説明

ポリアミドフィルム

【課題】 本発明の目的は、食品等の包装材料、シュリンク包装材料、食品ケーシング用材料として、酸素ガスバリア性に優れ、突き刺し性に優れ、熱水収縮率の大きいポリアミド層を有するポリアミドフィルムを提供することにある。
【解決手段】 本発明は、少なくとも1層のポリアミド層を有する単層又は多層のポリアミドフィルムであり、
ポリアミド層が、50〜90重量%の(A)ε−カプロラクタム及びε−アミノカプロン酸から選ばれる成分と、(B)12−アミノドデカン酸及びω−ラウロラクタムから選ばれる成分及び(C)ヘキサメチレンジアミンとアジピン酸の当モル塩との合計量(B成分とC成分の合計量)10〜50重量%とを共重合(A成分、B成分及びC成分の3成分を含み、3成分の合計量が100重量%である)して得られるポリアミドであり、
水冷インフレーション成形により製造されることを特徴とするポリアミドフィルムである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品などの包装用又はシュリンク包装用、ソーセージなどの流動体または半流動体状の食品、加工肉やハムなどの固形状の食品等を充填し、包装するためのケーシング用に用いることができる、酸素バリア性に優れ、熱水収縮性に優れる少なくとも1層のポリアミド層を有する単層又は多層のポリアミドフィルム又は、延伸されたポリアミドフィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、食品包装用フィルムとして、ポリアミド層を有するフィルムが用いられている。
特許文献1には、カプロアミドを主たる構成単位とし、他の2種の脂肪族ポリアミドを13〜50重量%の範囲で共重合し、融点が150〜200℃の範囲である3元共重合ポリアミドを1つの層として含む耐レトルト性包装材料が開示されている。
特許文献2には、(a)ポリアミドからなる内層と、(b)エステル、無水物及びカルボン酸の群から選択される少なくとも1つの官能部分を有する少なくとも1種のエチレン重合体を少なくとも60重量%含むコア層と、
(c)ポリアミドからなる外層と、を含む管状二軸延伸熱収縮性多層フィルム食品ケーシングであって、該コア層(b)が該内層(a)と該外層(c)との間に配置され、そして該多層フィルムが少なくとも1つの方向において90℃で少なくとも10%の収縮値を有することからなる管状二軸延伸熱収縮性多層フィルム食品ケーシングが開示されている。
特許文献3には、少なくとも一層のポリアミド系樹脂組成物層を有する単層または多層の包装用フィルムまたはシートにおいて、該ポリアミド系樹脂組成物層が、脂肪族ナイロン(共)重合体成分(1)と芳香族ナイロン(共)重合体成分(2)とを含む共重合ナイロン(c)を少なくとも5重量%の割合で含有するポリアミド系樹脂組成物からなる層(A)であることを特徴とする包装用フィルムまたはシートが開示されている。
【0003】
また三元共重合ポリアミドとしては、(A)ε−カプロラクタム及び/又はε−アミノカプロン酸の成分、(B)12−アミノドデカン酸及び/又はω−ラウロラクタムの成分、(C)ヘキサメチレンジアミンとアジピン酸の当モル塩とを共重合して得られるポリアミドフィルムとしては、特許文献1、特許文献4、特許文献5及び特許文献6に開示されている。
【0004】
【特許文献1】特開平03−106646号公報
【特許文献2】特開平06−189668号公報
【特許文献3】特開平10−195211号公報
【特許文献4】特開平09−234789号公報
【特許文献5】特開平11−071455号公報
【特許文献6】特開平08−225644号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、食品等の包装材料、シュリンク包装材料、食品ケーシング用材料として、酸素ガスバリア性に優れ、突き刺し性に優れ、熱水収縮率の大きいポリアミド層を有するポリアミドフィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、少なくとも1層のポリアミド層を有する単層又は多層のポリアミドフィルムであり、
ポリアミド層が、50〜90重量%の(A)ε−カプロラクタム及びε−アミノカプロン酸から選ばれる成分と、(B)12−アミノドデカン酸及びω−ラウロラクタムから選ばれる成分及び(C)ヘキサメチレンジアミンとアジピン酸の当モル塩との合計量(B成分とC成分の合計量)10〜50重量%とを共重合(A成分、B成分及びC成分の3成分を含み、3成分の合計量が100重量%である)して得られるポリアミドであり、
水冷インフレーション成形により製造されることを特徴とするポリアミドフィルムである。
【0007】
本発明のポリアミドフィルムの好ましい態様を以下に示す。本発明ではこれらの態様は組合せることができる。
(1)ポリアミドフィルムは、水冷インフレーション成形により製造されたフィルムをさら延伸して得られるポリアミドフィルムであること。
(2)ポリアミドフィルムは、水冷インフレーション成形により製造されたフィルムをさら同時二軸延伸又は逐次二軸延伸して得られるポリアミドフィルムであること。
(3)ポリアミド層の(A)ε−カプロラクタム及びε−アミノカプロン酸から選ばれる成分が、76〜84重量%であること。
(4)ポリアミド層の(B)12−アミノドデカン酸及びω−ラウロラクタムから選ばれる成分が、6〜14重量%であること。
(5)ポリアミドフィルムは、ポリアミド層のほかに、さらに熱可塑性樹脂層を有する少なくとも2層以上であること。
(6)ポリアミドフィルムが、シュリンク包装用のポリアミドフィルムであること。
(7)ポリアミドフィルムが、ケーシング包装用のポリアミドフィルムであること。
【発明の効果】
【0008】
本発明のポリアミドフィルムは、水冷インフレーション成形により製造されたフィルム又は、水冷インフレーション成形により製造されたフィルムをさらに同時二軸延伸など延伸された延伸フィルムであり、シュリンク包装用やケーシング包装用に用いることができる食品等の包装材料として、酸素ガスバリア性に優れ、突き刺し性に優れ、熱水収縮性の大きいフィルムである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明のポリアミドフィルムは、
少なくとも1層のポリアミド層を有する単層又は多層のポリアミドフィルムであり、
ポリアミド層が、50〜90重量%の(A)ε−カプロラクタム及びε−アミノカプロン酸から選ばれる成分と、(B)12−アミノドデカン酸及びω−ラウロラクタムから選ばれる成分及び(C)ヘキサメチレンジアミンとアジピン酸の当モル塩との合計量(B成分とC成分の合計量)10〜50重量%とを共重合(A成分、B成分及びC成分の3成分を含み、3成分の合計量が100重量%である)して得られるポリアミドであり、
水冷インフレーション成形により製造されることを特徴とするポリアミドフィルムである。
【0010】
好ましくは本発明のポリアミドフィルムは、
少なくとも1層のポリアミド層を有する単層又は多層のポリアミドフィルムであり、
ポリアミド層が、50〜90重量%の(A)ε−カプロラクタム及びε−アミノカプロン酸から選ばれる成分と、(B)12−アミノドデカン酸及びω−ラウロラクタムから選ばれる成分及び(C)ヘキサメチレンジアミンとアジピン酸の当モル塩との合計量(B成分とC成分の合計量)10〜50重量%とを共重合(A成分、B成分及びC成分の3成分を含み、3成分の合計量が100重量%である)して得られるポリアミドであり、
水冷インフレーション成形により製造されたフィルムをさらに延伸して得られることを特徴とするポリアミドフィルムである。
【0011】
好ましくは本発明のポリアミドフィルムは、
少なくとも1層のポリアミド層と、少なくとも1層の熱可塑性樹脂層との2層以上の多層のポリアミドフィルムであり、
ポリアミド層が、50〜90重量%の(A)ε−カプロラクタム及びε−アミノカプロン酸から選ばれる成分と、(B)12−アミノドデカン酸及びω−ラウロラクタムから選ばれる成分及び(C)ヘキサメチレンジアミンとアジピン酸の当モル塩との合計量(B成分とC成分の合計量)10〜50重量%とを共重合(A成分、B成分及びC成分の3成分を含み、3成分の合計量が100重量%である)して得られるポリアミドであり、
水冷インフレーション成形により製造されることを特徴とするポリアミドフィルムである。
【0012】
好ましくは本発明のポリアミドフィルムは、
少なくとも1層のポリアミド層と、少なくとも1層の熱可塑性樹脂層との2層以上の多層のポリアミドフィルムであり、
ポリアミド層が、50〜90重量%の(A)ε−カプロラクタム及びε−アミノカプロン酸から選ばれる成分と、(B)12−アミノドデカン酸及びω−ラウロラクタムから選ばれる成分及び(C)ヘキサメチレンジアミンとアジピン酸の当モル塩との合計量(B成分とC成分の合計量)10〜50重量%とを共重合(A成分、B成分及びC成分の3成分を含み、3成分の合計量が100重量%である)して得られるポリアミドであり、
水冷インフレーション成形により製造されたフィルムをさらに延伸して得られることを特徴とするポリアミドフィルムである。
【0013】
ポリアミド層は、
50〜90重量%の(A)ε−カプロラクタム及びε−アミノカプロン酸から選ばれる成分(A成分)と、(B)12−アミノドデカン酸及びω−ラウロラクタムから選ばれる成分(B成分)及び(C)ヘキサメチレンジアミンとアジピン酸の当モル塩(C成分)との合計量(B成分とC成分の合計量)10〜50重量%とのA成分、B成分及びC成分を含む成分を共重合(A成分、B成分及びC成分の合計量が100重量%である)して得られるポリアミドからなる層である。
ポリアミド層のA成分は、好ましくは76〜84重量%である。
ポリアミド層のB成分は、好ましくは6〜14重量%である。
【0014】
ポリアミド層のA成分、B成分及びC成分の構成の具体例を以下に示す(但し、A成分、B成分及びC成分の合計量は、100重量%である)。
(I)ポリアミド層は、A成分が50〜90重量%と、B成分とC成分との合計量が10〜50重量%とを共重合(A成分、B成分及びC成分の3成分を含む)して得られるポリアミドからなるポリアミド層である。
(II)ポリアミド層は、A成分が50〜90重量%、B成分が6〜14重量%、残りがC成分であり、B成分とC成分との合計量が10〜50重量%であり、A成分、B成分及びC成分の3成分を共重合して得られるポリアミドからなるポリアミド層が好ましい。
(III)ポリアミド層は、A成分が76〜84重量%と、B成分とC成分との合計量が16〜24重量%とを共重合(A成分、B成分及びC成分の3成分を含む)して得られるポリアミドからなるポリアミド層が好ましい。
(IV)ポリアミド層は、A成分が76〜84重量%、B成分が6〜14重量%、残りがC成分であり、B成分とC成分との合計量が16〜24重量%であり、A成分、B成分及びC成分の3成分を共重合して得られるポリアミドからなるポリアミド層が好ましい。
【0015】
ポリアミド層を構成するポリアミドの製造は、溶融重合、溶液重合や固相重合等公知のポリアミドの重合方法で行うことができる。製造装置としては、バッチ式反応釜、一槽式ないし多槽式の連続反応装置、管状連続反応装置、一軸型混練押出機、二軸型混練押出機等の混練反応押出機等、公知のポリアミド製造装置を用いることができる。重合方法としては溶融重合、溶液重合や固相重合等の公知の方法を用い、常圧、減圧、加圧操作を繰り返して重合することができる。これらの重合方法は単独で、あるいは適宜、組合せて用いることができる。
【0016】
本発明のポリアミドフィルムは、ポリアミド層のほかに、熱可塑性樹脂層を内層及び/又は外層に有することができる。
熱可塑性樹脂層としては、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、アイオノマー、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体などのエチレン系樹脂、エチレン−αオレフィン共重合体、プロピレン単独重合体、プロピレンと炭素数2〜8のα−オレフィンとの共重合体などのプロピレン系樹脂などのオレフィン系樹脂、ポリエステル、ポリビニルアルコールなど、及びこれらを延伸したものなどを用いることができる。
これらの中で水蒸気バリア性を確保するときには非極性ポリオレフィンである低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、エチレン−αオレフィン共重合体、プロピレン単独重合体、プロピレンと炭素数2〜8のα−オレフィンとの共重合体などのプロピレン系樹脂などを使用することが好まれる。また、ガスバリア性の強化のために、エチレン−酢酸ビニル共重合体あるいは、ナイロンMXD6等からなる層を挿入することもできる。
【0017】
本発明のポリアミドフィルムは、水冷インフレーション成形により製造することができ、好ましくは水冷インフレーション成形により製造されたフィルムを、さらに一軸延伸、同時二軸延伸又は逐次二軸延伸などの延伸を行うことにより製造することができる。
【0018】
本発明のポリアミドフィルムを製造する方法としては、ポリアミド層などの各層の樹脂成分を押出機などを用いて溶融混練し、リング状などのダイにより筒状などの形状に押し出したものを、水で冷却する水冷式チューブラー法が適用される。
【0019】
本発明のポリアミドフィルムは、水冷インフレーション成形により未延伸フィルムを製造し、引続き連続して延伸を実施しても良いし、未延伸フィルムを製造し一旦ロール状などに巻き取り、さらに別工程として延伸を実施しても良く、公知の熱延伸方法により、延伸フィルムとして用いることができる。
本発明のポリアミドフィルムは、水冷インフレーション成形により製造されたフィルムを、さらに50℃から130℃の範囲で一軸又は二軸に延伸して、延伸したポリアミドフィルムを得ることができる。延伸方法は、通常に行われているポリアミドフィルムの延伸方法、例えば加熱ロールによる一軸延伸、二軸延伸方法については、チューブラー法による同時二軸延伸法や加熱ロール/テンターによる逐次二軸延伸法で成形できる。延伸倍率は、特に決まっているわけではないが、通常は2倍以上、好ましくは2〜6倍、より好ましくは2.5〜5倍である。
このような本発明の延伸されたポリアミドフィルムは、シュリンク包装用フィルム又はケーシング包装用フィルムとして好適に使用でき、50℃の熱水収縮試験による熱収縮率が10%以上、好ましくは15%以上であり、70℃での熱水収縮試験による熱収縮率が15%以上、好ましくは17%以上、さらに好ましくは20%以上であり、90℃での熱水収縮試験による熱収縮率が20%以上、好ましくは25%以上、さらに好ましくは27%以上である。
【0020】
本発明のポリアミドフィルムの層構成としては、ポリアミド層単独の層、ポリアミド層と熱可塑性樹脂層との2層、ポリアミド層/(接着剤又は接着性樹脂層)/熱可塑性樹脂層との3層、ポリアミド層及び熱可塑性樹脂層と、これらの層以外の層との少なくとも3層以上、ポリアミド層、熱可塑性樹脂層及び(接着剤又は接着性樹脂層)と、これらの層以外の層との少なくとも4層以上などを挙げることができる。
具体的には、ポリアミド層/(接着剤又は接着性樹脂層)/熱可塑性樹脂層、ポリアミド層/(接着剤又は接着性樹脂層)/熱可塑性樹脂層/(接着剤又は接着性樹脂層)/熱可塑性樹脂層、熱可塑性樹脂層/(接着剤又は接着性樹脂層)/ポリアミド層/(接着剤又は接着性樹脂層)/熱可塑性樹脂層、などを挙げることができ、接着剤又は接着性樹脂層は必要に応じて設けることができる。
【0021】
本発明のポリアミドフィルムが多層の場合、本発明のポリアミドフィルムは、ポリアミド層と熱可塑性樹脂層、又はポリアミド層、接着性樹脂層及び熱可塑性樹脂層とは、各層の樹脂成分を溶融状態で同時に又は逐次に、押出すことにより製造することができる。
また、本発明のポリアミドフィルムは、ポリアミド層を有するフィルムと、熱可塑性樹脂層、又は接着性樹脂層及び熱可塑性樹脂層とを有するフィルムをそれぞれ製造し、フィルムを直接又は、接着剤又は接着性樹脂を介して、はり合わせて製造することができる。
【0022】
接着性樹脂層としては、不飽和カルボン酸またはその誘導体から選ばれた少なくとも一種のモノマーをグラフトした酸変性ポリエチレンなどの酸変性ポリオレフィン樹脂などを用いることができる。
【0023】
本発明のポリアミドフィルムの2層以上の構成の具体例としては、外層側より、ポリアミド層/接着性樹脂層/熱融着性を有するエチレン系樹脂層、ポリアミド層/接着性樹脂層/エチレン系樹脂層、ポリアミド層/接着性樹脂層/エチレン系樹脂層/接着性樹脂層/熱融着性を有するエチレン系樹脂層、などを挙げることができる。
【0024】
本発明のポリアミドフィルムは、最外層に印刷処理を施す場合があり、最外層を格子模様、紋(梨地)模様、台形模様、絹目模様、凹凸状などの公知のエンボス加工や、マット加工などを行うことができる。マット加工としては、例えば無機物又は有機物を添加することにより行うことが出来、その具体例としては、外層に、無機物として、シリカやタルク、マイカなどの酸化ケイ素系化合物やシラスバルーンなどの径が20μm以下の微粒子を添加することにより行うことができる。
【0025】
本発明のポリアミドフィルム、このフィルムを構成するポリアミド層及びこの層を構成するポリアミド、熱可塑性樹脂層及びこの層を構成する熱可塑性樹脂などは、得られるフィルムや樹脂などの特性を損なわない範囲内で、熱安定剤,酸化防止剤,紫外線吸収剤,耐候剤,滑剤,フィラー,核剤,可塑剤,発泡剤,ブロッキング防止剤、防雲剤、難燃剤、染料、顔料,安定剤,カップリング剤等を含有することができる。
【0026】
本発明のポリアミドフィルムの層の厚みは、
(1)ポリアミド層単独の場合、ポリアミド層は10〜100μmの範囲が好ましい、
(2)ポリアミド層と熱可塑性樹脂層との2層、又はポリアミド層/(接着剤又は接着性樹脂層)/熱可塑性樹脂層との3層以上の場合、ポリアミド層は2〜80μmの範囲、熱可塑性樹脂層は8〜120μmの範囲が好ましい。
接着剤又は接着性樹脂の厚みは、目的に応じて適宜選択することができる。
【0027】
本発明のポリアミドフィルムは、熱水収縮性が大きく、酸素バリア性に優れるために、食品包装用フィルム、食品包装用シュリンクフィルム、食品包装用ケーシングフィルムとして用いることができる。
【実施例】
【0028】
以下に実施例を示して説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
【0029】
実施例及び比較例に示した測定値は以下の方法で測定する。
1)ポリアミドのηr(相対粘度)の測定: JIS・K6810に準じて、96重量%の濃硫酸を溶媒として、1重量/容量%のポリアミド濃度で、ウベローデ粘度計を用い、25℃の温度で測定する。
2)融点: セイコーインスツルメンツ(株)製DSC210型を用い、窒素ガス雰囲気下に試料のポリアミドを昇温速度10℃/minで250℃まで加熱し、その温度で10分間保持した後、10℃/minの速度で30℃まで冷却した直後、再度10℃/minで250℃まで加熱し、再度加熱した過程に得られた吸熱ピークに達した時の加熱温度を融点とする。
3)ヘイズ: ASTM・D−1003に準じて、スガ試験機社製直読式ヘイズメーターを使用して、ヘイズを測定する。
4)グロス(光沢度): ASTM・D−523に準じて、スガ試験機社製デジタル変角光沢度計を使用して、グロスを測定する。
5)突刺強度: JAS・P1019に準じて、TOYO BALDWIN社製テンシロンUTM−III−200を使用して、突刺速度50mm/min、23℃、50%RHの条件下で測定する。
6)酸素透過度: ASTM・D−3985−81に準じて、モダンコントロール社製MOCON−OX−TRAN2/20を使用して、23℃、0%RHの条件下で測定する。
【0030】
ヘイズ、グロス、突刺強度及び酸素透過度の評価は、水冷インフレーション成形して得られる3層の未延伸フィルムを、さらに以下の同時二軸延伸フィルムの製造方法により、同時二軸延伸して得られる、同時二軸延伸フィルムを用いて行う。
同時二軸延伸フィルムの製造方法: 所定雰囲気温度(80℃)に温度調節された二軸延伸機BIX−703型(岩本製作所製)の延伸槽に、縦92mm、横92mmの未延伸の試料フィルムを取付け、雰囲気温度(「延伸時温度」と記載することもある。)で20秒間予熱した後、フィルムの押出方向及び押出の直角方向の2方向に、140mm/秒の変形速度で2.8倍延伸した後、80℃の加熱空気で1分間熱処理を行う。
【0031】
7)延伸性: 延伸時の応力、延伸時の延伸機チャックの把持性、延伸されたフィルムの延伸ムラの有無を総合して判断する。延伸機は岩本製作所製BIX703ラボ延伸機を使用して測定する。
評価:◎:延伸機チャック把持が十分で均一な延伸ができた場合、○:均一な延伸が出来た場合、△:延伸できるがムラを生じた場合。
8)熱水収縮率: 同時二軸延伸直後のフィルムのMD方向の長さA(mm)を測定し、所定温度(50℃、70℃又は90℃)に設定したウォーターバスに同フィルムを1分間浸漬した後、23℃、50%RHの環境下に24時間放置し、浸漬放置後の同箇所の長さB(mm)を測定し、下記数式(1)に従い熱水収縮率(%)を算出した。
【0032】
【数1】

【0033】
(重合例1)
70Lのオ−トクレ−ブにε−カプロラクタム16.0kg、AH塩水溶液(50wt%水溶液)4.0kg、12−アミノドデカン酸2.0kgおよび蒸留水2.0kgを仕込み、重合槽内を窒素置換したのち、密閉して180℃まで昇温し、次いで攪拌しながら重合槽内を17.5kgf/cmGに調圧しながら、重合槽内温度を240℃まで昇温した。重合温度が240℃に達して2hr後に重合槽内の圧力を約2hrかけて常圧に放圧した。放圧後、窒素気流下で1hr重合した後、2hr減圧重合を行った。窒素を導入して常圧に復圧後、攪拌機を止めて、ストランドとして抜き出しペレット化した。このポリアミドペレットを沸騰水中に入れ、攪拌下に約12時間、洗浄して未反応モノマーを抽出除去した後、100℃で24時間減圧乾燥した。このようにして得たポリアミドの相対粘度は3.88であり、融点は188℃であった。このポリアミドをPA−1と称す。
【0034】
(重合例2)
70Lのオ−トクレ−ブにε−カプロラクタム16.0kg、AH塩水溶液(50wt%水溶液)2.4kg、12−アミノドデカン酸2.8kgおよび蒸留水2.8kgを仕込み、重合例1と同様の方法で実施し相対粘度3.89、融点188℃のポリアミドを得た。このポリアミドをPA−2と称す。
【0035】
(重合例3)
70Lのオ−トクレ−ブにε−カプロラクタム16.0kg、AH塩水溶液(50wt%水溶液)8.0kgを仕込み、重合例1と同様の方法で実施し相対粘度3.92、融点189℃のポリアミドを得た。このポリアミドをPA−3と称す。
【0036】
(重合例4)
70Lのオ−トクレ−ブにε−カプロラクタム16.0kg、12−アミノドデカン酸4.0kgおよび蒸留水4.0kgを仕込み、重合例1と同様の方法で実施し相対粘度3.83、融点198℃のポリアミドを得た。このポリアミドをPA−4と称す。
【0037】
(重合例5)
70Lのオ−トクレ−ブにε−カプロラクタム17.0kg、AH塩水溶液(50wt%水溶液)6.0kgを仕込みおよび蒸留水1.0kgを仕込み、重合例1と同様の方法で実施し相対粘度3.92、融点198℃のポリアミドを得た。このポリアミドをPA−5と称す。
【0038】
(重合例6)
70Lのオ−トクレ−ブにε−カプロラクタム16.0kg、AH塩水溶液(50wt%水溶液)6.0kg、12−アミノドデカン酸1.0kgおよび蒸留水1.0kgを仕込み、重合例1と同様の方法で実施し相対粘度3.88、融点189℃のポリアミドを得た。このポリアミドをPA−6と称す。
【0039】
(実施例1)
プラボー社製3種3層共押出水冷多層インフレーション成形機(ダイス口径100mmφ)を使用して、第一層(最外層)に撥水剤500ppmを添加したPA−1を、第二層にオレフィン系接着性樹脂(三井化学社製、商品名:アドマーNF518)、第三層(最内層)に低密度ポリエチレン(宇部興産社製、商品名:UBEポリエチレンF222)をそれぞれ成形温度260℃で円筒上にサーキュラーダイよりブローアップ比1.53で溶融押出しし、水温22℃で冷却後、ピンチロールで折り畳みフィルム総厚み100μmの未延伸フィルムを作成した。
次に、このフィルムを用い、岩本製作所製BIX703二軸延伸装置を使用し、延伸速度140mm/sec、延伸温度80℃、延伸倍率2.8×2.8倍に同時二軸延伸した後、80℃の加熱空気で1分間熱処理を行い、同時二軸延伸フィルムを作成し、延伸状態の確認と、各種物性を測定し、その結果を表1に示す。
【0040】
(実施例2)
第一層(最外層)に撥水剤500ppmを添加したPA−2を使用した以外は、実施例1と同様の方法で水冷インフレーション成形を行い、さらに同時二軸延伸を行い、同時二軸延伸フィルムを作成し、延伸状態の確認と、各種物性を測定し、その結果を表1に示す。
【0041】
(比較例1〜3)
第一層(最外層)に撥水剤500ppmを添加したPA−3、PA−4又はPA−5を使用した以外は、実施例1と同様の方法で水冷インフレーション成形を行い、さらに同時二軸延伸を行い、同時二軸延伸フィルムを作成し、延伸状態の確認と、各種物性を測定し、その結果を表1に示す。
【0042】
(比較例4)
プラボー社製3種3層共押出空冷多層インフレーション成形機(ダイス口径100mmφ)を使用して、第一層(最外層)に滑剤300ppmを添加したPA−6を、第二層にオレフィン系接着性樹脂(三井化学社製、商品名:アドマーNF518)、第三層(最内層)に低密度ポリエチレン(宇部興産社製、商品名:UBEポリエチレンF222)を雰囲気温度25℃、樹脂温度250℃、ブローアップ比1.53の条件で、連続的に空冷インフレーション成形してフィルム総厚み60μmの未延伸フィルムを作成した。次に、このフィルムを用い、岩本製作所製BIX703二軸延伸装置を使用し、延伸速度140mm/sec、延伸温度80℃、延伸倍率2.8×2.8倍に同時二軸延伸した後、80℃の加熱空気で1分間熱処理を行い、二軸延伸フィルムを作成し、延伸状態の確認と、各種物性を測定し、その結果を表1に示す。
【0043】
【表1】


【0044】
本発明のポリアミドフィルムは、水冷インフレーション成形により製造されたフィルム又は、水冷インフレーション成形により製造されたフィルムをさらに同時二軸延伸など延伸された延伸フィルムであり、食品等の包装材料として酸素ガスバリア性、突き刺し性及び熱水収縮性のバランスが優れる、シュリンク包装用又はケーシング包装用に好適に用いることができる。
本発明のポリアミドフィルムは、延伸成形性に優れ、光沢性及び透明性に優れる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1層のポリアミド層を有する単層又は多層のポリアミドフィルムであり、
ポリアミド層が、50〜90重量%の(A)ε−カプロラクタム及びε−アミノカプロン酸から選ばれる成分と、(B)12−アミノドデカン酸及びω−ラウロラクタムから選ばれる成分及び(C)ヘキサメチレンジアミンとアジピン酸の当モル塩との合計量(B成分とC成分の合計量)10〜50重量%とを共重合(A成分、B成分及びC成分の3成分を含み、3成分の合計量が100重量%である)して得られるポリアミドであり、
水冷インフレーション成形により製造されることを特徴とするポリアミドフィルム。
【請求項2】
少なくとも1層のポリアミド層を有する単層又は多層のポリアミドフィルムであり、
ポリアミド層が、50〜90重量%の(A)ε−カプロラクタム及びε−アミノカプロン酸から選ばれる成分と、(B)12−アミノドデカン酸及びω−ラウロラクタムから選ばれる成分及び(C)ヘキサメチレンジアミンとアジピン酸の当モル塩との合計量(B成分とC成分の合計量)10〜50重量%とを共重合(A成分、B成分及びC成分の3成分を含み、3成分の合計量が100重量%である)して得られるポリアミドであり、
水冷インフレーション成形により製造されたフィルムをさらに延伸して得られることを特徴とするポリアミドフィルム。
【請求項3】
ポリアミド層の(A)ε−カプロラクタム及びε−アミノカプロン酸から選ばれる成分が、76〜84重量%であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のポリアミドフィルム。
【請求項4】
ポリアミド層の(B)12−アミノドデカン酸及びω−ラウロラクタムから選ばれる成分が、6〜14重量%であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリアミドフィルム。
【請求項5】
ポリアミドフィルムは、ポリアミド層のほかに、さらに熱可塑性樹脂層を有する少なくとも2層以上であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリアミドフィルム。
【請求項6】
ポリアミドフィルムが、シュリンク包装用のポリアミドフィルムであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のポリアミドフィルム。
【請求項7】
ポリアミドフィルムが、ケーシング包装用のポリアミドフィルムであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のポリアミドフィルム。


【公開番号】特開2006−111763(P2006−111763A)
【公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−301601(P2004−301601)
【出願日】平成16年10月15日(2004.10.15)
【出願人】(000000206)宇部興産株式会社 (2,022)
【Fターム(参考)】