち、本発明者らは、高反射基板で露光するために、波長193nmのArFエキシマレーザーに適度な吸収を有するナフタレン環を用いることを考えた。ナフタレン環を前述に挙げられるように酸不安定基を繰り返し単位として有するメタクリレートに共重合して導入した場合、基板反射を抑え無機基板での密着性を向上させることはできるが、段差基板上での埋め込み特性を向上させることはできない。埋め込み特性を向上させるには、低分子体を添加することが効果的であるが、酸不安定基を有する樹脂の分子量を下げると酸の拡散が大きくなって解像性を劣化させる。ジヒドロキシナフタレン等のモノマーの添加はベーク中の昇華成分の発生につながる。そこで、本発明者らは酸不安定基を繰り返し単位として有する(メタ)アクリレートとジヒドロキシナフタレンのノボラック樹脂をブレンドした樹脂をベース樹脂として用いることが有効であることを知見した。ノボラック樹脂は分子量分布が広く、分子量自体が低いために埋め込み特性に優れ、モノマー成分の添加に比べて昇華成分の発生を抑えることができ、基板密着性を向上させることもできる。
【0014】
本発明のポジ型レジスト材料は、特に高反射の段差基板上での解像性と埋め込み特性と密着性に優れ、高解像性を有し、プロセス適応性に優れ、露光後のパターン形状が良好である。従って、これらの優れた特性を有することから実用性が極めて高く、超LSI用イオンインプランテーションプロセス用レジスト材料及びマスクパターン形成材料として非常に有効である。
【0015】
即ち、本発明は、下記ポジ型レジスト材料及びこれを用いたパターン形成方法を提供する。
〔1〕
カルボキシル基の水素原子が環構造を有する酸不安定基で置換されている(メタ)アクリレートの繰り返し単位を含む重量平均分子量が1,000〜500,000の範囲である高分子化合物と、ジヒドロキシナフタレンのノボラック樹脂と、光酸発生剤とを含有することを特徴とするポジ型レジスト材料。
〔2〕
カルボキシル基の水素原子が環構造を有する酸不安定基で置換されている(メタ)アクリレートの繰り返し単位が、下記一般式(1)で示されることを特徴とする〔1〕記載のポジ型レジスト材料。
【化1】


(式中、R1は水素原子又はメチル基である。Xは単結合、エステル基,エーテル基及びラクトン環から選ばれる1種又は2種以上を有する炭素数1〜12の連結基、又はナフチレン基であり、R2は環構造を有する酸不安定基である。)
〔3〕
ジヒドロキシナフタレンのノボラック樹脂が、下記一般式(2)で示される繰り返し単位を有する重量平均分子量が400〜20,000の範囲の樹脂であることを特徴とする〔1〕又は〔2〕記載のポジ型レジスト材料。
【化2】


(式中、R3は水素原子、炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、炭素数2〜10のアルケニル基、又は炭素数6〜10のアリール基であり、ヒドロキシ基、アルコキシ基もしくはアシロキシ基、エーテル基、又はスルフィド基を有していてもよい。R4は水素原子、又は炭素数1〜6の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基である。mは1〜4の整数である。)
〔4〕
下記一般式(1)で示される、カルボキシル基の水素原子が環構造を有する酸不安定基で置換されている(メタ)アクリレートの繰り返し単位aと、ヒドロキシ基、カルボキシル基、ラクトン環、カーボネート基、チオカーボネート基、カルボニル基、環状アセタール基、エーテル基、エステル基、スルホン酸エステル基、シアノ基及びアミド基から選ばれる密着性基を有する繰り返し単位bを共重合した(ここで0<a<1.0、0<b<1.0、0.2≦a+b≦1.0の範囲である。)重量平均分子量が1,000〜500,000の範囲である高分子化合物と、下記一般式(2)で示されるジヒドロキシナフタレンノボラック樹脂とをベース樹脂とし、光酸発生剤を含有することを特徴とするポジ型レジスト材料。
【化3】


(式中、R1は水素原子又はメチル基である。Xは単結合、エステル基,エーテル基及びラクトン環から選ばれる1種又は2種以上を有する炭素数1〜12の連結基、又はナフチレン基であり、R2は環構造を有する酸不安定基である。)
【化4】


(式中、R3は水素原子、炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、炭素数2〜10のアルケニル基、又は炭素数6〜10のアリール基であり、ヒドロキシ基、アルコキシ基もしくはアシロキシ基、エーテル基、又はスルフィド基を有していてもよい。R4は水素原子、又は炭素数1〜6の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基である。mは1〜4の整数である。)
〔5〕
更に、有機溶剤を含有する化学増幅型のレジスト材料であることを特徴とする〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載のポジ型レジスト材料。
〔6〕
更に、添加剤として塩基性化合物及び/又は界面活性剤を配合してなることを特徴とする〔5〕記載のポジ型レジスト材料。
〔7〕
〔1〕〜〔6〕のいずれかに記載のポジ型レジスト材料を基板上に塗布する工程と、加熱処理後、高エネルギー線で露光する工程と、現像液を用いて現像する工程とを含むことを特徴とするパターン形成方法。
〔8〕
高エネルギー線としてArFエキシマレーザーを用いることを特徴とする〔7〕記載のパターン形成方法。
〔9〕
現像液を用いてレジストパターンを形成した後に基板にイオンを打ち込むことを特徴とする〔7〕又は〔8〕記載のパターン形成方法。
【0016】
以上のような本発明のポジ型レジスト材料、特には化学増幅ポジ型レジスト材料の用途としては、例えば、半導体回路形成におけるリソグラフィーだけでなく、マスク回路パターンの形成、あるいはマイクロマシーン、薄膜磁気ヘッド回路形成にも応用することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明のポジ型レジスト材料は、高反射の段差基板上での解像性と埋め込み特性と密着性に優れ、高解像性を有し、露光後のパターン形状とエッジラフネスが良好である。従って、特に超LSI製造用あるいはEB描画によるフォトマスクの微細パターン形成材料として好適なポジ型レジスト材料、特には化学増幅ポジ型レジスト材料を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明につき更に詳しく説明する。
本発明に係るレジスト材料は、カルボキシル基の水素原子が環構造を有する酸不安定基で置換されている(メタ)アクリレートの繰り返し単位を含む高分子化合物、好ましくは下記一般式(1)で示される繰り返し単位を含む高分子化合物をベース樹脂にしていることを特徴とするレジスト材料である。
【化5】


(式中、R1は水素原子又はメチル基である。Xは単結合、エステル基(−COO−),エーテル基(−O−)及びラクトン環から選ばれる1種又は2種以上を有する炭素数1〜12の連結基、又はナフチレン基であり、R2は環構造を有する酸不安定基である。)
【0019】
一般式(1)で示される酸不安定基を有する繰り返し単位aを得るためのモノマーMaとしては、下記一般式で示すことができる。
【化6】

ここで、R1、R2、Xは前述の通りである。
【0020】
この場合、Xの炭素数1〜12の連結基としては、直鎖状、分岐状又は環状のアルキレン基,フェニレン基,ナフチレン基等のアリーレン基、及びこれらのアルキレン基とアリーレン基が結合したアラルキレン基等が挙げられる。また、Xのラクトン環を有する炭素数1〜12の連結基としては、下記のものを例示することができる。
【化7】

【0021】
繰り返し単位aを得るためのモノマーMaとしては、具体的には下記に例示される。
【化8】

【0022】
一般式(1)中のR2の酸不安定基は、種々選定されるが、同一でも異なっていてもよく、特に下記式(A−1)で置換された基で示されるものが挙げられる。
【化9】

【0023】
34は炭素数1〜16の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数2〜16のアルケニル基であり、酸素原子、硫黄原子などを含んでいてもよい。R35とR36は互いに結合してこれらが結合する炭素原子と共に炭素数3〜20、特に4〜16の非芳香環を形成する。
【0024】
式(A−1)において、三級アルキル基としては、下記式(A−1)−1〜(A−1)−10で示される基等を具体的に挙げることができる。
【化10】

【0025】
また、R2としては、下記式(A−1)−11〜(A−1)−17で示される基等も好ましく使用できる。
【化11】

【0026】
式(A−1)−1〜(A−1)−17中、R43は同一又は異種の炭素数1〜8の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、又は炭素数6〜20のフェニル基、ナフチレン基等のアリール基を示す。R44、R45は水素原子、又は炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基を示す。
【0027】
特に式(A−1)の酸不安定基を有する繰り返し単位aとしては、下記式(A−1)−21に示されるエキソ体構造を有する(メタ)アクリル酸エステルの繰り返し単位が好ましく挙げられる。
【化12】


(式中、R1は前述の通り、Rc3は炭素数1〜8の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基又は炭素数6〜20の置換されていてもよいアリール基を示す。Rc4〜Rc9及びRc12、Rc13はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜15のヘテロ原子を含んでもよい1価の炭化水素基を示し、Rc10、Rc11は水素原子又は炭素数1〜15のヘテロ原子を含んでもよい1価の炭化水素基を示す。Rc4とRc5、Rc6とRc8、Rc6とRc9、Rc7とRc9、Rc7とRc13、Rc8とRc12、Rc10とRc11又はRc11とRc12は互いに環を形成していてもよく、その場合には環の形成に関与する基は炭素数1〜15のヘテロ原子を含んでもよい2価の炭化水素基を示す。またRc4とRc13、Rc10とRc13又はRc6とRc8は隣接する炭素に結合するもの同士で何も介さずに結合し、二重結合を形成してもよい。また、本式により、鏡像体も表す。)
【0028】
ここで、一般式(A−1)−21に示すエキソ構造を有する繰り返し単位を得るためのエステル体のモノマーとしては特開2000−327633号公報に示されている。具体的には下記に挙げることができるが、これらに限定されることはない。
【0029】
【化13】

【0030】
また、酸不安定基を有する繰り返し単位aとしては、下記式(A−1)−22に示されるフランジイル基、テトラヒドロフランジイル基又はオキサノルボルナンジイル基を有する(メタ)アクリル酸エステルの繰り返し単位を挙げることができる。
【化14】

(式中、R1は前述の通りである。Rc14、Rc15はそれぞれ独立に炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状の1価炭化水素基を示す。Rc14、Rc15は互いに結合してこれらが結合する炭素原子と共に脂肪族炭化水素環を形成してもよい。Rc16はフランジイル基、テトラヒドロフランジイル基又はオキサノルボルナンジイル基から選ばれる2価の基を示す。Rc17は水素原子又はヘテロ原子を含んでもよい炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状の1価炭化水素基を示す。)
【0031】
フランジイル基、テトラヒドロフランジイル基又はオキサノルボルナンジイル基を有する酸不安定基で置換された繰り返し単位を得るためのモノマーは、下記に例示される。なお、Acはアセチル基、Meはメチル基を示す。
【0032】
【化15】

【0033】
【化16】

【0034】
繰り返し単位aのカルボキシル基の水素原子を下記一般式(A−1)−23で示される酸不安定基によって置換することもできる。
【化17】


(式中、R23-1は水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、アルコキシ基、アルカノイル基又はアルコキシカルボニル基である。m23は0又は1〜4の整数である。)
【0035】
式(A−1)−23で示される酸不安定基によって置換されたカルボキシル基を有するモノマーは、具体的には下記に例示される。
【化18】

【0036】
また、本発明において、ベース樹脂は、一般式(1)で示される繰り返し単位aに加えて、ヒドロキシ基、カルボキシル基、ラクトン環、カーボネート基、チオカーボネート基、カルボニル基、環状アセタール基、エーテル基、エステル基、スルホン酸エステル基、シアノ基及びアミド基から選ばれる密着性基を有する繰り返し単位bを共重合した重量平均分子量が1,000〜500,000の範囲である高分子化合物(ここで0<a<1.0、0<b<1.0、0.2≦a+b≦1.0の範囲である。)であることが好ましい。
【0037】
ヒドロキシ基、カルボキシル基、ラクトン環、カーボネート基、チオカーボネート基、カルボニル基、環状アセタール基、エーテル基、エステル基、スルホン酸エステル基、シアノ基及びアミド基から選ばれる密着性基を有する繰り返し単位bを得るためのモノマーとしては、具体的には下記に例示することができる。
【化19】

【0038】
【化20】

【0039】
【化21】

【0040】
【化22】

【0041】
【化23】

【0042】
【化24】

【0043】
【化25】

【0044】
【化26】

【0045】
【化27】

【0046】
【化28】

【0047】
【化29】

【0048】
【化30】

【0049】
ヒドロキシ基を有するモノマーの場合、重合時にヒドロキシ基をエトキシエトキシ基などの酸によって脱保護し易いアセタール基で置換しておいて重合後に弱酸と水によって脱保護を行ってもよいし、アセチル基、ホルミル基、ピバロイル基等で置換しておいて重合後にアルカリ加水分解を行ってもよい。
【0050】
本発明では、酸不安定基を有する繰り返し単位a、密着性基を有する繰り返し単位b以外の繰り返し単位を共重合することもでき、下記一般式(3)で示されるスルホニウム塩c1、c2、c3を持つ繰り返し単位cを共重合することができる。特開平4−230645号公報、特開2005−84365号公報、特開2006−45311号公報には、特定のスルホン酸が発生する重合性オレフィンを有するスルホニウム塩、ヨードニウム塩が提案されている。特開2006−178317号公報には、スルホン酸が主鎖に直結したスルホニウム塩が提案されている。
【0051】
【化31】


(式中、R20、R24、R28は水素原子又はメチル基、R21は単結合、フェニレン基、−O−R−、又は−C(=O)−Y−R−である。Yは酸素原子又はNH、Rは炭素数1〜6の直鎖状、分岐状又は環状のアルキレン基、アルケニレン基又はフェニレン基であり、カルボニル基(−CO−)、エステル基(−COO−)、エーテル基(−O−)又はヒドロキシ基を含んでいてもよい。R22、R23、R25、R26、R27、R29、R30、R31は同一又は異種の炭素数1〜12の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基であり、カルボニル基、エステル基又はエーテル基を含んでいてもよく、又は炭素数6〜12のアリール基、炭素数7〜20のアラルキル基又はチオフェニル基を表す。Z0は単結合、メチレン基、エチレン基、フェニレン基、フッ素化されたフェニレン基、−O−R32−、又は−C(=O)−Z1−R32−である。Z1は酸素原子又はNH、R32は炭素数1〜6の直鎖状、分岐状又は環状のアルキレン基、アルケニレン基又はフェニレン基であり、カルボニル基、エステル基、エーテル基又はヒドロキシ基を含んでいてもよい。M-は非求核性対向イオンを表す。0≦c1≦0.5、0≦c2≦0.5、0≦c3≦0.5、0≦c1+c2+c3≦0.5である。)
【0052】
ポリマー主鎖に酸発生剤を結合させることによって酸拡散を小さくし、酸拡散のぼけによる解像性の低下を防止できる。また、酸発生剤が均一に分散することによってエッジラフネス(LER、LWR)が改善される。
【0053】
-の非求核性対向イオンとしては、塩化物イオン、臭化物イオン等のハライドイオン、トリフレート、1,1,1−トリフルオロエタンスルホネート、ノナフルオロブタンスルホネート等のフルオロアルキルスルホネート、トシレート、ベンゼンスルホネート、4−フルオロベンゼンスルホネート、1,2,3,4,5−ペンタフルオロベンゼンスルホネート等のアリールスルホネート、メシレート、ブタンスルホネート等のアルキルスルホネート、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、ビス(パーフルオロエチルスルホニル)イミド、ビス(パーフルオロブチルスルホニル)イミド等のイミド酸、トリス(トリフルオロメチルスルホニル)メチド、トリス(パーフルオロエチルスルホニル)メチドなどのメチド酸を挙げることができる。
【0054】
更には、下記一般式(K−1)に示されるα位がフルオロ置換されたスルホネート、下記一般式(K−2)に示されるα,β位がフルオロ置換されたスルホネートが挙げられる。
【化32】

【0055】
一般式(K−1)中、R102は水素原子、炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基、又は炭素数6〜20のアリール基であり、エーテル基、エステル基、カルボニル基、ラクトン環、又はフッ素原子を有していてもよい。
一般式(K−2)中、R103は水素原子、炭素数1〜30の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、アシル基、炭素数2〜20のアルケニル基、炭素数6〜20のアリール基、又はアリーロキシ基であり、エーテル基、エステル基、カルボニル基、又はラクトン環を有していてもよい。
【0056】
また、下記一般式(4)に示されるインデンd1、アセナフチレンd2、クロモンd3、クマリンd4、ノルボルナジエンd5などの繰り返し単位dを共重合することもできる。
【化33】


(式中、R110〜R114は水素原子、炭素数1〜30のアルキル基、一部又は全てがハロゲン原子で置換されたアルキル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アルカノイル基又はアルコキシカルボニル基、又は炭素数6〜10のアリール基、ハロゲン原子、又は1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール基である。Xはメチレン基、酸素原子、又は硫黄原子である。0≦d1≦0.4、0≦d2≦0.4、0≦d3≦0.4、0≦d4≦0.4、0≦d5≦0.4、0≦d1+d2+d3+d4+d5≦0.5である。)
【0057】
繰り返し単位a、b、c、d以外に共重合できる繰り返し単位eとしては、スチレン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン、ビニルピレン、メチレンインダンなどに由来するものが挙げられる。
【0058】
これら高分子化合物を合成するには、1つの方法としては、繰り返し単位a〜eを与えるモノマーのうち所望のモノマーを、有機溶剤中、ラジカル重合開始剤を加えて加熱重合を行い、共重合体の高分子化合物を得ることができる。
【0059】
重合時に使用する有機溶剤としてはトルエン、ベンゼン、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジオキサン、シクロヘキサン、シクロペンタン、メチルエチルケトン、γ−ブチロラクトン等が例示できる。重合開始剤としては、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、ジメチル2,2−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、ベンゾイルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド等が例示でき、好ましくは50〜80℃に加熱して重合できる。反応時間としては2〜100時間、好ましくは5〜20時間である。
【0060】
ヒドロキシスチレン、ヒドロキシビニルナフタレンを共重合する場合は、ヒドロキシスチレン、ヒドロキシビニルナフタレンの代わりにアセトキシスチレン、アセトキシビニルナフタレンを用い、重合後上記アルカリ加水分解によってアセトキシ基を脱保護してヒドロキシスチレン単位、ヒドロキシビニルナフタレン単位にする方法もある。
【0061】
アルカリ加水分解時の塩基としては、アンモニア水、トリエチルアミン等が使用できる。また反応温度としては−20〜100℃、好ましくは0〜60℃であり、反応時間としては0.2〜100時間、好ましくは0.5〜20時間である。
【0062】
ここで、繰り返し単位a、b、c、d、eのモル割合は、0<a<1.0、0<b≦0.9、0≦c≦0.5、0≦d≦0.5、0≦e≦0.5、特に0.1≦a≦0.9、0.1≦b≦0.9、0≦c≦0.4、0≦d≦0.4、0≦e≦0.4であり、好ましくは0.15≦a≦0.8、0.2≦b≦0.8、0≦c≦0.3、0≦d≦0.3、0≦e≦0.3、より好ましくは0.20≦a≦0.7、0.25≦b≦0.7、0≦c≦0.25、0≦d≦0.25、0≦e≦0.25である。ここで、c=c1+c2+c3、d=d1+d2+d3+d4+d5である。この場合、繰り返し単位a〜eの合計はa+b+c+d+e=1である。
【0063】
本発明のポジ型レジスト材料に用いられる高分子化合物は、重量平均分子量が1,000〜500,000、好ましくは2,000〜30,000である。重量平均分子量が小さすぎるとレジスト材料が耐熱性に劣るものとなり、大きすぎるとアルカリ溶解性が低下し、パターン形成後に裾引き現象が生じ易くなってしまう。
なお、重量平均分子量(Mw)は溶剤としてテトラヒドロフランを用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算の測定値である(以下、同じ)。
【0064】
更に、本発明のポジ型レジスト材料に用いられる高分子化合物においては、多成分共重合体の分子量分布(Mw/Mn)が広い場合は低分子量や高分子量のポリマーが存在するために、露光後パターン上に異物が見られたり、パターンの形状が悪化したりする。それ故、パターンルールが微細化するに従ってこのような分子量、分子量分布の影響が大きくなり易いことから、微細なパターン寸法に好適に用いられるレジスト材料を得るには、使用する多成分共重合体の分子量分布は1.0〜2.0、特に1.0〜1.5と狭分散であることが好ましい。
また、組成比率や分子量分布や分子量が異なる2つ以上のポリマーや、一般式(1)で示される繰り返し単位aを共重合していないポリマーをブレンドすることも可能である。
【0065】
本発明のポジ型レジスト材料のベース樹脂には、前述の高分子化合物に加えてジヒドロキシナフタレンノボラック樹脂をブレンドすることを特徴とする。ジヒドロキシナフタレンノボラック樹脂をブレンドすることによって段差基板上での埋め込み特性が向上し、波長193nmのArFエキシマレーザーにおける適度な吸収を有することにより基板反射を抑える効果があり、無機基板上の密着性が向上する。
【0066】
ジヒドロキシナフタレンノボラック樹脂を得るためのジヒドロキシナフタレンとしては、1,2−ジヒドロキシナフタレン、1,3−ジヒドロキシナフタレン、1,4−ジヒドロキシナフタレン、1,5−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、1,7−ジヒドロキシナフタレン、1,8−ジヒドロキシナフタレン、2,3−ジヒドロキシナフタレン、2,4−ジヒドロキシナフタレン、2,5−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレン、2,8−ジヒドロキシナフタレンを挙げることができる。ジヒドロキシナフタレンと共縮合できる化合物としては、1−ナフトール、2−ナフトール、2−メチル−1−ナフトール、4−メトキシ−1−ナフトール、7−メトキシ−2−ナフトール、6−メトキシ−2−ナフトール、3−メトキシ−2−ナフトール、1,4−ジメトキシナフタレン、1,5−ジメトキシナフタレン、1,6−ジメトキシナフタレン、1,7−ジメトキシナフタレン、1,8−ジメトキシナフタレン、2,3−ジメトキシナフタレン、2,6−ジメトキシナフタレン、2,7−ジメトキシナフタレン、3−ヒドロキシ−ナフタレン−2−カルボン酸メチル、ナフタレン、1−メチルナフタレン、2−メチルナフタレン、1,2−ジメチルナフタレン、1,3−ジメチルナフタレン、1,4−ジメチルナフタレン、1,5−ジメチルナフタレン、1,6−ジメチルナフタレン、1,7−ジメチルナフタレン、1,8−ジメチルナフタレン、2,3−ジメチルナフタレン、2,6−ジメチルナフタレン、2,7−ジメチルナフタレン、1−エチルナフタレン、2−エチルナフタレン、1−プロピルナフタレン、2−プロピルナフタレン、1−ブチルナフタレン、2−ブチルナフタレン、1−フェニルナフタレン、1−シクロヘキシルナフタレン、1−シクロペンチルナフタレン、1,1’−ビ(2−ナフトール)、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、インデン、ヒドロキシアントラセン、アセナフチレン、アセナフテン、ビフェニル、ビスフェノール、トリスフェノール、ジシクロペンタジエン、1,5−ジメチルナフタレンを挙げることができ、ジヒドロキシナフタレン類と、それ以外の2元共縮合であってもよい。ジヒドロキシナフタレン類は、1種類であっても2種類以上であってもよい。
【0067】
なお、ジヒドロキシナフタレンを他の化合物と共縮合する場合、ジヒドロキシナフタレンの割合は99〜1モル%、特に95〜5モル%が好ましい。
【0068】
ジヒドロキシナフタレンノボラック樹脂のアルカリ溶解速度は速く、このため上記(メタ)アクリレートの繰り返し単位を含む高分子化合物とブレンドしたレジスト材料の現像後のスペース部分のスカムの発生を抑えることができるが、アルカリ溶解速度が速すぎるとレジストパターンの膜減りを生じさせることがある。アルカリ溶解速度を低下させるためにヒドロキシ基が1つのナフトールあるいはヒドロキシ基がアルコキシ基で置換されたアルコキシナフタレン、ジアルコキシナフタレンを共縮合することが有効である。
【0069】
ジヒドロキシナフタレン類をノボラック樹脂にする場合、アルデヒド類を加えてノボラック化する。ノボラック化することによって分子量が増大し、ベーク時の低分子量体によるアウトガスやパーティクルの発生を抑えることができる。
ここで用いられるアルデヒド類としては、例えばホルムアルデヒド、トリオキサン、パラホルムアルデヒド、ベンズアルデヒド、メトキシベンズアルデヒド、フェニルベンズアルデヒド、トリチルベンズアルデヒド、シクロヘキシルベンズアルデヒド、シクロペンチルベンズアルデヒド、t−ブチルベンズアルデヒド、ナフタレンアルデヒド、ヒドロキシナフタレンアルデヒド、アントラセンアルデヒド、フルオレンアルデヒド、ピレンアルデヒド、メトキシナフタレンアルデヒド、ジメトキシナフタレンアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピルアルデヒド、フェニルアセトアルデヒド、ナフタレンアセトアルデヒド、置換又は非置換のカルボキシルナフタレンアセトアルデヒド、α−フェニルプロピルアルデヒド、β−フェニルプロピルアルデヒド、o−ヒドロキシベンズアルデヒド、m−ヒドロキシベンズアルデヒド、p−ヒドロキシベンズアルデヒド、o−クロロベンズアルデヒド、m−クロロベンズアルデヒド、p−クロロベンズアルデヒド、o−ニトロベンズアルデヒド、m−ニトロベンズアルデヒド、p−ニトロベンズアルデヒド、o−メチルベンズアルデヒド、m−メチルベンズアルデヒド、p−メチルベンズアルデヒド、p−エチルベンズアルデヒド、p−n−ブチルベンズアルデヒド、フルフラール、フランカルボキシアルデヒド、チオフェンアルデヒド等を挙げることができる。これらのうち、特にホルムアルデヒドを好適に用いることができる。これらのアルデヒド類は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記アルデヒド類の使用量は、ジヒドロキシナフタレン1モルに対して0.2〜5モルが好ましく、より好ましくは0.5〜2モルである。
【0070】
ジヒドロキシナフタレン類とアルデヒド類の縮合反応に触媒を用いることもできる。具体的には塩酸、硝酸、硫酸、ギ酸、シュウ酸、酢酸、メタンスルホン酸、カンファースルホン酸、トシル酸、トリフルオロメタンスルホン酸等の酸性触媒を挙げることができる。
これらの酸性触媒の使用量は、ジヒドロキシナフタレン類1モルに対して1×10-5〜5×10-1モルである。
【0071】
ジヒドロキシナフタレンノボラック樹脂の分子量は、重量平均分子量で400〜20,000の範囲であり、好ましくは500〜10,000、より好ましくは600〜10,000である。分子量が小さい方が埋め込み特性に優れるが、酸拡散が拡大することによってリソグラフィー特性が劣化することがあるので、埋め込み特性とリソグラフィー特性の観点で最適化する必要がある。埋め込み特性とリソグラフィー特性の両立を行うための一つの方法としては、未重合のジヒドロキシナフタレンをできるだけカットすることであり、低分子の2量体、3量体もできるだけ少ない量にする必要がある。
【0072】
本発明の、酸不安定基を有する(メタ)アクリレートの繰り返し単位を含む高分子化合物とジヒドロキシナフタレンノボラック樹脂との好ましいブレンド比率は、(メタ)アクリレートの繰り返し単位を含む高分子化合物が50〜95質量%であり、ジヒドロキシナフタレンノボラック樹脂が5〜50質量%の範囲である。ジヒドロキシナフタレンノボラック樹脂は、アルカリ可溶性であるために、ブレンド比率が高い場合に現像後のレジストパターンに膜減りが生じる場合がある。また、ジヒドロキシナフタレンノボラック樹脂の波長193nmにおける吸収のために、このブレンド比率が高すぎると、現像後のレジストパターンがテーパー形状になることがあるため、ブレンド比率の最適化が必要である。
【0073】
本発明のポジ型レジスト材料には、本発明のパターン形成方法に用いる化学増幅ポジ型レジスト材料を機能させるために酸発生剤を含んでもよく、例えば、活性光線又は放射線に感応して酸を発生する化合物(光酸発生剤)を含有してもよい。光酸発生剤の成分としては、高エネルギー線照射により酸を発生する化合物であればいずれでも構わない。好適な光酸発生剤としてはスルホニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニルジアゾメタン、N−スルホニルオキシイミド、オキシム−O−スルホネート型酸発生剤等があり、これらは単独であるいは2種以上混合して用いることができる。
酸発生剤の具体例としては、特開2008−111103号公報の段落[0122]〜[0142]に記載されている。
【0074】
特開2008−158339号公報に記載されているα位がフッ素化されていないスルホン酸、及びカルボン酸のスルホニウム塩、ヨードニウム塩、アンモニウム塩等のオニウム塩をクエンチャーとして用いることもできる。α位がフッ素化されたスルホン酸、イミド酸、メチド酸はカルボン酸エステルの酸不安定基を脱保護させるために必要であるが、α位がフッ素化されていないオニウム塩との塩交換によってα位がフッ素化されていないスルホン酸、及びカルボン酸が放出される。α位がフッ素化されていないスルホン酸、及びカルボン酸は脱保護反応を起こさないために、クエンチャーとして機能する。特にα位がフッ素化されていないスルホン酸、及びカルボン酸のスルホニウム塩、ヨードニウム塩は光分解性があるために、光強度が強い部分のクエンチ能が低下すると共にα位がフッ素化されたスルホン酸、イミド酸、メチド酸の濃度が増加する。これによって露光部分のコントラストが向上する。α位がフッ素化されていないスルホン酸、及びカルボン酸のスルホニウム塩、ヨードニウム塩、アンモニウム塩等のオニウム塩は、α位がフッ素化されたスルホン酸、イミド酸、メチド酸の拡散を抑える効果が高い。これは、交換後のオニウム塩の分子量が大きいために、動きにくくなっていることによる。α位がフッ素化されていないスルホン酸、及びカルボン酸のスルホニウム塩、ヨードニウム塩、アンモニウム塩等のオニウム塩や、酸によってアミン化合物が発生するカルバメート化合物の添加は、酸拡散の制御の観点から重要である。
【0075】
本発明のレジスト材料は、更に、有機溶剤、塩基性化合物、溶解制御剤、界面活性剤、アセチレンアルコール類のいずれか1つ以上を含有することができる。
有機溶剤の具体例としては特開2008−111103号公報の段落[0144]〜[0145]、塩基性化合物としては段落[0146]〜[0164]、界面活性剤としては段落[0165]〜[0166]、酸によってアミンが発生する化合物としては特許第3790649号公報記載のカルバメート基を有する化合物、溶解制御剤としては特開2008−122932号公報の段落[0155]〜[0178]、アセチレンアルコール類は段落[0179]〜[0182]に記載されている。特開2008−239918号公報に記載のポリマー型のクエンチャーを添加することもできる。これは、コート後のレジスト表面に配向することによってパターン後のレジストの矩形性を高める。ポリマー型クエンチャーは、液浸露光用の保護膜を適用したときのパターンの膜減りやパターントップのラウンディングを防止する効果もある。
【0076】
なお、酸発生剤の配合量は、ベース樹脂100質量部に対し0.01〜100質量部、特に0.1〜80質量部とすることが好ましく、有機溶剤の配合量は、ベース樹脂100質量部に対し50〜10,000質量部、特に100〜5,000質量部であることが好ましい。また、ベース樹脂100質量部に対し、溶解制御剤は0〜50質量部、特に0〜40質量部、塩基性化合物は0〜100質量部、特に0.001〜50質量部、界面活性剤は0〜10質量部、特に0.0001〜5質量部の配合量とすることが好ましい。
【0077】
本発明のポジ型レジスト材料、例えば有機溶剤と、好ましくは一般式(1)で示される酸不安定基を有する(メタ)アクリレートの繰り返し単位を含む高分子化合物と、好ましくは一般式(2)で示されるジヒドロキシナフタレンノボラック樹脂と、酸発生剤、塩基性化合物を含む化学増幅ポジ型レジスト材料を種々の集積回路製造に用いる場合は、特に限定されないが公知のリソグラフィー技術を適用することができる。
【0078】
例えば、本発明のポジ型レジスト材料を、集積回路製造用の基板(Si、SiO2、SiN、SiON、TiN、WSi、BPSG、SOG、有機反射防止膜等)あるいはマスク回路製造用の基板(Cr、CrO、CrON、MoSi等)上にスピンコート、ロールコート、フローコート、ディップコート、スプレーコート、ドクターコート等の適当な塗布方法により塗布膜厚が0.1〜2.0μmとなるように塗布する。これをホットプレート上で60〜150℃、10秒〜30分間、好ましくは80〜120℃、30秒〜20分間プリベークする。
【0079】
イオンインプランテーションプロセスに用いる場合は、下地はSi基板が多く用いられる。レジスト膜と基板との間に有機反射防止膜(BARC)を敷くことは、レジスト膜の密着性向上によってパターン倒れ防止に効果的であるが、レジストパターンの開口部分がBARC膜で覆われているためにイオンを打ち込むことができない。そのため、イオンインプランテーション用レジスト膜はSi基板上に直接形成される。このため、下地からの反射が大きくなるだけでなく密着性低下によるパターン倒れが問題となる。
密着性向上のために、基板をヘキサメチルジシラザン(HMDS)処理を行うことは有効である。HMDSの分解によってSi基板のシラノールをトリメチルシリル基に変えることによって疎水性が向上し、レジスト膜と同程度の表面エネルギーとなることによって接着力が向上する。
【0080】
レジスト膜の上に反射防止膜(トップコート)を形成することもできる。トップコートとしては、レジスト膜とインターミキシングしないこと、現像時に剥離可能であることから、水溶性のトップコートが主に用いられている。また、後述する液浸露光用の高撥水性のトップコートを形成することもできる。液浸用トップコートは、液浸露光だけでなくドライ露光においても適用することができる。
【0081】
次いで、紫外線、遠紫外線、電子線、X線、エキシマレーザー、γ線、シンクロトロン放射線、真空紫外線(軟X線)等の高エネルギー線から選ばれる光源で目的とするパターンを所定のマスクを通じてもしくは直接露光を行う。露光量は1〜200mJ/cm2程度、特に10〜100mJ/cm2、又は0.1〜100μC/cm2程度、特に0.5〜50μC/cm2となるように露光することが好ましい。次に、ホットプレート上で60〜150℃、10秒〜30分間、好ましくは80〜120℃、30秒〜20分間ポストエクスポージャベーク(PEB)する。
【0082】
更に、0.1〜15質量%、好ましくは2〜10質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド(TEAH)、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド(TPAH)、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド(TBAH)、コリンヒドロキシド、モルフォリン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、アンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ水溶液の現像液を用い、3秒〜3分間、好ましくは5秒〜2分間、浸漬(dip)法、パドル(puddle)法、スプレー(spray)法等の常法により現像することにより、光を照射した部分は現像液に溶解し、露光されなかった部分は溶解せず、基板上に目的のポジ型のパターンが形成される。
なお、本発明のレジスト材料は、特に高エネルギー線の中でもエキシマレーザー電子線、真空紫外線(軟X線)、X線、γ線、シンクロトロン放射線による微細パターニングに好適であり、これらの中でも波長193nmのArFエキシマレーザーによる微細パターニングが最適である。ArFエキシマレーザーによるパターニングはレンズをウエハーの間が大気中あるいは窒素雰囲気中であるドライ露光であってもよいが、液体を挿入する液浸露光であってもよい。
【0083】
ArF液浸リソグラフィーにおいては液浸溶剤として純水、又はアルカンなどの屈折率が1以上で、露光波長に高透明の液体が用いられる。液浸リソグラフィーでは、プリベーク後のレジスト膜と投影レンズの間に、純水やその他の液体を挿入する。これによってNAが1.0以上のレンズ設計が可能となり、より微細なパターン形成が可能になる。液浸リソグラフィーはArFリソグラフィーを45nmノードまで延命させるための重要な技術である。液浸露光の場合は、レジスト膜上に残った水滴残りを除去するための露光後の純水リンス(ポストソーク)を行ってもよいし、レジスト膜からの溶出物を防ぎ、膜表面の滑水性を上げるために、プリベーク後のレジスト膜上に保護膜を形成させてもよい。液浸リソグラフィーに用いられるレジスト保護膜としては、例えば、水に不溶でアルカリ現像液に溶解する1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール残基を有する高分子化合物をベースとし、炭素数4以上のアルコール系溶剤、炭素数8〜12のエーテル系溶剤、及びこれらの混合溶剤に溶解させた材料が好ましい。レジスト膜形成後に、純水リンス(ポストソーク)を行うことによって膜表面からの酸発生剤などの抽出、あるいはパーティクルの洗い流しを行ってもよく、露光後に膜上に残った水を取り除くためのリンス(ポストソーク)を行ってもよい。
【0084】
レジスト材料として、レジスト表面の撥水性を上げるための添加剤を加えてもよい。このものは、フルオロアルコール基を有する高分子体であり、スピンコート後のレジスト表面に配向することによって表面エネルギーを低下させ、滑水性が向上する。このような材料は、特開2007−297590号公報、特開2008−122932号公報に示される。このような撥水性向上剤は、保護膜を使用しないで液浸露光を行う場合は必須の添加剤であるが、ドライ露光の場合でも添加することができる。スピンコート後のレジスト表面が撥水性向上剤で覆われることによって酸やアミンの蒸発と再付着を防いでケミカルフレアの発生を防止することができる。
【0085】
現像を終了させるために純水によるリンス、リンス液を乾燥させるためにスピンドライを行う。スピンドライ時の乾燥過程でパターン倒れが生じることがある。乾燥時の応力を低減させるために界面活性剤を添加したリンス液を用いることもできる。
現像によってパターンの形成後、ベークによってパターンを熱フローさせることができる。これによってホールパターンの寸法をシュリンクさせることができる。
次いで現像後のレジストパターンをマスクにしてイオンの打ち込みを行う。イオンとしては、ボロン、リン、ヒ素が打ち込まれる。ドーパントのためのガスとしては、BF3、PH3、AsH3が用いられ、数keV〜数MeVの加速度でレジストパターンをマスクにして打ち込まれる。このため、レジスト膜はこれらのイオンの打ち込みに対して耐性を有する必要がある。
【0086】
イオン打ち込み耐性とフルオロカーボン系ガスを用いたエッチング耐性とはある程度相関があると言われている。ノボラック樹脂ベースのi線レジスト材料よりもヒドロキシスチレンベースのKrFレジスト材料の方がエッチング耐性とイオン打ち込み耐性が低下し、KrFレジスト材料よりも脂環族構造のArFレジスト材料の方がエッチング耐性とイオン打ち込み耐性が低下している。ArFレジスト材料は、脂環族構造だけではイオン打ち込み耐性が足りず、耐性を高める必要がある。
【実施例】
【0087】
以下、合成例、実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施例に制限されるものではない。なお、重量平均分子量(Mw)は、溶剤としてテトラヒドロフランを用いたGPCによるポリスチレン換算重量平均分子量を示す。
【0088】
[合成例1]
レジスト材料に用いる高分子化合物として、各々のモノマーを組み合わせてテトラヒドロフラン(THF)溶剤下で共重合反応を行い、メタノールに晶出し、更にヘキサンで洗浄を繰り返した後に単離、乾燥して、以下に示す組成の高分子化合物(ポリマー1〜12及び比較ポリマー1)を得た。得られた高分子化合物の組成は1H−NMR、分子量及び分散度はTHF溶剤によるゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより確認した。
【0089】
ポリマー1
分子量(Mw)=7,300
分散度(Mw/Mn)=1.73
【化34】

【0090】
ポリマー2
分子量(Mw)=7,100
分散度(Mw/Mn)=1.70
【化35】

【0091】
ポリマー3
分子量(Mw)=6,800
分散度(Mw/Mn)=1.76
【化36】

【0092】
ポリマー4
分子量(Mw)=9,500
分散度(Mw/Mn)=1.91
【化37】

【0093】
ポリマー5
分子量(Mw)=8,900
分散度(Mw/Mn)=1.89
【化38】

【0094】
ポリマー6
分子量(Mw)=7,600
分散度(Mw/Mn)=1.69
【化39】

【0095】
ポリマー7
分子量(Mw)=6,600
分散度(Mw/Mn)=1.98
【化40】

【0096】
ポリマー8
分子量(Mw)=6,800
分散度(Mw/Mn)=1.93
【化41】

【0097】
ポリマー9
分子量(Mw)=7,600
分散度(Mw/Mn)=1.69
【化42】

【0098】
ポリマー10
分子量(Mw)=7,900
分散度(Mw/Mn)=1.79
【化43】

【0099】
ポリマー11
分子量(Mw)=7,300
分散度(Mw/Mn)=1.74
【化44】

【0100】
ポリマー12
分子量(Mw)=7,700
分散度(Mw/Mn)=1.97
【化45】

【0101】
比較ポリマー1
分子量(Mw)=9,300
分散度(Mw/Mn)=1.79
【化46】

【0102】
[合成例2]
ジヒドロキシナフタレン類、その他共縮合化合物、37質量%ホルマリン水溶液、シュウ酸を加え、100℃で24時間撹拌した。反応後、メチルイソブチルケトン500mlに溶解し、十分な水洗により触媒と金属不純物を除去し、溶剤を減圧除去し、150℃,2mmHgまで減圧し、水分、未反応モノマーを除き、以下に示すノボラック樹脂1〜18、比較ノボラック樹脂1,2を得た。
【0103】
なお、ノボラック樹脂9は37質量%ホルマリン水溶液を50質量%の2−ナフトアルデヒドジオキサン溶液に、ノボラック樹脂10は37質量%ホルマリン水溶液を50質量%の6−ヒドロキシ−2−ナフトアルデヒドジオキサン溶液に、ノボラック樹脂11は37質量%ホルマリン水溶液を50質量%の3−フランカルボキシアルデヒドジオキサン溶液に、ノボラック樹脂12は37質量%ホルマリン水溶液を50質量%の3−チオフェンアルデヒドジオキサン溶液に変えてノボラック樹脂を得た。
ノボラック樹脂14は37質量%ホルマリン水溶液を50質量%の下記に示すアルデヒド1のジオキサン溶液に、ノボラック樹脂15は37質量%ホルマリン水溶液を50質量%のアルデヒド2のジオキサン溶液に、ノボラック樹脂16は37質量%ホルマリン水溶液を50質量%のアルデヒド3のジオキサン溶液に、ノボラック樹脂17は37質量%ホルマリン水溶液を50質量%のアルデヒド4のジオキサン溶液に、ノボラック樹脂18は37質量%ホルマリン水溶液を50質量%のアルデヒド5のジオキサン溶液に変えてノボラック樹脂を得た。
【0104】
【化47】

【0105】
ノボラック樹脂1
分子量(Mw)=1,200
分散度(Mw/Mn)=3.10
【化48】

【0106】
ノボラック樹脂2
分子量(Mw)=1,300
分散度(Mw/Mn)=3.96
【化49】

【0107】
ノボラック樹脂3
分子量(Mw)=2,200
分散度(Mw/Mn)=3.89
【化50】

【0108】
ノボラック樹脂4
分子量(Mw)=1,200
分散度(Mw/Mn)=3.10
【化51】

【0109】
ノボラック樹脂5
分子量(Mw)=1,900
分散度(Mw/Mn)=3.90
【化52】

【0110】
ノボラック樹脂6
分子量(Mw)=2,600
分散度(Mw/Mn)=3.96
【化53】

【0111】
ノボラック樹脂7
分子量(Mw)=2,600
分散度(Mw/Mn)=3.96
【化54】

【0112】
ノボラック樹脂8
分子量(Mw)=1,800
分散度(Mw/Mn)=3.80
【化55】

【0113】
ノボラック樹脂9
分子量(Mw)=1,700
分散度(Mw/Mn)=3.30
【化56】

【0114】
ノボラック樹脂10
分子量(Mw)=1,600
分散度(Mw/Mn)=3.20
【化57】

【0115】
ノボラック樹脂11
分子量(Mw)=1,800
分散度(Mw/Mn)=3.80
【化58】

【0116】
ノボラック樹脂12
分子量(Mw)=2,300
分散度(Mw/Mn)=3.90
【化59】

【0117】
ノボラック樹脂13
分子量(Mw)=2,600
分散度(Mw/Mn)=4.20
【化60】

【0118】
ノボラック樹脂14
分子量(Mw)=1,900
分散度(Mw/Mn)=3.60
【化61】

【0119】
ノボラック樹脂15
分子量(Mw)=2,300
分散度(Mw/Mn)=3.70
【化62】

【0120】
ノボラック樹脂16
分子量(Mw)=2,800
分散度(Mw/Mn)=3.90
【化63】

【0121】
ノボラック樹脂17
分子量(Mw)=2,500
分散度(Mw/Mn)=3.90
【化64】

【0122】
ノボラック樹脂18
分子量(Mw)=2,600
分散度(Mw/Mn)=4.10
【化65】

【0123】
比較ノボラック樹脂1
分子量(Mw)=1,800
分散度(Mw/Mn)=3.33
【化66】

【0124】
比較ノボラック樹脂2
分子量(Mw)=6,900
分散度(Mw/Mn)=5.53
【化67】

【0125】
[実施例、比較例]
上記で合成した高分子化合物を用いて、界面活性剤として住友スリーエム(株)製界面活性剤のFC−4430を100ppmの濃度で溶解させた溶剤に表1に示される組成で溶解させた溶液を、0.2μmサイズのフィルターで濾過してポジ型レジスト材料を調製した。
【0126】
表1中の各組成は次の通りである。
ポリマー1〜12、ノボラック樹脂1〜18、比較ポリマー1、比較ノボラック樹脂1,2:上記合成例で得られたもの
有機溶剤:PGMEA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)
CyH(シクロヘキサノン)
酸発生剤:PAG1〜4(下記構造式参照)
【化68】

塩基性化合物:Quencher1〜4(下記構造式参照)
【化69】

【0127】
【表1】

【0128】
ArF露光実験
表1に示されるレジスト材料を、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)ベーパープライムしたSi基板にスピンコートし、ホットプレートを用いて110℃で60秒間ベークし、レジスト膜の厚みを200nmにした。これをArFエキシマレーザースキャナー((株)ニコン製、NSR−S307E,NA0.85、σ0.93、2/3輪帯照明、6%ハーフトーン位相シフトマスク)を用いて90nmライン,180nmピッチのパターンを露光し、露光後直ちに表2に記載の温度で60秒間PEBし、2.38質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシドの水溶液で30秒間現像を行って、90nmラインアンドスペースパターンを得、この時の感度とパターンの断面形状をSEMにて観察した。結果を表2に示す。
【0129】
【表2】

【0130】
CF4/CHF3系ガスでのエッチング試験
表1に示されるレジスト材料をシリコン基板上に塗布して、110℃で60秒間ベークし、膜厚200nmのレジスト膜を形成し、下記条件でCF4/CHF3系ガスでのエッチング試験を行った。この場合、東京エレクトロン(株)製ドライエッチング装置TE−8500を用い、エッチング前後のレジスト膜の膜厚差を測定し、1分あたりのエッチング速度を求めた。結果を表3に示す。
エッチング条件は下記に示す通りである。
チャンバー圧力 40.0Pa
RFパワー 1,000W
CHF3ガス流量 30ml/min
CF4ガス流量 30ml/min
Arガス流量 100ml/min
時間 60sec
【0131】
レジスト密着性試験
表1に示されるレジスト材料を、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)ベーパープライムせずにSi基板にスピンコートし、ホットプレートを用いて110℃で60秒間ベークし、レジスト膜の厚みを200nmにした。これをArFエキシマレーザースキャナー((株)ニコン製、NSR−S307E,NA0.85、σ0.93、コンベンショナル照明、バイナリーマスク)を用いて300nmライン,600nmピッチのパターンを露光し、露光後直ちに表2に記載の温度で60秒間PEBし、2.38質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシドの水溶液で30秒間現像を行って、300nmラインアンドスペースパターンが剥がれているかどうかを光学顕微鏡にて観察した。結果を表3に示す。
【0132】
埋め込み試験
Si基板上に作製された膜厚300nmのSiO2膜のピッチ360nm,直径180nmのホールパターンの段差基板上に、平板上基板でレジスト膜の厚みが200nmになる条件でスピンコートし、ホットプレートを用いて110℃で60秒間ベークした。基板を割断し、SEMを用いて酸化膜のホールの底までレジスト膜が埋まっているかどうかを観察した。結果を表3に示す。
【0133】
【表3】

【0134】
表2,3の結果より、非環状の酸不安定基を有する(メタ)アクリレートの高分子化合物を用いたレジスト材料は、酸不安定基の溶解阻止性が不十分なため現像後のパターンがテーパー形状となり、エッチング耐性(即ちイオンインプラント耐性)も低かった。ジヒドロキシナフタレンノボラック樹脂をブレンドしない場合は埋め込み特性と密着性が不十分であった。ヒドロキシ基が1つのナフタレンノボラック樹脂をブレンドした場合は、密着性が不十分であり、現像後のレジストパターンのスペース部分に残渣が残った。クレゾールノボラック樹脂をブレンドした場合は、強い吸収のためにArF露光で垂直なパターンを得ることができなかった。ジヒドロキシナフタレンのモノマーをブレンドした場合は酸拡散とアルカリ溶解速度が大きくなりすぎて、現像後のレジストパターンがテーパー形状になってしまった。本発明のジヒドロキシナフタレンノボラック樹脂をブレンドした環状の酸不安定基を有する(メタ)アクリレートの高分子化合物を用いたレジスト材料は、十分な解像力と感度とパターン形状と密着性とエッチング耐性を有しており、イオンインプランテーションプロセス用レジスト材料として優れた特性を有していることが分かった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルボキシル基の水素原子が環構造を有する酸不安定基で置換されている(メタ)アクリレートの繰り返し単位を含む重量平均分子量が1,000〜500,000の範囲である高分子化合物と、ジヒドロキシナフタレンのノボラック樹脂と、光酸発生剤とを含有することを特徴とするポジ型レジスト材料。
【請求項2】
カルボキシル基の水素原子が環構造を有する酸不安定基で置換されている(メタ)アクリレートの繰り返し単位が、下記一般式(1)で示されることを特徴とする請求項1記載のポジ型レジスト材料。
【化1】


(式中、R1は水素原子又はメチル基である。Xは単結合、エステル基,エーテル基及びラクトン環から選ばれる1種又は2種以上を有する炭素数1〜12の連結基、又はナフチレン基であり、R2は環構造を有する酸不安定基である。)
【請求項3】
ジヒドロキシナフタレンのノボラック樹脂が、下記一般式(2)で示される繰り返し単位を有する重量平均分子量が400〜20,000の範囲の樹脂であることを特徴とする請求項1又は2記載のポジ型レジスト材料。
【化2】


(式中、R3は水素原子、炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、炭素数2〜10のアルケニル基、又は炭素数6〜10のアリール基であり、ヒドロキシ基、アルコキシ基もしくはアシロキシ基、エーテル基、又はスルフィド基を有していてもよい。R4は水素原子、又は炭素数1〜6の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基である。mは1〜4の整数である。)
【請求項4】
下記一般式(1)で示される、カルボキシル基の水素原子が環構造を有する酸不安定基で置換されている(メタ)アクリレートの繰り返し単位aと、ヒドロキシ基、カルボキシル基、ラクトン環、カーボネート基、チオカーボネート基、カルボニル基、環状アセタール基、エーテル基、エステル基、スルホン酸エステル基、シアノ基及びアミド基から選ばれる密着性基を有する繰り返し単位bを共重合した(ここで0<a<1.0、0<b<1.0、0.2≦a+b≦1.0の範囲である。)重量平均分子量が1,000〜500,000の範囲である高分子化合物と、下記一般式(2)で示されるジヒドロキシナフタレンノボラック樹脂とをベース樹脂とし、光酸発生剤を含有することを特徴とするポジ型レジスト材料。
【化3】


(式中、R1は水素原子又はメチル基である。Xは単結合、エステル基,エーテル基及びラクトン環から選ばれる1種又は2種以上を有する炭素数1〜12の連結基、又はナフチレン基であり、R2は環構造を有する酸不安定基である。)
【化4】


(式中、R3は水素原子、炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、炭素数2〜10のアルケニル基、又は炭素数6〜10のアリール基であり、ヒドロキシ基、アルコキシ基もしくはアシロキシ基、エーテル基、又はスルフィド基を有していてもよい。R4は水素原子、又は炭素数1〜6の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基である。mは1〜4の整数である。)
【請求項5】
更に、有機溶剤を含有する化学増幅型のレジスト材料であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載のポジ型レジスト材料。
【請求項6】
更に、添加剤として塩基性化合物及び/又は界面活性剤を配合してなることを特徴とする請求項5記載のポジ型レジスト材料。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項記載のポジ型レジスト材料を基板上に塗布する工程と、加熱処理後、高エネルギー線で露光する工程と、現像液を用いて現像する工程とを含むことを特徴とするパターン形成方法。
【請求項8】
高エネルギー線としてArFエキシマレーザーを用いることを特徴とする請求項7記載のパターン形成方法。
【請求項9】
現像液を用いてレジストパターンを形成した後に基板にイオンを打ち込むことを特徴とする請求項7又は8記載のパターン形成方法。

【公開番号】特開2012−190000(P2012−190000A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−33501(P2012−33501)
【出願日】平成24年2月20日(2012.2.20)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】