説明

ポリシアル酸脱N−アセチラーゼの阻害剤及びその使用方法

本発明は、ポリシアル酸(PSA)脱N−アセチラーゼの阻害剤、それらの製造および使用の方法に関する。該方法は、がん細胞の成長を阻害することなどの、細胞の成長を変化させるためのPSA脱N−アセチラーゼの阻害剤の使用を含む。組成物は、アミノ糖ヘキソサミンおよびノイラミン酸のN−置換誘導体などのPSA脱N−アセチラーゼの阻害剤、ならびに結合体および凝集体を含む。本発明のPSA脱N−アセチラーゼ阻害剤を含む医薬組成物も提供する。本発明の1つまたは複数の阻害剤組成物を含むキット、ならびに組成物を調製する方法も提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、参照により全体として本明細書に組み込まれている、2007年7月3日に出願した米国特許仮出願第60/958,383号の優先権を主張するものである。
連邦政府による資金提供を受けた研究の記載
【0002】
本発明は、国立アレルギー・感染症研究所および国立衛生研究所により授与された補助金(第AI64314号)のもとに政府の支援によりなされた。政府は本発明に一定の権利を有する。
【0003】
技術分野
本開示は、ポリシアル酸脱N−アセチラーゼ阻害剤、それを含む組成物、それらの製造方法および使用に関する。
【背景技術】
【0004】
シアル酸は、ノイラミン酸のNまたはO置換誘導体である。N置換体は、一般的にアセチルまたはグリコリル基を有する。これに対して、O置換ヒドロキシル基は、かなり多様である可能性があり、例えば、アセチル、ラクチル、メチル、硫酸およびリン酸基などである。ポリシアル酸も、N−アセチルノイラミン酸残基がC2ケタールOHを介してグリコシド結合により他の分子に結合しているかなり一般的なものであり、例えば、ポリα(2→8)N−アセチルノイラミン酸などである。
シアル酸は、細菌からヒトまでの生物に認められる、生物学的に重要な炭水化物である。それらは、糖タンパク質、グリカンおよびスフィンゴ糖脂質ならびに他の分子の末端を修飾する共通の特徴である。それらは、無数の正常細胞活動を媒介する。これは、細胞膜における複合糖質を安定化する、細胞間相互作用を調節する、化学メッセンジャーとして作用する、貫膜受容体機能を調節する、膜輸送に影響を及ぼす、循環糖タンパク質および細胞の半減期を調節する、および糸球体内皮の透過選択性に寄与するなどである。総説についてはAngataおよびVarki、Chem.Rev.(2002年)、102巻、439頁を参照のこと。
正常細胞活動にそれらが顕著な役割を果たしていることから、シアル酸およびその誘導体は、がんなどの異常な細胞の過程のマーカーとして用いられてきた(O’Kennedyら、Cancer Lett.、1991年、58巻、91頁;Vedralovaら、Cancer Lett.、1994年、78巻、171頁およびHorganら、Clin Chim.Acta.、1982年、118巻、327頁およびNarayanan、S.Ann.Clin.Lab.Sci.、1994年、24巻、376頁)。例えば、転移し得るがん細胞は、それらが血流に入ることを促進する可能性がある大量のシアル酸修飾糖タンパク質をしばしば有する。また、腫瘍細胞のシアル酸が正常細胞と異なる仕方で修飾されることは長い間認識されている(Hakamori、Cancer Res.、1996年、56巻、5309頁、Dall’Olio、Clin.Mol.Pathol.、1996年、49巻、M126頁、KimおよびVarki、Glycoconj.J、1997年、14巻、569頁)。
【0005】
正常細胞では異常であると考えられているが、がん細胞上に存在する1つのシアル酸誘導体は、脱N−アセチルシアル酸である(Hanaiら、J.Biol.Chem.、1988年、263巻、6296頁、Manziら、J.Biol.Chem.、1990年、265巻、1309頁、Sjobergら、J.Biol.Chem.、1995年、270巻、2921頁、Chamasら、1999年、Cancer Res.、59巻、1337頁およびPopaら、Glycobiology、2007年、17巻、367頁)。
アミノヒドロラーゼ・スーパーファミリーは、アミノ糖のN−アシル基を特異的に除去する(「デアセチラート」)デアセチラーゼ酵素を含む。これらの酵素は、脱N−アセチラーゼと呼ばれる。例えば、ガングリオシド脱N−アセチルGD3は、ヒト黒色腫腫瘍に存在しており、脂肪酸含量は、短鎖脂肪酸を含むガングリオシドの分子種上で主として活性である脱N−アセチラーゼの存在を示唆している(Popaら(2007年)、Glycobiology、17巻(4号)、367頁)。酵素N−アセチル−D−グルコサミニルホスファチジルイノシトール脱N−アセチラーゼ(Glc−NAc−PI脱N−アセチラーゼ)は、ヒトを含む様々な生物に認められる(Watanabeら、Biochem.J.(1999年)、339巻、185頁およびUrabiakら(2005年)、J.Biol.Chem.、280巻(24号)、22831頁)。この酵素は、Glc−NAc−PIからのアセチル基の触媒的除去およびアミノ糖の脱アセチル化形を生成するアセテートの放出に関与している(Gutherら(2006年)、Mol Biol Cell、17巻(12巻)、5265頁)。
【0006】
文献
目的とするアミノ糖、誘導体および関連文献は、次の米国特許、第4,021,542号、第4,062,950号、第4,175,123号、第4,216,208号、第4,254,256号、第4,314,999号、第4,656,159号、第4,713,374号、第4,797,477号、第4,803,303号、第4,840,941号、第4,914,195号、第4,968,786号、第4,983,725号、第5,231,177号、第5,243,035号、第5,264,424号、第5,272,138号、第5,332,756号、第5,667,285号、第5,674,988号、第5,759,823号、第5,962,434号、第6,075,134号、第6,110,897号、第6,274,568号、第6,407,072号、第6,458,937号、第6,548,476号、第6,697,251号、第6,680,054号、第6,936,701号および第7,070,801号に、また、次の参考文献、AngataおよびVarki、Chem.Rev.、2002年、102巻、439頁、Hakamori、Cancer Res.、1996年、56巻、5309頁、Dall’Olio、Clin.Mol.Pathol.、1996年、49巻、M126頁、KimおよびVarki、Glycoconj.J.、1997年、14巻、569頁、Hanaiら、J.Biol.Chem.、1988年、263巻、6296頁、Manziら、J.Biol.Chem.、1990年、265巻、1309頁、Sjobergら、J.Biol.Chem.、1995年、270巻、2921頁、Chamasら、Cancer Res.、1999年、59巻、1337頁、Popaら、Glycobiology、2007年、17巻、367頁、Kayserら、J.Biol.Chem.、1992年、267巻、16934頁、Kepplerら、Glycobiology、2001年、11巻、11R頁、Luchanskyら、Meth.Enzymol.、2003年、362巻、249頁、Oetkeら、Eur.J.Biochem.、2001年、268巻、4553頁、Collinsら、Glycobiology、2000年、10巻、11頁およびBardorら、J.Biol.Chem.、2005年、280巻、4228頁に報告されている。米国特許出願公開第2007/0010482号、2006年12月22日に出願された米国特許出願第11/645,255号、国際公開第2006/002402号および2006年12月22日に出願されたPCT出願番号PCT/US2006/04885号も参照のこと。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、ポリシアル酸(PSA)脱N−アセチラーゼを阻害するための組成物、ならびにそれらの製造および使用の方法に関する。本発明の方法は、阻害剤に曝露したがん細胞の生存能の低下を促進するために有効な量の阻害剤を投与することによりがん細胞の成長を阻害することなどの、細胞の成長を変化させるためのPSA脱N−アセチラーゼの阻害剤の使用を含む。本発明の組成物は、一般的にPSA脱N−アセチラーゼの阻害剤を含み、アミノ糖ヘキソサミンおよびノイラミン酸の誘導体、ならびに結合体および凝集体を含む。また、薬学的に許容される賦形剤中有効な量のPSA脱N−アセチラーゼの阻害剤を含む医薬組成物を提供する。本発明はまた、本発明の1つまたは複数の組成物を含むキット、ならびに組成物を調製する方法を提供する。
【0008】
特定の実施形態において、PSA脱N−アセチラーゼ阻害剤を製造する方法、およびポリシアル酸結合体を製造する方法は、凝集体を形成するように、1つまたは複数のポリシアル酸脱N−アセチラーゼ阻害剤のモノマーを凝集条件下で混合する段階を含む、ポリシアル酸脱N−アセチラーゼ阻害剤またはポリシアル酸結合体を含む凝集体の製造を含む。具体例としての実施形態において、凝集条件は、加熱(例えば、30℃〜70℃への加熱)または凝集賦形剤(例えば、水酸化アルミニウム)の添加である。そのような方法は、粒子である凝集体の製造を提供することができ、粒子は顕微鏡的粒子であってよい。
【0009】
したがって、1つの態様において、本開示は、対象におけるがん細胞の成長を阻害する方法を特色とし、前記方法は、ポリシアル酸(PSA)脱N−アセチラーゼの阻害剤を含む有効な量の薬学的に許容される製剤を対象に投与する段階を含み、阻害剤は、以下の式(I):
【化1】

のヘキソサミン化合物、および以下の式(II)のノイラミン酸化合物からなる群から選択されるアミノ糖のN−置換誘導体、
またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、水和物、プロドラッグ、アノマー、互変異性体および立体異性体であり、
式中、−NH−Rおよび−NH−R’は、前記PSA脱N−アセチラーゼによって触媒されるアミド結合加水分解反応の阻害剤を含み、
各R、R’、R’、R、R、R’、R、R’、R’およびR’は、独立に水素またはヘテロ原子、アルキル、アリール、シクロアルキル、ヘテロアリール、アルケニル、アシル、スルホニル、炭水化物、脂質、核酸、ペプチド、色素、発蛍光団およびポリペプチドからなる群から選択される置換もしくは非置換部分であり、
ただし、前記PSA脱N−アセチラーゼの阻害剤は、非アセチル化もしくはテトラ−O−アセチル化N−フルオロアセチルマンノサミン、非アセチル化もしくはテトラ−O−アセチル化N−フルオロアセチルガラクトサミン、非アセチル化もしくはテトラ−O−アセチル化N−フルオロアセチルグルコサミン、非アセチル化もしくはテトラ−O−アセチル化N−クロロアセチルマンノサミン、非アセチル化もしくはテトラ−O−アセチル化N−クロロアセチルガラクトサミン、非アセチル化もしくはテトラ−O−アセチル化N−クロロアセチルグルコサミン、非アセチル化もしくはテトラ−O−アセチル化N−ブロモアセチルマンノサミン、非アセチル化もしくはテトラ−O−アセチル化N−ブロモアセチルガラクトサミン、非アセチル化もしくはテトラ−O−アセチル化N−ブロモアセチルグルコサミン以外であり、前記投与は、前記阻害剤に曝露したがん細胞の生存能の低下を促進する。
【0010】
関連実施形態において、がん細胞は、脱N−アセチル化シアル酸(deNAcSA)エピトープを含む。さらなる関連実施形態において、対象は、細胞分裂中のがん細胞の表面上のdeNAcSAエピトープを含む。具体例としての実施形態において、がんは、黒色腫、白血病または神経芽腫である。関連実施形態において、阻害剤は、注入または局所注射により投与し、がん細胞を除去するための外科的介入の前に、またはがん細胞を除去するための外科的介入時もしくは後に投与することができる。さらなる関連実施形態において、阻害剤は、対象への免疫療法、がん化学療法または放射線療法の少なくとも1つとともに投与する。
【0011】
さらなる関連実施形態において、アミノ糖のN−置換誘導体は、2つまたはそれ以上の分子の結合体を含む。関連実施形態において、結合体は、非結合型基質(unconjugated substrate)阻害剤と比べて細胞取込みを変化させることができる。
関連実施形態において、化合物のRおよびR’は、ハロアセチル、アシルおよびスルホニルからなる群から選択される。関連実施形態において、ハロアセチルは、−C(O)CHF、−C(O)CHCl、−C(O)CHBr、−C(O)CHI、−C(O)CHF、−C(O)CHCl、−C(O)CHBr、−C(O)CF、−C(O)CClおよび−C(O)CBrからなる群から選択される遊離基であり、アシルは、−C(O)CH=CHおよび−C(O)C(=CH)(CH)からなる群から選択される遊離基であり、スルホニルは、−S(=O)(CH)からなる群から選択される遊離基である。
さらなる関連実施形態において、式(I)のヘキソサミン化合物は、以下の式(III)のマンノサミン化合物、式(IV)のガラクトサミン化合物、または式(V)のグルコサミン化合物から選択される。
【化2】

【0012】
関連実施形態において、上式の各R、R、RおよびRは、水素および置換または非置換アシルからなる群から独立に選択され、各Rは、−C(O)CH=CH、−C(O)C(=CH)(CH)、−C(O)CHF、−C(O)CHCl、−C(O)CHBr、−C(O)CHI、−S(=O)(CH)、−C(O)CHF、−C(O)CHCl、−C(O)CHBr、−C(O)CF、−C(O)CClおよび−C(O)CBrからなる群の遊離基から独立に選択される。
特定の実施形態において、阻害剤は、N−アクリルマンノサミン、N−アクリルガラクトサミン、N−アクリルグルコサミン、N−メタクリルマンノサミン、N−メタクリルガラクトサミン、N−メタクリルグルコサミン、N−ヨードアセチルマンノサミン、N−ヨードアセチルガラクトサミン、N−ヨードアセチルグルコサミン、N−メタンスルホニルマンノサミン、N−メチアンスルホニルガラクトサミン、N−メタンスルホニルグルコサミン、N−ジフルオロアセチルマンノサミン、N−ジフルオロアセチルガラクトサミン、N−ジフルオロアセチルグルコサミン、N−ジクロロアセチルマンノサミン、N−ジクロロアセチルガラクトサミン、N−ジクロロアセチルグルコサミン、N−ジブロモアセチルマンノサミン、N−ジブロモアセチルガラクトサミン、N−ジブロモアセチルグルコサミン、N−トリフルオロアセチルマンノサミン、N−トリフルオロアセチルガラクトサミン、N−トリフルオロアセチルグルコサミン、N−トリクロロアセチルマンノサミン、N−トリクロロアセチルガラクトサミン、N−トリクロロアセチルグルコサミン、N−トリブロモアセチルマンノサミン、N−トリブロモアセチルガラクトサミンおよびN−トリブロモアセチルグルコサミンからなる群から選択されるN−置換ヘキソサミン、または薬学的に許容されるその塩、溶媒和物、水和物およびプロドラッグ形、そのアノマー、互変異性体および立体異性体、ならびにその誘導体を含む。
【0013】
さらなる特定の実施形態において、阻害剤は、N−アクリルノイラミン酸、N−メタクリルノイラミン酸、N−フルオロアセチルノイラミン酸、N−クロロアセチルノイラミン酸、N−ブロモアセチルノイラミン酸、N−ヨードアセチルノイラミン酸、N−メチアンスルホニルノイラミン酸、N−ジフルオロアセチルノイラミン酸、N−ジクロロアセチルノイラミン酸、N−ジブロモアセチルノイラミン酸、N−トリフルオロアセチルノイラミン酸、N−トリクロロアセチルノイラミン酸およびN−トリブロモアセチルノイラミン酸からなる群から選択されるN−置換ノイラミン酸、または薬学的に許容されるその塩、溶媒和物、水和物およびプロドラッグ形、そのアノマー、互変異性体および立体異性体、ならびにその誘導体を含む。
関連実施形態において、阻害剤は、顕微鏡的粒子を含んでいてよい、凝集体を含む。
他の態様において、本開示は、薬学的に許容される賦形剤中有効な量のポリシアル酸(PSA)脱N−アセチラーゼの阻害剤を含む医薬組成物を提供し、前記阻害剤は、以下の式(I)のヘキソサミン化合物のN−置換誘導体、または以下の式(II)のノイラミン酸化合物のN−置換誘導体:
【化3】

あるいは薬学的に許容されるその塩、溶媒和物、水和物およびプロドラッグ形、そのアノマー、互変異性体および立体異性体であり、
式中、RおよびR’は、ハロアセチル、アシルアルケニルおよびスルホニルからなる群から選択され、
各R、R’、R’、R、R、R’、R、R’、R’およびR’は、独立に水素またはヘテロ原子、アルキル、アリール、シクロアルキル、ヘテロアリール、アルケニル、アシル、スルホニル、炭水化物、脂質、核酸、ペプチド、色素、発蛍光団およびポリペプチドからなる群から選択される置換もしくは非置換部分であり、ただし、前記PSA脱N−アセチラーゼの阻害剤は、非アセチル化もしくはテトラ−O−アセチル化N−フルオロアセチルマンノサミン、非アセチル化もしくはテトラ−O−アセチル化N−フルオロアセチルガラクトサミン、非アセチル化もしくはテトラ−O−アセチル化N−フルオロアセチルグルコサミン、非アセチル化もしくはテトラ−O−アセチル化N−クロロアセチルマンノサミン、非アセチル化もしくはテトラ−O−アセチル化N−クロロアセチルガラクトサミン、非アセチル化もしくはテトラ−O−アセチル化N−クロロアセチルグルコサミン、非アセチル化もしくはテトラ−O−アセチル化N−ブロモアセチルマンノサミン、非アセチル化もしくはテトラ−O−アセチル化N−ブロモアセチルガラクトサミン、非アセチル化もしくはテトラ−O−アセチル化N−ブロモアセチルグルコサミン以外である。
【0014】
関連実施形態において、阻害剤化合物のハロアセチルは、−C(O)CHF、−C(O)CHCl、−C(O)CHBr、−C(O)CHI、−C(O)CHF、−C(O)CHCl、−C(O)CHBr、−C(O)CF、−C(O)CClおよび−C(O)CBrからなる群から選択される遊離基であり、アシルアルケニルは、−C(O)CH=CHおよび−C(O)C(=CH)(CH)からなる群から選択される遊離基であり、スルホニルは、−S(=O)(CH)からなる群から選択される遊離基である。
さらなる関連実施形態において、式(I)のヘキソサミン化合物は、以下の式(III)のマンノサミン化合物、式(IV)のガラクトサミン化合物、または式(V)のグルコサミン化合物から選択される。
【化4】

【0015】
さらなる関連実施形態において、上式の各R、R、RおよびRは、水素および置換または非置換アシルからなる群から独立に選択され、各Rは、−C(O)CH=CH、−C(O)C(=CH)(CH)、−C(O)CHF、−C(O)CHCl、−C(O)CHBr、−C(O)CHI、−S(=O)(CH)、−C(O)CHF、−C(O)CHCl、−C(O)CHBr、−C(O)CF、−C(O)CClおよび−C(O)CBrからなる群の遊離基から独立に選択される。
さらなる関連実施形態において、医薬組成物の阻害剤は、顕微鏡的粒子を含んでいてよい、凝集体を含んでいてよい。
他の態様において、本開示は、薬学的に許容される賦形剤中有効な量のポリシアル酸(PSA)脱N−アセチラーゼの阻害剤を含む医薬組成物を提供し、前記阻害剤は、N−アクリルマンノサミン、N−アクリルガラクトサミン、N−アクリルグルコサミン、N−メタクリルマンノサミン、N−メタクリルガラクトサミン、N−メタクリルグルコサミン、N−ヨードアセチルマンノサミン、N−ヨードアセチルガラクトサミン、N−ヨードアセチルグルコサミン、N−メチアンスルホニルマンノサミン、N−メチアンスルホニルガラクトサミン、N−メチアンスルホニルグルコサミン、N−ジフルオロアセチルマンノサミン、N−ジフルオロアセチルガラクトサミン、N−ジフルオロアセチルグルコサミン、N−ジクロロアセチルマンノサミン、N−ジクロロアセチルガラクトサミン、N−ジクロロアセチルグルコサミン、N−ジブロモアセチルマンノサミン、N−ジブロモアセチルガラクトサミン、N−ジブロモアセチルグルコサミン、N−トリフルオロアセチルマンノサミン、N−トリフルオロアセチルガラクトサミン、N−トリフルオロアセチルグルコサミン、N−トリクロロアセチルマンノサミン、N−トリクロロアセチルガラクトサミン、N−トリクロロアセチルグルコサミン、N−トリブロモアセチルマンノサミン、N−トリブロモアセチルガラクトサミンおよびN−トリブロモアセチルグルコサミンからなる群から選択されるN−置換ヘキソサミン、または薬学的に許容されるその塩、溶媒和物、水和物およびプロドラッグ形、そのアノマー、互変異性体および立体異性体、ならびにその誘導体を含む。そのような医薬組成物の阻害剤は、顕微鏡的粒子を含んでいてよい、凝集体を含んでいてよい。
【0016】
他の態様において、本開示は、薬学的に許容される賦形剤中有効な量のポリシアル酸(PSA)脱N−アセチラーゼの阻害剤を含む医薬組成物を提供し、前記阻害剤は、N−アクリルノイラミン酸、N−メタクリルノイラミン酸、N−フルオロアセチルノイラミン酸、N−クロロアセチルノイラミン酸、N−ブロモアセチルノイラミン酸、N−ヨードアセチルノイラミン酸、N−メチアンスルホニルノイラミン酸、N−ジフルオロアセチルノイラミン酸、N−ジクロロアセチルノイラミン酸、N−ジブロモアセチルノイラミン酸、N−トリフルオロアセチルノイラミン酸、N−トリクロロアセチルノイラミン酸およびN−トリブロモアセチルノイラミン酸からなる群から選択されるN−置換ノイラミン酸、または薬学的に許容されるその塩、溶媒和物、水和物およびプロドラッグ形、そのアノマー、互変異性体および立体異性体、ならびにその誘導体を含む。そのような医薬組成物の阻害剤は、顕微鏡的粒子を含んでいてよい、凝集体を含んでいてよい。
さらなる態様において、本開示は、N−アクリルマンノサミン、N−アクリルガラクトサミン、N−アクリルグルコサミン、N−メタクリルマンノサミン、N−メタクリルガラクトサミン、N−メタクリルグルコサミン、N−ヨードアセチルマンノサミン、N−ヨードアセチルガラクトサミン、N−ヨードアセチルグルコサミン、N−メチアンスルホニルマンノサミン、N−メチアンスルホニルガラクトサミン、N−メチアンスルホニルグルコサミン、N−ジフルオロアセチルマンノサミン、N−ジフルオロアセチルガラクトサミン、N−ジフルオロアセチルグルコサミン、N−ジクロロアセチルマンノサミン、N−ジクロロアセチルガラクトサミン、N−ジクロロアセチルグルコサミン、N−ジブロモアセチルマンノサミン、N−ジブロモアセチルガラクトサミン、N−ジブロモアセチルグルコサミン、N−トリフルオロアセチルマンノサミン、N−トリフルオロアセチルガラクトサミン、N−トリフルオロアセチルグルコサミン、N−トリクロロアセチルマンノサミン、N−トリクロロアセチルガラクトサミン、N−トリクロロアセチルグルコサミン、N−トリブロモアセチルマンノサミン、N−トリブロモアセチルガラクトサミンおよびN−トリブロモアセチルグルコサミンからなる群から選択されるN−置換ヘキソサミン、または薬学的に許容されるその塩、溶媒和物、水和物およびプロドラッグ形、そのアノマー、互変異性体および立体異性体、ならびにその誘導体を含む組成物を提供する。そのような組成物の阻害剤は、顕微鏡的粒子を含んでいてよい、凝集体を含んでいてよい。
【0017】
他の態様において、本開示は、N−アクリルノイラミン酸、N−メタクリルノイラミン酸、N−フルオロアセチルノイラミン酸、N−クロロアセチルノイラミン酸、N−ブロモアセチルノイラミン酸、N−ヨードアセチルノイラミン酸、N−メチアンスルホニルノイラミン酸、N−ジフルオロアセチルノイラミン酸、N−ジクロロアセチルノイラミン酸、N−ジブロモアセチルノイラミン酸、N−トリフルオロアセチルノイラミン酸、N−トリクロロアセチルノイラミン酸およびN−トリブロモアセチルノイラミン酸からなる群から選択されるN−置換ノイラミン酸、または薬学的に許容されるその塩、溶媒和物、水和物およびプロドラッグ形、そのアノマー、互変異性体および立体異性体、ならびにその誘導体を含む組成物を提供する。そのような組成物の阻害剤は、顕微鏡的粒子を含んでいてよい、凝集体を含んでいてよい。
他の態様において、本開示は、細胞増殖性疾患状態に罹患している宿主を治療するのに用いることができるキットを提供し、前記キットは、本明細書で開示するポリシアル酸(PSA)脱N−アセチラーゼの阻害剤およびがん細胞の成長を阻害する方法における前記阻害剤の効果的な使用に関する指示書を含む。関連実施形態において、キットはさらに、がん細胞の細胞外でアクセスできる表面上の脱N−アセチル化シアル酸(deNAcSA)エピトープを検出するのに適する抗体またはその誘導体(例えば、SEAM3抗体(ATCC寄託番号HB−12170)を含んでいてよい、脱N−アセチル化シアル酸(deNAcSA)エピトープを検出するための診断薬を含む。関連実施形態において、キットのアミノ糖のN−置換誘導体は、2つまたはそれ以上の分子の結合体を含んでおり、結合体は、例えば、非結合型基質阻害剤と比較して細胞取込みを変化させることができ、かつ/または検出可能な標識(例えば、発蛍光団)を含むことができる。本明細書で開示するキットの阻害剤は、阻害剤が凝集体を含み、凝集体が顕微鏡的粒子を含んでいてよい、組成物に含められた状態で提供することができる。
【0018】
他の態様において、本開示は、ポリシアル酸脱N−アセチラーゼ阻害剤またはポリシアル酸結合体を含む凝集体を製造する方法を提供し、該方法は、凝集体を形成するように、1つまたは複数のポリシアル酸脱N−アセチラーゼ阻害剤のモノマーを凝集条件下で混合する段階を含む。関連実施形態において、凝集条件は、加熱または凝集賦形剤の添加である(例えば、30℃〜70℃への加熱)。関連実施形態において、凝集賦形剤は水酸化アルミニウムである。さらなる関連実施形態において、凝集体は、粒子、例えば、顕微鏡的粒子である。
本発明の他の特徴は、本明細書で述べるが、本開示を読むことによっても当業者には容易に明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】ノイラミン酸含有PSAを認識するモノクローナル抗体であるSEAM3の結合を要約するグラフである。誤差バーは3つの繰返し測定の標準偏差を表す。
【図2】10mM N−プロピオニルマンノサミン(ManNPr)またはN−プロピオニルガラクトサミン(GalNPr)の培地への補足が、ポリα(2→8)N−プロピオニルノイラミン酸に特異的に結合するモノクローナル抗体であるSEAM18による結合の増大により測定される、CHP−134神経芽腫、ジャーカットT細胞白血病およびSK−MEL28黒色腫細胞の表面上のポリα(2→8)N−プロピオニルノイラミン酸複合糖質の発現の増大をもたらすことを示すグラフである。
【図3】ジャーカットT細胞白血病細胞の生存能、アポトーシスおよび死に対する細胞培地中のN−アクリルマンノサミン(ManNAcryl)の4種の濃度の効果を示すグラフである。
【図4】CHP−134神経芽腫、ジャーカットT細胞白血病、SK−MEL28黒色腫細胞の生存能に対する効果の細胞培地中のN−アクリルマンノサミン(ManNAcryl)の濃度に関する比較を示すグラフである。誤差バーは3つの繰返し測定の標準偏差を表す。
【図5】CHP−134神経芽腫、ジャーカットT細胞白血病、SK−MEL28黒色腫細胞の生存能に対する効果の細胞培地中のN−クロロアセチルマンノサミン(ManNClAc)の濃度に関する比較を示すグラフである。誤差バーは3つの繰返し測定の標準偏差を表す。
【図6】CHP−134神経芽腫およびジャーカットT細胞白血病の生存能に対する効果の細胞培地中のN−アクリルガラクトサミン(GalNAcryl)の濃度に関する比較を示すグラフである。誤差バーは3つの繰返し測定の標準偏差を表す。
【図7】ジャーカットT細胞白血病細胞の生存能、アポトーシスおよび死に対する細胞培地中の50mMの濃度のN−メタンスルホニルマンノサミン(ManNMeSul)またはN−メタンスルホニルガラクトサミン(GalNMeSul)の効果の比較を示すグラフである。誤差バーは3つの繰返し測定の標準偏差を表す。
【図8】CHP−134神経芽腫、ジャーカットT細胞白血病、SK−MEL28黒色腫細胞の生存能に対する効果の細胞培地中のN−メタンスルホニルマンノサミン(ManNMeSul)またはN−メタンスルホニルガラクトサミン(GalNMeSul)の効果の比較を示すグラフである。誤差バーは3つの繰返し測定の標準偏差を表す。
【図9】ジャーカットT細胞白血病細胞の生存能に対する細胞培地中のポリα(2→8)N−アクリルノイラミン酸の濃度の効果の比較を示すグラフである。誤差バーは3つの繰返し測定の標準偏差を表す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明は、1つまたは複数のノイラミン酸残基(すなわち、deNAcSAエピトープ)を含むポリシアル酸(「PSA」)の抗原を発現するがん細胞の成長および生存能がポリシアル酸脱N−アセチラーゼ(「PSA脱N−アセチラーゼ」)酵素の阻害剤の投与により変化させるかまたは阻止することができるという発見に一部基づいている。阻害性化合物としては、ヘキソサミンおよびノイラミン酸のN−置換誘導体などの該酵素に結合し、阻害する様々な修飾基質または化合物の誘導体が挙げられる。さらなる阻害化合物は、N−置換ヘキソサミンと個々の所定の最終用途に対して阻害剤の特性を適応させるためのペプチド、核酸、色素、脂質または炭水化物との結合体などのN−置換ヘキソサミンおよびノイラミン酸誘導体の結合体である。
本発明および本発明の特定の具体例としての実施形態を記述する前に、本発明は記述する特定の実施形態に限定されず、したがって、もちろん変化し得ることを理解すべきである。本発明の範囲は添付する特許請求の範囲によってのみ限定されるので、本明細書で用いる用語は特定の実施形態を記述する目的のためのものであり、限定することを意図するものでないことも理解すべきである。
【0021】
値の範囲を記載する場合は、文中で明記しない限り、対象範囲の上限と下限の間にある、下限の単位の10分の1までの各介在値、および記載範囲の他の任意の記載値もしくは介在値は、本発明の範囲内に含まれることが理解される。記載範囲の限界が具体的に除外されることを条件として、より小さい範囲に独立に含まれていてよいこれらのより小さい範囲の上および下限も本発明の範囲内に含まれる。記載範囲が限界の1つもしくは両方を含む場合には、含まれる限界の一方または両方を除く範囲も本発明に含まれる。
特に定義しない限り、本明細書で用いるすべての技術および科学用語は、本発明が属する分野の技術者により一般的に理解されているのと同じ意味を有する。本明細書で述べるのと類似または同等の方法および材料は本発明の実施または試験にも用いることができるが、具体例としての方法および材料を次に述べる。本明細書で言及するすべての刊行物は、引用される刊行物に関連する方法および/または材料を開示し、述べるために、参照により本明細書に組み込まれている。
【0022】
本明細書および添付の特許請求の範囲で用いているように、単数形「a」、「an」および「the」は、文中で明記しない限り、複数の指示対象を含むことに注意しなければならない。したがって、例えば、「阻害剤(an inhibitor)」への言及は複数のそのような抗原を含み、「ペプチド(the peptide)」への言及は1つまたは複数のペプチドおよび当業者に知られているその同等物への言及を含む、等である。
本明細書で述べる刊行物は、本出願の出願日の前のそれらの開示のためにのみ記載するものである。本明細書におけるいずれのものも、本発明が先行特許によってそのような刊行物に先行する資格を与えられないということの承認として解釈すべきでない。さらに、記載されている公表の日付は、独立に確認する必要があり得る実際の公表日と異なっている可能性がある。参照により本明細書に組み込まれている文書に記載されている用語の定義が本明細書で明確に定義されている用語の定義と対立している限りにおいて、本明細書に示す定義が支配する。
【0023】
定義
化合物、そのような化合物を含む医薬組成物ならびにそのような化合物および組成物を用いる方法を記述する場合、特に示さない限り、以下の用語は、以下の意味を有する。下で定義する部分のいずれかは様々な置換基で置換することができ、各定義はそのような置換された部分をそれらの範囲内に含めることが意図されていることも理解すべきである。
「アシル」は、遊離基−C(O)Rを意味し、Rは、本明細書で定義する水素、アルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、アリールアルキル、ヘテロアルキルまたはヘテロアリールである。代表的な例は、ホルミル、アセチル、シクロヘキシルカルボニル、シクロヘキシルメチルカルボニル、ベンゾイル、ベンジルカルボニルなどを含むが、これらに限定されない。
「アシルアミノ」は、−NR’C(O)R遊離基を意味し、R’は、明細書で定義する水素、アルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、アリールアルキル、ヘテロアルキル、ヘテロアリールまたはヘテロアリールアルキルであり、Rは水素、アルキル、アルコキシ、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、アリールアルキル、ヘテロアルキル、ヘテロアリールまたはヘテロアリールアルキルである。代表的な例は、ホルミルアミノ、アセチルアミノ、シクロヘキシルカルボニルアミノ、シクロヘキシルメチルカルボニルアミノ、ベンゾイルアミノ、ベンジルカルボニルアミノなどを含むが、これらに限定されない。
【0024】
「アシルオキシ」は、−OC(O)H、−OC(O)−アルキル、−OC(O)−アリールまたは−OC(O)−シクロアルキル基を意味する。
「脂肪族」は、炭化水素有機化合物または構成炭素原子の線状、分枝もしくは環状配列および芳香族不飽和の非存在により特徴づけられる基を意味する。脂肪族としては、制限なしに、アルキル、アルキレン、アルケニル、アルキニルおよびアルキニレンなどがある。脂肪族基は、一般的に1または2〜6または12個の炭素原子を有する。
「アルケニル」は、直鎖または分枝であってよく、少なくとも1つ、特に1つから2つのオレフィン不飽和の部位を有する、約11個までの炭素原子、特に、2〜8個の炭素原子、より詳細には2〜6個の炭素原子を有する一価のオレフィン不飽和炭化水素基を意味する。特定のアルケニル基としては、エテニル(−CH=CH)、n−プロペニル(−CHCH=CH)、イソプロペニル(−C(CH)=CH)、ビニルおよび置換ビニルなどがある。
【0025】
「アルコキシ」は、−O−アルキル基を意味する。特定のアルコキシ基は、例として、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、イソプロポキシ、n−ブトキシ、tert−ブトキシ、sec−ブトキシ、n−ペントキシ、n−ヘキソキシ、1,2−ジメチルブトキシなどが挙げられる。「低級アルコキシ」基は、1〜6個、または1〜4個の炭素原子を含むアルコキシ基を意味する。同様に、「アルケノキシ」および「アルキノキシ」という用語は、本明細書で用いているように、単一の末端エーテル結合を介して結合しているアルケニルまたはアルキニル基を意味し、すなわち、「アルケノキシ」または「アルキノキシ」基であり得る(Rがアルケニルまたはアルキニルである−ORと定義される)。
「アルコキシカルボニル」は、アルコキシが本明細書で定義する通りである、−C(O)−アルコキシ遊離基を意味する。
「アルコキシカルボニルアミノ」は、−NRC(O)OR’を意味し、Rは水素、アルキル、アリールまたはシクロアルキルであり、R’はアルキルまたはシクロアルキルである。
【0026】
「アルキル」は、特に1〜24個の炭素原子、より詳細には低級アルキルとして1〜8個の炭素原子、またより詳細には1〜6個の炭素原子、またはさらに1〜4個の炭素原子を有する一価飽和脂肪族炭化水素基を意味する。炭化水素鎖は、直鎖または分枝鎖であってよい。この用語は、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、n−ヘキシル、n−オクチル、tert−オクチルなどの基により例示される。「アルキル」という用語は、「シクロアルキル」も含む。
「アルキレン」は、直鎖または分枝鎖であってよい、特に約12または18個までの炭素原子、またより詳細には1〜6個の炭素原子を有する二価飽和脂肪族炭化水素基を意味する。この用語は、メチレン(−CH−)、エチレン(−CHCH−)、プロピレン異性体(例えば、−CHCHCH−および−CH(CH)CH−)などの基により例示される。
「アルケニル」は、2〜24個の炭素原子の一価不飽和または多価不飽和炭化水素基を意味する。このクラス内にあると考えられる基は、2〜12個の炭素原子を同様に含み、「アルキニル」という用語は、本明細書で用いているように、少なくとも1つの三重結合を含む2〜24個の炭素原子の炭化水素基を意味する。このクラス内の基は、2〜12個の炭素原子を含む。他の基は、2〜4個の炭素原子、2〜3個の炭素原子、および2個の炭素原子を含む。
【0027】
「アルキニル」は、直鎖または分枝鎖であってよく、アルキニル不飽和の少なくとも1つ、特に1つから2つの部位を有する、特に、最大約12〜18個の炭素原子、またより詳細には2〜6個の炭素原子を有するアセチレン様の不飽和炭化水素基を意味する。アルキニル基の特定の非限定的な例としては、エチニル(−C≡CH)、プロパルギル(−CHC≡CH)などがある。
「アミノ」は、−NH遊離基を意味する。
「アミノ酸」は、D、LまたはDL形の天然アミノ酸(例えば、Ala、Arg、Asn、Asp、Cys、Glu、Gln、Gly、His、Hyl、Hyp、Ile、Leu、Lys、Met、Phe、Pro、Ser、Thr、Trp、TyrおよびVal)のいずれかを意味する。天然アミノ酸の側鎖は、当技術分野でよく知られており、例えば、水素(例えば、グリシンにおけるような)、アルキル(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリンにおけるような)、置換アルキル(例えば、トレオニン、セリン、メチオニン、システイン、アスパラギン酸、アスパラギン、グルタミン酸、グルタミン、アルギニンおよびリシンにおけるような)、アルカリール(例えば、フェニルアラニンおよびトリプトファンにおけるような)、置換アリールアルキル(例えば、チロシンにおけるような)およびヘテロアリールアルキル(例えば、ヒスチジンにおけるような)などである。
「アミノカルボニル」は、−C(O)NRR基を意味し、各Rは独立に水素、アルキル、アリールまたはシクロアルキルであるか、またはR基が結合してアルキレン基を形成している。
【0028】
「アミノカルボニルアミノ」は、−NRC(O)NRR基を意味し、各Rは独立に水素、アルキル、アリールまたはシクロアルキルであるか、または2つのR基が結合してアルキレン基を形成している。
「アミノカルボニルオキシ」は、−OC(O)NRR基を意味し、各Rは独立に水素、アルキル、アリールまたはシクロアルキルであるか、またはR基が結合してアルキレン基を形成している。
「アミノ含有糖基」は、アミノ置換基を有する糖基を意味する。代表的なアミノ含有糖基としては、L−バンコサミン、3−脱メチルバンコサミン、3−エピ−バンコサミン、4−エピ−バンコサミン、アコサミン、アクチノサミン、ダウノサミン、3−エピ−ダウノサミン、リストサミン、N−メチル−D−グルコサミンなどがある。
「アラルキル」または「アリールアルキル」は、上で定義した1つまたは複数のアリール基で置換された上で定義したアルキル基を意味する。
【0029】
「アリール」は、親芳香族環系の1つの炭素原子から1つの水素原子を除去することにより得られる一価芳香族炭化水素基を意味する。一般的なアリール基は、アセアントリレン、アセナフチレン、アセフェナントリレン、アントラセン、アズレン、ベンゼン、クリセン、コロネン、フルオランテン、フルオレン、ヘキサセン、ヘキサフェン、ヘキサレン、as−インダセン、s−インダセン、インダン、インデン、ナフタレン、オクタセン、オクタフェン、オクタレン、オバレン、ペンタ−2,4−ジエン、ペンタセン、ペンタレン、ペンタフェン、ペリレン、フェナレン、フェナントレン、ピセン、プレイアデン、ピレン、ピラントレン、ルビセン、トリフェニレン、トリナフタレンなどから得られる基を含むが、これらに限定されない。特に、アリール基は、6〜14個の炭素原子を含む。
「アリールオキシ」は、−O−アリール基を意味し、「アリール」は本明細書で定義した通りである。
「アジド」は、−N基を意味する。
【0030】
「炭水化物」は、単、二、三または多糖を意味し、多糖は、約20000までの分子量を有することができ、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロースまたはキトサンなどである。「炭水化物」は、糖部分のいずれかの原子、例えば、アグリコン炭素原子を介してアンヒドロピリミジン(例えば、アンヒドロチミジンまたはアンヒドロウリジン)またはその誘導体に共有結合した酸化、還元または置換糖一価遊離基も含む。「単、二、三または多糖」は、アミノ含有糖基も含む。代表的な「炭水化物」は、実例として、D−グルコース、D−マンノース、D−キシロース、D−ガラクトース、バンコサミン、3−脱メチルバンコサミン、3−エピ−バンコサミン、4−エピ−バンコサミン、アコサミン、アクチノサミン、ダウノサミン、3−エピ−ダウノサミン、リストサミン、D−グルカミン、N−メチル−D−グルカミン、D−グルクロン酸、N−アセチル−D−グルコサミン、N−アセチル−D−ガラクトサミン、シアリン酸、イズロン酸、L−フコースなどの六炭糖、D−リボースまたはD−アラビノースなどの五炭糖、D−リブロースまたはD−フルクトースなどのケトース、2−O−(α−L−バンコサミニル)−β−D−グルコピラノース、2−O−(3−脱メチル−α−L−バンコサミニル)−β−D−グルコピラノース、ショ糖、乳糖または麦芽糖などの二糖、アセタール、アミン、アシル化、硫酸化およびリン酸化糖などの誘導体、2〜10個の糖単位を有するオリゴ糖などがある。糖は、それらの開環またはピラノース形であってよい。
【0031】
「カルボキシル」は、−C(O)OH遊離基を意味する。
「シアノ」は、−CN遊離基を意味する。
「シクロアルケニル」は、3〜10個の炭素原子を有し、縮合および架橋環系を含む単環または多縮合環を有し、オレフィン不飽和の少なくとも1つ、特に1〜2つの部位を有する環状炭化水素基を意味する。そのようなシクロアルケニル基は、例として、シクロヘキセニル、シクロペンテニル、シクロプロペニルなどの単環構造が挙げられる。
「シクロアルキル」は、3〜約10個の炭素原子を有し、1〜3つのアルキル基で場合によって置換されていてよい、縮合および架橋環系を含む単環または多縮合環を有する環状炭化水素基を意味する。そのようなシクロアルキル基は、例として、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロオクチル、1−メチルシクロプロピル、2−メチルシクロプロピル、2−メチルシクロオクチルなどの単環構造、およびアダマンタニルなどの多環構造が挙げられる。
【0032】
「ヘテロシクロアルキル」は、N、OおよびSから独立に選択される1つまたは複数のヘテロ原子を含む安定な非芳香族複素環および縮合環を意味する。縮合複素環系は、炭素環を含んでいてよく、1つの複素環のみを含む必要がある。複素環の例は、ピペラジニル、ホモピペラジニル、ピペリジニルおよびモルホリニルを含むが、これらに限定されない。
「ハロ」または「ハロゲン」は、フルオロ、クロロ、ブロモおよびヨードを意味する。「ハロゲン化物」は、F、Cl、IまたはBrを含むハロゲンを意味する。
「ヘテロ」は、化合物または化合物に存在する基を記述するために用いる場合、化合物または基における1つまたは複数の炭素原子が窒素、酸素または硫黄ヘテロ原子に置換されていたことを意味する。ヘテロは、1〜5個、特に1〜3個のヘテロ原子を有するアルキル、例えば、ヘテロアルキル、シクロアルキル、例えば、ヘテロシクロアルキル、アリール、例えば、ヘテロアリール、シクロアルケニル、シクロヘテロアルケニルなどの上述の炭化水素基のいずれかに適用することができる。
【0033】
「ヘテロアリール」は、親芳香族複素環系の1つの原子から1つの水素原子の除去により得られる一価芳香族複素基を意味する。一般的なヘテロアリール基は、アクリジン、アルシンドール、カルバゾール、β−カルボリン、クロマン、クロメン、シンノリン、フラン、イミダゾール、インダゾール、インドール、インドリン、インドリジン、イソベンゾフラン、イソクロメン、イソインドール、イソインドリン、イソキノリン、イソチアゾール、イソオキサゾール、ナフチリジン、オキサジアゾール、オキサゾール、ペリミジン、フェナントリジン、フェナントロリン、フェナジン、フタラジン、プテリジン、プリン、ピラン、ピラジン、ピラゾール、ピリダジン、ピリジン、ピリミジン、ピロール、ピロリジン、キナゾリン、キノリン、キノリジン、キノキサリン、テトラゾール、チアジアゾール、チアゾール、チオフェン、トリアゾール、キサンテンなどから得られる基を含むが、これらに限定されない。ヘテロアリール基は、5〜20員ヘテロアリール、または5〜10員ヘテロアリールであってよい。特定のヘテロアリール基は、チオフェン、ピロール、ベンゾチオフェン、ベンゾフラン、インドール、ピリジン、キノリン、イミダゾール、オキサゾールおよびピラジンから得られるものである。
「ヒドロキシル」は、−OH基を意味する。
【0034】
「ペプチド」は、最大2、5、10または約100のアミノ酸残基を含むポリアミノ酸を意味する。
「ポリペプチド」は、約100アミノ酸単位から約1000アミノ酸単位、約100アミノ酸単位から約750アミノ酸単位、または約100アミノ酸単位から約500アミノ酸単位を含むポリアミノ酸を意味する。
「立体異性体」は、所定の化合物に関するものであるので、当技術分野でよく理解されており、同じ分子式を有する他の化合物を意味し、他の化合物を構成する原子が空間において配向している仕方は異なっているが、他の化合物における原子は、どの原子がどの他の原子に結合しているかに関して所定の化合物における原子と同様である(例えば、鏡像異性体、ジアステレオマーまたは幾何異性体)。例えば、MorrisonおよびBoyd、Organic Chemistry、1983年、第4版、Allyn and Bacon,Inc.、Boston、MA、123頁を参照のこと。
【0035】
「置換」は、1つまたは複数の水素原子がそれぞれ独立に同じまたは異なる置換基(複数可)で置換されている基を意味する。「置換」基は特に、アシル、アシルアミノ、アシルオキシ、アルコキシ、置換アルコキシ、アルコキシカルボニル、アルコキシカルボニルアミノ、アミノ、置換アミノ、アミノカルボニル、アミノカルボニルアミノ、アミノカルボニルオキシ、アリール、アリールオキシ、アジド、カルボキシル、シアノ、シクロアルキル、置換シクロアルキル、ハロゲン、ヒドロキシ、ケト、ニトロ、チオアルコキシ、置換チオアルコキシ、チオアリールオキシ、チオケト、チオール、アルキル−S(O)−、アリール−S(O)−、アルキル−S(O)−およびアリール−S(O)からなる群から選択される1つまたは複数の置換基、例えば、1〜5つの置換基、特に1〜3つの置換基を有する基を意味する。一般的な置換基は、−X、−R(ただし、Rはハロゲンでない)、−O−、=O、−OR、−SR、−S、=S、−NRii、=NR、−CX、−CF、−CN、−OCN、−SCN、−NO、−NO、=N、−N、−S(O)、−S(O)OH、−S(O)、−OS(O)O、−OS(O)、−P(O)(O、−P(O)(OR)(O)、−OP(O)(OR)(ORii)、−C(O)R、−C(S)R、−C(O)OR、−C(O)NRii、−C(O)O、−C(S)OR、−NRiiiC(O)NRii、−NRiiiC(S)NRii、−NRiiiiC(NRiii)NRiiおよび−C(NRiii)NRiiを含むが、これらに限定されず、各Xは独立にハロゲンである。
【0036】
「置換アミノ」は、本明細書における「置換」の定義において列挙した基を含み、特に−N(R)基を意味し、各Rは、水素、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、アリール、シクロアルキル、置換シクロアルキルからなる群から独立に選択され、両Rは、結合してアルキレン基を形成している。
「スルホニル」は、−S(=O)−R基を意味する。
「チオアルコキシ」は、−S−アルキル基を意味する。
「チオアリールオキシ」は、−S−アリール基を意味する。
「チオケト」は、=S基を意味する。
「チオール」は、−SH基を意味する。
「アルカノール」、「アルケノール」および「アルキノール」という用語は、本明細書で用いているように、それぞれアルカン、アルケンおよびアルキンのアルコール型を意味する。アルコールは、1つまたは複数のOH部分を含んでいてよい。さらに、アルコールは、分枝または線状であってよく、OH部分は、末端炭素または炭素鎖に沿った他所に存在していてよい。特定の炭素において複数のOH基が置換されていてよい。「アルカノール」の例は、メタノール、エタノール、CHCH(OH)などである。アルケノールの例は、CHCHOH、CHCHCHOHなどである。アルキノールの例は、CHCHCCOOHである。特許請求の範囲において用いているように、アルカノールの置換は、水素の1つが結合原子において除去されており、当原子が置換を受ける実体に結合していることを意味する。同じ解釈は、文脈上そのような解釈が必要である場合、本明細書における他のすべての部分に適用される。
【0037】
「アミノ糖」という用語は、ヒドロキシル基の代わりにアミノ基を含む糖またはサッカリドを意味する。N−アセチルグルコサミン、N−アセチルマンノサミン、N−アセチルガラクトサミン、N−アセチルノイラミン酸およびシアル酸などのアミノを含む糖の誘導体は、一般的にアミノ糖の例である。
「類似体」という用語は、本開示の化合物と構造の類似性を有し、権利を主張かつ/または参照した化合物と同じまたは類似の有用性を示すと当業者が予想するであろうあらゆる化合物を制限なしに意味する。
PSA脱N−アセチラーゼ阻害剤に結合させた担体の状況において用いる「担体」という用語は、抗体または抗体フラグメントなどのペプチドまたはタンパク質担体を一般的に意味する。
「細胞表面抗原」(または「細胞表面エピトープ」)という用語は、細胞分裂時に主として細胞外でまたは細胞外でのみアクセスできる抗原を含む、細胞の任意の細胞周期段階で細胞外でアクセスできる細胞の表面上の抗原またはエピトープを意味する。この状況における「細胞外でアクセスできる」は、細胞膜を透過性にする必要なしに、細胞外に供給される抗体が結合することができる抗原を意味する。
【0038】
本明細書で用いる「化学療法」という用語は、がんの治療が特に問題となっている場合の疾患の治療における、薬剤(例えば、薬物、抗体等)、特に、がん細胞に選択的に破壊をもたらす薬剤の使用を意味する。
「結合」という用語は、目的とする1つの分子を目的とする第2の分子と隣接して結合させる、共有結合または非共有結合、通常は共有結合である化学結合を意味する。
「環状」および「複素環状」という用語は、それぞれ、どの炭素原子も置換されていない、また炭素原子の1つまたは複数が置換された環を意味する。例えば、「複素環状」環については、環における炭素がN、OまたはSで置換されていてよい。置換されているそのような原子は、本明細書において「ヘテロ原子」と呼ぶ。当業者であれば、他の安定なヘテロ原子が存在することを認識する。当業者は、安定で、化学的に実現可能な複素環におけるヘテロ原子の最大の数は、芳香族であるか、非芳香族であるかにかかわりなく、環の大きさ、不飽和の程度およびヘテロ原子の原子価によって決定されることを認識するであろう。一般的に、複素環は、芳香族複素環が化学的に実現可能で、安定である限り、1個から4個のヘテロ原子を有することができる。
【0039】
「脱N−アセチルシアル酸抗原」(「脱N−アセチル化シアル酸抗原」または「deNAcSA抗原」とも呼ぶ)という用語は、deNAcシアル酸エピトープ(deNAcSAエピトープ)を有するまたは模擬する化合物を意味し、エピトープは、シアル酸またはシアル酸誘導体の残基の二量体により最小限定義され、二量体は、Nアセチル化(例えば、アセチル化またはプロピオニル化)シアル酸残基またはシアル酸誘導体残基に隣接する少なくとも1つの脱N−アセチル化シアル酸残基を含む。脱N−アセチルシアル酸抗原の例は、本開示において記載しており、脱N−アセチル化多糖誘導体(「PS誘導体」)、脱N−アセチル化ガングリオシドおよびシアル酸修飾タンパク質の脱N−アセチル化誘導体、特に、哺乳類細胞、特にヒト細胞、特にがん細胞、特にヒトがん細胞の細胞外表面でアクセスできるシアル酸修飾タンパク質を制限なく含む。出発分子の誘導体(例えば、PS誘導体またはガングリオシド誘導体)としてのdeNAcSA抗原の記述は、脱N−アセチルシアル酸抗原の製造の方法に限定することを意味せず、具体例としてのdeNAcSA抗原の構造を記述する都合のよい方法としての意味をもつことに注目されたい。
「誘導体」という用語は、本開示の化合物の構造由来の構造を有し、構造が本明細書に開示するものと十分に類似しており、権利を主張かつ/または参照した化合物と同じまたは類似の活性および有用性を示すと当業者が予想するであろう類似性に基づくあらゆる化合物を制限なしに意味する。
【0040】
本明細書に記載する化合物の「有効な量」という用語は、非致死性であるが、所望の効用をもたらすのに十分な化合物の量を意味することを意図する。例えば、ポリシアル酸脱N−アセチラーゼを阻害する場合、有効な量は、対象における臨床的に意味のあるポリシアル酸脱N−アセチラーゼまたは複合体の阻害を可能にする量である。下で指摘するように、必要とする正確な量は、対象の種、年齢および一般状態、治療する状態もしくは疾患の重症度、用いる個々の化合物、その投与方法などによって対象ごとに異なるであろう。したがって、正確な「有効量」を指定することは可能ではない。しかし、適切な有効量は、当業者により常用の実験のみを用いて決定することができる。
「免疫療法」という用語は、疾患抗原に対する免疫応答を調節することによる疾患(例えば、がん)の治療を意味する。本出願の状況において、免疫療法は、抗体(例えば、モノクローナル抗体)の投与により、かつ/または対象における抗腫瘍抗原免疫応答を誘発する抗原の投与により、対象における抗がん免疫応答をもたらすことを意味する。
細胞の「不活性化」という用語は、本明細書では細胞が後代を形成するための細胞分裂を不可能にさせられたことを示すために用いる。細胞は、それにもかかわらず刺激に対する応答および/または例えば、細胞表面分子(例えば、細胞表面タンパク質もしくは多糖)の産生を可能にするためのある期間の生合成の能力があってよい。
【0041】
本明細書で用いる「との併用で」という用語は、例えば、第1の療法を第2の療法の適用の全過程中に適用する場合、第1の療法を第2の療法の適用と重複する期間適用する場合、例えば、第1の療法の適用が第2の療法の適用の前に始まり、第1の療法の適用が第2の療法の適用が終わる前に終わる場合、第2の療法の適用が第1の療法の適用の前に始まり、第2の療法の適用が第1の療法の適用が終わる前に終わる場合、第1の療法の適用が第2の療法の適用が始まる前に始まり、第2の療法の適用が第1の療法の適用が終わる前に終わる場合、第2の療法の適用が第1の療法の適用が始まる前に始まり、第1の療法の適用が第2の療法の適用が終わる前に終わる場合の使用を意味する。そのようなものとして、「併用で」も2つまたはそれ以上の療法の適用を伴う投薬計画を意味し得る。本明細書で用いる「との併用で」は、同じまたは異なる製剤で、同じまたは異なる経路により、同じまたは異なる剤形で適用することができる2つまたはそれ以上の療法の適用も意味する。
【0042】
「阻害剤」という用語は、酵素または複合体に結合し、その活性を低下させる化合物を意味する。
「ポリシアル酸脱N−アセチラーゼの阻害剤」という用語は、制限なしに、ポリシアル酸の1つまたは複数のN−アセチルノイラミン酸残基の脱N−アセチル化を阻止、低減または阻害するあらゆる化合物または組成物を意味する。
「分離した」という用語は、化合物が本来はそれに付随する成分のすべてまたは一部から分離されていることを意味する。「分離した」は、製造(例えば、化学合成、組換え発現、培地など)中にそれに付随する成分のすべてまたは一部から分離されている化合物の状態も意味する。
【0043】
「モノクローナル抗体」という用語は、均一な抗体集団を有する抗体組成物を意味する。この用語は、それが作製される方法によって限定されない。この用語は、全免疫グロブリン分子、ならびにFab分子、F(ab’)2フラグメント、Fvフラグメント、ファージ上でディスプレイされる単鎖フラグメント可変部(scFv)、抗体の抗原結合部分と非抗体タンパク質を含む融合タンパク質、および親モノクローナル抗体分子の免疫学的結合特性を示す他の分子を含む。ポリクローナルおよびモノクローナル抗体を作製する方法は、当技術分野で知られており、下でより十分に述べる。
「薬剤学的に許容できる」という用語は、生物学的にまたは他の点で望まれないことはない物質を意味する。該物質は、望まれない生物学的影響やそれが含まれている医薬組成物の他の成分のいずれかとの有害な態様の相互作用を引き起こすことなく、選択される活性な薬剤成分とともに個人に投与することができる医学的に許容できる品質および組成のものである。
【0044】
本明細書で用いている「薬剤学的に許容できる賦形剤」という用語は、対象への目的とする化合物の投与のための薬剤学的に許容できる媒体となるあらゆる適切な物質を意味する。「薬剤学的に許容できる賦形剤」は、薬剤学的に許容できる希釈剤、薬剤学的に許容できる添加剤および薬剤学的に許容できる担体と呼ばれる物質を含み得る。
「ポリシアル酸脱N−アセチラーゼ」という用語は、ポリシアル酸の1つまたは複数のN−アセチルノイラミン酸残基を脱N−アセチル化する反応を触媒する酵素を意味する。
本明細書で同義で用いている「ポリペプチド」および「タンパク質」という用語は、コード化および非コード化アミノ酸、化学的または生物学的に修飾されたまたは誘導体化されたアミノ酸、ならびに修飾ペプチド主鎖を有するポリペプチドを含み得る、あらゆる長さのアミノ酸の重合体を意味する。該用語は、異種アミノ酸配列を含む融合タンパク質、N末端メチオニン残基を有するまたは有さない異種および同種リーダー配列を含む融合体、免疫学的に標識されたタンパク質、検出可能な融合パートナーを含む融合タンパク質、例えば、融合パートナーとしての蛍光タンパク質、β−ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼ等を含む融合タンパク質などを含むが、これらに限定されない融合タンパク質を含む。ポリペプチドは、あらゆるサイズのものであってよく、「ペプチド」という用語は、長さが8〜50残基(例えば、8〜20残基)であるポリペプチドを意味する。
【0045】
「精製した」という用語は、目的とする化合物が本来はそれに付随する成分から分離され、濃縮された形で提供される状態を意味する。「精製した」は、製造(例えば、化学合成、組換え発現、培地など)中にそれに付随し得る成分から目的とする化合物が分離され富化された形で提供された状態も意味する。一般的に、化合物が、天然で会合している、または製造中に会合している有機分子を含まずに、少なくとも50重量%〜60重量%である場合に、化合物は実質的に純粋である。一般的に、製剤は、目的とする化合物が少なくとも75重量%、通常少なくとも90重量%、一般的に少なくとも99重量%である。実質的に純粋な化合物は、例えば、自然源(例えば、細菌)から抽出により、化合物を化学的に合成することにより、または精製と化学修飾の組合せにより得ることができる。実質的に純粋な化合物は、例えば、目的とする抗体に結合する化合物を有するサンプルを濃縮することによっても得ることができる。純度は、適切な方法、例えば、クロマトグラフィー、質量分析、HPLC分析などにより測定することができる。
【0046】
「SEAM3反応性抗原」という用語は、モノクローナル抗体(mAb)SEAM3(ATCC寄託番号HB−12170)が特異的に結合するエピトープを有する抗原を意味する。具体例としてのSEAM3反応性抗原は、実施例に記載する。
「飽和」または「不飽和」という用語は、原子の特定の対の間に単または二重結合が存在するかどうかを記述するために用いる。単結合を「飽和」と呼び、二重結合を「不飽和」と呼ぶ。当業者は、三重結合も「不飽和」を構成することができることを認識するであろう。さらに、「飽和」および「部分的に不飽和」および「完全に不飽和」という用語は、特定の環における不飽和の存在または欠如を指すために用いる。例えば、シクロヘキサンは、「飽和」化合物とみなされるであろう。他方で、シクロヘキセンは、1つの不飽和が存在するので、「部分的に不飽和」である。最後に、ベンゼンは、最大である3つの不飽和が存在するので、「完全に不飽和」である。
【0047】
「基質阻害剤」という用語は、結合して、その活性を低下させる酵素または複合体の天然基質の類似体または誘導体である化合物を意味する。
「対象」という用語は、任意の方法でポリシアル酸を含むヒト、哺乳動物および他の動物を含むことを意味する。「対象」、「宿主」、「患者」および「個体」という用語は、診断または治療が望まれるあらゆる哺乳類対象、特にヒトに言及するために本明細書で同義で用いられる。他の対象は、ウシ、イヌ、ネコ、モルモット、ウサギ、ラット、マウス、ウマなどを含んでいてよい。
本明細書で記述するがんの治療および診断の状況において、「対象」または「患者」は、がんがポリシアル酸脱N−アセチラーゼを発現するがん細胞を伴うものである場合に、腫瘍を有する、有することが疑われる、または発現する危険性がある対象に言及するために本明細書で同義で用いられる。そのような対象から得られるサンプルは、本開示の方法において用いるのに同様に適している。
【0048】
「遷移状態アナログ」という用語は、反応の遷移状態の特性または幾何構造を模擬することを意図した基質を意味する。
本明細書で用いているように、「決定」、「測定」および「評価」ならびに「分析」という用語は、同義で用い、定量的および定性的決定の両方を含む。
特許請求の範囲はあらゆる任意選択または代替要素を排除するように起草することができることがさらに指摘される。したがって、この陳述は、特許請求の範囲の要素の列挙に関連して「単に」、「のみ」などのような限定的な用語の使用、または「消極的な」限定の使用の根拠となることを目的とする。
【0049】
本明細書で引用するすべての刊行物および特許は、あたかもそれぞれの個別の刊行物または特許が参照により組み込まれることが具体的かつ個別に示され、刊行物が引用されていることに関連して方法および/または材料を開示し、記述するために参照により本明細書に組み込まれているかのように、参照により本明細書に組み込まれている。刊行物の引用は、出願日の前のその開示のためのものであり、本発明が先行特許によってそのような刊行物に先行する資格を与えられないということの承認として解釈すべきでない。さらに、記載されている公表の日付は、独立に確認する必要があり得る実際の公表日と異なっている可能性がある。
本発明をさらに記述するにあたって、本明細書で用いることができる具体例としての方法および化合物を最初により詳細に述べた後に、そのような方法において使用される可能性がある様々な組成物(例えば、製剤、キットなど)を概説し、また方法および組成物が使用される様々な代表的な適用例について考察する。
【0050】
方法および組成物
上で要約したように、本開示は、例えば、PSA脱N−アセチラーゼの阻害により治療可能な疾患または状態に罹患している宿主の治療のために、PSA脱N−アセチラーゼの阻害剤をそれを必要とする対象に投与する方法を提供する(下でより詳細に述べるように)。
本開示の方法の1つの特徴は、本明細書で開示した阻害剤が対象におけるがん細胞の成長を阻害するのに特に用いることができることである。この方法は、PSA脱N−アセチラーゼの阻害剤を含む有効な量の薬学的に許容される製剤を対象に投与する段階を含む。PSA脱N−アセチラーゼの投与は、阻害剤に曝露したがん細胞の生存能の低下を促進する。本方法の利点は、PSA脱N−アセチラーゼ阻害剤がPSA脱N−アセチラーゼ酵素を含むがん細胞に対して細胞傷害性であることである。したがって、がん細胞における該酵素の阻害は、細胞成長の遅延または阻止し、細胞死につながるアポトーシスを誘発する効果がある。特定の実施形態において、本開示のPSA脱N−アセチラーゼ阻害剤の細胞傷害性は、用量依存的であり、したがって、調節可能である。対象となる方法による治療が適用可能であるがん細胞の特定の例は、黒色腫、白血病または神経芽細胞腫などである。
【0051】
関連実施形態において、治療を受ける対象はdeNAcSAエピトープを有する。該エピトープは、がん細胞などの細胞内に存在するか、または細胞表面上で発現することができる。この態様は、deNAcSAエピトープを発現または提示する細胞が本開示のPSA脱N−アセチラーゼ阻害剤による治療に対してより適用可能性が高くなり得る点が有用であり得る。もちろんPSA脱N−アセチラーゼ阻害剤は、例えば、エピトープの存在が検出できない時点に療法を開始する場合にdeNAcSAエピトープに関して未経験である対象に投与することができ、したがって、限定することを意図しない。疾患の症状の最初の徴候の前、可能な疾患の最初の徴候時、あるいは検出可能なdeNAcSAエピトープ(例えば、ガングリオシドまたは少なくとも部分的に脱N−アセチル化されている複合糖質)を有する原発がんおよび/またはがんの転移の診断の前または後に、PSA脱N−アセチラーゼ阻害剤療法を開始することも可能である。
他の実施形態は、PSA脱N−アセチラーゼ阻害剤療法と併用するdeNAcSAエピトープのスクリーニングを含む。この方法において、PSA脱N−アセチラーゼ阻害剤を用いた治療を受ける、または治療に対する感受性について試験を受けている対象の細胞をdeNAcSAエピトープの存在についてスクリーニングする。これは、エピトープに結合する抗体または抗体フラグメント(例えば、SEAM3モノクローナル抗体(ATCC寄託番号HB−12170))を用いて達成することができる。一般のがん療法と同様に、このアプローチの利点は、そうでない個人と比較してPSA脱N−アセチラーゼ阻害剤療法に対してより高度に反応する可能性がある細胞増殖疾患または病期を有する個人を選択することができることである。deNAcSAエピトープを有する細胞を有する対象を標的とする他の利点は、治療コースにわたる経過をモニターすることができ、投与計画、量などを含む療法をそれに応じて調節することができることである。
【0052】
本明細書で開示した方法を実施するに際して、投与経路(PSA脱N−アセチラーゼ阻害剤を身体と接触させる経路)は変化する可能性がある。PSA脱N−アセチラーゼ阻害剤の代表的な投与経路については下でより詳細に述べる。特定の実施形態において、PSA脱N−アセチラーゼ阻害剤を注入または局所注射により投与する。それはまた、がん細胞を除去するための外科的介入などの他の治療的介入の前、その時点、またはその後に投与することができる。PSA脱N−アセチラーゼ阻害剤は、免疫療法、がん化学療法または放射線療法の少なくとも1つを対象に適用する、併用療法の一部として投与することもできる(下でより詳細に述べるように)。
本開示の方法において、有効な量のPSA脱N−アセチラーゼ阻害剤をそれを必要とする対象に投与する。特に、特に重要なPSA脱N−アセチラーゼ阻害剤は、化合物を本開示による有効な量で投与するとき、宿主におけるがん細胞の成長を阻害するものである。投与量は、投与の目的、治療を受ける個人の健康および身体的状態、年齢、治療を受ける個人の分類群(例えば、ヒト、ヒト以外の霊長類、霊長類など)、所望の解消の程度、PSA脱N−アセチラーゼ阻害剤組成物の製剤、治療臨床医による医学的状況の評価、ならびに他の関連因子によって異なる。量は、ルーチンの試験により決定することができる比較的広い範囲に入ると予想される。例えば、がん細胞の成長を阻害するために用いるPSA脱N−アセチラーゼ阻害剤の量は、対象にとって不可逆的に有毒となりかねない量(すなわち、最大耐量)より多くない。他の例において、量は、毒性閾値の近くまたはそれを十分に下回るが、阻害濃度範囲内にあるか、または閾値用量程度に低い。
【0053】
個別の用量は、対象に対する測定可能な効果をもたらすのに必要な量より一般的に少なくなく、PSA脱N−アセチラーゼ阻害剤の吸収、分布、代謝および排泄(「ADME」)に関する薬物動態および薬理に基づいて、また対象における化合物の生体内運命に基づいて決定することができる。これは、投与経路ならびに局所(主として局所的効果を得るために作用が望まれる部位に直接適用する)、経腸(消化管の一部に保持されているときに全身または局所効果を得るために消化管を経て適用する)または非経腸(全身または局所効果を得るために消化管以外の経路により適用する)適用について調節することができる用量の考慮を含む。
対象における化合物の生体内運命ならびにその対応する生物学的活性は、一般的に問題とする標的に存在するPSA脱N−アセチラーゼ阻害剤の画分について評価する。例えば、一旦投与した阻害剤は、がん細胞およびがん組織中に阻害剤物質を濃縮させるポリシアル酸、複合糖質または他の生物学的標的の成分として蓄積することができる。したがって、問題とする標的に時間の経過とともに蓄積するように化合物を投与する投与計画は、より低い個別用量を考慮する戦略の一部であり得る。これは、in vivoでより緩やかに除去される化合物の用量はin vitroアッセイから計算される阻害濃度と比較して低くすることができることも意味する(例えば、in vitroでの有効量はmM濃度に近く、in vivoでのmM濃度より低い)。
例として、用量または投与計画の有効量は、所定のPSA脱N−アセチラーゼ阻害剤のIC50から判断することができる。「IC50」とは、in vitroで50%の阻害に必要な薬物の濃度を意味する。あるいは、有効量は、所定のPSA脱N−アセチラーゼ阻害剤のEC50から判断することができる。「EC50」とは、in vivoでの最大効果の50%を得るのに必要な血漿濃度を意味する。
【0054】
一般的に、本開示の阻害剤に関して、有効量は、通常計算IC50の200倍以下である。一般的に、投与するPSA脱N−アセチラーゼ阻害剤の量は、計算IC50より約200倍より少なく、約150倍より少なく、約100倍より少なく、多くの実施形態で約75倍より少なく、約60倍、50倍、45倍、40倍、35倍、30倍、25倍、20倍、15倍、10倍より少なく、約8倍または2倍より少ない。1つの実施形態において、有効量は、計算IC50の約1倍〜50倍であり、時として計算IC50の約2倍〜40倍、約3倍〜30倍または約4倍〜20倍である。他の実施形態において、有効量は、計算IC50と同じであり、特定の実施形態において、有効量は、計算IC50より大きい量である。
他の実施形態において、有効量は、計算EC50の100倍以下である。例えば、投与するPSA脱N−アセチラーゼ阻害剤の量は、計算EC50より約100倍より少なく、約50倍より少なく、約40倍、35倍、30倍または25倍より少なく、多くの実施形態で約20倍より少なく、約15倍より少なく、約10倍、9倍、9倍、7倍、6倍、5倍、4倍、3倍、2倍または、1倍より少ない。1つの実施形態において、有効量は、計算EC50の約1倍〜30倍であり、時として計算EC50の約1倍〜20倍、または約1倍〜10倍である。他の実施形態において、有効量は、計算EC50と同じであり、特定の実施形態において、有効量は、計算EC50より大きい量である。
【0055】
有効量は、アッセイから、安全性ならびに漸増および用量設定試験、個々の臨床医・患者関係、ならびに本明細書に記載し、下の実験の項に示すようなin vitroおよびin vivo試験から実験的に容易に決定することができる。
上で示したように、対象となる方法の他の特徴は、PSA脱N−アセチラーゼ阻害剤を1つまたは複数の他の療法と併用して対象に投与することができることである。例えば、PSA脱N−アセチラーゼ阻害剤組成物の投与以外の療法または処置を、PSA脱N−アセチラーゼ阻害剤と同時からその前または後の5時間またはそれ以上の時点まで、例えば、10時間、15時間、20時間またはそれ以上の時点までのいずれかの時点に適用することができる。特定の実施形態において、PSA脱N−アセチラーゼ阻害剤ならびに他の治療的介入は、例えば、PSA脱N−アセチラーゼ阻害剤を他の治療処置の前または後に投与する場合、連続的に投与または適用する。さらに他の実施形態において、阻害剤と他の療法を同時に適用し、例えば、PSA脱N−アセチラーゼ阻害剤と第2の療法を同時に適用する場合、例えば、第2の療法が薬物であるとき、それは、PSA脱N−アセチラーゼ阻害剤とともに2つの別個の製剤として、または対象に投与する単一組成物に配合して投与することができる。上で示したように連続的または同時に投与するかどうかに関係なく、治療薬は、一緒または組み合わせて投与されるとみなされる。
【0056】
本方法に用いることができ、対象となる組成物に存在するPSA脱N−アセチラーゼ阻害剤は、がん細胞の成長に作用を及ぼすように、PSA脱N−アセチラーゼを阻害する適切な特異性および効力を有するものを含むが、それに限定されない。それとして、高い特異性および効力を有するPSA脱N−アセチラーゼの阻害剤は、望まない副作用および毒性を最小限にすると同時に、化合物が細胞の増殖を変化させるという意図する最終結果を達成する助けとなる。言い換えると、本開示の方法および組成物に用いるPSA脱N−アセチラーゼ阻害剤は、対象となるPSA脱N−アセチラーゼ阻害剤ががん細胞の成長を阻害することができる限り、下の実施例の項で開示するものと同じである必要はない。したがって、当業者は、PSA脱N−アセチラーゼ阻害剤の活性に実質的に影響を与えることなく、多くの誘導体(下でより詳細に述べる)を製造することができることを認識するであろう。これは、薬学的に許容される塩(例えば、塩酸、硫酸塩)、溶媒和物(例えば、混合イオン性塩、水、有機物質)、水和物(例えば、水)およびそのプロドラッグ形(例えば、エステル、アセチル形)、アノマー(例えば、α/β変旋光)、互変異性体(例えば、ケト−エノール互変異性)および立体異性体(例えば、α−D−異性体)の阻害剤組成物を含む。これはまた、アジュバント、担体などの1つまたは複数の免疫原性賦形剤を含む様々な阻害剤組成物ならびにアジュバントまたは他の免疫原性賦形剤を本質的に含まない非免疫原性阻害剤組成物を含む。
特に重要なPSA脱N−アセチラーゼ阻害剤は、PSA脱N−アセチラーゼの基質阻害剤である。それとして、PSA脱N−アセチラーゼに基質阻害剤が結合することによって、酵素(または酵素複合体)がその通常の反応を触媒することを阻止することができる。阻害結合は、可逆性か不可逆性かのいずれかである。本開示の不可逆性阻害剤は、酵素と反応して、それを化学的に変化させる(例えば、共有結合による自殺阻害剤)。これらの阻害剤は、PSA脱N−アセチラーゼの酵素活性に必要な重要なアミノ酸残基を修飾する。これに対して、可逆性阻害剤は、非共有結合により結合し、これらの阻害剤が酵素、酵素−基質複合体または両方に結合するかどうかによって異なる種類の阻害が生成する。他の可逆性阻害剤は、酵素複合体、中間体または経路成分の一部に結合し、基質に対して直接的または間接的に競合し、それにより、PSA脱N−アセチラーゼ活性を変化させる。PSA脱N−アセチラーゼ阻害剤は、意図する最終結果を達成するいずれかの種類の阻害剤を含み得る。
【0057】
特定の実施形態において、対象となる方法は、アミノ糖のN−置換誘導体であるPSA脱N−アセチラーゼ基質阻害剤を用いる。特定の実施形態において、基質阻害剤は、N−置換アミノ糖の単量体である。他の特定の実施形態において、基質阻害剤は、N−置換ヘキソサミンまたはノイラミン酸である。他の特定の実施形態において、ヘキソサミンは、マンノサミン、グルコサミンまたはガラクトサミンのN−置換誘導体である。
結合体も考慮する。PSA脱N−アセチラーゼ阻害剤は、阻害剤に追加の特性を付与する1つまたは複数の様々な第2の分子と結合させることができる。例えば、アミノ糖のN−置換誘導体は、2つまたはそれ以上の分子の結合体であってよい。そのように、1つの実施形態において、阻害剤は、結合体を含む。他の分子に結合された阻害剤の利点は、追加の所望の特性を付与するために結合体の第2の分子の特性を活用すると同時に、阻害活性を保持することができることである。例えば、阻害剤は、溶解、保存もしくは他の取扱特性、細胞透過性、半減期を促進し、特定の細胞(例えば、ニューロン、白血球など)または細胞位置(例えば、リソソーム、エンドソーム、ミトコンドリアなど)、組織もしくは他の身体位置(例えば、血液、神経組織、特定の臓器など)を標的とすることなどによって放出および/または分布を調節するペプチド、ポリペプチド、脂質、炭水化物などの第2の分子と結合させることができる。他の例としては、検定、追跡などに用いるために色素、発蛍光団または他の検出可能な標識またはリポーター分子の結合体が挙げられる。
【0058】
より具体的には、本明細書で述べるPSA脱N−アセチラーゼ阻害剤は、N−ラウロイル、N−オレオイルなどのN−脂肪アシル基、ドデシルアミン、オレイルアミンなどの脂肪アミンなどを含む脂質部分の結合(例えば、米国特許第6,638,513号)のように、ペプチド、ポリペプチド、色素、発蛍光団、核酸、炭水化物、脂質などの第2の分子と結合させることができる(例えば、還元または非還元端において)。特定の実施形態において、結合体は、基質阻害剤の単量体を含む。したがって、結合体は、(1)アミノ糖の単量体であるPSA脱N−アセチラーゼ基質阻害剤を含む第1の分子、および(2)アミノ糖単量体を含まない第2の分子からなっていてよい。ポリマーPSA結合体も含まれる。「ポリマーPSA結合体」とは、PSA脱N−アセチラーゼ阻害剤の1つまたは複数の単量体からなるポリマーを意味する。結合体は、ポリマーPSA結合体を含む非免疫原性組成物であってよい。「非免疫原性組成物」とは、アジュバントまたは他の免疫原性賦形剤をまったくまたはほとんど誘発しない(例えば、本質的に欠ける)組成物を意味する。deNAcSAエピトープが欠けているPSA脱N−アセチラーゼ阻害剤の結合体も含まれる。したがって、PSA脱N−アセチラーゼ基質阻害剤の結合体は、deNAcSAエピトープが欠落しているものであってよい。
【0059】
「deNAcSAエピトープ」は、(i)1つまたは複数の残基が脱N−アセチルノイラミン酸残基であるポリシアル酸に対する抗体との最大交差反応性を有し、(ii)非がん哺乳類細胞、例えば、ヒト細胞表面上に特に提示されているとき、正常なポリシアル酸に対する抗体との交差反応性をわずかないしまったく有さない。したがって、最小のdeNAcSAエピトープは、1つまたは両残基がC5アミノ位に遊離アミンを含むシアル酸残基の二糖であり、2つの残基のうちの1つが脱N−アセチル化されている場合、第2の残基は、N−アセチル基を含む(しかし、いくつかの実施形態において、N−プロピオニル基でない)。この最小のエピトープを定義する二糖単位は、シアル酸残基の還元端、非還元端またはポリマー内(例えば、多糖内)に存在していてよい。N−アセチル化残基を含むPSAの状況における脱N−アセチル化残基は、免疫原性であり、deNAcSAエピトープと反応性である抗体を誘発するが、ヒトPSA抗原と極わずかに反応性であるか、または検出できるほど反応性でない。例えば、脱N−アセチル化NmB多糖エピトープは、Granoffら、1998年、J Immunol、160巻、5028頁(抗N−PrNmBPSmAbs)、米国特許第6,048,527号(抗NmB抗体)および米国特許第6,350,449号(抗NmB抗体)に記載されているマウス抗N−プロピオニル髄膜炎菌グループB(N−PrNmB)多糖mAb(モノクローナル抗体)であるSEAM3を用いて同定された。
【0060】
特定の具体例としての実施形態において、対象となる結合体は、非結合型阻害剤と比較して細胞取込みを変化させる。関連実施形態において、PSA脱N−アセチラーゼ阻害剤結合体は、非結合型阻害剤と比較して細胞取込みを増加させる。他の実施形態において、該結合体は、非結合型阻害剤と比較して細胞取込みを減少させる。この態様において、細胞取込みの効率は、エンドサイトーシスを促進するペプチドまたはタンパク質に結合することによって増加または減少させることができる。例えば、所定のPSA脱N−アセチラーゼ阻害剤は、エンドサイトーシスメカニズムによりより容易に包み込まれる標的受容体または大分子に対する抗体のようなリガンドに結合させることができる。抗体または他のリガンドは、エンドサイトーシスによりインターナライズされ、エンドサイトーシス小胞がリソソームに融合するときに、酸加水分解または酵素活性によりペイロードが放出される。したがって、結合体は、非結合基質阻害剤と比較してエンドサイトーシスを増加させるものであることができる。細胞取込みを減少させるために、結合体は、細胞取込みに対する調節として有用であり得る、細胞の表面上に阻害剤を保持する、あるいは場合によって、1つの細胞型における取込みを減少させるが、他における取込みを増加させるリガンドを含んでいてよい。特定の例において、N−置換アミノ糖由来阻害剤の受動的輸送は、例えば、アセチル基を有するアミノ糖のOH基をアセチル化することによって促進することができる(Collinsら、Glycobiology、2000年、10巻、10頁)。また、ヒト細胞の表面上にN−アシルマンノサミンおよびN−アシルノイラミン酸(またはポリN−アシルノイラミン酸)の既知の輸送体が存在しないとしても、すべてが、エンドサイトーシス、例えば、受容体媒介性エンドサイトーシス、非受容体媒介性エンドサイトーシス、またはピノサイトーシスによって細胞に入ることができる(Bardorら、J.Biol.Chem.、2005年、280巻、4228頁)。エンドサイトーシス小胞は、N−アセチルヘキソサミンおよびN−アセチルノイラミン酸の膜輸送体を含むリソソームと融合する(N−アセチルヘキソサミン輸送体の基質/輸送体複合体を形成するためのミカエリス定数Kmは4.4mMであり、N−アセチルノイラミン酸のそれは約0.5mMである(「Essentials of Glycobiology」、Varkiら編、Cold Spring Harbor Press、NY、1999年)。したがって、結合による阻害剤の修飾は、細胞取込みのためのエンドサイトーシスシステムを活用することができる。
【0061】
他の実施形態は、本明細書で開示するPSA脱N−アセチラーゼ阻害剤の1つまたは複数の単量体の凝集体を含む組成物である。「凝集体」とは、分子の個々の単量体の凝集複合体を含み、複合体の個々の単量体の分子量の倍数である複合分子量を有する粒子を意味する。例えば、PSA脱N−アセチラーゼ阻害剤の1つまたは複数の単量体の凝集体は、凝集単量体複合体中の個々の単量体の分子量の10倍以上の粒子分子量を有する凝集複合体を含む。これは、約50000を超え、約250000ダルトン超まで、500000ダルトン超まで、750000ダルトン超まで、1000000ダルトン超までの、例えば、標準的低倍率光学顕微鏡下(例えば、40倍)での光学顕微鏡観察により容易に見ることができる均一粒径を有する粒子に至るまでの分子量を有する粒子を有する凝集体を含む。
したがって、凝集体は、分子または顕微鏡的粒子であってよい。顕微鏡的粒子の場合、所望の用途に最適な凝集体は、例えば、1μm〜20μm、通常、目的とする物質の曝露および取込みのための標的とする細胞の直径に近いか、それより小さい(例えば、細胞は直径が1〜20μmである)、平均凝集体径を変化させることによって選択することができる。非可視分子粒子ならびに顕微鏡的粒子の場合、望ましい凝集体は、細胞による取込みおよびインターナリゼーションを測定することによって選択することができる。各場合に、PSA脱N−アセチラーゼ阻害剤の凝集体は、互いに、対照とおよび/または両方と比較したとき、非凝集阻害剤より十分に細胞によって取り込まれ、インターナライズされる能力(細胞成長の阻害により測定されるものを含む)がある。
【0062】
凝集体は、1つまたは複数のPSA脱N−アセチラーゼ阻害剤の単量体を凝集条件下で混合することにより、ポリマーPSA結合体の凝集条件下での分解または加水分解により、あるいはその組合せにより形成させることができる。「凝集条件」とは、さもなければ可溶性の物質に溶液中で凝集物質を形成させる化学的物理的条件を意味する。例えば、ポリα(2→8)N−置換ノイラミン酸のようなポリマーPSA結合体は、エキソノイラミニダーゼにより処理し、凝集体を形成するように適切な時間(例えば、1時間から一夜)にわたって加熱することができる(例えば、30℃〜70℃)。エキソノイラミダーゼによる処理により、加熱するとき凝集して細胞により容易に取り込まれる粒子を形成する非還元端脱N−アセチル残基が富化される。これは、目的とする物質の凝集を促進することができる1つまたは複数の賦形剤の添加も含む。水酸化アルミニウムなどの凝集物質が特に重要である。
対象とする結合体の他の特徴は、結合体が非結合型阻害剤と比較して毒性を減少させる特徴を含み得る。さらなる実施形態において、結合体は、非結合型阻害剤と比較してがん細胞を標的とする。さらなる例は、補完し、増強し、増大させ、または他の仕方で阻害剤とともに相乗作用的に働くことができる1つまたは複数の分子とPSA脱N−アセチラーゼ阻害剤の結合体を含む。例えば、PSA脱N−アセチラーゼ阻害剤は、腫瘍の殺滅または除去をさらに促進するためにがん細胞の部位への送達のための抗がん薬、例えば、抗増殖部分(例えば、VEGFアンタゴニスト、例えば、抗VEGF抗体)、毒素(例えば、抗がん毒素、例えば、リシン、シュードモナス外毒素Aなど)、放射性核種(例えば、90Y、131I、177L、ホウ素中性子捕獲用10Bなど)、抗がん薬(例えば、ドキソルビシン、カリケアマイシン、マイタンシノイドDM1、オーリスタチン・カウペシタビン、5−フルオロウリシル、ロイコボリン、イリノテルカンなど)を場合によって付加させておくことができ、かつ/または薬物動態プロファイルの改善をもたらすために場合によって修飾することができる(例えば、ペグ化(PEGylation)、高グリコシル化などにより)。
【0063】
上で示したように、ヘキソサミンおよびノイラミン酸由来のPSA脱N−アセチラーゼ基質阻害剤が特に重要である。特定の実施形態において、PSA脱N−アセチラーゼ阻害剤は、以下の式(I)のN−置換ヘキソサミン化合物、および以下の式(II)のN−置換ノイラミン酸化合物:
【化5】

またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、水和物およびプロドラッグ、そのアノマー、互変異性体および立体異性体である。式(I)および(II)において、−NH−Rおよび−NH−R’は、前記PSA脱N−アセチラーゼによって触媒されるアミド結合加水分解反応の阻害剤を含み、各R、R’、R’、R、R、R’、R、R’、R’およびR’は、独立に水素またはヘテロ原子、アルキル、アリール、シクロアルキル、ヘテロアリール、アルケニル、アシル、スルホニル、炭水化物、脂質、核酸、ペプチド、色素、発蛍光団およびポリペプチドからなる群から選択される置換もしくは非置換部分である。
【0064】
したがって、特定の実施形態において、式(I)または(II)の化合物ならびに−NH−Rおよび−NH−R’は、PSA脱N−アセチラーゼによって触媒されるアミド結合加水分解反応の阻害剤を含む。「PSA脱N−アセチラーゼによって触媒されるアミド結合加水分解反応の阻害剤」とは、PSA脱N−アセチラーゼによる切断および除去に抵抗性のあるアミド結合模倣物質または類似体を意味する。例えば、アミノヒドラーゼの天然基質からのN−アセチル基の除去の酵素的メカニズムは、アミドカルボニル基上の酵素活性部位における求核体による攻撃により促進され、四面体中間体の形成と崩壊に続くアミド結合の切断をもたらす。また、すべての化学的変換が基質および生成物の化学構造の間で平衡状態にある遷移状態と呼ばれる不安定な構造を通る。酵素触媒作用の受入れられている認識は、不安定な遷移状態構造に対する強固な結合である。したがって、変換状態を阻害する阻害剤(「遷移状態阻害剤」)についても、それらは遷移状態種の結合エネルギーの一部を獲得することにより酵素に強固に結合し、天然基質の生成物への変換を妨げまたは抑制する(例えば、Schramm、VL(1998年)、AnnuRev Biochem、67巻、693〜720頁)ので、本開示により考慮する。
【0065】
したがって、本開示のPSA脱N−アセチラーゼの特異的阻害剤は、PSA脱N−アセチラーゼにより触媒されるアミド結合加水分解反応を阻害するものを含む。それらは、一般的に基質阻害剤ならびに特異的遷移状態阻害剤を含む。特に重要なものは、メチルアセトアミド(すなわち、天然基質上のN−アセチル基)の幾何学的および化学的特徴を近似し、それにより酵素基質結合部位に適合し、崩壊させる−NH−Rおよび−NH−R’部分である。例としては、求核物質と反応性を有する(例えば、アクリル、メタクリル、ハロアセチル)または四面体中間体の構造を模倣する(例えば、メタンスルホニル、ジおよびトリハロアセチル)成分を含む−NH−Rおよび−NH−R’部分が挙げられる。
さらなる−NH−Rおよび−NH−R’部分、ならびに具体的には、本開示の方法および組成物に用いるためのRおよびR’基は、カルバマート、アミド、N−アルキルおよびN−アリールアミン、イミン誘導体、エナミン誘導体、N−スルホニルなどを含むが、これらに必ずしも限定されない。さらなる具体例としてのRおよびR’基は、ホルミル、トリフルオロアセチル、フタリルおよびp−トルエンスルホニルなどのアシル型、ベンジルオキシカルボニル(Cbz)および置換ベンジルオキシカルボニル、1−(p−ビフェニル)−1−メチルエトキシカルボニルならびに9−フルオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc)などの芳香族カルバマート型、tert−ブチルオキシカルボニル(tBoc)、エトキシカルボニル、ジイソプロピルメトキシカルボニルおよびアリルオキシカルボニルなどの脂肪族カルバマート型、シクロペンチルオキシカルボニルおよびアダマンチルオキシカルボニルなどの環状アルキルカルバマート型、トリフェニルメチルおよびベンジルなどのアルキル型、トリメチルシランなどのトリアルキルシラン、ならびにフェニルチオカルボニルおよびジチアスクシノイルなどのチオール含有型を含むが、これらに必ずしも限定されない。目的とするさらなる具体例としてのRおよびR’基は、モノ、ジおよびトリハロアセチルなどのハロアセチル(例えば、トリハロアセチルおよびトリハロプロピオニル基(例えば、トリクロロアセチル、トリフルオロアセチル、トリクロロプロピオニル、トリフルオロプロピオニル)などのトリハロアシル基))などである。
【0066】
特に重要な化合物は、RおよびR’がハロアセチル、アシルおよびスルホニルから選択される、式(I)または式(II)の化合物である。特定の実施形態において、式(I)または式(II)の化合物は、RおよびR’が−C(O)CHF、−C(O)CHCl、−C(O)CHBr、−C(O)CHI、−C(O)CHF、−C(O)CHCl、−C(O)CHBr、−C(O)CF、−C(O)CClおよび−C(O)CBrから選択される遊離基であるハロアセチルであり、RおよびR’が−C(O)CH=CHおよび−C(O)C(=CH)(CH)から選択される遊離基であるアシルであり、またRおよびR’が−S(=O)(CH)から選択される遊離基であるスルホニルであるものである。
特定の実施形態において、化合物は式(I)の化合物であり、R、R’、R’、R、R、R’、R、R’、R’およびR’は、それぞれ独立に水素、C〜C18アルキル、C〜C18アルケニルまたはC〜C18アシルであり、アルキル、アルケニルまたはアシルは、線状または分枝状であり、ヒドロキシル、エステルおよびその誘導体、カルボキシルおよびその誘導体、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アラルキル、ヘテロ原子で場合によって置換されており、おそらく窒素、酸素および硫黄などの鎖内または架橋ヘテロ原子を含む。
【0067】
例えば、R、R’、R’、R、R、R’、R、R’、R’およびR’の1つまたは複数のものが、飽和または不飽和アシル基を含むアシル基を含む場合、それらは通常、飽和または不飽和C2−18アシル基、飽和または不飽和C2−16アシル基、飽和または不飽和C2−12アシル基、飽和または不飽和C2−10アシル基、飽和または不飽和C2−8アシル基、飽和または不飽和C2−6アシル基、飽和または不飽和C2−4アシル基、あるいは飽和C2−4アシル基である。飽和アシル基は、本明細書で用いているように、飽和アルキル基に結合しているカルボニルを意味し、不飽和アシル基は、本明細書で用いているように、不飽和アルキル基に結合しているカルボニルを意味する。いくつかの実施形態において、不飽和アシル基が特に重要である。
【0068】
特に重要なものとして挙げられるものは、表1に示す化合物である。
【表1】

【0069】
他の特定の実施形態において、阻害剤化合物は、表2に示すものである。
【表2】

【0070】
特定の実施形態において、式(I)のヘキソサミン化合物は、以下の式(III)のマンノサミン化合物、以下の式(IV)のガラクトサミン化合物、または以下の式(V)のグルコサミン化合物から選択される。
【化6】

式中、各R、R、R、RおよびRは、式(I)および式(II)について上で定義した通りである。
【0071】
特に重要なものとして挙げられるものは、化合物が式(III)のマンノサミン化合物、式(IV)のガラクトサミン化合物、または式(V)のグルコサミン化合物である、PSA脱N−アセチラーゼ阻害剤であり、各R、R、RおよびRは、水素および置換または非置換アシルから独立に選択される。
他の実施形態において、化合物は、式(III)のマンノサミン化合物、式(IV)のガラクトサミン化合物、または式(V)のグルコサミン化合物であり、各Rは、−C(O)CH=CH、−C(O)C(=CH)(CH)、−C(O)CHF、−C(O)CHCl、−C(O)CHBr、−C(O)CHI、−S(=O)(CH)、−C(O)CHF、−C(O)CHCl、−C(O)CHBr、−C(O)CF、−C(O)CClおよび−C(O)CBrからなる群の遊離基から独立に選択される。
【0072】
特定の実施形態において、化合物は、式(III)のマンノサミン化合物、式(IV)のガラクトサミン化合物、または式(V)のグルコサミン化合物であり、各R、R、RおよびRは、水素および置換または非置換アシルから独立に選択され、各Rは、−C(O)CH=CH、−C(O)C(=CH)(CH)、−C(O)CHF、−C(O)CHCl、−C(O)CHBr、−C(O)CHI、−S(=O)(CH)、−C(O)CHF、−C(O)CHCl、−C(O)CHBr、−C(O)CF、−C(O)CClおよび−C(O)CBrからなる群の遊離基から独立に選択される。
【0073】
特に重要なものとして挙げられるものは、表3に示すPSA脱N−アセチラーゼ阻害剤である。
【表3】

【0074】
上で示したように、特定の実施形態において、本開示は、本明細書で開示したPSA脱N−アセチラーゼ阻害剤の2つまたはそれ以上の単量体単位を含むポリマーPSA結合体を特徴とする。特に重要なものは、1つまたは複数のN−置換ノイラミン酸残基を含むポリマーPSA結合体である。特定の例は、式IIIのポリα(2→8)N−置換ノイラミン酸であり、R’、R’、R’、R’、R’、R’およびR’は、上で定義した通りであり、nは正の整数である。
【化7】

したがって、式IIIのポリα(2→8)N−置換ノイラミン酸は、PSA脱N−アセチラーゼを阻害する(または阻害剤に変換される)ことができる1つまたは複数のN−置換ノイラミン酸残基からなっている。ポリα(2→8)N−置換ノイラミン酸誘導体は、シアリダーゼによる加水分解または処理による式IIのN−置換ノイラミン酸誘導体への変換のための前駆体としての本開示における特定の用途を見いだすものである。例えば、化合物が式IIIの化合物であり、n=0である場合、化合物は式IIの化合物である。式IIによるN−置換ノイラミン酸誘導体の単量体形は、N−アシルヘキソサミン輸送体よりも低いKmを有する特異的輸送体により取り込まれるので、より良好である可能性がある。また、N−置換ノイラミン酸誘導体は、新たに合成されたPSAに組み込むことができるが、ポリマーPSA結合体は、複合糖質に直接付加することができる。
【0075】
目的とする特定のポリマーPSA阻害剤を表4に示す。
【表4】

【0076】
したがって、本開示の具体例としての化合物は、PSA脱N−アセチラーゼ阻害剤が、N−アクリルマンノサミン、N−アクリルガラクトサミン、N−アクリルグルコサミン、N−メタクリルマンノサミン、N−メタクリルガラクトサミン、N−メタクリルグルコサミン、N−フルオロアセチルマンノサミン、N−フルオロアセチルガラクトサミン、N−フルオロアセチルグルコサミン、N−クロロアセチルマンノサミン、N−クロロアセチルガラクトサミン、N−クロロアセチルグルコサミン、N−ブロモアセチルマンノサミン、N−ブロモアセチルガラクトサミン、N−ブロモアセチルグルコサミン、N−ヨードアセチルマンノサミン、N−ヨードアセチルガラクトサミン、N−ヨードアセチルグルコサミン、N−メタンスルホニルマンノサミン、N−メタンスルホニルガラクトサミン、N−メタンスルホニルグルコサミン、N−ジフルオロアセチルマンノサミン、N−ジフルオロアセチルガラクトサミン、N−ジフルオロアセチルグルコサミン、N−ジクロロアセチルマンノサミン、N−ジクロロアセチルガラクトサミン、N−ジクロロアセチルグルコサミン、N−ジブロモアセチルマンノサミン、N−ジブロモアセチルガラクトサミン、N−ジブロモアセチルグルコサミン、N−トリフルオロアセチルマンノサミン、N−トリフルオロアセチルガラクトサミン、N−トリフルオロアセチルグルコサミン、N−トリクロロアセチルマンノサミン、N−トリクロロアセチルガラクトサミン、N−トリクロロアセチルグルコサミン、N−トリブロモアセチルマンノサミン、N−トリブロモアセチルガラクトサミンおよびN−トリブロモアセチルグルコサミンから選択されるN−置換ヘキソサミン、または薬学的に許容されるその塩、溶媒和物、水和物およびプロドラッグ形、そのアノマー、互変異性体および立体異性体、ならびにその誘導体を含むものである。
他の具体例としての化合物は、PSA脱N−アセチラーゼ阻害剤が、N−アクリルノイラミン酸、N−メタクリルノイラミン酸、N−フルオロアセチルノイラミン酸、N−クロロアセチルノイラミン酸、N−ブロモアセチルノイラミン酸、N−ヨードアセチルノイラミン酸、N−メタンスルホニルノイラミン酸、N−ジフルオロアセチルノイラミン酸、N−ジクロロアセチルノイラミン酸、N−ジブロモアセチルノイラミン酸、N−トリフルオロアセチルノイラミン酸、N−トリクロロアセチルノイラミン酸およびN−トリブロモアセチルノイラミン酸からなる群から選択されるN−置換ノイラミン酸、または薬学的に許容されるその塩、溶媒和物、水和物およびプロドラッグ形、そのアノマー、互変異性体および立体異性体、ならびにその誘導体を含むものである。
【0077】
ポリマーPSA阻害剤を具現する化合物は、ポリα(2→8)N−アクリルノイラミン酸、ポリα(2→8)N−メタクリルノイラミン酸、ポリα(2→8)N−フルオロアセチルノイラミン酸、ポリα(2→8)N−クロロアセチルノイラミン酸、ポリα(2→8)N−ブロモアセチルノイラミン酸、ポリα(2→8)N−ヨードアセチルノイラミン酸、ポリα(2→8)N−メタンスルホニルノイラミン酸、ポリα(2→8)N−ジフルオロアセチルノイラミン酸、ポリα(2→8)N−ジクロロアセチルノイラミン酸、ポリα(2→8)N−ジブロモアセチルノイラミン酸、ポリα(2→8)N−トリフルオロアセチルノイラミン酸、ポリα(2→8)N−トリクロロアセチルノイラミン酸およびポリα(2→8)N−トリブロモアセチルノイラミン酸、または薬学的に許容されるその塩、溶媒和物、水和物およびプロドラッグ形、そのアノマー、互変異性体および立体異性体、ならびにその誘導体からなる群から選択されるものである。
本開示のPSA脱N−アセチラーゼ阻害剤化合物は、立体異性体、立体異性体の混合物を含む単一異性体およびその混合物、ならびにアノマーおよび/または互変異性体の平衡混合物として存在し得るその様々な誘導体を含む組成物中に存在していてよい。例えば、式(I)によるN−置換ヘキソサミンは、示すD立体配置に加えて、αおよびβアノマーを含むピラノース環に関する3つの立体中心を含む。本開示の化合物の立体異性体の例は、α−D−異性体、α−L−異性体、β−D−異性体およびβ−L−異性体、ならびにα,β−D−異性体、α,β−L−異性体、α−DL−異性体およびβ−DL−異性体を含む互変異性体および混合物などである。したがって、1つの実施形態において、α−D−異性体、α−L−異性体、β−D−異性体およびβ−L−異性体であるN−置換ヘキソサミンの立体異性体から本質的になる組成物を提供する。
【0078】
PSA脱N−アセチラーゼ活性の阻害に関するモル基準での活性の改善または特異性の改善を示す異性体は、本開示における具体的な特徴となっている。特に重要なものは、細胞成長の阻止、細胞生存能の低下および/またはアポトーシスの誘発に関するモル基準での活性の改善または特異性の改善を示すPSA脱N−アセチラーゼ阻害剤の様々な異性体である。例としては、β−D−マンノサミン、β−D−ガラクトサミンおよびβ−D−グルコサミンと比較した、α−D−マンノサミン、α−D−ガラクトサミンおよびα−D−グルコサミンなどの本開示のN−置換α−D−ヘキソサミン誘導体などが挙げられる。他の例は、N−置換アノマーαβ−D−マンノサミン、αβ−D−ガラクトサミンおよびαβ−D−グルコサミンなどの立体異性体の混合物である。そのような化合物は、下の実験の項で述べるような異性体試験化合物のマトリックスに対する比較、および種々のがん細胞株を用いた細胞を用いる検定により、この目的のために容易に選択することができる。
本開示はまた、本明細書で開示したPSA脱N−アセチラーゼ阻害剤のプロドラッグを含む。そのようなプロドラッグは、一般的にin vivoで必要な化合物に容易に変換できる化合物の機能的誘導体である。したがって、本開示の方法において、「投与」という用語は、具体的に開示されている化合物、または具体的に開示されていない可能性があるが、それを必要とする対象に投与した後にin vivoで指定の化合物に変換する化合物を投与することを含む。適切なプロドラッグ誘導体の選択および調製の通常の手順は、Wermuth、「Designing Prodrugs and Bioprecursors」、Wermuth編、The Practice of Medicinal Chemistry、第2版、561〜586頁(Academic Press 2003年)に記載されている。プロドラッグとしては、本開示の方法および組成物に適する本明細書で述べた化合物を生成させるためにin vivo(例えば、ヒト体内で)で加水分解するエステルが挙げられる。適切なエステル基は、各アルキルまたはアルケニル部分が6個以下の炭素原子を有する、薬剤学的に許容できる脂肪族カルボン酸、特にアルカン、アルケン、シクロアルカンおよびアルカン二酸由来のものが制限なしに挙げられる。実例としてのエステルは、ギ酸エステル、酢酸エステル、プロピオン酸エステル、酪酸エステル、アクリル酸エステル、クエン酸エステル、コハク酸エステルおよびエチルコハク酸エステルなどである。
【0079】
所定のPSA脱N−アセチラーゼ阻害剤またはその結合体が本開示による使用に適しているか否かは、下の実験の項で用いるような様々な阻害剤アッセイを用いて容易に判断することができる。下の実験の項で述べるような細胞を用いるアッセイを用いて検討したとき、標的細胞の成長を、正常対照細胞と比較して少なくとも約2〜10倍、通常少なくとも約50倍、時として少なくとも約100倍〜200倍阻害する場合、一般的にPSA脱N−アセチラーゼ阻害剤は、対象となる方法に使用するのに適している。特定の実施形態において、PSA脱N−アセチラーゼ阻害剤は、下の実験の項で述べる細胞を用いるアッセイにおいて観察されるような、標的細胞(特定のがん細胞または細胞株)の生存能を低下させ、標的細胞の成長を阻止し、かつ/またはアポトーシスを誘発し、かつ/または細胞死を誘発するものである。
【0080】
製造方法
PSA脱N−アセチラーゼ阻害剤およびその誘導体は、本明細書および実施例に記載するものを含む、当業者に知られている技術により従来通り調製することができる。様々な合成アプローチ、中間体、前駆体、分析ならびに結合体の合成および調製、診断などを記載している代表的参考文献は、その開示が参照により本明細書に組み込まれている、米国特許第4,315,074号、第4,395,399号、第4,719,289号、第4,806,473号、第4,874,813号、第4,925,796号、第5,180,674号、第5,246,840号、第5,262,312号、第5,278,299号、第5,288,637号、第5,369,017号、第5,677,285号、第5,780,603号、第5,876,715号、第6,040,433号、第6,133,239号、第6,242,583号、第6,271,345号、第6,323,339号、第6,406,894号、第6,476,191号、第6,538,117号、第6,797,522号、第6,927,042号、第6,953,850号、第7,067,623号および第7,129,333号を含んでいる。開示が参照により本明細書に組み込まれている、次の参考文献も参照のこと:「Solid Support Oligosaccharide Synthesis and Combinatorial Carbohydrate Libraries」、Peter H.Seeberger編、Wiley−Interscience、John Wiley & Sons,Inc.、NY、2001年、Planteら、Science(2001年)、291巻(5508号)、1523頁、Marcaurelleら、Glycobiology、2002年、12巻(6号)、69R〜77R頁、Searsら、Science(2001年)、291巻、2344〜2350頁、Bertozziら、Chemical Glycobiology(2001年)Science、291巻、2357〜2364頁、MacCossら、Org.Biomol.Chem.、2003年、1巻、2029頁、Liangら、Science(1996年)、274巻(5292号)、1520頁、Kayserら、J.Biol.Chem.、1992年、267巻、16934頁、Kepplerら、Glycobiology、2001年、11巻、11R頁、Luchanskyら、Meth.Enzymol.、2003年、362巻、249頁、Oetkeら、Eur.J.Biochem.、2001年、268巻、4553頁および国際公開第1997/045436号。
【0081】
PSA脱N−アセチラーゼ阻害剤およびその誘導体の薬剤学的に許容できる塩は、遊離酸を適量の薬剤学的に許容できる塩基で処理することにより調製することができる。代表的な薬剤学的に許容できる塩基は、水酸化アンモニウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化第一鉄、水酸化亜鉛、水酸化銅、水酸化アルミニウム、水酸化第二鉄、イソプロピルアミン、トリメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、エタノールアミン、2−ジメチルアミノエタノール、2−ジエチルアミノエタノール、リシン、アルギニン、ヒスチジンなどである。反応は、水中単独または不活性水混和性有機溶媒と混合した水中で約0℃〜約100℃、また室温であってよい温度で行わせる。一般構造Iの化合物と用いる塩基とのモル比は、個々の塩について望ましい比となるように選択する。例えば、遊離酸出発物質のアンモニウム塩の調製については、出発物質を約1当量の薬剤学的に許容できる塩基で処理して、中性塩を得ることができる。カルシウム塩を調製する場合、約1/2モル当量の塩基を用いて中性塩を得るが、アルミニウム塩については、約1/3モル当量の塩基を用いる。
【0082】
製剤
対象となる方法に用いられるPSA脱N−アセチラーゼ阻害剤を含む医薬組成物も提供する。「PSA脱N−アセチラーゼ阻害剤組成物」という用語は、結合体を含む、PSA脱N−アセチラーゼの阻害剤を含む組成物を一般的に指すために便宜上のこととして本明細書で用いる。PSA脱N−アセチラーゼ阻害剤組成物は、PSA脱N−アセチラーゼ阻害剤、その結合体、または両方を含んでいてよい。細胞、特に、がん細胞の成長を調節するのに有用な組成物が本開示により意図されている。
例えば、薬剤学的に許容できる塩の形のPSA脱N−アセチラーゼ阻害剤組成物は、上述のように、対象となる方法における使用のために経口、局所または非経口投与用に製剤化することができる。特定の実施形態において、例えば、PSA脱N−アセチラーゼ阻害剤を液体注射剤として投与する場合(静脈内または組織中に直接投与する実施形態におけるような)、PSA脱N−アセチラーゼ阻害剤製剤は、調製済み剤形(ready−to−use dosage form)として、または薬剤学的に許容できる担体および賦形剤を含む再構成可能な貯蔵安定性粉末もしくは液体として提供する。
【0083】
対象(例えば、ヒト対象)に投与するのに適するPSA脱N−アセチラーゼ阻害剤を製造および製剤化する方法は、当技術分野でよく知られている。例えば、PSA脱N−アセチラーゼ阻害剤は、有効な量のPSA脱N−アセチラーゼ阻害剤ならびに薬剤賦形剤(例えば、生理食塩水)を含む医薬組成物中に提供することができる。医薬組成物は、他の添加剤(例えば、緩衝剤、安定化剤、保存剤など)を場合によって含んでいてよい。有効な量のPSA脱N−アセチラーゼ阻害剤は、一般的に所望の期間にわたり対象における抗がん反応の増強をもたらすのに有効な量である。治療の目的(例えば、腫瘍負荷の低減)は、様々な投与計画に基づく単回または反復投与によって達成することができる。
例として、PSA脱N−アセチラーゼ阻害剤組成物は、従来の薬剤学的に許容できる担体および賦形剤(すなわち、媒体)と混合し、水剤、錠剤、カプセル剤、エリキシル剤、懸濁剤、シロップ剤、カシェ剤、貼付剤などの形で用いることができる。そのような医薬組成物は、特定の実施形態において、約0.1〜約90重量%の活性化合物、より一般的に約1〜約30重量%の活性化合物を含む。医薬組成物は、トウモロコシデンプンもしくはゼラチン、乳糖、デキストロース、ショ糖、結晶セルロース、カオリン、マンニトール、リン酸二カルシウム、塩化ナトリウムおよびアルギン酸などの一般的な担体および賦形剤を含んでいてよい。製剤に一般的に用いられる崩壊剤としては、クロスカルメロース、結晶セルロース、トウモロコシデンプン、デンプングリコール酸ナトリウムおよびアルギン酸などがある。
【0084】
液体組成物は一般的に、例えば、懸濁化剤、保存剤、界面活性剤、湿潤剤、着香剤または着色剤を含むエタノール、グリセリン、ソルビトール、ポリエチレングリコールなどの非水溶媒、油または水などの適切な液体担体中化合物または薬剤学的に許容できる塩の懸濁液または溶液からなっている。あるいは、液体製剤は、再構成可能な散剤から調製することができる。
例えば、活性化合物、懸濁化剤、ショ糖および甘味料を含む粉末を水で再構成して、懸濁剤を調製することができ、シロップ剤は、有効成分、ショ糖および甘味料を含む粉末から調製することができる。
錠剤の形の組成物は、固形組成物を調製するのに通常用いられる適切な薬剤担体を用いて調製することができる。そのような担体の例としては、ステアリン酸マグネシウム、デンプン、乳糖、ショ糖、結晶セルロースおよび結合剤、例えば、ポリビニルピロリドンなどがある。錠剤にカラーフィルムコーティングを施すこともでき、あるいは担体の一部として色を含めることもできる。さらに、活性化合物を、親水性または疎水性マトリックスを含む錠剤しての放出制御剤形に製剤化することができる。
【0085】
カプセル剤の形の組成物は、例えば、活性化合物および賦形剤を硬ゼラチンカプセルに封じ込めることによる、通常のカプセル化手順を用いて調製することができる。あるいは、活性化合物および高分子量ポリエチレングリコールの半固形マトリックスを調製し、硬ゼラチンカプセル中に充填することができ、あるいはポリエチレングリコール中活性化合物の溶液、または食用油、例えば、流動パラフィンもしくは分別ヤシ油中懸濁液を調製し、軟ゼラチンカプセル中に充填することができる。
含めることができる錠剤結合剤は、アラビアゴム、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリビニルピロリドン(Povidone)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ショ糖、デンプンおよびエチルセルロースである。用いることができる滑沢剤は、ステアリン酸マグネシウムもしくは他の金属のステアリン酸塩、ステアリン酸、シリコーン流体、タルク、ワックス、油およびコロイド状シリカなどである。
ペッパーミント、冬緑油、チェリーフレーバーなどの着香料も用いることができる。さらに、剤形の外観をより魅力的にしたり、製品を識別する助けとするために、着色剤を加えることが望ましいことがある。
【0086】
非経口投与したときに活性である本開示の化合物およびそれらの薬剤学的に許容できる塩は、筋肉内、硬膜下腔内または静脈内投与用に製剤化することができる。
筋肉内または硬膜下腔内投与用の一般的な組成物は、油中、例えば、ラッカセイ油またはゴマ油中有効成分の懸濁液または溶液であろう。静脈内または硬膜下腔内投与用の一般的な組成物は、例えば、有効成分およびデキストロースもしくは塩化ナトリウムまたはデキストロースおよび塩化ナトリウムの混合物を含む滅菌等張水溶液であろう。他の例は、乳酸加リンゲル注射剤、デキストロース加乳酸リンゲル注射剤、Normosol−Mおよびデキストロース、IsolyteE、アシル化リンゲル注射剤などである。場合によって、共溶媒、例えば、ポリエチレングリコール、キレート化剤、例えば、エチレンジアミン四酢酸、および抗酸化剤、例えば、メタ重亜硫酸ナトリウムを製剤に含めることができる。あるいは、溶液を凍結乾燥し、投与直前に適切な溶媒で再構成することができる。
直腸投与で活性である本開示の化合物およびそれらの薬剤学的に許容できる塩は、坐剤として製剤化することができる。一般的な坐剤は、一般的に有効成分とゼラチンまたはココアバターまたは他の低融点植物もしくは合成ワックスもしくは脂肪などの結合および/または滑沢剤とからなる。
【0087】
局所投与で活性である本明細書で開示した化合物およびそれらの薬剤学的に許容できる塩は、経皮組成物または経皮送達用具(「貼付剤」)として製剤化することができる。そのような組成物は、例えば、裏当て(backing)、活性化合物レザバー、制御膜、ライナーおよび接触粘着剤を含む。そのような経皮貼付剤は、制御された量の本開示の化合物の連続または不連続注入を行うために用いることができる。薬剤の送達のための経皮貼付剤の構成および使用は、当技術分野でよく知られている。例えば、その全体として参照により本明細書に組み込まれている米国特許第5,023,252号を参照のこと。そのような貼付剤は、薬剤の連続、拍動性または必要に応じた送達用に構成することができる。
目的とする特定の実施形態において、PSA脱N−アセチラーゼ阻害剤組成物は、単一製剤として投与する。それは、他の適切な化合物および担体を含む有効な量の他の薬剤とともに投与することもでき、また、他の実薬と併用することもできる。したがって、本開示は、薬剤学的に許容できる賦形剤を含む医薬組成物も含む。薬剤学的に許容できる賦形剤は、例えば、あらゆる適切な媒体、アジュバント、担体または希釈剤を含み、公衆が容易に入手できる。本開示の医薬組成物は、当技術分野でよく知られている他の活性薬をさらに含んでいてよい。
【0088】
当業者は、本開示の製剤を対象または宿主、例えば、それを必要とする患者に投与する様々な適切な方法が利用可能であり、特定の製剤を投与するのに複数の経路を用いることができるが、特定の経路が他の経路より迅速かつ有効な反応をもたらし得ることを理解するであろう。薬剤学的に許容できる賦形剤も当業者によく知られており、容易に入手できる。賦形剤の選択は、個々の化合物により、また組成物を投与するのに用いる個々の方法により決定する。したがって、本開示の医薬組成物の様々な適切な製剤が存在する。以下の方法および賦形剤は、単に例示するものであり、限定するものではない。
経口投与に適する製剤は、(a)水、生理食塩水またはオレンジジュースなどの希釈剤に溶解されている有効な量の化合物などの液剤、(b)それぞれあらかじめ定められた量の有効成分を固形物または顆粒として含むカプセル剤、サシェ剤または錠剤、(c)適切な液体中懸濁剤、ならびに(d)適切な乳剤からなり得る。錠剤は、乳糖、マンニトール、トウモロコシデンプン、ジャガイモデンプン、結晶セルロース、アラビアゴム、ゼラチン、コロイド状二酸化ケイ素、クロスカロメロースナトリウム、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸および他の賦形剤、着色剤、希釈剤、緩衝剤、湿潤剤、保存剤、着香剤ならびに薬剤学的に許容できる賦形剤のうちの1つまたは複数のものを含んでいてよい。トローチ剤は、着香料、通常ショ糖およびアラビアゴムもしくはトラガカント中有効成分を含んでいてよく、また、パステル剤は、ゼラチンおよびグリセリンもしくはショ糖およびアラビアゴムなどの不活性基剤中に有効成分を含み、乳剤、ゲル剤などは、有効成分に加えて、当技術分野で知られているような賦形剤を含む。
【0089】
本開示の対象となる製剤は、吸入により投与するエアゾール剤に調製することができる。これらのエアゾール剤は、ジクロロジフルオロメタン、プロパン、窒素などの許容できる加圧噴射剤中に入れることができる。それらは、噴霧器または噴霧装置用などの非加圧製剤用の薬剤として調合することもできる。
非経口投与に適する製剤としては、抗酸化剤、緩衝剤、静菌剤および製剤を意図するレシピエントの血液と等張性にする溶質を含み得る水性および非水性等張注射液剤、ならびに懸濁化剤、可溶化剤、粘稠剤、安定化剤および保存剤を含み得る水性および非水性滅菌懸濁剤などがある。製剤は、アンプルおよびバイアルなどの単位用量または複数回分用量密封容器入りで提供することができ、使用直前に滅菌済み液体賦形剤、例えば、注射用水の添加のみを必要とする凍結乾燥状態で保存することができる。準備なしの注射液剤および懸濁剤は、前述の種類の滅菌散剤、顆粒剤および錠剤から調製することができる。
局所投与に適する製剤は、有効成分に加えて、当技術分野で適切であることが知られているような担体を含むクリーム剤、ゲル剤、ペースト剤または泡剤として提供することができる。
坐剤も乳化基剤または水溶性基剤などの様々な基剤と混合することによって提供される。膣投与に適する製剤は、膣坐剤、タンポン、クリーム剤、ゲル剤、ペースト剤、泡剤として提供することができる。
【0090】
各用量単位、例えば、スプーン一杯、テーブルスプーン一杯、錠剤または坐剤が1つもしくは複数の阻害剤を含むあらかじめ定めた量の組成物を含む、シロップ剤、エリキシル剤および懸濁剤などの経口または直腸投与用の単位剤形を提供することができる。同様に、注射または静脈内投与用の単位剤形は、滅菌水、生理食塩水または他の製剤学的に許容できる担体に溶解した溶液としての組成物に阻害剤を含んでいてよい。
「単位剤形」という用語は、本明細書で用いているように、ヒトおよび動物対象用の単位用量として適する物理的に別個の単位を意味し、各単位は、所望の効果をもたらすのに十分な量と計算されたあらかじめ定めた量の本開示の化合物を薬剤学的に許容できる希釈剤、担体または媒体とともに含む。本開示の新規な単位剤形に関する仕様は、用いる個々の化合物および達成されるべき効果、ならびに宿主における各化合物に関連する薬力学に依存する。
当業者は、用量レベルは、個別の化合物、送達媒体の性質などのとの関連で変化し得ることを容易に理解するであろう。所定の化合物の適切な用量は、当業者により様々な手段によって容易に決定される。
場合によって、医薬組成物は、緩衝剤、界面活性剤、抗酸化剤、粘度調整剤、保存剤などの他の薬剤学的に許容できる成分を含んでいてよい。これらの成分のそれぞれは当技術分野でよく知られている。例えば、その開示が参照により本明細書に組み込まれている、米国特許第5,985,310号を参照のこと。
【0091】
本開示の製剤に用いるのに適する他の成分は、Remington’s Pharmaceutical Sciences、Mack Pub.Co.、第18版(1995年6月)に見いだすことができる。1つの実施形態において、シクロデキストリン水溶液は、デキストロース、例えば、約5%デキストロースをさらに含む。
有用性:具体例としての適用例
対象となる方法は、様々な適用例に用いることでき、多くの適用例において、方法は、ポリシアル酸構造のPSA脱N−アセチラーゼ媒介およびがん細胞の成長の阻害のような、少なくとも1つの細胞機能を調節する。この点に関して、対象となる方法および組成物は、細胞増殖障害の治療に用いることができる。したがって、代表的な治療適用例は、一般的に細胞増殖性疾患状態、例えば、がんおよび異常な細胞増殖付随状況によって特徴づけられる関連する状態の治療である。そのような疾患状態としては、がん/腫瘍性疾患および望まれない細胞増殖、例えば、過形成などの存在によって特徴づけられる他の疾患などがある。示したように、細胞増殖障害としては、抗deNAcSA抗体またはその誘導体を用いて判断することができる、deNAcSAエピトープを異常に発現するものが挙げられる。特に重要なものは、mAbSEAM3の抗原結合特異性を有する抗体である。そのような抗体の例としては、SEAM3軽鎖ポリペプチドの可変領域のCDR1、CDR2およびCDR3を含む軽鎖ポリペプチドならびにSEAM3重鎖ポリペプチドの可変領域のCDR1、CDR2およびCDR3を含む重鎖ポリペプチドが挙げられる。そのような抗体としては、キメラ抗体、ヒト化抗体などがある。
【0092】
「治療」とは、宿主を苦しめる状態に伴う症状の少なくとも改善が達成されることを意味し、ここで改善は、治療する状態に伴うパラメーター、例えば、症状の大きさの少なくとも低減を指す広い意味で用いられる。それとして、治療はまた、宿主がその状態または状態を特徴づける少なくとも症状をもはや経験しないような、病的状態またはそれに伴う少なくとも症状が、完全に抑制され、例えば、起こることが予防され、または止まり、例えば、終結している状況を含む。したがって、治療は、(i)予防、すなわち、臨床症状を発現させないことなどの、臨床症状の発現のリスクを低減すること、例えば、有害な状態への疾患の進行を予防すること、(ii)抑制、すなわち、例えば、腫瘍負荷を低減するように(その低減は検出可能ながん細胞の除去を含み得る)、臨床症状の発現もしくはさらなる発現を阻止すること、例えば、活動性疾患を緩和もしくは完全に抑制すること、および/または(iii)軽減、すなわち、臨床症状の後退をもたらすことを含む。
様々な宿主を対象となる方法により治療することが可能である。一般的に、そのような宿主は「哺乳動物」または「哺乳類」であり、これらの用語は、肉食目(例えば、イヌおよびネコ)、げっ歯目(例えば、マウス、モルモットおよびラット)および霊長目(例えば、ヒト、チンパンジーおよびサル)を含む哺乳類綱内にある生物を記述するために広く用いられている。多くの実施形態において、宿主はヒトであるものとする。
したがって、対象となる方法は、数ある適用例のうちで特に、有効量のPSA脱N−アセチラーゼ阻害剤をそれを必要とする対象に投与する、細胞増殖性疾患状態の治療に用いることができる。治療は、例えば、疾患の症状の1つまたは複数の症状の予防または少なくとも改善、ならびにその完全な消失、ならびに疾患状態の逆転および/または完全な除去、例えば、治癒を含めるように、上で定義したように広く用いられている。
【0093】
本開示の組成物は、治療上有効な量のPSA脱N−アセチラーゼ阻害剤、ならびに必要に応じて他の適合性のある成分を含んでいてよい。「治療上有効な量」とは、一連の同じまたは異なるPSA脱N−アセチラーゼ阻害剤組成物の一部としての1回の投与での個体へのその量の投与が対象におけるがん細胞の成長を阻害するのに有効であることを意味する。PSA脱N−アセチラーゼ阻害剤のそのような治療上有効な量および細胞成長に対するその影響は、1つまたは複数の他の療法(例えば、免疫療法、化学療法、放射線療法等)との細胞の成長の協力的および/または相乗的阻害を含む。下で示すように、治療上有効な量は、投与計画および対象の状態の診断分析(例えば、SEAM3抗体を用いた細胞表面エピトープの存否のモニタリング)などに関連して調節することができる。
本開示の状況における動物、特にヒトに対する投与量は、妥当な時間枠にわたる動物における予防または治療反応に影響を及ぼすのに十分なものであるべきであり、投与の目的、治療を受ける個人の健康および身体的状態、年齢、治療を受ける個人の分類群(例えば、ヒト、ヒト以外の霊長類、霊長類など)、所望の解消の程度、PSA脱N−アセチラーゼ阻害剤組成物の製剤、治療臨床医による医学的状況の評価、ならびに他の関連因子によって異なる。当業者は、用量は用いる個々の化合物の濃度(strength)、動物の状態および動物の体重、ならびに疾患の重症度および病期などの様々な因子に依存することも認識するであろう。用量の大きさは、個々の化合物の投与に伴う可能性がある有害な副作用の存在、性質および程度によっても決定される。したがって、量は、比較的広い範囲にあるが、それにもかかわらず、上記のような対象の様々な特徴により常法により決定することができると予想される。
【0094】
また、適切な用量および投与計画は、所望の成長阻害または免疫抑制反応に影響を及ぼすことが知られている抗がんまたは免疫抑制薬と比較することによって決定することができる。そのような用量は、有意な副作用を伴うことなく、PSA脱N−アセチラーゼの低用量阻害をもたらす用量を含む。適切な用量で、特定の化合物の適切な投与により、本開示は、例えば、PSA脱N−アセチラーゼの部分的阻害から本質的に完全な阻害までの広範の細胞への作用をもたらす。この差別的な阻害はがん細胞と高度に増殖性の非悪性細胞とを区別するのに用いることができる可能性があるので、これは、本開示の状況において特に重要である。投与処置は、単一投与計画または多投与計画(例えば、漸増・減および維持用量を含む)であってよい。示したように、PSA脱N−アセチラーゼ阻害剤組成物は、他の薬剤とともに投与することができ、したがって、用量および計画は、対象の必要に適合させるために、この状況においても変化し得る。
本開示の組成物は、水溶液、しばしば生理食塩溶液などの溶液であってよい、あるいは粉末の形で提供することができる、薬剤学的に許容できる賦形剤に混入して提供することができる。PSA脱N−アセチラーゼ阻害剤組成物は、薬剤用のマンニトール、乳糖、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、タルク、セルロース、グルコース、ショ糖、マグネシウム、カルボネートなどの他の成分を含んでいてよい。組成物は、pH調整および緩衝剤、毒性調節剤などの生理的状態に近づけるために必要な薬剤学的に許容できる補助物質、例えば、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、乳酸ナトリウムなどを含んでいてよい。
【0095】
製剤中の本開示のPSA脱N−アセチラーゼ阻害剤の濃度は、約0.1%、通常約2%未満または少なくとも約2%から20%〜50%またはそれ以上(重量)まで変化してよく、選択される個々の投与方法および患者の必要に従って主として液体の容積、粘度などによって選択する。得られる組成物は、液剤、懸濁剤、錠剤、丸剤、カプセル剤、散剤、ゲル剤、クリーム剤、ローション剤、軟膏剤、エアゾール剤などの形であってよい。
PSA脱N−アセチラーゼ阻害剤(場合によって複合体化していてよい)は、単独で用いるか、または他の療法(例えば、他の抗がん薬)と併用することができる。併用する場合、様々な組成物を同じまたは異なる製剤で提供することができる。異なる製剤で投与する場合、組成物は、同じまたは異なる投与計画で投与することができる(例えば、同時または異なる時点に(例えば、同じ日または異なる日に)、同じまたは異なる経路などで)。一般的に、PSA脱N−アセチラーゼ阻害剤の投与は、下でより詳細に述べるように、連続的に、同時に、または混合として行うことができる。投与は、PSA脱N−アセチラーゼ阻害剤の反復投与で、連続的であってよい。具体例としての投与計画は、下でより詳細に述べる。
一般的に、PSA脱N−アセチラーゼ阻害剤組成物の投与は、添加賦形剤を含むまたは含まない錠剤、固形、粉末状、液体、エアゾール状で、経口、口腔、鼻内、鼻咽頭、非経口、腸、胃、局所、経皮、皮下、筋肉内に、局所または全身的に組成物を投与することを含め、適切な経路により行う。非経口投与できる組成物を調製する実際の方法は、当業者には既知または明らかであり、Remington’s Pharmaceutical Science、第18版、Mack Publishing Company、NY(1995年)のような刊行物により詳細に記述されている。
【0096】
経口投与する場合、PSA脱N−アセチラーゼ阻害剤を消化から保護すべきことであることが認識される。これは一般的に、酸および酵素加水分解に対して抵抗性にするためにPSA脱N−アセチラーゼ阻害剤を組成物と複合体化することにより、あるいはリポソームなどの適切に抵抗性の担体に包装することにより達成される。目的とする化合物を消化から保護する手段は、当技術分野でよく知られている。
血清半減期を延長するために、注射するPSA脱N−アセチラーゼ阻害剤製剤は、カプセル封入、リポソームの内腔に導入、コロイドとして調製することもでき、あるいは血清半減期の延長をもたらす他の従来の技術を用いることができる。例えば、Szokaら、Ann.Rev.Biophys.Bioeng.、9巻、467頁(1980年)、米国特許第4,235,871号、第4,501,728号および第4,837,028号に記述されているように、リポソームを調製するのに様々な方法が利用可能である。製剤は、混合物としての、または連続的なPSA脱N−アセチラーゼ阻害剤製剤の放出および投与のために放出制御または徐放性剤形で提供することもできる。
【0097】
組成物はまた、疾患およびその合併症の発現を予防または少なくとも部分的に阻止するために疾患のリスクがある対象に投与することができる。例えば、対象が疾患の1つまたは複数の徴候または症状を示すが、それは確実な診断には不十分であり、かつ/または対象が疾患の可能性を増大させる条件に曝露された、または曝露される可能性がある場合、対象は「リスクがある」。例えば、PSA脱N−アセチラーゼ阻害剤組成物は、がんのリスクがある、がんを有する、または細胞表面deNAcSAエピトープ(例えば、少なくとも部分的に脱N−アセチル化されている細胞表面ガングリオシド)を有するがんの転移のリスクがある対象に投与することもできる。
PSA脱N−アセチラーゼ阻害剤組成物は、細胞組織学、生存能、生物学的マーカープロファイルなどのモニター(例えば、選択的deNAcSAエピトープなどの存否をモニタリングすること)を含み得るような、がん細胞の成長の阻害をもたらす方法で宿主に投与する。PSA脱N−アセチラーゼ阻害剤組成物は、所望の最終結果(例えば、がん細胞の成長の阻害)に必要と考えられる治療上有効な量を維持するために連続的にまたは重複して投与することができる。一般的に、各用量およびその投与のタイミングは、対象の健康が耐えられる量で一般的に提供し、上で示したIC50および/またはEC50に基づいていてよい。したがって、量は所定の治療ごとに広く変化し得る。
【0098】
用量または治療に対する治療反応は、既知の方法によって測定することができる(例えば、最初の免疫処置の前後に個体から血清を入手し、例えば、免疫沈降試験、またはELISA、または殺菌検定、またはウェスタンブロット、またはフローサイトメトリー分析、または同様なものにより、上記のような個体の状態の変化を示すことにより)。投与は、最初の物質のクリアランスを可能にするためのウォッシュアウト期間を含め、その後に治療を休止または再開することができる。したがって、投与戦略はそれに応じて修正することができる。
1つの実施形態において、PSA脱N−アセチラーゼ阻害剤組成物を少なくとも1回、通常少なくとも2回投与し、またいくつかの実施形態において、2回を超える回数投与する。関連実施形態において、PSA脱N−アセチラーゼ阻害剤組成物を、投与計画および方針にのっとり化学療法と併用して投与する。他の実施形態において、PSA脱N−アセチラーゼ阻害剤組成物を投与計画および方針にのっとり免疫療法と併用して投与する。さらに他の実施形態において、PSA脱N−アセチラーゼ阻害剤組成物を投与計画および方針にのっとり放射線療法と併用して投与する。PSA脱N−アセチラーゼ阻害剤組成物の個々の各用量は、免疫療法、化学療法または放射線療法などの補足的療法の前、施行中または後に投与することができる。認識することができるように、PSA脱N−アセチラーゼ阻害剤組成物を用いる併用療法は、所定の最終的な必要について調節することができる。
【0099】
具体例としてのがん療法
PSA脱N−アセチラーゼ阻害剤、哺乳類対象、特にヒトにおける様々ながん療法(がんの予防および診断後がん療法を含む)に用いることができる。腫瘍を有する、有することが疑われる、または発現するリスクがある対象は、本明細書で述べる療法および診断を受けることが意図される。そのような対象から得られるサンプルは、本開示の方法において使用するのに同様に適している。
より詳細には、本明細書で述べるPSA脱N−アセチラーゼ阻害剤組成物は、例えば、がん細胞の生存能の低下を促進するために、例えば、腫瘍サイズを低減し、腫瘍負荷を低減し、かつ/または患者の臨床的アウトカムを改善するために対象(例えば、ヒト患者)に投与することができる。特に、PSA脱N−アセチラーゼ阻害剤組成物は、がん細胞の細胞周期を混乱させ、例えば、がん細胞が細胞周期の前G0期に入ることを誘導することにより、細胞がアポトーシスに入ることを促進するために用いることができる。
特定の実施形態において、特にがん細胞が細胞外でアクセスできる細胞の表面上にdeNAcSAエピトープを提示している場合(例えば、少なくとも部分的に脱N−アセチル化したガングリオシドまたは他の複合糖質上のdeNAcSAエピトープ)、PSA脱N−アセチラーゼ阻害剤組成物を抗がん療法に有利に用いることができる。1つの実施形態において、がんは、SEAM3反応性抗原を提示するものである。SEAM3反応性抗原を提示するがんは、当技術分野で知られている方法によって確認することができる。検出および診断の具体例としての方法を下で述べる。
【0100】
抗がん療法がPSA脱N−アセチラーゼ阻害剤組成物の投与を含む場合、抗がん療法は、分裂中(複製中、増殖中)のがん細胞を特に対象とすることができる。下の実施例に示すように、PSA脱N−アセチラーゼ阻害剤は、SEAM3抗体により特異的に結合されるエピトープを有するがん細胞に対して特に有効であった。また、SEAM3により結合される細胞外でアクセスできる抗原のレベルは、細胞分裂中に非分裂細胞と比べて増加し、SEAM3の結合が、細胞が後期に(前G0に)移ることを促進する。ほとんどのがんは同じ種類の正常細胞より速やかに分裂するので、SEAM3反応性抗原を有する細胞は、PSA脱N−アセチラーゼ阻害剤に基づくがん療法にとって魅力的である。
したがって、本開示は、SEAM3mAbにより認識されるエピトープを有するPSA脱N−アセチラーゼ阻害剤の投与を含む、がん細胞を対象とする抗がん療法を特に提供する。PSA脱N−アセチラーゼ阻害剤療法が特に適用可能ながんは、細胞増殖のマーカー(例えば、Ki−67抗原)を検査し、かつ/または分裂細胞におけるSEAM3により結合されるdeNAcSAエピトープの存在/アクセシビリティを検査する(例えば、in vitroアッセイにおけるように)ことによって確認することができる。
細胞表面でアクセス可能なdeNAcSAエピトープを有するがんは、少なくとも部分的に脱N−アセチル化されたガングリオシドおよび/またはdeNAcSAエピトープを含むシアル酸修飾を有するタンパク質を有するものなどである。脱N−アセチル化ガングリオシドを有するがんが記載された。
【0101】
正常ヒト組織における脱N−アセチルシアル酸残基の存在は一過性で、存在量は非常に低いと思われ、少数の血管、皮膚および結腸の浸潤性単核細胞に、また皮膚メラノサイトに中等度のレベルで認められる。それは、黒色腫、白血病およびリンパ腫などの異常細胞においてのみ優勢である。高レベルのdeNAcSA抗原(例えば、脱N−アセチルガングリオシド)の発現はがん細胞において主として起こるので、PSA脱N−アセチラーゼ阻害剤による治療を用いて、細胞毒性を誘発することができ、腫瘍の成長を阻止することができる。さらに、PSA脱N−アセチラーゼ阻害剤組成物を治療的に用いて、他の組織におけるがん細胞の接着および浸潤をもたらす/予防することができる。
deNAcSAエピトープを提示する具体例としてのがんとしては、脱N−アセチルシアル酸残基を含む脱N−アセチルガングリオシド(例えば、GM2α、GM1α、GD1β、GM1b、GD1c、GD1α、GM3、GM2、GM1、GD13、GT13、GT1hα、GD3、GD2、GD1b、GT1b、GQ1b、Gomega1hα、GT3、GT2、GT1c、GQ1cおよびGP1c)を提示するがん細胞が挙げられる。特に重要なものとして挙げられるのは、少なくとも1つ残基が脱N−アセチル化されている、α2−8グリコシド結合により結合された2つまたはそれ以上のシアル酸残基を含むガングリオシド(例えば、GD1c、GT13、GD3、GD1b、GT1b、GQ1b、Gomega1hα、GT3、GT1c、GQ1cおよびGP1c)である。いくつかの実施形態において、α2−8グリコシド結合により結合された2つまたはそれ以上のシアル酸残基を含むガングリオシドは、GD3以外および/またはGM3以外のガングリオシドである。いくつかの実施形態において、がんの標的は、脱N−アセチル化ガングリオシド上に存在するもの以外のdeNAcSAエピトープ(例えば、シアル酸修飾タンパク質の脱N−アセチル化残基)である。
【0102】
1つの実施形態において、PSA脱N−アセチラーゼ阻害剤は、細胞分裂中に細胞外表面でアクセスできるSEAM3反応性抗原を示すがんを含む、細胞表面上にSEAM3反応性抗原を提示するがんを治療するのに用いることができる。
deNAcSAエピトープおよび/またはSEAM3反応性抗原は、非がん細胞と比較してがん細胞上で高レベルで発現する可能性があるが、これは、本明細書で開示する療法の制限となるものではないことを注意すべきである。例えば、がんが補給することができる細胞型(例えば、白血病およびリンパ腫におけるようなB細胞、T細胞または造血由来の他の細胞)に関連する場合、そのような細胞の枯渇による対象の障害は治療することができる(例えば、正常細胞の再増殖を刺激するための薬物、例えば、GM−CSF、EPOなどにより)ので、正常細胞の成長の阻害は許容することができる。
本明細書で考慮するがんに関する方法としては、例えば、PSA脱N−アセチラーゼ阻害剤療法の単独の使用または抗がんワクチンもしくは療法としてのdeNAcSA抗原との併用、ならびに抗がんワクチン(例えば、受動免疫による)もしくは療法におけるdeNAcSA抗原を用いて産生させた抗体の使用などがある。該方法は、癌腫、肉腫、白血病およびリンパ腫などの様々ながんを治療または予防する状況において有用である。
【0103】
本明細書で開示した方法による療法が適用可能であり得る癌腫は、食道癌、肝細胞癌、基底細胞癌(皮膚がんの一形態)、扁平細胞癌(様々な組織)、移行上皮癌(膀胱の悪性新生物)を含む、膀胱癌、気管支癌、大腸癌、大腸直腸癌、胃癌、肺の小細胞癌および非小細胞癌を含む、肺癌、副腎皮質癌、甲状腺癌、膵臓癌、乳癌、卵巣癌、前立腺癌、腺癌、汗腺癌、皮脂腺癌、乳頭状癌、乳頭状腺癌、嚢胞腺癌、髄様癌、腎細胞癌、非浸潤性腺管癌または胆管癌、絨毛癌、セミノーマ、胎児性癌、ウィルムス腫瘍、子宮頚癌、子宮癌、精巣癌、骨原性癌、上皮癌および鼻咽頭癌を含むが、これらに限定されない。
本明細書で開示した方法による療法が適用可能であり得る肉腫は、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、脊索肉腫、骨原性肉腫、骨肉腫、血管肉腫、内皮肉腫、リンパ管肉腫、リンパ管内皮肉腫、骨膜腫、中皮腫、ユーイング肉腫、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫および他の軟組織肉腫を含むが、これらに限定されない。
本明細書で開示した方法による療法が適用可能であり得る他の固形腫瘍は、神経膠腫、星状細胞腫、髄芽腫、頭蓋咽頭腫、脳室上衣細胞腫、松果体腫、血管芽腫、聴神経腫、オリゴデンドログリオーマ、メナンジオーマ(menangioma)、黒色腫、神経芽腫および網膜芽腫を含むが、これらに限定されない。
【0104】
本明細書で開示した方法による療法が適用可能であり得る白血病は、a)慢性骨髄増殖性症候群(多能性造血幹細胞の腫瘍性障害)、b)急性骨髄性白血病(多能性造血幹細胞または制限された系統細胞への分化能(restricted lineage potential)を有する造血幹細胞の腫瘍性転化)、c)B細胞CLL、T細胞CLL前リンパ球性白血病および有毛細胞白血病を含む、慢性リンパ球性白血病(CLL;免疫学的に未熟で、機能的に不適格な小リンパ球のクローン性増殖)およびd)急性リンパ球性白血病(リンパ芽球の蓄積により特徴づけられる)を含むが、これらに限定されない。対象となる方法を用いて治療することができるリンパ腫は、B細胞リンパ腫(例えば、バーキットリンパ腫)、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫などを含むが、これらに限定されない。
本明細書で開示した方法による治療が適用可能であり得る他のがんは、異型性髄膜腫(脳)、島細胞癌(膵臓)、髄様癌(甲状腺)、間葉腫(腸)、肝細胞癌(肝臓)、肝芽細胞腫(肝臓)、明細胞癌(腎臓)および縦隔神経芽腫などである。
本明細書で開示した方法を使用する治療が適用可能であり得るさらなる具体例となるがんは、神経外胚葉および上皮起源のがんを含むが、これらに限定されない。神経外胚葉起源のがんの例は、ユーイング肉腫、脊髄腫瘍、脳腫瘍、乳児のテント上(supratenbrial)原始神経外胚葉腫、管状嚢胞癌、ムチン管状および紡錘細胞癌、腎臓癌、縦隔腫瘍、神経膠腫、神経芽腫ならびに青年および若年成人における肉腫を含むが、これらに限定されない。上皮起源の例は、小細胞肺がん、乳房、水晶体、結腸、膵臓、腎臓、肝臓、卵巣および気管支上皮のがんを含むが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、対象となる方法は黒色腫の治療を含まない(すなわち、がんは黒色腫以外である)。他の実施形態において、対象となる方法はリンパ腫の治療を含まない(すなわち、がんはリンパ腫以外である)。特定の実施形態において、本開示の方法を用いて、脱N−アセチルガングリオシドを発現することが知られている、黒色腫およびある種のリンパ腫を含むがん細胞を治療する。上で示したように、前駆ガングリオシドGM3およびGD3を過剰発現するがんは、細胞表面上に最大の量の脱N−アセチルガングリオシドも発現し、したがってPSA脱N−アセチラーゼを発現する可能性がある。
【0105】
他のがん療法との併用
対象となるPSA脱N−アセチラーゼ阻害剤組成物の治療的投与は、免疫療法、化学療法薬および手術(例えば、下でさらに述べるような)を含むが、これらに限定されない、追加の標準抗がん療法と併用または併用しないレジメンの一部としての投与を含み得る。さらに、対象となるPSA脱N−アセチラーゼ阻害剤組成物の治療的投与は、抗がん療法による対象の治療後処置でもあり得る。ここで、抗がん療法は、例えば、手術、放射線療法、化学療法薬の投与などであり得る。モノクローナル抗体、特に標的細胞の補体媒介殺滅および/または抗体依存性細胞毒性媒介殺滅をもたらすことができるモノクローナル抗体の使用は、deNAcSAエピトープ(例えば、脱N−アセチルガングリオシド)を発現する細胞からなる原発腫瘍の同定の後に特に重要なものである(例えば、抗deNAcSAエピトープ抗体(例えば、SEAM3))。PSA抗原/抗deNAcSAエピトープ抗体を用いる免疫療法と併用して本明細書で開示したPSA脱N−アセチラーゼ阻害剤組成物を用いるがん療法は、特に重要なものであり、本開示の特定の具体例としての実施形態である(参照により本明細書に組み込まれている、米国出願番号第11/645,255号およびPCT出願番号US2006/048850)。
例えば、PSA脱N−アセチラーゼ阻害剤組成物は、1つまたは複数の化学療法薬(例えば、シクロホスファミド、ドキソルビジン、ビンクリスチンおよびプレドニゾン(CHOP)と併用して、かつ/または放射線療法と併用して、かつ/または外科的介入(例えば、腫瘍を除去するための前もしくは後手術)と併用して投与することができる。PSA脱N−アセチラーゼ阻害剤を外科的介入と併用する場合、PSA脱N−アセチラーゼ阻害剤は、がん細胞を除去するための手術の前、その時点、または後に投与することができ、全身または手術部位に局所投与することができる。PSA脱N−アセチラーゼ阻害剤(単独または上述の併用)は、全身(例えば、非経口投与による、例えば、静脈内経路による)または局所(例えば、局所腫瘍部位に、例えば、腫瘍内投与(例えば、固形腫瘍内、リンパ腫もしくは白血病における関係リンパ節内)、固形腫瘍供給血管内への投与等による)投与することができる。
【0106】
様々ながん療法のいずれかを本明細書で述べるPSA脱N−アセチラーゼ阻害剤に基づく療法と併用することができる。そのようながん療法としては、手術(例えば、がん組織の外科的除去)、放射線療法、骨髄移植、化学療法、生物学的反応修飾物質療法および前記の特定の組合せなどが挙げられる。
放射線療法は、ビームなどの外部適用源から、または小放射線源の埋込みにより送達されるX線またはガンマ線を含むが、これらに限定されない。
化学療法薬は、がん細胞の増殖を低減する非ペプチド(すなわち、非タンパク質性)化合物であり、細胞傷害性薬物および細胞成長抑制薬を含む。化学療法薬の非限定的な例は、アルキル化剤、ニトロソ尿素、代謝拮抗薬、抗腫瘍抗生物質、植物(ビンカ)アルカロイドおよびステロイドホルモンなどがある。
細胞増殖を低減するように作用する物質は、当技術分野で知られ、広く用いられている。そのような物質は、メクロレタミン、シクロホスファミド(CYTOXAN(商標))、メルファラン(L−サルコリシン)、カルムスチン(BCNU)、ロムスチン(CCNU)、セムスチン(メチル−CCNU)、ストレプトゾシン、クロロゾトシン、ウラシルマスタード、クロルメチン、イフォスファミド、クロラムブシル、ピポブロマン、トリエチレンメラミン、トリエチレンチオホスホラミン、ブスルファン、デカルバジンおよびテモゾロミドを含むが、これらに限定されない、窒素マスタードなどのアルキル化剤、ニトロソ尿素、エチレンイミン誘導体、スルホン酸アルキルおよびトリアゼンなどである。
【0107】
代謝拮抗薬は、シタラビン(CYTOSAR−U)、シトシンアラビノシド、フルオロウラシル(5−FU)、フロクスウリジン(FudR)、6−チオグアニン、6−メルカプトプリン(6−MP)、ペントスタチン、5−フルオロウラシル(5−FU)、メトトレキサート、10−プロパルギル−5,8−ジデアザ葉酸塩(PDDF、CB3717)、5,8−ジデアザテトラヒドロ葉酸(DDATHF)、ロイコボリン、リン酸フルダラビン、ペントスタチンおよびゲムシタビンを含むが、これらに限定されない、葉酸類似体、ピリミジン類似体、プリン類似体およびアデノシンデアミナーゼ阻害剤などである。
適する天然産物およびそれらの誘導体(例えば、ビンカアルカロイド、抗腫瘍抗生物質、酵素、リンフォカインおよびエピポドフィロトキシン)は、Ara−C、パクリタキセル(TAXOL(登録商標))、ドセタキセル(TAXOTERE(登録商標))、デオキシコフォルマイシン、マイトマイシン−C、L−アスパラギナーゼ、アザチオプリン、ブレキナル、アルカロイド、例えば、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビノレルビン、ビンデシン等、ポドフィロトキシン、例えば、エトポシド、テニポシド等、抗生物質、例えば、アントラサイクリン、ダウノルビシン塩酸塩(ダウノマイシン、ルビドマイシン、セルビジン)、イダルビシン、ドキソルビシン、エピルビシンおよびモルフォリノ誘導体等、フェノキシゾンビシクロペプチド、例えば、ダクチノマイシン、塩基性糖ペプチド、例えば、ブレオマイシン、アントラキノングリコシド、例えば、プリカマイシン(ミトラマイシン)、アントラセネジオン、例えば、ミトキサントロン、アジリノピロロインドールジオン、例えば、マイトマイシン、大環状免疫抑制剤、例えば、シクロスポリン、FK−506(タクロリムス、プログラフ)、ラパマイシン等、などを含むが、これらに限定されない。
他の抗増殖細胞傷害性薬物は、ナベルベン、CPT−11、アナストラゾール、レトラゾール、カペシタビン、レロキサフィン、シクロホスファミド、イフォサミドおよびドロロキサフィンである。
【0108】
抗増殖活性を有する微小管作用薬も使用に適しており、アロコルヒチン(NSC406042)、ハリコンドリンB(Halichondrin B)(NSC609395)、コルヒチン(NSC757)、コルヒチン誘導体(例えば、NSC33410)、ドルスタチン10(NSC376128)、マイタンシン(NSC153858)、リゾキシン(NSC332598)、パクリタキセル(TAXOL(登録商標))、TAXOL(登録商標)誘導体、ドセタキセル(TAXOTERE(登録商標))、チオコルヒチン(NSC361792)、トリチルシステイン、硫酸ビンブラスチン、硫酸ビンクリスチン;エオプチロンA、エポチロンB、ジスコデルモリド、エストラムスチン、ノコダゾールなどを含むが、これらに限定されない天然および合成エポチロンを含むが、これらに限定されない。
使用に適するホルモン調節剤およびステロイド(合成類似体を含む)は、アドレノコルチコステロイド、例えば、プレドニゾン、デキサメタゾン等、エストロゲンおよびプロゲスチン、カプロン酸ヒドロキシプロゲステロン、酢酸メドロキシプロゲステロン、酢酸メゲステロール、エストラジオール、クロミフェン、タモキシフェン等、副腎皮質抑制薬、例えば、アミノグルテチミド、17α−エチニルエストラジオール、ジエチルスチルベストロール、テストステロン、フルオキシメステロン、プロピオン酸ドロモスタノロン、テストラクトン、メチルプレドニゾロン、メチルテストステロン、プレドニゾロン、トリアムシノロン、クロロトリアニセン、ヒドロキシプロゲステロン、アミノグルテチミド、エストラムスチン、酢酸メドロキシプロゲステロン、ロイプロリド、フルタミド(Flutamide)(ドロゲニル(Drogenil))、トレミフェン(Toremifene)(ファレストン(Fareston))およびZOLADEX(登録商標)を含むが、これらに限定されない。エストロゲンは、増殖および分化を刺激し、したがって、エストロゲン受容体に結合する化合物は、この活性を阻害するのに用いられる。コルチコステロイドは、T細胞の増殖を阻害する可能性がある。
【0109】
他の化学療法薬としては、金属錯体、例えば、シスプラチン(シス−DDP)、カルボプラチン等、尿素、例えば、ヒドロキシ尿素、およびヒドラジン、例えば、N−メチルヒドラジン、エピドフィロトキシン、トポイソメラーゼ阻害剤、プロカルバジン、ミトキサントロン、ロイコボリン、テガファーなどがある。問題とする他の抗増殖薬としては、免疫抑制薬、例えば、ミコフェノール酸、タリドミド、デソキシスペルグアリン、アザスポリン、レフルノミド、ミゾリビン、アザスピラン(SKF105685)、IRESSA(登録商標)(ZD1839、4−(3−クロロ−4−フルオロフェニルアミノ)−7−メトキシ−6−(3−(4−モルホリニル)プロポキシ)キナゾリン)などがある。
「タキサン」は、パクリタキセルならびに活性タキサン誘導体またはプロドラッグを含む。「パクリタキセル」(例えば、ドセタキセル、TAXOL、TAXOTERE(ドセタキセルの製剤)、パクリタキセルの10−デスアセチル類似体およびパクリタキセルの3’N−デスベンゾイル−3’N−t−ブトキシカルボニル類似体などの類似体、製剤および誘導体を含むと本明細書では理解すべきである)は、当業者に知られている技術を用いて容易に調製することができる(国際公開第94/07882号、国際公開第94/07881号、国際公開第94/07880号、国際公開第94/07876号、国際公開第93/23555号、国際公開第93/10076号、米国特許第5,294,637号、第5,283,253号、第5,279,949号、第5,274,137号、第5,202,448号、第5,200,534号、第5,229,529号および欧州特許第590,267号も参照)か、または例えば、Sigma Chemical Co.、St.Louis、Mo.を含む様々な商業的供給元から入手することができる(Taxus brevifoliaからのT7402、またはTaxus yannanesisからのT1912)。
【0110】
パクリタキセルは、パクリタキセルの化学的に入手できる一般的な形だけでなく、類似体および誘導体(例えば、上で示したようなTAXOTERE□ドセタキセル)ならびにパクリタキセル結合体(例えば、パクリタキセル−PEG、パクリタキセル−デキストランまたはパクリタキセル−キシロース)も指すことを理解すべきである。
親水性誘導体および疎水性誘導体を含む様々な既知の誘導体も「タキサン」という語に含まれる。タキサン誘導体は、国際特許出願公開第99/18113号に記載されているガラクトースおよびマンノース誘導体、国際公開第99/14209号に記載されているピペラジノおよび他の誘導体、国際公開第99/09021号、国際公開第98/22451号および米国特許第5,869,680号に記載されているタキサン誘導体、国際公開第98/28288号に記載されている6−チオ誘導体、米国特許第5,821,263号に記載されているスルフェナミド誘導体、米国特許第5,415,869号に記載されているタキソール誘導体を含むが、これらに限定されない。それはさらに、国際公開第98/58927号、国際公開第98/13059号および米国特許第5,824,701号に記載されているものを含むが、それらに限定されない、パクリタキセルのプロドラッグを含む。
本開示の化合物による一部の個人の治療において、非悪性腫瘍細胞に対して救出薬とともに高用量療法を用いることが望ましいと思われる。そのような治療において、シトロボラム因子、葉酸誘導体またはロイコボリンなどの、非悪性腫瘍細胞を救出できる薬剤を用いることができる。そのような救出薬は、当業者によく知られている。救出薬は、細胞機能を調節する本発明の化合物の能力を妨げないものなどである。
【0111】
対象となる方法および組成物を用いることができる特定の適用例は、その開示が参照により本明細書に組み込まれている、米国特許第2,512,572号、第3,892,801号、第3,989,703号、第4,057,548号、第4,067,867号、第4,079,056号、第4,080,325号、第4,136,101号、第4,224,446号、第4,306,064号、第4,374,987号、第4,421,913号、第4,767,859号、第3,981,983号、第4,043,759号、第4,093,607号、第4,279,992号、第4,376,767号、第4,401,592号、第4,489,065号、第4,622,218号、第4,625,014号、第4,638,045号、第4,671,958号、第4,699,784号、第4,785,080号、第4,816,395号、第4,886,780号、第4,918,165号、第4,925,662号、第4,939,240号、第4,983,586号、第4,997,913号、第5,024,998号、第5,028,697号、第5,030,719号、第5,057,313号、第5,059,413号、第5,082,928号、第5,106,950号、第5,108,987号、第4,106,488号、第4,558,690号、第4,662,359号、第4,396,601号、第4,497,796号、第5,043,270号、第5,166,149号、第5,292,731号、第5,354,753号、第5,382,582号、第5,698,556号、第5,728,692号および第5,958,928号に記載されているものを含む。
【0112】
診断
deNAcSAエピトープと反応性の抗体は、細胞表面でアクセスできるdeNAcSAエピトープ(例えば、脱N−アセチル化細胞表面ガングリオシド)を有するがん細胞を有するまたは有することが疑われる対象から得られた生物学的サンプル中のdeNAcSA抗原を、(参照により本明細書に組み込まれている、米国特許出願第11/645255号およびPCT出願米国第2006/048850号)に記載されているような免疫診断技術における抗deNAcSAエピトープ抗体を用いて検出するのに用いることができる。そのような診断は、本明細書に開示した療法が適用可能である患者を特定し、かつ/または療法に対する反応をモニターするのに有用である可能性がある。
簡単に説明すると、抗deNAcSAエピトープ抗体の抗原結合特異性は、この状況において、宿主由来のPSAに対する検出可能な結合をほとんどまたはまったく伴わず、それにより偽陽性結果の発生を低減させて、サンプル中のがん細胞上のdeNAcSAエピトープの検出を促進するために利用することができる。そのような検出方法は、診断の状況において、抗体がdeNAcSAエピトープおよび/またはSEAM3反応性抗原に特異的に結合する、PSA脱N−アセチラーゼ阻害剤に基づく療法に適する対象の特定、療法のモニタリング(例えば、療法に対する反応を追跡するため)などに用いることができる。
適切な免疫診断技術は、in vitroおよびin vivo(撮像法)法を含むが、これらに必ずしも限定されない。方法がin vitroである場合、生物学的サンプルは、血液サンプル(全血、血清等を含む)、組織、全細胞(例えば、完全な細胞)および組織または細胞抽出物を含むが、これらに限定されない、deNAcSA抗原が存在する可能性があるサンプルであってよい。検定法は、競合、直接反応またはサンドイッチタイプ検定法などの様々な形をとり得る。具体例としての検定法は、ウェスタンブロット、凝集試験、ELISAなどの酵素標識および媒介免疫検定、ビオチン/アビジンタイプ検定、放射線免疫検定法、免疫電気泳動、免疫沈降などである。反応は、一般的に蛍光、化学発光、放射性、酵素標識もしくは色素分子などの検出可能な標識、あるいはサンプル中の抗原と抗体との複合体の形成またはそれと反応する抗体を検出する他の方法を含む。
【0113】
検定法は、抗原−抗体複合体が結合している固相支持体から液相中の非結合抗体の分離を含むことができる。本開示の実施において用いることができる固相支持体としては、ニトロセルロース(例えば、膜またはマイクロタイターウェルの形の)、ポリ塩化ビニル(例えば、シートまたはマイクロタイターウェル)、ポリスチレンラテックス(例えば、ビーズまたはマイクロタイタープレート)、フッ化ポリビニリデン、ジアゾ化紙、ナイロン膜、活性化ビーズ、磁気反応性ビーズなどの基材が挙げられる。
固体支持体を用いる場合、固体支持体を通常最初に、成分が支持体に十分に固定化されるような適切な結合条件下で固相成分(例えば、抗deNAcSAエピトープ抗体)と反応させる。時として、支持体への固定化は、より良好な結合特性を有する、または抗体結合活性または特異性の有意な喪失を伴わずに支持体上の抗体の固定化を可能にするタンパク質に抗体を最初に結合させることによって増強することができる。適切な結合タンパク質は、ウシ血清アルブミン(BSA)などの血清アルブミン、スカシガイ(keyhole limpet)ヘモシアニン、免疫グロブリン分子、サイログロブリン、オボアルブミンおよび当業者によく知られている他のタンパク質などの巨大分子を含むが、これらに限定されない。抗体を支持体に結合させるのに用いることができる他の分子は、多糖、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、重合アミノ酸、アミノ酸共重合体などである。ただし、抗体を固定化するのに用いる分子は、抗原に特異的に結合する抗体の能力に悪影響を及ぼさないこと。そのような分子およびこれらの分子を抗原に結合させる方法は、当業者によく知られている。例えば、Brinkley M.A.、Bioconjugate Chem.(1992年)、3巻、2〜13頁、Hashidaら、J.Appl.Biochem.(1984年)、6巻、56〜63頁、AnjaneyuluおよびStaros、International J.of Peptide and Protein Res.(1987年)、30巻、117〜124頁を参照のこと。
【0114】
固体支持体を固相成分と反応させた後、洗浄によってあらゆる非固定化固相成分を支持体から除去し、次いで、支持体結合成分をdeNAcSAエピトープを含むことが疑われる生物学的サンプルと適切な結合条件下で接触させる。洗浄して非結合リガンドを除去した後、二次バインダー部分を適切な結合条件下で加える。ここで、二次バインダーは、結合リガンドと選択的に結合することができる。次いで、二次バインダーの存否を当技術分野でよく知られている技術を用いて検出することができる。
マイクロタイタープレートのウェルを本開示の抗deNAcSAエピトープ抗体で被覆した、ELISA法を用いることができる。deNAcSA抗原(例えば、脱N−アセチル化ガングリオシドなどのdeNAcSAエピトープを有する腫瘍抗原)を含む、または含むことが疑われる生物学的サンプルを被覆ウェルに加える。抗体を結合させるのに十分なインキュベーションの期間の後に、プレートを洗浄して非結合部分を除去し、検出できるように標識した二次結合分子を加える。二次結合分子を捕捉抗原と反応させ、プレートを洗浄し、二次結合分子の存否を当技術分野でよく知られている方法を用いて検出する。
所望の場合、生物学的サンプルからの結合deNAcSA抗原の存否は、抗体リガンドに対する抗体を含む二次バインダーを用いて容易に検出することができる。例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼまたはウレアーゼなどの検出可能な酵素標識に当業者に知られている方法を用いて容易に結合させることができる、多くの抗ウシ免疫グロブリン(Ig)分子が当技術分野で知られている。適切な酵素基質を用いて検出可能なシグナルを発生させる。他の関連実施形態において、競合型ELISA法を当業者に知られている方法を用いて実施することができる。
【0115】
抗体とdeNAcSA抗原が沈降条件下で複合体を形成するような検定も溶液中で行うことができる。例えば、抗体は、直接化学的または間接的カップリング法などの当技術分野で知られているカップリング技術を用いて固相粒子(例えば、アガロースビーズなど)に結合させることができる。抗体被覆粒子を適切な結合条件下でdeNAcSA抗原を含むことが疑われる生物学的サンプルと接触させて、沈降させ、洗浄および/または遠心分離を用いてサンプルから分離することができる粒子−抗体−deNAcSA抗原複合体の凝集体の形成をもたらす。反応混合物を、上で述べた免疫診断法などの多くの標準的な方法のいずれかを用いて分析して、抗体−抗原複合体の存否を判定することができる。
診断検定に用いる試験サンプルは、血液サンプル(全血、血清などを含む)、組織、全細胞(例えば、完全な細胞)ならびに細胞を含む組織または細胞抽出物(例えば、組織、分離細胞など)、細胞溶解物(すなわち、非完全細胞を含むサンプル)を含むが、これらに限定されない、deNAcSA抗原が存在する可能性があるサンプルであってよく、各種類のサンプルは両方の種類の要素を含んでいてよい(例えば、細胞のサンプルは細胞溶解物を含んでいてよく、また逆の場合も同様である)。いくつかの実施形態において、完全な生細胞を含む、診断を受ける対象からのサンプルを用いて検定を行うことが望ましいと思われる。deNAcSA抗原の検出は、細胞の細胞外表面で評価することができ、また細胞分裂中にさらに評価することができる。
【0116】
診断検定は、in situでも行うことができる。例えば、抗deNAcSAエピトープ抗体を検出可能なように標識し、deNAcSAエピトープの細胞表面発現によって特徴づけられるがんを有することが疑われる対象に投与し、結合した検出可能標識抗体を当技術分野で利用可能な撮像法を用いて検出する。
本明細書で述べる診断検定は、対象がPSA脱N−アセチラーゼ阻害剤に基づく療法を用いた療法が多かれ少なかれ適用可能ながんを有するかどうかを判断するため、ならびに対象における治療の経過をモニターするために用いることができる。これはまた、他の併用療法(例えば、(参照により本明細書に組み込まれている、米国出願番号第11/645,255号およびPCT出願番号US2006/048850)に記載されているようなdeNAcSA抗原ワクチンおよび/または抗deNAcSA抗原抗体療法)の経過を評価するのに用いることができる。したがって、診断検定は、臨床医による療法および治療計画の選択を報知することができる。
方法がin vitroである場合、生物学的サンプルは、血液サンプル(全血、血清などを含む)、組織、全細胞(例えば、完全な細胞、すなわち透過化処理に供さなかった細胞)または細胞溶解物(例えば、組織サンプルの処理により得られるような)を含むが、これらに限定されない、SEAM3反応性抗原が存在する可能性があるサンプルであってよい。例えば、検定は、組織学的組織サンプル中の細胞上のSEAM3反応性抗原の検出を伴うことがあり得る。例えば、組織サンプルは、固定することができ(例えば、ホルマリン処理により)、また支持体(例えば、パラフィンに)に包埋して、または凍結非固定組織として提供することができる。
【0117】
SEAM3反応性抗原は、抗体、通常、SEAM3の抗原結合特異性を有するモノクローナル抗体(mAb)の特異的結合の検出によって検出できる。この実施形態において、SEAM3反応性抗原は、細胞分裂中を含む、細胞周期のあらゆる段階において細胞表面上に存在する可能性がある。注目すべきことは、場合によって、細胞分裂中にSEAM3反応性抗原を提示するがんが、細胞が休止している(すなわち、細胞分裂を受けない)ときに、より低いまたは検出できないレベルのSEAM3反応性抗原を示す可能性があることである。しかし、下の実施例で例示するように、SEAM3反応性抗原は、透過化試験細胞におけるSEAM3反応性抗原を検出することによって、非分裂細胞において検出することができる。正常細胞における抗体染色のパターンと異なる、SEAM3抗体(またはSEAM3の抗原結合特異性を有する抗体)による染色のパターンを示す試験がん細胞は、SEAM3反応性抗原を示すがん細胞として特定される。したがって、そのようながんは、SEAM3反応性抗原に特異的に結合する抗体(例えば、mAbSEAM3)による療法が適用可能である。
米国出願番号第11/645,255号およびPCT出願番号US2006/048850)に記載されている方法によりdeNAcSA抗原を用いた免疫処置により産生させた抗体を含む上述の検定試薬は、上述のような免疫検定を実施するために、適切な指示書および他の必要な試薬とともにキットで提供することができる。キットはまた、用いる個々の免疫検定によって、適切なラベルおよび他の包装済み試薬および材料(すなわち、洗浄緩衝液など)を含み得る。上述のものなどの標準的免疫検定は、これらのキットを用いて実施することができる。
【0118】
キットおよびシステム
上述のように、対象となる方法を実施するのに用いることができるキットおよびシステムも提供する。例えば、対象となる方法を実施するためのキットおよびシステムは、PSA脱N−アセチラーゼ阻害剤を含む1つまたは複数の医薬製剤を含んでいてよい。したがって、特定の実施形態において、キットは、1つまたは複数の単位用量として存在する単一医薬組成物を含んでいてよい。さらに他の実施形態において、キットは、2つまたはそれ以上の別個の医薬組成物を含んでいてよい。
このように、キットは、キットの意図する用途によって、PSA脱N−アセチラーゼ阻害剤などの、本明細書で述べる組成物、検定またはスクリーニング用の関連する適切な細胞、抗deNAcSAエピトープ抗体などのうちの1つまたは複数のものを含み得る。キットの他の任意選択の成分としては、PSA脱N−アセチラーゼ阻害剤を投与するための、および/または診断検定を実施するための緩衝液などが挙げられる。キットの様々な成分が別個の容器中に存在していてよく、あるいは、所望の通りに特定の適合性のある成分が1つの容器中にあらかじめ混合されていてよい。
【0119】
対象となるキットは、上の成分に加えて、対象となる方法を実施するための指示書をさらに含んでいてよい。これらの指示書は、様々な形でキットに存在してよく、そのうちの1つまたは複数のものがキット中またはキット上に存在していてよい。これらの指示書が存在し得る1つの形態は、適切な媒体または基材、例えば、キットの包装中または包装上の添付文書等における、情報が印刷されている紙片上の印刷情報としてである。さらに他の手段は、情報が記録されたコンピュータで読取り可能な媒体、例えば、ディスケット、CD等であろう。存在し得るさらに他の手段は、除去されたサイト(removed site)の情報にアクセスするためにインターネットを介して用いることができるウェブサイトアドレスである。都合のよい手段がキットに存在していてよい。
特定の実施形態において、キットは、細胞増殖性疾患状態に罹患している宿主を治療するのに用いるために提供する。このキットは、PSA脱N−アセチラーゼの阻害剤を含む医薬組成物、ならびに対象におけるがん細胞の成長を阻害することにより、がん状態に苦しんでいる宿主を治療する方法における医薬組成物の効果的な使用に関する指示書を含む。そのような指示書は、適切な取扱特性、投与計画および投与方法などだけでなく、対象を脱N−アセチル化シアル酸(deNAcSA)エピトープについて場合によってスクリーニングするための指示書をさらに含んでいてよい。この態様は、キットの施術者が、がんの種類および成長段階に対する治療のタイミングおよび期間を含む、PSA脱N−アセチラーゼ阻害剤による治療に対する対象の潜在的反応性を評価する助けとなり得る。したがって、他の実施形態において、キットは、SEAM3(ATCC寄託番号HB−12170)などの、がん細胞の細胞外でアクセスできる表面上の脱N−アセチル化シアル酸(deNAcSA)エピトープを検出するための抗体または他の試薬をさらに含んでいてよい。他の実施形態において、キットは、発蛍光団などの検出可能な標識との結合体を含む1つまたは複数のPSA脱N−アセチラーゼ阻害剤を含む。
【0120】
本明細書で用いている「システム」という用語は、対象となる方法を実施する目的のためにまとめられている単一または異なる組成物中に存在するPSA脱N−アセチラーゼ阻害剤ならびに1つまたは複数の第2の治療薬の集合を意味する。例えば、まとめられ、対象に併用投与される別個に得られたPSA脱N−アセチラーゼ阻害剤ならびに化学療法剤形は、本開示による具体例としてのシステムである。
以下の実施例は、本発明をさらに例示するものであり、その範囲を限定するものと解釈すべきではない。
【実施例】
【0121】
本明細書に記載する実施例および実施形態は、例示目的のためのものにすぎず、それに照らしての様々な修正または変更は、当業者に示唆され、本出願の精神および範囲ならびに添付する特許請求の範囲内に含まれることが理解される。本明細書で引用したすべての刊行物、特許および特許出願は、これによって、すべての目的のためにそれらの全体として参照により組み込まれている。
(実施例1)
酸無水物を用いたN−アクリル、N−ヨードアセチルおよびN−プロピオニルヘキソサミン誘導体の合成
アクリル酸無水物およびヨード酢酸無水物を、アクリル酸(0.47ml、7.0mmol)またはヨード酢酸(1.30g、7.0mmol)およびクロロホルム(5ml)中ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC、0.66g、3.2mmol)を混合することにより調製した。時折攪拌しながら反応を10分間行わせ、次いで、ろ過して副生成物ジシクロヘキシル尿素を除去した。プロピオン酸無水物は、Sigma−Aldrich(Saint Louis、MO)から入手した。
ヘキソサミン塩酸塩、例えば、マンノサミン・HClまたはガラクトサミン・HCl(0.5g、2.3mmol;Sigma−Aldrich)を10mlのメタノール中で攪拌した。ナトリウムメトキシド(4.6mlの1Mメタノール中溶液、1当量;Sigma−Aldrich)を加え、ヘキソサミンを溶解した。その後直ちに、酸無水物をヘキソサミン溶液にアルゴン気流中で攪拌しながら加えた。pH試験紙上にスポットして測定して、ナトリウムメトキシドでpHを8以上に維持した。20分後に、2容量の水を加え、反応混合物を凍結し、凍結乾燥した。反応の程度は、アルミニウムで裏打ちしたシリカゲルプレート(ThermoFisher Scientific、Waltham、MAを介して得られたEM Scientific)上薄層クロマトグラフィー(TLC)により、2:1CHCl:MeOHで展開し、5%酢酸を含むエタノール中1%ニンヒドリン(Sigma−Aldrich)で染色した後、熱板上で加熱して測定した。
【0122】
(実施例2)
塩化アシルを用いたN−アシルヘキソサミン誘導体および塩化メタンスルホニルを用いたN−メタンスルホニルヘキソサミン誘導体の合成
ヘキソサミン塩酸塩(0.5g)、例えば、マンノサミン・HClまたはガラクトサミン・HCl(Sigma−Aldrich)を10mlのHOに溶解した。5つに分けた60μlずつの塩化アシル(約2当量)、例えば、塩化クロロアセチルまたは塩化メタンスルホニルを、2M NaOHでpHを8.5〜9.0に維持しながら加えた。最後の分割分を加えた後、pHのさらなる変化がないことにより示されたとき反応を完結させ、pHを2M HClで7.0に低下させ、凍結乾燥により溶媒を除去した。
乾燥凍結乾燥残留物を少量の100%エタノールに再懸濁し、2時間攪拌することにより、すべての化合物を精製した。不溶性物質をろ過により除去し、アルゴン気流中でのエタノールの部分蒸発により生成物を得た後、水を加え、凍結乾燥した。得られた生成物の純度は、前述したようにTLCにより確認し、構造を質量分析(表5)およびNMR(表6)により確認した。
【0123】
【表5】

【0124】
選択した化合物の純度を推定するために、アノマー炭素プロトンの1HNMRスペクトルにおける共鳴下積分面積を十分に分解したN−アシル側鎖におけるプロトンのそれと比較した。NMRデータを表6に示す。
【表6】

【0125】
(実施例3)
過アセチル化ヘキソサミン誘導体の合成
N−アシルまたはN−メタンスルホニルヘキソサミンの過アセチル化誘導体を以下のように修飾したLuchanskyら(2003年、Methods in Enzymology、362巻、249頁)の方法により調製した。上述のように調製した粗N−アシルまたはN−メタンスルホニルヘキソサミン(0.3mmol)を少量のDMSOで可溶化し、次いで、ピリジン(6ml)で50mMに溶解した。大過剰の酢酸無水物(3ml、33mmol)を加え、反応物を一夜攪拌し、次いで、真空中で濃縮した。Luchanskyらにより記載されたように、乾燥残留物をシリカゲル上クロマトグラフィーにより精製した。得られた生成物の純度は、Pharmacia Sephasil C18(GE Healthcare Bio−Sciences Corp.、Piscataway、NJ)カラム(4.5mm×250mm)を用い、水中5%〜40%アセトニトリルの勾配でWaters Alliance HPLC(Milford、MA)上での逆相HPLCにより分析した。
【0126】
(実施例4)
PSA脱N−アセチラーゼ阻害剤を含むPSA誘導体の合成
N−アセチルマンノサミンからのN−アセチルノイラミン酸の新規生合成に加えて、哺乳類細胞は、複合糖質からのN−アセチルノイラミン酸およびエンドサイトーシスにより細胞内に取り込まれる遊離のシアル酸を除去する能力も有する。PSA脱N−アセチラーゼの阻害剤のPSAおよびPSA結合体への組込みは、がん細胞を標的とするのに有利である。
コロミン酸(100mg、EY Scientific、San Mateo、CA)を10mgの水素化ホウ素ナトリウム(Sigma−Aldrich)を含む8mlの水に懸濁した。水酸化ナトリウム(1.8mlの50%溶液(ThermoFisher))を加え、溶液を密閉反応管(Pierce Scientific、Rockford、IL)中で加熱ブロック(Pierce)で90〜100℃まで2時間加熱した。室温に冷却した後、2M HClを用いてpHを8に調整した。溶液を水中で余すところなく透析し(Spectrapor 1kDaカットオフ、ThermoFisher)、凍結乾燥した。脱N−アセチル化コロミン酸(50mg)を水に溶解し、2M NaOHでpHを8に調整した。塩化アシル(塩化トリクロロアセチル、塩化ジクロロアセチル、塩化クロロアセチルまたは塩化ブロモアセチルの250g/モルの脱N−アセチルPSA残基質量に基づく10当量)または塩化メタンスルホニルまたはアシル無水物(酢酸無水物、プロピオン酸無水物、ヨード酢酸無水物またはアクリル無水物)を攪拌しながら5回に分けて数時間にわたり加えた(すべての試薬はSigma−Aldrich製であった)。アクリル無水物およびヨード酢酸無水物は、実施例1で述べたように調製した。必要に応じて2M NaOHを加えてpHを8〜9に維持した。脱N−アセチルコロミン酸のアシル化の後、反応混合物を水中で余すところなく透析し、凍結乾燥した。
【0127】
(実施例5)
PSA誘導体の凝集体の合成
実施例4のPSA誘導体をエキソノイラミニダーゼで処理した。次いで、SiaAを50℃で1〜2時間加熱して、細胞により容易に取り込まれたことが認められた粒子の凝集体を形成させた。具体的には、凍結乾燥再N−アセチル化コロミン酸粉末(50mg)を2.5mlの50mMリン酸ナトリウム緩衝液、pH7に再懸濁した。SIALIDASE A(商標)(10μl、1U/ml、Prozyme)を加え、溶液を透析チューブ(1kDaカットオフ)に移し、次いで、1Lの50mMリン酸ナトリウム緩衝液、pH7中に37℃で3〜4日間入れた。酵素により放出されたN−アシルノイラミン酸は、透析膜を通過するが、酵素および脱N−アセチル残基における非還元端で終わるポリシアル酸は保持される。
シアリダーゼの処理の後に、生成物を水で<1mg/mlに希釈し、ろ過して酵素を除去し(30kDaカットオフ膜)、凍結乾燥した。細胞培養に加える前に、凍結乾燥粉末をPBS緩衝液または細胞培地に2mg/ml以上または20mg/mlまでの濃度で再懸濁し、50℃で2時間加熱して、可能な汚染微生物を不活性化し、凝集体の形成を促進した。40倍の光学顕微鏡下で均一なサイズの凝集体を観察することができる。
【0128】
(実施例6)
N−置換ノイラミン酸誘導体の合成
以下のように実施例4のPSA誘導体を標準的酸加水分解またはエキソノイラミニダーゼ(シアリダーゼ)による処理により単量体形(N−置換ノイラミン酸誘導体)に変換した。シアリダーゼを用いたポリマー誘導体の単量体への分解は、24時間間隔で交換し、凍結乾燥する、より小さい容積(10ml)で反応を行わせることを除いて、実施例5で上述したように実施する。あるいは、20mM酢酸ナトリウム緩衝液、pH5.5中での50℃で18時間の酸加水分解によりポリマー誘導体を単量体に変換する。
【0129】
(実施例7)
細胞培養
ヒト黒色腫SK−MEL28、神経芽腫CHP−134およびT細胞白血病ジャーカット細胞株は、ATCC(Manassas、VA)から入手した。すべての細胞株を10%熱不活性化ウシ胎児血清(Gemini Bio−Products、West Sacramento、CA)、非必須アミノ酸、100単位/mlペニシリン/ストレプトマイシン、110μg/mlピルビン酸ナトリウムおよび2mMグルタミン(UCSF Cell Culture Facility)を添加したRPMI1640培地(UCSF Cell Culture Facility、San Francisco、CA)中で増殖させた。ジャーカット細胞は、10細胞/ml以下の濃度まで、付着性SK−MEL28およびCHP−134細胞は、5×10細胞/cm以下の濃度まで増殖させた。
【0130】
(実施例8)
腫瘍細胞株における脱N−アセチルPSA抗原の発現
腫瘍細胞株がノイラミン酸を含むPSA抗原(すなわち、PSAにおける脱N−アセチルノイラミン酸残基)を発現したかどうかを判断するために、CHP−134神経芽腫、ジャーカットT細胞白血病およびSK−MEL28黒色腫細胞に対するモノクローナル抗体SEAM3の結合をフローサイトメトリーにより測定した。SEAM3は、ノイラミン酸残基を含むPSAを特異的に認識する(参照により本明細書に組み込まれている、米国出願番号第11/645,255号およびPCT出願番号US2006/048850)。
細胞(ウェル当たり約10個)を平底96ウェル組織培養プレート(Nunc)上で平板培養し、検定の前に増殖培地とともに一夜インキュベートした。細胞を、96丸底プレート(Falcon)中に収集する前にトリプシン(SK−MEL−28)または細胞分散試薬(CDR、Guava Technologies、Hayward、CA)(CHP−134)によりプレートから離脱させ(ジャーカット細胞は非付着性)、1000×gで5分間遠心分離し、氷冷1%(容積/容積)ホルムアルデヒドで固定した。20分後に、遠心分離(上)により細胞をペレットとし、3%(容積/容積)ヤギ血清のブロッキング溶液中で1時間インキュベートした。ブロッキング後、一次抗体を加え、4℃で一夜インキュベートした。ペレット化および氷冷PBS中再懸濁により細胞を2回洗浄した。二次抗体(FITC結合ヤギ抗マウスIgG(Fab)、Jackson Immunoresearch、West Grove、PA)を細胞とともに暗所で4℃で少なくとも1時間インキュベートした。さらに一連の遠心分離および洗浄(3回)の後にGuava EastCyteフローサイトメーター(Guava Technologies)により結合を分析した。対照サンプルは、ベースライン蛍光を発生させるのに用いたアイソタイプ適合無関連抗体(Southern Biotech、Birmingham、AL)、またはSK−MEL28細胞の細胞により特異的に発現される抗原と反応性である陽性対照mAbs(すなわち、抗GD3mAbR24(AxxoraLLC製のMEL−1、San Diego、CA)で処理した。
図1に示すように、SEAM3は、3種の細胞株のすべての表面に結合したことから、それらはすべて細胞表面上にノイラミン酸を含むPSAを発現することが実証されている。
【0131】
(実施例9)
N−修飾ヘキソサミン誘導体を増殖培地に添加することによるPSAへのN−修飾誘導体の組込み
細胞内のシアル酸の改変は、マンノサミン誘導体を増殖培地に添加することによって達成されることが最も多い。その理由は、そのような誘導体は、N−アシルノイラミン酸およびシアリル化複合糖質の生合成の直接的前駆体であるからである。しかし、すべてのヘキソサミン誘導体の代謝はN−アセチルグルコサミンに収束する(「Essentials of Glycobiology」、Varkiら編、Cold Spring Harbor Press、NY、1999年)。したがって、PSA脱N−アセチラーゼのシアリル化複合糖質基質は、N−アシルグルコサミンまたはN−アシルガラクトサミンのレザバーからも得られる可能性がある。
N−アシルガラクトサミンおよびN−アシルグルコサミン誘導体がPSAに組み込むことができることを示すために、以下のように、増殖培地にN−プロピオニルガラクトサミンを添付し、N−プロピオニルPSAの細胞表面発現をN−プロピオニルPSAに特異的な抗体であるSEAM18(Granoffら、J.Immunol、1998年、160巻、5028頁)を用いて、フローサイトメトリーにより測定した。
【0132】
CHP−134、SK−MEL28およびジャーカット細胞をN−プロピオニルガラクトサミン、N−プロピオニルマンノサミンまたはN−アセチルマンノサミン(10mM)を含む、または無添加の培地中で24時間培養した。mAbの結合を測定するために、細胞をプレートから剥離し、遠心分離によりペレットとし、PBSで洗浄し、PBS中1%ホルムアルデヒドで固定した。すべての処置は氷上で行った。細胞を3%ヤギ血清を含むPBSでブロックし、次いで、細胞を3%ヤギ血清で希釈した次の一次抗体(約1μg/ml)のうちの1つとともに4℃で一夜インキュベートした:無関連アイソタイプ対照mAbsIgG2aまたはIgG2b(Southern Biotech)、SEAM3(Granoffら、J.Immunol.、1998年、160巻、5028頁)またはSEAM18(Granoffら、J.Immunol.、1998年、160巻、5028頁)。次いで、細胞を洗浄し、ヤギ抗マウスFITC(1:1000、Jackson Immunoresearch、West Grove、PA)で標識した。蛍光をGuava ExpressPlus検定(Guava Technologies)を用いてGuava EasyCyteフローサイトメーターで測定し、結果をmAb結合について陽性である細胞の百分率として表す。
図2に示すように、SEAM18結合について陽性である3種の細胞株のすべての細胞の百分率は、培地にN−プロピオニルマンノサミンおよびN−プロピオニルガラクトサミンを添加した場合に増加するが、N−アセチルマンノサミンを添加した場合には増加しない。アイソタイプ適合無関連対照抗体による結合は、無添加またはN−アセチルマンノサミンを添加した場合のSEAM18の結合と同じであった。N−プロピオニルガラクトサミンの添加によって生成した、実測されたN−プロピオニルPSAは、N−プロピオニルガラクトサミンのN−プロピオニルグルコサミンへの、次いで、N−プロピオニルマンノサミンへの変換によってのみ得られたので、結果から、表面発現PSA誘導体は、外部から供給されるN−アシルガラクトサミン、N−アシルグルコサミンまたはN−アシルマンノサミンから得ることができることがわかる。
【0133】
(実施例10)
腫瘍細胞の生存能に対するN−アシルヘキソサミン誘導体の効果
ヒト細胞におけるN−アセチルノイラミン酸の生合成のための前駆体は、N−アセチルマンノサミンである。所望のN−アシルマンノサミン誘導体を外部から供給することによって、様々なN−アシル基を細胞培養および生存生物の両方におけるPSAに組み込むことができることが示された。PSA脱N−アセチラーゼはPSAを基質として用いるので、N−アシルマンノサミン誘導体の存在下での培養細胞によるメカニズムに基づく阻害剤のPSAへの組込みによって、該酵素の活性を阻害することができる。
培養中のヒト腫瘍細胞株の生存能に対するPSA脱N−アセチラーゼの阻害剤の効果を細胞生存能検定を用いて測定した。細胞をN−アシルまたはメタンスルホニルヘキソサミン誘導体とともに24時間インキュベートした。ジャーカット細胞は、丸底96ウェルプレート(Falcon)で2×10細胞/mlの濃度で、200μl/ウェルとしてインキュベートした。付着性細胞は、平底96ウェルプレート(Nunc)で1×10細胞/mlの濃度でインキュベートした。プレートを1000×gで5分間遠心分離した。SK−MEL28細胞は、トリプシン/EDTA溶液(UCSF Cell Culture Facility)を用いてプレートから剥離した。CHP−134細胞は、CDR(Guava Technologies)を用いて剥離した。すべての細胞をGuava ViaCount試薬に再懸濁し、Guava EasyCyteフローサイトメーターでGuava ViaCount検定を用いて読取りを行った(すべてGuava Technologiesから入手)。
【0134】
図3に示すように、N−アシルマンノサミンは、ヒトT細胞白血病細胞株ジャーカットによって取り込まれ、濃度依存的にアポトーシスおよび細胞死を誘発することによって細胞の生存能を低下させる。図4にSK−MEL28黒色腫、CHP−134神経芽腫およびジャーカット白血病細胞の細胞生存能の低下に対するN−アシルマンノサミンの濃度依存的な効果を示す。ジャーカット細胞は、不活性なN−アセチルグルコサミン2−エピメラーゼ遺伝子を有する(Luchanskyら、J.Biol.Chem.、2003年、278巻、8035頁)という結果として、N−アシルマンノサミンを異化する能力を有さないので、ジャーカット細胞に対する効果は特に重要である。突然変異の結果として、N−アシルマンノサミン誘導体はN−アシルノイラミン酸の生合成においてのみ用いることができ、ヘキソサミン脱N−アセチラーゼなどの異化酵素には作用しない。ジャーカット細胞は、誘導体を異化することができる他の細胞株よりN−アシルマンノサミン誘導体による殺滅に対して約10倍感受性が高い。
図5に阻害剤とともに24時間インキュベートした後のCHP−134、ジャーカットおよびSK−MEL28細胞の生存能に対するN−クロロアセチルマンノサミン(ManNClAc)濃度の効果を示す。生存能の最大半減(half−maximal decrease)は、CHP−134およびジャーカット細胞については約1mM、SK−MEL28細胞については約8mMのManNClAcの濃度で起こる。
【0135】
図6にCHP−134およびジャーカット細胞の生存能に対するN−アクリルガラクトサミン(GalNAcryl)の濃度依存的効果を示す。ManNAcryl(図4)と異なり、生存能の最大半減に必要なGalNAcryの濃度は両細胞株で同じ(3mM)である。
図7にN−メタンスルホニルマンノサミン(ManNMeSul)およびN−メタンスルホニルガラクトサミン(GalNMeSul)の生合成での組込みによって、10mMの濃度のいずれかの誘導体と24時間インキュベートしたジャーカット細胞のアポトーシスおよび細胞死を誘発することにより細胞の生存能を低下させることができることを示す。図8にCHP−134、ジャーカットおよびSK−MEL28細胞の細胞生存能は、96時間のインキュベーションの後にいずれかの阻害剤の濃度の増加とともに低下することを示す。また、GalNMeSulは、ManNMeSulより低い濃度で効果を示すように考えられる。遷移状体阻害剤であるN−メタンスルホニル誘導体は、特に興味深いものである。N−メタンスルホニル基は、通常のN−アセチル基とほぼ同じサイズであり、したがって、受容体によるPSAの認識に影響を及ぼすとは考え難く、また本質的に反応性の官能基を含まない。それにもかかわらず、N−メタンスルホニルマンノサミンおよびN−メタンスルホニルガラクトサミンの両方が3種の細胞株のすべてのアポトーシスを誘発し、したがって、PSA脱N−アセチラーゼを阻害する効果を示す。
【0136】
(実施例11)
化学合成PSA誘導体を用いたPSA脱N−アセチラーゼ阻害剤複合糖質の改変
細胞の種類によって、表面複合糖質上で発現したシアル酸の15%〜90%を他の複合糖質から捕捉または再利用することによって得る(「Essentials of Glycobiology」、Varkiら編、Cold Spring Harbor Press、NY 1999年)。N−修飾ヘキソサミン誘導体がPSAをほとんどまたはまったく発現しない正常細胞に対して有毒である場合、捕捉メカニズム(scavenging mechanisms)が生合成および異化経路を迂回するので、PSA脱N−アセチラーゼのN−修飾ノイラミン酸誘導体阻害剤をN−修飾PSAまたはN−修飾PSA複合糖質として提供することは、がんの治療に有利である可能性がある。
実施例5に従ってポリα(2→8)N−アクリルノイラミン酸材料を製造し、滅菌ろ過して凝集体を除去し、増殖培地に加え、ジャーカット細胞の細胞生存能に対するその効果を非添加またはN−アクリルマンノサミンと比較して上で述べた細胞生存能検定およびGuava EastCyteフローサイトメーターを用いて測定した。結果を図9に示す。N−アクリルPSAは、24時間のインキュベーションの後にジャーカット細胞の生存能を低下させた。結果から、N−アクリルPSAは、細胞により取り込まれることができ、細胞傷害性である。細胞死を誘発するのに必要なN−アクリルPSAの濃度はN−アクリルマンノサミンと比較してN−アクリルPSAが高いが、N−アクリル修飾PSA誘導体は、シアル酸の発現がより低く、PSAをほとんどまたはまったく発現しない正常細胞によって取り込まれる可能性がより低いので、N−アクリル修飾PSA誘導体の使用はがんの治療に有利である可能性がある。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象におけるがん細胞の成長を阻害する方法であって、
ポリシアル酸(PSA)脱N−アセチラーゼの阻害剤を含む有効量の薬学的に許容される製剤を対象に投与する段階を含み、
前記阻害剤は、以下の式(I)で表されるヘキソサミン化合物、および以下の式(II)のノイラミン酸化合物:
【化1】

からなる群から選択されるアミノ糖のN−置換誘導体、
またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、水和物、プロドラッグ、アノマー、互変異性体および立体異性体形であり、
式中、−NH−Rおよび−NH−R’は、前記PSA脱N−アセチラーゼによって触媒されるアミド結合加水分解反応の阻害剤を含み、
各R、R’、R’、R、R、R’、R、R’、R’およびR’は、独立に水素またはヘテロ原子、アルキル、アリール、シクロアルキル、ヘテロアリール、アルケニル、アシル、スルホニル、炭水化物、脂質、核酸、ペプチド、色素、発蛍光団およびポリペプチドからなる群から選択される置換もしくは非置換部分であり、
ただし、前記PSA脱N−アセチラーゼの阻害剤は、非アセチル化もしくはテトラ−O−アセチル化N−フルオロアセチルマンノサミン、非アセチル化もしくはテトラ−O−アセチル化N−フルオロアセチルガラクトサミン、非アセチル化もしくはテトラ−O−アセチル化N−フルオロアセチルグルコサミン、非アセチル化もしくはテトラ−O−アセチル化N−クロロアセチルマンノサミン、非アセチル化もしくはテトラ−O−アセチル化N−クロロアセチルガラクトサミン、非アセチル化もしくはテトラ−O−アセチル化N−クロロアセチルグルコサミン、非アセチル化もしくはテトラ−O−アセチル化N−ブロモアセチルマンノサミン、非アセチル化もしくはテトラ−O−アセチル化N−ブロモアセチルガラクトサミン、非アセチル化もしくはテトラ−O−アセチル化N−ブロモアセチルグルコサミン以外であり、
前記投与は、前記阻害剤に曝露したがん細胞の生存能の低下を促進する、方法。
【請求項2】
前記がん細胞が脱N−アセチル化シアル酸(deNAcSA)エピトープを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記対象が細胞分裂中のがん細胞の表面上の前記deNAcSAエピトープを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
がんが黒色腫または白血病である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
がんが神経芽腫である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
阻害剤を注入または局所注射により投与する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記投与ががん細胞を除去するための外科的介入の前である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記投与ががん細胞を除去するための外科的介入時もしくは後である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
対象への免疫療法、がん化学療法または放射線療法の少なくとも1つの適用をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
アミノ糖の前記N−置換誘導体が2つまたはそれ以上の分子の結合体を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記結合体が非結合型基質阻害剤と比べて細胞取込みを変化させる、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
およびR’がハロアセチル、アシルおよびスルホニルからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記ハロアセチルが−C(O)CHF、−C(O)CHCl、−C(O)CHBr、−C(O)CHI、−C(O)CHF、−C(O)CHCl、−C(O)CHBr、−C(O)CF、−C(O)CClおよび−C(O)CBrからなる群から選択される遊離基であり、前記アシルが−C(O)CH=CHおよび−C(O)C(=CH)(CH)からなる群から選択される遊離基であり、前記スルホニルが−S(=O)(CH)からなる群から選択される遊離基である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
式(I)の前記ヘキソサミン化合物が以下の式(III)のマンノサミン化合物、式(IV)のガラクトサミン化合物、または式(V)のグルコサミン化合物:
【化2】

から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
各R、R、RおよびRが水素および置換または非置換アシルからなる群から独立に選択され、各Rが−C(O)CH=CH、−C(O)C(=CH)(CH)、−C(O)CHF、−C(O)CHCl、−C(O)CHBr、−C(O)CHI、−S(=O)(CH)、−C(O)CHF、−C(O)CHCl、−C(O)CHBr、−C(O)CF、−C(O)CClおよび−C(O)CBrからなる群の遊離基から独立に選択される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記阻害剤がN−アクリルマンノサミン、N−アクリルガラクトサミン、N−アクリルグルコサミン、N−メタクリルマンノサミン、N−メタクリルガラクトサミン、N−メタクリルグルコサミン、N−ヨードアセチルマンノサミン、N−ヨードアセチルガラクトサミン、N−ヨードアセチルグルコサミン、N−メタンスルホニルマンノサミン、N−メタンスルホニルガラクトサミン、N−メタンスルホニルグルコサミン、N−ジフルオロアセチルマンノサミン、N−ジフルオロアセチルガラクトサミン、N−ジフルオロアセチルグルコサミン、N−ジクロロアセチルマンノサミン、N−ジクロロアセチルガラクトサミン、N−ジクロロアセチルグルコサミン、N−ジブロモアセチルマンノサミン、N−ジブロモアセチルガラクトサミン、N−ジブロモアセチルグルコサミン、N−トリフルオロアセチルマンノサミン、N−トリフルオロアセチルガラクトサミン、N−トリフルオロアセチルグルコサミン、N−トリクロロアセチルマンノサミン、N−トリクロロアセチルガラクトサミン、N−トリクロロアセチルグルコサミン、N−トリブロモアセチルマンノサミン、N−トリブロモアセチルガラクトサミンおよびN−トリブロモアセチルグルコサミンからなる群から選択されるN−置換ヘキソサミン、または薬学的に許容されるその塩、溶媒和物、水和物およびプロドラッグ形、そのアノマー、互変異性体および立体異性体、ならびにその誘導体を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記阻害剤がN−アクリルノイラミン酸、N−メタクリルノイラミン酸、N−フルオロアセチルノイラミン酸、N−クロロアセチルノイラミン酸、N−ブロモアセチルノイラミン酸、N−ヨードアセチルノイラミン酸、N−メタンスルホニルノイラミン酸、N−ジフルオロアセチルノイラミン酸、N−ジクロロアセチルノイラミン酸、N−ジブロモアセチルノイラミン酸、N−トリフルオロアセチルノイラミン酸、N−トリクロロアセチルノイラミン酸およびN−トリブロモアセチルノイラミン酸からなる群から選択されるN−置換ノイラミン酸、または薬学的に許容されるその塩、溶媒和物、水和物およびプロドラッグ形、そのアノマー、互変異性体および立体異性体、ならびにその誘導体を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記阻害剤が凝集体を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記凝集体が顕微鏡的粒子を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
薬学的に許容される賦形剤中有効な量のポリシアル酸(PSA)脱N−アセチラーゼの阻害剤を含む医薬組成物であって、前記阻害剤は、以下の式(I)のヘキソサミン化合物のN−置換誘導体、または以下の式(II)のノイラミン酸化合物のN−置換誘導体:
【化3】

あるいは薬学的に許容されるその塩、溶媒和物、水和物およびプロドラッグ形、そのアノマー、互変異性体および立体異性体であり、
式中、RおよびR’は、ハロアセチル、アシルアルケニルおよびスルホニルからなる群から選択され、
各R、R’、R’、R、R、R’、R、R’、R’およびR’は、独立に水素またはヘテロ原子、アルキル、アリール、シクロアルキル、ヘテロアリール、アルケニル、アシル、スルホニル、炭水化物、脂質、核酸、ペプチド、色素、発蛍光団およびポリペプチドからなる群から選択される置換もしくは非置換部分であり、ただし、前記PSA脱N−アセチラーゼの阻害剤は、非アセチル化もしくはテトラ−O−アセチル化N−フルオロアセチルマンノサミン、非アセチル化もしくはテトラ−O−アセチル化N−フルオロアセチルガラクトサミン、非アセチル化もしくはテトラ−O−アセチル化N−フルオロアセチルグルコサミン、非アセチル化もしくはテトラ−O−アセチル化N−クロロアセチルマンノサミン、非アセチル化もしくはテトラ−O−アセチル化N−クロロアセチルガラクトサミン、非アセチル化もしくはテトラ−O−アセチル化N−クロロアセチルグルコサミン、非アセチル化もしくはテトラ−O−アセチル化N−ブロモアセチルマンノサミン、非アセチル化もしくはテトラ−O−アセチル化N−ブロモアセチルガラクトサミン、非アセチル化もしくはテトラ−O−アセチル化N−ブロモアセチルグルコサミン以外である、医薬組成物。
【請求項21】
前記ハロアセチルが−C(O)CHF、−C(O)CHCl、−C(O)CHBr、−C(O)CHI、−C(O)CHF、−C(O)CHCl、−C(O)CHBr、−C(O)CF、−C(O)CClおよび−C(O)CBrからなる群から選択される遊離基であり、前記アシルアルケニルが−C(O)CH=CHおよび−C(O)C(=CH)(CH)からなる群から選択される遊離基であり、前記スルホニルが−S(=O)(CH)からなる群から選択される遊離基である、請求項20に記載の医薬組成物。
【請求項22】
前記式(I)のヘキソサミン化合物が以下の式(III)のマンノサミン化合物、式(IV)のガラクトサミン化合物、または式(V)のグルコサミン化合物:
【化4】

から選択される、請求項20に記載の医薬組成物。
【請求項23】
各R、R、RおよびRが水素および置換または非置換アシルからなる群から独立に選択され、各Rが−C(O)CH=CH、−C(O)C(=CH)(CH)、−C(O)CHF、−C(O)CHCl、−C(O)CHBr、−C(O)CHI、−S(=O)(CH)、−C(O)CHF、−C(O)CHCl、−C(O)CHBr、−C(O)CF、−C(O)CClおよび−C(O)CBrからなる群の遊離基から独立に選択される、請求項22に記載の医薬組成物。
【請求項24】
前記阻害剤が凝集体を含む、請求項20に記載の医薬組成物。
【請求項25】
前記凝集体が顕微鏡的粒子を含む、請求項24に記載の医薬組成物。
【請求項26】
薬学的に許容される賦形剤中有効な量のポリシアル酸(PSA)脱N−アセチラーゼの阻害剤を含む医薬組成物であって、前記阻害剤がN−アクリルマンノサミン、N−アクリルガラクトサミン、N−アクリルグルコサミン、N−メタクリルマンノサミン、N−メタクリルガラクトサミン、N−メタクリルグルコサミン、N−ヨードアセチルマンノサミン、N−ヨードアセチルガラクトサミン、N−ヨードアセチルグルコサミン、N−メタンスルホニルマンノサミン、N−メタンスルホニルガラクトサミン、N−メタンスルホニルグルコサミン、N−ジフルオロアセチルマンノサミン、N−ジフルオロアセチルガラクトサミン、N−ジフルオロアセチルグルコサミン、N−ジクロロアセチルマンノサミン、N−ジクロロアセチルガラクトサミン、N−ジクロロアセチルグルコサミン、N−ジブロモアセチルマンノサミン、N−ジブロモアセチルガラクトサミン、N−ジブロモアセチルグルコサミン、N−トリフルオロアセチルマンノサミン、N−トリフルオロアセチルガラクトサミン、N−トリフルオロアセチルグルコサミン、N−トリクロロアセチルマンノサミン、N−トリクロロアセチルガラクトサミン、N−トリクロロアセチルグルコサミン、N−トリブロモアセチルマンノサミン、N−トリブロモアセチルガラクトサミンおよびN−トリブロモアセチルグルコサミンからなる群から選択されるN−置換ヘキソサミン、または薬学的に許容されるその塩、溶媒和物、水和物およびプロドラッグ形、そのアノマー、互変異性体および立体異性体、ならびにその誘導体を含む、医薬組成物。
【請求項27】
前記阻害剤が凝集体を含む、請求項26に記載の医薬組成物。
【請求項28】
前記凝集体が顕微鏡的粒子を含む、請求項27に記載の医薬組成物。
【請求項29】
薬学的に許容される賦形剤中有効な量のポリシアル酸(PSA)脱N−アセチラーゼの阻害剤を含む医薬組成物であって、前記阻害剤は、N−アクリルノイラミン酸、N−メタクリルノイラミン酸、N−フルオロアセチルノイラミン酸、N−クロロアセチルノイラミン酸、N−ブロモアセチルノイラミン酸、N−ヨードアセチルノイラミン酸、N−メタンスルホニルノイラミン酸、N−ジフルオロアセチルノイラミン酸、N−ジクロロアセチルノイラミン酸、N−ジブロモアセチルノイラミン酸、N−トリフルオロアセチルノイラミン酸、N−トリクロロアセチルノイラミン酸およびN−トリブロモアセチルノイラミン酸からなる群から選択されるN−置換ノイラミン酸、または薬学的に許容されるその塩、溶媒和物、水和物およびプロドラッグ形、そのアノマー、互変異性体および立体異性体、ならびにその誘導体を含む、医薬組成物。
【請求項30】
前記阻害剤が凝集体を含む、請求項29に記載の医薬組成物。
【請求項31】
前記凝集体が顕微鏡的粒子を含む、請求項30に記載の医薬組成物。
【請求項32】
阻害剤が、N−アクリルマンノサミン、N−アクリルガラクトサミン、N−アクリルグルコサミン、N−メタクリルマンノサミン、N−メタクリルガラクトサミン、N−メタクリルグルコサミン、N−ヨードアセチルマンノサミン、N−ヨードアセチルガラクトサミン、N−ヨードアセチルグルコサミン、N−メタンスルホニルマンノサミン、N−メタンスルホニルガラクトサミン、N−メタンスルホニルグルコサミン、N−ジフルオロアセチルマンノサミン、N−ジフルオロアセチルガラクトサミン、N−ジフルオロアセチルグルコサミン、N−ジクロロアセチルマンノサミン、N−ジクロロアセチルガラクトサミン、N−ジクロロアセチルグルコサミン、N−ジブロモアセチルマンノサミン、N−ジブロモアセチルガラクトサミン、N−ジブロモアセチルグルコサミン、N−トリフルオロアセチルマンノサミン、N−トリフルオロアセチルガラクトサミン、N−トリフルオロアセチルグルコサミン、N−トリクロロアセチルマンノサミン、N−トリクロロアセチルガラクトサミン、N−トリクロロアセチルグルコサミン、N−トリブロモアセチルマンノサミン、N−トリブロモアセチルガラクトサミンおよびN−トリブロモアセチルグルコサミンからなる群から選択されるN−置換ヘキソサミン、または薬学的に許容されるその塩、溶媒和物、水和物およびプロドラッグ形、そのアノマー、互変異性体および立体異性体、ならびにその誘導体を含む組成物。
【請求項33】
前記阻害剤が凝集体を含む、請求項32に記載の組成物。
【請求項34】
前記凝集体が顕微鏡的粒子を含む、請求項33に記載の組成物。
【請求項35】
N−アクリルノイラミン酸、N−メタクリルノイラミン酸、N−フルオロアセチルノイラミン酸、N−クロロアセチルノイラミン酸、N−ブロモアセチルノイラミン酸、N−ヨードアセチルノイラミン酸、N−メタンスルホニルノイラミン酸、N−ジフルオロアセチルノイラミン酸、N−ジクロロアセチルノイラミン酸、N−ジブロモアセチルノイラミン酸、N−トリフルオロアセチルノイラミン酸、N−トリクロロアセチルノイラミン酸およびN−トリブロモアセチルノイラミン酸からなる群から選択されるN−置換ノイラミン酸、または薬学的に許容されるその塩、溶媒和物、水和物およびプロドラッグ形、そのアノマー、互変異性体および立体異性体、ならびにその誘導体を含む組成物。
【請求項36】
前記阻害剤が凝集体を含む、請求項35に記載の組成物。
【請求項37】
前記凝集体が顕微鏡的粒子を含む、請求項36に記載の組成物。
【請求項38】
細胞増殖性疾患状態に罹患している宿主の治療用のキットであって、請求項24に記載のポリシアル酸(PSA)脱N−アセチラーゼの阻害剤、およびがん細胞の成長を阻害する方法における前記阻害剤の効果的な使用に関する指示書を含む、キット。
【請求項39】
脱N−アセチル化シアル酸(deNAcSA)エピトープを検出するための診断薬をさらに含む、請求項38に記載のキット。
【請求項40】
前記診断薬ががん細胞の細胞外でアクセスできる表面上の脱N−アセチル化シアル酸(deNAcSA)エピトープを検出するのに適する抗体またはその誘導体を含む、請求項39に記載のキット。
【請求項41】
前記抗体がSEAM3抗体(ATCC寄託番号HB−12170)である、請求項39に記載のキット。
【請求項42】
アミノ糖の前記N−置換誘導体が2つまたはそれ以上の分子の結合体を含む、請求項38に記載のキット。
【請求項43】
前記結合体が非結合型基質阻害剤と比較して細胞取込みを変化させる、請求項42に記載のキット。
【請求項44】
前記結合体が検出可能な標識を含む、請求項42に記載のキット。
【請求項45】
前記検出可能な標識が発蛍光団である、請求項44に記載のキット。
【請求項46】
前記阻害剤が凝集体を含む、請求項20に記載の医薬組成物。
【請求項47】
前記凝集体が顕微鏡的粒子を含む、請求項46に記載の医薬組成物。
【請求項48】
凝集体を形成するように、1つまたは複数のポリシアル酸脱N−アセチラーゼ阻害剤のモノマーを凝集条件下で混合する段階を含む、
ポリシアル酸脱N−アセチラーゼ阻害剤またはポリシアル酸結合体を含む凝集体を製造する方法。
【請求項49】
凝集条件が加熱または凝集賦形剤の添加である、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
加熱が30℃〜70℃である、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
凝集賦形剤が水酸化アルミニウムである、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
凝集体が粒子である、請求項49に記載の方法。
【請求項53】
粒子が顕微鏡的である、請求項52に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2010−532388(P2010−532388A)
【公表日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−515274(P2010−515274)
【出願日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際出願番号】PCT/US2008/069194
【国際公開番号】WO2009/006591
【国際公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【出願人】(505307563)チルドレンズ ホスピタル アンド リサーチ センター アット オークランド (12)
【Fターム(参考)】