説明

ポリオレフィン粒子および樹脂組成物

【課題】
本発明の課題は、オレフィン重合用触媒を用いたオレフィンモノマーの乳化重合において得られたポリエチレン粒子の他樹脂に対する相溶性を改善することにある。
【解決手段】
オレフィン重合触媒を用いてオレフィン系モノマーを乳化重合する際、ラジカル重合性の官能基を有する多官能性のモノマーを添加して重合し、ポリオレフィンに架橋前前駆点を与えておき、その後過酸化物により処理してポリオレフィン粒子を合成することによって達成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はオレフィン重合触媒の存在下、オレフィンモノマーを乳化重合させる際に、ラジカル多官能性モノマーを添加して共重合させたポリオレフィンラテックスにラジカル開始剤を作用させることで得られたポリオレフィン粒子に関する。
【背景技術】
【0002】
一般にポリエチレンは、フッ素樹脂についで低い摩擦係数を示すため、エンジニアリングプラスチックなどの摩耗性改良剤として使用されている。特に超高分子量ポリエチレンは、摩耗特性が優れており、人工関節、プラスチック摺動部材の改質などの摺動条件下で使用されている(特許文献1)。また、架橋したポリエチレンは超高分子量ポリエチレンと同様に耐摩耗性改良剤として効果を発揮することが向上することが知られている(非特許文献1)。
【0003】
、後周期遷移金属錯体系のオレフィン重合触媒の存在下、オレフィンモノマーを乳化系で重合し、粒子径1μm以下のポリオレフィン粒子の状態で得られることを見出している(特許文献2)。しかしながら、ポリオレフィン粒子をエンジニアリングプラスチックと混練した場合、成形板表面にポリオレフィンがブリードアウトすることがあった。
【特許文献1】特開第2003−4043号公報
【特許文献2】国際公開第WO05/080445号公報
【非特許文献1】プラスチックス,1991年,42(7)巻,18頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、ポリオレフィン粒子と他の樹脂間の相溶性を改善することにある。オレフィン重合用触媒を用いてオレフィンモノマーの乳化重合を行う際、ラジカル架橋可能な官能基を導入し、得られた乳化液をラジカル開始剤により処理して得られるポリエチレン粒子により改善を図ることができる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明者らは鋭意検討した結果、本発明を完成するに至った。即ち、以下のものである。
【0006】
1). 後周期遷移金属錯体系のオレフィン重合用触媒を用いたオレフィンモノマーの乳化重合により得られた重合体にラジカル開始剤を添加することにより得られたポリオレフィン粒子。
【0007】
2). 後周期遷移金属錯体系のオレフィン重合用触媒を用いたオレフィンモノマーの乳化重合においてオレフィンとラジカル重合性の多官能性モノマーを用いて添加することを特徴とする1)に記載のポリオレフィン粒子。
【0008】
3). 粒子径が1μm以下且つゲル分率が50重量%以上であることを特徴とする1)または2)に記載のポリオレフィン粒子。
【0009】
4). 後周期遷移金属錯体系のオレフィン重合用触媒として下記一般式(1)〜(5):
【0010】
【化1】

【0011】
【化2】

【0012】
【化3】

【0013】
【化4】

【0014】
【化5】

【0015】
(式中、Mはニッケル、パラジウム又は白金であり、Mはパラジウムまたはニッケルである。Eは酸素または硫黄である。Xはリン、砥素またはアンチモンである。 R1、R2、R3は各々独立して、水素または炭素数1〜20の炭化水素基である。Rf1はフッ素原子または炭素数1〜20のフッ素化炭化水素基である。Rは水素、炭素数1〜20の炭化水素基、ハロゲン原子、炭素数1〜20のハロゲン化炭化水素基、水酸基、炭素数1〜20の炭化水素基からなるエーテル基、炭素数1〜20の炭化水素基からなるエステル基、スルホン酸塩またげ炭素数1〜20の炭化水素基からなるスルホン酸エステル基である。Yはハロゲン原子である。mは1〜3である。R11,R44は各々独立して、炭素数1〜4の炭化水素基である。R22,R33は各々独立して水素原子、またはメチル基である。R55はハロゲン原子、水素原子、または炭素数1〜20の有機基である。XはMに配位可能なヘテロ原子を持つ有機基であり、R55につながっていてもよい、またはXは存在しなくてもよい。L-は任意のアニオンである。)のいずれかを用いて得られることを特徴とする1)〜3)いずれかに記載のポリオレフィン粒子。
【0016】
5). 一般式(1)における後周期遷移金属錯体系のオレフィン重合用触媒が下記一般式(6):
【0017】
【化6】

【0018】
(式中、Mはニッケル、パラジウムまたは白金である。Eは酸素または硫黄である。Xはリン、砒素またはアンチモンである。R1、R2、R3は各々独立して、水素または炭素数1〜20の炭化水素基である。Rf1、Rf2はとは各々独立してフッ素原子または炭素数1〜20のふっ素化炭化水素基である。)で表されることを特徴とする4)に記載のポリオレフィン粒子。
【0019】
6). 後周期遷移金属錯体系のオレフィン重合用触媒のEが酸素、Xがリンであることを特徴とする4)または5)に記載のポリオレフィン粒子。
【0020】
7). 後周期遷移金属錯体系のオレフィン重合用触媒のY又はRf1がフッ素であることを特徴とする4)〜6)いずれかに記載のポリオレフィン粒子。
【0021】
8). 後周期遷移金属錯体系のオレフィン重合用触媒のMがニッケルであることを特徴とする4)〜7)いずれかに記載のポリオレフィン粒子。
【0022】
9). ポリオレフィンラテックスが炭素数2〜20のα‐オレフィンモノマーを重合して得られるラテックスであることを特徴とする1)〜8)いずれかに記載のポリオレフィン粒子。
【0023】
10). 多官能性モノマーの官能基がビニル基であることを特徴とする2)〜9)いずれかに記載のポリオレフィン粒子。
【0024】
11). 多官能性モノマーが環状炭素骨格を有することを特徴とする2)〜10)いずれかに記載のポリオレフィン粒子。
【0025】
12). 環状炭素骨格が芳香族基であることを特徴とする11)に記載のポリオレフィン粒子。
【0026】
13). 他の樹脂に配合して得られることを特徴とする1)〜12)いずれかに記載のポリオレフィン粒子含有樹脂組成物。
【0027】
14). 後周期遷移金属錯体系のオレフィン重合用触媒を用いたオレフィンモノマーの乳化重合により得られた重合体にラジカル開始剤を添加することにより得られることを特徴とする1)〜12)いずれかに記載のポリオレフィン粒子の製造方法。
【発明の効果】
【0028】
本発明の重合により得られたポリオレフィン粒子は、オレフィンの重合時に多官能性のモノマーを添加し、得られたポリオレフィン乳化液に対しラジカル開始剤を添加して処理することで効率良く合成できる。また、ポリオレフィン粒子は他の樹脂と混練した時、成形板の表面にブリードアウトすることなく良好な相溶性を有している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明を詳細に説明する。
後周期遷移金属錯体系のオレフィン重合用触媒を用いて得られたポリオレフィンで、重合時にラジカル重合性多官能性のモノマーを添加したポリオレフィンをラジカル開始剤により処理して得られるポリオレフィン粒子に関するものである。
【0030】
(オレフィン重合用触媒)
ポリオレフィンラテックスを製造するためのオレフィン重合用触媒としては、水および極性化合物の共存下でオレフィン重合活性を有する重合触媒であれば特に制限はなく、好ましい例としてケミカル・レビュー(Chemical Review),2000年,100巻,1169−1203頁、ケミカル・レビュー(Chemical Review),2003年,103巻,283−315頁、有機合成化学協会誌,2000年,58巻,293頁、アンゲバンテ・ケミー国際版(Angewandte Chemie International Edition),2002年,41巻,544−561頁に記載されているものを挙げる事ができる。
【0031】
但し、これに限定されるものではない。合成が簡便であり高活性が得られるという点から、一般式(1)〜(5)で示される後周期遷移金属錯体系のオレフィン重合用触媒が好ましい。
【0032】
【化7】

【0033】
【化8】

【0034】
【化9】

【0035】
【化10】

【0036】
【化11】

【0037】
(式中、Mはニッケル、パラジウム又は白金であり、Mはパラジウムまたはニッケルである。Eは酸素または硫黄である。Xはリン、砥素またはアンチモンである。 R1、R2、R3は各々独立して、水素または炭素数1〜20の炭化水素基である。Rf1はフッ素原子または炭素数1〜20のフッ素化炭化水素基である。Rは水素、炭素数1〜20の炭化水素基、ハロゲン原子、炭素数1〜20のハロゲン化炭化水素基、水酸基、炭素数1〜20の炭化水素基からなるエーテル基、炭素数1〜20の炭化水素基からなるエステル基、スルホン酸塩または炭素数1〜20の炭化水素基からなるスルホン酸エステル基である。Yはハロゲン原子である。mは1〜3である。R11,R44は各々独立して、炭素数1〜4の炭化水素基である。R22,R33は各々独立して水素原子、またはメチル基である。R55はハロゲン原子、水素原子、または炭素数1〜20の有機基である。XはMに配位可能なヘテロ原子を持つ有機基であり、R55につながっていてもよい、またはXは存在しなくてもよい。L-は任意のアニオンである。)。
【0038】
一般式(4)、(5)で示される後周期遷移金属錯体系のオレフィン重合触媒は、Brookhart触媒として知られている。
【0039】
水中で安定であることから特にMはパラジウムが好ましい。R11,R44で表される炭素数1〜4の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、イソプロピル基、t−ブチル基、n−ブチル基などが好ましく、さらに好ましくはメチル基、イソプロピル基が好ましい。Xで表されるMに配位可能な分子としては、ジエチルエーテル、アセトン、メチルエチルケトン、アセトアルデヒド、酢酸、酢酸エチル、水、エタノール、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、炭酸プロピレンなどの極性化合物を例示することができるが、なくてもよい。またR55がヘテロ原子、特にエステル結合等のカルボニル酸素を有する場合には、このカルボニル酸素がXとして配位してもよい。
【0040】
また、オレフィンとの重合時には、該オレフィンが配位する形になることが知られている。また、L-で表される対アニオンは、α−ジイミン型の配位子と遷移金属とからなる触媒と助触媒の反応により、カチオン(M+)と共に生成するが、溶媒中で非配位性のイオンペアを形成できるものならばいずれでもよい。
【0041】
両方のイミン窒素に芳香族基を有するα−ジイミン型の配位子、具体的には、ArN=C(R22)−C(R33)=NArで表される化合物は、合成が簡便で、活性が高いことから好ましい。R22、R33は炭化水素基であることが好ましく、特に、水素原子、メチル基、および一般式(5)で示されるアセナフテン骨格としたものが合成が簡便で活性が高いことから好ましい。さらに、両方のイミン窒素に置換芳香族基を有するα−ジイミン型の配位子を用いることが、立体因子的に有効で、ポリマーの分子量が高くなる傾向にあることから好ましい。従って、Arは置換基を持つ芳香族基であることが好ましく、例えば、2,6−ジメチルフェニル、2,6−ジイソプロピルフェニルなどが挙げられる。
【0042】
本発明の後周期遷移金属錯体から得られる活性種中の補助配位子(R55)としては、炭化水素基あるいはハロゲン基あるいは水素基が好ましい。後述する助触媒のカチオン(Q+)が、触媒の金属−ハロゲン結合あるいは金属−水素結合あるいは水素−炭素結合から、ハロゲン等を引き抜き、塩が生成する一方、触媒からは、活性種である、金属−炭素結合あるいは金属−ハロゲン結合あるいは金属−水素結合を保有するカチオン(M+)が発生し、助触媒のアニオン(L-)と非配位性のイオンペアを形成する必要があるためである。
【0043】
55を具体的に例示すると、メチル基、クロロ基、ブロモ基あるいは水素基が挙げられ、メチル基あるいはクロロ基が、合成が簡便であることから好ましい。なお、M+−ハロゲン結合へのオレフィンの挿入よりM+−炭素結合(あるいは水素結合)へのオレフィンの挿入の方がおこりやすいため、触媒の補助配位子として特に好ましいR55はメチル基である。さらに、R55としてはMに配位可能なカルボニル酸素を持つエステル結合を有する有機基であってもよく、例えば、酪酸メチルから得られる基が挙げられる。
【0044】
助触媒としては、Q+-で表現できる。Qとしては、Ag、Li、Na、K、Hが挙げられ、Agがハロゲンの引き抜き反応が完結しやすいことから好ましく、Na、Kが安価であることから好ましい。Lとしては、BF4、B(C65、B(C63(CF32、PF、AsF、SbF、(RfSO22CH、(RfSO23C、(RfSO22N、RfSO3が挙げられる。特に、PF、AsF、SbF、(RfSO22CH、(RfSO23C、(RfSO22N、RfSO3が、極性化合物に安定な傾向を示すという点から好ましく、さらに、PF、AsF、SbF6が、合成が簡便で工業的に入手容易であるという点から特に好ましい。
【0045】
活性の高さからは、BF、B(C65、B(C63(CF324が、特にB(C65、B(C63(CF324が好ましい。Rfは複数のフッ素基を含有する炭化水素基である。これらフッ素は、アニオンを非配位的にするために必要で、その数は多いほど好ましい。Rfの例示としては、CF3、C25、C49、C817、C65があるが、これらに限定されない。またいくつかを組み合わせてもよい。
【0046】
一般式(1)〜(3)で示される後周期遷移金属錯体系のオレフィン重合触媒は、SHOP(Shell Higher Olefin Process)触媒として知られている。
一般式(1)の中でも下記一般式(6):
【0047】
【化12】

【0048】
(式中、Mはニッケル、パラジウムまたは白金である。Eは酸素または硫黄である。Xはリン、砒素またはアンチモンである。R、R、Rは各々独立して、水素または炭素数1〜20の炭化水素基である。Rf1,Rf2は各々独立してフッ素原子または炭素数1〜20のフッ素化炭化水素基である。)で表されるオレフィン系重合用触媒が好ましい。
【0049】
特に、Rf1がフッ素化炭化水素基である場合、乳化系でも高いエチレン重合活性を示すので好ましい。Rf2を電子吸引性のフッ素原子または炭素数1〜20のフッ素化炭化水素基にすることでより高活性およびまたはより高分子量のポリオレフィンを得ることができる。一般式(6)の化合物は、以下の反応により調製するのが好ましい。
【0050】
【化13】

【0051】
(反応式中、Mはニッケル、パラジウムまたは白金である。Eは酸素または硫黄である。Xはリン、砒素またはアンチモンである。R、R、R は各々独立して、水素または炭素数1〜20の炭化水素基である。Rf1はフッ素原子または炭素数1〜20のフッ素化炭化水素基である。Rは水素、炭素数1〜20の炭化水素基、ハロゲン原子、炭素数1〜20のハロゲン化炭化水素基、水酸基、炭素数1〜20の炭化水素基からなるエーテル基、炭素数1〜20の炭化水素基からなるエステル基、スルホン酸塩または炭素数1〜20の炭化水素基からなるスルホン酸エステル基である。MLnはゼロ価のニッケル、パラジウムまたは白金化合物である。LはMに対して配位し、Mの価数をゼロ価に保持するものであれば特に制限はない。nは自然数である)。
【0052】
これらの反応が進行しやすいことから、Mはゼロ価のニッケルであることが好ましい。Eは酸素であることが好ましい。Xはリンであることが好ましい。
f1、Rは各々独立して炭素数1〜20のフッ素化炭化水素基が好ましい。具体例としては、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ヘプタフルオロプロピル基、ペンタフルオロフェニル基、トリフルオロメチル基で置換されたフェニル基等が挙げられる。特に、Rf1はトリフルオロメチル基が好ましく、Rf2はペンタフルオロフェニル基が好ましい。
【0053】
また、R、R、Rは各々独立して、炭素数1〜20の炭化水素基が好ましく、特に置換芳香族基が好ましい。置換芳香族基として最も好ましいのはフェニル基である。一般式(2)あるいは(3)の化合物は、以下の化合物によりその場で調製される配位子を用いてその場の反応で調製して用いるのが好ましい。
【0054】
【化14】

【0055】
【化15】

【0056】
(反応式中、Mはニッケル、パラジウムまたは白金である。Eは酸素または硫黄である。Xはリン、砒素またはアンチモンである。R、R、Rは各々独立して、水素または炭素数1〜20の炭化水素基である。Yはハロゲン原子である。mは1〜3である。MLnはゼロ価のニッケル、パラジウムまたは白金化合物である。LはMに対して配位し、Mの価数をゼロ価に保持するものであれば特に制限はない。nは自然数である。)
これらの反応が進行しやすいことから、Mはゼロ価のニッケルであることが好ましい。Eは酸素であることが好ましい。Xはリンであることが好ましい。
【0057】
ゼロ価のニッケル化合物としては、例えば、ビス(シクロオクタジエン)ニッケル、ビス(シクロオクタテトラエン)ニッケル等が好ましく、ビス(シクロオクタジエン)ニッケルが特に好ましい。
【0058】
これらビス(シクロオクタジエン)ニッケルは公知の方法に従って合成することもできるし、固体を取り出すことなく溶液のまま用いてもよい(例えば、実験化学講座第4版、371頁に準じて2価のニッケル化合物とシクロオクタジエン等とトリアルキルアルミニウムとから合成できる)。
【0059】
また、Yは塩素またはフッ素、特にフッ素であることが好ましい。また、R1,R2,R3は各々独立して、炭素数1〜20の炭化水素基が、特に置換芳香族基が好ましい。置換芳香族基として最も好ましいのはフェニル基である。反応の促進のために、ホスフィン、ホスフィン酸化物、ケトン、エステル、エーテル、アルコール、ニトリル、アミン、ピリジン、オレフィン等を共存させるのが好ましい。特にオレフィンを共存させるのが好ましい。
【0060】
反応温度は0〜100℃、さらには15〜70℃が好ましい。反応時間に特に制限はないが、20分間〜24時間が好ましい。反応は不活性雰囲気下で行うのが好ましく、アルゴン、窒素等が挙げられる。場合により微量の酸素、水分が存在していてもよい。反応は、通常溶媒を使用して実施するのが好ましく、溶媒としては脂肪族または芳香族溶媒が好ましく、これらはハロゲン化されていてもよい。
【0061】
例としては、トルエン、クロロベンゼン、ヘキサン、シクロヘキサン、塩化メチレン、クロロホルム等が挙げられる。一般に溶媒中のMの濃度は、1〜20000μmol/L、さらには10〜10000μmol/Lの範囲が好ましい。
【0062】
本発明のオレフィン重合反応において、MLn/配位子のモル比は、反応収率を高めるため少なくともMLnを等量以上使用するのがよく、10/1〜1/1が好ましく、7/1〜2/1がより好ましい。本発明のオレフィン系重合触媒は複核であってもよい。
【0063】
本発明に用いるオレフィン重合用触媒の具体例としては、一般式(1)〜(3)のMとしてはニッケルが入手性の点から優れており、具体的には下記の化合物を好適に例示することができる。
【0064】
【化16】

【0065】
【化17】

【0066】
【化18】

【0067】
(式中、Phはフェニル基、R’は炭素数1〜6の炭化水素基、nは1〜3を示す)。
【0068】
(オレフィンモノマー)
本発明に用いられる、オレフィンモノマーは、オレフィン重合可能な炭素−炭素二重結合を有するオレフィン化合物である。オレフィンモノマーとしては炭素数2〜20のオレフィンが好ましい。中でも炭素数2〜20のα−オレフィンが、特には炭素数2〜10のα−オレフィンが重合活性の高さから好ましい。具体的には、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ヘキサデセン、1−エイコセン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、ビニルシクロヘキサン、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロオクテン、ノルボルネン、5−フェニル−2−ノルボルネン等が挙げられる。さらには、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテンが好ましい。
【0069】
(多官能性モノマー)
多官能性モノマーは、ラジカル重合性の架橋前駆点をポリオレフィン中に与えることのできるものであり、官能基が少なくとも2個以上有するものであれば特に限定はなく、また、単独で使用してもよく、また2種以上使用してもよい。官能基としてはビニル基が好ましく、またモノマー中に環状炭素骨格を有する化合物が好ましい。最も好ましくは環状炭素骨格を有し、ビニル基を2つ以上、特には2つ有する化合物が好ましい。環状炭素骨格としては脂環式あるいは芳香族構造を有するものが挙げられる。これら化合物としては、例えば、一般式(7)〜(9)で示される化合物が挙げられる。
【0070】
【化19】

【0071】
nは1以上の自然数、mはビニル基の数を示し2以上(n+2)以下の自然数である。ビニル基の置換位置は環状骨格の任意の位置である。
【0072】
【化20】

【0073】
pは2以上の自然数で、ベンゼン骨格の場合は6以下、ナフタレン骨格の場合は8以下の自然数である。ビニル基の置換位置は環状骨格の任意の位置である。
【0074】
【化21】

【0075】
kは0又は1以上の自然数、qは環状骨格に接続したビニル基の数を示し、2以上(2k+8)以下の自然数である。ビニル基の置換位置は環状骨格の任意の位置である。
【0076】
なお、環状炭素骨格を有する多官能性モノマーを用いる場合、1,3−ブタジエン、イソプレン、1,4−ヘキサジエン、1,5−ヘキサジエン、1,7−オクタジエン、1,9−デカジエン、ノルボルナジエン、等の2官能性単量体を少量併用してもよい。
上記一般式で示される二官能性モノマーの中で、脂環族の具体例としては、1,4−ジビニルシクロヘキサン、ジビニルシクロオクタン、1,2,4−トリビニルシクロヘキサンが挙げられる。
芳香族のものではジビニルベンゼン、ジビニルナフタレンなどが挙げられる。また、これらの中では、特にジビニルベンゼンが好ましい。これらジエンの使用量はオレフィンモノマー100重量部に対して好ましくは1〜20重量部であることが、触媒活性を得る点で好ましい。
【0077】
(オレフィンモノマー重合)
本発明の、オレフィン重合触媒を用いた、オレフィンモノマーの重合方法は、得られる重合体がラテックス(乳化液)で得られれば特に限定はないが、乳化重合法(ミニエマルジョン重合法を含む)あるいはミクロ懸濁重合法あるいはそれに近い系で行うことができる。例えば水中にオレフィン重合触媒およびオレフィンモノマーを均一に分散させて反応させることが出来る。用いるオレフィンモノマーが反応温度において気体である場合は、低温で凝縮あるいは凝固させて液体もしくは固体として仕込んだ後に系を反応温度まで加熱しても良いし、圧力をかけて液体または気体として仕込んでも良い。
【0078】
オレフィンモノマーおよびオレフィン重合触媒は、反応容器内に一括して全量を仕込んでも一部を仕込んだ後に残りを連続的にまたは間欠的に追加しても良い。また、水および乳化剤と混合して、例えばホモジナイザーなどをかけて乳化液とした状態で仕込んでも良い。
【0079】
乳化重合またはミクロ懸濁重合に用いる乳化剤は公知のものを使うことができ、アニオン性、カチオン性、ノニオン性のいずれの乳化剤も特に限定なく使うことができる。乳化能が良好であるという点から、アルキルベンゼンスルホン酸のアルカリ金属塩、アルキル硫酸のアルカリ金属塩、アルキルスルホコハク酸のアルカリ金属塩などのアニオン性乳化剤が好ましく、さらに好ましくはアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルキル硫酸ナトリウム、アルキルスルホコハク酸ナトリウムなどが好ましい。該乳化剤の使用量には特に限定がなく、適宜調整すればよいが、好ましくは使用する水に対して、1g/L〜50g/L、さらに好ましくは2g/L〜20g/Lである。
【0080】
ミクロ懸濁重合に用いる分散剤は、公知のものを使うことができる。具体例としてはリン酸カルシウム、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、澱粉末シリカ等の水難溶性無機化合物;ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキサイド、アルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース等のノニオン系高分子化合物;ポリアクリル酸およびその塩、ポリメタクリル酸およびその塩、メタクリル酸エステルとメタクリル酸およびその塩との共重合体等のアニオン系高分子化合物などがあげられる。
【0081】
重合の際、オレフィンモノマーおよびオレフィン重合触媒の溶解度を高め反応を促進するために有機溶媒を少量添加してもよい。その溶媒としては特に制限はないが、脂肪族または芳香族溶媒が好ましく、これらはハロゲン化されていてもよい。例としては、トルエン、クロロベンゼン、ヘキサン、メチルシクロヘキサン、塩化メチレン、クロロホルム等が挙げられる。
【0082】
また、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジエチルエーテル、アセトン、エタノール、メタノール、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル等の極性溶媒であってもよい。水溶性が比較的低く、かつ触媒が溶解しやすい溶媒であることが特に好ましく、このような特に好ましい例としてはトルエン、塩化メチレン、クロロホルムおよびブチルクロリド、クロロベンゼン等が挙げられる。
【0083】
あらかじめ系全体を乳化させておくミニエマルジョン重合の場合にはラテックス(乳化液)の安定化のためにペンタデカン、ヘキサデカン、ヘプタデカンなどの水溶性の低い脂肪族溶媒をコスタビライザーとして用いることが好ましい。ポリブテンなどの水溶性の低いオリゴマーを用いてもよい。これらの溶媒は単独で用いても良いし、複数を組み合わせて用いても良い。溶媒の合計使用量は、反応液全体の体積に対して好ましくは30容量%以下、さらに好ましくは10容量%以下である。これらの溶媒は、そのまま添加してもよいし、乳化させて添加しても良い。
【0084】
本発明のポリオレフィンラテックスの製造は、通常−30〜200℃、好ましくは0〜100℃、特に好ましくは15〜90℃で行われる。重合時間は特に制限はないが、通常10分〜24時間、反応圧力は特に制限はないが、常圧〜10MPaである。温度および圧力は、反応開始から終了まで常時一定に保っても良いし、反応途中で連続的もしくは段階的に変化させても良い。
【0085】
用いるオレフィンモノマーがエチレン、プロピレンなどの気体である場合は、重合反応によるモノマー消費に伴って徐々に圧力が低下しうるが、そのまま圧力を変化させて反応を行っても良く、モノマーを供給する、加熱するなどにより常時一定の圧力を保って反応を行っても良い。
【0086】
本発明により得られるポリオレフィンは通常ラテックスとして得られるのが好ましい。ラテックスの粒径は使用した乳化剤、有機溶媒、水の量、乳化条件によって調整することができる。ラテックスの安定性等の点から好ましくは粒子径が20nm〜5000nm、さらに好ましくは50〜2000nmのものが得られる条件を選ぶのが好ましく、とくに好ましくは、100〜1500nmである。
【0087】
本発明に用いられる乳化重合またはミクロ懸濁重合により製造されたポリオレフィンラテックスは、必要に応じて希釈、濃縮、熱処理、熟成処理などの操作を加えた後、後述するラジカル開始剤の処理工程に用いても良いし、乳化剤、凍結防止剤、安定剤、pH調整剤などの添加物を加えて成分を調整した後用いても良い。該ポリオレフィンラテックスは、固形分含量が1〜50重量%のラテックスとして用いることが好ましく、さらに好ましくは固形分含量が3〜30重量%のラテックスとして用いることが好ましい。
【0088】
固形分含量が多すぎるとラテックス粒子の凝集が起って反応が不均一になりやすく、固形分含量が少なすぎると反応液全体の量が増えるので釜効率が悪くなる。
【0089】
(ポリオレフィンのラジカル開始剤処理)
後周期遷移金属錯体系のオレフィン重合用触媒を用いたオレフィンモノマーの乳化重合により得られた重合体はラジカル開始剤を添加して処理することにより本願発明のポリオレフィン粒子となす事ができる。
二官能性モノマーを取り込むことでオレフィンモノマーの乳化重合により得られた重合体は、ラテックスの状態でラジカル開始剤を添加して処理することで容易に本願発明のポリオレフィン粒子を得ることが可能であり好ましい。
【0090】
ポリオレフィンラテックスの平均粒子径は、添加したラジカル開始剤との速度論的な衝突回数という観点から、前述した平均粒子径であることが望ましい。
【0091】
ラジカル開始剤は特に限定なく公知のものを使うことができる。中でも、過硫酸塩、有機過酸化物、アゾ化合物が好ましい。例えば過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムなどの過硫酸塩;各種有機過酸化物例えば、t−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイドなどのアルキルハイドロパーオキサイド;ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイドなどの過酸化ジアシル;ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシラウレイトなどの過酸化ジアルキル;2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリルなどのアゾ化合物、などが挙げられる。これらの中では、過硫酸塩が好ましい。
【0092】
処理条件は特には限定されないが、ラジカル開始剤を熱分解的な方法の他に、ラジカル開始剤並びに賦活剤(金属塩または金属錯体)、キレート剤、還元剤とからなるレドックス触媒系として用いることもできる。ラジカル開始剤は熱分解的な方法でもレドックス系触媒を用いる方法でも良い。熱分解的な方法は、還元剤や賦活剤などの添加物を加える必要がないので、金属イオン含量の少ない重合体を得るのに適している。レドックス系触媒を用いる方法は、低い反応温度で反応させることができるので、反応の制御が容易となる利点がある。
【0093】
レドックス触媒を構成する還元剤としては例えばグルコース、デキストロース、スルホキシル酸ナトリウムホルムアルデヒド、亜 BR>ー酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、アスコルビン酸、イソアスコルビン酸などが好ましく使用できる。安価で活性が高いという点から、このうちスルホキシル酸ナトリウムホルムアルデヒドが特に好ましい。
【0094】
レドックス触媒を構成するキレート剤としてはエチレンジアミン四酢酸塩などのポリアミノカルボン酸塩、クエン酸などのオキシカルボン酸類、縮合リン酸塩など水溶性キレート化合物を形成するもの、およびジメチルグリオキシム、オキシン、ジチゾンなど油溶性キレート化合物を形成するものが挙げられる。これらの中でエチレンジアミン四酢酸塩などのポリアミノカルボン酸塩およびクエン酸などのオキシカルボン酸類が好ましい。
【0095】
レドックス触媒を構成する賦活剤としては例えば鉄、銅、マンガン、銀、白金、バナジウム、ニッケル、クロム、パラジウム、コバルトなどの金属塩または金属キレートを挙げる事ができ、好ましい例としては例えば硫酸第一鉄、硫酸銅、ヘキサシアノ鉄(III)カリウムなどが挙げられる。賦活剤とキレート剤は、別々の成分として用いても良く、予め反応させて金属錯体として用いても良い。
【0096】
開始剤、賦活剤、キレート剤、還元剤の組み合わせに特に限定は無く、それぞれ任意に選べば良い。賦活剤/還元剤/キレート剤の組み合わせの好ましい例としては例えば硫酸第一鉄/グルコース/ピロリン酸ナトリウム、硫酸第一鉄/デキストロース/ピロリン酸ナトリウム、硫酸第一鉄/スルホキシル酸ナトリウムホルムアルデヒド/エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム、硫酸第一鉄/スルホキシル酸ナトリウムホルムアルデヒド/クエン酸、硫酸銅/スルホキシル酸ナトリウムホルムアルデヒド/クエン酸の組み合わせである。
【0097】
とくに好ましい組み合わせとしては硫酸第一鉄/スルホキシル酸ナトリウムホルムアルデヒド/エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム、硫酸第一鉄/スルホキシル酸ナトリウムホルムアルデヒド/クエン酸などを挙げることができるが、これに限定されるものではない。
【0098】
ラジカル開始剤の好ましい使用量はポリオレフィン100重量部に対して0.005〜20重量部、さらには0.01〜10重量部であることが好ましい。
【0099】
ラテックスをラジカル開始剤で処理する温度としては、50〜100℃の範囲内であることが好ましい。ラテックスをラジカル開始剤で処理する時間としては、1〜10時間、より好ましくは2〜5時間が好ましい。ラテックスをラジカル開始剤で処理する圧力は、常圧が好ましい。
【0100】
ラテックスをラジカル開始剤で処理する際、ラテックスの固形分濃度は、1〜30%の範囲であることが好ましい。ラテックスをラジカル開始剤で処理した後ラテックスから樹脂を取出す方法としては、10%の塩化カルシウム水溶液を加えて塩析させ、得られた固形分を純水で3回洗浄した後、真空乾燥させることが好ましい。
【0101】
(樹脂組成物)
本発明のポリオレフィン共重合体のラテックスは、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩で塩析することが出来る。好ましい塩としては、例えば、塩化カルシウム、硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウム等が挙げられる。これらの塩は、ポリオレフィン共重合体のラテックスに対して、水溶液として加えても良いし、固体のまま添加してもよい。塩析させたポリオレフィン共重合体の固形分は、ろ過、遠心分離等で水分と容易に分離することが出来る。分離されたポリオレフィン共重合体の固形分は、減圧乾燥、加熱乾燥等で乾燥することが出来るが、ポリオレフィンを含むためオーブンでの加熱は120℃以下が好ましく、より好ましくは100℃以下で乾燥である。
【0102】
上記の操作で得られたポリオレフィン共重合体の乾燥物を押出機またはバンバリーミキサーなどを用いてペレット状に加工することができる。または析出から脱水(脱溶媒)を経て得られた含水(含溶媒)状態の樹脂を、圧搾脱水機を経由させることによりペレット状に加工し回収することもできる。
【0103】
本発明のポリオレフィン共重合体は、他の樹脂、より具体的には各種の熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂に配合することにより樹脂組成物を製造するための原料として用いることができる。
【0104】
配合する際には、上記の操作で得られたポリオレフィン共重合体の乾燥物をそのままあるいは、押出機またはバンバリーミキサーなどを用いてペレット状に加工して配合することができる。または析出から脱水(脱溶媒)を経て得られた含水(含溶媒)状態の樹脂を、圧搾脱水機を経由させることによりペレット状に加工して配合することができる。
【0105】
前記熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィン、ビニルポリマー、エンジアリングプラスチックが好ましい。具体的にはポリオレフィンとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンプロピレンゴム、エチレンプロピレンジエンゴム、エチレンオクテンゴム、ポリメチルペンテン、エチレン環状オレフィン共重合体をあげることができる。ビニルポリマーとしてはポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリメタクリル酸メチル、メタクリル酸メチル−スチレン共重合体スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−アクリロニトリル−N−フェニルマレイミド共重合体、α−メチルスチレン−アクリロニトリル共重合体をあげることができる。エンジアリングプラスチックとしては、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリフェニレンエーテル−ポリスチレン複合体、ポリアセタール、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルフォンをあげることができる。
【0106】
これらの中ではエンジアリングプラスチックが好ましく、中でもポリエステル、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリフェニレンエーテル−ポリスチレン複合体、ポリアセタール、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルフォンが好ましい、さらにはポリアミドが好ましい。
【0107】
前記熱硬化性樹脂としては、一般に用いられている樹脂、例えばフェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、不飽和ホリエステル樹脂、エポキシ樹脂などが好ましく例示される。これら熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0108】
また、他の樹脂と本発明のポリオレフィン共重合体は、任意の割合で配合することが出来るが、好ましくは他の樹脂/ポリオレフィン共重合体の重量比率が100/100〜100/0.1、より好ましくは100/50〜100/1、さらに好ましくは100/25〜100/5である。前記した他の樹脂、より具体的には各種の熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂と配合して組成物となす事が好ましい。
【0109】
中でも熱可塑性樹脂に配合して熱可塑性の樹脂組成物となすことが好ましい。
【0110】
本発明のポリオレフィン共重合体組成物を得る方法としては、通常の配合に用いられる方法を用いることができ、たとえば、熱可塑性樹脂と本発明のポリオレフィン共重合体および所望により添加剤成分とを、加熱混練機、例えば、一軸押出機、二軸押出機、ロール、バンバリーミキサー、ブラベンダー、ニーダー、高剪断型ミキサー等を用いて溶融混練することで製造することができる。また各成分の混練順序は特に限定されず、使用する装置、作業性あるいは得られる熱可塑性樹脂組成物の物性に応じて決定することができる。
【0111】
かくして得られる架橋ポリオレフィン粒子の成形法としては、通常の樹脂組成物の成形に用いられる、たとえば射出成形法、押出成形法、ブロー成形法、カレンダー成形法などの成形法があげられる。
【0112】
以上、本発明により得られるポリオレフィン共重合体は樹脂組成物となすと摺動性が大幅に向上したものとなる。特に組成物の動摩擦係数が小さくなり、また、耐摩耗性が良好であることから、摩耗量も少ない樹脂組成物となすことができる。
【実施例】
【0113】
以下に、実施例に基づき本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらにより何ら制限を受けるものではない。
【0114】
[重合転化率]
乳化重合において、仕込んだモノマー、乳化剤および開始剤の重量の合計を反応液全体の総重量で除して、モノマーが100%重合した場合の最大固形分濃度を求めた。反応後に得られたラテックスを軟膏缶に0.5〜2g程度採取し、100℃のオーブンで熱乾燥して残留する固形分の割合を求め、これをラテックス中の固形分濃度とみなした。熱乾燥する時間は、さらに30分以上加熱しても重量変化が1%以下となるまで(通常30分〜2時間)である。以下の式に基づいて重合転化率を算出した。
重合転化率(重量%)={(ラテックス中の固形分濃度)/(最大固形分濃度)}×100。
【0115】
[粒子径の測定]
粒子径は、マイクロトラック粒度分布測定装置(日機装社製)(Microtrac Nanotrac 150 Version:10.1.2−016SA)にて測定した。なお、本発明の粒子径とは体積平均粒子径のことを言う。
【0116】
(合成例1)配位子の合成
窒素雰囲気下、Helvetica Chimica Acta.1928頁,76巻,1993年を参考にして合成したペンタフルオロベンジルトリフェニルホスホニウムブロミド2.61g、乾燥THF(和光純薬(株)製)11mlを仕込み、氷浴を用いて0℃に冷却した。モレキュラーシーブで乾燥したトリエチルアミン(和光純薬(株)製)1.5mlを加え、15分攪拌した。さらにトリフルオロ酢酸無水物(東京化成製)0.78mlを滴下し、0℃で1時間、室温(15℃)で1時間反応させた。 濾液を濃縮し、蒸留水(和光純薬(株)製)15mlで洗浄、乾燥した。得られた生成物を60℃のメタノールに溶解させ0℃まで徐々に冷却し、再結晶を行った。乾燥後の収量は、1.5gであった。1H−NMR(CDCl3)により、ベンジルプロトンが消失していることから、
【0117】
【化22】

【0118】
で示される化学式で示される化合物が生成していることを確認した。
【0119】
(実施例1)ジビニルベンゼン存在下でのエチレン重合
アルゴン雰囲気下、(合成例1)で得られた化合物14mg(25μmol)、ビス(シクロオクタジエン)ニッケル(関東化学(株)製)40mg(150μmol)を脱水トルエン(関東化学(株)製)1mLにそれぞれ溶かし15分間攪拌した。その後、それぞれのトルエン溶液を混合し、さらに1−ヘキセン(和光純薬(株)製)0.36mLを加えた。この触媒溶液を、ドデシル硫酸ナトリウム(和光純薬(株)製)2g、純水20mL、ヘキサデカン(和光純薬(株)製)0.2gと共に超音波ホモジナイザー(SMT company社製、超音波分散機 UH−600)によって乳化した。なお、乳化の際の超音波作用時間は1分間である。
【0120】
アルゴン置換した1Lオートクレーブ(TAIATSU TECHNO社製、TAS−1型オートクレーブ、材質SUS 316)に、ドデシル硫酸ナトリウム2g、純水500mL、脱水トルエン50mL、ヘキサデカン(和光純薬(株)製)5g、ジビニルベンゼン(新日鉄化学(株)製)5gの混合物を超音波ホモジナイザー(SMT company社製、超音波分散機 UH−600)で5分間乳化させた溶液を仕込んだ。仕込んだ乳化液とオートクレーブ内はアルゴンガスで加圧脱気した(アルゴン1MPa×15回、攪拌200rpm、室温)。
【0121】
そこに、上記触媒の乳化溶液をシリンジで注入した。その後、エチレンガス(住友精化(株)社製)を導入して、オートクレーブ内を3MPaとし、300rpm、50℃で5時間反応させた。
【0122】
反応後、未反応のエチレンガスを除去し、ポリエチレンラテックスを得た。なお、得られたポリエチレンラテックスの固形分濃度(SC)は6.8%であった。また、この反応では、TON=52000[mol Ethylene/mol cat.]であった。得られたポリエチレンラテックスの粒子径は450nmであった。
【0123】
冷却管、温度計を備えた4口フラスコに、上記で合成したポリエチレンラテックス(使用時固形分量6.8%)70gを仕込み窒素雰囲気下とした。続いて、このポリエチレンラテックスをスターラーで緩やかに撹拌して、オイルバスで昇温し、60℃とした。ここへ、過硫酸カリウム(和光純薬(株)製)0.1gを3.5mLの純水に溶解させたものを加えた。過硫酸カリウム添加後の反応液を80℃まで昇温させて3.5時間攪拌し続け、処理を行った。
【0124】
得られた架橋ポリエチレンラテックスに、10%塩化カルシウム水溶液を加え塩析させた。得られた固形物を純水で3回洗浄した後、真空乾燥させてポリエチレン粒子を得た。
【0125】
ナイロン6(ユニチカ製、A1φ13φBRL)100重量部と得られた粒子1.0重量部を240℃に設定した2軸押出機(日本製鉄鋼製 LABOTEX L/D=28 φ=30mm)を用いて溶融混練することにより樹脂組成物を得た。混練後の樹脂組成物は、射出成形機(型締力80t、東芝社製、)で120×120×(厚さ)2mmの平板に加工した。
【0126】
(比較例1)実施例1と同じ触媒でのエチレン単独重合
アルゴン雰囲気下、(合成例1)で得られた化合物13.8mg(26μmol)、ビス(シクロオクタジエン)ニッケル(関東化学(株)製)31.2mg(115μmol)を脱水トルエン(関東化学(株)製)1mLにそれぞれ溶かし15分間攪拌した。その後、それぞれのトルエン溶液を混合し、さらに1−ヘキセン(和光純薬(株)製)0.4mLを加えた。この触媒溶液を、ドデシル硫酸ナトリウム(和光純薬(株)製)2g、純水20mL、ヘキサデカン(和光純薬(株)製)0.2gと共に実施例1と同様に乳化した。
【0127】
アルゴン置換した1Lオートクレーブ(TAIATSU TECHNO社製、TAS−1型オートクレーブ、材質SUS 316)に、ドデシル硫酸ナトリウム2g、純水500mL、脱水トルエン50mL、ヘキサデカン(和光純薬(株)製)5.2gの混合物を実施例1と同様にして乳化させた溶液を仕込んだ。仕込んだ乳化液とオートクレーブ内はアルゴンガスで実施例1と同様に加圧脱気した。
【0128】
そこに、上記触媒の乳化溶液をシリンジで注入した。その後、エチレンガス(住友精化(株)社製)を導入して、実施例1と同様にして反応させた。
【0129】
反応後、未反応のエチレンガスを除去し、ポリエチレンラテックスを得た。なお、得られたポリエチレンラテックスの固形分濃度(SC)は14.5%であった。また、この反応では、TON=126000[mol Ethylene/mol cat.]であった。得られたポリエチレンラテックスの粒子径は700nmであった。
【0130】
得られたポリエチレンラテックスを実施例1と同様にしてポリエチレン粒子を得た。
ナイロン6(ユニチカ製、A1φ13φBRL)100重量部と得られた架橋体1.0重量部を実施例1と同様に溶融混練することにより樹脂組成物を得た。混練後の樹脂組成物は、実施例1と同様に120×120×(厚さ)2mmの平板に加工した。
【0131】
(比較例2)実施例1と同じ触媒を用いて1,9−デカジエン共存下でのエチレン重合
アルゴン雰囲気下、(合成例1)で得られた化合物13.7mg(26μmol)、ビス(シクロオクタジエン)ニッケル(関東化学(株)製)28.9mg(105μmol)を脱水トルエン(関東化学(株)製)1mLにそれぞれ溶かし15分間攪拌した。その後、それぞれのトルエン溶液を混合し、さらに1−ヘキセン(和光純薬(株)製)0.4mLを加えた。この触媒溶液を、ドデシル硫酸ナトリウム(和光純薬(株)製)2g、純水20mL、ヘキサデカン(和光純薬(株)製)0.2gと共に実施例1と同様に乳化した。
【0132】
アルゴン置換した1Lオートクレーブ(TAIATSU TECHNO社製、TAS−1型オートクレーブ、材質SUS 316)に、ドデシル硫酸ナトリウム2g、純水500mL、脱水トルエン50mL、ヘキサデカン(和光純薬(株)製)5.3g、1,9−デカジエン(東京化成(株))5.2gの混合物を実施例1と同様に乳化させ、実施例1と同様に加圧脱気した。
そこに、上記触媒の乳化溶液をシリンジで注入した。その後、エチレンガス(住友精化(株)社製)を導入して、実施例1と同様に反応させた。
【0133】
反応後、未反応のエチレンガスを除去し、ポリエチレンラテックスを得た。なお、得られたポリエチレンラテックスの固形分濃度(SC)は4.5%であった。また、この反応では、TON=31,000[mol Ethylene/mol cat.]であった。得られたポリエチレンラテックスの粒子径は360nmであった。
【0134】
得られたラテックスを実施例1と同様の手順でポリエチレン粒子を得た。
【0135】
ナイロン6(ユニチカ製、A1φ13φBRL)100重量部と得られたポリエチレン粒子1.0重量部を実施例1と同様に溶融混練することにより樹脂組成物を得た。混練後の樹脂組成物は、実施例1と同様に120×120×(厚さ)2mmの平板に加工した。
【0136】
実施例1および比較例1、2で得られたサンプル板の状態を以下の基準で評価した。その結果について表1に示した。
×:ブリード物がサンプル板表面にあり、表面を指でこすると剥がれる状態。
○:ポリエチレンがサンプル板表面にはブリードアウトしておらず、表面を指でこすっても剥がれない状態。
【0137】
【表1】

【0138】
実施例1と比較例1、2より、本発明の後工程によりラジカル開始剤により処理したポリオレフィンを用いることによって、ナイロンと混練した際ポリエチレンが成形板の表面にブリードアウトすることなく相溶性が改善できることが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
後周期遷移金属錯体系のオレフィン重合用触媒を用いたオレフィンモノマーの乳化重合により得られた重合体にラジカル開始剤を添加することにより得られたポリオレフィン粒子。
【請求項2】
後周期遷移金属錯体系のオレフィン重合用触媒を用いたオレフィンモノマーの乳化重合においてオレフィンとラジカル重合性の多官能性モノマーを用いて添加することを特徴とする請求項1に記載のポリオレフィン粒子。
【請求項3】
粒子径が1μm以下且つゲル分率が50重量%以上であることを特徴とする請求項1または2に記載のポリオレフィン粒子。
【請求項4】
後周期遷移金属錯体系のオレフィン重合用触媒として下記一般式(1)〜(5):
【化1】

【化2】

【化3】

【化4】

【化5】

(式中、Mはニッケル、パラジウム又は白金であり、Mはパラジウムまたはニッケルである。Eは酸素または硫黄である。Xはリン、砥素またはアンチモンである。 R1、R2、R3は各々独立して、水素または炭素数1〜20の炭化水素基である。Rf1はフッ素原子または炭素数1〜20のフッ素化炭化水素基である。Rは水素、炭素数1〜20の炭化水素基、ハロゲン原子、炭素数1〜20のハロゲン化炭化水素基、水酸基、炭素数1〜20の炭化水素基からなるエーテル基、炭素数1〜20の炭化水素基からなるエステル基、スルホン酸塩またげ炭素数1〜20の炭化水素基からなるスルホン酸エステル基である。Yはハロゲン原子である。mは1〜3である。R11,R44は各々独立して、炭素数1〜4の炭化水素基である。R22,R33は各々独立して水素原子、またはメチル基である。R55はハロゲン原子、水素原子、または炭素数1〜20の有機基である。XはMに配位可能なヘテロ原子を持つ有機基であり、R55につながっていてもよい、またはXは存在しなくてもよい。L-は任意のアニオンである。)のいずれかを用いて得られることを特徴とする請求項1〜3いずれかに記載のポリオレフィン粒子。
【請求項5】
一般式(1)における後周期遷移金属錯体系のオレフィン重合用触媒が下記一般式(6):
【化6】

(式中、Mはニッケル、パラジウムまたは白金である。Eは酸素または硫黄である。Xはリン、砒素またはアンチモンである。R1、R2、R3は各々独立して、水素または炭素数1〜20の炭化水素基である。Rf1、Rf2はとは各々独立してフッ素原子または炭素数1〜20のふっ素化炭化水素基である。)で表されることを特徴とする請求項4に記載のポリオレフィン粒子。
【請求項6】
後周期遷移金属錯体系のオレフィン重合用触媒のEが酸素、Xがリンであることを特徴とする請求項4または5に記載のポリオレフィン粒子。
【請求項7】
後周期遷移金属錯体系のオレフィン重合用触媒のY又はRf1がフッ素であることを特徴とする請求項4〜6いずれかに記載のポリオレフィン粒子。
【請求項8】
後周期遷移金属錯体系のオレフィン重合用触媒のMがニッケルであることを特徴とする請求項4〜7いずれかに記載のポリオレフィン粒子。
【請求項9】
ポリオレフィンラテックスが炭素数2〜20のα‐オレフィンモノマーを重合して得られるラテックスであることを特徴とする請求項1〜8いずれかに記載のポリオレフィン粒子。
【請求項10】
多官能性モノマーの官能基がビニル基であることを特徴とする請求項2〜9いずれかに記載のポリオレフィン粒子。
【請求項11】
多官能性モノマーが環状炭素骨格を有することを特徴とする請求項2〜10いずれかに記載のポリオレフィン粒子。
【請求項12】
環状炭素骨格が芳香族基であることを特徴とする請求項11に記載のポリオレフィン粒子。
【請求項13】
他の樹脂に配合して得られることを特徴とする請求項1〜12いずれかに記載のポリオレフィン粒子含有樹脂組成物。
【請求項14】
後周期遷移金属錯体系のオレフィン重合用触媒を用いたオレフィンモノマーの乳化重合により得られた重合体にラジカル開始剤を添加することにより得られることを特徴とする請求項1〜12いずれかに記載のポリオレフィン粒子の製造方法。

【公開番号】特開2009−108256(P2009−108256A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−283910(P2007−283910)
【出願日】平成19年10月31日(2007.10.31)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】