説明

ポリエステルのカレンダー加工方法

1種又はそれ以上の半結晶性ポリエステル及び剥離剤を含むポリエステル組成物を、前記組成物中の各ポリエステルの融点範囲の上限温度より低い最高温度においてカレンダー加工することによる、フィルム又はシートの製造方法が開示される。このポリエステル組成物は、1種又はそれ以上の生分解性ポリエステル、例えば脂肪族−芳香族ポリエステルを含むことができる。カレンダー加工されたポリエステルは、可塑剤を添加しなくても強靱で柔軟なフィルムを形成できる。このフィルム及びシートは、それらを一部の可塑化PVCフィルムの代替品としてふさわしい光学的及び物理的性質を有することができる。脂肪族−芳香族ポリエステルを含むカレンダー加工用ポリエステル組成物も開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1種又はそれ以上のポリエステル及び剥離剤を含むポリエステル組成物のカレンダー加工によるフィルム又はシートの製造方法に関する。このポリエステル組成物は、1種又はそれ以上の生分解性ポリエステルを含むことができる。本発明は更にカレンダー加工用のポリエステル組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
カレンダー加工は、プラスチック、例えば、可塑化及び硬質ポリ塩化ビニル(本明細書中では「PVC」と略す)並びにポリ(プロピレン)組成物からフィルム及びシートを製造するための経済的で効率の高い手段である。このフィルム及びシートは通常、1mil(0.025mm)〜80mil(2.0mm)の厚さを有する。カレンダー加工されたPVCフィルム又はシートは、PVCカレンダー加工フィルム又はシートは、包装材料、プールライナー、グラフィックアート、トランザクションカード、セキュリティーカード、化粧板、壁装材、本の装丁、フォルダー、フロアタイル及び二次的操作で印刷、装飾又は貼り合わせが行われる製品を含む多くの用途に使用できる種々の形状に容易に熱成形される。カレンダー加工方法に使用されるポリ(プロピレン)樹脂組成物に関する更なる解説は、例えば、特許文献1及び2に記載されている。
【0003】
典型的なカレンダー加工プロセスラインにおいては、プラスチックは添加剤、例えば熱分解を防ぐための安定剤;透明性、熱安定性又は不透明性を与えるための改質剤;顔料;潤沢剤及び加工助剤;帯電防止剤;紫外線抑制剤;並びに難燃剤とブレンドされる。混合された成分は、ニーダー又は押出機中でブレンドされ、軟化させられる。熱、剪断作用及び圧力によって、乾燥粉末、ペレット又は液体は溶融させられて、均一な溶融材料を形成する。押出機は、溶融材料を連続法でカレンダーラインのカレンダー部の上部の第1加熱カレンダーロールと第2加熱カレンダーロールとの間に供給する。典型的には、3つのニップ又は間隙を形成するには4つのロールが用いられる。ロールは、別個の温度制御及び速度制御を有し、L字形又は逆L字形で配置され、種々のフィルム幅に対応するように寸法が変化する。材料は、供給ニップと称する、第1の2つのロール間のニップを通って進む。この2つのロールは、ロール幅全体に材料を広げるために、それぞれ反対の方向に回転する。材料は第1ロールと第2ロールの間、第2ロールと第3ロールの間、第3ロールと第4ロールの間などを曲がりくねって進み、ロール間の間隙は、材料が進むにつれてロールセット間で薄くなるように、ロールのそれぞれの間で厚さが減少する。カレンダー部を通過後、カレンダー加工フィルムは別の一組のロールを通って進み、そこで引き伸ばされ且つ徐々に冷却されて、フィルム又はシートを形成する。次いで、冷却された材料がマスターロールに巻き付けられる。カレンダー加工方法の概要は、非特許文献1及び非特許文献2に開示されている。
【0004】
PVC組成物は、カレンダー加工フィルム及びシートビジネスの中で群を抜いて大きい部分である。しかし、少量の他の熱可塑性ポリマー、例えば熱可塑性ゴム、ある種のポリウレタン、ポリ(プロピレン)、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレンターポリマー(本明細書中では「ABS」と略する)及び塩素化ポリエチレンも、カレンダー加工法によって加工できる。より低コストの、広く市販されているポリマー、例えば、ポリ(エチレンテレフタレート)(本明細書中では「PET」と略する)又はポリ(1,4−ブチレンテレフタレート)(本明細書中では「PBT」と略する)をカレンダー加工しようとする試みはこれまで上手くいっていない。例えば、0.6dL/gのインヘレント粘度値を有するPETポリマーは、カレンダーロール上で適切に機能する充分な溶融強度を有さない。更に、PETが典型的な加工温度においてロールに供給される場合には、PETポリマーは結晶化して不均質な塊を生じる。この不均質な塊は、その後の加工に適さず、また、カレンダーの軸受上に不所望な強い力を生じる。種々のポリエステル組成物のカレンダー加工及びこれらの問題へのいくつかのアプローチは、例えば特許文献3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15及び16に記載されている。これらの問題のいくつかはポリマーの性質、添加剤及び加工条件を慎重に選択することによって回避できるが、ポリエステルのカレンダー加工は困難な可能性がある。
【0005】
フィルム又はシートへのポリエステルの従来の加工は、フラットダイのマニホールドからのポリエステルメルトの押出を含む。材料のウェブ全体にわたって厚さを制御するために手動又は自動のダイリップ調整が用いられる。溶融ウェブを冷却し且つ平滑な表面仕上げを与えるために、水冷チルロールが用いられる。押出法は、優れた品質のフィルム及びシートを生成するが、カレンダー加工法によって提供される処理量及び経済的利点を有さない。また、カレンダー加工法における標準寸法の交差(gauge tolerance)は、押出の場合よりも優れている。更に、脂肪族−芳香族ポリエステル、例えばECOFLEX(登録商標)ポリエステル(BASF Corporationから入手可能)、他の同様な生分解性樹脂及びこれらの樹脂のブレンドから製造された押出フィルムは典型的には不良な透明度を有する、即ち、一般に透明でないが、表面との接触時により高い透明度を示すことができる。透明度のこのような欠如は、一つには、これらの樹脂を用いて溶融流延及びメルトブローのような従来の加工方法によってフィルムを形成するのに必要な粘着防止剤の使用によるものである。このような不良な透明度のため、これらのフィルムは多くの商業的用途で許容され得ない。
【0006】
室温又はそれ以下のガラス転移温度(本明細書中では、「Tg」と略する)を示すポリマーは、一般に「柔軟である」と見なされるフィルムを生成する。一般に、Tgが室温よりも低いほど、フィルムは柔軟であろう。しかし、可塑剤を添加せずに、高い強度を有する柔軟な軟質フィルムを生成することは困難である。従って、柔軟性がより高く且つ柔軟感の増大したフィルムを必要とする多くの商業的用途に関しては、Tgを所望の温度に低下させるために添加剤が添加される。多くの可塑剤は生分解性ではなく、毒性の問題を引き起こしやすく、ポリマー組成物から移行することが多い。例えば可塑化PVC(本明細書中では「PPVC」と称する)は60年以上前から柔軟材料に関する多くの市場ニーズを満たしてきた。しかし、PPVCは、環境において結合する力が強く、廃棄が難しく、しかも健康上の問題を生じるので、代替材料が望まれる。
【0007】
【特許文献1】特開平7−197213号公報
【特許文献2】欧州特許出願公開第0 744 439 A1号
【特許文献3】米国特許第5,998,005号
【特許文献4】米国特許第6,068,910号
【特許文献5】米国特許第6,551,688号
【特許文献6】米国特許出願公開第10/086,905号
【特許文献7】特開平8−283547号公報
【特許文献8】特開平7−278418号公報
【特許文献9】特開平9−217014号公報
【特許文献10】特開2002−53740号公報
【特許文献11】特開平10−363908号公報
【特許文献12】特開2002−121362号公報
【特許文献13】特開2003−128894号公報
【特許文献14】特開平11−158358号公報
【特許文献15】欧州特許出願公開第1 375 556 A2号
【特許文献16】国際出願公開第02/28967号
【非特許文献1】Jim Butschli,Packaging World,26〜28頁,June 1997
【非特許文献2】W.V.Titow,PVC Technology,4th Edition,803〜848頁(1984),Elsevier Publishing Co.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、強靱で、透明で且つ柔軟なフィルム又はシートを生成するが可塑剤を必要としない、ポリエステルのカレンダー加工方法が必要とされている。また、この方法によって得られるカレンダー加工フィルム及びシートは生分解性であり、従って、環境に残留しないことが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、半結晶性ポリエステルを、それが一部分溶融し且つその結晶性の一部を保持する温度でカレンダー加工することによって、透明度、靭性及び耐熱性を有する柔軟なフィルムを製造できることを発見した。従って、本発明は、1種又はそれ以上の半結晶性ポリエステル及び剥離剤を含むポリエステル組成物を、1種又はそれ以上の前記の各ポリエステルの融点範囲の上限温度より低い最大温度においてカレンダー加工することを含む、フィルム又はシートの製造方法を提供する。これらのフィルムは、多くの用途において、ポリ塩化ビニル(PVC)及び可塑化PVCの代替フィルムとして使用できる。本発明の方法によれば、可塑剤を用いずに多くの半結晶性ポリエステルをカレンダー加工することが可能である。従って、本発明の一実施態様において、ポリエステルは実質的に可塑剤を含まない。本発明の方法は、多くの半結晶性生分解性ポリエステル、例えば、1種又はそれ以上の脂肪族−芳香族ポリエステル(本明細書中では「AAPE」と略する)、ポリカプロラクトン、ポリ乳酸、ポリヒドロキシブチレート、ポリヒドロキシブチレート−バレレート若しくはポリブチレンスクシネートポリマー、これらのポリマーのブレンド、又はそれらのコポリマーからカレンダー加工フィルムを製造するのに使用できる。
【0010】
本発明はまた、
(A)(i)1,4−ブタンジオール;1,3−プロパンジオール;エチレングリコール;1,6−ヘキサンジオール;ジエチレングリコール;及び1,4−シクロヘキサンジメタノールからなる群から選ばれた1種又はそれ以上のジオールの残基を含むジオール残基と
(ii)(a)二酸残基の総モルに基づき、35〜95モル%の、グルタル酸、ジグリコール酸、コハク酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸及びアジピン酸からなる群から選ばれた1種又はそれ以上の非芳香族ジカルボン酸の残基;並びに
(b)二酸残基の総モルに基づき、5〜65モル%の、テレフタル酸及びイソフタル酸から選ばれた1種又はそれ以上の芳香族ジカルボン酸の残基
を含む二酸残基
を含む、組成物の総重量に基づき、少なくとも50重量%のAAPE(AAPEは、溶融状態からの半結晶化時間が5分未満のランダムコポリマーでり、実質的にスルホネート基を含まない);更に
(B)組成物の総重量に基づき、0.1〜1重量%の、脂肪酸アミド、有機酸金属塩、脂肪酸、脂肪酸塩、脂肪酸エステル、炭化水素ワックス、エステルワックス、燐酸エステル、化学改質ポリオレフィンワックス、グリセリンエステル、タルク及びアクリルコポリマーからなる群から選ばれた少なくとも1種の剥離剤
を含むカレンダー加工用ポリエステル組成物を提供する。本発明のAAPEは、生分解性であることがわかっており、従って、それから製造されるフィルム又はシートもまた、生分解性であることが予想される。従って、本発明の一実施態様は、既存のカレンダー加工装置を用いて製造でき且つPVCカレンダー加工フィルムの代替品として役立つことができる、可塑剤を含まない生分解性ポリエステルフィルムを提供する。このフィルム又はシートは、食品及び非食品のための特殊な包装用途のために種々の形状に容易に熱成形される。これらは種々のインキで印刷可能であって、これらには布又は他のプラスチックフィルム若しくはシートをインラインで又はオフラインで貼り合わせることができる。いくつかの具体的最終用途としては、グラフィックアート、トランザクションカード、温室の透明板ガラス、セキュリティーカード、化粧板、壁装材、本の装丁、フォルダーなどが挙げられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
意外なことに、硬質固形物、無機化合物、珪藻土、タルク及び炭酸カルシウムのような粘着防止剤又は可塑剤を用いずに、半結晶性(又は半結晶質)ポリエステルをカレンダー加工することによってシート又はフィルムを形成できることが発見された。この方法は、剥離剤を用いると共に、カレンダーロール通過時のポリマーメルトの温度を慎重に制御することによってポリエステルを半結晶性メルトの形態に保つことを含む。従って、本発明は、1種又はそれ以上の半結晶性ポリエステル及び剥離剤を含むポリエステル組成物を、1種又はそれ以上の前記の各ポリエステルの融点範囲の上限温度(upper temperature)より低い最大温度においてカレンダー加工することを含む、フィルム又はシートの製造方法を提供する。このフィルム又はシートは、優れた柔軟性、透明度及び靭性を示し、可塑剤の使用を必要としない。本発明の方法は、半結晶性の形態を示すことが多い生分解性ポリエステルを用いたフィルムの製造に適している。生分解性ポリエステルから製造されるフィルムもまた、生分解性であると予想される。このカレンダー加工フィルムは、1mil(0.025mm)〜80mil(2mm)の範囲の厚さを有することができる。
【0012】
以下の明細書及び添付した「特許請求の範囲」中に示す各数値パラメーターは少なくとも、記録された有効桁数を考慮に入れ且つ普通の丸めを適用することによって解釈すべきである。更に、本明細書の開示及び「特許請求の範囲」に記載した範囲は、端点だけでなく、全範囲を具体的に含むものとする。例えば0〜10と記載された範囲は、0と10との間の全ての整数、例えば1、2、3、4など、0と10との間の全ての分数、例えば1.5、2.3、4.57、6.1113など並びに端点0及び10を開示するものとする。また、化学置換基、例えば「C1〜C5炭化水素」に関連した範囲は、C1炭化水素及びC5炭化水素だけでなく、C2炭化水素、C3炭化水素及びC4炭化水素を具体的に含み且つ開示するものとする。
【0013】
本明細書中で使用する用語「カレンダー」並びに「カレンダー加工(calendering)」及び「カレンダー加工された(calendered)」のようなその種々の形態は、2つ又はそれ以上のロールを用いて溶融又は部分溶融ポリマーからフィルム又はシートを形成する任意の方法を意味する。本発明との関連で使用する用語「カレンダー加工(calendering)」は、最初のフィルム形成工程が、溶融塊の形態の溶融又は部分溶融ポリマーの「バンク(bank)」を2つ又はそれ以上のカレンダーロールを通して供給することによって行われることを意味する。対照的に、「カレンダー加工」は、例えば、予備成形フィルムに1つ又はそれ以上の追加ロールを用いてエンボス加工又は艶出しを更に行う「仕上げカレンダー加工」を含まないものとする。
【0014】
本明細書中で使用する用語「生分解性」は、言及されるポリエステル又は物質が、例えば、ASTM Standard Method D6340−98,”Standard Test Methods for Determining Aerobic Biodegradation of Radiolabeled Plastic Mateials in an Aqueous or Compost Environment”によって又はDIN Standard 54900によって定義される適当で実証可能な時間長で環境の影響下において分解し得ることを意味する。
【0015】
本明細書中で使用する用語「ポリエステル」は「ホモポリエステル」と「コポリエステル」の両方を含むものとし、1種又はそれ以上の二官能価カルボン酸と1種又はそれ以上の二官能価ヒドロキシル化合物との重縮合によって製造される合成ポリマーを意味するものと理解する。本明細書中で使用する用語「コポリエステル」は、2種又はそれ以上の異なる酸及び/又はヒドロキシルモノマー残基を含むポリエステルポリマーを意味するものと理解する。典型的には、二官能価カルボン酸はジカルボン酸又はヒドロキシカルボン酸であり、二官能価ヒドロキシル化合物は二価アルコール、例えばグリコール及びジオールである。或いは、本発明のポリエステルは、ヒドロキシカルボン酸から製造することもできるし、或いは、例えば環状ラクチドから製造されるポリ乳酸又はカプロラクトンから形成されるポリカプロラクトンの場合と同様に、環状ラクトンの開環反応によって形成することもできる。
【0016】
本明細書中で使用する用語「脂肪族−芳香族ポリエステル」は、脂肪族若しくは脂環式ジカルボン酸若しくはジオール及び芳香族カルボン酸若しくはジオールからの残基の混合物を含んでなるポリエステルを意味する。本明細書中で本発明のジカルボン酸、ジオール及びヒドロキシルカルボン酸モノマーに関して使用する用語「非芳香族」は、モノマーのカルボキシル又はヒドロキシル基が芳香核を介して結合していないことを意味する。例えば、アジピン酸はその主鎖、即ち、カルボン酸基を結合する炭素原子の鎖中に芳香核を含まず、従って、アジピン酸は「非芳香族」である。これに対して、用語「芳香族」は、ジカルボン酸又はジオールが主鎖中に芳香族を含む、例えばテレフタル酸又は2,6−ナフタレンジカルボン酸であることを意味する。従って、「非芳香族」は、脂肪酸及び脂環式構造、例えば本質的に飽和されているか若しくはパラフィン系である、不飽和である(即ち、非芳香族炭素−炭素二重結合を含む)、又はアセチレン系である(即ち、炭素−炭素三重結合を含む)ことができる成分炭素原子の直鎖若しくは分岐鎖又は環状配列を主鎖として含むジオール、二酸及びヒドロキシカルボン酸を含むものとする。従って、本発明の説明及び「特許請求の範囲」との関連において、非芳香族は直鎖及び分岐鎖構造(本明細書中では「脂肪族」と称する)及び環状構造(本明細書中では「脂環式」と称する)を含むものとする。しかし、用語「非芳香族」は、脂肪族若しくは脂環式ジオール、二酸若しくはヒドロキシカルボン酸の主鎖に結合できる芳香族置換基を除外するものではない。本発明において、二官能価カルボン酸は、脂肪族若しくは脂環式ジカルボン酸、例えばアジピン酸;ヒドロキシカルボン酸、例えば、乳酸;又は芳香族ジカルボン酸、例えばテレフタル酸であることができる。二官能価ヒドロキシル化合物は、脂環式ジオール、例えば1,4−シクロヘキサンジメタノール、直鎖若しくは分岐鎖脂肪族ジオール、例えば、1,4−ブタンジオール、又は芳香族ジオール、例えばヒドロキノンであることができる。本明細書中で使用する用語「残基」は、対応するモノマーを含む重縮合反応によってポリマー中に組み込まれる任意の有機構造を意味する。本明細書中で使用する「反復単位」は、カルボニルオキシ基によって結合されるジカルボン酸残基及びジオール残基又はヒドロキシカルボン酸残基を有する有機構造を意味する。従って、ジカルボン酸残基は、ジカルボン酸モノマー若しくはその関連する酸ハロゲン化物、エステル、塩、無水物又はそれらの混合物から得ることができる。従って、本明細書中で使用する用語「ジカルボン酸」は、高分子量コポリエステルを製造するためのジオールとの重縮合法において有用なジカルボン酸及びジカルボン酸の任意の誘導体、例えばその関連する酸ハロゲン化物、エステル、半エステル、ラクトン、塩、半塩、無水物、混合無水物又それらの混合物を含むものとする。「ヒドロキシカルボン酸」は、高分子量ポリエステルを製造するための重縮合法又は開環反応において有用な、脂肪族及び脂環式ヒドロキシカルボン酸及びモノヒドロキシモノカルボン酸並びにその任意の誘導体、例えば、その関連する酸ハロゲン化物、エステル、環状エステル(例えばラクトン、二量体(即ち、乳酸ラクチド))、塩、無水物、混合無水物又はそれらの混合物を含むものとする。
【0017】
本発明の新規方法のポリエステルは半結晶性ポリマーである。ここで使用する用語「半結晶性」は、ポリマーが2相:規則正しい結晶質相及び不規則な非晶質相を含むことを意味する。半結晶性の形態を有するポリエステルは、結晶融解温度(Tm)及びガラス転移温度(Tg)の両方を示し、ガラス転移温度のみを示す「非晶質」ポリマーとは区別できる。ガラス転移温度及び結晶融点の存在は、半結晶性及び非晶質(ガラス状)ポリマーの特性決定によく用いられる方法である。2つの熱転移、Tg及びTmは、示差走査熱量測定法(DSC)のような公知の分析法によって比容積及び熱容量の変化を測定することによって定量できる。例えば、Tg及びTmは、20℃/分の速度で走査するようにプログラムされたTA Instruments Model 2920 Differential Scanning Calorimeterで測定できる。吸熱ピークの中点をTgと見なした。Tmは、吸熱ピークの頂点の温度と見なした。これらの方法は、Thermal Characterization of Polymeric Materials{Edith A.Turi編,Academic Press(New York,New York)によって1981年に発行}により詳細に記載されている。
【0018】
本発明に使用するポリエステルは、実質的に等しい比で反応し且つそれらの対応する残基としてポリエステルポリマー中に組み込まれるジカルボン酸及びジオールから、又は開環反応によって環状エステル(例えば、ラクトン)から製造する。従って、ジカルボン酸残基及びジオール残基から得られる本発明のポリエステルは、反復単位の総モルが100モル%に等しくなるように実質的に等モル比の酸残基(100モル%)及びジオール残基(100モル%)を含む。従って、本明細書の開示において示すモル%は、酸残基の総モル、ジオール残基の総モル又は反復単位の総モルに基づくことができる。例えば、総酸残基に基づき、30モル%のアジピン酸を含むポリエステルは、ポリエステルが合計100モル%の酸残基のうち30モル%のアジピン酸残基を含むことを意味する。従って、酸残基100モル当たりアジピン酸残基が30モル存在する。別の例において、総ジオール残基に基づき30モル%の1,6−ヘキサンジオールを含むポリエステルは、ポリエステルが合計100モル%のジオール残基のうち30モル%の1,6−ヘキサンジオール残基を含むことを意味する。従って、ジオール残基100モル当たり1,6−ヘキサンジオール残基が30モル%存在する。
【0019】
一実施態様において、本発明の方法のポリエステルの少なくとも1種は、溶融状態からの半結晶化時間が5分未満であることができる。半結晶化時間は、例えば4分未満及び3分未満であることができる。本発明の別の態様において、ポリエステルはランダムコポリマー又はホモポリマーであることができる。「ランダムコポリマー」とは、ポリエステルが1種より多いジオール、ヒドロキシカルボン酸及び/又は二酸残基を含み、異なる残基がポリマー鎖に沿ってランダムに分布していることを意味する。「ホモポリマー」とは、ポリエステルが単一の二酸−ジオール又はヒドロキシカルボン酸反復単位から実質的に構成されることを意味する。しかし、ポリエステルは、「ブロックコポリマー」、即ち、1つのホモポリマー構造のブロックが別の型のホモ構造ポリマーのブロックに結合したポリエステルではない。本発明のポリエステルはまた、各ポリエステルがカレンダー加工プロセスの間中、半結晶性メルトの形態であるような、2種又はそれ以上のポリエステルのブレンドであることができる。しかし、別の実施態様において、本発明のポリエステルはブレンドではない。
【0020】
本明細書中で使用するポリエステルの半結晶化時間は、当業者によく知られた方法を用いて測定できる。例えば半結晶化時間は、Perkin−Elmer Model DSC−2示差走査熱量計を用いて測定できる。半結晶化時間は、溶融状態から以下の手法を用いて測定する: ポリエステルのサンプル15.0mgをアルミニウムパン中に密封し、320℃/分の速度で2分間290℃まで加熱する。次いで、サンプルを直ちにヘリウム存在下で約320℃/分の速度で所定の等温結晶化温度まで冷却する。等温結晶化温度は、最高の結晶化速度を生じる、ガラス転移温度と融解温度との間の温度である。等温結晶化温度は、例えば、Elias,H.Macromolecules,Plenum Press:NY,1977,391頁に記載されている。半結晶化時間は、等温結晶化温度に到達してから結晶化ピーク点までのDSC曲線上の時間長として求められる。
【0021】
本発明のポリエステル組成物は、ポリエステル、及びカレンダーロールへのポリエステルの粘着防止に有効な剥離剤を含んでなる。一実施態様において、ポリエステル組成物は、可塑剤を添加しなくてもカレンダー加工できるほど充分に柔軟性である。従って、本発明の一例において、ポリエステル組成物は可塑剤を実質的に含まない。ここで使用する用語「可塑剤」は、当業者に理解されているような普通の意味を有するものとする。即ち、「可塑剤」は、加工を容易にすると共にポリマー分子の内部改質又は溶媒和によって最終製品の柔軟性を増加させるために高分子化合物に添加される有機化合物である。一般に、可塑剤はポリマーのTgを低下させる。用語「実質的に含まない」とは、ポリマーが、本発明のポリエステル組成物、フィルム及びシート中に含ませることができる、剥離剤、難燃剤並びに典型的な添加剤、例えば、酸化防止剤、着色剤、顔料、充填剤、連鎖延長剤及び加工助剤の他に又はそれらに加えて、可塑剤を含まないことを意味するものとする。これらの添加剤のいくつかは、それらの構造及び生分解性ポリエステルとの混和性によっては、コポリエステルに可塑化効果を与えることができる。従って、「実質的に含まない」とは、前に挙げた典型的な添加剤例以外の化合物が、ポリエステル又はそれから製造されるフィルム及びシートの可塑化及び柔軟性の増大のために特にポリエステル組成物中に存在しないことを意味する。本発明の別の実施態様において、ポリエステル組成物は、ポリエステル及び剥離剤から本質的になる。従って、この実施態様において、本発明の方法は、1種のポリエステル樹脂及び剥離剤を、前記ポリエステルが半結晶性メルトの形態である最大温度(これは、カレンダー加工プロセスの最大温度が各ポリエステルの融解範囲の上限温度より低いことを意味する)において単にカレンダー加工することによって実施できる。例えば、フィルムは、ポリエステルの融点範囲内である最大温度においてポリエステルをカレンダー加工することによって形成できる。フィルムが2種又はそれ以上のポリエステルのブレンドを含んでなる場合には、各ポリエステルの融点範囲の上限より低い最大温度においてこのブレンドをカレンダー加工することによってフィルムを形成できる。更に別の実施態様においては、各ポリエステルの融点範囲内の最大温度においてこのブレンドをカレンダー加工することによってフィルムを形成できる。ここで使用する用語「本質的になる」とは、ポリエステル樹脂及び剥離剤が、前記ポリエステルが半結晶性メルトの形態である温度でカレンダー加工されたフィルムを包含するものとし、この用語が言及するフィルムの本質的な性質を実質的に変える任意の要素を除外すると理解する。例えば、本発明のフィルム及びポリエステルは、カレンダー加工プロセスの間にポリエステルの半結晶質メルト相を変えない、例えば、難燃剤、酸化防止剤、着色剤などのような他の添加剤を含むことができる。これに対して、ポリエステル自体が半結晶質メルト中に存在しないようにポリエステルの溶融相の性質を変えることが予想されるであろうポリエステルへの可塑剤又は別のポリマーの添加は、本発明から除外する。更なる例において、ポリエステルのいずれか一方が半結晶質メルト中にないならば、例えば、一方のポリエステルが完全に溶融されており(即ち、その融解範囲より高い温度でカレンダー加工され)且つ他方が溶融ポリマー中に懸濁された固体の形態であったならば、ポリエステルのブレンドは除外するものとする。以下の説明は、使用できる改質の種類の例を示すが、当業者ならばその他の改質も容易にわかるであろう。
【0022】
本発明の方法は、フィルムの各ポリエステルが半結晶質メルトの形態である最大温度においてカレンダー加工プロセスによって実施する。ここで使用する「半結晶質メルト」は、ポリエステルがカレンダー加工操作の間中、液体の溶融相及び固体の結晶相の両方を示すことを意味するものとする。半結晶質メルトは、ポリマーの結晶領域が完全には溶融されないように、ポリエステルのTgを超えるがポリエステルの融点範囲の上限より低い温度でカレンダー加工操作を実施する場合に存在する。ここで使用する用語「融点範囲」は、融点吸熱の開始に始まって融点吸熱の終了で終わる、DSC曲線において観察される温度の範囲を意味する。ポリマーの融点範囲の開始及び終了は、当業者ならば測定できる。本発明のポリエステルの融点範囲の開始点及び終了点は、メルトの融解熱の90%が範囲に含まれる最小温度範囲によって決定される。メルトの融解熱は、標準的方法を用いて第2熱サイクルのDSCにおいて求めることができる。例えば、融解熱及び最小温度範囲は、コンピュータ及び当業者によく知られた市販ソフトウェアを用いて第2熱サイクルのDSC曲線下の面積を積分することによって求めることができる。典型的には、カレンダー加工プロセスは、全てのカレンダーロールの最大温度がポリエステルの融点範囲の上限温度より低いように又は2種若しくはそれ以上のポリエステルのブレンドを用いる場合には各ポリエステルの融点範囲の上限温度より低いようにカレンダーロール温度を慎重に保持することによって実施する。これに対して、カレンダー加工プロセスの温度がポリエステルの融点範囲を超える場合には、ポリエステルは完全に融解し、半結晶質メルトの形態ではないであろう。カレンダー加工温度が1種又はそれ以上のポリエステルの融点範囲よりはるかに低すぎる場合には、メルトの粘度が高すぎることが多く、フィルムの溶融破壊が起こるであろう。典型的には、本発明の方法は70〜170℃の最大温度において実施する。最大カレンダー加工温度の更なる例としては、80〜160℃及び90〜150℃が挙げられる。
【0023】
本発明の方法は、生分解性半結晶性ポリエステルを含む(これらに限定されるものではない)任意の半結晶性ポリエステルを用いて実施できる。本発明に使用できる生分解性ポリエステルの例としては、1種又はそれ以上の脂肪族−芳香族ポリエステル(AAPE)、ポリカプロラクトン、ポリ乳酸、ポリヒドロキシブチレート、ポリヒドロキシブチレート−バレレート及びポリブチレンスクシネート並びにそれらのコポリマーが挙げられるが、これらに限定されるものではない。例えば生分解性ポリエステルは、1種又はそれ以上のヒドロキシカルボン酸、例えば乳酸(R型及びS型並びにそれらの混合物)、カプロラクトン、γ−ブチロラクトン及びヒドロキシブチレートの残基を含むことができる。
【0024】
本発明の方法を更に、特に脂肪族−芳香族ポリエステル(本明細書中では「AAPE」と略する)に関してここに更に説明及び例証するが、当業者ならば、他の半結晶性ポリエステルも使用できることがわかる。AAPEは、炭素数2〜8の脂肪族ジオール、炭素数2〜8のポリアルキレンエーテルグリコール及び炭素数4〜12の脂環式ジオールから選ばれた1種又はそれ以上の置換又は非置換の直鎖又は分岐鎖ジオールの残基を含むジオール残基を含んでなる線状ランダムコポリエステル又は分岐及び/若しくは連鎖延長コポリエステルであることができる。置換ジオールは典型的には、ハロ、C6〜C10アリール及びC1〜C4アルコキシから独立して選ばれた1〜4個の置換基を含むものとする。使用できるジオールの例としては以下のものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ポリエチレングリコール、ジエチレングリコール、2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジオール、チオジエタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオール、トリエチレングリコール及びテトラエチレングリコール。好ましいジオールは、1,4−ブタンジオール;1,3−プロパンジオール;エチレングリコール;1,6−ヘキサンジオール;ジエチレングリコール及び1,4−シクロヘキサンジメタノールから選ばれた1種又はそれ以上のジオールを含む。
【0025】
AAPEはまた、二酸残基の総モルに基づき、35〜99モル%の、炭素数2〜12の脂肪族ジカルボン酸及び炭素数5〜10の脂環式ジカルボン酸から選ばれた1種又はそれ以上の置換又は非置換の直鎖又は分岐鎖非芳香族ジカルボン酸の残基を含む二酸残基を含んでなることができる。置換非芳香族ジカルボン酸は典型的には、ハロ、C6〜C10アリール及びC1〜C4アルコキシから選ばれた1〜4個の置換基を含むものとする。脂肪族及び脂環式ジカルボン酸の非限定的例としては、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フマル酸、2,2−ジメチルグルタル酸、スベリン酸、1,3−シクロペンタンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、ジグリコール酸、イタコン酸、マレイン酸及び2,5−ノルボルナンジカルボン酸が挙げられる。非芳香族ジカルボン酸の他に、AAPEは、二酸残基の総モルに基づき、1〜65モル%の、炭素数6〜10の1種又はそれ以上の置換又は非置換の芳香族ジカルボン酸の残基を含んでなる。置換芳香族ジカルボン酸を用いる場合には、それらは典型的には、ハロ、C6〜C10アリール及びC1〜C4アルコキシから選ばれた1〜4個の置換基を含むものとする。本発明のAAPE中に使用できる芳香族ジカルボン酸の非限定的例はテレフタル酸、イソフタル酸及び2,6−ナフタレンジカルボン酸である。別の実施態様において、AAPEは、1,4−ブタンジオール;1,3−プロパンジオール;エチレングリコール;1,6−ヘキサンジオール;ジエチレングリコール;又は1,4−シクロヘキサンジメタノールの1種又はそれ以上の残基を含むジオール残基;並びに(i)酸残基の総モルに基づき35〜95モル%の、グルタル酸、ジグリコール酸、コハク酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸及びアジピン酸から選ばれた1種又はそれ以上の非芳香族ジカルボン酸の残基;(ii)酸残基の総モルに基づき、5〜65モル%の、テレフタル酸及びイソフタル酸から選ばれた1種又はそれ以上の芳香族ジカルボン酸の残基を含む二酸残基を含む。より好ましくは、二酸残基はアジピン酸及びテレフタル酸の残基を含み、且つジオール残基は1,4−ブタンジオールの残基を含む。
【0026】
本発明のAAPEの他の例は、二酸成分100モル%及びジオール成分100モル%に基づき以下のモル%の以下のジオール及びジカルボン酸(又はジエステルのようなそれらのコポリエステル形成性等価物)から製造されるものである。
(1)グルタル酸(30〜75%):テレフタル酸(25〜70%);1,4−ブタンジオール(90〜100%);及び改質用ジオール(0〜10%);
(2)コハク酸(30〜95%);テレフタル酸(5〜70%);1,4−ブタンジオール(90〜100%);及び改質用ジオール(0〜10%);並びに
(3)アジピン酸(30〜75%);テレフタル酸(25〜70%);1,4−ブタンジオール(90〜100%);及び改質用ジオール(0〜10%)。
【0027】
改質用ジオールは好ましくは、1,4−シクロヘキサンジメタノール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール及びネオペンチルグリコールから選ばれる。最も好ましいAAPEは、アジピン酸残基50〜60モル%、テレフタル酸残基40〜50モル%及び1,4−ブタンジオール残基を少なくとも95モル%を含む線状、分岐又は連鎖延長コポリエステルである。更に好ましくは、アジピン酸残基は55〜60モル%であり、テレフタル酸残基は40〜45モル%であり且つ1,4−ブタンジオール残基は95〜100モル%である。このような組成物は、商標ECOFLEX(登録商標)ポリエステル(BASF Corporationから入手可能)として市販されている。
【0028】
好ましいAAPEの更なる具体例としては以下のものが挙げられる。(a)グルタル酸残基50モル%、テレフタル酸残基50モル%及び1,4−ブタンジオール残基100モル%;(b)グルタル酸残基60モル%、テレフタル酸残基40モル%及び1,4−ブタンジオール残基100モル%;又は(c)グルタル酸残基40モル%、テレフタル酸残基60モル%及び1,4−ブタンジオール残基100モル%を含むポリ(テトラメチレングルタレート−co−テレフタレート);(a)コハク酸残基85モル%,テレフタル酸残基15モル%及び1,4−ブタンジオール残基100モル%又は(b)コハク酸残基70モル%、テレフタル酸残基30モル%及び1,4−ブタンジオール残基100モル%を含むポリ(テトラメチレンスクシネート−co−テレフタレート);コハク酸残基70モル%、テレフタル酸残基30モル%及びエチレングリコール残基100モル%を含むポリ(エチレンスクシネート−co−テレフタレート);並びに(a)アジピン酸残基85モル%、テレフタル酸残基15モル%及び1,4−ブタンジオール残基100モル%;又は(b)アジピン酸残基55モル%、テレフタル酸残基45モル%及び1,4−ブタンジオール残基100モル%を含むポリ(テトラメチレンアジペート−co−テレフタレート)。
【0029】
前記AAPE以外の、本発明に使用できる生分解性ポリエステルの具体例は、以下の表Aに記載する。その例としては、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)、例えば、ポリヒドロキシブチレート(PHB)、ポリヒドロキシブチレート−co−バレレート(PHBv)、ポリヒドロキシブチレート−co−オクタノエート(PHBO)、及びポリヒドロキシブチレート−co−ヘキサノエート(PHBHx);ポリカプロラクトン(PCL)及びポリ乳酸(PLA)が挙げられる。
【0030】
【表1】

【0031】
ヒドロキシカルボン酸及びそれらの種々の誘導体(例えば、環状エステル)から製造されるポリマーを含むポリエステルは、開環重合によって合成的に製造されると前に記載したが、多くのこれらの生分解性ポリエステルはまた、生物学的方法によって得ることもできる。本特許及び技術文献に記載された生物学的方法からこれまで得られた生分解性ポリエステルの具体例としては、PHB、PHBv、PHAs及びPLAが挙げられる。これらのポリエステルは、発酵、植物並びに遺伝子組み換え植物及び細菌からの採取を含む生物学的方法によって製造される。
【0032】
ポリエステルは10〜1,000個の反復単位、好ましくは15〜600個の反復単位を含んでなることができる。ポリエステルは好ましくはまた、フェノール/テトラクロロエタンの重量比60/40の溶液50ml中0.25gのポリエステルの濃度を用いて25℃の温度で測定されたインヘレント粘度が典型的には0.4〜2.0dL/gの範囲内である。インヘレント粘度の他の例は0.5〜1.4dL/g及び0.6〜1.0dL/gである。
【0033】
ポリエステルは、場合によっては、分岐剤の残基を含むことができる。分岐剤の重量%範囲は、ポリエステルの総重量に基づき、0〜2モル%、好ましくは0.1〜1重量%、そして最も好ましくは0.1〜0.5重量%である。分岐剤は好ましくは50〜5000、より好ましくは92〜3000の重量平均分子量及び3〜6の官能基を有する。例えば分岐剤は、3〜6個のヒドロキシル基を有するポリオール、3〜4個のカルボキシル基(若しくはエステル形成性等価基)を有するポリカルボン酸又は合計3〜6個のヒドロキシル及びカルボキシル基を有するヒドロキシ酸のエステル化残基であることができる。
【0034】
分岐剤として使用できる代表的な低分子量ポリオールとしては以下のものが挙げられる:グリセロール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ポリエーテルトリオール、グリセロール、1,2,4−ブタントリオール、ペンタエリスリトール、1,2,6−ヘキサントリオール、ソルビトール、1,1,4,4−テトラキス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート及びジペンタエリスリトール。分岐剤として使用できる、より高分子量のポリオール(MW 400〜3000)の例は、炭素数2〜3のアルキレンオキシド、例えばエチレンオキシド及びプロピレンオキシドをポリオール開始剤と縮合させることによって得られるトリオールである。分岐剤として使用できる代表的なポリカルボン酸としては、ヘミメリット酸、トリメリット酸(1,2,4−ベンゼントリカルボン酸)及び無水物、トリメシン酸(1,3,5−ベンゼントリカルボン酸)、ピロメリット酸及び無水物、ベンゼンテトラカルボン酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、1,1,2,2−エタンテトラカルボン酸、1,1,2−エタントリカルボン酸、1,3,5−ペンタントリカルボン酸及び1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸が挙げられる。酸はそれ自体を使用できるが、好ましくはそれらの低級アルキルエステル、又は環状無水物を形成できる場合にはそれらの環状無水物の形態で使用する。分岐剤として代表的なヒドロキシ酸としては、リンゴ酸、クエン酸、酒石酸、3−ヒドロキシグルタル酸、ムチン酸、トリヒドロキシグルタル酸、4−カルボキシフタル酸無水物、ヒドロキシイソフタル酸及び4−(β−ヒドロキシエチル)フタル酸が挙げられる。このようなヒドロキシ酸は、3個又はそれ以上のヒドロキシル及びカルボキシル基の組合せを含む。特に好ましい分岐剤としては、トリメリット酸、トリメシン酸、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン及び1,2,4−ブタントリオールが挙げられる。
【0035】
本発明のポリエステルはまた、それらの溶融粘度を増加させる1種又はそれ以上のイオン含有モノマーを含むことができる。このイオン含有モノマーは、スルホイソフタル酸の塩又はその誘導体から選ばれることができる。この型のモノマーの典型的な例は、ソジオスルホイソフタル酸又はソジオスルホイソフタル酸のジメチルエステルである。イオン含有モノマーの濃度範囲の例は、酸残基の総モルに基づき、0.3〜5.0モル%及び0.3〜2.0モル%である。
【0036】
本発明の分岐AAPEの一例は、1,4−ブタンジオール残基100モル%、テレフタル酸残基43モル%及びアジピン酸残基57モル%を含み且つ0.5重量%のペンタエリスリトールで分岐させられたポリ(テトラメチレンアジペート−co−テレフタレート)である。このAAPEは、アジピン酸ジメチル、テレフタル酸ジメチル、ペンタエリスリトール及び1,4−ブタンジオールのエステル交換及び重縮合によって製造できる。このAAPEは、190℃において1時間、200℃において2時間、210℃において1時間、次いで250℃において1,5時間、真空下で、最初はチタンテトライソプロポキシドとして存在するTi 100ppmの存在下においてモノマーを加熱することによって製造できる。
【0037】
分岐AAPEの別の例は、1,4−ブタンジオール残基100モル%、テレフタル酸残基45モル%及びアジピン酸残基55モル%を含み且つピロメリット酸二無水物0.3重量%で分岐させられたポリ(テトラメチレンアジペート−co−テレフタレート)である。このAAPEは、押出機を用いて線状ポリ(テトラメチレンアジペート−co−テレフタレート)をピロメリット酸二無水物と共に反応押出させることによって製造する。
【0038】
本発明のポリエステルはまた、ポリエステルの総重量に基づき、0〜5重量%の1種又はそれ以上の連鎖延長剤を含むことができる。代表的な連鎖延長剤は、米国特許第5,817,721号に開示されたようなジビニルエーテル、又は例えば、米国特許第6,303,677号に開示されたようなジイソシアネートである。代表的なジビニルエーテルは、1,4−ブタンジオールジビニルエーテル、1,5−ヘキサンジオールジビニルエーテル及び1,4−シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテルである。代表的なジイソシアネートは、トルエン2,4−ジイソシアネート、トルエン2,6−ジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、ナフタレン−1,5−ジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート及びメチレンビス(2−イソシアナトシクロヘキサン)である。好ましいジイソシアネートはヘキサメチレンジイソシアネートである。重量%の範囲は、好ましくは、ポリエステルの総重量%に基づき、0.3〜3.5重量%、最も好ましくは0.5〜2.5重量%である。また、基本的には、3以上の官能価を有するイソシアヌレート及び/又ビウレア基を含むことができる三官能価イソシアネート化合物を用いること、又はジイソシアネート化合物の代わりに一部分トリ−又はポリイソシアネートを用いることも可能である。
【0039】
本発明のポリエステルは、典型的な重縮合反応条件を用いて、適当なジカルボン酸、ヒドロキシカルボン酸、ラクトン、エステル、無水物又は塩、適当なジオール又はジオール混合物及び任意の分岐剤から容易に製造できる。これらは、連続、半連続及び回分操作様式で製造でき、種々の反応器型を用いることができる。適当な反応器型の例としては、攪拌槽型反応器、連続攪拌槽型反応器、スラリー反応器、管状反応器、ワイプドフィルム(wiped-film)反応器、流下膜式(falling film)反応器又は押出反応器が挙げられるが、これらに限定されるものではない。ここで使用する用語「連続」とは、連続的に反応体が投入されると同時に生成物が回収される方法を意味する。「連続」とは、方法が、「回分」法とは異なり、実質的又は完全に連続的に実施されることを意味する。「連続」は、例えば始動、反応器のメインテナンス又は定期シャットダウン期間による、方法の連続性における正常な中断を妨げることは意味しない。ここで使用する用語「回分」法は、全ての反応体を反応器に添加してから、所定の反応過程に従って加工し、その間には反応器への材料の供給も除去も行わない方法を意味する。用語「半連続」は、反応体の一部を方法の最初に装入し且つ残りの反応体を反応の進行に従って連続的に供給する方法を意味する。或いは、半連続法はまた、1種又はそれ以上の生成物を反応の進行に従って連続的に除去する以外は、全ての反応体を方法の最初に添加する回分法と同様な方法を含むことができる。本発明のポリエステルに関しては、方法は、経済的理由から、また、高温で過剰に長い時間、反応器中に滞留させるとポリエステルは外観が悪化するおそれがあるのでポリマーのより良い発色を生じるために、連続法として行うのが有利である。
【0040】
本発明のポリエステルは、当業者に知られた方法、例えば、米国特許第2,012,267号に記載された方法によって製造する。この特許には、これらの方法は、特にAAPEの製造に関して例示されている。この重合反応は通常、150℃〜300℃の温度において重縮合触媒、例えば、アルコキシチタン化合物、アルカリ金属水酸化物及びアルコラート、有機カルボン酸の塩、アルキル錫化合物、金属酸化物などの存在下で実施する。触媒は典型的に、反応体の総重量に基づき、10〜1000ppmの量で使用する。
【0041】
例えば、ジオールとジカルボン酸との反応は、従来のポリエステル重合条件を用いて実施できる。例えば、エステル交換反応によって、即ちエステル型のジカルボン酸成分からポリエステルを製造する場合には、反応方法は2工程を含むことができる。第1工程においては、ジオール成分とジカルボン酸成分、例えばテレフタル酸ジメチルとを高温で、典型的には150℃〜250℃で、0.0kPaゲージ〜414kPaゲージ(60ポンド/平方インチ,「psig」)の範囲の圧力において0.5〜8時間反応させる。好ましくはエステル交換反応の温度は180℃〜230℃で1〜4時間であり、好ましい圧力は103kPaゲージ(15psig)〜276kPaゲージ(40psig)の範囲である。その後、反応生成物をより高温において減圧下で加熱して、ジオールを除去しながらポリエステルを生成させる。ジオールは、これらの条件下で容易に揮発し、系から除去される。この第2の工程、即ち重縮合工程は、より高い真空下で一般には230℃〜350℃、好ましくは250℃〜310℃、最も好ましくは260℃〜290℃の範囲の温度において0.1〜6時間、又は好ましくは0.2〜2時間、インヘレント粘度によって測定される所望の重合度を有するポリマーが得られるまで続ける。重縮合工程は、53kPa(400トル)〜0.013kPA(0.1トル)の範囲の減圧下で実施できる。両段階において攪拌又は適当な条件を用いて、反応混合物の充分な熱移動及び表面更新を保証する。両段階の反応速度は、適当な触媒、例えば四塩化チタン、二酢酸マンガン、酸化アンチモン、ジブチル錫ジアセテート、塩化亜鉛又はそれらの組合せによって増加させる。米国特許第5,290,631号に記載されたのと同様な3段階製造法も、酸及びエステルの混合モノマー供給材料を使用する場合には特に使用できる。例えば典型的な脂肪族−芳香族コポリエステル、テレフタル酸残基を30モル%含むポリ(テトラメチレングルタレート−co−テレフタレート)は、グルタル酸ジメチル、テレフタル酸ジメチル及び1,4−ブタンジオールを、最初はチタンテトライソプロポキシドとして存在するTi 100ppmの存在下において真空下で、最初に200℃で1時間、次いで245℃で0.9時間加熱することによって製造できる。
【0042】
エステル交換反応によるジオール成分とジカルボン酸成分との反応の完了を保証するために、ジカルボン酸成分1モルに対してジオール成分1.05〜2.5モルを使用するのが場合によっては望ましい。しかし、当業者ならば、ジオール成分対ジカルボン酸成分の比は一般には反応プロセスが行われる反応器の設計によって決定されることがわかるであろう。
【0043】
直接エステル化による、即ち、酸型のジカルボン酸成分からのポリエステルの製造において、ポリエステルは、ジカルボン酸又はジカルボン酸の混合物とジオール成分又はジオール成分の混合物及び場合によっては分岐モノマー成分とを反応させることによって生成する。この反応は7kPaゲージ(1psig)〜1379kPaゲージ(200psig)、好ましくは689kPa(100psig)未満の圧力において実施して、1.4〜10の平均重合度を有する低分子量ポリエステル生成物を生成する。直接エステル化反応において使用する温度は典型的に、180℃〜280℃、より好ましくは220℃〜270℃の範囲である。この低分子量ポリマーは次に、重縮合反応によって重合できる。
【0044】
ポリエステルの他に、本発明のポリエステル組成物は、カレンダーロールへのポリエステル組成物の粘着を防止するのに有効な剥離剤を含む。ここで使用する用語「有効な」とは、ポリエステル組成物が、ロールの周囲に巻き付くこともロール表面にポリエステルの過剰な層を生じることもなく、カレンダーロール間を自由に通過することを剥離剤が可能にすることを意味する。ポリエステル組成物中に使用する剥離剤の量は、典型的には、ポリエステル組成物の総重量%に基づき、0.1〜2重量%である。剥離剤の最適使用量は、当業界でよく知られた要因によって決定され、装置、材料、プロセス条件及びフィルム厚の変動に左右される。剥離剤レベルの更なる例は、0.1〜1重量%、0.1〜0.8重量%及び0.1〜0.5重量%である。本発明の剥離剤の例としては以下のものが挙げられる。脂肪酸アミド、例えばエルシルアミド及びステアロアミド;有機酸の金属塩、例えば、ステアリン酸カルシウム及びステアリン酸亜鉛;脂肪酸、例えばステアリン酸、オレイン酸及びパルミチン酸;脂肪酸塩;脂肪酸エステル;炭化水素ワックス、例えばパラフィンワックス、燐酸エステル、ポリエチレンワックス及びポリ(プロピレン)ワックス;化学改質ポリオレフィンワックス;エステルワックス、例えばカルナウバワックス;グリセリンエステル、例えばグリセロールモノ−及びジ−ステアレート;タルク;微晶質シリカ;アクリルコポリマー(例えば、Rohm & Haasから入手可能なPARALOID(登録商標)K175);並びに前記1種又はそれ以上の組合せ。典型的には、添加剤は以下から選ばれた少なくとも1種の化合物を含む。エルシルアミド、ステアロアミド、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸、モンタン酸、モンタン酸エステル、モンタン酸塩、オレイン酸、パルミチン酸、パラフィンワックス、ポリエチレンワックス、ポリ(プロピレン)ワックス、カルナウバワックス、グリセロールモノステアレート又はグルセロールジステアレート。
【0045】
使用できる別の剥離剤は、炭素数が18より多い脂肪酸又は脂肪酸塩並びに炭素数が18より多い脂肪酸残基及び炭素数2〜28のアルコール残基を含むエステルワックスを含むことができる。脂肪酸又は脂肪酸塩のエステルワックスに対する比は、1:1又はそれ以上であることができる。別の例においては、脂肪酸及び脂肪酸塩のエステルワックスに対する比は2:1又はそれ以上である。
【0046】
脂肪酸は、例えばモンタン酸を含むことができ、脂肪酸の塩は、モンタン酸のナトリウム塩、モンタン酸のカルシウム塩又はモンタン酸のリチウム塩のうち1種又はそれ以上を含むことができる。別の例において、エステルワックスの脂肪酸残基はモンタン酸を含むことができる。エステルワックスのアルコール残基は、炭素数が好ましくは2〜28である。アルコール残基の例としては、モンタニルアルコール、エチレングリコール、ブチレングリコール、グリセロール及びペンタエリスリトールから選ばれた1種又はそれ以上のヒドロキシル化合物の残基が挙げられる。剥離剤はまた、例えば水酸化カルシウムのような塩基で部分鹸化されたエステルワックスを含むことができる。
【0047】
ポリエステル組成物は、また、燐含有難燃剤を含むことができるが、難燃剤の存在は本発明には重要ではない。燐含有難燃剤は、ポリエステルと混和性でなければならない。ここで使用する用語「混和性(miscible)」は、難燃剤とポリエステルとが混ざり合って、加工条件又は使用条件下で多相に分離しない安定な混合物を形成することを意味するものと理解する。従って、用語「混和性」は、難燃剤及びポリエステルが真溶液を形成する「溶解性(soluble)」混合物、及び難燃剤とポリエステルとの混合物が必ずしも真溶液を形成するのではなく、安定なブレンドを単に形成することを意味する「相溶性(compatible)」混合物の両者を含むものとする。好ましくは燐含有化合物はハロゲン化されていない有機化合物、例えば有機置換基を含む燐の酸のエステルである。難燃剤は公知の広範囲の燐化合物、例えばホスフィン類、亜燐酸エステル、亜ホスフィン酸エステル、亜ホスホン酸エステル、ホスフィン酸エステル、ホスホン酸エステル、ホスフィンオキシド、及び燐酸エステルを含んでなることができる。燐含有難燃剤の例としては以下のものが挙げられる。燐酸トリブチル、燐酸トリエチル、トリ−ブトキシエチルホスフェート、t−ブチルフェニルジフェニルホスフェート、2−エチルヘキシル=ジフェニルホスフェート、エチルジメチルホスフェート、イソデシルジフェニルホスフェート、トリラウリルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、t−ブチルフェニルジフェニルホスフェート、レゾルシノールビス(ジフェニルホスフェート)、トリベンジルホスフェート、フェニルエチルホスフェート、トリメチルチオノホスフェート、フェニルエチルチオノホスフェート、ジメチルメチルホスホネート、ジエチルメチルホスホネート、ジエチルペンチルホスホネート、ジラウリルメチルホスホネート、ジフェニルメチルホスホネート、ジベンジルメチルホスホネート、ジフェニルクレジルホスホネート、ジメチルクレジルホスホネート、ジメチルメチルチオノホスホネート、フェニルジフェニルホスフィネート、ベンジルジフェニルホスフィネート、メチルジフェニルホスフィネート、トリメチルホスフィンオキシド、トリフェニルホスフィンオキシド、トリベンジルホスフィンオキシド、4−メチルジフェニルホスフィンオキシド、トリエチルホスファイト、トリブチルホスファイト、トリラウリルホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリベンジルホスファイト、フェニルジエチルホスファイト、フェニルジメチルホスファイト、ベンジルジメチルホスファイト、ジメチルメチルホスホナイト、ジエチルペンチルホスホナイト、ジフェニルメチルホスホナイト、ジベンジルメチルホスホナイト、ジメチルクレジルホスホナイト、メチルジメチルホスフィナイト、メチルジエチルホスフィナイト、フェニルジフェニルホスフィナイト、メチルジフェニルホスフィナイト、ベンジルジフェニルホスフィナイト、トリフェニルホスフィン、トリベンジルホスフィン及びメチルジフェニルホスフィン。
【0048】
本発明の燐含有難燃剤を記載するのに用いる用語「燐の酸(phosphorus acid)」は、燐酸、炭素−燐直接結合を有する酸、例えばホスホン酸及びホスフィン酸のような鉱酸、並びに少なくとも1つの残存非エステル化酸基を含む部分エステル化された燐の酸、例えば燐酸の一次及び二次エステルなどを含む。本発明に使用できる典型的な燐の酸としては以下のものが挙げられるが、これに限定されるものではない。ジベンジル燐酸、ジブチル燐酸、ジ(2−エチルヘキシル)燐酸、ジフェニル燐酸、メチルフェニル燐酸、フェニルベンジル燐酸、ヘキシルホスホン酸、フェニルホスホン酸、トリルホスホン酸、ベンジルホスホン酸、2−フェニルエチルホスホン酸、メチルヘキシルホスフィン酸、ジフェニルホスフィン酸、フェニルナフチルホスフィン酸、ジベンジルホスフィン酸、メチルフェニルホスフィン酸、フェニル亜ホスホン酸、トリル亜ホスホン酸、ベンジル亜ホスホン酸、ブチル燐酸、2−エチルヘキシル燐酸、フェニル燐酸、クレジル燐酸、ベンジル燐酸、フェニル亜リン酸、クレジル亜リン酸、ベンジル亜リン酸、ジフェニル亜リン酸、フェニルベンジル亜リン酸、ジベンジル亜リン酸、メチルフェニル亜リン酸、フェニルフェニルホスホン酸、トリルメチルホスホン酸、エチルベンジルホスホン酸、メチルエチル亜ホスホン酸、メチルフェニル亜ホスホン酸、及びフェニルフェニル亜ホスホン酸。難燃剤は、典型的には、燐酸のモノエステル、ジエステル及びトリエステルから選ばれた少なくとも1種の燐含有化合物を含む。別の例において、難燃剤はレゾルシノールビス(ジフェニルホスフェート)(ここでは「RDP」と略する)を含む。
【0049】
難燃剤は、ポリエステル組成物の総重量に基づき、5重量%〜40重量%の濃度でポリエステル組成物に添加することができる。難燃剤レベルの他の例は5重量%〜35重量%、5重量%〜30重量%及5重量%〜25重量%である。
【0050】
ロール上における溶融又は半溶融材料の加工時における酸化分解を防ぐために、酸化安定剤もまた、本発明のポリエステル組成物中に含ませることができる。このような安定剤としては、エステル、例えばジステアリルチオジプロピオネート若しくはジラウリルチオジプロピオネート;フェノール系安定剤、例えばCiba−Geigy AGから入手可能なIRGANOX(登録商標)1010、Ethyl Corporationから入手可能なETHANOX(登録商標)330及びブチル化ヒドロキシトルエン;並びに燐含有安定剤、例えばCiba−Geigy AGから入手可能なIRGAFOS(登録商標)及びGE Specialty Chemicalsから入手可能なWESTON(登録商標)安定剤が挙げられる。これらの安定剤は、単独でも組合せても使用できる。
【0051】
別の態様において、本発明は、1種又はそれ以上のポリエステル及び剥離剤を含むポリエステル組成物(ポリエステルの少なくとも1種は5分未満の溶融状態からの半結晶化時間を有する)を、各ポリエステルの融点範囲内の最大温度においてカレンダー加工することを含む、フィルム又はシートの製造方法を提供する。二酸、ジオール、インヘレント粘度、分岐用モノマー、連鎖延長剤、剥離剤、加工助剤及び難燃剤のようなポリエステルの種々の実施態様は、本発明の他の実施態様に関して前に記載した通りである。用語「融点範囲」は、前に定義した通りである。このポリエステルは、溶融状態からの半結晶化時間が5分未満である。別の例において、ポリエステルの半結晶化時間は3分未満である。更に別の実施態様において、組成物は、溶融状態からの半結晶化時間が3分未満であるAAPEを含む。更に別の例において、本発明の方法は、溶融状態からの半結晶化時間が5分未満であるポリエステル及び剥離剤から本質的になるポリエステル組成物を含むことができる。前述のように、ここで使用する用語「から本質的になる(consisting essentially of)」は、ポリエステル及び剥離剤を前記ポリエステルの融点範囲内の最大温度においてカレンダー加工し且つ前記ポリエステルが5分未満の半結晶化時間を有する方法を包含するのに用いる。この用語は、この用語が言及する方法の本質的な特性を実質的に変える任意の要素を除外するものと理解する。例えば本発明のフィルム及びポリエステル組成物は、カレンダー加工プロセスの間中、ポリエステルの融点範囲もほとんど変えないし、ポリエステルの半結晶化時間も5分を超えるようには変えない他の添加剤、例えば難燃剤、酸化防止剤、着色剤などを含むことができる。前に記載したように、ポリエステル自体がカレンダー加工の間中、その融点範囲内でないようにポリエステルの融点範囲を変えることが予想される添加剤又は追加ポリマーの使用は、本発明から除外する。
【0052】
本発明のポリエステル組成物は更に、必要に応じて、染料、顔料及び加工助剤、例えば充填剤、艶消し剤、粘着防止剤、帯電防止剤、発泡剤、繊維、炭素繊維、ガラス、耐衝撃性改良剤、カーボンブラック、タルク、TiO2などを含むことができる。ポリエステル及びカレンダー加工製品に所望のニュートラルな色相及び/又は明度を与えるために、トナーと称することもある着色剤を添加することができる。好ましくは、ポリエステル組成物はまた、剥離剤の他に、組成物の表面特性を変えるための及び/又は流れを向上させるための1種又はそれ以上の加工助剤を0〜30重量%含むことができる。加工助剤の代表的な例としては、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、マイカ、ウォラストナイト、カオリン、珪藻土、TiO2、NH4Cl、シリカ、酸化カルシウム、硫酸ナトリウム及び燐酸カルシウムが挙げられる。本発明のポリエステル組成物内の加工助剤レベルの更なる例は5〜25重量%及び10〜20重量%である。好ましくは、加工助剤はまた、生分解促進剤である。即ち、加工助剤は環境において生分解速度を増加させるか又は速める。本発明者らは、堆肥化環境のpHを変える働きをすることもできる加工助剤、例えば炭酸カルシウム、水酸化カルシウム、酸化カルシウム、酸化バリウム、水酸化バリウム、珪酸ナトリウム、燐酸カルシウム、酸化マグネシウムなどが、生分解プロセスも促進できることを見出した。本発明に関しては、好ましい加工助剤は炭酸カルシウムである。
【0053】
本発明の方法から得られるフィルム又はシートは、高い透明度を示すことができる。更に、本発明から得られるフィルム又はシートは、従来の押出又はメルトブロー法によって製造される同一組成を有するフィルムに比較して予想外に高い強度及び靭性を示すことができる。カレンダー加工フィルムはまた、実質的に同じ組成を有する溶融流延フィルムに比べて改善された熱的性質及び強度を示すことができる。例えば、本発明のカレンダー加工フィルムは、実質的に同じ組成を有する溶融流延フィルムより高い耐熱性を有することができる。「より高い耐熱性」とは、カレンダー加工フィルムが、実質的に同じ組成を有する溶融流延フィルムより高いピーク融解温度を有することを意味する。ここで使用する「より高いピーク融解温度」は、カレンダー加工フィルムが、その融点範囲内の、実質的に同じ組成を有する溶融流延フィルムのピーク融点温度よりも高い温度において第2融点ピークを示すことを意味する。本発明のカレンダー加工フィルムに第2のより高いピーク融点が存在することは、その耐熱性を向上させる、フィルム内に第2のより高い融点を有する結晶相が存在することを示す。
【0054】
従来のカレンダー加工方法及び装置を用いて、ポリエステル組成物のカレンダー加工が可能である。本発明の方法において、ポリエステル組成物は半結晶性の溶融された形態をなす。これを、80℃〜200℃の温度において少なくとも2つのカレンダーロールの間の圧縮ニップに通す。典型的には、ポリエステルは剥離剤、難燃剤及び他の成分とブレンドする。混合成分はニーダー又は押出機中でブレンドし且つ軟化させる。熱、剪断作用及び圧力によって、乾燥粉末を溶融させて、均一な溶融材料を形成する。押出機は、溶融材料を連続法でカレンダーラインのカレンダー部の上部の第1加熱カレンダーロールと第2加熱カレンダーロールとの間に供給できる。典型的に、3つのニップ又は間隙を形成するには4つのロールを用いる。例えば、ロールはL字形、逆L字形又はZ配置で配置できる。ロールは、種々のフィルム幅に対応するように寸法が変化する。ロールは別個の温度制御及び速度制御を有する。材料は、供給ニップと称する、第1の2つのロール間のニップを通って進む。この2つのロールは、ロールの幅全体に材料を広げるのを助けるために、それぞれ反対の方向に回転する。材料は第1ロールと2ロールの間、第2ロールと第3ロールの間、第3ロールと第4ロールの間などを曲がりくねって進む。ロール間の間隙は、材料が進むにつれてロールセット間で薄くなるように、ロールのそれぞれの間で厚さが減少する。従って、得られるフィルム又はシートは、加熱ロール間の圧縮ニップにポリエステル組成物を通すことによって生成される均一な厚さを有する。実際には、ポリエステル組成物は、ロールを隔てるニップ間で締め付けられる。カレンダーロール間の連続ニップはそれぞれ、最終フィルム又はシートゲージが得られるまでフィルム厚を減少させる。
【0055】
ロールに典型的な最大加工温度は典型的に80℃〜200℃、好ましくは80℃〜160℃、より好ましくは90℃〜150℃の範囲であろう。加水分解によって不安定な一部のポリエステルに関しては、加水分解によるポリマーの分解を防ぐために、ポリエステル樹脂組成物の予備乾燥又は加工中における過剰な水分のガス抜きが望ましい。カレンダー部を通過後、材料は別の1組のロールを通って進み、そこで引伸ばされ且つ徐々に冷却されて、フィルム又はシートを形成する。材料はまた、冷却前にエンボス加工又はアニールすることもできる。次いで、冷却された材料をマスターロール上に巻き付ける。カレンダー加工方法の概要は、Jim Butschli,Packaging World,26〜28頁,June 1997及びW.V.Titow,PVC Technology,4th Edition,803〜848頁(1984),Elsevier Publishing Co.に開示されている。
【0056】
ポリマーメルトプローブ温度又はポリマーメルト温度とも称される場合もある、カレンダーロールを通過する際のポリマーメルトの温度は典型的には、カレンダーロールを通過する際にポリマーが遭遇する最大温度であり、温度プローブ又は赤外線センサーによって測定されることが多い。この温度は典型的に、カレンダー加工を行うために慎重に制御する。メルト温度は通常、摩擦熱及びポリマーへの直接熱移動の組合せを制御することによって制御する。摩擦熱は、ポリマーの溶融粘度及びカレンダーロールの回転速度(通常は回転数/分又はRPMで測定される)の関数である。ポリマーへの直接熱移動は通常、加熱されたカレンダーロールを用いることによって又はロールに供給されるポリマーを予熱することによって行う。
【0057】
各ポリマーに関してポリマーメルト温度をカスタマイズするのが有利である。理論によって拘束するつもりはないが、カレンダー加工は、ポリマーメルト温度(又はカレンダー加工プロセスの間にポリエステル組成物が遭遇する最大温度)が、メルト中で溶融ポリマーと非溶融(微結晶)ポリエステルとの平衡が保たれている点又は範囲に達している場合に順調に行われる。この温度は、ポリエステルの融点範囲の上限温度未満であるか、或いは、1種より多いポリエステルが存在する場合には、組成物の各ポリエステルの融点範囲の上限よりも低い。好ましくは、最大温度は、ポリエステルの融点範囲内、又は1種より多いポリエステルが存在する場合には組成物の各ポリエステルの融点範囲内である。この平衡は、少量のポリエステルを固体(非溶融)形態に保持することによって有効範囲の溶融強度及び結晶化速度を達成できる。この少量の固体ポリエステルが、熱的に可逆性な架橋結合をもたらす可能性があり、それが一部のポリエステル、例えば一部の生分解性ポリエステルの通常は低い溶融強度を増強する(増加させる)。更に、この少量の固体ポリエステルは、結晶化速度を増加させる(予め形成された核生成部位を提供することによって)可能性があり、それがアウトフィードロールの粘着の問題を減少させ且つ最終フィルムに見られる、熱的に完成された(アニールされた)結晶領域を提供する可能性がある。結晶領域は、最終フィルムの耐熱性を向上させる。
【0058】
ポリエステルメルトがカレンダー加工可能な温度に達したら、ポリマーメルトはその温度の±15℃以内、好ましくはその温度の±10℃以内、又はより好ましくはその温度の±5℃以内に保持するのが望ましい。好ましくは、ポリマーメルトプローブ温度は、80℃〜160℃の範囲であり、カレンダーロール温度は80℃〜130℃の範囲である。ポリマーメルト温度の制御及び前記剥離剤の添加の組合せにより、半結晶性ポリエステルのカレンダー加工が可能になる。
【0059】
本発明の別の態様は、
(A)(i)炭素数2〜8の脂肪族ジオール、炭素数2〜8のポリアルキレンエーテルグリコール及び炭素数4〜12の脂環式ジオールからなる群から選ばれた1種又はそれ以上の置換又は非置換の直鎖又は分岐鎖ジオールの残基を含むジオール残基(置換ジオールは、ハロゲン、C6〜C10アリール及びC1〜C4アルコキシから独立して選ばれた1〜4個の置換基を含む)と
(ii)(a)二酸残基の総モルに基づき、35〜99モル%の、炭素数2〜12の脂肪族ジカルボン酸及び炭素数5〜10の脂環式ジカルボン酸からなる群から選ばれた1種又はそれ以上の置換又は非置換の直鎖又は分岐鎖非芳香族ジカルボン酸の残基(置換非芳香族ジカルボン酸は、ハロゲン、C6〜C10アリール及びC1〜C4アルコキシから選ばれた1〜4個の置換基を含む);並びに
(b)二酸残基の総モルに基づき、1〜65モル%の、炭素数6〜10の1種又はそれ以上の置換又は非置換の芳香族ジカルボン酸の残基(置換芳香族ジカルボン酸は、ハロゲン、C6〜C10アリール及びC1〜C4アルコキシから選ばれた1〜4個の置換基を含む)
を含む二酸残基
を含んでなる、組成物の総重量に基づき、少なくとも50重量%のAAPE(AAPEは、溶融状態からの半結晶化時間が5分未満のランダムコポリマーである);更に
(B)組成物の総重量に基づき、0.1〜2重量%の、脂肪酸アミド、有機酸金属塩、脂肪酸、脂肪酸塩、脂肪酸エステル、炭化水素ワックス、エステルワックス、燐酸エステル、化学改質ポリオレフィンワックス、グリセリンエステル及びアクリルコポリマーからなる群から選ばれた少なくとも1種の剥離剤
を含んでなるカレンダー加工用ポリエステル組成物である。
【0060】
前述のように、ポリエステルは、カレンダー加工のために可塑剤の添加が必要ないほど充分に柔軟性である。従って、本発明の一例において、ポリエステルは実質的に可塑剤を含まない。
【0061】
本発明の組成物は、前述のような二酸、ジオール、インヘレント粘度、分岐用モノマー、連鎖延長剤、剥離剤、加工助剤及び難燃剤のような種々の実施態様を包含するものと理解する。例えば、ジオール残基は、1,4−ブタンジオールの残基を含むことができ、二酸残基はアジピン酸及びテレフタル酸の残基を含むことができる。別の例において、AAPEは、アジピン酸残基50〜60モル%、テレフタル酸残基40〜50モル%及び1,4−ブタンジオール残基少なくとも95モル%を含む線状、分岐又は連鎖延長ポリエステルである。更なる例において、本発明の新規組成物のAAPEは、実質的にスルホネート基を含まない。これは、ポリエステルが、ポリエステルの物理的性質にかなりの影響を与えることが予想される、AAPEに意図的に添加されたスルホン化芳香族残基を含まないことを意味する。本発明のAAPEは典型的に、溶融状態からの半結晶化時間が5分未満である。半結晶化時間の追加の例は4分未満及び3分未満である。
【0062】
本発明のAAPEは生分解性であり、環境におけるそれらの崩壊及び生分解性を向上させるために生分解性添加剤を含むことができる。本発明のポリエステル組成物に組み込むことができる生分解性添加剤の代表的な例としては、微晶質セルロース、ポリビニルアルコール、熱可塑性澱粉、他の炭水化物及びそれらの組合せが挙げられる。例えば、ポリエステル組成物は、AAPEの他に、組成物の総重量に基づき、1〜40重量%の、熱可塑性澱粉、微晶質セルロース及びポリビニルアルコールから選ばれた少なくとも1種の生分解性添加剤を含むことができる。別の例において、ポリエステル組成物は、1〜30重量%の生分解性添加剤を含むことができる。生分解性添加剤レベルの他の例は5〜25重量%及び10〜20重量%である。生分解性添加剤は熱可塑性澱粉であることができる。熱可塑性澱粉は、無秩序な結晶構造を与えるためにエクストルージョンクッキングによって、ゼラチン化された澱粉である。ここで使用する「熱可塑性澱粉」は、例えば、Bastioli,C.Degradable Polymers,1995,Chapman & Hall:London、112〜137頁に記載されたような「ゼラチン化澱粉」及び「非構造化(destructured)澱粉」を含むものとする。「ゼラチン化」とは、澱粉顆粒が、水中で滑らかで粘稠な分散液を形成するほど充分に膨潤し且つ崩壊していることを意味する。ゼラチン化は、水又は水溶液の存在下で60℃の温度において加熱するような任意の公知の方法で行う。強アルカリの存在は、このプロセスを促進することが知られている。熱可塑性澱粉は、穀粒又は根菜作物、例えばトウモロコシ、小麦、米、ジャガイモ及びタピオカからの任意の未変性澱粉から、澱粉のアミロース及びアミロペクチン成分から、変性澱粉製品、例えば部分解重合澱粉及び誘導体化澱粉から、また澱粉グラフトコポリマーから製造できる。熱可塑性澱粉は、National Starch Companyから市販されている。
【0063】
このような添加剤の効果の1つは、ポリエステル組成物の生分解性を増大し且つ高濃度の種々の添加剤によって生じる生分解性の低下を補うことである。本発明のポリエステル、ポリマー組成物、フィルム及びシート、難燃剤並びに添加剤に関連してここで使用する用語「生分解性」は、本発明のポリエステル組成物、フィルム及びシートが、例えば、ASTM Standard Method D6340−98,”Standard Test Methods for Determining Aerobic Biodegradation of Radiolabeled Plastic Mateials in an Aqueous or Compost Environment”によって又はDIN Method 54900によって定義される適当で実証可能な時間長で環境の影響下において分解されることを意味する。ポリエステル、組成物、フィルム及びシートは、熱、水、空気、微生物及び他の要因の作用で、環境において最初に分子量が低下する。この分子量低下により、物理的性質(フィルム強度)が低下し、多くの場合に更にフィルムの破壊が起こる。生分解性ポリエステルの分子量が充分に低くなると、次に、モノマー及びオリゴマーが微生物によって同化される。好気的環境においては、これらのモノマー又はオリゴマーは最終的にCO2、H2O及び新しい細胞バイオマスまで酸化される。嫌気的環境においては、モノマー又はオリゴマーは最終的にCO2、H2、アセテート、メタン及び細胞バイオマスに転化される。生分解が上手くいくには、生分解性材料と活性な微生物個体群又は活性な微生物個体群によって生成される酵素との間で直接的な物理的接触が生じる必要がある。本発明のフィルム、シート、ポリエステル及びポリエステル組成物の分解に有用な活性微生物個体群は一般に、任意の都市下水若しくは工業排水処理施設又は堆肥化施設から入手できる。更に、生分解が上手くいくには、適当なpH、温度、酸素濃度、適切な栄養素及び水分レベルのようないくつかの最小物理化学的要件を満たすことが要求される。
【0064】
生分解性添加剤の他に、ポリエステル組成物は、更に0〜30重量%の1種又はそれ以上の加工助剤、例えば炭酸カルシウム、タルク、クレイ、マイカ、ウォラストナイト、カオリン、珪藻土、TiO2、NH4Cl、シリカ、酸化カルシウム、硫酸ナトリウム及び燐酸カルシウムを含むことができる。加工助剤はまた、生分解促進剤であることができる。前述のように、炭酸カルシウムは生分解促進剤でもある加工助剤の一例である。
【0065】
本発明の更に別の実施態様は、
(A)(i)1,4−ブタンジオール;1,3−プロパンジオール;エチレングリコール;1,6−ヘキサンジオール;ジエチレングリコール;又は1,4−シクロヘキサンジメタノールのうち1種又はそれ以上の残基を含むジオール残基と
(ii)(a)二酸残基の総モルに基づき、35〜95モル%の、グルタル酸、ジグリコール酸、コハク酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸及びアジピン酸からなる群から選ばれた1種又はそれ以上の非芳香族ジカルボン酸の残基;並びに
(b)二酸残基の総モルに基づき、5〜65モル%の、テレフタル酸及びイソフタル酸からなる群から選ばれた1種又はそれ以上の芳香族ジカルボン酸の残基
を含む二酸残基
を含んでなる、組成物の総重量に基づき、少なくとも50重量%のAAPE(AAPEは、溶融状態からの半結晶化時間が5分未満のランダムコポリマーであり、スルホネート基を実質的に含まない);更に
(B)組成物の総重量に基づき、0.1〜1重量%の、脂肪酸アミド、有機酸金属塩、脂肪酸、脂肪酸塩、脂肪酸エステル、炭化水素ワックス、エステルワックス、燐酸エステル、化学改質ポリオレフィンワックス、グリセリンエステル、タルク及びアクリルコポリマーからなる群から選ばれた少なくとも1種の剥離剤
を含んでなるカレンダー加工用ポリエステル組成物である。
【0066】
このポリエステル組成物は、前に既に記載し且つ例示した二酸、ジオール、インヘレント粘度、分岐用モノマー、連鎖延長剤、剥離剤、生分解性添加剤、加工助剤及び難燃剤の種々の実施態様を含むことができる。例えばAAPEのジオール残基が1,4−ブタンジオールの残基を含むことができ且つ二酸残基がアジピン酸及びテレフタル酸の残基を含むことができる。別の例において、ポリエステル組成物は、組成物の総重量に基づき、0.1〜1重量%の剥離剤を含むことができる。ポリエステル組成物中に存在できる剥離剤の他の代表的レベルとしては、0.1〜0.8重量%及び0.1〜0.5重量%が挙げられる。更に、ポリエステル組成物はカレンダー加工のために可塑剤を使用する必要がなく、このため、前述のように可塑剤を実質的に含まないことができる。
【0067】
ポリエステル組成物の種々の成分、例えば難燃剤、剥離剤、他の加工助剤及びトナーは、回分法、半連続法又は連続法でブレンドすることができる。小規模バッチは、カレンダー加工前に、当業者によく知られた強力混合装置、例えばバンバリーミキサー中で容易に製造できる。成分はまた、適当な溶媒中に溶解してブレンドできる。溶融ブレンド法は、コポリエステル、添加剤及び任意の追加非重合成分を、存在するポリエステルを半結晶性メルトに転化するのに充分な温度でブレンドすることを含む。ブレンドは冷却して、更なる使用のためにペレット化することもできるし、或いはこの溶融ブレンドをフィルム又はシートに直接カレンダー加工することもできる。ここで使用する「メルト」は、ポリエステルが半結晶性メルトの形態である組成物を意味する。ポリマー業界で一般的に知られたメルト混合法については、”Mixing and Compounding of Polymers”(I.Manas−Zloczower & Z.Tadmor編,Carl Hanser Verlag Publisher,1994,New York,N.Y.)を参照されたい。着色シート又はフィルムが望ましい場合には、顔料又は着色剤を、ジオールとジカルボン酸との反応の間にポリエステル混合物中に含ませることもできるし、或いは予備成形コポリエステルと溶融ブレンドすることもできる。着色剤を含ませる好ましい方法は、着色剤がポリエステル中に共重合され且つ組み込まれてポリエステルの色合いを向上させるように反応性基を有する熱安定性有機着色化合物を有する着色剤を用いるものである。例えば、青色及び赤色置換アントラキノン類を含む(これらに限定されない)反応性ヒドロキシル及び/又はカルボキシル基を有する染料のような着色剤をポリマー鎖中に共重合させることができる。染料を着色剤として使用する場合には、エステル交換又は直接エステル化反応後にポリエステル反応プロセスに添加することができる。
【実施例】
【0068】
本発明を更に以下の実施例によって例証及び説明する。
【0069】
例1〜10
二酸成分としてのアジピン酸とテレフタル酸との混合物及びジオール成分としての100モル%の1,4−ブタンジオールを含むAAPEを用いて、いくつかの脂肪族−芳香族ポリエステル組成物を製造した。融点範囲は、前に定義した通りであり、20℃/分の加熱速度で得られるDSC曲線から評価した。例1〜4のAAPEは、融点範囲が70〜130℃及び半結晶化時間が0.6分であった。表Iに示した例5及び7は、融点範囲が70〜135℃であった。例8及び9は、融点範囲が60〜135℃及び半結晶化時間が0.7分であった。アジピン酸及びテレフタル酸のモル%及び加工条件を表Iに示す。フィルムは、Dr.Collin機器搭載二本ロール機上で製造した。AAPEペレットを0.9重量%のワックス剥離剤{LICOWAX(登録商標)Sモンタン酸(Clariant Corporationから入手可能)とLICOWAX(登録商標)OP(Clariant Corporationから入手可能な、水酸化カルシウムで部分鹸化されたモンタン酸のブチレングリコールエステル)の重量比1:1のブレンド}と混合し、加熱ロールに直接加え、半結晶性メルトに加工した。最適の操作条件及び最高品質のフィルムを得るために、加工ロールの整定値温度は必要に応じて95〜145℃まで変化させた。フィルムは、押出によって加工された同一組成物のフィルム(例10)に比較してはるかに透明であった。更に、カレンダー加工フィルムは、容易に穴が開けられる押出加工材料に比較して、強靱であり且つ容易には穴を開けることができなかった(例えば、フィルムに親指を突き刺すことによって)。フィルムの物理的性質を表II及びIIIに示す。「ロール温度」は、カレンダーミルのロール温度整定値である。「Tg」は、カレンダー加工フィルムのガラス転移温度である。「Tc」は、ポリマーの結晶化温度である。「Tm1」及び「Tm2」は、フィルムのピーク融点であり:Tm2は、カレンダー加工フィルムにおいては観察されたが溶融流延フィルムにおいては存在しなかった第2ピーク融点である。熱的データのいくつかに関しては、2つの値を示してある。これらは、同一フィルムに関して2つの加熱サイクルを用いて観察した値を示す。
【0070】
【表2】

【0071】
【表3】

【0072】
【表4】

【0073】
例11〜15
ポリ乳酸(融点範囲125〜170℃及び半結晶化時間26.3分)、AAPE及び例1の剥離剤(RA)を含むいくつかのブレンドを、例1〜10に記載した方法に従って製造し且つカレンダー加工して、フィルムを形成した。組成物(重量%)及びカレンダー加工好条件を表IVに示す。例11のフィルムは透明であった。例12〜18は、AAPEの重量%が増加するにつれて、曇り価及び柔軟性の増加を示した。例14のフィルムは、ロール温度の整定値がより低いために、若干の溶融破壊を示した。例17においては、カレンダーロールへのフィルムの若干の粘着が観察された。例19のフィルムは極めて柔軟性であり、例18のフィルムよりも低い不透明度を示した。
【0074】
【表5】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
1種又はそれ以上の半結晶性ポリエステル及び剥離剤を含むポリエステル組成物を、1種又はそれ以上の各ポリエステルの融点範囲の上限温度より低い最高温度においてカレンダー加工することを含んでなるフィルム又はシートの製造方法。
【請求項2】
前記ポリエステル組成物がポリエステル及び剥離剤から本質的になる請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ポリエステル組成物が実質的に可塑剤を含まない請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記最高温度が1種又はそれ以上の各ポリエステルの融点範囲内である請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記1種又はそれ以上のポリエステルが生分解性である請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記1種又はそれ以上のポリエステルが、脂肪族−芳香族ポリエステル(AAPE)、ポリカプロラクトン、ポリ乳酸、ポリヒドロキシブチレート、ポリヒドロキシブチレート−バレレート、ポリブチレンスクシネート及びそれらのコポリマーからなる群から選ばれる請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記1種又はそれ以上のポリエステルの少なくとも1種が5分未満の溶融状態からの半結晶化時間を有する請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記最大温度が70〜170℃である請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記1種又はそれ以上のポリエステルがAAPEであり且つ前記AAPEが、
(A)炭素数2〜8の脂肪族ジオール、炭素数2〜8のポリアルキレンエーテルグリコール及び炭素数4〜12の脂環式ジオールからなる群から選ばれた1種又はそれ以上の置換又は非置換の直鎖又は分岐鎖ジオールの残基を含むジオール残基(置換ジオールはハロゲン、C6〜C10アリール及びC1〜C4アルコキシから独立して選ばれた1〜4個の置換基を含む)と
(B)(i)二酸残基の総モルに基づき、35〜99モル%の、炭素数2〜12の脂肪族ジカルボン酸及び炭素数5〜10の脂環式ジカルボン酸からなる群から選ばれた1種又はそれ以上の置換又は非置換の直鎖又は分岐鎖非芳香族ジカルボン酸の残基(置換非芳香族ジカルボン酸は、ハロゲン、C6〜C10アリール及びC1〜C4アルコキシから選ばれた1〜4個の置換基を含む);並びに
(ii)二酸残基の総モルに基づき、1〜65モル%の、炭素数6〜10の1種又はそれ以上の置換又は非置換の芳香族ジカルボン酸の残基(置換芳香族ジカルボン酸は、ハロゲン、C6〜C10アリール及びC1〜C4アルコキシから選ばれた1〜4個の置換基を含む)
を含む二酸残基
を含んでなるランダムコポリエステルである請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記非芳香族ジカルボン酸がグルタル酸、ジグリコール酸、コハク酸、アジピン酸及び1,4−シクロヘキサンジカルボン酸からなる群から選ばれ;且つ前記芳香族ジカルボン酸がテレフタル酸、イソフタル酸及び2,6−ナフタレンジカルボン酸からなる群から選ばれる請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記ジオールが1,4−ブタンジオール;1,3−プロパンジオール;エチレングリコール;1,6−ヘキサンジオール;ジエチレングリコール;及び1,4−シクロヘキサンジメタノールからなる群から選ばれる請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記二酸残基がアジピン酸及びテレフタル酸の残基を含み;前記ジオール残基が1,4−ブタンジオールの残基を含み;且つ前記AAPEが3分未満の溶融状態からの半結晶化時間を有する請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前期最大温度が90〜150℃であり且つ前記AAPEの融点範囲内である請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記1種又はそれ以上のポリエステルが、1種又はそれ以上の前記ポリエステルの総重量に基づき、0〜2重量%の、グリセロール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ポリエーテルトリオール、グリセロール、1,2,4−ブタントリオール、ペンタエリスリトール、1,2,6−ヘキサントリオール、ソルビトール、1,1,4,4−テトラキス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、ジペンタエリスリトール、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、トリメシン酸、トリメリット酸、トリメリット酸無水物、ピロメリット酸、ピロメリット酸無水物、4−カルボキシフタル酸無水物及びヒドロキシイソフタル酸からなる群から選ばれた1種又はそれ以上の分岐剤の残基;並びに1種又はそれ以上の前記ポリエステルの総重量に基づき、0〜5重量%の、トルエン2,4−ジイソシアネート、トルエン2,6−ジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、ナフタレン−1,5−ジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート及びメチレンビス(2−イソシアナトシクロヘキサン)、1,4−ブタンジオールジビニルエーテル、1,5−ヘキサンジオールジビニルエーテル及び1,4−シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテルからなる群から選ばれた1種又はそれ以上の連鎖延長剤を更に含む請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記剥離剤が、前記組成物の総重量に基づき、0.1〜2重量%であり且つ脂肪酸アミド、有機酸金属塩、脂肪酸、脂肪酸塩、脂肪酸エステル、炭化水素ワックス、エステルワックス、燐酸エステル、化学改質ポリオレフィンワックス、グリセリンエステル、タルク及びアクリルコポリマーからなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物を含む請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記剥離剤が、エルシルアミド、ステアロアミド、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸、モンタン酸、モンタン酸エステル、モンタン酸塩、オレイン酸、パルミチン酸、パラフィンワックス、ポリエチレンワックス、ポリ(プロピレン)ワックス、カルナウバワックス、グリセロールモノステアレート及びグルセロールジステアレートからなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物を含む請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記剥離剤が、(i)炭素数18より多い脂肪酸又は脂肪酸塩及び(ii)炭素数18より多い脂肪酸残基及び炭素数2〜28のアルコール残基を含むエステルワックスを含んでなり、且つ前記脂肪酸又は前記脂肪酸塩の前記エステルワックスに対する比が1:1又はそれ以上である請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記脂肪酸がモンタン酸を含み;前記脂肪酸塩がモンタン酸のナトリウム塩、モンタン酸のカルシウム塩及びモンタン酸のリチウム塩からなる群から選ばれた1種又はそれ以上の塩を含み;且つ前記エステルワックスの脂肪酸残基がモンタン酸を含む請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記エステルワックスのアルコール残基がモンタニルアルコール、エチレングリコール、ブチレングリコール、グリセロール及びペンタエリスリトールからなる群から選ばれた1種又はそれ以上のヒドロキシル化合物の残基を含む請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記組成物が、前記組成物の総重量に基づき、5〜40重量%の、燐酸のモノエステル、ジエステル及びトリエステルからなる群から選ばれた少なくとも1種の難燃剤を更に含み且つ前記難燃剤が前記1種又はそれ以上のポリエステルの少なくとも1種と混和性である請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記難燃剤がレゾルシノールビス(ジフェニルホスフェート)を含む請求項20に記載の方法。
【請求項22】
(A)(i)炭素数2〜8の脂肪族ジオール、炭素数2〜8のポリアルキレンエーテルグリコール及び炭素数4〜12の脂環式ジオールからなる群から選ばれた1種又はそれ以上の置換又は非置換の直鎖又は分岐鎖ジオールの残基を含むジオール残基(置換ジオールは、ハロゲン、C6〜C10アリール及びC1〜C4アルコキシから独立して選ばれた1〜4個の置換基を含む)と
(ii)(a)二酸残基の総モルに基づき、35〜99モル%の、炭素数2〜12の脂肪族ジカルボン酸及び炭素数5〜10の脂環式ジカルボン酸からなる群から選ばれた1種又はそれ以上の置換又は非置換の直鎖又は分岐鎖非芳香族ジカルボン酸の残基(置換非芳香族ジカルボン酸はハロゲン、C6〜C10アリール及びC1〜C4アルコキシから選ばれた1〜4個の置換基を含む);並びに
(b)二酸残基の総モルに基づき、1〜65モル%の、炭素数6〜10の1種又はそれ以上の置換又は非置換芳香族ジカルボン酸の残基(置換芳香族ジカルボン酸はハロゲン、C6〜C10アリール及びC1〜C4アルコキシから選ばれた1〜4個の置換基を含む)
を含む二酸残基
を含む、前記組成物の総重量に基づき、少なくとも50重量%のAAPE(AAPEは、溶融状態からの半結晶化時間が5分未満のランダムコポリマーである);更に
(B)前記組成物の総重量に基づき、0.1〜2重量%の、脂肪酸アミド、有機酸金属塩、脂肪酸、脂肪酸塩、脂肪酸エステル、炭化水素ワックス、エステルワックス、燐酸エステル、化学改質ポリオレフィンワックス、グリセリンエステル及びアクリルコポリマーからなる群から選ばれた少なくとも1種の剥離剤
を含んでなるカレンダー加工用ポリエステル組成物。
【請求項23】
前記ポリエステル組成物が実質的に可塑剤を含まず且つ前記AAPEが実質的にスルホネート基を含まない請求項22に記載のポリエステル組成物。
【請求項24】
前記ジオール残基が1,4−ブタンジオールの残基を含み;前記二酸残基がアジピン酸及びテレフタル酸の残基を含み;そして前記AAPEが3分未満の溶融状態からの半結晶化時間を有する請求項23に記載のポリエステル組成物。
【請求項25】
前記AAPEが50〜60モル%のアジピン酸残基、40〜50モル%のテレフタル酸残基及び少なくとも95モル%の1,4−ブタンジオール残基を含む請求項24に記載のポリエステル組成物。
【請求項26】
前記組成物が、前記組成物の総重量に基づき、0.1〜1重量%の少なくとも1種の剥離剤を含み;前記AAPEが実質的にスルホネート基を含まず;前記ジオール残基が1,4−ブタンジオール;1,3−プロパンジオール;エチレングリコール;1,6−ヘキサンジオール;ジエチレングリコール;及び1,4−シクロヘキサンジメタノールからなる群から選ばれた1種又はそれ以上のジオールの残基を含み;且つ前記二酸残基が、
(a)二酸残基の総モルに基づき、35〜95モル%の、グルタル酸、ジグリコール酸、コハク酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸及びアジピン酸からなる群から選ばれた1種又はそれ以上の非芳香族ジカルボン酸の残基;並びに
(b)二酸残基の総モルに基づき、5〜65モル%の、テレフタル酸及びイソフタル酸からなる群から選ばれた1種又はそれ以上の芳香族ジカルボン酸の残基
を含む請求項22に記載のポリエステル組成物。
【請求項27】
前記組成物が実質的に可塑剤を含まず;前記二酸残基がアジピン酸及びテレフタル酸の残基を含み;且つ前記ジオール残基が1,4−ブタンジオールの残基を含む請求項26に記載の組成物。
【請求項28】
酸又はジオール残基の総モルに基づき、0〜2モル%の、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、1,3,5−ベンゼントリカルボン酸、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ポリエーテルトリオール、グリセロール、トリメシン酸、トリメリット酸、トリメリット酸無水物、ピロメリット酸、ピロメリット酸無水物、4−カルボキシフタル酸無水物及びヒドロキシイソフタル酸からなる群から選ばれた1種又はそれ以上の分岐剤の残基;並びに前記組成物の総重量に基づき、0〜5重量%の、トルエン2,4−ジイソシアネート、トルエン2,6−ジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、ナフタレン−1,5−ジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート及びメチレンビス(2−イソシアナトシクロヘキサン)、1,4−ブタンジオールジビニルエーテル、1,5−ヘキサンジオールジビニルエーテル及び1,4−シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテルからなる群から選ばれた1種又はそれ以上の連鎖延長剤を更に含む請求項27に記載の組成物。
【請求項29】
前記剥離剤が、前記組成物の総重量に基づき、0.1〜0.8重量%で存在し、且つエルシルアミド、ステアロアミド、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸、モンタン酸、モンタン酸エステル、モンタン酸塩、オレイン酸、パルミチン酸、パラフィンワックス、ポリエチレンワックス、ポリ(プロピレン)ワックス、カルナウバワックス、グリセロールモノステアレート及びグルセロールジステアレートからなる群から選ばれる請求項26に記載の組成物。
【請求項30】
前記組成物が、前記組成物の総重量に基づき、難燃剤の5〜40重量%の、燐酸のモノエステル、ジエステル及びトリエステルからなる群から選ばれた1種又はそれ以上の燐含有化合物を更に含み且つ前記難燃剤がAAPEと混和性である請求項26に記載の組成物。
【請求項31】
前記難燃剤がレゾルシノールビス(ジフェニルホスフェート)である請求項30に記載の組成物。

【公表番号】特表2007−516867(P2007−516867A)
【公表日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−545773(P2006−545773)
【出願日】平成16年12月14日(2004.12.14)
【国際出願番号】PCT/US2004/041638
【国際公開番号】WO2005/063861
【国際公開日】平成17年7月14日(2005.7.14)
【出願人】(594055158)イーストマン ケミカル カンパニー (391)
【Fターム(参考)】