説明

ポリマー光導波路形成用感光性樹脂組成物、光導波路及び光導波路パターンの形成方法

【課題】 伝送損失が低く、また導波路パターンを形状精度が良くかつ低コストで作製可能な光導波路形成用感光性樹脂組成物、光導波路、及び光導波路パターンの形成方法を提供する。
【解決手段】 下記一般式(1)で表されるアミド化合物とエポキシ基を有する重合体と光酸発生剤を少なくとも含有する光導波路形成用感光性樹脂組成物により解決できる。
【化1】


(式中、Rは炭素数1〜20のアルキル基または芳香族炭化水素基を表し、R〜Rはそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、または炭素数1〜4のアルキル基を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光通信、光情報処理分野などにおいて用いられる、光素子、光インターコネクション、光配線基板、光・電気混載回路基板等に利用される光導波路、光導波路形成用感光性樹脂組成物、及び光導波路パターンの形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年インターネット、デジタル家電が急速に普及し、通信システムやコンピュータにおける情報処理の大容量化および高速化が求められ、大容量のデータを高周波信号で高速伝送することが検討されている。しかし大容量の信号を高周波信号で伝送するには従来の電気配線では伝送損失が大きいため、光による伝送システムがさかんに検討され、コンピュータ間、装置内、ボード内通信の配線等に用いられようとしている。この光による伝送システムを実現する要素のうち、光導波路は、光素子、光インターコネクション、光配線基板、光・電気混載回路基板等における基本となる構成要素となるため、光導波路に対しては、高性能かつ低コストであることが求められている。
【0003】
光導波路としては、これまで、石英導波路やポリマー導波路が知られている。このうち石英導波路は、伝送損失が非常に低いという特徴を有するが、製造工程において加工温度が高く、また大面積の導波路の作製が困難であるなど製造プロセスおよびコストの点でデメリットとなっている。
【0004】
一方、ポリマー導波路は、加工のし易さや材料設計の自由度が大きい等の利点を有するため、PMMA(ポリメチルメタクリレート)やエポキシ樹脂、ポリシロキサン誘導体、フッ素化ポリイミド等のポリマー材料を用いたものが検討されてきた。例えば、特許文献1および特許文献2には、エポキシ化合物を用いたポリマー導波路が記載されている。また、特許文献3には、ポリシロキサン誘導体を用いた導波路が記載されている。
【0005】
しかし、一般にポリマー導波路は耐熱性が低く、また光通信で用いられる波長600〜1600nmの領域おいて伝送損失が大きい等の問題が指摘されている。この問題を解決するため、例えばポリマーを重水素化やフッ素化する等の化学修飾によって伝送損失を低減したり、耐熱性を有するポリイミド誘導体を用いる等の検討がなされている。しかし例えば重水素化PMMAは耐熱性が低く、またフッ素化ポリイミドは耐熱性に優れるものの、導波路パターンを形成するには、石英導波路と同様にドライエッチング工程を必要とするため、製造コストが高くなる欠点を有する。
【0006】
【特許文献1】特開平10−170738号公報
【特許文献2】特開平11−337752号公報
【特許文献3】特開平9−124793号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そのため、感光性樹脂を用いた光導波路を形成するにあたって、伝送損失が低く、また導波路パターンを形状精度よく、かつ低コストで作製可能な光導波路形成用感光性樹脂組成物、光導波路、及び光導波路パターンの形成方法が求められている。
【0008】
そこで、本発明の技術的課題は、導波路パターンを精度よく形成でき、かつ形成した光導波路は優れた伝送特性(低い伝播損失)を有する光導波路形成用感光性樹脂組成物とそれを用いた光導波路パターン形成方法とを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記目的を達成するために検討した結果、特定構造のアミド化合物とエポキシ基を有する重合体と光酸発生剤を構成成分として含有する感光性樹脂組成物を、光導波路のコア層とクラッド層のいずれか一つまたは両方を形成するための樹脂組成物として用いることによって、各層に好適な屈折率を付与し、導波路の伝送損失が低く、しかも導波路のパターン形状を精度良く形成できることを見出し、本発明を完成した。
【0010】
すなわち上記目的を達成する本発明の光導波路形成用感光性樹脂組成物は、少なくとも下記化1式の一般式(1)で表されるアミド化合物とエポキシ基を有する重合体と光照射により酸を発生する光酸発生剤とを少なくとも含むことを特徴とする。
【0011】
【化1】

(式中、Rは炭素数1〜20のアルキル基または芳香族炭化水素基を表し、R〜Rはそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、または炭素数1〜4のアルキル基を表す。)
【0012】
また本発明の光導波路形成用感光性樹脂組成物は、エポキシ基を有する重合体が少なくとも下記化2式の一般式(2)で表される構造単位を有する重合体であることを特徴とする。
【0013】
【化2】

(式中、Rは水素原子またはメチル基を表し、Rはエポキシ基を有する炭化水素基を表す。)
【0014】
また、本発明の光導波路形成用感光性樹脂組成物は、上記アミド化合物とエポキシ基を有する重合体と光酸発生剤に加え、さらに上記一般式(2)で表されるエポキシ系重合体以外のエポキシ化合物を含むことを特徴とする。
【0015】
また本発明の光導波路形成用感光性樹脂組成物は、上記重合体、光酸発生剤、エポキシ化合物に加え、アルミナ、シリカ、ガラス繊維、ガラスビーズ、シリコーン、酸化チタン、金属酸化物からなる群より選択される少なくとも一つの添加剤を含むことを特徴とする。
【0016】
また上記目的を達成するための本発明の光導波路パターンの形成方法は、基板上に下部クラッド層を形成する第1のクラッド層形成工程と、上記本発明の光導波路形成用感光性樹脂組成物を下部クラッド上に塗布する塗布工程と、該樹脂組成物を基板上に定着させるプリベーク工程と、該樹脂組成物を選択的に露光する露光工程と、露光領域の酸触媒による反応を促進させる熱処理工程と、上記ベーク後の樹脂組成物層の上に上部クラッド層を形成する第2のクラッド層形成工程を少なくとも含むことを特徴とする。また、熱処理工程後に、現像を行い、未露光部を除去する現像工程とポストベークを行い、コア層を形成するポストベーク工程を更に含んでもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明の光導波路形成用感光性樹脂組成物は、導波路パターンを精度よく形成でき、かつ形成した光導波路は優れた伝送特性(低い伝播損失)を有するため、光導波路形成用材料として好適に用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の光導波路形成用感光性樹脂組成物及び光導波路パターンの形成方法について説明する。
【0019】
<光導波路形成用感光性樹脂組成物>
本発明の光導波路形成用感光性樹脂組成物(以下、感光性樹脂組成物という)は、少なくとも下記化3式の一般式(1)で表されるアミド化合物とエポキシ基を有する重合体と光酸発生剤を含むものであり、通常、該アミド化合物と重合体と光酸発生剤とを混合することにより調製することができる。
【0020】
【化3】

(式中、Rは炭素数1〜20のアルキル基または芳香族炭化水素基を表し、R〜Rはそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、または炭素数1〜4のアルキル基を表す。)
【0021】
式(1)中、Rは炭素数1〜20のアルキル基または芳香族炭化水素基を表し、R〜Rはそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、又は炭素数1〜4のアルキル基を表す。また炭素数1〜20のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、tert−ブチル基、2,2−ジメチルプロピル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、n−デシル基、ヘプタデシル基等が挙げられる。芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニル基、トリル基、4−トリフルオロメチルフェニル基、ビフェニル基、ナフチル基等が挙げられる。ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子等が挙げられる。炭素数1〜4のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、tert−ブチル基等が挙げられる。
【0022】
上記一般式(1)で表されるアミド化合物としては、以下の化4式の(a)〜(i)で示されるような例が挙げられるが、これらだけに限定されるものではない。これらの化合物は、1種でも2種以上を組み合わせても良い。
【0023】
【化4】

【0024】
上記一般式(1)で表されるアミド化合物を得るには、酸クロリドとアミノ化合物をテトラヒドロフラン(THF)溶媒中、ピリジンやN,N−ジイソプロピルエチルアミン存在下で反応させることで合成することができる。
【0025】
このアミド化合物の含有率は、それ自身を含む全構成分の総和に対して通常5〜80質量%、好ましくは10〜70質量%である。また、単独でも、2種以上を混合して用いてもよい。
【0026】
また本発明の感光性樹脂組成物に用いるエポキシ基を有する重合体としては、下記化5式の一般式(2)で表されるエポキシ基を有する構造単位を有する重合体が挙げられる。
【0027】
【化5】

(式中、Rは水素原子またはメチル基を表し、Rはエポキシ基を有する炭化水素基を表す。)
【0028】
上記式(2)中、Rは水素原子またはメチル基を表し、Rはエポキシ基を有する炭化水素基を表す。エポキシ基を有する炭化水素基としては、グリシジル基、3,4−エポキシ−1−シクロヘキシルメチル基、5,6−エポキシ−2−ビシクロ[2,2,1]ヘプチル基、5(6)−エポキシエチル−2−ビシクロ[2,2,1]ヘプチル基、5,6−エポキシ−2−ビシクロ[2,2,1]ヘプチルメチル基、3,4−エポキシトリシクロ[5.2.1.02,6]デシル基、3,4−エポキシトリシクロ[5.2.1.02,6]デシルオキシエチル基、3,4−エポキシテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデシル基、3,4−エポキシテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデシルメチル基等が挙げられる。
【0029】
上記一般式(2)の構造単位を有する重合体は、相当するエポキシ基含有炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステルを、公知の重合方法、例えば、溶液重合、懸濁重合、塊状重合等により重合すればよい。重合後、未反応モノマーや重合開始剤等を除去するため、公知の精製方法により精製するのが望ましい。また式(2)の構造単位は、1種でも2種以上を組み合わせても良い。
【0030】
さらに本発明に用いる重合体では、上記一般式(2)以外の構造単位を含むことが可能である。例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル、スチレン等のビニル系モノマー由来の構造単位が挙げられる。
【0031】
一般式(2)で表される構造単位は、ポリマー全体の構成単位数に対して、10〜100%の範囲が好ましい。
【0032】
また、得られる重合体の質量平均分子量(Mw)は、1,000以上が好ましく、4,000以上がより好ましい。また、1,000,000以下が好ましく、500,000以下がより好ましい。
【0033】
重合体の含有率は、それ自身を含む全構成分の総和に対して通常10〜90質量%、好ましくは20〜80質量%である。また、単独でも、2種以上を混合して用いてもよい。
【0034】
また、本発明の感光性樹脂組成物は、上記アミド系化合物、エポキシ基を有する重合体と光酸発生剤に加え、さらにエポキシ基を有する重合体以外のエポキシ化合物を含んでいても良い。このようなエポキシ基を有する重合体以外のエポキシ化合物としては、例えば、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、1,2−シクロヘキサンカルボン酸ジグリシジルエステル、3,4−エポキシシクロヘキサンカルボン酸3,4−エポキシシクロヘキシルメチル、トリスエポキシプロピルイソシアヌレート、2−エポキシエチルビシクロ[2,2,1]ヘプチルグリシジルエーテル、エチレングリコールビス(2−エポキシエチルビシクロ[2,2,1]ヘプチル)エーテル、ビス(2−エポキシエチルビシクロ[2,2,1]ヘプチル)エーテル等が挙げられる。
【0035】
また、これらエポキシ化合物を加える場合、その含有率は、それ自身を含む全構成分の総和に対して通常1〜70質量%、好ましくは5〜60質量%である。また、単独でも、2種以上を混合して用いてもよい。
【0036】
また、本発明に用いる光酸発生剤としては、露光に用いる光の光照射により酸を発生する光酸発生剤であることが望ましく、本発明における重合体などとの混合物が有機溶媒に十分に溶解し、かつその溶液を用いて、スピンコ−トなどの製膜法で均一な塗布膜が形成可能なものであれば特に制限されない。また、単独でも、2種以上を混合して用いてもよい。
【0037】
本発明において、使用可能な光酸発生剤の例としては、例えば、トリアリールスルホニウム塩誘導体、ジアリールヨ−ドニウム塩誘導体、ジアルキルフェナシルスルホニウム塩誘導体、ニトロベンジルスルホナート誘導体、N−ヒドロキシナフタルイミドのスルホン酸エステル、N−ヒドロキシスクシイミドのスルホン酸エステル誘導体等が挙げられるが、これらだけに限定されるものではない。
【0038】
光酸発生剤の含有率は、感光性樹脂組成物の十分な感度を実現し、良好なパターン形成を可能とする観点から、アミド化合物、重合体、エポキシ化合物及び光酸発生剤の総和に対して0.1質量%以上が好ましく、0.5質量%以上がより好ましい。一方、均一な塗布膜の形成を実現し、導波路の特性を損なわない観点から、15質量%以下が好ましく、7質量%以下がより好ましい。
【0039】
また本発明の感光性樹脂組成物は、上記アミド系化合物、重合体、光酸発生剤、エポキシ化合物に加え、光導波路としての特性を損なわない範囲で種々の添加剤を加えてもよい。そのような添加剤としては、例えばアルミナ、シリカ、ガラス繊維、ガラスビーズ、シリコーン、酸化チタン、金属酸化物等が挙げられる。これらの添加剤を加えることで、耐クラック性、耐熱性を向上したり、低弾性率化を図ったり、導波路の反りを改善できる。
【0040】
なお、上記感光性樹脂組成物を調製する際に、必要に応じて、適当な溶剤を用いる。溶剤としては、感光性樹脂組成物が充分に溶解でき、その溶液をスピンコート法などの方法で均一に塗布できる有機溶媒等であれば特に制限されない。具体的には、γ−ブチロラクトン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、乳酸エチル、2−ヘプタノン、酢酸2−メトキシブチル、酢酸2−エトキシエチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、N−メチル−2−ピロリドン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、メチルイソブチルケトン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等を使用することができる。これらは、単独でも2種類以上を混合して用いてもよい。
【0041】
さらに、必要に応じて密着性向上剤、塗布性改良剤などの他の成分を添加して、本発明の感光性樹脂組成物を調製することもできる。
【0042】
本発明の感光性樹脂組成物の特徴は、露光することにより組成物中に含まれる光酸発生剤が酸を生成し、この酸により架橋反応が促進され、その後、熱硬化させることにより、露光部と未露光部とで屈折率に差が生じるものである。すなわち、露光部では、未露光部よりも屈折率が低下することが特徴である。また、架橋度の違いにより露光部と未露光部とに溶解性の差が生じ、現像処理を施すことで未露光部のみを選択的に除去することが可能である。
【0043】
<光導波路パターンの形成方法>
本発明によるポリマー光導波路の製造について説明する。ポリマー光導波路は屈折率の高いコアと屈折率の低いクラッドからなるものであり、コアをクラッドで取り巻く形状に形成されるが、少なくとも以下の工程を含む導波路パターンの形成方法により得られる。
【0044】
(1)適宜の基板上に下部クラッド層を形成する第1のクラッド層形成工程と、
(2)本発明の感光性樹脂組成物を上記下部クラッド層上に塗布する塗布工程と、
(3)プリベークを行うプリベーク工程と、
(4)上記感光性樹脂組成物層にマスクを介してコア層となる領域以外、すなわち、コア層の側面に形成される中間クラッド層となるべき領域に紫外線などの化学線を照射する化学線照射工程と、
(5)露光後加熱を行う熱処理工程と、
(6)上記加熱後の樹脂組成物層の上に上部クラッド層を形成する第2のクラッド層形成工程の順である。
【0045】
また本発明では、上記下部クラッドと上部クラッドの何れか一方又は両方を本発明の感光性樹脂組成物を用いて同様に化学線を照射して形成してもよい。
【0046】
また本発明のポリマー光導波路は、現像処理を行う従来公知の方法によっても得ることができる。すなわち、
(1)適宜の基板上に下部クラッド層を形成する第1のクラッド層形成工程と、
(2)本発明の感光性樹脂組成物を上記下部クラッド層上に塗布する塗布工程と、
(3)プリベークを行うプリベーク工程と、
(4)上記感光性樹脂組成物層にマスクを介してコア層となるべき領域に紫外線などの化学線を照射する化学線照射工程と、
(5)露光後加熱を行う熱処理工程と、
(6)現像を行い、未露光部を除去する現像工程と、
(7)ポストベークを行い、コア層を形成するポストベーク工程と、
(8)上記形成されたコア層及び下部クラッド層の上に中間及び上部クラッド層を形成する第2のクラッド層形成工程を少なくとも含む。また上記下部クラッドと中間及び上部クラッドの何れか一方又は両方を本発明の感光性樹脂組成物を用いて同様に化学線を照射して形成してもよいが、その場合、コア層よりも屈折率が低くなる組成を選択して使用する。
【0047】
以下に、本発明によるポリマー光導波路の製造方法の例を図1及び図2を用いて詳細に説明する。
【0048】
(A)現像工程を含まないポリマー光導波路の製造方法:
図1は、本発明の現像工程を含まないポリマー光導波路の製造方法の一例を示す断面図である。
【0049】
まず、適宜の基板上に下部クラッド層を形成する。この下部クラッド層は、例えば、図1(a)に示すように本発明の感光性樹脂組成物を基板1上に塗布し、プリベークすることで感光性樹脂組成物層2を形成する。
【0050】
次に、図1(b)に示すように、化学線を全面露光し、熱処理(ベーク)工程を行うことで該樹脂組成物層2を低屈折率化することで下部クラッド層3を形成する。この下部クラッド層3は、その屈折率と同等の屈折率になる他の任意の感光性樹脂組成物を用い、化学線または熱処理によって得られるものであってもよい。なお、本発明において、上記基板1としては、例えば、シリコン基板、ガラス基板、石英基板、ガラスエポキシ基板、金属基板、セラミック基板、高分子フィルム、または各種基板上に高分子フィルムが形成された基板等を用いることができるが、これらに限定されるものではない。
【0051】
次に、図1(c)に示すように上記下部クラッド層3の上に本発明の感光性樹脂組成物を塗布し、プリベークすることで、感光性樹脂組成物層2を形成する。感光性樹脂組成物を塗布する方法は、特に限定されるものではなく、例えば、スピンコータを用いた回転塗布、スプレーコータを用いた噴霧塗布、浸漬、印刷、ロールコーティング等を用いることができる。またプリベーク工程は、塗布した感光性樹脂組成物を乾燥して、感光性樹脂組成物中の溶剤を除去し、塗布した感光性樹脂組成物を定着させるための工程である。プリベーク工程は、通常、60〜160℃で行われる。
【0052】
次いで、図1(d)に示すように、上記感光性樹脂組成物層2にフォトマスク4を介して、中間クラッド層5に対応する領域のみに化学線を照射し、さらに熱処理することで、感光性樹脂組成物の中間クラッド層5に対応する領域のみが露光および熱処理がされて低屈折率化される。
【0053】
一方、図1(d)に示すように、コア層6に対応する領域では、露光されず熱処理だけなので、コア層6に対応する領域の屈折率は中間クラッド層5に対応する領域に比べ屈折率が高くなり、低屈折率の中間クラッド層5が形成されるとともに屈折率の高いコア層6が形成される。
【0054】
露光工程は、フォトマスク4を介して感光性樹脂組成物層2を選択的に露光し、フォトマスク4上の導波路パターンを感光性樹脂組成物層2に転写する工程である。ここで、前記及び後述の全面露光及び当該パターン露光に用いる化学線としては、紫外線、可視光線、エキシマレーザ、電子線、X線等が使用できるが、180〜500nmの波長の化学線が好ましい。
【0055】
また露光後加熱する熱処理工程は、空気中又は不活性ガス雰囲気下、通常80〜250℃で行われる。また露光後加熱する熱処理工程は一段階で行ってもよいし多段階で行ってもよい。
【0056】
さらに、図1(e)に示すように、露光後加熱された感光性樹脂組成物層2の上に本発明の感光性樹脂組成物を塗布し、化学線を全面露光し、熱処理することで低屈折率化し、図1(f)のように上部クラッド層7を形成する。この上部クラッド層7は、その屈折率と同等の屈折率になる他の任意の感光性樹脂組成物を用い、化学線または熱処理によって得られるものであってもよい。このようにして、高屈折率のコア層6を、低屈折率の下部クラッド層3、中間クラッド層5、上部クラッド層7で囲んで形成されるポリマー光導波路を作製することができる。さらに、この後、図1(g)に示すように、前記基板1をエッチング等の方法によって除去することで、ポリマー光導波路10を得ることができる。又、基板1として可撓性の高分子フィルムなどを採用すれば、フレキシブルなポリマー光導波路を得ることができる。
【0057】
(B)現像工程を含むポリマー光導波路の製造方法:
図2は本発明の現像工程を含むポリマー光導波路の製造方法の各工程の一例を順に示す断面図である。まず、適宜の基板1上に下部クラッド層3を形成する。この下部クラッド層3は、例えば、図2(a)に示すように本発明の感光性樹脂組成物を基板1上に塗布し、プリベークすることで上記感光性樹脂組成物層2を形成する。次に、図2(b)に示すように、紫外線を全面露光し、熱処理(ベーク)工程を行うことで該樹脂層2を低屈折率化し、下部クラッド層3を形成する。この下部クラッド層3は、その屈折率と同等の屈折率になる他の任意の感光性樹脂組成物を用い、化学線または熱処理によって得られるものであってもよい。
【0058】
本発明において、上記基板1としては、例えば、シリコン基板、ガラス基板、石英基板、ガラスエポキシ基板、金属基板、セラミック基板、高分子フィルム、または各種基板上に高分子フィルムが形成された基板等を用いることができるが、これらに限定されるものではない。
【0059】
次に、図2(c)に示すように上記下部クラッド層3の上に本発明の感光性樹脂組成物を塗布し、プリベークすることで、感光性樹脂組成物層2’を形成する。感光性樹脂組成物層2’の形成には、下部クラッド層3の屈折率より高屈折率となる組成を選択して使用する。屈折率の調整は、例えば、感光性樹脂組成物中に含まれるエポキシ基を有する重合体を共重合化することで調節を行うことができる。感光性樹脂組成物を塗布する方法は、特に限定されるものではなく、例えば、スピンコータを用いた回転塗布、スプレーコータを用いた噴霧塗布、浸漬、印刷、ロールコーティング等を用いることができる。また、プリベーク工程は、塗布した感光性樹脂組成物を乾燥して、感光性樹脂組成物中の溶剤を除去し、塗布した感光性樹脂組成物を感光性樹脂組成物層2’として定着させるための工程である。プリベーク工程は、通常、60〜160℃で行われる。
【0060】
次いで、図2(d)に示すように、上記感光性樹脂組成物層2’にフォトマスク4を介して、コア層6’に対応する領域に化学線を照射し、さらに露光後加熱処理を行いし、次いで有機溶剤で現像を行い、未露光部を除去した後、さらにポストベークすることで下部クラッド層3上に屈折率の高いコア層6’が形成される。なおこの場合、コア層6’形成に用いる感光性樹脂組成物は、クラッド層形成に用いた感光性樹脂組成物に比べ、露光及び加熱処理によって屈折率が高くなるように適宜組成を調整しておく。
【0061】
露光工程は、フォトマスク4を介して感光性樹脂組成物層2’を選択的に露光し、フォトマスク4上の導波路パターンを感光性樹脂組成物層2’に転写する工程である。前記及び後述の全面露光及び当該パターン露光に用いる化学線としては、紫外線、可視光線、エキシマレーザ、電子線、X線等が使用できるが、180〜500nmの波長の化学線が好ましい。
【0062】
また露光後加熱処理する熱処理工程は、空気中又は不活性ガス雰囲気下、通常80〜160℃で行われる。
【0063】
また、現像工程は、感光性樹脂組成物層2’の未露光部を有機溶剤で溶解除去し、コア層6’を形成する工程である。上述の露光および露光後加熱工程により、感光性樹脂組成物層2’の露光部と未露光部の現像液に対する溶解性の差(溶解コントラスト)が生じる。この溶解コントラストを利用することにより、感光性樹脂組成物の未露光部が溶解して除去されたコアパターンが得られる。ここで、有機溶剤としては、具体的には、γ−ブチロラクトン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、乳酸エチル、2−ヘプタノン、酢酸2−メトキシブチル、酢酸2−エトキシエチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、N−メチル−2−ピロリドン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、メチルイソブチルケトン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等を使用することができる。これらは、単独でも2種類以上を混合して用いてもよい。現像方法としては、パドル、浸漬、スプレー等の方法が可能である。現像工程後、形成したパターンを水または現像で用いた有機溶剤等でリンスする。
【0064】
またポストベーク工程は、空気中又は不活性ガス雰囲気下、通常100〜250℃で行われる。またポストベーク工程は一段階で行ってもよいし多段階で行ってもよい。
【0065】
さらに、図2(e)に示すように、コア層6’が形成された上に本発明の感光性樹脂組成物を塗布し、化学線を全面露光し、熱処理することで低屈折率化し、図2(f)のように中間クラッド及び上部クラッド(中間及び上部クラッド層5’)を一括して形成する。この中間及び上部クラッド層5’は、その屈折率と同等の屈折率になる他の任意の感光性樹脂組成物を用い、紫外線または熱処理によって得られるものであってもよい。このようにして、高屈折率のコア層6’を、低屈折率の下部クラッド層3、中間及び上部クラッド層5’で囲んで形成されるポリマー光導波路を作製することができる。
【0066】
さらに、この後、図2(g)に示すように、前記基板1をエッチング等の方法によって除去することで、ポリマー光導波路20を得ることができる。又、基板1として可撓性の高分子フィルムなどを採用すれば、フレキシブルなポリマー光導波路を得ることができる。
【0067】
以上のように、本発明の感光性樹脂組成物は、導波路パターンを精度よく形成でき、かつ形成した光導波路は優れた伝送特性(低い伝播損失)を有するため、光導波路形成用材料として好適できる。
【実施例】
【0068】
以下に、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。
【0069】
(合成例1)
下記構造のアミド化合物、即ち、下記化6式で表わされる上記一般式(1)において、R1がt−ブチル基、R〜Rが水素原子であるアミド化合物の合成。
【0070】
【化6】

【0071】
o−アミノフェノール22.9gとN,N−ジイソプロピルエチルアミン40.68gをTHF250mlに溶解し、氷冷する。そこにピバロイルクロリド25.3gを滴下し、氷冷下2時間、室温で一晩攪拌する。反応混合物を水1Lに注ぎ、有機層をジエチルエーテル600mlで抽出する。ジエチルエーテル層を0.2N塩酸、食塩水、水の順に洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥する。減圧下ジエチルエーテルを留去し、固化した残渣を酢酸エチルで再結することで白色粉末のN-(2−ヒドロキシフェニル)ピバルアミド23.72g得た(収率58%)。
【0072】
(合成例2)
下記構造のアミド化合物、即ち、下記化7式で表わされる上記一般式(1)において、R1が2,2−ジメチルプロピル基、R〜Rが水素原子であるアミド化合物の合成。
【0073】
【化7】

【0074】
合成例1と同様に、但し、ピバロイルクロリドに代えてt−ブチルアセチルクロリドを用いて合成することで、白色のN−(2−ヒドロキシフェニル)t−ブチルアセチルアミドを得た(収率47%)。
【0075】
(合成例3)
下記構造の重合体、即ち下記化8式で表わされる上記一般式(2)において、Rが水素原子、Rが3,4−エポキシトリシクロ[5.2.1.02,6]デシルオキシエチル基である重合体の合成。
【0076】
【化8】

【0077】
3,4−エポキシトリシクロ[5.2.1.02,6]デシルオキシエチルアクリレート20gをTHF200mlに溶解し、そこに2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)0.62gを加え、アルゴン雰囲気下、2時間加熱還流させる。放冷後、ヘキサン1000mlに再沈し、析出したポリマーをろ別し、もう一度再沈精製することで目的のポリマーを16g得た(収率80%)。またGPC分析により質量平均分子量(Mw)は19800(ポリスチレン換算)、分散度(Mw/Mn)は2.65であった。
【0078】
(合成例4)
下記構造の重合体、即ち、下記化9で表わされる上記一般式(2)において、Rが水素原子、Rが3,4−エポキシトリシクロ[5.2.1.02,6]デシルオキシデシル基である構造単位が50モル%と、5−アクロイルオキシ−2,6−ノルボルナンラクトンである構造単位が50モル%から構成される重合体の合成。
【0079】
【化9】

【0080】
3,4−エポキシトリシクロデシルオキシエチルアクリレート17.77gと5−アクリロイル−2,6−ノルボルナンカルボラクトン14gをTHF180mlに溶解し、そこに2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)1.104gを加え、アルゴン雰囲気下、1時間加熱還流させる。放冷後、メタノール1.5Lに再沈し、析出したポリマーをろ別し、もう一度再沈精製することで目的のポリマーを27.32g得た(収率86%)。また、GPC分析により質量平均分子量(Mw)は16800(ポリスチレン換算)、分散度(Mw/Mn)は3.22であった。
【0081】
(合成例5)
下記構造の重合体、即ち下記化10式で上記一般式(2)において、Rが水素原子、Rが3,4−エポキシトリシクロ[5.2.1.02,6]デシル基である構造単位が50モル%とフェノキシエチルアクリレートである構造単位が50モル%から構成される重合体の合成。
【0082】
【化10】

【0083】
3,4−エポキシトリシクロデシルアクリレート25gと、フェノキシエチルアクリレート21.82gをTHF140mlに溶解し、そこに2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)1.118gを加え、アルゴン雰囲気下、2時間加熱還流させた。放冷後、ヘキサン1500mlに再沈し、析出したポリマーをろ別し、もう一度再沈精製することで目的のポリマーを40.3g得た(収率86%)。またGPC分析により重量平均分子量(Mw)は9300(ポリスチレン換算)、分散度(Mw/Mn)は2.26であった。
【0084】
(実施例1)
以下の表1に示す組成からなる感光性樹脂組成物を調製した。
【0085】
【表1】

【0086】
以上の混合物を0.45μmのテフロン(登録商標)製フィルターを用いてろ過し、感光性樹脂組成物を調製した。4インチシリコン基板上に、上記感光性樹脂をスピンコート塗布し、110℃で20分間オーブンでベークし、塗布膜を2枚形成した。次に、1枚目は紫外線(波長λ=350〜450nm)を全面露光し、次いで90℃で10分加熱処理した後、窒素雰囲気下150℃で30分間、さらに220℃で1時間ベークした。残りの一枚については、紫外線を照射せず、90℃で10分加熱処理した後、窒素雰囲気下150℃で30分間、さらに220℃で1時間ベークした。次に各サンプルについて、メトリコン社のプリズムカプラを用いて633nmの屈折率を測定した。その結果、紫外線を照射した膜の屈折率は1.512、紫外線を照射していない膜の屈折率は1.521であった。この結果から、本発明の感光性樹脂組成物は、同一の樹脂組成であっても紫外線照射と未照射で屈折率に差が発現することが示された。
【0087】
(実施例2)
以下の表2に示す組成からなる感光性樹脂組成物を調製した。
【0088】
【表2】

【0089】
以上の混合物を0.45μmのテフロン(登録商標)製フィルターを用いてろ過し、感光性樹脂組成物を調製した。次に4インチシリコン基板上に、上記感光性樹脂をスピンコート塗布し、110℃で20分間オーブンでベークし、膜厚20μmの膜を形成した。次に、紫外線(波長λ=350〜450nm)を500mJ/cm2全面露光し、露光後90℃で10分間オーブンでベークし、さらに、窒素雰囲気下、150℃で1時間、さらに220℃で1時間ベークすることで下部クラッド層を形成した。次に、上記感光性樹脂組成物を下部クラッド層上にスピンコート塗布し、110℃で30分間オーブンでベークし、膜厚50μmの膜を形成した。次に、フォトマスクを介して、紫外線(波長λ=350〜450nm)を500mJ/cm2露光した。露光後、90℃で10分間オーブンでベークし、さらに、窒素雰囲気下、150℃で1時間、さらに220℃で1時間ベークすることでパターン化されたコア層と中間クラッド層とを形成した。次に、上記感光性樹脂をコア層と中間クラッド層が形成された上にスピンコート塗布し、110℃で20分間オーブンでベークし、膜厚20μmの膜を形成した。次に、紫外線(波長λ=350〜450nm)を500mJ/cm2全面露光し、露光後90℃で10分間オーブンでベークし、さらに、窒素雰囲気下、150℃で1時間、さらに220℃で1時間ベークすることで上部クラッド層を形成し、ポリマー光導波路を得た。
【0090】
この光導波路の端面をダイサーにてダイシングした後、波長850nmにてカットバック法を用いて、この光導波路の伝播損失評価を行った。伝播損失は0.5dB/cmであった。又、クラッド層の断面形状は矩形であった。
【0091】
(実施例3)
以下の表3に示す組成からなる感光性樹脂組成物を調製した。
【0092】
【表3】

【0093】
以上の混合物を0.45μmのテフロン(登録商標)製フィルターを用いてろ過し、感光性樹脂組成物を調製した。次に4インチシリコン基板上に、上記感光性樹脂をスピンコート塗布し、110℃で20分間オーブンでベークし、膜厚20μmの膜を形成した。次に、紫外線(波長λ=350〜450nm)を600mJ/cm2全面露光し、露光後90℃で10分間オーブンでベークし、さらに、窒素雰囲気下、150℃で1時間、さらに220℃で1時間ベークすることで下部クラッド層を形成した。次に、上記感光性樹脂組成物を下部クラッド層上にスピンコート塗布し、110℃で20分間オーブンでベークし、膜厚50μmの膜を形成した。次に、フォトマスクを介して、紫外線(波長λ=350〜450nm)を600mJ/cm2露光した。露光後、90℃で10分間オーブンでベークし、さらに、窒素雰囲気下、150℃で1時間、さらに220℃で1時間ベークすることでパターン化されたコア層と中間クラッド層とを形成した。次に、上記感光性樹脂をコア層と中間クラッド層が形成された上にスピンコート塗布し、110℃で20分間オーブンでベークし、膜厚20μmの膜を形成した。次に、紫外線(波長λ=350〜450nm)を600mJ/cm2全面露光し、露光後90℃で10分間オーブンでベークし、さらに、窒素雰囲気下、150℃で1時間、さらに220℃で1時間ベークすることで上部クラッド層を形成し、ポリマー光導波路を得た。
【0094】
この光導波路の端面をダイサーにてダイシングした後、波長850nmにてカットバック法を用いて、この光導波路の伝播損失評価を行った。伝播損失は0.55dB/cmであった。又、クラッド層の断面形状は矩形であった。
【0095】
(実施例4)
以下の表4に示す組成からなる下部クラッド及び上部クラッド形成用感光性樹脂組成物を調製した。
【0096】
【表4】

【0097】
また、以下の表5に示す組成からなるコア形成用感光性樹脂組成物を調製した。
【0098】
【表5】

【0099】
以上の混合物を0.45μmのテフロン(登録商標)製フィルターを用いてろ過し、感光性樹脂組成物を調製した。次に4インチシリコン基板上に、上記下部クラッド形成用感光性樹脂をスピンコート塗布し、110℃で20分間オーブンでベークし、膜厚20μmの膜を形成した。次に、紫外線(波長λ=350〜450nm)を550mJ/cm2全面露光し、露光後90℃で10分間オーブンでベークし、さらに、窒素雰囲気下、150℃で1時間、220℃で1時間ベークすることで下部クラッド層を形成した。次に、上記コア形成用感光性樹脂をスピンコート塗布し、90℃で30分間オーブンでベークし、膜厚50μmの膜を形成した。次に、フォトマスクを介して紫外線(波長λ=350〜450nm)を600mJ/cm2照射し、次いで90℃で10分間オーブンでベークした。次にγ−ブチロラクトンで3分間浸漬法による現像を行い、続けて2分間純水でリンス処理をそれぞれおこなった。その結果、感光性樹脂膜の未露光部分のみが現像液に溶解除去されコアパタ−ンが得られた。次に、窒素雰囲気下、150℃で1時間、220℃で1時間ベークすることでコア層を完全に硬化させコア層を形成した。次いで、上記下部クラッド形成用感光性樹脂をスピンコート塗布し、110℃で20分間オーブンでベークし、膜厚20μmの膜を形成した。次に、紫外線(波長λ=350〜450nm)を550mJ/cm2全面露光し、露光後90℃で10分間オーブンでベークし、さらに、窒素雰囲気下、150℃で1時間、220℃で1時間ベークすることで上部クラッド層を形成し、ポリマー光導波路を得た。
【0100】
この光導波路の端面をダイサーにてダイシングした後、波長850nmにてカットバック法を用いて、この光導波路の伝播損失評価を行った。伝播損失は0.35dB/cmであった。又、クラッド層の断面形状は矩形であった。
【産業上の利用可能性】
【0101】
以上の説明から明らかなように、本発明のポリマー光導波路形成用感光性樹脂組成物を用いることで、光導波路パターンを精度よく形成でき、かつ形成した光導波路は優れた伝送特性(低い伝播損失)を有するため、光導波路形成用材料として好適である。
【図面の簡単な説明】
【0102】
【図1】本発明による感光性樹脂組成物によるポリマー導波路の製造工程の一例を示す図であり、(a)〜(g)はそれぞれ各工程を順に示す概略断面図である。
【図2】本発明による感光性樹脂組成物によるポリマー導波路の製造工程の他の一例を示す図であり、(a)〜(g)はそれぞれ各工程を順に示す概略断面図である。
【符号の説明】
【0103】
1 基板
2,2’ 感光性樹脂組成物層
3 下部クラッド層
4 フォトマスク
5 中間クラッド層
5’ 中間及び上部クラッド層
6,6’ コア層
7 上部クラッド層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化1式の一般式(1)で表されるアミド化合物とエポキシ基を有する重合体と光酸発生剤を少なくとも含有する光導波路形成用感光性樹脂組成物。
【化1】

(式中、Rは炭素数1〜20のアルキル基または芳香族炭化水素基を表し、R〜Rはそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、または炭素数1〜4のアルキル基を表す。)
【請求項2】
請求項1に記載の光導波路形成用感光性樹脂組成物において、前記エポキシ基を有する重合体が、少なくとも下記化2式の一般式(2)で表される構造単位を含むことを特徴とする光導波路形成用感光性樹脂組成物。
【化2】

(式中、Rは水素原子またはメチル基を表し、Rはエポキシ基を有する炭化水素基を表す。)
【請求項3】
請求項1または2に記載の光導波路形成用感光性樹脂組成物において、前記光導波路形成用感光性樹脂組成物は、エポキシ化合物をさらに含むことを特徴とする光導波路形成用感光性樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1ないし3の内のいずれか1項に記載の光導波路形成用感光性樹脂組成物において、前記光導波路形成用感光性樹脂組成物は、アルミナ、シリカ、ガラス繊維、ガラスビーズ、シリコーン、酸化チタン、金属酸化物からなる群より選択される少なくとも一つの添加剤をさらに含むことを特徴とする光導波路形成用感光性樹脂組成物。
【請求項5】
コア層と、前記コア層に積層して形成されるクラッド層を有する光導波路であって、前記コア層および前記クラッド層のいずれかまたは両方が、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の光導波路形成用感光性樹脂組成物の硬化物からなることを特徴とする光導波路。
【請求項6】
基板上に下部クラッド層を形成する第1のクラッド層形成工程と、
請求項1ないし4のいずれか1項に記載の光導波路形成用感光性樹脂組成物を上記下部クラッド層上に塗布する塗布工程と、
プリベークを行うプリベーク工程と、
上記光導波路形成用樹脂組成物層にマスクを介してコア層となる領域以外に化学線を照射する化学線照射工程と、
露光後加熱を行う熱処理工程と、
上記加熱後の樹脂組成物層の上に上部クラッド層を形成する上部クラッド層形成工程と
を含むことを特徴とする光導波路パターンの形成方法。
【請求項7】
請求項6に記載の光導波路パターンの形成方法において、前記下部クラッド層と上部クラッド層の何れか一方または両方が、前記光導波路形成用樹脂組成物に化学線を照射したのち硬化させてなるものであることを特徴とする光導波路パターンの形成方法。
【請求項8】
基板上に下部クラッド層を形成する第1のクラッド層形成工程と、
請求項1ないし4のいずれか1項に記載の光導波路形成用樹脂組成物を上記下部クラッド層上に塗布する塗布工程と、
プリベークを行うプリベーク工程と、
上記光導波路形成用樹脂組成物層にマスクを介してコア層となる領域に化学線を照射する化学線照射工程と、
露光後加熱を行う熱処理工程と、
現像を行い、未露光部を除去する現像工程と、
ポストベークを行い、コア層を形成するポストベーク工程と、
上記形成されたコア層及び下部クラッド層の上に中間及び上部クラッド層を形成する第2のクラッド層形成工程と
を含むことを特徴とする光導波路パターンの形成方法。
【請求項9】
請求項8に記載の光導波路パターンの形成方法において、前記下部クラッド層と中間及び上部クラッド層の何れか一方または両方が、前記光導波路形成用樹脂組成物であって、コア層よりも低屈折率となる組成の組成物に化学線を照射したのち硬化させてなるものであることを特徴とする光導波路パターンの形成方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−78924(P2010−78924A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−247277(P2008−247277)
【出願日】平成20年9月26日(2008.9.26)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】