説明

ポリイミドフィルム

【課題】均一な線熱膨張係数を有し、TDの低熱膨張性に優れるポリイミドフィルムを提供すること。
【解決手段】製膜幅が1.5m以上であって、フィルムの機械搬送方向(MD)と垂直方向の直線上に製膜幅両端から150mm内側に入った両2点を選び、該2点を結ぶ直線の範囲内で、該2点を含む直線上の中央部±200mm以内の1点と、さらに任意の5点を選び、少なくともこれらの8点のすべてにおいて、幅方向(TD)の線熱膨張係数αTDが3〜7ppm/℃の範囲内にあることを特徴とするポリイミドフィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリイミドフィルムに関する。さらに詳しくは、均一な線熱膨張係数を有するポリイミドフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリイミドは、耐熱性、電気絶縁性に優れ、主にフレキシブルプリント基板等の用途にポリイミドフィルムとして利用されている。フレキシブルプリント基板や半導体パッケージの高繊細化に伴い、それらに用いられるポリイミドフィルムへの要求事項も多くなっており、例えば、ポリイミドフィルムの物性として金属並の線熱膨張係数を有すること、高弾性率であること、さらには吸水による寸法変化の小さいことが要求され、それに応じたポリイミドフィルムが開発されてきた(特許文献1〜6)。
【0003】
これらの特許文献1〜6には、弾性率を高めるためにジアミン成分としてパラフェニレンジアミンを併用し、無水ピロメリット酸、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、パラフェニレンジアミンによる3成分系ポリイミドの例が記載されている。さらに弾性率を高めるため上記3成分系に3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を加えた4成分系ポリイミドへの展開も行われている(特許文献7、8)。他には、4成分系ポリイミドで重合時にモノマーの添加手順をコントロールすることによって物性を改良する試みがなされている(特許文献9)。また、製膜時に延伸を行うことで物性を改良する試みもなされている(特許文献10)。
【0004】
さらには、金属との貼り合わせ工程での寸法変化を抑えるため、フィルムの機械搬送方向(Machine Direction;以下、MDともいう)の線熱膨張係数をフィルムの幅方向(Transverse Direction;以下、TDともいう)の線熱膨張係数よりも小さく設定し異方性を持たせたポリイミドフィルムの開発もなされている(特許文献11)。これは、通常FPC(Flexible Printed Circuit)工程では金属との貼り合わせをロールトゥロールで加熱して行うラミネーション方式が採用されており、この工程でのフィルムのMDにテンションがかかって伸びが生じ、一方TDには縮みが生じる現象を相殺させることを目的としている。
【0005】
しかしながら、いずれのポリイミドフィルムであっても、延伸によって得られるポリイミドフィルムは、幅方向の中央部と端部で物性に差異が生じ、その線熱膨張係数は、フィルム上の位置によって異なっていた。そのため、使用部分により物性が異なる等の問題が生じており、均一な線熱膨張係数を有するポリイミドフィルムの開発が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭60−210629号公報
【特許文献2】特開昭64−16832号公報
【特許文献3】特開昭64−16833号公報
【特許文献4】特開昭64−16834号公報
【特許文献5】特開平1−131241号公報
【特許文献6】特開平1−131242号公報
【特許文献7】特開昭59−164328号公報
【特許文献8】特開昭61−111359号公報
【特許文献9】特開平5−25273号公報
【特許文献10】特開平1−20238号公報
【特許文献11】特開平4−25434号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、均一な線熱膨張係数を有するポリイミドフィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる事情に鑑み、本発明者は鋭意研究を重ねた結果、フィルムの機械搬送方向(MD)への2段階延伸することによって、均一な線熱膨張係数を有するポリイミドフィルムが得られることを見出し、さらに検討を重ねて本発明を完成した。
【0009】
すなわち、本発明は、
[1]製膜幅が1m以上であって、フィルムの機械搬送方向(MD)と垂直方向の直線上に製膜幅両端から150mm内側に入った両2点を選び、該2点を結ぶ直線の範囲内で、該2点を含む直線上の中央部±200mm以内の1点と、さらに任意の2点を選び、少なくともこれらの5点のすべてにおいて、幅方向(TD)の線熱膨張係数αTDが3〜7ppm/℃の範囲内にあることを特徴とするポリイミドフィルム、
[2]幅方向(TD)の線熱膨張係数αTDが4〜6ppm/℃の範囲内にあることを特徴とする前記[1]記載のポリイミドフィルム、
[3]製膜幅が1.5m以上であって、フィルムの機械搬送方向(MD)と垂直方向の直線上に製膜幅両端から150mm内側に入った両2点を選び、該2点を結ぶ直線の範囲内で、該2点を含む直線上の中央部±150mm以内の1点と、さらに任意の5点を選び、少なくともこれらの8点のすべてにおいて、幅方向(TD)の線熱膨張係数αTDが3〜7ppm/℃の範囲内にあることを特徴とするポリイミドフィルム、
[4]幅方向(TD)の線熱膨張係数αTDが4〜6ppm/℃の範囲内にあることを特徴とする前記[3]記載のポリイミドフィルム、
[5]製膜幅が2m以上であって、フィルムの機械搬送方向(MD)と垂直方向の直線上に製膜幅両端から150mm内側に入った両2点を選び、該2点を結ぶ直線の範囲内で、該2点を含む直線上の中央部±100mm以内の1点と、さらに任意の8点を選び、少なくともこれらの11点のすべてにおいて、幅方向(TD)の線熱膨張係数αTDが3〜7ppm/℃の範囲内にあることを特徴とするポリイミドフィルム、
[6]幅方向(TD)の線熱膨張係数αTDが4〜6ppm/℃の範囲内にあることを特徴とする前記[5]記載のポリイミドフィルム、
[7]フィルムの機械搬送方向(MD)の線熱膨張係数αMDと幅方向(TD)の線熱膨張係数αTDの比(αMD/αTD)が1.8以上4.0未満であることを特徴とする前記[1]〜[6]のいずれかに記載のポリイミドフィルム、
[8]フィルムの機械搬送方向(MD)の線熱膨張係数αMDと幅方向(TD)の線熱膨張係数αTDの比(αMD/αTD)が2.0以上3.0未満であることを特徴とする前記[7]記載のポリイミドフィルム、
[9]ポリイミドフィルムがフィルムの機械搬送方向(MD)と幅方向(TD)の2軸延伸処理により延伸されており、MDの延伸が2段階延伸であることを特徴とする前記[1]〜[8]のいずれかに記載のポリイミドフィルム、
[10]MDの2段階延伸において、MDの総延伸倍率に対する第1段階目の延伸倍率の割合が、40%以上であることを特徴とする前記[9]記載のポリイミドフィルム、
[11]TDの延伸倍率がMDの総延伸倍率の1.10倍以上1.50倍以下であることを特徴とする前記[9]又は[10]に記載のポリイミドフィルム、
[12]ポリイミドフィルムが、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル及び/又は3,4’−ジアミノジフェニルエーテルとパラフェニレンジアミンとのモル比が69/31〜90/10である芳香族ジアミン成分と、ピロメリット酸二無水物と3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物とのモル比が80/20〜60/40である酸無水物成分とからなるポリアミド酸から製造される、又はパラフェニレンジアミンである芳香族ジアミン成分と、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物である酸無水物成分とからなり、芳香族ジアミン成分と酸無水物成分とのモル比が40/60〜60/40であるポリアミド酸から製造されることを特徴とする前記[1]〜[11]のいずれかに記載のポリイミドフィルム、
[13]全粒子の粒子径が0.01μm以上1.5μm以下であって、0.10μm以上0.90μm以下の粒子径を有する粒子が全粒子中80体積%以上を占める微細シリカをフィルム樹脂重量当たり0.30重量%以上0.80重量%以下の割合でフィルムに均一に分散されていることを特徴とする前記[1]〜[12]のいずれかに記載のポリイミドフィルム、
[14](1)芳香族ジアミン成分と酸無水物成分とを有機溶媒中で重合させ、ポリアミド酸溶液を得る工程、(2)前記ポリアミド酸溶液を環化反応させてゲルフィルムを得る工程、(3)前記工程(2)で得られたゲルフィルムを、MDの延伸が2段階延伸であり、かつTDの延伸倍率がMDの総延伸倍率の1.10倍以上1.50倍以下であるMDとTDの2軸延伸処理する工程を含むポリイミドフィルムの製造方法、
[15]MDの2段階延伸において、MDの総延伸倍率に対する第1段階目の延伸倍率の割合が、40%以上であることを特徴とする前記[14]記載の製造方法、
[16](1)芳香族ジアミン成分と酸無水物成分とを有機溶媒中で重合させ、ポリアミド酸溶液を得る工程、(2)前記ポリアミド酸溶液を環化反応させてゲルフィルムを得る工程、(3)前記工程(2)で得られたゲルフィルムを、MDの延伸が3段階延伸であり、かつTDの延伸倍率がMDの総延伸倍率の1.10倍以上1.50倍以下であるMDとTDの2軸延伸処理する工程を含むことを特徴とするポリイミドフィルムの製造方法、
[17]MDの3段階延伸において、MDの総延伸倍率に対する第1段階目の延伸倍率の割合が、40%以上であることを特徴とする前記[16]記載の製造方法、及び
[18]MDの3段階延伸において、MDの総延伸倍率に対する第2段階目の延伸倍率の割合が、5%以上であることを特徴とする前記[16]又は[17]記載の製造方法、
に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明のポリイミドフィルムは、フィルム上の位置によらず、均一な線熱膨張係数を有するため、該ポリイミドフィルムをCOF(Chip on Film)基板として、ガラス等との基板と接合する際に、位置によって寸法安定性が異なる等の問題が生じない。また、本発明のポリイミドフィルムの物性は均一であるため、フィルムの部位による使い分けも不要である。さらに、本発明のポリイミドフィルムは、TDの低熱膨張性に優れるため、ファインピッチ回路用基板、特にフィルムのTDに狭ピッチに配線されるCOF(Chip on Film)用において、特に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明のポリイミドフィルムの線熱膨張係数の測定位置を示す概略図である。白抜きの矢印は、フィルムの機械搬送方向(MD)を示す。
【図2】実施例1〜6及び比較例1のポリイミドフィルムの線熱膨張係数の測定位置を示す断面の概略図である。図中の番号が線熱膨張係数の測定位置を示す。
【図3】比較例2のポリイミドフィルムの線熱膨張係数の測定位置を示す断面の概略図である。図中の番号が線熱膨張係数の測定位置を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明について具体的に説明する。本発明のポリイミドフィルムは、製膜幅が1m以上であって、フィルムの機械搬送方向(MD)と垂直方向の直線上に製膜幅両端から150mm内側に入った両2点を選び、該2点を結ぶ直線の範囲内で、該2点を含む直線上の中央部±200mm以内の1点と、さらに任意の2点を選び、少なくともこれらの5点のすべてにおいて、幅方向(TD)の線熱膨張係数αTDが3〜7ppm/℃の範囲内にあることを特徴とする。前記したポリイミドフィルムの5点について、図1に示す。本発明のポリイミドフィルムは、前記したMDと垂直方向の直線上に製膜幅両端から150mm内側に入った両2点(b及びb’)を結ぶ直線の範囲内で、中央部近辺の点として、該2点を含む直線上の中央部±150mm以内の1点を選ぶことが好ましく、中央部±100mm以内の1点を選ぶことがより好ましい。さらに、前記2点を結ぶ直線の範囲内で、中央部近辺の点以外の任意の点として、5点を選ぶことが好ましく、8点を選ぶことがより好ましい。本発明のポリイミドフィルムの製膜幅は、特に限定されないが、通常1m以上であり、1.5m以上が好ましく、2m以上がより好ましい。また、ポリイミドフィルムの製膜幅は、3m以下が好ましい。本発明のポリイミドフィルムのTDの線熱膨張係数αTDとしては、3〜7ppm/℃の範囲にあることが好ましく、4〜6ppm/℃の範囲内にあることがより好ましい。本発明のポリイミドフィルムのMDの線熱膨張係数αMDとしては、特に限定されないが、8〜18ppm/℃の範囲にするのが好ましく、9〜17ppm/℃の範囲にするのがより好ましい。さらに、本発明のポリイミドフィルムのMDの線熱膨張係数αMDとTDの線熱膨張係数αTDの比(αMD/αTD)としては、特に限定されないが、1.8以上4.0未満が好ましく、2.0以上3.0未満がより好ましい。本発明のフィルムの線熱膨張係数は、島津製作所製TMA−50を使用して以下の加熱条件で加熱し、2nd昇温の温度範囲のうち、50〜200℃の範囲を解析した値である。
1st昇温:室温→300℃(昇温速度10℃/分)
降温 :300℃→35℃(降温速度5℃/分)
2nd昇温:35℃→220℃(昇温速度10℃/分)
【0013】
次に、本発明のポリイミドフィルムの製造方法について、以下に詳しく説明する。製造方法の第一の態様は、例えば、(1)芳香族ジアミン成分と酸無水物成分とを有機溶媒中で重合させ、ポリアミド酸溶液を得る工程、(2)前記工程(1)で得られたポリアミド酸溶液を環化反応させてゲルフィルムを得る工程、(3)前記工程(2)で得られたゲルフィルムを、MDの延伸(以下、縦延伸ともいう)が2段階延伸であり、かつTDの延伸倍率がMDの総延伸倍率の1.10倍以上1.50倍以下であるMDとTDの2軸延伸処理する工程を含むことができる。
【0014】
工程(1)は、芳香族ジアミン成分と酸無水物成分とを有機溶媒中で重合させることにより、ポリアミド酸溶液を得る工程である。
【0015】
上記芳香族ジアミンの具体例としては、本発明の効果を妨げない限り特に限定されないが、パラフェニレンジアミン、メタフェニレンジアミン、ベンジジン、パラキシリレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、1,5−ジアミノナフタレン、3,3’−ジメトキシベンチジン、1,4−ビス(3−メチル−5−アミノフェニル)ベンゼン又はこれらのアミド形成性誘導体が挙げられる。この中でフィルムの引張弾性率を高くする効果のあるパラフェニレンジアミン、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル等のジアミンの量を調整し、最終的に得られるポリイミドフィルムの引張弾性率が4.0GPa以上にすることが好ましい。これらの芳香族ジアミンは単独で又は2種以上を混合して用いることができる。これらの芳香族ジアミンのうち、パラフェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテルが好ましい。パラフェニレンジアミンと4,4’−ジアミノジフェニルエーテル及び/又は3,4’−ジアミノジフェニルエーテルとを併用する場合、(i)4,4’−ジアミノジフェニルエーテル及び/又は3,4’−ジアミノジフェニルエーテルと、(ii)パラフェニレンジアミンとを69/31〜90/10(モル比)で用いることがより好ましく、70/30〜85/15(モル比)で用いることがとりわけ好ましい。
【0016】
上記酸無水物成分の具体例としては、本発明の効果を妨げない限り特に限定されないが、ピロメリット酸、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸、2,3’,3,4’−ビフェニルテトラカルボン酸、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸、2,3,6,7−ナフタレンジカルボン酸、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル、ピリジン−2,3,5,6−テトラカルボン酸、又はこれらのアミド形成性誘導体等の酸無水物が挙げられ、芳香族テトラカルボン酸の酸二無水物が好ましく、ピロメリット酸二無水物及び/又は3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物が特に好ましい。これらの酸無水物成分は単独で又は2種以上を混合して用いることができる。また、これらのうち、ピロメリット酸二無水物と3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物とを80/20〜60/40(モル比)で用いることがより好ましく、75/25〜65/35(モル比)で用いることがとりわけ好ましい。
【0017】
本発明において、ポリアミド酸溶液の形成に使用される有機溶媒としては、特に限定されないが、例えば、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシド等のスルホキシド系溶媒;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド等のホルムアミド系溶媒;N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド等のアセトアミド系溶媒;N−メチル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドン等のピロリドン系溶媒;フェノール、o−,m−,又はp−クレゾール、キシレノール、ハロゲン化フェノール、カテコール等のフェノール系溶媒;あるいはヘキサメチルホスホルアミド、γ−ブチロラクトン等の非プロトン性極性溶媒を挙げることができ、これらを単独又は混合物として用いるのが望ましいが、さらにはキシレン、トルエンのような芳香族炭化水素の使用も可能である。
【0018】
重合方法は公知のいずれの方法で行ってもよく、特に限定されないが、例えば、(i)先に芳香族ジアミン成分全量を有機溶媒中に入れ、その後酸無水物成分を芳香族ジアミン成分全量と等量になるように加えて重合する方法、(ii)先に酸無水物成分全量を溶媒中に入れ、その後芳香族ジアミン成分を酸無水物成分と等量になるように加えて重合する方法、(iii)一方の芳香族ジアミン成分を溶媒中に入れた後、反応成分に対して酸無水物成分が95〜105モル%となる比率で反応に必要な時間混合した後、もう一方の芳香族ジアミン成分を添加し、続いて酸無水物成分を全芳香族ジアミン成分と酸無水物成分とがほぼ等量になるよう添加して重合する方法、(iv)酸無水物成分を溶媒中に入れた後、反応成分に対して一方の芳香族ジアミン成分が95〜105モル%となる比率で反応に必要な時間混合した後、酸無水物成分を添加し、続いてもう一方の芳香族ジアミン成分を全芳香族ジアミン成分と酸無水物成分とがほぼ等量になるように添加して重合する方法、(v)溶媒中で一方の芳香族ジアミン成分と酸無水物成分をどちらかが過剰になるように反応させてポリアミド酸溶液(A)を調製し、別の溶媒中でもう一方の芳香族ジアミン成分と酸無水物成分をどちらかが過剰になるよう反応させポリアミド酸溶液(B)を調製する。次いで、得られた各ポリアミド酸溶液(A)と(B)を混合し、重合を完結する方法、(vi)(v)において、ポリアミド酸溶液(A)を調製するに際し芳香族ジアミン成分が過剰の場合、ポリアミド酸溶液(B)では酸無水物成分を過剰に、またポリアミド酸溶液(A)で酸無水物成分が過剰の場合、ポリアミド酸溶液(B)では芳香族ジアミン成分を過剰にし、ポリアミド酸溶液(A)と(B)を混ぜ合わせ、これら反応に使用される全芳香族ジアミン成分と酸無水物成分とがほぼ等量になるよう調製する方法等が挙げられる。
【0019】
こうして得られるポリアミド酸溶液は、固形分を5〜40重量%含有しているものが好ましく、10〜30重量%含有しているものがより好ましい。また、ポリアミド酸溶液の粘度は、JIS K6726_1994に従い、ブルックフィールド粘度計を用いた回転粘度計法による測定値であり、特に限定されないが、10〜2000Pa・s(100〜20000poise)のものが好ましく、安定した送液の供給という点から、100〜1000Pa・s(1000〜10000poise)のものがより好ましい。また、有機溶媒溶液中のポリアミド酸は部分的にイミド化されていてもよい。
【0020】
本発明のポリアミド酸溶液は、フィルムの易滑性を得るため必要に応じて、酸化チタン、微細シリカ、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、リン酸水素カルシウム、ポリイミドフィラー等の化学的に不活性な有機フィラー或いは無機フィラー等を含有していてもよく、このようなフィラーとしては、シリカが好ましい。
【0021】
本発明に用いる無機フィラー(無機粒子)は、特に限定されないが、全粒子の粒子径が0.005μm以上2.0μm以下の無機フィラーが好ましく、全粒子の粒子径が0.01μm以上1.5μm以下の無機フィラーがより好ましい。粒度分布(体積基準)に関して、特に限定されないが、粒子径0.10μm以上0.90μm以下の粒子が全粒子中80体積%以上を占める無機フィラーが好ましく、より易滑性に優れる点から、粒子径0.10μm以上0.75μm以下の粒子が全粒子中80体積%以上を占める無機フィラーがより好ましく、特に易滑性に優れるため、粒子径0.10μm以上0.60μm以下の粒子が全粒子中80体積%以上を占める無機フィラーが特に好ましい。また、本発明の無機フィラーの平均粒子径は、特に限定されないが、0.05μm以上0.70μm以下が好ましく、0.10μm以上0.60μm以下がより好ましく、0.30μm以上0.50μm以下が特に好ましい。平均粒子径が0.05μm以下になると、フィルムの易滑性効果が低下するので好ましくなく、0.70μm以上になると局所的に大きな粒子となって存在するので好ましくない。前記の粒度分布、平均粒子径及び粒子径範囲は、堀場製作所のレーザー回析/散乱式粒度分布測定装置LA−910を用いて測定することができる。前記平均粒子径は、体積平均粒子径を指す。
【0022】
本発明に用いる無機フィラーは、特に限定されないが、ポリアミド酸溶液の重量に対して0.03重量%以上1.0重量%未満の割合で、フィルム中に均一に分散されていることが好ましく、易滑性効果の点から0.30重量%以上0.80重量%以下の割合がより好ましい。1.0重量%以上では機械的強度の低下が見られ、0.03重量%以下では十分な易滑性効果が見られず好ましくない。これらのうち、全粒子の粒子径が0.01μm以上1.5μm以下であって、0.10μm以上0.90μm以下の粒子径を有する粒子が全粒子中80体積%以上を占める微細シリカをフィルム樹脂重量当たり0.30重量%以上0.80重量%以下の割合でフィルムに均一に分散されているポリイミドフィルムが特に好ましい。
【0023】
工程(2)は、前記工程(1)で得られたポリアミド酸溶液を環化反応させてゲルフィルムを得る工程である。前記ポリアミド酸溶液を環化反応させる方法は、特に限定されないが、具体的には、(i)前記ポリアミド酸溶液をフィルム状にキャストし、熱的に脱水環化させてゲルフィルムを得る方法(熱閉環法)、又は(ii)前記ポリアミド酸溶液に環化触媒及び転化剤を混合し化学的に脱環化させてゲルフィルムを作成し、加熱により、ゲルフィルムを得る方法(化学閉環法)等が挙げられ、得られるポリイミドフィルムのTDの線熱膨張係数を低く抑えることができる点で後者の方法が好ましい。上記ポリアミド酸溶液は、ゲル化遅延剤等を含有することができる。ゲル化遅延剤としては、特に限定されず、アセチルアセトン等を使用することができる。
【0024】
前記環化触媒としては、特に限定されないが、例えば、トリメチルアミン、トリエチレンジアミン等の脂肪族第3級アミン;ジメチルアニリン等の芳香族第3級アミン;イソキノリン、ピリジン、β−ピコリン等の複素環第3級アミン等が挙げられ、イソキノリン、ピリジン及びβ−ピコリンからなる群から選ばれる1以上の複素環式第3級アミンが好ましい。前記転化剤としては、特に限定されないが、例えば、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸等の脂肪族カルボン酸無水物;無水安息香酸等の芳香族カルボン酸無水物等が挙げられ、無水酢酸及び/又は無水安息香酸が好ましい。これらの環化触媒及び転化剤の含有量は、特に限定されないが、ポリアミド酸溶液100重量%に対して、それぞれ10〜40重量%程度が好ましく、15〜30重量%程度がより好ましい。
【0025】
前記ポリアミド酸溶液又はポリアミド酸溶液に環化触媒及び転化剤を混合した混合溶液は、スリット状口金を通ってフィルム状に成型され、加熱された支持体上に流延され、支持体上で熱閉環反応をし、自己支持性を有するゲルフィルムとなって支持体から剥離される。
【0026】
前記支持体としては、特に限定されないが、金属(例えばステンレス)製の回転ドラム、エンドレスベルト等が例として挙げられ、支持体の温度は(i)液体又は気体の熱媒体、(ii)電気ヒーター等の輻射熱等により制御され、特に限定されない。
【0027】
前記ゲルフィルムは、前記ポリアミド酸溶液又はポリアミド酸溶液に環化触媒及び転化剤を混合した混合溶液を支持体からの受熱、熱風や電気ヒーター等の熱源からの受熱により好ましくは30〜200℃、より好ましくは40〜150℃に加熱して閉環反応させ、遊離した有機溶媒等の揮発分を乾燥させることにより自己支持性を有するようになり、支持体から剥離されることにより得られる。
【0028】
工程(3)は、前記工程(2)で得られたゲルフィルムを、MDの延伸が2段階延伸であり、かつTDの延伸倍率がMDの総延伸倍率の1.10倍以上1.50倍以下であるMDとTDへの2軸延伸処理する工程である。
【0029】
前記支持体から剥離されたゲルフィルムは、回転ロールにより走行速度を規制しながら走行方向(MD)に延伸される。回転ロールには、ゲルフィルムの走行速度を規制する必要な把持力が必要であり、回転ロールとしては、金属ロールとゴムロールを組み合わせてなるニップロール、バキュウムロール、多段張力カットロール、又は減圧吸引方式のサクセションロール等を使用するのが好ましい。
【0030】
工程(3)において、2軸延伸処理を行う。前記2軸延伸処理の順番は、特に限定されないが、機械搬送方向(MD)の延伸(縦延伸)を行ったのち、幅方向(TD)の延伸(以下、横延伸ともいう)を行うのが好ましい。また、縦延伸を行い、次いで加熱処理をしたのち横延伸を行う工程、又は縦延伸を行い、次いで加熱処理と並行して横延伸を行う工程が、線熱膨張係数の均一性を高める点から、より好ましい。
【0031】
前記2軸延伸処理におけるMDの延伸(縦延伸)は、2段階にわけて行う。MDへの2段階延伸において、第1段階目の延伸倍率(以下、縦延伸率ともいう)は、特に限定されないが、1.02倍以上1.3倍以下が好ましく、1.04倍以上1.1倍がより好ましい。第2段階目のMDの延伸倍率は、1.02倍以上1.3倍以下が好ましく、1.04倍以上1.1倍がより好ましい。また、本発明においては、MDの総延伸倍率に対する第1段階目の延伸の延伸倍率の割合は、40%以上が好ましく、50%以上80%以下であることがより好ましい。ここで、MDの総延伸倍率に対する第1段階目の延伸の延伸倍率の割合の算出方法は、下記の通りである。

延伸倍率1.1倍というのは基本長(延伸前の長さ)1に対して0.1倍延ばした状態である。したがって、延伸倍率から1を引いて算出する。
MDの総延伸倍率は、特に限定されないが、1.04倍以上1.4倍以下が好ましく、1.05倍以上1.3倍以下がより好ましい。MDの延伸温度は、特に限定されないが、60〜100℃程度が好ましく、65℃〜90℃程度がより好ましい。MDの延伸速度は、目的とする線熱膨張係数が得られる条件を適宜選択すればよく、特に限定されないが、2段階延伸を行う場合、該2段階延伸の第1段階目の延伸速度は、1%/分〜20%/分程度が好ましく、2%/分〜10%/分程度がより好ましい。該2段階延伸の第2段階目の延伸速度は、1%/分〜20%/分程度が好ましく、2%/分〜10%/分程度がより好ましい。MDへの2段階延伸において、各段階の延伸時間は、特に限定されないが、5秒〜5分程度であり、10秒〜3分が好ましい。前記した縦延伸のパターンとしては、延伸倍率1から前記延伸倍率まで、一気に延伸する方法、逐次に延伸する方法、少しずつ不定率な倍率で延伸する方法、少しずつ定率な倍率で延伸する方法、又はこれらを複数組合せた方法等を挙げることが出来、特に少しずつ定率な倍率で延伸する方法が好ましい。
【0032】
前記MDの延伸を行ったのち、加熱処理を行う場合、加熱温度は、特に限定されないが、MDの延伸時の温度より高い温度が好ましく、通常80℃〜550℃程度であり、180℃〜500℃程度が好ましく、200℃〜450℃程度がより好ましい。80℃未満で延伸を開始すると、フィルムが硬くて脆い場合があり延伸が困難になるおそれがある。加熱処理時間は、30秒〜20分が好ましく、50秒〜10分がより好ましい。また、加熱処理は、異なる温度で多段階(2段階、3段階等)的に行ってもよい。例えば、多段階で加熱処理を行う場合の第1段階の加熱温度は、特に限定されないが、溶媒を十分に除去するために、80℃以上300℃以下が好ましく、100℃以上290℃以下がより好ましく、120℃以上285℃以下がさらに好ましい。多段階で加熱処理を行う場合の最終段階の加熱温度は、第1段階の加熱温度より高い温度であって、第1段階の加熱温度の設定と異なれば特に限定されず、例えば、300℃より大きく550℃以下が好ましく、320℃以上500℃以下がより好ましく、350℃以上450℃以下がさらに好ましい。第1段階の加熱温度が最終段階の加熱温度より高いと、溶媒が急激に蒸発してしまい、得られるフィルムが脆くなり、実用的でない。多段階加熱処理の場合の各段階の処理時間は、前記と同様である。加熱処理には、温度の異なる複数のブロック(ゾーン)を有するキャステイング炉又は加熱炉等の加熱装置等を用いることができる。加熱処理は、ピン式テンター装置、クリップ式テンター装置、チャック等によりフィルムの両端を固定して行うことが好ましい。当該加熱処理により、溶媒を除去することができる。
【0033】
MDに延伸されたゲルフィルムは、テンター装置に導入され、テンタークリップに幅方向両端部を把持されて、テンタークリップと共に走行しながら、幅方向(TD)へ延伸される。TDの延伸倍率(以下、横延伸率ともいう)としては、特に限定されないが、1.35倍以上2.0倍以下が好ましく、1.40倍以上1.80倍以下がより好ましい。前記TDの延伸倍率は、実施例における最大横延伸率を意味する。TDの延伸倍率(横延伸率)は、MDの延伸倍率(縦延伸率)より高く設定する必要があり、具体的には、通常MDの総延伸倍率の1.10倍以上1.50倍以下であり、1.15倍以上1.45倍以下が好ましい。フィルムのMDの延伸倍率に比べTDの延伸倍率を高く設定することによってフィルムのMDには金属に近似した線熱膨張係数を保持しつつ、フィルムのTDの線熱膨張係数を低く抑えたフィルムを得ることができる。TDの延伸は、前記加熱処理後に行ってもよく、前記加熱処理前に行ってもよいが、前記加熱処理と並行して行うのが、線熱膨張係数の均一性を高める点から、より好ましい。TDの延伸の延伸時間は、特に限定されないが、5秒〜10分程度であり、10秒〜5分が好ましい。上記横延伸のパターンとしては、延伸倍率1から上記横延伸倍率まで、一気に延伸する方法、逐次に延伸する方法、少しずつ不定率な倍率で延伸する方法、少しずつ定率な倍率で延伸する方法、又はこれらを複数組合せた方法等を挙げることができる。特に、横延伸と多段階加熱処理を並行して行う場合、第1段階の加熱処理時に、TDの延伸倍率が最大延伸率となるように設定し、少しずつ延伸倍率を低下させることが好ましい。また、第1段階の加熱処理後もさらにTDの延伸倍率を少しずつ上げ、第2段階或いは最終段階の加熱処理時にTDの延伸倍率が最大延伸率となるように設定することも好ましい。
【0034】
これらの範囲内にて両者の延伸倍率の調整を行い、所望の線熱膨張係数を均一に有するポリイミドフィルムを製造することができる。
【0035】
次に、本発明のポリイミドフィルムの製造方法の第二の態様について、以下に詳しく説明する。製造方法の第二の態様は、例えば、(1)芳香族ジアミン成分と酸無水物成分とを有機溶媒中で重合させ、ポリアミド酸溶液を得る工程、(2)前記工程(1)で得られたポリアミド酸溶液を環化反応させてゲルフィルムを得る工程、(3)前記工程(2)で得られたゲルフィルムを、MDの延伸(以下、縦延伸ともいう)が3段階以上の多段階延伸であり、かつTDの延伸倍率がMDの総延伸倍率の1.10倍以上1.50倍以下であるMDとTDの2軸延伸処理する工程を含むことができる。
【0036】
第二の製造態様において、工程(1)及び(2)は、第一の製造態様と同様に行うことができる。
【0037】
第二の製造態様において、工程(3)は、前記工程(2)で得られたゲルフィルムを、MDの延伸が3段階以上の多段階延伸であり、かつTDの延伸倍率がMDの総延伸倍率の1.10倍以上1.50倍以下であるMDとTDへの2軸延伸処理する工程である。
【0038】
前記工程(2)における支持体から剥離されたゲルフィルムは、回転ロールにより走行速度を規制しながら走行方向(MD)に延伸される。回転ロールには、ゲルフィルムの走行速度を規制する必要な把持力が必要であり、回転ロールとしては、金属ロールとゴムロールを組み合わせてなるニップロール、バキュウムロール、多段張力カットロール、又は減圧吸引方式のサクセションロール等を使用するのが好ましい。
【0039】
工程(3)において、2軸延伸処理を行う。前記2軸延伸処理の順番は、前記第一の製造態様と同様に行うことができる。
【0040】
前記第二の製造態様では、前記2軸延伸処理におけるMDの延伸(縦延伸)は、3段階以上の多段階にわけて行う。MDの延伸(縦延伸)は、3段階以上であれば、特に限定されず、3段階、4段階、5段階等で行ってもよいが、得られるフィルムの線熱膨張係数の均一性が高い点から3段階延伸が好ましい。
【0041】
MDの各段階の延伸倍率は、特に限定されないが、例えば、3段階延伸の場合、第1段階目の延伸倍率は、特に限定されないが、1.02倍以上1.3倍以下が好ましく、1.04倍以上1.1倍以下がより好ましい。第2段階目のMDの延伸倍率は、1.005倍以上1.4倍以下が好ましく、1.01倍以上1.3倍以下がより好ましい。第3段階目のMDの延伸倍率は、1.02倍以上1.3倍以下が好ましく、1.04倍以上1.1倍以下がより好ましい。また、本発明においては、MDの総延伸倍率に対する第1段階目の延伸の延伸倍率の割合は、40%以上が好ましく、50%以上80%以下とすることがより好ましい。また、MDの総延伸倍率に対する第2段階目の延伸倍率の割合が、5%以上であることが好ましく、8%以上30%以下であることがより好ましい。MDの総延伸倍率は、特に限定されないが、1.04倍以上1.4倍以下が好ましく、1.05倍以上1.3倍以下がより好ましい。MDの総延伸倍率に対する各MD延伸の延伸倍率の割合の算出方法については、上記第一の態様で述べた通りである。
【0042】
MDの延伸温度は、前記第一の製造態様と同様に行うことができる。MDの延伸速度は、目的とする線熱膨張係数が得られる条件を適宜選択すればよく、特に限定されないが、3段階延伸を行う場合、該3段階延伸の第1段階目の延伸速度は、1%/分〜20%/分程度が好ましく、2%/分〜10%/分程度がより好ましい。該3段階延伸の第2段階目の延伸速度は、1%/分〜20%/分程度が好ましく、2%/分〜10%/分程度がより好ましい。該3段階延伸の第3段階目の延伸速度は、1%/分〜20%/分程度が好ましく、2%/分〜10%/分程度がより好ましい。MDへの3段階延伸において、各段階の延伸時間は、特に限定されないが、2秒〜5分程度であり、5秒〜3分が好ましい。縦延伸及び横延伸のパターンは、第一の製造態様と同様に行うことができる。
【0043】
MDの延伸後の加熱処理及びTDの延伸は、第一の製造態様と同様に行うことができる。第二の製造態様によっても、第一の製造態様と同様に、線熱膨張係数を均一に有し、TDの低熱膨張性に優れるポリイミドフィルムを得ることができる。
【0044】
本発明でポリイミドフィルムの厚さは、特に限定されないが、3μm以上250μm以下の範囲とすることが好ましく、10μm以上80μm以下の範囲とすることがより好ましい。これより薄くても厚くてもフィルムの製膜性が著しく悪化するので好ましくない。
【0045】
第一の製造態様又は第二の製造態様によって得られたポリイミドフィルムについて、必要に応じてアニール処理を行ってもよい。アニール処理によってフィルムの熱リラックスが起こり加熱収縮率を小さく抑えることができる。アニール処理の温度としては、特に限定されないが、200℃以上500℃以下が好ましく、200℃以上370℃以下、210℃以上350℃以下がより好ましい。本発明ポリイミドフィルムの製法ではフィルムのTDへの配向が強いため、TDでの加熱収縮率が高くなる傾向があるが、アニール処理からの熱リラックスにより200℃での加熱収縮率をフィルムのMD、TD共に0.05%以下に抑えることができるのでより一層高寸法精度が高くなり好ましい。具体的には200℃以上500℃以下、好ましくは200℃以上370℃以下、210℃以上350℃以下の炉の中を、低張力下にてフィルムを走行させ、アニール処理を行うことが好ましい。炉の中でフィルムが滞留する時間が処理時間となるが、走行速度を変えることでコントロールすることになり、30秒〜5分の処理時間であることが好ましい。これより処理時間が短いとフィルムに充分熱が伝わらず、長いと過熱気味になり平面性を損なうので好ましくない。また、走行時のフィルム張力は10〜50N/mが好ましく、20〜30N/mがより好ましい。この範囲よりも張力が低いとフィルムの走行性が悪くなり、張力が高いと得られたフィルムの走行方向の熱収縮率が高くなるので好ましくない。
【0046】
本発明のポリイミドフィルムの加熱収縮率としては、特に限定されないが、−0.02%〜+0.02%が好ましい。加熱収縮率は、20cm×20cmのフィルムを用意し、25℃、60%RHに調整された部屋に2日間放置した後のフィルム寸法(L1)を測定し、続いて200℃60分間加熱した後再び25℃、60%RHに調整された部屋に2日間放置した後フィルム寸法(L2)を測定し、下記式により算出した値である。
【数1】

【0047】
得られたポリイミドフィルムに接着性を持たせるため、フィルム表面にコロナ処理やプラズマ処理のような電気処理あるいはブラスト処理のような物理的処理を行ってもよい。プラズマ処理を行う雰囲気の圧力は、特に限定されないが、通常13.3〜1330kPaの範囲、13.3〜133kPa(100〜1000Torr)の範囲が好ましく、80.0〜120kPa(600〜900Torr)の範囲がより好ましい。
【0048】
プラズマ処理を行う雰囲気は、不活性ガスを少なくとも20モル%含むものであり、不活性ガスを50モル%以上含有するものが好ましく、80モル%以上含有するものがより好ましく、90モル%以上含有するものが最も好ましい。前記不活性ガスは、He、Ar、Kr、Xe、Ne、Rn、N及びこれらの2種以上の混合物を含む。特に好ましい不活性ガスはArである。さらに、前記不活性ガスに対して、酸素、空気、一酸化炭素、二酸化炭素、四塩化炭素、クロロホルム、水素、アンモニア、テトラフルオロメタン(カーボンテトラフルオリド)、トリクロロフルオロエタン、トリフルオロメタン等を混合してもよい。本発明のプラズマ処理の雰囲気として用いられる好ましい混合ガスの組み合わせは、アルゴン/酸素、アルゴン/アンモニア、アルゴン/ヘリウム/酸素、アルゴン/二酸化炭素、アルゴン/窒素/二酸化炭素、アルゴン/ヘリウム/窒素、アルゴン/ヘリウム/窒素/二酸化炭素、アルゴン/ヘリウム、ヘリウム/空気、アルゴン/ヘリウム/モノシラン、アルゴン/ヘリウム/ジシラン等が挙げられる。
【0049】
プラズマ処理を施す際の処理電力密度は、特に限定されないが、200W・分/m以上が好ましく、500W・分/m以上がより好ましく、1000W・分/m以上が最も好ましい。プラズマ処理を行うプラズマ照射時間は1秒〜10分が好ましい。プラズマ照射時間をこの範囲内に設定することによって、フィルムの劣化を伴うことなしに、プラズマ処理の効果を十分に発揮することができる。プラズマ処理のガス種類、ガス圧、処理密度は上記の条件に限定されず大気中で行われることもある。
【実施例】
【0050】
以下に実施例によって本発明の効果を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0051】
本発明における各種特性の測定方法について以下に説明する。
(1)線熱膨張係数
下記実施例1〜6及び比較例1によって得られたフィルムを用いて(製膜幅:2.2m)、図2に示される位置(12箇所)にて幅5mm×長さ10mmのサイズのサンプルを採取し、島津製作所製TMA−50を使用し、各サンプルを下記条件で加熱した。また、比較例2(製膜幅:1.85m)のみ図3に示される位置(10箇所)にて5mm×長さ10mmのサイズのサンプルを採取して、下記条件で加熱した。
1st昇温:室温→300℃(昇温速度10℃/分)
降温 :300℃→35℃(降温速度5℃/分)
2nd昇温:35℃→220℃(昇温速度10℃/分)
線熱膨張係数の解析は、2nd昇温での温度範囲:50〜200℃の条件で行った。
【0052】
(2)無機粒子の評価
堀場製作所のレーザー回析/散乱式粒度分布測定装置LA−910を用い、極性溶媒に分散させた試料を測定、解析した結果から、粒子径範囲、平均粒子径及び粒子径0.15〜0.60μmの全粒子中に対する占有率(実施例6以外)又は粒子径0.15〜0.25μmの全粒子中に対する占有率(実施例6)を読み取った。
【0053】
[合成例1]
ピロメリット酸二無水物(分子量218.12)/3,3’,4、4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(分子量294.22)/4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(分子量200.24)/パラフェニレンジアミン(分子量108.14)を、モル比で75/25/71/29の割合で用意し、DMAc(N,N−ジメチルアセトアミド)中20重量%溶液にして重合し、3500poiseのポリアミド酸溶液を得た。
【0054】
[合成例2]
ピロメリット酸二無水物(分子量218.12)/3,3’,4、4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(分子量294.22)/4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(分子量200.24)/パラフェニレンジアミン(分子量108.14)を、モル比で80/20/75/25の割合で用意し、DMAc(N,N−ジメチルアセトアミド)中20重量%溶液にして重合し、3500poiseのポリアミド酸溶液を得た。
【0055】
[合成例3]
ピロメリット酸二無水物(分子量218.12)/3,3’,4、4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(分子量294.22)/4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(分子量200.24)/パラフェニレンジアミン(分子量108.14)を、モル比で75/25/69/31の割合で用意し、DMAc(N,N−ジメチルアセトアミド)中20重量%溶液にして重合し、3500poiseのポリアミド酸溶液を得た。
【0056】
[合成例4]
ピロメリット酸二無水物(分子量218.12)/3,3’,4、4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(分子量294.22)/3,4’−ジアミノジフェニルエーテル(分子量200.24)/パラフェニレンジアミン(分子量108.14)を、モル比で75/25/80/20の割合で用意し、DMAc(N,N−ジメチルアセトアミド)中20重量%溶液にして重合し、3500poiseのポリアミド酸溶液を得た。
【0057】
[合成例5]
3,3’,4、4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(分子量294.22)/パラフェニレンジアミン(分子量108.14)を、モル比で1/1の割合で用意し、DMAc(N,N−ジメチルアセトアミド)中20重量%溶液にして重合し、3500poiseのポリアミド酸溶液を得た。
【0058】
[合成例6]
ピロメリット酸二無水物(分子量218.12)/3,3’,4、4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(分子量294.22)/4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(分子量200.24)/パラフェニレンジアミン(分子量108.14)を、モル比で75/25/66/34の割合で用意し、DMAc(N,N−ジメチルアセトアミド)中20重量%溶液にして重合し、3500poiseのポリアミド酸溶液を得た。
【0059】
[実施例1]
レーザー回析/散乱式粒度分布測定装置LA−910(堀場製作所製)にて測定した全粒子の粒子径が0.01μm以上1.5μm以下に収まっており、(体積平均粒子径)が平均粒子径0.42μmであり、粒度分布(体積基準)に関して、粒子径0.15〜0.60μmの粒子が全粒子中89.9体積%を占めるシリカのN,N−ジメチルアセトアミドスラリーを、合成例1で得たポリアミド酸溶液に樹脂重量当たり0.4重量%添加し、十分攪拌、分散させた。このポリアミド酸溶液に無水酢酸(分子量102.09)とβ−ピコリンを、ポリアミド酸溶液に対しそれぞれ17重量%、17重量%の割合で混合、攪拌した。得られた混合物を、T型スリットダイより回転する75℃のステンレス製ドラム上にキャストし、残揮発成分が55重量%、厚み約0.05mmの自己支持性を有するゲルフィルムを得た。このゲルフィルムをドラムから引き剥がし、2組のニップロールを経て搬送した。その際、ステンレス製ドラム(R1)、最初のニップロール(R2)、2番目のニップロール(R3)それぞれの回転速度を変えることで縦延伸を2段階で行い、それぞれの延伸率が表1になるように65℃で縦延伸を行った。縦延伸後両端を把持し、加熱炉にて250℃×50秒、400℃×75秒処理し、幅2.2m、厚さ38μmのポリイミドフィルムを得た。横延伸は溶媒を除去する加熱炉を通過時(250℃×50秒)に最大になるように設定した。前記した加熱炉通過時の延伸倍率を最大延伸率とし、加熱炉通過後は、横延伸倍率は低下していく。横延伸率は最大横延伸率のフィルム幅をドラム引き剥がし後のゲルフィルム幅で割った値として求めた。横延伸率を表1に示す。得られたポリイミドフィルムについて、図2に示す12点で線熱膨張係数を測定した。測定結果を表1に示す。
【0060】
[実施例2〜5]
使用したポリアミド酸溶液、縦延伸率、横延伸率をそれぞれ表1のように設定した以外は、実施例1と同様にして得られた38μm厚みの各ポリイミドフィルムについて、図2に示す12点で線熱膨張係数を測定した。測定結果を表1に示す。
【0061】
[実施例6]
全粒子の粒子径が0.01μm以上1.5μm以下に収まっており、平均粒子径0.20μm、粒子径0.15〜0.25μmの粒子が全粒子中95.0体積%のシリカのN,N−ジメチルアセトアミドスラリーを、合成例1で得たポリアミド酸溶液に樹脂重量当たり0.4重量%添加し、十分攪拌、分散させた。以降は実施例1と同様にして得られた38μm厚みのポリイミドフィルムについて、図2に示す12点で線熱膨張係数を測定した。測定結果を表1に示す。
【0062】
【表1】

【0063】
[比較例1]
残揮発成分が55重量%、厚み約0.05mmの自己支持性を有するゲルフィルムを得るところまでは、実施例1と同様にして実施し、このゲルフィルムをドラムから引き剥がした後、最初のニップロール(R2)は使用せず、ステンレス製ドラム(R1)と2番目のニップロール(R3)のみによって1段階で縦延伸率が表2になるように65℃で縦延伸を行った。縦延伸後両端を把持し、加熱炉にて250℃×50秒、400℃×75秒処理し、幅2.2m、厚さ38μmのポリイミドフィルムを得た。横延伸は溶媒を除去する加熱炉を通過時(250℃×50秒)に最大になるよう設定し、横延伸率は最大横延伸率のフィルム幅をドラム引き剥がし後のゲルフィルム幅で割った値で求めた。横延伸率を表2に示す。得られたポリイミドフィルムについて図2に示す12点で線熱膨張係数を測定した。測定結果を表2に示す。
【0064】
[比較例2]
合成例6のポリアミド酸溶液を使用して、縦延伸率、横延伸率をそれぞれ表2のように設定した以外は、実施例1と同様にして得られた38μm厚みのポリイミドフィルムについて、線熱膨張係数を測定した。結果を表2に示す。なお、合成例6から得られたポリアミド酸は剛性が高く、合成例1〜5を用いたポリアミド酸と同等の横延伸を実施することができず、得られたフィルムの幅は1.85mと狭くなったため、比較例2のみ図3に示す10点でそれぞれ線熱膨張係数を測定した。結果を表2に示す。
【0065】
【表2】

【0066】
比較例1のポリイミドフィルムは、測定した12点での、幅方向(TD)の線熱膨張係数αTDが3.9〜7.2ppm/℃と広い範囲で分布しており、比較例2のポリイミドフィルムは、幅方向(TD)の線熱膨張係数αTDが2.8〜7.1ppm/℃と広い範囲で分布していた。一方、本発明の実施例1〜6では、線熱膨張係数が測定部位によらず、均一であった。線熱膨張係数がフィルム上の位置によらず、均一であるため、フィルムの位置による使い分けが不要であることも確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明のポリイミドフィルムは、均一な線熱膨張係数を有し、TDの低熱膨張性に優れるため、ファインピッチ回路用基板、特にフィルムのTDに狭ピッチに配線されるCOF(Chip on Film)用において特に有用である。
【符号の説明】
【0068】
a ポリイミドフィルムの製膜幅
b 製膜幅端から150mm内側に入った点
b’ 製膜幅端から150mm内側に入った点
c 製膜幅の中央部±200mm以内の点
d bとb’を結ぶ直線上の任意の点
d’ bとb’を結ぶ直線上の任意の点
e ポリイミドフィルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
製膜幅が1m以上であって、フィルムの機械搬送方向(MD)と垂直方向の直線上に製膜幅両端から150mm内側に入った両2点を選び、該2点を結ぶ直線の範囲内で、該2点を含む直線上の中央部±200mm以内の1点と、さらに任意の2点を選び、少なくともこれらの5点のすべてにおいて、幅方向(TD)の線熱膨張係数αTDが3〜7ppm/℃の範囲内にあることを特徴とするポリイミドフィルム。
【請求項2】
幅方向(TD)の線熱膨張係数αTDが4〜6ppm/℃の範囲内にあることを特徴とする請求項1記載のポリイミドフィルム。
【請求項3】
製膜幅が1.5m以上であって、フィルムの機械搬送方向(MD)と垂直方向の直線上に製膜幅両端から150mm内側に入った両2点を選び、該2点を結ぶ直線の範囲内で、該2点を含む直線上の中央部±150mm以内の1点と、さらに任意の5点を選び、少なくともこれらの8点のすべてにおいて、幅方向(TD)の線熱膨張係数αTDが3〜7ppm/℃の範囲内にあることを特徴とするポリイミドフィルム。
【請求項4】
幅方向(TD)の線熱膨張係数αTDが4〜6ppm/℃の範囲内にあることを特徴とする請求項3記載のポリイミドフィルム。
【請求項5】
製膜幅が2m以上であって、フィルムの機械搬送方向(MD)と垂直方向の直線上に製膜幅両端から150mm内側に入った両2点を選び、該2点を結ぶ直線の範囲内で、該2点を含む直線上の中央部±100mm以内の1点と、さらに任意の8点を選び、少なくともこれらの11点のすべてにおいて、幅方向(TD)の線熱膨張係数αTDが3〜7ppm/℃の範囲内にあることを特徴とするポリイミドフィルム。
【請求項6】
幅方向(TD)の線熱膨張係数αTDが4〜6ppm/℃の範囲内にあることを特徴とする請求項5記載のポリイミドフィルム。
【請求項7】
フィルムの機械搬送方向(MD)の線熱膨張係数αMDと幅方向(TD)の線熱膨張係数αTDの比(αMD/αTD)が1.8以上4.0未満であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のポリイミドフィルム。
【請求項8】
フィルムの機械搬送方向(MD)の線熱膨張係数αMDと幅方向(TD)の線熱膨張係数αTDの比(αMD/αTD)が2.0以上3.0未満であることを特徴とする請求項7記載のポリイミドフィルム。
【請求項9】
ポリイミドフィルムがフィルムの機械搬送方向(MD)と幅方向(TD)の2軸延伸処理により延伸されており、MDの延伸が2段階延伸であることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載のポリイミドフィルム。
【請求項10】
MDの2段階延伸において、MDの総延伸倍率に対する第1段階目の延伸倍率の割合が、40%以上であることを特徴とする請求項9記載のポリイミドフィルム。
【請求項11】
TDの延伸倍率がMDの総延伸倍率の1.10倍以上1.50倍以下であることを特徴とする請求項9又は10に記載のポリイミドフィルム。
【請求項12】
ポリイミドフィルムが、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル及び/又は3,4’−ジアミノジフェニルエーテルとパラフェニレンジアミンとのモル比が69/31〜90/10である芳香族ジアミン成分と、ピロメリット酸二無水物と3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物とのモル比が80/20〜60/40である酸無水物成分とからなるポリアミド酸から製造される、又はパラフェニレンジアミンである芳香族ジアミン成分と、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物である酸無水物成分とからなり、芳香族ジアミン成分と酸無水物成分とのモル比が40/60〜60/40であるポリアミド酸から製造されることを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載のポリイミドフィルム。
【請求項13】
全粒子の粒子径が0.01μm以上1.5μm以下であって、0.10μm以上0.90μm以下の粒子径を有する粒子が全粒子中80体積%以上を占める微細シリカをフィルム樹脂重量当たり0.30重量%以上0.80重量%以下の割合でフィルムに均一に分散されていることを特徴とする請求項1〜12のいずれかに記載のポリイミドフィルム。
【請求項14】
(1)芳香族ジアミン成分と酸無水物成分とを有機溶媒中で重合させ、ポリアミド酸溶液を得る工程、(2)前記ポリアミド酸溶液を環化反応させてゲルフィルムを得る工程、(3)前記工程(2)で得られたゲルフィルムを、MDの延伸が2段階延伸であり、かつTDの延伸倍率がMDの総延伸倍率の1.10倍以上1.50倍以下であるMDとTDの2軸延伸処理する工程を含むことを特徴とするポリイミドフィルムの製造方法。
【請求項15】
MDの2段階延伸において、MDの総延伸倍率に対する第1段階目の延伸倍率の割合が、40%以上であることを特徴とする請求項14記載の製造方法。
【請求項16】
(1)芳香族ジアミン成分と酸無水物成分とを有機溶媒中で重合させ、ポリアミド酸溶液を得る工程、(2)前記ポリアミド酸溶液を環化反応させてゲルフィルムを得る工程、(3)前記工程(2)で得られたゲルフィルムを、MDの延伸が3段階延伸であり、かつTDの延伸倍率がMDの総延伸倍率の1.10倍以上1.50倍以下であるMDとTDの2軸延伸処理する工程を含むことを特徴とするポリイミドフィルムの製造方法。
【請求項17】
MDの3段階延伸において、MDの総延伸倍率に対する第1段階目の延伸倍率の割合が、40%以上であることを特徴とする請求項16記載の製造方法。
【請求項18】
MDの3段階延伸において、MDの総延伸倍率に対する第2段階目の延伸倍率の割合が、5%以上であることを特徴とする請求項16又は17記載の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−68867(P2011−68867A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−185522(P2010−185522)
【出願日】平成22年8月20日(2010.8.20)
【出願人】(000219266)東レ・デュポン株式会社 (288)
【Fターム(参考)】