説明

ポリアミド系樹脂組成物ペレット、および該ポリアミド系樹脂組成物ペレットの製造方法

【課題】耐熱性や機械的特性を損なうことなく、軽量で耐衝撃性に優れたポリアミド系樹脂ペレットおよびその製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明のポリアミド系樹脂組成物ペレットは、ポリアミド11および/またはポリアミド12を100質量部とビニロン繊維を1〜100質量部含有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリアミド系樹脂組成物ペレット、および該ポリアミド系樹脂組成物ペレットの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリアミド11やポリアミド12は、低吸水性で柔軟性であることから、各種用途に用いられている。樹脂単独では衝撃強度が低いことから、ガラス繊維により補強された樹脂組成物として用いられている(特許文献1〜5)。しかしながら、ガラス繊維は、補強効果には優れるものの、密度が約2.5g/cmであり、ポリアミド11やポリアミド12の密度(それぞれ1.04g/cm、1.02g/cm)に比べて大きいため、得られる樹脂組成物の見かけ密度が大きくなるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−32356号公報
【特許文献2】特開2010−84092号公報
【特許文献3】特開2009−227844号公報
【特許文献4】特開2009−204121号公報
【特許文献5】特開2009−79215号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記のような状況に鑑みてなされたもので、軽量で、耐衝撃性が高い成形体を得ることができるポリアミド系樹脂組成物ペレットおよびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、補強繊維としてビニロン繊維を用いることにより、上記目的を達成しうるポリアミド系樹脂組成物ペレットを得ることができることを見出し、本発明に到達した。
【0006】
すなわち、本発明は以下を要旨とするものである。
(1)ポリアミド11および/またはポリアミド12を100質量部とビニロン繊維を10〜100質量部含有することを特徴とするポリアミド系樹脂組成物ペレット。
(2)(1)のポリアミド系樹脂組成物ペレットを製造するに際し、ビニロン繊維束を開繊させ、この繊維束を溶融状態にあるポリアミド11および/またはポリアミド12内に通過させることにより、ビニロン繊維束にポリアミド11および/またはポリアミド12を含浸させて、ポリアミド11および/またはポリアミド12とビニロン繊維とを混合し、その後、裁断することを特徴とするポリアミド系樹脂組成物ペレットの製造方法。
(3)平均繊維径が3〜30μmのビニロン繊維束を用いることを特徴とする(2)に記載のポリアミド系樹脂組成物ペレットの製造方法。
(4)(1)のポリアミド系樹脂組成物ペレットを成形してなることを特徴とする成形体。
(5)自動車部品、自転車部品、家電部品または産業資材の用途に用いられることを特徴とする(4)の成形体。
【発明の効果】
【0007】
本発明のポリアミド系樹脂組成物ペレットによれば、軽量で、耐衝撃性が向上したものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明のポリアミド系樹脂組成物ペレットの製造に用いる含浸装置の例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を具体的に説明する。
本発明のポリアミド系樹脂組成物ペレット(以下、単に「樹脂組成物ペレット」と称する場合がある。)は、ポリアミド11および/またはポリアミド12とビニロン繊維を含有するものである。
【0010】
本発明に用いるポリアミド11は、(−CO−(CH11−NH−)で示されるポリアミドであり、ポリアミド12は、(−CO−(CH12−NH−)で示されるポリアミドである。ポリアミド11やポリアミド12は、単独で用いてもよく、併用してもよい。また、本発明の効果を損なわない範囲で、他のモノマーが共重合されていてもよく、他のポリアミドが混合されていてもよい。
【0011】
本発明においては、ビニロン繊維を用いることが必要である。ビニロン繊維は強度が高いため、ポリアミド11やポリアミド12の補強効率に優れている。加えて、ビニロン繊維はガラス繊維に比べて密度が小さく、得られるポリアミド系樹脂ペレットが軽量となる。
【0012】
ビニロン繊維は、連続繊維の束である繊維束または短くカットされたチョップドストランド、いずれであってもよいが、なかでも、射出成形後に得られる成形片内部における繊維長を長く保持することができ、高い耐衝撃性を得られやすく、作業適性にも優れるという観点から、繊維束であることが好ましい。
【0013】
ビニロン繊維束は、ビニロン繊維フィラメント糸を多数に集束して形成されている。ビニロン繊維フィラメントの平均繊維径は、ペレット内部でビニロン繊維の含浸が効率良く行われるという観点から、3〜30μmであることが好ましく、より好ましくは14〜30μmである。また、このような繊維束のフィラメント本数は、溶融したポリアミド11および/またはポリアミド12(以下、「特定ポリアミド」と称する場合がある。)とビニロン繊維束の効率的な接触が行われるという観点から、275〜6000本であることが好ましく、350〜2000本であることがより好ましい。繊維束のフィラメント本数の調整は、数本の繊維束を合わせて行うことができる。
【0014】
ビニロン繊維の製造方法としては、例えば、以下の2つの方法が挙げられる。第1の方法としては、ポリビニルアルコールをジメチルスルホキシド等の有機溶媒に溶解した紡糸原液を、ノズルからメタノール中に紡糸する方法である。メタノール中に紡糸した際、ポリビニルアルコール水溶液は瞬時にゲル状態となり、紡糸原液に用いた有機溶媒はゲル全体から均一に抜けていく。その後、紡糸された繊維は、中和、湿熱延伸、洗浄、乾熱延伸の工程に付される。湿熱延伸時の延伸倍率は5倍以上、湿熱延伸時の延伸倍率は4倍以上、総延伸倍率は20倍以上とすることが好ましい。第2の方法としては、ポリビニルアルコール水溶液100質量部にほう酸を0.5〜5質量部加えた紡糸原液を、水酸化ナトリウムを溶解した凝固浴中へ紡糸する方法である。紡糸した繊維は、さらに中和、湿熱延伸、水洗、乾燥、乾熱延伸の工程に付される。湿熱工程時の延伸倍率は5倍以上、乾熱延伸時の延伸倍率は4倍以上、総延伸倍率は20倍以上とすることが好ましい。
【0015】
ポリビニルアルコールの平均重合度は、特に限定されないが、1500〜3000であることが好ましく、1700〜2500であることがより好ましい。ポリビニルアルコールの平均重合度を1500〜3000の範囲とすることで、紡糸原液の溶液粘度を適切な値とすることができ、生産性よくビニロン繊維を作製することができる。
【0016】
本発明のポリアミド系樹脂組成物ペレットにおいて、ビニロン繊維の含有量は、100質量部の特定ポリアミドに対し、10〜100質量部であることが必要であり、10〜80質量部であることが好ましく、10〜60質量部であることがより好ましい。ビニロン繊維の含有量が10質量部未満であると、成形体の衝撃強度が低くなるので好ましくない。一方、ビニロン繊維の含有量が100質量部を超えると、特定ポリアミドがビニロン繊維束から剥がれやすくなるので好ましくない。
【0017】
次に、本発明のポリアミド系樹脂組成物ペレットの製造方法について説明する。本発明のポリアミド系樹脂組成物ペレットの製造方法としては、チョップドストランド法、ロングファイバー法いずれを用いてもよい。
【0018】
チョップドストランド法とは、ビニロン繊維束を所定の長さに裁断し、チョップドストランドとし、それらを特定ポリアミドと混合して溶融混練する方法である。
【0019】
チョップドストランドの長さは、3〜15mmに調整されることが好ましく、4〜10mmに調整されることがより好ましい。
【0020】
チョップドストランドを特定ポリアミドと溶融混練する方法としては、押出機を用いて溶融混練する方法等が挙げられる。溶融混練温度は、200〜230℃とすることが好ましい。溶融混練された樹脂組成物をストランド状に押し出し、冷却したのち、ストランドカッター等によりカッティングすることで、樹脂組成物ペレットを得ることができる。
【0021】
ロングファイバー法とは、ビニロン繊維束を開繊させ、この繊維束を溶融状態にある特定ポリアミド内に通過させることにより、ビニロン繊維束に特定ポリアミドを含浸させて、特定ポリアミドとビニロン繊維とを混合する方法である。
【0022】
ロングファイバー法に用いる含浸装置の例を図1に示す。含浸装置は、芯鞘タイプの含浸ダイ3、およびアウトダイ5(蛇行貫通部)が接合部品6により連結されているものである。ビニロン繊維束1が、含浸ダイ3内の空洞部8を通って、ビニロン繊維束導入口4に導入される。それと同時に、溶融樹脂導入口2(取付部品7により溶融押出混練機の吐出側と連結されている)から吐出される溶融状態の特定ポリアミドを流入させて、ビニロン繊維束1を特定ポリアミドに接触させる。そして、アウトダイ5(蛇行貫通部)に通すことにより、ビニロン繊維束1を、移動中心軸に対し徐々に偏心させ蛇行させる。ビニロン繊維束1を蛇行させることで、しごきを与えることができ、ビニロン繊維束1中に含有する空気の排出を効果的に促進させるとともに、溶融した特定ポリアミドを効率よく含浸させることができる。
【0023】
繊維束導入口は、繊維束の直径よりも広幅のダイ孔とすることが好ましく、楕円型の広幅のダイ孔とすることがより好ましい。繊維束導入口が楕円型の広幅のダイ孔である場合、ダイ孔の長辺長さは、繊維束の直径に対して2〜5倍であることが好ましく、2.5〜4.5倍であることがより好ましい。ダイ孔の短辺長さは、繊維束の直径に対して1.0〜1.6倍であることが好ましく、1.1〜1.5倍であることがより好ましい。ダイ孔の長辺長さが繊維束の直径に対して2倍未満である場合、繊維束を十分開繊させることが難しくなる場合がある。
【0024】
アウトダイには、繊維束の移動中心軸に対し、徐々に偏心させて繊維束を蛇行させる内部構造を有することが好ましい。繊維束を蛇行させることで、繊維束に対ししごきを与え、繊維束中に含有する空気層の除去を促すとともに、繊維束の間隙に溶融した特定ポリアミド樹脂を含浸させることができる。
【0025】
特定ポリアミドとビニロン繊維の比率は、ビニロン繊維束の引き取り速度と特定ポリアミドの吐出量で調整することができる。ビニロン繊維束は、一定速度で引きながら溶融した特定ポリアミドを通過させることが好ましい。一定速度で引き取ると、特定ポリアミドとビニロン繊維の比率を制御しやすい。
【0026】
特定ポリアミドの溶融温度は、200〜230℃であることが好ましい。溶融温度をこの範囲とすることで、適度な溶融粘度とすることができる。溶融温度が230℃を超えると、ビニロン繊維の融点である240℃に近づくため、樹脂組成物ペレットの製造中に、ビニロン繊維が溶融または切断され、ビニロン繊維束を含浸ダイに通過させることができなくなる場合がある。
【0027】
ロングファイバー法においては、特定ポリアミドとビニロン繊維とを含有する樹脂組成物をストランド状に押し出した後、冷却、裁断の工程を経て、ペレット状とすることができる。裁断機としては、ストランドカッター、ロータリーカッター、スライドカット式カッターが好ましく、ロータリーカッター、スライドカット式カッターがより好ましい。ロータリーカッター、スライドカット式カッターを用いて裁断することで、特定ポリアミドがビニロン繊維束から剥がれ落ちることを防止できる。
【0028】
ロングファイバー法においては、前記のような製造プロセスに由来して、裁断後のペレットの長さとペレット中のビニロン繊維の平均繊維長はほぼ同じとなる。ペレットの長さは、1mm〜15mmとすることが好ましい。
【0029】
本発明の樹脂組成物ペレットには、本発明の特性を損なわない範囲において、他の熱可塑性樹脂、熱安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、着色剤、難燃剤、難燃助剤、可塑剤等を添加してもよい。これらは、通常、特定ポリアミドとビニロン繊維との溶融混練時、またはビニロン繊維への特定ポリアミドの含浸時に、添加することができる。
【0030】
本発明のポリアミド系樹脂組成物ペレットは、射出成形、圧縮成形、押出成形、トランスファー成形等公知の成形方法により、各種成形体に加工することができる。
【0031】
本発明のポリアミド系樹脂組成物ペレットからなる成形体は、軽量で、衝撃強度が高いため、自動車部品、自転車部品、家電部品、産業資材等の用途に好適に使用できる。従ってこの様な特性を応用した用途として、自動車部品としては、自動車燃料配管用チューブ、燃料タンク、エンジンフィルター、バンパー、フロントフェンダー、リアフェンダー、ダッシュボード、ベースプレート、スイッチ類、サンバイザー、ラジエーター、コンソールボックス、キャニスタ等が挙げられる。自転車部品としては、ブレーキ類、レバー類、ライトカバー、ホイールカバー、サドルカバー、スタンド、かご、チャイルドシート、ヘルメット等が挙げられる。家電部品としては、リモコンの筐体、スイッチ類、携帯電話、冷蔵庫の筐体が挙げられる。産業資材としては、プラスチック光ファイバーの部材等が挙げられる。
【0032】
また、本発明のポリアミド系樹脂組成物ペレットからなる成形体は、耐衝撃性が優れていることから、該成形体が破壊された場合であっても、その破壊部位が鋭利な形状とはなりにくい。こうした特性を利用して、該成形体は人体と接触する用途への使用も期待できる。
【実施例】
【0033】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこの実施例により限定されるものではない。なお、実施例中の値の測定および評価は以下のように行った。
【0034】
(1)曲げ強度
ポリアミド系樹脂組成物ペレットを十分に乾燥した後、射出成形機(東芝機械社製、「EC−100型」)を用いて射出成形をおこない、縦8mm×横10mm×厚み4mmの成形片を作製した。シリンダ温度は210℃、金型温度は50℃、射出時間は30秒、冷却時間は40秒であった。得られた成形片を用い、ISO178に従って測定した。
【0035】
(2)シャルピー衝撃強度
上記(1)で作製した成形片にノッチを付けて、ISO179に従って測定した。
【0036】
(3)荷重たわみ温度
上記(1)で作製した成形片を用い、ISO75に従って、荷重0.45MPa下で測定した。
【0037】
(4)密度
電子比重計(京都電子工業社製)を用いて、温度20℃で測定した。
【0038】
(5)成形片中における繊維の平均繊維長
強化材としてビニロン繊維を使用した場合、上記(1)で作製した成形片を、塩化メチレンを用いて成形片の樹脂成分を溶解させ、ビニロン繊維を得た。マイクロスコープを用いて、ビニロン繊維の長さを100点測定し、平均の長さを求めた。
【0039】
なお、強化材としてガラス繊維を使用した場合、上記(1)で作製した成形片を、520℃に設定した溶融炉に24時間入れて成形片の樹脂成分を焼却し、ガラス繊維を得た。マイクロスコープを用いて、ガラス繊維の長さを100点測定し、平均の長さを求めた。
【0040】
(6)融点
示差走査熱量測定装置(パーキンエルマー社製、「DSC7」)を用いて、窒素気流中、昇温速度20℃/分で、20℃から280℃まで昇温し、昇温時の融解温度のピークを融点とした。
【0041】
本発明にて用いた材料を以下に示す。
<ポリアミド系樹脂>
(1)ポリアミド11(A−1)
アルケマ社製 Rilsan B BMNO TLD、融点:185℃
(2)ポリアミド12(A−2)
アルケマ社製 Rilsan A AMNO TLD、融点:178℃
(3)ポリアミド6(A−3)
ユニチカ社製 A1030BRL、融点:226℃
【0042】
<繊維強化材>
(1)ビニロン繊維束(B−1)
ユニチカ社製 1100T−250F−HT2
平均繊維径24μmのビニロン繊維フィラメント250本からなる繊維束
(2)ビニロン繊維束(B−2)
ユニチカ社製 1100T−500F−HT1
平均繊維径14μmのビニロン繊維フィラメント500本からなる繊維束
(3)ビニロン繊維束(B−3)
ユニチカ社製 720T-250F−AS
平均繊維径13μmのビニロン繊維フィラメント250本からなる繊維束
(4)ビニロン繊維束(B−4)
ユニチカ社製 2550T−300F−AS
平均繊維径43μmのビニロン繊維フィラメント300本からなる繊維束
(5)ガラス繊維束(B−5)
ユニチカ社製 ガラス繊維
平均繊維径9μmのガラス繊維フィラメント2000本からなる繊維束
【0043】
実施例1
二軸押出機(池貝製作所製、「PCM−30」)の先端に、図1の含浸ダイ(縦1.5×横2.0mmの繊維束導入口、アウトダイ5に蛇行構造を有する。)を取り付け、長繊維樹脂含浸装置とした。ポリアミド系樹脂(A−1)を長繊維樹脂含浸装置の主ホッパーに供給し、230℃で溶融した。含浸ダイに貫通させてあった繊維強化材(B−1)と、溶融した(A―1)とを含浸ダイ内で接触させた。100質量部の(A−1)に対して、(B−1)が11質量部になるように調整し、押し出し、2個の回転するロールの間を通して引き取った。その後、ロータリーカッターで裁断し、ペレット長が10mmであるポリアミド系樹脂組成物ペレットを得た。
【0044】
実施例2〜3、5〜9、11〜19および比較例1〜9
表1および2に示すように樹脂組成を変更した以外は、実施例1と同様にした。なお、実施例17および19は、長繊維樹脂含浸装置からアウトダイを取り外しておこなった。
【0045】
実施例4
繊維強化材(B−1)を長さ4mmに裁断したチョップドストランド状の(B−1)を二軸押出機(東芝機械製 「TEM26SS」)のサイドフィーダーから、溶融しているポリアミド系樹脂(A−1)に供給し、100質量部の(A−1)に対して、(B−1)が11質量部になる様に調整して、溶融混練をおこなった。押出されるストランドを冷却、裁断して、ペレット状のポリアミド系樹脂組成物を得た。
【0046】
実施例10
表1に示すように樹脂組成を変更した以外は、実施例4と同様な方法でポリアミド系樹脂組成物ペレットを得た。
【0047】
実施例および比較例で得られた樹脂組成物の特性値を、表1および2に示す。
【0048】
【表1】

【0049】
【表2】

【0050】
実施例1〜12より明らかなように、本発明のポリアミド系樹脂組成物ペレットから得られる成形体は、ガラス繊維を用いた比較例4、8よりも密度が小さく、耐衝撃性に優れていた。
【0051】
実施例1〜6と実施例7〜12の対比より明らかなように、ポリアミド11の方がポリアミド12より融点が高いため、ポリアミド11を用いた場合、得られる成形体の耐熱性(荷重たわみ温度)が優れていた。
【0052】
実施例1と実施例4、実施例7と実施例10の対比より明らかなように、成形片中における平均繊維長は、ビニロン繊維束を用いた場合の方がチョップドストランドを用いた場合に比べて長く、成形体の各物性(曲げ強度、シャルピー衝撃強度、荷重たわみ温度)が優れていた。
【0053】
実施例1と実施例13、実施例7と実施例14、実施例1と実施例16、実施例7と実施例18の対比より明らかなように、ビニロン繊維束の繊維径を14〜30μmとした場合、成形体の各物性(曲げ強度、シャルピー衝撃強度、荷重たわみ温度)が優れていた。
【0054】
実施例17および19は、ビニロン繊維に樹脂を含浸させる際にしごきが付与されていなかったため含浸率が低く、得られる成形体の曲げ強度、シャルピー衝撃強度がやや劣るものとなったが、十分に実使用に耐えうるものであった。
【0055】
比較例1、2、5および6においては、特定ポリアミドに対するビニロン繊維の比率が過小であるため、成形体の耐衝撃性向上の効果が認められなかった。
【0056】
比較例3および7においては、特定ポリアミドに対するビニロン繊維の割合が過大であったため、特定ポリアミドがビニロン繊維束から剥がれ、ポリアミド系樹脂組成物ペレットを得る事が出来なかった。
【0057】
比較例4および8においては、ビニロン繊維の代わりにガラス繊維が用いられており、得られる成形体の曲げ強度、荷重たわみ温度等が大きく向上した。しかし、成形体のシャルピー衝撃強度は、ビニロン繊維を用いた実施例1や実施例7よりも小さい値を示しており、衝撃強度の向上に対するガラス繊維配合の効果は、ビニロン繊維を配合した時と比べて小さいものとなった。また、ガラス繊維は密度が大きいため、ビニロン繊維を用いたポリアミド系樹脂組成物ペレットと同等の衝撃強度を得るためには、軽量性に劣るものとなることは明らかである。
【0058】
比較例9においては、ポリアミド系樹脂としてポリアミド6(融点226℃)を使用し、押出温度を240℃としたため、押出温度がビニロン繊維の融点(約230℃)を上回り、ビニロン繊維束が溶融した。そのため、ビニロン繊維束を含浸ダイに通過させることができず、ペレットを得る事が出来なかった。
【符号の説明】
【0059】
1 ビニロン繊維束
2 溶融樹脂流入口
3 含浸ダイ
4 ビニロン繊維束導入口
5 アウトダイ(蛇行貫通部)
6 接合部品
7 取付部分
8 空洞部
9 溶融樹脂の流れ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアミド11および/またはポリアミド12を100質量部とビニロン繊維を10〜100質量部含有することを特徴とするポリアミド系樹脂組成物ペレット。
【請求項2】
請求項1に記載のポリアミド系樹脂組成物ペレットを製造するに際し、ビニロン繊維束を開繊させ、この繊維束を溶融状態にあるポリアミド11および/またはポリアミド12内に通過させることにより、ビニロン繊維束にポリアミド11および/またはポリアミド12を含浸させて、ポリアミド11および/またはポリアミド12とビニロン繊維とを混合し、その後、裁断することを特徴とするポリアミド系樹脂組成物ペレットの製造方法。
【請求項3】
平均繊維径が3〜30μmのビニロン繊維束を用いることを特徴とする請求項2に記載のポリアミド系樹脂組成物ペレットの製造方法。
【請求項4】
請求項1に記載のポリアミド系樹脂組成物ペレットを成形してなることを特徴とする成形体。
【請求項5】
自動車部品、自転車部品、家電部品または産業資材の用途に用いられることを特徴とする請求項4に記載の成形体。


【図1】
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【公開番号】特開2012−241071(P2012−241071A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−110901(P2011−110901)
【出願日】平成23年5月18日(2011.5.18)
【出願人】(000004503)ユニチカ株式会社 (1,214)
【Fターム(参考)】