説明

ポリプロピレン系樹脂積層発泡シート及びその成形体

【課題】 本発明の目的は、熱成形性、熱成形後の外観に優れ、成形加熱時の積層発泡シートの熱収縮による帯電防止性能の低下が見られないポリプロピレン系樹脂積層発泡シートおよびその成形体を提供することにある。
【解決手段】 ポリプロピレン系樹脂、ラジカル重合性単量体、ラジカル重合開始剤からなる特定のメルトフローレイトを有する改質ポリプロピレン系樹脂を基材とした発泡シートの少なくとも片面に、高分子型帯電防止剤を含有するポリプロピレン系樹脂非発泡層を積層し、該積層発泡シートの加熱収縮率を押出方向、幅方向ともに0〜10%にすることで、上記課題を解決することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面の帯電を嫌う電気・電子部品を運搬する際の緩衝材や仕切り材、通いトレー等として好適に用いられる帯電防止性のポリプロピレン系樹脂積層発泡シート及びその成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリプロピレン系樹脂発泡シートは剛性、耐熱性、耐薬品性、緩衝性等に優れることから、従来より食品容器や緩衝包装材として用いられている。しかしながらポリプロピレン系樹脂は帯電性が大きいために埃がつきやすく、また電子部品トレーとして用いる場合などは、表面にたまった静電気が問題となる場合があった。
【0003】
特許文献1には、ポリプロピレン系樹脂発泡体の最外層に高分子型の帯電防止剤を含有する樹脂層を積層することによって、表面のべたつきや被包装物の表面汚損のない帯電防止性能に優れたポリプロピレン系樹脂発泡体が得られるとしている。この方法では、界面活性剤タイプの帯電防止剤の使用によりこれまで問題となっていた表面のべたつきや被包装物の表面汚損は解決されたものの、ポリプロピレン系樹脂発泡体の熱成形性、熱成形後の成形品の外観や帯電防止性能についてはほとんど考慮されていなかった。
【0004】
そのため、この方法によって製造されたポリプロピレン系樹脂発泡体の熱成形性、熱成形後の成形体の外観は悪く、また熱成形によって帯電防止性能の低下が見られ、電子部品トレーとして満足な成形品を得ることができなかった。
【0005】
特許文献2には、ポリプロピレン系樹脂発泡シートの少なくとも片面に高分子型帯電防止剤を含有する合成樹脂層が積層され、該合成樹脂層を構成する高分子型帯電防止剤とポリプロピレン系樹脂について、それぞれの融点差を規定したポリプロピレン系樹脂積層発泡シートが開示されている。この方法では、ポリプロピレン系樹脂発泡シートの熱成形性、熱成形後の外観、また熱成形による帯電防止性能の低下の改善されている。しかし、成形温度条件の管理に注意が必要であり、発泡シートの目付量や密度などを変更する際の条件設定が煩雑であったり、熱成形の条件に大きな制限がある等、該ポリプロピレン系樹脂積層発泡シートには種々の問題があった。
【特許文献1】特開2003−136651号公報
【特許文献2】特開2006−035832号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、熱成形性、熱成形後の外観に優れ、成形加熱時の積層発泡シートの加熱収縮による帯電防止性能の低下が見られない、例えば電子部品トレー等の産業資材用として好適に用いられるポリプロピレン系樹脂積層発泡シートおよびその成形体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、かかる課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、本発明に至った。
すなわち本発明は、以下の構成を有するものである。
【0008】
1). ポリプロピレン系樹脂、ラジカル重合性単量体、ラジカル重合開始剤を溶融混練して得られる、230℃、2.16kgの条件におけるメルトフローレイトが0.01〜1.5g/10minの改質ポリプロピレン系樹脂を基材とするポリプロピレン系樹脂発泡シートの少なくとも片面に、高分子型帯電防止剤を含むポリプロピレン系樹脂を基材とする非発泡層が形成されたポリプロピレン系樹脂積層発泡シートにおいて、190℃の雰囲気下で1分間加熱したときの積層発泡シートの押出方向および幅方向の加熱収縮率がともに0〜10%であることを特徴とするポリプロピレン系樹脂積層発泡シート。
【0009】
2). 押出ラミネート法によりポリプロピレン系樹脂発泡シートと非発泡層を積層することを特徴とする1)記載のポリプロピレン系樹脂積層発泡シート。
【0010】
3). 押出ラミネート法によってポリプロピレン系樹脂発泡シートと非発泡層を積層する際の非発泡層を構成するポリプロピレン系樹脂を吐出するダイスのクリアランス(aμm)とポリプロピレン系樹脂積層発泡シートにおけるポリプロピレン系樹脂非発泡層の厚み(bμm)が下記(1)式を満足することを特徴とする2)記載のポリプロピレン系樹脂積層発泡シート。
【0011】
3.0≦a/b≦24.0 (1)
4). 前記高分子型帯電防止剤が、非発泡層を構成するポリプロピレン系樹脂中に2〜25重量%含まれていることを特徴とする1)〜3)いずれかに記載のポリプロピレン系樹脂積層発泡シート。
【0012】
5). 前記ポリプロピレン系樹脂発泡シートが、目付量150〜500g/m、密度0.1〜0.5g/ml、独立気泡率60%以上で、かつ厚み方向セル数が5個以上であることを特徴とする1)〜4)いずれかに記載のポリプロピレン系樹脂積層発泡シート。
【0013】
6). 1)〜5)いずれかに記載のポリプロピレン系樹脂積層発泡シートを熱成形して得られた成形体。
【発明の効果】
【0014】
本発明のように、ポリプロピレン系樹脂、ラジカル重合性単量体、ラジカル重合開始剤を溶融混練して得られる特定のメルトフローレイトを有する改質ポリプロピレン系樹脂を基材とした発泡シートの少なくとも片面に、高分子型帯電防止剤を含有するポリプロピレン系樹脂非発泡層を積層し、該積層発泡シートの加熱収縮率を押出方向、幅方向ともに0〜10%とすることで、熱成形性、熱成形後の外観に優れ、成形加熱時の積層発泡シートの熱収縮による帯電防止性能の低下が見られないポリプロピレン系樹脂積層発泡シートおよびその成形体を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明におけるポリプロピレン系樹脂積層発泡シートは、ポリプロピレン系樹脂、ラジカル重合性単量体、ラジカル重合開始剤を溶融混練して得られる特定のメルトフローレイト(以下、MFRとよぶこともある)を有する改質ポリプロピレン系樹脂からなるポリプロピレン系樹脂発泡シートと、該発泡シートの片面もしくは両面に積層された、高分子型帯電防止剤を含むポリプロピレン系樹脂を基材とする非発泡層とからなる。
【0016】
ポリプロピレン系樹脂発泡シートに非発泡層を積層する方法としては、発泡シートに非発泡層を構成する樹脂を押出ラミネート法により積層する方法、発泡シートにフィルムを熱ラミネート法により積層する方法、発泡シートを構成する樹脂と発泡剤を含む組成物と、非発泡層を構成する樹脂とを2つ以上の別異の押出機で溶融混練したのちにダイ内で積層して押出すことにより積層発泡シートを得る、いわゆる共押出法を用いる方法等が挙げられる。
【0017】
ここで、本発明において使用される高分子型帯電防止剤は、非発泡層に筋状に分散して連続層を形成した状態にすることにより、本来の帯電防止性能を発現させることができる。
【0018】
これらの方法の中では、高分子型帯電防止剤を含有した非発泡層を発泡シートへ積層する際の条件面での制約が小さく、また非発泡樹脂層の厚みに関係なく、帯電防止剤を含有する非発泡層のみを適度に配向させやすく、比較的容易に筋状に分散した帯電防止剤の連続層を形成できることから、押出ラミネート法を用いることが最も好ましい。
【0019】
押出ラミネートの代表的な方法を、図1に基づいて説明する。発泡シート1と非発泡樹脂層7とからなる積層発泡シート8を製造する方法としては、発泡シート1をニップロール2に沿わせながら、ニップロール2と冷却ロール3との間に繰り出し、Tダイ4から非発泡樹脂層7をフィルム状に押出し、ニップロール2と冷却ロール3との隙間6に繰り出し、ニップロール2と冷却ロール3とで非発泡樹脂層7と発泡シート1とを圧着、引取りすることにより、発泡シートと非発泡樹脂層とフィルムとからなる積層発泡シート8を得る。
【0020】
この際、エアギャップ5(Tダイ4から出た非発泡樹脂層7が発泡シート1に圧着されるまでの距離)を変更することにより、発泡シートからの非発泡樹脂層のはみ出しなどを調整することができると共に、発泡シートと非発泡樹脂層との界面での接着強度を改善することができる。
【0021】
ここで、押出ラミネート法によってポリプロピレン系樹脂発泡シートと非発泡層を積層する際のダイス吐出口のクリアランスaμmとポリプロピレン系樹脂積層発泡シートのポリプロピレン系樹脂非発泡層の厚みbμmが下記(1)式を満足することが、所望の帯電防止性能を有するポリプロピレン系樹脂積層発泡シートを得るうえで好ましい。
【0022】
3.0≦a/b≦24.0 (1)
ダイス吐出口のクリアランスaμmとポリプロピレン系樹脂非発泡層の厚みbμmの比(a/b)の下限値が3.0未満であると、押出ラミネート時に高分子型帯電防止剤を筋状に延伸配向させにくく、所望の帯電防止性能を得ることが困難になる傾向にある。一方、ダイス吐出口のクリアランスaμmとポリプロピレン系樹脂非発泡層の厚みbμmの比(a/b)の上限値が24.0を超えると、非発泡樹脂層のシート幅方向の厚みムラを均一にすることが困難になり、熱成形をした際に成形体の肉厚が不均一になる傾向にある。また、下限値は4.0、上限値は21であることがそれぞれより好ましい。
【0023】
本発明におけるポリプロピレン系樹脂積層発泡シートは、190℃の雰囲気下で1分間加熱した場合の押出方向(MD方向)および幅方向(TD方向)の収縮率が、共に0〜10%であり、共に0〜7%が好ましく、共に0.5〜6.5%であるのがより好ましい。さらには1.5〜6.5%であるのが特に好ましい。
【0024】
本発明において、ポリプロピレン系樹脂積層発泡シートの押出方向または幅方向の収縮率が0%に満たない場合、熱成形時のドローダウン性が大きくなり、外観が良好な成形体を得ることが困難になる傾向にある。また、押出方向または幅方向の収縮率が10%を超える場合、熱成形時のドローダウン性は改善されるものの、積層発泡シートの収縮により非発泡樹脂層に含有される帯電防止剤の筋状の配向状態が変化し、成形体にすると帯電防止性能が低下する傾向にある。
【0025】
次に、本発明に用いられる高分子型帯電防止剤について詳細に説明する。
【0026】
高分子型帯電防止剤は、ポリプロピレン系樹脂中に分散し、本発明のポリプロピレン系樹脂積層発泡シートに帯電防止性を付与する成分である。また、高分子量であるがゆえに、積層発泡シート表面を水洗いしても帯電防止効果の低下が少ないという効果を奏するものである。
【0027】
ここで、「高分子型」というのは、主鎖あるいは骨格に帯電防止機能を有する重合体あるいは主鎖あるいは骨格に帯電防止機能を有する官能基が結合した重合体を用いることができる。
【0028】
高分子型耐電防止剤を用いることにより、積層発泡シート表面のべたつきや被包装物の汚損、水洗に伴う帯電防止効果の低下を防止することができる。
【0029】
高分子型帯電防止剤としては、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイドなどのポリエーテル、ポリエーテルエステル、ポリエーテルエステルアミド、エチレン−メタクリル酸共重合体の金属塩などのアイオノマー、ポリオレフィン−ポリエーテル共重合体などが好ましい例としてあげられる。
【0030】
これらのうち、ポリオレフィン−ポリエーテル共重合体は、ポリプロピレン系樹脂中での分散が良好であり、また少ない添加量でも効果的に帯電防止性能を発現させることができるという点から好ましく用いられる。さらに、ポリオレフィンブロックとポリエーテルブロックを主成分とするブロック共重合体が前記の効果が高いことから好ましい。
【0031】
ここで、主成分とは50重量%以上が前記ポリオレフィンブロックとポリエーテルブロックで構成されるブロック共重合体であることを指し、好ましくは70重量%以上であることが好ましい。ポリオレフィンブロック/ポリエーテルブロックの比としては概ね重量比で3/1から1/3の範囲にあることが好ましい。
【0032】
ポリオレフィンブロックを構成する単量体としては、エチレン、プロピレン、1−ブテンから選ばれる1種または2種以上が好ましい具体例としてあげられる。また、ポリエーテルブロックを構成する単量体としては、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイドから選ばれる1種または2種以上が好ましい具体例としてあげられる。
【0033】
高分子型帯電防止剤はJIS K7210のA法の測定法に従い、190℃、2.16kgの条件で測定したMFRが5.0〜50.0g/10minの範囲にあるものが好ましい。MFRが5.0g/10min未満である場合、帯電防止性能が十分でなくなる傾向にあるほか、ポリプロピレン系樹脂と高分子型帯電防止剤が均一に混合されにくくなる傾向にあり好ましくない。またMFRが50.0g/10minを超える場合も、均一な混合が困難となり非発泡層に穴空きなどが発生する場合があり好ましくない。
【0034】
このような好ましく用いられる高分子型帯電防止剤の具体例としては、三洋化成(株)製、ペレスタット230、ペレスタットVH230、ペレスタット300があげられる。
【0035】
高分子型帯電防止剤の使用量としては、非発泡層を構成するポリプロピレン系樹脂層に占める割合が、2〜30重量%が好ましく、5〜25重量%がさらに好ましい。2重量%未満では、帯電防止性能が十分でなくなる傾向にあり好ましくない。30重量%を超える場合、コスト的に不利になることから好ましくない。
【0036】
前記高分子型帯電防止剤の使用により、積層発泡シートの表面抵抗率を1.0×10以上1.0×1013(Ω)以下、特に1.0×10を越え1.0×1012(Ω)以下の好ましい範囲とすることができる。表面抵抗率が1.0×10(Ω)未満とするには高分子型帯電防止剤の添加量を多くする必要があり経済性を損ねるため好ましくない。一方、1.0×1013(Ω)を越えると十分な帯電防止効果が発揮されない。
【0037】
本発明における、非発泡層に用いられるポリプロピレン系樹脂としては、プロピレンの単独重合体、プロピレンおよび他の単量体とのブロック共重合体、プロピレンおよび他の単量体とのランダム共重合体などがあげられるが、剛性が高く、安価であるという点からはポリプロピレン単独重合体が好ましく、低温脆性の改善という点からはプロピレンおよび他の単量体とのブロック共重合体であることが好ましい。
【0038】
本発明において、ポリプロピレン系樹脂がプロピレンと他の単量体とのブロック共重合体、または、プロピレンおよび他の単量体とのランダム共重合体である場合、ポリプロピレン系樹脂の特徴である高結晶性、高い剛性および良好な耐薬品性を保持する点から、含有されるプロピレン単量体成分が全体の75重量%以上であることが好ましく、全体の90重量%以上であることがより好ましい。
【0039】
本発明におけるポリプロピレン系樹脂非発泡層においては、ポリプロピレン系樹脂を単独で用いるだけでなく、2種類以上を混合して用いることもできる。更に、ポリプロピレン系樹脂には、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン共重合体、ブテン系樹脂などを混合したものも使用できる。
【0040】
本発明におけるポリプロピレン系樹脂非発泡層に用いられるポリプロピレン系樹脂の、温度230℃および荷重2.16kgの条件下におけるMFRは、加工性および二次成形性の点から、4〜20g/10minであることが望ましく、さらには5〜18g/10minであることが望ましい。上記条件下でのMFRが4g/10min未満では、非発泡樹脂層の厚みムラが生じやすく、成形体の外観を損なうのと同時に、成形体の剛性を部分的に低下させり、また、二次成形時に加熱軟化させても金型賦形に適するほど軟化せず、成形体側壁や仕切形状部などにおいて部分的な伸びを生じ、成形体の剛性を低下させやすい傾向がある。
【0041】
一方、MFRが20g/10minを超えると、積層加工時に非発泡樹脂層を取り扱いにくく、また、Tダイから押し出された非発泡樹脂層がTダイ巾方向に収縮するネックインという現象が大きくなり過ぎ、非発泡樹脂層の巾を制御しがたくなる傾向がある。
【0042】
なお、本明細書におけるポリプロピレン系樹脂のMFRは、JIS K7210のA法に準拠して測定される。
【0043】
本発明で用いる改質ポリプロピレン系樹脂は、ポリプロピレン系樹脂(以下、このポリプロピレン系樹脂のことを「原料ポリプロピレン系樹脂」ということもある)とラジカル重合性単量体とラジカル重合開始剤とを溶融混練することにより得ることができる。
【0044】
前記原料ポリプロピレン系樹脂としては、プロピレンの単独重合体、プロピレンとほかの単量体とのブロック共重合体またはプロピレンとほかの単量体とのランダム共重合体などの結晶性の重合体があげられ、剛性が高く、安価であるという点からは前記ポリプロピレン単独重合体が好ましく、剛性および耐衝撃性がともに高いという点からは前記プロピレンとほかの単量体とのブロック共重合体であることが好ましい。
【0045】
前記原料ポリプロピレン系樹脂がプロピレンとほかの単量体とのブロック共重合体またはプロピレンとほかの単量体とのランダム共重合体である場合、ポリプロピレン系樹脂の特徴である高結晶性、高い剛性および良好な耐薬品性を保持する点から、含有されるプロピレン単量体成分が全体の75重量%以上であることが好ましく、全体の90重量%以上であることがさらに好ましい。
【0046】
前記原料ポリプロピレン系樹脂において、プロピレンと共重合しうるほかの単量体としては、エチレン、α−オレフィン、環状オレフィン、ジエン系単量体およびビニル単量体よりなる単量体の群から選ばれた1種または2種以上の単量体があげられる。
【0047】
これらの単量体のうち、エチレンまたはブテン−1が安価である点から好ましい。
【0048】
前記原料ポリプロピレン系樹脂のMFRは、0.1〜5g/10min(230℃、2.16kg)であることが、安価かつ、他の原料の無駄なく本発明に用いられる改質ポリプロピレン系樹脂を得ることができるという点で好ましい。
【0049】
前記原料ポリプロピレン系樹脂には、必要に応じて、ほかの樹脂またはゴムを本発明の効果を損なわない範囲内で添加してもよい。前記ほかの樹脂またはゴムとしては、たとえばポリエチレン;ポリブテン−1、ポリイソブテン、ポリペンテン−1、ポリメチルペンテン−1などのポリα−オレフィン;プロピレン含有量が75重量%未満のエチレン/プロピレン共重合体、エチレン/ブテン−1共重合体、プロピレン含有量が75重量%未満のプロピレン/ブテン−1共重合体などのエチレンまたはα−オレフィン/α−オレフィン共重合体;プロピレン含有量が75重量%未満のエチレン/プロピレン/5−エチリデン−2−ノルボルネン共重合体などのエチレンまたはα−オレフィン/α−オレフィン/ジエン系単量体共重合体;エチレン/酢酸ビニル共重合体、エチレン/アクリル酸共重合体、エチレン/メタクリル酸共重合体、エチレン/アクリル酸エチル共重合体、エチレン/アクリル酸ブチル共重合体、 エチレン/メタクリル酸メチル共重合体、エチレン/無水マレイン酸共重合体、 エチレン/アクリル酸金属塩共重合体、エチレン/メタクリル酸金属塩共重合体、エチレン/メタクリル酸グリシジル共重合体などのエチレン/ビニル単量体共重合体;ポリブタジエン、ポリイソプレンなどのポリジエン系重合体; スチレン/ブタジエン/スチレンブロック共重合体などのビニル単量体/ジエン系単量体/ビニル単量体ブロック共重合体; アクリロニトリル/ブタジエン/スチレングラフト共重合体、メタクリル酸メチル/ブタジエン/スチレングラフト共重合体などのビニル単量体/ジエン系単量体/ビニル単量体グラフト共重合体;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリル酸エチル、ポリアクリル酸ブチル、ポリメタクリル酸メチル、ポリスチレンなどのビニル重合体;塩化ビニル/アクリロニトリル共重合体、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、アクリロニトリル/スチレン共重合体、メタクリル酸メチル/スチレン共重合体などのビニル系共重合体などがあげられる。
【0050】
原料ポリプロピレン系樹脂に対するこれらほかの樹脂またはゴムの添加量は、この樹脂の種類またはゴムの種類により異なり、前述のように本発明の効果を損なわない範囲内にあればよいものであるが、通常、原料ポリプロピレン系樹脂100重量部に対して30重量部以下である。
【0051】
本発明において前記ポリプロピレン系樹脂と溶融混練することができる前記ラジカル性単量体としては、ポリプロピレン系樹脂にグラフト共重合が可能であって、溶融混練の際にポリプロピレン系樹脂の主鎖切断に伴う大幅な粘度低下を起こさないものが好ましい。
【0052】
ラジカル重合性単量体としては、芳香族ビニル化合物、共役ジエン化合物を用いることが好ましい。
【0053】
芳香族ビニル化合物の具体例としては、スチレン、メチルスチレン、クロロスチレン、ブロモスチレン、フルオロスチレン、ヒドロキシスチレン、ジビニルベンゼン、ジイソプロペニルベンゼン(この化合物はこの括りで良いですか)などをあげることができる。
【0054】
共役ジエン化合物の具体例としては、イソプレン、1,3−ブタジエン、クロロプレンなどをあげることができる。これら単量体の一種または二種以上を用いることができる。これらの中では安価かつ取り扱いしやすいという点からスチレン、イソプレンが好ましく、さらに反応が均一に進みやすいという点からイソプレンがさらに好ましい。
【0055】
前記ラジカル重合性単量体の添加量に制限はないが、溶融混練を通じて十分反応が進むという点から、通常、原料ポリプロピレン系樹脂100重量部に対して、0.05〜20重量部であることが好ましく、0.1〜10重量部であることがさらに好ましく、特には0.15〜2重量部が好ましい。
【0056】
前記ラジカル重合性単量体には、必要に応じて、ほかのビニル単量体を本発明の効果を損なわない範囲内で添加してもよい。
【0057】
ほかのビニル単量体は前記ラジカル重合性単量体以外の単量体であり、その具体例としては、塩化ビニル、塩化ビニリデン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド、メタクリルアミド、酢酸ビニル、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、アクリル酸金属塩、メタクリル酸金属塩、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸グリシジルなどをあげることができる。
【0058】
前記ラジカル重合性単量体に前記のほかのビニル単量体を添加する場合、ほかのビニル単量体の添加量が、ラジカル重合性単量体100重量部に対して、300重量部以下であることが好ましく、100重量部以下であることがさらに好ましい。
【0059】
前記ラジカル重合開始剤としては、一分間半減期温度が高く、水素引き抜き能が高い有機過酸化物があげられる。
【0060】
ラジカル重合開始剤としては、パーオキシケタール、ジアルキルパーオキサイド、ジアシルパーオキサイド、パーオキシエステルを用いることが好ましい。
【0061】
パーオキシケタールの具体例としては、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、n−ブチル−4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)バレレート、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタンなどをあげることができる。
【0062】
ジアルキルパーオキサイドの具体例としては、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、α,α´−ビス(t−ブチルパーオキシ−m−イソプロピル)ベンゼン、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3などをあげることができる。
【0063】
ジアシルパーオキサイドの具体例としては、ベンゾイルパーオキサイドなどをあげることができる。
【0064】
パーオキシエステルの具体例としては、t−ブチルパーオキシオクテート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシラウレート、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ジ−t−ブチルパーオキシイソフタレートなどをあげることができる。これらラジカル重合開始剤の1種または2種以上があげられ、より効率的な反応を起こすことができるという点でパーオキシエステルが特に好ましく用いられる。
【0065】
前記ラジカル重合開始剤の添加量が、改質ポリプロピレン系樹脂の発泡性が良好で、かつ経済的であるという点から、原料ポリプロピレン系樹脂100重量部に対して、0.01〜3重量部の範囲内にあることが好ましく、0.05〜2重量部の範囲内にあることがさらに好ましい。
【0066】
さらに、前記原料ポリプロピレン系樹脂には必要に応じて、酸化防止剤、金属不活性剤、燐系加工安定剤、紫外線吸収剤、紫外線安定剤、蛍光増白剤、金属石鹸、制酸吸着剤などの安定剤、または架橋剤、連鎖移動剤、造核剤、滑剤、可塑剤、充填材、強化材、顔料、染料、難燃剤、帯電防止剤などの添加剤を本発明の効果を損なわない範囲内で添加してもよい。
【0067】
これらの原料ポリプロピレン系樹脂、ラジカル重合性単量体、ラジカル重合開始剤およびそのほか添加される材料の混合の順序および方法はとくに制限されるものではなく、たとえば原料ポリプロピレン系樹脂、ラジカル重合性単量体、ラジカル重合開始剤および必要に応じて添加されるそのほかの添加材料を混合したのち溶融混練してもよいし、原料ポリプロピレン系樹脂、ラジカル重合開始剤および必要に応じて添加されるそのほかの添加材料を溶融混練した後にラジカル重合性単量体を加えてさらに溶融混練してもよい。
【0068】
前記手法により改質ポリプロピレン系樹脂を得た後に、必要に応じて添加される添加剤や他の樹脂と溶融混練してもよいし、さらに原料ポリプロピレンの一部を改質してマスターバッチとした後に残余の原料ポリプロピレン系樹脂と溶融混練してもよい。
【0069】
溶融混練時の加熱温度は、樹脂の種類などにより異なるが、通常、130〜400℃であることが、原料ポリプロピレン系樹脂が充分に溶融し、かつ熱分解せず、充分な発泡性をうることができるという点で好ましい。また、溶融混練の時間(ラジカル重合性単量体およびラジカル重合開始剤を混合してからの時間)は、一般に1〜60分間である。
【0070】
また、前記の溶融混練の装置としては、コニーダー、バンバリーミキサー、ブラベンダー、単軸押出機、2軸押出機などの混練機、2軸表面更新機、2軸多円板装置などの横型攪拌機またはダブルヘリカルリボン攪拌機などの縦型攪拌機など高分子材料を適宜の温度に加熱し得、適宜のせん断応力を与えながら混練しうる装置があげられる。これらのうち、とくに単軸または2軸押出機が生産性の点からしい。
【0071】
本発明においては、ポリプロピレン系樹脂発泡シートに用いられる基材樹脂のMFRを制御することにより、非発泡層が積層されたポリプロピレン系樹脂積層発泡シートの190℃の雰囲気下で1分間加熱したときの押出方向及び幅方向の加熱収縮率を制御することができる。
【0072】
本発明で用いられる改質ポリプロピレン系樹脂のMFRは、0.01〜1.5g/10min(230℃、2.16kg)であり、0.05〜1.4g/10minがより好ましく、0.1〜1.2g/10minが特に好ましい。
【0073】
MFRが0.01g/10min未満の場合には、MFRが低すぎるため流動性が悪く、発泡シート化が困難となり好ましくない。またMFRが1.5g/10minを超える場合には、加熱成形時のドローダウンが大きくなり成形性が悪化するとともに、ポリプロピレン系樹脂積層発泡シートの加熱収縮率のコントロールが困難になる傾向にある。
【0074】
本発明におけるポリプロピレン系樹脂発泡シートの製造方法について詳述する。該発泡シートは、基材樹脂を押出機内で溶融させるとともに発泡剤と混練し、この溶融混練物を押出機先端に取り付けた環状のサーキュラーダイスを通して低圧下に押出して発泡することにより得ることができる。
【0075】
本発明においてポリプロピレン系樹脂押出発泡シートを製造する装置に特に限定はなく、単軸押出機や二軸押出機などの押出機を複数台連結したタンデム押出機、押出機先端にギアポンプを連結した装置など、慣用の押出発泡装置を使用することができる。なお、これらの押出発泡装置では、樹脂が充分に溶融し、かつ発泡シートの外観を損なわないことから、通常、樹脂を溶融させる押出機先端に異物除去のためのメッシュが挿入される。
【0076】
本発明における前記発泡剤としては、脂肪族炭化水素類、脂環式炭化水素類、ハロゲン化炭化水素類、無機ガス類が好ましく用いられる。脂肪族炭化水素類の具体例としては、例えば、プロパン、ブタン、イソブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタンなどをあげることができる。脂環式炭化水素類の具体例としては、例えば、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサンなどをあげることができる。
【0077】
ハロゲン化炭化水素類の具体例としては、クロロジフルオロメタン、ジクロロメタン、ジクロロフルオロメタン、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、クロロエタン、ジクロロトリフルオロエタン、ジクロロテトラフルオロエタン、トリクロロトリフルオロエタン、テトラクロロジフルオロエタン、パーフルオロシクロブタンなどをあげることができる。無機ガス類の具体例としては、窒素、炭酸ガス、空気などをあげることができる。これらは単独または2種以上混合して使用しても良い。
【0078】
さらに必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、酸化防止剤、金属不活性剤、燐系加工安定剤、紫外線吸収剤、紫外線安定剤、蛍光増白剤、金属石鹸、制酸吸着剤などの安定剤、架橋剤、連鎖移動剤、核剤、滑剤、可塑剤、充填材、強化材、顔料、染料、難燃剤、帯電防止剤などの添加剤を使用して樹脂混合物として用いてもよい。
【0079】
本発明における発泡剤の添加量は発泡剤の種類および所望の発泡シート密度によって選択されるが、一般に樹脂混合物100重量部に対して0.5〜10重量部が好ましい。
発泡剤としてブタン(イソブタン/ノルマルブタン=85/15wt%)を前記、および気泡核形成剤を加えた改質ポリプロピレン系樹脂組成物100重量部あたり1〜3重量部となるように圧入混合するのが好ましい。
【0080】
本発明における発泡シートの厚み方向の気泡数は5個以上、さらには7個以上が好ましい。発泡シートでの厚み方向の気泡数が5個より少なくなると、気泡の隠蔽性が劣る傾向があるとともに、断熱性、表面性に劣る傾向がある。
【0081】
本発明に用いられるポリプロピレン系樹脂発泡シートの独立気泡率は、60%以上が好ましく、70%以上がより好ましく、77%以上がさらに好ましい。独立気泡率が60%より小さい場合には、得られる成形体の剛性に劣る場合がある。
【0082】
本発明におけるポリプロピレン系樹脂発泡シートは、得られる成形体の軽量性、剛性に優れることから、密度としては0.1〜0.5g/mlが好ましく、0.1〜0.25g/mlがより好ましい。目付量としては150〜500g/mが好ましく、220〜450g/mがより好ましい。発泡シートの厚みに特に制限はないが、通常0.5〜8mmが好ましく、特に1.0〜6.0mmであることが好ましい。厚みが0.5mm未満である場合は、本発明が目的とする緩衝包装材等の用途に用いるための剛性が不足する。
【0083】
本発明の製造方法によって得たポリプロピレン系樹脂積層発泡シートを加熱成形することによって、熱成形後の外観に優れ、成形加熱時の積層発泡シートの熱収縮による帯電防止性能の低下が見られない成形体を得ることができる。
【0084】
加熱成形の例としては、プラグ成形、マッチド・モールド成形、ストレート成形、ドレープ成形、プラグアシスト成形、プラグアシスト・リバースドロー成形、エアスリップ成形、スナップバック成形、リバースドロー成形、フリードローイング成形、プラグ・アンド・リッジ成形、リッジ成形などの方法があげられるがが、金型形状転写性に優れるため外観が良好で、高い剛性を確保しやすい点からマッチド・モールド成形が好ましい。
【実施例】
【0085】
次に本発明を実施例に基づき詳細に説明するが、本発明はかかる実施例に限定されるものではない。
【0086】
(改質ポリプロピレン系樹脂のMFRの測定)
JIS K7210のA法に準拠して、温度230℃および荷重2.16kgの条件下にて改質ポリプロピレン系樹脂のMFRを測定した。
【0087】
(発泡シートの密度の測定)
重量と、水没法により求めた体積とからポリプロピレン系樹脂発泡シートの密度を測定した。
【0088】
(発泡シートの独立気泡率の測定)
ASTM D2856に記載の方法に準拠し、ポリプロピレン系樹脂発泡シートの独立気泡率を測定した。
【0089】
(発泡シートの厚み測定)
実施例および比較例で得られたポリプロピレン系樹脂発泡シートの幅方向において、100mm間隔に測定点を設け、各測定点の厚みをシックネスゲージ(Mitutoyo社製、DIGIMATIC INDICATOR)を用いて測定し、各点の測定値の平均値を該発泡シートの厚みとした。
【0090】
(発泡シートの厚み方向における気泡数の測定)
発泡シートの幅方向に等間隔に10点の測定点を設け、測定点における厚み方向の気泡数をルーペ(peacock社製、pocket・micro×10)を用いて測定した。その後、各点の測定値の平均を、厚み方向の気泡数とした。
【0091】
(積層発泡シートの加熱収縮率の測定)
収縮率の測定は、ヤマト株式会社製「ファインオーブンDH62」を使用し、押出方向100mm×幅方向100mmの大きさに切断した積層発泡シートを、190℃の雰囲気下に設定されたオーブン中に1分間放置し、積層発泡シートの加熱前の寸法及び加熱後の寸法をノギスで測定した。この際の押出方向及び幅方向の加熱収縮率を下記式より求めた。
加熱収縮率(%)=[(加熱前の寸法−加熱後の寸法)/(加熱前の寸法)]×100。
【0092】
(目付量の測定)
得られた積層発泡シートの幅方向に、100mm×100mmの大きさで等間隔に5枚切り出し、その重量の平均を100倍したものを目付量とした。
【0093】
(積層発泡シートの表面抵抗率の測定)
得られた積層発泡シートを23℃、湿度50%の雰囲気に24時間放置した後、10cm×10cm角に切り出した積層発泡シートをサンプルとして、JIS K6911に準じて測定した。
【0094】
測定には(株)アドバンテスト製R8340A型を用いた。印加電圧500V、印加時間1分間とし、異なる場所から切り出した5つのサンプルについて測定を行い、得られた値を平均して積層発泡シートの表面抵抗率(Ω)を算出した。
【0095】
熱成形体の表面抵抗率は、図2に示す底部の大きさが80mm×90mm、深さ25mmのトレー状の成形体を熱成形した。その成形体の底部を切り出し、切り出した5つのサンプルを試験片として測定し、得られた値を平均して熱成形体の表面抵抗率(Ω)を算出した。
【0096】
得られた表面抵抗率は、下記の基準で評価した。
○:表面抵抗率が1×10(Ω)を越えて1×1012(Ω)以下
△:表面抵抗率が1×1012(Ω)を越えて1×1013(Ω)以下
×:表面抵抗率が1×1013(Ω)を越える。
【0097】
(成形性の評価)
前記熱成形体の状態を以下の基準に従い、評価した。
○:成形体の仕切り部や底部の肉厚が均一で、金型の形状が明確に現れている。
△:金型形状は明確に現れているものの、成形体仕切り部や底部の肉厚に不均一な部分が見られる。
×:成形体の仕切り部や底部の肉厚が不均一で、金型形状が明確に現れていない。
【0098】
以下に実施例および比較例に用いた発泡シートの製造方法を示す。
【0099】
(ポリプロピレン系樹脂発泡シートA−1〜5の製造方法)
ポリプロピレンホモポリマーおよびラジカル重合開始剤(t−ブチルパーオキシ−イソプロピルカーボネート)を表1に示した配合により、リボンブレンダーで攪拌混合した配合物を、計量フィーダを用いて(株)日本製鋼所製、同方向二軸押出機(TEX44XCT−38:スクリュー径44mmφ、最大スクリュー有効長(L/D)38)に供給し、液添ポンプを用いて押出機途中からイソプレンを供給し、前記二軸押出機中で溶融混練することにより、改質ポリプロピレン系樹脂組成物のペレットを得た。改質ポリプロピレン系樹脂のMFRは、表1に示す値であった。
【0100】
押出機のシリンダー部の設定温度は、イソプレン圧入までは180℃、イソプレン圧入以降は200℃とし、スクリュー回転速度を150rpmに設定した。
【0101】
前記改質ポリプロピレン系樹脂組成物100重量部、および気泡核形成剤(大日精化(株)製、PO510K)0.5重量部をリボンブレンダーにて撹拌混合した配合物を、90−125mmφタンデム型押出機に供給し、シリンダー温度200℃に設定した第1段押出機(90mmφ)中にて溶融させた後、発泡剤としてブタン(イソブタン/ノルマルブタン=85/15wt%)を前記、および気泡核形成剤を加えた改質ポリプロピレン系樹脂組成物100重量部あたり1〜3重量部となるようにを圧入混合し、160℃(ダイスの樹脂流入部に設置した温度センサーによって測定)に設定した第2段押出機(125mmφ)中で冷却し、サーキュラーダイ(127mmφ)より大気圧下に吐出し、外径335mmおよび本体長さ800mmの冷却筒にて成形しながら引き取りつつ延伸・冷却し円筒型発泡体を得、これをカッターで切り開くことにより1035mm幅の発泡シートを得た。得られた発泡シートの物性は、表1に示す値となった。
【0102】
なお、ポリプロピレン系樹脂発泡シートA−3については、発泡シート製造後に送りロール、加熱炉を順次通過させ、延伸ロールにて加熱延伸した。発泡シートの加熱条件としては、加熱炉直後のシート表面温度が140℃になるように加熱炉の温度を調整し、送りロールと加熱ロールの速度は、発泡シートの延伸倍率が1.1倍となるように調整した。
【0103】
(ポリプロピレン系樹脂発泡シートA−6の製造方法)
ポリプロピレン系樹脂(サンアロマー社製、SD−632)100重量部、気泡核形成剤(大日精化(株)製、PO510K)0.7重量部を、リボンブレンダーで撹拌混合した配合物を90−125mmφタンデム型押出機に供給し、200℃に設定した第1段押出機(90mmφ)中にて溶融させたのち、発泡剤としてブタン(イソブタン/ノルマルブタン=85/15)を圧入混合し、160℃に設定した第2段押出機(125mmφ)中で冷却し、サーキュラーダイ(127mmφ)より大気圧下に吐出し、外径335mmおよび本体長さ800mmの冷却筒にて成形しながら引き取りつつ延伸・冷却し円筒型発泡体を得、これをカッターで切り開くことにより1035mm幅の発泡シートを得た。得られた発泡シートの物性は、表1の値となった。
【0104】
【表1】

【0105】
(押出ラミネートによる積層発泡シートの製造方法)
図1に示す押出ラミネート設備を用いて、表1に示す発泡シート1を繰り出し、表2に示す樹脂組成物を非発泡樹脂層7としてTダイ4からフィルム状に押出し、ロール2と冷却ロール3とで圧着しながら引取り、積層発泡シートを製造した。実施例、比較例に用いたポリプロピレン及び帯電防止剤は以下のとおりである。
【0106】
(非発泡樹脂層B)プライムポリマー(株)製ホモポリプロピレンJ105Gを非発泡層用ポリプロピレン系樹脂として使用した。
(帯電防止剤T1)高分子型帯電防止剤、三洋化成工業(株)製、ペレスタット230(190℃での2.16kg荷重におけるMFR=10g/10min)
(帯電防止剤T2)高分子型帯電防止剤、三洋化成工業(株)製、ペレスタットVH230(190℃での2.16kg荷重におけるMFR=7g/10min)
(帯電防止剤T3)高分子型帯電防止剤、三洋化成工業(株)製、ペレスタット300(190℃での2.16kg荷重におけるMFR=30g/10min)。
【0107】
(実施例1)
発泡シートA−1に表2の非発泡樹脂層の配合及びラミネート条件で押出ラミネート法により非発泡樹脂層を積層し、ポリプロピレン系樹脂積層発泡シートを得た。ここで、得られたポリプロピレン系樹脂積層発泡シートの加熱収縮率、表面抵抗率を測定した。また、得られたポリプロピレン系樹脂積層発泡シートを、図2に示す成形金型を用いて熱成形し、成形性の評価、表面抵抗率の測定を行なった。
【0108】
(実施例2〜7、比較例1〜6)
表2に示したようにポリプロピレン系樹脂発泡シート、非発泡樹脂層に使用するポリプロピレン系樹脂および高分子型帯電防止剤の種類、配合を変更し、さらに表2に示す条件により押出ラミネート法でポリプロピレン系樹脂積層発泡シートを作製した。得られたポリプロピレン系樹脂積層シートを、実施例1と同様にして、加熱収縮率、表面抵抗率を測定した。さらに、図2に示す成形金型を用いて熱成形し、成形性の評価、表面抵抗率の測定を行なった。
【0109】
実施例および比較例における積層発泡シートの評価結果を、表2に示す。表2に示すように実施例1〜9で得た積層発泡シートは熱成形性に優れると共に、成形体においても帯電防止性能の低下は見られず、成形体を1ヶ月間放置しておいてもほこりの付着はなかった。一方、比較例1〜3で得た積層発泡シートは、成形体における帯電防止性能が低く、成形体を1ヶ月間放置するとほこりの付着が見られた。比較例4で得た積層発泡シートは、成形体における帯電防止性能の低下は見られなかったものの、熱成形性が悪く、成形体の外観が良好なものを得ることができなかった。
【0110】
【表2】

【0111】
以上のように、本発明のポリプロピレン系樹脂積層発泡シートは、熱成形性に優れるとともに、成形加熱時の積層発泡シートの熱収縮が小さいため、ほこりがつきにくい成形体が得られた。
【図面の簡単な説明】
【0112】
【図1】押出ラミネート法の一例を示す図
【図2】本発明に係る積層発泡シートの成形用の金型を示す平面図
【符号の説明】
【0113】
1 発泡シート
2 ニップロール
3 冷却ロール
4 Tダイ
5 エアギャップ(Tダイ4から出た非発泡樹脂層7が発泡シート1に圧着されるまでの距離)
6 ニップロール2と冷却ロール3とで形成される隙間
7 非発泡樹脂層
8 積層発泡シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリプロピレン系樹脂、ラジカル重合性単量体、ラジカル重合開始剤を溶融混練して得られる、230℃、2.16kgの条件におけるメルトフローレイトが0.01〜1.5g/10minの改質ポリプロピレン系樹脂を基材とするポリプロピレン系樹脂発泡シートの少なくとも片面に、高分子型帯電防止剤を含むポリプロピレン系樹脂を基材とする非発泡層が形成されたポリプロピレン系樹脂積層発泡シートにおいて、190℃の雰囲気下で1分間加熱したときの積層発泡シートの押出方向および幅方向の加熱収縮率がともに0〜10%であることを特徴とするポリプロピレン系樹脂積層発泡シート。
【請求項2】
押出ラミネート法によりポリプロピレン系樹脂発泡シートと非発泡層を積層することを特徴とする請求項1記載のポリプロピレン系樹脂積層発泡シート。
【請求項3】
押出ラミネート法によってポリプロピレン系樹脂発泡シートと非発泡層を積層する際の非発泡層を構成するポリプロピレン系樹脂を吐出するダイスのクリアランス(aμm)とポリプロピレン系樹脂積層発泡シートにおけるポリプロピレン系樹脂非発泡層の厚み(bμm)が下記(1)式を満足することを特徴とする請求項2記載のポリプロピレン系樹脂積層発泡シート。
3.0≦a/b≦24.0 (1)
【請求項4】
前記高分子型帯電防止剤が、非発泡層を構成するポリプロピレン系樹脂中に2〜25重量%含まれていることを特徴とする請求項1〜3いずれかに記載のポリプロピレン系樹脂積層発泡シート。
【請求項5】
前記ポリプロピレン系樹脂発泡シートが、目付量150〜500g/m、密度0.1〜0.5g/ml、独立気泡率60%以上で、かつ厚み方向セル数が5個以上であることを特徴とする請求項1〜4いずれかに記載のポリプロピレン系樹脂積層発泡シート。
【請求項6】
請求項1〜5いずれかに記載のポリプロピレン系樹脂積層発泡シートを熱成形して得られた成形体。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2009−214372(P2009−214372A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−59151(P2008−59151)
【出願日】平成20年3月10日(2008.3.10)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】