説明

ポリマーポリオール及びポリウレタン樹脂の製造方法

【課題】従来のポリマーポリオールを用いたポリウレタン樹脂では、車両座席用クッション材として必要とされる機械的強度を保ち、より低密度にするには限界がある。
【解決手段】重合体粒子がポリオール(PL)中に含有されてなるポリマーポリオールにおいて、(PL)の分子末端水酸基に基づく1級OH化率が70〜100モル%で、(PL)のオキシエチレン単位の含有量が(PL)の重量に基づいて0.1〜20重量%で、(PL)が活性水素1個あたりのエチレンオキサイドの平均付加モル数xが1級OH化率yとxが10未満のとき下記式(1)、10〜20のとき下記式(2)の関係を満たす、炭素数2以上の1,2−アルキレンオキサイドを主体とするアルキレンオキサイドが活性化水素にランダム及び/又はブロック付加されてなるポリエーテルポリオールであるポリマーポリオール。
y≧42x0.47(1−x/41) (1)
y≧0.328x+90.44 (2)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポリマーポリオール及びポリウレタン樹脂の製造方法に関する。さらに詳しくは、車両座席用のクッション等の原料として好適な、イソシアネートとの反応性に優れ、優れた機械物性をポリウレタン樹脂に付与するポリマーポリオール及びこれを使用するポリウレタン樹脂の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ポリウレタン樹脂の製造に用いるポリマーポリオールとしては、ポリウレタン樹脂の機械物性向上を目的に、特定の官能基数、水酸基価及び末端のポリオキシエチレン含量を有する複数のポリオールを特定の比率で含有するポリオール中でエチレン性不飽和化合物を重合させてなるポリマーポリオール(例えば特許文献1参照)、及び特定の水酸基価のポリオール中でエチレン性不飽和化合物を重合させてなるポリマーポリオール(例えば特許文献2参照)等が知られている。
【特許文献1】特開平3−81314号公報
【特許文献2】特開2003−226734号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、従来の上記ポリマーポリオールを用いたポリウレタン樹脂では、車両座席用クッション材として必要とされる機械的強度を保ち、かつ、より低密度にするには限界がある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは、上記の問題点を解決するべく鋭意検討を重ねた結果、本発明に到達した。
すなわち本発明は、エチレン性不飽和化合物(E)を構成単位とする重合体粒子(JR)がポリオール(PL)中に含有されてなるポリマーポリオールにおいて、(PL)の分子末端水酸基に基づく1級OH化率が70〜100モル%で、(PL)のオキシエチレン単位の含有量が(PL)の重量に基づいて0.1〜20重量%で、かつ、(PL)が活性水素1個あたりのエチレンオキサイドの平均付加モル数xが1級OH化率yとxが10未満のとき下記式(1)、10〜20のとき下記式(2)の関係を満たす、炭素数2以上の1,2−アルキレンオキサイドを主体とするアルキレンオキサイドが活性化水素にランダム及び/又はブロック付加されてなるポリエーテルポリオールであるポリマーポリオール(A);
y≧42x0.47(1−x/41) (1)
y≧0.328x+90.44 (2)
並びに、ポリオール成分とイソシアネート成分とを反応させてポリウレタン樹脂を製造する方法において、ポリオール成分がこのポリマーポリオールをポリオール成分の重量を基準として10〜100重量%含有するポリウレタン樹脂の製造方法である。
【発明の効果】
【0005】
本発明のポリマーポリオール(A)及びこれを使用したポリウレタン樹脂の製造方法は下記の効果を奏する。
(1)本発明のポリマーポリオールを使用して製造したポリウレタン樹脂は、機械的強度に優れる。
(2)本発明のポリマーポリオールを使用して製造したポリウレタン樹脂は、機械的強度に優れるので、低密度なポリウレタン樹脂を成形しても車両座席用クッション材として必要とされる機械的強度を保つことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明におけるポリマーポリオールとは、エチレン性不飽和化合物(E)を構成単位とする重合体微粒子(JR)がポリオール(PL)中に含有されてなるものである。エチレン性不飽和化合物(E)としては、スチレン(以下Stと略記)、アクリロニトリル(以下、ACNと略記)、その他のエチレン性不飽和モノマー(e)等が使用できる。
【0007】
(JR)を構成する(E)の重量に基づくACNの割合(重量%)は、粗大粒子の含有量低減及びポリマーポリオールの着色の観点から、40〜97が好ましく、さらに好ましくは55〜90、次にさらに好ましくは60〜80である。
【0008】
(JR)を構成する(E)の重量に基づくStの割合(重量%)は、ポリマーポリオールの着色低減及び粗大粒子の含有量の観点から、60以下が好ましく、さらに好ましくは6〜45、最も好ましくは15〜40である。
【0009】
ACNとStとの重量比(ACN:St)は、粗大粒子の含有量及びポリマーポリオールの着色低減の観点から97:0〜40:60が好ましく、さらに好ましくは90:6〜55:45、最も好ましくは80:15〜60:40である。
【0010】
その他のエチレン性不飽和モノマー(e)としては、炭素数(以下Cと略記)2以上かつ数平均分子量[以下Mnと略記。測定はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法による。]1,000未満のもので、St及び/又はACNと共重合可能であれば特に制限はなく、下記に示す1官能のもの[不飽和ニトリル(e1)、芳香環含有モノマー(e2)、(メタ)アクリレート(e3)、その他のエチレン性不飽和モノマー(e4)]及び多官能(2官能またはそれ以上)モノマー(e5)等が使用できる。これらは単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0011】
(e1)としては、C4〜10、例えばメタクリロニトリルが挙げられる。
(e2)としては、C8〜14、例えばα−メチルスチレン、ヒドロキシスチレン、クロルスチレンが挙げられる。
(e3)としては、C4〜27、例えばメチル、ブチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、オクタデシル、エイコシル及びドコシル(メタ)アクリレート等のアルキル(アルキル基がC1〜24)(メタ)アクリレート;ヒドロキシポリオキシアルキレン(アルキレン基がC2〜8)モノ(メタ)アクリレートが挙げられる。
なお、(メタ)アクリレートとは、アクリレート及び/又はメタアクリレートを意味し、以下における(メタ)アクリル酸、(メタ)アリル等も同様であり、以下同様の表記法を用いる。
【0012】
その他のエチレン性不飽和モノマー(e4) としては、C2〜24、例えば(メタ)アクリル酸等の不飽和カルボン酸;エチレン、プロピレンなどの脂肪族炭化水素モノマー;パーフルオロオクチルエチルメタクリレート、パーフルオロオクチルエチルアクリレート等のフッ素含有(メタ)アクリレート;ジアミノエチルメタクリレート、モルホリノエチルメタクリレート等の不飽和ニトリル以外の窒素含有モノマー;ビニル変性シリコーン;が挙げられる。
【0013】
多官能モノマー(e5)としては、C10〜40、例えば、2官能[ジビニルベンゼン、エチレンジ(メタ)アクリレート、ポリアルキレンオキサイドグリコールジ(メタ)アクリレート等]、3官能[ペンタエリスリトールトリアリルエーテル、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等]及び4官能[ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等]モノマー;ノルボルネン、シクロペンタジエン、ノルボルナジエン等の環状−オレフィン又はジエン化合物が挙げられる。
【0014】
(e1)〜(e5)のうち、ポリマーポリオールの粘度及びポリウレタン樹脂の物性の観点から(e3)、(e5)が好ましい。
【0015】
(JR)を構成する(E)の重量に基づく前記その他のエチレン性不飽和モノマー(e)の割合(重量%)は、60以下が好ましく、ポリマーポリオールの粘度、分散安定性及びポリウレタンの物性の観点から、さらに好ましくは0.01〜30、次にさらに好ましくは0.05〜20、とくに好ましくは0.1〜15、最も好ましくは0.2〜10である。
【0016】
重合体粒子(JR)の形状は特に限定なく、球状、回転楕円体状、平板状等いずれの形状でもよいが、ポリウレタン樹脂の機械物性の観点から、球状が好ましい。
【0017】
(JR)のメジアン(μm)は、ポリマーポリオールの粘度及びポリウレタン樹脂物性の観点から0.1〜0.55が好ましく、さらに好ましくは0.2〜0.5、特に好ましくは0.3〜0.47である。なお、メジアン径は、体積頻度の50%に相当する粒子径であり、レーザー回析/散乱式粒度分布測定装置により測定される0.040〜262μmの範囲を65分割した際の粒度分布の体積基準によるものである。
【0018】
本発明におけるポリオール(PL)には、下記一般式(1)で表される1級水酸基含有分子末端を有するポリオール(PL1)及びそれ以外のポリオール(PL2)が含まれる。
(PL1)は、活性水素含有化合物のAO付加物であって、末端の活性水素にC3以上の1,2−アルキレンオキサイド(以下1,2−AOと略記)が付加されてなり、下記一般式(1)で表される1級水酸基含有分子末端を有するポリオールである。
【0019】
【化1】

【0020】
式中、Rはハロゲン原子で置換されていてもよいC1〜10の炭化水素基を表す。
一般式(1)中のRの具体例としては、直鎖アルキル基(メチル、エチルおよびプロピル基等)、分岐アルキル基(イソプロピル及び2−エチルヘキシル基等)、(アルキル置換)フェニル基(フェニル及びp−メチルフェニル基等)、ハロゲン原子置換アルキル基(クロロメチル、ブロモメチル、クロロエチル及びブロモエチル基等)、ハロゲン原子置換フェニル基(p−クロロ−及びp−ブロモフェニル基等)、およびこれらの2種以上の併用が挙げられる。
【0021】
活性水素含有化合物としては、後述の活性水素含有化合物と同様である。
C3以上の1,2−AOとしては、前述のAOのうちC3〜12又はそれ以上の1,2−AOが含まれる。具体的には、プロピレンオキサイド(以下、POと略記)、1,2−ブチレンオキサイド、C5〜12のα−オレフィンオキサイド、置換AO(スチレンオキサイド、エピハロヒドリン等)等が挙げられる。これらのうち、ポリマーポリオールの粘度及びポリウレタン樹脂の機械物性の観点からPO、1,2−ブチレンオキサイド、C5〜12のα−オレフィンオキサイド、スチレンオキサイド、エピクロロヒドリンが好ましく、さらに好ましくはPO、1,2−ブチレンオキサイド、C5〜12のα−オレフィンオキサイド、特に好ましくはPO、1,2−ブチレンオキサイド、最も好ましくはPOである。
【0022】
(PL1)のOH当量及びMnの好ましい範囲は、後述する(PL)と同様である。
【0023】
(PL1)は、特定の触媒(α)の存在下で、活性水素含有化合物に1,2−AOを付加することにより製造できる。
(α)としては、特開2000−344881号公報等に記載のものが挙げられ、具体的には、フッ素原子、(置換)フェニル基及び/又は3級アルキル基が結合したホウ素若しくはアルミニウム化合物であり、例えば、ホウ素化合物では、トリフェニルボラン、ジフェニル−t−ブチルボラン、トリ(t−ブチル)ボラン、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン、ビス(ペンタフルオロフェニル)−t−ブチルボラン、アルミニウム化合物では、トリフェニルアルミニウム、ジフェニル−t−ブチルアルミニウム、トリ(t−ブチル)アルミニウム、トリス(ペンタフルオロフェニル)アルミニウム、ビス(ペンタフルオロフェニル)−t−ブチルアルミニウムが挙げられる。
これらのうち1級水酸基含有分子末端の生成及びAO付加の反応速度の観点からトリフェニルボラン、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン、トリフェニルアルミニウム、トリス(ペンタフルオロフェニル)アルミニウムが好ましく、さらに好ましくはトリス(ペンタフルオロフェニル)−ボラン及び−アルミニウムである。
AOの付加条件についても上記公報等に記載の条件と同様でよく、例えば、生成する開環重合体の重量に対して、通常0.0001〜10%、AO付加の反応速度及びポリウレタン樹脂を製造する際の反応性の観点から好ましくは0.001〜1%の上記触媒を用い、通常0〜250℃、AO付加の反応速度及びポリウレタン樹脂の機械物性の観点から好ましくは20〜180℃で反応させて行うことができる。
【0024】
上記の1,2−AO付加物に、さらにエチレンオキサイド(以下、EOと略記する)を付加させることでさらに1級OH化率の大きなポリオールが得られ、これを(PL1)として使用することもできる。このポリオールを使用することは、EO付加させる前のポリオールの1級OH化率が通常40%以上、好ましくは60%以上、さらに好ましくは70%以上と極めて大きいため、少ないEO使用量で1級OH化率を大きくでき、ポリオール(PL)のxとyが後述の関係を満足するものが得られやすく好ましい。なお、上記EO付加に用いる触媒は、前記のホウ素もしくはアルミニウム化合物をそのまま用いても、それに代えて通常使用される他の触媒などを用いてもよい。
他の触媒としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化セシウム、炭酸カリウム、トリエチレンジアミンなどの塩基性触媒;三フッ化ホウ素、塩化スズ、トリエチルアルミニウム、へテロポリ酸などの酸触媒;亜鉛ヘキサシアノコバルテート;フォスファゼン化合物等が挙げられる。これらの中では塩基性触媒が好ましい。触媒の使用量は特に限定されないが、生成する重合体に対して、好ましくは0.0001〜10重量%、さらに好ましくは0.001〜1重量%である。
【0025】
ポリオール(PL2)としては、(PL1)以外で、ポリマーポリオールの製造に用いられる公知のポリオール(例えば特開2005−162791号公報、特開2004−018543号公報、特開2006−016611号公報等に記載のもの)等が使用できる。
(PL2)の具体例としては、例えば、少なくとも2個(好ましくは2〜8個)の活性水素含有化合物(多価アルコール、多価フェノール、アミン、ポリカルボン酸、リン酸等)のAO付加物およびこれらの混合物が挙げられる。これらのうちポリウレタン樹脂の機械物性の観点から好ましいのは多価アルコールのAO付加物である。
【0026】
上記AOには前記のものが含まれる。これらのAOのうちポリウレタン樹脂の機械物性の観点からC2〜8が好ましく、さらに好ましくはEO、PO、1,2−、2,3−及び1,3−ブチレンオキサイド、テトラヒドロフラン、スチレンオキサイド及びこれらの2種以上の併用(ブロック付加及び/又はランダム付加)、特に好ましくは、PO又はPOとEOとの併用[EO含量が(PL)の重量に基づいて20%以下、好ましくは15%以下、さらに好ましくは5〜10%]である。
【0027】
上記AO付加物の具体例としては、公知の活性水素含有化合物(特開2005−162791号公報等)のPO付加物およびPOと他のAO(好ましくはEO)を下記の様式で付加したもの、およびこれらの付加物とポリカルボン酸もしくはリン酸とのエステル化物等が挙げられる。
(1)(POブロック)−(他のAOブロック)の順序でブロック付加したもの
(2)[(POブロック)−(他のAOブロック)]2の順序でブロック付加したもの
(3)(他のAOブロック)−(POブロック)−(他のAOブロック)の順序でブロック付加したもの
(4)(POブロック)−(他のAOブロック)−(POブロック)の順序でブロック付加したもの
(5)POおよび他のAOをランダム付加したもの
(6)米国特許第4226756号明細書記載の順序でランダムおよびブロック付加したもの。
【0028】
(PL2)のOH当量及びMnの好ましい範囲は、後述する(PL)と同様である。
【0029】
(PL)のOH当量(JIS K1557−1:2007に準じて求められる水酸基価(mgKOH/g)を用いて、OH当量=56,100÷水酸基価で求められる)は、ポリマーポリオールの粘度及びポリウレタン樹脂の機械物性の観点から好ましくは500〜1,800、さらに好ましくは800〜1,600である。とくに好ましくは1,000〜1,500である。
【0030】
(PL)のMnは、ポリウレタン樹脂の機械物性およびポリマーポリオールの粘度、取り扱い性の観点から好ましくは500〜10,200、さらに好ましくは1,000〜8,500、とくに好ましくは1,500〜6,800である。
【0031】
(PL)のオキシエチレン単位の含有量(重量%)は、(PL)の重量に基づいて0.1〜20であり、0.1〜15が好ましく、さらに好ましくは1.2〜14、次にさらに好ましくは2〜13、特に好ましくは5〜10である。該(PL1)の割合が0.1重量%未満では(PL)の反応性及び得られるポリウレタン樹脂の機械物性(湿熱圧縮歪み)が悪くなり、20重量%を超えるとポリウレタン樹脂の成形性が悪くなる。
【0032】
ポリオール(PL)の活性水素1個あたりのEOの平均付加モル数xは、ウレタン樹脂物性と機械的強度の観点から20以下が好ましく、より好ましくは15以下、さらに好ましくは12以下、最も好ましくは10以下である。
ポリオール(PL)の分子末端水酸基に基づく1級OH化率y(%)は、70〜100モル%かつxとy(%)はxが10未満のとき下記式(1)、xが10〜20のとき下記式(2)の関係を満たす。
y≧42x0.47(1−x/41) (1)
y≧0.328x+90.44 (2)
また、xとy(%)はxが7以下のとき、下記式(1)’の関係を満たすのが好ましく、下記式(1)’’の関係を満たすのがさらに好ましい。
y≧45x0.47(1−x/41) (1)’
y≧47x0.47(1−x/41) (1)’’
xとy、およびxとyの関係が上記の範囲内であると、疎水性と反応性が共に良好である。
そのxとyとの関係が上記式(1)及び(2)を満たすように調整する方法としては、ポリオール(PL)として前述した特定の触媒(α)の存在下で活性水素含有化合物にAOを付加しさらにEOを付加させる方法で得られるポリオールを使用することが好ましい。
【0033】
ここにおいて、該1級OH化率は、予め(PL)をエステル化して処理した後に1H−NMR分析法により求められる。1H−NMR法の詳細を以下に具体的に説明する。
<試料調製法>
測定試料約30mgを直径5mmの1H−NMR用試料管に秤量し、約0.5mlの重水素化溶媒を加え溶解させる。その後、約0.1mlの無水トリフルオロ酢酸を添加し25℃で約5分間放置して、ポリオールをトリフルオロ酢酸エステルとし、分析用試料とする。
ここで重水素化溶媒とは、重水素化クロロホルム、重水素化トルエン、重水素化ジメチルスルホキシド、重水素化ジメチルホルムアミド等であり、試料を溶解させることのできる溶媒を適宜選択する。
【0034】
<NMR測定>
通常の条件で 1H−NMR測定を行う。
<分子末端水酸基に基づく1級OH化率の計算方法>
1級水酸基の結合したメチレン基由来の信号は4.3ppm付近に観測され、2級水酸基の結合したメチン基由来の信号は5.2ppm付近に観測されるから、末端水酸基の1級OH化率は下記の式により算出する。
1級OH化率(%)=[r/(r+2q)]×100
ただし、
r:4.3ppm付近の1級水酸基の結合したメチレン基由来の信号の積分値
q:5.2ppm付近の2級水酸基の結合したメチン基由来の信号の積分値
である。
【0035】
ポリオール(PL)の総不飽和度tとOH当量sとについて、ポリウレタン樹脂の機械的強度及び機械物性の観点から、sが500〜1,800であり、かつ、下記式(3)の関係を満たすことが好ましい。
t≦3×10-5s−0.0006 (3)
【0036】
ここにおいて、総不飽和度tは、ポリオール(PL)を製造するときに起こる副反応により生成する不飽和基含有生成物に由来するものである。
総不飽和度tは、無水トリフルオロ酢酸(TFA)でアセチル化処理したポリエーテル及びアセチル化処理をしないポリエーテルをそれぞれ1H−NMR測定し、JIS K1557−3:2007記載の方法で求められ、その単位はmeq/gである。
【0037】
(PL)の製造時に生成する不飽和基含有生成物は、PO付加の反応に伴い生成するものである。よって、(PL)において総不飽和度が大きいことは、(PL)が製造途中で副反応により一部の分子の水酸基数が低下し、それ故に1分子当たりの水酸基数が分布を持つことを意味する。すなわち、1分子当たりのAO付加モル数が分布を持ち、PLの分子量分布を広げてしまうことを意味する。総不飽和度が低いほどポリウレタン樹脂の機械強度が優れる傾向にある。
【0038】
したがって、上記式(3)の意味することは、OH当量に対して不飽和度が特定の値以下であることを意味し、すなわち(PL)のOH当量に対して(PL)の分子量分布が広くないことを意味する。
【0039】
ポリオール(PL)が上記式(3)を満たすには、(PL1)の使用量を大きくすることが好ましい。
【0040】
ポリオール(PL)が上記式(3)を満たすには、(PL)を特定の触媒(α)の存在下で活性水素含有化合物に1,2−AOを付加することにより製造することが好ましい。
【0041】
ポリマーポリオール(A)中の重合体粒子(JR)の含有量(重量%)は(A)の重量に基づいて、ポリウレタン樹脂の機械物性及び(JR)の凝集防止の観点から、20〜60が好ましく、さらに好ましくは25〜58、特に好ましくは30〜55である。なお、(A)中の(JR)の含有量は、後述する方法で測定される。
【0042】
<重合体粒子(JR)の含有量>
SUS製遠心分離用50ml遠沈管に、ポリマーポリオール約5gを精秤し、ポリマーポリオール重量(W1)とする。メタノール15gを加えて希釈する。冷却遠心分離機[型番:GRX−220、トミー精工(株)製]を用いて、18,000rpm×60分間、20℃にて遠心分離する。上澄み液をガラス製ピペットを用いて除去する。残留沈降物にメタノール15gを加えて希釈し、上記と同様に遠心分離して上澄み液を除去する操作を、さらに3回繰り返す。遠沈管内の残留沈降物を、2,666〜3,999Pa(20〜30torr)で60℃×60分間減圧乾燥し、乾燥した沈降物を重量測定し、該重量を(W2)とする。次式で算出した値を、重合体粒子含有量(重量%)とする。

重合体粒子含有量(重量%)=(W2)×100/(W1)
【0043】
(A)中のポリオール(PL)の含有量(重量%)は、(JR)の凝集防止およびポリウレタン樹脂の機械物性の観点から、40〜80が好ましく、さらに好ましくは42〜75、最も好ましくは45〜70である。
【0044】
(A)の粘度(mPa・s)は、成形性の観点から、1,250〜12,000が好ましく、さらに好ましくは1,500〜10,000、最も好ましくは2,500〜8,000である。
【0045】
本発明のポリマーポリオール(A)は、ポリウレタン樹脂の成形性の観点から、ポリマーポリオール中の重合体粒子(JR)の含有量v(重量%)とポリマーポリオールの粘度w(mPa・s)が下記式(4)及び(5)を満たすことが好ましく、さらに好ましくは式(4)及び(6)を満たすことである。
w≧250v−5000 (4)
w≦450v−8400 (5)
w≦450v−8600 (6)
なお、ポリマーポリオールの粘度は、ブルックフィールド型粘度計を用いて、25℃でJIS K1557−5:2007記載の方法により測定される。
【0046】
上記の、粘度と含有量の関係を満たすようするためには使用するPLのOH当量が、500〜1,800であることが好ましく、さらに好ましくは800〜1,600である。とくに好ましくは1,000〜1,500である。
【0047】
(A)の製造方法には下記(1)、(2)の製造方法が含まれる。
(1)(PL)中でエチレン性不飽和化合物(E)を重合させて製造する方法。
(2)エチレン性不飽和化合物(E)を重合させて(JR)を製造した後に、(JR)を(PL)中に分散させて製造する方法。
【0048】
上記(1)の製造方法は、ポリオール(PL)からなる分散媒中で、エチレン性不飽和化合物(E)を重合させる方法である。
重合方法としては、ラジカル重合、配位アニオン重合、メタセシス重合およびディールス・アルダー重合等が挙げられるが、工業的な観点から好ましいのはラジカル重合である。
【0049】
ラジカル重合法としては、種々の方法、例えば分散剤(D)を含む(PL)中で、(E)をラジカル重合開始剤(K)の存在下に重合させる方法(例えば米国特許第3383351号等に記載の方法)等が使用できる。
【0050】
分散剤(D)としては、Mnが1,000以上(分散性の観点から好ましくは1,100〜10,000)の種々のもの、例えばポリマーポリオールの製造で使用される公知の分散剤(例えば特開2005−162791号公報等に記載のもの)等を使用することができ、(D)には、エチレン性不飽和化合物(E)と共重合し得るエチレン性不飽和基を有する反応性分散剤、および(E)とは共重合しない非反応性分散剤が含まれる。
なお本発明において、エチレン性不飽和基を有する反応性分散剤はMn1,000以上であり、Mnが1,000未満の前記その他のエチレン性不飽和モノマー(e)とは区別される。
【0051】
(D)の具体例としては、
〔1〕ポリオール(PL)とエチレン性不飽和化合物を反応させたマクロマータイプの反応性分散剤
エチレン性不飽和基を有する変性ポリエーテルポリオール(例えば特開平08−333508号公報に記載のもの)等;
〔2〕ポリオールとオリゴマーを結合させたグラフトタイプの非反応性分散剤
(PL)との溶解度パラメーターの差が1.0以下の、(PL)親和性セグメント2個以上を側鎖、(E)の重合体との溶解度パラメーターの差が2.0以下の重合体粒子(JR)親和性セグメントを主鎖とするグラフト型重合体(例えば特開平05−059134号公報に記載のもの)等;
〔3〕高分子量ポリオールタイプの非反応性分散剤
(PL)の水酸基の少なくとも一部をメチレンジハライドおよび/またはエチレンジハライドと反応させて高分子量(平均分子量1000〜60,000)化した変性ポリオール(例えば特開平07−196749号公報に記載のもの)等;
〔4〕オリゴマータイプの反応性分散剤
1,000〜30,000の重量平均分子量(以下Mwと略記)[測定はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法による。]を有し、少なくとも一部が(PL)に可溶性であるビニルオリゴマーおよび該オリゴマーと前記〔3〕の高分子量化した変性ポリオールを反応させてなるビニル基含有変性ポリオールを併用してなる分散剤(例えば特開平09−77968号公報に記載のもの)等;
〔5〕(PL)と、少なくとも1個のエチレン性不飽和基を有する1価の活性水素含有化合物がポリイソシアネートを介して結合されてなる含窒素結合含有不飽和ポリオール(例えば特開2002−308920号公報に記載のもの)等の反応性分散剤等;が挙げられる。
【0052】
(D)としては、以下に述べるビニルオリゴマー分散剤(D1)及び/又は反応性分散剤(D2)を用いることが好ましい。
【0053】
(D1)はエチレン性不飽和化合物を重合して得られるビニルオリゴマーである。(D1)を構成するエチレン性不飽和化合物は、前述したエチレン性不飽和化合物(E)と同様のものが使用できる。
これらの内で、(JR)の粒子径の観点から、(D1)を構成するエチレン性不飽和化合物の少なくとも一部が、(JR)を構成しているエチレン性不飽和化合物(E)と同じであることが好ましく、さらに好ましくは(D1)を構成するエチレン性不飽和化合物の30重量%以上が(E)と同じであり、次に更に好ましくは70重量%以上、特に好ましくは80重量%以上である。
【0054】
(D1)の重量平均分子量(以下、Mwと略す)は、(JR)の粒子径の観点から、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定によるポリスチレン基準で、1,000〜1,000,000が好ましく、さらに好ましくは600,000〜750,000である。また、(D1)は、(JR)の粒子径の観点から、ポリオール(PL)に可溶性[(D1)と(PL)の合計重量に基づき5重量%の(D1)を(PL)に均一混合した混合物のレーザー光の透過率が10%以上]であることが望ましい。
【0055】
(D1)の製造は、重量平均分子量が1,000〜1,000,000となるよう重合度を調節する点を除いて、通常のエチレン性不飽和化合物の重合方法で行うことができる。例えば必要により溶媒中で、エチレン性不飽和化合物(E)を後述する重合開始剤の存在下に重合させる方法である。また、(D1)はポリオール(PL)中で(E)を重合させて得られるものでもよく、この場合の重合濃度は1〜40%が好ましく、さらに好ましくは5〜20%である。重合で得られたものを精製処理することなくそのままポリマーポリオールの製造に使用してもよい。重合開始剤は比較的多量に使用され、例えば全エチレン性不飽和化合物の質量に基づいて好ましくは2〜30%、さらに好ましくは5〜20%である。
【0056】
上記重合反応に必要により用いる溶媒としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、アセトニトリル、酢酸エチル、ヘキサン、ヘプタン、ジオキサン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、イソプロピルアルコール、n−ブタノール等が挙げられる。
これらの溶媒のうちで、粘度及びウレタンの機械強度の観点から、好ましいのはトルエン、キシレン、イソプロピルアルコール、n−ブタノールである。
【0057】
また、必要により連鎖移動剤、例えば、アルキルメルカプタン(ドデシルメルカプタン、メルカプトエタノール等)、アルコール(イソプロピルアルコール、メタノール、2−ブタノール等)、ハロゲン化炭化水素(四塩化炭素、四臭化炭素、クロロホルム等)、特開昭55−31880号公報記載のエノールエーテルの存在下に重合を行うことができる。重合はバッチ式でも連続式でも行うことができる。重合反応は、重合開始剤の分解温度以上(通常50〜250℃、好ましくは80〜200℃、特に好ましくは100〜180℃)で行うことができ、大気圧下または加圧下においても行うことができる。
【0058】
(D1)を用いる場合の(D1)の使用量(重量%)は、(JR)の粒子径及びウレタンの機械強度の観点から、(E)の重量に基づいて、好ましくは0.01〜100、さらに好ましくは0.1〜80、特に好ましくは1〜60である。
【0059】
反応性分散剤(D2)は、飽和のポリオール(b)に少なくとも1個の重合性不飽和基を有する単官能活性水素化合物(c)をポリイソシアネート(f)を介して結合して得られる含窒素結合含有不飽和ポリオールからなる分散剤である。
【0060】
反応性分散剤(D2)を構成する(b)としては、前述の(PL)として例示したものと同様のものが使用できる。(b)と(PL)とは同一であっても異なっていてもよい。
(b)の1分子中の水酸基の数は、少なくとも2個、好ましくは2〜8個、さらに好ましくは3〜4個である。
【0061】
(D2)を得るのに用いる(c)は、1個の活性水素含有基と少なくとも1個の重合性不飽和基を有する化合物である。活性水素含有基としては、水酸基、アミノ基、イミノ基、カルボキシル基、SH基などがあるが、特に水酸基が好ましい。
(c)の重合性不飽和基は重合性二重結合が好ましく、また1分子中の重合性不飽和基の数は1〜3個、とくに1個が好ましい。即ち、(c)として好ましいものは、重合性二重結合を1個有する不飽和モノヒドロキシ化合物である。
上記不飽和モノヒドロキシ化合物としては、例えば、モノヒドロキシ置換不飽和炭化水素、不飽和モノカルボン酸と2価アルコールとのモノエステル、不飽和2価アルコールとモノカルボン酸とのモノエステル、アルケニル側鎖基を有するフェノール、不飽和ポリエーテルモノオールが挙げられる。
【0062】
モノヒドロキシ置換不飽和炭化水素としては、C3〜6のアルケノール、例えば(メタ)アリルアルコール、2−ブテン−1−オール、3−ブテン−2−オール、3−ブテン−1−オール;アルキノール、例えばプロパギルアルコールが挙げられる。
不飽和モノカルボン酸と2価アルコールとのモノエステルとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸等のC3〜8の不飽和モノカルボン酸と、前記2価アルコール(エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール等の炭素数2〜12の2価アルコール)とのモノエステルが挙げられ、その具体例としては、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−ヒドロキシブチルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート等が挙げられる。
【0063】
不飽和2価アルコールとモノカルボン酸のモノエステルとしては、例えば、ブテンジオールの酢酸モノエステル等の、C3〜8の不飽和2価アルコールとC2〜12モノカルボン酸とのモノエステルが挙げられる。
アルケニル側鎖基を有するフェノールとしては、例えばヒドロキシスチレン、ヒドロキシα−メチルスチレン等のアルケニル基のCが2〜8のアルケニル側鎖基を有するフェノールが挙げられる。
不飽和ポリエーテルモノオールとしては、前記モノヒドロキシ置換不飽和炭化水素もしくは前記アルケニル側鎖基を有するフェノールのアルキレンオキサイド(C2〜8)1〜50モル付加物〔例えばポリオキシエチレン(C2〜10)モノアリルエーテル〕等が挙げられる。
【0064】
不飽和モノヒドロキシ化合物以外の(c)の例としては以下のものが挙げられる。
アミノ基、イミノ基を有する(c)としては、モノ−およびジ−(メタ)アリルアミン、アミノアルキル(C2〜4)(メタ)アクリレート〔アミノエチル(メタ)アクリレート等〕、モノアルキル(C1〜12)アミノアルキル(C2〜4)(メタ)アクリレート〔モノメチルアミノエチル−メタクリレート等〕;カルボキシル基を有する(c)としては、前記不飽和モノカルボン酸;SH基を有する(c)としては、前記不飽和モノヒドロキシ化合物に相当する(OHがSHに置き換わった)化合物が挙げられる。
重合性二重結合を2個有以上有する(c)の例としては、前記3価、4〜8価またはそれ以上の多価アルコールのポリ(メタ)アリルエーテル又は前記不飽和カルボン酸とのポリエステル〔例えばトリメチロールプロパンジアリルエーテル、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル、グリセリンジ(メタ)アクリレートなど〕が挙げられる。
【0065】
これらのうち好ましい化合物は、C3〜6のアルケノール、C3〜8の不飽和モノカルボン酸とC2〜12の2価アルコールとのモノエステルおよびアルケニル側鎖基を有するフェノールであり、さらに好ましくは(メタ)アクリル酸と、エチレングリコール、プロピレングリコールもしくはブチレングリコールとのモノエステル;アリルアルコール;およびヒドロキシα−メチルスチレンであり、とくに好ましくは2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートである。
また、(c)の分子量は特に限定されないが、1,000以下、特に500以下であるものが好ましい。
【0066】
ポリイソシアネート(f)は、少なくとも2個のイソシアネート基を有する化合物であり、芳香族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート、脂環式ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネート、これらのポリイソシアネートの変性物(ウレタン基、カルボジイミド基、アロファネート基、ウレア基、ビューレット基、イソシアヌレート基又はオキサゾリドン基含有変性物など)、およびこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
【0067】
芳香族ポリイソシアネートとしては、C(NCO基中の炭素を除く;以下のポリイソシアネートも同様)6〜16の芳香族ジイソシアネート、C6〜20の芳香族トリイソシアネート及びこれらのイソシアネートの粗製物などが挙げられる。具体例としては、1,3−及び1,4−フェニレンジイソシアネート、2,4−及び2,6−トリレンジイソシアネート(以下、TDIと略す)、粗製TDI、2,4’−及び4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(以下、MDIと略す)、粗製MDI[粗製ジアミノジフェニルメタン{ホルムアルデヒドと芳香族アミン(アニリン)又はその混合物との縮合生成物:ジアミノジフェニルメタンと少量(例えば5〜20%)の3官能以上のポリアミンとの混合物}のホスゲン化物:ポリアリルポリイソシアネート(PAPI)等]、ナフチレン−1,5−ジイソシアネート、トリフェニルメタン−4,4’,4’’−トリイソシアネート等が挙げられる。
脂肪族ポリイソシアネートとしては、C2〜18の脂肪族ジイソシアネート等が挙げられる。具体例としては、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート等が挙げられる。
【0068】
脂環式ポリイソシアネートとしては、C4〜16の脂環式ジイソシアネート等が挙げられる。具体例としては、イソホロンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート等が挙げられる。
芳香脂肪族イソシアネートとしては、C8〜15の芳香脂肪族ジイソシアネート等が挙げられる。具体例としては、キシリレンジイソシアネート、α,α,α’,α’−テトラメチルキシリレンジイソシアネート等が挙げられる。
変性ポリイソシアネートの具体例としては、ウレタン変性MDI、カルボジイミド変性MDI、ショ糖変性TDIおよびひまし油変性MDI等が挙げられる。
これらのうちで芳香族ジイソシアネートが好ましく、さらに好ましくは2,4−及び2,6−TDIである。
【0069】
反応性分散剤(D2)の含窒素結合は、イソシアネート基と活性水素含有基との反応によって生じるものであり、活性水素含有基が水酸基である場合、主にウレタン結合が生成し、アミノ基である場合、主に尿素結合が生成する。カルボキシル基の場合はアミド結合、SH基の場合はチオウレタン結合が生成する。これらの基以外に、他の結合、例えば、ビューレット結合、アロファネート結合などが生成していてもよい。
この含窒素結合は飽和のポリオール(b)の水酸基とポリイソシアネート(f)のイソシアネート基との反応で生じるものと、不飽和単官能活性水素化合物(c)の活性水素含有基と(f)のイソシアネート基との反応で生じるものとがある。
【0070】
ポリマーポリオールの分散安定性の観点から、(D2)の1分子中の水酸基数の平均値は、通常2以上、好ましくは2.5〜10、さらに好ましくは3〜7である。(D2)の1分子中の不飽和基数の平均値は、0.8〜2が好ましく、さらに好ましくは0.9〜1.2である。
また、(D2)の粘度は、(JR)の粒子径及びポリウレタン樹脂の成形性の観点から、2,000〜20,000mPa・s/25℃が好ましく、さらに好ましくは3,000〜9,000mPa・s/25℃である。
【0071】
反応性分散剤(D2)を製造する方法は特に限定されない。
好ましい方法としては、不飽和単官能活性水素化合物(c)と飽和のポリオール(b)との混合物にポリイソシアネート(f)を加えて、必要により触媒の存在下に反応させる方法と、(c)と(f)とを必要により触媒の存在下に反応させてイソシアネート基を有する不飽和化合物を製造し、これと(b)とを反応させる方法が挙げられる。後者の方法は、水酸基を持たない化合物などの副生物の発生の少ない含窒素結合含有不飽和ポリオールが得られる方法であるので、最も好ましい方法である。
また、(c)もしくは(b)に代えてその前駆体を用いて(f)と反応させた後、前駆体部分を変性して、(D2)を形成してもよい。〔例えば、イソシアネートとの反応後に不飽和モノカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体を反応させて不飽和基を導入する、イソシアネートとの反応後にアルキレンジハライド、ジカルボン酸などでジャンプさせて(D2)を形成する〕
【0072】
上記反応時の触媒としては、例えば、通常用いられるウレタン化触媒が挙げられ、錫系触媒(ジブチルチンジラウレート、スターナスオクトエート等)、その他の金属触媒(テトラブチルチタネート等)、アミン系触媒(トリエチレンジアミン等)が用いられる。これらの中でテトラブチルチタネートが好ましい。
触媒の量は、反応混合物の質量に基づいて、0.0001〜5%が好ましく、さらに好ましくは0.001〜3%である。
【0073】
これら3成分の反応比率は、反応に用いる合計量に基づく、(c)と(b)の活性水素含有基と(f)のイソシアネート基との当量比が、(1.2〜4):1が好ましく、さらに好ましくは(1.5〜3):1である。
また、(b)100部に対する反応に用いる(c)の量は、2部未満が好ましく、さらに好ましくは0.5〜1.8部である。上記及び以下において部は重量部を意味する。
なお、(f)と反応する以上の大過剰の(b)を用いて、(D2)と(b)の混合物を形成し、未反応の(b)を分離せずにそのまま、ポリオール(A)の一部として用いる方法を採ることもできる。
【0074】
上記方法で得られる反応性分散剤(D2)は単独化合物である場合もあるが、多くの場合、下記一般式(2)で表される化合物のような種々の化合物の混合物である。
【化2】

【0075】
[式中、Zはh価の(f)の残基(ただしhは2以上の整数);Tは(c)の残基(ただし、重合性不飽和基を有する。);A1はq1価のポリオール〔(b)、又は(b)と(f)からのOHプレポリマー〕の残基、A2はq2価のポリオール〔(b)、又は(b)と(f)からのOHプレポリマー〕の残基(ただしq1、q2は2以上の整数);Xは、単結合、O、S、または
【化3】

;T’はH又は炭素数1〜12のアルキル基;cは1又はそれ以上の整数;jは1以上の整数である。ただしq1−g≧0、h−j−1≧0である。なお、OH基の合計は2以上である。]
【0076】
すなわち、1個の(b)と1個の(c)が1個の(f)を介して結合したもの、複数の(c)が各々1個の(f)を介して1個の(b)と結合したもの、複数の(f)を介して合計3個以上の(b)及び(c)が結合したものなどを含有する。また、これら以外の副生物として、(b)同志が(f)を介して結合したもの(不飽和基を持たない含窒素結合含有ポリオール)、(c)同志が(f)を介して結合したもの(水酸基を持たない含窒素結合含有不飽和化合物)が形成されることがあり、未反応の(b)や(c)を含むこともある。
この混合物はそのまま分散剤として使用し得るが、不飽和基を持たない含窒素結合含有ポリオールや水酸基を持たない含窒素結合含有不飽和化合物の含量が少ないものが好ましく、さらに除去しうるこれらの不純物を除去した後に適用することもできる。
また、(D2)中の不飽和基は、ポリオールの分子鎖の末端または末端近傍に位置しているため、モノマーと共重合しやすい。
【0077】
(D2)は、下記式(7)によって求められる、1分子中の(f)のNCO基に由来する含窒素結合に対する不飽和基数の比の平均値:Kが0.1〜0.4となるような割合で、(b)、(c)及び(f)を反応させたものである。
H=[(c)のモル数×(c)の不飽和基数]/[(f)のモル数×(f)のNCO基数] (7)
Hの値は、さらに好ましくは0.1〜0.3であり、とくに好ましくは0.2〜0.3である。Hの値が上記範囲内であると、ポリマーポリオールの分散安定性がとくに良好となる。
【0078】
(D2)を用いる場合の(D2)の使用量(重量%)は、分散性及びポリマーポリオールの粘度の観点から、(E)の重量に基づいて、好ましくは2〜20、さらに好ましくは4〜15、特に好ましくは6〜10である。
【0079】
ラジカル重合開始剤(K)としては、遊離基を生成して重合を開始させる化合物、例えばアゾ化合物および過酸化物(例えば特開2005−162791号公報等に記載のもの)が使用できる。(K)の10時間半減期温度は(E)の重合率および生産性の観点から好ましくは30〜150℃、さらに好ましくは40〜140℃、特に好ましくは50〜130℃である。
【0080】
(K)の使用量(重量%)は、(E)の重合速度及びポリウレタン樹脂の機械物性の観点から(E)の重量に基づいて、好ましくは0.05〜20、さらに好ましくは0.1〜5、とくに好ましくは0.2〜2である。
【0081】
ラジカル重合においては、必要により希釈溶剤(C)を使用してもよい。
(C)としては、芳香族炭化水素(C6〜10、例えばベンゼン、トルエン、キシレン);飽和脂肪族炭化水素(C5〜15、例えばヘキサン、ヘプタン、ノルマルデカン);不飽和脂肪族炭化水素(C5〜30、例えばオクテン、ノネン、デセン);およびその他公知の溶剤(例えば特開2005−162791号公報等に記載のもの)等が使用できる。これらのうちポリマーポリオール(A)の粘度の観点から芳香族炭化水素溶剤が好ましい。
(C)の使用量(重量%)は、(E)の重量に基づいて、ポリマーポリオールの粘度およびポリウレタン樹脂の機械物性の観点から好ましくは0.1〜50、さらに好ましくは1〜40である。(C)は重合反応終了後に(A)中に残存してもよいが、ポリウレタン樹脂の機械物性の観点から重合反応終了後に減圧ストリッピング等により除去するのが望ましい。
【0082】
また、ラジカル重合においては必要により連鎖移動剤(G)を使用してもよい。(G)としては脂肪族チオール(C1〜20、例えばn−ドデカンチオール、メルカプトエタノール)等種々の連鎖移動剤(例えば特開2005−162791号公報等に記載のもの)が使用できる。
(G)の使用量(重量%)は、(E)の重量に基づいて、(A)の粘度およびポリウレタン樹脂の機械物性の観点から好ましくは0.01〜2、さらに好ましくは0.1〜1である。
【0083】
ポリマーポリオールの製造方法には、バッチ式重合法および連続重合法等といった種々の(例えば特開2005−162791号公報、特開平8−333508号公報に記載のもの)製造方法が含まれる。バッチ式重合法には、一括重合法、滴下重合法、多段一括重合法等;また、連続重合法には、多段連続重合法等が含まれる。
本発明のポリマーポリオール(A)を得る製造方法としてバッチ式でも連続式でもおこなうことができる。
【0084】
ラジカル重合開始剤(K)はそのまま使用してもよいし、希釈溶剤(C)、分散剤(D)及び/又はポリオール(PL)に溶解(または分散)させたものを使用する。
【0085】
ポリマーポリオール(A)の前記製造方法(1)、(2)のうち、(2)の製造方法は、重合体粒子(JR)を製造した後、(JR)をポリオール(PL)に分散し、ポリマーポリオールを得る方法であり、例えば下記の方法が挙げられる。
まず、種々の方法(例えば特開平5−148328号公報、特開平8−100006号公報に記載の方法)でエチレン性不飽和化合物を乳化重合または懸濁重合させることにより(JR)分散液を製造する。得られた(JR)分散液を必要により湿式分級機(沈降槽方式、機械式分級機方式、遠心分級機方式等)等を用いて分級処理を行う。こうして得た(JR)を(PL)中に分散させることで本発明のポリマーポリオール(A)を得ることができる。
分散させるに際しては、重合またはその後さらに湿式分級等分級処理して得られた(JR)分散液をそのまま用いてもよいし、(JR)分散液から分散媒を留去した後に用いてもよい。(JR)分散液をそのまま用いる場合は、(JR)分散液とポリオール(PL)を混合した後、分散媒を留去することで本発明のポリマーポリオールが得られる。
また、(JR)分散液から分散媒を留去した後に用いる場合は、(JR)を(PL)に分散させる際、高いせん断をかけて分散させると(JR)の凝集を容易に防ぐことができる。該分散に用いる装置としては、ホモミキサー等、高い剪断力をかけることができる分散装置が好ましい。
【0086】
本発明のポリマーポリオール(A)には、必要により溶媒および難燃剤を添加してもよい。溶媒としては、前述した希釈溶剤(C)と同様の溶媒が使用でき、ポリマーポリオールの粘度等の観点から、不飽和脂肪族炭化水素および芳香族炭化水素が好ましい。
難燃剤としては、種々の難燃剤(例えば特開2005−162791号公報記載のもの)が使用でき、ポリマーポリオールの粘度の観点から好ましいのは、低粘度(100mPa・s以下/25℃)の難燃剤、さらに好ましいのはトリス(クロロエチル)ホスフェートおよびトリス(クロロプロピル)ホスフェートである。
(A)中の溶媒および難燃剤の使用量(重量%)は、(JR)および(PL)の合計重量に基づいて、それぞれ通常10以下、ポリマーポリオールの粘度、ポリウレタン樹脂の難燃性、およびポリウレタン樹脂の機械物性の観点から好ましくはそれぞれ0.01〜5、さらに好ましくは0.05〜3である。
【0087】
本発明のポリマーポリオール(A)は、ポリウレタン樹脂(ポリウレタンエラストマー、ポリウレタンフォーム等)の製造に使用するポリオールとして用いることができる。すなわち、(A)または(A)を含むポリオール成分(Po)およびポリイソシアネートからなるイソシアネート成分(Is)[以下において(Po)と(Is)からなる組成物をポリウレタン樹脂形成性組成物と称することがある。]を、公知の方法(例えば特開2004−263192号公報に記載の方法)等で反応させてポリウレタン樹脂を得ることができる。
【0088】
ポリオール成分(Po)としては、本発明の(A)以外に、ポリウレタン樹脂を製造する際の原料として、本発明の効果を阻害しない範囲で必要によりポリオールおよび(A)以外の公知のポリマーポリオールを使用してもよい。
ポリオールとしては、前述したポリオール(PL)等が使用でき、公知のポリマーポリオールとしては、例えば特開2005−162791号公報等記載のポリマーポリオールが使用できる。
ポリオールの使用量(重量%)は、(A)の重量に基づいて、ポリウレタン樹脂の機械物性の観点から適宜調整することができるが、好ましくは1〜1,000である。
(A)以外の公知のポリマーポリオールの使用量(重量%)は、(A)の重量に基づいて、ポリウレタン樹脂の機械物性、およびポリウレタン樹脂製造装置のストレーナや吐出口の目詰まり低減の観点から好ましくは1〜100である。
【0089】
ポリオール成分(Po)中の(A)の使用量(重量%)は、得られるポリウレタン樹脂の機械物性およびポリオール成分の粘度の観点から好ましくは10〜100、さらに好ましくは15〜90、とくに好ましくは20〜80、最も好ましくは25〜70である。
【0090】
イソシアネート成分(Is)としては、従来からポリウレタン樹脂の製造に使用されている公知のポリイソシアネート(例えば特開2005−162791号公報に記載のもの)等が使用できる。
これらのうちでポリウレタン樹脂の機械物性の観点から好ましいのは、2,4−および2,6−TDI、これらの異性体の混合物、粗製TDI(TDIを精製した際の残留物);4,4'−及び2,4'−MDI、これらの異性体の混合物、粗製MDI(MDIを精製した際の残留物);およびこれらのポリイソシアネートより誘導される、ウレタン基、カルボジイミド基、アロファネート基、ウレア基、ビューレット基またはイソシアヌレート基等を含有する変性ポリイソシアネートである。
【0091】
ポリウレタン樹脂の製造におけるNCO指数[NCO基と活性水素原子との当量比(NCO基/活性水素原子)×100]は、ポリウレタン樹脂の機械物性の観点から適宜調整することができるが、80〜140が好ましく、さらに好ましくは85〜120、とくに好ましくは95〜115である。
【0092】
ポリウレタン樹脂の製造に際しては反応を促進させるため、ウレタン化反応に使用される種々の触媒(例えば特開2005−162791号公報に記載のもの)をポリウレタン樹脂形成性組成物に含有させることができる。触媒の使用量(重量%)は、ポリウレタン樹脂形成性組成物の全重量に基づいて通常10以下、好ましくは0.001〜5である。
【0093】
また、ポリウレタン樹脂の製造に際し、種々の発泡剤(例えば特開2006−152188号公報に記載のもの)[水、HFC(ハイドロフルオロカーボン)、HCFC(ハイドロクロロフルオロカーボン)、メチレンクロライド等]をポリウレタン樹脂形成性組成物に含有させて、ポリウレタンフォームとすることができる。発泡剤の使用量(重量%)は、ポリウレタンフォームの所望の密度により変えることができ、特に限定はされないが、ポリウレタン樹脂形成性組成物の全重量に基づいて通常20以下である。
ポリウレタンフォームを製造する場合、さらに必要により整泡剤をポリウレタン樹脂形成性組成物に含有させることができる。 整泡剤としては種々の整泡剤(例えば特開2005−162791号公報に記載のもの)が使用でき、ポリウレタンフォーム中のセル径の均一性の観点から好ましいのはシリコーン界面活性剤(例えばポリシロキサン−ポリオキシアルキレン共重合体)である。
整泡剤の使用量(重量%)は、ポリウレタン樹脂形成性組成物の全重量に基づいて通常5以下、好ましくは0.01〜2である。
【0094】
ポリウレタン樹脂の製造において、さらに必要により難燃剤をポリウレタン樹脂形成性組成物に含有させることができる。難燃剤としては種々のもの(特開2005−162791号公報に記載のもの、例えばメラミン、リン酸エステル、ハロゲン化リン酸エステル、ホスファゼン)が挙げられる。
難燃剤の使用量(重量%)は、ポリウレタン樹脂形成性組成物の全重量に基づいて通常30以下、好ましくは0.01〜10である。
【0095】
ポリウレタン樹脂の製造においては、本発明の効果を阻害しない範囲で、さらに必要により反応遅延剤、着色剤、内部離型剤、老化防止剤、抗酸化剤、可塑剤、殺菌剤および充填剤(カーボンブラックを含む)からなる群から選ばれる少なくとも1種のその他の添加剤をポリウレタン樹脂形成性組成物に含有させることができる。
【0096】
ポリウレタン樹脂の製造は種々の方法(例えば特開2005−162791号公報に記載の方法)で行うことができ、ワンショット法、セミプレポリマー法およびプレポリマー法等が挙げられる。
ポリウレタン樹脂の製造には従来から用いられている製造装置(低圧あるいは高圧の機械装置等)を用いることができる。無溶媒の場合は、ニーダーやエクストルーダー等の装置を用いることができる。また、非発泡または発泡ポリウレタン樹脂を製造する際には、閉鎖モールドまたは開放モールドを用いることができる。
【0097】
本発明のポリマーポリオール(A)を使用して製造されるポリウレタン樹脂は、機械物性に優れ、従来のポリウレタン樹脂の用途(ウレタンフォーム、ウレタンエラストマー、ウレタンコーティング剤等)に応用が可能である。特に、ポリウレタン樹脂製造時の成形性及び機械物性の観点から、自動車車両用クッション材に好適に使用できる。
【実施例】
【0098】
以下に本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、以下において、部、%および比は、特に断りのない限り、それぞれ、重量部、重量%および重量比を示す。
【0099】
下記実施例に用いた原料の組成、記号等は次の通りである。
(1)ポリオール
ポリオール(PL−1):ペンタエリスリトール1モルに特開2000−344881号公報の実施例1と同様にして、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボランを触媒としてPO88.1モルを付加し、その後触媒成分を除去した後、さらに水酸化カリウムを触媒としてEO10.4モルを付加し〔触媒使用量0.3%(反応生成物重量基準)、反応温度95〜105℃〕、常法により水酸化カリウムを除去した、水酸基価=37.4、EO単位含量=8%、1級水酸基の比率82モル%のポリオール
ポリオール(PL−2):グリセリン1モルに特開2000−344881号公報の実施例1と同様にして、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボランを触媒としてPO49.7モルを付加し、その後触媒成分を除去した後、さらに水酸化カリウムを触媒としてEO12モルを付加し〔触媒使用量0.3%(反応生成物重量基準)、反応温度95〜105℃〕、常法により水酸化カリウムを除去した、水酸基価=48.1、EO単位含量=15%、1級水酸基の比率86モル%のポリオール
ポリオール(PL−3):グリセリン1モルに特開2000−344881号公報の実施例1と同様にして、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボランを触媒としてPO64.2モルを付加し、その後触媒成分を除去した後、さらに水酸化カリウムを触媒としてEO15.3モルを付加し〔触媒使用量0.3%(反応生成物重量基準)、反応温度95〜105℃〕、常法により水酸化カリウムを除去した、水酸基価=37.4、EO単位含量=14%、1級水酸基の比率88モル%のポリオール
ポリオール(PL−4):ペンタエリスリトール1モルに特開2000−344881号公報の実施例1と同様にして、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボランを触媒としてPO82.8モルを付加し、その後触媒成分を除去した後、さらに水酸化カリウムを触媒としてEO24.0モルを付加し〔触媒使用量0.3%(反応生成物重量基準)、反応温度95〜105℃〕、常法により水酸化カリウムを除去した、水酸基価=37.4、EO単位含量=17.5%、1級水酸基の比率90モル%のポリオール
ポリオール(PL−5):グリセリン1モルに特開2000−344881号公報の実施例1と同様にして、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボランを触媒としてPO53.2モルを付加し、その後触媒成分を除去した後、さらに水酸化カリウムを触媒としてEO30.0モルを付加し〔触媒使用量0.3%(反応生成物重量基準)、反応温度95〜105℃〕、常法により水酸化カリウムを除去した、水酸基価=37.4、EO単位含量=14%、1級水酸基の比率95モル%のポリオール
【0100】
ポリオール(PL−6):グリセリン1モルに水酸化カリウムを触媒としてPO72.6モル、EO15.9モルをこの順序でブロック付加し〔触媒使用量0.3%(反応生成物重量基準)、反応温度95〜105℃〕、常法により水酸化カリウムを除去した、水酸基価=33.0、末端EO単位含量=14%、1級水酸基の比率78モル%のポリオール
ポリオール(PL−7):ペンタエリスリトール1モルに水酸化カリウムを触媒としてPO106.4モル、EO16.0モルをこの順序でブロック付加し〔触媒使用量0.3%(反応生成物重量基準)、反応温度95〜105℃〕、常法により水酸化カリウムを除去した、水酸基価=32.1、末端EO単位含量=10%、1級水酸基の比率73モル%のポリオール
ポリオール(PL−8):グリセリン1モルに水酸化カリウムを触媒としてPO64.2モル、EO14.0モルをこの順序でブロック付加し〔触媒使用量0.3%(反応生成物重量基準)、反応温度95〜105℃〕、常法により水酸化カリウムを除去した、水酸基価=37.4、末端EO単位含量=14%、1級水酸基の比率76モル%のポリオール
ポリオール(PL−9):ペンタエリスリトール1モルに水酸化カリウムを触媒としてPO82.8モル、EO24.0モルをこの順序でブロック付加し〔触媒使用量0.3%(反応生成物重量基準)、反応温度95〜105℃〕、常法により水酸化カリウムを除去した、水酸基価=37.4、末端EO単位含量=17.5%、1級水酸基の比率80モル%のポリオール
ポリオール(PL−10):ペンタエリスリトール1モルに水酸化カリウムを触媒としてPO117.8モル、EO24.5モルをこの順序でブロック付加し〔触媒使用量0.3%(反応生成物重量基準)、反応温度95〜105℃〕、常法により水酸化カリウムを除去した、水酸基価=28.1、末端EO単位含量=13.5%、1級水酸基の比率81モル%のポリオール
ポリオール(PL−11):ペンタエリスリトール1モルに特開2000−344881号公報の実施例1と同様にして、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボランを触媒としてPO124.4モルを付加し、その後触媒成分を除去した後、さらに水酸化カリウムを触媒としてEO14.4モルを付加し〔触媒使用量0.3%(反応生成物重量基準)、反応温度95〜105℃〕、常法により水酸化カリウムを除去した、水酸基価=37.4、EO単位含量=8.0%、1級水酸基の比率84モル%のポリオール
ポリオール(PL−12):グリセリン1モルに水酸化カリウムを触媒としてPO64.7モル、EO22.7モルをこの順序でブロック付加し〔触媒使用量0.3%(反応生成物重量基準)、反応温度95〜105℃〕、常法により水酸化カリウムを除去した、水酸基価=33.7、末端EO単位含量=20%、1級水酸基の比率84モル%のポリオール
【0101】
(2)ラジカル重合開始剤
K−1:1,1’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)〔商品名「V−59」、和光純薬工業(株)製〕
【0102】
(3)分散剤
D−1:ACNとStとの重量比がACN:St=70:30であるMwが600,000のACN−St共重合オリゴマー型非反応性分散剤{このオリゴマー型分散剤を含有量が10重量%となるようにポリオール(PL−6)に混合して使用した。この混合物の水酸基価=29.0}
D−2:特開2002−308920号公報の製造例1に記載の分散剤{ポリオール(PL−12)と2−ヒドロキシエチルメタクリレートをTDIでジョイントして得られる、水酸基価=20、不飽和基数/含窒素基結合基数=0.22/1の反応性分散剤}
【0103】
(4)ポリイソシアネート
CE−729:TDI/ポリメリックMDI=80/20(重量比)、商品名「CE−729」〔日本ポリウレタン工業(株)製〕
【0104】
(5)触媒
触媒A:商品名「TEDAL−33」(トリエチレンジアミン/ジプロピレングリコール=33/67%溶液)〔東ソー(株)社製〕
触媒B:商品名「TOYOCAT ET」(ビス−2−ジメチルアミノエチルエーテル/ジプロピレングリコール=33/67(%)溶液)〔東ソー(株)社製〕
【0105】
(6)整泡剤
SZ−1346(ポリエーテルシロキサン重合体)〔日本ユニカー(株)社製〕
【0106】
実施例における測定、評価方法は次のとおりである。
<重合率>
重合率は、仕込みモノマー量に対する各モノマーの残存モノマー含量から算出し求めた。残存モノマー含量は、ガスクロマトグラフ法により、内部標準物質に対する面積比から算出した。具体的な分析方法はスチレンを例に以下に示す。

重合率[重量%]
=100−100×[(残存スチレン含量[%] /(原料中のスチレン仕込量[%]))

残存スチレン含量[%]=L/M ×(内部標準物質に対するファクター)
L=(残存スチレンのピーク面積)/(ポリマーポリオールの重量[g])
M=(内部標準のピーク面積)/(内部標準の重量[g])

内部標準物質に対するファクターは、内部標準物質と同重量にした際の各モノマーのピーク面積を内部標準物質のピーク面積で除したものである。
【0107】
ガスクロマトグラフの測定条件(スチレンの場合)
ガスクロマトグラフ :GC−14B〔(株)島津製作所製〕
カラム :内径4mmφ、長さ1.6m、ガラス製
カラム充填剤 :ポリエチレングリコール20M〔信和化工(株)製〕
内部標準物質 :ブロモベンゼン〔ナカライテスク(株)製〕
希釈剤 :ジプロピレングリコールモノメチルエーテル 1級〔和光純薬(株)製〕
インジェクション温度 :200℃
カラム温度 :110℃
昇温速度 :5℃/min
カラムファイナル温度 :200℃
試料注入量 :1μl
【0108】
<実施例1〜6及び比較例1〜5>
連続重合装置(温度調節器、攪拌翼、送液ライン、オーバーフローラインを接続した2LのSUS製耐圧反応容器)を2槽用意し、1槽目のオーバーフローラインを2槽目の重合槽の入口と接続し直列に配置する。原料供給ポンプを1槽目への送液ラインに設置する。1槽目及び2槽目の重合槽にそれぞれ、あらかじめ、2000g部のポリオール(PL−1。実施例2〜6及び比較例1〜5の場合は、それぞれ表1又は表2に示したポリオールと同じポリオールを仕込む。複数のポリオールの場合は表1又は表2に示した部数の混合物を2000g仕込む)を仕込み、攪拌下125℃に加熱した。次いで、原料供給ポンプにより表1又は表2記載の組成のポリオール(PL)、ラジカル重合開始剤(K)、エチレン性不飽和化合物(E)及び分散剤(D)をあらかじめ均一混合した原料液を270ml/minで原料供給ポンプにより1槽目の重合槽へ連続的に注入し、1槽目の重合槽からオーバーフローさせた反応液を2槽目の重合槽へ連続的に送液した。送液開始から1時間後以後の2槽目の重合槽からオーバーフローさせた反応液をSUS製の受け槽にストックして、ポリマーポリオール中間体を得た。次いで、ポリマーポリオール中間体を温度調節器、撹拌翼を備えたガラス製コルベンに仕込み、攪拌下125℃で減圧度2666〜3999N/m2にて3時間ストリッピングし、残存するエチレン性不飽和化合物を留去し、ポリマーポリオール(F−1)〜(F−6)及び(R−1)〜(R−5)を製造した。この結果を表1又は表2に示した。
【0109】
【表1】

【0110】
【表2】

【0111】
<実施例7〜12及び比較例6〜10> [ポリウレタンフォームの製造]
実施例1〜6で得られたポリマーポリオール(F−1)〜(F−6)及び比較例1〜5で得られた比較のポリマーポリオール(R−1)〜(R−5)を使用し、表3に記載の発泡処方の部数のポリマーポリオール、ポリオール(PL−12)、SZ−1346、水、触媒A、触媒Bの順で容量1Lの紙コップに入れて室温(25±2℃)で撹拌した混合物(PPL)、及びポリイソシアネートをそれぞれ25±2℃に温調した。温調後、混合物(PPL)にポリイソシアネート(CE−729)を加え撹拌機(ホモディスパー:特殊機化(株)製、撹拌条件:2000rpm×7秒)で撹拌混合した。事前に60±5℃に温調しておいた金型(密閉型、金型サイズ40×40×10(H)cm)に撹拌混合の直後、内容物を投入した。撹拌開始から6分後に金型からポリウレタンフォームを取り出して、ポリウレタンフォームを製造した。ポリウレタンフォームを評価し、結果を表3に示した。
【0112】
【表3】

【0113】
<フォーム物性の評価方法>
(1)コア密度(kg/m3):JIS K6400−1997〔項目5〕に準拠。
(2)フォーム硬さ(25%ILD)(kgf/314cm2):JIS K6401−1997に準拠。
(3)引張強度(kgf/cm2):JIS K6301−1995〔項目3〕に準拠。
(4)引裂強度(kgf/cm):JIS K6301−1995〔項目9〕に準拠
(5)圧縮残留歪(%):JIS K6382−1995〔項目5.5〕に準拠。
【0114】
表1〜表3の結果から、実施例1〜6のポリマーポリオールは、比較例1に比べて、粘度が低かった。また、実施例1〜6のポリマーポリオールは比較例1〜5に比べて総不飽和度が低かった。そして、実施例1〜6のポリマーポリオールを使用して製造したポリウレタンフォームは、比較例1〜5のポリマーポリオールの場合に比べて、フォーム物性が向上していることがわかる。特にフォーム硬さ(25%ILD)の値が向上しており、引張強度が同等以上であることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0115】
本発明のポリマーポリオールは、低粘度で、かつポリウレタンの機械物性を向上させることから、フォーム(軟質、硬質、半硬質フォーム等)、エラストマー、RIM成形品等ポリウレタン全般に幅広く好適に使用できる。特に、ポリウレタンフォームの製造に用いる場合には、ポリウレタンフォームの各物性をバランス良く調整でき、好適である。
本発明のポリウレタン形成性組成物から形成されるポリウレタンは、各種の幅広い用途に使用されるが、とくにポリウレタンフォームとして自動車内装部品や家具の室内調度品等に好適に用いられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレン性不飽和化合物(E)を構成単位とする重合体粒子(JR)がポリオール(PL)中に含有されてなるポリマーポリオールにおいて、(PL)の分子末端水酸基に基づく1級OH化率が70〜100モル%で、(PL)のオキシエチレン単位の含有量が(PL)の重量に基づいて0.1〜20重量%で、かつ、(PL)が活性水素1個あたりのエチレンオキサイドの平均付加モル数xが1級OH化率yとxが10未満のとき下記式(1)、10〜20のとき下記式(2)の関係を満たす、炭素数2以上の1,2−アルキレンオキサイドを主体とするアルキレンオキサイドが活性化水素にランダム及び/又はブロック付加されてなるポリエーテルポリオールであるポリマーポリオール(A)。
y≧42x0.47(1−x/41) (1)
y≧0.328x+90.44 (2)
【請求項2】
ポリオール(PL)のOH当量が500〜1,800である請求項1に記載のポリマーポリオール。
【請求項3】
ポリオール(PL)の総不飽和度tとOH当量sとについて、sが500〜1,800であり、下記式(3)の関係を満たす請求項1又は2に記載のポリマーポリオール。
t≦3×10-5×s−0.0006 (3)
【請求項4】
レーザー回析/散乱式粒度分布測定装置により測定される0.040〜262μmの範囲を65分割した際の粒度分布の体積基準による重合体粒子(JR)のメジアン径が0.1〜0.55μmである請求項1〜3のいずれかに記載のポリマーポリオール。
【請求項5】
重合体粒子(JR)が、下記分散剤(D1)及び/又は分散剤(D2)の存在下で、エチレン性不飽和化合物(E)が重合されて形成されてなる重合体粒子である請求項1〜4のいずれかに記載のポリマーポリオール。
分散剤(D1):重量平均分子量が1,000〜1,000,000のビニルオリゴマー
分散剤(D2):飽和のポリオール(b)と、少なくとも1個の重合性不飽和基を有する単官能活性水素化合物(c)が、ポリイソシアネート(f)を介して結合されてなり、1分子中のNCO基に由来する含窒素結合の数に対する不飽和基数の比の平均値が0.1〜0.4である含窒素結合含有不飽和ポリオール
【請求項6】
ポリマーポリオールの重量を基準とする重合体粒子(JR)の含有量v(重量%)とポリマーポリオールの粘度w(mPa・s)が下記式(4)及び(5)を満たす請求項1〜5のいずれかに記載のポリマーポリオール。
w≧250v−5000 (4)
w≦450v−8400 (5)
【請求項7】
ポリオール成分とイソシアネート成分とを反応させてポリウレタン樹脂を製造する方法において、ポリオール成分が請求項1〜6のいずれかに記載のポリマーポリオールをポリオール成分の重量を基準として10〜100重量%含有するポリウレタン樹脂の製造方法。
【請求項8】
請求項7記載の製造方法により得られるポリウレタン樹脂を含んでなる車両座席用クッション材。

【公開番号】特開2010−84013(P2010−84013A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−254585(P2008−254585)
【出願日】平成20年9月30日(2008.9.30)
【出願人】(000002288)三洋化成工業株式会社 (1,719)
【Fターム(参考)】