説明

ポリオレフィン熱可塑性加硫エラストマー

少なくとも
(i)アルケニル置換アルコキシシラングラフト化剤;及び
(ii)水;
の存在下において、(a)結晶性プロピレンホモポリマー、或いはプロピレンと15%以下のエチレン又は1種類若しくは複数の他のα−オレフィンコモノマーとのコポリマー、或いはこれらの組み合わせ;及び
(b)15%〜40%のエチレンを含む、エチレンと他のα−オレフィンとのコポリマー又は複数のコポリマーの組成物;
を含み、かつ150MPa以下の曲げ弾性率を有する異相ポリオレフィン組成物を動的加硫することによって得られ、45〜65%の範囲の圧縮歪み値、10を超える破断点伸び対圧縮歪み値の比、及び90より低いショアA硬度値を有する熱可塑性加硫エラストマー。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、それらの特徴である極めて高い破断点伸び値及び低い圧縮歪みを、低いショアA硬度値と共に有するポリオレフィン熱可塑性加硫エラストマーに関する。
【0002】
本発明の組成物は、医療用チューブ、静脈注射用バッグ、備品、ダッシュボード用の外板、ドアパネル、サンバイザー、内装品、窓シール材、ワイヤー及びケーブルのような良好な弾性を有する柔軟で可撓性の製品を製造するため、及び「ボンネット下」自動車製品のような高性能自動車製品、並びに洗浄機及び皿洗い機のダクト用のホース、シール材、及びガスケットのような家電製品の部品を製造するために好適である。
【0003】
上記に記載した特徴及び特性は、結晶性プロピレンホモポリマー又はコポリマー、及び低いエチレン含量(雰囲気温度においてキシレン中に可溶のフラクション中において40重量%未満)を有するエラストマーオレフィンポリマーを含む、非架橋の異相ポリオレフィン組成物を動的架橋にかけることによって得られる。
【背景技術】
【0004】
米国特許4,963,612においては、非架橋のポリプロピレンフラクション、及び場合によってはジエンを含む部分的に架橋されているエチレン/プロピレンエラストマーを含む部分的に架橋されているポリオレフィン組成物が記載されている。実施例においては、架橋前のエチレン/プロピレンエラストマーのエチレン含量は、ジエンの不存在下においては60重量%より高く、ジエンが存在している場合においても主要な成分である。実施例においては、上記に記載の組成物が250〜410%の範囲の極めて低い破断点伸び値を示すことが示されている。他の部分的に架橋されているポリオレフィン組成物は、米国特許4,948,840及び5,143,978に記載されている。実質的に組成物の製造中に用いられるエラストマーの非架橋アモルファスフラクションから構成される、雰囲気温度においてキシレン中に可溶のフラクションは、40〜70%のエチレンを含むエチレン/プロピレンコポリマーであり、更に、エラストマーは、更なるエチレンに富むコポリマーフラクションを含み、これによってエチレン含量が40%超になっている。上記記載の特許の実施例においては、このようにして得られる部分的に架橋されている組成物が比較的低い破断点伸び値を有することが示されている。更に、米国特許4,963,612並びに米国特許4,948,840及び5,143,978においては、フラン誘導体、ジエンイオウ供与体などのような更なる補助薬剤の存在下での有機ペルオキシド処理によって架橋を得ている。
【0005】
国際特許出願WO−05/005532においては、水生成固体薬剤の存在下においてポリオレフィン組成物をアルコキシシラングラフト化及び更に架橋することによって熱可塑性加硫体を製造する方法が開示されている。エチレン又はエチレン/α−オレフィンコポリマーである場合には、エチレンが架橋性分散相ポリマー中の主成分である。水生成剤としてホウ酸を用いる実施例においては、破断点伸びの高い値は得られない。
【0006】
米国特許出願2005/0059783においては、ポリオレフィン、特にポリエチレン、及びエチレンのコポリマーから出発して熱可塑性加硫体を製造する動的架橋プロセスのために、アルコキシシラン及びペルオキシド並びに場合によっては縮合触媒を用いることが記載されている。架橋は、有機アルコキシシラン、ペルオキシド、及び湿分又は液体水を用いて行われる。実施例においては、500%より低い破断点伸び値が得られている。
【0007】
国際特許出願WO−04/055083においては、ポリオレフィン組成物をアルコキシシラングラフト化し、次に固体水生成架橋剤を加えることによって熱可塑性加硫体を製造する方法が開示されている。加工性を改良するためのエキステンダー油の存在下でマトリクスポリマー及び弾性ポリマーをグラフト化剤及び架橋剤と混合することによって、ブレンドが反応器内において得られる。エチレンが弾性ポリマー(共重合体)の主成分であり、更なる充填剤の不存在下で得られる熱可塑性加硫体によっては破断点伸びの高い値は示されない。
【0008】
ヨーロッパ特許出願EP−A−0633289においては、35重量%以下の低いエチレン含量を有し、特に架橋エラストマーの低い含量のために、極めて低い曲げ弾性率値、上記記載の文献において記載されている組成物のものよりも高い破断点伸び値、良好な圧縮歪み値及び加工性を有する、柔軟な、部分的に架橋されているポリオレフィン組成物が開示されている。EP−A−0633289の部分的に架橋されているポリオレフィン組成物は、出発物質を、有機ペルオキシド及び補助薬剤を用いる動的架橋にかけることによって得られる。ペルオキシドは、架橋にかけられる組成物の全重量に対して0.5重量%〜5重量%の範囲の量で用いられる。補助薬剤は、シアヌレート、アクリレート、ベンゼン、又はフラン誘導体、及びイオウ供与体であり、組成物の全重量に対して0.1重量%〜8重量%の範囲の量で用いられる。補助薬剤は、有機ペルオキシドの公知の有害な刺激性に加えて、環境的に悪影響を有する物質である。実際、得られる部分的に架橋されているポリオレフィン組成物は、未だ満足できない圧縮歪み値対破断点伸びの比を示す。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
改良された環境への影響性を有する1工程又は2工程の動的加硫プロセスによって得ることのできる、良好な加工性(エキステンダー油の添加を回避する)並びに特にガスケット及びシール材のような射出成形物品のために最適の機械特性のバランスを有する、特にフィルム又は可撓性ホイル、射出成形物品又は押出し部分物品の形態の製造物品を製造するための、かかるエラストマーを含む熱可塑性加硫エラストマー及びポリマー組成物に関する必要性が未だ存在する。以下により詳細に説明する逐次重合プロセスによって得られるポリオレフィン組成物を用いてかかる特性を達成することが特に望ましいであろう。
【課題を解決するための手段】
【0010】
したがって、本発明は、少なくとも
(i)アルケニル置換アルコキシシラングラフト化剤;及び
(ii)水;
の存在下において、
(a)結晶性プロピレンホモポリマー、或いはプロピレンと15重量%以下のエチレン又は1種類若しくは複数の他のα−オレフィンコモノマーとのコポリマー、或いはこれらの組み合わせ;及び
(b)15重量%以上で40重量%未満のエチレン、好ましくは15重量%〜38重量%、より好ましくは15〜35重量%、特に20〜38、より好ましくは20〜35重量%のエチレンを含む、エチレンと他のα−オレフィンとのコポリマー又は複数のコポリマーの組成物;
を含み、かつ150MPa以下、好ましくは100MPaより低い曲げ弾性率を有する異相ポリオレフィン組成物(I)を動的加硫することによって得られ、45〜65%、好ましくは50〜55%の圧縮歪み値、10を超え、好ましくは10.5を超え、より好ましくは11.5を超える破断点伸び対圧縮歪み値の比、及び90より低く、好ましくは85より低いショアA硬度値を有する熱可塑性加硫エラストマーを提供する。600より大きく、好ましくは640より大きい破断点伸び値を有する熱可塑性加硫エラストマーが好ましい。
【0011】
特に、異相組成物(I)中のα−オレフィンコモノマーは、成分(a)に関してはC〜C10−α−オレフィン、成分(b)に関してはC〜C10−α−オレフィンから選択される。
【0012】
異相組成物(I)に関する上記記載のC〜C10及びC〜C10−α−オレフィンの例は、プロピレン、ブテン−1、ペンテン−1、4−メチルペンテン、ヘキセン−1、オクテン−1である。好ましいコモノマーは、プロピレン及びブテン−1である。
【0013】
成分(a)のプロピレンコポリマー中の好ましいコモノマーはエチレンである。エチレンが成分(a)中のコモノマーである場合には、好ましくは成分(a)の8重量%以下の量で存在する。
【0014】
成分(b)のエチレンコポリマー中の好ましいコモノマーはプロピレン及び/又はブテン−1である。
【0015】
(重量%で)
(1)90%より高い量で雰囲気温度においてキシレン中に不溶のプロピレンホモポリマー、或いは80%より高い量で雰囲気温度においてキシレン中に不溶の、90%以上のプロピレンを含むプロピレンとエチレン及び/又は1種類若しくは複数のC〜C10−α−オレフィンとのコポリマー5〜40%(成分a);
(2)40%以下のエチレンを含み、70%より高い量で雰囲気温度においてキシレン中に可溶であるエチレンの1種類以上のコポリマーのエラストマーフラクション60〜95%(成分b);
を含む異相組成物(I)が好ましい。
【0016】
(重量%で)
(1)上記記載の成分(a)5〜40%;
(2)15〜40%のエチレンを含み、雰囲気温度においてキシレン中に可溶であるエチレンとプロピレン及び/又は1種類若しくは複数のC〜C10−α−オレフィンとの1種類以上のコポリマーのフラクション60〜95%(フラクションb1);及び
(3)成分(a)及びフラクション(b1)の合計に対して0〜30%の、雰囲気温度においてキシレン中に不溶の、エチレンを含むコポリマーフラクション(フラクションb2);
を含む異相組成物(I)が特に好ましい。
【0017】
かかるポリマー成分及びフラクションの可溶性及び不溶性は、雰囲気温度、即ち25℃でのキシレン中における可溶又は不溶のフラクションとして定義される。存在する場合には、かかるフラクション(b2)は、成分(a)及びフラクション(b1)の合計に対して好ましくは1重量%より多く、より好ましくは1〜25重量%の範囲である。
【0018】
好ましくは、異相ポリオレフィン組成物(I)の重量に対する(b1)及び(b2)フラクションの合計の重量%は50%〜90%であり、(b2)/(b1)の重量比は0.4より低い。フラクション(b2)中のエチレンの含量は、フラクション(b2)の全重量に対して、好ましくは少なくとも75重量%、より好ましくは少なくとも80重量%である。コポリマーフラクション(b2)中のコモノマーは、好ましくはコポリマーフラクション(b1)のものと同じである。コポリマーフラクション(b2)の例は、エチレンとプロピレンとの実質的に線状の半結晶性コポリマーであり、その特定の例は線状低密度ポリエチレン(LLDPE)である。
【0019】
(重量%で)
(a)90%より高い量で雰囲気温度においてキシレン中に不溶のプロピレンホモポリマー、或いは80%より高い量で雰囲気温度においてキシレン中に不溶の、90%以上のプロピレンを含むプロピレンとエチレン及び/又は1種類若しくは複数のC〜C10−α−オレフィンとのコポリマー5〜40%(成分a);
(b)(1)キシレン可溶フラクションの固有粘度が3.0〜5.0dL/gの範囲である、15〜32重量%、好ましくは20〜30重量%のエチレンを含み、50重量%より大きい室温におけるキシレン中の溶解度を有する第1のエラストマーコポリマー;及び
(2)キシレン可溶フラクションの固有粘度が4.0〜6.5dL/gの範囲である、32重量%より多く45重量%以下、好ましくは35〜40重量%のエチレンを含み、80重量%より大きい室温におけるキシレン中の溶解度を有する第2のエラストマーコポリマー;
を含み、(1)/(2)の重量比が1:5〜5:1、好ましくは1:2〜4:1、より好ましくは1:1〜2:1の範囲である、エチレンとプロピレン及び/又は1種類若しくは複数のC〜C10−α−オレフィンとのコポリマーのフラクション60〜95%(成分b);
を含む異相組成物(I)がより好ましい。
【0020】
かかる異相組成物は、成分(a)及び(b)、或いは成分(a)及びフラクション(b1)並びに場合によってはフラクション(b2)、或いは成分(a)、(b)(1)、及び(b)(2)を、溶融状態で、即ちそれらの軟化点又は融点よりも高い温度においてブレンドするか、或いはより好ましくは、高立体特異性チーグラー・ナッタ触媒の存在下で逐次重合することによって製造することができる。特に、用いる触媒系は、(i)両方とも塩化マグネシウム上に担持されているチタン化合物及び電子ドナー化合物を含む固体触媒成分、及び(ii)Al−トリアルキル化合物、及び場合によっては電子ドナー化合物を含む。
【0021】
用いることのできる他の触媒は、米国特許5,324,800及びEP−A−0129368に記載されているようなメタロセンタイプの触媒であり、例えば米国特許5,145,819及びEP−A−0485823に記載されているような橋架ビスインデニルメタロセンが特に有利である。
【0022】
これらのメタロセン触媒は、特に成分(b)を製造するために用いることができる。
【0023】
異相組成物(I)を製造するための上記記載の逐次重合プロセスは、少なくとも2つの段階を含む。1以上の段階において、場合によってはかかる1種類若しくは複数のコモノマーの存在下でプロピレンを重合して成分(a)を形成し、1以上の更なる段階において、エチレンとかかる1種類若しくは複数のC〜C10−α−オレフィンとの混合物を重合して成分(b)を形成する。
【0024】
重合プロセスは、液相、気相、又は液/気相中で行う。種々の重合段階における反応温度は、同一であっても異なっていてもよく、概して、成分(a)の製造に関しては40〜90℃、好ましくは50〜80℃、成分(b)の製造に関しては40〜60℃の範囲である。
【0025】
逐次重合プロセスの例は、ヨーロッパ特許出願EP−A−472946及びWO−03/011962に記載されている。
【0026】
一例として、異相組成物(I)は、0.1〜20g/10分、好ましくは0.2〜15g/10分の範囲のMFR値を有する。かかるメルトフローレート値を有する異相組成物は、重合プロセス中に直接得ることができ、或いは別法として、かかる異相組成物は、ペルオキシドのような適当なビスブレーキ剤の存在下で行う化学的ビスブレーキプロセスにかけることができる。かかる化学的ビスブレーキプロセスは、周知の方法にしたがって行われる。
【0027】
通常、異相組成物(I)中の重合エチレンの全含量は、15〜35重量%、特に15〜30重量%の範囲である。
【0028】
異相組成物(I)の種々の成分及びフラクションの分子量(135℃においてテトラヒドロナフタレン中の固有粘度を測定することによって求める)は、成分の性質、及び組成物の全体的なメルトフローレートの関数として変動する。特に、固有粘度は、好ましくは次の限界範囲:成分(a)に関しては0.5〜3dL/g、成分(b)に関しては2〜8dL/gの間である。
【0029】
本発明の組成物は、概して40%より低く、好ましくは30%より低い曇り度値を有する。実際、本発明の組成物は機械特性の最適のバランスを示し、特に、驚くべきことに、極めて低い圧縮歪み値を有すると共に、破断点伸び対圧縮歪み値の比は常に10より高いことが観察され、これは射出成形及び圧縮成形の用途のため、特に低い圧縮歪み値及び高い破断点伸びを必要とするガスケット及びシール材のために明らかに有利である。更に、本発明の熱可塑性加硫体は、必要なペルオキシドの量を減少させ、補助薬剤及び幾つかの場合においては更に加水分解触媒(ルイス酸、通常は有機スズ化合物)の使用を排除するので、食品用途のために好適である。実際、本発明の熱可塑性加硫エラストマーを用いることで、エキステンダー油を加える必要なしに上記の特性を容易に得ることができる。本発明の熱可塑性加硫エラストマーは、動的加硫、即ち非架橋の異相ポリオレフィン組成物を混合プロセスにかけて、混合しながらグラフト化剤及び更に架橋剤を加えることによって製造される。
【0030】
一般に、本発明の熱可塑性加硫ポリオレフィン組成物を製造するためのグラフト化剤として、当該技術において公知の任意の有機アルコキシシラン/ペルオキシド薬剤を用いることができる。特に、アルコキシシランモノマーの例は、アルケニル置換アルコキシシランであり、ビニル−トリメトキシシラン(VTMS)及びメタクリロイルプロピル−トリメトキシシラン(VMMS)が特に好適である。アルコキシシランは、概して、異相組成物(I)の全重量に対して1重量%〜10重量%、好ましくは2重量%〜7重量%の範囲の量で用いる。有機ペルオキシドは、好ましくは、200℃において1分未満のエチレン−プロピレン−ジエンラバー(EPDM)中での半減期を有する。
【0031】
ペルオキシドの例は、1,1’−ビス(tert−ブチルペルオキシ)ジイソプロピルベンゼン;ジクミルペルオキシド;n−ブチル−4,4’−ビス(tert−ブチルペルオキシ)バレレート;2,5−ジ(tert−ブチルペルオキシ)−2,5−ジメチルヘキサンである。ペルオキシドは、概して、異相組成物(I)の全重量に対して0.05重量%〜1重量%、好ましくは0.1重量%〜0.8重量%の範囲の量で用いる。
【0032】
ポリオレフィン組成物の加硫のためのグラフト化剤としてアルコキシシラン/ペルオキシドを用いることの1つの有利性は、ペルオキシド/補助薬剤法に対してペルオキシドの使用量が大きく減少することである。
【0033】
架橋は、プロセス中に組成物を水又は湿分と接触させることによって得られる。in−situ水生成剤を用いることが特に好ましい。in−situ水生成架橋剤の例は、クエン酸カルシウム四水和物、乳酸カルシウム五水和物、硫酸マグネシウム七水和物、硫酸ナトリウム十水和物、酸化亜鉛とカルボン酸とのブレンド、アジピン酸、ホウ酸、並びにこれらのブレンドである。
【0034】
このタイプの好ましい薬剤は、下式:
B(OH)→1/2B+3/2H
の反応にしたがって、100℃より高い温度における熱分解によって水を生成して100gあたり43.7gの水を与える化合物であるホウ酸:B(OH)である。
【0035】
ホウ酸によるアルキル−メトキシシランの加水分解反応は次の通りである:
RSi(OMe)+2B(OH)→B+3MeOH+RSi(OH)
完全な加水分解のためには、メトキシシラン1モルあたり2モルのホウ酸が必要である。水生成剤は、グラフト化反応が所望の完了度に達した後に導入する。グラフト化及び架橋工程は、バッチ反応器内で逐次的に行うことができる。連続法(例えば単軸又は二軸押出機内)の場合には、架橋剤は、所望のグラフト化度に達する反応器に沿った位置において、更なる供給器によって加える。
【0036】
上述したように、本発明の熱可塑性加硫エラストマーは動的加硫によって製造される。かかる動的加硫は、上記記載の非架橋異相ポリオレフィン組成物を、グラフト化剤及び架橋剤の存在下において、それらの成分の軟化点又は融点以上の温度においてブレンドプロセスにかけることから構成される。グラフト化剤は第1のブレンド段階の前又は後に加えることができ、架橋剤は、グラフト段階の後にかかるブレンドを継続しながら加える。ブレンドは、内部ミキサー内、押出機内、或いは内部ミキサー及び押出機を含むシステム内において行うことができる。
【0037】
動的加硫を行う温度は、好ましくは160℃〜220℃の範囲である。グラフト化時間は、好ましくは30秒〜15分の範囲である。架橋時間は、好ましくは5秒〜30分の範囲である。グラフト化及び架橋時間は、内部ミキサーにおいては、それぞれの薬剤を加えた後にトルク値を適切に安定化させるのに必要な時間を測定することによって求めることができる。
【0038】
混合及び動的グラフト化並びに架橋にかける組成物に、無機充填剤、カーボンブラック、染料、可塑剤、安定剤、エキステンダー油、及び一般にエラストマーを含むポリオレフィン組成物において通常的な任意の添加剤を加えることができる。
【0039】
また、本発明の熱可塑性加硫エラストマーは発泡させることができ、本発明の更なる有利性は、熱可塑性加硫エラストマーから、整った形状の潰れていない気泡を有し、優れた機械特性(例えば高い破断点伸び値)を有する発泡ポリオレフィン組成物を得ることができることである。更に、上記記載の発泡ポリオレフィン組成物から製造される製品は、平滑で整った表面を有する。
【0040】
本発明による発泡ポリオレフィン組成物の密度は、好ましくは0.2〜0.6g/cmの範囲である。
【0041】
発泡ポリオレフィン組成物を得るためには、当該技術において通常知られている方法及び発泡剤を用いることができる。特に、場合によってはフッ素化及び/又は塩素化されている、その沸点が25℃より高い炭化水素、例えばペンタン、ヘキサン、ジクロロトリフルオロエタン、及び塩化メチレン、或いは25℃より低い沸点を有する気体又は液体化合物、例えば空気、窒素、二酸化炭素、クロロフルオロメタン、ジクロロジフルオロメタン、ブタン、プロパン、及びイソブタンのような物理タイプの発泡剤を用いることができる。用いることのできる他の発泡剤は、熱分解又は化学反応のいずれかによってガスを生成する化学タイプのものである。化学発泡剤の例は、アゾジカルバミド、バリウムアゾジカルボキシレート、フェニルスルホン、重炭酸ナトリウムとクエン酸の混合物、水素化ホウ素ナトリウム、石膏、及び水和アルミナである。
【0042】
発泡組成物を製造するために、単軸押出機などの当該技術において通常知られている押出機を用いることができる。物理タイプの発泡剤は、好ましくは、固体ポリマー供給位置から離れた押出機内部の位置(ここではポリマーは溶融し均一な塊の形態である)の溶融ポリマー塊中に注入又は導入する。発泡剤を導入する押出機の区域内の温度は、好ましくは125℃〜250℃の範囲である。化学タイプの発泡剤は、押出の前に固体ポリマーと機械的にブレンドすることができる。かくして得られた乾燥ブレンドを、次に、130℃〜200℃の温度に保持されている押出機の第1の供給領域中に導入する。適当なダイ、例えば円形の孔を有するダイ又は平坦なダイを備えた押出機の出口において保持される温度は、ポリマーを発泡させるのに適度なものでなければならない。かかる温度は、好ましくは125℃〜180℃の範囲である。ポリマー組成物に加える物理発泡剤の量は、ポリマー組成物に対して好ましくは0.5重量%〜30重量%、最も好ましくは0.5重量%〜15重量%の範囲である。化学発泡剤の量は、好ましくは0.2%〜10%、より好ましくは0.3%〜5%の範囲である。
【0043】
また、押出の前又は後のいずれかにおいて、ポリマーに対して概して0.05重量%〜3重量%の範囲の量の1種類以上の成核剤(気泡形成核形成剤)をポリマー塊に加えることもできる。上記記載の成核剤の例は、タルク及びコロイダルシリカである。
【0044】
また、必要な可能性のある他の添加剤、染料、及び充填剤を、押出の前又は後に加えることもできる。
【実施例】
【0045】
以下の実施例は、本発明を例示するために与えるものであり、本発明を限定するものではない。
【0046】
本発明の熱可塑性加硫エラストマーについて、報告する特性に関するデータは以下に示す方法にしたがって測定した。成形試験片を必要とする測定については、厚さ2.5mmのプラークを得るように熱可塑性加硫体の試料を圧縮成形した。溶融ポリマー塊を二つのプレートの間に配置し、T=180℃において5分間予め加熱した。次に100barの圧力を加え、試料を同じ温度において更に5分間保持した。次に、プラークを二つの水冷プレスプレートの間に配置して試料を急冷した。
【0047】
実施例及び明細書において報告する特性に関するデータを得るために用いた方法を以下に列記する。
【0048】
【表1】

【0049】
注:キシレン中の溶解度:
2.5gのポリマーを、135℃において250mLのキシレン中に撹拌下で溶解した。20分後、溶液を撹拌下で25℃に冷却し、次に30分間沈殿させた。濾紙を用いて沈殿物を濾過し、溶液を窒素流下で蒸発させ、残渣を一定の重量になるまで真空下80℃において乾燥した。次に、室温においてキシレン中に可溶のポリマーの重量%(キシレン可溶分−XS)を算出した。室温においてキシレン中に不溶のポリマーの重量%を、ポリマーのアイソタクチック指数とみなした。この値は、定義によりポリプロピレンのアイソタクチック指数を構成する、沸騰n−ヘプタンで抽出することによって測定したアイソタクチック指数に実質的に相当する。
【0050】
実施例1:
塩化マグネシウム上に担持された高収率高特異性チーグラー・ナッタ触媒の存在下での逐次共重合によって得られた異相ポリオレフィン組成物(I)を架橋した。かかる組成物(表1の組成物(a))は以下の成分(重量%):
(A)約4%のエチレンを含むプロピレンとエチレンとの結晶性コポリマー32%;
(B)雰囲気温度においてキシレン中に不溶の、約15%のプロピレンを含む主として線状のエチレン/プロピレンコポリマー3%;
(C)雰囲気温度においてキシレン中に可溶で、2.95dL/gの135℃におけるテトラヒドロナフタレン中の固有粘度を有する、30%のエチレンを含むプロピレン/エチレンアモルファスコポリマー65%;
から構成されていた。
【0051】
更に、上記の組成物(a)は、上記に記載の方法によって測定して表1に報告する特性を有していた。
【0052】
BrabenderミキサーPlasticorder PL2100内で操作して、加硫を動的に行った。組成物(a)及び表2に示す添加剤をミキサー中に供給し、2つの連続工程でグラフト化及び架橋反応を行った。
【0053】
グラフト化工程においては、
−Akzo ChemicalsからのペルオキシドマスターバッチTrigonox 101/50(2,5−ビス(tert−ブチルペルオキシ)−2,5−ジメチルヘキサン、DHBP、シリカ担体上50%);
−OSI specialties(Crompton)によるアルコキシシランVTMS A-171;及び
−ACIMAによる加水分解触媒ジ−n−ブチル−スズ−ジラウレート(DBTL);
を、混合室中に装填する前に組成物(a)と混合した。温度を160℃に設定し、ブレード速度を60rpmに設定した。シラングラフト化を8分間行った。
【0054】
次に、Brabender内において水発生剤としてホウ酸を加え、更に10分間混合することによって架橋工程を動的に行った。
【0055】
組成物(a)及び添加剤の量(重量%)並びに得られた加硫組成物の特性を表2に報告する。
【0056】
実施例2:
架橋剤としてホウ酸に代えて水を用いて、実施例1を繰り返した。
【0057】
グラフト化反応が完了した後にBrabender内において大過剰の水を徐々に加え、更に5〜10分間混合することによって、架橋工程を動的に行った。
【0058】
組成物(a)及び添加剤の量(重量%)並びに得られた加硫組成物の特性を表2に報告する。
【0059】
実施例3:
塩化マグネシウム上に担持された高収率高特異性チーグラー・ナッタ触媒の存在下での逐次共重合によって、異相ポリオレフィン組成物(I)(表1の組成物(b))を得た。かかる組成物(b)は、76重量%の室温においてキシレン中に可溶のフラクションの含量を有しており、(重量%で)プロピレンと3.3%のエチレンとの結晶性コポリマー17%、及び32%のエチレンを含むプロピレンとエチレンとのエラストマーフラクション83%を含んでいた。
【0060】
更に、上記の組成物(b)は、上記に記載した方法によって測定して表1に報告する特性を有していた。
【0061】
BrabenderミキサーPlasticorder PL2100内で操作して、加硫を動的に行った。組成物(b)及び表2に示す添加剤をミキサー中に供給し、2つの連続工程でグラフト化及び架橋反応を行った。
【0062】
グラフト化工程においては、
−Akzo ChemicalsからのペルオキシドマスターバッチTrigonox 101/50(2,5−ビス(tert−ブチルペルオキシ)−2,5−ジメチルヘキサン、DHBP、シリカ担体上50%);
−GE SiliconesによるアルコキシシランVMMS A-174NT;及び
−ACIMAによる加水分解触媒ジ−n−ブチル−スズ−ジラウレート(DBTL);
を、混合室中に装填する前に組成物(b)と混合した。温度を160℃に設定し、ブレード速度を60rpmに設定した。シラングラフト化を8分間行った。
【0063】
次に、Brabender内において水発生剤としてホウ酸を加え、更に10分間混合することによって架橋工程を動的に行った。
【0064】
組成物(b)及び添加剤の量(重量%)並びに得られた加硫組成物の特性を表2に報告する。
【0065】
実施例4:
表2に報告するように、グラフト化工程においてVMMSに代えてOSI specialtiesによるアルコキシシランVTMS A-171を用いて実施例3を繰り返した。
【0066】
成分(b)及び添加剤の量(重量%)並びに得られた加硫組成物の特性を表2に報告する。
【0067】
実施例5:
27mmの直径及び17の長さ/直径比を有するLeistritz Micro 27二軸押出機内で操作して、組成物(b)を動的に加硫した。
【0068】
組成物(b)及び表2に示すグラフト化添加剤を第1のブレンド区域中に供給した。スクリューの端部から約1/3の位置に配置されたサイドフィーダーを用いて水を注入する(水供給量=20barにおいて90g/時)ことによって架橋を行った。最後のブレンド区域の端部には、ペルオキシドの分解から誘導されるガス及び過剰の水を排気する領域を接続した。
【0069】
グラフト化及び架橋区域において用いたブレンド時間は、それぞれ、グラフト化工程については30秒、架橋については10秒であった。温度は押出機に沿って170℃から210℃に上昇させた。
【0070】
成分(b)及び添加剤の量(重量%)並びに得られた加硫組成物の特性を表2に報告する。
【0071】
比較例1(1c):
(重量%で)以下の成分:
(A)70重量%のエチレン及び30重量%の1−オクテンを含むと考えられており、22のムーニー粘度(121℃においてML1+4)、1.0g/10分のMFR(190℃/2.16kg)、及び0.885g/cmの密度を有する、Dow Chemicalによるエチレン−オクテンコポリマーであるEngage 8003 70%;
(B)チーグラー・ナッタ触媒を用いて得られた、33g/10分のMFR(230℃/2.16kg)ISO1133、及び1390MPaの曲げ弾性率を有するプロピレンホモポリマー30%;
から構成されるポリオレフィン組成物(組成物(c))を、BrabenderミキサーPlasticorder PL2100内で操作して動的に加硫した。組成物(c)及び表1に示す添加剤をミキサー中に供給し、2つの連続工程でグラフト化及び架橋反応を行った。
【0072】
グラフト化工程においては、
−Akzo ChemicalsからのペルオキシドマスターバッチTrigonox 101/50(2,5−ビス(tert−ブチルペルオキシ)−2,5−ジメチルヘキサン、DHBP、シリカ担体上50%);
−OSI specialties (Crompton)によるアルコキシシランVTMS A-171;及び
−ACIMAによる加水分解触媒ジ−n−ブチル−スズ−ジラウレート(DBTL);
を、混合室中に装填する前に組成物(c)と混合した。温度を160℃に設定し、ブレード速度を60rpmに設定した。シラングラフト化を8分間行った。
【0073】
次に、Brabender内において水発生剤としてホウ酸を加え、更に10分間混合することによって架橋工程を動的に行った。
【0074】
組成物(c)及び添加剤の量(重量%)並びに得られた加硫組成物の特性を表3に報告する。
【0075】
比較例2(2c):
(重量%で)以下の成分:
(A)70重量%のエチレン及び30重量%の1−オクテンを含むと考えられており、22のムーニー粘度(121℃においてML1+4)、1.0g/10分のMFR(190℃/2.16kg)、及び0.885g/cmの密度を有する、Dow Chemicalによるエチレン−オクテンコポリマーであるEngage 8003 60%;
(B)2.5重量%のエチレンを含み、7%のキシレン可溶フラクションXS、及び1.2g/10分のMFR(230℃/2.16kg)ISO1133を有するランダムプロピレン−エチレンコポリマー40%;
から構成されるポリオレフィン組成物(組成物(d))を、BrabenderミキサーPlasticorder PL2100内で操作して動的に加硫した。組成物(d)及び表1に示す添加剤をミキサー中に供給し、2つの連続工程でグラフト化及び架橋反応を行った。
【0076】
グラフト化工程においては、
−Akzo ChemicalsからのペルオキシドマスターバッチTrigonox 101/50(2,5−ビス(tert−ブチルペルオキシ)−2,5−ジメチルヘキサン、DHBP、シリカ担体上50%);
−OSI specialties (Crompton)によるシランVTMS A-171;及び
−ACIMAによる加水分解触媒ジ−n−ブチル−スズ−ジラウレート(DBTL);
を、混合室中に装填する前に組成物(c)と混合した。温度を160℃に設定し、ブレード速度を60rpmに設定した。シラングラフト化を8分間行った。
【0077】
次に、Brabender内において水発生剤としてホウ酸を加え、更に10分間混合することによって架橋工程を動的に行った。
【0078】
組成物(d)及び添加剤の量(重量%)並びに得られた加硫組成物の特性を表3に報告する。
【0079】
比較例3(3c):
(重量%で)以下の成分:
(A)70重量%のエチレン及び30重量%の1−オクテンを含むと考えられており、22のムーニー粘度(121℃においてML1+4)、1.0g/10分のMFR(190℃/2.16kg)、及び0.885g/cmの密度を有する、Dow Chemicalによるエチレン−オクテンコポリマーであるEngage 8003 80%;
(B)2.5重量%のエチレンを含み、7%のキシレン可溶フラクションXS、及び1.2g/10分のMFR(230℃/2.16kg)ISO1133を有するランダムプロピレン−エチレンコポリマー20%;
から構成されるポリオレフィン組成物(組成物(e))を、BrabenderミキサーPlasticorder PL2100内で操作して動的に加硫した。組成物(d)及び表1に示す添加剤をミキサー中に供給し、2つの連続工程でグラフト化及び架橋反応を行った。
【0080】
グラフト化工程においては、
−Akzo ChemicalsからのペルオキシドマスターバッチTrigonox 101/50(2,5−ビス(tert−ブチルペルオキシ)−2,5−ジメチルヘキサン、DHBP、シリカ担体上50%);
−OSI specialties (Crompton)によるアルコキシシランVTMS A-171;及び
−ACIMAによる加水分解触媒ジ−n−ブチル−スズ−ジラウレート(DBTL);
を、混合室中に装填する前に組成物(c)と混合した。温度を160℃に設定し、ブレード速度を60rpmに設定した。シラングラフト化を8分間行った。
【0081】
次に、Brabender内において水発生剤としてホウ酸を加え、更に10分間混合することによって架橋工程を動的に行った。
【0082】
組成物(e)及び添加剤の量(重量%)並びに得られた加硫組成物の特性を表3に報告する。
【0083】
比較例4(4c):
(重量%で)以下の成分:
(A)70重量%のエチレン及び30重量%の1−オクテンを含むと考えられており、22のムーニー粘度(121℃においてML1+4)、1.0g/10分のMFR(190℃/2.16kg)、及び0.885g/cmの密度を有する、Dow Chemicalによるエチレン−オクテンコポリマーであるEngage 8003 60%;
(B)11重量%のエチレンを含み、25%のキシレン可溶フラクションXS、及び4g/10分のMFR(230℃/2.16kg)ISO1133を有し、
−45重量%のエチレンを含み、3.5のキシレン可溶フラクションの固有粘度を有するラバーフラクション25%;
−4%のキシレン可溶フラクションXSを有する結晶性単独重合プロピレンフラクション75%;
を含むプロピレンエチレン異相コポリマー40%;
から構成されるポリオレフィン組成物(組成物(f))を、BrabenderミキサーPlasticorder PL2100内で操作して動的に加硫した。組成物(f)及び表3に示す添加剤をミキサー中に供給し、2つの連続工程でグラフト化及び架橋反応を行った。
【0084】
グラフト化工程においては、
−Akzo ChemicalsからのペルオキシドマスターバッチTrigonox 101/50(2,5−ビス(tert−ブチルペルオキシ)−2,5−ジメチルヘキサン、DHBP、シリカ担体上50%);
−OSI specialties (Crompton)によるアルコキシシランVTMS A-171;及び
−ACIMAによる加水分解触媒ジ−n−ブチル−スズ−ジラウレート(DBTL);
を、混合室中に装填する前に組成物(c)と混合した。温度を160℃に設定し、ブレード速度を60rpmに設定した。シラングラフト化を8分間行った。
【0085】
次に、Brabender内において水発生剤としてホウ酸を加え、更に10分間混合することによって架橋工程を動的に行った。
【0086】
組成物(f)及び添加剤の量(重量%)並びに得られた加硫組成物の特性を表3に報告する。
【0087】
【表2】

【0088】
【表3】

【0089】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも
(i)アルケニル置換アルコキシシラングラフト化剤;及び
(ii)水;
の存在下において、
(a)結晶性プロピレンホモポリマー、或いはプロピレンと15重量%以下のエチレン又は1種類若しくは複数の他のα−オレフィンコモノマーとのコポリマー、或いはこれらの組み合わせ;及び
(b)15重量%以上で40重量%未満のエチレンを含む、エチレンと他のα−オレフィンとのコポリマー又は複数のコポリマーの組成物;
を含み、かつ150MPa以下の曲げ弾性率を有する異相ポリオレフィン組成物(I)を動的加硫することによって得られ、45〜65%の圧縮歪み値、10を超える破断点伸び対圧縮歪み値の比、及び90より低いショアA硬度値を有する熱可塑性加硫エラストマー。
【請求項2】
600%を超える破断点伸び値を有する、請求項1に記載の熱可塑性加硫エラストマー。
【請求項3】
異相ポリオレフィン組成物(I)が、高立体特異性チーグラー・ナッタ触媒の存在下での逐次重合によって製造される、請求項1に記載の熱可塑性加硫エラストマー。
【請求項4】
請求項1に記載の熱可塑性加硫エラストマーを含むポリマー組成物。
【請求項5】
請求項1に記載の熱可塑性加硫エラストマーを含む製造物品。
【請求項6】
フィルム又は可撓性ホイル、射出成形物品又は押出し部分物品の形態の、請求項5に記載の製造物品。
【請求項7】
請求項1に記載の熱可塑性加硫エラストマーを発泡させることによって得られる発泡ポリオレフィン組成物。
【請求項8】
請求項7に記載の発泡ポリオレフィン組成物を含む製造物品。
【請求項9】
(i)異相ポリオレフィン組成物(I)を混合にかけ;そして、混合しながら、
(ii)グラフト化剤によって該異相ポリオレフィン組成物をグラフト化し;そして、工程(ii)が完了した後に、
(iii)混合しながら水を加えてグラフト化組成物を架橋する;
工程を含み、ここで、異相ポリオレフィン組成物(I)は、150MPa以下の曲げ弾性率を有し、
(a)結晶性プロピレンホモポリマー、或いはプロピレンと15%以下のエチレン又は1種類若しくは複数の他のα−オレフィンコモノマーとのコポリマー、或いはこれらの組み合わせ;及び
(b)15重量%以上で40重量%未満のエチレンを含む、エチレンと他のα−オレフィンとのコポリマー又は複数のコポリマーの組成物;
を含む、請求項1に記載の熱可塑性加硫エラストマーの製造方法。
【請求項10】
グラフト化剤がアルケニル置換アルコキシシラン及び有機ペルオキシドを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
アルケニル置換アルコキシシランが、ポリオレフィン組成物(I)の重量に対して1重量%〜10重量%の範囲の量で存在する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
有機ペルオキシドが、ポリオレフィン組成物(I)の重量に対して0.05%〜1.5%の範囲の量で存在する、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
アルケニル置換アルコキシシランが、ビニルトリメトキシシラン及びメタクリルオキシプロピルトリメトキシシランからなる群から選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
有機ペルオキシドが2,5−ビス(tert−ブチルペルオキシ)−2,5−ジメチルヘキサンである、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
架橋工程(iii)において、水をin−situ水生成性架橋剤と一緒に導入する、請求項9に記載の方法。
【請求項16】
in−situ水生成性架橋剤が、クエン酸カルシウム四水和物、乳酸カルシウム五水和物、硫酸マグネシウム七水和物、硫酸ナトリウム十水和物、酸化亜鉛とカルボン酸とのブレンド、アジピン酸、ホウ酸、或いはこれらのブレンドからなる群から選択される、請求項15に記載の方法。

【公表番号】特表2009−541543(P2009−541543A)
【公表日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−517064(P2009−517064)
【出願日】平成19年5月15日(2007.5.15)
【国際出願番号】PCT/EP2007/054678
【国際公開番号】WO2007/147687
【国際公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【出願人】(506126071)バーゼル・ポリオレフィン・イタリア・ソチエタ・ア・レスポンサビリタ・リミタータ (138)
【Fターム(参考)】