説明

ポリマアロイチップ、ポリマアロイ繊維および超極細繊維ならびにそれらの製造方法

【課題】 不織布等を製造する際の熱接着性に優れた海島構造もしくは芯鞘構造からなる超極細繊維を提供し、不織布における超極細繊維の脱落の問題を解消する。
【解決手段】 少なくとも3種のポリマからなる海島構造を有するポリマアロイ繊維であって、島部は繊維の長手方向にスジ状に延びていて、島部の平均直径は0.001〜5μmであり、島部は、少なくとも2種のポリマからなる海島構造もしくは芯鞘構造であって、海部が脂肪族ポリエステルからなり、島部がポリオレフィンやナイロン6を主成分としてなり、島部の平均直径が0.001〜5μmである。このポリマアロイ繊維から超極細繊維を製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明のチップや繊維は、海島構造をもち、その島部内がポリプロピレンやポリエチレンのようなポリオレフィンからなる海島構造もしくは芯鞘構造をもち、ポリ乳酸のような脂肪族ポリエステルを海部とするポリマアロイチップやポリマアロイ繊維に関するものである。特に、芯鞘構造もしくは海島構造をもち、不織布用として好適な超極細繊維を製造するために好適なポリマアロイ繊維に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、合成繊維の極細糸は、繊維径十μm単位の細い繊維径を有し、その細繊度を活かして、衣料用や、産業用資材用の繊維として好適に用いられてきた。
【0003】
特に、これら極細糸は、半導体やハードディスクをはじめとする情報技術を支える部材の研磨材としても用いられている。また、スポーツ資材として、軽量部材として用いられている。さらにスエード調やヌバック調や銀付といった人工皮革において、独特の風合いを醸しだし、衣料や家具などの内装材に利用されている。
【0004】
さらに、より細繊度化した超極細糸による重量あたりの表面積アップによって、上記特性以外にも吸着性や吸湿性といった特性向上を狙って、数百nm単位の繊維径を有する繊維が検討されてきた。
【0005】
また、ポリオレフィン、特にポリプロピレンおよびポリエチレンからなる超極細糸は衣料用、自動車用資材、産業資材用、農業用資材、スポーツ資材または、医療用資材に用いられ、なかでも芯鞘型の熱接着極細繊維は、形態を維持した不織布や、フィルターやセパレーターの部材として広範囲に用いられている。
しかしながら、超極細の繊維は不織布からの脱離が多く、製品化後に性能が劣化するといった問題が残っていた。
【0006】
そこで、特許文献1には、少なくとも2種の溶解性の異なる有機ポリマからなる海島構造繊維であって、島成分が難溶解性ポリマ、海成分が易溶解性ポリマからなり、島ドメインの平均直径が1〜150nmであり、島ドメインの60%以上が直径1〜150nmのサイズであるポリマアロイ繊維が記載されている。また、特許文献1では、島ポリマの融点が海ポリマの融点の−20〜+20℃で、さらに海ポリマの溶融粘度が100pa・s以下であるポリマアロイ繊維が用いられている。また、特許文献1には、これらの繊維の海成分をアルカリ溶解することによって、1〜150nmの超極細繊維が得られることが記載される。
【0007】
さらに、特許文献2には、単糸繊度が1×10−7〜2×10−4dtexで繊度比率の60%以上が単糸繊度1×10−7〜2×10−4 dtexの繊維が記載されている。
さらに、特許文献3には、ポリプロピレンとポリ乳酸からなる海島構造のポリマアロイ繊維において、島成分のポリプロピレンの繊度が繊維径で50μm以下と記載されている。
【0008】
さらに、特許文献4には、ポリオレフィンとポリ乳酸からなる海島構造のポリマアロイ繊維において、ポリ乳酸を溶解後に、島成分のポリオレフィンの平均繊維径が0.001〜5μmで、平均繊維長が0.2〜200mmであると記載されている。
【特許文献1】特開2004−169261号公報
【特許文献2】特開2004−162244号公報
【特許文献3】特表2002−516622号公報
【特許文献4】特表2008−31443号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記特許文献1および2に記載された方法から得られる超極細繊維の繊維径はナノレベルであるが、繊維長が数μmと非常に短く、アルカリでの脱海後に脱落し、繊維としてその形状を維持かつ取り扱うことが困難となっている。そのため、不織布としたり紡績したりするに際し、他の素材との積層、混合の工程が余分に必要となっていた。さらに、繊維長が短いために他素材との積層、混合した後でも脱落するという課題が残り、製品化後に機能が低下する問題があった。
【0010】
また、特許文献3で開示されるのはアロイ繊維のみで、かつそのうち島成分は繊維径50μm以下と太く、ナノレベルの超極細繊維を得ることができるようなものではない。
特許文献4でポリオレフィンからなる長繊維の超極細繊維が得ることができるが、不織布加工後に、繊維同士の接着がないので、特に薄い不織布を作製したときには、布帛の安定性に欠けるものであった。
【0011】
本発明者らは、上記した従来技術の問題を解消し、安定にかつ容易に加工することができる超極細繊維を製造し、不織布の安定性を高めるために有効な方法を検討し、本発明に到達した。
【0012】
即ち、本発明は、ポリマアロイ繊維を利用して超極細繊維を製造する方法によって、超極細繊維の長さが十分に長く、かつ、不織布等を製造する際の熱接着性に優れた超極細繊維を提供すること、そして、不織布における超極細繊維の脱落の問題を解消することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上述した超極細繊維の脱落の問題を解決するという目的を達成するために、本発明は、次の事項により特定されるポリマアロイチップ、その製造方法、ポリマアロイ繊維、その製造方法、超極細繊維、その製造方法からなる。
【0014】
少なくとも3種のポリマから構成される海島構造を有するポリマアロイチップであって、海島構造における島部はチップの長手方向にスジ状に延びていて、島部の平均直径が0.01〜20μmであり、島部は、少なくとも2種のポリマから構成される芯鞘型もしくは海島型の構造をとっており、島部の中に存在する芯もしくは島に相当する相部分の平均直径は島部の平均直径の80〜1%であり、かつ、島部の平均長さが0.1mm以上であるポリマアロイチップ。
【0015】
ここで、ポリマアロイチップを構成するポリマが、島部の中に存在する芯もしくは島に相当する相部分を構成する島ポリマ1、島部の中に存在する鞘もしくは海に相当する相部分を構成する島ポリマ2、及び、海部を構成する海ポリマである場合、これらポリマを190〜260℃で混練する際の同一の温度において、島ポリマ1のポリマ溶融粘度は島ポリマ2のポリマ溶融粘度よりも高く、島ポリマ2のポリマ溶融粘度は海ポリマのポリマ溶融粘度よりも高く、かつ、それら各ポリマの溶融粘度の差が、50〜200Pa・sであることが好ましい。また、海ポリマが脂肪族ポリエステルまたはその共重合体からなり、かつ、島ポリマ1と島ポリマ2とが、以下のいずれかの組合せであることが好ましい。
(組合せ1) 島ポリマ1がポリプロピレンまたはその共重合体で、島ポリマ2がポリエチレンまたはその共重合体である、
(組合せ2) 島ポリマ1がナイロン6またはその共重合体で、島ポリマ2がポリエチレンまたはその共重合体である、
(組合せ3) 島ポリマ1がナイロン6またはその共重合体で、島ポリマ2がポリプロピレンまたはその共重合体である、
【0016】
上記のポリマアロイチップは次の方法により製造できる。
島ポリマ1と島ポリマ2とを芯鞘構造で溶融押出して芯鞘構造チップとし、または、島ポリマ1と島ポリマ2とを190〜260℃で溶融混練して押出し海島構造チップとした後、これら芯鞘構造チップ及び/又は海島構造チップと海ポリマとを共に190〜260℃で再溶融して混練して押出し海島構造の線状体とし、引き延ばし水冷した後にカットするポリマアロイチップの製造方法。
【0017】
少なくとも3種のポリマから構成される海島構造を有するポリマアロイ繊維であって、海島構造における島部は繊維の長手方向にスジ状に延びていて、島部の平均直径は0.001〜5μmであり、島部は、少なくとも2種のポリマから構成される芯鞘もしくは海島型の構造をとっており、島部の中に存在する芯もしくは島に相当する相部分の平均直径は島部の平均直径の80〜1%であり、かつ、島部の平均長さが0.2mm以上であるポリマアロイ繊維。
【0018】
ここで、ポリマアロイ繊維を構成するポリマが、島部の中に存在する芯もしくは島に相当する相部分を構成する島ポリマ1、島部の中に存在する鞘もしくは海に相当する相部分を構成する島ポリマ2、及び、海部を構成する海ポリマである場合、これらポリマを190〜260℃で溶融紡糸する際の同一の温度において、島ポリマ1の溶融粘度は島ポリマ2の溶融粘度よりも高く、島ポリマ2の溶融粘度は海ポリマの溶融粘度よりも高く、かつ、それら各ポリマの溶融粘度差が、50〜200Pa・sであることが好ましい。また、海ポリマが脂肪族ポリエステルまたはその共重合体からなり、かつ、島ポリマ1と島ポリマ2とが、以下のいずれかの組合せであることが好ましい。
(組合せ1) 島ポリマ1がポリプロピレンまたはその共重合体で、島ポリマ2がポリエチレンまたはその共重合体である、
(組合せ2) 島ポリマ1がナイロン6またはその共重合体で、島ポリマ2がポリエチレンまたはその共重合体である、
(組合せ3) 島ポリマ1がナイロン6またはその共重合体で、島ポリマ2がポリプロピレンまたはその共重合体である、
【0019】
上記のポリマアロイ繊維は、前記したポリマアロイチップを用い、190〜260℃にて溶融紡糸することにより製造できる。
少なくとも2種のポリマからなる芯鞘構造もしくは海島構造の超極細繊維であって、繊維中に存在する芯もしくは島に相当する相部分は繊維の長手方向にスジ状に延びていて、超極細繊維の平均直径は0.001〜5μmであり、かつ、芯もしくは島に相当する相部分の平均直径は超極細繊維の平均直径の80〜1%であり、かつ、超極細繊維の平均長さが0.2mm以上である超極細繊維。
【0020】
この超極細繊維において、190〜260℃の範囲内の同一の温度において、芯もしくは島に相当する相部分を構成する芯・島ポリマの溶融粘度が150〜550Pa・sであり、鞘もしくは海に相当する相部分を構成する鞘・海ポリマの溶融粘度が、芯・島ポリマの溶融粘度よりも少なくとも50Pa・s低くかつ、100〜500Pa・sであることが好ましい。また、芯もしくは島に相当する相部分を構成する芯・島ポリマと、鞘もしくは海に相当する相部分を構成する鞘・海ポリマとが、以下のいずれかの組合せであることが好ましい。
(組合せ1) 芯・島ポリマがポリプロピレンまたはその共重合体で、鞘・海ポリマがポリエチレンまたはその共重合体である、
(組合せ2) 芯・島ポリマがナイロン6またはその共重合体で、鞘・海ポリマがポリエチレンまたはその共重合体である、
(組合せ3) 芯・島ポリマがナイロン6またはその共重合体で、鞘・海ポリマがポリプロピレンまたはその共重合体である、
【0021】
上記の超極細繊維は、前記したポリマアロイ繊維をアルカリ溶解処理することにより製造することができる。
また、上記の超極細繊維を熱接着処理することにより不織布を製造することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、熱接着性を有する芯鞘型もしくは海島型の超極細繊維を容易に製造することができるため、不織布等の製造時に加熱によって容易に固定することができるので、薄膜化が容易でありかつ強度が向上する。そして、不織布中から超極細繊維の脱落を防止でき、また、安定にかつ容易に加工が行える超極細繊維を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明によって製造される超極細繊維は、芯鞘構造もしくは海島構造を有するものであり、これは、特異な海島構造をもつポリマアロイチップを製造し、次いでポリマアロイ繊維を製造し、アルカリ溶解処理することにより製造することができる。
【0024】
ポリマアロイチップ
本発明において、繊維製造に先立って準備するポリマアロイチップは、少なくとも3種のポリマから構成される海島構造を有するものであって、海島構造における島部はチップの長手方向にスジ状に延びていて、島部の平均直径は0.01〜20μmであり、島部は、少なくとも2種のポリマから構成される芯鞘もしくは海島型の構造をとっており、島部の中に存在する芯もしくは島に相当する相部分の平均直径は島部の平均直径の80〜1%であり、かつ、島部の平均長さが0.1mm以上である。このチップの長さは3〜30mm程度であればよい。
【0025】
このポリマアロイチップを構成するポリマが、島部の中に存在する芯もしくは島に相当する相部分を構成する島ポリマ1、島部の中に存在する鞘もしくは海に相当する相部分を構成する島ポリマ2、及び、海部を構成する海ポリマの3種である場合を例にとって以下説明する。また、以下においては、「島部の中に存在する芯もしくは島に相当する相部分」を島成分1と称し、「島部の中に存在する鞘もしくは海に相当する相部分」を島成分2と称する。
【0026】
ポリマアロイチップの海島構造における島部は、島成分1が島成分2で囲まれて存在する芯鞘構造もしくは海島構造をとっており、かつ、島成分1および島成分2からなる島部はチップの長手方向に連続的なスジ状に延びている。ここで、島成分1は断続的に切れていてもよいが、島成分2は、その平均長さが所定長となるようにスジ状に繋がっている。
【0027】
また、島部の平均直径は0.01〜20μmであり、さらには0.01〜10μmが好ましい。さらに好ましくは0.01〜5μmである。
さらには、島成分1の平均直径は島部の平均直径の80〜1%であり、さらには20〜1%であることが好ましい。さらに好ましくは10〜1%である。
【0028】
島部の平均長さは0.1mm以上である。さらには1mm以上と長いことが好ましい。その上限はチップの長さと同じであることが好ましく、長くても100mm以下である。さらに好ましくは2〜30mmである。
【0029】
このポリマアロイチップにおいては、190〜260℃で混練する際の同一の温度において、ポリマの溶融粘度は、次式を満足することが好ましい。
島ポリマ1>島ポリマ2>海ポリマ
それら各ポリマの溶融粘度の差、即ち、島ポリマ1と島ポリマ2との溶融粘度の差、島ポリマ2と海ポリマとの溶融粘度の差は、50〜200Pa・sであることが好ましく、さらにはその差が80〜150Pa・sであることが好ましい。
【0030】
また、島ポリマ1の溶融粘度は150〜550Pa・sであることが好ましく、島ポリマ2の溶融粘度は100〜500Pa・sであることが好ましく、海ポリマの溶融粘度は50〜450Pa・sであることが好ましい。
【0031】
本発明に用いられるポリマアロイチップは、海ポリマが、脂肪族ポリエステルまたはその共重合体からなることが好ましい。なかでも好ましくは、融点が110℃〜250℃の範囲の脂肪族ポリエステル系重合体であり、特に好ましくは、ポリ乳酸、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネートであり、最も好ましくはポリ乳酸である。
【0032】
島部を構成する島ポリマ1と島ポリマ2とは次のいずれかの組合せであることが好ましい。
(組合せ1) ポリマA1がポリプロピレンまたはその共重合体で、ポリマA2がポリエチレンまたはその共重合体である。
(組合せ2) ポリマA1がナイロン6またはその共重合体で、ポリマA2がポリエチレンまたはその共重合体である。
(組合せ3) ポリマA1がナイロン6またはその共重合体で、ポリマA2がポリプロピレンまたはその共重合体である。
【0033】
本発明に用いられるポリマアロイチップは、少なくとも2種のポリマを芯鞘構造で溶融押出して芯鞘構造チップとし、または、少なくとも2種のポリマを190〜260℃で溶融混練して押出し海島構造チップとしたのち、これら芯鞘構造チップ及び/又は海島構造チップとポリマBとを190〜260℃で再溶融して混練し押出し海島構造の線状体とし、引き延ばし水冷したのちにカットすることにより製造すればよい。
【0034】
ここで、ポリマA1とポリマA2とから芯鞘構造チップや海島構造チップを製造する際には、複合溶融押出しにより芯鞘構造もしくは海島構造の線状体としたのちにワイヤー状に引き延ばし水冷し、そののちにカットして芯鞘構造チップ若しくは海島構造チップとすることが好ましい。
【0035】
すなわち、本発明では、島部を構成させるポリマA1とポリマA2とを一旦芯鞘もしくは海島型に紡糸してチップ化することで、ポリマA2がポリマA1の周囲に配置した複合構造とすることができる。この芯鞘もしくは海島型のチップを再び海成分と混練し押し出した後、カットしてチップ化することで目的の3成分からなるポリマアロイチップを得ることが出来る。
【0036】
ポリマアロイ繊維
本発明において、上記したポリマアロイチップを用いて溶融紡糸することによって製造することができるポリマアロイ繊維は、少なくとも3種のポリマから構成される海島構造を有するポリマアロイ繊維であって、海島構造における島部は繊維の長手方向にスジ状に延びていて、島部の平均直径は0.001〜5μmであり、島部は、少なくとも2種のポリマから構成される芯鞘もしくは海島型の構造をとっており、島部の中に存在する芯もしくは島に相当する相部分の平均直径は島部の平均直径の80〜1%であり、かつ、島部の平均長さが0.2mm以上である
【0037】
このポリマアロイ繊維を構成するポリマが、島部の中に存在する芯もしくは島に相当する相部分を構成する島ポリマ1、島部の中に存在する鞘もしくは海に相当する相部分を構成する島ポリマ2、及び、海部を構成する海ポリマの3種である場合を例にとって以下説明する。また、以下においては、「島部の中に存在する芯もしくは島に相当する相部分」を島成分1と称し、「島部の中に存在する鞘もしくは海に相当する相部分」を島成分2と称する。
【0038】
ポリマアロイ繊維の海島構造における島部は、島成分1が島成分2で囲まれて存在する芯鞘構造もしくは海島構造をとっており、かつ、島成分及び島成分2からなる島部は繊維の長手方向にスジ状に延びている。ここで、島成分1は島部内で断続的に切れていてもよいが、島部は、その平均長さが所定長となるようにスジ状に繋がっている。
【0039】
また、島部の平均直径は0.001〜5μmであり、さらには0.01〜2μmが好ましい。さらに好ましくは0.01〜2μmである。
さらには、島成分1の平均直径が島部の平均直径の80〜1%であり、さらには20〜1%であることが好ましい。さらに好ましくは10〜1%である。
【0040】
島部の平均長さは0.2mm以上である。さらには2mm以上と長いことが好ましい。その上限は、長繊維であるか短繊維であるかによって異なるが、短繊維の場合の上限は短繊維の長さと同じであることが好ましい。また、長繊維の場合はかなり長くすることも可能であるが、一般的には長くても200mm以下であることが好ましい。さらに好ましくは4〜60mmである。
【0041】
このポリマアロイ繊維において、190〜260℃で溶融紡糸する際と同一の温度において、ポリマの溶融粘度は、次式を満足することが好ましい。
島ポリマ1>島ポリマ2>海ポリマ
それらの各ポリマの溶融粘度の差は、50〜200Pa・sであることが好ましく、さらにその差が80〜150Pa・sであることが好ましい。
【0042】
また、190〜260℃の溶融紡糸温度において、島ポリマ1の溶融粘度が150〜550Pa・sであり、島ポリマ2の溶融粘度が島成分1より少なくも50Pa・s低くかつ、100〜500Pa・sであることが好ましい。
【0043】
本発明に用いられるポリマアロイ繊維は、海ポリマが、脂肪族ポリエステルまたはその共重合体からなことが好ましい。なかでも、融点が110℃〜250℃の範囲の脂肪族ポリエステル系重合体であることが好ましく、さらに好ましくは、ポリ乳酸、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネートであり、最も好ましくはポリ乳酸である。
【0044】
島部を構成する島ポリマ1と島ポリマ2とは次のいずれかの組合せであることが好ましい。
(組合せ1) 島ポリマ1がポリプロピレンまたはその共重合体で、島ポリマ2がポリエチレンまたはその共重合体である。
(組合せ2) 島ポリマ1がナイロン6またはその共重合体で、島ポリマ2がポリエチレンまたはその共重合体である。
(組合せ3) 島ポリマ1がナイロン6またはその共重合体で、島ポリマ2がポリプロピレンまたはその共重合体である。
【0045】
本発明で用いられるポリマアロイ繊維は、前記したポリマアロイチップを用い、190〜260℃にて溶融紡糸することにより製造することができる。
【0046】
超極細繊維
本発明において、上記したポリマアロイ繊維をアルカリ溶解処理することによって製造することができる超極細繊維は、少なくとも2種のポリマからなる芯鞘構造もしくは海島構造の超極細繊維であって、繊維中に存在する芯もしくは島に相当する相部分は繊維の長手方向にスジ状に延びていて、超極細繊維の平均直径は0.001〜5μmであり、かつ、芯もしくは島に相当する相部分の平均直径は超極細繊維の平均直径の80〜1%であり、かつ、超極細繊維の平均長さが0.2mm以上である。
【0047】
この超極細繊維を構成するポリマが、芯もしくは島に相当する相部分を構成する芯・島ポリマ、及び、鞘もしくは海に相当する相部分を構成する鞘・海ポリマの2種である場合を例にとって以下説明する。また、以下においては、「芯もしくは島に相当する相部分」を内相と称し、「鞘もしくは海に相当する相部分」を外相と称する。
【0048】
超極細繊維における芯鞘構造もしくは海島構造では、内相は外相によって囲まれているが、内相の一部が繊維表面に露出していてもよい。ここで、内相は繊維の長手方向にスジ状でつながっていることが好ましいが、一部において断続的に切れていてもよい。
【0049】
また、超極細繊維の平均直径は0.001〜5μmであり、さらには0.01〜2μmが好ましい。
さらには、内相11の平均直径は超極細繊維の平均直径の80〜1%であり、さらには20〜1%であることが好ましい。さらに好ましくは10〜1%である。
超極細繊維の平均長さは、0.2mm以上である。さらには2mm以上と長いことが好ましい。さらに好ましくは4〜60mmである。
【0050】
超極細繊維における内相を構成する芯・島ポリマは、前記したポリマアロイ繊維における島成分1を構成する島ポリマ1と同様である。また、超極細繊維における外相を構成する鞘・海ポリマは、前記したポリマアロイ繊維における島成分2を構成する島ポリマ2と同様である。
【0051】
芯鞘型もしくは海島型の複合構造を有する超極細繊維は、通常の不織布製造工程により熱接着処理されて不織布を製造することができる。得られる不織布では、熱接着処理によって、少なくとも部分的に融着されている。
【0052】
超極細繊維が得られる理由
本発明においては、ポリマアロイチップ中で長手方向にスジ状に配置されている島部の内部が、島成分1および島成分2から構成される芯鞘型もしくは海島型の複合構造となっている。ここで、ポリマ種、溶融温度、粘度、比率の選択を適正化することにより、本発明のポリマアロイチップが、より安定して製造できるようになる。
【0053】
すなわち、従来のポリマアロイチップでは、島部用ポリマとして2種以上のポリマを配合した場合でも、それら島部は、ポリマ毎に異なる島部が形成された粒子状島部配置であったのに対し、本発明のポリマアロイチップでは、島成分1および島成分2が芯鞘もしくは海島型の複合構造で合わさった島部が、複数ないし多数個、配置されている。
【0054】
また、この本発明のポリマアロイチップは、島部用ポリマの2種以上から予め芯鞘構造もしくは海島構造の島部用アロイチップを作製した後に、この島部用アロイチップと海部用ポリマとを用い、溶融混練機にて混練し、押し出し、ワイヤー状に引き延ばされた後、水冷し、所定長にカットすることによって製造される。
【0055】
得られるポリマアロイチップ中における島部の長さは、島部の分散状態とチップのカット長に応じて変わる。この島部の長さが、このチップを溶融紡糸として得られるポリマアロイ繊維中の島部の長さに影響を与える。
【0056】
また、ポリマアロイチップ中で、島成分1および島成分2が芯鞘もしくは海島型の複合構造で合わさった島部の形態をとってスジ状に配置される理由を、島成分1用ポリマにポリプロピレンを、島成分2用ポリマにポリエチレンを、島成分3用ポリマに脂肪族ポリエステルをそれぞれ用い、それぞれの溶融混練時ポリマ粘度を、ポリプロピレン>ポリエチレン>脂肪族ポリエステル とした場合を例にして、以下に説明する。
【0057】
島部用アロイチップと海部用ポリマとを溶融混練機にて溶融混練した際、島部用アロイチップの溶融による島成分1(ポリプロピレン)と島成分2(ポリエチレン)の溶融物は、元のアロイチップと同様に芯鞘もしくは海島型の複合構造で合わさった島状(粒子状)に分散して存在している。これは、溶融混練時における粘度が、ポリプロピレン>ポリエチレン>脂肪族ポリエステル であるので、最も高粘度の島成分1(ポリプロピレン)は島成分2(ポリエチレン)の内側に配置され、最も低粘度の海部(脂肪族ポリエステル)は島成分2(ポリエチレン)の外側に配置されるからである。
【0058】
また、ポリプロピレンやポリエチレンは、その凝固時の比熱が脂肪族ポリエステルに比べて高いので冷えにくく、かつ、ポリプロピレンの融点は160〜170℃、ポリエチレンの融点は110〜130℃と、脂肪族ポリエステルの融点(ポリ乳酸の融点は170℃)と同等もしくはそれよりも低い。また、それぞれのポリマの凝固温度と比熱は、ポリエチレンが130℃で3.0J/g、ポリプロピレンが170℃で3.5J/g、脂肪族ポリエステル(ポリ乳酸)が170℃で1.3J/gである。そこで、一旦、海部ポリマが溶融する温度まで加熱させたときには、ポリプロピレンやポリエチレンの方が、脂肪族ポリエステルよりもポリマ温度が下がりにくく、凝固しにくく、かつ凝固までの時間が長い。
【0059】
その結果、島部を構成するポリプロピレン及びポリエチレンは、溶融押し出し後に引き延ばし機にて延ばされ水冷される途中で、相対的に冷え難いので、引き延ばされる時にも溶融状態にあり、その分散粒子状のままで長手方向に容易に引き延ばされて移動し、長手方向に凝集・結合されることから、水冷固化された線状物中において、島成分1および島成分2からなる島部が長手方向に長いスジ状となって存在するようになる。この線状物をカットしたポリマアロイチップ中においても同様にスジ状の島部として存在する。
【0060】
また、得られるポリマアロイチップ中における島部の直径は、海部ポリマと島部ポリマの各々の溶融粘度およびその粘度差、配合比率および混練機の軸の形状、回転速度、溶融温度、吐出量、脱気方法を調整することによって、制御することができる。例えば、島部ポリマと海部ポリマの溶融粘度差を大きくすることにより島部の直径を小さくすることができる。
【0061】
また、島部の長さも、海部と島部の各々の溶融粘度およびその粘度差、配合比率および混練機の軸の形状、回転速度、温度、吐出量、脱気方法を調整することによって制御することができる。例えば、混練回転が高速なほど粒子の微分散が小さくなり、また溶融混練機からの押し出し後の引き延ばし速度が早いほうが島部の長さは長くなる。
【0062】
さらにポリマアロイ繊維の海部ポリマとしては、ポリエチレンテレフタレート等の芳香族ポリエステルでもよいが、ポリ乳酸、ポリエチレンサクシネート、ポリプロピレンサクシネート、ポリブチレンサクシネートのような脂肪族ポリエステルやその共重合体を主成分として含有するものが好ましい。さらには、ポリ乳酸またはその共重合体が好ましく、ポリ乳酸であることが最も好ましい。また、海部ポリマは生分解のポリマが好ましく、さらには生分解の脂肪族ポリエステルが好ましい。特に脂肪族ポリエステルは、アルカリによる分解が早く、また原料の回収が容易であり、また生分解することから環境保護の面からも好ましい。
【0063】
また、本発明におけるポリマアロイチップからポリマアロイ繊維を製造する方法としては溶融紡糸を採用すればよい。溶融紡糸された繊維を巻き取ってフィラメント糸とする方法や、溶融紡糸された繊維を引き取ったトウをカットしてステープルとする方法を採用すればよいが、また、スパンボンド、メルトブローといった方法を採用してもよい。フィラメント糸製造、スパンボンド、メルトブローによって得られる長繊維状のポリマアロイ繊維では、ポリマアロイ繊維が連続しているので、島部を200mmより長くすることもできる。
【0064】
また、ポリマアロイ繊維中において島部が長手方向にスジ状に配置される理由は前述したポリマアロイチップの場合と同様である。すなわち、口金より紡糸されたポリマアロイ繊維が引き取られ、引き延ばされる途中で、島部ポリマは相対的に冷えにくく溶融状態にあることから、長手方向に容易に引き延ばされ、引き延ばし方向に凝集・結合され、固化されたポリマアロイ繊維中において、島部が長手方向に長いスジ状となって存在することとなる。
【0065】
本発明におけるポリマアロイ繊維は、少なくとも3種以上のポリマからなる海島構造からなる繊維であって、その島部が、島成分1が島成分2中にある芯鞘構造、または、島成分1と島成分2との海島構造をとっており、かつ、前記島部が繊維の長手方向に長いスジ状でつながっている。
【0066】
脱海方法
このポリマアロイ繊維を、アルカリ水溶液で海部ポリマを溶出される方法によって、島部を取り出し、超極細繊維を製造することができる。このアルカリ水溶液には、濃度0.01〜5重量%程度の、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液、アンモニア水溶液が好ましい。またアルカリ水溶液の温度は20〜100℃でよく、さらには40℃〜80℃が好ましい。
【0067】
また、溶出するに要する時間は、アルカリ水溶液の種類、濃度、温度によって制御される。特にアルカリ水溶液の濃度が低すぎると脱海速度が遅く非効率であり、高すぎると脱海速度が早過ぎるために超極細繊維が脆くなることがある。
【実施例】
【0068】
以下実施例により本発明を具体的に説明する。なお、本発明において、各特性は以下のように測定することができる。
【0069】
<ポリマの溶融粘度>
メルトフロー粘度計を用いてポリマの溶融粘度を測定する。ポリマ投入から測定開始までのポリマの貯留時間は10分とする。なお、以下の実施例では、メルトフロー粘度計として、(株)東洋精機キャピロピログラフ1Bを用いた。
【0070】
<ポリマアロイチップ中の島部の平均直径、ポリマアロイ繊維中の島部の平均直径、および超極細繊維の平均直径>
−20℃に冷却したサンプルから繊維横断面方向に切片を切り出し、走査型電子顕微鏡(SEM)装置で測定する。島部および繊維の100個の直径を測定し平均値を求めたものがポリマアロイチップの島部の平均直径、ポリマアロイ繊維の島部の平均直径、および超極細繊維の平均直径である。なお、実施例では、SEM装置として、日立製S−4000型を用いた。
【0071】
<ポリマアロイチップ中の島部の平均長さ、ポリマアロイ繊維中の島部の平均長さ、および超極細繊維の平均繊維長>
−20℃に冷却したサンプルから繊維縦断面方向に切片を切り出し、SEM装置で測定する。島部および繊維の100個の長さを測定し平均値を求めたものがポリマアロイチップの島部の平均長さ、ポリマアロイ繊維の島部の平均長さおよび超極細繊維の平均繊維長である。なお、以下の実施例では、SEM装置として、日立製S−4000型を用いた。
【0072】
実施例1
220℃での溶融粘度が500Pa・sであるポリプロピレンを島成分1用の島ポリマ1とし、220℃での溶融粘度が320Pa・sであるポリエチレンを島成分2用の島ポリマ2とし、ポリプロピレンが40重量%、ポリエチレンが60重量%の割合とし、φ25mmの2軸のベントエクストルーダで、0.001MPaで脱気しながら220℃で混練して押し出し、押し出されたポリマをワイヤー状に引き延ばし、これを水冷して線状体とした後にカットすることで、島部用アロイチップを製造した。
【0073】
得られた島部用アロイチップを、220℃での溶融粘度が150Pa・sであるポリ乳酸(海部用海ポリマ)とともに、アロイチップが40重量%、ポリ乳酸が60重量%の割合とし、φ25mmの2軸のベントエクストルーダで、0.001MPaで脱気しながら220℃で混練して押し出し、押し出されたポリマをワイヤー状に引き延ばし、これを水冷して線状体とした後に長さ6mmにカットすることで、ポリマアロイチップ4を製造した。
【0074】
得られたポリマアロイチップ4は、図1のチップ横断面に示すように、ポリプロピレンからなる島成分1と、その周りにあるポリエチレンからなる島成分2とからなる島部が、ポリ乳酸からなる海部3の中に分散して存在するものであった。得られたポリマアロイチップ中のポリプロピレンからなる島成分1の平均直径は0.02μm、平均長さは5mmで、島部の平均直径は1.1μm、平均長さは6mmであった。
【0075】
このポリマアロイチップ4を一般的なプレッシャーメルタ型の溶融装置で、230℃で溶融し、ホール径0.35mm、吐出孔長0.70mm、かつ300ホールの紡糸口金を通して単孔吐出量1.0g/分で、ポリマ温度230℃で紡糸し、糸条を20℃の冷却風で冷却し、引き取り速度1200m/分で一旦缶に納めることで、未延伸糸トウを製造した。得られた未延伸糸トウを2.7倍の延伸倍率にて、80℃の温浴を用いて2段延伸を施し、得られた延伸糸トウにスタフイングボックスを用いて8〜15個/25mmの機械捲縮を付与し、油剤をスプレーで付与し、得られたトウを90℃の温度で10分乾燥し、長さ50mmに切断して、5dTexの繊維長50mmのポリマアロイ繊維5を製造した。
【0076】
得られたポリマアロイ繊維5は、図2に示す繊維横断面拡大図のように、海島構造であり、かつ、その島部中にはポリプロピレンの島成分1が分散した海島構造があった。島成分1の平均直径が0.005μm、平均長さは22mmで、島部の平均直径は0.25μmで平均長さは22mmであった。
【0077】
得られたポリマアロイ繊維5を、0.02重量%の50℃の水酸化ナトリウム水溶液に5時間浸漬して海部を溶出除去し、島部からなる超極細繊維とした。得られた超極細繊維6は、図3に示す繊維横断拡大図のような海島構造を有し、その平均繊維径は0.25μm、平均長さは22mmで、ポリプロピレンの島成分1の平均直径は0.005μm、平均長は21mmであった。この超極細繊維を構成するポリマの220℃での溶融粘度は、ポリプロピレンについては490Pa・sで、ポリエチレンについては310Pa・sであった。
【0078】
原料のポリプロピレン、ポリエチレンの量からの超極細繊維の収率は93%で、安定して超極細繊維を得ることができた。
得られた超極細繊維を用いて通常の方法で不織布を製造したところ、110℃に加熱することにより、熱接着させた不織布とすることができた。
【0079】
実施例2
220℃での溶融粘度が250Pa・sであるナイロン6を島成分1用の島ポリマ1とし、220℃での溶融粘度が190Pa・sであるポリエチレンを島成分2用の島ポリマ2とし、ナイロン6が40重量%、ポリエチレンが60重量%の割合とし、φ25mmの2軸のベントエクストルーダで、0.001MPaで脱気しながら220℃で混練して押し出し、押し出されたポリマをワイヤー状に引き延ばし、これを水冷して線状体とした後にカットすることで、島部用アロイチップを製造した。
【0080】
得られた島部用アロイチップを、220℃での溶融粘度が130Pa・sであるポリ乳酸(海部用海ポリマ)とともに、アロイチップが40重量%、ポリ乳酸が60重量%の割合とし、φ25mmの2軸のベントエクストルーダで、0.001MPaで脱気しながら220℃で混練して押し出し、押し出されたポリマをワイヤー状に引き延ばし、これを水冷して線状体とした後に長さ9mmにカットすることで、ポリマアロイチップ4を製造した。
【0081】
得られたポリマアロイチップ4は、図1のチップ横断面に示すように、ナイロン6からなる島成分1と、その周りにあるポリエチレンからなる島成分2からなる島部が、ポリ乳酸からなる海部3の中に分散して存在するものであった。得られたポリマアロイチップ中のナイロン6からなる島成分1の平均直径は1.2μm、平均長さは0.1mmで、島部の平均直径は18μm、平均長さは9mmであった。
【0082】
このポリマアロイチップ4を一般的なプレッシャーメルタ型の溶融装置で、230℃で溶融し、ホール径0.35mm、吐出孔長0.70mm、かつ300ホールの紡糸口金を通して単孔吐出量1.0g/分で、ポリマ温度230℃で紡糸し、糸条を20℃の冷却風で冷却し、引き取り速度1200m/分で一旦缶に納めることで、未延伸糸トウを製造した。得られた未延伸糸トウを2.7倍の延伸倍率にて、80℃の温浴を用いて2段延伸を施し、得られた延伸糸トウにスタフイングボックスを用いて8〜15個/25mmの機械捲縮を付与し、油剤をスプレーで付与し、得られたトウを90℃の温度で10分乾燥し、長さ50mmに切断して、5dTexの繊維長50mmのポリマアロイ繊維5を製造した。
【0083】
得られたポリマアロイ繊維5は、図2に示す繊維横断面拡大図のように、海島構造であり、かつ、その島部中にはナイロン6の島成分1のが分散した海島構造があった。島成分1の平均直径が0.6μm、平均長さは0.2mmで、島部の平均直径は9.2μm、平均長さは22mmであった。
【0084】
得られたポリマアロイ繊維5を、0.02重量%の50℃の水酸化ナトリウム水溶液に5時間浸漬して海部を溶出除去し、島部からなる超極細繊維とした。得られた超極細繊維6は、図3に示す繊維横断拡大図のような海島構造を有し、その平均繊維径は9.2μm、平均長さは22mmで、ナイロン6の島成分1の平均直径は0.6μm、平均長は0.2mmで220℃であった。この超極細繊維を構成するポリマの220℃でのポリマ溶融粘度は、ナイロン6については240Pa・sで、ポリエチレンについては180Pa・sであった。
【0085】
原料のナイロン6、ポリエチレンの量からの超極細繊維の収率は90%で、安定して超極細繊維を得ることができた。
【0086】
実施例3
220℃での溶融粘度が300Pa・sであるナイロン6を島成分1用の島ポリマ1とし、220℃での溶融粘度が200Pa・sであるポリプロピレンを島成分2用の島ポリマ2とし、一般的なプレッシャーメルタ型の溶融装置で、230℃で溶融し、ナイロン6が30重量%、ポリプロピレンが70重量%の割合で混練し、かつ吐出孔長0.70mmでかつ300ホールのホール径0.35mmの芯鞘型複合紡糸口金を通して単孔吐出量1.0g/分で、ポリマ温度230℃で複合紡糸し、糸条を20℃の冷却風で冷却し、引き取り速度1200m/分で一旦缶に納めることで、未延伸糸を製造した。
【0087】
得られた未延伸糸を、220℃での溶融粘度が130Pa・sである3ポリ乳酸(海部用海ポリマ)とともに、未延伸糸が40重量%、ポリ乳酸が60重量%の割合とし、φ25mmの2軸のベントエクストルーダで、0.001MPaで脱気しながら220℃で混練して押し出し、押し出されたポリマをワイヤー状に引き延ばし、これを水冷して線状体とした後に長さ10mmにカットすることで、ポリマアロイチップ4を製造した。
【0088】
得られたポリマアロイチップ4は、図1のチップ横断面に示すように、ナイロン6からなる島成分1と、その周りにあるポリプロピレンからなる島成分2とが芯鞘構造となっている島部が、ポリ乳酸からなる海部3の中に分散して存在するものであった。得られたポリマアロイチップ中のナイロン6からなる島成分1の平均直径は0.5μm、平均長さは0.1mmで、島部の平均直径は18μm、平均長さは10mmであった。
【0089】
このポリマアロイチップ4を一般的なプレッシャーメルタ型の溶融装置で、230℃で溶融し、ホール径0.35mm、吐出孔長0.70mm、かつ300ホールの紡糸口金を通して単孔吐出量1.0g/分で、ポリマ温度230℃で紡糸し、糸条を20℃の冷却風で冷却し、引き取り速度1200m/分で一旦缶に納めることで、未延伸糸トウを製造した。得られた未延伸糸トウを2.7倍の延伸倍率にて、80℃の温浴を用いて2段延伸を施し、得られた延伸糸トウにスタフイングボックスを用いて8〜15個/25mmの機械捲縮を付与し、油剤をスプレーで付与し、得られたトウを90℃の温度で10分乾燥し、長さ50mmに切断して、5dTexの繊維長50mmのポリマアロイ繊維5を製造した。
【0090】
得られたポリマアロイ繊維5は、図2に示す繊維横断面拡大図のように、海島構造であり、かつ、その島部中にはナイロン6の島成分1が分散した海島構造があった。島成分1の平均直径が0.2μm、平均長さは0.2mmで、島部の平均直径は3.2μm、平均長さは21mmであった。
【0091】
得られたポリマアロイ繊維5を、0.02重量%の50℃の水酸化ナトリウム水溶液に5時間浸漬して海部を溶出除去し、島部からなる超極細繊維とした。得られた超極細繊維6は、図3に示す繊維横断拡大図のような海島構造を有し、その平均繊維径は3.2μm、平均長さは22mmで、ナイロン6の島成分1の平均直径は0.2μm、平均長は0.2mmであった。この超極細繊維を構成するポリマの220℃での溶融粘度は、ナイロン6については240Pa・sで、ポリエチレンについては180Pa・sであった。
【0092】
原料のナイロン6、ポリプロピレンからの超極細繊維の収率は91%で、安定して超極細繊維を得ることができた。
【0093】
比較例1
実施例1において用いたと同じポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ乳酸を、各々、16重量%、24重量%、60重量%の割合で、220℃にて、一度にφ25mmの2軸のベントエクストルーダで、0.001MPaで脱気しながら220℃で混練して押し出し、押し出されたポリマをワイヤー状に引き延ばし、これを水冷して線状体とした後に長さ10mmにカットすることで、ポリマアロイチップを製造した。
【0094】
このポリマアロイチップを一般的なプレッシャーメルタ型の溶融装置で、230℃で溶融し、ホール径0.35mm、吐出孔長0.70mm、かつ300ホールの紡糸口金を通して単孔吐出量1.0g/分で、ポリマ温度230℃で紡糸し、糸条を20℃の冷却風で冷却し、引き取り速度1200m/分で一旦缶に納めることで、未延伸糸トウを製造した。得られた未延伸糸トウを2.7倍の延伸倍率にて、80℃の温浴を用いて2段延伸を施し、得られた延伸糸トウにスタフイングボックスを用いて8〜15個/25mmの機械捲縮を付与し、油剤をスプレーで付与し、得られたトウを90℃の温度で10分乾燥し、長さ50mmに切断して、5dTexの繊維長50mmのポリマアロイ繊維を製造した。
【0095】
得られたポリマアロイ繊維は、ポリプロピレンからなる島部とポリエチレンからなる島部とが、それぞれ別々の独立した島部として海部中に分散して存在する海島構造であり、島成分1の平均繊維径は0.01μm、平均長さは22mmで、島成分2の平均繊維径は0.3μm、平均長さは22mmであった。
【0096】
得られたポリマアロイ繊維を、0.02重量%の50℃の水酸化ナトリウム水溶液に5時間浸漬して海部を溶出除去し、島部からなる超極細繊維とした。得られた超極細繊維は、ポリプロピレンからなる超極細繊維とポリエチレンからなる超極細繊維とからなり、それぞれが独立した超極細繊維であった。ポリプロピレン超極細繊維の平均繊維径は0.01μm、平均繊維長は21mmで、220℃でのポリマ粘度が490Pa・sであった。また、ポリエチレン超極細繊維の平均繊維径は0.3μm、平均長さは22mmで、220℃でのポリマ粘度は310Pa・sであった。
【0097】
得られた超極細繊維を用いて通常の方法で不織布製造を試みたところ、110℃の加熱によってポリエチレン超極細繊維が単独で溶けたために板状になり不織布状とすることはできなかった。
【産業上の利用可能性】
【0098】
本発明により製造される芯鞘型もしくは海島型の超極細繊維は、衣料用、自動車資材用、産業資材用、農業資材用または、医療資材用に用いられる。また、スポーツ用途や資材用途、自動車内装材に使用可能であり、さらに、半導体部品の鏡面研磨、ハードディスク記憶材の鏡面研磨、液体フィルタ、エアーフィルタ、電池セパレータ、コンデンサー、触媒保持体などにも使用できる。スポーツ用途としては、軽量部材としての、スポーツ用具などに使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0099】
【図1】本発明のポリマアロイチップの一実施態様を模式的に示す斜視図とその横断面拡大図である。
【図2】本発明のポリマアロイ繊維の一実施態様を模式的に示す斜視図とその縦断面拡大図、横断面拡大図である。
【図3】本発明の超極細繊維の一実施態様を模式的に示す斜視図縦断面拡大図である。
【符号の説明】
【0100】
1:島成分1(島部の中に存在する芯もしくは島に相当する相部分)
2:島成分2(島部の中に存在する鞘もしくは海に相当する相部分)
3:海部
4:ポリマアロイチップ
5:ポリマアロイ繊維6:超極細繊維
11:内相(芯もしくは島に相当する相部分)
12:外相(鞘もしくは海に相当する相部分)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも3種のポリマから構成される海島構造を有するポリマアロイチップであって、海島構造における島部はチップの長手方向にスジ状に延びていて、島部の平均直径は0.01〜20μmであり、島部は、少なくとも2種のポリマから構成される芯鞘型もしくは海島型の構造をとっており、島部の中に存在する芯もしくは島に相当する相部分の平均直径は島部の平均直径の80〜1%であり、かつ、島部の平均長さが0.1mm以上であることを特徴とするポリマアロイチップ。
【請求項2】
ポリマアロイチップを構成するポリマが、島部の中に存在する芯もしくは島に相当する相部分を構成する島ポリマ1、島部の中に存在する鞘もしくは海に相当する相部分を構成する島ポリマ2、及び、海部を構成する海ポリマであって、これらポリマを190〜260℃で混練する際の同一の温度において、島ポリマ1のポリマ溶融粘度は島ポリマ2のポリマ溶融粘度よりも高く、島ポリマ2のポリマ溶融粘度は海ポリマのポリマ溶融粘度よりも高く、かつ、それら各ポリマの溶融粘度の差が、50〜200Pa・sであることを特徴とする請求項1記載のポリマアロイチップ。
【請求項3】
ポリマアロイチップを構成するポリマが、島部の中に存在する芯もしくは島に相当する相部分を構成する島ポリマ1、島部の中に存在する鞘もしくは海に相当する相部分を構成する島ポリマ2、及び、海部を構成する海ポリマであって、海ポリマが脂肪族ポリエステルまたはその共重合体からなり、かつ、島ポリマ1と島ポリマ2とが、以下のいずれかの組合せであることを特徴とする請求項1又は2に記載のポリマアロイチップ。
(組合せ1) 島ポリマ1がポリプロピレンまたはその共重合体で、島ポリマ2がポリエチレンまたはその共重合体である、
(組合せ2) 島ポリマ1がナイロン6またはその共重合体で、島ポリマ2がポリエチレンまたはその共重合体である、
(組合せ3) 島ポリマ1がナイロン6またはその共重合体で、島ポリマ2がポリプロピレンまたはその共重合体である、
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載のポリマアロイチップを製造する方法であって、少なくとも2種のポリマを芯鞘構造で溶融押出して芯鞘構造チップとし、または、少なくとも2種のポリマを190〜260℃で溶融混練して押出し海島構造チップとした後、これら芯鞘構造チップ及び/又は海島構造チップと海部ポリマとを共に190〜260℃で再溶融して混練して押出し海島構造の線状体とし、引き延ばし水冷した後にカットすることを特徴とするポリマアロイチップの製造方法。
【請求項5】
少なくとも3種のポリマから構成される海島構造を有するポリマアロイ繊維であって、海島構造における島部は繊維の長手方向にスジ状に延びていて、島部の平均直径は0.001〜5μmであり、島部は、少なくとも2種のポリマから構成される芯鞘もしくは海島型の構造をとっており、島部の中に存在する芯もしくは島に相当する相部分の平均直径は島部の平均直径の80〜1%であり、かつ、島部の平均長さが0.2mm以上であることを特徴とするポリマアロイ繊維。
【請求項6】
ポリマアロイ繊維を構成するポリマが、島部の中に存在する芯もしくは島に相当する相部分を構成する島ポリマ1、島部の中に存在する鞘もしくは海に相当する相部分を構成する島ポリマ2、及び、海部を構成する海ポリマであって、これらポリマを190〜260℃で溶融紡糸する際の同一の温度において、島ポリマ1の溶融粘度は島ポリマ2の溶融粘度よりも高く、島ポリマ2の溶融粘度は海ポリマの溶融粘度よりも高く、かつ、それら各ポリマの溶融粘度差が、50〜200Pa・sであることを特徴とする請求項5記載のポリマアロイ繊維。
【請求項7】
ポリマアロイチップを構成するポリマが、島部の中に存在する芯もしくは島に相当する相部分を構成する島ポリマ1、島部の中に存在する鞘もしくは海に相当する相部分を構成する島ポリマ2、及び、海部を構成する海ポリマであって、海ポリマが脂肪族ポリエステルまたはその共重合体からなり、かつ、島ポリマ1と島ポリマ2とが、以下のいずれかの組合せであることを特徴とする請求項5または6に記載のポリマアロイ繊維。
(組合せ1) 島ポリマ1がポリプロピレンまたはその共重合体で、島ポリマ2がポリエチレンまたはその共重合体である、
(組合せ2) 島ポリマ1がナイロン6またはその共重合体で、島ポリマ2がポリエチレンまたはその共重合体である、
(組合せ3) 島ポリマ1がナイロン6またはその共重合体で、島ポリマ2がポリプロピレンまたはその共重合体である、
【請求項8】
請求項1〜3のいずれかに記載のポリマアロイチップを用い、190〜260℃にて溶融紡糸することにより請求項5〜7のいずれかに記載のポリマアロイ繊維を製造することを特徴とするポリマアロイ繊維の製造方法
【請求項9】
少なくとも2種のポリマからなる芯鞘構造もしくは海島構造の超極細繊維であって、繊維中に存在する芯もしくは島に相当する相部分は繊維の長手方向にスジ状に延びていて、超極細繊維の平均直径は0.001〜5μmであり、かつ、芯もしくは島に相当する相部分の平均直径は超極細繊維の平均直径の80〜1%であり、かつ、超極細繊維の平均長さが0.2mm以上であることを特徴とする超極細繊維。
【請求項10】
190〜260℃の範囲内の同一の温度において、芯もしくは島に相当する相部分を構成する芯・島ポリマの溶融粘度が150〜550Pa・sであり、鞘もしくは海に相当する相部分を構成する鞘・海ポリマの溶融粘度が、芯・島ポリマの溶融粘度よりも少なくとも50Pa・s低くかつ、100〜500Pa・sであることを特徴とする請求項9記載の超極細繊維。
【請求項11】
芯もしくは島に相当する相部分を構成する芯・島ポリマと、鞘もしくは海に相当する相部分を構成する鞘・海ポリマとが、以下のいずれかの組合せであることを特徴とする請求項9又は10記載の超極細繊維。
(組合せ1) 芯・島ポリマがポリプロピレンまたはその共重合体で、鞘・海ポリマがポリエチレンまたはその共重合体である、
(組合せ2) 芯・島ポリマがナイロン6またはその共重合体で、鞘・海ポリマがポリエチレンまたはその共重合体である、
(組合せ3) 芯・島ポリマがナイロン6またはその共重合体で、鞘・海ポリマがポリプロピレンまたはその共重合体である、
【請求項12】
請求項5〜7のいずれかに記載のポリマアロイ繊維をアルカリ溶解処理することにより請求項9〜11のいずれかに記載の超極細繊維を製造することを特徴とする超極細繊維の製造方法。
【請求項13】
請求項9〜11のいずれかに記載の超極細繊維を熱接着処理することを特徴とする不織布の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−47657(P2010−47657A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−211469(P2008−211469)
【出願日】平成20年8月20日(2008.8.20)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】