説明

ポジ型感光性樹脂組成物

【課題】良好な解像性、並びにその硬化物における良好な電気絶縁特性及び強度を示すポジ型感光性樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】(A)フェノール性水酸基を有するアルカリ可溶性樹脂、(B)キノンジアジド基を有する化合物、(C)分子中に少なくとも2つのアルキルエーテル化されたアミノ基を有する化合物、(D)下記一般式(1)で表される構成単位(d1)及び不飽和カルボン酸から誘導される構成単位(d2)を含み、質量平均分子量が2万〜50万であるアクリル樹脂、及び(S)溶剤を含有するポジ型感光性樹脂組成物を使用する。一般式(1)中、Rは水素原子又はアルキル基を表し、Rは独立に炭化水素基を表し、pは0〜3を表す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポジ型感光性樹脂組成物に関し、さらに詳しくは、半導体素子の層間絶縁膜、表面保護膜等に用いられるポジ型感光性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子機器の半導体素子に用いられる層間絶縁膜、表面保護膜等には、耐熱性、機械的特性等に優れるポリイミド系樹脂が広く使用されている。また、生産性の向上、膜形成精度の向上等のため、感光性を付与した感光性ポリイミド系樹脂の検討もなされている。例えば、特許文献1、2には、ポリイミド前駆体及びオルトキノンジアジド化合物を含有するポジ型感光性組成物が開示されている。しかしながら、これらのポジ型感光性組成物では、耐熱性、電気絶縁性、基板への密着性等に問題があった。
【0003】
そこで、特許文献3では、フェノール性水酸基を有するアルカリ可溶性樹脂、キノンジアジド基を有する化合物、架橋微粒子、分子中に少なくとも2つのアルキルエーテル化されたアミノ基を有する化合物、及び溶剤を含有するポジ型感光性絶縁樹脂組成物が提案されている。このポジ型感光性絶縁樹脂組成物によれば、解像性、電気絶縁特性、基板への密着性等が良好な硬化物を得ることができる。このような硬化物は、例えば、半導体素子における永久絶縁膜として使用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−5996号公報
【特許文献2】特開2000−98601号公報
【特許文献3】特開2003−215789号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、近年、集積回路の微細化が進むのに伴って、集積回路における配線同士の距離が近くなり、より高いレベルの解像性及び電気絶縁特性を示す感光性樹脂組成物及びその硬化物が求められている。また、上記の各特許文献に記載されたポジ型感光性樹脂組成物で作製された硬化物は、硬くて脆い性質があり、半導体素子における永久絶縁膜としては、改良の余地があった。
【0006】
本発明は、以上のような状況に鑑みてなされたものであり、良好な解像性、並びにその硬化物における良好な電気絶縁特性及び強度を示すポジ型感光性樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、フェノール性水酸基を有するアルカリ可溶性樹脂及びキノンジアジド基を有する化合物を含むポジ型感光性樹脂組成物に対して、特定構造の構成単位を有するアクリル樹脂を添加すると、その組成物が良好な解像性を示し、かつその組成物から作製される硬化物が良好な電気絶縁特性及び強度を示すことを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
本発明は、(A)フェノール性水酸基を有するアルカリ可溶性樹脂、(B)キノンジアジド基を有する化合物、(C)分子中に少なくとも2つのアルキルエーテル化されたアミノ基を有する化合物、(D)下記一般式(1)で表される構成単位(d1)及び不飽和カルボン酸から誘導される構成単位(d2)を含み、質量平均分子量が2万〜50万であるアクリル樹脂、及び(S)溶剤を含有するポジ型感光性樹脂組成物である。
【化1】

(上記一般式(1)中、Rは水素原子又はアルキル基を表し、Rは独立に炭化水素基を表し、pは0〜3を表す。)
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、良好な解像性、並びにその硬化物における良好な電気絶縁特性及び強度を示すポジ型感光性樹脂組成物が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明のポジ型感光性樹脂組成物の一実施形態について説明する。
本実施形態に係るポジ型感光性樹脂組成物は、(A)フェノール性水酸基を有するアルカリ可溶性樹脂、(B)キノンジアジド基を有する化合物、(C)分子中に少なくとも2つのアルキルエーテル化されたアミノ基を有する化合物、(D)特定構造の構成単位を有し、質量平均分子量が2万〜50万であるアクリル樹脂、及び(S)溶剤を含む。以下、本発明に係るポジ型感光性樹脂組成物に含まれる各成分について詳細に説明する。
【0011】
[(A)フェノール性水酸基を有するアルカリ可溶性樹脂]
フェノール性水酸基を有するアルカリ可溶性樹脂(以下、「(A)成分」とも呼ぶ。)としては、特に限定されないが、ノボラック樹脂が好ましい。このようなノボラック樹脂は、フェノール類とアルデヒド類とを酸触媒の存在下で付加縮合させることにより得ることができる。
【0012】
上記フェノール類としては、例えば、フェノール;o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール等のクレゾール類;2,3−キシレノール、2,4−キシレノール、2,5−キシレノール、2,6−キシレノール、3,4−キシレノール、3,5−キシレノール等のキシレノール類;o−エチルフェノール、m−エチルフェノール、p−エチルフェノール、2−イソプロピルフェノール、3−イソプロピルフェノール、4−イソプロピルフェノール、o−ブチルフェノール、m−ブチルフェノール、p−ブチルフェノール、p−tert−ブチルフェノール等のアルキルフェノール類;2,3,5−トリメチルフェノール、3,4,5−トリメチルフェノール等のトリアルキルフェノール類;レゾルシノール、カテコール、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、ピロガロール、フロログリシノール等の多価フェノール類;アルキルレゾルシン、アルキルカテコール、アルキルハイドロキノン等のアルキル多価フェノール類(いずれのアルキル基も炭素数1〜4である);α−ナフトール、β−ナフトール、ヒドロキシジフェニル、ビスフェノールA等が挙げられる。これらのフェノール類は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらのフェノール類の中でも、m−クレゾール、p−クレゾールが好ましく、m−クレゾールとp−クレゾールとを併用することがより好ましい。この場合、両者の配合割合を調整することにより、感度、耐熱性等の諸特性を調整することができる。
【0013】
上記アルデヒド類としては、例えば、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、フルフラール、ベンズアルデヒド、ニトロベンズアルデヒド、アセトアルデヒド等が挙げられる。これらのアルデヒド類は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0014】
上記酸触媒としては、例えば、塩酸、硫酸、リン酸、亜リン酸等の無機酸類;蟻酸、シュウ酸、酢酸、ジエチル硫酸、パラトルエンスルホン酸等の有機酸類;酢酸亜鉛等の金属塩類等が挙げられる。これらの酸触媒は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0015】
このようにして得られるノボラック樹脂としては、具体的には、フェノール/ホルムアルデヒド縮合ノボラック樹脂、クレゾール/ホルムアルデヒド縮合ノボラック樹脂、フェノール−ナフトール/ホルムアルデヒド縮合ノボラック樹脂等が挙げられる。
【0016】
また、ノボラック樹脂以外のフェノール性水酸基を有するアルカリ可溶性樹脂としては、ポリヒドロキシスチレン及びその共重合体、フェノール−キシリレングリコール縮合樹脂、クレゾール−キシリレングリコール縮合樹脂、フェノール−ジシクロペンタジエン縮合樹脂等が挙げられる。
【0017】
これらの樹脂の質量平均分子量は、解像性、得られる硬化物の耐熱衝撃性、耐熱性等の観点から、1000〜50000であることが好ましい。
【0018】
(A)成分の含有量は、ポジ型感光性樹脂組成物の固形分に対して45〜90質量%であることが好ましく、50〜80質量%であることがより好ましい。(A)成分の含有量を上記範囲とすることにより、ポジ型感光性樹脂組成物の現像性を良好なものとすることができる。
また、(A)成分の含有量は、(A)成分と後述する(D)成分との合計を100質量部とした場合、70〜90質量部であることが好ましく、80〜88質量部であることが好ましい。上記範囲内であると、薬液耐性、解像力に優れるので好ましい。
【0019】
[(B)キノンジアジド基を有する化合物]
キノンジアジド基を有する化合物(以下、「(B)成分」とも呼ぶ。)としては、特に限定されないが、フェノール性水酸基を1つ以上有する化合物と、キノンジアジド基含有スルホン酸との完全エステル化物や部分エステル化物が好ましい。このようなキノンジアジド基を有する化合物は、フェノール性水酸基を1つ以上有する化合物とキノンジアジド基を有するスルホン酸とを、ジオキサン等の適当な溶剤中において、トリエタノールアミン、炭酸塩、炭酸水素塩等のアルカリ化合物の存在下で縮合させ、完全エステル化又は部分エステル化することにより得ることができる。
【0020】
上記フェノール性水酸基を1つ以上有する化合物としては、例えば、2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン等のポリヒドロキシベンゾフェノン類;
トリス(4−ヒドロシキフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)−2−ヒドロキシフェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシ−2,3,5−トリメチルフェニル)−2−ヒドロキシフェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)−4−ヒドロキシフェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)−3−ヒドロキシフェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)−2−ヒドロキシフェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシ−2,5−ジメチルフェニル)−4−ヒドロキシフェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシ−2,5−ジメチルフェニル)−3−ヒドロキシフェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシ−2,5−ジメチルフェニル)−2−ヒドロキシフェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)−3,4−ジヒドロキシフェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシ−2,5−ジメチルフェニル)−3,4−ジヒドロキシフェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシ−2,5−ジメチルフェニル)−2,4−ジヒドロキシフェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−メトキシ−4−ヒドロキシフェニルメタン、ビス(5−シクロヘキシル−4−ヒドロキシ−2−メチルフェニル)−4−ヒドロキシフェニルメタン、ビス(5−シクロヘキシル−4−ヒドロキシ−2−メチルフェニル)−3−ヒドロキシフェニルメタン、ビス(5−シクロヘキシル−4−ヒドロキシ−2−メチルフェニル)−2−ヒドロキシフェニルメタン、ビス(5−シクロヘキシル−4−ヒドロキシ−2−メチルフェニル)−3,4−ジヒドロキシフェニルメタン等のトリスフェノール型化合物;
2,4−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシベンジル)−5−ヒドロキシフェノール、2,6−ビス(2,5−ジメチル−4−ヒドロキシベンジル)−4−メチルフェノール等のリニア型3核体フェノール化合物;
1,1−ビス〔3−(2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−ヒドロキシ−5−シクロヘキシルフェニル〕イソプロパン、ビス[2,5−ジメチル−3−(4−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−ヒドロキシフェニル]メタン、ビス[2,5−ジメチル−3−(4−ヒドロキシベンジル)−4−ヒドロキシフェニル]メタン、ビス[3−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシベンジル)−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル]メタン、ビス[3−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシベンジル)−4−ヒドロキシ−5−エチルフェニル]メタン、ビス[3−(3,5−ジエチル−4−ヒドロキシベンジル)−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル]メタン、ビス[3−(3,5−ジエチル−4−ヒドロキシベンジル)−4−ヒドロキシ−5−エチルフェニル]メタン、ビス[2−ヒドロキシ−3−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシベンジル)−5−メチルフェニル]メタン、ビス[2−ヒドロキシ−3−(2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−5−メチルフェニル]メタン、ビス[4−ヒドロキシ−3−(2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−5−メチルフェニル]メタン、ビス[2,5−ジメチル−3−(2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−ヒドロキシフェニル]メタン等のリニア型4核体フェノール化合物;
2,4−ビス[2−ヒドロキシ−3−(4−ヒドロキシベンジル)−5−メチルベンジル]−6−シクロヘキシルフェノール、2,4−ビス[4−ヒドロキシ−3−(4−ヒドロキシベンジル)−5−メチルベンジル]−6−シクロヘキシルフェノール、2,6−ビス[2,5−ジメチル−3−(2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−ヒドロキシベンジル]−4−メチルフェノール等のリニア型5核体フェノール化合物;
ビス(2,3,4−トリヒドロキシフェニル)メタン、ビス(2,4−ジヒドロキシフェニル)メタン、2,3,4−トリヒドロキシフェニル−4’−ヒドロキシフェニルメタン、2−(2,3,4−トリヒドロキシフェニル)−2−(2’,3’,4’−トリヒドロキシフェニル)プロパン、2−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−2−(2’,4’−ジヒドロキシフェニル)プロパン、2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−(4’−ヒドロキシフェニル)プロパン、2−(3−フルオロ−4−ヒドロキシフェニル)−2−(3’−フルオロ−4’−ヒドロキシフェニル)プロパン、2−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−2−(4’−ヒドロキシフェニル)プロパン、2−(2,3,4−トリヒドロキシフェニル)−2−(4’−ヒドロキシフェニル)プロパン、2−(2,3,4−トリヒドロキシフェニル)−2−(4’−ヒドロキシ−3’,5’−ジメチルフェニル)プロパン、4,4’−[1−[4−[1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル]フェニル]エチリデン]ビスフェノール等のビスフェノール型化合物;
1−[1−(4−ヒドロキシフェニル)イソプロピル]−4−[1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エチル]ベンゼン、1−[1−(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)イソプロピル]−4−[1,1−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)エチル]ベンゼン等の多核枝分かれ型化合物;
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン等の縮合型フェノール化合物;等が挙げられる。
これらの化合物は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0021】
上記キノンジアジド基含有スルホン酸としては、ナフトキノン−1,2−ジアジド−5−スルホン酸、ナフトキノン−1,2−ジアジド−4−スルホン酸、オルトアントラキノンジアジドスルホン酸等が挙げられる。
【0022】
(B)成分の含有量は、(A)成分100質量部に対し、5〜50質量部であることが好ましく、5〜25質量部であることがより好ましい。(B)成分の含有量を上記範囲とすることにより、ポジ型感光性樹脂組成物の感度を良好なものとすることができる。
【0023】
[(C)分子中に少なくとも2つのアルキルエーテル化されたアミノ基を有する化合物]
分子中に少なくとも2つのアルキルエーテル化されたアミノ基を有する化合物(以下、「(C)成分」とも呼ぶ。)は、ポジ型感光性樹脂組成物の現像後の加熱処理時に、上記(A)成分と反応する架橋剤として作用するものである。この化合物としては、(ポリ)メチロール化メラミン、(ポリ)メチロール化グリコールウリル、(ポリ)メチロール化ベンゾグアナミン、(ポリ)メチロール化ウレア等の活性メチロール基の全部又は一部をアルキルエーテル化した含窒素化合物が挙げられる。アルキル基としては、メチル基、エチル基、ブチル基、又はこれらを組み合わせたものが挙げられ、一部自己縮合してなるオリゴマー成分を含んでもよい。具体的には、ヘキサメトキシメチル化メラミン、ヘキサブトキシメチル化メラミン、テトラメトキシメチル化グリコールウリル、テトラブトキシメチル化グリコールウリル等が挙げられる。これらの化合物は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0024】
(C)成分の含有量は、(A)成分100質量部に対し、5〜60質量部であることが好ましく、10〜50質量部であることがより好ましい。(C)成分の含有量を上記範囲とすることにより、ポジ型感光性樹脂組成物の硬化性及び解像度(パターニング特性)、並びに硬化物の電気絶縁性及び耐熱性を良好なものとすることができる。
【0025】
[(D)アクリル樹脂]
アクリル樹脂(以下、「(D)成分」とも呼ぶ。)は、下記一般式(1)で示される構成単位(d1)及び不飽和カルボン酸から誘導される構成単位(d2)を含む。(D)成分に含まれる構成単位(d1)は、ポジ型感光性樹脂組成物に良好な解像性を付与し、その硬化物の強度(破断伸度)及び電気絶縁特性(誘電率)を向上させる。つまり、本発明は、ポジ型感光性組成物に構成単位(d1)を含むアクリル樹脂を添加することにより、ポジ型感光性組成物又はその硬化物における解像性、強度及び誘電率をバランス良く改善することができるとの知見に基づいてなされたものである。また、(D)成分に含まれる構成単位(d2)は、ポジ型感光性樹脂組成物に良好な現像性を付与する。
【0026】
【化2】

【0027】
上記一般式(1)中、Rは、水素原子又はアルキル基であり、好ましくは水素原子又はメチル基である。また、上記一般式(1)中、Rは、炭化水素基であり、好ましくは鎖状の脂肪族炭化水素基であり、より好ましくは炭素数が1〜5のアルキル基であり、さらに好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基又はブチル基であり、特に好ましくはエチル基である。pは0〜3であり、好ましくは0〜2である。pが2又は3のときRはそれぞれ異なっていてもよい。
【0028】
上記一般式(1)で表される構成単位(d1)として、好ましい例を以下に示す。なお、以下の例において、Rは、上記式(1)におけるものと同様である。
【化3】

【0029】
また、上記構成単位(d1)は、下記一般式(2)で表される構成単位であることが好ましい。
【0030】
【化4】

(上記一般式(2)中、R及びRは、上記一般式(1)におけるものと同様である。)
【0031】
構成単位(d2)は、不飽和カルボン酸から誘導される。(D)成分がこのような構成単位(d2)を含むことにより、(D)成分にアルカリ可溶性が付与され、ポジ型感光性樹脂組成物に良好な現像性が付与される。なお、(D)成分は、上記のようにアルカリ可溶性を付与された樹脂であるが、既に説明した(A)成分に該当するものでない。
【0032】
(D)成分を得るには、特に限定されないが、構成単位(d1)を導入するためのモノマー成分と、構成単位(d2)を導入するためのモノマー成分と、必要に応じてその他のモノマー成分とを、常法に従って共重合させる方法が挙げられる。このような共重合の方法として、ラジカル重合法が挙げられる。
【0033】
構成単位(d1)を導入するためのモノマー成分としては、(メタ)アクリル酸の置換又は非置換ヘキシルエステルが挙げられる。このような化合物としては、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、1−メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、3−メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、4−メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、1−エチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、3−エチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、4−エチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、1−プロピルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−プロピルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、3−プロピルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、4−プロピルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、1−イソプロピルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、1,4−ジメチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、1−エチル−4−メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、4−tert−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、3,4−ジメチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、2,4−ジメチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート等が例示される。これらのモノマー成分は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
なお、本明細書において、「(メタ)アクリル」又は「(メタ)アクリレート」という用語は、それぞれ「アクリルもしくはメタクリル」又は「アクリレートもしくはメタクリレート」という意味で使用される。
【0034】
構成単位(d2)を導入するためのモノマー成分としては、エチレン性不飽和結合及びカルボキシル基を有する化合物が挙げられる。このような化合物としては、(メタ)アクリル酸、ビニル安息香酸、ビニル酢酸、α−ブロモ(メタ)アクリル酸、β−フリル(メタ)アクリル酸、クロトン酸、プロピオール酸、ケイ皮酸、α−シアノケイ皮酸、マレイン酸、無水マレイン酸、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、マレイン酸モノイソプロピル、フマル酸、イタコン酸、無水イタコン酸、シトラコン酸、無水シトラコン酸等が例示される。これらのモノマー成分は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0035】
その他のモノマー成分としては、エチレン性の不飽和結合を有する化合物が挙げられる。このような化合物としては、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル等のビニル化合物;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、i−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、sec−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、エチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールモノ(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3−トリフルオロプロピル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、アダマンチルメタクリレート等の(メタ)アクリルエステル化合物等が挙げられる。これらのモノマー成分は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
なお、本発明においては、(D)成分は、スチレン、2−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリプロピレンモノ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート、2−アクリロイロキシエチルフタレート、2−アクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシエチルフタレート、2−メタクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシプロピルフタレート等の芳香族系化合物をモノマーとして含まないことが好ましい。
(D)成分が、構成単位(d1)、構成単位(d2)、及び上記例示のその他のモノマー成分(ビニル化合物、(メタ)アクリルエステル化合物)から誘導される構成単位を含むことにより、ポジ型感光性樹脂組成物の硬化物の電気絶縁特性(誘電率)が良好になるため好ましい。
【0036】
(D)成分における構成単位(d1)と構成単位(d2)との比率は、モル比で、15/1〜4/1が好ましく、10/1〜4/1がより好ましい。また、(D)成分において構成単位(d1)と構成単位(d2)との合計が占める比率は、モル比で、30%以上が好ましく、40%以上がより好ましい。モル比の上限は100%であってもよく、好ましくは85%以下であり、より好ましくは70%以下である。なお、(D)成分において構成単位(d1)と構成単位(d2)との合計が占める比率とは、構成単位(d1)を導入するためのモノマー成分と、構成単位(d2)を導入するためのモノマー成分と、必要に応じて使用されるその他のモノマー成分との総量に対する、構成単位(d1)を導入するためのモノマー成分と構成単位(d2)を導入するためのモノマー成分との合計の比に相当する。
【0037】
(D)成分の質量平均分子量は、2万〜50万である。(D)成分の質量平均分子量がこの数値の範囲であることにより、ポジ型感光性樹脂組成物の硬化物の強度(破断伸度)及び電気絶縁特性(誘電率)を良好なものとすることができる他、ポジ型感光性樹脂組成物の解像度(パターニング特性)も良好なものとすることができる。(D)成分の質量平均分子量は、5万〜35万が好ましく、8万〜25万がより好ましい。
【0038】
(D)成分のガラス転移温度(Tg)は、−60〜25℃であることが好ましい。(D)成分のガラス転移温度がこの数値の範囲であることにより、ポジ型感光性樹脂組成物の硬化物の破断伸度(強度)を良好なものとすることができる。ところで、上記のTgの範囲は、一般の樹脂に比較してかなり低い数値である。本発明の(D)成分がこのように低いTgを示す理由は、(D)成分が上記構成単位(d1)を含むためと推察される。
【0039】
(D)成分の含有量は、(A)成分100質量部に対し、10〜30質量部であることが好ましく、12〜20質量部であることがより好ましい。(D)成分の含有量を上記範囲とすることにより、ポジ型感光性樹脂組成物の硬化物の強度(破断伸度)及び電気絶縁特性(誘電率)を良好なものとすることができる他、ポジ型感光性組成物の解像度(パターニング特性)も良好なものとすることができる。
また、(D)成分の含有量は、(A)成分と(D)成分との合計を100質量部とした場合、10〜30質量部であることが好ましく、12〜20質量部であることが好ましい。上記範囲内であると、本発明の効果に優れ、さらに薬液耐性、解像力に優れるので好ましい。
【0040】
(D)成分を作製するにあたり、上記のように、構成単位(d1)となるモノマーと構成単位(d2)となるモノマーとを使用して共重合体とする方法の他に、例えば、構成単位(d2)を含む重合体に対して、1−エチル−1−シクロヘキサノール等のアルコールを反応させて、当該重合体の構成単位(d2)の一部を構成単位(d1)に変換する方法を採用してもよい。また、それとは逆に、構成単位(d1)を含む重合体に対して、加水分解により、当該重合体の構成単位(d1)の一部を構成単位(d2)に変換する方法を採用してもよい。
【0041】
[(S)溶剤]
溶剤(以下、「(S)成分」とも呼ぶ。)としては、特に限定されず、本分野で汎用されている溶剤を用いることができる。例えば、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のエチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル等のプロピレングリコールモノアルキルエーテル類;プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールジプロピルエーテル、プロピレングリコールジブチルエーテル等のプロピレングリコールジアルキルエーテル類;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート等のプロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ等のセロソルブ類;ブチルカルビトール等のカルビトール類;乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸n−プロピル、乳酸イソプロピル等の乳酸エステル類;酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸n−アミル、酢酸イソアミル、プロピオン酸イソプロピル、プロピオン酸n−ブチル、プロピオン酸イソブチル等の脂肪族カルボン酸エステル類;3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル等の他のエステル類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;2−ヘプタノン、3−ヘプタノン、4−ヘプタノン、シクロヘキサノン等のケトン類;N−ジメチルホルムアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド類;γ−ブチロラクトン等のラクトン類等が挙げられる。これらの溶剤は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0042】
(S)成分の含有量は、特に限定されないが、一般には、ポジ型感光性樹脂組成物の固形分濃度が10〜60質量%となる量が好ましく、20〜50質量%となる量がより好ましい。
【0043】
[(E)含窒素塩基性化合物]
本実施形態に係るポジ型感光性樹脂組成物は、さらに(E)含窒素塩基性化合物(以下、「(E)成分」とも呼ぶ。)を含むことが好ましい。(E)成分は、現像後の感光性樹脂組成物を加熱して熱硬化処理する際に、(A)成分が(C)成分によって架橋されるのを触媒する。これにより、熱硬化処理の際の加熱温度を低くすることができ、また、得られた硬化物は、高温で熱硬化させた硬化物と同等の破断伸度が得られ、かつ耐薬品性も向上させることができる。特に限定されないが、具体的には、ポジ型感光性樹脂組成物への(E)成分の添加によって、ポジ型感光性樹脂組成物の熱硬化処理の加熱温度を180℃以下の程度にまで低下させることが可能になる。前記熱硬化処理の加熱温度を低下させることで、誘電率と限界解像力が向上するので好ましい。
【0044】
(E)成分は、塩基性の窒素原子を含む化合物である。(E)成分としては、含窒素有機化合物が挙げられ、特に限定されないが、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、アニリン、2−メチルアニリン、3−メチルアニリン、4−メチルアニリン、4−ニトロアニリン、エチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジブチルアミン、ジペンチルアミン、ジヘキシルアミン、ジヘプチルアミン、ジオクチルアミン、ジノニルアミン、ジデシルアミン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリペンチルアミン、トリヘキシルアミン、トリヘプチルアミン、トリオクチルアミン、トリノニルアミン、トリデシルアミン、メチルジブチルアミン、メチルジペンチルアミン、メチルジヘキシルアミン、メチルジシクロヘキシルアミン、メチルジヘプチルアミン、メチルジオクチルアミン、メチルジノニルアミン、メチルジデシルアミン、エチルジブチルアミン、エチルジペンチルアミン、エチルジヘキシルアミン、エチルジヘプチルアミン、エチルジオクチルアミン、エチルジノニルアミン、エチルジデシルアミン、ジシクロヘキシルメチルアミン、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン等の脂肪族アミン化合物;アニリン、N−メチルアニリン、ジフェニルアミン、N,N−ジメチルアニリン、2,6−イソプロピルアニリン等の芳香族アミン化合物;ピペリジン、イミダゾール、ピペリジン、ピリジン、4−メチルピリジン、2−ヒドロキシメチルピリジン、2−(2−ヒドロキシエチル)ピリジン、2−(3−ヒドロキシプロピル)ピリジン、4−メチルイミダゾール、ビピリジン等の窒素をヘテロ原子とするヘテロ環化合物等が挙げられる。これらの中でも、ポジ型感光性樹脂組成物の保存安定性を考慮すると、窒素をヘテロ原子とするヘテロ環化合物が好ましく、2−ヒドロキシメチルピリジン、2−(2−ヒドロキシエチル)ピリジン又は2−(3−ヒドロキシプロピル)ピリジンがより好ましい。これらの含窒素有機化合物は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0045】
(E)成分の含有量は、(A)成分100質量部に対し、0.1〜10質量部であることが好ましく、0.1〜5質量部であることがより好ましい。(E)成分の含有量を上記範囲とすることにより、ポジ型感光性樹脂組成物の熱硬化処理における加熱温度を良好に低下させることができ、かつポジ型感光性樹脂組成物の保存安定性を良好とすることができる。
【0046】
[その他の成分]
本実施形態のポジ型感光性樹脂組成物は、所望により、その他のモノマー、付加的樹脂、酸発生剤、可塑剤、安定剤、着色剤、界面活性剤等を含有していてもよい。
例えば、ポジ型感光性樹脂組成物に(メタ)アクリルモノマーを添加することにより、熱硬化後の硬化物における残留応力が低減され、硬化物のクラックの発生を抑制できたり、ウェーハ等の基板を薄化させた場合における基板及び硬化物の反り曲がりを抑制できたりするので好ましい。
また、ポジ型感光性樹脂組成物にエポキシ樹脂を添加することによっても、熱硬化後の硬化物における残留応力が低減されるため、(メタ)アクリルモノマーを添加した場合と同様の効果が得られるので好ましい。その他、さらに耐熱性の向上、耐薬品性の向上の効果も得られるので好ましい。
【0047】
次に、本実施形態のポジ型感光性樹脂組成物を硬化させた硬化物について説明する。この硬化物は、永久絶縁膜として使用することが可能であり、例えば、半導体素子の層間絶縁膜や表面保護膜等として好適に使用することができる。
【0048】
このような硬化物を形成するには、まず、シリコンウェーハ等の基板に本実施形態のポジ型感光性樹脂組成物を塗布し、乾燥して塗膜を形成させる。塗布方法としては、例えば、ディッピング法、スプレー法、バーコート法、ロールコート法、スピンコート法、カーテンコート法等が挙げられる。塗膜の厚さは、塗布方法、ポジ型感光性樹脂組成物の固形分濃度や粘度を調節することにより、適宜制御することができる。
【0049】
次いで、所望のマスクパターンを介して塗膜を露光する。露光に用いられる放射線としては、例えば、低圧水銀灯、高圧水銀灯、メタルハライドランプ、g線ステッパー、i線ステッパー等から放射される紫外線、電子線、レーザー光線等が挙げられる。露光量としては、使用する光源や塗膜の膜厚等によっても異なるが、膜厚10μmにおいて500〜1500mJ/cm程度である。
【0050】
次いで、塗膜をアルカリ現像液により現像し、露光部を溶解、除去することにより、所望の樹脂パターンを得る。現像方法としては、例えば、シャワー現像法、スプレー現像法、浸漬現像法、パドル現像法等が挙げられる。アルカリ現像液としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア水、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、コリン等のアルカリ性化合物を、濃度が1〜10質量%程度になるように水に溶解したアルカリ性水溶液が挙げられる。
【0051】
その後、得られた樹脂パターンを加熱(熱硬化処理)することにより、硬化膜を得ることができる。加熱条件としては、特に限定されないが、100〜250℃の温度で30分間〜10時間程度である。この際、2段階で加熱してもよい。例えば、第1段階として50〜100℃の温度で10分間〜2時間加熱し、第2段階として100〜250℃の温度で20分間〜3時間加熱するようにしてもよい。なお、既に述べた通り、本実施形態のポジ型感光性組成物に(E)成分が含まれることにより、この加熱温度を従来のポジ型感光性樹脂組成物よりも低くすることができる。例えば、本実施形態のポジ型感光性樹脂組成物を使用する場合、上記加熱条件は、100〜200℃程度でもよく、2段階加熱の場合には、第1段階として50〜100℃、第2段階として100〜200℃程度でもよい。加熱条件は、作製される硬化物の状態を観察し、適宜設定すればよい。
【実施例】
【0052】
以下、実施例を示すことにより本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲は、以下の実施例に何ら限定されるものではない。
【0053】
[実施例1〜14、比較例1〜11]
表1〜3に記載の処方(単位は質量部)に従って、フェノール性水酸基を有するアルカリ可溶性樹脂、キノンジアジド基を有する化合物、架橋剤、アクリル樹脂、含窒素塩基性化合物、溶剤、アクリルモノマー及びエポキシ樹脂を混合して、実施例1〜14及び比較例1〜11のポジ型感光性樹脂組成物を調製した。なお、表1〜3において、配合量が空欄となっている成分については、ポジ型感光性樹脂組成物の調製の際に配合されていないことを意味する。また、表1〜3では、簡略化のため、フェノール性水酸基を有するアルカリ可溶性樹脂を「フェノール樹脂」と、キノンジアジド基を有する化合物を「キノンジアジド化合物」と、含窒素塩基性化合物を「塩基性化合物」とそれぞれ表記した。表1〜3における各成分の詳細は、下記の通りである。
【0054】
フェノール樹脂A:m−クレゾールにホルマリンを加えて常法により付加縮合して得たクレゾールノボラック樹脂(質量平均分子量8000)
フェノール樹脂B:m−クレゾールとp−クレゾールとをm−クレゾール/p−クレゾール=60/40(質量比)で混合し、ホルマリンを加えて常法により付加縮合して得たクレゾールノボラック樹脂(質量平均分子量20000)
【0055】
キノンジアジド化合物A:ビス(5−シクロヘキシル−4−ヒドロキシ−2−メチルフェニル)−3,4−ジヒドロキシフェニルメタンの全水酸基の2.0モル%の水素原子を、1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホニル基で置換した化合物
キノンジアジド化合物B:4,4’−[1−[4−[1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル]フェニル]エチリデン]ビスフェノールの全水酸基の2.2モル%の水素原子を、1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホニル基で置換した化合物
【0056】
架橋剤:2,4,6−トリス[ビス(メトキシメチルアミノ)]−1,3,5−トリアジン(株式会社三和ケミカル製、Mw−100LM)
【0057】
アクリル樹脂A:1−エチルシクロヘキシルアクリレート/2−メトキシエチルアクリレート/n−ブチルアクリレート/アクリル酸=44.1/36.8/12.3/6.8の比率で混合したモノマーを、常法によりラジカル重合して得たアクリル樹脂(質量平均分子量100000、Tg=−14.2℃)
アクリル樹脂B:1−エチルシクロヘキシルアクリレート/2−メトキシエチルアクリレート/n−ブチルアクリレート/アクリル酸=44.1/36.8/12.3/6.8の比率で混合したモノマーを、常法によりラジカル重合して得たアクリル樹脂(質量平均分子量220000、Tg=−14.2℃)
アクリル樹脂C:1−エチルシクロヘキシルアクリレート/2−メトキシエチルアクリレート/メタクリル酸=43.5/48.3/8.2の比率で混合したモノマーを、常法によりラジカル重合して得たアクリル樹脂(質量平均分子量200000、Tg=−11.4℃)
【0058】
アクリル樹脂D:1−エチルシクロヘキシルアクリレート/2−メトキシエチルアクリレート/メトキシトリエチレングリコールアクリレート/アクリル酸=44.1/36.8/12.3/6.8の比率で混合したモノマーを、常法によりラジカル重合して得たアクリル樹脂(質量平均分子量220000、Tg=−14.4℃)
アクリル樹脂E:2−エチルシクロヘキシルアクリレート/2−メトキシエチルアクリレート/n−ブチルアクリレート/アクリル酸=44.1/36.8/12.3/6.8の比率で混合したモノマーを、常法によりラジカル重合して得たアクリル樹脂(質量平均分子量220000、Tg=−14.2℃)
アクリル樹脂F:1−エチルシクロヘキシルアクリレート/2−メトキシエチルアクリレート/n−ブチルアクリレート/アクリル酸=44.1/36.8/12.3/6.8の比率で混合したモノマーを、常法によりラジカル重合して得たアクリル樹脂(質量平均分子量20000、Tg=−14.2℃)
【0059】
アクリル樹脂G:1−エチルシクロヘキシルアクリレート/2−メトキシエチルアクリレート/メトキシトリエチレングリコールアクリレート/アクリル酸=44.1/36.8/12.3/6.8の比率で混合したモノマーを、常法によりラジカル重合して得たアクリル樹脂(質量平均分子量8000、Tg=−14.4℃)
アクリル樹脂H:スチレン/2−メトキシエチルアクリレート/メトキシトリエチレングリコールアクリレート/アクリル酸=44.1/36.8/12.3/6.8の比率で混合したモノマーを、常法によりラジカル重合して得たアクリル樹脂(質量平均分子量220000、Tg=6.6℃)
アクリル樹脂I:ベンジルメタクリレート/2−メトキシエチルアクリレート/メトキシトリエチレングリコールアクリレート/アクリル酸=44.1/36.8/12.3/6.8の比率で混合したモノマーを、常法によりラジカル重合して得たアクリル樹脂(質量平均分子量220000、Tg=−5.8℃)
【0060】
アクリル樹脂J:ジシクロペンタニルメタクリレート/2−ヒドロキシエチルメタクリレート/2−メトキシエチルアクリレート/n−ブチルアクリレート/メタクリル酸=65/7/4/4/20の比率で混合したモノマーを、常法によりラジカル重合して得たアクリル樹脂(質量平均分子量20000、Tg=129.8℃)
アクリル樹脂K:アダマンチルメタクリレート/2−ヒドロキシエチルメタクリレート/2−メトキシエチルアクリレート/n−ブチルアクリレート/メタクリル酸=65/7/4/4/20の比率で混合したモノマーを、常法によりラジカル重合して得たアクリル樹脂(質量平均分子量30000、Tg=135℃)
アクリル樹脂L:1−エチルシクロヘキシルアクリレート/2−メトキシエチルアクリレート/n−ブチルアクリレート=44.1/36.8/19.1の比率で混合したモノマーを、常法によりラジカル重合して得たアクリル樹脂(質量平均分子量220000、Tg=−22.0℃)
【0061】
塩基性化合物A:2−ヒドロキシメチルピリジン
塩基性化合物B:2−(2−ヒドロキシエチル)ピリジン
塩基性化合物C:2−(3−ヒドロキシプロピル)ピリジン
【0062】
アクリルモノマーA:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(日本化薬株式会社製、DPHA)
アクリルモノマーB:ペンタエリスリトールテトラアクリレート(東亞合成株式会社製、アロニックスM−450)
アクリルモノマーC:エチレンオキシド変性トリメチロールプロパントリアクリレート(東亞合成株式会社製、アロニックスM−350)
エポキシ樹脂:4官能環式エポキシ樹脂(ダイセル化学工業株式会社製、エポリードGT−401)
溶剤:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
【0063】
[硬化物の強度の評価]
硬化物の強度の評価として、硬化物の破断伸度を測定した。
実施例1〜14及び比較例1〜11のポジ型感光性樹脂組成物のそれぞれについて、ポジ型感光性樹脂組成物を6インチのシリコンウェーハの表面にスピンコートにより塗布し、120℃で3分間乾燥させて膜厚25μmの塗膜を得た。次に、この塗膜を180℃で2時間加熱して、膜厚20μmの硬化物を得た。得られた硬化物を8mm×5cmの大きさに切り出して短冊状のサンプルを得た。このサンプルの破断伸度(%)を、RTC−1210A TENDILON(ORIENTEC社製)を用いて評価した。具体的には、サンプルが加重により切断するまでサンプルに5mm/分の速度で上向きの加重をかけ、(サンプルが切断したときの長さ−もとのサンプルの長さ)/(もとのサンプルの長さ)×100の式により破断伸度(%)を算出した。その結果を表1〜3に示す。
【0064】
[誘電率の測定]
硬化物の電気絶縁特性の評価として、硬化物の誘電率を測定した。
実施例1〜14及び比較例1〜11のポジ型感光性樹脂組成物のそれぞれについて、ポジ型感光性樹脂組成物を6インチのシリコンウェーハの表面にスピンコートにより塗布し、120℃で3分間乾燥させて膜厚6μmの塗膜を得た。次に、この塗膜を180℃で2時間加熱して、膜厚5μmの硬化物を得た。この硬化物について、誘電率測定装置SSM495 CVSystem(Solid State Measurement社製)を用いて、膜厚方向の真空に対する比誘電率を測定した。その結果を表1〜3に示す。
【0065】
[解像性の評価]
実施例1〜14及び比較例1〜11のポジ型感光性樹脂組成物のそれぞれについて、ポジ型感光性樹脂組成物を6インチのシリコンウェーハの表面にスピンコートにより塗布し、120℃で3分間乾燥させて膜厚6μmの塗膜を得た。この塗膜に対して、Ultratech社製、Prisma ghi stepper装置を使用して、1〜20μmまで、1μm刻みのサイズの円型パターンが混在するテストパターンが記録されたフォトマスクを通して1000mJ/cmの露光を行った。露光後の塗膜を現像液(東京応化工業株式会社製、NMD−3)により現像して樹脂パターンを形成させ、さらに得られた樹脂パターンを180℃で2時間(ただし、実施例12は200℃で2時間)加熱して硬化物を得た。得られた硬化物の断面をSEMで観察し、限界解像力(単位μm)を評価した。その結果を表1〜3に示す。
【0066】
【表1】

【0067】
【表2】

【0068】
【表3】

【0069】
表1〜3から理解されるように、上記一般式(1)で表される構成単位(d1)及び不飽和カルボン酸から誘導される構成単位(d2)を含み、質量平均分子量が2万〜50万であるアクリル樹脂(アクリル樹脂A〜アクリル樹脂F)を含む実施例1〜14のポジ型感光性樹脂組成物では、ポジ型感光性樹脂組成物の解像性(限界解像力)、並びにその硬化物の電気絶縁特性(誘電率)及び強度(破断伸度)がバランス良く改善されている。
それに対して、アクリル樹脂が上記一般式(1)で表される構成単位(d1)を含まない比較例7〜10、アクリル樹脂の質量平均分子量が2万未満である比較例6、及びアクリル樹脂が不飽和カルボン酸から誘導される構成単位(d1)を含まない比較例11のポジ型感光性樹脂組成物では、ポジ型感光性樹脂組成物の解像性(限界解像力)、並びにその硬化物の電気絶縁特性(誘電率)及び強度(破断伸度)の全部又は少なくともいずれかの性能が劣る結果であった。
また、実施例9、11及び12を対比することにより、(E)成分を含むことで、ポジ型感光性樹脂組成物の破断伸度を良好に維持したまま、誘電率及び限界解像力を向上させられることが確認できた。すなわち、実施例9のポジ型感光性樹脂組成物から(E)成分を除いた実施例11のポジ型感光性樹脂組成物の硬化物は、実施例9のポジ型感光性樹脂組成物の硬化物よりも破断伸度が小さくなり、これを実施例9のポジ型感光性樹脂組成物の硬化物と同等とするには、熱硬化温度を180℃よりも20℃高い200℃とする必要があることが理解される(実施例12を参照)。しかしながら、この場合には、実施例12として示すように、破断伸度を実施例9におけるものと同等とすることができても、誘電率及び限界解像力が低下してしまい、これらの特性を良好なまま維持することができないことが理解される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)フェノール性水酸基を有するアルカリ可溶性樹脂、(B)キノンジアジド基を有する化合物、(C)分子中に少なくとも2つのアルキルエーテル化されたアミノ基を有する化合物、(D)下記一般式(1)で表される構成単位(d1)及び不飽和カルボン酸から誘導される構成単位(d2)を含み、質量平均分子量が2万〜50万であるアクリル樹脂、及び(S)溶剤を含有するポジ型感光性樹脂組成物。
【化1】

(上記一般式(1)中、Rは水素原子又はアルキル基を表し、Rは独立に炭化水素基を表し、pは0〜3を表す。)
【請求項2】
さらに、(E)含窒素塩基性化合物を含む請求項1記載のポジ型感光性樹脂組成物。
【請求項3】
前記(D)アクリル樹脂が、前記構成単位(d1)として下記一般式(2)で表される構成単位を含む請求項1又は2記載のポジ型感光性樹脂組成物。
【化2】

(上記一般式(2)中、R及びRは、上記一般式(1)と同様である。)

【公開番号】特開2012−8425(P2012−8425A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−145819(P2010−145819)
【出願日】平成22年6月28日(2010.6.28)
【出願人】(000220239)東京応化工業株式会社 (1,407)
【Fターム(参考)】