説明

ポストキュアインフレータ

【課題】加硫成形後に待ち時間を発生させることなく膨張冷却を開始することができると共に、構造を簡素化および部品コストや組み立てコストを低減し、シンプル化でメンテナンスを容易にしてメンテナンスコストも低減する。
【解決手段】 加硫機102から搬出された加硫済みタイヤ1を保持して膨張冷却するものである。冷却処理を行う位置が1ヶ所のみとなるように設置され、加硫済みタイヤ1を保持する加硫済みタイヤ保持機構2と、加硫機102における加硫成形時間内に加硫済みタイヤ1を80℃等の所定温度以下にまで冷却する回転速度で加硫済みタイヤ1を高速回転させる回転駆動機構10とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加硫済みタイヤを膨張冷却する冷却方法およびポストキュアインフレータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来又は現在、タイヤの冷却処理を行う位置が上下に2ヶ所設けられ、タイヤを保持して反転させることで2つの処理位置を移動する、所謂2点式のポストキュアインフレータが提案及び実施されている(特許文献1)。また、近年においては、加硫時間に対応してタイヤの冷却時間を短縮させる必要があることから、タイヤの冷却時間を短縮する各種の構成を備えたポストキュアインフレータが提案および実施されている。例えば特許文献2においては、タイヤのビード部を保持するリム機構の内部に中空経路を形成し、この中空経路に冷却エアーを供給して流動させると共に、タイヤの外面に空気や霧状の水を吹き付けることによって、タイヤを強制的に冷却して短時間で冷却を完了するポストキュアインフレータが提案されている。
【0003】
【特許文献1】特開平11−320564号公報(図2)
【特許文献2】特開2002−307444号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の2点式のポストキュアインフレータは、空気や霧状の水を吹き付けた場合、タイヤ外面全体を均一に冷却することが難しく、タイヤ外周方向において温度ムラ又は冷却ムラを生じさせてしまう。また、水を吹き付けた場合、汚れが付着して外観を損なってしまう等の問題が生じてしまう。さらに、機構が複雑で、設備コストも高く、メンテナンス頻度・費用が嵩むという問題点がある。また、特許文献2の構成では、冷却媒体を送出する駆動源や配管等の機構を装置の周辺に設ける必要があるため、これら周辺機器により装置の大型化や機構の複雑化が生じると共に、周辺機器の導入に伴う部品コストの上昇、さらには、駆動源の運転によるランニングコストの大幅な上昇が生じるという問題がある。
【0005】
本発明の目的は、加硫成形後に待ち時間を発生させることなく加硫済みタイヤをポストキュアインフレータへセットして膨張冷却を開始することができると共に、ポストキュアインフレータの構造を簡単化および部品コストや組み立てコストを低減することができ、設備の信頼性が高まり、メンテナンス頻度・費用を低減することが可能になるポストキュアインフレータを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、生タイヤを加硫成形する加硫機から搬出された加硫済みタイヤを保持して膨張冷却するポストキュアインフレータであって、所定位置に設置され、該加硫済みタイヤを保持する加硫済みタイヤ保持機構と、該加硫機における加硫成形時間内に該加硫済みタイヤを所定温度以下にまで冷却する回転速度で該加硫済みタイヤを高速回転させる回転駆動機構とを有する構成である。
【0007】
上記の構成によれば、加硫機において生タイヤを加硫成形して加硫済みタイヤとするまでの加硫成形の1サイクル期間内に、加硫済みタイヤを確実に冷却することができるため、例えば、1モールド当りの加硫済みタイヤ保持機構を所定位置に1つだけ設置する場合でも、加硫成形後に待ち時間を発生させることなく、加硫済みタイヤを加硫済みタイヤ保持機構にセットして膨張冷却を開始することができる。また、加硫済みタイヤ保持機構を必要最小限の数量にできるため、ポストキュアインフレータの構造を簡単化できると共に、部品コストや組み立てコストを低減することができる。また、設備の信頼性が高まり、チョコ停やメンテナンス頻度・費用を低減することが可能になる。
【0008】
また、本発明のより好ましい態様として、前記回転駆動機構は、前記加硫済みタイヤの外側の空気を自然対流よりも強制対流が支配的となる状態で流動させるように、該加硫済みタイヤを高速回転させる構成である。上記の構成によれば、加硫済みタイヤの高速回転より発生した強制対流によって、加硫済みタイヤを急速に冷却することができることから、加硫済みタイヤ保持機構における冷却時間を加硫機における加硫成形時間内に確実に設定することができる。
【0009】
また、本発明のより好ましい態様として、前記所定温度は、トレッド部に隣接するサイドウォール部、即ち、スチールベルト端(エッジ)からビードワイヤにかけてのサイドウォール部で80℃である構成である。これにより、補強繊維の収縮による加硫済みタイヤの変形を確実に防止することができる。また、本発明のより好ましい態様として、前記回転駆動機構は、前記加硫済みタイヤを100rpm以上の回転数で高速回転させる構成である。この構成によれば、100rpm以上の高速回転により加硫済みタイヤの冷却速度を顕著に増大させることができると共に、加硫済みタイヤを高速回転させるという比較的に簡単な方法により加硫済みタイヤの少なくとも外側に空気流を発生させ、冷却時間および品質を向上させることができる。
【0010】
また、本発明のより好ましい態様として、更に、前記加硫済みタイヤの周囲の空気を攪拌する羽根部材を備えている構成である。上記の構成によれば、加硫済みタイヤの冷却速度を一層増大させることができる。
【0011】
また、本発明のより好ましい態様として、前記羽根部材は、後退翼の形状に設定されている構成である。この構成によれば、加硫済みタイヤの冷却速度を一層増大させることができる。
【0012】
また、本発明のより好ましい態様として、前記加硫済みタイヤ保持機構による加硫済みタイヤの保持から膨張冷却までの処理が同一の位置および姿勢で行われ、前記処理を行う位置が1ヶ所のみ設けられている冷却位置固定タイプのポストキュアインフレータである。この構成によれば、設備をシンプルに構成できるため、機械精度を向上できると共に、加硫済みタイヤの搬送位置決め、保持などの精度も向上でき、結果としてタイヤのユニフォミティ向上等による更なるタイヤ品質の改善を実現することができる。また、設備の信頼性が高まり、チョコ停やメンテナンス頻度・費用を低減することが可能になる。
【発明の効果】
【0013】
加硫成形後に待ち時間を発生させることなく膨張冷却を開始することができると共に、ポストキュアインフレータの構造を簡素化および部品コストや組み立てコストを低減することができ、設備の信頼性が高まり、メンテナンス頻度・費用を低減することが可能になるという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以上のように、本発明のポストキュアインフレータは、生タイヤを加硫成形する加硫機から搬出された加硫済みタイヤを保持して膨張冷却するものであって、所定位置に設置され、該加硫済みタイヤを保持する加硫済みタイヤ保持機構と、該加硫機における加硫成形時間内に該加硫済みタイヤを所定温度以下にまで冷却する回転速度で該加硫済みタイヤを高速回転させる回転駆動機構とを備えている。本発明の更に好ましい実施形態について、以下に説明する。
【0015】
(実施形態1)
本発明の実施形態を図1ないし図16に基づいて以下に説明する。
図3および図4に示すように、本実施形態のポストキュアインフレータ101は、加硫機102の背面側(図中右側)に所定距離を隔てて設けられている。ポストキュアインフレータ101は、タイヤ1を膨張冷却する膨張冷却部103を有している。膨張冷却部103の数量は、加硫機102のモールド数と同数に設定されている。即ち、ポストキュアインフレータ101は、2つの並列配置された膨張冷却部103・103と、両膨張冷却部103・103の下リム機構2・2を同時に昇降させる下リム昇降機構125とを有しており、2つの加硫済タイヤ1・1を加硫機102から同時に受けて同時に膨張冷却できるように構成されている。尚、膨張冷却部103の詳細については後述する。
【0016】
上記のポストキュアインフレータ101に並設された加硫機102は、2つのグリーンタイヤ107(生タイヤ)を同時に加硫成形できる2連式のプレス装置とされている。即ち、加硫機102は、各グリーンタイヤ107を加硫成形するための2つのモールド110・110(金型)と、プレス前方からグリーンタイヤ107を各モールド110に搬入する2つの搬入ローダ111・111と、各モールド110から加硫済みタイヤ1を搬出してポストキュアインフレータ101に搬送する2つの旋回ローダ104・104とを備えている。尚、加硫機102は、単数のモールド110や2以上の複数のモールド110を備えていても良く、これらの各場合におけるポストキュアインフレータ101は、加硫機102のモールド数に対応して単数や複数の膨張冷却部103を備えることになる。
【0017】
上記の各モールド110は、上下に開閉自在にされた上モールド部110Aと下モールド部110Bとを備えている。上モールド部110Aは、昇降シリンダにより加硫機フレーム112下部に固定された下モールド部110Bに対して昇降される。また、各搬入ローダ111は、加硫機フレーム112の前面側(図中左側)中央位置に立設されたガイド支柱112Bに昇降および旋回自在に設けられ、旋回アーム111Aの先端のタイヤチャック111Bでグリーンタイヤ107の上ビード部を把持して各モールド部110A・110B間に旋回搬送するようになっている。
【0018】
また、各旋回ローダ104は、加硫フレーム112の後方センタフレーム112Aに設けられている。各旋回ローダ104の旋回中心軸は、後方センタフレーム112Aに沿って設けられたガイドレール133を昇降するガイド台134(支持部)に旋回自在に設けられており、旋回アーム104Aとタイヤチャック104Bとを備えている。旋回アーム104Aは、ガイド台134に旋回自在に軸支されており、図示しない複数の流体圧シリンダによりタイヤチャック104Bを加硫機102とポストキュアインフレータ101との間で旋回させる。タイヤチャック104Bは、放射方向に一斉に拡径または縮径する3枚以上の爪104aを周方向に等間隔で配置して構成され、加硫済みタイヤ1内または冷却済タイヤ1’内に縮径状態で各爪104aを差し込んで拡径することで、上ビード部を把持し、再び各爪104aを縮径することで各タイヤ1・1’を開放する機構とされている。
【0019】
上記の各旋回アーム104Aの旋回軌跡a中には、放出コンベア105が配置されている。放出コンベア105は、複数のローラからなるローラコンベアであって、旋回ローダ104の下方に位置し、且つ膨張冷却部103の外側に近接して前後方向に並設されている。各放出コンベア105は、下リム機構2の昇降に支障を与えることのないように、加硫機102側から搬出コンベア106に向けて下向きに傾斜され、冷却済タイヤ1’の自重により搬出コンベア106に移動させるようになっている。搬出コンベア106は、ベルトコンベアであって、ポストキュアインフレータ101の後方に所定間隔を隔てて並設されており、各放出コンベア105から移動された冷却済タイヤ1’を後工程であるタイヤ検査工程や出荷場所まで搬出する。
【0020】
ポストキュアインフレータ101における各膨張冷却部103は、図1に示すように、水平配置された加硫済みタイヤ1の下側面を保持する加硫済みタイヤ保持機構2(以下、下リム機構2という)と、加硫済みタイヤ1の上側面を保持する加硫済みタイヤ保持機構3(以下、上リム機構3という)とを有している。上リム機構3は、加硫済みタイヤ1の上ビード部1aを気密状態に保持する上リム4と、上リム4に連結された上リム連結部材5とを有している。尚、加硫済みタイヤ1は、軸方向の中心点を基準として対称的な形状に形成されており、加硫済みタイヤの赤道中心は、軸方向の中心点を通過および直交する平面と加硫済みタイヤ1の周面との交差する線分を基準として定義される。
【0021】
上記の上リム4は、上ビード部1aの径に対応した外径を有する円盤形状に形成されている。上リム4の内周側には、後述のロッキングシャフト33を挿通させるように開口部4aが形成されている。上リム4の上面には、上リム連結部材5が固設されている。上リム連結部材5は、開口部4aの周囲を取り囲むように円筒形状に形成されており、中心軸が上リム4の鉛直方向の中心軸に一致するように配置されている。
【0022】
上記のように構成された上リム機構3は、回転駆動機構10により任意の方向および回転速度で回転可能にされている。回転駆動機構10は、回転駆動機構10の外周面に水平方向に固設された従動プーリ11と、従動プーリ11の側方に配置された駆動プーリ12と、従動プーリ11と駆動プーリ12とに張設された駆動ベルト13と、駆動プーリ12に連結されたタイヤ駆動モータ14とを有している。そして、回転駆動機構10は、タイヤ駆動モータ14の回転駆動力を駆動プーリ12および駆動ベルト13を介して従動プーリ11に伝達し、上リム連結部材5および上リム4を回転させることによって、上リム4に保持された加硫済みタイヤ1を高速回転させることが可能になっている。
【0023】
ここで、『高速回転』とは、例えば図7に示すように、加硫済みタイヤ1の周囲の空気流について自然対流よりも強制対流が支配的となる回転速度のことである。具体的には、加硫済みタイヤ1を100rpm以上の回転数で回転させたときの回転速度である。尚、『高速回転』の回転速度は、100rpm以上の回転数であれば良いが、好ましくは200rpm以上、より好ましくは300rpm以上であり、また好ましくは1000rpm以下、より好ましくは800rpm以下である。ここで、上限を設定する理由は、高速にし過ぎても冷却効果(必要冷却時間)に余り変化は無く、逆に設備の耐久性の低下が顕著になるからであると共に、安全性を確保するのに多大な設備費や労力が必要であるからである。尚、羽根を設けた場合には、500rpm以下でも、800〜1000rpmで回転するのみの場合と同様の効果を得ることができる。
【0024】
これにより、図1に示すように、回転駆動機構10は、加硫済みタイヤ1の周囲の空気流について自然対流よりも強制対流が支配的となるように、加硫済みタイヤ1を高速回転させることによって、加硫済みタイヤ1の熱量を強制対流により積極的に除去することにより短時間で所定の温度以下に冷却することが可能になっている。また、上記の強制対流を加硫済みタイヤ1の赤道中心を基準とした軸方向両側に対称的な空気流として発生させることによって、赤道中心を基準とした軸方向両側において加硫済みタイヤ1を対称的に冷却させることが可能になっている。この結果、膨張冷却後の品質、特にユニフォミティを向上させることが可能になっている。換言すれば、ポストキュアインフレータは、加硫済みタイヤ1のタイヤ赤道中心を基準とした軸方向両側が対称的な物性値となるように、加硫済みタイヤ1を高速回転させることによって、加硫済みタイヤ1の外側の空気を自然対流よりも強制対流が支配的となるように流動させながら、加硫済みタイヤ1を膨張冷却するように構成されている。ここで、『物性値』は、硬さや引張強さ、伸び、純ゴム強度、反発弾性、引裂強さ、圧縮永久ひずみ、耐磨耗性、耐屈曲亀裂性、カーカスコードの中間伸度等の物性要素の内の少なくとも1つの物性要素の物性値を意味し、必ずしも全ての物性要素の物性値を意味するものではない。
【0025】
上記の上リム機構3における上リム連結部材5の内周側には、上リム機構3を回転自在に支持する上リム支持機構21と、上リム機構3と下リム機構2とを着脱可能に連結するロック機構31とがこの順に配置されている。上リム支持機構21は、上リム連結部材5の内周面に沿って設けられた円筒形状の筒状支持部材22と、筒状支持部材22と上リム連結部材5との間に設けられた軸受け部材23とを有している。筒状支持部材22は、上端部が水平フレーム6に固設されている。尚、水平フレーム6は、ポストキュアインフレータの姿勢を保持する図示しないフレーム機構の一部を構成している。一方、軸受け部材23は、筒状支持部材22と軸受け部材23とを上下方向に固定するように連結していると共に、水平方向に回転自在に支持している。これにより、上リム支持機構21は、水平フレーム6に支持された所定の高さ位置において上リム機構3を回転自在に支持するようになっている。
【0026】
上記の上リム支持機構21の内周側には、ロック機構31が設けられている。ロック機構31は、ロック部材32とロッキングシャフト33とロック用回動機構34とを有している。ロック部材32は、上リム支持機構21の筒状支持部材22に回動自在に嵌合されている。また、ロック部材32の上面部には、回動用シャフト35の先端部が回動自在に連結されている。回動用シャフト35は、水平配置されていると共に、後端部がエアーシリンダや油圧シリンダ等のシリンダ装置36に連結されている。回動用シャフト35とシリンダ装置36とは、ロック用回動機構34を構成しており、ロック用回動機構34は、シリンダ装置36により回動用シャフト35を回動させることによって、ロック部材32を正方向および逆方向に回動可能になっている。
【0027】
上記のロック用回動機構34により回動されるロック部材32は、下面が開口された凹状部32aを有している。凹状部32aの上面中心部には、空気穴32dが形成されており、空気穴32dは、ロック部材32の上壁部を上下方向に貫設された後、空気配管7に接続されている。空気配管7は、図示しない空気供給装置に接続されている。空気供給装置は、加硫済みタイヤ1内に膨張用空気を供給することによって、加硫済みタイヤ1を内圧により膨張させる空気供給機構と、加硫済みタイヤ1の回転時等において膨張用空気を入れ替える空気入替機構とを有している。
【0028】
また、凹状部32aの下端部には、側壁面の四方位置から内周方向に突設された係止部32bが形成されていると共に、隣接する係止部32b・32b間からなる挿通溝32c(切欠部)が形成されている。挿通溝32cは、ロッキングシャフト33の突設部33aを通過させるように形成されている。そして、このように構成されたロック機構31は、ロック部材32をロック用回動機構34により例えば正方向に回動させることによって、ロッキングシャフト33の突設部33aと挿通溝32cとを上下方向に一致させ、ロッキングシャフト33の突設部33aを凹状部32a内に対して進入自在および退出自在にする一方、ロック部材32を例えば逆方向に回動させることによって、ロッキングシャフト33の突設部33aと係止部32bとを上下方向に一致させ、ロッキングシャフト33の突設部33aを凹状部32a内で固定することを可能にしている。
【0029】
上記のロッキングシャフト33は、上述の突設部33aが上端部の四方位置に配置されていると共に外周方向に突設されている。また、ロッキングシャフト33は、軸芯が上述の下リム機構2の中心軸に一致するように配置されており、上端部から垂下されたシャフト部33bと、シャフト部33bの下端部に形成されたシャフト支持部33cとを有している。
【0030】
上記のシャフト支持部33cには、下リム機構2が回転自在に設けられている。下リム機構2は、加硫済みタイヤ1の下ビード部1bを気密状態で保持する下リム16と、下リム16に連結された下リム支持部材17と、下リム支持部材17をロッキングシャフト33のシャフト支持部33cに回転自在に連結する下リム連結機構18とを有している。
【0031】
上記の下リム16は、下ビード部1bの径に対応した外径を有する円盤形状に形成されている。下リム16の内周側には、上述のロッキングシャフト33を挿通させるように開口部16aが形成されている。下リム16の下面には、下リム支持部材17が固設されている。下リム支持部材17は、開口部16aの周囲を取り囲むように円筒形状に形成されており、中心軸が下リム16の中心軸に一致するように配置されている。また、下リム支持部材17の内周面には、軸受け部材からなる下リム連結機構18が設けられている。そして、このように構成された下リム機構2は、加硫済みタイヤ1の下ビード部1bを保持しながら上リム機構3の回転に従動することによって、加硫済みタイヤ1をロッキングシャフト33に対して回転自在に支持している。
【0032】
また、ロッキングシャフト33の下端部は、図示しない昇降機構に連結されている。昇降機構は、ロッキングシャフト33を図示しないタイヤ載置位置から図示位置よりも高いタイヤ装着位置までの間を昇降可能にしている。そして、タイヤ載置位置においては、加硫済みタイヤ1が下リム機構2に着脱されるようになっている。一方、タイヤ装着位置においては、加硫済みタイヤ1の上ビード部1aが上リム機構3に保持され、下リム機構2および上リム機構3で加硫済みタイヤ1が保持されながら冷却処理が行われるようになっている。
【0033】
上記の冷却処理は、回転駆動機構10による加硫済みタイヤ1の回転に加えて、空気排除機構41によっても行われている。空気排除機構41は、加硫済みタイヤ1の側面部であるサイドウォール部1c・1dの近傍に存在する空気を回転駆動機構10による回転を利用して強制的に排除するように構成されている。
【0034】
即ち、空気排除機構41は、リム機構3・2と共に回転することにより加硫済みタイヤ1の側面部に沿った方向成分や半径方向を含む空気流を発生させるように構成されている。具体的には、空気排除機構41は、上リム機構3および下リム機構2にそれぞれ設けられて、回転駆動機構からの駆動力が伝達される複数の羽根部材42を備えている。これらの羽根部材42は、図2に示すように、各リム機構3・2の外周部の円周方向において等間隔に配設されている。また、羽根部材42は、各リム機構3・2の外周面と同程度の曲率半径で湾曲された板状に形成されており、各リム機構3・2の半径方向に対して傾斜されている。即ち、羽根部材42は、内周側の一端側が他端側よりも回転方向(図示矢符方向)の上流側に位置するように傾斜された、いわゆる後退翼となっている。これにより、空気排除機構41は、羽根部材42がリム機構3・2と共に回転することにより、周方向の相対速度を下げることなく加硫済みタイヤ1の側面部に沿った方向成分や半径方向外向き成分を含む空気流を発生させるようになっている。尚、空気排除機構41は、多翼遠心ファンと類似の様相を呈する遠心ファン形状が好ましい。
【0035】
尚、羽根部材42は、リム機構と共に回転するものに限らず、相対回転するものであってもよい。また、羽根部材42は、加硫済みタイヤ1のサイドウォール部1c・1dに沿った方向成分を含む空気流を発生させるものであれば、どのような形状および配置形態が選択されていても良い。例えば羽根部材42は、単数であっても良いし、傾斜角度や形状、サイズが羽根部材42毎に異なっていても良いし、平板状にされていても良い。更には、サイドウォール部1c・1dに対して直交する方向成分を多く含む空気流を発生させるように、羽根部材42の上部が回転方向側に曲折されていたり、羽根部材42全体が回転方向側に傾斜されていたりしても良い。
【0036】
また、羽根部材42は、加硫済みタイヤ1の所望部位、例えばサイドウォール部1c・1dの最も肉厚が大きな部位等に他の部位よりも高速の空気流を発生させる条件を満足するように設けられていても良い。この場合には、加硫済みタイヤ1の所望部位に多くの空気流を流動させることによって、所望部位の熱を他の部位の熱よりも多く取り除くことができるため、所望部位についての冷却を重点的に行うことができる。この結果、一層、加硫済みタイヤ1を理想的な状態で冷却することができる。ここで、『条件を満足する』とは、例えば羽根部材42の設置枚数や傾斜角度、形状等を代表例とする空気流変動要素について、これら空気流変動要素の少なくとも一つを調整することによって、加硫済みタイヤ1の所望部位に他の部位よりも多くの空気流を発生させることを意味する。そして、この構成によれば、羽根部材42を各リム機構3・2に設けるという簡単な構成によって、加硫済みタイヤ1のサイドウォール部1c・1d近傍に存在する空気を排除することができるため、タイヤ赤道中心を基準とした軸方向両側を、より一層対称的な物性値とすることが可能になる。
【0037】
上側および下側に配置された羽根部材42から見てタイヤ1側とは反対側には、仕切部材43が空気排除機構41の一部として設けられている。仕切部材43は、タイヤ1のサイドウォール部1c・1d側の領域を、羽根部材42への空気の流入側の第1空間領域Aと、加硫済みタイヤ1のサイドウォール部1c・1d近傍側の第2空間領域Bとに区画している。即ち、仕切部材43は、上面から下面にかけて連通された円筒形状に形成されている。仕切部材43は、羽根部材42側(一方側)の内径が羽根部材42の外周側の端部に近接するように配置されていると共に、この一方側の内径が他方側の内径よりも減少するように設定されている。これにより、仕切部材43は、第2空間領域Bに存在する空気が第1空間領域Aに移動することを防止すると共に、第1空間領域Aに存在する熱交換前の空気を集合させながら多量に羽根部材42に流入させるようになっている。
【0038】
尚、回転駆動機構10の駆動力の一部を分岐して羽根部材42に伝達するよう構成しても良いし、回転駆動機構10とは別に設けた駆動機構の駆動力を羽根部材42に伝達するよう構成しても良い。相対回転することにより、タイヤ1と羽根部材42との回転方向の位相が変化していくため、タイヤ周方向において、より均一な空気排除効果がある。また、羽根部材42に駆動力を伝達する駆動機構を回転駆動機構10とは別に設ける場合、加硫済みタイヤ1の上側と下側とに、それぞれ個別の駆動機構により駆動力が伝達される羽根部材42を設けるよう構成することができる。これにより、加硫済みタイヤ1の上側部分と下側部分における加硫済みタイヤ1の冷却能力を調整することができる。即ち、加硫済みタイヤ1の上下温度差の調整が可能になる。
【0039】
更に、上側および下側に配置された仕切部材43から見てタイヤ1側とは反対側には、冷却空気供給機構44が空気排除機構41の一部として設けられている。冷却空気供給機構44は、各リム機構3・2の上リム連結部材5および下リム支持部材17の周囲を取り囲むように形成および配置された環状配管45と、環状配管45に冷却空気を供給する図示しない冷却空気供給装置と、羽根部材42に向かって冷却空気を噴出するように環状配管45に設けられた図示しないノズルとを有している。尚、ノズルは、環状配管45に形成された貫通穴であっても良い。
【0040】
上記の構成において、ポストキュアインフレータの動作について説明する。
図3および図4に示すように、加硫機102による加硫成形が終了すると、各旋回ローダ104が昇降、旋回されてタイヤチャック104Bが各モールド110内に位置される。続いて、タイヤチャック104Bが下降されて加硫済みタイヤ1が把持される。そして、タイヤチャック104Bが昇降、旋回されて各モールド110からポストキュアインフレータ101の各膨張冷却部103まで加硫済みタイヤ1が旋回搬送される。下リム機構2を下限位置まで下降した図示しないタイヤ載置位置において、各旋回ローダ104の下降により加硫済みタイヤ1が各下リム機構2に載置された後、各旋回ローダ104が上昇、旋回されて各膨張冷却部103から退避される。
【0041】
上記のようにして加硫済みタイヤ1が下リム機構2に載置されると、図1に示すように、加硫済みタイヤ1の下ビード部1bが下リム機構2の下リム16に保持される。この後、ロッキングシャフト33が上昇され、下リム機構2および加硫済みタイヤ1が上昇される。この際、ロック機構31においては、ロック部材32がロック用回動機構34により正方向に回動されることによって、ロッキングシャフト33の突設部33aとロック部材32の挿通溝32cとが上下方向に一致されている。従って、上昇するロッキングシャフト33は、突設部33aが挿通溝32cを通過して凹状部32a内に進入する。そして、ロッキングシャフト33が上限位置であるタイヤ装着位置に到達すると、ロッキングシャフト33の上昇が停止され、加硫済みタイヤ1の上ビード部1aが上リム機構3の上リム4により気密状態に保持される。
【0042】
この後、ロック機構31において、ロック部材32が逆方向に回動され、係止部32bがロッキングシャフト33の突設部33aに対して上下方向に一致される。次に、図示しない空気供給装置における空気供給機構が作動され、膨張用空気が空気配管7等を介して加硫済みタイヤ1内に所定圧で供給される。この結果、ロッキングシャフト33の突設部33aが凹状部32a内の係止部32bにより上下方向に固定されることによって、上リム機構3と下リム機構2とがロッキングシャフト33を介して一定距離を隔てて固定された状態にされると共に、加硫済みタイヤ1が所定形状に膨張および形状保持される。
【0043】
この後、空気供給装置における空気入替機構が適宜作動され、加硫済みタイヤ1内の圧力が一定に維持されながら膨張用空気の入れ替えが行われる。この結果、加硫済みタイヤ1との熱交換で高温となった膨張用空気が排出される一方、熱交換前の低温の膨張用空気が加硫済みタイヤ1内に供給されるため、加硫済みタイヤ1の内部から効率良く冷却が行われる。
【0044】
また、回転駆動機構10におけるタイヤ駆動モータ14が作動されることにより、駆動プーリ12、駆動ベルト13および従動プーリ11を介して上リム機構3が回転され、上リム機構3に保持された加硫済みタイヤ1が高速回転される。この結果、加硫済みタイヤ1の周囲の空気流について自然対流よりも強制対流が支配的となり、加硫済みタイヤ1の熱量が強制対流により積極的に除去される。これにより、加硫済みタイヤ1を停止した状態で膨張冷却したり、自然対流が支配的な低速回転で加硫済みタイヤ1を回転させながら膨張冷却した場合よりも、加硫済みタイヤ1が短時間で所定の温度以下に冷却される。
【0045】
更に、加硫済みタイヤ1が軸方向の中心点を基準として対称的な形状であるため、加硫済みタイヤ1の高速回転により発生する強制対流は、加硫済みタイヤ1の赤道中心、即ち、軸方向の中心点を通過および直交する平面と加硫済みタイヤの周面との交差する線分を基準とした軸方向両側に対称的な空気流となる。これにより、加硫済みタイヤ1は、赤道中心を基準とした軸方向両側に対称的に冷却されることによって、膨張冷却後の品質、特にユニフォミティが向上したものになる。
【0046】
また、加硫済みタイヤ1の回転により各サイドウォール部1c・1dが周囲の空気に対して相対移動すると、サイドウォール部1c・1dの表面では相対速度ゼロ、表面から離れるに従って相対速度を持つ気流分布、いわゆる、速度境界層が形成されるが、空気排除機構41により誘起される気流により、この速度境界層は、単にタイヤを回転させたときよりも更に薄くなる。これと同様に温度場についても、サイドウォール部近傍に存在する温度境界層が薄くなる。この境界層が薄くなるほど熱抵抗は減り、サイドウォール部1c・1dが速やかに冷却される。加硫済みタイヤ1は、速度境界層が十分に薄くなる程度に高速で回転させる必要があり、100rpm以上、好ましくは200rpm以上、更に好ましくは300rpm以上であるが、更に高速回転させることで、より速やかな冷却が可能である。
【0047】
また、熱交換により高温となったサイドウォール部1c・1d近傍における空気は、空気排除機構41により強制的に排除される。即ち、加硫済みタイヤ1の回転により冷却が開始されると、冷却空気供給機構44における環状配管45から低温の冷却空気が羽根部材42方向に噴出される。また、各リム機構3・2が回転すると、これらのリム機構3・2に設けられた羽根部材42が回転、即ち、各リム機構3・2の軸芯を中心とした周方向に旋回する。この結果、羽根部材42により各リム機構3・2側の第1空間領域Aに存在する冷却空気等を含む熱交換前の空気が仕切部材43からタイヤ1方向に押し出され、加硫済みタイヤ1のサイドウォール部1c・1dに沿った方向成分を含む空気流(風)となる。
【0048】
これにより、サイドウォール部1c・1dの近傍に存在する熱交換後の高温の空気が加硫済みタイヤ1から排除され、このようにして排除された空気を補うように、熱交換前の空気が羽根部材42により第1空間領域Aから供給される。従って、加硫済みタイヤ1のサイドウォール部1c・1dは、温度差の大きな空気との間で熱交換が常時行われるため、短時間で所定の温度以下に冷却される。尚、羽根部材42を設けた場合は、設けていない場合と比較して、同等の効果をより低回転または短時間で得ることが可能である。
【0049】
更に、サイドウォール部1c・1d近傍側の第2空間領域Bが仕切部材43により第1空間領域Aに対して区画されているため、加硫済みタイヤ1との熱交換で昇温した第2空間領域Bの高温の空気は、第1空間領域Aに移動することが阻止される。この結果、熱交換前の空気のみが第1空間領域Aに存在し、この空気が羽根部材42に流入するため、サイドウォール部1c・1dの冷却が一層効率良く行われる。
【0050】
また、このような加硫済みタイヤ1を高速回転させての冷却時においては、上側および下側の各サイドウォール部1c・1dにおける空気は、加硫済みタイヤ1の外周方向に流動される。この結果、下側のサイドウォール部1dとの熱交換で高温となった空気が自然対流により上昇して上側のサイドウォール部1cに回り込むという事態が防止される。これにより、上側および下側の両サイドウォール部1c・1dが同じ条件で冷却されることになる。また、このような高速回転で生じる遠心力により加硫済みタイヤ1内部における空気には軸方向両側で対称的な流れが誘起され、加硫済みタイヤ1内部から軸方向両側に対称的な冷却が促進される。このように、加硫済みタイヤ1を例えば100rpm以上の高速で回転させ得る回転駆動機構10を有するポストキュアインフレータ(PCI)によれば、回転数や羽根部材42の有無、加硫済みタイヤ1と羽根部材42との相対回転の有無、上下羽根部材42それぞれの回転数調整等を適宜行うことで、タイヤ形状に応じた冷却、タイヤ内外からのムラのない冷却、冷却時間の調整・短縮化を行うことができ、1加硫サイクル内での冷却が完了するよう調整することも可能である。換言すれば、ポストキュアインフレータは、1加硫サイクル内での冷却が完了するよう調整する構成や機能、例えば回転数や羽根部材42の有無、加硫済みタイヤ1と羽根部材42との相対回転の有無、上下羽根部材42それぞれの回転数調整等を適宜行う構成や機能を備えていても良い。また、加硫済みタイヤ1の上下方向および周方向でバランスのとれた冷却が行われるため、冷却後の加硫済みタイヤ1が高品質の状態となる。
【0051】
以上のようにして加硫済みタイヤ1の冷却が完了すると、膨張用空気を排出しロック機構31において、ロック部材32がロック用回動機構34により正方向に回動されることによって、ロッキングシャフト33の突設部33aとロック部材32の挿通溝32cとが上下方向に一致される。この後、ロッキングシャフト33が下降され、凹状部32a内に存在する突設部33aが挿通溝32cを通過して外部に退出される。そして、冷却された加硫済みタイヤ1と共に下リム機構2が図示しないタイヤ載置位置にまで下降して停止されると、図3及び図4に示すように、旋回ローダ104により加硫済みタイヤ1の排出が行われ、待ち時間を発生させることなく次の加硫済みタイヤ1の冷却が開始される。
【0052】
(実施形態2)
次に、ポストキュアインフレータの他の実施形態について説明する。尚、実施形態1と同一部材には同一の符号を付記してその説明を省略する。また、空気排除機構41等を図示していないが、実施形態1に開示された部材や機構を必要に応じて適宜設けても良い。
【0053】
ポストキュアインフレータは、図5に示すように、水平配置された加硫済みタイヤ1の下側面を保持する下リム機構2と、加硫済みタイヤ1の上側面を保持する上リム機構3とを有している。上リム機構3は、回転駆動機構74により任意の回転速度で回転可能にされている。回転駆動機構74は、上リム機構3が連結された回転軸部材75と、回転軸部材75を回転自在に支持し、回転軸部材75を鉛直方向に保持する外筒部材76と、回転軸部材75の上端部にプーリやベルトを介して連結された駆動モータ77とを有している。回転軸部材75には、空気穴75aが形成されており、空気穴75aは、上下方向に貫設された後、図示しない空気配管を介して空気供給装置に接続されている。
【0054】
上記の回転軸部材75を支持する外筒部材76は、図5にも示すように、水平フレーム78に固設されている。外筒部材76の外周面側には、回動機構79が配置されている。回動機構79は、筒部材76bの外周面に設けられ、ロッド80aが鉛直方向に進退移動可能に設定された係合用シリンダ80と、係合用シリンダ80のロッド80aに係合可能に配置され、回転軸部材75に固設された係合盤81と、外筒部材76に支持され、筒部材76bを水平方向に回動させる回動用シリンダ82とを有している。
【0055】
上記の回動機構79の下方には、ロック機構83が設けられている。ロック機構83は、回転軸部材75の下端部(先端部)に形成された突設部75aと、上リム機構3に連結されたロック部材84を有している。ロック部材84は、上面が開口された凹状部84aを有している。凹状部84aの上端部には、側壁面の四方位置から内周方向に突設された係止部84bが形成されていると共に、隣接する係止部84b・84b間からなる挿通溝(切欠部)が形成されている。挿通溝は、回転軸部材75の突設部75aを通過させるように形成されている。そして、このように構成されたロック機構83は、回転軸部材75を上述の回動機構79により例えば正方向に回動させることによって、突設部75aと挿通溝とを上下方向に一致させ、突設部75aを凹状部84a内に対して進入自在および退出自在にする一方、回転軸部材75を例えば逆方向に回動させることによって、突設部75aと係止部84bとを上下方向に一致させ、突設部75aを凹状部84a内で固定することを可能にしている。その他の構成は、実施形態1と同一である。
【0056】
上記の構成において、ポストキュアインフレータの動作について説明する。
先ず、下リム機構2を下限位置まで下降した図示しないタイヤ載置位置において、下リム機構2に加硫済みタイヤ1が載置され、加硫済みタイヤ1が下リム機構2に保持される。この後、下リム機構2がロック機構83と共に上昇され、下リム機構2および加硫済みタイヤ1が上昇される。この際、ロック機構83の上方に位置する回転軸部材75においては、回動機構79により正方向に回動されることによって、突設部75aがロック部材84の挿通溝に対して上下方向に一致されている。従って、上昇するロック部材84は、突設部75aを凹状部84a内に進入させる。そして、下リム機構2が上限位置であるタイヤ装着位置に到達すると、上昇が停止され、加硫済みタイヤ1が上リム機構3により気密状態に保持される。
【0057】
この後、回動機構79において、回転軸部材75が逆方向に回動され、ロック部材84の係止部84bが回転軸部材75の突設部75aに対して上下方向に一致される。そして、図示しない空気供給装置における空気供給機構が作動され、膨張用空気が加硫済みタイヤ1内に所定圧で供給される。この結果、回転軸部材75の突設部75aが凹状部84a内の係止部84bにより上下方向に固定されることによって、上リム機構3と下リム機構2とが回転軸部材75を介して一定距離を隔てて固定されたロック状態にされると共に、加硫済みタイヤ1が所定形状に膨張および形状保持される。
【0058】
次に、係合用シリンダ80のロッド80aが後退され、係合盤81との係合が解除されることによって、回転軸部材75が外筒部材76に対して回転自在にされる。この後、駆動モータ77が作動されることによって、プーリやベルトを介して回転軸部材75が回転される。これにより、加硫済みタイヤ1が高速回転されることにより膨張冷却される。
【0059】
加硫済みタイヤ1の冷却が完了すると、膨張用空気が排出された後、ロック機構83および回動機構79において、上述の下リム機構2と上リム機構3とを連結する動作とは逆の動作によりロック状態が解除される。そして、冷却された加硫済みタイヤ1と共に下リム機構2が図示しないタイヤ載置位置にまで下降して停止された後、加硫済みタイヤ1の排出が行われ、次の加硫済みタイヤ1の膨張冷却が開始される。その他の動作は、実施形態1と同一である。
【0060】
次に、本実施形態1・2におけるポストキュアインフレータによる冷却効果を確認するため、下記のシミュレーション試験を行った。
【0061】
従来のように、加硫済みタイヤ1を静置したとき(回転数0rpm)の加硫済みタイヤ1の周辺に生じる空気流の流動状態を調査した。図10及び図11は、そのシミュレーション結果を示すものである。図10は、半径方向及び鉛直方向速度ベクトル図を表し、図11は、半径方向速度成分の等値図を表している。なお、図11においては、色調が濃いほど速度が大きいことを示している。図10及び図11に示すように、タイヤ外側では加硫済みタイヤ1の下側のサイドウォール部1dにおいて高温となった空気が上昇し、上側のサイドウォール部1cに回り込む自然対流(矢符方向)が発生していることが確認された。更に、タイヤ内側では、ベルトインナーライナー部を上昇する自然対流が発生し、且つ温度成層も形成され、上下温度差を生じることも確認された。
【0062】
羽根部材42を備えたポストキュアインフレータに加硫済みタイヤ1を装着し、500回転/分の回転速度で回転させたときの加硫済みタイヤ1の周辺に生じる空気流の流動状態を調査した。図7は、そのシミュレーション結果を示すものであり、半径方向及び鉛直方向速度ベクトル図を表している。図7に示すように、加硫済みタイヤ1のサイドウォール部1c・1dに沿った方向成分を含む強制対流の空気流(矢符方向)、即ち、加硫済みタイヤ1の赤道中心を基準とした軸方向両側に対称的な空気流が発生し、サイドウォール部1c・1d近傍の空気がタイヤ赤道中心を基準とした軸方向両側に対称的であって強制的に排除されることが確認された。
【0063】
また、羽根部材42を備えない場合と、備えた場合について、600回転/分の回転速度で回転させたときの、加硫済みタイヤ1の周辺に生じる空気流の流動状態を調査した。図8及び図9は、そのシミュレーション結果を示すものである。図8は、半径方向成分の等値図(羽根なしの場合)を表している。図9は、半径方向成分の等値図(羽根ありの場合)を表している。なお、両図とも、色調が濃いほど速度成分が大きいことを示している。この結果、周方向の雰囲気空気との相対速度が大きく、これが支配的となっているが、図8及び図9に示すように、半径方向外向きの2次流れについては、羽根部材を備えたことによって、タイヤ1のサイドウォール部1c・1dに沿った方向を含む空気流(矢印方向)が増大し、サイドウォール部1c・1d近傍の空気がより効果的に排除されることが確認された。
【0064】
以上のように、本実施形態1・2においては、図3に示すように、生タイヤであるグリーンタイヤ107を加硫成形する加硫機102から搬出された加硫済みタイヤ1を保持して膨張冷却するポストキュアインフレータであって、所定位置に設置され、該加硫済みタイヤ1を保持する加硫済みタイヤ保持機構2と、加硫機102における加硫成形時間内に加硫済みタイヤ1を80℃等の所定温度以下にまで冷却する回転速度で加硫済みタイヤ1を高速回転させる回転駆動機構10とを有する構成である。
【0065】
上記の構成によれば、加硫機102においてグリーンタイヤ107を加硫成形して加硫済みタイヤ1とするまでの加硫成形の1サイクル時間内に、加硫済みタイヤ1を必ず冷却することができるため、加硫済みタイヤ保持機構2を所定位置に設置していても、加硫成形後に待ち時間を発生させることなく、加硫済みタイヤ1を加硫済みタイヤ保持機構2にセットして膨張冷却を開始することができる。また、加硫済みタイヤ保持機構2を必要最小限の数量にできるため、ポストキュアインフレータ101の構造を簡素化できると共に、部品コストや組み立てコストを低減することができる。更に、加硫済みタイヤ保持機構2が所定位置に設置されているため、加硫済みタイヤ1を加硫済みタイヤ保持機構2にセットするときの精度を高めることが可能になる。これにより、膨張冷却後の加硫済みタイヤ1の品質を高い状態に維持することができると共に、品質のばらつきを減少させることができる。
【0066】
また、本実施形態における回転駆動機構10は、加硫済みタイヤ1の外側の空気を自然対流よりも強制対流が支配的となる状態で流動させるように、該加硫済みタイヤ1を高速回転させる構成である。上記の構成によれば、加硫済みタイヤ1の高速回転より発生した強制対流によって、加硫済みタイヤ1を急速に冷却することができることから、加硫済みタイヤ保持機構2における冷却時間を加硫機102における加硫成形時間内に確実に設定することができる。
【0067】
また、本実施形態における回転駆動機構10は、加硫済みタイヤ1を100rpm以上の回転数で高速回転させる構成である。上記の構成によれば、100rpm以上の高速回転により加硫済みタイヤ1の冷却速度を顕著に増大させることができると共に、加硫済みタイヤ1を高速回転させるという比較的に簡単な方法により加硫済みタイヤ1の少なくとも外側に空気流を発生させ、冷却時間および品質を向上させることができる。
【0068】
また、本発明のポストキュアインフレータは、更に、前記加硫済みタイヤ1の周囲の空気を攪拌する羽根部材を備えている構成である。これにより、加硫済みタイヤ1の冷却速度を一層増大させることができる。
【0069】
また、本実施形態において、加硫済みタイヤ保持機構2による加硫済みタイヤ1の保持から膨張冷却までの処理が同一の位置および姿勢で行われ、この処理を行う位置が1ヶ所のみ設けられている冷却位置固定タイプである構成である。
【0070】
上記の構成によれば、設備のシンプル化によるガタの防止やチョコ停、保全頻度の減少を実現することが可能になり、結果としてタイヤのユニフォミティ向上等による品質の改善を実現することができる。更に、加硫済みタイヤ保持機構2を上下反転して膨張冷却する冷却位置変動タイプにおいては、加硫機102およびポストキュアインフレータ101間の距離を離して配置する必要があるが、冷却位置固定タイプの場合には、加硫機102およびポストキュアインフレータ101間の距離が近くなるため、装置設置スペース(特に前後の奥行寸法)が減少する。これにより、加硫機102からポストキュアインフレータ101へ加硫済みタイヤ1を搬送する搬送機構としてアンローダーを用いた場合、このアンローダーの旋回半径が小さくなるため、旋回モーメントが小さくなって加硫済みタイヤ1を高精度に加硫済みタイヤ保持機構2に搬送できる。
【0071】
尚、本実施形態1・2においては、上・下リム機構3・2(加硫済みタイヤ保持機構)により加硫済みタイヤ1を水平配置した姿勢で保持して高速回転させるようになっているが、これに限定されるものではなく、傾斜した姿勢で加硫済みタイヤ1を保持して高速回転させるようになっていても良いし、例えば垂直方向の姿勢、即ち、加硫済みタイヤ1の軸が水平方向に一致する姿勢で保持して高速回転させるようになっていても良い。垂直方向の姿勢で加硫済みタイヤ1を高速回転させた場合には、赤道中心を基準とした軸方向両側の空気流の対称性が一層向上し、冷却の対称性、ひいてはユニフォミティ等の品質を一層向上させることができる。
【0072】
また、本実施形態においては、冷却位置固定タイプのポストキュアインフレータを用いて説明しているが、これに限定されるものでもなく、冷却位置変動タイプであっても良い。冷却位置変動タイプの具体的としては、上下反転式のポストキュアインフレータが存在する。このポストキュアインフレータは、上・下リム機構3・2(加硫済みタイヤ保持機構)の2組を回転支持部材を中心として対称に有し、一方の上・下リム機構3・2(加硫済みタイヤ保持機構)により加硫済みタイヤ1を保持した後、回転支持部材を180度回転させることによって、一方の上・下リム機構3・2と他方の一方の上・下リム機構3・2とを旋回させて保持位置と冷却位置とを入れ替えるように構成されている。
【0073】
以上、本発明を好適な実施形態1・2に基づいて説明したが、本発明はその趣旨を超えない範囲において変更が可能である。即ち、ポストキュアインフレータは、図12に示すように、加硫済みタイヤ1のサイドウォール部1c・1dに対向配置された状態で固定され、サイドウォール部1c・1d近傍に存在する空気を掻き取る掻取部材51を空気排除機構41として備えた構成であっても良い。
【0074】
具体的に説明すると、掻取部材51は、サイドウォール部1c・1dとの対向面がサイドウォール部1c・1dとの距離が等距離となる形状に形成されている。また、掻取部材51は、加硫済みタイヤ1のサイドウォール部1c・1dを挟んで上下に配置されている。上側の掻取部材51は、筒状支持部材22に上側支持部材52を介して固定されている。一方、下側の掻取部材51は、ロッキングシャフト33のシャフト支持部33cに下側支持部材53を介して固定されている。
【0075】
また、掻取部材51は、図13に示すように、サイドウォール部1c・1dに対向する環状領域において、複数個が等間隔に配設されている。そして、掻取部材51は、加硫済みタイヤ1の外周面と同程度の曲率半径で湾曲された板状に形成されており、加硫済みタイヤ1の半径方向に対して傾斜されている。即ち、掻取部材51は、外周側の一端側が他端側よりも回転方向(図示矢符方向)の上流側に位置するように傾斜されている。
【0076】
尚、掻取部材51は、外周側の一端側が他端側よりも回転方向(図示矢符方向)の下流側に位置するように傾斜されていても良い。また、掻取部材51は、図1の空気排除機構41における羽根部材42や仕切部材43、冷却空気供給機構44と組み合わせて設けられていても良い。また、掻取部材51は、加硫済みタイヤのサイドウォール部に対して相対回転して、サイドウォール部近傍の空気を掻き取るものであればよく、ロッキングシャフトおよび筒状部材に固定されるものに限らない。
【0077】
上記の構成によれば、加硫済みタイヤ1が回転すると、サイドウォール部1c・1dが掻取部材51に対して相対移動し、サイドウォール部1c・1dと共に移動するサイドウォール部1c・1d近傍の空気が掻取部材51により掻き取られる。この結果、加硫済みタイヤ1との熱交換により高温となったサイドウォール部1c・1d近傍における空気が強制的に排除される。これにより、加硫済みタイヤ1を短時間で所定の温度以下に冷却することができる。
【0078】
更に、ポストキュアインフレータは、図14(a)・(b)に示すように、加硫済みタイヤ1のサイドウォール部1c・1dに対向配置された状態で各リム機構3・2に固定され、サイドウォール部1c・1d近傍に存在する空気を上昇気流や下降気流により移流する(または排除する)軸流羽根部材54を空気排除機構41として備えた構成であっても良い。
【0079】
具体的に説明すると、軸流羽根部材54は、後端部が各リム機構3・2に固定され、回転中心Oに対して偏心した状態で四方に配置されている。軸流羽根部材54の先端部は、サイドウォール部1c・1dに対向配置されており、第1板部材55と第2板部材56とを備えている。第2板部材56は、サイドウォール部1c・1dに対して平行に配置されている。一方、第1板部材55は、回転方向の上流側の端部が第2板部材56に接続され、下流側の端部が上方に30度等の所定角度に傾斜された状態に設けられている。
【0080】
尚、軸流羽根部材54は、第1板部材55における回転方向の上流側の端部が第2板部材56に接続され、下流側の端部が下方に30度等の所定角度に傾斜された状態に設けられていても良い。また、軸流羽根部材54は、図1の空気排除機構41における羽根部材42や仕切部材43、冷却空気供給機構44と組み合わせて設けられていても良い。また、軸流羽根部材54は、加硫済みタイヤに対して相対回転するように設けてもよい。
【0081】
上記の構成によれば、加硫済みタイヤ1が回転すると、サイドウォール部1c・1dと軸流羽根部材54とが同一速度で回転(移動)又は相対回転する。そして、軸流羽根部材54においては、第2板部材56が移動による空気流の圧力差によって、サイドウォール部1c・1dから離れる方向である上昇気流や下降気流を発生させる。この結果、サイドウォール部1c・1d近傍の加硫済みタイヤ1との熱交換により高温となった空気が上昇気流や下降気流により強制的に排除される。これにより、加硫済みタイヤ1を短時間で所定の温度以下に冷却することができる。
【0082】
以上のように、本発明は、上記の好ましい実施形態1・2に記載されているが、本発明はそれだけに制限されない。本発明の精神と範囲から逸脱することのない様々な実施形態が他になされることは理解されよう。更に、本実施形態1・2を含む明細書において、本発明の構成による作用および効果を述べているが、これら作用および効果は、一例であり、本発明を限定するものではない。
【実施例】
【0083】
先ず、トレッド部からサイドウォール部を通り、ビード部にのびる本体部にビードコアの周りをタイヤ軸方向内側から外側に向かって折り返す巻上げ部が一体に設けられた1枚のカーカスプライからなるカーカス構造の加硫済みタイヤについて、回転数(rpm)や羽根の有無、羽根の枚数、羽根の形状等を冷却条件とし、これら冷却条件を変更しながら膨張冷却したときの冷却時間(分)と、必要冷却時間従来例1対比(%)と、カーカスコード(中間伸度上下差(%))と、コニシティとを試験項目として調査した。また、加硫済みタイヤを従来製法で膨張冷却することによって、上記の各試験項目を調査した。
【0084】
ここで、冷却時間は、トレッド部に隣接するサイドウォールのカーカス部が80℃まで冷える時間とした。但し、従来製法の冷却時間は、現状2サイクル方式のPCI時間とした。また、カーカスコード中間伸度は、タイヤより採取したサイドウォール部を試料として測定した。コニシティは、N=12のデータ(タイヤ12本分の平均値)である。
【0085】
尚、中間伸度、即ち、一定荷重伸び率とは、JIS L1017(化学繊維タイヤコード試験方法)の7.7項に記載された一定荷重伸び率により測定を行った一定荷重Wを加えたときの伸び率(%)であり、その7.7.1項の標準時試験に基づいて行われる。尚、一定荷重Wは、W(kgf)=4.5×(d2/d1)により算出するように定められている。ここで、d1:繊維の種類により定まる基準デシテックス、d2:試料の表示デシテックスである。そして、タイヤ1本当たり、タイヤ両側(上下)のサイドウォール部の周上の略均等な4箇所から、カーカスコードの試料を上下一対で4セット採取し、タイヤ10本分(試料40セット)の上下差の平均値を小数点以下1桁まで算出した。
【0086】
具体的に説明すると、加硫サイクルタイム(ここでは、加硫成形時間に型開閉と型内外へのタイヤ搬出入時間を含むものである)10分で、タイヤサイズが195/65R15 91Sの乗用車用ラジアルタイヤを準備した。そして、上記の冷却条件を表1・2のように各種変更して膨張冷却した。この冷却条件および調査結果についての詳細を実施例1〜14および従来例1として表1および表2に示す。また、従来製法での冷却時間を100%としたときの各実施例1〜14の冷却時間の比率を算出して図15のようにグラフ化した。なお、参考データとして、回転数30、50及び80rpmにおける比率も記載した。
【0087】
【表1】

【0088】
【表2】

【0089】
次に、加硫サイクルタイム(ここでは、加硫成形時間に型開閉と型内外へのタイヤ搬出入時間を含むものである)14分で、タイヤサイズが265/70R16 112Sの四輪駆動車用ラジアルタイヤを準備した。そして、上記の冷却条件を表2のように各種変更して膨張冷却した。この冷却条件および調査結果についての詳細を実施例15〜17および従来例2として表3に示す。
【0090】
【表3】

【0091】
次に、グラスホフ数Gr =g β ΔT L13 / ν2と、レイノルズ数Re = L2 π d ω / νとを算出した。尚、グラスホフ数Grとは、高温物体により生じる自然対流を取り扱うときに用いられる無次元数である。
【0092】
ここで、g [m/s^2]:重力加速度、β [1/K]:空気の体膨張係数、ΔT [K]:タイヤ表面と雰囲気空気との温度差、L1 [m]:自然対流代表長さ、ν [m^2/s]:空気の動粘性係数、L2 [m]:強制対流代表長さ、d [m]:タイヤ直径、ω [rps]:タイヤ回転数である。尚、計算にあたっては、L1 = d および L2 = dとした。
【0093】
上記のグラスホフ数Grおよびレイノルズ数Reを、各実施例1〜17について算出した後、Gr/Re2 = g ΔT L13 / (π2 T ω2222)を算出した。そして、実施例1〜14をGr/Re2195とし、実施例15〜17をGr/Re2265として、図16においてグラフ化した。更に、図16のグラフに、実施例1〜7に用いた加硫済みタイヤ1の周速度とコニシティとを重ね合わせた。なお、参考データとして、回転数が30、50及び80rpmにおけるコニシティも記載した。Gr/Re2の値は、好ましくは0.25以下(回転数100rpm以上)であれば良いが、好ましくは0.05以下(回転数200rpm以上)、より好ましくは0.025以下(回転数300rpm以上)である。
【0094】
表1〜3および図15・16から、回転数が100rpm以上であれば、冷却時間を大幅に短縮できることが明らかになった。尚、この理由は、上述のシミュレーション結果において示されているように、加硫済みタイヤの周囲の空気流について自然対流よりも強制対流が支配的となる程度にまで、加硫済みタイヤが高速回転されたからであると考えられる。また、加硫済みタイヤを高速回転させた場合において、羽根が有る場合の方が無い場合よりも、冷却時間を短縮できることも明らかになった。
【0095】
また、従来と比べて冷却時間を大幅に短縮できる為、ポストキュアインフレータが、加硫済みタイヤの保持から膨張冷却までの処理を同一の位置および姿勢で行うべく、加硫機に対してその処理を行う位置を1ヶ所のみ設けるようにした場合でも、加硫成形後に待ち時間を発生させることなく膨張冷却を開始することができるものである。なお、タイヤサイズが195/65R15 91Sを用いた実験における加硫サイクルタイム10分であり目標冷却温度が80℃であるため、目標冷却温度に達する冷却時間が10分以下となる例(回転数100rpm以上)を実施例として記載しているが、同じタイヤサイズであっても、加硫サイクルタイムが10分以上必要な場合、または、冷却目標温度を若干高めに設定するような場合は、100rpmよりも多少低い回転数でも上記と同様の効果を得ることができることは言うまでもない。
【0096】
更に、加硫済みタイヤを高速回転させることによって、コニシティが向上することが明らかになった。具体的には、100rpm以上の高速回転で膨張冷却したときにコニシティが向上し、200rpm以上においてコニシティが急激に向上し、300rpm以上においてコニシティが顕著に向上することが明らかになった。この理由は、加硫済みタイヤの周囲に存在する空気が自然対流よりも強制対流が支配的となった状態で流動し、更に、この流動がタイヤ赤道中心を基準とした軸方向両側に対称的に起こることによって、加硫済みタイヤの物性値がタイヤ赤道中心を基準とした軸方向両側において対称的に出現したからであると推測される。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】ポストキュアインフレータの縦断面の概略構成図である。
【図2】羽根部材の配置状態を示す説明図である。
【図3】タイヤ加硫機およびポストキュアインフレータを平面視した配置レイアウトを示す説明図である。
【図4】タイヤ加硫機およびポストキュアインフレータを正面視した配置レイアウトを示す説明図である。
【図5】ポストキュアインフレータの縦断面の概略構成図である。
【図6】ポストキュアインフレータの概略平面図である。
【図7】本発明による空気流のシミュレーション結果を示す説明図である。
【図8】本発明による空気流のシミュレーション結果を示す説明図である。
【図9】本発明による空気流のシミュレーション結果を示す説明図である。
【図10】従来例による空気流のシミュレーション結果を示す説明図である。
【図11】従来例による空気流のシミュレーション結果を示す説明図である。
【図12】ポストキュアインフレータの縦断面の概略構成図である。
【図13】羽根部材の配置状態を示す説明図である。
【図14】羽根部材の配置状態を示す説明図であり、(a)は平面視した図、(b)は正面視した図である。
【図15】必要冷却時間のグラフである。
【図16】必要回転数の判定基準を示すグラフである。
【符号の説明】
【0098】
1 加硫済みタイヤ
1a 上ビード部
1b 下ビード部
1c サイドウォール部
1d サイドウォール部
2 加硫済みタイヤ保持機構(下リム機構)
3 加硫済みタイヤ保持機構(上リム機構)
4 上リム
5 上リム連結部材
6 水平フレーム
7 空気配管
10 回転駆動機構
11 従動プーリ
12 駆動プーリ
13 駆動ベルト
14 タイヤ駆動モータ
16 下リム
17 下リム支持部材
18 下リム連結機構
21 上リム支持機構
22 筒状支持部材
23 軸受け部材
31 ロック機構
32 ロック部材
33 ロッキングシャフト
34 ロック用回動機構
35 回動用シャフト
36 シリンダ装置
41 空気排除機構
42 羽根部材
43 仕切部材
44 冷却空気供給機構
45 環状配管
51 拡散部材
52 上側支持部材
53 下側支持部材
54 軸流羽根部材
55 第1板部材
56 第2板部材
101 ポストキュアインフレータ
102 タイヤ加硫プレス
103 膨張冷却部
104 旋回ローダ
105 放出コンベア
106 搬出コンベア
107グリーンタイヤ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生タイヤを加硫成形する加硫機から搬出された加硫済みタイヤを保持して膨張冷却するポストキュアインフレータであって、
所定位置に設置され、該加硫済みタイヤを保持する加硫済みタイヤ保持機構と、
該加硫機における加硫成形時間内に該加硫済みタイヤを所定温度以下にまで冷却する回転速度で該加硫済みタイヤを高速回転させる回転駆動機構と
を有し、
前記加硫済みタイヤ保持機構は、
加硫済みタイヤの保持から膨張冷却までの処理を同一の位置および姿勢で行い、
前記処理を行う位置が1ヶ所のみ設けられている
ことを特徴とするポストキュアインフレータ。
【請求項2】
前記回転駆動機構は、
前記加硫済みタイヤの外側の空気を自然対流よりも強制対流が支配的となる状態で流動させるように、該加硫済みタイヤを高速回転させることを特徴とする請求項1に記載のポストキュアインフレータ。
【請求項3】
前記所定温度は、トレッド部に隣接するサイドウォール部で80℃であることを特徴とする請求項1または2に記載のポストキュアインフレータ。
【請求項4】
前記回転駆動機構は、前記加硫済みタイヤを100rpm以上の回転数で高速回転させることを特徴とする請求項1ないし3の何れか1項に記載のポストキュアインフレータ。
【請求項5】
更に、前記加硫済みタイヤの周囲の空気を撹拌する羽根部材を備えていることを特徴とする請求項1ないし4の何れか1項に記載のポストキュアインフレータ。
【請求項6】
前記羽根部材は、後退翼の形状に設定されていることを特徴とする請求項5に記載のポストキュアインフレータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図10】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図8】
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【図9】
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【図11】
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【公開番号】特開2006−137056(P2006−137056A)
【公開日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−327586(P2004−327586)
【出願日】平成16年11月11日(2004.11.11)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【出願人】(000183233)住友ゴム工業株式会社 (3,458)
【Fターム(参考)】