説明

ポリチオフェンおよびポリチオフェンを含む電子デバイス

【課題】電子デバイスに適用可能であって、塩素化溶剤を含有しない有機溶媒にも可溶な半導体組成物を提供する。
【解決手段】式(A)の繰返し単位を含むポリチオフェンである。


上記式中、AおよびBが独立して、炭素数が1〜約25のアルキルである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、様々な諸実施形態において、薄膜トランジスタ(「TFT」)などの電子デバイスにおける使用に適している組成物および方法に関する。本発明はまた、このような組成物および方法を用いて製造される成分または層、ならびにこのような材料を含む電子デバイスにも関する。
【背景技術】
【0002】
薄膜トランジスタ(TFT)の性能は、少なくとも3つの特性、移動度、電流オン/オフ比およびしきい値電圧によって測定することができる。移動度は、cm/V・秒の単位で測定され、より高い移動度が望まれる。より高い電流オン/オフ比も望まれる。しきい値電圧は、電流を流すことを可能にするためにゲート電極に印加する必要があるバイアス電圧に関する。一般に、可能な限りゼロ(0)に近いしきい値電圧が望まれる。
【0003】
大部分の高性能有機半導体が、(1)空気にさらした場合のそれら有機半導体の電気的性質の著しい劣化または(2)溶液加工性が悪いことに悩まされている。一部の溶液加工性を有し、高性能のポリチオフェン半導体が、電子デバイス用途向けに知られている。たとえば、PQT−12と称される半導体ポリチオフェンについては、いくつかの出願に記載されている。
【0004】
【化1】

【0005】
一般的に言えば、長鎖ペンダントアルキル側鎖はポリチオフェンに高い溶解度を付与する。このポリチオフェンを用い周囲条件において製造された有機薄膜トランジスタ(OTFT)においては、優れた電界効果トランジスタ(FET)特性が実現される。
【0006】
PQT−12もまた高い自己集合能を有する。大部分の高移動度溶液加工性半導体のように、この強い自己集合能は、図1に示すように、広範囲に及ぶラメラ秩序化を促進する、主鎖に沿った長鎖ペンダント側鎖の立体規則性配置から生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第6,770,904号明細書
【特許文献2】米国特許第7,132,500号明細書
【特許文献3】米国特許第7,282,733号明細書
【特許文献4】米国特許第7,250,625号明細書
【特許文献5】米国特許第7,141,644号明細書
【特許文献6】米国特許第6,890,868号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、PQT−12は、最も一般的な有機溶媒に十分に可溶性ではない。その結果、PQT−12には、最適性能のために、クロロベンゼンやジクロロベンゼンなど環境的に望ましくない塩素化溶剤中における加工が必要となる。また残念なことに、これにより、室温で溶液がゲル化してしまう。これは、有機TFTへのポリチオフェンの適用を容易にするために堆積溶液(deposition solution)が一般に望まれるため、問題である。このゲル化の問題に対する1つの解決策は、堆積溶液の温度を上昇させることである。この手法では、依然として、最適性能を得るための加工用に塩素化芳香族溶剤の使用が必要となり、したがって製造環境におけるその一般的適用が大幅に制限されてしまう。
【0009】
製造プロセスから塩素化溶剤を排除することが望ましいはずである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
以下に示す式(A)の繰返し単位を含むポリチオフェンである。
【0011】
【化2】

【0012】
上記式中、AおよびBが独立して、炭素数が1〜約25のアルキルである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】立体規則性を有するポリチオフェンのラメラ秩序化を示す図である。
【図2】TFTの第1の例示的実施形態を示す図である。
【図3】TFTの第2の例示的実施形態を示す図である。
【図4】TFTの第3の例示的実施形態を示す図である。
【図5】TFTの第4の例示的実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、様々な諸実施形態において、高い溶解度を実現するために塩素化溶剤の使用を必要としないポリチオフェンを対象とする。これらのポリチオフェンはまた、移動度が高く、オン/オフ比性能も優れている。
【0015】
図2は、第1のOTFTの実施形態または構成を示す。OTFT10は、ゲート電極30と誘電体層40とに接している基板20を備える。ここではゲート電極30を基板20内に示しているが、これは要求されない。しかしながら、誘電体層40によりゲート電極30がソース電極50、ドレイン電極60および半導体層70から分離されることがいくらか重要である。ソース電極50は半導体層70と接している。ドレイン電極60も半導体層70と接している。半導体層70はソース電極50およびドレイン電極60の上と、ソース電極50とドレイン電極60との間を走っている。光学界面層80が、誘電体層40と半導体層70との間に位置する。
【0016】
図3は、第2のOTFTの実施形態または構成を示す。OTFT10は、ゲート電極30と誘電体層40とに接している基板20を備える。半導体層70は、誘電体層40を覆って、または誘電体層40の上に設置され、誘電体層40をソース電極50およびドレイン電極60から分離する。光学界面層80が、誘電体層40と半導体層70との間に位置する。
【0017】
図4は、第3のOTFTの実施形態または構成を示す。OTFT10は、ゲート電極としても働き誘電体層40と接している基板20を備える。半導体層70は、誘電体層40を覆って、または誘電体層40の上に設置され、誘電体層40をソース電極50およびドレイン電極60から分離する。光学界面層80が、誘電体層40と半導体層70との間に位置する。
【0018】
図5は、第4のOTFTの実施形態または構成を示す。OTFT10は、ソース電極50と、ドレイン電極60と、半導体層70とに接している基板20を備える。半導体層70はソース電極50およびドレイン電極60の上と、ソース電極50とドレイン電極60との間を走っている。誘電体層40は半導体層70の上にある。ゲート電極30は誘電体層40の上にあり、半導体層70とは接していない。光学界面層80が、誘電体層40と半導体層70との間に位置する。
【0019】
溶液におけるPQT−12などのポリチオフェンの自己組織化能は、介在するチエニレン部分に小さい置換基を組み込むことでポリチオフェンの構造的立体規則性(structural regioregularity)をわずかに乱すことによって大きく抑制され、または排除されることがわかっている。特に、このわずかな構造的改質により、溶液におけるポリチオフェンのゲル化が抑制されるが、ポリチオフェンは依然として固体状態で自己集合する強い傾向を有し、その結果高い移動度が依然として得られる。したがって、高い移動度を実現しながらもポリチオフェンの溶解度を調節することができる。
【0020】
本明細書に開示の半導体ポリチオフェンは、下記式(A)の繰返し単位を含む。
【0021】
【化3】

【0022】
上記式中、AおよびBはそれぞれ、炭素数が1〜約25のアルキルであり、AはBよりも長い。
【0023】
特定の諸実施形態においては、Aが、炭素数8〜約12を含めた炭素数6〜約25のアルキルである。具体的な諸実施形態においては、Aがn−C1225である。特定の諸実施形態においては、Bが炭素数1〜約4のアルキルである。具体的な諸実施形態においては、Bがメチルである。さらに具体的な諸実施形態においては、Aがn−C1225で、Bがメチルである。
【0024】
半導体ポリチオフェンは、約5,000〜約100,000を含めた約2,000〜約200,000の重量平均分子量を有することができる。
【0025】
より特定の諸実施形態においては、ポリチオフェンが下記式(B)のコポリチオフェンである。
【0026】
【化4】

【0027】
上記式中、AおよびBはそれぞれ炭素数が1〜約25のアルキルであり、AはBよりも長く、a、b、c、d、e、f、およびgはそれぞれ1〜約7であり、yは0よりも大きく、xおよびyは合わせて100モルパーセントに等しい。
【0028】
コポリチオフェンもまた、約5,000〜約100,000を含めた約2,000〜約200,000の重量平均分子量を有することができる。
【0029】
式(B)において、Aはn−C1225でよく、Bはメチルでよい。特定の諸実施形態においては、a、c、d、e、f、およびgがそれぞれ1で、bが2である。変数xは、約5〜約95モルパーセントでよく、変数yは、約95〜約5モルパーセントでよい。より具体的な諸実施形態においては、変数xが約50〜約95モルパーセントで、変数yが約50〜約5モルパーセントである。
【0030】
特定の諸実施形態においては、コポリチオフェンが下記式(C)である。
【0031】
【化5】

【0032】
式中、xもyも共に0よりも大きく、xおよびyは合わせて100モルパーセントになる。
【0033】
本明細書に開示のポリチオフェンは、当技術分野で公知の方法を用いて合成することができる。たとえば、このようなポリチオフェンの1つは、下記スキーム1に示すように製造することができる。
【0034】
【化6】

【0035】
ここで、Ni(dppe)Clは、ビス(ジフェニルホスフィノエタン)ジクロロニッケル(II)である。
【0036】
コポリチオフェンは、下記スキーム2に示すように製造することができる。
【0037】
【化7】

【0038】
本明細書に開示のポリチオフェンの溶解度は調整することができるため、より一般的な有機溶媒を使用して堆積溶液を形成することができる。これらの溶媒としては、トルエン、キシレン、メシチレン、トリメチルベンゼン、エチルベンゼン、エチルトルエン、プロピルベンゼン、ジエチルベンゼン、テトラヒドロナフタレン、クロロベンゼンおよびジクロロベンゼンを挙げることができるが、これらに限定されない。他の諸実施形態においては、無塩素系溶媒を使用することができる。例示的な無塩素系溶媒としては、トルエン、キシレン、メシチレン、トリメチルベンゼン、エチルベンゼン、エチルトルエン、プロピルベンゼン、テトラヒドロナフタレンおよびジエチルベンゼンが挙げられる。
【0039】
堆積溶液を使用してポリチオフェンを堆積させて、たとえば、薄膜トランジスタなどの電子デバイスにおける半導体層を形成することができる。
【0040】
TFTは一般的に、支持基板と、3つの導電性電極(ゲート電極、ソース電極およびドレイン電極)と、チャネル半導体層と、ゲート電極を半導体層から分離する電気絶縁性ゲート誘電体層とで構成される。
【0041】
必要に応じて、半導体層は、別の有機半導体材料をさらに含むことができる。他の有機半導体材料の例として、アントラセン、テトラセン、ペンタセンおよびそれらの置換誘導体などのアセン類、ペリレン類、フラーレン類、オリゴチオフェン類、トリアリールアミンポリマー、ポリインドロカルバゾール、ポリカルバゾール、ポリアセン類、ポリフルオレン、銅フタロシアニンや亜鉛フタロシアニンなどのフタロシアニン類、それらの置換誘導体など他の半導体ポリマーが挙げられるが、これらに限定されない。
【0042】
半導体層は厚さ約5nm〜約1000nm、とりわけ厚さ約10nm〜約100nmである。この半導体層は、任意の適切な方法によって形成することができる。しかしながら、半導体層は一般的に、分散液や溶液などの液体組成物から形成され、その後トランジスタの基板上に堆積される。例示的な堆積法には、スピンコーティング、ディップコーティング、ブレードコーティング、ロッドコーティング、スクリーン印刷、スタンピング、インクジェット印刷などの液体堆積、および当技術分野で公知である他の従来のプロセスが含まれる。
【0043】
基板は、シリコン、ガラス板、プラスチックフィルムまたはシートが含まれるがこれらに限定されない材料で構成することができる。構造的に可撓性のデバイスには、たとえば、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリイミドシートなどのプラスチック基板を使用することができる。
【0044】
ゲート電極は、導電性材料で構成される。ゲート電極の厚さは、金属膜については約10〜約500ナノメートル、導電性ポリマーについては約0.5〜約10マイクロメートルの範囲に及ぶ。
【0045】
誘電体層は一般的に、無機材料膜、有機ポリマー膜または有機−無機複合体膜であってもよい。誘電体層の厚さは、使用する材料の誘電率に依存し、たとえば、約10ナノメートル〜約500ナノメートルでよい。誘電体層は、たとえば、約10−12ジーメンス/センチメートル(S/cm)未満である導電率を有することができる。
【0046】
必要に応じて、誘電体層と半導体層との間に界面層を設置することができる。有機薄膜トランジスタにおける電荷輸送は、これら2つの層の界面で起こるため、界面層がTFTの特性に影響を及ぼすことがある。
【0047】
ソース電極およびドレイン電極としての使用に適している典型的な材料として、金、銀、ニッケル、アルミニウム、白金、導電性ポリマー、導電性インクなどのゲート電極材料が挙げられる。具体的な諸実施形態においては、電極材料の半導体に対する接触抵抗が小さい。典型的な厚さは、たとえば、約40ナノメートル〜約1マイクロメートルで、より具体的な厚さは約100〜約400ナノメートルである。本明細書に開示のOTFTデバイスは半導体チャネルを含む。半導体チャネル幅は、たとえば、約5マイクロメートル〜約5ミリメートルで、具体的なチャネル幅は約100マイクロメートル〜約1ミリメートルである。半導体チャネル長は、たとえば、約1マイクロメートル〜約1ミリメートルでよく、より具体的なチャネル長は約5マイクロメートル〜約100マイクロメートルである。
【0048】
ソース電極は接地されており、たとえば、約0ボルト〜約80ボルトのバイアス電圧をドレイン電極に印加して、たとえば、約+10ボルト〜約−80ボルトの電圧をゲート電極に印加した場合に半導体チャネルを横切って輸送される電荷キャリアを収集する。これらの電極は、当技術分野で公知である従来のプロセスを用いて形成するまたは堆積させることができる。
【0049】
必要に応じて、TFTの上にバリア層を堆積させて、TFTの電気的特性を劣化させることがある光、酸素、水分などの環境条件からTFTを保護することもできる。このようなバリア層は当技術分野で公知であるが、主にポリマーで構成することもできる。
【0050】
OTFTの様々な構成要素は、図からわかる通り、基板上に任意の順序で堆積させることができる。用語「基板上」は、各構成要素が直接基板と接していることを必要とすると解釈すべきではない。この用語は、基板に対する構成要素の位置を説明していると解釈すべきである。しかしながら、一般的にゲート電極と半導体層は共に誘電体層と接するべきである。加えて、ソース電極およびドレイン電極は共に半導体層と接するべきである。本明細書に開示の方法によって形成される半導体ポリマーを、有機薄膜トランジスタの任意の適切な構成要素上に堆積させて、そのトランジスタの半導体層を形成することができる。
【0051】
得られたトランジスタは、諸実施形態において、0.1cm/V・秒以上を含めた0.01cm/V・秒以上の移動度を有することができる。電流オン/オフ比は10以上でよい。
【実施例】
【0052】
[実施例1]
ポリ[5,5’−ビス(3−ドデシル−2−チエニル)−3−メチル−2,2’−ジチオフェン]を、スキーム1に記載されている通りに調製した。このポリチオフェンは、上記スキーム1のポリチオフェン1に対応する。
【0053】
<モノマーの調製>
不活性アルゴン雰囲気下の250ミリリットル丸底フラスコ中の、磁気的に撹拌したマグネシウム削り状(1.69グラム、69.52mmol)の10ミリリットルTHF懸濁液に、2−ブロモ−3−ドデシルチオフェン(15.36グラム、46.36mmol)の30ミリリットル無水テトラヒドロフラン(THF)溶液を、20分の時間をかけてゆっくりと添加した。得られた混合物を、室温で2.5時間撹拌し、次いで50℃で30分間撹拌した後、室温まで冷却した。
【0054】
次いで、得られた新しい調製グリニャール試薬、3−ドデシル−2−臭化チオフェンマグネシウムを、不活性雰囲気下の250ミリリットル丸底フラスコ中の、5,5’−ジブロモ−3−メチル−2,2’−ジチオフェン(6.27グラム、18.54mmol)とNi(dppe)Cl(0.48グラム、0.91mmol)との50ミリリットル無水THF混合液に、カニューレを通して添加し、48時間還流した。続いて、この反応混合物を200ミリリットルの酢酸エチルで希釈し、水で2回洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させた。溶媒の蒸発後に得られた暗褐色のシロップを、シリカゲルのカラムクロマトグラフィによって精製し、メタノールとイソプロパノールとの混合物から再結晶化させることにより、8.61グラム(68%)の5,5’−ビス(3−ドデシル−2−チエニル)−3−メチル−2,2’−ジチオフェン(スキーム1におけるモノマー1)が橙黄色の結晶性生成物として得られた(融点=34℃)。
【0055】
1H NMR (CDCl3): δ 7.19 (m, 2H), 7.10 (m, 2H), 6.95(m, 3H), 2.80 (t, 4H), 2.43 (s, 3H), 1.67 (q, 1.65, 4H), 1.28 (bs, 36H), 0.89 (m, 6H).
【0056】
<ポリマーの調製>
ポリ[5,5’−ビス(3−ドデシル−2−チエニル)−3−メチル−2,2’−ジチオフェン]、ポリチオフェン1を、米国特許第6,770,904号に記載されている、塩化第二鉄を用いた方法と同様の手順を適用して調製した。ヘキセンを用い、その後クロロベンゼンを用いたソックスレー抽出によって最終ポリチオフェン生成物を精製した。このポリマーの収率は57%、分子量は重量平均分子量Mw=29,200、数平均分子量Mn=14,800であった。
【0057】
[実施例2]
上記のスキーム2に従って3種のコポリチオフェンを調製した。米国特許第6,770,904号に記載されている方法によって、モノマー2を調製した。実施例1で説明した方法によってモノマー1を調製した。
【0058】
コポリチオフェン2aでは、x=90モル%、y=10モル%。
【0059】
コポリチオフェン2bでは、x=80モル%、y=20モル%。
【0060】
コポリチオフェン2cでは、x=50モル%、y=50モル%。
【0061】
コポリチオフェン2aでは、不活性アルゴン雰囲気中にある100ミリリットルの丸底フラスコ中の、よく撹拌したFeCl(500mg、3.08mmol)の5ミリリットルクロロベンゼン混合液に、5,5’−ビス(3−ドデシル−2−チエニル)−2,2’−ジチオフェン(モノマー2)(500mg、0.75mmol)と5,5’−ビス(3−ドデシル−2−チエニル)−3−メチル−2,2’−ジチオフェン(モノマー1)(57mg、0.084mmol)とを混合した10mlクロロベンゼン溶液を、約5分の時間をかけてゆっくりと添加した。この混合物を60℃で48時間撹拌した。重合の後、混合物を50ミリリットルの塩化メチレンで希釈し、水で3回洗浄した。分離した有機相を、7.5パーセントアンモニア水溶液150ミリリットルを用いて1時間撹拌し、水相が透明になるまで水で洗浄し、その後メタノールに注いで粗コポリマーを沈殿させた。最終コポリマー生成物を、ヘプタンを用いた、次いでクロロベンゼンを用いたソックスレー抽出によって精製した。
【0062】
コポリチオフェン2aは、ポリスチレン標準に対してMw=30,600、またMn=17,400であった。精製後の収率は86%であった。
【0063】
コポリチオフェン2bおよび2cを同様に調製した。
【0064】
コポリチオフェン2bは、ポリスチレン標準に対してMw=21,500、またMn=15,400であった。精製後の収率は79%であった。
【0065】
コポリチオフェン2cは、ポリスチレン標準に対してMw=21,600、またMn=10,900であった。精製後の収率は68%であった。
【0066】
[比較例]
比較の目的で、ベースラインのポリチオフェンはPQT−12、ポリ(3,3’’’−ジドデシルクアテルチオフェン)であった。PQT−12は、これまで米国特許第6,770,904号に記載されていた。
【0067】
[比較および結果]
堆積溶液を作製した。実施例1のポリチオフェン1、ならびに実施例2のコポリチオフェン2a、2bおよび2cをキシレンに溶解させた。比較例のPQT−12をジクロロベンゼンに溶解させた。これらの溶液は、ポリチオフェンを0.3〜1wt%含んでいた。
【0068】
その後、これらの堆積溶液を用いて有機薄膜トランジスタ(OTFT)を作製した。OTFTの作製およびキャラクタリゼーションは、材料およびデバイスを空気、水分または光への暴露から切り離すよう警戒することなく周囲条件下で行った。
【0069】
基板としてのn−ドープシリコンウェーハと、誘電体層としての110nmの熱酸化ケイ素(SiO)を有するゲート電極とを用いてボトムゲートTFTデバイスを構築した。60℃のトルエン中の0.1MのOTS−8に、洗浄したシリコンウェーハ基板を20分間浸漬することによって、SiOの表面をオクチルトリクロロシラン(OTS−8)で改質した。続いてこのウェーハをトルエンおよびイソプロパノールですすぎ、その後空気流で乾燥させた。
【0070】
1000rpmで120秒間、堆積溶液のスピンコーティングを行い、その後真空乾燥を行うことによって、OTS−8で改質したSiO層上に半導体層を堆積させて、厚さ20〜50nmの半導体層を得た。
【0071】
続いて、シャドウマスクを通して真空蒸発を行うことによって、金のソースおよびドレイン電極を堆積させ、したがって様々なチャネル長(L)およびチャネル幅(W)寸法を有する一連のTFTがもたされた。120〜140℃の真空オーブン中で乾燥させたTFTデバイスを15〜30分間加熱することによって、これらのデバイスをすべてアニールし、その後室温まで冷却した。
【0072】
チャネル長が90μmまたは190μmでチャネル幅が1mmまたは5mmであるパターン化したトランジスタを、電流/電圧測定に使用した。その後、周囲条件下でケースレー(Keithley)SCS−4200キャラクタリゼーションシステムを用いてTFTデバイスを評価した。
【0073】
これらのTFTすべての電界効果移動度を、以下の方程式を用いて飽和領域から抽出した。
飽和領域:I=Cμ(W/2L)(V−V
式中、Iはドレイン電流、Cはゲート誘電体層の単位面積当たりの容量、WおよびLはチャネルの幅および長さ、VおよびVはそれぞれゲート電圧およびしきい値電圧である。これらのOTFTの移動度および電流オン/オフ比を表1にまとめる。
【0074】
【表1】

【0075】
実験結果は、PQT−12のキシレンコーティング溶液は安定せず、室温まで冷却するとすぐにゲル化することを示していた。したがって、PQT−12コーティング溶液にはジクロロベンゼンを使用した。その結果、ポリチオフェン1ならびにコポリチオフェン2a、2bおよび2c用のコーティング溶媒としてキシレンを使用することができることがわかった。言い換えると、ポリチオフェン1ならびにコポリチオフェン2a、2bおよび2cのキシレンへの溶解度が著しく増大した。
【0076】
これらOTFTの結果は、モノマー2の量が増大するにつれて移動度が増大することを示したが、このことは結晶化度の漸増と一致していた。一方、モノマー1の量が増大するにつれて溶解度が増大した。
【0077】
また我々の結果により、コポリチオフェン2aが、コーティング溶媒としてキシレンを用いた場合に、PQT−12よりもはるかに優れた溶解度を有するだけでなく、0.10〜0.18cm/V・秒の高い移動度および10のオン/オフ比を示すこともわかった。
【符号の説明】
【0078】
10 OTFT、20 基板、30 ゲート電極、40 誘電体層、50 ソース電極、60 ドレイン電極、70 半導体層、80 光学界面層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(A)の繰返し単位を含むポリチオフェン。
【化1】

(上記式中、AおよびBが独立して、炭素数が1〜約25のアルキルである。)
【請求項2】
請求項1に記載のポリチオフェンにおいて、Aがn−C1225であり、Bがメチルであることを特徴とするポリチオフェン。
【請求項3】
請求項1に記載のポリチオフェンにおいて、AがBよりも長いことを特徴とするポリチオフェン。
【請求項4】
半導体層を有する電子デバイスであって、前記半導体層がポリチオフェンを含み、前記ポリチオフェンが下記式(A)の繰返し単位を含む、電子デバイス。
【化2】

(上記式中、AおよびBが独立して、炭素数が1〜約25のアルキルである。)

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2010−138395(P2010−138395A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−277176(P2009−277176)
【出願日】平成21年12月7日(2009.12.7)
【出願人】(596170170)ゼロックス コーポレイション (1,961)
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
【Fターム(参考)】