説明

ポリウレタン系マスターバッチ

【課題】カレンダー法により製膜され、良好な外観を長期間保持できる高弾性ウレタン系樹脂フィルム着色用のマスターバッチを提供すること。
【解決手段】1)カーボンブラック 10〜30重量%、2)重量平均分子量(Mw) 30,000〜70,000のポリカプロラクトン25〜45重量%、3)溶融開始温度180℃以下のウレタン系樹脂25〜65重量%からなり、紫外線吸収剤、酸化防止剤、および光安定剤を含むカレンダー成形高弾性ポリウレタン系樹脂着色用マスターバッチにより上記の課題を解決した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はカーボンブラックを着色剤としてウレタン系樹脂を着色する際に有用なマスターバッチに関するものであり、さらに詳しくは、カレンダー成形によって製膜され、成形加工温度が高温である高弾性ポリウレタン系樹脂着色用マスターバッチに関する。
【0002】
本発明の着色用マスターバッチは、高温で、カレンダー法によって製膜にされる300Mpa以上の引張弾性率を示す高弾性ポリウレタン系樹脂の加工温度下でも流動性が高く、カーボンブラックや各種添加剤の樹脂への拡散が良好であり分散性が高い。このため、製膜されたフィルムは表面が均一で、ムラがなく噴出し物がほとんど観察されず装飾用フィルムとしての分留まりを向上させることができ、さらに耐候性もよいものとなる。
【背景技術】
【0003】
従来、ウレタン樹脂などの、熱可塑性樹脂を黒色に着色する場合、樹脂あるいは樹脂組成物の粉末、ペレットあるいはペレットと粉末との混合物に粉末あるいは粒状のカーボンブラックを配合し、押出機で溶融混練しストランド状に押出したものを切断してペレット状にする方法が広く行われている。しかしながらこのような方法による場合、カーボンブラックの粉末をそのまま樹脂または樹脂組成物に配合することになり、作業環境の汚染、ハンドリングの問題、さらに分級あるいは凝集などによるカーボンブラックのブツの発生、後続ロットへの色残り、色混じりの原因などの問題がある。
【0004】
カーボンブラックは凝集性が高く、二次凝集していることが多い。このため高濃度のカーボンブラックを含むマスターバッチは非常に熱流動し難く、配合樹脂の溶融粘度が低い場合、マスターバッチを構成する樹脂の拡散が不十分となり、製膜したフィルムの表面に「ブツ」が発生する。
【0005】
カーボンブラックとなじみやすいポリスチレン、AS樹脂等の樹脂がマスターバッチ用樹脂として使用されることが多く、高分子量の芳香族ポリカーボネートによるカーボンブラックマスターバッチも知られている(特許文献1:特開昭61−236854)。しかしながら、このような高分子量の樹脂によるマスターバッチは、カーボンブラックが比較的黒色度が低く分散の容易なものの場合は比較的良好なマスターバッチを得ることができるが、黒色度が高く平均粒度の小さい一次粒子のカーボンブラックの場合には、カーボンブラックが均一に分散した良好な着色用マスターバッチを得ることが困難であった。
【0006】
また、予め使用する樹脂にカーボンブラックを分散してマスターバッチとする方法も採用されるが、高弾性ポリウレタン系樹脂を着色するために、同一の高弾性ポリウレタン系樹脂を使用したマスターバッチでは、分散が不十分となり、カレンダー成形によりフィルム化するとフィルム外観品質の低下を招く、あるいは成形時のロール汚染の増加等をもたらしてしまう。
【0007】
そこで、溶融しやすい低融点樹脂を分散用樹脂として用いたマスターバッチが考えられたが、高弾性ポリウレタン系樹脂との相溶性に問題があり、また溶融粘度の低い樹脂をマスターバッチとして使用した場合は、混合後製膜したフィルムの耐候性で満足できるものは得られなかった。
【0008】
高弾性ウレタン系樹脂フィルムは、その耐候性や作業性から自動車車体や屋外看板などの装飾フィルムとして利用が期待されているが、前述した従来公知のマスターバッチによって着色しようとすると、外観不良や吹き出しが発生し装飾用フィルムとして使用することが困難であった。
【特許文献1】特開昭61−236854
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、カレンダー法により製膜する引張弾性率300MPa以上の高弾性ウレタン系樹脂フィルムを着色するため、加工温度下の熱流動性が高く、カーボンブラックの樹脂への分散が良好であり、耐熱性も高く、黒色度が高く、カーボンブラックが均一に分散して良好な外観を長期に保持することが可能であり、耐候性もよいウレタン系樹脂フィルムを得ることができる着色用マスターバッチを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明はマスターバッチとして、特定のポリカプロラクトンを含む特定の溶融開始温度のウレタン系樹脂を使用することにより上記の課題を克服したものである。
【0011】
すなわち、本発明は、
1)カーボンブラック 10〜30重量%、
2)重量平均分子量(Mw) 30,000〜70,000のポリカプロラクトン25〜45重量%
3)溶融開始温度180℃以下のウレタン系樹脂25〜65重量%
からなり、
紫外線吸収剤、酸化防止剤、および光安定剤を含むカレンダー成形高弾性ポリウレタン系樹脂着色用マスターバッチに関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明のマスターバッチは、特定分子量のポリカプロラクトンを含む溶融開始温度180℃以下のウレタン系樹脂をベース樹脂とするものである。本発明のウレタン系樹脂組成物はカーボネート系ウレタン樹脂、カプロラクトン系ウレタン樹脂、エステル系ウレタン樹脂の単独、またはそれらの混合物を使用できるが、耐加水分解性に優れる点からカーボネート系ウレタン樹脂またはそれらの配合物が特に好ましい。
【0013】
ウレタン樹脂はイソシアネート成分とポリオール成分とからなるが、本発明のウレタン樹脂のイソシアネート成分としては、ポリウレタンの製造において一般に使用されている、脂肪族系、脂環式系、芳香族系又はこれらの混合系のポリイソシアネート化合物を同様に使用することができる。 具体的には、例えば2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、4,4-ジフェニルメタンジイソシアネート、ナフタリン-1,5-ジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、トランスシクロヘキサン1,4-ジイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネート等の所謂芳香族多価イソシアネート;ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ヘプタメチレンジイソシアネート、4,4'-ジシクロヘキシルブタンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水添メチレンジフェニルジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、リジンエステルトリイソシアネート、1,6,11-ウンデカトリイソシアネート、1,8-ジイソシアネート-4-イソシアネートメチルオクタン、1,3,6-ヘキサメチレントリイソシアネート、ビシクロヘプタントリイソシアネート、トリメチルヘキシサメチレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0014】
また、以上のイソシアネートの二量体(ウレチジオン)、三量体(イソシアヌレート)、カルボジイミド変性体、アロファネート変性体、ビウレット変性体、ウレア変性体、ウレタン変性体等の変性体またはそのブロックイソシアネート等が挙げられ、これらはそれぞれ単独で用いることができ又は2種以上併用することもできる。
特に耐候性や耐黄変性などの理由から、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、リジンジイソシアネート等が好適に使用される。
【0015】
一方、ポリオール成分もまたポリウレタンの製造に際して従来から一般に使用されているモノマー状又はポリマー状のポリオールが同様に使用可能であり、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ビスフェノール、ビスヒドロキシエトキシベンゼン、ネオペンチルグリコール、トリエチレングリコール、水添ビスフェノールA等のモノマージオール;ポリエステルポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、アクリルポリオール、ブタジエンポリオール、フェノーリックポリオール、エポキシポリオール等のポリオール等が挙げられ、該ポリオールの具体例としては、例えば開始剤として水、プロピレングリコール、エチレングリコール、水酸化カリウム、またはアルキレンオキサイドを用いて製造されるポリエーテルジオール、1,6−ヘキサンジオール、ホスゲン、エチレンカーボネ−トを用いて製造されるポリカーボネートジオール、アジピン酸とエチレングリコールを脱水縮合して製造されるポリエチレンアジペート等を挙げることができる。
【0016】
また、かかる2官能性アルコールに加えて、例えば、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、グリセリン、ジグリセリン等の多官能性アルコールを使用することもできる。さらに、エチレン性不飽和結合を有するポリオール、例えば、エチレン性不飽和結合を有するポリカルボン酸、例えばマレイン酸、イタコン酸等をカルボン酸成分の一部として用いて合成されたポリエステルジオールを用いて、エチレン性不飽和結合を含有するポリウレタン樹脂をつくるようにしてもよい。
【0017】
中でも、本発明において好適に使用しうるポリオール成分は、耐油性、耐熱性に優れるカプロラクトン系ポリオール、カーボネート系ポリオール、エステル系ポリオールが挙げられ耐熱性、耐加水分解性等の各種耐性のバランスの点からカーボネート系ポリオールを用いることがより好ましい。
【0018】
以上述べたイソシアネート成分とポリオール成分からなるポリウレタン樹脂の製造はそれ自体既知の方法で行うことができる。
【0019】
さらに本発明においては、上記イソシアネート成分とポリオール成分とから予めイソシアネート末端プレポリマーを調製し、次いで該プレポリマーを連鎖延長剤と反応させることによって製造されたウレタン樹脂も使用可能である。ここで使用しうる連鎖延長剤としては、例えば、エチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、2,3−ブチレングリコール、ヒドロキノンジエチロールエーテル等多価アルコール;エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ピペラジン、イソホロンジアミン、シクロヘキシルメタンジアミン、3,3'−ジクロロ4,4’−ジアミノジフェニルメタン、ジフェニルメタンジアミン、m−フェニレンジアミン等ジアミン;トリレンジイソシアネートの二量体、イソシアネートのウレア変性体等イソシアネートの変性体等を挙げることができる。ここで三官能性以上の多官能性化合物は架橋剤としての役割も果たす。
【0020】
かくして、ポリウレタン樹脂の製造に関しては、必要に応じて、メタノール、エタノール、プロパノール等のモノアルコール;ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン等のモノアミン;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノプロパノ−ルアミン、ジプロパノ−ルアミン等のアルカノールアミンを鎖伸長停止剤として用いて分子量の調節を行うことも可能である。
本発明に用いるウレタン樹脂としては、前記ウレタン樹脂を1種または2種以上混合して用いることが可能である。
【0021】
本発明においてマスターバッチに使用しうるウレタン樹脂の溶融開始温度は180℃以下であることが必要である。溶融開始温度が180℃以下であれば、加工性の良いフィルムを得ることができる。なお、ここで言う溶融開始温度とは、DSC測定による温度―熱量曲線の最初の吸熱ピークの変曲点として特定した溶融開始温度である。
【0022】
また本発明において使用しうるウレタン樹脂のショアー硬度はD75以下、好ましくはD70以下である。ショアー硬度がD75より大きいと加工したフィルムが脆くなる傾向にあり好ましくない。ここで言う硬度とは、ISO868に準拠して測定したショアー硬度である。
【0023】
さらに本発明においてマスターバッチ用の樹脂としてポリカプロラクトンと共に使用しうるウレタン樹脂の弾性率は10〜200MPa、好ましくは10〜150MPa、特に好ましくは15〜100MPaである。弾性率が10MPa未満であればマスターバッチにタックが出てしまい加工性が悪くなり、また200MPa以上であれば、溶融粘度が高くなりカーボンブラックの分散性が落ちるので好ましくない。
【0024】
本発明のマスターバッチには重量平均分子量(Mw)30,000〜70,000のポリカプロラクトンを含む。該ポリカプロラクトンは、マスターバッチをウレタン樹脂に配合して着色する際に広い温度範囲で樹脂の流動性を高め、カレンダー加工性を向上する効果がある。
【0025】
ポリカプロラクトンの含有量は、ウレタン樹脂100重量部に対して、50重量部〜150重量部、好ましくは60重量部〜120重量部、特に好ましくは70重量部〜100重量部であるのがよい。ポリカプロラクトンの含有量が50重量部以下では広い温度範囲で樹脂の流動性を高める効果が小さく、150重量部以上ではポリカプロラクトンとウレタン樹脂とを混合する際、相分離現象が起こるため好ましくない。
【0026】
本発明のマスターバッチは着色剤としてカーボンブラックを含有する。
樹脂に対するカーボンブラックの添加比率は、所望の濃度、カーボンブラックの種類によって選択され、一般に5〜40重量%、好ましくは10〜35重量%含有するのがよい。カーボンブラックの添加量が5重量%未満になると上記着色樹脂層の着色性に劣り、着色の意義が薄れて好ましくなく、また、40重量%を超えると着色樹脂層の諸物性が劣り装飾性、柔軟性、成形性等に悪影響をあたえる恐れがある。
【0027】
本発明において使用しうるカーボンブラックの平均一次粒径は10〜30nm、好ましくは15〜25nmである。平均一次粒径が10nm未満であればカーボンの二次凝集が起こりやすく分散性が悪くなり、また、30nm以上であれば黒色度が低くなるため好ましくない。
なお、ここでいう平均一次粒径とは、カーボンブラック粒子を電子顕微鏡で観察し、算術平均により求めた値である。
【0028】
さらに、本発明において使用しうるカーボンブラックのDBP吸収量は40〜180cm/100g、好ましくは50〜120cm/100gである。DBP吸収量40cm/100g未満であれば、一般的には粒子径が細かなカーボンブラックが二次凝集していることが多く分散が難しく、また、180cm/100g以上であれば、ストラクチャーが発達していることが多く分散が難しくなる。なお、ここでいうDBP吸収量とは、JIS K6221に準拠して測定した値である。
【0029】
さらに、前記マスターバッチには、装飾用フィルムの耐候性等を改善するための紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤等の添加剤が含有される。
【0030】
該紫外線吸収剤の紫外線吸収能や使用する合成樹脂との相容性等を考慮して広範囲の種類の中から1種類または数種類組み合わせて適宜選択使用することができるが、例えば下記の如きものが挙げられる。
ハイドロキノン系;ハイドロキノン、ハイドロキノンジサリチレ−ト
サリチル酸系;フェニルサリチレ−ト、パラオクチルフエニルサリチレ−ト
【0031】
ベンゾフェノン系;2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−2´−カルボキシベンゾフェノン、2,4−ヒドロキシベンゾフェノン、2,2´−ヒドロキシ−4,4´−ジメトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−ベンゾイルオキシベンゾフェノン、2,2´−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホンベンゾフェノン、2,2´,4,4´−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,2´−ヒドロキシ−4,4´−ジメトキシ−5−ナトリウムスルホベンゾフェノン、4−ドテシルオキシ−2−ヒドロキシベンゾフェノン、2−ハイドロキシ−5−クロルベンゾフェノン
【0032】
ベンゾトリアゾ−ル系;2−(2´−ヒドロキシ−5´−メチルフエニル)ベンゾトリアゾ−ル、2−(2´−ヒドロキシ−5´−メチルフエニル)−5−カルボン酸ブチルエステルベンゾトリアゾ−ル、2−(2´−ヒドロキシ−5´−メチルフエニル)−5,6−ジクロルベンゾトリアゾ−ル、2−(2´−ヒドロキシ−5´−メチルフエニル)−5−エチルスルホンベンゾトリアゾ−ル、2−(2´−ヒドロキシ−5´−第3ブチルフエニル)−5−クロルベンゾトリアゾ−ル、2−(2´−ヒドロキシ−5´−第3ブチルフエニル)ベンゾトリアゾ−ル、2−(2´−ヒドロキシ−5´−アミルフエニル)ベンゾトリアゾ−ル、2−(2´−ヒドロキシ−3´,5´−ジメチルフエニル)ベンゾトリアゾ−ル、2−(2´−ヒドロキシ−3´,5´−ジメチルフエニル)−5−メトキシベンゾトリアゾ−ル、2−(2´−メチル−4´−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾ−ル、2−(2´−ステアリルオキシ−3´,5´−ジメチルフエニル)−5−メチルベンゾトリアゾ−ル、2−(2´−ヒドロキシ−5−カルボン酸フエニル)ベンゾトリアゾ−ルエチルエステル、2−(2´−ヒドロキシ−3´−メチル−5´−第3ブチルフエニル)ベンゾトリアゾ−ル、2−(2´−ヒドロキシ−5´−メトキシフエニル)ベンゾトリアゾ−ル、2−(2´−ヒドロキシ−5´−フエニルフエニル)−5−クロルベンゾトリアゾ−ル、2−(2´−ヒドロキシ−5´−シクロヘキシルフエニル)ベンゾトリアゾ−ル、2−(2´−ヒドロキシ−4´,5´−ジメチルフエニル)−5−カルボン酸ベンゾトリアゾ−ルブチルエステル、2−(2´−ヒドロキシ−3´,5´−ジクロルフェニル)ベンゾトリアゾ−ル、2−(2´−ヒドロキシ−4´,5´−ジクロルフェニル)ベンゾトリアゾ−ル、2−(2´−ヒドロキシ−3´,5´−ジメチルフエニル)−5−エチルスルホンベンゾトリアゾ−ル、2−(2´−ヒドロキシ−5´−フエニルフエニル)ベンゾトリアゾ−ル、2−(2´−ヒドロキシ−4´−オクトキシフエニル)ベンゾトリアゾ−ル、2−(2´−ヒドロキシ−5´−メトキシフエニル)−5−メチルベンゾトリアゾ−ル、2−(2´−ヒドロキシ−5´−メチルフエニル)−5−カルボン酸エステルベンゾトリアゾ−ル、2−(2´−アセトキシ−5´−メチルフエニル)ベンゾトリアゾ−ル、
【0033】
これらの紫外線吸収剤のうち、ベンゾフェノン系及びベンゾトリアゾール系のものが耐候性改善には好適であり、ベンゾフェノン系では、2,3´−ジヒドロキシ−4,4´−ジメトキシベンゾフェノン、2,2´−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン及び2,2´,4,4´−テトラヒドロキシベンゾフェノン:ベンゾトリアゾ−ル系では2−(2´−ハイドロキシ−5´−メチルフエニル)ベンゾトリアゾ−ル、2−(2´−ヒドロキシ−5−メチルフエニル)−5,6−ジクロルベンゾトリアゾ−ル、2−(2−ヒドロキシ−5´−第3ブチルフエニル)ベンゾトリアゾ−ル、
【0034】
2−(2´−ヒドロキシ−3´−メチル−5´−第3ブチルフエニル)ベンゾトリアゾ−ル、2−(2´−ヒドロキシ−3´,5´ジ第3ブチルフエニル)−5−クロル−ベンゾトリアゾール及び2−(2´−ヒドロキシ−5´−フエニルフエニル)−5−クロルベンゾトリアゾ−ル、2−(2´−ヒドロキシ−3´,5´−ジターシャリブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾ−ル、2− (2´−ヒドロキシ−5´−オクトキシフエニル)ベンゾトリアゾ−ル、等が特に有効である。
【0035】
紫外線吸収剤は0.1〜2.0重量%添加することが好ましい。紫外線吸収剤をこれ以上添加すると噴き出す恐れがあるので好ましくない。
【0036】
光安定剤としてはビス(2,2,6,6,−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6,−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、1−[2−〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ〕エチル]−4−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]−2,2,6,6,−テトラメチルピペリジン、4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6,−テトラメチルピペリジン等のヒンダードアミン系光安定剤、有機ニッケル等のクエンチャー等が使用でき、光劣化環境下における保持性からミンダードアミン系が好ましい。
【0037】
酸化防止剤としては、ペンタエリスリトール テトラキス(3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ネオジエチレン ビス(3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、N,N’-ヘキサン-1,6-ジイルビス(3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナミド、4,6-ビス(オクチルチオメチル)-o-クレゾールなどのヒンダードフェノール系酸化防止剤、テトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)(1,1-ビフェニル)-4,4’-ジイルビスホスフォナイト、ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジフォスファイトなどのリン系酸化防止剤、ジラウリルチオジプロピオネート、ジステアリルチオジプロピオネート、ジトリデシルチオジプロピオネートなどの硫黄系酸化防止剤などがあるが、熱酸化劣化やラジカル型分解劣化の阻止に効果の大きいヒンダードフェノール系が好ましい。
【0038】
最も好ましい組み合わせとしては、紫外線吸収剤としてベンゾトリアゾール類、光安定剤としてヒンダードアミン類、酸化防止剤としてヒンダードフェノール類を組み合わせて使用するのが好ましい。また、必要に応じて、カルボジイミド等の加水分解防止剤を含有させてもよい。
【0039】
本発明のマスターバッチはたとえば、下記1〜3の手順で製造される。
必要に応じて カーボンブラックの分散が十分な範囲で2を省略することも可能であるが、何回かに分けて所定量のカーボンブラックを分散させる方法は分散性を高めることができるので好ましい方法である。
1.ポリカプロラクトン+カーボンブラック+加水分解防止剤 ⇒ 予備分散品A
ポリカプロラクトン、カーボンブラックを混合したものを、シリンダーおよびダイス温度設定した同方向二軸押出機に投入し、混練・分散させる。ダイスより押し出されたシート状樹脂を送風により強制冷却した後、ペレタイザーカットして予備分散品Aを作製する。樹脂の加水分解を防止するため、カルボジイミド等の加水分解防止剤を添加することがより好ましい。
2.予備分散品A+カーボンブラック+ウレタン樹脂 ⇒ 予備分散品B
1で作製した予備分散品Aと上記カーボンブラックを混合したものを、押出機に投入し、混練・分散させる。ダイスより押し出されたシート状樹脂を送風により強制冷却した後、ペレタイザーでカットして予備分散Bを作製する。
3.予備分散品 B+ウレタン樹脂+紫外線吸収剤+光安定剤+酸化防止剤
2で作製した予備分散品B、ウレタン樹脂、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤を混合したものを、温度設定した、同方向二軸押出機に投入し、混練・分散させる。ダイスより押し出されたシート状樹脂を送風により強制冷却した後、ペレタイザーで約カットし、マスターバッチとなる。
【0040】
本発明のマスターバッチは、ウレタン系樹脂に添加配合されフィルム化される。フィルムの成形方法としては、例えば押し出し成形法、キャスト成形法、カレンダー成形法などを採用することができるが、特に300MPa以上の硬さを有する高弾性ウレタン系樹脂に分散し、カレンダー成形法でフィルム化する際に分散性が良く、好適に使用することができる。
【0041】
本発明で用いられるマスターバッチ中に、必要に応じて成形性改良のために、長鎖脂肪酸エステルやグリセリンエステル等を主成分とする滑剤、炭酸カルシウム等の加工助剤、熱安定剤等の添加剤を含有させてもよい。
【実施例】
【0042】
本発明をさらに詳細に説明するために以下に実施例を述べるが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例における測定方法は下記の通りである。
【0043】
試験用樹脂組成物の調製
作製したマスターバッチ5重量部に引張弾性率800MPaのウレタン樹脂(大日精化工業(株)製、レザミンP−8125LS)100重量部、紫外線吸収剤(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製、チヌビン234)1.0重量部、光安定剤(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製、チヌビン144)1.0重量部、酸化防止剤(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製、イルガノックス1010)2.0重量部、滑剤(クラリアントジャパン(株)製、リコワックスE)0.5重量部を混合したものを、シリンダー温度180℃、ダイス温度210℃に設定した同方向二軸押出機(L/D=42)に投入し、混練・分散させる。ストランドダイより押し出された樹脂を水中で冷却、水きりした後、ペレタイザーでカッティングし試験用樹脂組成物を得る。
【0044】
(1)カレンダー加工適正
試験装置として、ミキシングロール(日本ロール製造株式会社製 ロールサイズφ200mm×L500mm)を用い、ロール回転速度が14rpm/11rpm、ロール間隙は出来上がったフィルム厚みが100μmになるように設定し、樹脂組成物をロールに巻きつけながら溶融混練し、5分後に練り上ったシートをサンプリングした。サンプリングの際に、溶融樹脂がロールに付着して剥離不能となった温度をカレンダー加工の上限温度、シート表面が滑らかな鏡面状態とならず、面転写状態が不良となった温度をカレンダー加工の下限温度とした。このカレンダー加工の上限温度と下限温度の幅を△Tとし、この△Tが10℃以上あれば、カレンダー加工に適すると判断した。
【0045】
(2)フィルム外観
出来上がったフィルムの面状態を目視で確認する。
○:シート表面が滑らかで鏡面状態
△:シート表面のごく一部にフローマークが見られる
×:シート表面全体にフローマークが見られる
【0046】
(3)フィルム状試料の成形
フィルム状試料は、(1)の条件でカレンダー成形してフィルム状に成形し、フィルム表面とは反対側の面に粘着剤層を設けたものを使用する。
【0047】
(4) 試験片の作成
IPA洗浄し、乾燥されたアルキッドメラミン塗装板(日本テストパネル社製)に2.5cm角の試料を貼り付け、室温で24時間放置して試験片を作製する。
【0048】
(5)耐熱性試験
試験片を80℃の乾燥機に168時間放置した後に取り出し、外観を確認する。
○:試料に外観変化が見られない。
△:試料のごく一部にわずかな外観変化が見られる。
×:試料に明らかな外観異常が見られる。
【0049】
(6)耐湿試験
試験片を50℃、98%の恒温恒湿槽に168時間放置した後に取り出し、外観を確認する。
○:試料に外観変化が見られない。
△:試料のごく一部にわずかな外観変化が見られる。
×:試料に明らかな外観異常が見られる。
【0050】
(7)耐温水試験
試験片を40℃の水槽に168時間放置した後に取り出し、外観を確認する。
○:試料に外観変化が見られない。
△:試料のごく一部にわずかな外観変化が見られる。
×:試料に明らかな外観異常が見られる。
【0051】
(8)耐候性試験
試験片をサンシャインウエザオメーター(スガ試験機株式会社製、ブラックパネル温度63℃)で3000時間照射した後に外観を確認する。
○:試料に外観変化が見られない。
△:試料のごく一部にわずかな外観変化が見られる。
×:試料に明らかな外観異常が見られる。
【0052】
(9)耐ブリード性試験
試験片を60℃温水に24時間浸漬した後に取り出し、外観を確認する。
○:試料に外観変化が見られない。
△:試料のごく一部にわずかな外観変化が見られる。
×:試料に明らかな外観異常が見られる。
【0053】
参考例1 予備分散品A1
分子量約50,000のポリカプロラクトン(ダイセル化学(株)製、プラクセルH5)69.3重量部、加水分解防止剤としてカルボジイミド(日清紡(株)製、カルボジライトLA−1)0.7重量部、一次粒子径16nm、DBP吸収量101cm/100gのカーボンブラック(三菱化学(株)製、990)15重量部を混合したものを、シリンダーおよびダイス温度を70℃に設定した同方向二軸押出機(L/D=35)に投入し、混練・分散させる。ダイスより押し出されたシート状樹脂を送風により強制冷却した後、ペレタイザーで約5mm角にカットして予備分散品A1を製造した。
【0054】
参考例2 予備分散品A2
分子量約50,000のポリカプロラクトン(ダイセル化学(株)製、プラクセルH5)70.0重量部、加水分解防止剤を使用しない以外は参考例1と同様にして予備分散品A2を製造した。
【0055】
参考例3 予備分散品B1
前記作製した予備分散品A1 85重量部と上記カーボンブラック 15重量部を混合したものを、1と同じ条件で押出機に投入し、混練・分散させる。ダイスより押し出されたシート状樹脂を送風により強制冷却した後、ペレタイザーで約5mm角にカットして予備分散B1を製造した。
【0056】
参考例4 参考例5 予備分散品B2、B3
予備分散品A1の代わりに表2に示す組成で、参考例3と同様にして予備分散品B2を製造した。
【0057】

【0058】
実施例1
予備分散品B1 100重量部 と弾性率16MPa、溶融開始温度178℃のウレタン樹脂(大日精化工業(株)製、レザミンP895F)100重量部、紫外線吸収剤(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製、チヌビン234)1.0重量部、光安定剤(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製、チヌビン144)1.0重量部、酸化防止剤(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製、イルガノックス1010)2.0重量部を混合したものを、シリンダー温度170℃、ダイス温度200℃に設定した同方向二軸押出機(L/D=35)に投入し、混練・分散させる。ダイスより押し出されたシート状樹脂を送風により強制冷却した後、ペレタイザーで約5mm角にカットしマスターバッチを製造した。 得られたマスターバッチを使用して高弾性ウレタン樹脂フィルムの諸特性を測定した結果を表4に示す。
【0059】
実施例2、 比較例1
ウレタン樹脂を溶融開始温度 147℃のウレタン樹脂(日本ミラクトラン(株)製、ミラクトランXN−2004および184℃のウレタン樹脂(大日精化工業(株)製、レザミンP8325 とした以外は実施例1と同様にしてマスターバッチを製造した。得られたマスターバッチを使用して高弾性ウレタン樹脂フィルムの諸特性を測定した結果を表4に示す。
【0060】
実施例3〜実施例5、 比較例2
予備分散品B1とウレタン樹脂との使用量を、表3に示すように代えた以外は実施例1と同様にしてマスターバッチを製造した。得られたマスターバッチを使用して高弾性ウレタン樹脂フィルムの諸特性を測定した結果を表4に示す。
【0061】
実施例6
予備分散品として予備分散品B2を使用した以外は実施例1と同様にしてマスターバッチを製造した。得られたマスターバッチを使用して高弾性ウレタン樹脂フィルムの諸特性を測定した結果を表4に示す。
【0062】
比較例3
ウレタン樹脂を使用せず、予備分散品A1 200重量部を使用する以外は実施例1と同様にしてマスターバッチを製造した。得られたマスターバッチを使用して高弾性ウレタン樹脂フィルムの諸特性を測定した結果を表4に示す。
【0063】
比較例4
予備分散品B1を使用せず、ウレタン樹脂(大日精化工業(株)製、レザミンP895F)170重量部、カーボンブラック 30 重量部使用する以外は実施例1と同様にしてマスターバッチを製造した。得られたマスターバッチを使用して高弾性ウレタン樹脂フィルムの諸特性を測定した結果を表4に示す。
【0064】

【0065】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
1)カーボンブラック 10〜30重量%、
2)重量平均分子量(Mw) 30000〜70000のポリカプロラクトン25〜45重量%
3)溶融開始温度 180 ℃以下のウレタン系樹脂 25〜65 重量%
からなり、
紫外線吸収剤、酸化防止剤、および光安定剤を含むカレンダー成形高弾性ポリウレタン系樹脂着色用マスターバッチ。
【請求項2】
カーボンブラックの平均一次粒径が 10〜30 nmでかつJIS K6221で規程されるDBP吸収量 が 40〜180 cm3/100g である請求項1記載のカレンダー成形高弾性ポリウレタン系樹脂着色用マスターバッチ。
【請求項3】
カーボンブラックをポリカプロラクトンに分散した予備分散品をあらかじめ調製し、該予備分散品及びカーボンブラックを溶融開始温度 180℃以下のウレタン系樹脂に分散することにより製造される、請求項1〜請求項3記載のカレンダー成形用高弾性ウレタン系樹脂着色用マスターバッチ。
【請求項4】
ウレタン系樹脂がポリカーボネート系ウレタン樹脂であるカレンダー成形高弾性ポリウレタン系樹脂着色用マスターバッチ。

【公開番号】特開2008−255145(P2008−255145A)
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−96041(P2007−96041)
【出願日】平成19年4月2日(2007.4.2)
【出願人】(000004592)日本カーバイド工業株式会社 (165)
【Fターム(参考)】