説明

ポリペプチド

本発明は病原性微生物によって発現される抗原性ポリペプチド、該ポリペプチドを含むワクチン;該ポリペプチドに対する治療的抗体、並びに該ポリペプチド、ワクチン及び抗体を製造する方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は病原性微生物によって発現される抗原性ペプチド、抗原性ポリペプチドを含むワクチン、及び抗原性ポリペプチドに対する治療的抗体に関する。
【背景技術】
【0002】
現在の医学的進歩に直面する問題は、多くの重大な病原性微生物の抗生物質耐性株の進化である。発達した抗生物質耐性を有する病原性生物の例として、黄色ブドウ球菌(Staphylocuccus aureus.)を上げることができる。S.aureusは、その通常の生息場所が正常健康人の約20−40%の鼻の上皮裏打ちであり、また、通常は害を引き起こすことなくヒトの皮膚上に認められる細菌である。しかし、ある環境下、特に皮膚がダメージを受けている場合、この微生物は感染を引き起こす。このことが、患者が外科的治療及び/又は免疫抑制薬を受ける病院において特別な問題となっている。これらの患者は彼らが受けた治療の影響でS.aureusの感染に極端に脆弱となる。S.aureusの耐性株はここ数年増大している。メチシリン耐性株が蔓延しており、これら耐性株の多くは他のいくつかの抗生物質に対しても耐性を示す。現在、S.aureusに対する有効なワクチン接種方法は存在しない。
【発明の開示】
【0003】
本発明は、直接的耐性病原株の問題が回避又は減少される、潜在的なワクチンの成分及び療法の同定に関する。
【0004】
土壌グラム陽性細菌である枯草菌(Bacillus subtilis)の染色体に存在するおよそ4100遺伝子の中で、271は生育にとって不可欠(「必須」)であり、そのうち23は、その生物の生理現象における役割が不確定である(gcp,obg,ppaC−yybQ−,trmU,yacA,yacM,ydiB,ydiC,yjbN,ykqC,ylaN,yloQ,ylqF,ymdA,yneS,yphC,yqeH,yqeI,yqjK,yrvO,ysxC,ytaG,ywlC)(Kunstら 1997)。これらの遺伝子によってコードされるタンパク質のホモログは、これまでに配列決定された他のグラム陽性細菌、黄色ブドウ球菌(Staphylocuccus aureus.)の種々の株において見出されている。それらの中で、Gcp及びYneSオルソログは、膜タンパク質と予想されるが(付録Iを参照のこと)、その他は細胞質タンパク質として予想される(データは示さず)。それにも関わらず、ObgはB.subtilisの膜に一部結合することが示されている(Kobayashiら 2001)。
発明者らは、病原体であるBacillus subtili及びStaphylocuccus aureusの生育に必須の成分であるポリペプチドを単離し、これらのポリペプチドに対し抗体を作製した。Bacillus subtiliのポリペプチドに対する血清は、Staphylococcus aureusに関し極めて効果的な殺菌能力を示すことが明らかになった。この効果はこれまで予測されていないかった。
本発明の発見は、抗生物質耐性などの現在の治療のいくつかの問題を緩和するワクチン及び抗体療法の開発を促進するものである。
【0005】
本開示の簡単な要約
本発明は、グラム陽性細菌である病原性枯草菌(Bacillus subtili)及び黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)の生育に必須で、微生物感染の治療又は防御において有用である抗原性ポリペプチドを提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明の最初の態様によると、
i)図1から6に示される核酸配列、
ii)病原体によって発現されるポリペプチドをコードする(i)の核酸配列、
iii)上記(i)又は(ii)として同定される配列とハイブリダイズする核酸配列;及び
iv)遺伝子コードとして(i)、(ii)又は(iii)として同定される核酸配列に縮退する核酸配列:
からなるグループより選択される核酸配列によってコードされる、医薬として使用するための抗原性ポリペプチド又はその一部が提供される
本発明の好ましい態様において、医薬はワクチンである。
本発明の最初の態様の抗原性ポリペプチドをコードする核酸は、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で図1から6に示される核酸配列又はその相補鎖とアニールしてもよい。
【0007】
ストリンジェントなハイブリダイゼーション/洗浄条件とは、当該技術分野において周知である。例えば、0.1×SSC、0.1%SDS、60℃の洗浄後において安定な核酸ハイブリッドなどである。核酸の配列が既知の場合、至適なハイブリダイゼーション条件を計算できることは当該技術分野においては周知である。例えば、ハイブリダイゼーション条件は、ハイブリダイゼーションの対象たる核酸のGC含量によって決定される。Sambrookら(1989)Molecular Cloning;A Laboratory Approachを参照のこと。特定の相同性を持つ核酸間のハイブリダイゼーションを達成するために必要とされるストリンジェンシー条件を計算するための一般式は:
Tm= 81.5℃ + 16.6 Log [Na+] + 0.41 [% G + C] -0.63 (% ホルムアミド).
【0008】
本発明の最初の態様の抗原性ポリペプチドをコードする核酸は、図1から6に示される配列、又は図1から6に示される核酸配列と核酸残基レベルで少なくとも60%,65%,70%,75%,80%,85%,90%,95%,例えば、98%,又は99%の同一である。
「同一性」とは、当技術分野で知られているように、配列を比較することにより決定される2又は複数のポリペプチド配列、又は2又は複数のポリヌクレオチド配列間の関係のことである。当該技術分野において、同一性はポリペプチド又はポリヌクレオチド配列間の配列関連性のレベルも意味し、場合によっては、これらの配列の文字列間の一致度によって決定される。同一性は容易に計算することができる(Computational Molecular Biology,Lesk,A.M.編集,Oxford University Press,New York,1988;Biocomputing:Informatics and Genome Projects,Smith,D.W.,編集,Academic Press,New York,1993;Computer Analysis of Sequence Data,Part I,Griffin,A.M.,及びGriffin,H.G.,編集,Humana Press,New Jersey,1994;Sequence Analysis in Molecular Biology,von Heinje,G.,Academic Press,1987;及びSequence Analysis Primer, Gribskov,M.及びDevereux,J.,編集,M Stockton Press,New York,1991)。2つのポリヌクレオチド又は2つのポリペプチド配列間の同一性を測定する数多くの方法が存在するが、そのターム(term)は当業者にとって周知である(Sequence Analysis in Molecular Biology,von Heinje,G.,Academic Press,1987;Sequence Analysis Primer,Gribskov,M.及びDevereux,J.,編集,M Stockton Press,New York,1991;及びCarillo,H.,及びLipman,D.,SIAMJ.Applied Math.,48:1073(1988))。配列間の同一性を同定するために通常用いられる方法には、限定はしないが、Carillo,H.,及びLipman,D.,SIAMJ.Applied Math.,48:1073(1988)中に開示されるものが含まれる。同一性を同定するための好ましい方法は、テストされる配列間に最大の一致度を与えるようにデザインされる。同一性を決定する方法はコンピュータープログラム中に体系化される。2つの配列間の同一性を決定するための好ましいコンピュータープログラム法には、限定はしないが、GCGプログラムパッケージ(Devereux,J.ら,Nucleid Acids Research 12(1):387(1984))、BLASTP,BLASTN,及びFASTA(Atschul,S.F.ら,J.Molec.Biol.215:403(1990))が含まれる。
【0009】
本発明の最初の態様の抗原性ポリペプチドをコードする核酸は、その長さが、例えば、少なくとも30塩基長、40、50、60、70、80又は90塩基である最初の配列の断片を含んでもよい。
本発明の最初の態様の抗原性ポリペプチドをコードする核酸配列は、DNA、cDNA又はRNA、例えば、mRNAである。
本発明の最初の態様の抗原性ポリペプチドは、細胞膜タンパク質、例えば、内在性膜タンパク質又は細胞質性タンパク質である。
好ましくは、本発明の最初の態様の抗原性ポリペプチドは、病原性生物、例えば、細菌、ウィルス又は酵母によって発現される。好ましくは、病原性生物は細菌である。細菌はグラム陽性又はグラム陰性細菌であり、好ましくはグラム陽性細菌である。
【0010】
細菌は以下のグループから選択されてもよい:
Bacillus subtillis,Staphylococcus aureus;Staphylococcus epidermidis;Enterococcus faecalis;Mycobacterium tuberculsis;Streptococcus group B;Streptoccocus pneumoniae;Helicobacter pylori;Neisseria gonorrhea;Streptococcus group A;Borrelia burgdorferi;Coccidiodes immitis;Histoplasma sapsulatum;Neisseria meningitidis type B;Shigella flexneri;Escherichia coli;Haemophilus influenzae;Listeria monocytogenes, Bacillus anthracis,Corynebacterium diptheriae,Clostridium tetani,Mycoplasma spp.及びTreponema pallidum。
好ましくは、細菌はStaphylococcus spp.属に含まれる。さらに好ましくは、細菌はStaphylococcus aureusである。
【0011】
本発明の好ましい実施形態において、本発明の最初の態様の抗原性ポリペプチドがここで定義される生物の感染性病原性に関連する。
本発明のさらに好ましい態様において、抗原性ポリペプチドは図7から12に示されるアミノ酸配列の全て又は一部を含んでいる。
ここで使用される「一部」には、少なくとも10,15,20又は30アミノ酸長のポリペプチド断片が含まれてもよい。
本発明の最初の態様の抗原性ポリペプチドは、例えば、ポリサッカライド抗原などの非タンパク質性抗原を含んでもよい。
ここで使用されるように、「ポリペプチド」なる用語は、概括的には、ペプチド結合によって結合される複数のアミノ酸残基を意味する。ペプチド、タンパク質、オリゴペプチド又はオリゴマーと交換可能に使用され、同じものを意味する。また、「ポリペプチド」なる用語は、ポリペプチドの断片、アナログ及び誘導体を含むことが意図されており、該断片、アナログ又は誘導体は対照とされるタンパク質と同じ生物学的活性又は機能を本質的に保持している。
【0012】
本発明の第2の態様において、本発明の最初の態様のポリペプチドをコードする核酸配列を含むベクターが提供される。
本発明の第2の態様のベクターは、プラスミド、コスミド又はファージであってもよい。該ベクターには、細胞特異的な発現をメディエートする転写制御配列(プロモーター配列)、例えば、細胞特異的、誘導性又は構成的プロモーター配列を含んでもよい。ベクターは、原核生物又は真核生物の遺伝子発現に適合された発現ベクターであり、例えば、該ベクターには1又は複数の選択マーカー及び/又は、真核細胞又は原核細胞のいずれかにおいて該ベクターの維持を促進する自立複製配列が含まれていてもよい(Sambrookら(1989) Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbour Laboratory,Cold Spring Harbour,NY及びこれに含まれる参考文献;Marston,F(1987) DNA Cloning Techniques:A Practical Approach VoI III IRL Press,Oxford UK;DNA Cloning:F M Ausubelら,Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley & Sons,Inc.(1994))。自律的に複製されるベクターはエピソーム型ベクターと呼ばれる。
【0013】
プロモーターは当該技術分野において認知されている用語で、遺伝子の転写開始部位の5’側にしばしば見出されるシス作用性の核酸配列であるエンハンサーエレメント(エンハンサーは遺伝子配列の3’側にも見出され、又はイントロン配列にさえも位置し、従って、位置非依存的である)を含んでいる。エンハンサー活性は、エンハンサーエレメントに特異的に結合することが示されているトランス作用性転写因子(ポリペプチド)に応答する。転写因子の結合/活性(David S Latchman,Academic Press Ltd,San DiegoによるEukaryotic Transcription Factorsを参照のこと)は、中間代謝産物(例えば、グルコース、脂質)、環境影響因子(例えば、光、熱)を含む多くの環境的合図(cues)に応答する。
【0014】
また、プロモーターエレメントは、いわゆるTATA boxと転写開始部位を選択するために機能するRNAポリメラーゼ開始選択(RIS)配列も含んでいる。また、これらの配列はRNAポリメラーゼによる転写開始を促進するために機能するポリペプチドにも結合する。
本発明の第2の態様のベクターは、転写終結又はポリアデニル化配列を含んでもよい。また、これには、リボソーム内部侵入部位(IRES)が含まれてもよい。本ベクターには、2シストロニック又はマルチシストロニックな発現カセット中に配置される核酸配列が含まれていてもよい。
【0015】
本発明の第3の態様によれば、
(i)第2の態様のベクターで形質転換/形質移入された細胞を提供し、
(ii)該ポリペプチドの製造に適した条件で該細胞を生育させ、及び
(iii)該細胞又はその生育環境から該ポリペプチドを精製する、
ことを含む本発明の前述のいずれかの態様による組換え抗原性ポリペプチドの製造のための方法が提供される。
第3の態様の方法のより好ましい態様は、本ベクターがコードすることにより、該組換えポリペプチドには、該ポリペプチドの精製を促進するための分泌シグナルと共に提供される。
【0016】
本発明の第4の態様よれば、本発明の第2の態様によるベクターで形質転換又は形質移入された細胞又は株化細胞が提供される。
本発明のより好ましい実体形態において、該細胞は原核細胞、例えば、酵母又は大腸菌などの細菌である。あるいは、該細胞は、カビ細胞、昆虫細胞、両生類細胞、COS、CHO細胞、ボーズメラノーマ及び他の適当なヒト細胞などの哺乳類細胞、又は植物細胞である。
【0017】
本発明の第5の態様によると、少なくとも1つの抗原性ポリペプチド又はその一部を含むワクチンが本発明の最初の態様により提供される。好ましくは、該ワクチンは担体及び/又はアジュバントをさらに含む。
ここで使用される「その一部」には、抗原性ポリペプチドの断片又はサブユニットが含まれてもよいが、該断片又はサブユニットはレシピエントの抗原性応答性を誘導するのに十分なものである。
第5の態様によるワクチンは、サブユニットワクチンであって、該ワクチンの抗原性部分が本発明の第5の態様による抗原性ポリペプチド断片又はサブユニットである。
アジュバント及び担体という用語は、以下の様に解釈される。いくつかのポリペプチド又はペプチド抗原はB細胞エピトープを含むが、T細胞エピトープは含まない。免疫応答性は、ポリペプチド/ペプチド中にT細胞エピトープを包含することにより、又はキーホールリンペットヘモシアニンや複数のT細胞エピトープを含む破傷風トキソイドなどの抗原性担体タンパク質とポリペプチド/ペプチドを結合させることにより、顕著に増強される。結合体は抗原提示細胞によって取り込まれ、プロセスされ、ヒト白血球抗原(HLA’s)クラスII分子によって提示される。これにより、エピトープに由来する担体に特異的なT細胞により、オリジナルの抗原性ポリペプチド/ペプチドに特異的なB細胞に供されるT細胞の補助が可能になる。この結果、抗体の産生、分泌及びアイソタイプの変換が増大される。
【0018】
アジュバントは、免疫細胞の活性を調節することにより、抗原への特異的な免疫応答性を増大させる物質又は手段である。アジュバントの例には、例としてのみ挙げると、同時刺激性分子に対するアゴニスト抗体、フロイントアジュバント、ムラミルジペプチド、リポーソームなどが含まれる。従って、アジュバントは免疫調節因子である。担体は第2の分子と結合したときに後者に対する免疫応答性を増大させる抗原性分子である。
またさらなる本発明の態様において、本発明の最初の態様にかかる少なくとも1つのポリペプチド又はその一部を動物に投与することを含む、病原性微生物に対する免疫性を動物に与える方法が提供される。好ましくは、該ポリペプチドは本発明の第5の態様によるワクチンの形態である。
より好ましい本発明の方法において、動物はヒトである。
【0019】
好ましくは、本発明の最初の態様、又は第5の態様のワクチンは、経静脈的、筋肉に、又は皮下のいずれかに直接インジェクションすることにより供給することができる。さらにまた、ワクチン又は抗原性ポリペプチドは、経口的に摂取することもできる。該ポリペプチド又はワクチンは、種々の水性、脂質性の媒体、例えば、滅菌生理食塩水などの薬理学的に許容な担体と共に投与され、筋肉中及び皮下に投与される注射可能物質を調製するために利用されてもよい。従来の懸濁及び分散剤を使用することもできる。他の投与手段、例えば、生物学的に観測可能な(bio−observable)ペレットの持続的な低投与量放出などの埋め込み手段等は、当業者にとって自明なことであろう。
ワクチンは、細菌種である、Staphylococcus aureus,S.epidermidis,Streptococcus pneumoniae,Streptococcus pyogenes,及びB.anthracis,Listeria monocytogenesに対するものであってもよい。
ワクチン又は抗原性ポリペプチドはヒトよりもむしろ動物、例えば、限定はしないが、家族のペット(例えば、ネコ及びイヌなどの家庭の動物)、家畜(例えば、ウシ、ヒツジ、ブタなど)及びウマなどの状態を予防又は緩和するのに効果的であることも明らかであろう。
【0020】
本発明のさらなる態様は、本発明のポリペプチドの少なくとも1つ、又は本発明のワクチンの有効量を含む医薬組成物を提供する。また、これらのポリペプチドは、薬理学的に許容な担体又は希釈剤も含む。
本発明のさらなる態様によれば、本発明の少なくとも1つの抗原性ポリペプチド又はその一部と結合する抗体又は少なくともその有効な結合部分が提供される。
抗体は多くの方法で修飾することができので、「抗体」という用語は、抗原性ポリペプチドに対して獲得した特異性を有する結合ドメインを保持する、あらゆる結合メンバー又は物質をもカバーするものとして解釈するべきである。従って、この用語は、抗体の抗体断片、誘導体、機能的等価物及びホモログをカバーし 天然又は全体又は部分的合成物であろうと、イムノグロブリン結合ドメインを含む全てのポリペプチドを包含する。従って、イムノグロブリン又は等価物を含み、他のポリペプチドと融合したキメラ分子が含まれる。キメラ抗体のクローニング及び発現については、EP−A−0120694及びEP−A−0125023中に記載されている。
【0021】
本発明のより好ましい態様において、該抗体はポリクローナル又はモノクローナル抗体である。
本発明のさらに好ましい態様において、該抗体はヒト抗体の不変又は定常領域を備えた該抗体の可変領域含むように、組換法により製造されるキメラ抗体である。
本発明のさらに好ましい態様において、該抗体は、抗体の相補性決定領域と、定常(C)領域及びヒト抗体の可変(V)領域由来のフレームワーク領域の両方と結合させる組換え方法によってヒト化される。
好ましくは、該抗体は、従来の標識又はタグ、例えば、放射性及び/又は蛍光性及び/又はエピトープラベル若しくはタグなどを含むマーカーと共に提供される。
好ましくは、該ポリペプチドに対する該ヒト化モノクローナル抗体は、原核又は真核細胞の形質移入又は形質転換に適切に適合した発現ベクター中で、融合ポリペプチドとして製造される。
【0022】
イムノグロブリンとしても知られる抗体は、外来分子(抗原)に対する特異性を有するタンパク質分子である。イムノグロブリン(Ig)は2対のポリペプチド鎖、1対は軽(L)(低分子量)鎖(κ又はλ)、及びもう1対は重(H)鎖(γ、α、μ、δ及びε)によって構成され、ジスルフィド結合によって4つ全てが結合された構造上関連したタンパク質のクラスである。H及びL鎖両方とも抗原の結合に寄与し、あるIg分子からその他を通じて高度に可変な領域を保持している。さらに、H及びL鎖は不変又は定常な領域を含んでいる。
L鎖は2つのドメインによって構成される。カルボキシ末端ドメインは、特定のタイプのL鎖間で本質的に同一であり、「定常」(C)領域と呼ばれている。アミノ末端ドメインはL鎖毎に異なり、抗体の結合部位に寄与している。その可変性により、「可変」(V)領域と呼ばれている。
Ig分子のH鎖は、いくつかのクラス、α、μ、δ、α及びγ(いくつかのサブクラスが存在する)からなる。2つの同一のH及びL鎖の1又は複数のユニットから構成される会合したIg分子は、その名が保持するH鎖に由来する。従って、5つのIgアイソタイプが存在する:IgA,IgM,IgD,IgE及びIgG(H鎖の違いに基づく4つのサブクラスが存在する。即ち、IgGl,IgG2,IgG3及びIgG4)。抗体の構造及びそれらの種々の機能に関する更なる詳細は、Using Antibodies:A laboratory manual,Cold Spring Harbour Laboratory Press中に見出すことができる。
【0023】
キメラ抗体はマウス又はラット抗体の全てのV領域がヒト抗体のC領域と結合されている組換抗体である。ヒト化抗体は、齧歯類抗体のV領域に由来する相補性決定領域と、ヒト抗体のV領域に由来するフレームワーク領域とを融合させた組換えハイブリッド抗体である。ヒト抗体に由来するC領域も使用される。相補性決定領域(CDRs)は、抗体の重鎖及び軽鎖の両方のN末端ドメイン内の領域であり、V領域の変動の多くがここに限局している。 これらの領域は抗体分子の表面上にあるループ形成している。これらのループは抗体と抗原間の結合表面を提供する。
【0024】
非ヒト動物由来の抗体は外来抗体に対する免疫応答を引き起こし、血液循環から排除される。キメラ及びヒト化抗体は、ヒトに注射した場合、共に減少した抗原性を有するが、それは、組換えハイブリッド抗体中では、齧歯類(即ち、外来の)の抗体量が低減されているからである。一方、ヒト抗体領域は免疫応答に対し禁制ではない。この結果、より弱い免疫応答性となり、抗体のクリアランスの減少が生じる。ヒト疾患の治療において治療的抗体を用いる場合、これは明らかに望ましいことである。ヒト化抗体は「外来」抗体領域がより少なくなるようにデザインされており、従って、キメラ抗体よりもより低い抗原性を有すると考えられる。
【0025】
本発明のさらなる好ましい実施態様において、該抗体はその活性が補体によって媒介される、例えば、抗体の活性が補体によって活性化されるような抗体である。
本発明の他の態様において、本発明のヒト化又はキメラ抗体をコードする核酸配列を含むベクターが提供される。
本発明のさらなる態様において、本発明のヒト化又はキメラ抗体をコードするベクターを含む細胞又は株化細胞が提供される。該細胞又は株化細胞は、本発明のヒト化又はキメラ抗体をコードするベクターで形質転換又は形質移入されてもよい。
本発明のさらなる態様において、前述のようなモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ株化細胞が提供される。
本発明のさらなる態様において、本発明のハイブリドーマ株化細胞を用いた本発明のモノクローナル抗体を生産する方法が提供される。
【0026】
本発明のさらなる態様において、
i)本発明のヒト化又はキメラ抗体をコードする核酸分子を含むベクターで形質転換又は形質移入された細胞を提供し;
ii)該抗体の製造に適した条件で該細胞を生育させ;及び
該細胞又はその生育環境から該抗体を精製することを含む本発明のヒト化又はキメラ抗体の製造方法が提供される。
本発明のさらなる態様において、
i)図7から12に表されるアミノ酸配列又はその断片を有する少なくとも1つのポリペプチドを含む抗原で、免疫応答性動物を免疫し;
ii)ハイブリドーマ細胞を作製するために免疫された免疫応答性動物のリンパ球とミエローマ細胞を融合させ;
iii)工程(ii)のハイブリドーマ細胞によって生産されるモノクローナル抗体を(i)のアミノ酸配列との結合活性についてスクリーニングし;
iV)増殖し、及び/又は該モノクローナル抗体を分泌するハイブリドーマ株化細胞を培養し;
v)培養上清からモノクローナル抗体を回収する:
工程を含む本発明のハイブリドーマ株化細胞を調製する方法が提供される。
免疫応答性動物はマウス、ラット又はウサギでもよい。
ハイブリドーマ細胞を用いたモノクローナル抗体の製造は当業者には周知である。モノクローナル抗体を製造するために使用される方法は、参考文献としてここに含まれるKohler and Milstein in Nature 256,495−497 (1975)、及びDonillard and Hoffmanによる“Basic Facts about Hybridomas” in Compendium of Immunology V.IIed.by Schwartz,1981に記載されている。
【0027】
本発明のさらなる態様では、微生物感染又は微生物関連疾患の治療又は予防のための医薬の製造に対し、本発明の最初の態様にかかる抗原性ポリペプチドの使用が提供される。
好ましくは、微生物感染は、Staphylococcus spp、例えば、Staphylococcus aureus,Staphylococcus pyrogenes,Staphylococcus epidermidis;Enterococcus spp、例えば、Enterococcus faecalis;Lysteria spp;Pseudomonas spp,Mycobacterium spp、例えば、Mycobacterium tuberculsis;Enterobacter spp;Campylobacter spp,Salmonella spp;Streptococcus spp、例えば、Streptococcus group A又はB,Streptoccocus pneumoniae;Helicobacter spp、例えば、Helicobacter pylori;Neisseria spp、例えば、Neisseria gonorrhea,Neisseria meningitidis;Borrelia burgdorferi spp;Shigella spp、例えば、Shigella flexneri;Escherichia coli spp;Haemophilus spp、例えば、Haemophilus influenzae,Chlamydia spp、例えば、Chlamydia trachomatis,Chlamydia pneumoniae,Chlamydia psittaci;Francisella tularensis; Bacillus spp、例えば、Bacillus anthracis;Clostridia spp、例えば、Clostridium botulinum;Yersinia spp、例えば、Yersinia pestis;Treponema spp;Burkholderia spp;例えば、Burkholderia mallei及びB pseudomalleiに由来する細菌性病原体によって引き起こされる細菌性感染である。
【0028】
細菌関連疾患は、Staphylococcus aureus関連疾患であってもよい。Staphylococcus aureus関連疾患には、敗血症;結核症;細菌性食中毒;血液感染;腹膜炎;心内膜炎;骨髄炎;セプシス;皮膚疾患;髄膜炎;肺炎;胃潰瘍;淋疾;連鎖球菌性咽頭炎;連鎖球菌性毒性ショック;壊死性筋膜炎;膿痂疹;ヒストプラスマ症;ライム病;胃腸炎;赤痢;細菌性赤痢が含まれる。
本発明のさらなる態様では、微生物感染の治療のための医薬の製造における本発明の抗体の使用が提供される。
本発明のさらなる態様において、本発明の最初の態様の抗原性ポリペプチド、又は本発明の第5の態様のワクチン、又は本発明の抗体を患者に投与することを含む患者の治療方法が提供される。
本明細書の詳細な説明及び請求の範囲を通じて、「含む(comprise)」及び「包含する(contain)」なる語句及び該語句のバリエーション、例えば、「含んでいる(comprising)」、及び「含む(comprises)」は、「限定はしないで含む」ことを意味し、また、他の部分、付加物、成分、完全なもの又は段階を排除(しない)することを意図しない。
本明細書の詳細な説明及び請求の範囲を通じて、別途前後関係で要求されなければ、単数は複数を包含する。特に、不定冠詞が使用される場合、別途前後関係で要求されなければ、本明細書は、単数と同様に複数をも意図するものとして理解される。
本発明の特定の態様、実施態様又は実施例に関連して記載される特徴、完全体、性質、化合物、化学成分、化学基は不整合がない限り、ここで記載される全ての他の態様、実施態様、実施例に適用できると理解される。
本発明の実施例は、以下の物質、材料、方法及び図を参照しながら、例示としてのみ、ここに記載される。
【実施例】
【0029】
材料と方法

対象の遺伝子配列のPCR増幅のために使用した染色体DNAは、B.subtilis subsp.subtilis str.168,S.aureusNCTC8325,S.aureusN315及びS.aureus COL(DNA配列のローカスに関する情報は表1を参照のこと)であった。S.aureusSH1000(S.aureusSJF741)のエリスロマイシン耐性sodA::lacZ転写融合誘導体は、本アッセイで使用された菌株であった(Horsburghら,2002)。
【表1】


注記:異なる菌株のS.aureusは、配列中へのファージ挿入に起因して、同一遺伝子に対して異なるローカス名を持つ。本書類においては、S.aureus遺伝子について使用される該ローカス名はS.aureusN315配列中のものに対応している。
【0030】
抗原の調製
Bacillus subtilis 168(Obg,YdiB,YphC)(図1)、YsxC(図2)、YwlC(図3)、及びS.aureusN315(SA1387,Gcp/SA1854(図6))から選択されたタンパク質をコードする遺伝子をPCRで増幅した。得られた産物をプラスミドpETBlue−1にクローン化し、大腸菌TunerTM(DE3)pLacIコンピテント細胞(Novagen)中にて、使用説明書に従い過剰発現させた。過剰発現したタンパク質は、陰イオン交換、ハイドロフォービック及びゲル濾過クロマトグラフィーによる3ステップスキームで精製した。タンパク質の過剰発現のレベルは、SDS−PAGEで確認し、その精製度は平均90%であった。さらに、S.aureus N315タンパク質SA1187(YneS−731(図4)及びYneS−733(図5))は、F−moc化学法を使用したMillige9050 Peptide Synthesizerで合成した。F−mocアミノ酸(Novobiochem/Merck)は、10%モルの過剰HOBtの存在下、HCTU又はHBTUの当モルを使用したカップリングの直前に活性化された。いずれの場合においても、ペプチドをFmoc−L−Cys(Trt)−PEG−PSレジン(Applied Biosystems)上に会合させることにより、キャリアプロテインと結合可能にするため、ペプチドのC末端にシステインを導入した。ペプチドはC18Vydacカラム(22×250mm)を使用し、0.1%TFA中、アセトニトリルのグラディエントにより精製した。ペプチドは、マススペクトロメーターで確認した。精製したペプチドはウサギのハプテンの抗原性を高めるため、KLH(Sigma)(キャリアプロテイン)と結合させた。結合は、MBS(Sibma)を使用して、10×PBS中で行った。
【0031】
血清
血清は、シェフィールド大学の抗体資源センターにおいて、以下から取得した:
i)B.subtilis(Obg,YdiB,YphC,YwlC及びYsxC)及びS.aureus(Gcp,SA1387)に対し免疫したウサギ;ii)S.aureusタンパク質SA1187(YneS−731,YneS−733)から選択されたKLHを結合したペプチドに対し免疫されたウサギ;iii)Arabidopsis thalianaのサイクロフィリン由来のKLHを結合させたペプチドに対し免疫されたウサギ;iv)天然(免疫をしていない)ウサギ血清;及びv)S.aureus感染症から回復期にある患者由来のヒト血清
【0032】
免疫の工程は以下のように行った。各ウサギあたり200から500μgの抗原(リン酸緩衝生理食塩水、PBS中、最大量250μl)を等量の完全フロイトアジュバントと混合した。静置させて分離しないエマルジョンが形成されるまで、溶液を23Gニードルを通してろ過した。各ウサギに最大500μlを皮下に接種した。22、43及び64日目に繰り返し注射を行ったが、不完全フロイトアジュバントを用いた。サンプル血液を53日及び64日目に集めた。注射の日取りは3〜6週間の範囲で適宜選択された。適当な力価が試験血清で確認されたら、その10日後に採血を行う最終的なブーストを計画することができる。
血清は、凍結して保管し、殺菌実験の直前に、解凍して、直径0.2μm穴のフィルター(Ministart High Flow,Sartorius)を通してろ過した。
ウェスタンブロット解析(データは示さず)により、B.subtils YdiBに対する抗体がS.aureusのYdiBホモログに対応するサイズのバンドを認識することが示され、この結果、これらの抗体の種間クロス反応が示唆された。
【0033】
培地及び生育条件
血清実験に関する接種材料を調製するために、S.aureus SJF741を最終濃度5μg/ml(BHI−Ery)となるようにエリスロマイシン(Sigma)を添加したBrein Heart Infusion培地(BHI;Oxoid)中、37℃で生育させた。
接種材料の調製
研究室の凍結ストックからBHI−Eryプレート上でフレッシュに生育させたS.aureus SJF741の単一コロニーを、5mlのBHI−Eryを含む通用の媒体に接種し、回転式シェーカー中(250rpm)、37℃で一晩(12から16時間の間)インキュベートした。得られた培養物のリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で10倍希釈物は、血清に接種する直前に調製した。
【0034】
血清実験
1.5ml遠心管中の種々の血清由来の200μlアリコットに対し、最終細胞密度が1×10から1×10細胞/mlとなるようにPBSで希釈したS.aureusSJF741を接種し、回転シェーカー中、37℃でインキュベーションを行った。これらの血清培養物から10μlのサンプルを定期的に集め、連続的に希釈し、各希釈物から10μlをBHI−Eryプレート上にプレーティングし、その後、37℃で一晩インキュベートした。さらに、各血清培養物から10μlをとり、そのままBHI−Eryプレート上に直接プレーティングした。1から40コロニーを生じさせる希釈物についてのみカウントを行い、mlあたりの生存細胞の数(コロニー形成ユニット、CFU)を決定した。
【0035】
結果
種々の血清のstapylococcal殺菌能力を評価するために、S.aureusを種々のウサギ抗血清で調べ、生存時間を評価した。その結果、S.aureusは、Gcp及びYneSに対する抗体を含む血清に接触後2から3時間後に、他の表面タンパク質に対する場合と同様に、劇的に死滅することが示された(図16)。これに対し、B.subtilisの細胞質タンパク質(Obg及びYdiB)、Arabidopsis thaliana由来の膜タンパク質(サイクロフィリン)、種々の正常ウサギ血清に対する抗体は、殺菌性の表現型を示さなかった(図15)。
また、特記すべきは、B.subtilis由来の細胞質タンパク質と推定されるもの(YsxC及びYphC及びYwlC)に対して免疫されたウサギ由来の血清は、Gcp及びYneS(731及び733)抗体について観察されたのと類似の殺菌性の表現型を示した。このことは、YsxC,YphC及びYwlCが細胞質タンパク質と推測されることから、表面には露出されておらず、血清がそれらを認識できないと予想されたことから、意外なことであった。
本研究は、YsxCのS.aureus膜画分中への局在を示唆するものである。さらに、本研究は、殺菌効果が、補体のある成分に対応するような血清中に存在する熱不安定な成分(熱処理で不活性化される、材料及び方法を参照のこと)を通じてメディエートされることを明らかにした(図16)。
【0036】
参考文献
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【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】図1は、Bacillus subtilis由来のyphCポリペプチドのDNA配列を示す。
【図2】図2は、Bacillus subtilis由来のysxCポリペプチドのDNA配列を示す。
【図3】図3は、Bacillus subtilis由来のywlCポリペプチドのDNA配列を示す。
【図4】図4は、Staphylococcus aureus由来のyneSオルソログペプチド731のDNA配列を示す。
【図5】図5は、Staphylococcus aureus由来のyneSオルソログペプチド733のDNA配列を示す。
【図6】図6は、共に、Staphylococcus aureusに由来する(a)膜の外側に露出されると推定されるgcp領域をコードするDNA配列;及び(b)gcpオルソログポリペプチドの全長DNA配列を示す。
【図7】図7から図11は、各々、図1から5に示すDNA配列に対応するアミノ酸配列を示す。
【図8】図7から図11は、各々、図1から5に示すDNA配列に対応するアミノ酸配列を示す。
【図9】図7から図11は、各々、図1から5に示すDNA配列に対応するアミノ酸配列を示す。
【図10】図7から図11は、各々、図1から5に示すDNA配列に対応するアミノ酸配列を示す。
【図11】図7から図11は、各々、図1から5に示すDNA配列に対応するアミノ酸配列を示す。
【図12】図12(a)及び(b)は、各々、図6(a)及び(b)に対応するアミノ酸配列を示す。
【図13】図13及び図14は、膜タンパク質yneS及びgcpのハイドロパシープロットを示す。前述のタンパク質のハイドロパシープロットの計算及び膜貫通トポロジーモデルを予測するためのグラフィック表示がConPredII Methodにより決定され、http://bioinfo.si.hirosaki−u.ac.jp/〜ConPred2/;サーバーで実行された。
【図14】図13及び図14は、膜タンパク質yneS及びgcpのハイドロパシープロットを示す。前述のタンパク質のハイドロパシープロットの計算及び膜貫通トポロジーモデルを予測するためのグラフィック表示がConPredII Methodにより決定され、http://bioinfo.si.hirosaki−u.ac.jp/〜ConPred2/;サーバーで実行された。
【図15】図15は、ヒト患者(□)、非免疫ウサギ(○)又はA.thalianaサイクロフィリンタンパク質(△)に対して作製された血清に由来する血清の熱処理が、S.aureusSJF741の死を誘導しなかったことを示している。S.aureusSJF741の不死は、S.aureus感染から回復した患者(■)(パネルA)、及び非免疫ウサギ(●)(パネルB)由来の天然の血清を使用する場合に観察された。A.thalianaサイクロフィリンタンパク質(▲)(パネルC)、B.subtilisタンパク質Obg(▼)及びYdiB(+)(パネルD)及びS.aureusSA1387(◆)(パネルE)に対する天然血清の場合、最初の6時間で、S.aureusSJF741の数に僅かな減少が観察され、その後リカバーされた。
【図16】図16は、B.subtilisタンパク質YsxC(●)、YphC(■)、及びYwlC(▲)(パネルA及びB)に対して作製された天然血清がS.aureusSJF471を劇的に殺傷し、2から4時間の間に5log減少したことを示す。S.aureusペプチドYneS−731(▼)及びYneS733(◆)及びS.aureusタンパク質Gcp(+)(パネルC−E)に対する天然血清を使用した場合、同様の効果が観察された。これに対し、B.subtilisYsxCタンパク質(○)又はS.aureusペプチドYneS−731(▽)及びYneS−733(◇)(パネルA,C,D)に対する血清の熱処理は、これらの血清の殺菌能力、つまり、上述のような天然型において(非熱処理型)S.aureusSJF741を殺菌することができる能力を消失さる。従って、血清の殺菌能力は熱不安定で、熱処理サンプル中では不活性な構成成分に起因する。B.subtilisタンパク質YphC(■)及びYwlC(▲)、又はS.aureus gcpタンパク質(+)に対する熱処理血清を用いた実験は本図には示されていない。また、上述の通り、これに対応する天然血清(パネルB及びE)による実験は、これらの血清のS.aureus殺菌能力を示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
i)図1から6に示される核酸配列、
ii)病原体によって発現されるポリペプチドをコードする(i)の核酸配列、
iii)上記(i)又は(ii)で同定される配列とハイブリダイズする核酸配列;及び
iv)遺伝子コードの結果として(i)、(ii)又は(iii)で同定される核酸配列に縮退する核酸配列:
からなるグループより選択される単離された核酸配列によってコードされる、医薬として使用するための抗原性ポリペプチド又はその一部。
【請求項2】
前記医薬がワクチンである請求項1に記載の抗原性ポリペプチド。
【請求項3】
前記抗原性ポリペプチドをコードする核酸がストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で図1から6に示される核酸配列、又はその相補鎖とアニールする、請求項1に記載の抗原性ポリペプチド。
【請求項4】
前記抗原性ポリペプチドが病原体によって発現される請求項1に記載の抗原性ポリペプチド。
【請求項5】
前記病原体が細菌である請求項4に記載の抗原性ポリペプチド。
【請求項6】
前記細菌がグラム陽性細菌である請求項5に記載の抗原性ポリペプチド。
【請求項7】
前記細菌が:
Bacillus subtillis,Staphylococcus aureus;Staphylococcus epidermidis;Enterococcus faecalis;Mycobacterium tuberculsis;Streptococcus group B;Streptoccocus pneumoniae;Helicobacter pylori;Neisseria gonorrhea;Streptococcus group A;Borrelia burgdorferi;Coccidiodes immitis;Histoplasma sapsulatum;Neisseria meningitidis type B;Shigella flexneri;Escherichia coli;Haemophilus influenzae;Listeria monocytogenes,Bacillus anthracis,Corynebacterium diptheriae,Clostridium tetani,Mycoplasma spp.及びTreponema pallidumからなるグループより選択される、請求項5に記載の抗原性ポリペプチド。
【請求項8】
細菌がStaphylococcus spp.属である請求項5に記載の抗原性ポリペプチド。
【請求項9】
細菌がStaphylococcus aureusである請求項8に記載の抗原性ポリペプチド。
【請求項10】
前記抗原性ポリペプチドが図7から12に示されるアミノ酸配列の全て、又はその一部を含む請求項1に記載の抗原性ポリペプチド。
【請求項11】
請求項1に記載の抗原性ポリペプチドをコードする核酸配列を含むベクター。
【請求項12】
請求項1に記載の組換え抗原性ポリペプチドの製造方法であって:
(i)請求項11のベクターで形質転換/形質移入された細胞を提供し、
(ii)該ポリペプチドの製造に適した条件で該細胞を生育させ、及び
(iii)該細胞又はその生育環境から該ポリペプチドを精製する、
ことを含む製造方法。
【請求項13】
請求項11のベクターで形質転換又は形質移入された細胞又は株化細胞。
【請求項14】
請求項1に記載の少なくとも1つの抗原性ポリペプチド又はその一部を含むワクチン。
【請求項15】
前記ワクチンが担体及び/又はアジュバントをさらに含む請求項14に記載のワクチン。
【請求項16】
前記ワクチンが、サブユニットワクチンであって、該ワクチンの抗原性部分が請求項1の抗原性ポリペプチドの断片又はサブユニットである、請求項15に記載のワクチン。
【請求項17】
動物に病原性微生物に対する免疫を獲得させる方法であって、該動物に対し請求項1の少なくとも1つの抗原性ポリペプチド、又はその一部を投与することを含む方法。
【請求項18】
前記ポリペプチドが請求項14のワクチンの形式である請求項17に記載の方法。
【請求項19】
薬理学的に許容な担体又は希釈剤と請求項1に記載の抗原性ポリペプチドの少なくとも1つ、又は請求項14に記載のワクチンとの組み合わせの有効量を含む医薬組成物。
【請求項20】
請求項1の少なくとも1つの抗原性ポリペプチド又はその一部と結合する抗体又は少なくともその有効な結合部分。
【請求項21】
前記抗体がポリクローナル又はモノクローナル抗体である請求項20に記載の抗体。
【請求項22】
前記抗体が、該抗体可変領域を含み、ヒト抗体の不変又は定常領域を有する、組換法により製造されるキメラ抗体である請求項20に記載の抗体。
【請求項23】
前記抗体が、該抗体の相補性決定領域と定常(C)領域及びヒト抗体の可変(V)領域由来のフレームワーク領域の両方と結合させる組換え方法によってヒト化される請求項20に記載の抗体。
【請求項24】
請求項22に記載のキメラ抗体又は請求項23に記載のヒト化抗体をコードする核酸配列を含むベクター。
【請求項25】
請求項24のベクターで形質転換又は形質移入された細胞又は株化細胞。
【請求項26】
i)請求項24のベクターで形質転換又は形質移入された細胞を提供し;
ii)該抗体の製造に適した条件で該細胞を生育させ;及び
該細胞又はその生育環境から該抗体を精製することを含むヒト化又はキメラ抗体の製造方法。
【請求項27】
i)図7から12に表されるアミノ酸配列又はその断片を有する少なくとも1つのポリペプチドを含む抗原で免疫応答性動物を免疫し;
ii)ハイブリドーマ細胞を作製するために免疫された免疫応答性動物のリンパ球とミエローマ細胞を融合させ;
iii)工程(ii)のハイブリドーマ細胞によって生産されるモノクローナル抗体を(i)のアミノ酸配列との結合活性についてスクリーニングし;
iv)増殖し、及び/又は該モノクローナル抗体を分泌するハイブリドーマ株化細胞を培養し;
v)培養上清からモノクローナル抗体を回収する:
工程を含むハイブリドーマ株化細胞を調製する方法。
【請求項28】
微生物の感染又は微生物関連疾患の治療又は予防のための医薬の製造における請求項1に記載の抗原性ポリペプチドの使用。
【請求項29】
微生物の感染が:
Staphylococcus spp、例えば、Staphylococcus aureus,Staphylococcus pyrogenes,Staphylococcus epidermidis;Enterococcus spp、例えば、Enterococcus faecalis;Lysteria spp;Pseudomonas spp,Mycobacterium spp、例えば、Mycobacterium tuberculsis;Enterobacter spp;Campylobacter spp、Salmonella spp;Streptococcus spp、例えば、Streptococcus group A又はB,Streptoccocus pneumoniae;Helicobacter spp、例えば、Helicobacter pylori;Neisseria spp、例えば、Neisseria gonorrhea,Neisseria meningitidis;Borrelia burgdorferi spp;Shigella spp、例えば、Shigella flexneri;Escherichia coli spp;Haemophilus spp、例えば、Haemophilus influenzae,Chlamydia spp、例えば、Chlamydia trachomatis,Chlamydia pneumoniae,Chlamydia psittaci;Francisella tularensis;Bacillus spp、例えば、Bacillus anthracis;Clostridia spp、例えば、Clostridium botulinum;Yersinia spp、例えば、Yersinia pestis;Treponema spp;Burkholderia spp;例えば、Burkholderia mallei及びB pseudomallei、
からなるグループより選択される細菌種由来の細菌性病原体によって引き起こされる細菌性感染である、請求項28に記載の使用。
【請求項30】
微生物関連疾患が、敗血症;結核症;細菌性食中毒;血液感染;腹膜炎;心内膜炎;骨髄炎;セプシス;皮膚疾患;髄膜炎;肺炎;胃潰瘍;淋疾;連鎖球菌性咽頭炎;連鎖球菌性毒性ショック;壊死性筋膜炎;膿痂疹;ヒストプラスマ症;ライム病;胃腸炎;赤痢;細菌性赤痢、から選択されるStaphylococcus aureus関連疾患である、請求項28に記載の使用。
【請求項31】
微生物感染の治療のための医薬の製造における請求項20に記載の抗体の使用。
【請求項32】
患者に請求項1に記載の抗原性ポリペプチド、又は請求項14に記載のワクチン、又は請求項20に記載の抗体を投与することを含む患者の治療方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公表番号】特表2008−533982(P2008−533982A)
【公表日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−502448(P2008−502448)
【出願日】平成18年3月8日(2006.3.8)
【国際出願番号】PCT/GB2006/000826
【国際公開番号】WO2006/100430
【国際公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【出願人】(507148917)アブシンス・バイオロジクス・リミテッド (3)
【氏名又は名称原語表記】Absynth Biologics Ltd
【住所又は居所原語表記】40 Leavygreave Road, Sheffield S3 7RD, United Kingdom
【Fターム(参考)】