説明

ポジ型レジスト組成物及びレジストパターン形成方法

【課題】レジスト膜の形成工程においてプリベークを必要とせず、さらに高感度、特に半導体レーザーを照射源とした最大発光波長が400nm〜410nmの範囲内にある活性エネルギー線に対して高感度かつパターン形成性が良好なポジ型レジスト組成物の提供。
【解決手段】(A)一般式(I)[式(I)中、Rは水素原子または直鎖もしくは分岐鎖の炭素数1〜8のアルキル基を表し、Rは置換もしくは非置換のアルキル基、置換もしくは非置換のアリール基または置換もしくは非置換のアラルキル基を表す。]で表される構造単位を有するビニル系重合体、(B)特定の構造で表される光酸発生剤、及び(C)特定の構造で表される増感色素を含有することを特徴とするポジ型レジスト組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フォトリソグラフィー技術、特に半導体レーザーを照射源とした最大発光波長が400nm〜410nmの範囲内にある活性エネルギー線によるフォトリソグラフィー技術に有用なポジ型レジスト組成物及びレジストパターン形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子デバイス等の回路パターンの形成にはポジ型フォトレジストが広く使用されている。
【0003】
これらの用途に使用されるポジ型フォトレジスト組成物としては、多くの場合、アルカリ可溶性ノボラック樹脂と感光剤としてキノンジアジド化合物を組み合わせた組成物が使用されている。この組成物は紫外線の照射によりキノンジアジド基が光分解しケテンを経由してインデンカルボン酸を形成する反応を利用している。しかし、このキノンジアジド化合物を使用したレジスト組成物は、非常に細密なパターンを形成する必要がある場合には、解像度が不足することがある。また、良好な再現性を得るためには厳密な現像条件の制御が必要である。加えて、未露光部が現像液に対して完全に不溶ではないために、現像過程で未露光部のレジスト膜も一部溶解ないしは膨潤し、形成されたパターンのエッチング液に対する耐性が低下しやすい、または形成されるパターンの精度が低下しやすい等の課題がある。
【0004】
そこで、上記メカニズムとは異なったポジ型レジスト組成物が開発されている。特許文献1及び特許文献2には、紫外線、電子線などの照射によりパターン潜像部に酸を発生し、この酸を触媒としてポリマーの脱離反応を連鎖的に生じさせることにより露光部と未露光部との現像液に対する溶解性を変化させてパターンを形成させる材料及びそれを用いたパターン形成方法に関する発明が開示されている。
【0005】
これらの組成物においては、酸が触媒として連鎖的に加水分解反応を引き起こすため、キノンジアジド化合物を感光剤とした組成物に比べて感度が高いが、加水分解性が高いために、貯蔵安定性に劣る。また、現像の原理は、キノンジアジド化合物を使用したものと同様であるため、形成されたパターンのエッチング液に対する耐性が低いことや、形成されるパターンの精度が低下しやすい等の課題は依然として残っている。
【0006】
また、特許文献3、特許文献4及び特許文献5には、カルボキシル基等のアルカリ可溶性基を有する重合体とビニルエーテル化合物及び光酸発生剤からなるポジ型レジスト組成物に関する発明が開示されている。これらの組成物は、形成されたレジスト膜を加熱すると、カルボキシル基等とビニルエーテル基が付加反応をおこし、溶剤やアルカリ水溶液に対して不溶性となる。そして、活性エネルギー線を照射し照射後に加熱すると、発生した酸の触媒作用で付加反応部位が解離して、露光部分が溶剤やアルカリ水溶液に対して可溶性となる。
【0007】
これらの組成物は、前記特許文献1及び特許文献2と同様に、キノンジアジド化合物を感光剤とするレジスト組成物のように吸光係数の高い官能基を多量に使用する必要がないので、活性エネルギー線に対する透明性を高くすることができる。また、露光部に発生する酸は加熱時に触媒として作用し、付加反応部位を連鎖的に解離させるため、ポジ型に作用する感光性組成物として感度を高くすることができる。
【0008】
しかし、このポジ型レジスト組成物は、基板に塗布した後に、加熱によりレジスト膜中のカルボキシル基等とビニルエーテル基を付加反応させる、いわゆるプリベークが必要である。またプリベークの際に工程短縮を考慮して高温加熱により時間短縮しようとした場合には、光酸発生剤が熱により酸を発生してしまい、未露光部までも現像液に溶解してしまうという不具合が生じる恐れがある。
【0009】
また、特許文献6には、特定の化学式で表される酸発生剤及び、p−(1−エトキシエトキシ)スチレン等に代表されるアセタール基含有スチレン誘導体とp−ヒドロキシスチレンとの共重合体を含有する感放射線性樹脂組成物に関する発明が開示されている。この組成物は化学増幅型レジストとして好適に使用できるものの、高感度という点では必ずしも満足するものではない。
【0010】
【特許文献1】特開昭59−45439号公報
【特許文献2】特開昭63−250642号公報
【特許文献3】特開平5−100428号公報
【特許文献4】特開平5−100429号公報
【特許文献5】特開平6−1611106号公報
【特許文献6】特開2002−202603号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は上記の事情を鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、レジスト膜を形成する工程においてプリベークを必要とせず、さらに高感度、特に半導体レーザーを照射源とした最大発光波長が400nm〜410nmの範囲内にある活性エネルギー線に対して高感度かつパターン形成性が良好なポジ型レジスト組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、ポジ型レジスト組成物において、(A)下記一般式(I)で表される特定の構造単位を有するビニル系重合体、(B)下記一般式(II)で表される特定の光酸発生剤、及び(C)下記一般式(III)で表される特定の増感色素、を組み合わせることにより上記課題を解決することができることを見出し本発明を完成するに至った。
【0013】
すなわち本発明は、
(A)下記一般式(I)
【0014】
【化1】

【0015】
[式(I)中、Rは水素原子または直鎖もしくは分岐鎖の炭素数1〜8のアルキル基を表し、Rは置換もしくは非置換のアルキル基、置換もしくは非置換のアリール基または置換もしくは非置換のアラルキル基を表す。]で表される構造単位を有するビニル系重合体、
(B)下記一般式(II)
【0016】
【化2】

【0017】
[式(II)中、Rはフッ素置換もしくは非置換のメチル基、
【0018】
【化3】

【0019】
を表す。]で表される光酸発生剤、及び
(C)下記一般式(III)
【0020】
【化4】

【0021】
[式(III)中、R、R、R及びRはそれぞれ独立に炭素数1〜6のアルキル基を表し、Rは水素原子または炭素数1〜6の置換もしくは非置換のアルキル基を表し、Rは水素原子、シアノ基、カルボキシル基、低級アルカノイル基または低級アルコキシカルボニル基を表す。]で表される増感色素、
を含むことを特徴とするポジ型レジスト組成物、並びに
(1)基板上に前記ポジ型レジスト組成物を塗布してレジスト膜を形成する工程、(2)前記基板上に形成されたレジスト膜に所望のレジストパターンが得られるように活性エネルギー線を直接もしくはポジマスクを通して照射する工程、(3)前記レジスト膜を現像処理して前記基板上にレジストパターンを形成する工程、を含むレジストパターン形成方法に関する。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、レジスト膜を形成する工程においてプリベークを必要とせず、さらに高感度、特に半導体レーザーを照射源とした最大発光波長が400nm〜410nmの範囲内にある活性エネルギー線に対して高感度かつパターン形成性が良好なポジ型レジスト組成物を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明のポジ型レジスト組成物は、下記一般式(I)で表される構造単位を有するビニル系重合体(A)を含有する。
【0024】
【化5】

【0025】
[式(I)中、Rは水素原子または直鎖もしくは分岐鎖の炭素数1〜8のアルキルを表し、Rは置換もしくは非置換のアルキル基、置換もしくは非置換のアリール基または置換もしくは非置換のアラルキル基を表す。]。
【0026】
前記一般式(I)のRの直鎖もしくは分岐鎖の炭素数1〜8のアルキル基としては、具体的には、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基及びオクチル基等があげられる。なかでも感度及び溶剤への溶解性の点からメチル基が好ましい。
【0027】
のアルキル基としては、例えば、直鎖または分枝状の炭素数1〜18のアルキル基を挙げることができる。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基及びオクタデシル基等があげられるが、中でも、炭素数1〜6のアルキル基が好ましく、さらには炭素数1〜3のアルキル基がより好ましい。
【0028】
のアリール基としては、例えば、炭素数6〜12のアリール基があげられ、具体的には、フェニル基及びナフチル基等があげられる。
【0029】
のアラルキル基としては、例えば、炭素数7〜15のものがあげられ、具体的には、ベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基及びナフチルエチル基等があげられる。
【0030】
の置換アルキルにおける置換基としては、例えば、低級アルコキシ基、低級アルカノイル基、シアノ基、ニトロ基、ハロゲン原子及び低級アルコキシカルボニル等があげられる。
【0031】
の置換アリールおよび置換アラルキルにおける置換基としては、例えば、低級アルキル基、低級アルコキシ基、低級アルカノイル基、シアノ基、ニトロ基、ハロゲン原子及び低級アルコキシカルボニル基等があげられる。
【0032】
前記の置換基の定義において、低級アルキル基、低級アルコキシ基、低級アルカノイル基および低級アルコキシカルボニル基のアルキル基の部分としては、R1における低級アルキル基で例示したものと同様のものがあげられる。従って、低級アルカノイルとしては、例えば、直鎖または分枝状の炭素数1〜8のものがあげられ、その具体例としては、ホルミル、アセチル、プロピオニル、ブチリル、イソブチリル、バレリル、イソバレリル、ピバロイル、ヘキサノイル、ヘプタノイル等があげられる。ハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素の各原子があげられる。
【0033】
なお、一般式(I)において、Rがメチル基及びRがアルキル基である構造単位が好ましく、感度、及び溶剤への溶解性の点からRがメチル基及びRがエチル基が特に好ましい。
【0034】
前記一般式(I)で表わされる構造単位を形成するための単量体としては、下記一般式(IV)
【0035】
【化6】

【0036】
[式(IV)中、R、Rは一般式(I)と同様に定義される。]
で表わされる単量体が挙げられる。
【0037】
前記一般式(IV)で表される単量体は、例えば、下記一般式(V)
【0038】
【化7】

【0039】
[式(V)中、Rは一般式(I)と同様に定義される。]
で表される化合物と、下記一般式(VI)
【0040】
【化8】

【0041】
[式(VI)中、Rは一般式(I)と同様に定義される。]
で表される化合物を反応させて、前記一般式(V)で表される化合物のカルボキシル基をブロックすることにより得ることができる。
【0042】
前記カルボキシル基のブロックは、国際公開第03/6407号パンフレットに記載の方法等の公知の方法に従って行うことができる。
【0043】
前記ビニル系重合体(A)は、一般式(I)で表される構造単位をその重合体の一部もしくは全部として含むものである。前記ビニル系重合体(A)は、一般式(I)で表される構造単位の2種以上を含むものであってもよい。また、前記ビニル系重合体(A)の全てのカルボキシル基がブロックされて一般式(I)で表される構造単位となる必要はなく、カルボキシル基の好ましくは50モル%以上、より好ましくは70モル%以上がブロックされて、一般式(I)で表される構造単位となっていればよい。ブロックされたカルボキシル基の割合が多くなればなるほど、重合体自身及びこれを含有するレジスト組成物の貯蔵安定性が向上する。また、エッチング液に対する耐性が向上する。
【0044】
前記ビニル系重合体(A)形成用の単量体として、前記一般式(IV)で表される単量体に加えて用いることのできる他の単量体としては、重合性のエチレン性不飽和結合を有する化合物等を挙げることができる。
【0045】
重合性のエチレン性不飽和結合を有する化合物としては特に制約されるものではないが、例えば、酢酸ビニル;(メタ)アクリル酸;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等の炭素数1〜18のアルコールと(メタ)アクリル酸からなる(メタ)アクリル酸アルキルエステル類;スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ジメチルスチレン、ジビニルベンゼン等の芳香族ビニル化合物類;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類;エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート等のグリコールジ(メタ)アクリレート類;ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート類;トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、ペンタフルオロプロピル(メタ)アクリレート、パーフルオロシクロヘキシル(メタ)アクリレート、2,2,3,3−テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、β−(パーフルオロオクチル)エチル(メタ)アクリレート等のフッ素含有ビニル単量体;1−[3−(メタ)アクリロキシプロピル]−1,1,3,3,3−ペンタメチルジシロキサン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリス(トリメチルシロキサン)シラン、AK−5[シリコーンマクロ単量体、東亜合成化学工業(株)製]等のシロキサン含有ビニル単量体、ビニルトリメトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルジエトキシシラン等の加水分解性シリル基含有ビニル単量体;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル等のビニルエーテル類;フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、アマニ油脂肪酸、トール油脂肪酸もしくは脱水ひまし油脂肪酸等の多塩基性不飽和カルボン酸またはそれらの一価もしくは多価アルコールのエステル;ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートメチルクロライド塩、イソボルニル(メタ)アクリレート、アリルアルコール、塩化ビニル、塩化ビニリデン、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、(メタ)アクリロニトリル、マクロ単量体AS−6、AN−6、AA−6、AB−6[商品名、東亜合成化学工業社製]等の公知のビニル系単量体等があげられる。これらは1種または2種以上を選択して用いることができる。
【0046】
なお、本発明において「(メタ)アクリル酸」とは、アクリル酸およびメタクリル酸を意味し、他の(メタ)アクリル酸誘導体についても同様の意味を有する。
【0047】
前記ビニル重合体(A)は、前記一般式(IV)で表される単量体の少なくとも1種と、必要に応じて添加される他の単量体の少なくとも1種を重合させることで得ることができる。重合は、公知の方法に従って行うことができる。
【0048】
なお、前記ビニル系重合体(A)の原料において、前記一般式(IV)で表される単量体の含有量は、好ましくは2〜60質量%、より好ましくは5〜40質量%である。前記一般式(IV)で表される単量体が2質量%以上であると、得られるレジスト組成物の感度がより優れ、60質量%以下であるとレジスト組成物から得られるフィルム(塗膜)の機械的特性に優れる。
【0049】
また、前記のビニル系重合体(A)が共重合体の場合、共重合体の形態は、ランダム共重合体、ブロック共重合体など各種の形態が利用できる。
【0050】
重合には、反応溶媒を使用してもよく、該反応溶媒は、反応に不活性であれば、特に限定されるものではなく、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、ヘキサン、シクロヘキサン、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、ジオキサン、ジオキソラン、γ−ブチロラクトン、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、アニソール、メタノール、エタノール、プロパノール、2−プロパノール、ブタノール、N−メチルピロリドン、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、メトキシブタノール、酢酸メトキシブチル、3−メチル−3−メトキシ−1−ブタノール、水、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等があげられる。
【0051】
重合に用いる重合開始剤としては、重合様式によっても異なるが、例えば、ラジカル重合においては、2,2'−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、2,2'−アゾビス−2−メチルブチロニトリル(AMBN)、2,2'−アゾビスバレロニトリル、ベンゾイルパーオキシド、アセチルパーオキシド、過酸化ラウロイル、1,1−ビス(tert−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、クメンハイドロパーオキシド、tert−ブチルパーオキシベンゾエート、tert−ブチルパーオキシド、メチルエチルケトンパーオキシド、m−クロロ過安息香酸、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等があげられ、その使用量は、重合に用いられる単量体全量に対して、0.01〜20質量%であるのが好ましい。
【0052】
重合には、連鎖移動剤を用いてもよい。連鎖移動剤としては、例えば、チオ−β−ナフトール、チオフェノール、n−ブチルメルカプタン、エチルチオグリコレート、メルカプト・エタノール、イソプロピル・メルカプタン、tert−ブチルメルカプタン、ジフェニル・ジサイファイド、ジエチル・ジチオグリコレート、ジエチル・ジサルファイド等があげられ、その使用量は、重合に用いられる単量体全量に対して、0.01〜5質量%であるのが好ましい。
【0053】
本発明において、前記ビニル系重合体(A)のガラス転移温度は特に限定されるものではない。好ましくは20〜100℃である。さらに好ましくは25〜80℃であり、特に好ましくは30〜70℃である。これら範囲の下限値はタック性の点で意義があり、上限値は感度の点で意義がある。
【0054】
ここで、本明細書において、ガラス転移温度は、示差走査熱量計「DSC−220U」(セイコーインスツルメント社製)を用いて、試料を測定カップにとり、真空吸引して完全に溶剤を除去した後、3℃/分の昇温速度で−20℃〜+200℃の範囲で熱量変化を測定して、測定結果の低温側の最初のベースラインの変化点から求めたガラス転移温度である。
【0055】
前記ビニル系重合体(A)の重量平均分子量は、好ましくは2,000〜300,000、さらに好ましくは3,000〜200,000、特に好ましくは5,000〜100,000である。
【0056】
ここで、本明細書において、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(東ソー(株)社製、「HLC8120GPC」)の測定値を、ポリスチレン標準物質を基準にして換算した値である。カラムは、「TSKgel G−4000H×L」、「TSKgel G−3000H×L」、「TSKgel G−2500H×L」、「TSKgel G−2000H×L」(いずれも東ソー(株)社製、商品名)の4本を用い、移動相;テトラヒドロフラン、測定温度;40℃、流速;1ml/分、検出器;RIの条件で行ったものである。
【0057】
本発明における光酸発生剤(B)は、下記一般式(II)
【0058】
【化9】

【0059】
[式(II)中、Rはフッ素置換もしくは非置換のメチル基、
【0060】
【化10】

【0061】
を表す。]で表される化合物である。
【0062】
前記一般式(II)で表される化合物の中でも、下記式(II−1)で表される化合物、下記式(II−2)で表される化合物
【0063】
【化11】

【0064】
が、(A)成分との相溶性、感度等の点から好ましい。
【0065】
前記一般式(II)で表される光酸発生剤(B)の含有量は、特に限定されるものではないが、(A)成分の固形分100質量部に対して、好ましくは0.5〜30質量部であり、さらに好ましくは1.0〜20質量部、特に好ましくは2.0〜10質量部である。この範囲の下限値は、パターン形成性、感度及び解像度の点で意義があり、上限値はパターン形成性及びコストの点で意義がある。
【0066】
本発明における増感色素(C)は、下記一般式(III)
【0067】
【化12】

【0068】
[式(III)中、R、R、R及びRはそれぞれ独立に炭素数1〜6のアルキル基を表し、Rは水素原子または炭素数1〜6の置換もしくは非置換のアルキル基を表し、Rは水素原子、シアノ基、カルボキシル基、低級アルカノイル基または低級アルコキシカルボニル基を表す。]で表される化合物である。
【0069】
、R、R、Rにおいて炭素数1〜6のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、2−メチル−1−ブチル基、2−メチル−2−ブチル基、n−ヘキシル基等があげられる。
【0070】
において炭素数1〜6のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、2−メチル−1−ブチル基、2−メチル−2−ブチル基、n−ヘキシル基等があげられる。置換アルキル基における置換基としては、低級アルコキシ基、低級アルカノイル基、シアノ基、ニトロ基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等があげられる。
【0071】
において低級アルカノイル基としてはアセチル基等が挙げられ、低級アルコキシカルボニル基としてはエトキシカルボニル基等があげられる。
【0072】
前記一般式(III)で表される化合物の中でも、下記式で表される化合物
【0073】
【化13】

【0074】
が、(A)成分との相溶性、感度等の点から好ましい。
【0075】
前記一般式(III)で表される増感色素(C)の含有量は、特に限定されるものではないが、(A)成分の固形分100質量部に対して、好ましくは0.5〜10質量部であり、さらに好ましくは1.0〜5質量部である。この範囲の下限値は、感度の点で意義があり、上限値はパターン形成性及びコストの点で意義がある。
【0076】
また、(B)成分と(C)成分との組み合わせとしては、(B)成分である前記式(II−1)の化合物及び/又は(II−2)の化合物と、(C)成分である前記式(III−1)の化合物との組み合わせが、半導体レーザーを照射源とした最大発光波長が400nm〜410nmの範囲内にある活性エネルギー線に対して高感度である点から特に好ましい。
【0077】
また、本発明のポジ型レジスト組成物は、前記各成分に加えて、密着性改良剤、ベンゾトリアゾール等の金属キレート防止剤、表面調整剤等から選択された1種又は2種以上を目的用途に応じて添加することができる。
【0078】
更に、本発明のポジ型レジスト組成物は、有機溶剤又は水によって液状組成物としてもよい。この有機溶剤としては、前記各成分を溶解できる有機溶剤であれば特に限定されることなく使用できる。具体的には、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、安息香酸メチル、プロピオン酸メチル等のエステル類;テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメトキシエタン等のエーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3−メトキシブチルアセテート等のグリコールエーテル類;エチルアルコール、ベンジルアルコール等のアルコール類;芳香族炭化水素類、脂肪族炭化水素類等があげられる。これらの有機溶剤は、1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。また、水を用いる場合は、各成分を安定な状態に保持するために乳化剤を添加することが好ましい。
【0079】
続いて、本発明のポジ型レジスト組成物を用いたレジストパターン形成方法について説明する。
【0080】
本発明のレジストパターン形成方法は、(1)基板上に前記ポジ型レジスト組成物を塗布してレジスト膜を形成する工程、(2)前記基板上に形成されたレジスト膜に所望のレジストパターンが得られるように活性エネルギー線を直接もしくはポジマスクを通して照射する工程、(3)前記レジスト膜を現像処理して前記基板上にレジストパターンを形成する工程を含むものである。
【0081】
前記で使用する基板は、特に限定されるものではなく、例えば、アルミニウム、銅、金、クロム、ITO及びタンタル等の金属薄膜を有するプリント基板、シリコンウエハー、ガラス、カーボン、ポリマーシート等を使用することができる。
【0082】
本発明のポジ型レジスト組成物を基板上へ塗布する方法としては、特に限定されるものではなく、例えば、スピンコート法、ブレードコート法、スプレーコート法、ワイヤーバーコート法、ディッピング法、エアーナイフコート法、ローラコート法、カーテンコート法等を用いることができる。
【0083】
塗布により形成されるレジスト膜の膜厚は、その目的用途に応じて設定されるが、通常0.05〜20μm、好ましくは0.07〜10μm、さらに好ましくは0.1〜7μmである。
【0084】
基板上に形成されたレジスト膜へ活性エネルギー線を照射する方法としては、例えば、レーザー光を走査させ直接に活性エネルギー線を照射する直接描画方法、ポジマスクを通して活性エネルギー線を照射する方法などにより行うことができる。
【0085】
照射する活性エネルギー線としては、例えば紫外線、可視光線、レーザー光(近赤外線、可視光レーザー、紫外線レーザー等)があげられる。
【0086】
活性エネルギー線の照射源としては、従来から使用されているもの、例えば超高圧、高圧、中圧、低圧の水銀灯、ケミカルランプ、カーボンアーク灯、キセノン灯、メタルハライド灯、蛍光灯、タングステン灯、太陽光等の各光源や、紫外から可視領域に発振線を持つ各種レーザー等が使用できる。
【0087】
これらの中でも、本発明のポジ型レジスト組成物の感度、解像度、パターン形成性の点から、最大発光波長が400nm〜410nmの範囲内にある活性エネルギー線を使用することが好ましく、半導体レーザーを照射源とした最大発光波長が400nm〜410nmの範囲内にある活性エネルギー線を使用することがさらに好ましい。
【0088】
活性エネルギー線の照射量は、特に限定されるものではない。ポジマスクを介して活性エネルギー線を照射する場合は、好ましくは100〜20000J/m、さらに好ましくは200〜10000J/mの範囲である。レーザー光により直接に活性エネルギー線を照射する場合は、好ましくは1〜1,000J/m、さらに好ましくは10〜800J/mの範囲である。この範囲の下限値は感度及び解像性の点で意義がある。また上限値はパターン形状向上の点で意義がある。
【0089】
本発明のレジストパターン形成方法は、活性エネルギー線を照射する前記工程(2)の後、現像処理をする前記工程(3)の前に、前記レジスト膜を加熱する工程を含むことが好ましい。加熱する工程における加熱条件は、前記活性エネルギー線照射により光酸発生剤から発生した酸の存在下で前記レジスト膜中のブロックの解離が生じるような温度条件、例えば、60℃〜150℃の温度で1分〜30分間加熱を行なうことが好ましい。
【0090】
現像処理に用いる現像液としては、活性エネルギー線が照射されたレジスト膜部分を溶解する現像液であれば特に限定されるものでない。現像液としては例えばアルカリ現像液を利用することができる。現像液に用いるアルカリ成分としては、例えば、珪酸ナトリウム、珪酸カリウム、珪酸リチウム、珪酸アンモニウム、メタ珪酸ナトリウム、メタ珪酸カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、第二燐酸ナトリウム、第三燐酸ナトリウム、第二燐酸アンモニウム、第三燐酸アンモニウム、ホウ酸ナトリウム、ホウ酸カリウム、ホウ酸アンモニウム等の無機アルカリ塩、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノイソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、モノブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド等の有機アミン化合物があげられる。現像液には、必要に応じて、各種の界面活性剤(アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、両性界面活性剤)やアルコール等の有機溶媒を加えることができる。また、アルカリ成分の含有量は、ポジ型レジスト組成物の組成等によって選択することができるが、例えば0.1〜5質量%程度とすることができる。
【実施例】
【0091】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。尚、「部」及び「%」は、別記しない限り「質量部」及び「質量%」を示す。
【0092】
<ビニル系重合体>
ビニル系重合体(A−1):メチルメタクリレート、ブチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート及びメタクリル酸1−エトキシエチルを構成成分としかつメタクリル酸1−エトキシエチルを23%含有する単量体混合物から得られるビニル系重合体(ガラス転移温度は47℃、重量平均分子量は8,000)
ビニル系重合体(A−2):メチルメタクリレート、ブチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート及びメタクリル酸1−エトキシエチルを構成成分としかつメタクリル酸1−エトキシエチルを23%含有する単量体混合物から得られるビニル系重合体(ガラス転移温度は47℃、重量平均分子量は10,500)
ビニル系重合体(A−3):メチルメタクリレート、ブチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート及びメタクリル酸1−エトキシエチルを構成成分としかつメタクリル酸1−エトキシエチルを23%含有する単量体混合物から得られるビニル系重合体(ガラス転移温度は54℃、重量平均分子量は7,600)
ビニル系重合体(D)〔比較例用〕:ポリ(p−ヒドロキシスチレン)のフェノール性水酸基の水素原子の23モル%が1−エトキシエチル基で置換され、10モル%がtert−ブチル基で置換された樹脂(重量平均分子量は12,000)。
【0093】
<光酸発生剤>
光酸発生剤(B−1):下記式(II−1)で表される化合物
【0094】
【化14】

【0095】
光酸発生剤(B−2):下記式(II−2)で表される化合物
【0096】
【化15】

【0097】
光酸発生剤(E):下記式(VII)で表される化合物〔比較例用〕
【0098】
【化16】

【0099】
<増感色素>
増感色素(C−1):下記式(III−1)で表される化合物
【0100】
【化17】

【0101】
増感色素(F):下記式(VIII)で表される化合物〔比較例用〕
【0102】
【化18】

【0103】
<実施例1〜8、比較例1〜4>
表1に示す各成分を混合して均一溶液とし、ポジ型レジスト組成物を得た。得られたポジ型レジスト組成物をガラス基板上に乾燥膜厚が5μmとなるように塗布し、室温で乾燥させて、レジスト膜を形成した。レジスト膜について下記試験に供した。試験結果を表1に示した。
【0104】
<感度評価>
前記で作成した各レジスト膜に、21段ステップタブレットフィルム(日立化成社製、フォテック21段ステップタブレットフィルム)を介して、最大発光波長が405nmのレーザー光を850J/mの照射量で照射した。次いで、100℃で5分間の加熱を行った後、23℃の2.38%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液を用いて現像を行った。この際、現像時間は、現像液に対するレジスト膜の溶解性を考慮して、実施例1〜8、比較例3、4のレジスト膜については10秒間、比較例1、2のレジスト膜については60秒間とした。現像後のレジスト膜のステップタブレット感度(ST感度)を表1に示した。ここで、ST感度はその数値が大きいほどレジストが高感度であることを示す。
【0105】
<パターン形成性>
基板上に形成されたレジスト膜に、レジストパターンがライン&スペース(L/S)パターンで30μm/100μmとなるように、最大発光波長が405nmのレーザー光を表1に示す照射量(ST感度が2となる照射量)で照射した。次いで、100℃で5分間の加熱を行った後、23℃の2.38%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液を用いて現像を行いレジストパターンを形成した。形成されたレジストパターンの形状を観察し、以下の基準により評価した。この際、現像時間は、現像液に対するレジスト膜の溶解性を考慮して、実施例1〜8、比較例3、4のレジスト膜については10秒間、比較例1、2のレジスト膜については60秒間とした。
「◎」:照射部と未照射部との境界部は特にシャープで、特に良好なレジストパターンが形成できた。
「○」:照射部と未照射部との境界部はシャープで、良好なレジストパターンが形成できた。
「×」:照射部と未照射部との境界部はシャープさが無く、レジストパターンは実用性がなかった。
【0106】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)下記一般式(I)
【化1】

[式(I)中、Rは水素原子または直鎖もしくは分岐鎖の炭素数1〜8のアルキル基を表し、Rは置換もしくは非置換のアルキル基、置換もしくは非置換のアリール基または置換もしくは非置換のアラルキル基を表す。]で表される構造単位を有するビニル系重合体、
(B)下記一般式(II)
【化2】

[式(II)中、Rはフッ素置換もしくは非置換のメチル基、
【化3】

を表す。]で表される光酸発生剤、及び
(C)下記一般式(III)
【化4】

[式(III)中、R、R、R及びRはそれぞれ独立に炭素数1〜6のアルキル基を表し、Rは水素原子または炭素数1〜6の置換もしくは非置換のアルキル基を表し、Rは水素原子、シアノ基、カルボキシル基、低級アルカノイル基または低級アルコキシカルボニル基を表す。]で表される増感色素、
を含むことを特徴とするポジ型レジスト組成物。
【請求項2】
前記ビニル系重合体(A)100質量部に対して、前記光酸発生剤(B)を0.5〜30質量部含有する請求項1記載のポジ型レジスト組成物。
【請求項3】
前記ビニル系重合体(A)100質量部に対して、前記増感色素(C)を0.5〜10質量部含有する請求項1又は2に記載のポジ型レジスト組成物。
【請求項4】
前記ビニル系重合体(A)の重量平均分子量が2,000〜300,000である請求項1〜3のいずれか1項に記載のポジ型レジスト組成物。
【請求項5】
前記ビニル系重合体(A)のガラス転移温度が20〜100℃である請求項1〜4のいずれか1項に記載のポジ型レジスト組成物。
【請求項6】
(1)基板上に請求項1〜5のいずれか1項に記載のポジ型レジスト組成物を塗布してレジスト膜を形成する工程、(2)前記基板上に形成されたレジスト膜に所望のレジストパターンが得られるように活性エネルギー線を直接もしくはポジマスクを通して照射する工程、(3)前記レジスト膜を現像処理して前記基板上にレジストパターンを形成する工程、を含むレジストパターン形成方法。
【請求項7】
活性エネルギー線が、半導体レーザーを照射源とした最大発光波長が400nm〜410nmの範囲内にある活性エネルギー線である請求項6記載のレジストパターン形成方法。

【公開番号】特開2010−60959(P2010−60959A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−227852(P2008−227852)
【出願日】平成20年9月5日(2008.9.5)
【出願人】(000001409)関西ペイント株式会社 (815)
【Fターム(参考)】