説明

ポリイミド含有ポリアミドイミド混和フィルムの製造方法

【課題】分子鎖の中にアミド基とイミド基を含む樹脂をフィルムに容易に製造できる方法を提供する。
【解決手段】アミドイミド樹脂溶液に所定量のポリイミド前駆体溶液を混合する工程;混合された溶液を化学的イミド化剤とともに支持体上に流延塗布、乾燥して自己支持型ゲルフィルムを得る工程;及び自己支持型ゲルフィルムを支持体から剥離して熱処理する工程;を含む。ポリアミドイミドフィルムの製造において、ポリアミドイミド樹脂単独でなったフィルムに比べ、フィルム製造のための生産性に優れ、フィルムの機械的物性、耐熱特性の向上に有利である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポリイミド含有ポリアミドイミド混和フィルムの製造方法に係り、分子鎖の中にアミド基とイミド基を含む樹脂をフィルムに容易に製造できる方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリイミドフィルムは、優れた熱的、機械的特性を持つが、高価であるため、その使用に制限があった。しかし、電子材料用途だけでなく重機、建築、航空等の産業全般にわたって高温用資材に対する要求が大きくなるにつれて、より安価で優れた耐熱特性を持つフィルムに対する供給要求が増大している。
【0003】
このような要求に応じることができる有用な材料としては、例えば、分子鎖の中にアミド基とイミド基を含む樹脂、すなわちポリアミドイミド樹脂を挙げることができる。
【0004】
しかし、ポリアミドイミド樹脂を製膜化するにあたっては、溶液キャスティング法で製膜する場合、支持体上で樹脂溶液を一定温度の条件で一定時間加熱した後、フィルムを剥離して得られたグリーンフィルム(green film)をさらに高温で乾燥することで、最終フィルムを得ることになる。この際、高い生産性と均一な機械的特性を持つフィルムを得るためには、自己支持性を有するグリーンフィルムの取得が重要であるが、一般的なポリアミドイミド樹脂がグリーンフィルムの形状を持つためには、残留溶媒量を10〜20wt%以下に乾燥しなければならず、これにより支持体上で長期間の乾燥を必要とする問題点がある。
【0005】
また、生産性向上のために、スチール(SUS)ベルトのような金属性支持体を使用する場合、ポリアミドイミド樹脂と支持体との間の接着によって、乾燥した樹脂が剥離し難くなる問題があるため、フィルムの量産に大きな問題点を持っていた。
【0006】
よって、ポリアミドイミド樹脂の製膜に関する従来技術は少なく、実用化した製品については、それを探し出すことさえ難しい。
【0007】
例えば、特開2008−74991号には、ポリアミドイミドのフィルムへの製造方法の一例として、
(1)ポリアミドとポリイミド前駆体であるポリアミド酸をそれぞれ重合してから混合し、製膜と同時にイミド化してポリアミドイミドを得る方法、
(2)トリメリット酸無水物クロリドとジアミンを反応させてポリアミド−ポリアミド酸共重合体を得、製膜と同時にイミド化してポリアミドイミドを得る方法、
(3)ジアミンとテトラカルボン酸二無水物及びジカルボン酸クロリドを反応させてポリアミド−ポリアミド酸共重合体を得、製膜と同時にイミド化してポリアミドイミドを得る方法、および
(4)溶媒可溶のポリイミドの場合、前記(1)〜(3)の方法で重合と同時にイミド化し、ポリアミドイミド溶液で製膜する方法
などが開示されている。
【0008】
しかし、ここに開示された方法によってクロリド化合物単量体を使用して製造されるポリアミドイミドは、単量体の高吸湿性及び塩素ガス発生のため、単量体の取扱いが難しく、重合過程中に発生する塩化水素等の塩素化合物の中和のために炭酸リチウム等の中和剤を添加して生成された塩を除去するために、湿式洗浄及び乾燥、有機溶媒再溶解工程を必要とする。これは工程原価を高め、フィルムの物性を損なったり、絶縁性を低下させたりするという問題点が指摘されている。さらに、フィルムの量産工程で使用されるスチールドラムまたはスチールベルト等の金属性支持体を使用する場合、この支持体に致命的な欠陥または腐食を引き起こす問題があるので、前述した方法によってポリアミドイミドフィルムを実用化するのには大きな限界がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2008−74991号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、本発明は、機械的物性に優れ、かつ耐熱特性も適正水準以上であるポリイミド含有ポリアミドイミド混和フィルムの製造方法を提供することを目的とする。
【0011】
また、本発明は機械的物性及び耐熱特性に優れ、かつ既存のポリイミドフィルムに比べて低コストであるポリイミド含有ポリアミドイミド混和フィルムの製造方法を提供することを目的とする。
【0012】
さらに、本発明は、ポリアミドイミド樹脂から溶液製膜技術によって製膜特性の良好なフィルムを製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記のような課題を達成するために、本発明の一態様では、分子鎖の中にアミド基とイミド基を含む樹脂を製膜する方法であって、分子鎖の中にアミド基とイミド基を含む樹脂溶液に所定量のポリイミド前駆体溶液を混合する工程;
混合された溶液を化学的イミド化剤とともに支持体上に流延塗布、乾燥して、自己支持型ゲルフィルムを得る工程;及び
自己支持型ゲルフィルムを支持体から剥離して熱処理する工程;
を含む。
【0014】
本発明の好ましい一態様によるフィルムの製造方法において、分子鎖の中にアミド基とイミド基を含む樹脂は無水物基末端を有し、ポリイミド前駆体はアミン末端を有し、混合の際に重合を伴うことができる。
【0015】
本発明の好ましい一態様によるフィルムの製造方法において、分子鎖の中にアミド基とイミド基を含む樹脂は次の化学式で表示される繰り返し単位を含んでもよい。
【0016】
式:


【0017】
前記式で、







である。

【0018】
本発明の好ましい一態様によるフィルムの製造方法において、ポリイミド前駆体は次の化学式で表示される繰り返し単位を含むものであることができる。
【0019】
式:


【0020】
前記式で、







である。
【0021】
本発明の一態様によるフィルムの製造方法において、分子鎖の中にアミド基とイミド基を含む樹脂溶液は固形分濃度10〜35重量%であることができる。
【0022】
本発明の一態様によるフィルムの製造方法において、ポリイミド前駆体溶液は固形分濃度10〜35重量%であることができる。
【0023】
本発明の一態様によるフィルムの製造方法において、化学的イミド化剤は脱水剤及びイミド化触媒を含むことができる。
【0024】
具体的な一態様において、乾燥は100〜160℃で行われることができ、乾燥は10分以内で行われることができる。
【0025】
また、一態様において、熱処理工程は200〜400℃の温度範囲で行われることができる。
【0026】
また、本発明の一態様によるフィルムの製造方法において、混合された溶液は、溶液粘度が10,000〜300,000cPであることができる。
【0027】
本発明の好ましい一態様によるフィルムの製造方法において、ポリイミド前駆体溶液は、固形分含量の基準で、混合された溶液の3〜50重量%になるように混合されることができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明は、ポリアミドイミドフィルムを製造するにあたって、製膜特性に優れた方法を提供する。該方法は、より容易な方法でポリアミドイミドフィルムを大量生産できる点で有用であり、この方法で得られるフィルムは熱的特性が向上したポリアミドイミドフィルムであって、これは、既存のポリイミドフィルムが適用されている製品分野に有用に使用できると期待される。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、このような本発明を詳細に説明する。
【0030】
分子鎖の中にアミド基とイミド基を含む樹脂(以下、‘ポリアミドイミド樹脂’と略称する)から溶液キャスティング法で製膜する場合、支持体上で樹脂溶液を一定温度で一定時間加熱した後、支持体からフィルムを剥離して部分的に乾燥したポリアミドイミドフィルムを得、更なる高温乾燥工程によって最終フィルムを得る。この際、高生産性と均一な機械的特性を持つフィルムを得るためには、支持体から、半乾燥した樹脂溶液が、自己支持性を持つフィルムの形状に、容易に剥離できることが重要であるが、一般的なポリアミドイミド樹脂が自己支持性を持つグリーンフィルムの形状を持つためには、残留溶媒量が少なくとも10〜20wt%以下になるように乾燥しなければならず、そのためには高沸点溶媒を揮発させるために長期間の乾燥過程が必要である。これとは異なり、過度に乾燥する場合、支持体と接着して剥離し難くなるという好ましくない製膜工程特性のために、低収率及び不均一なフィルム物性を持つことになる問題点を持つ。
【0031】
このようなことから、本発明の一態様では、ポリアミドイミド樹脂からフィルムを製造するにあたって、ポリアミドイミド溶液に、ポリイミド前駆体(通常、ポリアミド酸またはポリアミック酸という)と化学的イミド化剤を混合してキャスティングすることで、ポリアミドイミドより優れた耐熱特性を持つ混和フィルムを製造するようにする。グリーンフィルムの形成のための支持体上の乾燥過程での多量の残留溶媒の存在にもかかわらず化学的イミド化作用によって自己支持型ゲルフィルムの形成が可能であって、支持体での長期間の乾燥過程が不要である特徴があり、また、混合樹脂内ポリイミド前駆体のイミド化によって生成された水系副産物が支持体とゲルフィルム間の潤滑層として作用してゲルフィルムの剥離が容易となる特徴を持つことになる。したがって、本発明によれば高耐熱性と優れた製膜特性を持つポリアミドイミド混和フィルムを製造できる。
【0032】
このような製造方法において、ポリアミドイミド樹脂とポリイミド前駆体は単純に混合することもでき、また、ポリアミドイミド樹脂として無水物末端のものを使用し、ポリイミド前駆体としてアミン末端のものを使用して、混合の際に重合を誘導し、製膜の際にイミド化してポリアミドイミド含有フィルムを製造することもできる。
【0033】
このような製膜方法を使用できるポリアミドイミド樹脂は特に限定されるものではなく、耐熱性を向上させる観点で、例えば、次の化学式で表示される繰り返し単位を含むものを使用できる。
【0034】
式:

【0035】
前記式で、







である。
【0036】
このようなポリアミドイミド樹脂を製造する方法は特に限定されるものではないが、簡潔に要約すれば、次の反応式1で表すことができる。
【0037】
反応式1
【0038】

【0039】
このようにポリアミドイミド高分子を製造するにあたって、イソシアネート法(isocyanatemethod)を使用すれば、脱炭酸反応によって最終のポリアミドイミド重合体を製造することになるので反応過程で水が発生せず、よって重合体が加水分解されることを防止できる。
【0040】
一方、ポリアミドイミド高分子は、このようなポリアミドイミド樹脂のほかにも、耐熱性向上のための芳香族テトラカルボン酸二無水物をさらに反応させて得られるものであることができる。この際、芳香族テトラカルボン酸二無水物の一例としては、ピロメリット酸二無水物、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物またはオキシジフタル二無水物などを挙げることができる。
【0041】
このような芳香族テトラカルボン酸二無水物を前記イソシアネート法に用いることができる。まず前述した反応を行った後にさらに芳香族テトラカルボン酸二無水物を添加して順次反応を行うこともできる。
【0042】
イソシアネート化合物がジフェニルメタンジイソシアネートであり、芳香族テトラカルボン酸化合物がピロメリット酸無水物である場合を例に挙げて簡潔に要約すれば、次の反応式2及び3に要約できる。
【0043】
反応式2


【0044】
反応式3


【0045】
ここで、反応式2によるポリアミドイミド高分子溶液の製造は、反応式3による製造に比べて、配列された分子構造制御によって分子鎖間のパッキング(Packing)をより緩やかにするとともに無水物末端制御を容易にし、これにより高分子混合額の相溶性を高め、化学的結合を可能にして、最終の混和フィルムの機械的物性及び耐熱特性の向上に有利でありうる。
【0046】
ポリアミドイミド高分子を製造する工程において、溶媒としては極性溶媒を使用することが好ましく、その一例としては、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミドなどを使用することができ、好ましくはN−メチル−2−ピロリドンを溶媒として使用する。
【0047】
一方、前述したように、本発明の一態様では、無水物末端のポリアミドイミド溶液に、アミン末端のポリイミド前駆体(通常、ポリアミド酸またはポリアミック酸という)を混和してキャスティングすることで、ポリアミドイミドの無水物末端とポリイミド前駆体のアミン末端の化学結合を誘導して一層高い混和性と優れた耐熱性及び機械的強度を持つフィルムの製造を可能にすることができる。
【0048】
一方、ポリアミドイミド樹脂の製造において、トリメリット酸無水物とさらに添加される芳香族テトラカルボン酸二無水物の割合は、耐熱性を確保する観点からは、80:20〜95:5モル比が好ましく、また樹脂の保存安全性と製膜特性を考慮すれば、トリメリット酸無水物とその他の芳香族テトラカルボン酸二無水物の反応体であるイソシアネートの使用割合は、好ましくは1:0.70〜1:0.95モル比であり、より好ましくは1:0.80〜1:0.90モル比である。このモル比が1:1に近い場合、適量の無水物末端を保有したポリアミドイミドを製造しにくくなる恐れがあり、一方、モル比が1:0.7より低い場合、高分子量のポリアミドイミド重合体を得にくく、耐熱性及び機械的物性が低下する恐れがある。
【0049】
ポリアミドイミド高分子溶液は、固形分濃度15〜35重量%であることが、生産性の面で有利である。
【0050】
また、ポリアミドイミド高分子は、重量平均分子量が10,000〜100,000g/mol程度であることが、製膜のための適正粘度を維持しながら耐熱性を向上させることができる観点から好ましい。
【0051】
ポリアミドイミド高分子溶液に、製膜を考慮して、ポリイミド前駆体溶液を混合する。
【0052】
この際、混合溶液は、溶液粘度が10,000〜300,000cPであることが、円滑な吐出と製造されたフィルムの平坦性の面で有利でありうる。
【0053】
前記及び後記において、“ポリイミド前駆体”または“ポリイミド高分子”は特にその構造に限定はなく、化学的イミド化によってゲル生成特性を持つ強直な、あるいは部分的に強直な特性を持つものであればよい。
【0054】
このようなポリイミド前駆体の具体例としては、例えば、次の化学式で表示される繰り返し単位を含むものが挙げられる。
【0055】
式:

【0056】
前記式で、







である。
これらの部分の好ましい結合位置を下記に示す。

【0057】
ポリイミド前駆体溶液中に含まれる溶媒としては、ポリイミド前駆体を溶解しながら前述したポリアミドイミド高分子を溶解させることができるものであれば、特に限定されない。その一例としては、N,N−ジメチルホルムアミド、N,Nジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドンなどを挙げることができる。
【0058】
ポリイミド前駆体溶液は固形分濃度10〜35重量%のものが生産性を高める面で有利である。
【0059】
ポリアミドイミド樹脂溶液とポリイミド前駆体溶液を混合するにあたって、ポリイミド前駆体溶液は、製膜特性を考慮して添加される。その含量を増大させることは、意図するところに合わず、低コストの耐熱性フィルムを提供しようとする本発明の目的に反してしまう場合があるので、好ましくは全体混合溶液中に、固形分含量を基準として3〜50重量%の量で混合できる。
【0060】
ポリアミドイミド高分子溶液とポリイミド前駆体溶液を混合して支持体上に流延塗布し乾燥することにより、自己支持性のフィルムを得ることができる。乾燥は、溶媒の沸点と生産速度を考慮して、100〜160℃で行うことができ、本発明によれば、前記温度範囲で10分以内、好ましくは5分以内で乾燥することだけでも自己支持型ゲルフィルムを得ることができる。
【0061】
前述したように、ポリアミドイミド高分子溶液のみを支持体上に流延塗布する場合、自己支持性を持つフィルム(グリーンフィルム)を得るためには、高沸点溶媒の揮発のための長期間乾燥過程が必要であり、これによって工程速度が遅くなるか、支持体が長くなってしまう欠点がある。また、金属性支持体を使用する場合には、乾燥した樹脂が支持体と接着して、剥離が難しくなる問題がある。
【0062】
しかし、ポリアミドイミド、ポリイミド混合溶液と化学的イミド化剤を併用すれば、多量の残留溶媒の存在にもかかわらず支持体上でゲル状の自己支持型フィルムを形成することができ、またイミド化触媒の化学作用によってゲルフィルムと支持体との境界面に液状の潤滑層が形成されて、支持体からのフィルムの剥離が容易になり、既存のポリアミド樹脂で発生するフィルム切断、表面不良、物性不均一等の諸般の問題点を解決できる。
【0063】
このような点で、ポリアミドイミド溶液とポリイミド前駆体溶液を混合した後、あるいは混合と同時に、化学的イミド化剤を含む溶液を添加して支持体上に流延塗布できる。このように化学的イミド化を併用する場合、ポリイミド前駆体のイミド化によって生成された水系副産物が潤滑層の役目をして支持体との剥離特性を高めることにより、優れた製膜特性を持つポリアミドイミド混和フィルムを製造できる。
【0064】
前記及び後記において、“化学的イミド化”とは、ポリイミド前駆体からイミド化を行うに際して、脱水剤及び触媒を併用することであり、当業者に理解可能である。
【0065】
ここで、化学的イミド化剤は、脱水剤及び触媒の組合せである場合、具体例として、無水酢酸等の酸無水物に代表される脱水剤と、イソキノリン、β−ピコリン、ピリジン等の3級アミン類などに代表されるイミド化触媒の組合せを挙げることができる。ここで、化学的イミド化剤は、脱水剤、触媒、及び希薄溶媒の組合せである場合、具体例として、無水酢酸等の酸無水物に代表される脱水剤と、イソキノリン、β−ピコリン、ピリジン等の3級アミン類などに代表されるイミド化触媒と、NMP、DMF、DAMc等の希薄溶媒の組合せを挙げることができる。酸無水物とイミド化触媒は、ポリイミド当量比に対して1〜5倍で添加でき、製膜特性を考慮して1〜3倍、より好ましくは1〜1.5倍添加することが好ましい。
【0066】
ポリアミドイミド溶液とポリイミド前駆体溶液を混合して化学的イミド化剤とともに支持体上に流延塗布及び乾燥して自己支持型ゲルフィルムを得た後、自己支持型ゲルフィルムを支持体から剥離し、これを熱処理して、ポリイミド前駆体の残ったアミド酸をイミド化することにより、ポリイミド含有ポリアミドイミド混和フィルムを製造できる。
【0067】
熱処理工程は、フィルムのガラス転移温度を考慮して、200〜600℃の温度で3〜30分間加熱して脱水閉環乾燥する。この際、前記温度より高いか、もしくは時間が長いと、フィルムの劣化が発生して問題が起こりやすく、反面、この温度より低いか、もしくは時間が短いと、イミド化が充分でなくてフィルムが割れやすい。前記のように製造されたポリイミド基を含むポリアミドイミドフィルムの平均厚さは5〜125μmの範囲内であることができる。
【0068】
一方、得られるポリアミドイミド含有フィルムは、熱的安全性の面でガラス転移温度が270℃以上のものであり、このような熱的安全性のため、既存のポリイミドフィルムが適用されて来た分野、特に絶縁用テープ、軟性銅張積層板を含む電機電子等の分野に本発明のポリアミドイミドフィルムを適用できると期待される。
【実施例】
【0069】
以下、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明する。しかし、これら実施例は本発明を例示的に説明するためのもので、本発明の範囲がこれら実施例に限定されるものではない。
【0070】
実施例1
(1)ポリアミドイミド溶液の製造
1リットルの反応器に窒素ガスで充填した後、トリメリット酸無水物51,200g(0.266mol)とN−メチル−2−ピロリドン200gを反応器に加えた。ついで、反応器を約200RPMの回転速度で撹拌させながら4,4'−メチレンジフェニルジイソシアネート82.899g(0.316mol)をN−メチル−2−ピロリドン200gに溶解させて1時間にわたって反応器にゆっくり添加し、200RPMの速度で約30分間さらに撹拌した。前記溶液を30分にわたって80℃まで徐々に昇温させた後、30分間さらに撹拌し、その後、ピロメリット酸無水物10.258g(0.047mol)と固形分含量15wt%になるようにN−メチル−2−ピロリドン反応器に加え、80℃で30分間さらに撹拌した後、140℃まで昇温させた。その後、前記溶液の温度を140℃に維持しながら約30分間100RPMの速度で回転させながら撹拌し、反応の終わった溶液の温度を徐々に40℃まで降温させて固形分含量15wt%のポリアミドイミド重合体溶液を製造した。
【0071】
得られたポリアミドイミド重合体の重量平均分子量は当量体の当量比によって50,000g/molと予測された。
【0072】
(2)ポリイミド前駆体溶液の製造
1リットルの反応器に窒素ガスで充填した後、4,4−メチレンアリニド69.005g(0.348mol)、N,N−ジメチルホルムアミド300gを反応器に加えた。ついで、反応器を約200RPMの回転速度で撹拌させながら溶解した後、ピロメリット酸無水物75.379g(0.346mol)とN,N−ジメチルホルムアミド344gに順次投入し、その後、40℃で200RPMの回転速度で撹拌させながら重合して固形分含量18.5wt%のポリイミド前駆体溶液を製造した。
【0073】
ポリイミド前駆体の重量平均分子量は当量体の当量比によって50,000g/molと予測された。
【0074】
(3)ポリアミドイミドとポリイミド前駆体の混合溶液の製造
前記(1)で得られるポリアミドイミド高分子溶液(固形分含量15wt%)に、前記(2)で得られるポリイミド前駆体溶液(固形分含量18.5wt%)を固形分含量の基準で100:50重量比になるように混合し、ポリアミドイミド高分子溶液とポリイミド前駆体溶液の混合高分子溶液(溶液粘度100,000cP)100gを製造した。
【0075】
(4)製膜
このような混合高分子溶液に、N,N−ジメチルホルムアミド希薄剤(溶媒)と、脱水剤としての無水酢酸と、イミド化触媒としてのイソキノリンを含む触媒剤(化学的イミド化剤)35gを混合した。混合溶液をダイから吐き出して金属支持体上に流延塗布し、120〜160℃で5分間乾燥して自己支持型ゲルフィルムを得た。
【0076】
得られたゲル状のフィルムを金属支持体から剥離し、200〜300℃の温度範囲で乾燥し、300〜400℃の温度範囲で熱処理してポリアミドイミド混和フィルムを製造した。
【0077】
実施例2
【0078】
前記実施例1と同様の方法でフィルムを製造したが、ただ(1)において、トリメリット酸無水物とピロメリット酸二無水物のモル比を100:8になるように変更してポリアミドイミド高分子溶液を製造した。
【0079】
混合溶液をダイから吐き出して金属(SUS)支持上に流延塗布し、160℃で5分間乾燥して自己支持型ゲルフィルムを得た。
【0080】
得られたフィルムを剥離し、200〜300℃の温度範囲で乾燥し、300〜400℃の温度範囲で熱処理してポリアミドイミド混和フィルムを製造した。
【0081】
参考例1
【0082】
前記実施例1と同様の方法でフィルムを製造したが、ただ(4)において、脱水剤及び触媒を混合する工程を省き、混合溶液をダイから吐き出して金属支持体上に流延塗布し、ゲルフィルムの形成の有無及びポリアミドイミド混和フィルムの製造可否を試した。
【0083】
実施例3
【0084】
前記実施例1と同様の方法でフィルムを製造したが、ただ(1)を次のように変更した。
【0085】
1リットルの反応器に窒素ガスで充填した後、トリメリット酸無水物51.200g(0.266mol)とピロメリット酸無水物10.258g(0.047mol)、N−メチル−2−ピロリドン498gを反応器に加えた。ついで、反応器を約200RPMの回転速度で撹拌させながら4,4'−メチレンジフェニルジイソシアネート82.899g(0.316mol)をN−メチル−2−ピロリドン100gに溶解させ、1時間にわたって反応器にゆっくり添加し、200RPMの速度で約30分間さらに撹拌し、その後、固形分含量15wt%になるようにN−メチル−2−ピロリドンを加えた後、前記溶液を30分にわたって80℃まで徐々に昇温させた後、30分間さらに撹拌し、その後、さらに140℃まで昇温させた。その後、前記溶液の温度を140℃に維持しながら約30分間100RPMの速度で回転させながら撹拌し、反応の終わった溶液の温度を徐々に40℃まで降温させて固形分含量15wt%のポリアミドイミド重合体溶液を製造した。
【0086】
得られたポリアミドイミド重合体の重量平均分子量は当量体の当量比によって50,000g/molと予測された。
【0087】

【0088】
実施例4
【0089】
前記実施例3と同様の方法でフィルムを製造したが、ただ(1)において、トリメリット酸無水物とピロメリット酸二無水物のモル比を100:8になるように変更してポリアミドイミド高分子溶液を製造した。
【0090】
その後、混合溶液をダイから吐き出して金属(SUS)支持上に流延塗布し、160℃で5分間乾燥して自己支持型ゲルフィルムを得た。
【0091】
得られたフィルムを剥離し、200〜300℃の温度範囲で乾燥し、300〜400℃の温度範囲で熱処理してポリアミドイミド混和フィルムを製造した。
【0092】
参考例2
【0093】
前記実施例3と同様の方法でフィルムを製造したが、ただ(4)において、脱水剤及び触媒を混合する工程を省き、混合溶液をダイから吐き出して金属支持体上に流延塗布し、実施例と同様の方法でゲルフィルムの形成の有無及びポリアミドイミド混和フィルムの製造可否を試した。
【0094】
実施例5
【0095】
(1)ポリアミドイミド溶液の製造

【0096】
1リットルの反応器に窒素ガスで充填した後、トリメリット酸無水物66.051g(0.344mol)とN−メチル−2−ピロリドン200gを反応器に加えた。ついで、反応器を約200RPMの回転速度で撹拌させながらトルエンジイソシアネート65.149g(0.407mol)をN−メチル−2−ピロリドン200gに溶解させ、1時間にわたって反応器にゆっくり添加し、200RPMの速度で約30分間さらに撹拌した。前記溶液を30分にわたって80℃まで徐々に昇温させた後、30分間さらに撹拌し、その後、ピロメリット酸無水物13.233g(0.047mol)と固形分含量15wt%になるようにN−メチル−2−ピロリドンを加えた後、80℃で30分間さらに撹拌し、その後、140℃まで昇温させた。その後、前記溶液の温度を140℃に維持しながら約30分間100RPMの速度で回転させながら撹拌し、反応の終わった溶液の温度を徐々に40℃まで降温させて固形分含量15wt%のポリアミドイミド重合体溶液を製造した。
【0097】
得られたポリアミドイミド重合体の重量平均分子量は当量体の当量比によって50,000g/molと予測された。
【0098】
(2)ポリイミド前駆体溶液の製造
1リットルの反応器に窒素ガスで充填した後、4,4−メチレンアリニド69.005g(0.348mol)、N,N−ジメチルホルムアミド300gを反応器に加えた。ついで、反応器を約200RPMの回転速度で撹拌させながら溶解した後、ピロメリット酸無水物75.379g(0.346mol)とN,N−ジメチルホルムアミド344gに順次投入し、その後、40℃で200RPMの回転速度で撹拌させながら重合して固形分含量18.5wt%のポリイミド前駆体溶液を製造した。
【0099】
ポリイミド重合体の重量平均分子量は当量体の当量比によって50,000g/molと予測された。
【0100】
(3)ポリアミドイミド溶液とポリイミド前駆体の混合溶液の製造
前記(1)で得られるポリアミドイミド高分子溶液(固形分含量18.5wt%)に、前記(2)で得られるポリイミド前駆体溶液(固形分含量18.5wt%)を固形分含量の基準で100:50重量比になるように混合して、ポリアミドイミド高分子溶液とポリイミド前駆体溶液の混合高分子溶液(溶液粘度200,000cP)100gを製造した。
【0101】
(4)製膜
このような混合高分子溶液に、N,N−ジメチルホルムアミド希薄剤と、脱水剤としての無水酢酸と、イミド化触媒としてのイソキノリンを含む触媒剤35gを混合した。混合溶液をダイから吐き出して金属(SUS)支持上に流延塗布し、160℃で5分間乾燥して自己支持型ゲルフィルムを得た。
【0102】
得られたフィルムを剥離し、200〜300℃の温度範囲で乾燥し、300〜400℃の温度範囲で熱処理してポリアミドイミド混和フィルムを製造した。
【0103】
実施例6
【0104】
前記実施例5と同様の方法でフィルムを製造したが、ただ(1)において、トリメリット酸無水物とピロメリット酸二無水物のモル比を100:8になるように変更してポリアミドイミド高分子溶液を製造した。
【0105】
混合溶液をダイから吐き出して金属(SUS)支持上に流延塗布し、160℃で一定時間乾燥して自己支持型ゲルフィルムを得た。
【0106】
得られたフィルムを剥離し、200〜300℃の温度範囲で乾燥し、300〜400℃の温度範囲で熱処理してポリアミドイミド混和フィルムを製造した。
【0107】
参考例3
【0108】
前記実施例5と同様の方法でフィルムを製造したが、ただ(4)において、脱水剤及び触媒を混合する工程を省き、混合溶液をダイから吐き出して金属支持体上に流延塗布し、実施例と同様の方法でゲルフィルム及びポリアミドイミド混和フィルムの製造可否を試した。
【0109】
実験例
前記実施例及び参考例で得られるフィルムに対して製膜特性及び最終に得られるフィルムの厚さを測定し、さらに機械的特性及び熱的特性を評価し、その結果を次の表1に示した。
具体的な測定方法は次の通りである。
【0110】
(1)製膜特性
温度範囲120〜160℃で自己支持型ゲルフィルムまたはグリーンフィルム(Green Film)の形成のためのオーブン滞留時間(乾燥時間)を測定。
グリーンフィルム残留溶媒量を測定。
支持体との剥離特性
【0111】
(2)フィルムの厚さ
装置:KG601B Electric Micro Meter(Anritsu社製)
【0112】
(3)引張強度
装置:UTM(Instron社)
方法:ASTM D882
【0113】
(4)ガラス転移温度
装置:DSC−2940(TA社製)
温度プロファイル:20〜350℃
加熱速度:10℃/分
荷重:3g
【0114】
(5)熱膨張係数(CTE)
装置:TMA−2940(TA社製)
方法:ASTM D696−98
温度プロファイル:20〜400℃
加熱速度:10℃/分
サンプルの大きさ:5×20mm
【表1】


前記表1の結果から、実施例によれば、製膜特性に優れた強靭なフィルムを製造できることが分かる。しかし、参考例1〜3の場合、化学的イミド化剤の未添加によってゲルフィルムの形成が不可であるため、支持性フィルム(グリーンフィルム)剥離のために一定時間支持体上で乾燥するとき、金属支持体とフィルムとの強い接着によって剥離が不可であってフィルムに製作することができなかった。
【0115】
実施例7
【0116】
(1)無水物末端ポリアミドイミド溶液の製造
1リットルの反応器に窒素ガスで充填した後、トリメリット酸無水物51.428g(0.268mol)とN−メチル−2−ピロリドン200gを反応器に加えた。ついで、反応器を約200RPMの回転速度で撹拌させながら4,4'−メチレンジフェニルジイソシアネート79.448g(0.3029mol)をN−メチル−2−ピロリドン200gに溶解させ、1時間にわたって反応器にゆっくり添加し、200RPMの速度で約30分間さらに撹拌した。前記溶液を30分にわたって80℃まで徐々に昇温させた後、30分間さらに撹拌し、その後、これにピロメリット酸無水物10.303g(0.047mol)とN−メチル−2−ピロリドン222gを順次投入し、30分間撹拌した後、続いて約30分にわたって再び140℃まで昇温させた。その後、前記溶液の温度を140℃に維持しながら約30分間100RPMの速度で回転させながら撹拌し、反応の終わった溶液の温度を徐々に40℃まで下降させて固形分含量18.5wt%の無水物末端のポリアミドイミド溶液を製造した。
【0117】
これを要約すれば次の反応式のようになる。
【0118】

【0119】
(2)アミン末端ポリイミド前駆体溶液の製造
1リットルの反応器に窒素ガスで充填した後、4,4−メチレンアリニド68.066g(0.343mol)、N,N−ジメチルホルムアミド300gを反応器に加えた。ついで、反応器を約200RPMの回転速度で撹拌させながら溶解し、その後、ピロメリット酸無水物71.835g(0.329mol)とN,N−ジメチルホルムアミド317gに順次投入し、その後、40℃で200RPMの回転速度で撹拌させながら重合して固形分含量18.5wt%のアミン末端のポリイミド前駆体溶液を製造した。
【0120】
これを要約すれば次の反応式のようになる。
【0121】

【0122】
(3)ポリアミドイミド溶液とポリイミド前駆体の混合及び重合
常温で前記(1)で得られるポリアミドイミド溶液(固形分含量18.5wt%)に、前記(2)で得られるポリイミド前駆体溶液(固形分含量18.5wt%)を固形分含量の基準で100:50重量比になるように混合して100gになるようにした。実質的には混合されて重合反応して次式のポリイミド前駆体を含むポリアミドイミド(溶液粘度106,000cP)を得た。
【0123】
式:

【0124】
前記式で、PAIは


であり、
PAAは


である。
【0125】
(4)製膜
この、ポリイミド前駆体を含むポリアミドイミド溶液100gに、N,N−ジメチルホルムアミド希薄剤と、脱水剤の無水酢酸と、イミド化触媒としてのイソキノリンを含む触媒剤35gを混合した。
【0126】
混合溶液をダイから吐き出して支持体上に流延塗布し、120〜160℃で4分程度乾燥して残留溶媒含量45wt%のゲル状自己支持型フィルムを得た。
【0127】
得られたゲル状のフィルムを剥離し、200〜300℃の温度範囲で乾燥し、300〜400℃の温度範囲で熱処理してポリアミドイミド混和フィルム(ポリアミドイミド−イミド高分子の重量平均分子量20,000g/mol)を製造した。
【0128】
実施例8
前記実施例7と同様の方法でフィルムを製造したが、ただ(1)において、トリメリット酸無水物とピロメリット酸無水物のモル比を1:0.07になるように変更してポリアミドイミド高分子溶液を製造した。
【0129】
混合溶液をダイから吐き出して金属(SUS)支持上に流延塗布し、160℃で5分程度乾燥して自己支持型ゲルフィルムを得た。
【0130】
得られたフィルムを剥離し、200〜300℃の温度範囲で乾燥し、300〜400℃の温度範囲で熱処理してポリアミドイミド混和フィルムを製造した。
【0131】
参考例4
前記実施例7と同様の方法でフィルムを製造したが、ただ(3)において、脱水剤及び触媒を混合する工程を省き、混合溶液をダイから吐き出して金属(SUS)支持上に流延塗布し、実施例と同様の方法でゲル状フィルムの形成及びポリアミドイミド混和フィルムの製造可否を実験した。
【0132】
実施例9
(1)無水物末端ポリアミドイミド溶液の製造
【0133】
1リットルの反応器に窒素ガスで充填した後、トリメリット酸無水物65.308g(0.340mol)とN−メチル−2−ピロリドン200gを反応器に加えた。ついで、反応器を約200RPMの回転速度で撹拌させながらトルエンイソシアネート61.846g(0.386mol)をN−メチル−2−ピロリドン200gに溶解させ、1時間にわたって反応器にゆっくり添加し、200RPMの速度で約30分間さらに撹拌した。前記溶液を30分にわたって80℃まで徐々に昇温させた後、30分間さらに撹拌し、これにピロメリット酸無水物13.100g(0.060mol)とN−メチル−2−ピロリドン220gを順次投入し、30分間撹拌した後、続いて約30分にわたって再び140℃まで昇温させた。その後、前記溶液の温度を140℃に維持しながら約30分間100RPMの速度で回転させながら撹拌し、反応の終わった溶液の温度を徐々に40℃まで降温させて固形分含量18.5wt%の無水物末端のポリアミドイミド溶液を製造した。
【0134】
これを要約すれば次の反応式のようになる。
【0135】

【0136】
(2)アミン末端ポリイミド前駆体溶液の製造
前記実施例7〜8と同様の方法でアミン末端ポリイミド前駆体溶液を製造した。
【0137】
(3)ポリアミドイミド溶液とポリイミド前駆体の混合及び重合
常温で前記(1)で得られるポリアミドイミド溶液(固形分含量18.5wt%)に、前記(2)で得られるポリイミド前駆体溶液(固形分含量18.5wt%)を固形分含量の基準で100:50重量比になるように100gを製造した。実質的には混合されて重合反応して次式のポリイミド前駆体を含むポリアミドイミド溶液(溶液粘度126,000cP)を得た。
【0138】
式:

【0139】
(4)製膜
前記実施例7〜8と同様の方法でポリアミドイミド混和フィルムを製造した。
【0140】
参考例5
前記実施例7と同様の方法でフィルムを製造したが、ただ(3)において、脱水剤及び触媒を混合する工程を省き、混合溶液をダイから吐き出して金属支持体上に流延塗布し、実施例と同様の方法でゲル状フィルム及びポリアミドイミド混和フィルムの製造可否を実験した。
【0141】
得られたフィルムに対して前記実験例と同様の方法でフィルム物性を評価し、その結果を次の表2に示した。
【表2】


前記表2の結果から、実施例によれば、製膜特性に優れた強靭なフィルムを製造できることが分かる。しかし、参考例4及び5の場合、化学的イミド化剤の未添加によってゲルフィルムの形成が不可であって、支持性フィルム(グリーンフィルム)剥離のために一定時間支持体上で乾燥するとき、金属支持体とフィルムとの強い接着によって剥離が不可であってフィルムに製作することができなかった。
【0142】
実施例10
(1)ポリアミドイミド溶液の製造
前記実施例1と同様の方法で製造したが、ポリアミドイミド溶液の製造において、4,4’−メチレンジフェニルジイソシアネートの代わりにトルエンジイソシアネートとトリメリット酸無水物のみを使用して固形分含量15wt%のポリアミドイミド溶液を製造した。これを要約すれば次の反応式のようになる。
【0143】
得られたポリアミドイミド重合体の重量平均分子量は当量体の当量比によって50,000g/molと予測された。
【0144】

【0145】
(2)ポリイミド前駆体溶液の製造
前記実施例1と同様の方法でフィルムを製造したが、ポリイミド前駆体溶液の製造において、4,4−メチレンアリニド(0.348mol)を4,4−オキシジアニリンに取替え、ピロメリット酸無水物(0.346mol)とN,N−ジメチルホルムアミドの存在の下で重合して固形分含量18.5wt%のポリイミド前駆体溶液を製造した。これを要約すれば次の反応式のようになる。
【0146】
ポリイミド前駆体の重量平均分子量は当量体の当量比によって50,000g/molと予測された。
【0147】

【0148】
(3)ポリアミドイミド溶液とポリイミド前駆体の混合溶液の製造
前記(1)で得られるポリアミドイミド高分子溶液(固形分含量18.5wt%)に、前記(2)で得られるポリイミド前駆体溶液(固形分含量18.5wt%)を固形分含量の基準で100:10重量比になるように混合し、ポリアミドイミド高分子溶液とポリイミド前駆体溶液の混合高分子溶液(溶液粘度100,000cP)100gを製造した。
【0149】
(4)製膜
この混合高分子溶液に、N,N−ジメチルホルムアミド希薄剤と脱水剤の無水酢酸とイミド化触媒としてイソキノリンを含む触媒剤35gを混合した。混合溶液をダイから吐き出して支持体上に流延塗布し、120〜160℃で4分程度乾燥して自己支持型ゲルフィルムを得た。
【0150】
得られたゲル状のフィルムを支持体から剥離し、200〜300℃の温度範囲で乾燥し、300〜400℃の温度範囲で熱処理してポリアミドイミド混和フィルムを製造した。
【0151】
得られたフィルムに対して前記実験例と同様の方法でフィルム物性を評価し、その結果を次の表3に示した。
【0152】
実施例11
【0153】
実施例10と同様の方法でポリアミドイミド溶液及びポリイミド前駆体溶液を製造したが、混合溶液の製造において、ポリアミドイミド溶液対ポリイミド前駆体溶液の重量比を固形分含量の基準で100:30重量比になるようにした。
【0154】
実施例12
【0155】
実施例10と同様の方法でポリアミドイミド溶液及びポリイミド前駆体溶液を製造したが、混合溶液の製造において、ポリアミドイミド溶液対ポリイミド前駆体溶液の重量比を固形分含量の基準で100:50重量比になるようにした。
【0156】
【表3】

【0157】
前記表3の結果から、実施例によれば、製膜特性に優れた強靭なフィルムを製造できることが分かる。
【0158】
比較例1
前記実施例1と同様の方法でフィルムを製造したが、ただポリイミド前駆体溶液を省き、ポリアミドイミド溶液と化学的イミド化剤混合溶液を使用して金属(SUS)支持ゲルフィルム及びフィルムの製造可否を実験した。
【0159】
比較例2
(1)ポリアミド合成
1リットルの反応器に窒素ガスで充填した後、オキシジアニリン69.6835g(0.348mol)、N−メチル−2−ピロリドン300gを反応器に加えた。ついで、反応器を約200RPMの回転速度で撹拌させながら溶解した後、p−テレフタロイルクロリド(p−Terephthaloyl chloride)72.072g(0.348mol)とN−メチル−2−ピロリドンを順次投入し、その後、−5℃で200RPMの回転速度で4時間撹拌し、その後、クロリド反応生成物中和のために炭酸リチウム(lithium carbonate)26.23g(0.3551mol)を添加し、さらに1時間撹拌して固形分含量15wt%のポリアミド溶液を製造した。
【0160】
生成された高分子重合体はミキサーを利用して水中で粉砕、洗浄、乾燥して高分子固形物を収得し、これを乾燥して水分を完全に除去した後、N−メチル−2−ピロリドンに溶解して固形分含量15wt%のポリアミド溶液を製造した。
【0161】
(2)ポリイミド前駆体溶液の製造
前記実施例10と同様の方法でポリイミド前駆体溶液を製造した。
【0162】
(3)ポリアミド溶液とポリイミド前駆体の混合溶液の製造
前記(1)で得られるポリアミド高分子溶液(固形分含量15wt%)に、前記(2)で得られるポリイミド前駆体溶液(固形分含量18.5wt%)を固形分含量の基準で100:10重量比になるように混合し、ポリアミドイミド高分子溶液とポリイミド前駆体溶液の混合高分子溶液(溶液粘度100,000cP)100gを製造した。
【0163】
(4)製膜
この混合溶液を脱水剤及び触媒を混合する工程なしに、ダイから吐き出して金属支持体上に流延塗布し、脱水剤及び触媒が含まれた液に一定時間含浸させた後、ゲルフィルム及びポリアミドイミド混和フィルムの製造可否を実験した。
【0164】

【0165】
比較例3
(1)ポリアミドイミドの合成
1リットルの反応器に窒素ガスで充填した後、オキシジアニリン69.6835g(0.348mol)、N−メチル−2−ピロリドン300gを反応器に加えた。ついで、反応器を約200RPMの回転速度で撹拌させながら溶解した後、トリメリット酸クロリド74.7523g(0.348mol)とN−メチル−2−ピロリドン順次投入し、その後、−5℃で200RPMの回転速度で4時間撹拌し、その後、クロリド副反応物の中和のための炭酸リチウム26.23g(0.3551mol)を添加し、さらに1時間撹拌して固形分含量15wt%のポリアミドイミド溶液を製造した。
【0166】
生成された高分子重合体はミキサーを利用して水中で粉砕、洗浄、乾燥して高分子固形物を収得し、これを乾燥して水分を完全に除去した後、N−メチル−2−ピロリドン溶解して固形分含量15wt%のポリアミドイミド溶液を製造した。
【0167】

【0168】
(2)製膜
前記実施例7と同様の方法でフィルムを製造したが、ただ(3)において、脱水剤及び触媒を混合する工程を省き、混合溶液をダイから吐き出して金属(SUS)支持上に流延塗布し、実施例と同様の方法でポリアミドイミドフィルムの製造可否を実験した。
【表4】

前記表4の結果から、比較例1及び3の場合、ポリアミドイミド溶液内のポリイミド前駆体部材によってゲルフィルムの形成が不可であって支持性フィルム(グリーンフィルム)生成のために、一定時間支持体上で乾燥するとき、金属支持体とフィルムとの強い接着によって剥離が不可であってフィルムに製作することができなかった。比較例2の場合においては、十分な支持性を持つゲルフィルムの形成が難しく、金属支持体とも高接着性を持つため、フィルムの剥離が不可であった。これは、高分子混合溶液を化学的イミド化剤に含浸させてフィルムを製造する場合、イミド化剤と触れ合う高分子溶液の表面は支持体の隣接面と異なる時間差を置いてゲル化が進み、金属性(SUS)支持体と触れ合う面は十分なゲル化が進まないことにより発生する現象と思われる。
【0169】
以上、本発明の好適な実施例について例示したが、本発明は前述した特定の好適な実施例に限定されなく、請求範囲で請求する本発明の範囲を逸脱しない範囲内で、本発明が属する技術分野で通常の知識を持った者によって多様な変形実施が可能であり、そのような変更は特許請求の範囲の範囲内に属するものである。
【産業上の利用可能性】
【0170】
本発明は、分子鎖の中にアミド基とイミド基を含む樹脂をフィルムに容易に製造できる方法に適用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子鎖の中にアミド基とイミド基を含む樹脂を製膜する方法であって、
分子鎖の中にアミド基とイミド基を含む樹脂溶液に所定量のポリイミド前駆体溶液を混合する工程;
混合された溶液を化学的イミド化剤とともに支持体上に流延塗布、及び乾燥して、自己支持型ゲルフィルムを得る工程;及び
自己支持型ゲルフィルムを支持体から剥離して熱処理する工程;
を含むことを特徴とする、ポリイミド含有ポリアミドイミド混和フィルムの製造方法。
【請求項2】
分子鎖の中にアミド基とイミド基を含む樹脂は無水物基末端を有し、ポリイミド前駆体はアミン末端を有し、
混合の際に重合を伴うことを特徴とする、請求項1に記載のポリイミド含有ポリアミドイミド混和フィルムの製造方法。
【請求項3】
分子鎖の中にアミド基とイミド基を含む樹脂は次の化学式で表示される繰り返し単位を含むものであることを特徴とする、請求項1または2に記載のポリイミド含有ポリアミドイミド混和フィルムの製造方法。
式:



前記式で、







である。
【請求項4】
ポリイミド前駆体は次の化学式で表示される繰り返し単位を含むものであることを特徴とする、請求項1または2に記載のポリイミド含有ポリアミドイミド混和フィルムの製造方法。
式:



前記式で、







である。
【請求項5】
分子鎖の中にアミド基とイミド基を含む樹脂溶液は、固形分濃度が10〜35重量%であることを特徴とする、請求項1または2に記載のポリイミド含有ポリアミドイミド混和フィルムの製造方法。
【請求項6】
ポリイミド前駆体溶液は、固形分濃度が10〜35重量%であることを特徴とする、請求項1または2に記載のポリイミド含有ポリアミドイミド混和フィルムの製造方法。
【請求項7】
化学的イミド化剤は脱水剤及びイミド化触媒を含むことを特徴とする、請求項1に記載のポリイミド含有ポリアミドイミド混和フィルムの製造方法。
【請求項8】
乾燥は100〜160℃で行われることを特徴とする、請求項1に記載のポリイミド含有ポリアミドイミド混和フィルムの製造方法。
【請求項9】
乾燥は10分以内で行われることを特徴とする、請求項1または8に記載のポリイミド含有ポリアミドイミド混和フィルムの製造方法。
【請求項10】
熱処理工程は200〜400℃の温度範囲で行われることを特徴とする、請求項1に記載のポリイミド含有ポリアミドイミド混和フィルムの製造方法。
【請求項11】
混合された溶液は溶液粘度が10,000〜300,000cPであることを特徴とする、請求項1に記載のポリイミド含有ポリアミドイミド混和フィルムの製造方法。
【請求項12】
ポリイミド前駆体溶液は、固形分含量の基準で、混合された溶液の3〜50重量%になるように混合されることを特徴とする、請求項1または2に記載のポリイミド含有ポリアミドイミド混和フィルムの製造方法。

【公開番号】特開2010−254935(P2010−254935A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−118670(P2009−118670)
【出願日】平成21年5月15日(2009.5.15)
【出願人】(509137869)エスケイシーコーロンピーアイ インコーポレーティッド (2)
【氏名又は名称原語表記】SKCKOLONPI,INC.
【Fターム(参考)】