説明

ポジ型レジスト組成物及びそれを用いたパターン形成方法

【課題】感度、低現像欠陥、そして露光量依存性(EL)と、フォーカス余裕度(DOF)性能、形状、マスクエラーエンハンスメントファクター(MEEF)性能、更に解像力、ラインウィズスラフネス(LWR)が改良されたポジ型感光性組成物及びそれを用いたパターン形成方法を提供する。
【解決手段】(A)ラクトン構造を有する繰り返し単位と、ヒドロキシスチレン由来の繰り返し単位とを少なくとも含む、酸の作用により分解しアルカリ現像液中での溶解性が増大する樹脂、及び、(B)活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物、を含有するポジ型レジスト組成物並びにそれを用いたパターン形成方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超LSIや高容量マイクロチップの製造などの超マイクロリソグラフィプロセスやその他のフォトファブリケーションプロセスに好適に用いられる、ポジ型レジスト組成物及びそれを用いたパターン形成方法に関するものである。更に詳しくは、KrFエキシマレーザー光、電子線、EUV光等を使用して高精細化したパターン形成しうる、ポジ型レジスト組成物及びそれを用いたパターン形成方法に関するものであり、KrFエキシマレーザー光、電子線、EUV光を用いる半導体素子の微細加工に好適に用いることができる、ポジ型レジスト組成物及びそれを用いたパターン形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ICやLSIなどの半導体デバイスの製造プロセスにおいては、フォトレジスト組成物を用いたリソグラフィーによる微細加工が行われている。近年、集積回路の高集積化に伴い、サブミクロン領域や、電子線、EUVでは20nmから50nm領域の超微細パターン形成が要求されるようになってきている。それに伴い、露光波長もg線からi線に、更にKrFエキシマレーザー光に、というように短波長化の傾向が見られる。更には、現在では、エキシマレーザー光以外にも、電子線やX線、あるいはEUV光を用いたリソグラフィーも開発が進んでいる。
【0003】
KrFエキシマレーザー光を用いたリソグラフィーにおいては、近年、より短波ArFエキシマレーザー光を用いてパターン形成していた工程を、製造コスト低減目的で、KrF化する動きがあり、特にHoleレジストではマスクエラーエンハンスメントファクター(MEEF)性能が課題である。MEEF性能とはMask寸法のエラーに対するHoleサイズの変化量を示し、この値が大きいとMask製造に非常にコストがかかるとともに、デバイス製造の歩留まりを落とすこととなる。
電子線やEUV光を用いたリソグラフィーは、次世代若しくは次々世代のパターン形成技術として位置付けられ、高感度、高解像性のレジスト組成物が望まれている。特にウェハー処理時間の短縮化のために高感度化は非常に重要な課題であるが、電子線やEUV用のポジ型レジスト組成物においては、高感度化を追求しようとすると、解像力の低下のみならず、ラインエッジラフネス(LWR)の悪化が起こり、これらの特性を同時に満足するレジスト組成物の開発が強く望まれている。高感度と、高解像性、良好なLWRはトレードオフの関係にあり、これを如何にして同時に満足させるかが非常に重要である。
【0004】
更に、KrFではサブミクロン領域、電子線、EUVでは20nmから50nm領域の超微細パターンでは、サブミクロンオーダー以下の微小な欠陥であっても、このレジストパターンをマスクとしてエッチングした際には、この欠陥が転写され電気特性を著しく低下させ、結果として歩留まりを低下させてしまう。そのためこの現像欠陥が少ないことがレジスト組成物の性能として非常に重要である。
これらのKrFエキシマレーザー光、電子線、あるいはEUV光を用いたリソグラフィープロセスに適したレジストとしては高感度化の観点から主に酸触媒反応を利用した化学増幅型レジストが用いられており、ポジ型レジストにおいては主成分として、アルカリ現像液には不溶又は難溶性で、酸の作用によりアルカリ現像液に可溶となる性質を有するフェノール性ポリマー及び酸発生剤からなる化学増幅型レジスト組成物が有効に使用されている。
【0005】
電子線又はX線用のレジストに関しては、これまで主にKrFエキシマレーザー用のレジスト技術が転用されて検討されてきた。たとえば、特許文献1には電子ビーム照射で酸を発生する化合物と沸点250℃以下のアミン化合物の組合せが、更に特許文献2には酸分解性基を有するポリマー、酸発生剤及び電子線増感剤の併用が開示されている。
また、特許文献3にはラクトン基を有するEUV用ポリマーが、特許文献4には、ArFのリフロー用途としてのラクトン基含有ポリマーが、特許文献5にはシアノ基を有するラクトン基が、特許文献6にはラクトン含有化合物についての開示がある。
しかしながら、これらの改良の試みにおいても、いずれも露光量依存性(EL)と、フォーカス余裕度(DOF)性能、形状、マスクエラーエンハンスメントファクター(MEEF)性能、低現像欠陥を同時に満足できていないのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−181065号公報
【特許文献2】欧州特許0919867号明細書
【特許文献3】特開2003−345023号公報
【特許文献4】特開2005−352466号公報
【特許文献5】特開2007−156450号公報
【特許文献6】特開2008−31298号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、感度、低現像欠陥、そして露光量依存性(EL)と、フォーカス余裕度(DOF)性能、形状、マスクエラーエンハンスメントファクター(MEEF)性能、更に解像力、ラインウィズスラフネス(LWR)が改良されたポジ型レジスト組成物及びそれを用いたパターン形成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題は下記構成によって解決される。
【0009】
(1) (A)酸の作用により分解しアルカリ現像液中での溶解性が増大する樹脂、
(B)活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物、
を含有し、前記(A)酸の作用により分解しアルカリ現像液中での溶解性が増大する樹脂が、下記一般式(II)で表される基を含む繰り返し単位、及び下記一般式(IIIa)で表される繰り返し単位を有することを特徴とするポジ型レジスト組成物。
【0010】
【化1】

【0011】
【化2】

【0012】
一般式(II)において、
Vはラクトン構造を有する基を表す。
nは、繰り返し数を表し、1〜5の整数を表す。
Zは、単結合、エーテル結合、エステル結合、アミド結合、ウレタン結合又はウレア結合を表し、複数個ある場合は同じでも異なっていてもよい。
2は、アルキレン基を表し、複数個ある場合は同じでも異なっていてもよい。
一般式(IIIa)において、
1は、任意の置換基を表し、複数ある場合は同じでも異なっていてもよい。
1は、水素原子、アルキル基、水酸基、アルコキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、アシル基、アシロキシ基、シクロアルキル基、アリール基、カルボキシル基、アルキルオキシカルボニル基、アルキルカルボニルオキシ基又はアラルキル基を表す。
mは、置換基数であって、0〜4の整数を表す。
(2) 前記樹脂(A)が、下記一般式(A2)で表される繰り返し単位を有することを特徴とする(1)に記載のポジ型レジスト組成物。
【0013】
【化3】

【0014】
一般式(A2)において、
2は、酸の作用により脱離する基又は酸の作用により分解する基を有する基を表す。
2は、水素原子、アルキル基、水酸基、アルコキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、アシル基、アシロキシ基、シクロアルキル基、アリール基、カルボキシル基、アルキルオキシカルボニル基、アルキルカルボニルオキシ基又はアラルキル基を表す。
(3) 前記一般式(A2)で表される繰り返し単位が、下記一般式(A2’)で表される繰り返し単位であることを特徴とする(2)に記載のポジ型レジスト組成物。
【0015】
【化4】

【0016】
一般式(A2’)において、
Rh、Rk及びRjは、各々独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又はアラルキル基を表す。RkとRjとは、互いに結合して環を形成してもよい。
2は、水素原子、アルキル基、水酸基、アルコキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、アシル基、アシロキシ基、シクロアルキル基、アリール基、カルボキシル基、アルキルオキシカルボニル基、アルキルカルボニルオキシ基又はアラルキル基を表す。
(4) 前記樹脂(A)が有する前記一般式(IIIa)で表される繰り返し単位が、下記式(IIIb)で表される繰り返し単位であることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載のポジ型レジスト組成物。
【0017】
【化5】

【0018】
(5) 前記樹脂(A)が有する前記一般式(II)で表される基を含む繰り返し単位が、下記一般式(IIa)で表される繰り返し単位であることを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載のポジ型レジスト組成物。
【0019】
【化6】

【0020】
一般式(IIa)において、
Vはラクトン構造を有する基を表す。
2は、水素原子、アルキル基、水酸基、アルコキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、アシル基、アシロキシ基、シクロアルキル基、アリール基、カルボキシル基、アルキルオキシカルボニル基、アルキルカルボニルオキシ基又はアラルキル基を表す。
nは、繰り返し数を表し、1〜5の整数を表す。
Zは、単結合、エーテル結合、エステル結合、アミド結合、ウレタン結合又はウレア結合を表し、複数個ある場合は同じでも異なっていてもよい。
2は、アルキレン基を表し、複数個ある場合は同じでも異なっていてもよい。
(6) 前記樹脂(A)が有する前記一般式(II)で表される基を含む繰り返し単位が、下記一般式(IIb)で表される繰り返し単位であることを特徴とする(1)〜(5)のいずれかに記載のポジ型レジスト組成物。
【0021】
【化7】

【0022】
一般式(IIb)において、
2は、水素原子、アルキル基、水酸基、アルコキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、アシル基、アシロキシ基、シクロアルキル基、アリール基、カルボキシル基、アルキルオキシカルボニル基、アルキルカルボニルオキシ基又はアラルキル基を表す。
2は、アルキレン基を表し、複数個ある場合は同じでも異なっていてもよい。
3は、アルキル基又はシクロアルキル基を表し、複数個ある場合は同じでも異なっていてもよく、複数個ある場合には2つのR3が結合し、環を形成していても良い。
Xは、アルキレン基、酸素原子又は硫黄原子を表す。
Yは、電子求引性基を表し、複数個ある場合は同じでも異なっていてもよい。
Zは、単結合、エーテル結合、エステル結合、アミド結合、ウレタン結合又はウレア結合を表し、複数個ある場合は同じでも異なっていてもよい。
kは、置換基数であって、0〜8の整数を表す。
nは、繰り返し数を表し、1〜5の整数を表す。
mは、置換基数であって、1〜7の整数を表す。
(7) 前記樹脂(A)が有する前記一般式(II)で表される基を含む繰り返し単位が、下記一般式(IIc)で表される繰り返し単位であることを特徴とする(1)〜(6)のいずれかに記載のポジ型レジスト組成物。
【0023】
【化8】

【0024】
一般式(IIc)において、
2は、水素原子、アルキル基、水酸基、アルコキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、アシル基、アシロキシ基、シクロアルキル基、アリール基、カルボキシル基、アルキルオキシカルボニル基、アルキルカルボニルオキシ基又はアラルキル基を表す。
3は、アルキル基又はシクロアルキル基を表し、複数個ある場合は同じでも異なっていてもよく、複数個ある場合には2つのR3が結合し、環を形成していても良い。
Xは、アルキレン基、酸素原子又は硫黄原子を表す。
kは、置換基数であって、0〜8の整数を表す。
pは、繰り返し数を表し、1〜5の整数を表す。
nは、繰り返し数を表し、1〜5の整数を表す。
mは、置換基数であって、1〜7の整数を表す。
(8) 前記化合物(B)として、トリアリールスルホニウム塩、ジアゾジスルホン誘導体及び有機スルホン酸のオキシムエステルから選ばれる少なくとも1種類の化合物を含有することを特徴とする(1)〜(7)のいずれかに記載のポジ型レジスト組成物。
(9) 前記化合物(B)として、トリアリールスルホニウム塩から選ばれる少なくとも1種類の化合物、並びにジアゾジスルホン誘導体及び有機スルホン酸のオキシムエステルから選ばれる少なくとも1種類の化合物を含有することを特徴とする(1)〜(8)のいずれかに記載のポジ型レジスト組成物。
(10) (1)〜(9)のいずれかに記載のポジ型レジスト組成物により、レジスト膜を形成し、該レジスト膜を露光、現像する工程を含むことを特徴とするパターン形成方法。
【0025】
以下、本発明のより好ましい実施の態様を挙げる。
【0026】
(11) 更に、(C)有機塩基性化合物及び(D)溶剤を含有することを特徴とする(1)〜(9)のいずれかに記載のポジ型レジスト組成物。
【0027】
(12) (D)溶剤として、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルプロピオネート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、乳酸エチル、メトキシメチルプロピオネート、エトキシエチルプロピオネート、γ−ブチロラクトン及びプロピレンカーボネートから選ばれる少なくとも1種類の溶剤を含有することを特徴とする(11)に記載のポジ型レジスト組成物。
【0028】
(13) (C)有機塩基性化合物として、下記一般式(C3)又は(C4)で表される有機塩基性化合物を含有することを特徴とする(11)又は(12)に記載のポジ型レジスト組成物。
【0029】
【化9】

【0030】
一般式(C3)に於いて、
Sa、Sb、Scは、各々独立に、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又はアラルキル基を表す。SaとSbとは、互いに結合して環を形成してもよい。
【0031】
【化10】

【0032】
一般式(C4)に於いて、
Sd、Se、Sf、Sgは、各々独立に、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又はアラルキル基を表す。SdとSeとは、互いに結合して環を形成してもよい。
【0033】
以下、更に、本発明の好ましい実施の態様を挙げる。
【0034】
(14) 更に、界面活性剤を含有することを特徴とする(1)〜(9)及び(11)〜(13)のいずれかに記載のポジ型レジスト組成物。
【0035】
(15) 更に、酸化防止剤を含有することを特徴とする(1)〜(9)及び(11)〜(14)のいずれかに記載のポジ型レジスト組成物。
【0036】
(16) KrF、電子線、X線又はEUVの照射により露光されることを特徴とする(1)〜(9)及び(11)〜(15)のいずれかに記載のポジ型レジスト組成物。
【0037】
(17) (11)〜(16)のいずれかに記載のポジ型レジスト組成物により、レジスト膜を形成し、露光、現像する工程を有することを特徴とするパターン形成方法。
【発明の効果】
【0038】
本発明により、露光量依存性(EL)、フォーカス余裕度(DOF)性能、形状、マスクエラーエンハンスメントファクター(MEEF)性能、低現像欠陥、更に感度、解像力、ラインウィズスラフネス(LWR)に優れたポジ型レジスト組成物及びそれを用いたパターン形成方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、本発明を実施するための最良の形態について説明する。
なお、本明細書に於ける基(原子団)の表記に於いて、置換及び無置換を記していない表記は、置換基を有さないものと共に置換基を有するものをも包含するものである。例えば、「アルキル基」とは、置換基を有さないアルキル基(無置換アルキル基)のみならず、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)をも包含するものである。
【0040】
[(A)酸の作用により分解しアルカリ現像液中での溶解性が増大する樹脂]
本発明のポジ型レジスト組成物は、酸の作用により分解しアルカリ現像液中での溶解性が増大する樹脂(以下、「樹脂(A)」ともいう)を含有する。
樹脂(A)は、酸の作用により分解してアルカリ現像液に対する溶解性が大きな基を生じる基(以下、「酸分解性基」ともいう)を有する繰り返し単位を有することが好ましい。
【0041】
酸分解性基としては、例えば、カルボキシル基、フェノール性水酸基、スルホン酸基、チオール基等のアルカリ可溶性基の水素原子が、酸の作用により脱離する基で保護された基を挙げることができる。
酸の作用により脱離する基としては、例えば、−C(R36)(R37)(R38)、−C(R36)(R37)(OR39)、−C(=O)−O−C(R36)(R37)(R38)、−C(R01)(R02)(OR39)、−C(R01)(R02)−C(=O)−O−C(R36)(R37)(R38)、−CH(R36)(Ar)等を挙げることができる。
式中、R36〜R39は、各々独立に、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基又はアルケニル基表す。R36とR37とは、互いに結合して環を形成してもよい。
【0042】
01〜R02は、各々独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基又はアルケニル基を表す。
Arは、アリール基を表す。
36〜R39、R01及びR02のアルキル基は、炭素数1〜8のアルキル基が好ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、へキシル基、オクチル基等を挙げることができる。
36〜R39、R01及びR02のシクロアルキル基は、単環型でも、多環型でもよい。単環型としては、炭素数3〜8のシクロアルキル基が好ましく、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロへキシル基、シクロオクチル基等を挙げることができる。多環型としては、炭素数6〜20のシクロアルキル基が好ましく、例えば、アダマンチル基、ノルボルニル基、イソボロニル基、カンファニル基、ジシクロペンチル基、α−ピネル基、トリシクロデカニル基、テトラシクロドデシル基、アンドロスタニル基等を挙げることができる。なお、シクロアルキル基中の炭素原子の一部が酸素原子等のヘテロ原子によって置換されていてもよい。
【0043】
36〜R39、R01、R02及びArのアリール基は、炭素数6〜10のアリール基が好ましく、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントリル基等を挙げることができる。
36〜R39、R01及びR02のアラルキル基は、炭素数7〜12のアラルキル基が好ましく、例えば、ベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基等を挙げることができる。
36〜R39、R01及びR02のアルケニル基は、炭素数2〜8のアルケニル基が好ましく、例えば、ビニル基、アリル基、ブテニル基、シクロへキセニル基等を挙げることができる。
【0044】
36とR37とが、互いに結合して形成する環は、単環型でも、多環型でもよい。単環型としては、炭素数3〜8のシクロアルカン構造が好ましく、例えば、シクロプロパン構造、シクロブタン構造、シクロペンタン構造、シクロへキサン構造、シクロヘプタン構造、シクロオクタン構造等を挙げることができる。多環型としては、炭素数6〜20のシクロアルカン構造が好ましく、例えば、アダマンタン構造、ノルボルナン構造、ジシクロペンタン構造、トリシクロデカン構造、テトラシクロドデカン構造等を挙げることができる。なお、シクロアルカン構造中の炭素原子の一部が酸素原子等のヘテロ原子によって置換されていてもよい。
36〜R39、R01、R02及びArは、置換基を有していてもよい。R36〜R39、R01、R02及びArが有していてもよい置換基としては、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アミノ基、アミド基、ウレイド基、ウレタン基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、ハロゲン原子、アルコキシ基、チオエーテル基、アシル基、アシロキシ基、アルコキシカルボニル基、シアノ基、ニトロ基等を挙げることができる。
【0045】
酸分解性基は、酸の作用により分解してカルボキシル基、フェノール性水酸基、スルホン酸基、チオール基等のアルカリ可溶性基を生じ、アルカリ現像液中での溶解性が増大する。
【0046】
酸分解性基を有する繰り返し単位の含有率は、樹脂(A)を構成する全繰り返し単位中、好ましくは5〜60モル%、より好ましくは10〜50モル%、特に好ましくは15〜40モル%である。
酸分解性基を有する繰り返し単位としては後述の一般式(A2)で表される繰り返し単位が好ましい。
【0047】
樹脂(A)は、下記一般式(II)で表される基を含む繰り返し単位を有する。
【0048】
【化11】

【0049】
一般式(II)において、
Vはラクトン構造を有する基を表す。
nは、繰り返し数を表し、1〜5の整数を表す。
Zは、単結合、エーテル結合、エステル結合、アミド結合、ウレタン結合又はウレア結合を表し、複数個ある場合は同じでも異なっていてもよい。
2は、アルキレン基を表し、複数個ある場合は同じでも異なっていてもよい。
Vとしてのラクトン構造を有する基におけるラクトン構造は、Zとしての結合に直接結合する。
【0050】
nは、好ましくは1〜2の整数、より好ましくは1である。
2で表されるアルキレン基としては、鎖状アルキレン基又は環状アルキレン基が好ましく、好ましい鎖状アルキレン基としては炭素数が1〜10の鎖状のアルキレンが好ましく、より好ましくは炭素数1〜5であり、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基等が挙げられる。好ましい環状アルキレンとしては、炭素数1〜20の環状アルキレンであり、例えば、シクロヘキシレン、シクロペンチレン、ノルボルニレン、アダマンチレン等が挙げられる。Rで表される基として好ましくは鎖状アルキレンである。
【0051】
2で表されるアルキレン基は置換基を有することができる。置換基として、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子やメルカプト基、ヒドロキシ基、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、t−ブトキシ基、ベンジルオキシ基等のアルコキシ基、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、sec-ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等のアルキル基、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基等のシクロアルキル基、及びシアノ基、ニトロ基、スルホニル基、シリル基、エステル基、アシル基、ビニル基、アリール基等が挙げられる。前記nが2以上の場合はRで表される基は、それぞれ独立に同一であっても異なっていてもよい。
【0052】
Zで表される基としては、単結合、エーテル結合、エステル結合、アミド結合、ウレタン結合又はウレア結合が挙げられるが、より好ましくは、単結合、エーテル結合、エステル結合が挙げられ、特に好ましくはエステル結合である。
【0053】
Vで表されるラクトン構造を有する基としては、ラクトン構造を有していればいずれでも用いることができるが、好ましくは5〜7員環ラクトン構造であり、5〜7員環ラクトン構造にビシクロ構造、スピロ構造を形成する形で他の環構造が縮環しているものが好ましい。下記一般式(LC1−1)〜(LC1−16)のいずれかで表されるラクトン構造を有する繰り返し単位を有することがより好ましい。好ましいラクトン構造としては、(LC1−1)、(LC1−4)、(LC1−5)、(LC1−6)、(LC1−13)、(LC1−14)であり、特定のラクトン構造を用いることでLWR、現像欠陥が良好になる。
【0054】
【化12】

【0055】
一般式(LC1−1)〜(LC1−16)のラクトン構造部分は、置換基(Rb2)を有していても有していなくてもよい。好ましい置換基(Rb2)としては、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数4〜7のシクロアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシ基、炭素数1〜8のアルコキシカルボニル基、カルボキシル基、ハロゲン原子、水酸基、シアノ基、酸分解性基などが挙げられる。より好ましくは炭素数1〜4のアルキル基、シアノ基、又は酸分解性基である。
は、0〜4の整数を表す。nが2以上の時、複数存在する置換基(Rb2)は同一でも異なっていてもよく、また複数存在する置換基(Rb2)同士が結合して環を形成してもよい。
【0056】
ラクトン構造部分は、通常光学異性体が存在するが、いずれの光学異性体を用いてもよい。また、1種の光学異性体を単独で用いても、複数の光学異性体混合して用いてもよい。1種の光学異性体を主に用いる場合、その光学純度(ee)が90以上のものが好ましく、より好ましくは95以上である。
【0057】
一般式(II)で表される基を含む繰り返し単位としては、一般式(II)で表される構造を有する(メタ)アクリル酸エステル誘導体、(メタ)アクリルアミド誘導体、ビニルエーテル誘導体、オレフィン誘導体、スチレン誘導体などを有する繰り返し単位が挙げられ、好ましくは一般式(II)の構造を有する(メタ)アクリル酸エステル誘導体を有する繰り返し単位である。
【0058】
一般式(II)で表される基を含む繰り返し単位の含有量は、樹脂(A)中の全繰り返し単位に対し、15〜60mol%が好ましく、より好ましくは20〜50mol%、更に好ましくは30〜50mol%である。
【0059】
一般式(II)で表される基を含む繰り返し単位としては、下記一般式(IIa)で表される繰り返し単位が好ましい。
【0060】
【化13】

【0061】
一般式(IIa)において、
Vはラクトン構造を有する基を表す。
2は、水素原子、アルキル基、水酸基、アルコキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、アシル基、アシロキシ基、シクロアルキル基、アリール基、カルボキシル基、アルキルオキシカルボニル基、アルキルカルボニルオキシ基又はアラルキル基を表す。
nは、繰り返し数を表し、1〜5の整数を表す。
Zは、単結合、エーテル結合、エステル結合、アミド結合、ウレタン結合又はウレア結合を表し、複数個ある場合は同じでも異なっていてもよい。
2は、アルキレン基を表し、複数個ある場合は同じでも異なっていてもよい。
【0062】
2のアルキル基としては、炭素数1〜5のアルキル基が好ましく、より好ましくはメチル基である。アルキル基は、置換基を有していてもよい。好ましいアルキル基上の置換基としては、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、t−ブトキシ基、ベンジルオキシ基等のアルコキシ基等が挙げられる。
2としてより好ましい基としては、水素原子、アルキル基、ヒドロキシメチル基、トリフルオロメチル基である。更に好ましくは、水素原子、アルキル基、特に好ましくは、水素原子、メチル基である。
【0063】
一般式(IIa)に於ける、R、Z、n、Vの具体例及び好ましい範囲は、一般式(II)に於ける、R、Z、n、Vと同様である。
【0064】
一般式(II)で表される基を含む繰り返し単位としては、下記一般式(IIb)で表される繰り返し単位がより好ましい。
【0065】
【化14】

【0066】
一般式(IIb)において、
2は、水素原子、アルキル基、水酸基、アルコキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、アシル基、アシロキシ基、シクロアルキル基、アリール基、カルボキシル基、アルキルオキシカルボニル基、アルキルカルボニルオキシ基又はアラルキル基を表す。
2は、アルキレン基を表し、複数個ある場合は同じでも異なっていてもよい。
3は、アルキル基又はシクロアルキル基を表し、複数個ある場合は同じでも異なっていてもよく、複数個ある場合には2つのR3が結合し、環を形成していても良い。
Xは、アルキレン基、酸素原子又は硫黄原子を表す。
Yは、電子求引性基を表し、複数個ある場合は同じでも異なっていてもよい。
Zは、単結合、エーテル結合、エステル結合、アミド結合、ウレタン結合又はウレア結合を表し、複数個ある場合は同じでも異なっていてもよい。
kは、置換基数であって、0〜8の整数を表す。
nは、繰り返し数を表し、1〜5の整数を表す。
mは、置換基数であって、1〜7の整数を表す。
【0067】
一般式(IIb)に於ける、R、Z、n、Bの具体例及び好ましい範囲は、一般式(IIa)に於ける、R、Z、n、Bと同様である。
【0068】
で表されるアルキル基としては、好ましくは炭素数1〜30であり、より好ましくは炭素数1〜15の直鎖状アルキル基、分岐状アルキル基である。具体的にはメチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、n−ドデシル基、n−テトラデシル基、n−オクタデシル基などの直鎖アルキル基、イソプロピル基、イソブチル基、t−ブチル基、ネオペンチル基、2−エチルヘキシル基などの分岐アルキル基を挙げることができる。
としてのシクロアルキル基は、好ましくは炭素数3〜20のシクロアルキル基であり、多環でもよく、環内に酸素原子を有していてもよい。具体的には、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ノルボルニル基、アダマンチル基などを挙げることができる。
のアルキル基、シクロアルキル基は、置換基を有していてもよい。アルキル基、シクロアルキル基上の置換基としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子やメルカプト基、ヒドロキシ基、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、t−ブトキシ基、ベンジルオキシ基等のアルコキシ基、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、sec-ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等のアルキル基、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基等のシクロアルキル基、及びシアノ基、ニトロ基、スルホニル基、シリル基、エステル基、アシル基、ビニル基、アリール基等が挙げられる。また複数個ある場合に、2つのR3が結合して環(好ましくはシクロアルキレン基)を形成していてもよい。
【0069】
Xは、アルキレン基、酸素原子又は硫黄原子を表す。アルキレン基としては、炭素数1〜2のアルキレン基が好ましく、メチレン基、エチレン基等が挙げられる。アルキレン基上の置換基としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子やメルカプト基、ヒドロキシ基、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、t−ブトキシ基、ベンジルオキシ基等のアルコキシ基、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、sec-ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等のアルキル基、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基等のシクロアルキル基、及びシアノ基、ニトロ基、スルホニル基、シリル基、エステル基、アシル基、ビニル基、アリール基等が挙げられる。
【0070】
Yの電子求引性基としては、例えば、シアノ基、ニトロ基、カルボキシル基、ヒドロキシ基又は置換基を有していてもよいアルコキシ基、ハロゲン化アルキル基を挙げることができる。アルコキシ基は、炭素数1〜10のアルコキシ基が好ましく、例えば、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、t−ブトキシ基、ベンジルオキシ基等が挙げられる。アルコキシ基上の置換基としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子やメルカプト基、ヒドロキシ基、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、t−ブトキシ基、ベンジルオキシ基等のアルコキシ基、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、sec-ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等のアルキル基、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基等のシクロアルキル基、及びシアノ基、ニトロ基、スルホニル基、シリル基、エステル基、アシル基、ビニル基、アリール基等が挙げられる。好ましいYとしては、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、ハロゲン化アルキル基、特に好ましいYとしては、シアノ基が挙げられる。
【0071】
Zで表される基としては、単結合、エーテル結合、エステル結合、アミド結合、ウレタン結合又はウレア結合が挙げられるが、より好ましくは、単結合、エーテル結合、エステル結合が挙げられ、特に好ましくはエステル結合である。Zは、ノルボルナン骨格のエンド側、エキソ側のいずれに位置していても良い。
【0072】
kは置換基数であって、0〜8の整数を表し、より好ましくは0〜5特に好ましくは0〜3である。mは置換基数であって、1〜7の整数を表す。より好ましくは1〜5、特に好ましくは1〜3である。
【0073】
一般式(II)で表される基を含む繰り返し単位としては、下記一般式(IIc)で表される繰り返し単位が更に好ましい。
【0074】
【化15】

【0075】
一般式(IIc)において、
2は、水素原子、アルキル基、水酸基、アルコキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、アシル基、アシロキシ基、シクロアルキル基、アリール基、カルボキシル基、アルキルオキシカルボニル基、アルキルカルボニルオキシ基又はアラルキル基を表す。
3は、アルキル基又はシクロアルキル基を表し、複数個ある場合は同じでも異なっていてもよく、複数個ある場合には2つのR3が結合し、環を形成していても良い。
Xは、アルキレン基、酸素原子又は硫黄原子を表す。
kは、置換基数であって、0〜8の整数を表す。
pは、繰り返し数を表し、1〜5の整数を表す。
nは、繰り返し数を表し、1〜5の整数を表す。
mは、置換基数であって、1〜7の整数を表す。
【0076】
一般式(IIc)に於ける、R、R、m、n、k、Bの具体例及び好ましい範囲は、一般式(IIb)に於ける、R、R、m、n、k、Bと同様である。
【0077】
ラクトン構造を有する基を有する繰り返し単位は、酸分解性繰り返し単位のモル比率(モル%)の±20モル%であることが現像性の観点から特に好ましい。
【0078】
以下に一般式(II)で表される基を含む繰り返し単位の具体例を示すが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0079】
下記構造中のBは、前記一般式(IIa)に於けるBと同様である。
【0080】
【化16】

【0081】
【化17】

【0082】
【化18】

【0083】
【化19】

【0084】
【化20】

【0085】
【化21】

【0086】
【化22】

【0087】
上記構造式において、Acはアセチル基を表す。
樹脂(A)は、前記一般式(II)で表される基を含む繰り返し単位と、更に下記一般式(IIIa)で表される繰り返し単位を有する。
【0088】
【化23】

【0089】
一般式(IIIa)において、
1は、任意の置換基を表し、複数ある場合は同じでも異なっていてもよい。
1は、水素原子、アルキル基、水酸基、アルコキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、アシル基、アシロキシ基、シクロアルキル基、アリール基、カルボキシル基、アルキルオキシカルボニル基、アルキルカルボニルオキシ基又はアラルキル基を表す。
mは、置換基数であって、0〜4の整数を表す。
【0090】
前記一般式(IIIa)で表される繰り返し単位は好ましくは下記式(IIIa’)で表される繰り返し単位である。
【0091】
【化24】

【0092】
前記一般式(IIIa)で表される繰り返し単位はより好ましくは下記式(IIIb)で表される繰り返し単位である。
【0093】
【化25】

【0094】
一般式(IIIa)で表される繰り返し単位の含有量は、樹脂(A)中の全繰り返し単位に対して、10〜70mol%であることが好ましく、20〜60mol%であることがより好ましく、25〜55mol%であることが更に好ましい。
【0095】
樹脂(A)は、酸分解性基を有する繰り返し単位として、下記一般式(A2)で表される繰り返し単位を有することが好ましい。
【0096】
【化26】

【0097】
一般式(A2)において、
2は、酸の作用により脱離する基又は酸の作用により分解する基を有する基を表す。
2は、水素原子、アルキル基、水酸基、アルコキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、アシル基、アシロキシ基、シクロアルキル基、アリール基、カルボキシル基、アルキルオキシカルボニル基、アルキルカルボニルオキシ基又はアラルキル基を表す。
【0098】
一般式(A2)に於ける、A2の酸の作用により脱離する基は、前記酸分解性基に於いて挙げた酸の作用により脱離する基と同様のものを挙げることができ、炭化水素基であることが好ましい。
炭化水素基としては、アルキル基若しくはシクロアルキル基、アリール基、アラルキル基を有する基を有する基が好ましく、より好ましくは、アルキル基若しくはシクロアルキル基を有する基であり、更により好ましくは、アルキル基を有する基である。A2に於ける、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基は、前記酸の作用により脱離する基に於ける、それらと同様のものを挙げることができる。
2の酸の作用により分解する基を有する基としては、酸分解性基を有するアルキル基、シクロアルキル基、アリール基等を挙げることができる。
【0099】
2は、後述の一般式(A1)に於ける、B1と同様のものである。
2は、好ましくは、水素原子、アルキル基であり、アルキル基の場合更に好ましくはメチル基である。
【0100】
一般式(A2)は、下記一般式(A2’)で表されることが好ましい。
【0101】
【化27】

【0102】
一般式(A2’)に於いて、
Rh、Rk及びRjは、各々独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、又はアラルキル基を表す。RkとRjとは、互いに結合して環を形成してもよい。
2は、水素原子、アルキル基、水酸基、アルコキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、アシル基、アシロキシ基、シクロアルキル基、アリール基、カルボキシル基、アルキルオキシカルボニル基、アルキルカルボニルオキシ基又はアラルキル基を表す。
【0103】
一般式(A2’)において、Rh、Rk及びRjに於けるアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基は、前記酸の作用により脱離する基に於ける、それらと同様のものを挙げることができる。
RkとRjとが、互いに結合して形成する環は、単環型でも、多環型でもよい。単環型としては、炭素数3〜8のシクロアルカン構造が好ましく、例えば、シクロプロパン構造、シクロブタン構造、シクロペンタン構造、シクロへキサン構造、シクロヘプタン構造、シクロオクタン構造等を挙げることができる。多環型としては、炭素数6〜20のシクロアルカン構造が好ましく、例えば、アダマンタン構造、ノルボルナン構造、ジシクロペンタン構造、トリシクロデカン構造、テトラシクロドデカン構造等を挙げることができる。なお、シクロアルカン構造中の炭素原子の一部が酸素原子等のヘテロ原子によって置換されていてもよい。
Rh、Rk及びRjは、アルキル基又はシクロアルキル基であることが好ましい。
Rhがアルキル基であり、RkとRjとが、互いに結合して環を形成することが好ましい。
Rhが水素原子であり、Rkがアリール基であり、Rjがアルキル基、シクロアルキル基又はアリール基であることが好ましい。
【0104】
一般式(A2’)に於ける、B2は、一般式(A2)に於ける、B2と同義である。
【0105】
一般式(A2)で表される繰り返し単位の具体例を以下に示すが、本発明は、これらに限定されるものではない。
【0106】
【化28】

【0107】
【化29】

【0108】
【化30】

【0109】
【化31】

【0110】
【化32】

【0111】
樹脂(A)は、酸分解性基を有する繰り返し単位として、下記一般式(A1)で表される繰り返し単位を有してもよい。
【0112】
【化33】

【0113】
一般式(A1)に於いて、
nは、1〜3の整数を示す。mは、0〜3の整数を示す。但し、m+n≦5である。
1は、酸の作用により脱離する基又は酸の作用により分解する基を有する基を表す。
1は、任意の置換基を表し、複数ある場合は同じでも異なっていてもよい。
1は、水素原子、アルキル基、水酸基、アルコキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、アシル基、アシロキシ基、シクロアルキル基、アリール基、カルボキシル基、アルキルオキシカルボニル基、アルキルカルボニルオキシ基又はアラルキル基を表す。
なお、一般式(A1)におけるS1及びB1は、前記一般式(IIIa)におけるS1及びB1はと同一でも異なっていてよい。
【0114】
一般式(A1)において、B1のアルキル基及びB1のアルキルオキシカルボニル基、アルキルカルボニルオキシ基に於けるアルキル基は、炭素数1〜5の直鎖状又は分岐状アルキル基が好ましく、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、t−ペンチル基等を挙げることができる。
1のアルコキシ基は、炭素数1〜5のアルコキシ基が好ましく、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、n−ブトキシ基等を挙げることができる。
1のアシル基及びB1のアシロキシ基に於けるアシル基は、炭素数1〜8個のアシル基が好ましく、例えば、ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、バレリル基、ピバロイル基、ベンゾイル基等を挙げることができる。
1のシクロアルキル基は、炭素数3〜15の単環又は多環のシクロアルキル基が好ましく、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ノルボニル基、アダマンチル基等を挙げることができる。
1のアリール基は、炭素数6〜18のアリール基が好ましく、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントリル基等が挙げられる。
1のアラルキル基は、炭素数7〜12のアラルキル基が好ましく、例えば、ベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基等を挙げることができる。
1は、水素原子又はメチル基であることが好ましい。
【0115】
1の酸の作用により脱離する基は、前記酸分解性基に於いて挙げた酸の作用により脱離する基と同様のものを挙げることができ、たとえば、t−ブチル基、t−アミル基等の3級アルキル基、t−ブトキシカルボニル基、t−ブトキシカルボニルメチル基、−C(L1)(L2)−O−Z2で表される基(ケタール基、アセタール基を形成)が好ましい。
1及びL2は、同一でも異なっていてもよく、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、又はアラルキル基から選ばれる原子又は基を表す。
2は、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、又はアラルキル基を表す。
2とL1は、互いに結合して5又は6員環を形成してもよい。
2とL1が互いに結合して形成する5又は6員環としては、テトラヒドロピラン環、テトラヒドロフラン環等が挙げられる。
1、L2及びZ2に於ける、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基は、B1におけるアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基と同様のものがあげられる。
1の酸の作用により分解する基を有する基としては、酸分解性基を有するアルキル基、シクロアルキル基、アリール基等を挙げることができる。
【0116】
1の任意の置換基としては、例えば、ハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルコキシ基、アシル基、−OC(=O)Rf、−OC(=O)ORf、−C(=O)ORf、−C(=O)N(Rg)Rf、−N(Rg)C(=O)Rf、−N(Rg)C(=O)ORf、−N(Rg)SO2Rf、−SRf、−SO2Rf、−SO3Rf又は−SO2N(Rg)Rfを挙げることができる。式中、Rf及びRgは、各々独立して、水素原子、アルキル基、水酸基、アルコキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、アシル基、アシロキシ基、シクロアルキル基、アリール基、カルボキシル基、アルキルオキシカルボニル基、アルキルカルボニルオキシ基又はアラルキル基を表す。
1に於けるアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルコキシ基、アシル基は、B1に於けるアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルコキシ基、アシル基と同様のものがあげられる。
1に於けるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子が挙げられ、フッ素原子が好ましい。
Rf及びRgに於ける、アルキル基、アルコキシ基、アシル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基としては、B1に於ける、それらと同様のものを挙げることができる。
Rf及びRgのアシロキシ基に於けるアシル基は、B1に於けるアシル基と同様のものを挙げることができる。
Rf及びRgのアルキルオキシカルボニル基、アルキルカルボニルオキシ基に含まれるアルキル基としては、B1に於けるアルキル基と同様のものがあげられる。
1は、複数ある場合は、各々独立して任意の置換基を表す。
【0117】
一般式(A1)で表される繰り返し単位の具体例を挙げるが、これらに限定されるものではない。
【0118】
【化34】

【0119】
【化35】

【0120】
また、樹脂(A)は、下記一般式(IV)で表される繰り返し単位を有していてもよい。
【0121】
【化36】

【0122】
一般式(IV)に於いて、
01は、各々独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、ハロゲン原子、シアノ基、又はアルコキシカルボニル基を表す。
Bは、ハロゲン原子、シアノ基、アシル基、アルキル基、アルコキシ基、アシルオキシ基又はアルコキシカルボニル基を表す。
pは0〜5の整数を表す。
【0123】
一般式(IV)に於ける、R01は、各々独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、ハロゲン原子、シアノ基、又はアルコキシカルボニル基を表し、好ましくは炭素数20以下である。
01におけるアルキル基又はシクロアルキル基としては、炭素数20個以下が好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、シクロペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、ドデシル基などである。これらの基は置換基を有していても良く、例えばアルコキシ基、水酸基、ハロゲン原子、ニトロ基、アシル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、スルホニルアミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アラルキルチオ基、チオフェンカルボニルオキシ基、チオフェンメチルカルボニルオキシ基、ピロリドン残基等のヘテロ環残基などが挙げられ、炭素数8以下が好ましい。CF3基、アルコキシカルボニルメチル基、アルキルカルボニルオキシメチル基、ヒドロキシメチル基、アルコキシメチル基等が更に好ましい。
01におけるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子が挙げられ、フッ素原子が好ましい。
01におけるアルコキシカルボニル基に含まれるアルキル基としては、上記R01におけるアルキル基と同様のものが好ましい。
【0124】
一般式(IV)におけるBとしてのアシル基は、例えば炭素数2〜8個のアシル基であって、具体的には、ホルミル基、アセチル基、プロパノイル基、ブタノイル基、ピバロイル基、ベンゾイル基等を好ましく挙げることができる。
Bとしてのアルキル基は、例えば炭素数1〜8個のアルキル基であって、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、ヘキシル基、オクチル基を好ましく挙げることができる。
Bとしてのアルコキシ基は、例えば炭素数1〜8の上記アルコキシ基であり、例えばメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基等を挙げることができる。
Bとしてのアシルオキシ基又はアルコキシカルボニル基は、上記アシル基、アルコキシ基に対応する基を挙げることができる。
【0125】
Bとしては、アシルオキシ基、アルコキシカルボニル基が好ましく、アシルオキシ基がより好ましい。また、アシルオキシ基(一般式−O−CO−Rで表される。Rはアルキル基)の中でも、Rの炭素数が1〜6のものが好ましく、Rの炭素数1〜3のものがより好ましく、Rの炭素数が1のもの(即ち、アセトキシ基)が特に好ましい。
pは0〜5の整数を表し、0〜2が好ましく、1〜2がより好ましく、1が更に好ましい。
【0126】
上記各基は置換基を有していてもよく、好ましい置換基として、ヒドロキシル基、カルボキシル基、シアノ基、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、沃素原子)、アルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等)等を挙げることができる。環状構造については、置換基として更にアルキル基(好ましくは炭素数1〜8)を挙げることができる。
【0127】
一般式(IV)で表される繰り返し単位の具体例を以下に挙げるが、これらに限定されるものではない。
【0128】
【化37】

【0129】
樹脂(A)は、下記一般式(V)で示される繰り返し単位を有していてもよい。
【0130】
【化38】

【0131】
一般式(V)に於いて、
a〜Rcは、各々独立に、水素原子、フッ素原子、塩素原子、シアノ基又はアルキル基を表す。
1は、水素原子又は有機基を表す。
【0132】
一般式(V)に於ける、Ra〜Rcとしてのアルキル基は、好ましくは炭素数1〜5個のアルキル基であって、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基を挙げることができる。
【0133】
1としての有機基は、好ましくは炭素数1〜40であり、酸分解性基であっても非酸分解性基であってもよい。
【0134】
非酸分解性基としては、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アリール基、アルキルオキシ基(但し、−O−第3級アルキルは除く)、アシル基、シクロアルキルオキシ基、アルケニルオキシ基、アリールオキシ基、アルキルカルボニルオキシ基、アルキルアミドメチルオキシ基、アルキルアミド基、アリールアミドメチル基、アリールアミド基等が挙げられる。
非酸分解性基としては、好ましくはアシル基、アルキルカルボニルオキシ基、アルキルオキシ基、シクロアルキルオキシ基、アリールオキシ基、アルキルアミドオキシ基、アルキルアミド基であり、より好ましくはアシル基、アルキルカルボニルオキシ基、アルキルオキシ基、シクロアルキルオキシ基、アリールオキシ基である。
非酸分解性基において、アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基の様な炭素数1〜4個のものが好ましく、シクロアルキル基としてはシクロプロピル基、シクロブチル基、シクロヘキシル基、アダマンチル基の様な炭素数3〜10個のものが好ましく、アルケニル基としてはビニル基、プロペニル基、アリル基、ブテニル基の様な炭素数2〜4個のものが好ましく、アルケニル基としてはビニル基、プロペニル基、アリル基、ブテニル基の様な炭素数2〜4個のものが好ましく、アリール基としてはフェニル基、キシリル基、トルイル基、クメニル基、ナフチル基、アントラセニル基の様な炭素数6〜14個のものが好ましい。アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、ヒドロキシエトキシ基、プロポキシ基、ヒドロキシプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基等の炭素数1〜4個のアルコキシ基が好ましい。
【0135】
1の酸分解性基の有機基としては、例えば、−C(R11a)(R12a)(R13a)、−C(R14a)(R15a)(OR16a)、−CO−OC(R11a)(R12a)(R13a)を挙げることができる。
11a〜R13aは、それぞれ独立して、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アラルキル基又はアリール基を表す。R14a及びR15aは、それぞれ独立して、水素原子又はアルキル基を表す。R16aは、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アラルキル基又はアリール基を表す。なお、R11a、R12a、R13aのうちの2つ、又はR14a、R15a、R16aのうちの2つが結合して環を形成してもよい。
なお、X1には、酸分解性基を有する基を変性により導入することもできる。このようにして、酸分解性基を導入したX1は、例えば、以下のようになる。
−〔C(R17a)(R18a)〕p−CO−OC(R11a)(R12a)(R13a)R17a及びR18aは、それぞれ独立して、水素原子又はアルキル基を表す。pは1〜4の整数である。
【0136】
1としての有機基は、脂環式、芳香環式、有橋脂環式から選ばれる少なくとも1つの環状構造を有する酸分解性基であることが好ましく、芳香族基(特にフェニル基)を含む構造、又は下記一般式(pI)〜(pVI)で表される脂環式又は有橋脂環式構造を含む構造であることが好ましい。
【0137】
【化39】

【0138】
式中、R11は、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基又はsec−ブチル基を表し、Zは、炭素原子とともに脂環式炭化水素基を形成するのに必要な原子団を表す。
12〜R16は、各々独立に、炭素数1〜4個の、直鎖若しくは分岐のアルキル基又は脂環式炭化水素基を表し、但し、R12〜R14のうち少なくとも1つ、若しくはR15、R16のいずれかは脂環式炭化水素基を表す。
17〜R21は、各々独立に、水素原子、炭素数1〜4個の、直鎖若しくは分岐のアルキル基又は脂環式炭化水素基を表し、但し、R17〜R21のうち少なくとも1つは脂環式炭化水素基を表す。また、R19、R21のいずれかは炭素数1〜4個の、直鎖若しくは分岐のアルキル基又は脂環式炭化水素基を表す。
22〜R25は、各々独立に、水素原子、炭素数1〜4個の、直鎖若しくは分岐のアルキル基又は脂環式炭化水素基を表し、但し、R22〜R25のうち少なくとも1つは脂環式炭化水素基を表す。また、R23とR24は、互いに結合して環を形成していてもよい。
【0139】
一般式(pI)〜(pVI)において、R12〜R25におけるアルキル基としては、置換若しくは非置換のいずれであってもよい、1〜4個の炭素原子を有する直鎖若しくは分岐のアルキル基を表す。そのアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基等が挙げられる。
また、上記アルキル基の更なる置換基としては、炭素数1〜4個のアルコキシ基、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、アシル基、アシルオキシ基、シアノ基、水酸基、カルボキシ基、アルコキシカルボニル基、ニトロ基等を挙げることができる。
【0140】
11〜R25における脂環式炭化水素基あるいはZと炭素原子が形成する脂環式炭化水素基としては、単環式でも、多環式でもよい。具体的には、炭素数5以上のモノシクロ、ビシクロ、トリシクロ、テトラシクロ構造等を有する基を挙げることができる。その炭素数は6〜30個が好ましく、特に炭素数7〜25個が好ましい。これらの脂環式炭化水素基は置換基を有していてもよい。
以下に、脂環式炭化水素基のうち、脂環式部分の構造例を示す。
【0141】
【化40】

【0142】
【化41】

【0143】
【化42】

【0144】
本発明においては、上記脂環式部分の好ましいものとしては、アダマンチル基、ノルアダマンチル基、デカリン残基、トリシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基、ノルボルニル基、セドロール基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロデカニル基、シクロドデカニル基を挙げることができる。より好ましくは、アダマンチル基、デカリン残基、ノルボルニル基、セドロール基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロデカニル基、シクロドデカニル基である。
【0145】
脂環式炭化水素基が有していてもよい置換基としては、例えば、アルキル基、ハロゲン原子、水酸基、アルコキシ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基が挙げられる。アルキル基としてはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基等の低級アルキル基が好ましく、更に好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基よりなる群から選択された置換基が挙げられる。上記アルコキシ基としてはメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等の炭素数1〜4個のものを挙げることができる。
また、アルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基は、更に置換基を有していてもよく、このような置換基としては、例えば、炭素数1〜4のアルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基等)、ヒドロキシ基、オキソ基、アルキルカルボニル基(好ましくは炭素数2〜5)、アルキルカルボニルオキシ基基(好ましくは炭素数2〜5)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2〜5)、ハロゲン原子(塩素原子、臭素原子、フッ素原子等)等を挙げることができる。
【0146】
一般式(IV)で表される繰り返し単位の含有率は、樹脂を構成する全繰り返し単位中、好ましくは0〜50モル%、より好ましくは5〜40モル%、特に好ましくは5〜20モル%である。
一般式(V)で表される繰り返し単位の含有率は、樹脂を構成する全繰り返し単位中、好ましくは0〜30モル%、より好ましくは0〜20モル%、特に好ましくは0〜10モル%である。
【0147】
樹脂(A)は、親疎水性の調整のために、アルキレンオキシ基、ラクトン基などの親水基を有するメタアクリレート若しくはアクリレートを共重合してもよい。ここでは樹脂(A)はラクトン基を前述の一般式(II)で表される基の形態としてではなく、含有することができる。
【0148】
アルキレンオキシ基としては、エチレンオキシ基、プロピレンオキシ基、ブチレンオキシ基、ペンチレンオキシ基等があげられる。
【0149】
ラクトン基としては、ラクトン構造を有していればいずれでも用いることができるが、好ましくは5〜7員環ラクトン構造であり、5〜7員環ラクトン構造にビシクロ構造、スピロ構造を形成する形で他の環構造が縮環しているものが好ましい。下記一般式(LC1−1)〜(LC1−16)のいずれかで表されるラクトン構造を有する繰り返し単位を有することがより好ましい。
また、ラクトン構造が主鎖に直接結合していてもよい。好ましいラクトン構造としては、(LC1−1)、(LC1−4)、(LC1−5)、(LC1−6)、(LC1−13)、(LC1−14)であり、特定のラクトン構造を用いることでラインエッジラフネス、現像欠陥が良好になる。
【0150】
【化43】

【0151】
ラクトン構造部分は、置換基(Rb2)を有していても有していなくてもよい。好ましい置換基(Rb2)としては、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数4〜7のシクロアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシ基、炭素数1〜8のアルコキシカルボニル基、カルボキシル基、ハロゲン原子、水酸基、シアノ基、酸分解性基などが挙げられる。より好ましくは炭素数1〜4のアルキル基、シアノ基、酸分解性基である。n2は、0〜4の整数を表す。n2が2以上の時、複数存在する置換基(Rb2)は、同一でも異なっていてもよく、また、複数存在する置換基(Rb2)同士が結合して環を形成してもよい。
【0152】
一般式(LC1−1)〜(LC1−16)のいずれかで表されるラクトン構造を有する繰り返し単位としては、下記一般式(AII)で表される繰り返し単位を挙げることができる。
【0153】
【化44】

【0154】
一般式(AII)中、
Rb0は、水素原子、ハロゲン原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表す。Rb0のアルキル基が有していてもよい好ましい置換基としては、水酸基、ハロゲン原子が挙げられる。
Rb0のハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、沃素原子を挙げることができる。
Rb0は、水素原子又はメチル基が好ましい。
Vは、一般式(LC1−1)〜(LC1−16)の内のいずれかで示される構造を有する基を表す。
【0155】
ラクトン基を有する繰り返し単位は、通常光学異性体が存在するが、いずれの光学異性体を用いてもよい。また、1種の光学異性体を単独で用いても、複数の光学異性体混合して用いてもよい。1種の光学異性体を主に用いる場合、その光学純度(ee)が90以上のものが好ましく、より好ましくは95以上である。
【0156】
ラクトン基を有する繰り返し単位の含有量は、ポリマー中の全繰り返し単位に対し、15〜60mol%が好ましく、より好ましくは20〜50mol%、更に好ましくは30〜50mol%である。
【0157】
ラクトン基を有する繰り返し単位の具体例を以下に挙げるが、本発明はこれらに限定されない。
【0158】
【化45】

【0159】
【化46】

【0160】
【化47】

【0161】
特に好ましいラクトン基を有する繰り返し単位としては、下記の繰り返し単位が挙げられる。最適なラクトン基を選択することにより、パターンプロファイル、密依存性が良好となる。
【0162】
【化48】

【0163】
樹脂(A)は、水酸基又はシアノ基を有する繰り返し単位を有してもよい。
水酸基又はシアノ基を有する繰り返し単位は、水酸基又はシアノ基で置換された脂環炭化水素構造を有する繰り返し単位であることが好ましい。水酸基又はシアノ基で置換された脂環炭化水素構造に於ける、脂環炭化水素構造としては、アダマンチル基、ジアマンチル基、ノルボルナン基が好ましい。好ましい水酸基又はシアノ基で置換された脂環炭化水素構造としては、下記一般式(VIIa)〜(VIId)で表される部分構造が好ましい。
【0164】
【化49】

【0165】
一般式(VIIa)〜(VIIc)に於いて、
2c〜R4cは、各々独立に、水素原子、水酸基又はシアノ基を表す。ただし、R2c〜R4cの内の少なくとも1つは、水酸基又はシアノ基を表す。好ましくは、R2c〜R4cの内の1つ又は2つが、水酸基で、残りが水素原子である。一般式(VIIa)に於いて、更に好ましくは、R2c〜R4cの内の2つが、水酸基で、残りが水素原子である。
【0166】
一般式(VIIa)〜(VIId)で表される部分構造を有する繰り返し単位としては、下記一般式(AIIa)〜(AIId)で表される繰り返し単位を挙げることができる。
【0167】
【化50】

【0168】
一般式(AIIa)〜(AIId)に於いて、
1cは、水素原子、メチル基、トリフロロメチル基又はヒドロキシメチル基を表す。
2c〜R4cは、一般式(VIIa)〜(VIIc)に於ける、R2c〜R4cと同義である。
【0169】
水酸基又はシアノ基で置換された脂環炭化水素構造を有する繰り返し単位の含有量は、ポリマー中の全繰り返し単位に対し、5〜40mol%が好ましく、より好ましくは5〜30mol%、更に好ましくは5〜25mol%である。
【0170】
水酸基又はシアノ基を有する繰り返し単位の具体例を以下に挙げるが、本発明はこれらに限定されない。
【0171】
【化51】

【0172】
樹脂(A)は、アルカリ可溶性基を有する繰り返し単位を有することが好ましい。
アルカリ可溶性基としてはカルボキシル基、スルホンアミド基、スルホニルイミド基、ビスルスルホニルイミド基、α位が電子求引性基で置換された脂肪族アルコール(例えばヘキサフロロイソプロパノール基)が挙げられ、カルボキシル基を有する繰り返し単位を有することがより好ましい。アルカリ可溶性基を有する繰り返し単位を含有することによりコンタクトホール用途での解像性が増す。アルカリ可溶性基を有する繰り返し単位としては、アクリル酸、メタクリル酸による繰り返し単位のような樹脂の主鎖に直接アルカリ可溶性基が結合している繰り返し単位、あるいは連結基を介して樹脂の主鎖にアルカリ可溶性基が結合している繰り返し単位、更にはアルカリ可溶性基を有する重合開始剤や連鎖移動剤を重合時に用いてポリマー鎖の末端に導入、のいずれも好ましく、連結基は単環又は多環の環状炭化水素構造を有していてもよい。特に好ましくはアクリル酸、メタクリル酸による繰り返し単位である。
【0173】
アルカリ可溶性基を有する繰り返し単位の含有量は、ポリマー中の全繰り返し単位に対し、1〜20mol%が好ましく、より好ましくは3〜15mol%、更に好ましくは5〜10mol%である。
【0174】
アルカリ可溶性基を有する繰り返し単位の具体例を以下に示すが、本発明は、これに限定されるものではない。
【0175】
【化52】

【0176】
ラクトン基、水酸基、シアノ基及びアルカリ可溶性基から選ばれる少なくとも1種類の基を有する繰り返し単位として、更に好ましくは、ラクトン基、水酸基、シアノ基、アルカリ可溶性基から選ばれる少なくとも2つを有する繰り返し単位であり、好ましくはシアノ基とラクトン基を有する繰り返し単位である。特に好ましくは前記(LCI−4)のラクトン構造にシアノ基が置換した構造を有する繰り返し単位である。
【0177】
樹脂(A)は、更に、脂環炭化水素構造を有し、酸分解性を示さない繰り返し単位を有してもよい。これにより液浸露光時にレジスト膜から液浸液への低分子成分の溶出が低減できる。このような繰り返し単位として、例えば1−アダマンチル(メタ)アクリレート、ジアマンチル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレートによる繰り返し単位などが挙げられる。
【0178】
樹脂(A)は、上記の繰り返し構造単位以外に、ドライエッチング耐性や標準現像液適性、基板密着性、レジストプロファイル、更にポジ型レジスト組成物に一般的に必要な特性である解像力、耐熱性、感度等を調節する目的で様々な繰り返し構造単位を有することができる。
【0179】
このような繰り返し構造単位としては、下記の単量体に相当する繰り返し構造単位を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0180】
これにより、樹脂(A)に要求される性能、特に、(1)塗布溶剤に対する溶解性、(2)製膜性(ガラス転移点)、(3)アルカリ現像性、(4)膜べり(親疎水性、アルカリ可溶性基選択)、(5)未露光部の基板への密着性、(6)ドライエッチング耐性、
等の微調整が可能となる。
【0181】
このような単量体として、例えばアクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類、アクリルアミド類、メタクリルアミド類、アリル化合物、ビニルエーテル類、ビニルエステル類等から選ばれる付加重合性不飽和結合を1個有する化合物等を挙げることができる。
【0182】
樹脂(A)は、その他、スチレン(アルキル基、ハロゲン原子、アルキルチオ基、スルホニル基、エステル基が置換していてもよい)、ビニルナフタレン(アルキル基、ハロゲン原子、アルキルチオ基、スルホニル基、エステル基が置換していてもよい)、ビニルアントラセン(アルキル基、ハロゲン原子、アルキルチオ基、スルホニル基、エステル基が置換していてもよい)などが共重合されていてもよい。
【0183】
その他にも、上記種々の繰り返し構造単位に相当する単量体と共重合可能である付加重合性の不飽和化合物であれば、共重合されていてもよい。
【0184】
樹脂(A)において、各繰り返し構造単位の含有モル比は、ポジ型レジスト組成物のドライエッチング耐性や標準現像液適性、基板密着性、レジストプロファイル、更にはポジ型レジスト組成物に一般的に必要な性能である解像力、耐熱性、感度等を調節するために適宜設定される。
【0185】
KrF、電子線、X線、EUV露光用である場合に、樹脂(A)は、一般式(A2)で表される繰り返し単位を有することが好ましい。
KrF、電子線、X線、EUV露光用である場合に、好ましくはヒドロキシスチレン繰り返し単位/酸分解基で保護されたヒドロキシスチレン繰り返し単位を有する共重合体、ヒドロキシスチレン繰り返し単位/酸分解基で保護された(メタ)アクリル酸エステル繰り返し単位を有する共重合体が好ましい。
【0186】
樹脂(A)はより具体的には、例えば以下の表1に示すようなユニットを含むものが挙げられるが、本発明はこれらに限定されない。
【0187】
【表1】

【0188】
上記表1において、ユニット(IIIb)、(IIIc)は以下の構造を表す。
【0189】
【化53】

【0190】
また、上記樹脂、特にA−2、A−5、A−8、A−12に、更に第4ユニットとして以下のいずれか1種の構造を含むものなども挙げられる。
【0191】
【化54】

【0192】
樹脂(A)の合成は、欧州特許254853号明細書、特開平3−223860号公報、特開平4−251259号公報に記載されているような、アルカリ可溶性樹脂に酸で分解しうる基の前駆体を反応させる方法、若しくは、酸で分解しうる基を有するモノマーを種々のモノマーと共重合する方法など公知の合成法により合成することができる。
【0193】
本発明のポジ型レジスト組成物が、KrF露光用であるとき、樹脂(A)の重量平均分子量(Mw)は、1,000〜200,000の範囲であることが好ましく、更に好ましくは1,000〜100,000の範囲であり、更に好ましくは1,000〜50,000の範囲であり、特に好ましくは10,000〜30,000の範囲である。
本発明のポジ型レジスト組成物が、電子線、X線、EUV露光用であるとき、樹脂(A)の重量平均分子量(Mw)は、1,000〜200,000の範囲であることが好ましく、更に好ましくは1,000〜100,000の範囲であり、更に好ましくは1,000〜50,000の範囲であり、特に好ましくは3,000〜10,000の範囲である。
ここで、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)のポリスチレン換算値をもって定義される。
樹脂(A)の分散度(Mw/Mn)は、1.0〜3.0であることが好ましく、更に好ましくは1.0〜2.5、更に好ましくは、1.0〜2.0である。アゾ系重合開始剤を用いてラジカル重合を行うことで分散度1.3〜2.0の樹脂(A)を合成することができる。また、分散度1.0〜1.5の樹脂(A)は、リビングラジカル重合によって合成可能である。
樹脂(A)のアルカリに対する溶解速度、感度の点から200,000以下が好ましい。
【0194】
樹脂(A)は、2種類以上組み合わせて使用してもよいし、他の酸の作用により分解しアルカリ現像液中での溶解性を増大させる樹脂と組み合わせて使用してもよい。
樹脂(A)の添加量は、総量として、ポジ型レジスト組成物の全固形分に対し、通常10〜99質量%であり、好ましくは20〜98質量%であり、特に好ましくは50〜97質量%である。
【0195】
(B)活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物
本発明のポジ型レジスト組成物は、活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物(「酸発生剤」、「化合物(B)」ともいう)を含有する。
そのような酸発生剤としては、光カチオン重合の光開始剤、光ラジカル重合の光開始剤、色素類の光消色剤、光変色剤、あるいはマイクロレジスト等に使用されている活性光線又は放射線の照射により酸を発生する公知の化合物及びそれらの混合物を適宜に選択して使用することができる。
【0196】
たとえば、ジアゾニウム塩、ホスホニウム塩、スルホニウム塩、ヨードニウム塩、イミドスルホネート、オキシムスルホネート、ジアゾジスルホン、ジスルホン、o−ニトロベンジルスルホネートを挙げることができる。
【0197】
また、これらの活性光線又は放射線の照射により酸を発生する基、あるいは化合物をポリマーの主鎖又は側鎖に導入した化合物、たとえば、米国特許第3,849,137号、独国特許第3914407号、特開昭63−26653号、特開昭55−164824号、特開昭62−69263号、特開昭63−146038号、特開昭63−163452号、特開昭62−153853号、特開昭63−146029号等に記載の化合物を用いることができる。
【0198】
更に米国特許第3,779,778号、欧州特許第126,712号等に記載の光により酸を発生する化合物も使用することができる。
【0199】
活性光線又は放射線の照射により分解して酸を発生する化合物の内で好ましい化合物として、下記一般式(ZI)、(ZII)、(ZIII)で表される化合物を挙げることができる。
【0200】
【化55】

【0201】
一般式(ZI)において、
201、R202及びR203は、各々独立に、有機基を表す。
-は、非求核性アニオンを表す。
【0202】
一般式(ZI)に於ける、X-は、好ましくは、スルホン酸アニオン、カルボン酸アニオン、ビス(アルキルスルホニル)アミドアニオン、トリス(アルキルスルホニル)メチドアニオン、BF、PF、SbFなどが挙げられ、好ましくは炭素原子を含有する有機アニオンである。
【0203】
好ましい有機アニオンとしては、下記一般式(AN1)〜(AN4)に示す有機アニオンが挙げられる。
【0204】
【化56】

【0205】
一般式(AN1)及び(AN2)に於いて、
Rc1は、有機基を表す。
【0206】
Rc1における有機基として炭素数1〜30のものが挙げられ、好ましくは置換していてもよいアルキル基、アリール基、又はこれらの複数が、単結合、−O−、−CO−、−S−、−SO−、−SON(Rd)−などの連結基で連結された基を挙げることができる。
Rdは水素原子、アルキル基を表し、結合しているアルキル基、アリール基と環構造を形成してもよい。
Rcの有機基として、より好ましくは1位がフッ素原子又はフロロアルキル基で置換されたアルキル基、フッ素原子又はフロロアルキル基で置換されたフェニル基である。フッ素原子又はフロロアルキル基を有することにより、光照射によって発生した酸の酸性度が上がり、感度が向上する。Rcにおいて炭素原子を5個以上有する時、少なくとも1つの炭素原子は全ての水素原子がフッ素原子で置換されているのではなく、水素原子の一部が残されていることが好ましく、水素原子の数がフッ素原子より多いことがより好ましい。炭素数5以上のパーフロロアルキル基を有さないことにより生態への毒性が軽減する。
Rcの特に好ましい様態としては、下記一般式で表される基である。
【0207】
【化57】

【0208】
上記一般式に於いて、
Rcは、炭素数4以下、より好ましくは2〜4、更に好ましくは2〜3のパーフロロアルキレン基、又は1〜4個のフッ素原子及び/又は1〜3個のフロロアルキル基で置換されたフェニレン基を表す。
Axは、単結合又は連結基(好ましくは、−O−、−CO−、−S−、−SO−又は−SON(Rd)−)を表す。Rdは、水素原子又はアルキル基を表し、Rcと結合して環構造を形成してもよい。
Rcは、水素原子、フッソ原子、置換していてもよい、直鎖若しくは分岐状アルキル基、単環若しくは多環のシクロアルキル基又はアリール基を表す。アルキル基、シクロアルキル基、アリール基は、置換基としてフッソ原子を有さないことが好ましい。
【0209】
前記一般式(AN3)及び(AN4)に於いて、
Rc、Rc及びRcは、各々独立に、有機基を表す。
【0210】
一般式(AN3)及び(AN4)に於ける、Rc、Rc、Rcの有機基として、好ましくはRcにおける好ましい有機基と同じものを挙げることができる。
RcとRcが結合して環を形成していてもよい。
RcとRcが結合して形成される基としてはアルキレン基、アリーレン基が挙げられる。好ましくは炭素数2〜4のパーフロロアルキレン基である。RcとRcが結合して環を形成することにより光照射によって発生した酸の酸性度が上がり、感度が向上し、好ましい。
【0211】
201、R202及びR203としての有機基の炭素数は、一般的に1〜30、好ましくは1〜20である。
また、R201〜R203のうち2つが結合して環構造を形成してもよく、環内に酸素原子、硫黄原子、エステル結合、アミド結合、カルボニル基を含んでいてもよい。
201〜R203の内の2つが結合して形成する基としては、アルキレン基(例えば、ブチレン基、ペンチレン基)を挙げることができる。
201、R202及びR203としての有機基の具体例としては、後述する化合物(ZI−1)、(ZI−2)、(ZI−3)における対応する基を挙げることができる。
【0212】
なお、一般式(Z1)で表される構造を複数有する化合物であってもよい。例えば、一般式(ZI)で表される化合物のR201〜R203の少なくともひとつが、一般式(ZI)で表されるもうひとつの化合物のR201〜R203の少なくともひとつと結合した構造を有する化合物であってもよい。
【0213】
更に好ましい(Z1)成分として、以下に説明する化合物(ZI−1)、(ZI−2)及び(ZI−3)を挙げることができる。
【0214】
化合物(ZI−1)は、上記一般式(ZI)のR201〜R203の少なくとも1つがアリール基である、アリールスルホニム化合物、即ち、アリールスルホニウムをカチオンとする化合物である。
アリールスルホニウム化合物は、R201〜R203の全てがアリール基でもよいし、R201〜R203の一部がアリール基で、残りがアルキル基、シクロアルキル基でもよい。
アリールスルホニウム化合物としては、例えば、トリアリールスルホニウム化合物、ジアリールアルキルスルホニウム化合物、アリールジアルキルスルホニウム化合物、ジアリールシクロアルキルスルホニウム化合物、アリールジシクロアルキルスルホニウム化合物を挙げることができる。
アリールスルホニウム化合物のアリール基としてはフェニル基、ナフチル基などのアリール基、インドール残基、ピロール残基などのヘテロアリール基が好ましく、更に好ましくは、フェニル基、インドール残基である。アリールスルホニム化合物が2つ以上のアリール基を有する場合に、2つ以上あるアリール基は同一であっても異なっていてもよい。
アリールスルホニウム化合物が必要に応じて有しているアルキル基は、炭素数1〜15の直鎖、分岐状アルキル基が好ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基等を挙げることができる。
アリールスルホニウム化合物が必要に応じて有しているシクロアルキル基は、炭素数3〜15のシクロアルキル基が好ましく、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロヘキシル基等を挙げることができる。
201〜R203のアリール基、アルキル基、シクロアルキル基は、アルキル基(例えば炭素数1〜15)、シクロアルキル基(例えば炭素数3〜15)、アリール基(例えば炭素数6〜14)、アルコキシ基(例えば炭素数1〜15)、ハロゲン原子、水酸基、フェニルチオ基を置換基として有してもよい。好ましい置換基としては、炭素数1〜12の直鎖、分岐状アルキル基、炭素数3〜12のシクロアルキル基、炭素数1〜12の直鎖、分岐又は環状のアルコキシ基であり、特に好ましくは炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基である。置換基は、3つのR201〜R203のうちのいずれか1つに置換していてもよいし、3つ全てに置換していてもよい。また、R201〜R203がアリール基の場合に、置換基はアリール基のp−位に置換していることが好ましい。
【0215】
次に、化合物(ZI−2)について説明する。
化合物(ZI−2)は、一般式(ZI)におけるR201〜R203が、各々独立に、芳香環を有さない有機基を表す場合の化合物である。ここで芳香環とは、ヘテロ原子を含有する芳香族環も包含するものである。
201〜R203としての芳香環を含有しない有機基は、一般的に炭素数1〜30、好ましくは炭素数1〜20である。
201〜R203は、各々独立に、好ましくは、アルキル基、シクロアルキル基、アリル基、ビニル基であり、更に好ましくは、直鎖、分岐、環状2−オキソアルキル基、アルコキシカルボニルメチル基、特に好ましくは、直鎖、分岐2−オキソアルキル基である。
【0216】
201〜R203としてのアルキル基は、直鎖、分岐状のいずれであってもよく、好ましくは、炭素数1〜10の直鎖又は分岐アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基)を挙げることができる。R201〜R203としてのアルキル基は、直鎖若しくは分岐状2−オキソアルキル基、アルコキシカルボニルメチル基であることがより好ましい。
201〜R203としてのシクロアルキル基は、好ましくは、炭素数3〜10のシクロアルキル基(シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ノルボニル基)を挙げることができる。R201〜R203としてのシクロアルキル基は、環状2−オキソアルキル基であることがより好ましい。
201〜R203としての2−オキソアルキル基は、直鎖、分岐、環状のいずれであってもよく、好ましくは、上記のアルキル基、シクロアルキル基の2位に>C=Oを有する基を挙げることができる。
201〜R203としてのアルコキシカルボニルメチル基におけるアルコキシ基としては、好ましくは炭素数1〜5のアルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペントキシ基)を挙げることができる。
201〜R203は、ハロゲン原子、アルコキシ基(例えば炭素数1〜5)、水酸基、シアノ基、ニトロ基によって更に置換されていてもよい。
【0217】
化合物(ZI−3)とは、以下の一般式(ZI−3)で表される化合物であり、フェナシルスルフォニウム塩構造を有する化合物である。
【0218】
【化58】

【0219】
一般式(ZI−3)に於いて、
1c〜R5cは、各々独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基又はハロゲン原子を表す。
6c及びR7cは、各々独立に、水素原子、アルキル基又はシクロアルキル基を表す。
Rx及びRyは、各々独立に、アルキル基、シクロアルキル基、アリル基又はビニル基を表す。
1c〜R7c中のいずれか2つ以上、及びRxとRyは、それぞれ結合して環構造を形成しても良く、この環構造は、酸素原子、硫黄原子、エステル結合、アミド結合を含んでいてもよい。R1c〜R7c中のいずれか2つ以上、及びRxとRyが結合して形成する基としては、ブチレン基、ペンチレン基等を挙げることができる。
-は、非求核性アニオンを表し、一般式(ZI)に於ける、X-と同様のものである。
【0220】
1c〜R7cとしてのアルキル基は、直鎖、分岐状のいずれであってもよく、例えば炭素数1〜20個のアルキル基、好ましくは、炭素数1〜12個の直鎖及び分岐アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、直鎖又は分岐プロピル基、直鎖又は分岐ブチル基、直鎖又は分岐ペンチル基)を挙げることができる。
1c〜R7cとしてのシクロアルキル基は、好ましくは、炭素数3〜8個のシクロアルキル基(例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基)を挙げることができる。
1c〜R5cとしてのアルコキシ基は、直鎖、分岐、環状のいずれであってもよく、例えば炭素数1〜10のアルコキシ基、好ましくは、炭素数1〜5の直鎖及び分岐アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、直鎖又は分岐プロポキシ基、直鎖又は分岐ブトキシ基、直鎖又は分岐ペントキシ基)、炭素数3〜8の環状アルコキシ基(例えば、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基)を挙げることができる。
好ましくは、R1c〜R5cのうちいずれかが、直鎖、分岐状アルキル基、シクロアルキル基又は直鎖、分岐、環状アルコキシ基であり、更に好ましくはR1c〜R5cの炭素数の和が、2〜15である。これにより、より溶剤溶解性が向上し、保存時にパーティクルの発生が抑制される。
【0221】
x及びRyとしてのアルキル基は、R1c〜R7cとしてのアルキル基と同様のものを挙げることができる。Rx及びRyとしてのアルキル基は、直鎖若しくは分岐状2−オキソアルキル基、アルコキシカルボニルメチル基であることがより好ましい。
x及びRyとしてのシクロアルキル基は、R1c〜R7cとしてのシクロアルキル基と同様のものを挙げることができる。Rx及びRyとしてのシクロアルキル基は、環状2−オキソアルキル基であることがより好ましい。
直鎖、分岐、環状2−オキソアルキル基は、R1c〜R7cとしてのアルキル基、シクロアルキル基の2位に>C=Oを有する基を挙げることができる。
アルコキシカルボニルメチル基におけるアルコキシ基については、R1c〜R5cとしてのアルコキシ基と同様のものを挙げることができる。
x、Ryは、好ましくは炭素数4個以上のアルキル基であり、より好ましくは6個以上、更に好ましくは8個以上のアルキル基である。
【0222】
前記一般式(ZII)、(ZIII)中、
204〜R207は、各々独立に、置換基を有しててもよいアリール基、置換基を有していてもよいアルキル基又は置換基を有していてもよいシクロアルキル基を表す。
204〜R207のアリール基としては、フェニル基、ナフチル基が好ましく、更に好ましくはフェニル基である。
204〜R207としてのアルキル基は、直鎖、分岐状のいずれであってもよく、好ましくは、炭素数1〜10の直鎖又は分岐アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基)を挙げることができる。
204〜R207としてのシクロアルキル基は、好ましくは、炭素数3〜10のシクロアルキル基(シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ノルボニル基)を挙げることができる。
204〜R207が有していてもよい置換基としては、例えば、アルキル基(例えば炭素数1〜15)、シクロアルキル基(例えば炭素数3〜15)、アリール基(例えば炭素数6〜15)、アルコキシ基(例えば炭素数1〜15)、ハロゲン原子、水酸基、フェニルチオ基等を挙げることができる。
-は、非求核性アニオンを表し、一般式(I)に於けるX-の非求核性アニオンと同様のものを挙げることができる。
【0223】
活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物の内で好ましい化合物として、更に、下記一般式(ZIV)、(ZV)、(ZVI)で表される化合物を挙げることができる。
【0224】
【化59】

【0225】
一般式(ZIV)〜(ZVI)中、
Ar3及びAr4は、各々独立に、置換若しくは未置換のアリール基を表す。
208は、置換若しくは未置換のアルキル基、置換若しくは未置換のシクロアルキル基又は置換若しくは未置換のアリール基を表す。
209及びR210は、置換若しくは未置換のアルキル基、、置換若しくは未置換のシクロアルキル基、置換若しくは未置換のアリール基又は電子求引性基を表す。R209として好ましくは、置換若しくは未置換のアリール基である。R210として好ましくは、電子求引性基であり、より好ましくはシアノ基、フロロアルキル基である。
Aは、置換若しくは未置換のアルキレン基、置換若しくは未置換のアルケニレン基又は置換若しくは未置換のアリーレン基を表す。
【0226】
活性光線又は放射線の照射により分解して酸を発生する化合物の中で、特に好ましいものの例を以下に挙げる。
【0227】
【化60】

【0228】
【化61】

【0229】
【化62】

【0230】
【化63】

【0231】
【化64】

【0232】
【化65】

【0233】
活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物として、一般式(ZI)に於いて、R201〜R203がアリール基であるトリアリールスルホニウム塩、一般式(ZIII)で表されるジアゾジスルホン誘導体又は一般式(ZVI)で表される有機スルホン酸のオキシムエステルを使用することが好ましい。
【0234】
活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物として、トリアリールスルホニウム塩から選ばれる少なくとも1種類の化合物、及びジアゾジスルホン誘導体若しくは有機スルホン酸のオキシムエステルから選ばれる少なくとも1種類の化合物を使用することがより好ましい。
【0235】
酸発生剤は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。2種以上を組み合わせて使用する際には、水素原子を除く全原子数が2以上異なる2種の有機酸を発生する化合物を組み合わせることが好ましい。
酸発生剤の組成物中の含量は、KrFエキシマレーザー光によるパターニングに使用する場合、ポジ型レジスト組成物の全固形分を基準として、0.1〜20質量%が好ましく、より好ましくは0.5〜10質量%、更に好ましくは1〜7質量%である。
【0236】
カルボン酸発生剤
活性光線又は放射線の照射により、カルボン酸を発生する化合物(カルボン酸発生剤ともいう)を使用してもよい。
カルボン酸発生剤としては下記一般式(C)で表される化合物が好ましい。
【0237】
【化66】

【0238】
一般式(C)中、R21〜R23は各々独立に、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基又はアリール基を表し、R24は水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基又はアリール基を表し、Zはイオウ原子又はヨウ素原子を表す。Zがイオウ原子である場合、pは1であり、ヨウ素原子である場合、pは0である。
【0239】
一般式(C)において、R21〜R23は、各々独立に、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基又はアリール基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。
アルキル基、シクロアルキル基又はアルケニル基が有してもよい置換基の例としては、ハロゲン原子(塩素原子、臭素原子、フッ素原子等)、アリール基(フェニル基、ナフチル基等)、ヒドロキシ基、アルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基等)等を挙げることができる。
アリール基が有してもよい置換基の例としては、ハロゲン原子(塩素原子、臭素原子、フッ素原子等)、ニトロ基、シアノ基、アルキル基(メチル基、エチル基、t-ブチル基、t-アミル基、オクチル基等)、ヒドロキシ基、アルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基等)等を挙げることができる。
【0240】
21〜R23は、各々独立に、好ましくは、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数3〜12のシクロアルキル基、炭素数2〜12のアルケニル基又は炭素数6〜24のアリール基を表し、より好ましくは、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数3〜6のシクロアルキル基、素数6〜18のアリール基であり、特に好ましくは炭素数6〜15のアリール基である。これらの基は各々置換基を有していてもよい。
【0241】
24は、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基又はアリール基を表す。
アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基が有してもよい置換基の例としては、上記R21がアルキル基である場合の置換基の例として挙げたものと同じものが挙げられる。アリール基の置換基の例としては、上記R21がアリール基である場合の置換基の例として挙げたものと同じものが挙げられる。
【0242】
24は、好ましくは、水素原子、炭素数1〜30のアルキル基、炭素数3〜30のシクロアルキル基、炭素数2〜30のアルケニル基、炭素数6〜24のアリール基であり、より好ましくは、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数3〜18のシクロアルキル基、炭素数6〜18のアリール基であり、特に好ましくは、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数3〜12のシクロアルキル基、炭素数6〜15のアリール基である。これらの基は、各々置換基を有していてもよい。
【0243】
Zはイオウ原子又はヨウ素原子を表す。pはZがイオウ原子である場合は1であり、Zがヨウ素原子である場合は0である。
なお、式(C)のカチオン部の2つ以上が、単結合又は連結基(例えば、−S−、−O−など)により結合し、式(C)のカチオン部を複数有するカチオン構造を形成してもよい。
【0244】
以下に、カルボン酸発生剤の好ましい具体例を挙げるが、もちろんこれらに限定されるものではない。
【0245】
【化67】

【0246】
【化68】

【0247】
【化69】

【0248】
カルボン酸発生剤については、本発明のポジ型レジスト組成物中の含有量は、組成物の全固形分を基準として、0.01〜10質量%が好ましく、より好ましくは0.03〜5質量%、特に好ましくは0.05〜3質量%である。カルボン酸発生剤は、1種類を用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。
カルボン酸発生剤は、特開2002−27806号に記載の合成方法など公知の方法により合成することができる。
スルホン酸発生剤及びカルボン酸発生剤を併用する場合は、カルボン酸発生剤/スルホン酸発生剤(質量比)は、通常99.9/0.1〜50/50、好ましくは99/1〜60/40、特に好ましくは98/2〜70/30である。
【0249】
EUV、X線、又は電子線によるパターニングに使用する場合、酸発生剤として、一般式(I)で表される化合物(酸発生剤A1)が特に好ましい。
【0250】
【化70】

【0251】
一般式(I)中、
1〜R13は、各々独立に水素原子又は置換基を表す。
Zは単結合又は2価の連結基である。
-は対アニオンを表す。
【0252】
一般式(I)において、R1〜R13の少なくとも1つがアルコール性水酸基を含む置換基であることが好ましい。R1〜R13の少なくとも1つがアルコール性水酸基を含む置換基である場合(アルコール性水酸基とはアルキル基の炭素原子に結合した水酸基を表す)、R1〜R13は−W−Yで表される。ただし、Yは水酸基で置換されたアルキル基であり、Wは単結合又は2価の連結基である。
【0253】
Yのアルキル基としてはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、エイコシル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、アダマンチル基、ノルボニル基、ボロニル基等を挙げることができ、好ましくはエチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基であり、更に好ましくはエチル基、プロピル基、イソプロピル基である。Yは特に好ましくは-CH2CH2OH構造を含有する。
【0254】
Wで表される2価の連結基としては、特に制限は無いが、例えば、アルコキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、アシルアミノ基、アミノカルボニルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、アルキル及びアリールスルホニルアミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、スルファモイル基、アルキル及びアリールスルフィニル基、アルキル及びアリールスルホニル基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基などの一価の基における任意の水素原子を単結合で置き換えた二価の基を挙げることができる。
【0255】
Wとして好ましくは単結合、アルコキシ基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、アルキル及びアリールスルホニルアミノ基、アルキルチオ基、アルキルスルホニル基、アシル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基における任意の水素原子を単結合で置き換えた二価の基であり、更に好ましくは単結合、アシルオキシ基、アルキルスルホニル基、アシル基、アルコキシカルボニル基における任意の水素原子を単結合で置き換えた二価の基である。
【0256】
1〜R13がアルコール性水酸基を含む置換基である場合、含まれる炭素数は好ましくは2〜10個であり、更に好ましくは2〜6個であり、特に好ましくは2〜4個である。
1〜R13としてのアルコール性水酸基を含む置換基は、アルコール性水酸基を2つ以上有しても良い。R1〜R13としてのアルコール性水酸基を含む置換基の有するアルコール性水酸基の数としては1個から6個であり、好ましくは1個から3個が好ましく、更に好ましくは1個であることが好ましい。
一般式(I)で表される化合物の有するアルコール性水酸基の数は、R1〜R13すべてあわせて1個から10個であり、好ましくは1個から6個であり、更に好ましくは1個から3個である。
【0257】
1〜R13がアルコール性水酸基を含有しない場合、R1〜R13は各々独立に水素原子又は置換基であり、置換基としては、いかなるものでも良く、特に制限は無いが、例えば、ハロゲン原子、アルキル基(シクロアルキル基、ビシクロアルキル基、トリシクロアルキル基を含む)、アルケニル基(シクロアルケニル基、ビシクロアルケニル基を含む)、アルキニル基、アリール基、複素環基(ヘテロ環基と言っても良い)、シアノ基、ニトロ基、カルボキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シリルオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、アミノ基(アニリノ基を含む)、アンモニオ基、アシルアミノ基、アミノカルボニルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、アルキル及びアリールスルホニルアミノ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、スルファモイル基、スルホ基、アルキル及びアリールスルフィニル基、アルキル及びアリールスルホニル基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アリール及びヘテロ環アゾ基、イミド基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスフィニルオキシ基、ホスフィニルアミノ基、ホスホノ基、シリル基、ヒドラジノ基、ウレイド基、ボロン酸基(−B(OH)2)、ホスファト基(−OPO(OH)2)、スルファト基(−OSO3H)、その他の公知の置換基、が例として挙げられる。
【0258】
また、R1〜R13のうちの隣接する2つが共同して環(芳香族、又は非芳香族の炭化水素環、又は複素環。これらは、更に組み合わされて多環縮合環を形成することができる。例えばベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、フルオレン環、トリフェニレン環、ナフタセン環、ビフェニル環、ピロール環、フラン環、チオフェン環、イミダゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、インドリジン環、インドール環、ベンゾフラン環、ベンゾチオフェン環、イソベンゾフラン環、キノリジン環、キノリン環、フタラジン環、ナフチリジン環、キノキサリン環、キノキサゾリン環、イソキノリン環、カルバゾール環、フェナントリジン環、アクリジン環、フェナントロリン環、チアントレン環、クロメン環、キサンテン環、フェノキサチイン環、フェノチアジン環、フェナジン環、が挙げられる。)を形成することもできる。
【0259】
1〜R13がアルコール性水酸基を含有しない場合、R1〜R13は好ましくは水素原子又はハロゲン原子、アルキル基(シクロアルキル基、ビシクロアルキル基、トリシクロアルキル基を含む)、アルケニル基(シクロアルケニル基、ビシクロアルケニル基を含む)、アルキニル基、アリール基、シアノ基、カルボキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、アシルアミノ基、アミノカルボニルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、アルキル及びアリールスルホニルアミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、スルファモイル基、アルキル及びアリールスルホニル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、イミド基、シリル基、ウレイド基である。
【0260】
1〜R13がアルコール性水酸基を含有しない場合、R1〜R13は更に好ましくは水素原子又はハロゲン原子、アルキル基(シクロアルキル基、ビシクロアルキル基、トリシクロアルキル基を含む)、シアノ基、アルコキシ基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、アミノカルボニルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アルキル及びアリールスルホニルアミノ基、アルキルチオ基、スルファモイル基、アルキル及びアリールスルホニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基である。
更に、R1〜R13がアルコール性水酸基を含有しない場合、R1〜R13は特に好ましくは水素原子又はアルキル基(シクロアルキル基、ビシクロアルキル基、トリシクロアルキル基を含む)、ハロゲン原子、アルコキシ基である。
【0261】
一般式(I)中、R1〜R13のうち少なくとも1つはアルコール性水酸基を含み、好ましくは、R9〜R13のうち少なくとも1つがアルコール性水酸基を含む。
【0262】
Zは単結合又は2価の連結基を表し、2価の連結基としては例えば、アルキレン基、アリーレン基、カルボニル基、スルホニル基、カルボニルオキシ基、カルボニルアミノ基、スルホニルアミド基、エーテル基、チオエーテル基、アミノ基、ジスルフィド基、アシル基、アルキルスルホニル基、−CH=CH−、−C≡C−、アミノカルボニルアミノ基、アミノスルホニルアミノ基、等であり、置換基を有しても良い。これらの置換基としては上のR1〜R13に示した置換基と同様である。Zとして好ましくは単結合、アルキレン基、アリーレン基、エーテル基、チオエーテル基、アミノ基、−CH=CH−、−C≡C−、アミノカルボニルアミノ基、アミノスルホニルアミノ基など電子求引性を持たない置換基であり、更に好ましくは単結合、エーテル基、チオエーテル基であり、特に好ましくは単結合である。
【0263】
一般式(I)で表される化合物は、対アニオンX-を有する。アニオンとしては、有機アニオンが望ましい。有機アニオンとは炭素原子を少なくとも1つ含有するアニオンを表す。更に、有機アニオンとしては非求核性アニオンであることが好ましい。非求核性アニオンとは、求核反応を起こす能力が著しく低いアニオンであり、分子内求核反応による経時分解を抑制することができるアニオンである。
非求核性アニオンとしては、例えば、スルホン酸アニオン、カルボン酸アニオン、スルホニルイミドアニオン、ビス(アルキルスルホニル)イミドアニオン、トリス(アルキルスルホニル)メチルアニオン等を挙げることができる。
非求核性スルホン酸アニオンとしては、例えば、アルキルスルホン酸アニオン、アリールスルホン酸アニオン、カンファースルホン酸アニオンなどが挙げられる。非求核性カルボン酸アニオンとしては、例えば、アルキルカルボン酸アニオン、アリールカルボン酸アニオン、アラルキルカルボン酸アニオンなどが挙げられる。
【0264】
アルキルスルホン酸アニオンにおけるアルキル部位はアルキル基であってもシクロアルキル基であってもよく、好ましくは炭素数1〜30のアルキル基及び炭素数3〜30のシクロアルキル基、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、エイコシル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、アダマンチル基、ノルボニル基、ボロニル基等を挙げることができる。
アリールスルホン酸アニオンにおけるアリール基としては、好ましくは炭素数6〜14のアリール基、例えば、フェニル基、トリル基、ナフチル基等を挙げることができる。
上記アルキルスルホン酸アニオン及びアリールスルホン酸アニオンにおけるアルキル基、シクロアルキル基及びアリール基の置換基としては、例えば、ニトロ基、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、沃素原子)、カルボキシル基、水酸基、アミノ基、シアノ基、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜5)、シクロアルキル基(好ましくは炭素数3〜15)、アリール基(好ましくは炭素数6〜14)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2〜7)、アシル基(好ましくは炭素数2〜12)、アルコキシカルボニルオキシ基(好ましくは炭素数2〜7)等を挙げることができる。各基が有するアリール基及び環構造については、置換基として更にアルキル基(好ましくは炭素数1〜15)を挙げることができる。
【0265】
アルキルカルボン酸アニオンにおけるアルキル部位としては、アルキルスルホン酸アニオンおけると同様のアルキル基及びシクロアルキル基を挙げることができる。アリールカルボン酸アニオンにおけるアリール基としては、アリールスルホン酸アニオンおけると同様のアリール基を挙げることができる。アラルキルカルボン酸アニオンにおけるアラルキル基としては、好ましくは炭素数6〜12のアラルキル基、例えば、ベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基、ナフチルエチル基、ナフチルメチル基等を挙げることができる。
【0266】
上記アルキルカルボン酸アニオン、アリールカルボン酸アニオン及びアラルキルカルボン酸アニオンにおけるアルキル基、シクロアルキル基、アリール基及びアラルキル基の置換基としては、例えば、アリールスルホン酸アニオンにおけると同様のハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基等を挙げることができる。スルホニルイミドアニオンとしては、例えば、サッカリンアニオンを挙げることができる。
ビス(アルキルスルホニル)イミドアニオン、トリス(アルキルスルホニル)メチルアニオンにおけるアルキル基は、炭素数1〜5のアルキル基が好ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基等を挙げることができる。これらのアルキル基の置換基としてはハロゲン原子、ハロゲン原子で置換されたアルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基等を挙げることができる。
その他の非求核性アニオンとしては、例えば、弗素化燐、弗素化硼素、弗素化アンチモン等を挙げることができる。
【0267】
一般式(I)で表される化合物の対アニオンX-としてはスルホン酸アニオンが好ましく、更に好ましくはアリールスルホン酸アニオンであることが好ましい。
対アニオンとして具体的には、メタンスルホン酸アニオン、トリフロロメタンスルホン酸アニオン、ペンタフロロエタンスルホン酸アニオン、ヘプタフロロプロパンスルホン酸アニオン、パーフロロブタンスルホン酸アニオン、パーフロロヘキサンスルホン酸アニオン、パーフロロオクタンスルホン酸アニオン、ペンタフロロベンゼンスルホン酸アニオン、3,5−ビストリフロロメチルベンゼンスルホ酸アニオン、2,4,6−トリイソプロピルベンゼンスルホン酸アニオン、パーフロロエトキシエタンスルホン酸アニオン、2,3,5,6−テトラフロロ−4−ドデシルオキシベンゼンスルホン酸アニオン、p-トルエンスルホン酸アニオン、2,4,6-トリメチルベンゼンスルホン酸アニオンなどが挙げられる。
【0268】
一般式(I)で表される化合物の分子量は、200〜2000が好ましく、特に好ましくは400〜1000である。
【0269】
一般式(I)で表される化合物は保護基で保護された水酸基を置換基に含むベンゼン誘導体と環状のスルホキシド化合物を縮合させてスルホニウム塩を形成し、水酸基の保護基を脱保護する方法などにより合成することが出来る。
【0270】
【化71】

【0271】
(ただし、図中、Wは2価の連結基であり、Rはアルキレン基、Pは保護基である)
【0272】
スルホニウム化の反応に用いる酸としてはメタンスルホン酸、エタンスルホン酸、プロパンスルホン酸、ブタンスルホン酸、ペンタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、p−エチルベンゼンスルホン酸、ノナフルオロブタンスルホン酸などが挙げられ、用いた酸の共役塩基がスルホニウムのアニオンとなる。スルホニウム化の反応に用いる縮合剤としては酸無水物等が挙げられ、例えばトリフルオロ酢酸無水物、ポリリン酸、メタンスルホン酸無水物、トリフルオロメタンスルホン酸無水物、p−トルエンスルホン酸無水物、ノナフルオロブタンスルホン酸無水物、テトラフルオロスクシン酸無水物、ヘキサフルオログルタル酸無水物、クロロジフルオロ酢酸無水物、ペンタフルオロプロピオン酸無水物、ヘプタフルオロブタン酸無水物など強酸の無水物が挙げられる。
水酸基の保護基Pとしてはエーテルやエステル等が挙げられ、例えば、メチルエーテル、アリールエーテル、ベンジルエーテル、酢酸エステル、安息香酸エステル、炭酸エステル等が挙げられる。
対アニオンX-はイオン交換樹脂に通し、目的のアニオンの共役酸を添加することにより、所望のアニオンに変換することが出来る。
【0273】
以下に、一般式(I)で表される化合物の具体例を示すが、これらに限定されるものではない。
【0274】
【化72】

【0275】
【化73】

【0276】
酸発生剤は、1種類単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
本発明において、酸発生剤の含有量は、EUV、X線、又は電子線によるパターニングに使用する場合、ポジ型レジスト組成物の全固形分に対して、好ましくは10〜50質量%であり、より好ましくは20〜40質量%である。
【0277】
ArFやKrF露光では、ポジ型レジスト組成物に入射した光エネルギー光酸発生剤が吸収し、励起状態になった光酸発生剤が分解して酸を発生する。したがって、入射光の吸収率は光酸発生剤の分子吸光係数や光酸発生剤の濃度で決まることになる、一方、パターン形状の観点では、ポジ型レジスト組成物の光吸収率が高くなって透過率が約7割を下回るようになるとレジストパターン形状が悪化することが知られているため、おのずから光酸発生剤の濃度には制約があった。
これに対して、EUV或いは電子線露光においては、入射1光子あるいは1電子あたりのエネルギーが従来のArFやKrF露光などと比べて非常に高く、そのエネルギーの吸収率はポジ型レジスト組成物の化学構造にほとんど依存しないため、透過率からの光酸発生剤濃度の制約はないと考えられる。
一方、光酸発生剤濃度が高まると光酸発生剤同士の凝集が起こり、酸発生効率の低下や安定性の劣化が生じることが分かってきた。本発明では従来のArFやKrF用のポジ型レジスト組成物では透過率や光酸発生剤の凝集が問題となり実質上使用できなかった高濃度の光酸発生剤でも固形分濃度を最適化することにより有効に使用できることを見出した。これは、まったく予想外の効果であったが、レジスト液の状態で光酸発生剤の濃度を適切に保つこと(この点は、後述する「全固形分濃度」に関係する)により、レジスト膜にした後も安定な分散状態が保たれるようになったものと考えられる。
【0278】
(C)有機塩基性化合物
本発明のポジ型レジスト組成物は、(C)有機塩基性化合物を含有することができる。(C)有機塩基性化合物を組み合わせることで、より本件の効果を高めることができる。
本発明で用いる有機塩基性化合物は、フェノールよりも塩基性の強い有機塩基性化合物が好ましい。
【0279】
好ましい有機塩基性化合物は、好ましい化学的環境として、下記式(A)〜(E)の構造を有する化合物である。式(B)〜(E)は、環構造の一部であってもよい。
【0280】
【化74】

【0281】
一般式(A)に於いて、
250、R251及びR252は、各々独立に、水素原子、炭素数1〜20のアルキル、炭素数3〜20のシクロアルキル基又は炭素数6〜20のアリール基であり、ここでR250とR251は互いに結合して環を形成してもよい。これらは置換基を有していてもよく、置換基を有するアルキル基及びシクロアルキル基としては、炭素数1〜20のアミノアルキル基又は炭素数3〜20のアミノシクロアルキル基、炭素数1〜20のヒドロキシアルキル基又は炭素数3〜20のヒドロキシシクロアルキル基が好ましい。また、これらはアルキル鎖中に酸素原子、硫黄原子、窒素原子を含んでも良い。
【0282】
一般式(E)に於いて、
253、R254、R255及びR256は、各々独立に、炭素数1〜6のアルキル基又は炭素数3〜6のシクロアルキル基を示す。
【0283】
有機塩基性化合物として、スルホン酸エステル基を有するアミン化合物、スルホン酸エステル基を有するアンモニウム塩化合物を使用することができる。
スルホン酸エステル基を有するアミン化合物、スルホン酸エステル基を有するアンモニウム塩化合物に於ける、スルホン酸エステル基としては、アルキルスルホン酸エステル、シクロアルキル基スルホン酸エステル、アリールスルホン酸エステルのいずれであっても良く、アルキルスルホン酸エステルの場合にアルキル基は炭素数1〜20、シクロアルキルスルホン酸エステルの場合にシクロアルキル基は炭素数3〜20、アリールスルホン酸エステルの場合にアリール基は炭素数6〜12が好ましい。アルキルスルホン酸エステル、シクロアルキルスルホン酸エステル、アリールスルホン酸エステルは置換基を有していてもよく、置換基としては、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、カルボキシル基、カルボン酸エステル基、スルホン酸エステル基が好ましい。
【0284】
スルホン酸エステル基と窒素原子との間に、少なくとも1つのオキシアルキレン基を有することが好ましい。オキシアルキレン基の数は、分子内に1つ以上、好ましくは3〜9個、更に好ましくは4〜6個である。オキシアルキレン基の中でもオキシエチレン基(−CHCHO−)若しくはオキシプロピレン基(−CH(CH)CHO−若しくは−CHCHCHO−)が好ましく、更に好ましくはオキシエチレン基である。
【0285】
好ましい有機塩基性化合物として、イミダゾール構造、ジアザビシクロ構造、オニウムヒドロキシド構造、オニウムカルボキシレート構造、トリアルキルアミン構造、アニリン構造又はピリジン構造を有する化合物、水酸基及び/又はエーテル結合を有するアルキルアミン誘導体、水酸基及び/又はエーテル結合を有するアニリン誘導体等を挙げることができる。
【0286】
イミダゾール構造を有する化合物としては、イミダゾール、2、4、5−トリフェニルイミダゾール、ベンズイミダゾール等があげられる。
ジアザビシクロ構造を有する化合物としては、1、4−ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン、1、5−ジアザビシクロ[4,3,0]ノナ−5−エン、1、8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデカ−7−エンなどがあげられる。
オニウムヒドロキシド構造を有する化合物としては、トリアリールスルホニウムヒドロキシド、フェナシルスルホニウムヒドロキシド、2−オキソアルキル基を有するスルホニウムヒドロキシド、具体的にはトリフェニルスルホニウムヒドロキシド、トリス(t−ブチルフェニル)スルホニウムヒドロキシド、ビス(t−ブチルフェニル)ヨードニウムヒドロキシド、フェナシルチオフェニウムヒドロキシド、2−オキソプロピルチオフェニウムヒドロキシドなどがあげられる。
オニウムカルボキシレート構造を有する化合物としては、オニウムヒドロキシド構造を有する化合物のアニオン部がカルボキシレートになったものであり、例えば、アセテート、アダマンタン−1−カルボキシレート、パーフロロアルキルカルボキシレート等があげられる。
トリアルキルアミン構造を有する化合物としては、トリ(n−ブチル)アミン、トリ(n−オクチル)アミン、トリ(n−ドデシル)アミン、ジシクロメチルアミン、ジシクロエチルアミン等を挙げることができる。
アニリン化合物としては、2,6−ジイソプロピルアニリン、N,N−ジメチルアニリン等を挙げることができる。
水酸基及び/又はエーテル結合を有するアルキルアミン誘導体としては、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリス(メトキシエトキシエチル)アミン等を挙げることができる。
水酸基及び/又はエーテル結合を有するアニリン誘導体としては、N,N−ビス(ヒドロキシエチル)アニリン等を挙げることができる。
【0287】
有機塩基性化合物として、更に、フェノキシ基を有するアミン化合物、フェノキシ基を有するアンモニウム塩化合物を挙げることができる。
【0288】
アミン化合物は、1級、2級、3級のアミン化合物を使用することができ、少なくとも1つのアルキル基が窒素原子に結合しているアミン化合物が好ましい。アミン化合物は、3級アミン化合物であることがより好ましい。アミン化合物は、少なくとも1つのアルキル基(好ましくは炭素数1〜20)が窒素原子に結合していれば、アルキル基の他に、シクロアルキル基(好ましくは炭素数3〜20)又はアリール基(好ましくは炭素数6〜12)が窒素原子に結合していてもよい。アミン化合物は、アルキル鎖中に、酸素原子を有し、オキシアルキレン基が形成されていることが好ましい。オキシアルキレン基の数は、分子内に1つ以上、好ましくは3〜9個、更に好ましくは4〜6個である。オキシアルキレン基の中でもオキシエチレン基(−CHCHO−)若しくはオキシプロピレン基(−CH(CH)CHO−若しくは−CHCHCHO−)が好ましく、更に好ましくはオキシエチレン基である。
【0289】
アンモニウム塩化合物は、1級、2級、3級、4級のアンモニウム塩化合物を使用することができ、少なくとも1つのアルキル基が窒素原子に結合しているアンモニウム塩化合物が好ましい。アンモニウム塩化合物は、少なくとも1つのアルキル基(好ましくは炭素数1〜20)が窒素原子に結合していれば、アルキル基の他に、シクロアルキル基(好ましくは炭素数3〜20)又はアリール基(好ましくは炭素数6〜12)が窒素原子に結合していてもよい。アンモニウム塩化合物は、アルキル鎖中に、酸素原子を有し、オキシアルキレン基が形成されていることが好ましい。オキシアルキレン基の数は、分子内に1つ以上、好ましくは3〜9個、更に好ましくは4〜6個である。オキシアルキレン基の中でもオキシエチレン基(−CHCHO−)若しくはオキシプロピレン基(−CH(CH)CHO−若しくは−CHCHCHO−)が好ましく、更に好ましくはオキシエチレン基である。
アンモニウム塩化合物のアニオンとしては、ハロゲン原子、スルホネート、ボレート、フォスフェート等が挙げられるが、中でもハロゲン原子、スルホネートが好ましい。ハロゲン原子としてはクロライド、ブロマイド、アイオダイドが特に好ましく、スルホネートとしては、炭素数1〜20の有機スルホネートが特に好ましい。有機スルホネートとしては、炭素数1〜20のアルキルスルホネート、アリールスルホネートが挙げられる。アルキルスルホネートのアルキル基は置換基を有していてもよく、置換基としては例えばフッ素、塩素、臭素、アルコキシ基、アシル基、アリール基等が挙げられる。アルキルスルホネートとして、具体的にはメタンスルホネート、エタンスルホネート、ブタンスルホネート、ヘキサンスルホネート、オクタンスルホネート、ベンジルスルホネート、トリフルオロメタンスルホネート、ペンタフルオロエタンスルホネート、ノナフルオロブタンスルホネート等が挙げられる。アリールスルホネートのアリール基としてはベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環が挙げられる。ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環は置換基を有していてもよく、置換基としては炭素数1〜6の直鎖若しくは分岐アルキル基、炭素数3〜6のシクロアルキル基が好ましい。直鎖若しくは分岐アルキル基、シクロアルキル基として、具体的にはメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、i−ブチル、t−ブチル、n−ヘキシル、シクロヘキシル等が挙げられる。他の置換基としては炭素数1〜6のアルコキシ基、ハロゲン原子、シアノ、ニトロ、アシル基、アシロキシ基等が挙げられる。
【0290】
フェノキシ基を有するアミン化合物、フェノキシ基を有するアンモニウム塩化合物とは、アミン化合物又はアンモニウム塩化合物のアルキル基の窒素原子と反対側の末端にフェノキシ基を有するものである。フェノキシ基は、置換基を有していてもよい。フェノキシ基の置換基としては、例えば、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、カルボキシル基、カルボン酸エステル基、スルホン酸エステル基、アリール基、アラルキル基、アシロキシ基、アリールオキシ基等が挙げられる。置換基の置換位は、2〜6位のいずれであってもよい。置換基の数は、1〜5の範囲で何れであってもよい。
【0291】
フェノキシ基と窒素原子との間に、少なくとも1つのオキシアルキレン基を有することが好ましい。オキシアルキレン基の数は、分子内に1つ以上、好ましくは3〜9個、更に好ましくは4〜6個である。オキシアルキレン基の中でもオキシエチレン基(−CHCHO−)若しくはオキシプロピレン基(−CH(CH)CHO−若しくは−CHCHCHO−)が好ましく、更に好ましくはオキシエチレン基である。
【0292】
また、テトラアルキルアンモニウム塩型の含窒素塩基性化合物も用いることができる。これらの中では、特に炭素数1〜8のテトラアルキルアンモニウムヒドロキシド(テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラ-(n-ブチル)アンモニウムヒドロキシド等)が好ましい。これらの含窒素塩基性化合物は、単独であるいは2種以上一緒に用いられる。
【0293】
本発明のポジ型レジスト組成物には、下記一般式(C3)又は(C4)で表される有機塩基性化合物を含有することが好ましい。
【0294】
【化75】

【0295】
一般式(C3)に於いて、
Sa、Sb、Scは、各々独立に、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又はアラルキル基を表す。SaとSbとは、互いに結合して環を形成してもよい。
【0296】
一般式(C3)で表される有機塩基性化合物として、より好ましくは、トリ(n−ブチル)アミン、トリ(n−オクチル)アミン、トリ(n−ドデシル)アミン、ジシクロメチルアミン、ジシクロエチルアミンである。
【0297】
【化76】

【0298】
一般式(C4)に於いて、
Sd、Se、Sf、Sgは、各々独立に、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又はアラルキル基を表す。
【0299】
一般式(C4)で表される有機塩基性化合物として、より好ましくは、テトラアルキルアンモニウムヒドロキシドであり、更に好ましくはテトラ-(n-ブチル)アンモニウムヒドロキシド、テトラ-(n-オクチル)アンモニウムヒドロキシドである。
【0300】
これらの有機塩基性化合物は、単独であるいは2種以上で用いられる。
有機塩基性化合物の分子量は、100〜1000であることが好ましく、より好ましくは100〜800、更に好ましくは150〜800である。
KrFエキシマレーザーによるパターニングに使用する場合、有機塩基性化合物の含有量は、ポジ型レジスト組成物の固形分を基準として、通常、0.001〜10質量%、好ましくは0.01〜5質量%である。
EUV、X線、又は電子線によるパターニングに使用する場合、有機塩基性化合物の含有量は、ポジ型レジスト組成物の全固形分に対して、1.0〜8.0質量%であることが好ましく、より好ましくは1.5〜5.0質量%、更に好ましくは2.0〜4.0質量%である。
【0301】
酸発生剤と有機塩基性化合物の組成物中の使用割合は、酸発生剤/有機塩基性化合物(モル比)=1.0〜300であることが好ましい。即ち、感度、解像度の点からモル比が1.0以上が好ましく、露光後加熱処理までの経時でのレジストパターンの太りによる解像度の低下抑制の点から300以下が好ましい。酸発生剤/有機塩基性化合物(モル比)は、より好ましくは1.5〜200、更に好ましくは2.0〜150である。
【0302】
固形分濃度及び(D)溶剤
本発明のポジ型レジスト組成物は、上記の成分を溶剤に溶解して、調製する。
ポジ型レジスト組成物中の全固形分濃度は、塗布膜厚の設定値により異なるが、好ましくは2.0〜25.0質量%、更に好ましくは4.0〜10.0質量%である。
【0303】
ポジ型レジスト組成物の調製のための溶剤としては、エチレンジクロライド、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、2−ヘプタノン、γ−ブチロラクトン、メチルエチルケトン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、2−メトキシエチルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トルエン、酢酸エチル、乳酸メチル、乳酸エチル、メトキシプロピオン酸メチル、エトキシプロピオン酸エチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ピルビン酸プロピル、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン、テトラヒドロフラン等などの有機溶剤が好ましく、更に好ましくは、シクロヘキサノン、γ−ブチロラクトン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、乳酸エチルであり、特に好ましくはプロピレングリコールモノメチルエーテルである。
溶剤は、1種単独でも2種以上を混合した混合溶剤であってもよい。
全溶剤量のうち、プロピレングリコールモノメチルエーテルを50質量%以上含有することが特に好ましく、50〜80質量%含有することが最も好ましい。プロピレングリコールモノメチルエーテルと併用する溶剤としては、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、シクロヘキサノン、乳酸エチルが好ましく、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートが最も好ましい。
【0304】
本発明のポジ型レジスト組成物には、上記成分のほかに、以下のような成分を含有してもよい。
【0305】
(E)フッ素系及び/又はシリコン系界面活性剤
本発明のポジ型レジスト組成物は、更に、フッ素系及び/又はシリコン系界面活性剤(フッ素系界面活性剤及びシリコン系界面活性剤、フッ素原子と珪素原子の両方を含有する界面活性剤)のいずれか、あるいは2種以上を含有することが好ましい。
【0306】
本発明のポジ型レジスト組成物がフッ素及び/又はシリコン系界面活性剤とを含有することにより、良好な感度及び解像度で、密着性及び現像欠陥の少ないレジストパターンを与えることが可能となる。
【0307】
これらのフッ素及び/又はシリコン系界面活性剤として、例えば特開昭62−36663号公報、特開昭61−226746号公報、特開昭61−226745号公報、特開昭62−170950号公報、特開昭63−34540号公報、特開平7−230165号公報、特開平8−62834号公報、特開平9−54432号公報、特開平9−5988号公報、特開2002−277862号公報、米国特許第5405720号明細書、同5360692号明細書、同5529881号明細書、同5296330号明細書、同5436098号明細書、同5576143号明細書、同5294511号明細書、同5824451号明細書記載の界面活性剤を挙げることができ、下記市販の界面活性剤をそのまま用いることもできる。
【0308】
使用できる市販の界面活性剤として、例えばエフトップEF301、EF303、(新秋田化成(株)製)、フロラードFC430、431(住友スリーエム(株)製)、メガファックF171、F173、F176、F189、R08(大日本インキ化学工業(株)製)、サーフロンS−382、SC101、102、103、104、105、106(旭硝子(株)製)、トロイゾルS−366(トロイケミカル(株)製)等のフッ素系界面活性剤又はシリコン系界面活性剤を挙げることができる。またポリシロキサンポリマーKP−341(信越化学工業(株)製)もシリコン系界面活性剤として用いることができる。
【0309】
また、界面活性剤としては、上記に示すような公知のものの他に、テロメリゼーション法(テロマー法ともいわれる)若しくはオリゴメリゼーション法(オリゴマー法ともいわれる)により製造されたフルオロ脂肪族化合物から導かれたフルオロ脂肪族基を有する重合体を用いた界面活性剤を用いることが出来る。フルオロ脂肪族化合物は、特開2002−90991号公報に記載された方法によって合成することが出来る。
【0310】
フルオロ脂肪族基を有する重合体としては、フルオロ脂肪族基を有するモノマーと(ポリ(オキシアルキレン))アクリレート及び/又は(ポリ(オキシアルキレン))メタクリレートとの共重合体が好ましく、不規則に分布していても、ブロック共重合していてもよい。また、ポリ(オキシアルキレン)基としては、ポリ(オキシエチレン)基、ポリ(オキシプロピレン)基、ポリ(オキシブチレン)基などが挙げられ、また、ポリ(オキシエチレンとオキシプロピレンとオキシエチレンとのブロック連結体)やポリ(オキシエチレンとオキシプロピレンとのブロック連結体)など同じ鎖長内に異なる鎖長のアルキレンを有するようなユニットでもよい。更に、フルオロ脂肪族基を有するモノマーと(ポリ(オキシアルキレン))アクリレート(又はメタクリレート)との共重合体は2元共重合体ばかりでなく、異なる2種以上のフルオロ脂肪族基を有するモノマーや、異なる2種以上の(ポリ(オキシアルキレン))アクリレート(又はメタクリレート)などを同時に共重合した3元系以上の共重合体でもよい。
【0311】
例えば、市販の界面活性剤として、メガファックF178、F−470、F−473、F−475、F−476、F−472(大日本インキ化学工業(株)製)を挙げることができる。更に、C613基を有するアクリレート(又はメタクリレート)と(ポリ(オキシアルキレン))アクリレート(又はメタクリレート)との共重合体、C613基を有するアクリレート(又はメタクリレート)と(ポリ(オキシエチレン))アクリレート(又はメタクリレート)と(ポリ(オキシプロピレン))アクリレート(又はメタクリレート)との共重合体、C817基を有するアクリレート(又はメタクリレート)と(ポリ(オキシアルキレン))アクリレート(又はメタクリレート)との共重合体、C817基を有するアクリレート(又はメタクリレート)と(ポリ(オキシエチレン))アクリレート(又はメタクリレート)と(ポリ(オキシプロピレン))アクリレート(又はメタクリレート)との共重合体、などを挙げることができる。
【0312】
フッ素及び/又はシリコン系界面活性剤の使用量は、ポジ型レジスト組成物の全固形分に対して、好ましくは0.0001〜2質量%、より好ましくは0.001〜1質量%である。
【0313】
(F)酸の作用により分解してアルカリ現像液中での溶解度が増大する、分子量3000以下の溶解阻止化合物
以下、「(F)成分」或いは「溶解阻止化合物」ともいう。
(F)酸の作用により分解してアルカリ現像液中での溶解度が増大する、分子量3000以下の溶解阻止化合物としては、220nm以下の透過性を低下させないため、Proceedingof SPIE,2724,355(1996)に記載されている酸分解性基を含むコール酸誘導体の様な、酸分解性基を含有する脂環族又は脂肪族化合物が好ましい。
【0314】
本発明のポジ型レジスト組成物を、電子線で照射する場合には、フェノール化合物のフェノール性水酸基を酸分解基で置換した構造を含有するものが好ましい。フェノール化合物としてはフェノール骨格を1〜9個含有するものが好ましく、更に好ましくは2〜6個含有するものである。
【0315】
本発明における溶解阻止化合物の分子量は、3000以下であり、好ましくは300〜3000、更に好ましくは500〜2500である。
【0316】
溶解阻止化合物の添加量は、ポジ型レジスト組成物の全固形分に対し、好ましくは3〜50質量%であり、より好ましくは5〜40質量%である。
【0317】
以下に溶解阻止化合物の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されない。
【0318】
【化77】

【0319】
その他の添加剤
本発明のポジ型レジスト組成物には、必要に応じて更に染料、可塑剤、上記(E)成分以外の界面活性剤、光増感剤、及び現像液に対する溶解性を促進させる化合物等を含有させることができる。
【0320】
本発明で使用できる現像液に対する溶解促進性化合物は、フェノール性OH基を2個以上、又はカルボキシ基を1個以上有する分子量1,000以下の低分子化合物である。カルボキシ基を有する場合は脂環族又は脂肪族化合物が好ましい。
【0321】
これら溶解促進性化合物の好ましい添加量は、(A)成分の樹脂に対して2〜50質量%であり、更に好ましくは5〜30質量%である。現像残渣抑制、現像時パターン変形防止の点で50質量%以下が好ましい。
【0322】
このような分子量1000以下のフェノール化合物は、例えば、特開平4−122938号、特開平2−28531号、米国特許第4916210号、欧州特許第219294号等に記載の方法を参考にして、当業者において容易に合成することができる。
【0323】
カルボキシル基を有する脂環族、又は脂肪族化合物の具体例としてはコール酸、デオキシコール酸、リトコール酸などのステロイド構造を有するカルボン酸誘導体、アダマンタンカルボン酸誘導体、アダマンタンジカルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸などが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0324】
本発明においては、上記(E)フッ素系及び/又はシリコン系界面活性剤以外の他の界面活性剤を加えることもできる。具体的には、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル類、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックコポリマー類、ソルビタン脂肪族エステル類、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪族エステル類等のノニオン系界面活性剤を挙げることができる。
【0325】
これらの界面活性剤は単独で添加してもよいし、また、いくつかの組み合わせで添加することもできる。
【0326】
酸化防止剤
本発明のポジ型レジスト組成物は酸化防止剤を含有することが好ましい。
酸化防止剤とは、有機材料が酸素の存在下で酸化されることを防ぐためのものである。
【0327】
酸化防止剤としては、一般に使用されているプラスチック等の酸化防止に効果があるものであれば特に限定するものではなく、例えば、フェノール系酸化防止剤、有機酸誘導体からなる酸化防止剤、硫黄含有酸化防止剤、リン系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、アミン−アルデヒド縮合物からなる酸化防止剤、アミン−ケトン縮合物からなる酸化防止剤等があげられる。なお、これらの酸化防止剤のうち、ポジ型レジスト組成物の機能を低下させずに本発明の効果を発現させるためには、酸化防止剤としてフェノール系酸化防止剤、有機酸誘導体からなる酸化防止剤を用いることが好ましい。
【0328】
ここに、フェノール系酸化防止剤としては、置換フェノール類、例えば、1−オキシ−3−メチル−4−イソプロピルベンゼン、2,6−ジ−第三−ブチルフェノール、2,6−ジ−第三−ブチル−4−エチルフェノール、2,6−ジ−第三−ブチル−4−メチルフェノール、4−ヒドロキシメチル−2,6−ジ−第三−ブチルフェノール、ブチル・ヒドロキシアニソール、2−(1−メチルシクロヘキシル)−4,6−ジメチルフェノール、2,4−ジメチル−6−第三−ブチルフェノール、2−メチル−4,6−ジノニルフェノール、2,6−ジ−第三−ブチル−α−ジメチルアミノ−p−クレゾール、6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−第三−ブチル・アニリノ)2,4−ビス・オクチル−チオ−1,3,5−トリアジン、n−オクタデシル−3−(4’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−第三−ブチル・フェニル)プロピオネート、オクチル化フェノール、アラルキル置換フェノール類、アルキル化−p−クレゾール、ヒンダード・フェノール等があげられ、ビス,トリス,ポリフェノール類、例えば、4,4’−ジヒドロキシ・ジフェニル、メチレン・ビス(ジメチル−4,6−フェノール)、2,2’−メチレン−ビス−(4−メチル−6−第三−ブチルフェノール)、2,2’−メチレン−ビス−(4−メチル−6−シクロヘキシル・フェノール)、2,2’−メチレン−ビス−(4−エチル−6−第三−ブチルフェノール)、4,4’−メチレン−ビス−(2,6−ジ−第三−ブチルフェノール)、2,2’−メチレン−ビス−(6−アルファメチル−ベンジル−p−クレゾール)、メチレン架橋した多価アルキルフェノール、4,4’−ブチリデンビス−(3−メチル−6−第三−ブチルフェノール)、1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−シクロヘキサン、2,2’−ジヒドロキシ−3,3’−ジ−(α−メチルシクロヘキシル)−5,5’−ジメチル・ジフェニルメタン、アルキル化ビスフェノール、ヒンダード・ビスフェノール、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−第三−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス−(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−第三−ブチルフェニル)ブタン、テトラキス−[メチレン−3−(3’,5’−ジ−第三−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン等があげられる。
【0329】
本発明で用いる酸化防止剤の好ましい具体例としては、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、4−ヒドロキシメチル−2,6−ジ−t−ブチルフェノール、2、2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、ブチルヒドロキシアニソール、t−ブチルヒドロキノン、2,4,5−トリヒドロキシブチロフェノン、ノルジヒドログアヤレチック酸、没食子酸プロピル、没食子酸オクチル、没食子酸ラウリル、クエン酸イソプロピルなどが挙げられる。これらのうち2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、4−ヒドロキシメチル−2,6−ジ−t−ブチルフェノール、ブチルヒドロキシアニソール、t−ブチルヒドロキノンが好ましく、更に2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール又は4−ヒドロキシメチル−2,6−ジ−t−ブチルフェノールがより好ましい。
【0330】
酸化防止剤の含有量は、ポジ型レジスト組成物中に1ppm以上であることが好ましく、5ppm以上であることが更により好ましく、10ppm以上であることが更により好ましく、50ppm以上であることが更により好ましく、100ppm以上であることが更により好ましく、100〜10000ppmであることが特に好ましい。また、複数の酸化防止剤を混合して使用しても良い。
【0331】
〔8〕パターン形成方法
本発明のポジ型レジスト組成物は、基板など支持体上に塗布され、レジスト膜を形成する。このレジスト膜の膜厚は、0.02〜0.1μmが好ましい。
基板上に塗布する方法としては、スピン塗布が好ましく、その回転数は1000〜3000rpmが好ましい。
【0332】
例えば、ポジ型レジスト組成物を精密集積回路素子の製造に使用されるような基板(例:シリコン/二酸化シリコン被覆)上にスピナー、コーター等の適当な塗布方法により塗布、乾燥し、レジスト膜を形成する。なお、予め公知の反射防止膜を塗設することもできる。
当該レジスト膜に、電子線、X線又はEUVを照射し、好ましくはベーク(加熱)を行い、現像する。これにより良好なパターンを得ることができる。
【0333】
現像工程では、アルカリ現像液を次のように用いる。ポジ型レジスト組成物のアルカリ現像液としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、アンモニア水等の無機アルカリ類、エチルアミン、n−プロピルアミン等の第一アミン類、ジエチルアミン、ジ−n−ブチルアミン等の第二アミン類、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン等の第三アミン類、ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルコールアミン類、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド等の第四級アンモニウム塩、ピロール、ピヘリジン等の環状アミン類等のアルカリ性水溶液を使用することができる。
更に、上記アルカリ現像液にアルコール類、界面活性剤を適当量添加して使用することもできる。
アルカリ現像液のアルカリ濃度は、通常0.1〜20質量%である。
アルカリ現像液のpHは、通常10.0〜15.0である。
【実施例】
【0334】
以下、本発明を実施例により更に詳しく説明するが、本発明の内容がこれにより限定されるものではない。
【0335】
(合成例1)ポリマー(A−5)の合成
【0336】
【化78】

【0337】
4−アセトキシスチレン17.03g(0.105mol)、上記構造のモノマー(mLA−30−Me)30.00g(0.09mol)、上記構造のモノマー(mI−31-H)24.82g(0.105mol)、重合開始剤V−601(和光純薬工業(株)製)1.86g(0.0075mol)をプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート134.11gに溶解した。反応容器中にプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート33.53gを入れ、窒素ガス雰囲気下、80℃の系中に2時間かけて滴下した。滴下後、6時間加熱攪拌した後反応溶液を室温まで放冷し、ヘキサン2.5L中に滴下しポリマーを沈殿させ、ろ過した。ヘキサン500mLでろ過した固体のかけ洗いを行い、ろ過した固体を減圧乾燥して、4−アセトキシスチレン/(LA−30:B2=Me)/(I−31)共重合体を64.67g得た。
【0338】
反応容器中に上記で得られた共重合体40.00gを、酢酸エチル92mL、メタノール92mLに溶解させた後、ナトリウムメトキシド28%メタノール溶液39.05gを加え3時間攪拌した後、塩酸を加えて酸性とした。酢酸エチル500mLを加え、蒸留水200mLで5回洗浄を行なった。有機層を取り出して濃縮し、メタノール150mLに溶解させ、1.5Lの蒸留水/メタノール=7/3中に滴下しポリマーを沈殿させ、ろ過した。500mLの蒸留水/メタノール=7/3でろ過した固体のかけ洗いを行ない、ろ過した固体を減圧乾燥して、4−ヒドロキシスチレン/(LA−30:B2=Me)/(I−31)の共重合体を35.42g得た。GPCによる重量平均分子量はポリスチレン換算値で11000、分子量分散度(Mw/Mn)は1.55であった。
【0339】
用いるモノマーを変更する以外は上記合成例1と同様の方法で下記表2に示した組成の樹脂を合成した。表2中の各組成ユニットは前記のとおりである。
【0340】
【表2】

【0341】
重量平均分子量及び、分散度(Mw/Mn)はGPCによるポリスチレン換算値である。
【0342】
上記表2において、樹脂(A)のユニット(IIIb)及び(IIIc)として用いた構造を下記に示す。
【0343】
【化79】

【0344】
(1)ポジ型レジスト組成物の調製及び塗設
下記表3で示した各成分を溶解させ、得られた溶液を0.1μm孔径のメンブレンフィルターで精密ろ過して、ポジ型レジスト組成物を得た。
全固形分濃度は、KrFエキシマレーザーによるパターニングに使用する場合は7.0質量%、電子線によるパターニングに使用する場合は7.0質量%、EUVによるパターニングに使用する場合は5.0質量%とした。
【0345】
【表3】

【0346】
実施例、比較例で用いた各成分は以下の通りである。
【0347】
【化80】

【0348】
<有機塩基性化合物>
C3−1;トリ(n−ブチル)アミン
C3−2;トリ(n−オクチル)アミン
C3−3;トリ(n−ドデシル)アミン
C3−4;ジシクロヘキシルメチルアミン
C3−5;ジシクロヘキシルエチルアミン
C3−6;トリス〔2−(2−メトキシエトキシ)エチル〕アミン
C4−1;テトラ-(n-ブチル)アンモニウムヒドロキシド
C4−2;テトラ-(n-オクチル)アンモニウムヒドロキシド
<界面活性剤>
W−1;メガファックF176(大日本インキ化学工業(株)製)
W−2;PF6320(OMNOVA社製)
<溶剤>
D−1;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)
D−2;プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)
D−3;乳酸エチル
D−4;メチルアミルケトン
【0349】
(2)レジストパターンの形成及び評価(KrF)
8インチシリコンウェハー上に、東京エレクトロン製スピンコーターACT8を用いて、日産化学社製反射防止膜DUV−42を200℃、60秒ベークし、平均膜厚60nmの膜を得た。その後、この膜上に、上記のポジ型レジスト組成物を塗布し、120℃、60秒ベークして平均膜厚300nmの膜を得た。
得られたレジスト膜に、KrFエキシマレーザースキャナー(ASML製PAS5500/850C、波長248nm、NA=0.80、Annular 0.80/0.30)を用いて、パターン露光した。この際に用いたレチクルは6%ハーフトーンマスクを用いた。
【0350】
露光後に120℃、60秒ベークし、2.38質量%テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAH)水溶液を用いて60秒間現像した後、30秒間、水でリンスして乾燥した。得られたパターンを下記の方法で評価した。
【0351】
(2−1) 感度
得られたパターンを走査型電子顕微鏡(日立社製S−9260)によりHole径を観察し、150nmのホール(マスクのサイズは180nm、Pitch=250nm)を解像する時の照射エネルギーを感度(Eopt)とした。
【0352】
(2−2)露光量依存性(EL)
露光量に対するホールサイズを上記と同様の方法で測定し、ターゲットサイズであるホールサイズ150nmの±10%つまり、135nm及び、165nmとなる露光量を求め、以下の式で定義される露光量依存性(EL)を算出した。値が大きいほど露光量依存性が良いことを示す。
〔EL(%)〕=〔(165nmとなる露光量)−(135nmとなる露光量)〕/(Eopt)
【0353】
(2−3)フォーカス余裕度(DOF)
(2−1)で求められた感度において、フォーカスをずらして露光し、フォーカスに対するホールサイズを上記と同様の方法で測定し、ターゲットサイズであるホールサイズ150nmの±10%つまり、135nmから165nmに得られたサイズが入る範囲をフォーカス余裕度(DOF)(μm)とした。値が大きいほどフォーカス余裕度(DOF)が広いことを示す。
【0354】
(2−4)形状(2−1) で得られた感度において、マスクサイズ170nm、Duty=1:10における孤立ホールのレジストパターンの側壁を走査型電子顕微鏡(日立社製S−4800)により観察し、下記の5段階評価を行った。
A:パターン側壁が非常にきれいで側壁の垂直性が85度以上90度以下の場合
B:パターン側壁が非常にきれいで側壁の垂直性が80度以上85度未満の場合若しくはパターン側壁はやや荒く側壁の垂直性が85度以上90度以下の場合
C:パターン側壁はやや荒く側壁の垂直性が80度以上85度未満の場合
D:パターン側壁はやや荒く側壁の垂直性が80度未満の場合、若しくはパターン側壁が非常に荒く側壁の垂直性が80度以上85度未満の場合
E:パターン側壁が非常に荒く側壁の垂直性が80度未満の場合
【0355】
(2−5)マスクエラーエンハンスメントファクター(MEEF)性能
マスクサイズ180nm、Pitch=250nmのマスクパターンで180nmのレジストパターンが得られる露光量で、Pitch=250nmに固定したまま、マスクサイズを175nmから185nmのサイズに変更したときの、レジストパターンのサイズ変化の傾きをMEEFとした。つまり、マスクサイズ175nm,178nm,180nm,182nm,185nmの際のレジストパターンのサイズを測定し、横軸にマスクサイズ、縦軸にレジストパターンのサイズをプロットした際の直線近似の傾き。
【0356】
(2−6)現像欠陥
(2)レジストパターンの形成と同じ条件で、マスクサイズ170nm、ピッチ280nmのマスクパターンでホールサイズ140nmのレジストパターンが得られる露光量で、140nmのパターンをウエハ面内78箇所露光した。この得られたパターン付きウエハをケーエルエー・テンコール(株)製KLA−2360により現像欠陥数を測定した。この際の検査面積は計205cm、ピクセルサイズ0.25μm、スレッシュホールド=30、検査光は可視光を用いた。得られた数値を検査面積で割った値を欠陥数(個/cm)として評価した。
【0357】
実施例1〜20及び比較例1、2の評価結果を下記表4に示した。
【0358】
【表4】

【0359】
表4から、本発明のポジ型レジスト組成物は、KrFエキシマレーザー露光によるパターン形成に関して、比較例の樹脂を用いた場合に比べて、露光量依存性(EL)と、フォーカス余裕度(DOF)性能、形状、マスクエラーエンハンスメントファクター(MEEF)性能、現像欠陥が良好であることがわかる。
【0360】
(3)パターン作製及び評価(電子線)
下記表5に示した各成分を溶解させ、得られた溶液を0.1μm孔径のメンブレンフィルターで精密ろ過して、ポジ型レジスト組成物を得た。
このポジ型レジスト組成物を、ヘキサメチルジシラザン処理を施したシリコンウエハー上に東京エレクトロン製スピンコーターMark8を用いて塗布し120℃、60秒ベークして平均膜厚300nmの膜を得た。
このレジスト膜に対し、電子線描画装置((株)日立製作所製HL750、加速電圧50keV)を用いて電子線照射を行った。照射後に120℃、60秒ベークし、2.38質量%テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAH)水溶液を用いて60秒間現像した後、30秒間、水でリンスして乾燥した。得られたパターンを下記の方法で評価した。
【0361】
【表5】

【0362】
(3−1)感度
電子線の照射によるパターニングにおいて、150nmライン(ライン:スペース=1:1)により150nmラインが得られた時の照射エネルギーを感度とした。線幅は走査型電子顕微鏡(日立社製S−9260)により観察して求めた。
【0363】
(3−2)解像力評価
(3−1)で得られた感度を示す露光量において、ライン:スペース=1:1パターンが何nmまで解像するかを上記と同様に走査型電子顕微鏡により観察した。
【0364】
(3−3)LWR評価
(3−1)で得られた感度において、150nmライン(ライン:スペース=1:1)が150nmに仕上がっているラインパターンについて走査型顕微鏡(日立社製S9260)で観察し、ラインパターンの長手方向のエッジ2μmの範囲について、エッジがあるべき基準線からの距離を50ポイント測定し、標準偏差を求め、3σを算出した。値が小さいほど良好な性能であることを示す。
【0365】
(3−4)形状
(3−1)で得られた感度を示す露光量において、150nmライン(ライン:スペース=1:1)により150nmラインを得た。該レジストパターンの側壁を走査型電子顕微鏡(日立社製S−4800)により観察した。評価はKrFでの前記評価と同様である。
【0366】
(3−5)現像欠陥
ポジ型レジスト組成物をスピンコーターによりヘキサメチルジシラザン処理を施した8インチのシリコン基板上に均一に塗布し、120℃で60秒間ホットプレート上で加熱、乾燥を行い、300nmのレジスト膜を形成した。このレジスト膜を、露光せずに120℃で60秒間ホットプレート上で加熱した。更に2.38質量%濃度のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液にて23℃で60秒間現像し、30秒間純水にてリンスした後、乾燥した。このようにして得られたサンプルウェハーを、ケーエルエー・テンコール(株)製KLA−2360により現像欠陥数を測定した。この際の検査面積は計254cm、ピクセルサイズ0.25μm、スレッシュホールド=30、検査光は可視光を用いた。得られた数値を検査面積で割った値を欠陥数(個/cm2)として評価した。
【0367】
実施例21〜35及び比較例3、4の評価結果を下記表6に示した。
【0368】
【表6】

【0369】
表6の結果から、本発明のポジ型レジスト組成物は、電子線の照射によるパターン形成に関して、比較例の樹脂を用いた場合に比べて、高感度、高解像力であり、パターン形状に優れ、更にLWR性能に優れていることがわかる。
【0370】
(4)パターン作製及び評価(EUV)
下記表7で示した各成分を溶解させ、得られた溶液を0.1μm孔径のメンブレンフィルターで精密ろ過して、ポジ型レジスト組成物を得た。
このポジ型レジスト組成物をヘキサメチルジシラザン処理を施したシリコンウエハー上に東京エレクトロン製スピンコーターMark8を用いて塗布し、120℃、60秒ベークして平均膜厚150nmの膜を得た。
得られたレジスト膜にEUV光(波長13nm:リソトラックジャパン社製、EUVES)を用いて、露光量を0〜20.0mJの範囲で0.5mJづつ変えながら露光を行い、更に120℃、60秒ベークした。その後2.38質量%テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAH)水溶液を用いて、各露光量での溶解速度を測定し、感度曲線を得た。
【0371】
【表7】

【0372】
(4−1)感度及び解像力(溶解コントラスト)
この感度曲線において、レジストの溶解速度が飽和するときの露光量を感度とし、また、解像力の指標として、感度曲線の接線の傾きが極大となる部の勾配から溶解コントラスト(γ値)を算出した。γ値が大きいほど溶解コントラストに優れ、解像力が高い。
【0373】
(4−2)現像欠陥
感光性樹脂組成物をスピンコーターによりヘキサメチルジシラザン処理を施した8インチのシリコン基板上に均一に塗布し、120℃で60秒間ホットプレート上で加熱、乾燥を行い、150nmのレジスト膜を形成した。このレジスト膜を、露光せずに120℃で60秒間ホットプレート上で加熱した。更に2.38質量%濃度のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液にて23℃で60秒間現像し、30秒間純水にてリンスした後、乾燥した。このようにして得られたサンプルウェハーを、ケーエルエー・テンコール(株)製KLA−2360により現像欠陥数を測定した。この際の検査面積は計254cm、ピクセルサイズ0.25μm、スレッシュホールド=30、検査光は可視光を用いた。得られた数値を検査面積で割った値を欠陥数(個/cm2)として評価した。
【0374】
実施例36〜50及び比較例5、6の評価結果を下記表8に示した。
【0375】
【表8】

【0376】
表8から、本発明のポジ型レジスト組成物は、EUV露光によるパターン形成に関して、比較例の樹脂を用いた場合に比べて、現像欠陥が少なく、高感度、高溶解コントラストであることがわかる。
【0377】
上記のように、本発明のポジ型レジスト組成物は、EUV照射によっても、良好な結果を示した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)酸の作用により分解しアルカリ現像液中での溶解性が増大する樹脂、
(B)活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物、
を含有し、前記(A)酸の作用により分解しアルカリ現像液中での溶解性が増大する樹脂が、下記一般式(II)で表される基を含む繰り返し単位、及び下記一般式(IIIa)で表される繰り返し単位を有することを特徴とするポジ型レジスト組成物。
【化1】

【化2】

一般式(II)において、
Vはラクトン構造を有する基を表す。
nは、繰り返し数を表し、1〜5の整数を表す。
Zは、単結合、エーテル結合、エステル結合、アミド結合、ウレタン結合又はウレア結合を表し、複数個ある場合は同じでも異なっていてもよい。
2は、アルキレン基を表し、複数個ある場合は同じでも異なっていてもよい。
一般式(IIIa)において、
1は、任意の置換基を表し、複数ある場合は同じでも異なっていてもよい。
1は、水素原子、アルキル基、水酸基、アルコキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、アシル基、アシロキシ基、シクロアルキル基、アリール基、カルボキシル基、アルキルオキシカルボニル基、アルキルカルボニルオキシ基又はアラルキル基を表す。
mは、置換基数であって、0〜4の整数を表す。
【請求項2】
前記樹脂(A)が、下記一般式(A2)で表される繰り返し単位を有することを特徴とする請求項1に記載のポジ型レジスト組成物。
【化3】

一般式(A2)において、
2は、酸の作用により脱離する基又は酸の作用により分解する基を有する基を表す。
2は、水素原子、アルキル基、水酸基、アルコキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、アシル基、アシロキシ基、シクロアルキル基、アリール基、カルボキシル基、アルキルオキシカルボニル基、アルキルカルボニルオキシ基又はアラルキル基を表す。
【請求項3】
前記一般式(A2)で表される繰り返し単位が、下記一般式(A2’)で表される繰り返し単位であることを特徴とする請求項2に記載のポジ型レジスト組成物。
【化4】

一般式(A2’)において、
Rh、Rk及びRjは、各々独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又はアラルキル基を表す。RkとRjとは、互いに結合して環を形成してもよい。
2は、水素原子、アルキル基、水酸基、アルコキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、アシル基、アシロキシ基、シクロアルキル基、アリール基、カルボキシル基、アルキルオキシカルボニル基、アルキルカルボニルオキシ基又はアラルキル基を表す。
【請求項4】
前記樹脂(A)が有する前記一般式(IIIa)で表される繰り返し単位が、下記式(IIIb)で表される繰り返し単位であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のポジ型レジスト組成物。
【化5】

【請求項5】
前記樹脂(A)が有する前記一般式(II)で表される基を含む繰り返し単位が、下記一般式(IIa)で表される繰り返し単位であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のポジ型レジスト組成物。
【化6】

一般式(IIa)において、
Vはラクトン構造を有する基を表す。
2は、水素原子、アルキル基、水酸基、アルコキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、アシル基、アシロキシ基、シクロアルキル基、アリール基、カルボキシル基、アルキルオキシカルボニル基、アルキルカルボニルオキシ基又はアラルキル基を表す。
nは、繰り返し数を表し、1〜5の整数を表す。
Zは、単結合、エーテル結合、エステル結合、アミド結合、ウレタン結合又はウレア結合を表し、複数個ある場合は同じでも異なっていてもよい。
2は、アルキレン基を表し、複数個ある場合は同じでも異なっていてもよい。
【請求項6】
前記樹脂(A)が有する前記一般式(II)で表される基を含む繰り返し単位が、下記一般式(IIb)で表される繰り返し単位であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のポジ型レジスト組成物。
【化7】

一般式(IIb)において、
2は、水素原子、アルキル基、水酸基、アルコキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、アシル基、アシロキシ基、シクロアルキル基、アリール基、カルボキシル基、アルキルオキシカルボニル基、アルキルカルボニルオキシ基又はアラルキル基を表す。
2は、アルキレン基を表し、複数個ある場合は同じでも異なっていてもよい。
3は、アルキル基又はシクロアルキル基を表し、複数個ある場合は同じでも異なっていてもよく、複数個ある場合には2つのR3が結合し、環を形成していても良い。
Xは、アルキレン基、酸素原子又は硫黄原子を表す。
Yは、電子求引性基を表し、複数個ある場合は同じでも異なっていてもよい。
Zは、単結合、エーテル結合、エステル結合、アミド結合、ウレタン結合又はウレア結合を表し、複数個ある場合は同じでも異なっていてもよい。
kは、置換基数であって、0〜8の整数を表す。
nは、繰り返し数を表し、1〜5の整数を表す。
mは、置換基数であって、1〜7の整数を表す。
【請求項7】
前記樹脂(A)が有する前記一般式(II)で表される基を含む繰り返し単位が、下記一般式(IIc)で表される繰り返し単位であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のポジ型レジスト組成物。
【化8】

一般式(IIc)において、
2は、水素原子、アルキル基、水酸基、アルコキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、アシル基、アシロキシ基、シクロアルキル基、アリール基、カルボキシル基、アルキルオキシカルボニル基、アルキルカルボニルオキシ基又はアラルキル基を表す。
3は、アルキル基又はシクロアルキル基を表し、複数個ある場合は同じでも異なっていてもよく、複数個ある場合には2つのR3が結合し、環を形成していても良い。
Xは、アルキレン基、酸素原子又は硫黄原子を表す。
kは、置換基数であって、0〜8の整数を表す。
pは、繰り返し数を表し、1〜5の整数を表す。
nは、繰り返し数を表し、1〜5の整数を表す。
mは、置換基数であって、1〜7の整数を表す。
【請求項8】
前記化合物(B)として、トリアリールスルホニウム塩、ジアゾジスルホン誘導体及び有機スルホン酸のオキシムエステルから選ばれる少なくとも1種類の化合物を含有することを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のポジ型レジスト組成物。
【請求項9】
前記化合物(B)として、トリアリールスルホニウム塩から選ばれる少なくとも1種類の化合物、並びにジアゾジスルホン誘導体及び有機スルホン酸のオキシムエステルから選ばれる少なくとも1種類の化合物を含有することを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載のポジ型レジスト組成物。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかに記載のポジ型レジスト組成物により、レジスト膜を形成し、該レジスト膜を露光、現像する工程を含むことを特徴とするパターン形成方法。

【公開番号】特開2010−55083(P2010−55083A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−178459(P2009−178459)
【出願日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】