説明

ポリエチレンテレフタレート製容器、およびその予備成形体

【課題】 ポリエチレンテレフタレート製の容器またはその予備成形体を過酸化水素で殺菌するに際して、過酸化水素の残留量を少なくする。
【解決手段】 アンチモン系触媒を用いて製造されたポリエチレンテレフタレートによって形成された容器またはその予備成形体を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエチレンテレフタレート製の容器、およびその予備成形体に関し、詳しくは、殺菌剤の残留量が極めて少ないポリエチレンテレフタレート製容器、およびその予備成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、各種の食料品や飲料を対象とした容器として、PETボトルをはじめとするポリエチレンテレフタレート製の容器(以下、PET容器と称する)が広く使用されるようになってきた。一般的に、PET容器は、ポリエチレンテレフタレートを射出成形することによって製造されるか、またはポリエチレンテレフタレートを射出成形して得た予備成形体にブロー成形等の延伸加工を施すことによって製造される。そして、PET容器に飲食物を包装する際には、PET容器の内面と外面を殺菌してから内容物を包装または充填している。容器の内外面を殺菌する方法としては、過酸化水素の水溶液を用いる方法が広く利用されている。例えば、常温または加温した過酸化水素水溶液を容器の内外面にスプレーしたり、過酸化水素水溶液中に容器を浸漬した後にホットエアを吹きかけて容器を乾燥させたりしている。
【0003】
PET容器を過酸化水素或いはその他の殺菌剤で殺菌する場合には、容器に若干の殺菌剤が残留する。殺菌剤の残留量は安全なレベルに制御されてはいるが、できるだけ少ない方が望ましい。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、PET容器またはその予備成形体を過酸化水素で殺菌するに際して、過酸化水素の残留量を少なくすることができるPET容器およびその予備成形体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために本発明は、アンチモン系触媒を用いて製造したポリエチレンテレフタレートで形成されていると共に過酸化水素で殺菌されていることを特徴とするポリエチレンテレフタレート製容器およびその予備成形体を提供する。
【0006】
また、本発明はテレフタル酸またはそのエステル形成性誘導体と、エチレングリコールまたはそのエステル形成性誘導体とをエステル化し、得られたエステル化合物を主体とし、このエステル化合物をアンチモン系触媒を重縮合触媒として重縮合させて製造したポリエチレンテレフタレートで形成されていると共に過酸化水素で殺菌されていることを特徴とするポリエチレンテレフタレート製容器およびその予備成形体を提供する。
【発明の効果】
【0007】
アンチモン系触媒を用いて製造したポリエチレンテレフタレートに過酸化水素を接触させた場合には、他の触媒(例えばゲルマニウム系触媒)を用いて製造したポリエチレンテレフタレートに過酸化水素を接触させた場合と比べて過酸化水素の残留量を極めて少なくできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明においては、PET容器およびその予備成形体の材料として、アンチモン系触媒を用いて製造したポリエチレンテレフタレートを使用する。
【0009】
ポリエチレンテレフタレートを製造するためのアンチモン系触媒とは、三酸化アンチモン、五酸化アンチモンを主体としたものを指し、特には、三酸化アンチモンを主体としたものが一般的である。また、アンチモン鉱石を焼成して得られる三酸化アンチモンの精製の程度により、微量のナトリウム及び鉄の酸化物が含有される。
【0010】
アンチモン系触媒を用いて製造したポリエチレンテレフタレートに過酸化水素を接触させた場合に過酸化水素の残留量が少ない理由は、アンチモン系触媒は金属化合物および金属単体としての触媒残渣量が多く、この状態でアンチモンは強い還元性を有する。従って、触媒残渣として存在している金属アンチモンが過酸化水素を還元分解することにより、残留量を減少させていると推測される。
【0011】
また、ナトリウム及び鉄の酸化物が多く含有されると、金属アンチモンの析出が抑制されるせいか、還元性も低下して好ましくない。これら酸化物の初期含有量は原子の合計量で20ppm以下とすることが好ましい。
【0012】
アンチモン系触媒を用いて製造したポリエチレンテレフタレートで形成された容器を過酸化水素で殺菌するには、従来から知られている方法を採用することができる。例えば過酸化水素水溶液を容器の内外面にスプレーしたり、容器を過酸化水素水溶液中に浸漬して乾燥させたりすればよい。アンチモン系触媒を用いて製造したポリエチレンテレフタレートで形成された予備成形体はブロー成形等の延伸加工により容器に変換した後で過酸化水素で殺菌してもよいし、予備成形体の段階のうちに過酸化水素で殺菌した後で無菌状態を維持したまま延伸加工して容器に変換し、引き続き包装または充填を行ってもよい。
【実施例】
【0013】
次に、実施例および比較例により本発明をさらに具体的に説明する。
【0014】
(実施例1)
アンチモン系触媒を用いて製造したポリエチレンテレフタレート(新光合繊製:SHINPET5015W)で、内容量500mlのPETボトルを成形した。殺菌剤としての過酸化水素溶液(H)のミストをノズルから噴霧してこのPETボトルの内外面を殺菌した。
【0015】
殺菌したPETボトルを密栓後24時間経過してから、容量9mlの純水に浸して過酸化水素(H)を抽出し、過酸化水素の抽出量を酸素電極を用いてなる過酸化水素(H)濃度測定装置にて測定した。
【0016】
(実施例2)
アンチモン系触媒を用いて製造したポリエチレンテレフタレート(SK CHEMICAL製:PB7755)で、実施例1と同じく内容量500mlのPETボトルを成形した。このPETボトルを実施例1と同様に過酸化水素で殺菌し、殺菌したPETボトルを密栓後24時間経過してから、実施例1と同様に過酸化水素の抽出量を測定した。
【0017】
(比較例1)
ゲルマニウム系触媒を用いて製造したポリエチレンテレフタレート(三井化学製:J125)で、実施例1と同じく内容量500mlのPETボトルを形成した。このPETボトルを実施例1と同様に過酸化水素で殺菌し、殺菌したPETボトルを密栓後24時間経過してから、実施例1と同様に過酸化水素の抽出量を測定した。
【0018】
(結果)
各実験例の結果を表1に示す。
【0019】
【表1】

表1は、アンチモン系触媒を用いて製造したポリエチレンテレフタレートで形成したPETボトル(実施例1,2)と、ゲルマニウム系触媒を用いて製造したポリエチレンテレフタレートで形成したPETボトル(比較例1)を過酸化水素で殺菌した時の、各ボトルの過酸化水素の残留量を示す表である。
【0020】
この表からも明らかなように、実施例1と2のボトルに残留する過酸化水素量は、比較例1のボトルに残留する過酸化水素量に比べて非常に少なかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンチモン系触媒を用いて製造したポリエチレンテレフタレートで形成されていると共に過酸化水素で殺菌されていることを特徴とするポリエチレンテレフタレート製容器。
【請求項2】
アンチモン系触媒を用いて製造したポリエチレンテレフタレートで形成されていると共に過酸化水素で殺菌されていることを特徴とするポリエチレンテレフタレート製容器用予備成形体。
【請求項3】
テレフタル酸またはそのエステル形成性誘導体と、エチレングリコールまたはそのエステル形成性誘導体とをエステル化し、得られたエステル化合物を主体とし、このエステル化合物をアンチモン系触媒を重縮合触媒として重縮合させて製造したポリエチレンテレフタレートで形成されていると共に過酸化水素で殺菌されていることを特徴とするポリエチレンテレフタレート製容器。
【請求項4】
テレフタル酸またはそのエステル形成性誘導体と、エチレングリコールまたはそのエステル形成性誘導体とをエステル化し、得られたエステル化合物を主体とし、このエステル化合物をアンチモン系触媒を重縮合触媒として重縮合させて製造したポリエチレンテレフタレートで形成されていると共に過酸化水素で殺菌されていることを特徴とするポリエチレンテレフタレート製容器用予備成形体。

【公開番号】特開2006−341891(P2006−341891A)
【公開日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−169687(P2005−169687)
【出願日】平成17年6月9日(2005.6.9)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】