説明

ポリカーボネート樹脂製照明カバー

【構成】ポリカーボネート樹脂、有機金属塩化合物、繊維形成型の含フッ素ポリマー、特定のオルガノポリシロキサンおよび光拡散剤からなるポリカーボネート樹脂組成物を成形してなり、かつ当該樹脂組成物を成形してなる厚さ1.5mmの試験片を用いて燃焼試験を行ったときV−0等級を有し、厚さ1.5mmの試験片を用いて測定した全光線透過率が50%以上であり、かつ曇り度(ヘーズ)が80%以上であることを特徴とするポリカーボネート樹脂製照明カバー。
【効果】本発明のポリカーボネート樹脂製照明カバーは、ポリカーボネート樹脂の優れた光学特性を損なうことなく優れた難燃性が得られるため、照明灯、表示灯、蛍光管、採光用ドーム、トップライト、アーケード、道路側壁版等の照明器具の照明カバーとして好適に使用できる。とりわけ、LED光源を用いた照明器具の照明カバーの用途に好適である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、照明器具、とりわけLEDランプ等に使用されるポリカーボネート樹脂製照明カバーに関する。より詳細には、塩素、臭素化合物等のハロゲン系難燃剤や燐系難燃剤を含有すること無しに難燃性を向上させ、かつポリカーボネート樹脂が本来有する優れた耐衝撃性等の機械的性質や流動性などの性能を損なうことなく、高い光学特性を有するポリカーボネート樹脂製照明カバーに関する。
【背景技術】
【0002】
照明器具や表示灯、蛍光管などの照明カバーには、光量を落とさないように透明性の高い材料が求められる。しかし、光源が透けて見えると裸眼では眩しく感じられるため、光量を落とさず、かつ光源が透けて見えないような材料が求められている。
【0003】
従来から、照明カバーには、すりガラスや乳白状の塩化ビニル樹脂が使用されてきたが、前者は割れやすいという取扱上の問題および重量が比較的重いという問題があり、この改良のために後者の合成樹脂製照明カバーも使用されている。また、近年、高輝度白色LEDの登場によって、LED照明器具の開発が加速されている。LED照明器具は、LED光源の有する高輝度、長寿命、省エネルギーといった特徴から次世代の照明器具として大いに期待されている。
【0004】
しかしながら、LED照明器具は光源であるLEDチップが、光を発する際に裏側(基盤側)に熱を発するため、照明カバー内部に熱がこもり高熱を発するという問題があった。この解決のために、アルミダイキャスト等の放熱部材の設置やヒートパイプによる冷却といった手段が提案されている。しかしながら、これらの手段では構造が複雑になり、コストアップにつながるため、根本的な改良が望まれていた。
【0005】
このような性能を併せ持つ照明カバー用の合成樹脂として、透明性、耐衝撃性、耐熱性及び難燃性が優れるポリカーボネート樹脂が注目されている。
光源の視認性を防止するため、ポリカーボネート樹脂に炭酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化ケイ素、酸化チタン等の光拡散剤を添加混合する方法(特許文献1)が提案されているが、これらの化学物質は塩基的な化学特性を有するためポリカーボネート樹脂の不安定化をもたらす場合があり、特に成形加工等の熱履歴を受けた際に着色(黄変)し、また分子量が低下する等といった問題が生じることがあった。
【0006】
この解決のため、炭酸カルシウムとポリオルガノ水素シロキサンを併用して配合することにより成形時の分子量低下や黄変を抑制する方法(特許文献2)が提案されているが、炭酸カルシウムはその結晶構造がキュービック状であるため光を散乱させるには充分な効果が得られないといった問題があった。
【0007】
ポリカーボネート樹脂に使用可能な球状の光拡散剤を用いる方法としては、ポリカーボネート樹脂と屈折率の異なるアクリル系の微粒子を添加する方法(特許文献3および4)が提案されているが、これらの光拡散剤をポリカーボネート樹脂に混練するだけでは光透過性、光拡散性などの光学特性が改良されるのみであり、難燃性の面でさらなる改良が望まれていた。
【0008】
【特許文献1】特公昭57−24816号公報
【特許文献2】特開2000−169695号公報
【特許文献3】特開昭63−137911号公報
【特許文献4】特開平10−46018号公報
【0009】
ポリカーボネート樹脂に難燃性を付与させる手法として、難燃剤として塩素や臭素系化合物、あるいはリン系化合物を配合する方法が採用されている。しかし、塩素や臭素系難燃剤は、優れた難燃効果を示すものの、射出成形時に成形機スクリューや製品金型を腐食させる等の問題があった。また、リン系難燃剤は縮合リン酸エステル系難燃剤を中心に使用されているが、耐熱性あるいは衝撃強度の極端な低下が発生するという問題があった。これら著しい物性低下や環境面への配慮から、臭素や塩素等のハロゲン系化合物およびリン系化合物を含有しない難燃剤の使用が望まれている。
【0010】
さらに、照明カバーの用途では優れた光学特性も維持しつつ難燃性を付与する必要が有り、この両方の特性を同時に満足させた合成樹脂製の照明カバーの開発が望まれていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、前述の諸問題、すなわち高い光学特性を有し、かつ優れた難燃性を有するポリカーボネート樹脂製の照明カバー、とりわけLED光源に適した照明カバーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を行った結果、ハロゲン系難燃剤を使用することなく、特定のシリコーン系難燃剤と有機金属塩化合物および繊維形成型の含フッ素ポリマーとを併用し、さらに光拡散剤を配合することで、高い光学特性を有し、かつ優れた難燃性を有するポリカーボネート樹脂製照明カバーが得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
すなわち、本発明は、ポリカーボネート樹脂製照明カバーであって、
(1)当該照明カバーが以下に示す成分(A)〜(E)を含むことを特徴とするポリカーボネート樹脂組成物を成形してなり、かつ
(2)UL94試験方法(機器の部品用プラスチック材料の燃焼性試験)に基づき、当該樹脂組成物を成形してなる厚さ1.5mmの試験片を用いて燃焼試験を行ったときV−0等級を有し、かつ
(3)JIS K7361に基づき、当該樹脂組成物を成形してなる厚さ1.5mmの試験片を用いて測定した全光線透過率が50%以上であり、かつ曇り度(ヘーズ)が80%以上である、
ことを特徴とするポリカーボネート樹脂製照明カバーを提供するものである。
(A)ポリカーボネート樹脂 100重量部
(B)有機金属塩化合物 0.01〜0.5重量部
(C)繊維形成型の含フッ素ポリマー 0.05〜1重量部
(D)RSiO1/2(式中、R、R及びRは、それぞれ同一又は異なる、炭素数1〜6の置換されていてもよい1価の炭化水素基を表す。)で表されるシロキサン単位を含有するオルガノポリシロキサンであって、ケイ素原子に結合する置換基として、必須にフェニル基を含有し、またそれぞれ2重量%以下のアルコキシ基及び/又は水酸基を含有してもよい、重量平均分子量が2,000以上であるオルガノポリシロキサン 0.01〜0.5重量部
(E)光拡散剤 0.01〜5重量部
【0014】
また、本発明のポリカーボネート樹脂製照明カバーにおいては、使用されるポリカーボネート樹脂組成物に、さらに(F)蛍光増白剤を0.3重量部まで、および/または(G)紫外線吸収剤を1重量部まで(それぞれ、(A)ポリカーボネート樹脂100重量部を基準として)含んでも良い。(F)蛍光増白剤を含有させることによって、色相が改良され、更に優れた光学特性を付与することができる。また、(G)紫外線吸収剤を含有させることで耐候性が向上し、屋外用途の照明器具においても好適に使用できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明のポリカーボネート樹脂製照明カバーは、ポリカーボネート樹脂の優れた光学特性を損なうことなく優れた難燃性が得られるため、照明灯、表示灯、蛍光管、採光用ドーム、トップライト、アーケード、道路側壁版等の照明器具の照明カバーとして好適に使用できる。とりわけ、高輝度と高指向性に特徴があり、光を発する際に裏側(基盤側)に熱を発するLED光源を用いた照明器具の照明カバーの用途に好適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明にて使用される(A)ポリカーボネート樹脂とは、種々のジヒドロキシジアリール化合物とホスゲンとを反応させるホスゲン法、またはジヒドロキシジアリール化合物とジフェニルカーボネートなどの炭酸エステルとを反応させるエステル交換法によって得られる重合体であり、代表的なものとしては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)から製造されたポリカーボネート樹脂が挙げられる。
【0017】
上記ジヒドロキシジアリール化合物としては、ビスフェノールAの他に、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル−3−メチルフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−第三ブチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−ブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3、5−ジブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)プロパンのようなビス(ヒドロキシアリール)アルカン類、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンのようなビス(ヒドロキシアリール)シクロアルカン類、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルエーテルのようなジヒドロキシジアリールエーテル類、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィドのようなジヒドロキシジアリールスルフィド類、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルホキシドのようなジヒドロキシジアリールスルホキシド類、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルホンのようなジヒドロキシジアリールスルホン類等が挙げられる。これらは、単独または2種類以上混合して使用される。これらの他に、ピペラジン、ジピペリジルハイドロキノン、レゾルシン、4,4’−ジヒドロキシジフェニル等を混合して使用してもよい。
【0018】
さらに、上記のジヒドロキシアリール化合物と以下に示すような3価以上のフェノール化合物を混合使用してもよい。3価以上のフェノールとしてはフロログルシン、4,6−ジメチル−2,4,6−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−ヘプテン、2,4,6−ジメチル−2,4,6−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−ヘプタン、1,3,5−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−ベンゾール、1,1,1−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−エタンおよび2,2−ビス−[4,4−(4,4’−ジヒドロキシジフェニル)−シクロヘキシル]−プロパンなどが挙げられる。
【0019】
ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量は、通常10000〜100000、好ましくは15000〜35000、さらに好ましくは17000〜28000である。かかるポリカーボネート樹脂を製造するに際し、分子量調節剤、触媒等を必要に応じて使用することができる。
【0020】
本発明にて使用される(B)有機金属塩化合物としては、下記一般式1又は2で表される芳香族スルホンアミドの金属塩、下記一般式3で表される芳香族スルホン酸の金属塩およびパーフルオロアルカンスルホン酸の金属塩が挙げられる。
一般式1
【0021】
【化1】

(式中、Arはフェニル基又は置換フェニル基を、Mは金属陽イオンを表わす。)
【0022】
一般式1
【0023】
【化2】

(式中、Arはフェニル基又は置換フェニル基を、R'はスルホニル又はカルボニルを含む有機基を、Mは金属陽イオンを表わす。ただし、ArとRとが結合してもよい。)
一般式3
【0024】
【化3】

(式中、R’’、及びR’’’は炭素原子が1〜6個の脂肪族基又は1〜2個のフェニル基若しくは置換フェニル基を、AはSOM(Mは、金属陽イオンを表す。)基を表わす。)
【0025】
芳香族スルホンアミドの金属塩の好ましい例としては、サッカリンの金属塩、N−(p−トリルスルホニル)−p−トルエンスルホイミドの金属塩、N−(N’−ベンジルアミノカルボニル)スルファニルイミドの金属塩及びN−(フェニルカルボキシル)−スルファニルイミドの金属塩が挙げられる。また、芳香族スルホン酸の金属塩としては、ジフェニルスルホン−3−スルホン酸の金属塩、ジフェニルスルホン−3,3’−ジスルホン酸の金属塩及びジフェニルスルフォン−3,4’−ジスルホン酸の金属塩が挙げられる。これらは、一種又はそれ以上を併用して使用してもよい。
好適な金属としては、ナトリウム、カリウム等のI族の金属(アルカリ金属)、又はII族の金属、銅、アルミニウム等が挙げられ、特にアルカリ金属が好ましい。
【0026】
これらのうちでも特に、N−(p−トリルスルホニル)−p−トルエンスルホイミドのカリウム塩、N−(N’−ベンジルアミノカルボニル)スルファニルイミドのカリウム塩又はジフェニルスルホン−3−スルホン酸のカリウム塩が好適に用いられ、さらに好ましくは、N−(p−トリルスルホニル)−p−トルエンスルホイミドのカリウム塩、N−(N’−ベンジルアミノカルボニル)スルファニルイミドのカリウム塩である。
【0027】
芳香族スルホン酸の金属塩の好ましい例としては、p−トルエンスルホン酸、p−スチレンスルホン酸、1−ナフタレンスルホン酸、イソフタル酸ジメチル−5−スルホン酸、2,6−ナフタレンジスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、ベンゼンジスルホン酸、2,4,6−トリクロロ−5−スルホイソフタル酸ジメチル、2,5−ジクロロベンゼンスルホン酸、2,4,5−トリクロロベンゼンスルホン酸、p−ヨードベンゼンスルホン酸、7−アミノ−1,3−ナフタレンジスルホン酸などのアルカリ金属塩であることが好ましい。これらは1種もしくはそれ以上を併用して使用してもよい。
【0028】
このうち、2,4,6−トリクロロ−5−スルホイソフタル酸ジメチル、2,5−ジクロロベンゼンスルホン酸、2,4,5−トリクロロベンゼンスルホン酸から選択される1種もしくは2種以上のナトリウム塩および/またはカリウム塩;p−トルエンスルホン酸、p−スチレンスルホン酸、1−ナフタレンスルホン酸、イソフタル酸ジメチル−5−スルホン酸、2,6−ナフタレンジスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、ベンゼンジスルホン酸の中から選択される一種もしくは2種以上のナトリウム塩が好適に使用できる。
【0029】
パーフルオロアルカンスルホン酸の金属塩の好ましい例としては、パーフルオロメタンスルホン酸の金属塩、パーフルオロエタンスルホン酸の金属塩、パーフルオロプロパンスルホン酸の金属塩、パーフルオロブタンスルホン酸の金属塩、パーフルオロメチルブタンスルホン酸の金属塩、パーフルオロヘキサンスルホン酸の金属塩、パーフルオロヘプタンスルホン酸の金属塩、パーフルオロオクタンスルホン酸の金属塩が挙げられる。これらは、一種もしくはそれ以上を併用して使用してもよい。これらのうち、パーフルオロブタンスルホン酸のカリウム塩が好適に使用できる。
【0030】
(B)有機金属塩化合物の配合量は、ポリカーボネート樹脂(A)100重量部に対し0.01〜0.5重量部である。配合量が0.01重量部未満の場合には難燃効果を得るのが困難であり、また0.5重量部を超えると射出成形時の熱安定性に劣る場合があるため、その結果、成形性及び衝撃強度に悪影響を及ぼすので好ましくない。この配合量は、より好ましくは0.01〜0.1重量部、更に好ましくは0.01〜0.05重量部である。
【0031】
本発明にて使用される(C)繊維形成型の含フッ素ポリマ−としては、(A)ポリカーボネート樹脂中で繊維構造(フィブリル状構造)を形成するものがよく、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン系共重合体(例えば、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体、等)、米国特許第4379910号に示される様な部分フッ素化ポリマー、フッ素化ジフェノールから製造されるポリカーボネート等が挙げられる。
【0032】
(C)繊維形成型の含フッ素ポリマ−の配合量は、(A)ポリカーボネート樹脂100重量部に対し、0.05〜1重量部である。配合量が0.05重量部未満では燃焼時のドリッピング防止効果に劣り、かつ1重量部を超えると造粒が困難となることから安定生産に支障をきたすので好ましくない。この配合量は、より好ましくは0.1〜0.5重量部、更に好ましくは0.1〜0.3重量部である。
【0033】
本発明にて使用される(D)オルガノポリシロキサンは、R123SiO1/2で表される単官能性シロキサン単位を含有し、分子中にケイ素原子に結合する必須の置換基としてフェニル基を含有する。ここで、R、R及びRは、それぞれ同一又は異なる、炭素数1〜6の置換されていてもよい1価の炭化水素基より選択され、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基などのアルキル基、ビニル基、アリル基などのアルケニル基、フェニル基などが挙げられ、特にメチル基、フェニル基が好ましい。
【0034】
(D)オルガノポリシロキサンのフェニル基含有量は、樹脂組成物の成型性や成型品の透明性、機械的強度等にも大きく影響する。オルガノポリシロキサンのフェニル基含有量が高いほど、(A)ポリカーボネート樹脂への分散性及び相溶性が高くなり、成型性や透明性、機械的強度が良好となる。従って、オルガノポリシロキサン分子のケイ素原子に結合する全有機置換基中のフェニル基の割合は、好ましくは30〜90重量%、より好ましくは50〜90重量%である。なお、フェニル基含有量とは以下のように定義される。即ち、(D)オルガノポリシロキサンが次にしめす平均組成式
(C65mnSi(OR’)p(OH)q(4-m-n-p-q)/2
(式中、Rはフェニル基とアルコキシ基以外の有機置換基を表し、炭素数1〜6の非置換又は置換1価炭化水素基であり、R’は炭素数1〜6の1価炭化水素基を示す。)で表されるものであるとき、下記式で示される(なお、MWは各置換基の分子量を示す)。
フェニル基含有量(重量%)
={MW(C65)×m×100}/{MW(C)×m+MW(R)×n+MW(R’)×p}
【0035】
なお、(D)オルガノポリシロキサンが上記組成式で表される場合に、Rはアルキル基、特にメチル基が好ましく、またR’もアルキル基が好ましいが、特に炭素数3〜6の2級又は3級アルキル基が好ましい。m,n,p,qは、0.5≦m≦2.0、0.1≦n≦2.3、0≦p≦0.13、0≦q≦0.17、0.92≦m+n+p+q≦2.85を満たす正数から選択されることが好ましい。
【0036】
(D)オルガノポリシロキサンは、樹脂組成物のリサイクル使用を可能とするものであるが、成型性、成型品の外観や透明性を低下させないためには、分子中の反応性基をできる限り少なくすることが重要である。このため分子中のケイ素原子に結合する置換基としてのアルコキシ基や水酸基の含有量をそれぞれ一定量以下とすることが必要である。
【0037】
このアルコキシ基の含有量は2重量%以下である。加水分解反応に寄与するアルコキシ基量を減少させることによって、耐湿性が大幅に向上し、透明性に優れた照明カバーを得ることができる。アルコキシ基の加水分解反応性及び難燃性の点からは、更に残存アルコキシ基をイソプロポキシ基、2−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、シクロヘキシルオキシ基等から選択される炭素数3〜6の2級及び/又は3級のアルコキシ基とすることが好ましい。一方、この水酸基の含有量は2重量%以下である。さらに好ましくは1重量%以下である。これらアルコキシ基や水酸基は少ない程よいが、製造上0にすることは難しい。
【0038】
また、(D)オルガノポリシロキサンの重量平均分子量は2,000以上である。重量平均分子量が2,000未満の場合には、難燃性が低下するので好ましくない。好ましくは2,000〜50,000、より好ましくは2,000〜20,000である。
【0039】
また、(D)オルガノポリシロキサンは、分子中にR123SiO1/2で表される単官能性シロキサン単位を10〜75モル%、R45SiO2/2で表される二官能性シロキサン単位を0〜80モル%、R6SiO3/2で表される三官能性シロキサン単位を0〜80モル%、SiO4/2で表される四官能性シロキサン単位を0〜15モル%含有するものを使用することができる。好ましくは、R123SiO1/2で表される単官能性シロキサン単位を10〜50モル%、R45SiO2/2で表される二官能性シロキサン単位を0〜80モル%、R6SiO3/2で表される三官能性シロキサン単位を10〜80モル%、SiO4/2で表される四官能性シロキサン単位を0〜10モル%含有するものを使用する。ここで、R1,R2,R3,R4,R5,R6は、それぞれ同一又は異なる、炭素数1〜6の置換されていてもよい1価の炭化水素基から選択され、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基などのアルキル基、ビニル基、アリル基などのアルケニル基、フェニル基などが挙げられるが、特にメチル基、フェニル基が好ましい。
【0040】
一般的にオルガノポリシロキサンの構造は、単官能性シロキサン単位(M単位)、二官能性シロキサン単位(D単位)、三官能性シロキサン単位(T単位)及び四官能性シロキサン単位(Q単位)の任意の組み合わせによって構成される。本発明において、これらの単位の好適な組み合わせは、M/D系、M/T系、M/D/T系、M/D/Q系、M/T/Q系、M/D/T/Q系で、より好ましくはM/D/T系であり、これにより良好な難燃性及び分散性が得られる。一方、M単独系では分子量が低すぎて難燃効果が発揮されないし、M/Q系はオルガノポリシロキサンの無機的性質が強くなりすぎて、芳香環を含む合成樹脂への分散性が劣ることがある。同様の理由により、M/D/Q系やM/D/T/Q系においては、Q単位の含有量は好ましくは15モル%以下、より好ましくは10モル%以下である。
【0041】
なお、(D)オルガノポリシロキサンは、分子中にフェニル基と残存アルコキシ基以外の有機置換基としてメチル基のみを含有するもの、即ち前記平均組成式においてR=メチル基であることが、製造の容易さ及びコスト面からは好ましい。また、(D)オルガノポリシロキサンは、トルエン等の有機溶剤に可溶で、50℃以上の軟化点を有する常温で固体樹脂であることが好ましい。
【0042】
(D)オルガノポリシロキサンの配合量は、ポリカーボネート樹脂(A)100重量部に対して、0.01〜0.5重量部である。配合量がこの範囲から外れると難燃性が低下するので好ましくない。好ましくは0.01〜0.3重量部、更に好ましくは0.03〜0.1重量部の範囲である。
【0043】
本発明にて使用される(E)光拡散剤としては、(A)ポリカーボネート樹脂の内部で光を散乱させる光拡散剤であれば特に制限されるものではないが、特に球状の形態を示すものが好適に用いられる。球状の形態を示す光拡散剤としてはシリコーン系やアクリル系の光拡散剤等が挙げられる。とりわけ、光の透過性が要求される照明カバーの用途においてはアクリル系光拡散剤が好適に使用できる。
シリコーン系光拡散剤としてはモーメンティブジャパン社製トスパール120S、また、アクリル系光拡散剤としてはガンツ化成社製ガンツパールGM0449Sおよび総研化学社製ケミスノーKMR−3TAが商業的に入手可能である。
【0044】
(E)光拡散剤の配合量は、(A)ポリカーボネート樹脂100重量部あたり、0.01〜5重量部である。配合量が0.01重量部未満では(A)ポリカーボネート樹脂の内部での光の散乱が充分に得られず光源の視認性防止の効果に劣り、また5重量部を超えると透過率が著しく低下するので好ましくない。より好ましくは、0.01〜3重量部、さらに好ましくは0.01〜2重量部の範囲である。
【0045】
本発明にて使用される(F)蛍光増白剤としては、紫外域での光を吸収して400nm近傍に励起ピークを発するものであれば制限されるものではないが、特に可視光域での光の吸収が少ないものが好適に用いられる。蛍光増白剤としてはクラリアントジャパン社製ホスタルックスKSN及び日本化薬社製カヤライトOSが商業的に入手可能である。
【0046】
(F)蛍光増白剤の配合量は、(A)ポリカーボネート樹脂100重量部あたり、0.3重量部までである。配合量が0.3重量部を超えると熱分解を起こしやすくなるので好ましくない。(F)蛍光増白剤を配合することで黄色味を緩和して良好な色相となる。
【0047】
本発明にて使用される(G)紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、トリアジン系およびマロネート系から選択される1種もしくは2種以上の紫外線吸収剤が挙げられる。チバ・スペシャリティ・ケミカル社製チヌビン329及び旭電化工業社製LA31、チバ・スペシャリティ・ケミカル社製チヌビン1577が商業的に入手可能である。
【0048】
(G)紫外線吸収剤の配合量は、(A)ポリカーボネート樹脂100重量部あたり、1重量部までである。配合量が1重量部を超えると熱分解を起こしやすくなるので好ましくない。(G)紫外線吸収剤を配合することで耐候性が良好となる。
【0049】
上記の各種配合成分を含むポリカーボネート樹脂組成物を得るための実施の形態および順序には何ら制限はない。例えば、(A)ポリカーボネート樹脂、(B)有機金属塩化合物、(C)繊維形成型の含フッ素ポリマー、(D)オルガノポリシロキサンおよび(E)光拡散剤ならびに所望によっては(F)蛍光増白剤および/または(G)紫外線吸収剤を任意の配合量で計量し、タンブラー、リボブレンダー、高速ミキサー等により一括混合した後、混合物を通常の単軸押出機または2軸押出機を用いて溶融混練し、ペレット化させる方法、あるいは、個々の成分を一部または全てを別々に計量し、複数の供給装置から押出機内へ投入し、溶融混合する方法、さらには、(A)に他の成分を高濃度に配合し、一旦溶融混合してペレット化し、マスターバッチとした後、当該マスターバッチと残部の成分を所望の比率により混合することもできる。そして、これらの成分を溶融混合する際の、押出機へ投入する位置、押出温度、スクリュウ回転数、供給量など、状況に応じて任意の条件が選択され、ペレット化することができる。
【0050】
本発明のポリカーボネート樹脂製照明カバーに使用されるポリカーボネート樹脂組成物は、更に、本発明の効果を損なわない範囲で、熱安定剤、酸化防止剤、着色剤、充填材、離型剤、軟化材、帯電防止剤等の添加剤、衝撃性改良材、他のポリマーを配合してもよい。
【0051】
本発明の難燃性照明カバーを得る方法としては、一般に熱可塑性樹脂を成形加工する方法ではあれば特に制限されるものではなく、射出成形、シート押出成形、異型押出成形などが挙げられる。
【実施例】
【0052】
以下に、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。尚、特に断りのない限り、実施例中の「%」、「部」はそれぞれ重量基準に基づく。
【0053】
使用した原材料は以下のとおりである。
(A)ポリカーボネート樹脂:
ビスフェノールAとホスゲンとから合成されたポリカーボネート樹脂
(住友ダウ社製カリバー200−13、粘度平均分子量:21500、
以下PCと略記)
(B)有機金属塩化合物
パラトルエンスルホン酸ナトリウム塩(以下、「金属塩」とり略記)
(C)繊維形成型の含フッ素ポリマー:
ポリテトラフルオロエチレン(ダイキン社製ポリフロンFA500C)
(以下、「PTFE」と略記する。)
(D)オルガノポリシロキサン:
下記合成例1〜6において得られたオルガノポリシロキサン−1〜6を用いた。
【0054】
合成例1
撹拌装置、冷却装置、温度計を取り付けた1Lフラスコに水288g(16モル)とトルエン93gを仕込み、オイルバスで内温80℃にまで加熱した。滴下ロートにフェニルトリクロロシラン148g(0.7モル)、ジフェニルジクロロシラン51g(0.2モル)及びジメチルジクロロシラン13g(0.1モル)を仕込み、フラスコ内へ撹拌しながら1時間で滴下し、滴下終了後、更に内温80℃で撹拌を1時間続けて熟成した。続けてトリメチルクロロシラン27g(0.25モル)をフラスコ内へ撹拌しながら10分間で滴下し、滴下終了後、更に内温80℃で撹拌を30分間続けて熟成した。トルエン100gを添加した後、室温まで冷却しながら静置して分離してきた水層を除去し、引き続き10%硫酸ナトリウム水溶液を混合して10分間撹拌後、30分間静置し、分離してきた水層を除去する水洗浄操作をトルエン層が中性になるまで繰り返して反応を停止した。エステルアダプターを取り付け、オルガノポリシロキサンを含むトルエン層を加熱環流してトルエン層から水を除去し、内温が110℃に達してから更に1時間続けた後、室温まで冷却した。得られたオルガノポリシロキサン溶液を濾過して不溶物を除去し、引き続き減圧蒸留によりトルエンと低分子シロキサンを除去して、固体のフェニル基含有オルガノポリシロキサン−1を135g得た。
得られたオルガノポリシロキサン−1は、M単位15モル%とD単位25モル%とT単位60モル%とを含み、全有機置換基中のフェニル基含有量は87重量%であり、アルコキシ基含有量は0重量%、水酸基含有量は0.4重量%であり、外観は無色透明固体で、重量平均分子量は9200であった。また、この樹脂の軟化点は96℃であった。
【0055】
合成例2
撹拌装置、冷却装置、温度計を取り付けた2Lフラスコに水720g(40モル)とトルエン400gを仕込み、オイルバスで内温80℃にまで加熱した。滴下ロートにフェニルトリクロロシラン169g(0.8モル)、ジフェニルジクロロシラン20g(0.08モル)及びジメチルジクロロシラン15g(0.12モル)を仕込み、フラスコ内へ撹拌しながら1時間で滴下し、滴下終了後、更に内温80℃で撹拌を1時間続けて熟成した。続けてトリメチルクロロシラン54g(0.5モル)をフラスコ内へ撹拌しながら15分間で滴下し、滴下終了後、更に内温80℃で撹拌を40分間続けて熟成した。室温まで冷却しながら静置して分離してきた水層を除去し、引き続き10%硫酸ナトリウム水溶液を混合して10分間撹拌後、30分間静置し、分離してきた水層を除去する水洗浄操作をトルエン層が中性になるまで繰り返して反応を停止した。エステルアダプターを取り付け、オルガノポリシロキサンを含むトルエン層を加熱環流してトルエン層から水を除去し、内温が110℃に達してから更に1時間続けた後、室温まで冷却した。得られたオルガノポリシロキサン溶液を濾過して不溶物を除去し、引き続き減圧蒸留によりトルエンと低分子シロキサンを除去して、固体のフェニル基含有オルガノポリシロキサン−2を137g得た。
得られたオルガノポリシロキサン−2は、M単位27モル%とD単位15モル%とT単位58モル%とを含み、全有機置換基中のフェニル基含有量は78重量%であり、アルコキシ基含有量は0重量%、水酸基含有量は0.9重量%であり、外観は無色透明固体で、重量平均分子量は3100であった。また、この樹脂の軟化点は71℃であった。
【0056】
合成例3
撹拌装置、冷却装置、温度計を取り付けた1Lフラスコにイソプロパノール20g、トルエン200g、フェニルトリイソプロポキシシラン226g(0.8モル)及びジメチルジイソプロポキシシラン35g(0.2モル)を仕込み、撹拌しながら0.2Nの塩酸水396g(22モル)を室温で1時間を要して滴下し、滴下終了後、内温を90℃まで昇温し、副生してきたイソプロパノールを溜去した。更に90℃で撹拌を1時間続けて熟成した。室温まで冷却しながら静置して分離してきた水層を除去し、引き続き10%硫酸ナトリウム水溶液を混合して10分間撹拌後、30分間静置し、分離してきた水層を除去する水洗浄操作をトルエン層が中性になるまで繰り返して反応を停止した。エステルアダプターを取り付け、オルガノポリシロキサンを含むトルエン層を加熱環流してトルエン層から水を除去し、内温が110℃に達してから更に1時間続けた後、室温まで冷却した。続けてヘキサメチルジシラザン45g(0.28モル)をフラスコ内へ撹拌しながら15分間で滴下し、滴下終了後、内温を100℃まで昇温し、撹拌を1時間続けて熟成した後、室温まで冷却した。得られたオルガノポリシロキサン溶液を濾過して不溶物を除去し、引き続き減圧蒸留によりトルエンと低分子シロキサンを除去して、固体のフェニル基含有オルガノポリシロキサン−3を132g得た。
得られたオルガノポリシロキサン−3は、M単位24モル%とD単位15モル%とT単位61モル%とを含み、全有機置換基中のフェニル基含有量は73重量%であり、アルコキシ基(イソプロポキシ基)含有量は1.3重量%、水酸基含有量は0.5重量%であり、外観は無色透明固体で、重量平均分子量は5800であった。また、この樹脂の軟化点は89℃であった。
【0057】
合成例4〜6
合成例1と同様の調製方法において、使用するオルガノクロロシランの種類、オルガノクロロシランと水及びトルエンの使用量(モル比)を変化させて、各種のオルガノポリシロキサン−4〜6を得た。
【0058】
上記合成例で得られた各オルガノポリシロキサンにおける全有機置換基中のフェニル基含有量(重量%)はNMR測定データより前出の式によって計算し、全分子中のアルコキシ基含有量(重量%)もNMR測定データによって、また全分子中のSi−OH基としての水酸基含有量(重量%)はグリニヤ法に従い、所定量のオルガノポリシロキサンをメチルグリニヤ試薬と反応させて、生成するメタンガスを定量することによって測定し、重量平均分子量はGPC測定データよりポリスチレン標準試料で作成した検量線を用いて換算した。合成例1〜6によって得られたオルガノポリシロキサン−1〜6の物性値を表1に示す。
【0059】
【表1】

【0060】
(E)光拡散剤:
ガンツ化成社製 ガンツパールGM0449S
(アクリル系拡散剤 以下 LDと略記)
(F)蛍光増白剤:
日本化薬製 カヤライトOS(以下 OSと略記)
(G)紫外線吸収剤:
チバスペシャリティケミカル社製 チヌビン329(以下 UVAと略記)
【0061】
(ポリカーボネート樹脂組成物の作成)
前述の各種原料を表3〜6に示す配合比率にて、それぞれタンブラーに投入し、10分間乾式混合した後、2軸押出機(日本製鋼所社製TEX30α(L/D=42、Φ=30mm))を用いて、溶融温度260℃にて混錬し、ペレットを得た。
【0062】
(光学用の試験片の作成)
得られたペレットを用いて290℃の条件下、射出成形機(日本製鋼所製J100EII−P)にて幅50mm×長さ90mm×厚み1.5mmのプレート状試験片を作成した。
【0063】
(試験片の評価方法)
1.全光線透過率:
得られた試験片を用いて、JIS K7361に準拠して全光線透過率を測定した。厚み1.5mmで50%以上を合格とした。
2.ヘーズ:
得られた試験片を用いて、JIS K7136に準拠してヘーズを測定した。厚み1.5mmで80%以上を合格とした。
3.難燃性:
(UL94燃焼試験用の試験片の作成)
得られたペレットを用いて290℃の条件下、射出成形機(日本製鋼所製J100EII−P)にて幅13mm×長さ127mm×厚み1.5mmの短冊状の試験片を作成した。
該試験片を温度23℃、湿度50%の恒温室の中で48時間放置し、アンダーライターズ・ラボラトリーズが定めているUL94試験(機器の部品用プラスチック材料の燃焼性試験)に準拠した難燃性の評価を行った。基準を表2に示す。
【0064】
【表2】

【0065】
上に示す残炎時間とは、着火源を遠ざけた後の、試験片が有炎燃焼を続ける時間の長さであり、ドリップによる綿の着火とは、試験片の下端から約300mm下にある標識用の綿が、試験片からの滴下(ドリップ)物によって着火されるかどうかによって決定される。
【0066】
【表3】

【0067】
【表4】

【0068】
【表5】

【0069】
【表6】

【0070】
実施例1〜6は、オルガノポリシロキサン−1〜6を使用して、金属塩、PTFE、オルガノシロキサン及び光拡散剤を明細書に記載の添加量とした場合であるが、いずれも透過率、ヘーズ及び難燃性は良好な結果を示した。
実施例7〜14は、金属塩、PTFE、オルガノシロキサン及び光拡散剤を明細書に記載の添加量の範囲で変えた場合であるが、いずれも透過率、ヘーズ及び難燃性は良好な結果を示した。
実施例15〜17は、金属塩、PTFE、オルガノシロキサン及び光拡散剤を明細書に記載の添加量として、OS及びUVAを明細書に記載の添加量に従って加えた場合であるが、いずれも透過率、ヘーズ及び難燃性は良好な結果を示した。
【0071】
金属塩(比較例1および2)、PTFE(比較例3および4)およびオルガノポリシロキサン(比較例5および6)を明細書に記載の添加量の範囲を超えて使用した場合には、それぞれ全光線透過率およびヘーズは良好な結果を示したが、いずれも難燃性に劣っていた。
比較例7は、光拡散剤の使用量を明細書に記載の量よりも少ない場合で、全光線透過率および難燃性は良好な結果を示したが、ヘーズに劣っていた。
比較例8は、光拡散剤の使用量を明細書に記載の量よりも多い場合で、ヘーズおよび難燃性は良好な結果を示したが、全光線透過率に劣っていた。
比較例9〜11は、金属塩、PTFE、オルガノシロキサン及び光拡散剤を明細書に記載の添加量として、OS及び/またはUVAを明細書に記載の添加量を超えて加えた場合であるが、それぞれ全光線透過率およびヘーズは良好な結果を示したが、いずれも難燃性に劣っていた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリカーボネート樹脂製照明カバーであって、
(1)当該照明カバーが以下に示す成分(A)〜(E)を含むことを特徴とするポリカーボネート樹脂組成物を成形してなり、かつ
(2)UL94試験方法(機器の部品用プラスチック材料の燃焼性試験)に基づき、当該樹脂組成物を成形してなる厚さ1.5mmの試験片を用いて燃焼試験を行ったときV−0等級を有し、かつ
(3)JIS K7361に基づき、当該樹脂組成物を成形してなる厚さ1.5mmの試験片を用いて測定した全光線透過率が50%以上であり、かつ曇り度(ヘーズ)が80%以上である、
ことを特徴とするポリカーボネート樹脂製照明カバー。
(A)ポリカーボネート樹脂 100重量部
(B)有機金属塩化合物 0.01〜0.5重量部
(C)繊維形成型の含フッ素ポリマー 0.05〜1重量部
(D)RSiO1/2(式中、R、R及びRは、それぞれ同一又は異なる、炭素数1〜6の置換されていてもよい1価の炭化水素基を表す。)で表されるシロキサン単位を含有するオルガノポリシロキサンであって、ケイ素原子に結合する置換基として、必須にフェニル基を含有し、またそれぞれ2重量%以下のアルコキシ基及び/又は水酸基を含有してもよい、重量平均分子量が2,000以上であるオルガノポリシロキサン 0.01〜0.5重量部
(E)光拡散剤 0.01〜5重量部
【請求項2】
前記ポリカーボネート樹脂組成物が、(A)ポリカーボネート樹脂100重量部あたり、さらに(F)蛍光増白剤を0.3重量部まで含むことを特徴とする請求項1記載のポリカーボネート樹脂製照明カバー。
【請求項3】
前記ポリカーボネート樹脂組成物が、(A)ポリカーボネート樹脂100重量部あたり、さらに(G)紫外線吸収剤を1重量部まで含むことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のポリカーボネート樹脂製照明カバー。
【請求項4】
前記(B)有機金属塩化合物が、芳香族スルホンアミドの金属塩、芳香族スルホン酸の金属塩またはパーフルオロアルカンスルホン酸の金属塩である請求項1に記載のポリカーボネート樹脂製照明カバー。
【請求項5】
前記(D)繊維形成型の含フッ素ポリマーが、ポリテトラフルオロエチレンである請求項1に記載のポリカーボネート樹脂製照明カバー。
【請求項6】
前記(E)光拡散剤が、アクリル系および/またはシリコーン系光拡散剤であることを特徴とする請求項1に記載のポリカーボネート樹脂製照明カバー。
【請求項7】
前記ポリカーボネート樹脂製照明カバーが、LED光源を用いる照明器具用の照明カバーであることを特徴とする1に記載のポリカーボネート樹脂製照明カバー。

【公開番号】特開2012−82361(P2012−82361A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−231202(P2010−231202)
【出願日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【出願人】(396001175)住化スタイロンポリカーボネート株式会社 (215)
【Fターム(参考)】