説明

ポリオレフィンフィルムの製造法

本発明は、少なくとも500,000g/モルの重量平均分子量を持つ、粉末形態にある、出発超高分子量ポリオレフィンを等圧プレスを用いる圧縮工程に付し、圧縮されたポリオレフィンをポリマーの加工中のいずれの点でもポリマー温度が融点よりも高い値に上昇することがないような条件下でローリング工程と少なくとも1つの延伸工程に付す工程とを有する、超高分量ポリオレフィンのフィルムを製造する方法に関する。この方法は高品質の超高分子量ポリオレフィンフィルムの製造を可能とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超高分子量ポリオレフィンのフィルムを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
米国特許5,091,133は、上下反対関係で配置された無端ベルトの組合せ間にポリオレフィン粉末を供給し、ポリオレフィン粉末を無端ベルトの間に保持したまま加圧装置によりポリオレフィン粉末の融点よりも低い温度でポリオレフィン粉末を加圧成形し、そして得られた圧縮成形ポリオレフィンをローリングおよび延伸する、これらの工程によって、超高分子量ポリオレフィンのシートを製造する方法を記載している。
欧州特許0467323は、染料が粉末超高分子量ポリエチレンに添加され、次いでそれを圧縮成形および延伸に付して、超高分子量ポリエチレンの着色フィルムを製造する方法が記載されている。
【0003】
米国特許4,879,076は、圧縮をエクストルーダーまたは未定義のプレス中で行う、圧縮と延伸を含む方法によってポリエチレン材を製造する方法を記載している。
上記米国特許5,091,133に記載された方法は、許容できる性能を持つ製品を与えるものの、未だ改良の余地のあることが判った。特に、非常に高い延伸比のフィルムの製造には、米国特許5,091,133に記載された方法は、不均質な品質の製品を与える可能性がある。不均質な品質はフィルムの引張強度を制限する。
従って、高い均質性、高い引張強度および他の望ましい物理的性質を備えた製品を与える、超高分子量ポリオレフィンのフィルムを製造する方法が求められている。本発明による方法は、比較的広いテープの製造も可能とする。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明はそのような方法を提供する。かくして、本発明は、粉末形態にある、少なくとも500,000g/モルの重量平均分子量を有する出発超高分子量ポリオレフィンを、等圧プレスを用いる圧縮工程に付す工程および
圧縮されたポリオレフィンを、ポリマーの加工中の時点でその温度が融点よりも高い値までに上昇することがないような条件下で、ローリング工程と少なくとも1つの延伸工程に付す工程、
を有する超高分子量ポリオレフィンのフィルムの製造法を対象とする。
【0005】
本発明の方法は、高い均質性を備えた、高品質ポリマーフィルムの製造を可能とする。得られる製品は、一定の品質、高強度、全幅に亘る高均質性および均質密度分布を有している。本発明方法の他の利点は下記するさらなる詳細から明らかとなろう。
米国特許4,353,855は、流体様圧力を用いる型中でポリマー粉末を圧縮することによって、無ストレスのプラスチック製品を製造する方法を開示している。しかしながら、圧縮工程はポリマーの融点よりも高い温度で行われており且つ引き続く延伸は実施されていない。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】本発明で用いるのに適した等圧プレス構成の第1態様を示している。
【図2】本発明で用いるのに適した等圧プレス構成の第2態様を示している。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明は以下にさらに詳しく説明される。
【0008】
本発明の複数の態様は詳細に且つ添付の図を参照して実施例によって記載される。
【0009】
本発明方法の第1工程では、ポリオレフィン粉末が等圧プレスで圧縮される。等圧プレスは、圧縮されるべき材料の厚みと独立に、圧縮されるべき材料に掛けられる圧力が一定であるプレスである。これは、目的製品の厚みが一定であり、圧縮されるべき材料の厚みで掛けられる圧力が変化する定容プレスと対照的である。等圧プレスは、当該技術分野で知られており、例えばドイツ国のハイメン社(Hymmen GmbH)から市販品として入手される。しかしながら、超高分子量ポリオレフィンのフィルムを製造する方法に等圧プレスを用いることは今までに記載されたことはなかった。
【0010】
本発明の一実施態様において、用いられる等圧プレスは、圧力対圧縮された材料の密度の比が圧縮される材料の全ての点において一定であるような圧力分布を持っている。プレスは異なる圧力で操作されうる1つ以上の圧縮ゾーンを有することができることに注目すべきである。
【0011】
本発明で用いられる適当な等圧プレスが図1を参照して説明される。当業者には明らかなように、以下に記述する種々の有利な態様は特別な装置に限定されないことに注意されたい。図1において、装置は、ローラー1、2とローラー3、4との2つのローラー対を有し、そして垂直に反対の関係でローラー1〜4によってぴんと張られて配置された無端ベルト12、13の対を有している。反対の圧縮クッション5、6、7および8の対は、ベルト12、13の内側に置かれており、それらのベルトによってポリオレフィンはベルト12、13の間でサンドイッチにされ、ベルト12、13はポリオレフィンに圧力を移動する。圧力クッション5、6、7および8は、好ましくは、ポリオレフィンに圧力を掛けるための気体媒体および/または液体媒体を(内に)有している。例えば、油および/または空気が媒体として使用されうる。1つだけの圧力クッション対または多数の圧力クッション対を用いることも可能である。媒体が加熱されるという事実により、ポリオレフィンの温度は圧縮中非常に正確に制御されうる。実際、本発明に伴う利点を得るためには、後述するとおり、良好な温度制御が必須となる。圧力クッション5、6、7および8内の加熱可能媒体に変わるものとして、圧力クッション5、6、7および8は外部加熱装置(例えばマイクロ波や赤外線)によって加熱されることも可能である。付加的圧力クッション(図2の16、17)により、積極的にあるいは非積極的に冷却することによって圧縮された材料を冷却して無端ベルト12、13に粘着するのを防止することもできる。ポリオレフィンに圧力を掛けるための、圧力クッション1〜4を備えたプレスは、圧縮ゾーンに亘る幅と長さに均一圧力を保証するので、以下にさらに詳しく説明するように本発明の好ましい態様である。
【0012】
図1において、出発ポリオレフィン粉末は、一般にはドクターブレード11の前で、無端ベルト12上にホッパーシステムから供給される。圧縮工程の前では、ベルト上の出発ポリオレフィン20は、予熱板9を用いて、(熱)圧縮することによる延性を改善するため予熱される。ポリオレフィン粉末の予熱は、ポリオレフィン粉末層の均質性に悪影響を与える、粉末粒子の静電荷の増加を引き起こす。この静電荷を克服するため、粉末は、冷たい無端ベルト12上に供給される。圧縮ゾーンで同じ無端ベルト12が加熱されることは、ポリオレフィン粉末が供給される前にベルト12の冷却が必要であることを意味する。ベルト12の連続した加熱と冷却は、ベルトに高い内部テンションを掛けベルト12の頻繁な損傷を引き起こす。ベルト12の加熱と冷却のサイクルを避けるため、本発明の好ましい態様では、ポリオレフィン粉末はベルト12上に直接供給されず、ベルト12、13の中間に走行する支持ベルト10上に供給される。支持ベルト10は、圧力ゾーンに入る前に、ポリオレフィンの温度を軟化点よりも高くするために、加熱プレート9およびベルト12、13の温度によって加熱される。支持ベルト10上の加熱されたポリオレフィンは、二重ベルトプレスのニップに供給される。ポリオレフィンが圧縮されたとき、圧縮されたポリオレフィンのこのようにして形成されたシートはロール14に供給される。支持ベルト10はロール15に巻き取られる。
【0013】
図2は、本発明で用いるに適した等圧プレスのさらなる態様である。この態様において、加熱クッション5、6、7および8の他に、プレスは、圧縮されたポリオレフィンを、無端ベルト上に粘着するのを防止するため、積極的あるいは非積極的冷却により冷却するために用いられる付加的クッション16、17を含んでなる。図2の態様において、加熱プレート9はない。その代りに、ベルト12、13の温度がポリオレフィンの温度を決定する。この態様において、ドクターブレード11は図1におけるよりも高く設置されており、そのため第1に、粉末のより厚い層が得られる。2つの付加的案内ロール18、19は圧縮ゾーンのニップにポリオレフィン20を案内するために使用される。
【0014】
本発明の好ましい態様において、ポリオレフィン粉末の層から、包埋された空気がニップ中で放出されるのを容易にするために、入口角は4.5°よりも小さく、好ましくは3°よりも小さく、より好ましくは2.5°と0.5°の間に、特には約1.5°に保たれる。
ポリオレフィンの把持された層は、1つまたは複数の圧縮ゾーンで無端ベルト間で圧縮される。ポリオレフィン粉末の嵩密度によって圧縮工程は1つの圧縮ゾーン中で等圧プレスで行われるか、あるいはそれぞれのさらなる圧縮ゾーンにおける圧力がその前の圧縮ゾーンにおける圧力よりも高い、1つ以上の圧縮ゾーンが用いられてもよい。本発明の特定の態様において、等圧プレスは第1圧縮ゾーンが最大10バール、例えば2〜10バールの間、さらに特に3〜8バールの間の圧力で操作され、一方第2圧縮ゾーンは10バールを超える圧力例えば最大80バールの圧力で操作される。良好な温度制御とともにそのような高い圧力の使用を可能とするのは等圧プレスの使用によることに注目されるべきである。この態様は、後に更に詳しく説明するように、ポリオレフィン粉末が低い嵩密度を有する場合に特に利点がある。
【0015】
本発明方法の一実施態様において、有効幅が少なくとも250mm、特に少なくとも400mmの幅、さらに特に少なくとも1100mmの幅を持つプレスが用いられる。広いプレスの使用は、高延伸比を採用しながら、比較的広いフィルムの製造を可能とする。
負荷される圧力は、達成されるべきである、圧縮された材料の密度によって決定される。材料のさらなる加工を適切なものとするために、材料を理論ポリマー密度の少なくとも95%、特に少なくとも97%、さらに特に少なくとも98%の密度まで圧縮することが一般に求められている。
もし材料が理論ポリマー密度の95%より低い密度に圧縮されているなら、その材料はあまりにも脆く材料の延伸ができなくなる。さらに、材料の凝集と生強度はさらなる加工を適切なものとするには低すぎる。
例えば、ポリオレフィンがポリエチレンである場合、理論ポリマー密度は0.97g/cmである。従って、負荷圧力は一般に、圧縮される材料の密度が少なくとも0.92g/cmとなるように選ばれている。さらに特に、負荷圧力は圧縮される材料の密度が少なくとも0.93g/cmとなるように選ばれる。就中、負荷圧力は圧縮される材料の密度が少なくとも0.94g/cmとなるように選ばれる。
【0016】
一般に、圧縮工程で負荷される圧力は少なくとも5バール、特に少なくとも10バール、就中少なくとも20バールである。ポリマーの性質によって、上記密度を得るに必要とされる圧力は比較的高いことがありうる。幾つかの態様では、圧縮工程で負荷される圧力は少なくとも25バール、特に少なくとも30バール、さらに特に少なくとも35バール、よりさらに特に少なくとも40バール、一層特に少なくとも45バール、または少なくとも50バールである。80バールを超える値は一般に必要とされない。
必要とされる密度を得ることを可能とするため、圧縮は高められた温度で、特に、ポリマーのバイカット軟化点よりも高く且つポリマーの非束縛融点よりも低い温度で、行われる。処理効率の理由により、圧縮工程を、ポリマーの非束縛融点の比較的近くで実施することが一般に望ましい。これにより圧縮が容易となり、比較的高く凝集された材料が得られる。比較的高く凝集された材料は比較的良好な延伸性能を有し、引張強度の如き改良された性能を持つフィルムを与える。しかしながら、圧縮中の温度は、高強度および高モジュラスポリマー材料を得るために、ポリマーの非束縛融点よりも低く維持されることが本発明の重要な特徴である。そのような材料は生成物が圧縮中に溶融するときには得られない。
【0017】
本発明方法では、圧縮工程は、一般に、ポリマーの非束縛融点よりも少なくとも1℃低い温度で実施される。ポリマーの性能により、圧縮工程をポリマーの非束縛融点よりも少なくとも3℃低い温度で、特にポリマーの非束縛融点よりも少なくとも5℃低い温度で、実施することが可能である。ポリマーの非束縛融点よりも1℃より低い温度で圧縮を実施することが可能である場合、これは方法効率の理由から好ましい。一般に、圧縮工程はポリマーの非束縛融点よりも最大で40℃低い温度で、特にポリマーの非束縛融点よりも最大で30℃低い温度で、就中最大で10℃低い温度で実施される。
本発明方法の好ましい態様では、圧縮工程の温度は2℃の温度枠内で、特に1℃の温度枠内で、一定に維持される。これは、改良された目的性質を持つ生成物を結果として与える。上記の如く、そのような狭い温度枠が得られることは、等圧プレスを用いることと結びついた特徴の1つである。
【0018】
ポリマーは粉末の形態で供給される。好適な粉末は最大で1000ミクロン、好ましくは最大で500ミクロン、就中最大で250ミクロンの粒子径を有する粒子からなる。粒子は好ましくは少なくとも1ミクロン、特に少なくとも10ミクロンの粒子径を有する。粒径分布は以下のようにして、レーザー回折(PSD、シンパテック クイッセル)により決定される。サンプルは界面活性剤含有水中に分散されそして凝集/からみ合いを無くすために30秒間超音波処理される。このサンプルはレーザービームを通過させてポンプでくみ上げられ、散乱された光が検出される。光回折の量が粒子径の指標となる。
ポリマーの性質により、出発ポリマー粉末は一般に0.08g/cmと0.6g/cmの間の嵩密度を有する。嵩密度はASTM−D1895に従って決定される。この値の公正な近似値が次のようにして得られる。UHMWPE粉末のサンプルが正確に100mlの計量ビーカーに注がれる。余分な材料を破棄したのち、ビーカーの内容物の重量が決定され、嵩密度が計算される。
【0019】
嵩密度はこのようにポリマー粉末中に存在する空気の百分率の指標となる。ポリマー粉末中に存在する空気の百分率は、嵩密度とポリマー密度とから下記式によって計算される。
空気百分率=100%(1−嵩密度/ポリマー密度)
一般に、本発明方法で用いられるポリマー粉末中の空気百分率は30%と90%の間にある。本発明の一実施態様において、出発粉末は60%と40%との間の空気百分率を有する。
【0020】
本発明方法の他の実施態様では、出発粉末は60%超、特には65%超、さらに特には70%超の空気百分率を有する。通常、そのような高い空気百分率を持つ粉末はポリマーフィルムに加工することが困難であることが判っており、本発明はそのような低密度材料の加工も可能とすることが判った。
例えばポリマーが高分子量ポリエチレンの場合、嵩密度は一般に0.08g/cmと0.6g/cmの間にある。一実施態様では、慣用のポリオレフィン類、特に高分子量ポリエチレン類と比較して比較的低い嵩密度を有するポリオレフィン、特に高分子量ポリエチレンが用いられる。特に、本発明方法で用いられるポリオレフィンは0.50g/cmより低い、特に0.25g/cmより低い、さらに0.18g/cmより低い、就中0.13g/cmより低い嵩密度を有する。これは、例えば、以下によるさらに詳細に記載される、からまっていない超高分子量について当てはまる。
【0021】
本発明方法において、圧縮工程はポリマー粒子を単一の目的物に、例えばマザーシートの形態に結合するために実施される。このマザーシートはローリング工程に付され次いで延伸工程に付される。延伸工程はポリマーに配向を付与しそして最終製品を製造するために実施される。圧縮工程と延伸工程は互いに直交する方向で実施される。ローリング工程では、圧縮が圧縮方向に直交する方向の幾分の延伸と一緒になる。
本発明による方法の延伸工程はポリマーフィルムを製造するために実施される。延伸工程は当該技術分野で慣用の方法で1つまたはそれ以上の工程で実施することができる。好適な方法は、第2のローラーが第1のローラーよりも速く回転している両ローラーとも加工方向に回転している一組のローラーに、1つまたはそれ以上の工程でフィルムを導くことを含んでいる。延伸はホットプレート上でまたは空気循環炉中で行うことができる。
【0022】
一般に、本発明による方法では、延伸工程は全延伸倍率が少なくとも30、特に少なくとも50となるような条件下で実施される。ポリマーの性質に応じ、より高い延伸倍率、より特に少なくとも80、さらに特に少なくとも100、一層特には少なくとも120、一層特には少なくとも140、一層特には少なくとも160を採用することが可能でありおよび/または望ましい。本発明の利点は、特にこれらの高い延伸倍率でより顕著となることが明らかにされた。
全延伸倍率は、圧縮シートから製造された延伸フィルムの断面によって、この圧縮シートの断面の面積を割ったものとして定義される。
【0023】
本発明による方法では、延伸工程は一般に方法条件下のポリマーの融点よりも少なくとも1℃低い温度で実施される。当業者は承知しているとおり、ポリマーの融点はそれらが置かれている束縛に依存する。このことは融点は方法条件下で場合々々で変化することを意味している。処理中に引張応力が急激に落ちる温度として容易に決定できる。ポリマーの性質によって、延伸工程を方法条件下のポリマーの融点よりも少なくとも3℃低い温度で、より好ましくは延伸加工条件下のポリマーの融点よりも少なくとも5℃低い温度で実施することができる。一般に、延伸工程は方法条件下のポリマーの融点よりも最大で30℃低い温度で、特には方法条件下のポリマーの融点より最大で20℃低い温度、さらに特には最大で15℃低い温度で実施される。
【0024】
一実施態様において、ポリマーは重量平均分子量(Mw)が少なくとも500000g/mol、特には1×10g/molと1×10g/molの間にある超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)である。ポリマーの分子量分布と平均分子量(Mw、Mn、Mz)は溶媒として1,2,4−トリクロロベンゼン(TCB)を用い、160℃の温度で、ASTM D6474−99に従って決定することができる。高温度サンプル調製装置(PL−SP260)を含む好適なクロマトグラフィー装置(ポリマーラボラトリー社のPL−GPC220)が用いられる。そのシステムは5×10〜8×10g/molの分子量範囲で16ヶのポリスチレン標準(Mw/Mn<1.1)を用いて校正される。
【0025】
分子量分布は溶融レオメトリーを用いて決定することができる。測定する前に、熱酸化分解を防止するためにイルガノックス1010の如き抗酸化剤が0.5wt%添加されたポリエチレンサンプルが先ず50℃、200バールでシンターされる。シンターされたポリエチレンから得られた、直径8mm、厚さ1mmのディスクが、窒素雰囲気下レオメーター中で速やかに(〜30℃/min)平衡融解温度よりも十分に高い温度に加熱される。例えば、ディスクは180℃で2時間あるいはそれ以上保持された。サンプルとレオメーターディスクとの間のずれの量(slippage)はオッシロスコープの助けを借りてチェックすることができる。動的実験中、レオメーターからの2つの出力シグナル、すなわち1つのシグナルは正弦波歪に相当し、もう一方のシグナルは得られる応力応答に相当する、がオッシロスコープで連続的に監視される。歪の低い値で達成できる完全な正弦波応力応答はサンプルとディスクとの間にずれの量がないことを示していた。
【0026】
レオメトリーは、TAインストルメンツ社のレオメトリックスRMS800の如きプレート−プレートレオメーターを用いて実施することができる。ミードアルゴリズム(Mead algorithm)を使用している、TAインストルメンツ社から提供されるオーケストレーターソフトウェアは、ポリマー溶融物について決定された、モジュラス対周波数データからモル質量とモル質量分布を決定するために用いることができる。データは160〜220℃の間で等温度条件下で得られる。0.001〜100rad/sの間に、良好に適合した角周波数領域と0.5〜2%の間に線状粘弾性領域の一定歪を得ることが選択されなければならない。時間−温度重ね合せは190℃の参照温度で行われる。0.001周波数(rad/s)よりも低いモジュラスを決定するために応力緩和実験を行うことができる。応力緩和実験において、固定温度でポリマー溶融物に対する単一の一時的変形(工程歪)がサンプルに付与され且つ維持されそして歪の時間依存衰退が記録される。
【0027】
出発ポリマーの非束縛融点は138℃と142℃の間にあり、当業者により容易に決定される。上記に示された値を用いて適当な操作温度の計算が可能となる。
非束縛融点の決定は、窒素中、+30〜+180℃の温度範囲で10℃/minの昇温速度でDSC(示唆熱分析)によって実施されうる。80〜170℃における最も大きな吸熱ピークの頂点が融点としてここでは評価される。
【0028】
本発明による方法の好ましい実施態様で用いられるUHMWPEはエチレンホモポリマーまたはエチレンと約3〜20の炭素原子を持つ他のα−オレフィンや環状オレフィンであるコモノマーとのコポリマーである。その例としては、プロペン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、シクロヘキセン等が挙げられる。最大20までの炭素原子を持つジエン例えばブタジエンまたは1,4−ヘキサジエンの使用も可能である。本発明による方法で用いられるエチレンホモポリマーまたはコポリマー中の(非エチレン)α−オレフィンの量は、最大で10モル%、好ましくは最大で5モル%、より好ましくは最大で1モル%である。(非エチレン)α−オレフィンが用いられるとき、少なくとも0.001モル%、特に少なくとも0.01モル%、就中少なくとも0.1モル%の量で一般に存在する。明らかに、出発材料についての上記範囲は最終ポリマーフィルムについても適用される。
【0029】
本発明による方法は固相状態で実施される。最終ポリマーフィルムは、0.05重量%より少ない、特には0.025重量%より少ない、より特には0.01重量%より少ない、ポリマー溶媒含量を持っている。
本発明によるフィルムは、二次元の寸法が三次元の寸法よりも実質的に大きいことで特徴づけられる三次元物体である。特に、2番目に小さい寸法のフィルム幅と最も小さい寸法のフィルム厚との間の比は少なくとも50である。
その実施態様の1つにおいて、本発明による方法は、UHMWPEから、少なくとも1.0GPaの引張強度、少なくとも15J/gの引張破断エネルギーおよび少なくとも500000g/molのMwを持つフィルムを製造するのに適当である。
【0030】
引張強度はASTM D882−00に従って決定される。延伸倍率と延伸温度によって、引張強度は少なくとも1.3GPa、少なくとも1.5GPa、または少なくとも1.7GPaで得られる。幾つかの実施態様では少なくとも2.0GPaの引張強度を持つ材料も得られる。しばしば、少なくとも2.5GPa、特に少なくとも3.0GPa、就中少なくとも3.5GPaの引張強度も得られる。少なくとも4GPaの引張強度も同様に得られる。
引張破断エネルギーは50%/minの歪速度を用いてASTM D882−00に従って決定される。応力−歪曲線の下単位質量当りのエネルギーを積分することでそれは計算される。延伸倍率によって、本発明によれば、少なくとも15J/gの引張破断エネルギーまたは少なくとも25J/gの引張破断エネルギーを持つフィルムが得られる。幾つかの実施態様では、少なくとも30J/g、特に少なくとも40J/gGPa、就中少なくとも50J/gGPaの引張破断エネルギーを持つ材料が得られる。
【0031】
本発明による方法によって製造されたUHMWPEのモジュラスは一般に、少なくとも75GPaである。モジュラスは、ASTM D822−00に従って決定される。延伸倍率によって、少なくとも85GPaのモジュラスが得られる。幾つかの実施態様において、少なくとも100GPa、特に少なくとも120GPaのモジュラスが得られる。少なくとも140GPa、又は少なくとも150GPaのモジュラスを得ることも可能である。
本発明で用いられる超高分子量ポリエチレンは比較的狭い分子量分布を有すことが好ましい。これは最大8のMw(重量平均分子量)/Mn(数平均分子量)比によって表される。特にMw/Mn比は最大6、特に最大4、就中最大2である。
【0032】
1つの実施態様において、最大1.4MPa、特に1.0MPa、さらに特に最大0.9MPa、よりさらに最大0.8MPa、とりわけ最大0.7MPaの、160℃で溶融した直後に決定される弾性剪断モジュラスGを持つ超高分子量ポリエチレンが用いられる。“溶融した直後”という言葉は、弾性剪断モジュラスは、ポリマーが溶融するや否や、特にポリマーが溶融した後15秒以内に決定されることを意味している。このポリマー溶融物についてGは、ポリマーのモル質量に依存して、1、2またはそれ以上の時間で、0.6MPaから2.0MPaへ増加するのが典型的である。Gはゴム状平坦領域における弾性剪断モジュラスである。それは、からみ合い密度に逆比例する、からみ合いMe間の平均分子量に関係している。均一なからみ合い分布を持つ熱力学的に安定な溶融物において、Meは式G=gρRT/Meを経てGから計算される。ここで、gは1で定められた係数であり、ρは密度g/cmであり、Rは気体定数であり、Tは絶対温度Kである。溶融直後の低い弾性剪断モジュラスは、からみ合いの間、ポリマーの長い延伸に耐えそして低いからみ合い度を示す。からみ合い生成を伴うGの変化を研究するために採用された方法は刊行物に記載されたものと同じである(ラストジ、エス;リピッツ、ディ;ペターズ、ジー;グラフ、アール;イエフェン、ワイおよびスピース、エイチ“ポリマー結晶の溶融によるポリマー溶融物中の不均質性”Nature Materials 4(8)、2005年8月1日、635〜641およびリピック、デー、アールのPhD論文“ポリマーの溶融動力学の制御;新しい溶融状態への道”アイントホーフェン工科大学、2007年3月6日、ISBN978−90−386−0895−2)。このタイプのポリマーは弾道学目的に魅力的であることが見い出された。
【0033】
本発明の1つの特別な実施態様において、ポリエチレンは、からみ合いのないUHMWPEである。本明細書において、からみ合いのないUHMWPEは、少なくとも500,000g/molの重量平均分子量(Mw)、最大で8のMw/Mn比および160℃で溶融直後に求められた、最大で1.4MPaの弾性モジュラスGによって特徴づけられる。これらのパラメーターについて上記された好ましい範囲は本発明の実施態様にも適用される。
【0034】
ポリマーが160℃で溶融直後に求められた、最大で1.4MPaの弾性モジュラスGを持つポリマーである場合、エチレンを、場合により上記したような他のモノマーの存在下、単座重合触媒の存在下、ポリマーの結晶化温度よりも低い温度で重合することによって製造することができる。ポリマーは生成するとすぐに結晶化する。特に、反応条件は重合速度が結晶化速度よりも遅いように選ばれる。これらの合成条件は、分子鎖を、それらが生成するとすぐに結晶化するようにし、溶液や溶融物から得られたものと実質的に異なる単独のモルホロジーに導く。触媒の表面で製造された結晶モルホロジーはポリマーの結晶化速度と生長速度の間の比に大きく影響される。さらに、この特別なケースでは結晶化温度でもある合成温度は、得られるUHMWPE粉末のモルホロジーに大きく影響する。一実施態様では、反応温度は−50℃と+50℃との間、特に−15℃と+30℃との間にある。触媒のタイプ、ポリマーの濃度および反応に影響するその他のパラメーターとともにどの反応温度が適当であるかを、通常の試行錯誤で決定することは当業者の理解範囲内のことであるのはよく知られている。
【0035】
からみ合いのないUHMWPEを得るために、複数の重合部位が合成中のポリマー鎖のからみ合いを防止するために互に十分に離れていることが重要である。これは結晶化媒体中に低濃度で均一に分散された単座触媒を用いることで行われる。特に、反応媒体1l当り、1.10〜4モル触媒よりも低い濃度、特に1.10〜5モル触媒よりも低い濃度が適当である。担持された単座触媒は、生成中のポリマーの実質的なからみ合いが防止されるに十分に活性部位が離れていることに注意する限りにおいて、同様に用いられる。
本発明で用いられる出発UHMWPEを製造するための好適な方法は、当該技術分野で知られている。例えばWO01/21668およびUS20060142521が参照される。
【0036】
本発明による方法で用いられる(からみ合っていない)UHMWPEは、好ましくは少なくとも74%、特に少なくとも80%のDSC結晶化度を有する。フィルムのモルホロジーは、例えばパーキンエルマーDSC7による、走査示差熱分析(DSC)を用いて特徴づけられる。例えば、既知重量(2mg)のサンプルを、1分当り10℃で30℃から180℃まで加熱し、180℃に5分間保持し、次いで1分当り10℃で冷却する。DSC走査の結果は、温度(x軸)に対する熱流量(mW又はmJ/s:y軸)のグラフとしてプロットされる。結晶化度は走査の発熱部分からのデータを用いて測定される。結晶溶融転移についての溶融エンタルピーΔH(J/g)は、主溶融転移(発熱)の出発点直前に決定された温度から溶融が終了したことが観察される点の直後の温度までの、グラフ下の面積を求めることによって計算される。計算されたΔHは、次いで、約140℃の溶融温度で100%結晶性PEについて決定された理論溶融エンタルピー(ΔHc、293J/g)と比較される。DSC結晶化指数はパーセント100(ΔH/ΔHc)として表示される。
【0037】
からみ合いのないUHMWPEが本発明で用いられる場合、圧縮とローリング工程は、一般に、ポリマーの非束縛融点よりも少なくとも1℃低い温度、特にポリマーの非束縛融点よりも3℃よりも低い温度、とりわけポリマーの非束縛融点よりも5℃よりも低い温度で実施される。一般に、圧縮工程は、ポリマーの非束縛融点よりも高々40℃低い温度で、特にポリマーの非束縛融点よりも高々30℃低い温度で、とりわけ高々10℃よりも低い温度で実施される。この実施態様の方法において、延伸工程は、一般に、方法条件下のポリマーの融点よりも少なくとも1℃よりも低い温度で、特に方法条件下のポリマーの融点よりも少なくとも3℃よりも低い温度で、とりわけ方法条件下のポリマーの融点よりも少なくとも5℃よりも低い温度で、実施される。当業者が承知しているとおりのポリマーの融点はそれらが置かれた束縛に影響される。これは方法条件下の融点はケース毎に変わることを意味している。それは、この方法での引張応力が急激に低下する温度として容易に決定される。一般に、延伸工程は方法条件下のポリマーの融点よりも高々30℃よりも低い温度で、特に方法条件下のポリマーの融点よりも高々20℃よりも低い温度で、とりわけ高々15℃よりも低い温度で、実施される。
【0038】
本発明の一実施態様において、特にからみ合っていないポリエチレンについては、延伸工程は、第1延伸工程が第2延伸工程よりも低い温度で実施される、少なくとも2つの別個の延伸工程および場合により、さらなる延伸工程を含む。一実施態様において、延伸工程は、それぞれのさらなる延伸工程が先行する延伸工程の温度よりも高い温度で実施される、少なくとも2つの別個の延伸工程を包含する。当業者に明らかなとおり、この方法は、個々の工程が、例えば特定の温度の個々のホットプレート上に供給されるフィルムの形態で、識別されるようにして実施することができる。この方法は、延伸工程の始めには比較的低い温度にそして延伸工程の最後には比較的高い温度に、その間に温度勾配を持たせてフィルムを曝す、連続法で実施することができる。この実施態様は、例えば圧縮装置に最も近いホットプレートの最後の領域が圧縮装置から最も遠いホットプレートの最後の領域よりも低い温度を有する、温度領域を備えたホットプレート上にフィルムを導くことによって実施することができる。1つの実施態様において、延伸工程中に施される最も低い温度と延伸工程中に施される最も高い温度との間の差は、少なくとも3℃、特に少なくとも7℃、とりわけ少なくとも10℃である。一般に、延伸工程中に施される最も低い温度と延伸工程中に施される最も高い温度との間の差は、高々30℃であり、特に高々25℃である。
【0039】
ポリエチレンがからみ合っていないポリエチレンである場合、UHMWPEの慣用方法と比較して、少なくとも2GPaの強度を持つ材料が比較的高い変形速度で製造できることが、同様に明らかにされた。変形速度は、装置の製造能力に直接関係する。経済的理由から、フィルムの機械的性質に悪影響を及ぼさずに、できるだけ高い変形速度で製造することは重要なことである。特に、少なくとも2GPaの強度を持つ材料は、生産物の強度を1.5GPaから少なくとも2GPaに増加させるために必要とされる延伸工程を少なくとも4%/秒の速度で実施する方法によって製造できることが明らかとなった。慣用のポリエチレン加工では、この速度でこの延伸工程を実施することは不可能である。一方、慣用のUHMWPE加工では、例えば、1又は1.5GPa、の強度へ、最初の延伸工程が4%/秒を超える速度で実施され、フィルム強度を2GPaまたはそれ以上の値にまで増加させることが要求される最後の工程は4%/秒よりも可成り小さい速度で実施されなければならず、さもないとフィルムが破断することになる。これに対し、本発明による方法では、1.5GPaの強度を持つ中間のフィルムを少なくとも4%/秒の速度で延伸して少なくとも2GPaの強度を持つ材料を得ることが可能であることが明らかにされた。さらに好ましい強度の値については上記したことが参照される。この工程で用いられる速度は、少なくとも5%/秒、少なくとも7%/秒、少なくとも10%/秒またはさらに少なくとも15%/秒であることができる。
【0040】
フィルムの強度は採用された延伸倍率に関係する。それ故、この効果は次のように表すこともできる。本発明の一実施態様によれば、本発明による方法の延伸工程は、延伸倍率が80から延伸倍率が少なくとも100、特に少なくとも120、さらに特に少なくとも140、就中少なくも160への延伸工程を、上記した延伸速度で実施するような方法で実施することができる。
さらなる態様において、本発明による方法の延伸工程は、60GPaのモジュラスを持つ材料から少なくとも80GPa、特に少なくとも100GPa、さらに少なくとも120GPa、少なくとも140GPaまたは少なくとも150GPaのモジュラスを持つ材料への延伸工程が上記した速度で実施されるようにして実施することができる。
【0041】
高速延伸工程が始まるときの計算のために開始点として、それぞれ1.5GPaの強度、80の延伸倍率および/または60GPaのモジュラスを持つ中間生産物が用いられることは当業者には明らかであろう。このことは、出発材料が強度、延伸倍率またはモジュラスについての特定の値を持つ場合に、別個に同定しうる延伸工程が実施されることを意味するものではない。これらの性質を持つ生成物は延伸工程中の中間生産物として計算される。延伸倍率は、特定の出発性質により計算されて生産物に戻される。上記した高い延伸速度は、1つまたは複数の高速延伸工程を含む全ての延伸工程が方法条件の下ポリマーの融点よりも低い温度で実施されるという要求に依存していることが注目される。
【0042】
からみ合っていないポリエチレンが本発明で用いられる場合、製造されたフィルムは、少なくとも3の200/110一平面配向係数Φを有している。200/100一平面配向係数Φは、反射配置において決定されるとおり、テープサンプルのX線回折(XRD)パターンにおける200ピーク領域と110ピーク領域との間の比として定義される。
広角X線散乱(WAXS)は物質の結晶構造についての情報を与える技術である。この技術は、特に、広角で散乱されたブラッグのピークの解析を参照している。ブラッグのピークは広範囲の構造次元から結果として得られる。WAXS測定は、回折パターン、つまり回折角2θ(これは回折されたビームと一次ビームの間の角度である)の関数としての強度を生成する。
【0043】
200/100一平面配向係数はテープ表面について200および110結晶面の配合の度合についての情報を与える。高い200/110一平面配向を持つテープサンプルは、200結晶面がテープ表面に平行に高く配向している。高い一面配向は一般に高い引張強度と高い引張破断エネルギーを伴うことが明らかにされた。ランダムに配向された結晶子を持つ試料についての200と110ピーク領域の比は約0.4である。しかしながら、本発明の一実施態様で好ましく用いられるテープでは、指標200を持つ結晶子は、好ましくはフィルム表面に平行に配向して200/110ピーク領域比の比較的高い値を与えそしてそれ故一平面配向係数の比較的高い値を与える。
【0044】
200/110一平面配向係数についての値は、X線回折計を用いて決定される。Cu−Kα放射線(K波長=1.5418Å)を生成する、多層に焦点を合せるX線光学(ゲーベル鏡)を備えたブルケル−AXS D8回折計が適当である。測定条件:2mm抗散乱スリット、0.2mm検出器スリットおよび40kV、35mAを設定する発電機。テープ試料は、例えばある種の両側面支持用テープを備えたサンプル支持台に取り付けられる。テープ試料の好ましい大きさは15mm×15mm(l×w)である。試料が完全に平坦に保持され且つ試料支持台に配列されていることに注意すべきである。テープ試料を備えたサンプル支持台は次いで反射配置で(ゴニオメーターに垂直且つテープ支持台に垂直なテープの法線を持つ)D8回折計に設置される。回折パターンのための走査の範囲は、0.02°(2θ)のステップサイズおよびステップ当り2秒の計算時間で5°〜40°(2θ)である。測定中サンプル支持台はテープの法線の周りに15回転/分で回転し、そのためそれ以上のサンプル配列は必要でない。次に、強度が回折角2θの関数として測定される。200と110反射のピーク領域は標準プロファイルフィッティングソフトウェア例えばブルケル−AXSからのトパス、を用いて決定される。200と110の2つの反射は、単一ピークなので、フィッティング方法は簡単であり、適当なフィッティング方法を選択し且つ実施することは当業者の理解範囲にある。200/110一平面配向係数は200と100ピーク領域間の比として定義される。この係数は200/110一平面配向の定量的尺度である。
【0045】
上記に示したとおり、一実施態様において、フィルムは少なくとも3の200/110一平面配向係数を有している。この値は少なくとも4、さらに特には少なくとも5、または少なくとも7であるのがより好ましい。少なくとも10とか少なくとも15といった値のように、さらに高い値は、特に好ましい。この係数の理論的最大値は、仮に110ピーク領域がゼロであると無限大となる。200/110一平面配向係数についての高い値は、強度と破断エネルギーについて高い値を伴うことはしばしばである。
【0046】
一実施態様において、フィルムの幅は、一般に、少なくとも5mm、特に少なくとも10mm、さらに特に少なくとも20mm、とりわけ少なくとも40mmである。フィルムの幅は、一般に、最大でも200mmである。フィルムの厚みは、一般に少なくとも8ミクロン、特に少なくとも10ミクロンである。フィルムの厚みは、一般に、最大で150ミクロン、特に最大でも100ミクロンである。一実施態様において、フィルムは、高い線密度と一緒に、上記した如く、高い強度を持って得られる。本発明において、線密度はdtexで表される。これは、フィルムの10,000mの重さgである。一実施態様において、本発明のフィルムは少なくとも3,000dtex、特に少なくとも5,000dtex、さらに少なくとも10,000dtex、さらに少なくとも15,000dtex、特に少なくとも20,000dtexのデニールを、上記に特定した如く、少なくとも2.0GPa、特に少なくとも2.5GPa、さらに特に少なくとも3.0GPa、よりさらに特には少なくとも3.5GPa、一層さらに特に少なくとも4GPaの強度と組合せで、有する。
【実施例】
【0047】
本発明は、それによりあるいはそれに対して何ら制限されない下記実施例により説明される。
【0048】
実施例1
嵩密度453g/Lのポリオレフィン粉末を、等圧二重ベルトプレス上で複数の異なる圧力で圧縮した。圧縮後の密度はシートから0.5mのサンプルを切り出し、そのサンプルの重量を測定することによって求められた。結果は下記表に示されている。
【0049】
【表1】

【0050】
表は圧力の増加は密度の増加をもたらすことを示している。圧縮されたシートの比較的高い密度は比較的良好なグリーン強度を与える。比較的高い密度は、圧縮されたシートからのテープのための、比較的高い引張強度、比較的高いモジュラスおよび比較的高い破断エネルギーについての必須条件でもある。
表は、非常に高い圧力が得られることも示している。定容プレスを用いて得られる圧力はローラーカーペットを備えたプレスの機械的構造によって40バールに制限されることが注目される。定容プレスの幅も圧力を制限する:プレスを広くするほど最大圧力は低下する。それ故、定容プレスを用いて上記大きさの密度を得ることは困難であり且つ不可能であるとさえ云える。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉末形態にある、少なくとも500,000g/モルの重量平均分子量を有する出発超高分子量ポリオレフィンを、等圧プレスを用いる圧縮工程に付す工程および
圧縮されたポリオレフィンを、ポリマーの加工中の時点でその温度が融点よりも高い値までに上昇することがないような条件下で、ローリング工程と少なくとも1つの延伸工程に付す工程、
を有する超高分子量ポリオレフィンのフィルムの製造法。
【請求項2】
等圧プレスが連続二重ベルトプレスである請求項1による方法。
【請求項3】
ポリオレフィン粉末が圧縮工程の前に予熱工程に付される請求項1または2による方法。
【請求項4】
等圧プレスがポリオレフィンに圧力を負荷するための圧力クッションを備えている前記請求項のいずれかによる方法。
【請求項5】
圧縮工程および先行するいずれかの工程でポリオレフィン粉末を支持するために担持材が用いられる前記請求項のいずれかによる方法。
【請求項6】
等圧プレスがニップを備えており、そのニップが4.5°より小さい入口角を持つ前記請求項のいずれかによる方法。
【請求項7】
等圧プレスが少なくとも2つの圧力ゾーンを有し、各圧力ゾーンは先行する圧力ゾーンよりも高い圧力で操作される前記請求項のいずれかによる方法。
【請求項8】
第1圧力ゾーンが最大でも10バールの圧力で操作されそして少なくとも1つの引き続く圧力ゾーンが10バールよりも高い圧力で操作される請求項6による方法。
【請求項9】
圧縮工程の圧力が少なくとも25バール、特に少なくとも30バール、さらに特に少なくとも35バール、もっとさらに特に少なくとも40バール、さらにもっと特に少なくとも45バール、または少なくとも50バールである前記請求項のいずれかによる方法。
【請求項10】
延伸工程が、全延伸比が少なくとも30、特に少なくとも50、さらに特に少なくとも80、もっとさらに特に少なくとも100、さらにもっと特に少なくとも120、さらにもっと特に少なくとも140、さらにもっと特に少なくとも160が得られるような条件下で行われる前記請求項のいずれかによる方法。
【請求項11】
出発物質が少なくとも500,000g/モルの重量平均分子量のUHMWPEである前記請求項のいずれかによる方法。
【請求項12】
圧縮工程がポリマーの非束縛融点よりも少なくとも1℃、特に少なくとも3℃、さらに特に少なくとも5℃、低い温度で行われる前記請求項のいずれかによる方法。
【請求項13】
延伸工程が方法条件下のポリマーの融点よりも少なくとも1℃、特に少なくとも3℃、さらに特に少なくとも5℃、低い温度で行われる前記請求項のいずれかによる方法。
【請求項14】
出発ポリオレフィン粉末が0.50g/cmよりも低い、特に0.25g/cmよりも低い、さらに特に0.18g/cmよりも低い、もっとさらに特に0.13g/cmよりも低い、嵩密度を持つ前記請求項のいずれかによる方法。
【請求項15】
圧縮工程の温度が2℃の温度枠内で一定に保持されている前記請求項のいずれかによる方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2011−524826(P2011−524826A)
【公表日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−514046(P2011−514046)
【出願日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際出願番号】PCT/EP2009/057614
【国際公開番号】WO2009/153318
【国際公開日】平成21年12月23日(2009.12.23)
【出願人】(501469803)テイジン・アラミド・ビー.ブイ. (48)
【Fターム(参考)】