説明

ポリイミド樹脂およびそれを用いた導体付きフィルム

【課題】新規なポリイミド樹脂を提供し、該ポリイミド樹脂を用いることによって、耐熱性及び導体層と絶縁性フィルムとの密着性に優れた、微細配線形成可能なフレキシブルプリント配線板用の導体付きフィルムを提供する。
【解決手段】ビシクロテトラカルボン酸無水物,ジアミノピリジン,ジアミノトリアジン,ジアミノジピリジル,ジアミノピリミジンで示される構造の少なくとも1種を繰り返し単位に有するポリイミド樹脂、及び絶縁性フィルムの少なくとも片面に導体層を形成した導体付きフィルムにおいて、前記絶縁性フィルムと導体層との間に、上記ポリイミド樹脂層を設けた導体付きフィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は新規なポリイミド樹脂に関し、更にフレキシブルプリント配線板として使用でき、絶縁性フィルムと導体層との密着性及び微細配線での密着力に優れた該ポリイミド樹脂を用いた導体付きフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリイミド樹脂は、優れた耐熱性を有し、機械的、電気的及び化学的特性も良好であり、フレキシブルプリント回路基板(FPC)、テープ自動ボンディング(TAB)用基板等の絶縁材料として用いられている。従来、芳香族ポリイミドフィルムと銅箔とをエポキシ系、アクリル系、ポリアミド系、フェノール系等を使用した接着剤によって貼り合せたフレキシブルプリント配線板がよく知られているが、該配線板の耐熱性や前記フィルムと銅箔からなる導体層の密着性は接着剤の特性によって決まってしまい、特に耐熱性の点で問題があった。また、耐熱性を向上させる接着剤として熱可塑性ポリイミドの前駆体又は熱可塑性ポリイミド樹脂を用い、銅箔等の金属箔を高温で熱圧着させたフレキシブルプリント配線板が知られているが、金属箔を高温で熱圧着しなければならないため加工後に残留歪みの問題が生じ、圧着に用いる金属箔の厚さが通常10μm以上であるのでピッチの狭いパターニングが困難であるという問題があった(例えば特許文献1、2、3、4参照)。
【0003】
また、絶縁性フィルム、例えば非熱可塑性ポリイミドフィルムやアラミドフィルムに直接金属をスパッタリング又は無電解メッキした後、電解メッキにて金属層を形成する2層構造のフレキシブルプリント配線板も知られているが、一般に密着性が低く特に熱負荷後の密着性の低下が大きいという問題があった。また、非熱可塑性ポリイミドに熱可塑性ポリイミド層を設け、その面上に銅をスパッタリング或いは無電解メッキした後、電解メッキにより金属層を形成するフレキシブルプリント配線板も知られているが(例えば特許文献5、6)微細配線における密着力が低くなる問題があった。
【特許文献1】特開平4−146690号公報
【特許文献2】特公平7−102649号公報
【特許文献3】特開平10−75053号公報
【特許文献4】特開2000−167980号公報
【特許文献5】特開2003−251773号公報
【特許文献6】特開2005−88465号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は新規なポリイミド樹脂を提供し、該ポリイミド樹脂を用いることによって、耐熱性及び導体層と絶縁性フィルムとの密着性に優れた、微細配線形成可能なフレキシブルプリント配線板用の導体付きフィルムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、絶縁性フィルムの少なくとも片面に特定のポリイミド樹脂層を設け、該ポリイミド樹脂層上に無電解メッキ、次いで電解メッキによって導体層を形成することにより、耐熱性及び密着性に優れた、微細配線形成可能なフレキシブルプリント配線板用の導体付きフィルムが得られることを見出し、本発明に到達した。すなわち、本発明は、下記式(1)乃至(5)で示される構造の少なくとも1種を繰り返し単位に有することを特徴とするポリイミド樹脂である。
【0006】
【化1】

(式中、RはH、CH、C、OHを表す)
また、本発明は、絶縁性フィルムの少なくとも片面に導体層を形成した導体付きフィルムにおいて、前記絶縁性フィルムと導体層との間に、上記ポリイミド樹脂の層を設けたことを特徴とする導体付きフィルムである。
また、本発明の導体付きフィルムは、前記絶縁性フィルムが、ポリエチレンテレフタレート、ポリナフタレンテレフタレート、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリアミド系樹脂、芳香族ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、フッ素系樹脂、液晶ポリマーのいずれかであって、厚さが1〜200μmであることが好ましい。
また、本発明の導体付きフィルムは、前記ポリイミド樹脂層の厚さが、0.1〜10μmであることが好ましい。
また、本発明の導体付きフィルムは、前記ポリイミド樹脂層の繰り返し単位の40モル%以上が、前記式(1)乃至(5)で示される構造の少なくとも1種であることが好ましい。
また、本発明の導体付きフィルムは、前記導体層の厚さが1〜20μmであって、無電解メッキと電解メッキによって形成されたものが好ましい。
【発明の効果】
【0007】
本発明のポリイミド樹脂は、導体層と絶縁性フィルムとを強固に密着させることができ、耐熱性も優れている。また、本発明で得られた導体付きフィルムは、耐熱性及び導体層と絶縁性フィルムとの密着性に優れ、微細配線形成後も導体層の密着性に優れるため、微細回路を有する高密度フレキシブルプリント配線板として好適に使用されることから、本発明の導体付きフィルムの工業的な実用性は極めて高いものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
[ポリイミド樹脂]
本発明のポリイミド樹脂は、前記式(1)乃至(5)で示される構造を該樹脂の繰り返し単位の一部に有するものであって、何れの構造もポリイミドの形で構成されることによって機械的強度、耐熱性、密着性の優れた樹脂を形成することができる。
【0009】
より具体的には、式(1)の構造を有する樹脂はビシクロ[2,2,2]オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物とジアミン又はジイソシアナートから、式(2)はジアミノピリジンとテトラカルボン酸二無水物とから、式(3)はジアミノ−1,3,5−トリアジン又はジアミノ−1,3,5−トリアジン誘導体とテトラカルボン酸二無水物とから、式(4)はジアミノジピリジルとテトラカルボン酸二無水物とから、式(5)はジアミノピリミジン又はジアミノピリミジン誘導体とテトラカルボン酸二無水物とから、各々得ることが出来る。これ等のポリイミドは、極性溶媒中で上記のモノマー成分とその他必要に応じて、テトラカルボン酸二無水物やジアミン又はジイソシアナートを加え、加熱反応させる事によって得ることができる。その際に、その他のテトラカルボン酸二無水物やジアミン又は、ジイソシアナートを使用する全テトラカルボン酸二無水物や全ジアミン又は全ジイソシアナートの40モル%以内で混合して用いることも可能である。また、10モル%以下の範囲でテトラカルボン酸二無水物とジアミン又はジイソシアナートの比率をずらして分子量を調整して本発明に用いることが可能である。
【0010】
式(1)の構造を形成するビシクロ[2,2,2]オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物と反応させるジアミンとして、1,4−ジアミノベンゼン、1,3−ジアミノベンゼン、2,4−ジアミノトルエン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ビス(4−アミノフェニル)スルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノベンズアニリド、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、2,2−ビス(4−アミノフェノキシフェニル)プロパン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、3,3’−ジカルボキシ−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’,5,5’−テトラエチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジエチル−5,5’−ジメチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジヒドロキシ−4,4’−ジアミノビフェニル、ヘキサメチレンジアミン、イソホロンジアミン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、メチレンビス(2−メチル−4−アミノシクロヘキシル)、1,3−ビス(3−アミノプロピル)−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、α,ω−ビス(3−アミノプロピル)ポリジメチルシロキサン、2,6−ジアミノピリジン、2,4−ジアミノ−6−メチル−1,3,5−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−フェニル−1,3,5−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−ヒドロキシピリミジン、4,4'−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)、4,4'−ジアミノ−3,3'−ジメチルジフェニルメタン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、6,6−ジアミノビピリジル、5(6)−1−(4'−アミノフェニル)−1,3,3−トリメチルインダン等が挙げられる。
【0011】
式(2)乃至(5)の構造を形成するジアミン又はジイソシアナートと反応させるテトラカルボン酸二無水物としては3,4,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,4,2’,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,4,3’,4’−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、3,4,3’,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ビス(ジカルボキシフェニル)プロパン無水物、無水ピロメリト酸、4,4’−(2,2−イソプロピリデン)ジフタル酸二無水物、ビシクロ[2,2,2]オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物等があげられる。
【0012】
式(1)と式(2)乃至(5)とを組み合わせた樹脂繰り返し単位の100モル%は望ましい形態の一つである。また、加工の形成し易さを増すために、他のポリイミド構造を含有することも可能である。ここで他のポリイミド構造とは、式(1)を構成する酸二無水物であるビシクロ[2,2,2]オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物以外のテトラカルボン酸二無水物や、式(2)乃至(5)を構成するジアミンとして挙げられたジアミノピリジン、ジアミノ−1,3,5−トリアジン、ジアミノ−1,3,5−トリアジン誘導体、ジアミノジピリジル、ジアミノピリミジン、ジアミノピリミジン誘導体以外のジアミン乃至それに由来するジイソシアナートを用いることで形成可能な構造のことである。この場合、ポリイミド樹脂層の繰り返し単位の40モル%以上が、前記式(1)乃至(5)で示される構造の少なくとも1種であることが、下記で述べる絶縁性フィルムや導体層との密着性及び耐熱性のために好ましい。
【0013】
前述のテトラカルボン酸二無水物とジアミン又はジイソシアナートの組み合わせによっては、ポリイミドの状態では溶剤に不溶となる場合がある。その様な場合は、ポリイミドの前駆体であるポリアミド酸の状態で例えば絶縁性フィルム等の基体に塗布乾燥し、150〜250℃に加熱し乃至は無水酢酸とピリジンを含む溶液に漬けるなりして脱水閉環してイミド化することで、本発明のポリイミド樹脂を形成することが可能である。
【0014】
上記ポリイミド樹脂を直接得るため乃至は上記ポリイミドの前駆体を得るために乾燥させた極性溶媒が使用される。極性溶媒としてはN−メチル−2−ピロリドン、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、スルホラン、テトラメチル尿素、γ−ブチロラクトン、m−クレゾール等、ポリイミドを溶解する極性溶媒が挙げられる。また、エステル系又はケトン系又はエーテル系の溶媒を混合して使用する事も可能であり、エステル系溶媒としては安息香酸メチル等が、ケトン系溶媒としては、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチルブチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチル−n−ヘキシルケトン、ジエチルケトン、ジイソプロピルケトン、ジイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、アセチルアセトン、ジアセトンアルコール、シクロヘキセン−n−オン等が、エーテル系溶媒としてはジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、エチルイソアミルアルコール、エチル−t−ブチルエーテル、エチルベンジルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、クレジルメチルエーテル、アニソール、フェネトール等が使用可能である。この時、ポリイミドが該溶媒に溶解する場合には、該溶媒中でイミド化反応をさせることができる。イミドが反応時に生成する水を除去するために、トルエンやキシレン等の水と共沸する溶媒を添加し、系外に取り除く必要がある。また、反応を促進するために、p−トルエンスルホン酸等の酸触媒、ピリジン等のアミン系触媒が好適に用いられる。一方、ポリイミドが該溶媒に溶解しない場合は前述の溶媒中で前駆体であるポリアミド酸を調製し、例えば絶縁性フィルム等の基体に塗布してポリアミド酸の層を形成する。その後、この層を例えば加熱し、或いは無水酢酸とピリジンに浸漬することでイミド化して本発明のポリイミド樹脂を形成することが出来る。
【0015】
式(1)乃至(5)を構成するビシクロ[2,2,2]オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、ジアミノピリジン、ジアミノ−1,3,5−トリアジン、ジアミノ−1,3,5−トリアジン誘導体、ジアミノジピリジル、ジアミノピリミジン、ジアミノピリミジン誘導体以外に用いられるモノマーとしては、以下の様なテトラカルボン酸二無水物やジアミンが挙げられる。テトラカルボン酸二無水物としては、3,4,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,4,2’,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,4,3’,4’−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、3,4,3’,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ビス(ジカルボキシフェニル)プロパン無水物、ピロメリト酸、4,4’−(2,2−イソプロピリデン)ジフタル酸二無水物等があげられる。ジアミンとしては1,4−ジアミノベンゼン、1,3−ジアミノベンゼン、2,4−ジアミノトルエン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ビス(4−アミノフェニル)スルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノベンズアニリド、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、2,2−ビス(4−アミノフェノキシフェニル)プロパン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、2,2、−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、3,3’−ジカルボキシ−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’,5,5’−テトラエチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジエチル−5,5’−ジメチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジヒドロキシ−4,4’−ジアミノビフェニル、ヘキサメチレンジアミン、イソホロンジアミン、1,3−ビス(3−アミノプロピル)−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、α,ω−ビス(3−アミノプロピル)ポリジメチルシロキサン等が挙げられる。
【0016】
式(1)乃至(5)で示される構造を繰り返し単位に有するポリイミド樹脂は、膜性の観点から重量平均分子量は50000以上が望ましく、塗料粘度の観点から重量平均分子量は300000以下が好ましい。また、分子量制御のために、用いるテトラカルボン酸二無水物とジアミンの比率は必ずしも等モルである必要はない。また、樹脂末端をマレイン酸無水物やフタル酸無水物のような酸無水物、あるいは、アニリン等のモノアミンで封止してもよい。
【0017】
[導体付きフィルム]
次に本発明の導体付きフィルムについて詳述する。
本発明の導体付きフィルムに用いられる絶縁性フィルムには、ポリエチレンテレフタレート、ポリナフタレンテレフタレート、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリアミド系樹脂、商品名「アラミカ」(帝人アドバンストフィルム株式会社製)等の芳香族ポリアミド系樹脂、商品名「カプトン」(東レデュポン株式会社製、デュポン株式会社製)の非熱可塑性ポリイミドシリーズ、商品名「ユーピレックス」(宇部興産株式会社製)の非熱可塑性ポリイミドシリーズ、商品名「アピカル」(株式会社カネカ製)の非熱可塑性ポリイミドシリーズ等のポリイミド系樹脂、テトラフルオロエチレン樹脂、フッ化エチレンプロピレン共重合樹脂、パーフルオロアルコキシ樹脂等のフッ素系樹脂、商品名「ベクスター」(クラレ株式会社製)等の液晶ポリマー等の何れかが用いられる。絶縁性フィルムの厚さは1〜200μmであることが好ましい。
【0018】
本発明を構成するポリイミド樹脂層は、前記のポリイミド樹脂におけるポリイミド溶液を絶縁性フィルムの表面に塗工、乾燥することで、容易に形成することができる。塗工の方式は、リバースロール、ロッド(バー)、ブレード、ナイフ、コンマ、ダイ、リップ、グラビア、ロータリースクリーン等の種々の方式が可能である。乾燥には、熱風乾燥機や赤外線乾燥機等、使用する溶媒の除去に充分な温度をかける事が出来るものであれば特に限定されるものではない。ポリイミド樹脂層の厚さは0.1〜10μmが好ましく、厚さが0.1μm未満では導体層との充分な密着が得られにくく、一方10μmを超えると耐熱性や吸湿時の耐熱性に問題が有る場合がある。ポリイミド樹脂層のより好ましい厚さは0.5〜5μmである。
【0019】
本発明において導体層を構成する金属としては、銅、ステンレス、アルミニウム、ニッケル、スチール等が挙げられる。この中でも銅が好適に用いられる。導体層の形成には上記金属の箔及びメッキ、スパッタリング等の手段が本発明に適用できる。その中でも前記ポリイミド樹脂層の上に無電解メッキ、次いで電解メッキを行うことで形成することが、密着性が優れているため好ましい。本発明において無電解メッキ及び電解メッキは公知の何れの方法を用いる事が可能である。導体層は、導体付きフィルムの用途に応じて絶縁性フィルムの片面のみに設けられていてもよいし、両面に設けられていてもよい。絶縁性フィルムの両面に導体層を設ける場合では、絶縁性フィルムの両面に前記ポリイミド樹脂層を形成した後、導体層を形成すればよい。
【実施例】
【0020】
以下に実施例、比較例で本発明を具体的に説明するが、本発明がこれ等のみに限定されるものではない。
合成例1
ビシクロ[2,2,2]オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物12.41g(50ミリモル)と3,4,3’、4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物17.91g(50ミリモル)と2,6−ジアミノピリジン5.46g(50ミリモル)と1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン14.62g(50ミリモル)とをm−クレゾール250mlに溶解し、25℃で1時間撹拌の後、キシレン50mlを加え180℃で3時間撹拌しながら、キシレンと共沸した水を除去して、本発明のポリイミドの溶液を得た。溶液の一部を10倍量のメタノールに投入し、生成物を洗浄、乾燥し、IRスペクトルを測定したところ1781、1722cm−1にイミド特有の吸収ピークが見られた。得られた溶液はそのまま塗工に用いた。
【0021】
合成例2
3,4,3’、4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物29.42g(100ミリモル)と2,4−ジアミノ−6−メチル−1,3,5−トリアジン12.52g(100ミリモル)とをm−クレゾール250mlに溶解し、25℃で1時間撹拌の後、キシレン50mlを加え180℃で3時間撹拌しながら、キシレンと共沸した水を除去して、本発明のポリイミドの溶液を得た。溶液の一部を10倍量のメタノールに投入し、生成物を洗浄、乾燥し、IRスペクトルを測定したところ1782、1723cm−1にイミド特有の吸収ピークが見られた。得られた溶液はそのまま塗工に用いた。
【0022】
合成例3
3,4,3’、4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物32.22g(100ミリモル)と6,6’−ジアミノ−2,2’−ジピリジル11.17g(60ミリモル)と2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン16.42g(40ミリモル)とをm−クレゾール250mlに溶解し、25℃で1時間撹拌の後、キシレン50mlを加え180℃で3時間撹拌しながら、キシレンと共沸した水を除去して、本発明のポリイミドの溶液を得た。溶液の一部を10倍量のメタノールに投入し、生成物を洗浄、乾燥し、IRスペクトルを測定したところ1781、1723cm−1にイミド特有の吸収ピークが見られた。得られた溶液はそのまま塗工に用いた。
【0023】
合成例4
3,4,3’、4’−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物31.02g(100ミリモル)と2,4−ジアミノ−6−ヒドロキシピリミジン10.09g(80ミリモル)と3,4’−ジアミノジフェニルエーテル4.00g(20ミリモル)とをm−クレゾール250mlに溶解し、25℃で1時間撹拌の後、キシレン50mlを加え180℃で3時間撹拌しながら、キシレンと共沸した水を除去して、本発明のポリイミドの溶液を得た。溶液の一部を10倍量のメタノールに投入し、生成物を洗浄、乾燥し、IRスペクトルを測定したところ1780、1721cm−1にイミド特有の吸収ピークが見られた。得られた溶液はそのまま塗工に用いた。
【0024】
合成例5
ビシクロ[2,2,2]オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物7.45g(30ミリモル)と3,4,3’、4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物18.08g(70ミリモル)と1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン29.23g(100ミリモル)とをm−クレゾール250mlに溶解し、25℃で1時間撹拌の後、キシレン50mlを加え180℃で3時間撹拌しながら、キシレンと共沸した水を除去して、本発明のポリイミドの溶液を得た。溶液の一部を10倍量のメタノールに投入し、生成物を洗浄、乾燥し、IRスペクトルを測定したところ1779、1721cm−1にイミド特有の吸収ピークが見られた。得られた溶液はそのまま塗工に用いた。
【0025】
比較合成例1
3,4,3’、4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物35.83g(100ミリモル)と1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン29.23g(100ミリモル)とをm−クレゾール250mlに溶解し、25℃で1時間撹拌の後、キシレン50mlを加え180℃で3時間撹拌しながら、キシレンと共沸した水を除去して、ポリイミドの溶液を得た。溶液の一部を10倍量のメタノールに投入し、生成物を洗浄、乾燥し、IRスペクトルを測定したところ1781、1722cm−1にイミド特有の吸収ピークが見られた。得られた溶液はそのまま塗工に用いた。
【0026】
[実施例1〜5および比較例1、2]
合成例1から5及び比較合成例1で得られたポリイミド溶液を表1に示すようにして各実施例及び比較例の導体付きフィルムを作製した。具体的には、絶縁性フィルムとして商品名:カプトン150EN(東レデュポン社製)にバーコーターで塗布し、200℃で3時間乾燥し、3μmのポリイミド樹脂層を形成した。ついで(1)サーキュポジット・コンディショナー/ニュートラライザー3320、(2)キャタプリップ404、(3)キャタポジット44、(4)アクセレレイター19E、(5)キューポジットカッパーミックス328L(上記(1)から(5)は何れもシプレイ・ファーイースト社製)の各無電解メッキ用の薬品を用いて、この順に処理を行ない銅の無電解メッキを形成した。更に該無電解メッキ上に銅の電解メッキを形成して厚さ9μmの導体層を形成し本発明及び比較用のフレキシブルプリント配線板用の導体付きフィルムを得た。電解メッキ条件は、CuSO4・5H2Oを100g/リットル、H2SO4を150g/リットル含むメッキ浴、メッキ温度25℃、メッキ時間30分とした。
【0027】
また、ポリイミド樹脂層を設けていない絶縁性フィルム、商品名:カプトン150EN(東レデュポン社製)で前述の無電解メッキ、電解メッキの工程を施して比較例2のフレキシブルプリント配線板用の導体付きフィルムを得た。
【0028】
前記で得られた実施例1〜5及び比較例1、2の導体付きフィルムにおいて、導体層の密着性及び吸湿ハンダ耐熱性の評価を行い、その結果を表1に示した。その結果、実施例1〜5と比較例1のポリイミド樹脂層における常態での密着力(ORIENTEC社製 テンシロン万能試験機を用いた導体層の90度ピール強度、線幅1mm、以後同様)について差は見られないが、150℃で168時間処理後、或いは85℃、85%RHで168時間処理後の導体層の密着力は各実施例の導体付きフィルムが優れていることが確認された。更に85℃、85%RHで168時間処理後280℃のハンダ浴に60秒つけて吸湿ハンダ耐熱性を確認したところ、本発明の実施例1〜5では外観は良好であったが、比較例1ではフクレが発生し、比較例2では微小な発泡が発生して実用上問題であることが確認された。
【0029】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)乃至(5)で示される構造の少なくとも1種を繰り返し単位に有することを特徴とするポリイミド樹脂。
【化1】

(式中、RはH、CH、C、OHを表す)
【請求項2】
絶縁性フィルムの少なくとも片面に導体層を形成した導体付きフィルムにおいて、前記絶縁性フィルムと導体層との間に、下記式(1)乃至(5)で示される構造の少なくとも1種を繰り返し単位に有するポリイミド樹脂層を設けたことを特徴とする導体付きフィルム。
【化2】

(式中、RはH、CH、C、OHを表す)
【請求項3】
前記絶縁性フィルムが、ポリエチレンテレフタレート、ポリナフタレンテレフタレート、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリアミド系樹脂、芳香族ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、フッ素系樹脂、液晶ポリマーのいずれかであって、厚さが1〜200μmであることを特徴とする請求項2記載の導体付きフィルム。
【請求項4】
前記ポリイミド樹脂層の厚さが、0.1〜10μmであることを特徴とする請求項2に記載の導体付きフィルム。
【請求項5】
前記ポリイミド樹脂層の繰り返し単位の40モル%以上が、前記式(1)乃至(5)で示される構造の少なくとも1種であることを特徴とする請求項2に記載の導体付きフィルム。
【請求項6】
前記導体層の厚さが1〜20μmであって、無電解メッキと電解メッキによって形成されたことを特徴とする請求項2記載の導体付きフィルム。
【請求項7】
絶縁性フィルムの少なくとも片面に導体層を形成したフレキシブルプリント配線板用導体付きフィルムにおいて、前記絶縁性フィルムと導体層との間に、下記式(1)乃至(5)で示される構造の少なくとも1種を繰り返し単位に有するポリイミド樹脂層を設けたことを特徴とするフレキシブルプリント配線板用導体付きフィルム。
【化3】

(式中、RはH、CH、C、OHを表す)

【公開番号】特開2007−31622(P2007−31622A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−219679(P2005−219679)
【出願日】平成17年7月28日(2005.7.28)
【出願人】(000153591)株式会社巴川製紙所 (457)
【Fターム(参考)】