説明

ポリマーコーティングを備えたチャンバコンポーネント及びその製造方法

プロセスチャンバコンポーネントは、使用中、チャンバ内で励起されたガスに露出され、パリレンコーティングを含む第1の表面と、使用中、励起されたガスに露出されない第2の表面とを含む。プロセスチャンバの内部表面は、イン・サイチュで、ポリマーコーティングによりコートすることができる。可搬性設備を用いて、プロセスチャンバにポリマーコーティングを形成することができる。前にコートしたチャンバコンポーネントはまた、ポリマーをオゾン及び/又は酸素により剥離し、ポリマーを再コートすることによって、再生することもできる。

【発明の詳細な説明】
【背景】
【0001】
本発明の実施形態は、ポリマーコーティングを有するチャンバコンポーネントに関する。
半導体ウェハ及びディスプレイ等の基板の処理において、基板はプロセスチャンバに入れられて、励起されたガスに露出されて、基板上で、材料が堆積又はエッチングされる。かかる処理中、プロセス残渣が生成され、チャンバの内側表面に堆積する。例えば、誘電体又は金属層のエッチングにおいては、エッチングされたフォトレジストやエッチャントガス等のエッチングされた材料で形成された、一般的に、エッチングポリマーと呼ばれる残渣が、チャンバ表面に堆積する。後のプロセスサイクルにおいて、堆積したプロセス残渣が、チャンバ表面を「剥離」して、基板上に落ちて、これを汚染する。チャンバ表面及びコンポーネントへのこれらの残渣の堆積は、適正な動作を妨げ、プロセスの化学物質を変性させて製造プロセスに影響する。このように、チャンバは周期的にクリーニングして、一定数の基板が処理されたら、堆積したプロセス残渣を除去する。
【0002】
しかしながら、プロセス残渣を効率的にエッチングして取り除くクリーニングプロセスには、クリーニング後、チャンバの過剰な再生を必要とすることが多い。例えば、典型的なウェットクリーニングにおいては、チャンバを雰囲気に開放して、酸又は溶剤を用いてクリーニングし、チャンバ壁に堆積したプロセス残渣を擦り取って、溶解する。ウェットクリーニング後、一貫したチャンバ表面特性を与えるには、チャンバを長期間にわたってポンプダウンした後、ダミーウェハで一連のプロセスランを実施することにより、チャンバをシーズニングする。シーズニングを実施して、内部チャンバ表面が一貫した表面化学基を有するようにする。そうしないと、チャンバで実施されるプロセスは、一貫性のない結果を引き起こす。ポンプダウンプロセスにおいて、チャンバを、高真空環境に、2〜3時間維持して、ウェットクリーニングプロセス中にチャンバにトラップされた水分及びその他揮発性種を抜く。その後、クリーニングプロセスを実行して、チャンバが一貫した再生可能なエッチング特性を与えるまで、数多くのダミーウェハをエッチングする。これらの累積されたステップにより、チャンバのダウンタイムが長くなる。
【0003】
プラズマ又はドライクリーニングプロセスだと、チャンバのダウンタイムは短くなるが、下にあるチャンバ表面の侵食が大きくなる可能性がある。典型的なプロセスにおいては、NF等のフッ素含有ガスをチャンバに通過させて、プラズマを形成し、プロセス残渣をクリーニングオフしている。ドライクリーニングステップを短い時間行うことができるが、侵食性のクリーニングガスが、下にあるチャンバ表面を侵食して、侵食副生成物を含む汚染物質が形成されることが多い。プロセスチャンバは、通常、アルミニウム又はその合金で構築されている。ただし、石英や二酸化ケイ素等の材料も用いられる。アルミニウムチャンバの内側表面は、フッ素含有ガスにより侵食されて、AlF蒸気を形成し、一方、石英チャンバもまた、フッ素ガスにより侵食されて、SiF蒸気を形成する可能性がある。
【0004】
このように、処理ガス及びクリーニングプラズマによる侵食から内部チャンバ表面を保護することが望ましい。剥がれ落ちたプロセス残渣及び侵食副生成物による基板の汚染を減らすことも望ましい。また、チャンバ表面をクリーニングして、下にあるチャンバ表面を過剰に侵食することなく、付着したプロセス残渣を除去することも望ましい。
【概要】
【0005】
プロセスチャンバコンポーネントは、使用中、チャンバ内で励起されたガスに露出され、パリレンコーティングを含む第1の表面と、使用中、励起されたガスに露出されず、パリレンコーティングのない第2の表面とを含む。
【0006】
プロセスチャンバにポリマーをコーティングする重合可能な蒸気を形成するための設備は、重合可能な蒸気を受ける入口と、重合可能な蒸気を形成するチャンバと、重合可能な蒸気を、プロセスチャンバへ導入する出口とを含む。任意で、設備は、重合可能な蒸気を形成する気化器を含むことができる。
【0007】
ポリマーコーティングを有するプロセスチャンバコンポーネントを再生する方法において、ポリマーコーティングを除去し、ポリマーコーティングを、チャンバコンポーネントの表面に選択的にコーティングすることにより、プロセスチャンバを再生する。例えば、ポリマーコーティングは、励起された酸素又はオゾンガスにより除去される。ポリマーコーティングはパリレンとすることができる。
【説明】
【0008】
ポリマーフィルムが、プロセスチャンバコンポーネントの内部表面に形成されて、チャンバの使用中、内部表面を、励起プロセス、クリーニングガス等による侵食から保護する。ポリマーフィルムを用いて、例えば、アルミニウム及びその合金等の金属、又は、例えば、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、酸化ケイ素、窒化ケイ素及び石英等のセラミック材料から作製されたチャンバコンポーネントをコートすることができる。典型的に、ポリマーコーティングは、使用中、チャンバ内で励起されたガスに露出されるコンポーネント表面に形成される。励起されたガスに露出されない、又は、他のチャンバコンポーネント表面と接触しない他のコンポーネント表面は、ポリマーコーティングでコートされない、又は存在しない。
【0009】
プロセスチャンバ8の内部表面をコーティング可能な例示のポリマーコーティング装置5を、図1に示す。通常、装置5は、固体モノマーであるポリマー前駆体を加熱及び気化する気化器10を含む。例えば、コーティングのポリマーコーティングは、後述するように、ジ−p−キシリレン又は置換ジ−p−キシリレン等の固体モノマーから形成することができる。気化器10内に、重合可能な出発材料を入れるための格納容器(図示せず)がある。気化器10は、気化器10に入れた気化可能な材料の量を制御し、且つ、気化器10において維持される温度を設定することにより、固体材料を蒸気圧まで気化する。加熱された圧力ゲージ12を用いて、気化器10において形成された蒸気の蒸気圧をモニターすることができる。圧力ゲージ12を加熱して、気化した材料が、圧力ゲージに堆積せず、ゲージを動作不可能とする。気化器10はまた、ある材料の蒸気を、他の材料の蒸気とブレンドすることもできる。
【0010】
ガス入口ポート342によって、キャリアガスソース16から、気化器10へキャリアガスを流して、気化器からの蒸気の出を促進する。キャリアガスは、任意の不活性ガス、好ましくは、ヘリウム、アルゴン又は窒素である。しかしながら、プロセスは、キャリアガスを用いずに、気化した反応物質、例えば、ペリレンダイマーを用いて実施してもよいものと考えられる。
【0011】
或いは、ポリマー前駆体が液体材料の時は、気化器10はまた、液体の重合可能な材料を通して、キャリアガスを発泡させて、液体材料の蒸気を形成する発泡器(図示せず)を有することもできる。本発明の実施形態においては、気化器10について記載したが、ポリマー前駆体は、重合可能なガスとすることもできる。
【0012】
プロセスチャンバ8、気化器10及び分解チャンバ30を含む全体の装置5は、気化した材料をチャンバ8へ搬送するのに好適な圧力に維持される。気化したポリマー前駆体によるチャンバのコーティング中、装置5の圧力は、30ミリトル〜約5トルに維持されるのが好ましい。非置換ジ−p−キシリレンの気化については、圧力は、約100ミリトル〜約1トルの範囲であるのが好ましい。他のモノマー及びポリマーについては、合計圧力は、100ミリトル〜約5トルの範囲とすることができる。5トルまでの合計圧力の増加により、ポリマーの堆積レートが増大し、堆積チャンバ30に与えられるモノマー又はポリマーの量を良好に制御することができる。しかしながら、ある実施形態においては、気化器10の圧力は大気圧に維持されてもよい。
【0013】
気化器10は、例えば、気化器10周囲を包んで熱を与える加熱コイル15等の加熱手段により加熱してもよい。加熱コイル15は、外部電源11に接続されて、加熱コイル15に調節可能な出力レベルを与えて、気化器チャンバ10に十分な熱を与え、ポリマー前駆体材料を気化温度まで加熱する。しかしながら、過剰な高温だと、ポリマー前駆体が分解するため、温度を制御しなければならない。外部熱制御器を加熱コイル15に接続して用いて、所望の温度を維持することもできる。気化器10の動作温度は、気化される材料に応じて異なるが、温度は、約100〜約200℃に維持されるのが好ましい。
【0014】
ゲートバルブ20が、気化器10を、分解チャンバ30から分離している。気化器10の後にあるゲートバルブ20は、手動で動作してよい。ゲートバルブ20は、気化器10の温度及び圧力のフィードバック信号を受けるバルブ制御器21により自動制御可能とすることもできる。バルブ21制御器21をプログラムして、ポリマー前駆体が気化する温度に気化器10が達した後にのみ、ゲートバルブ20を開いて、気化器10を流れるキャリアガスが、気化器10及び第1のバルブ20を通して蒸気を運ぶようにする。ガス入口ポート342を通して気化器10へ任意で導入されるキャリアガスはまた、熱放射によって加熱されたり、気化器10から送られて、熱を気化可能な材料に移す。
【0015】
気化された前駆体又は気化された前駆体とキャリアガスの混合物は、気化器10から、ゲートバルブ20を通過して、分解チャンバ30へ送られ、そこで、蒸気がモノマーへと部分的に分解する。例えば、気化したジ−p−キシリレンダイマーは、分解チャンバ30において、p−キシリレン等の反応性モノマーへと少なくとも部分的に分解する。ポリマー前駆体が、反応性種を生成するのに気化や分解を必要としないモノマー又はオリゴマーである時は、気化器10及び分解チャンバ30を取り外す、又はバイパスしてもよいものと考えられる。また、出発材料が、ガス相においてダイマーである時は、気化器10を取り外す、又はバイパスしてもよいものと考えられる。
【0016】
気化したダイマーを分解チャンバ30において加熱して、反応性モノマーを生成した後、反応性モノマーをプロセスチャンバ8に通す。モノマーは、露出したチャンバコンポーネントを含むプロセスチャンバ8の露出した内部表面をコートする。プロセスチャンバの温度、圧力及びプロセスチャンバにおけるガス状反応物質の滞留時間を制御して、所望のコーティング特性を得ることができる。分解チャンバ30は可搬性で、コンピュータ制御されたマルチチャンバ一体化処理システムに組み込むことができ、同じプロセスチャンバ8で、ポリマーのイン・サイチュ(同一チャンバ内(in situ))コーティング及び基板の処理が実施される。基板処理には、基板上での材料のエッチング又は堆積が含まれる。チャンバはまた、プラズマクリーニングすることもできる。プロセスチャンバ8から出る未堆積ガス、例えば、未反応モノマー蒸気は、コールドトラップ90を介して再度、捕捉することができる。
【0017】
分解チャンバ30は、様々なやり方で構築してよいが、気化した材料を即時に、且つ、均一に加熱するように、チャンバの表面積は大きいのが好ましい。更に、本発明の分解チャンバは、図2に示す通り、可搬性設備200へ組み込まれ、分解チャンバ30と同じ要素を含んでいる。分解チャンバ30は、金属シリンダ(図示せず)を含むことができる。金属シリンダを炉が囲んでおり、分解チャンバに入る蒸気を加熱する加熱ワイヤ(図示せず)を有している。炉の加熱ワイヤは、外部電源、温度制御器31に接続されていて、400℃〜約900℃、好ましくは約700℃を超える温度を維持する。安定したダイマーを反応性モノマーへと確実に十分に分解するには、400℃を超える、及び700℃を超える温度が必要であるが、分解チャンバ30に形成されたモノマーの分解を避けるために、最大温度は約900℃を超えてはならない。分解温度は、用いるダイマー材料によって変わるものと考えられる。
【0018】
分解チャンバ30は、反応性モノマーを形成するために、チャンバを通過する間に、十分量のダイマーを分解して、プロセスチャンバ表面での望ましくない粒子の堆積や、堆積したコーティングにおける塊の形成を防ぐのが好ましい。分解されなかったダイマーは、重合しないため、表面に堆積するにつれて、コーティングに塊を生じたり、表面に望ましくない粒子を生じたり、堆積チャンバを通過して、コールドトラップ機構を詰まらせる恐れがある。
【0019】
安定したダイマー蒸気の高レベルの分解を確保するためには、ダイマー蒸気を、分解チャンバ30内で十分に加熱するのが好ましい。これは、気化したダイマーと接触する分解チャンバ30内の表面積を増やしたり、分解チャンバ30における気化したダイマーの滞留時間を延ばしたり、この2つを組み合わせることのいずれかにより行うことができる。分解チャンバにおける滞留時間は、気化器10に入るキャリアガスのフローを制御する等、分解チャンバ30に入る気化したダイマーのフローレートを制御したり、ゲートバルブ20及び40を絞ったり、かかるバルブの絞りと、キャリアガスフローレート制御の組み合わせにより、延ばすことができる。滞留時間はまた、分解チャンバ30の長さを制御する、即ち、分解チャンバ内側にある金属シリンダ(図示せず)を長くすることによって制御することもできる。ダイマーの反応性モノマーへの分解を促進するために、プロセスチャンバにプラズマを構築して、十分な熱を与えて、プロセスチャンバの内部表面での後の堆積及び重合のために、安定した前駆体材料を、反応性材料へと分解する。
【0020】
活性モノマーを含有するガス/蒸気フローは、分解チャンバ30を出て、任意のT字管44を通過し、そこで、蒸気は、任意で、導管46から気化された形態のコモノマーとブレンドされる。気化したモノマーと任意のコモノマーは、第2のゲートバルブ40を通って、導管48を流れる。導管48は、バルブ40を、入口ポート50により、プロセスチャンバ8に接続している。プロセスチャンバ8では、その表面にモノマーが堆積して重合する。第2のゲートバルブ40は、バルブ制御器41により制御される。導管48は、例えば、加熱テープにより加熱されて、凝縮を防ぐのが好ましい。重合可能な材料の気化及び/又は分解が更に必要でない場合は、重合可能な材料を、T字管44で導入して、チャンバ8と直接連通させて、気化器10及び分解チャンバ30を排除してもよい。
【0021】
堆積チャンバ8の壁は、略室温に維持して、気化した重合可能な材料が、選択したプロセスチャンバ表面で堆積及び重合できるようにするのが好ましい。チャンバ壁を、例えば、温度制御器181により制御される第1のチラー184等の任意の冷却手段により冷却して、プロセスチャンバの内部を室温又は略室温に維持することができる。プロセスチャンバをマスクして、所望の表面がコートされないようにする。残りのガス/蒸気混合物は、チャンバ8の圧力を制御するバルブ制御器81の制御下で、スロットルバルブ80を通して、堆積チャンバ8を通過して、温度制御器101により制御されるチラー100に接続されたコールドトラップ90を通過する。残りのガスは、バルブ制御器により制御されるゲートバルブ120を通過して、ラフポンプ150へ行く。
【0022】
反応性の重合可能な材料は、ガス入口を通してプロセスチャンバへ連続的に供給することができる。ヘリウムやアルゴン等の不活性キャリアガスを用いて、反応性の重合可能な材料をプロセスチャンバに供給することができる。この不活性ガス及びRFバイアスを用いて、ある用途において、処理チャンバ内にプラズマを形成してもよい。
【0023】
一実施形態において、装置にRF発生器61を設けて、チャンバ8を、RFネットワーク63を通して結合し、チャンバ8内にプラズマを生成してもよい。十分な熱を生成して、安定したダイマーを反応性種に変換することにより、プラズマを用いて、安定した前駆体の分解を促進してもよい。更に、RF発生器によって、チャンバの一体化が可能となって、基板のエッチングか、チャンバ8のイン・サイチュでのクリーニングのいずれかを実施することができる。
【0024】
図2に示す通り、可搬性設備200は、分解チャンバ30及び/又は気化器204を含むことができる。一例において、可搬性設備200は、分解チャンバ30のみを含み、別個の気化器204を、可搬性設備200の入口202に取り付けるか、或いは、既存の気化したダイマー、例えば、ジ−p−キシリレン等を、気化器以外の他のガスソースから、入口202に入れる。この可搬性設備は、プロセスチャンバの入口ポート203に、導管201を通して取り付け、反応性モノマーを、プロセスチャンバ205に入れる。プロセスチャンバからの過剰のガスを、コールドトラップ203へ排気する。
【0025】
一実施形態において、チャンバ内部に露出しているチャンバコンポーネントに形成されたポリマーコーティングは、パリレンを含む。パリレンは、p−キシリレン(CHCH)又はp−キシリレンの誘導体に基づく熱可塑性ポリマー又はコポリマーである。非置換p−キシリレンポリマーは、式−(CH−C−CH−)−で表わされ、式中、nは、分子中のモノマー単位の数で、好ましくは、nの値は平均で約100〜約50,000である。nの値が約5,000の時は、パリレンの平均分子量は約500,000である。パリレンはまた、モノマー又はポリマーをハロゲン化することにより製造される塩素化又はフッ素化形態のパリレンポリマーを含むこともできる。
【0026】
パリレンを製造する典型的なポリマー前駆体は、粉末等の固体形態で入手できる安定した環状ダイマー、ジ−p−キシリレン又はハロゲン化誘導体である。ダイマーは、気化器10において気化又は昇華される。気化した前駆体を、分解チャンバ30で反応性モノマーへと分解して、チャンバ8に導入して、チャンバ8内で重合する。ダイマーは、ミシガン州ミッドランドのダウケミカル(Dow Cheical,Midland,Michigan)等の企業より市販されている。通常、固体ダイマーは、取扱いが容易なように、微粒子形態、例えば、粉末形態で入手可能である。しかしながら、ダイマーペレットを、充填床と併せて用いて、固体前駆体材料を、キャリア流体中で液化又は溶解して、ダイマーの連続分配を促進してもよい。チャンバ8の内部表面は、p−キシリレンの安定したダイマー等のモノマーの気化又は昇華後、安定したダイマーを反応性p−キシリレンモノマーへ熱分解により変換することにより、パリレンでコートされる。この方法を用いて、p−キシリレンモノマーのコモノマー及び誘導体の気化によりポリマーをコートすることもできる。気化した材料をチャンバ8に通過させて、チャンバの露出した内部表面を反応性モノマーでコートしてから、熱又はその他エネルギー、例えば、UV光やプラズマ等により重合して、内部チャンバ表面にポリマーコーティングを形成する。或いは、反応性モノマーを用いて、従来のコーティングチャンバにおいて組み立てていないチャンバコンポーネントをコートすることもできる。
【0027】
ポリマーコーティングでコートできるプロセスチャンバ306を含む装置302の例示の実施形態を図3に示す。装置302は、DPSタイプのチャンバを含み、これは、基板304をエッチングするのに好適であり、カリフォルニア州、サンタクララのアプライドマテリアルズ(Applied Materials,Santa Clara,California)より市販されている。装置302の特定の実施形態は、基板304、例えば、半導体基板の処理に好適であり、当業者による他の基板304の処理に適合してもよい。装置302は、本発明を例証するためにのみ提供されており、本発明の範囲又はその等価物を、本明細書に記載した例示の実施形態に限定するのに用いるものではない。
【0028】
通常、装置302は、本発明を用いてコートできる数多くのコンポーネントを有するプロセスチャンバ306を含む。通常、チャンバ306は、典型的に金属又はセラミック材料から製造された壁312、例えば、側壁314、下壁316及び天井318を含む。天井318は、実質的に弓形であるが、他の例では、天井318は、ドーム、実質的に平坦又は多重径形部分を含んでいてもよい。チャンバ306は、制御器300により動作する。
【0029】
動作中、ガス供給部330は、プロセスガスソース338からチャンバ306へプロセスガスを提供する。ガス供給部330は、プロセスガスソース338に接続され、1つ以上のフロー制御バルブ334を有するガス導管336を含む。フロー制御バルブ334は、導管336を通過するプロセスガスのフローを制御するのに用いられる。導管336は、チャンバ306の1つ以上のガス入口342で終わっている。使用済みプロセスガス及びエッチャント副生成物は、排気部344を通して、チャンバ306から排気される。排気部344は、使用済みプロセスガスを受けるポンプチャネル346、チャンバ306内のプロセスガスの圧力を制御するスロットルバルブ350及び1つ以上の排気ポンプ352を含む。排気部344はまた、望ましくないガスを、排気部から減らすための軽減システムを含んでいてもよい。
【0030】
プロセスガスを励起して、チャンバ306のプロセスゾーン308(図示せず)において、又はチャンバ306から上流のリモートゾーン(図示せず)において、プロセスガスにエネルギーを結合するガス励起器354により基板304を処理する。一例において、ガス励起器354は、チャンバ306の中心周囲で円形状に対称性を有する1つ以上のインダクターコイル358を含むアンテナ356を含む。典型的に、アンテナ356は、約1〜約20回巻いたソレノイドを含む。ソレノイドの好適な構成を選択して、強固な誘導磁束鎖交及びプロセスガスへの結合を与える。アンテナ356を、チャンバ306の天井318近くに配置する時は、天井の近接部分を、RF又は電磁場を通過する二酸化ケイ素等の誘電体材料で作製してもよい。アンテナ電源355は、典型的に、約50KHz〜約60MHz、より典型的には約13.56MHzの周波数、約100〜約5000ワットの出力レベルで、例えば、RF電力をアンテナ356に与える。RF整合ネットワーク(図示せず)を提供してもよい。或いは、又はこれに加えて、ガス励起器354は、マイクロ波又は「上流」ガス活性器(図示せず)を含んでいてもよい。
【0031】
一例において、ガス励起器354はまた、プロセスガスを励起するのに用いるプロセス電極378を含んでいてもよい。典型的に、プロセス電極378は、チャンバ306の側壁314又は天井318に、1つの電極378を含み、これは、基板304下のサポート130の電極378等、他の電極に容量結合されている。天井318が電極312としても作用する時は、天井318は、誘導電磁界伝達ウィンドウとして作用する誘電体材料を含み、天井318の上のアンテナ356により伝達されるRF誘導電磁界に低インピーダンスを与える。用いることのできる好適な誘電体材料としては、酸化アルミニウム又は二酸化ケイ素等の材料が挙げられる。通常、電極312、378は、RFバイアス電圧を与えるためのAC電源を含む電極電源(図示せず)により、互いに電気的にバイアスがかけられている。RFバイアス電圧は、約50kHz〜約60MHzの周波数を含み、RFバイアス電流の電力レベルは、典型的に、約50〜約3000ワットである。
【0032】
動作中、基板搬送部311、例えば、ロボットアーム(図示せず)が、チャンバ306において、基板304を、基板サポート310へ搬送する。基板304は、典型的に、リフトピン(図示せず)に受けられる。これは、基板サポート310から延びて、基板304を受け、基板サポート310に縮んで戻って、基板304をサポート310上に配置する。基板サポート310は、静電チャック370を含んでいてもよく、これは、電極378を少なくとも部分的にカバーし、基板を受ける表面380を含む誘電体374を含んでいる。電極378はまた、上述したプロセス電極の1つとしても作用する。電極378は、基板304をサポート310又は静電チャック370を静電的に保持する静電荷を生成することができる。電源382は、電極378に、静電チャック電圧を与える。
【0033】
装置302は、更に、1つ以上の検出器309を含んでおり、放射線放出の1つ以上の波長の強度を検出し、検出された強度に対して1つ以上の信号を生成するように適合されている。好適な検出器309は、センサ301、例えば、光電子倍増管、スペクトロメータ、電荷結合素子又はフォトダイオード等を含む。検出器309は、典型的に、チャンバ306内の励起されたガスからの放射線放出を検出するように配置されている。例えば、検出器309は、所望の波長の放射線に透過性の、チャンバ306の壁に形成されたウィンドウ303を通過する放射線を検出するように配置されてもよい。検出器309を動作して、チャンバ306におけるチャンバ処理又は処理条件を決めるのに好適な放射線放出の波長の強度を検出する。例えば、検出器309は、チャンバ306内の炭素又はケイ素含有種の存在から生じる放射線放出の強度を検出することができる。かかる放射線放出は、典型的に、約3500A〜約4500A、より典型的には約2000A〜約8000Aの波長範囲である。典型的に、内部チャンバ表面及び様々なチャンバハードウェアのいずれか又は全体が、アルミニウム又は陽極酸化アルミニウム又は石英等の材料でできている。
【0034】
本発明の実施形態によれば、露出した内部チャンバ表面を有する様々なチャンバコンポーネントをポリマーでコートすることができる。例えば、天井318、側壁314及び下壁316等の第1の表面を有するチャンバコンポーネントを選択的にコートして、リップやレッグ359等の第2の表面を未コートとすることができる。本発明により、チャンバ壁314及び天井318をコートして、天井318及び側壁314を、下壁316から容易に分離するには、コート前に、プロセスチャンバのリップ359をマスクする。内部チャンバをコートした後、マスクを除去すると、プロセスチャンバのリップ359又は第2の表面が未コートで、第1の表面がコートされている。
【0035】
所望のポリマーを、チャンバコンポーネントに選択的に形成する場合には、チャンバコンポーネントは、ポリマー前駆体の凝縮温度より低い温度に維持しなければならない。例えば、内部チャンバ表面を、例えば、p−キシリレンを含むポリマー前駆体でコートする時は、内部チャンバ表面の温度は約40℃を超えてはならない。しかしながら、この温度は、当業者には明白であるように、内部表面をコートするのに用いられるポリマー前駆体に応じて異なる。
【0036】
図1を参照すると、気化したガス及び任意のキャリアガスの混合物がプロセスチャンバ8に流れた後、ポリマーが内部チャンバ表面に堆積する。例えば、パリレンポリマーは、反応性p−キシリレンモノマーの凝縮及び重合により内部チャンバ表面に堆積させることができる。任意のキャリアガスと未反応モノマー蒸気の残りは、チャンバ8を通過して、出口ポート66から、スロットルバルブ80を通り、コールドトラップ90へ進む。スロットルバルブ80は、チャンバ8内を所望の圧力に維持する。堆積/重合反応は、通常、堆積チャンバ8内の圧力を、約30ミリトル(mTorr)〜5トルに維持しながら実施される。モノマーが、非置換p−キシリレンの時は、圧力は、30ミリトル〜1トルに維持する。約1トルを超える圧力だと、未反応のモノマーを含む低結晶フィルムが堆積するからである。堆積チャンバ8内の圧力を設定した圧力から変える時は、圧力センサに接続されたスロットルバルブ80を開いて、圧力を下げるか、閉じて、圧力を上げる。
【0037】
スロットルバルブ80を通過する蒸気及びガスは、コールドトラップ90に入る。これは、真空ポンプ150に接続されていて、チャンバ8を減圧に維持することができる。未反応のモノマー及び他の共重合可能なガスが、真空ポンプ150に入るのを防ぐために、コールドトラップ90で、ガスストリームから除去する。コールドトラップ90は、従来の市販のコールドトラップを含んでいてよく、スロットルバルブ80の下流側に接続されていて、モノマー又はポリマーをガスストリームからトラップ及び除去する。コールドトラップ90の下流側に接続されているのは、ゲートバルブ120であり、ガスストリーム中の残りのガスが、ラフ真空ポンプ150へと通過して、所望の低圧を維持する。
【0038】
プロセスチャンバは、パリレンで選択的にコートされる。1枚又は複数枚のマスクを、未コートのままの所望のチャンバコンポーネントに適用する。反応性モノマーが、上述した通り、プロセスチャンバの内部をコートする。コーティング後、マスクを除去して、未コートのチャンバコンポーネントを露出する。
【0039】
代替、使い捨て、交換、移動又は脱着可能なチャンバコンポーネントは、未コートのままにしておくのが好ましい。完全にコートしたコンポーネントは、ポリマーコーティングから動かないようにすることができるため、移動可能なままとする必要のあるコンポーネントは、少なくとも部分的に未コートのままにしておくのが望ましい。例えば、DPSチャンバの上部(側壁と一体化している)は、下壁316から分離されていることが多い。プロセスチャンバの上部を部分的にコートするには、ポリマーでコーティングする前に、マスクを下部リップ、上部の側壁314に適用する。コーティング後、リップを覆ったマスクを除去すると、プロセスチャンバ上部の未コートリップのために、プロセスチャンバの上部及び側壁314が、下壁316から脱着可能なコートされたチャンバが得られる。
【0040】
ポリマーコートされたプロセスチャンバはまた、数多くの基板を処理したチャンバ使用後、又は、内部チャンバ表面のポリマーコーティングが、劣化したり、侵食された時は、再生することもできる。まず、古い、又は元のポリマーコーティングを、チャンバ306内に形成された励起されたガス又はプラズマにより、イン・サイチュで剥がす。例えば、オゾンを1000sccmのレートでチャンバ306に導入して、パリレンを含むポリマーコーティングと反応させて、パリレンコーティングを、チャンバ壁312から取り去る。オゾンに加えて、酸素プラズマをチャンバに形成して、例えば、100〜1000sccmのフローレートで酸素を与え、750〜1200ワットのRFバイアスをチャンバ電極間で維持することにより取り去ることもできる。酸素プラズマ種は、オゾンとパリレンの反応と同様に、パリレンと反応するものと考えられる。
【0041】
プロセスチャンバの元のポリマーコーティングが、酸素又はオゾンにより剥がされると、チャンバ表面は、新たなポリマーコーティングにより再びコートできる。プラズマ又は励起されたガスによるイン・サイチュでのクリーニング及びプロセスチャンバの内部表面のイン・サイチュでのコーティングにより、分解する必要性が減じる。プロセスチャンバコンポーネントの分解と組み立ては、チャンバコンポーネントにおける機械的摩耗を増大する可能性がある。
【0042】
本発明の例示の実施形態を説明してきたが、様々な変形、修正及び改善が当業者には容易に行えることは明白である。かかる変形、修正及び改善は、明確には上述していないが、示唆されており、本発明の技術的思想及び範囲に含まれる。従って、上記説明は、例示のために過ぎず、限定するものではない。本発明は、特許請求の範囲及びその均等物によってのみ限定及び定義される。
【図面の簡単な説明】
【0043】
本発明のこれらの構成、態様及び利点は、説明、添付の特許請求の範囲及び本発明の例を示す添付図面によって、より良く理解される。しかしながら、各構成は、本発明において、特定の図面に関してのみでなく、一般化して用いることができ、本発明はこれらの構成の組み合わせを含むものと考えられる。
【0044】
【図1】ポリマー堆積装置の概略図である。
【図2】プロセスチャンバへのポリマーの堆積に用いる可搬性設備の概略図である。
【図3】例示のプロセスチャンバの概略図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロセスチャンバコンポーネントであって、
(a)使用中、前記チャンバ内で励起されたガスに露出され、パリレンコーティングを含む第1の表面と、
(b)使用中、前記励起されたガスに露出されず、前記パリレンコーティングのない第2の表面とを含むプロセスチャンバコンポーネント。
【請求項2】
前記第1の表面が、
(1)前記チャンバの天井、側壁及び下壁、
(2)ドーム形天井表面、
のうち少なくとも1つを含む請求項1記載のコンポーネント。
【請求項3】
前記第2の表面が、前記ドーム形天井表面周囲にリップを含む請求項1記載のコンポーネント。
【請求項4】
前記第1及び第2の表面が、
(1)前記第1及び第2の表面が、アルミニウム又はアルミニウム合金から構成されている、
(2)前記第1及び第2の表面が、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、酸化ケイ素、炭化ケイ素又は石英から構成されている、又は、
(3)前記第1及び第2の表面が、前記パリレンコーティング下に酸化アルミニウムコーティングを有する、
のうちの少なくとも1つを特徴とする請求項1記載のコンポーネント。
【請求項5】
プロセスチャンバにおいて、イン・サイチュで、プロセスチャンバコンポーネントにポリマーをコーティングする重合可能な蒸気を形成するための設備であって、
(a)重合可能な蒸気を受ける入口と、
(b)前記重合可能な蒸気を形成するチャンバと、
(c)前記重合可能な蒸気を、前記プロセスチャンバへ導入する出口とを含む設備。
【請求項6】
重合可能な蒸気を形成する気化器を含む請求項5記載の設備。
【請求項7】
前記気化器が、ヒーターを含む請求項6記載の設備。
【請求項8】
反応性モノマーを、ジ−p−キシリレンを含む重合可能な蒸気から形成するために適合されている請求項5記載の設備。
【請求項9】
ポリマーコーティングを有するプロセスチャンバコンポーネントを再生する方法であって、
(a)前記ポリマーコーティングを除去する工程と、
(b)ポリマーコーティングを、前記チャンバコンポーネントの予め選択した表面に選択的にコーティングする工程とを含む方法。
【請求項10】
前記ポリマーコーティングを、
(a)励起された酸素ガス、又は、
(b)励起されたオゾンガス、
のうちの少なくとも1つにより除去する請求項9記載の方法。
【請求項11】
前記ポリマーコーティングが、パリレンである請求項9記載の方法。
【請求項12】
(b)が、使用中、前記チャンバ内で励起されたガスに露出される第1の表面に、前記ポリマーコーティングを形成するが、使用中、前記励起されたガスに露出されない第2の表面には、前記ポリマーコーティングを形成しない請求項9記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2009−517852(P2009−517852A)
【公表日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−541195(P2008−541195)
【出願日】平成18年10月31日(2006.10.31)
【国際出願番号】PCT/US2006/042436
【国際公開番号】WO2007/061579
【国際公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【出願人】(390040660)アプライド マテリアルズ インコーポレイテッド (1,346)
【氏名又は名称原語表記】APPLIED MATERIALS,INCORPORATED
【Fターム(参考)】