説明

ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル及びそれを含有する水系ワックス分散物

【課題】細粒子径で、耐pH性、耐塩性及び安定性に優れ、調製が容易で、配合成分による乳化粒子の安定性変化が少ない水系ワックス分散物、及び硬度を損わず柔軟性を有する化粧料、ワックス製剤及び固体状ワックス組成物の提供。
【解決手段】ソルビトール1モルに対しエチレンオキサイドを平均20〜100モル付加させたポリオキシエチレンソルビトールと炭素数20〜40の飽和脂肪酸をモル比1:2.5〜1:5.5で反応させ、酸価10mgKOH/g以下にエステル化して得られるポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル;係るエステルを含む化粧料及び水系用ワックス分散剤;係るエステルとワックスを含む固形状ワックス組成物;係るエステル、ワックス、水を含み、ワックス含有量が0.1〜60質量%で、ワックス1質量部に対する係るエステルの含有量が0.01質量部以上である水系ワックス分散物;係る分散物を含む化粧料及びワックス製剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、該エステルを含有する化粧料及び水系用ワックス分散剤、該エステルとワックスを含有する水系ワックス分散物及び固形状ワックス組成物、並びに該水系ワックス分散物を含有する化粧料及びワックス製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
一般にワックス分散物は広く例えばヘアワックス、マスカラ、保護用ワックス、離型剤、艶出しワックス、潤滑剤、熱転写用材料、カーワックス、フロアーポリシュ、無機材料の凝集防止剤、感熱接着剤、サイズ剤、紙用滑剤、防水剤、フイルム用滑剤、繊維用潤滑剤、繊維用柔軟仕上剤、果物用光沢付与剤、セラミックバインダー、インク・塗料用光沢付与剤、塗料用艶消し剤等の用途・目的で、単独で又は他の樹脂系エマルションに加えて工業分野で使用されている。
【0003】
従来の水系ワックスエマルションの製造方法としては、転相法、機械的に粉砕する方法、高圧で噴射粉砕する方法、細孔より噴霧させる方法、溶剤に溶解後高圧ホモジナイザーにより乳化してから溶剤を除去する方法などが挙げられ、乳化方法及び使用する界面活性剤種、さらには目的等応じて、適宜選定して用いられている。
界面活性剤も従来は、必要に応じて適宜種類を選定し使用されており、高温においても乳化力の変化が少ないカチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、アニオン性界面活性剤を用いる乳化方法が主に採用されてきた(特許文献1〜3参照)。
【0004】
しかしながら、これら従来法は、アニオン系又はカチオン系界面活性剤などのイオン性を有する界面活性剤を単独で又は組み合わせて用いて微細分散物を調製するものである。これらのイオン性界面活性剤には、乳化・分散力を発揮する上で最適なpH範囲が存在し、それを外れると乳化力が落ち、粒子径の粗大化、凝集などを引き起こすという問題点があった。また塩類、特に2価以上の塩類が存在する場合には、対イオンの交換が起こり、凝集を起こしてしまうという問題点があった。このようにイオン性界面活性剤を主要な界面活性剤として使用したワックス分散物には、配合される成分に制約が多いという問題点があった。
【0005】
例えば、化粧料などは安定化剤としてカルボキシビニルポリマーを配合することが多いが、系のイオン性が強い場合には、この安定化剤が機能しないことが多く、イオン性界面活性剤を用いた場合でもその傾向が見られ、イオン性界面活性剤を用いたワックス分散物の安定化には、高級アルコールや脂肪酸モノグリセリドなどの固形脂が用いられていた。しかし、このようなワックス分散物は、固形脂に由来して感触が固く、伸びが悪いものになっていた。
以上のように、イオン性界面活性剤を用いたワックス分散物の場合、その他の成分の配合には制約が多く、その結果として使用感の幅が狭くなるという問題点があった。
【0006】
一方、従来使用されている非イオン性界面活性剤は、塩類やpHによる乳化力の変化が小さいので、幅広い成分の配合が可能であることが知られている(例えば、特許文献4参照)。
【特許文献1】特開平5−220383号公報
【特許文献2】特開平11−263914号公報
【特許文献3】特開平11−263915号公報
【特許文献4】特開2002−69386号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、非イオン性界面活性剤は、温度によりHLBが変化することが知られており、高融点のワックスを乳化する場合には、HLBのバランスをとることが難しく、粒子径の細かい水系ワックス分散物を得ることが難しいという問題点があった。例えば、特許文献4には非イオン性界面活性剤の一種であるショ糖脂肪酸エステルを使用した水系ワックス分散物が示されているが、その製造には、高温加圧乳化に耐えうる特殊な乳化装置が必要であり、通常汎用されている乳化機を使用したり、プロペラ攪拌などの比較的緩やかな攪拌条件で撹拌したりして製造することができなかった。
【0008】
さらにワックス類は硬度が高いために割れやすく、ワックス製剤自体や塗布後の薄膜表面に割れが生じることもしばしばあった。そこで、割れを防ぐため、硬度の低いペースト状あるいは液状の油剤が併用されてきたが、ワックスの硬度が低下し過ぎたり、ワックスを水分散液にする場合、その他の配合成分によって乳化バランスが変化してしまうことがあり、処方設計上手間を要するという問題点があった。
【0009】
本発明は上記事情に鑑みて為されたものであり、耐pH性、耐塩性及び安定性に優れ、粒子径が細かく、調製が容易で、配合成分による乳化粒子の安定性の変化が少ない水系ワックス分散物、及び硬度を損うことなく柔軟性を有する化粧料、ワックス製剤及び固体状ワックス組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、これら問題点を解決すべく鋭意検討を行った結果、ソルビトールに特定量のエチレンオキサイドが付加した多価アルコールと、特定の炭素数の飽和脂肪酸とを、特定のモル比でエステル化して得られるポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステルを用いることで、粒子径の細かい水系ワックス分散物が容易に得られること、さらにこの水系ワックス分散物を配合して得られたワックスは、硬度を損なうことなく柔軟性を付与できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、前記課題を解決するため、
本発明の第1の発明は、ソルビトール1モルに対してエチレンオキサイドを平均20〜100モル付加させたポリオキシエチレンソルビトールと炭素数20〜40の飽和脂肪酸とを、1:2.5〜1:5.5のモル比で反応させ、酸価10mgKOH/g以下までエステル化することにより得られることを特徴とするポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステルである。
【0012】
本発明の第2の発明は、第1の発明に記載のポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステルと、ワックス、及び水を含有し、該ワックスの含有量が0.1〜60質量%であり、該ワックス1質量部に対する前記ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステルの含有量が0.01質量部以上であることを特徴とする水系ワックス分散物である。
本発明の第3の発明は、前記ワックスの融点が50〜110℃であることを特徴とする第2の発明に記載の水系ワックス分散物である。
本発明の第4の発明は、前記ワックスが、エステルワックス、パラフィンワックス、ポリエチレンワックス、カルナウバワックス、セレシン及びキャンデリラワックスから選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とする第2又は第3の発明に記載の水系ワックス分散物である。
本発明の第5の発明は、さらに、非イオン性界面活性剤を含有し、該非イオン性界面活性剤及び前記ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステルの合計質量中のポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル含有量が25〜99.9質量%であることを特徴とする第2〜第4の発明のいずれか一つに記載の水系ワックス分散物である。
【0013】
本発明の第6の発明は、第2〜第5の発明のいずれか一つに記載の水系ワックス分散物を含有することを特徴とする化粧料である。
本発明の第7の発明は、第2〜第5の発明のいずれか一つに記載の水系ワックス分散物を含有することを特徴とするワックス製剤である。
本発明の第8の発明は、第1の発明に記載のポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステルを含有することを特徴とする水系用ワックス分散剤である。
本発明の第9の発明は、第1の発明に記載のポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステルを含有することを特徴とする化粧料である。
本発明の第10の発明は、第1の発明に記載のポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステルと、ワックスと、を含有することを特徴とする固形状ワックス組成物である。
本発明の第11の発明は、前記ワックスの含有量が15〜95質量%であり、該ワックス1質量部に対する前記ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステルの含有量が0.01〜5質量部であることを特徴とする第10の発明に記載の固形状ワックス組成物である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、耐pH性、耐塩性及び安定性に優れ、粒子径が細かく、配合成分による乳化粒子の安定性の変化が少ない水系ワックス分散物を容易に調製でき、該分散物を配合することで、硬度を損うことなく柔軟性を有する化粧料、ワックス製剤及び固体状ワックス組成物が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明について詳しく説明する。
<ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル>
本発明のポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステルは、ソルビトール1モルに対してエチレンオキサイドを平均20〜100モル付加させたポリオキシエチレンソルビトールと炭素数20〜40の飽和脂肪酸とを、1:2.5〜1:5.5のモル比で反応させ、酸価10mgKOH/g以下までエステル化することにより得られることを特徴とする。
【0016】
ソルビトール1モルに対するエチレンオキサイドの平均付加モル数は、20〜100モルであり、30〜90モルであることが好ましい。平均付加モル数がこの範囲を外れると、水系ワックス分散物の粒子径が大きくなる。
これは、平均付加モル数が20モルよりも少ない場合には、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステルの親水性が低く、乳化能が劣るためであり、平均付加モル数が100モルよりも多い場合には、逆にポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステルの親水性が高く、ワックスとの相溶性が落ちるためであると考えられる。
【0017】
本発明のポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステルを構成する脂肪酸残基は、炭素数が20〜40の飽和脂肪酸残基が、全構成脂肪酸残基中50〜100質量%含有されていればよく、70〜100質量%含有されていることが好ましく、80〜100質量%含有されていることがより好ましく、90〜100質量%含有されていることが最も好ましい。
炭素数20〜40の飽和脂肪酸残基は、炭素数が20〜32の飽和脂肪酸残基であることが好ましく、炭素数が20〜26の飽和脂肪酸残基であることがより好ましい。特に、炭素数22のベヘン酸残基であることが最も好ましい。
ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステルの全構成脂肪酸残基中、炭素数が20よりも短い脂肪酸残基が50質量%以上含有される場合には、乳化中にワックスの凝集が起きることがあり、水系ワックス分散物の粒子径が大きくなってしまう。一方、全構成脂肪酸残基中、炭素数が40より長い脂肪酸残基が50質量%以上含有される場合には、乳化性などに不都合は生じないが、かかる脂肪酸を入手することは困難である。
また、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステルの全構成脂肪酸残基中、不飽和脂肪酸残基が50質量%以上含有されたものを使用すると、調製した水系ワックス分散物において、ワックスの凝集が生じてしまう場合がある。
【0018】
ポリオキシエチレンソルビトールを製造する際の、ソルビトールにエチレンオキサイドを付加させる方法としては、例えば、R.D.Fine;J.Am.Oil Chem.Soc.,35,542(1958)に記載されている方法を適用することができる。
ポリオキシエチレンソルビトールの具体的な製造方法について、以下に例示する。
攪拌及び温度調整機能のついたガラス製オートクレーブに、ソルビトールと酸又は塩基触媒を入れ、混合系内を窒素で置換した後、−0.8〜5kgf/cmG、好ましくは1〜2kgf/cmGの圧力でエチレンオキサイドを導入し、所定量のエチレンオキサイドを添加後、50〜200℃、好ましくは60〜150℃で反応を行い、反応系内の圧力が平衡になるまで熟成を行う。得られたポリオキシエチレンソルビトールをそのまま、あるいはpH調整した後、引き続いてエステル化反応に使用することもできるし、キョワード600(商品名;協和化学工業社製)などの吸着剤で吸着処理後、ろ過操作で重合物から触媒を除去して、精製処理されたポリオキシエチレンソルビトールを得たのち、これを続くエステル化反応に供しても良い。触媒は公知のものを適宜選択して使用すれば良い。
なお、ここに示した方法は一例であり、本発明においては、これ以外の方法を適用することもできる。
【0019】
また、ポリオキシエチレンソルビトールは市販品を使用しても良い。例えば、BLAUNON240(商品名;青木油脂社製)などは、そのまま使用するのに好適である。
【0020】
本発明のポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステルは、前記ポリオキシエチレンソルビトールと、上記脂肪酸残基に対応する炭素数20〜40の飽和脂肪酸とを、1:2.5〜1:5.5のモル比で反応させ、酸価10mgKOH/g以下までエステル化することにより得られる。
【0021】
前記飽和脂肪酸としては、アラキジン酸、ベヘン酸、トリイコサン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、モンタン酸、メリシン酸、フィリン酸、ゲティン酸、セロプラスチン酸、ヘキサトリアコンタ酸などが例示でき、これらの飽和脂肪酸は1種のみを使用しても良く、2種以上を組み合わせて使用しても良い。また、市販されている天然由来の飽和脂肪酸は、複数種類の混合物であることが多く、例えば、炭素数22のベヘン酸には炭素数18の脂肪酸が含まれることがある。
【0022】
反応時の前記ポリオキシエチレンソルビトールと前記飽和脂肪酸とのモル比は、1:2.5〜1:5.5であり、1:3〜1:5であることが好ましい。モル比が1:2.5〜1:5.5の範囲を外れると、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステルの乳化性が落ち、水系ワックス分散物の粒子径が大きくなる。
【0023】
エステル化反応は、酸価が10mgKOH/g以下、好ましくは5mgKOH/g以下、より好ましくは3mgKOH/g以下になるまで行う。
酸価が10mgKOH/gより大きいと、遊離の脂肪酸が多いために、ワックスの乳化性が低下することがある。
【0024】
ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステルの具体的な製造方法について、以下に例示する。
ポリオキシエチレンソルビトールと前記飽和脂肪酸とを、所定のモル比で反応容器に入れ、必要に応じて溶媒及び/又は触媒を適量加え、200〜300℃、好ましくは200〜250℃に加熱し、生成する水を除きながら反応させる。反応物の酸価が所定の値となったところを反応の終点とする。次いで、必要に応じて溶媒の除去、触媒の除去、ろ過、脱色、脱臭などの精製工程を行い、本発明のポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステルを得る。溶媒や触媒は、従来のエステル化反応で通常使用されるもので良く、溶媒としてはキシレンなど、触媒としては酸触媒、アルカリ触媒、金属触媒などを例示できる。
【0025】
このようにして得られる本発明のポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステルは、モノエステル、ジエステル、トリエステル、テトラエステル、ペンタエステル、及びヘキサエステルの1種以上からなり、エステル価度は、通常平均2.5〜5.5である。特に、トリエステル、テトラエステル及びペンタエステルを主成分とするものが好ましく、このような組成のポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステルが、先に述べた課題の解決に最も効果的である。このような好ましい組成のものは、先に述べた、ポリオキシエチレンソルビトールと飽和脂肪酸とのモル比、反応終了時の酸価、反応温度などを好ましい範囲にすることで、容易に得られる。また、これら条件以外にも、溶媒及び触媒の使用又は不使用、使用する場合にはその種類などを適宜選択することで、エステルの組成を適宜調整し得る。
【0026】
このようにして得られたポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステルは、常温で固体である場合が多く、この場合、融点は40℃以上であることが好ましく、40〜70℃であることがより好ましく、45〜65℃であることが特に好ましい。融点が40℃よりも高いことで、ワックスの凝集を抑える効果が大きくなり、保存安定性が一層高い水系ワックス分散物を得ることができる。
【0027】
また、本発明のポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステルは、原料として使用する炭素数20〜40の飽和脂肪酸が単一組成でないことが多く、ソルビトールに対するエチレンオキサイドの付加モル数を単一の値に制御することは困難なので、通常は混合物となる。
【0028】
なお、本発明のポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステルと、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルとは異なるものである。ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステルの代わりに、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルを使用しても、本発明の効果を得ることはできない。
ソルビタンとは、ソルビトールの分子内脱水により得られる環状多価アルコールの総称である。例えば、ソルビトールと脂肪酸をエステル化反応すると、ソルビトールは1,4−ソルビタン、1,5−ソルビタン、2,5−ソルビタン、及びソルバイト等の環状物になり、その環状アルコール類に脂肪酸がエステル化したソルビタン脂肪酸エステルが得られる。さらに、その遊離水酸基にエチレンオキサイドを付加することでポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルが得られる。このポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルのある種は、Span、Tween、ポリソルベートなどの一般名で良く知られた非イオン性界面活性剤である。
【0029】
本発明のポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステルは、各種化粧料及びワックス製剤の配合に好適である。そして特に、非イオン性界面活性剤として機能するので、ワックスの水分散用として好適である。そこで、次に本発明のポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステルを用いた、水系ワックス分散物について説明する。
【0030】
<水系ワックス分散物>
本発明の水系ワックス分散物は、前記ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステルと、ワックス、及び水を含有し、該ワックスの含有量が0.1〜60質量%であり、該ワックス1質量部に対する前記ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステルの含有量が0.01質量部以上であることを特徴とする。
【0031】
ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステルは、併用するワックスの特性等に応じて、適宜選定すれば良い。
【0032】
ワックスの含有量は0.1〜60質量%であるが、0.5〜50質量%であることが好ましく、1〜40質量%であることがより好ましい。0.1質量%よりも少ない場合には、ワックスの特性である滑り性、光沢付与性、艶消し性などの効果を得にくく、また60質量%よりも多い場合には、凝集が起きたり、流動性が乏しくなり、均一に分散させることが困難になるなど、操作性が落ちることがある。
【0033】
本発明の水系ワックス分散物は、ワックス1質量部に対する前記ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステルの含有量が0.01質量部以上であるが、0.01〜10質量部であることが好ましく、0.01〜5質量部であることがより好ましく、0.05〜5質量部であることがさらにより好ましく、0.1〜4質量部であることが最も好ましい。
ワックス1質量部に対する前記ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステルの含有量が0.01質量部より小さい場合には、水系ワックス分散物の分散性が低下し、粒径の細かい分散物を得ることができない。また、ワックス1質量部に対する前記ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステルの含有量に特に上限は無いが、例えば、10質量部を超えると、本発明の効果の向上は緩やかとなる。
【0034】
本発明においては、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル以外にも、通常の乳化に用いられる一般的な非イオン性界面活性剤を併用できる。この時、該非イオン性界面活性剤及びポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステルの合計質量中のポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル含有量は、好ましくは25〜99.9質量%であり、より好ましくは30〜99.9質量%であり、特に好ましくは40〜99.9質量%である。この範囲であれば、性状の優れた水系ワックス分散物を得ることができる。
【0035】
併用できる一般的な非イオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油等などが例示できる。
【0036】
アニオン性、カチオン性、両性の各イオン性界面活性剤は、耐pH性及び耐塩性で問題が生じる可能性が高く、本発明の水系ワックス分散物には適さないことが多いが、本発明の効果を損なわない範囲であれば、配合しても差し支えない。
【0037】
通常のワックスは、「ろう」と称され、高級脂肪酸と高級アルコールのモノエステルと定義されることがある。本発明におけるワックスとは、このような通常のワックスも含み、
常温で固形の油分のことをいい、融点が50〜110℃のものがより好適である。
【0038】
そして、本発明の水系ワックス分散物に用いるワックスは、前記の条件を満たせば、従来公知のいずれのワックスでも使用することができ、単独で使用しても良く、2種以上を併用しても良い。ワックスとしては、天然ワックス及び合成ワックス等が例示できる。
また、水系ワックス分散物中における、ワックスと界面活性剤との質量比などは、目的、用途、乳化状態などを考慮して適宜選定すれば良い。
【0039】
天然ワックスとしては、具体的には、ミツロウ、キャンデリラワックス、綿ロウ、ライスワックス、カルナウバワックス、ベイベリーロウ、イボタロウ、モンタンロウ、ヌカロウ、ラノリン、カポックロウ、モクロウ、サトウキビロウ、還元ラノリン、水添ジョジョバロウ、硬質ラノリン、セラックロウ、ビースワックス、オゾケライト、セレシン、マイクロクリスリンワックス、パラフィンワックスなどが例示できる。
【0040】
合成ワックスとしては、具体的には、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックスなどのエチレン、プロピレンの重合系ワックス;これらの酸化物、又はカルボキシル基を付与した誘導体などの変性ワックス;エチレン、プロピレンの共重合系ワックス;エチレン系共重合ワックス;マレイン酸の付加ワックス、水素化ワックス、脂肪酸アミド、脂肪酸エステル、ケトン系;アルコール類と脂肪酸をエステル化したエステルワックスなどが例示できる。
【0041】
エステルワックスとは、一価アルコール及び/又は多価アルコールと脂肪酸とのエステル化物のうち、常温で固形のものを指す。
具体的には、脂肪族アルコールと一価脂肪酸のエステルとしては、ラウリン酸ステアリル、ラウリン酸ベヘニル、ミリスチン酸パルミチル、ミリスチン酸ステアリル、ミリスチン酸ベヘニル、パルミチン酸ラウリル、パルミチン酸ミリスチル、パルミチン酸パルミチル、パルミチン酸ステアリル、パルミチン酸ベヘニル、ステアリン酸ラウリル、ステアリン酸ミリスチル、ステアリン酸パルミチル、ステアリン酸ステアリル、ステアリン酸ベヘニル、ベヘン酸ラウリル、ベヘン酸ミリスチル、ベヘン酸パルミチル、ベヘン酸ステアリル、ベヘン酸ベヘニルなどが例示できる。
二塩基酸と脂肪族アルコールのエステルとしては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、セバシン酸、1,10−デカメチレンジカルボン酸、1,12−ドデカメチレンジカルボン酸、1,14−テトラデカメチレンジカルボン酸、1,16−ヘキサデカメチレンジカルボン酸、1,18−オクタデカメチレンジカルボン酸、1,20−イコサメチレンジカルボン酸、1,28−オクタコサメチレンジカルボン酸などの二塩基酸と、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコールなどの高級アルコールをエステル化したエステル化物が例示できる。
多価アルコールと脂肪酸のエステル化物としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキシレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、ポリグリセリン、エリスリトール、ソルビトール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ネオペンチルグリコール、ペンチレングリコールなどの多価アルコールと、ラウリン酸、ミリスチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、イソステアリン酸、12−ヒドロキシステアリン酸などの脂肪酸をエステル化したエステル化物が例示できる。
【0042】
これらのワックスの中でも、特に本発明においては、エステルワックス、パラフィンワックス、ポリエチレンワックス、カルナウバワックス、セレシン及びキャンデリラワックスから選ばれる1種又は2種以上を使用するのが好ましい。
【0043】
本発明の水系ワックス分散物は、後記するように、化粧料、ワックス製剤などに配合するのに好適である。そしてこれらの配合用途に応じて、水系ワックス分散物中には、ここまでに挙げたもの以外にも、本発明の効果を損なわない範囲で如何なる成分も配合できる。具体的には、保湿剤、増粘剤、油剤、溶剤、シリコーン油、薬効成分、顔料、染料、粉体、アルコール類、多価アルコール類、pH調節剤、紫外線吸収剤、抗酸化剤、防腐防黴剤、色素、香料などが例示できる。これらは、必要に応じて従来公知のものを適量配合することができる。
【0044】
水系ワックス分散物に配合する水は、特に限定されず、蒸留水、イオン交換水等が例示でき、該分散物の用途に応じて適宜選定すれば良い。
【0045】
水系ワックス分散物の具体的な製造方法について、以下に例示する。
所定量の前記ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル及びワックス、さらに必要に応じて、本発明の前記脂肪酸エステル以外の界面活性剤、その他の配合成分を混合し、均一に溶解するまで70〜120℃に加熱する。次いで、プロペラ、ディスパー、ホモミキサーなどで攪拌しながら、ここへ60〜100℃に加温した水、あるいは配合成分を含有する水溶液又は分散溶液を徐々に添加する。添加後、室温付近まで冷却することで、本発明の水系ワックス分散物が得られる。
なお、ここに示した方法は一例であり、本発明においては、これ以外の方法を適用することもできる。
【0046】
このようにして得られた本発明の水系ワックス分散物は、液状、ペースト状、固形状のいずれかの形態をとる。また、粒子径が細かく、耐塩性、耐pH性及び安定性に優れ、乾燥薄膜の柔軟性に優れるため、そのまま種々の化粧料やワックス製剤として使用することもできるし、化粧料やワックス製剤の原料の一部として使用することもできる。
【0047】
<化粧料及びワックス製剤>
具体的には、前記化粧料として、ヘアワックス、乳化タイプアイシャドー、乳化タイプマスカラ、口紅、ファンデーション等が例示できる。
また、前記ワックス製剤として、保護用ワックス、離型剤、艶出しワックス、潤滑剤、熱転写用材料、カーワックス、フロアーポリシュ、無機材料の凝集防止剤、感熱接着剤、サイズ剤、紙用滑剤、防水剤、フイルム用滑剤、繊維用潤滑剤、繊維用柔軟仕上剤、果物用光沢付与剤、セラミックバインダー、インク・塗料用光沢付与剤、塗料用艶消し剤等が例示できる。これらワックス製剤の用途は、工業用、家庭用を問わない。
【0048】
水系ワックス分散物を、化粧料の原料の一部として使用する場合、その使用量は、該水系ワックス分散物中のワックス含有量や化粧料の種類によって適宜調整すれば良い。
例えば、ワックス含有量が40質量%である水系ワックス分散物を使用する場合には、ヘアワックスや乳化タイプアイシャドーについては、該水系ワックス分散物を5〜70質量%含有させるのが好ましく、10〜50質量%含有させるのがより好ましい。また、乳化タイプマスカラについては、該水系ワックス分散物を3〜60質量%含有させるのが好ましく、5〜50質量%含有させるのがより好ましい。
【0049】
水系ワックス分散物を、ワックス製剤の原料の一部として使用する場合、その使用量は、該水系ワックス分散物中のワックス含有量やワックス製剤の種類によって適宜調整すれば良い。
例えば、ワックス含有量が40質量%である水系ワックス分散物を使用する場合には、カーワックスやフロアワックスについては、該水系ワックス分散物を1〜90質量%含有させるのが好ましく、1〜80質量%含有させるのがより好ましい。
【0050】
水系ワックス分散物を原料の一部として使用した化粧料やワックス製剤を製造する場合には、化粧料やワックス製剤の従来公知の製造過程において、該水系ワックス分散物を添加すれば良い。
【0051】
本発明の化粧料及びワックス製剤は、前記水系ワックス分散物を含有するので、硬度を保持したまま柔軟性を有し、優れた性状を示す。
【0052】
一方、前記水系ワックス分散物の代わりに、本発明のポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステルを配合した化粧料も、同様に、硬度を保持したまま柔軟性を有し、優れた性状を示す。この場合の、化粧料中におけるポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステルの含有量は、0.01〜50質量%であることが好ましく、0.1〜30質量%であることがより好ましい。このような化粧料は、従来公知の化粧料の製造過程において、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステルを添加すれば、製造できる。
【0053】
本発明のポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステルは、ワックスを水へ分散させるためのワックス分散剤として使用することができる。すなわち、本発明の水系用ワックス分散剤は、前記ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステルを含有することを特徴とする。
該ワックス分散剤中、本発明のポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステルの含量は、90〜100質量%であることが好ましく、95〜100質量%であることがより好ましい。
すなわち、本発明のポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステルをそのままワックス分散剤として使用することもできるし、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステルに抗酸化剤等を、例えば0.001〜10質量%添加したものをワックス分散剤として使用することもできる。
【0054】
<固形状ワックス組成物>
本発明のポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステルは、固形状ワックス組成物の配合成分として好適である。すなわち、本発明の固形状ワックス組成物は、前記ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステルと、ワックスと、を含有することを特徴とする。以下、該固形状ワックス組成物について説明する。
【0055】
本発明の固形状ワックス組成物中における前記ワックスの含有量は、15〜95質量%であることが好ましく、20〜70質量%であることがより好ましく、25〜60質量%であることがさらに好ましい。
また、該ワックス1質量部に対する前記ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステルの含有量は、0.01〜5質量部であることが好ましく、0.05〜4質量部であることがより好ましく、0.1〜2質量部であることがさらに好ましい。
ワックス及びポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステルの含有量がこの範囲であれば、固形状ワックス組成物は、より硬度と柔軟性に優れたものとなる。
【0056】
固形状ワックス組成物には、本発明の効果を妨げない範囲で、ワックス及びポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル以外の如何なる成分も配合できる。具体的には、固形状ワックス組成物をカーワックス、フロアワックス、艶出しワックスなどの用途に用いる場合には、保湿剤、油剤、溶剤、シリコーン油、界面活性剤、薬効成分、顔料、粉体、アルコール類、多価アルコール類、紫外線吸収剤、抗酸化剤、防腐防黴剤、色素、香料などを例示できる。これらは、必要に応じて従来公知のものを適量配合することができる。
【0057】
固形状ワックス組成物の具体的な製造方法について、以下に例示する。
ワックス及び本発明のポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステルを混合し、加温して溶融状態で攪拌しながら、さらに必要に応じて、その他の配合成分を添加し、混錬して均一状態にする。次いで、これを容器に流し込み固めることで、本発明の固形状ワックス組成物が得られる。
【0058】
このようにして得られた本発明の固形状ワックス組成物は、硬度を保持したまま柔軟性を有するものである。このような固形状ワックス組成物は、肌や壁面、床面、皮革製品などへ塗布した際に、それぞれの面に柔軟に密着したワックス膜を形成することができ、変形に対して割れが生じにくいという性質を持ち、例えば、表面保護剤として有用である。そして、これら固形状ワックス組成物の用途は、工業用、家庭用を問わない。
【実施例】
【0059】
以下、具体的実施例を挙げて、本発明についてさらに詳しく説明する。なお、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
[実施例1](ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステルの製造1)
攪拌機、温度計、窒素ガス吹込管及び水分分離機を備えた3Lの四つ口フラスコにポリオキシエチレン(20)ソルビトール(日本乳化剤株式会社製)634g(0.6mol)とベヘン酸(ユニケマ製、商品名:PRIFRAC2989、ベヘン酸含量88.0質量%、炭素数20〜40の飽和脂肪酸含量90質量%以上)822g(2.4mol)を仕込み、窒素気流下、生成した水を除去しながら230℃の温度で15時間反応させ、酸価5mgKOH/g以下となったことを確認し、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル1360g(収率96質量%)を得た。得られたエステルの融点は58℃、水酸基価は94mgKOH/g、ケン化価は99.6mgKOH/gであった。
【0060】
[実施例2](ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステルの製造2)
攪拌機、温度計、窒素ガス吹込管及び水分分離機を備えた3Lの四つ口フラスコにポリオキシエチレン(40)ソルビトール(日本乳化剤株式会社製)978g(0.6mol)とベヘン酸(ユニケマ製、商品名:PRIFRAC2989、ベヘン酸含量88.0質量%、炭素数20〜40の飽和脂肪酸含量90質量%以上)822g(2.4mol)を仕込み、窒素気流下、生成した水を除去しながら230℃の温度で15時間反応させ、酸価5mgKOH/g以下となったことを確認し、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル1700g(収率97質量%)を得た。得られたエステルの融点は56℃、水酸基価は42mgKOH/g、ケン化価は75.8mgKOH/gであった。
【0061】
[実施例3](ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステルの製造3)
攪拌機、温度計、窒素ガス吹込管及び水分分離機を備えた5Lの四つ口フラスコにポリオキシエチレン(60)ソルビトール(日本乳化剤株式会社製)1690g(0.6mol)とベヘン酸(ユニケマ製、商品名:PRIFRAC2989、ベヘン酸含量88.0質量%、炭素数20〜40の飽和脂肪酸含量90質量%以上)822g(2.4mol)を仕込み、窒素気流下、生成した水を除去しながら230℃の温度で15時間反応させ、酸価5mgKOH/g以下となったことを確認し、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル2370g(収率96質量%)を得た。得られたエステルの融点は52℃、水酸基価は32mgKOH/g、ケン化価は59.5mgKOH/gであった。
【0062】
[実施例4](ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステルの製造4)
攪拌機、温度計、窒素ガス吹込管及び水分分離機を備えた5Lの四つ口フラスコにポリオキシエチレン(80)ソルビトール(日本乳化剤株式会社製)2220g(0.6mol)とベヘン酸(ユニケマ製、商品名:PRIFRAC2989、ベヘン酸含量88.0質量%、炭素数20〜40の飽和脂肪酸含量90質量%以上)822g(2.4mol)を仕込み、窒素気流下、生成した水を除去しながら230℃の温度で15時間反応させ、酸価5mgKOH/g以下となったことを確認し、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル2900g(収率97質量%)を得た。得られたエステルの融点は48℃、水酸基価は30mgKOH/g、ケン化価は50.0mgKOH/gであった。
【0063】
[実施例5](ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステルの製造5)
攪拌機、温度計、窒素ガス吹込管及び水分分離機を備えた5Lの四つ口フラスコにポリオキシエチレン(60)ソルビトール(日本乳化剤株式会社製)1690g(0.6mol)とモンタン酸(クラリアントジャパン株式会社製、商品名:Hoechst Wax S Flakes、炭素数20〜40の飽和脂肪酸含量95質量%以上)1018g(2.4mol)を仕込み、窒素気流下、生成した水を除去しながら230℃の温度で15時間反応させ、酸価5mgKOH/g以下となったことを確認し、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル2480g(収率97質量%)を得た。得られたエステルの融点は65℃、水酸基価は32mgKOH/g、ケン化価55.4mgKOH/gであった。
【0064】
[実施例6](ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステルの製造6)
攪拌機、温度計、窒素ガス吹込管及び水分分離機を備えた5Lの四つ口フラスコにポリオキシエチレン(40)ソルビトール(日本乳化剤株式会社製)978g(0.6mol)とベヘン酸(ユニケマ製、商品名:PRIFRAC2989、ベヘン酸含量88.0質量%、炭素数20〜40の飽和脂肪酸含量90質量%以上)612g(1.8mol)を仕込み、窒素気流下、生成した水を除去しながら230℃の温度で15時間反応させ、酸価5mgKOH/g以下となったことを確認し、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル1510g(収率97質量%)を得た。得られたエステルの融点は45℃、水酸基価は64mgKOH/g、ケン化価は61.8mgKOH/gであった。
【0065】
[実施例7](ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステルの製造7)
攪拌機、温度計、窒素ガス吹込管及び水分分離機を備えた5Lの四つ口フラスコにポリオキシエチレン(40)ソルビトール(日本乳化剤株式会社製)978g(0.6mol)とベヘン酸(ユニケマ製、商品名:PRIFRAC2987、ベヘン酸含量94.8質量%、炭素数20〜40の飽和脂肪酸含量90質量%以上)1020g(3.0mol)を仕込み、窒素気流下、生成した水を除去しながら230℃の温度で15時間反応させ、酸価5mgKOH/g以下となったことを確認し、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル1870g(収率96質量%)を得た。得られたエステルの融点は59℃、水酸基価は21mgKOH/g、ケン化価は83.0mgKOH/gであった。
【0066】
[比較例1及び2]
後記する各種エステルの性状比較で、比較例1として、非イオン性界面活性剤であるNIKKOL GS−460(商品名、日光ケミカルズ株式会社製)、比較例2として、非イオン性界面活性剤であるNIKKOL GO−440(商品名、日光ケミカルズ株式会社製)を用いた。
【0067】
[比較例3](ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステルの製造8)
攪拌機、温度計、窒素ガス吹込管及び水分分離機を備えた3Lの四つ口フラスコにポリオキシエチレン(10)ソルビトール(日本乳化剤株式会社製)370g(0.6mol)とベヘン酸(ユニケマ製、商品名:PRIFRAC2989、ベヘン酸含量88.0質量%、炭素数20〜40の飽和脂肪酸含量90質量%以上)822g(2.4mol)を仕込み、窒素気流下、生成した水を除去しながら230℃の温度で15時間反応5させ、酸価5mgKOH/g以下となったことを確認し、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル1110g(収率97質量%)を得た。得られたエステルの融点は66℃、水酸基価は64mgKOH/g、ケン化価は122.6mgKOH/gであった。
【0068】
[比較例4](ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステルの製造9)
攪拌機、温度計、窒素ガス吹込管及び水分分離機を備えた3Lの四つ口フラスコにポリオキシエチレン(120)ソルビトール(日本乳化剤株式会社製)1091g(0.2mol)とベヘン酸(ユニケマ製、商品名:PRIFRAC2989、ベヘン酸含量88.0質量%、炭素数20〜40の飽和脂肪酸含量90質量%以上)272g(0.8mol)を仕込み、窒素気流下、生成した水を除去しながら230℃の温度で15時間反応させ、酸価5mgKOH/g以下となったことを確認し、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル1300g(収率96質量%)を得た。得られたエステルの融点は40℃、水酸基価は22mgKOH/g、ケン化価は37.3mgKOH/gであった。
【0069】
[比較例5](ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステルの製造10)
攪拌機、温度計、窒素ガス吹込管及び水分分離機を備えた3Lの四つ口フラスコにポリオキシエチレン(40)ソルビトール(日本乳化剤株式会社製)978g(0.6mol)とベヘン酸(ユニケマ製、商品名:PRIFRAC2989、ベヘン酸含量88.0質量%、炭素数20〜40の飽和脂肪酸含量90質量%以上)411g(1.2mol)を仕込み、窒素気流下、生成した水を除去しながら230℃の温度で15時間反応させ、酸価5mgKOH/g以下となったことを確認し、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル1320g(収率97質量%)を得た。得られたエステルの融点は38℃、水酸基価は95mgKOH/g、ケン化価は48.4mgKOH/gであった。
【0070】
[比較例6](ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステルの製造11)
攪拌機、温度計、窒素ガス吹込管及び水分分離機を備えた5Lの四つ口フラスコにポリオキシエチレン(40)ソルビトール(日本乳化剤株式会社製)978g(0.6mol)とベヘン酸(ユニケマ製、商品名:PRIFRAC2989、ベヘン酸含量88.0質量%、炭素数20〜40の飽和脂肪酸含量90質量%以上)1224g(3.6mol)を仕込み、窒素気流下、生成した水を除去しながら230℃の温度で15時間反応させ、酸価5mgKOH/g以下となったことを確認し、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル2070g(収率97質量%)を得た。得られたエステルの融点は68℃、水酸基価は6mgKOH/g、ケン化価は91.7mgKOH/gであった。
【0071】
[比較例7]
後記する各種エステルの性状比較で、比較例7として、非イオン性界面活性剤であるレオドールスーパーTW−S120(商品名、花王株式会社製)を用いた。
【0072】
[比較例8〜10]
後記する各種エステルの性状比較で、比較例8として、イオン性界面活性剤であるコータミン86W(商品名、花王株式会社製)、比較例10として、イオン性界面活性剤であるアンヒトール24B(商品名、花王株式会社製)を用いた。
また、比較例9として、水系ワックス分散物調製時に、ミリスチン酸と水酸化カリウムを配合することにより生成されるミリスチン酸カリウムを用いた。この場合の水系ワックス分散剤の製造は、ミリスチン酸を油相、水酸化カリウムを水相に加え、界面でミリスチン酸カリウムを生成させながら乳化させる、いわゆる石鹸乳化法により行った。
【0073】
実施例1〜7のポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、及び比較例1〜7の各種エステルの構成をそれぞれ、表1及び2に示す。また、比較例8〜10のイオン性界面活性剤の構成を表3に示す。
【0074】
【表1】

【0075】
【表2】

【0076】
【表3】

【0077】
[実施例8〜22、比較例11〜29]<ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステルのワックス乳化特性の評価>
以下の表4〜13に示す処方で、水系ワックス分散物を調製し、粒径、安定性、耐塩性、耐pH性、乾燥薄膜の柔軟性を評価した。なお、表4〜9においては「ステアリン酸ステアリル」がワックスである。
【0078】
(水系ワックス分散物の製造)
表4〜13に示す油相を質量既知のビーカーに入れ、90℃に加温し均一溶解させた。次いで、油相を卓上ディスパー1000rpmで攪拌しながら、90℃に加温した水相を徐々に添加し、転相乳化した。水相添加後、30℃まで冷却して、加熱により蒸発した水を添加して、水系ワックス分散物を得た。
【0079】
(粒径測定方法)
水系ワックス分散物の粒径は、HORIBA社製レーザー回折式粒度分布計LA−300を用いて測定した。粒径評価基準を以下に示す。
粒径評価基準;
◎:メジアン径が1μmより小さく、かつ3μm以下の粒子が95%以上を占める。
○:メジアン径が1μmより小さい。
△:メジアン径が1μm以上5μm未満である。
×:メジアン径が5μm以上20μm未満である。
××:メジアン径が20μm以上である。
【0080】
(安定性評価方法)
得られた水系ワックス分散物を40℃で3ヶ月間保存した後、再度粒径を測定し、保存前後のメジアン径よりメジアン径変化率を以下の式により求めて比較した。メジアン径変化率が小さいほど保存による変化が少なく、大きいほど粒子の粗大化が進んでいることを意味する。
(メジアン径変化率)=((保存後のメジアン径)―(保存前のメジアン径))/(保存前のメジアン径)
また、安定性評価基準を以下に示す。
安定性評価基準;
◎:メジアン径変化率が0.10未満である。
○:メジアン径変化率が0.10以上0.40未満である。
△:メジアン径変化率が0.40以上0.70未満である。
×:メジアン径変化率が0.70以上1.00未満である。
××:メジアン径変化率が1.00以上である。
【0081】
(耐塩性評価方法)
水系ワックス分散物を10g取り、イオン交換水を90g加えて希釈し、その希釈済みワックス分散物に塩化カルシウムを徐々に添加して、外観変化を観察した。耐塩性評価基準を以下に示す。
耐塩性評価基準;
◎:10g添加しても変化なし。
○:5g添加で変化無し、10g添加で凝集。
△:2g添加で変化無し、5g添加で凝集。
×:1g添加で変化無し、2g添加で凝集。
××:1g添加で凝集。
【0082】
(耐pH評価方法)
水系ワックス分散物を10g取り、イオン交換水を90g加えて希釈し、その希釈済みワックス分散物にクエン酸または水酸化ナトリウムを加え、pHをそれぞれ2、13にして外観変化を確認した。耐pH評価基準を以下に示す。
耐pH評価基準;
○:変化無し。
×:凝集等発生。
【0083】
(乾燥薄膜の柔軟性評価方法)
水系ワックス分散物を10g取り、イオン交換水90gを加えて希釈し、その希釈済みワックス分散物0.5gをBLENDERMテープ(商品名、3M社製)に滴下し、直径4cmの円状に塗り広げ、室温にて乾燥させた。この乾燥したテープを、塗布面が表側になるように直径10mmのステンレス棒に巻きつけ、ワックス膜にひび割れが起きるかどうかを目視確認した。乾燥薄膜の柔軟性評価基準を以下に示す。
乾燥薄膜の柔軟性評価基準;
○:変化無し。
×:ひび割れ、または白色の線状のものが現れた。
【0084】
【表4】

【0085】
【表5】

【0086】
【表6】

【0087】
【表7】

【0088】
【表8】

【0089】
表4及び5に示す通り、実施例1〜7の本発明のポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステルを用いて得られた、実施例8〜15の本発明の水系ワックス分散物は、粒径が小さく、耐塩性、耐pH性及び安定性に優れ、乾燥薄膜の柔軟性に優れていた。
【0090】
一方、比較例1〜6の非イオン性界面活性剤は、本発明のポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステルと基本骨格は同じであるが、脂肪酸の炭素数が少ないものや、エチレンオキサイドの付加モル数が本発明品とは異なるもの、エステル価度が異なるものであり、表6及び7に示す通り、得られた水系ワックス分散物は、粒径が大きく、その安定性も本発明品よりも劣っていた。
比較例7の非イオン性界面活性剤は、本発明のポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステルとは基本骨格が異なるポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルであるが、これを用いても粒径の細かいワックス分散物は得られなかった。
【0091】
比較例8〜10のイオン性界面活性剤を用いて得られた、比較例18〜20の水系ワックス分散物は、粒径が大きく、安定性に劣り、耐塩性、耐pH性、及び乾燥薄膜の柔軟性のいずれかが劣るものであった。
【0092】
【表9】

【0093】
比較例21は、ワックスの含有量が本発明における範囲を外れるものであるが、凝集が起きてしまい、粒径の細かい水系ワックス分散物が得られなかった。また比較例22は、ワックスとポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステルの配合比が本発明における範囲を外れるものであるが、こちらも粒径の細かい水系ワックス分散物が得られず、乾燥薄膜の柔軟性に劣るものであった。
【0094】
【表10】

【0095】
【表11】

【0096】
【表12】

【0097】
【表13】

【0098】
実施例16〜22は、本発明のポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステルの他に非イオン性界面活性剤を組み合わせて、水系ワックス分散物を調製した例であるが、表10及び11に示す通り、いずれも粒径が小さく、耐塩性、耐pH性及び安定性に優れ、乾燥薄膜の柔軟性に優れた水系ワックス分散物を得ることができた。
一方、本発明のポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステルを含まない比較例23〜29については、表12及び13に示す通り、粒径が粗大となり、その他の項目についても必ずしも満足すべき評価結果は得られなかった。
【0099】
[実施例23](ヘアワックスの製造)
表14に示す成分1〜6の混合物と成分7〜11の混合物を、それぞれ別容器で90℃で加温溶解し、成分1〜6の混合物をホモミキサーで撹拌しながら、これに成分7〜11の混合物をゆっくりと添加した。添加後、50℃以下に冷却して成分12を添加し、さらに30℃以下まで冷却し、均一になるまで撹拌してヘアワックスを得た。得られたヘアワックスは、安定性が良好で、伸びが良く、均一塗布が容易で、感触の良好なものであった。
【0100】
【表14】

【0101】
[実施例24](乳化タイプアイシャドウの製造)
表15に示す成分1〜9の混合物と成分10〜12の混合物を、それぞれ別容器で90℃で加温溶解し、成分1〜9の混合物をホモミキサーで撹拌しながら、これに成分10〜12の混合物をゆっくりと添加した。添加後、50℃以下に冷却して成分13及び14を添加し、さらに30℃以下まで冷却し、均一になるまで撹拌して乳化タイプアイシャドウを得た。得られた乳化タイプアイシャドウは、安定性が良好で、伸びが良く、均一塗布が容易で、感触の良好なものであった。
【0102】
【表15】

【0103】
[実施例25](乳化タイプマスカラの製造)
表16に示す成分1〜6の混合物と成分7及び8の混合物を、それぞれ別容器で90℃で加温溶解し、成分1〜6の混合物をホモミキサーで撹拌しながら、これに成分7及び8の混合物をゆっくりと添加した。添加後、50℃以下に冷却して成分9を添加し、さらに30℃以下まで冷却し、均一になるまで撹拌して乳化タイプマスカラを得た。得られた乳化タイプマスカラは、安定性が良好で、伸びが良く、均一塗布が容易で、感触の良好なものであった。
【0104】
【表16】

【0105】
[実施例26](カーワックス(水系分散タイプ)の製造)
表17に示す成分4〜8の混合物を70℃に加温し、均一に溶解したことを確認した。次いで、40℃以下まで冷却し、成分1〜3を添加し、プロペラにて攪拌し均一にしてカーワックスを得た。
【0106】
【表17】

【0107】
[実施例27](水系分散タイプフロアワックスの製造)
表18に示す成分4〜8の混合物を70℃に加温し、均一に溶解したことを確認した。次いで、40℃以下まで冷却し、成分1〜3を添加し、プロペラにて攪拌し均一にして、水系分散タイプのフロアワックスを得た。
【0108】
【表18】

【0109】
[実施例28](ペースト状フロアワックスの製造)
表19に示す成分1〜6の混合物を90℃に加温し、均一に溶解したことを確認した。次いで、成分7〜9の混合物を90℃にて加温しながら混合し、これをディスパーで攪拌している前記成分1〜6の溶解物に添加して乳化を行った。乳化後40℃以下まで冷却して、ペースト状のフロアワックスを得た。
【0110】
【表19】

【0111】
[実施例29〜32、比較例30〜35]<固形状ワックス組成物の硬さ・柔軟性評価>
(固形状ワックス組成物の製造)
ステアリン酸ステアリルと、本発明の実施例1〜7で得られたポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステルを、1:3の質量比となるようにビーカーに入れ、90℃に加温し、プロペラで攪拌して均一に混合し、その後室温に放置することで、固形状ワックス組成物を得た(実施例29〜32)。
また、実施例1〜7で得られた前記エステルの代わりに、比較例1〜4で得られたエステルを用いたこと以外は同様にして、固形状ワックス組成物を得た(比較例30〜33)。
さらに、エステルを一切用いなかったこと以外は同様にして、固形状ワックス組成物を得た(比較例35)。
【0112】
(固形状ワックス組成物の硬さ・柔軟性評価)
得られた固形状ワックス組成物を、50mm×50mm×1mmの板状に固めてサンプルとした。そして、FUDOHレオメーター2002D・Dを用いて、φ10mmの球状アダプターを装着し、φ30×20mmの筒を両面テープでテーブルに固定して、サンプルの中心と筒の中心が合うように、サンプルを筒の上に平均的に置き、60mm/minのスピードでテーブルを上昇させ、サンプルが割れるまでの最大荷重(g)と最大荷重を示したときの進入距離(mm)を測定した。固形状ワックス組成物の硬さ評価基準及び柔軟性評価基準を以下に示す。また、評価結果を表20及び21に示す。
【0113】
固形状ワックス組成物の硬さ評価基準;
○:最大荷重が、ワックス単体の最大荷重の80%以上である。
△:最大荷重が、ワックス単体の最大荷重の50%以上80%未満である。
×:最大荷重が、ワックス単体の最大荷重の50%未満である。
【0114】
固形状ワックス組成物の柔軟性評価基準;
○:最大荷重を示したときの進入距離が、ワックス単体の値よりも大きい。
△:最大荷重を示したときの進入距離が、ワックス単体の値と同じである。
×:最大荷重を示したときの進入距離が、ワックス単体の値よりも小さい。
【0115】
【表20】

【0116】
【表21】

【0117】
実施例29〜32は、ワックスに本発明のポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステルを混合した固形状ワックス組成物であるが、表20及び21に示す通り、比較例35のワックス単体と比較すると、その硬度を保ちつつ、柔軟性が向上していた。これに対して、比較例30〜33では、硬度と柔軟性を両立できたものは無かった。
【0118】
[実施例33](固形状カーワックスの製造)
表22に示す成分1〜8の混合物を90℃で加温溶解し、プロペラにて攪拌し均一に溶解したことを確認した。次いで、成分9を添加し、攪拌して均一にした後、容器に充填し、放冷して、固形状カーワックスを得た。
【0119】
【表22】

【0120】
[実施例34](固形状皮革用艶出し剤の製造)
表23に示す成分1〜8の混合物を90℃で加温溶解し、均一に溶解したことを確認した後、これを容器に流し込み、冷却して、固形状皮革用艶出し剤を得た。
【0121】
【表23】

【産業上の利用可能性】
【0122】
本発明は、性状の良い工業用ワックス、家庭用ワックス、家庭用ポリシュ、化粧料及び固形状ワックス組成物等の簡便な製造に利用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ソルビトール1モルに対してエチレンオキサイドを平均20〜100モル付加させたポリオキシエチレンソルビトールと炭素数20〜40の飽和脂肪酸とを、1:2.5〜1:5.5のモル比で反応させ、酸価10mgKOH/g以下までエステル化することにより得られることを特徴とするポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル。
【請求項2】
請求項1に記載のポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステルと、ワックス、及び水を含有し、該ワックスの含有量が0.1〜60質量%であり、該ワックス1質量部に対する前記ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステルの含有量が0.01質量部以上であることを特徴とする水系ワックス分散物。
【請求項3】
前記ワックスの融点が50〜110℃であることを特徴とする請求項2に記載の水系ワックス分散物。
【請求項4】
前記ワックスが、エステルワックス、パラフィンワックス、ポリエチレンワックス、カルナウバワックス、セレシン及びキャンデリラワックスから選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とする請求項2又は3に記載の水系ワックス分散物。
【請求項5】
さらに、非イオン性界面活性剤を含有し、該非イオン性界面活性剤及び前記ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステルの合計質量中のポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル含有量が25〜99.9質量%であることを特徴とする請求項2〜4のいずれか一項に記載の水系ワックス分散物。
【請求項6】
請求項2〜5のいずれか一項に記載の水系ワックス分散物を含有することを特徴とする化粧料。
【請求項7】
請求項2〜5のいずれか一項に記載の水系ワックス分散物を含有することを特徴とするワックス製剤。
【請求項8】
請求項1に記載のポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステルを含有することを特徴とする水系用ワックス分散剤。
【請求項9】
請求項1に記載のポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステルを含有することを特徴とする化粧料。
【請求項10】
請求項1に記載のポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステルと、ワックスと、を含有することを特徴とする固形状ワックス組成物。
【請求項11】
前記ワックスの含有量が15〜95質量%であり、該ワックス1質量部に対する前記ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステルの含有量が0.01〜5質量部であることを特徴とする請求項10に記載の固形状ワックス組成物。

【公開番号】特開2008−101159(P2008−101159A)
【公開日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−286453(P2006−286453)
【出願日】平成18年10月20日(2006.10.20)
【出願人】(000227009)日清オイリオグループ株式会社 (251)
【Fターム(参考)】