説明

ポリマーフィルムの製造方法及びセルロースアシレートフィルム

【課題】Re及びReの湿度依存性が小さいフィルムを、ドラム式流延で製造する。
【解決手段】ドープ12をドラム82に流延する。流延膜14を冷却により固化して、剥ぎ取る。湿潤フィルム13をピンテンタ64に案内する。流延膜14の移動速度V1とピンテンタ64における湿潤フィルム13の搬送速度V2との比V1/V2を1.01以上1.3以下の範囲とする。ピンテンタ64では、1.01倍以上1.30倍以下の範囲の拡幅率で、湿潤フィルム13を拡幅する。拡幅は、溶剤残留率が100重量%に達するまでに終了するように実施する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリマーフィルムの製造方法、特に、液晶ディスプレイに用いられるポリマーフィルムの製造方法と、及びセルロースアシレートフィルムとに関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイに用いられるフィルムには、様々な光学特性が要求される。特に強く要求される光学特性としては、透明性の他、レタデーション値がある。透明性については、セルロースアシレート、シクロオレフィンポリマー、ポリカーボネート等のポリマーフィルム等でほぼ満足できるレベルに達しているが、レタデーション値についてはその制御が難しい。
【0003】
ポリマーフィルムのレタデーション値としては、周知の通り、面方向レタデーション値Reと、厚み方向レタデーション値Rthとがあり、それぞれ以下の式で求められる。
Re=(Nx−Ny)×d・・・(1)
Rth={(Nx+Ny)/2−Nz}×d・・・(2)
ここで、Nxはポリマーフィルムの面での屈折率のうち最も大きい屈折率となる方向であるX軸における屈折率であり、Nyはポリマーフィルムの前記面内でX軸と垂直に交差するY軸における屈折率であり、Nzは、X軸とY軸とのいずれにも垂直なZ軸における屈折率であり、dはポリマーフィルムの厚みである。そして、Reの値が小さいほど、フィルムの面方向における光学異方性が小さいといえ、ReとRthとの値が共に小さいほど、フィルム全体としての光学異方性が小さいといえる。
【0004】
そして近年では、液晶ディスプレイの急激な需要の伸びに併せて、この液晶ディスプレイに用いられるポリマーフィルムの需要量も伸び、増産を重ねている。増産に際しては、設備を新たに増やすことも考えられるが、既存設備をできるだけ利用して増産を図ることが望まれる。
【0005】
ポリマーフィルムの一般的な製造方法としては、溶融製膜方法と溶液製膜方法とのふたつが上げられるが、ポリマーの種類、ポリマーフィルムの用途等に応じて、通常は選択される。液晶ディスプレイの偏光板保護フィルムや位相差フィルムに多く用いられるセルロースアシレートフィルムやシクロオレフィンポリマーフィルムについては、光学特性の発現と薄膜化という観点から溶液製膜方法が採られる。
【0006】
溶液製膜方法では、フィルムとなるポリマーが溶媒に溶解しているポリマー溶液(以降、ドープと称する)を、支持体の表面に流出して流延膜を形成する。そして、この流延膜を剥ぎ取って乾燥することによりポリマーフィルムが得られる。支持体には、走行路を循環走行する無端支持体としてのバンドと、回転して周面に流延膜が形成されるドラムとがある。流延膜を支持体から剥ぎ取って搬送するために、前者、すなわちバンド式流延では、流延膜を乾燥して硬くするが、後者、すなわちドラム式流延では流延膜を主に冷却してゲル状にすることにより硬くする。生産効率、すなわち生産の高速化を図るという観点では、ドラム式流延の方が好ましい。
【0007】
このドラム式流延では、バンド式流延に比べて、溶媒残留率が非常に高いうちに流延膜を剥ぎ取る。そして、剥ぎ取られた流延膜、すなわち溶媒残留率が非常に高い湿潤フィルムを、より迅速かつ効果的に乾燥するには、フィルムに対して送るべき乾燥空気の温度をできるだけ高く設定する。しかし、この乾燥の際に、湿潤フィルム中の溶媒が急激に蒸発しようとして湿潤フィルムが発泡したり、平滑性が悪くなりやすい等の問題がある。そこで、50重量%以上の溶媒残留率である湿潤フィルムの乾燥方法として、各側端部にピンを突き刺して保持し、このピンが備えられた両側の固定部材を所定間隔に保ちつつ、溶媒の沸点以上の温度で乾燥しながら搬送する方法(例えば、特許文献1参照)が提案されている。
【0008】
しかし、液晶ディスプレイに用いられる偏光子の保護フィルムや光学補償フィルムの支持体となるポリマーフィルムに対しては、Reが小さいことが望まれるのに対し、上記特許文献1に提案される方法で製造するとReが大きなポリマーフィルムとなってしまう。そこで、Reが小さなポリマーフィルムを製造する方法としては、テンタでの第1乾燥工程の後に実施されるローラによる搬送中の第2乾燥工程での搬送方向への延伸率をεMD、幅方向の延伸率をεTDとするときに、湿潤フィルムの溶剤残留率を減らすための乾燥時における熱収縮を利用して、−0.05≦εMD−εTD≦+0.15となるように第2乾燥工程を実施する方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0009】
また、ポリマーフィルムのReの低減や表面の平滑化等を図ることを目的として、30〜200重量%の溶媒残留率である湿潤フィルムを、幅方向に延伸しながら乾燥する方法(例えば、特許文献3参照)が提案されている。
【0010】
さらにまた、ポリマーフィルムのポリマーがセルロースアシレートである場合には、セルロースアシレートのアシル基置換度や、Reを下げる添加剤を用いることによりポリマーフィルムのReを下げること(例えば、特許文献4参照)が提案されている。
【特許文献1】特公平05−019898号公報
【特許文献2】特開2004−009380号公報
【特許文献3】特開2005−035290号公報
【特許文献4】特開2007−15366号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、ドラム式流延により製造されたフィルムでは、流延方向つまり製造工程における搬送方向へのポリマー分子の配向が大きく、光学的に等方なフィルムを作ることが困難であった。これは、ドラム式流延では、溶媒含有率がバンド式流延に比べて非常に多いうちに流延膜を剥ぎ取るために、剥ぎ取った湿潤フィルムが剥ぎ取り時やその後の搬送工程で搬送方向に伸びてしまうこと、そしてこの伸びに伴い幅方向に縮んでしまうことに主に起因する。つまり搬送方向への伸びと、この伸びに伴う幅方向の縮みとによりポリマー分子の搬送方向への配向がより促進されてしまい、光学異方性がより大きくなってしまうことになる。
【0012】
そして、ドラム式流延においてさらに生産速度を向上させるには、ポリマーフィルムの乾燥工程における搬送速度をアップさせることが必要であるが、搬送速度をアップするに従い搬送方向における張力をより大きくしなければならない。しかし搬送方向における張力を大きくするとポリマーフィルムが搬送方向、つまり長手方向に伸びてしまい、面方向レタデーションReが上がってしまう。この傾向は、製造すべきポリマーフィルムの厚みを薄くするほど顕著である。
【0013】
さらに、ドラム式流延で得られたポリマーフィルムは、Reが環境の湿度に応じて変化しやすいという問題がある。このようにReの湿度依存性が大きいポリマーフィルムを液晶ディスプレイに用いると、湿度変化に伴い、表示画面の色味が変化したり表示画像にムラ(表示ムラ)が生じてしまう。
【0014】
以上のような問題は、上記のいずれの特許文献の方法をもってしても十分には解決されず、ReとReの湿度依存性とがともに小さいフィルムをドラム式流延でつくることはできなかった。
【0015】
そこで、本発明の目的は、Reが小さく、Reの湿度依存性が小さいフィルムを、ドラム式流延で製造するポリマーフィルムの製造方法を提案すること、及びReが小さく、Reの湿度依存性が小さいセルロースアシレートフィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を解決するために、本発明は、ポリマーが溶剤に溶解したドープを、回転しているドラムの周面上に連続流延して流延膜を形成する流延膜形成工程と、この流延膜を冷却して固化し、ドラムから湿潤フィルムとして剥ぎ取る剥ぎ取り工程と、湿潤フィルムの両側端部を保持して走行する保持手段と湿潤フィルムを乾燥する第1乾燥手段とを備えるテンタにより、湿潤フィルムを搬送しながら乾燥し、湿潤フィルムに対して幅方向に張力を付与する第1乾燥工程と、第1乾燥工程後の湿潤フィルムを複数のローラにより支持しながら第2乾燥手段により乾燥してポリマーフィルムとする第2乾燥工程とを有するポリマーフィルムの製造方法において、流延膜の移動速度V1と、テンタにおける湿潤フィルムの搬送速度V2との比V2/V1を1.01以上1.3以下の範囲とし、第1乾燥工程では、溶剤残留率が100重量%に達するまでに、張力の付与により、保持手段による保持の開始時における前記流延膜の幅の1.01倍以上1.30倍以下の範囲となるように前記湿潤フィルムの幅を拡げることを特徴として構成されている。
【0017】
そして、前記ポリマーは、アシル基置換度が2.8以上3.0以下の範囲であるセルロースアシレートであることが好ましく、セルロースアシレートに対して5重量%以上30重量%以下のポリエステルポリオールを前記ドープが含むことが好ましい。
【0018】
また、本発明のセルロースアシレートフィルムは、セルロースアシレートと溶媒とを含むドープを流延して乾燥する溶液製膜によって長尺状につくられ、長手方向における音速VMと幅方向における音速VTとの比VM/VTが0.9以上1.1以下であり、前記セルロースアシレートに対して5重量%以上30重量%以下のポリエステルポリオールを含むことを特徴として構成されている。
【0019】
前記セルロースアシレートは、アシル基置換度が2.8以上3.0以下の範囲であることが好ましい。セルロースアシレートフィルムの面での屈折率のうち最も大きい屈折率となる方向としてのX軸における屈折率をNx、前記面内でX軸と垂直に交差するY軸における屈折率をNy、セルロースアシレートフィルムの厚みをdとするときに、(Nx−Ny)×dで求める面方向レタデーションReが0nm以上10nm以下の範囲であることが好ましい。
【発明の効果】
【0020】
本発明のポリマーフィルムの製造方法によると、ReとReの湿度依存性とが小さいポリマーフィルムをドラム式流延で製造することができ、そのため、上記のようなポリマーフィルムが高い生産効率で製造することができる。また、本発明のセルロースアシレートフィルムを液晶ディスプレイに用いると、湿度が変化しても表示画面の色味の変化や表示ムラの発生がないという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下に、本発明の実施態様について詳細に説明する。ただし、本発明はここに挙げる実施態様に限定されるものではない。
【0022】
[原料]
ドープの成分としては、ポリマーとこのポリマーを溶解するための溶剤がある。本発明は、溶液製膜方法によりフィルムとすることができる公知のポリマーについて適用することができ、ポリマーの種類は特に限定されない。中でも、セルロースアシレート、シクロオレフィンポリマー、セルロースプロピオネートである場合には本発明効果が大きく、セルロースアシレートである場合に特に効果が大きい。
【0023】
セルロースアシレートの中でも、セルロースの水酸基をカルボン酸でエステル化している割合、つまりアシル基の置換度(以下、アシル基置換度と称する)が下記式(I)〜(III)の全ての条件を満足するものがより好ましい。なお、(I)〜(III)において、A及びBはともにアシル基置換度であり、Aにおけるアシル基はアセチル基であり、Bにおけるアシル基は炭素原子数が3〜22のものである。Reを0nm以上10nm以下と小さくするためには、A+Bは、2.8以上3.0以下の範囲であることがより好ましく、2.8以上2.9以下の範囲であることがさらに好ましい。
2.5≦A+B≦3.0・・・(I)
0≦A≦3.0・・・(II)
0≦B≦2.9・・・(III)
【0024】
セルロースを構成しβ−1,4結合しているグルコース単位は、2位、3位および6位に遊離の水酸基を有している。セルロースアシレートは、これらの水酸基の一部または全部がエステル化されて、水酸基の水素が炭素数2以上のアシル基に置換された重合体(ポリマー)である。なお、グルコース単位中のひとつの水酸基のエステル化が100%されていると置換度は1であるので、セルロースアシレートの場合には、2位、3位および6位の水酸基がそれぞれ100%エステル化されていると置換度は3となる。
【0025】
ここで、グルコース単位の2位のアシル基置換度をDS2、3位のアシル基置換度をDS3、6位のアシル基置換度をDS6とする。DS2+DS3+DS6で求められる全アシル基置換度は2.00〜3.00であることが好ましく、2.22〜2.90であることがより好ましく、2.40〜2.88であることがさらに好ましい。また、DS6/(DS2+DS3+DS6)は0.32以上であることが好ましく、0.322以上であることがより好ましく、0.324〜0.340であることがさらに好ましい。
【0026】
アシル基は1種類だけでもよいし、あるいは2種類以上であってもよい。アシル基が2種類以上であるときには、そのひとつがアセチル基であることが好ましい。2位、3位及び6位の水酸基の水素のアセチル基による置換度の総和をDSAとし、2位、3位及び6位におけるアセチル基以外のアシル基による置換度の総和をDSBとすると、DSA+DSBの値は2.2〜2.86であることが好ましく、2.40〜2.80であることが特に好ましい。DSBは1.50以上であることが好ましく、1.7以上であることが特に好ましい。そして、DSBはその28%以上が6位水酸基の置換基であることが好ましいが、より好ましくは30%以上、さらに好ましくは31%以上、特に好ましくは32%以上が6位水酸基の置換基であることが好ましい。また、セルロースアシレートの6位のDSA+DSBの値が0.75以上であることが好ましく、0.80以上であることがより好ましく、0.85以上であることが特に好ましい。
【0027】
炭素数が2以上であるアシル基としては、脂肪族基でもアリール基でもよく、特に限定されない。例えばセルロースのアルキルカルボニルエステル、アルケニルカルボニルエステルあるいは芳香族カルボニルエステル、芳香族アルキルカルボニルエステルなどがあり、これらは、それぞれさらに置換された基を有していてもよい。プロピオニル基、ブタノイル基、ペンタノイル基、ヘキサノイル基、オクタノイル基、デカノイル基、ドデカノイル基、トリデカノイル基、テトラデカノイル基、ヘキサデカノイル基、オクタデカノイル基、iso−ブタノイル基、t−ブタノイル基、シクロヘキサンカルボニル基、オレオイル基、ベンゾイル基、ナフチルカルボニル基、シンナモイル基などを挙げることが出来る。これらの中でも、プロピオニル基、ブタノイル基、ドデカノイル基、オクタデカノイル基、t−ブタノイル基、オレオイル基、ベンゾイル基、ナフチルカルボニル基、シンナモイル基などがより好ましく、プロピオニル基、ブタノイル基が特に好ましい。
【0028】
なお、セルロースアシレートの詳細については、特開2005−104148号公報の[0140]段落から[0195]段落に記載されており、これらの記載は本発明にも適用することができる。
【0029】
セルロースアシレートあるいはその他のポリマーのドープをつくるための溶媒としては、芳香族炭化水素(例えば、ベンゼン,トルエンなど)、ハロゲン化炭化水素(例えば、ジクロロメタン,クロロベンゼンなど)、アルコール(例えば、メタノール,エタノール,n−プロパノール,n−ブタノール,ジエチレングリコールなど)、ケトン(例えば、アセトン,メチルエチルケトンなど)、エステル(例えば、酢酸メチル,酢酸エチル,酢酸プロピルなど)及びエーテル(例えば、テトラヒドロフラン,メチルセロソルブなど)などが例示される。
【0030】
ポリマーとしてセルロースアシレートを用い、このセルロースアシレートを溶かしてドープをつくるための溶媒としては、上記の溶媒の中でも炭素原子数1〜7のハロゲン化炭化水素が好ましく、ジクロロメタンが最も好ましい。そして、TACの溶解性、流延膜の支持体からの剥ぎ取り性、フィルムの機械的強度、フィルムの光学特性等の特性の観点から、炭素原子数1〜5のアルコールを一種ないし数種類を、ジクロロメタンに混合して用いることが好ましい。このとき、アルコールの含有量は、溶媒全体に対し2重量%〜25重量%であることが好ましく、5重量%〜20重量%であることがより好ましい。アルコールの好ましい具体例としては、メタノール,エタノール,n−プロパノール,イソプロパノール,n−ブタノール等が挙げられるが、中でも、メタノール,エタノール,n−ブタノール、あるいはこれらの混合物が好ましく用いられる。
【0031】
環境に対する影響を最小限に抑えることを目的にした場合には、ジクロロメタンを用いずにドープを製造してもよい。この場合の溶媒としては、炭素原子数が4〜12のエーテル、炭素原子数が3〜12のケトン、炭素原子数が3〜12のエステルが好ましく、これらを適宜混合して用いることがある。これらのエーテル、ケトン及びエステルは、環状構造を有するものであってもよい。また、エーテル、ケトン及びエステルの官能基(すなわち、−O−,−CO−及び−COO−)のいずれかを二つ以上有する化合物も、溶媒として用いることができる。また、溶媒は、例えばアルコール性水酸基のような他の官能基を化学構造中に有するものであってもよい。
【0032】
支持体を無端のバンドとし、流延膜を乾燥させて剥ぎ取る場合に比べて、支持体をドラムとし流延膜を冷やして剥ぎ取る本発明では、ドープにおけるポリマーの濃度を高くする。冷却することにより流延膜をゲル状にして自己支持性をもたせることと、ドラムから流延膜をできるだけ短時間で剥ぎ取ることができるようにすることとの目的のみならず、後述の製膜方法におけるレタデーション値の制御をより確実に行うためである。
【0033】
ドープにおけるポリマーの濃度は、具体的には、12重量%以上30重量%以下であることが好ましい。ポリマー濃度が12重量%よりも小さいと、流延膜の冷却によるゲル化ができない場合がある。一方、ポリマー濃度が30重量%よりも大きいとポリマー分子が流延膜に不均一に分布しやすくなって、光学特性や厚み等が不均一なフィルムとなる場合がある。また、ポリマーとしてセルロースアシレートを用いる場合には、30重量%よりもポリマー濃度が高く均一なドープをつくることがそもそも難しい。ドープにおけるポリマーの濃度は、15重量%以上27重量%以下であることがより好ましく、17重量%以上25重量%以下であることがさらに好ましい。
【0034】
ポリマーの他に、ドープには他の固形成分を含ませてもよい。他の固形成分とは、例えば、可塑剤、劣化防止剤、紫外線吸収剤、染料、フィルム同士の滑り性を向上させるマット剤、レタデーション制御剤等である。可塑剤としては、周知のトリフェニルフォスフェート(TPP)や、ビフェニルジフェニルフォスフェート(BDP)等を特に好ましく用いることができる。レタデーション制御剤としては、ポリマーフィルム中に含有されることにより、非含有の場合に比べて、ポリマーフィルムのReを下げる作用をもつレタデーション下降剤がある。
【0035】
レタデーション下降剤としては、特開2006−30937号第23ページから第72ページに記載の光学異方性を低減させる化合物が例に挙げられる。また、可塑剤やポリウレタン製造の原料としてもちいる様々な構造・分子量のポリエステルポリオール、例えば、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、マレイン酸、フタル酸、テレフタル酸等の二塩基酸と、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコールなどの種々のジオール類からなる分子量750から5000程度のポリエステルジオール等は、レタデーション低減性があり、製造過程における湿潤フィルムや製造後のフィルムからの析出がしにくく、また、気化しにくいためにも低いため特に好ましく用いることができる。
【0036】
また、本発明では紫外線吸収剤として、200〜400nmの紫外領域に吸収を持つ化合物を用いることも好ましい。具体例としては、例えばベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾフェノン系化合物、トリアジン系化合物、シアノ基を含む化合物、オキシベンゾフェノン系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ニッケル錯塩系化合物等を用いることができる。これら紫外線吸収剤は、本発明のフィルムを光学的により等方にするための、波長分散を低下させる化合物(以下波長分散調整剤という)やレタデーション制御剤としての機能を持たせることもできる。
【0037】
上述のような、本発明で好ましく用いられるレタデーション下降剤や波長分散調整剤は、気化のしにくさという点からは分子量250以上のものが好ましい。これらの分子量は、より好ましくは300以上、更に好ましくは400以上である。また、ポリマーとの相溶性の観点からは分子量として10000以下であることが好ましい。より好ましくは5000以下、特に好ましくは2000以下である。これらの分子量の範囲であれば、特定のモノマー構造であっても良いし、そのモノマーユニットが複数結合したオリゴマー構造、ポリマー構造でも良い。
【0038】
[溶液製膜設備及び方法]
図1は溶液製膜設備11を示す概略図である。ただし、本発明は、この溶液製膜設備11に限定されるものではない。以下の説明は、ポリマーとしてセルロースアシレートを用いた場合を例に挙げて説明するが、各条件は、セルロースアシレート以外のポリマーを用いた場合も同じである。溶液製膜設備11には、セルロースアシレートをポリマー成分とするドープ12を流延し、溶媒を含んだ状態の湿潤フィルム13とする流延室63と、湿潤フィルム13の両側端部を複数のピンで保持して湿潤フィルム13を搬送しながら乾燥するピンテンタ64と、湿潤フィルム13の両側端部を切り離す耳切装置67と、湿潤フィルム13を複数のローラ68に掛け渡して搬送しながら乾燥してポリマーフィルム(以下、単に「フィルム」と称する)62とする乾燥室69と、フィルム62を冷却するための冷却室71と、フィルム62の帯電量を減らすための除電装置72と、側端部にエンボス加工を施すナーリング付与ローラ対73と、フィルム62を巻き取る巻取室76とが備えられる。
【0039】
流延室63には、ドープ12を流出する流延ダイ81と、周面にドープ12が流延される支持体としてのドラム82とが備えられる。流延ダイ81の下方に配されるドラム82は、接続する駆動装置50により回転駆動されており、この駆動装置50を介して、制御装置51により回転の速度と回転駆動のオンオフとを制御される。
【0040】
ドープ12は、周方向に回転するドラム82の上に流延ダイ81から連続的に流出され、これにより、ドラム82の上でドープ12が流延されて流延膜14が形成される。流延ダイ81の流出口からドラム82にかけては、ドープ12からなるいわゆるビードが形成され、このビードに関してドラム82の回転の向きにおける上流側のエリアは、減圧チャンバ90で空気を吸引されて減圧される。これにより、ビードの態様は安定し、均一な流延膜14が形成されるようになる。ビードに関して上流側のエリアの圧力は、下流側のエリアよりも2000Pa〜10Pa低くすることが好ましい。なお、流延ダイ81から流出されるドープ12の温度は30〜35℃の範囲で一定とすることが好ましい。30℃よりも低い温度の場合には、通常は、ドープの流動性が低すぎてビードが切れてしまうことがあるからである。また、流延ビードを所望の形状に保つために、流延ダイ81のエッジ部に吸引装置(図示せず)を取り付けてビードの両側を吸引することが好ましい。この吸引風量は、1L/min.〜100L/min.の範囲であることが好ましい。
【0041】
ドラム82の内部には、伝熱媒体の流路(図示せず)が形成されており、この流路中を、所定の温度の伝熱媒体が通過することにより、ドラム82の周面温度が所定の値に保持される。伝熱媒体は、前記流路に接続する伝熱媒体循環装置87により温度を制御されるとともに流路と伝熱媒体循環装置との間を循環するように流され、繰り返し使用される。伝熱媒体は、取り扱いやすさ及び温度制御のし易さの点から気体よりも液体の方が好ましい。ドラム82の周面温度は、ドープの溶剤の種類、固形成分の種類、ドープ12における固形成分の濃度、剥ぎ取りまでの時間等に応じて適宜設定する。
【0042】
ドラム82の表面温度は−20以上10℃以下の範囲で一定、より好ましくは−10℃以上0℃以下の範囲で一定とされることが好ましい。これにより、ドラム82の上の流延膜14は徐々に温度を下げられて固化し、流動性が有る状態からゲル状の流動性が無い非流動状態へと態様が変化する。
【0043】
流延室63には、その内部温度を所定の値に保つための温調装置97が設けられる。流延室63の内部温度は、流延時におけるドープの温度とドラム82の周面温度とを考慮すると、10℃〜30℃とされることが好ましい。なお、流延室63の内部で蒸発した溶媒は回収装置(図示せず)により回収された後、再生させてドープ製造用の溶剤として再利用される。
【0044】
流延膜14が自己支持性をもつようになったら、剥取ローラ109で支持しながらドラム82から流延膜14を剥ぎ取る。フィルム62の生産速度をできるだけ向上させるためには、流延膜14をできるだけ急速に冷却することが好ましい。生産効率を考慮すると、冷却により流延膜14の露出面が十分に固まったならば、流延膜14の近傍に乾燥空気を流すこと等により、剥ぎ取り後の搬送をより安定させることができる。流延膜14の近傍に乾燥空気を流すか否かに関わらず、通常は、流延膜14から溶剤が蒸発する。溶剤が蒸発しても、流延膜14は、ドラム82と強く接着していることから、幅方向及び長手方向のいずれの方向においても寸法変化はほとんど無く、各寸法変化はゼロとみなすことができる。
【0045】
流延膜14の剥ぎ取りは、流延膜14の移動速度V1と、ピンテンタ64における搬送速度V2とがV2>V1の関係を満たすようにして流延膜14に張力を与えることにより実施する。なお、流延膜14の移動速度とは、ドラム82の周面の移動速度に等しい。この際、ドラム82とピンテンタ64との間の搬送路に、周方向に回転する駆動ローラを複数設置し、下流側の駆動ローラほど周速を大きくすることにより、搬送をより安定的に実施することもできる。
【0046】
ピンテンタ64は、案内されてきた湿潤フィルム13の両側端部を突き抜けて湿潤フィルム13を支持するピンを複数備える。ピンは、走行するピン台に複数配されており、ピン台の走行により湿潤フィルム13は搬送される。そして、湿潤フィルム13の幅を所定のタイミングで変えたり、あるいは、幅を所定時間保持するように、ピン台の走行路は決定される。なお、湿潤フィルム13は、ピンテンタ64までの搬送方向への伸びに伴い幅方向に収縮するため、湿潤フィルム13の幅方向での収縮量に応じるように両側のピン台間の距離を調整することがある。
【0047】
ピンテンタ64には、さらに、湿潤フィルム13の搬送路の上方に、乾燥空気を流し出す送風ダクト74が備えられ、湿潤フィルム13は、この乾燥空気により乾燥を進められる。この乾燥工程を第1乾燥工程と称する。湿潤フィルム13は、ピンテンタ64から搬出されるときの溶媒残留率が20重量%以上0.01重量%以下の範囲、より好ましくは10重量%以上0.1重量%以下の範囲となるように、ピンテンタ64で乾燥されることが好ましい。
【0048】
なお、湿潤フィルム13の両側端部を把持手段としてのクリップで把持して湿潤フィルム13を搬送しながら加熱するクリップテンタを、ピンテンタ64と耳切装置67との間に適宜設けてもよい。
【0049】
ピンテンタ64を出た湿潤フィルム13、すなわち、第1乾燥工程を経た湿潤フィルム13は耳切装置67に案内され、ピンテンタ64でピンにより保持された箇所を含む両側部が連続的に切断除去される。切り離された両側部はカッターブロワ(図示なし)によりクラッシャ103に送られる。クラッシャ103により、細長い側端部は細かくされてチップとなる。このチップはドープ製造用に再利用される。なお、このようないわゆる耳切工程は、ピンテンタ64と乾燥室69との間で実施する本実施態様に代えてあるいは加えて、乾燥室69と巻取室76との間で実施してもよい。
【0050】
一方、両側端部を切断除去された湿潤フィルム13は、乾燥室69に送られて、さらに乾燥される。この乾燥室69における乾燥工程を第2乾燥工程と称する。乾燥室69には、搬送路を成す複数のローラ68が備えられ、これらのうち、少なくともひとつが駆動ローラとされる場合がある。複数のローラ68のすべてが非駆動のいわゆるフリーローラである場合には、乾燥室69と巻取室76との間に駆動ローラ等の搬送手段を設けるとよい。湿潤フィルム13は、複数のローラ68にそれぞれ巻き掛けられて、搬送される。ローラ68は湿潤フィルム13と接触する周面の温度を変える加熱機構を備えてもよく、これにより湿潤フィルム13はより効果的かつ効率的に乾燥される。乾燥室69には、乾燥室69の内部の空気を取り込んで、蒸発した溶剤を空気から除去し、溶剤を除去した後の空気を温度調整した上で乾燥室69の内部に送り込む空気循環装置106が備えられる。これにより、乾燥室69の内部空気は循環使用される。搬送される湿潤フィルム13は、空気循環装置106から空気が適宜供給されることによりさらに乾燥され、製品とするに十分溶剤が除かれたフィルム62となる。具体的には、1.5質量%以下となるまで乾燥することが好ましく、1.0質量%以下となるまで乾燥することがより好ましい。である。また、空気から除去された溶剤は、回収されて、精製された後に、ドープ調製用として再利用される。なお、空気循環装置106により乾燥室69に再び戻される空気の温度は、特に限定されるものではないが、50〜160℃の範囲が好ましい。
【0051】
乾燥室69の下流には、乾燥室69よりも低く内部温度が保持される冷却室71が設けられる。この冷却室71を通過することにより、第2乾燥工程を終えたフィルム62は略室温に冷却される。そして、除電装置72により、帯電圧が所定の範囲となるように調整された後、ナーリング付与ローラ対73に送られ、これにより細かな複数の凹凸であるナーリングを両側部に付与る。凹凸の高さは1〜200μm程度である。
【0052】
ナーリングを付与されたフィルム62は、巻取室76に送られる。巻取室76には、フィルム62をロール状に巻き取るための巻取ロール107と、巻き取り時におけるテンションを制御するためのプレスローラ108とが備えられる。そして、巻取ロール107には、設定された速度でフィルム62が巻き取られるように巻取ロール107の回転速度を制御して巻取ロール107を駆動する巻取制御装置120を備える。
【0053】
上記の方法においては、流延膜14の移動速度をV1とし、湿潤フィルム13の搬送速度をV2とするときに、両者の比V2/V1を1.01以上1.30以下の範囲とする。流延膜14の移動速度V1はドラム82の周面上の任意の点の移動速度に等しい。つまり、V1は、制御装置51により設定されたドラム82の回転速度により決まる。したがって、V1の制御は、ドラム82の回転速度の制御により行う。また、ピンテンタ64におけるピンの走行速度を湿潤フィルム13の搬送速度V2とみなすとよい。したがって、V2/V1の比が上記範囲になるように、ドラムの回転速度とピンの走行速度とを調整する。
【0054】
ここで、ピンは、湿潤フィルム13を幅方向に引っ張り幅を拡げるとき、すなわち拡幅するときには、湿潤フィルム13の搬送の向きと交差する向きに走行することになる。すなわち、この場合のピンもしくはクリップの走行速度をベクトルで示すと、このベクトルは、湿潤フィルム13の搬送の向きとこの搬送の向きと直交する幅方向との両方の成分をもつ。このような場合には、湿潤フィルム13の搬送の向きの成分ベクトルの大きさをV2とみなす。ただし、幅を一定に保持して湿潤フィルム13を搬送させる第1区間と、幅を拡げながら湿潤フィルム13を搬送する第2区間との両方がある場合には、湿潤フィルム13の搬送の向きにおけるピンの走行速度のベクトルは第1区間における方が大きくなるので、第1区間におけるピンの走行速度をV2とみなす。
【0055】
流延膜14は、上記の比V2/V1を満たす引っ張りの力でドラム82から剥ぎ取られる。流延膜14は、溶剤残留率が200重量%よりも小さくなる前に剥ぎ取ることが可能なように冷却される。剥ぎ取られた湿潤フィルム13は、バンド式流延における湿潤フィルム13と比べて弾性率が非常に小さいために、搬送方向すなわち長手方向には伸び、幅方向には縮んでしまう。湿潤フィルム13の長手方向への分子配向を抑えるという観点からは、V2/V1はできるだけ小さい方が好ましいものの、溶剤残留率が上記のように高い流延膜14を安定的に剥ぎ取るにはある程度大きな引っ張りの力は必要となる。そこで、ドラム式流延で、比V2/V1を1.01以上1.3以下の範囲とし、後述のような拡幅を実施することにより、ポリマーの分子は、湿潤フィルム13の長手方向での配向と幅方向での配向とが従来の製造方法による場合に比べて極めて小さく抑えられる。これにより、Re及びReの湿度依存性が従来よりも小さなフィルム62をつくることができる。V2/V1は、より好ましくは1.02以上1.2以下の範囲であり、さらに好ましくは1.05以上1.15以下の範囲である。なおV2/V1の値は、流延速度や製造すべきフィルム62の厚みによって上記範囲内で調整される。
【0056】
図2は、ピンテンタ64における湿潤フィルム13の説明図である。矢線X1,X2はフィルム62の幅方向であり、矢線Yは湿潤フィルム13の搬送方向である。ピンテンタ64においてピンによる保持を開始する位置を第1位置P1、保持を解除する位置を第2位置P2と称する。なお、テンタ64の入口は第1位置P1よりも少しだけ上流側、出口は第2位置よりも少しだけ下流側にあるが、図2においては図示を略す。また、拡幅を開始する位置を第3位置P3、拡幅を終了させる位置を第4位置、湿潤フィルム13の溶剤残留率が100重量%になる位置を第5位置P5とする。
【0057】
ピンテンタ64の湿潤フィルム13の搬送路の上方には、送風ダクト74(図1参照)が備えられ、この送風ダクト74には、幅方向X1,X2方向に延びた、乾燥空気が出るスリットがフィルム搬送路方向に複数並んで形成されている。また、送風ダクト74の内部はフィルムの搬送方向で複数に区画されており、送風ダクト74に接続する送風機(図示せず)からは区画毎に温度が異なる空気が送り込まれる。これにより、区画毎に、スリットから出される空気の温度が変えられる。この空気の温度を調整することにより、湿潤フィルム13の温度を変化させるとともに、湿潤フィルム13の乾燥を進める。
【0058】
湿潤フィルム13の拡幅は、ピンテンタ64における湿潤フィルム13の保持を開始した時の幅を1としたときに、溶剤残留率が100重量%に達するまでの間に幅が1.01以上1.30以下の範囲になるように張力を付与して実施する。つまり、保持開始位置P1における湿潤フィルム13の幅をL1、第4位置P4における湿潤フィルム13の幅をL2とするときに、第4位置P4を第5位置P5と同じ位置もしくは第5位置P5よりも上流とし、L2/L1で求める拡幅率が1.01以上1.30以下の範囲となるように拡幅をする。この拡幅率は、1.02以上1.20以下の範囲であることがより好ましく、1.04以上1.15以下の範囲であることがさらに好ましい。ドラム式流延でV1/V2を上記範囲とし、上記のタイミング、すなわち溶剤残留率が非常に多いうちに、上記のような拡幅率の拡幅を実施することにより、長手方向と幅方向とにおける分子配向が共に抑制され、その結果、Reが0nm以上10nm以下と小さいフィルム62を製造することができる。なお、図2ではピンによる各側端部の把持位置を符号KPで示し、幅L1,L2は、いずれも、両把持位置KPの間の距離である。
【0059】
溶剤残留率が100重量%よりも低くなった後では、拡幅をするには湿潤フィルム13の弾性率が高すぎて、ピンが突き抜けている孔から湿潤フィルム13が裂けてしまうことがある。従って、拡幅の終了のタイミングとなる第4位置P4は第5位置P5と同じもしくは第5位置P5よりも上流となる。拡幅は溶剤残留率が120重量%に達するまでに終了することがより好ましく、150重量%に達するまでに終了することがさらに好ましい。なお、拡幅の開始のタイミングは、拡幅終了のタイミングと上記拡幅率での拡幅が可能である範囲において特に限定されない。ただし、溶剤残留率が280重量%よりも多いときに流延膜14を剥ぎ取る場合には、湿潤フィルム13の溶剤残留率が280重量%に達した後に拡幅を開始することが好ましい。よって、第3位置P3は、湿潤フィルム13の溶剤残留率が280重量%に達した位置と同じもしくは280重量%に達した位置よりも下流とすることが好ましい。そして、拡幅は、溶剤残留率が260重量%に達してから開始することがより好ましく、250重量%に達してから開始することがさらに好ましい。
【0060】
また、湿潤フィルム13はピンテンタで保持を開始した時点で、搬送方向への伸びと幅方向への収縮とが同時に起きるために、拡幅率は搬送方向における上記の比V1/V2よりも大きくすることがより好ましい。
【0061】
Reを小さくする、そしてReの湿度依存性を小さくするという上記の効果は、ポリマーとしてセルロースアシレートを用いた場合に特に顕著にあらわれる。そして、セルロースアシレートのアシル基置換度が2.8以上3.0以下である場合や、ポリエステルポリオールをドープの中に含ませておく場合には、冷却によってゲル状に固化した流延膜14の弾性率がより大きくなるために、上記の効果がさらに大きくなる。
【0062】
湿潤フィルム13には、ドラム82からの剥ぎ取り、各工程での溶媒の蒸発、渡り部101での搬送、ピンテンタ64での搬送及び拡幅や幅の保持、乾燥室69でのローラ68による搬送、等で様々に寸法が変化する。本発明では、湿潤フィルム13につき、長手方向における寸法変化率をA、幅方向での寸法変化率をBとするときに、A/Bを1.0以上1.2以下の範囲とすることが好ましい。これにより、Reを小さくする効果と、Reの湿度依存性を小さくする効果とがより高まる。A/Bは0.85以上1.15以下の範囲とすることがより好ましく、0.9以上1.1以下とすることが特に好ましい。
【0063】
寸法変化率A、Bは、ドラム82での剥ぎ取り位置P1から、乾燥室69の出口までの範囲である湿潤フィルム13についての値とする。乾燥室69から巻き取り軸107までの寸法変化についてはゼロとみなすことができるからである。これは、乾燥室69では前述の通り、製品とするに十分に溶剤が除かれ、乾燥室69を出たフィルム62は搬送における張力により寸法変化がほとんど無いこと、さらに、乾燥室69から巻取軸107に至る搬送路の長さは、ドラム82での剥ぎ取り位置PPから乾燥室69の出口に至る搬送路の長さに比べて非常に短いために、フィルム62に張力がかかる時間は湿潤フィルム13に張力がかかる時間に比べて非常に短いこと、による。したがって、長手方向における寸法変化率Aは、ドラム82の回転速度をx1(単位;m/分)、巻取軸107による巻き取り速度をy1(単位;m/分)とするときにy1/x1で求めることができる。
【0064】
また、フィルムの幅方向における寸法変化率Bは、剥ぎ取り時における流延膜14の幅をx2(mm)、巻き取り時におけるフィルム62の幅をy2(mm)とするときに、y2/x2で求める。ただし、製造工程において側端部を切断除去している場合には、除去した幅を考慮する。なお、本態様では剥ぎ取り時と保持開始位置P1とにおける湿潤フィルム13の幅が略同等である。この場合には、保持開始位置P1における幅L1をx2とみなしてよい。
【0065】
以上のように、寸法変化率A、Bは、いずれも、流延室63、ピンテンタ64、乾燥室69、巻取室76での各工程を含む流延から巻き取りまでの全工程における搬送速度の変化と、各工程での幅の測定値から求めることができる。
【0066】
以上のように(寸法変化率A)/(寸法変化率B)を上記範囲とすることにより、ポリマー分子の配向をより確実に抑えて、Reを0nm以上10nm以下の範囲に小さくし、Reの湿度依存性を従来よりも小さくすることができる。
【0067】
なお、以上のように製造したフィルムの長手方向と幅方向とにおけるポリマー分子の配向の程度については、フィルムの長手方向と幅方向とにおける各音速を測定し、これらの値を用いて評価することができる。音速は、フィルムの弾性率と対応するものであり、ポリマーの分子鎖の配向が進むほどすなわち配向の程度が大きくなるほど、高くなるからである。そして、長手方向における音速VMと幅方向における音速VTとの比率(以下、音速比と称する)を求めることにより、フィルムの長手方向と幅方向とにおけるポリマー分子の配向の程度を評価することができる。
【0068】
なお、長手方向と幅方向とにおけるポリマー分子の配向の程度は、環境すなわち周辺空気の湿度や温度の変化によって変化する、すなわち湿度依存性や温度依存性があり、Reも湿度依存性や温度依存性がある。そこで、上記の製造方法により音速比VM/VTを1に近づけてポリマー分子のフィルム長手方向と幅方向とにおける各配向の程度をできるだけ等しくする、つまり、両配向の程度の比をできるだけ1に近づけることで、フィルム62のReの湿度依存性等を従来よりも低減することができる。
【0069】
Reの湿度依存性を低減するためには、長手方向の音速VMと幅方向の音速VTとの比(VM/VT)が、0.90以上1.10以下となるように、より好ましくは0.93以上1.07以下となるように、さらに好ましくは0.95以上1.05以下となるように、流延膜14の移動速度と湿潤フィルム13の搬送速度との比V2/V1を上記範囲で調整し、拡幅のタイミング及び倍率を上記範囲で調整する。なお、Re値自体も、長手方向と幅方向とにおけるポリマー分子の配向の各程度の比で変わるが、これについては添加剤やポリマーの結晶化状態を変えることによっても変化するので、Reの値と音速の値とは必ずしも対応しない場合がある。
【0070】
また、これに加え、アシル基化度2.8〜3.0のセルロースアシレートやレタデーション下降剤を使用することにより、ピンテンタでの拡幅率をより小さくしてもReを0nm以上10nm以下の範囲とすることができる。
【0071】
巻き取られるフィルム62の長さは100m以上とすることが好ましい。巻き取られるフィルム62の幅は600mm以上であることが好ましく、1300〜2500mm以下であることが好ましい。しかし、2500mmよりも幅が大きい場合でも本発明は適用される。また、本発明は、厚みが15μm以上100μm以下の薄いフィルムを製造する際にも本発明は適用される。フィルムの厚みとしては実用的には20〜120μmが好ましく、30〜90μmがより好ましく、35〜80μmがさらに好ましい。偏光子の保護フィルムとして用いる場合には、30〜65μmの厚みが特に好ましい。なお、以上の本発明の製造方法によると、ポリマーフィルムの厚みが薄いと特に効果がある。したがって、液晶ディスプレイの薄手化や軽量化、原料の使用量や廃棄量等の削減に効果がある。
【0072】
流延ダイ、減圧チャンバ、支持体などの構造、共流延、剥離法、延伸、各工程の乾燥条件、ハンドリング方法、カール、平面性矯正後の巻取り方法から、溶媒回収方法、フィルム回収方法まで、特開2005−104148号公報の[0617]段落から[0889]段落に詳しく記述されている。これらの記載は本発明に適用することができる。また、本発明のフィルム、特にセルロースアシレートフィルムの主な用途である、電子ディスプレイ用の光学部材である機能性保護膜やハロゲン化銀写真感光材料に用いる溶液流延製膜方法においては、溶液流延製膜装置の他に、下引層、帯電防止層、ハレーション防止層、保護層等のフィルムへの表面加工のために、塗布装置が付加されることが多い。これらについては、発明協会公開技報(公技番号 2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)にて25頁〜30頁に詳細に記載されており、流延(共流延を含む),金属支持体,乾燥,剥離などに分類され、本発明において好ましく用いることができる。
【0073】
[本発明のフィルムの特性と評価方法]
本発明のフィルムの評価方法および好ましい特性について述べる。
【0074】
(Re、Rth)
フィルムのRe、Rthは、市販されている自動複屈折率測定計やエリプソメーター等により測定できる。フィルムの評価及び測定は、以下の方法で実施した。
【0075】
製造したフィルムから試料30mm×40mmをサンプリングした。25℃、60%RHで2時間調湿し、Re(λ)は自動複屈折計KOBRA 21ADH(王子計測機器(株))製)を用いて、波長λnmの光をフィルム法線方向に入射させて測定した。また、Rth(λ)は、前記Re(λ)、面内の遅相軸を傾斜軸としてフィルム法線方向に対して+40°傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて測定したレタデーション値、および面内の遅相軸を傾斜軸としてフィルム法線方向に対して−40°傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて測定したレタデーション値、の合計3つの方向で測定したレタデーション値を基に、平均屈折率の仮定値1.48および膜厚を入力し、算出した。
【0076】
Re、Rthの湿度依存性については、フィルムを、該当する湿度で3時間以上調湿を行ったのち測定した。本発明においては、25℃10%(相対湿度)と、25℃80%(相対湿度)での測定を行い、そのRe、Rthの変化にて評価している。
【0077】
(音速、および(長手方向における配向の程度)/(幅方向における配向の程度)で求める比)
製造したフィルムの長手方向と幅方向のポリマー分子の配向の各程度については、フィルムの音速を測定することにより評価する。フィルムの音速の具体的な測定方法としては、NOMURA製音速測定装置“SST−110”を用い、25℃、55%RHの雰囲気中で6時間以上調湿したフィルムについて、25℃、55%RHの雰囲気にて、長手方向及び幅方向の音速を測定し、それらの比を求める。
【0078】
[フィルム]
本発明によりReが0nm以上10nm以下のフィルムが得られ、さらには0nm以上5nm以下のフィルムをも得られる。
【0079】
本発明により、長手方向と幅方向のポリマーの各配向の程度、すなわち配向度を、互いに等しくすることができるため、Re及びReの湿度依存性を従来のフィルムよりも小さくすることができる。さらに、セルロースアシレートの置換度や、レタデーション下降剤、特にポリエステルジオールの添加及び添加量、等により、ピンテンタでの拡幅率をより小さくしてもRe及びReの湿度依存性を小さくすることができる。また、Reは、フィルムの厚みを薄くすることで小さくすることができる。
【0080】
[その他のフィルム特性]
その他、本発明のフィルムの好ましい態様を以下に記載する。
【0081】
(フィルムの厚さ)
本発明のポリマーフィルムの厚さは10〜100μmが好ましく、20〜80μmがより好ましい。液晶パネルに貼合する偏光子保護フィルムとして用いる場合は、20〜65μmであると温湿度変化に伴うパネルの反りが小さく特に好ましい。
【0082】
(フィルムのヘイズ)
本発明のポリマーフィルムのヘイズは0.01〜2.0%であることがのぞましい。よりのぞましくは0.05〜1.5%であり、0.1〜1.0%であることがさらにのぞましい。光学フィルムとしてフィルムの透明性は重要である。ヘイズの測定は、製造したフィルムから試料40mm×80mmをサンプリングして、25℃,60%RHでヘイズメーター(HGM−2DP、スガ試験機)を用いてJIS K−6714に従って測定することができる。
【実施例1】
【0083】
下記の処方のセルロースアシレートドープ12をつくった。
セルローストリアセテート(置換度2.86、粘度平均重合度306%、ジクロロメタン溶液6質量%の粘度 315mPa・s) 100重量部
ジクロロメタン(溶媒の第1成分) 320重量部
メタノール(溶媒の第2成分) 83重量部
1−ブタノール(溶媒の第3成分) 3重量部
トリフェニルフォスフェート 7.6重量部
ビフェニルジフェニルフォスフェート 3.8重量部
化1に示す紫外線吸収剤 0.3重量部
化2に示す紫外線吸収剤 0.7重量部
微粒子(二酸化ケイ素(平均粒径15nm)、モース硬度 約7) 0.05重量部
【0084】
【化1】

【0085】
【化2】

【0086】
ドープ12を用いて、溶液製膜設備11によりフィルム62をそれぞれ製造する実験1〜実験3を実施した。実験1〜実験3では、それぞれ、表1に示すように製造条件を設定した。なお、いずれも、剥ぎ取り時における流延膜14の溶媒残留率は280重量%である。そして、得られたフィルム62は、いずれも厚みは80μm、幅は1500mmであり、製造過程においては耳切装置67により側端部を除去されたものである。また、これらの条件を表1に示すように変えて、比較実験1,比較実験2を実施した。そして、ReとReの湿度依存性とについて評価した。表1の欄はそれぞれ以下の内容を表す。なお、いずれの実験も、拡幅によりフィルムが裂けるようなことは無かったが、比較実験のうち比較実験2は、溶剤残留率が100重量%よりも小さくなってからも拡幅を続けたためにフィルムが裂けてしまった。従って、比較実験2のVM/VT、Re、Reの湿度依存性、Rthは評価できず、表1においては「−」と記載する。
「V2/V1」;(流延膜の移動速度)/(湿潤フィルムの搬送速度)の値
「L2/L1」;拡幅率
「VM」 ;長手方向の音速(単位:m/秒)
「VT」 ;幅方向の音速(単位:m/秒)
【0087】
【表1】

【0088】
本発明の範囲である実験1〜3の各フィルムは、比較実験1のフィルムと比べて、VM/VTが1に近く、フィルムの長手方向と幅方向とにおけるポリマー分子の各配向度の比が1に近い、すなわち異方性が低いことがわかる。そして、実験1〜3の各フィルムは、比較実験1のフィルムと比べてReやRe湿度依存性がより小さい良好な結果を示した。なお、本実施例1における実験1〜3の条件は、溶液製膜方法におけるフィルム製造速度としては非常に高いものである。
【実施例2】
【0089】
実施例1のドープ12を下記の処方のドープ12に変えた。
セルローストリアセテート(置換度2.86、粘度平均重合度306、ジクロロメタン溶液6質量%の粘度 315mPa・s) 100重量部
ジクロロメタン(溶媒の第1成分) 320質量部
メタノール(溶媒の第2成分) 83質量部
1−ブタノール(溶媒の第3成分) 3質量部
アジピン酸/エチレングリコールのポリエステルポリオール(平均重合度は2000)
12重量部
化3に示す紫外線吸収剤 1.8重量部
微粒子(二酸化ケイ素(平均粒径15nm)、モース硬度 約7) 0.05重量部
【0090】
【化3】

【0091】
ドープ12を用いて、溶液製膜設備11によりフィルム62をそれぞれ製造する実験1〜実験3を実施した。実験1〜実験3では、それぞれ、表2に示すように製造条件を設定した。なお、いずれも、剥ぎ取り時における流延膜14の溶媒残留率は230重量%である。そして、得られたフィルム62は、いずれも厚みは60μm、幅は2000mmであり、製造過程においては耳切装置67により側端部を除去されたものである。また、これらの条件を表1に示すように変えて、比較実験1を実施した。そして、ReとReの湿度依存性とについて評価した。表2の欄はそれぞれ以下の内容を表す。なお、いずれの実験及び比較実験も、拡幅によりフィルムが裂けるようなことは無かった。
【0092】
【表2】

【0093】
本発明の範囲である実験1〜3の各フィルムは、比較実験1のフィルムと比べて、VM/VTが1に近く、フィルムの長手方向と幅方向とにおけるポリマー分子の各配向度の比が1に近い、すなわち異方性が低いことがわかる。そして、実験1〜3の各フィルムは、比較実験1のフィルムと比べてReやRe湿度依存性がより小さい良好な結果を示した。さらに、本実施例2の実験1〜3の各フィルムは、実施例1の実験1〜3と比べて、ポリエステルポリオールを含むためにRthがより低く、厚み方向における光学異方性も小さい。また、本実施例2実験1〜3のフィルムは60μmであり、実施例1実験1〜3のフィルムと比べて20μmも薄いにも関わらず、流延ドラム82からの剥ぎ取り時や、拡幅時で裂けることなく、高速の上記製造条件で得られたことがわかる。したがって、本発明の方法は生産性に非常に優れることがわかる。
【実施例3】
【0094】
(液晶表示装置にフィルムを実装した場合の評価)
実施例1の実験2、実施例2の実験2、実施例1の比較実験1のフィルムを各2枚、それぞれ、けん化して偏光膜に各面に1枚ずつ接着し、3種類の偏光板を作製した。そして、各偏光板をIPS型液晶表示装置に実装した。表示ムラが生じるか否かにについては、画像を黒表示にしてこの状態を3時間継続した時点で、画像を斜め方向から観察して、明るさのムラの有無を目視で評価することで実施した。また、3時間の黒表示の開始時点と終了時点との画像の色味を目視でそれぞれ観察し、色味変化があったか否かを評価した。前者の結果を表3の「表示ムラ」欄に示し、後者の結果を表3の「色味」欄に示す。
【0095】
表3の「表示ムラ」に示す各評価結果は、以下の意味である。
「○」:ムラが認められない
「×」:ムラが認められ、このムラが表示装置から1m離れた位置からでも認められた
【0096】
表3の「色味」に示す各評価結果は、以下の意味である。
「○」:色味の変化が認められない
「△」:色味の変化がわずかに認められる程度で、許容できるレベル
「×」:色味の変化が明らかに認められる
【0097】
【表3】

【0098】
実施例1の比較実験1のフィルムはReとReの湿度依存性とが共に大きいため、液晶表示装置の表示時の温度上昇に伴う湿度変化により、フィルム中の水分量が変化し、これによりReが大きく変化し、表示ムラが発生したり色味が良好とはいえない結果となった。これに対し、実施例1の実験2と実施例2の実験2のフィルムを用いた液晶表示装置では、表示ムラや色味の評価結果が比較実験1のフィルムと比べていずれも良好であった。なお、Rthも低い実施例2の実験2のフィルムを使った液晶表示装置では、実施例1の実験2のフィルムと比べても色味がさらに良好であった。
【0099】
以上のように本発明のフィルムの製造方法により、ReとReの湿度依存性とが共に小さいフィルムを生産性高く製造することができる。また、本発明のフィルムにより、液晶表示装置に使用した際の表示ムラの発生が抑制され、画像の色味の変化が従来よりもなくなる。このように、本発明により、液晶表示装置における表示特性が良好なフィルムを生産性高く製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0100】
【図1】本発明を実施した溶液製膜設備の概略図である。
【図2】ピンテンタにおけるフィルムの説明図である。
【符号の説明】
【0101】
13 湿潤フィルム
14 流延膜
62 フィルム
64 ピンテンタ
69 乾燥室

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマーが溶剤に溶解したドープを、回転しているドラムの周面上に連続流延して流延膜を形成する流延膜形成工程と、この流延膜を冷却して固化し、前記ドラムから湿潤フィルムとして剥ぎ取る剥ぎ取り工程と、前記湿潤フィルムの両側端部を保持して走行する保持手段と前記湿潤フィルムを乾燥する第1乾燥手段とを備えるテンタにより、前記湿潤フィルムを搬送しながら乾燥し、前記湿潤フィルムに対して幅方向に張力を付与する第1乾燥工程と、前記第1乾燥工程後の前記湿潤フィルムを複数のローラにより支持しながら第2乾燥手段により乾燥してポリマーフィルムとする第2乾燥工程と、を有するポリマーフィルムの製造方法において、
前記流延膜の移動速度V1と、前記テンタにおける前記湿潤フィルムの搬送速度V2との比V2/V1を1.01以上1.3以下の範囲とし、
前記第1乾燥工程では、溶剤残留率が100重量%に達するまでに、前記張力の付与により、前記保持手段による保持の開始時における前記流延膜の幅の1.01倍以上1.30倍以下の範囲となるように前記湿潤フィルムの幅を拡げることを特徴とするポリマーフィルムの製造方法。
【請求項2】
前記ポリマーは、アシル基置換度が2.8以上3.0以下の範囲であるセルロースアシレートであることを特徴とする請求項1記載のポリマーフィルムの製造方法。
【請求項3】
前記ドープは、前記セルロースアシレートに対して5重量%以上30重量%以下のポリエステルポリオールを含むことを特徴とする請求項2記載のポリマーフィルムの製造方法。
【請求項4】
セルロースアシレートと溶媒とを含むドープを流延して乾燥する溶液製膜によって長尺状につくられ、
長手方向における音速VMと幅方向における音速VTとの比VM/VTが0.9以上1.1以下であり、
前記セルロースアシレートに対して5重量%以上30重量%以下のポリエステルポリオールを含むことを特徴とするセルロースアシレートフィルム。
【請求項5】
前記セルロースアシレートは、アシル基置換度が2.8以上3.0以下の範囲であることを特徴とする請求項4記載のセルロースアシレートフィルム。
【請求項6】
前記セルロースアシレートフィルムの面での屈折率のうち最も大きい屈折率となる方向としてのX軸における屈折率をNx、前記面内でX軸と垂直に交差するY軸における屈折率をNy、前記セルロースアシレートフィルムの厚みをdとするときに、(Nx−Ny)×dで求める面方向レタデーションReが0nm以上10nm以下の範囲であることを特徴とする請求項4または5記載のセルロースアシレートフィルム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−30099(P2010−30099A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−193400(P2008−193400)
【出願日】平成20年7月28日(2008.7.28)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】