説明

ポリマー支持体表面にハイドロゲル形成ポリマーを固定化するための方法

【課題】
【解決手段】 本発明は、ポリマーハイドロゲルを対応するポリマー支持体表面に固定化するための方法、及び、少なくともある領域において固定化されるポリマーハイドロゲル層が提供されるポリマー支持体に関する。本発明は、特に、生体適合性ハイドロゲルコーティングのような(例えば、血液透析の際の血液と接触する表面のコーティングのような、及び、尿カテーテル、静脈カテーテル、ステント、及び他の表面のコーティングような)メディカルテクノロジーの分野に適用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリマーハイドロゲルを対応するポリマー支持体表面に固定化する方法、並びに、少なくともある領域において、その表面に固定化されたポリマーハイドロゲル層を有するポリマー支持体に関する。本発明は、特に、メディカルテクノロジー分野における生体適合性ハイドロゲルコーティングとして、(例えば、血液と接触する表面のためのコーティング(血液透析のように)として並びに尿カテーテル、静脈カテーテル、ステント及びその他の表面のためのコーティングとして)の用途を有する。
【背景技術】
【0002】
体液(特に、血液)と接触する表面の生体適合性を高めるため、ハイドロゲルコーティングが使用される。これらのタイプのハイドロゲルコーティングは、外来物質に対する身体の自己防御系を活性化し且つ血液凝固を促進させる表面を占める細胞及びタンパク質を減少させると考えられる。これらのタイプのハイドロゲルコーティングは、また、対応する支持体上を流れる水溶液の能力を高め、また、それらのぬれ性(wettability)を改善するために適用される。
【0003】
このために使用されるハイドロゲルの既知の例は、ポリエチレングリコール(PEG)及びポリビニルピロリドン(PVP)(これらは、既に、対応するメディカルテクノロジー製品が製造されるときに、各々のベースポリマーのマトリックス中に挿入されている)である。もし、融解された(molten)又は溶解された(dissolved)形態のベースポリマーがハイドロゲル化合物と混合され得なければ、支持体表面は後にそれらでコーティングされ得る。
【0004】
これらのタイプのハイドロゲルを、処理される支持体へ共有結合的に固定化する様々な既知の方法がある。例えば、短時間のγ線又はX線範囲における電磁放射線(electromagnetic radiation)が使用され、あまり化学的に反応性でない表面でさえもハイドロゲルを固定化することができる。しばしば、反応性の中間生成物が、使用されるベースポリマー内の深部で生成される。生成物の色及び機械的安定性は、また、悪い方向へ変化し得る。
【0005】
純粋に化学的に固定化する方法において、一般的に、あまり反応性でない支持体材料は、コ−ティングされる表面へリガンドを結合するために、例えば、クロロスルホン酸のような腐食性試薬(corrosive regents)によって活性化される。これは、腐食性又は毒性試薬に伴う技術的生産上の問題を生じる。しかし、ポリビニルピロリドンの場合、例えば、ポリプロピレン(PP)又はポリビニルクロライド(PVC)のようなポリマー支持体表面へ対応するハイドロゲルを結合することが困難であることが証明された。
【0006】
US−A−6,159,645は、4,4’−ジアジドスチレン−2,2−ジスルホン酸のナトリウム塩がフォトイニシエーターとして使用される、エレクトロニクス産業における受像管(picture tubes)の製造においてポリビニルピロリドンを架橋する方法を記載している。しかしながら、このナトリウム塩は、毒物学的理由のため、メディカルテクノロジー製品の製造において問題である。
【0007】
ビタミンB2(リボフラビン)は、長い間、アクリルアミド又はビニルピロリドンのような反応性モノマーの重合のためのフォトイニシエーターとして知られてきた(US−A−2 850 445を参照のこと)。均一溶液におけるモノマー−イニシエーター混合物のUV照射の後、対応するハイドロゲル(これは、特に架橋されたときに、沈殿する)が形成される。上記US特許は、モノマーユニットからのハイドロゲルの形成を提供する。特に、生化学的分析の分野において、フォトイニシエーターとしてビタミンB2を用い、重合を開始する方法が知られている。ここで、それにより製造されるポリアクリルアミドゲルは、タンパク質の電気泳動分離のためのマトリックスとして使用される。非常にセンシティブなタンパク質の場合、より一般的に使用されるアンモニウムペルオキソジサルフェート(APS)/N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン(TEMED)イニシエーターシステムは、リボフラビンンにより置き換えられ、何故ならそれは、特に穏やかであることが知られているためである。これは、例えば、フォトイニシエーターとしてリボフラビンとともにハイドロゲルマトリックス中へ生きている細胞を含めることを可能にする(US−A−6,224,893を参照のこと)。この方法において、反応後に細胞を含む相互浸透ネットワーク(interpenetrating network)を形成する反応性モノマー及びポリマーの混合物が使用される。
【0008】
US 2002/0122872 A1は、例えば、フォトイニシエーターとしてチオキサントンを使用する材料の表面をコーティングする方法を記載する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、ポリマー表面にハイドロゲルを固定化するためのシンプルで、安価で且つ十分に穏やかな方法を提供するという問題に基づく。このタイプの方法は、ポリマー表面における不都合な変化を引き起こさず、毒物学的に安全でないイニシエーター(これは、製造プロセス中の作業員の安全を冒し、又は、製造されたハイドロゲル層中に汚染物質(contaminant)として残る)を用いない。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この問題は、請求項において特徴付けられる実施形態によって解決される。
【0011】
特に、少なくとも1種のハイドロゲル形成ポリマー及び少なくとも1種の非毒性フォトイニシエーター化合物を含有する組成物をポリマー支持体の表面へ塗布して少なくともある領域においてハイドロゲル層を形成し、次いで、ハイドロゲル層を電磁放射線を用いる処理に供し、その結果ハイドロゲルがポリマー支持体表面に固定化されてその上にハイドロゲル層を形成する、ポリマー支持体の表面にポリマーハイドロゲルを固定化するための方法が提供される。本発明は、従って、対応するモノマーからハイドロゲルを製造する技術の状況においてよく知られている方法と対照的に、ポリマー表面の既に完成したハイドロゲルの固定又は固着を提供する。本発明に従って、ポリマー表面がハイドロゲルで物理的にコーティングされた後に、ハイドロゲルの固定化が行われる。
【0012】
好ましくは、ハイドロゲル−形成ポリマーは、ポリビニルピロリドン、ポリアルキレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリエチレンイミン又はポリビニルアミンベースであり、より好ましくは、ポリビニルピロリドン又はポリアルキレングリコールベースであり、そして最も好ましくは、ポリビニルピロリドンベースである。
【0013】
ポリビニルピロリドン(PVP)−ベースのポリマーとしては、ポリビニルピロリドン、ポリビニルピロリドンを含有するコポリマー、及び、ポリビニルピロリドンの誘導体又はそのコポリマーが挙げられる。ポリビニル−ピロリドンベースのポリマーのK値は、特に限定されない。好ましくは、ポリビニルピロリドン−ベースのポリマーは15〜120の範囲におけるK値、特に好ましくは120のK値を有する。K値は、分子量の程度である(H. Fikentscher, Cellulose Chemistry 13 (1932), 58〜64及び71〜74ページ)。ポリマーのK値は、本発明において使用されるPVPポリマーの重合条件下における温度及びpH値、出発量を用いて設定され得る。本発明に従って、ポリビニルピロリドンを含有するコポリマーを使用することもまた可能である。これらのタイプのコポリマー中で、少なくとも50%、より好ましくは75%のモノマーユニットがビニルピロリドンモノマーであることが好ましい。例えば、ビニルアセテート及びビニルエーテルがコモノマーであり得る。例えば、ポリビニルピロリドンの誘導体は、生理学的反応を改変又は調節することができる誘導体であり得る。これは、特に、血液凝固又は免疫系機能に影響を及ぼし得る化合物を含む。このようなポリビニルピロリドン誘導体としては、例えば、オリゴ糖置換されたPVPポリマー及びペプチド置換されたPVPポリマーが挙げられる。この一例は、例えば、本書において明確な参照がなされるUS−A−4,239,664に記載されるPVPヘパリン複合体である。このようなポリビニルピロリドン誘導体の例は、アルキル置換されたポリマー、例えば、ポリビニルピロリドンの(C−C)−アルキル置換された誘導体である。アルキル置換は、アルキレンポリマー基本骨格及びピロリドン環の両方に存在し得る。
【0014】
ポリアルキレングリコールベースのポリマーは、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)又はポリプロピレングリコールから選択され得る。
【0015】
メディカルテクノロジーにおいてよく使用される任意のポリマー又はコポリマーが、本発明においてハイドロゲル層が提供され得るポリマー支持体として、使用され得る。好ましくは、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリビニルクロライド、ポリカーボネート又はポリウレタン或いはそれらの混合物又はコポリマーが、本発明に従ってハイドロゲル層が適用され得るポリマー支持体として、使用され得る。例えば、SEBSポリマー支持体もまた、この目的のために使用され得る。コーティングされるポリマー支持体は、ダイアライザー、ホース、カテーテル、ステント又は尿カテーテル(urinary catheter)或いはその少なくとも一部であり得る。
【0016】
ハイドロゲル形成組成物中に使用されるハイドロゲル形成ポリマー及びイニシエーター化合物の濃度は、何ら特に限定されない。しかしながら、濃度は、記載される表面特性を保証し且つ洗い流され得るハイドロゲル層を形成しない程度に十分に高い。ハイドロゲル形成組成物の粘度は、使用されるコーティング方法に適合される。使用される正確な濃度は、専門家によって選択され得る。例えば、ポリビニルピロリドン(120のK値)の1重量%〜10重量%エタノール又はジメチルアセトアミド溶液を使用する場合、通常使用されるイニシエーター化合物の量は、ハイドロゲル形成化合物に対して、0.1重量%〜0.5重量%であるだろう。正確な濃度は、使用されるそれぞれの溶媒におけるイニシエーター及びハイドロゲル形成ポリマーの溶解度に依存する。
【0017】
通常、ハイドロゲル形成組成物は、少なくとも1種のハイドロゲル形成ポリマー及び少なくとも1種のイニシエーター化合物の他に、1種又はそれ以上の溶媒を含む。溶媒の選択は、限定されない。例えば、それらは、メタノール、エタノール、ジメチルアセトアミド、アセトニトリル等及びそれらの混合物であり得る。イニシエーター化合物及びハイドロゲル形成ポリマーは、乾燥された反応層におけるハイドロゲル形成ポリマーとイニシエーターとの均一な分布を保証するように同種の溶媒又は溶媒系において可溶性である。
【0018】
本発明の方法において、対応するハイドロゲルを固定化するため、少なくとも1種の非毒性フォトイニシエーター化合物が使用される。非毒性又は生理学的に安全なフォトイニシエーター化合物は、≧500mg/kg 、より良くは≧950mg/kg 、最も良くは≧2000mg/kgのLD50(rat)を有する化合物として理解される。好ましくは、非毒性フォトイニシエーター化合物は、ニコチン酸アミド(ビタミンB3)及びその誘導体並びにチオキサントンに加え、フラビン、フラボン、フラボノイド及びそれらの誘導体からなる群より選択される化合物である。N10位において置換された(C−C)アルキル−及び(C−C)アルコキシ誘導体、及び、リボフラビンがフラビン誘導体であり得る。フラボン誘導体は、例えば、ルチン(ケルセチン−3−ルチノシド)及びモリン(2’,3,4’,5,7−ペンタヒドロキシフラボン)であり得る。フラボノイド誘導体は、それらが生理学的に安全であるならば、例えば、フラボノール、ラバノール、フラバノン、アントシアン及びイソフラボノイドの群からの化合物であり得る。本発明における使用のために特に好ましくは、リボフラビン、ルチン(ケルセチン−3−ルチノシド)、モリン(2’,3,4’,5,7−ペンタヒドロキシフラボン)及びニコチン酸アミドであり;最も好ましくはニコチン酸アミドである。
【0019】
本発明において、驚くべきことに、ニコチン酸及びその誘導体並びにチオキサントンに加え、フラビン、フラボン、フラボノイド及びそれらの誘導体からなる群より選択されるもののような非毒性フォトイニシエーター化合物は、均一溶液中の不飽和モノマーの重合のためのフォトイニシエーターとして適しているのみならず、対応するポリマー表面で既に完了したポリビニル−ピロリドン−ベース、ポリアルキレン−グリコール−ベース、ポリビニル−アルコール−ベース、ポリエチレン−イミン−ベース、又はポリビニル−アミン−ベースのポリマーハイドロゲルを固定化するためのフォトイニシエーターとしても適している。少なくとも1種のハイドロゲル形成ポリマー及び少なくとも1種の非毒性フォトイニシエーター化合物のハイドロゲル形成組成物(特に、フラビン、フラボン、フラボノイド及びそれらの誘導体、及び、ニコチン酸及びその誘導体、及び、チオキサントンからなる群より選択されるものの1種のような)は、電磁放射線(好ましくは、紫外から可視領域のスペクトルにおける)を用いてポリマー表面で処理される。本発明に従って製造されるこれらのタイプのハイドロゲルコーティングは、次いで、ポリマー支持体表面に固定化される、即ち、沸騰水又はオートクレーブプロセスのいずれかによってポリマー表面から除去され得ない。これらの特徴は、それに結合されることなくハイドロゲル層のポリマー表面への共有結合を示し、その結果血液と接触する際のポリマーの放出が最小化される。この方法において処理されるポリマー支持体表面は、このタイプのハイドロゲルの本発明の適用によって親水性になるが、このことは、例えば、低減された表面張力及び高い水とのぬれ性において見られ得る。
【0020】
特に、フォトイニシエーターとしてリボフラビンを用いることによって、本発明は、この方法で処理されるポリマー支持体表面が、紫外光で照射されるとき、蛍光(これは、ハイドロゲルコーティングの品質管理に非常に好都合に使用され得る)を示すという特別な利点を有する。これが理論的に基礎をおくメカニズムを記載しなくても、蛍光の存在は、その蛍光特性が知られている本発明においてイニシエーター化合物として使用されるリボフラビンが、ハイドロゲル層中へ取り込まれることを意味し得る。
【0021】
ハイドロゲル層中のハイドロゲル形成ポリマーの同時存在は、例えば、異なる染料と複合体を形成するPVPの能力に起因して、PVPベースのポリマーを用いることによって証明され得る。従って、ヨウ素/ヨウ素−カリウム溶液(これは、またLugol’s試薬として知られている)は、PVPを用いると、茶色がかった複合体を形成することが知られている。既知のDragendorff試薬は、PVPを用いると、オレンジ−ブラウン色の複合体を形成する。両方の呈色反応は、例えば、PVP/リボフラビンでコーティングされた表面で陽性である。もし、コーティング組成物又はハイドロゲル形成組成物が、対応するフォトイニシエーター化合物を用いることなく使用されれば、UV照射後、接着層は得られない。もし、本発明において使用されるイニシエーター化合物がAPS/TEMEDイニシエーターシステムに代わっても、例えば、接着性のPVPベースのハイドロゲル層は得られない。
【0022】
本発明の別の主題は、ハイドロゲル層がまた少なくとも1種の非毒性フォトイニシエーター化合物(好ましくは、ニコチン酸アミド及びその誘導体並びにチオキサントンに加え、フラビン、フラボン、フラボノイド、及びそれらの誘導体からなる群より選択されるものの1種)を含有する、その表面の少なくともある領域において固定化されたポリマーハイドロゲル層を有する、ポリマー支持体に関する。このようなポリマー支持体は、本発明の方法によって得られ得る。上記のポリマー材料は、ポリマー支持体として使用され得る。コーティングされるポリマー支持体は、ダイアライザー、ホース、カテーテル、ステント又は尿カテーテル或いはその少なくとも一部であり得る。
【0023】
本発明は、以下の実施例について参照しながら、より詳細に説明されるであろう。
実施例
実施例1
リボフラビン(Sigma, R−7649, EC NO 201−5071)を、飽和状態になるまで、室温にて無水エタノール中で溶解し、そして、溶解されていない部分をフィルター除去した。PVP K120(ISP)4重量%をこの溶液に溶解した。このコーティング溶液を、ポリマー表面へ塗布し、乾燥後、1〜120秒間、170〜600nmの波長を有するUV−VIS光で照射した(機器:Fusion 300、 Lamp D for radiation)。UV−VISランプまでの距離は100mmであった。次いで、表面を、60分間蒸留水中で煮沸するか又は121℃にて40分間スチーム処理した。次いで、ハイドロゲル層を、その蛍光によってか又はヨウ素/ヨウ素−カリウム又はDragendorff試薬を用いる呈色能力によって、検出することができた。
【0024】
溶媒の選択もPVPベースのポリマーの選択もいずれも限定されない。ジメチルアセトアミド(DMAC)及びその混合物のような他の溶媒、又は、他のK値を有するPVPポリマーも、また、使用され得る。
【0025】
実施例2
溶媒としてDMACを用いて実施例1におけるように製造されたハイドロゲル形成コーティング溶液をヘモダイアライザーのポリウレタン流延コンパウンド(casting compound)へTampoprint印刷機によって適用し、熱で乾燥させた。UV−VIS照射の後、PVPハイドロゲル層を、オートクレーブ可能な、オートクレーブプロセスによってポリマー支持体表面から除去されないポリマー表面で検出することができた。
【0026】
実施例3
溶媒としてエタノールを用いる実施例1におけるように製造したハイドロゲル形成コーティング溶液を、血液ダイアライザーの透析物キャップの内側(血液接触を伴う領域)にスピンコーティング法によって均一に分布させ、乾燥させ、次いで、UV−VIS光で照射した。透析物キャップ材料は、この場合、ハイドロゲル形成溶液が塗布される前にコロナ処理によって活性化されたポリプロピレン又はポリカーボネートであった。UV−VIS照射後、PVPハイドロゲル層を、オートクレーブ可能な、即ち、オートクレーブプロセス又は水との煮沸によって、ポリマー支持体の表面から除去されなかったポリマー表面で検出することができた。
【0027】
実施例4
モリン(2’,3,4’,5,7−ペンタヒドロキシフラボン)を、飽和状態になるまで、室温にて無水エタノール中で溶解し、そして、溶解されていない部分をフィルター除去した。PVP K120(ISP)(4重量%)をこの溶液に溶解した。このコーティング溶液を、ポリマー表面へ塗布し、乾燥後、1〜120秒間、170〜600nmの波長を有するUV−VIS光で照射した(機器:Fusion 300, Lamp D for radiation)。UV−VISランプからの距離は100mmであった。次いで、表面を、60分間蒸留水中で煮沸するか又は121℃にて40分間スチーム処理した。生じた表面は、親水性であり、そして、Dragendorff試薬で染色できた。
【0028】
溶媒の選択もPVPベースのポリマーの選択もいずれも限定されない。ジメチルアセトアミド(DMAC)及びその混合物のような他の溶媒、又は、他のK値を有するPVPポリマーも、また、使用され得る。
【0029】
実施例5
ルチン(ケルセチン−3−ルチノシド)を、飽和状態になるまで、室温にて無水エタノール中で溶解し、そして、溶解されていない部分をフィルター除去した。PVP K120(ISP)(4重量%)をこの溶液に溶解した。このコーティング溶液を、ポリマー表面へ塗布し、乾燥後、1〜120秒間、170〜600nmの波長を有するUV−VIS光で照射した(機器:Fusion 300, Lamp D for radiation)。UV−VISランプからの距離は100mmであった。次いで、表面を、60分間蒸留水中で煮沸するか又は121℃にて40分間スチーム処理した。生じた表面は、親水性であり、そして、Dragendorff試薬で染色できた。
【0030】
溶媒の選択もPVPベースのポリマーの選択もいずれも限定されない。ジメチルアセトアミド(DMAC)及びその混合物のような他の溶媒、又は、他のK値を有するPVPポリマーも、また、使用され得る。
【0031】
実施例6
4% PVP K120(ISP)/イソプロパノール溶液を作製した。次いで、0.33gニコチン酸アミドを100gの溶液に溶解した。このコーティング溶液を、ポリマー表面へ塗布し、乾燥後、ランプレンズ中で1〜60秒間、170〜600nmの波長を有するUV−VIS光で照射した(機器:Fusion 300, Lamp D for radiation)。UV−VISランプからの距離は100mmであった。次いで、表面を、60分間蒸留水中で煮沸するか又は121℃にて40分間スチーム処理した。生じた表面は、親水性であり、そして、Dragendorff試薬で染色できた。
【0032】
溶媒の選択もPVPベースのポリマーの選択もいずれも限定されない。ジメチルアセトアミド(DMAC)及びその混合物のような他の溶媒、又は、他のK値を有するPVPポリマーも、また、使用され得る。
【0033】
次いで、ポリビニルクロライド又はポリプロピレン製のホースを、エタノールを用いて実施例6において製造されたハイドロゲル形成コーティング溶液で満たし、それを取除いた後、薄層状に乾燥させた。UV−VIS照射後、PVPハイドロゲル層を、オートクレーブ可能な、即ち、オートクレーブプロセス又は1hの水との煮沸によって、ホースの内側表面から除去され得なかったポリマー表面で検出することができた。
【0034】
本発明の方法は、特定の形態(geometry)又は特定の材料組成を有するホースに限定されない。基本的に、記載される特性を有するハイドロゲル層が記載されるように固定化され得る任意の材料が考えられ得る。前提条件は、使用される波長に対するPVPポリマー/イニシエーター反応物層のアクセス可能性、及び、電磁放射線の十分に高い強度を達成する能力である。ホースの内側のハイドロゲル層の他に、当然、ホースの外側のハイドロゲル層も、また、生成され得る。
【0035】
実施例7
4% PVP K120(ISP)/イソプロパノール溶液を作製した。次いで、0.33gチオキサントンを100gの溶液に溶解した。このコーティング溶液を、ポリマー表面へ塗布し、乾燥後、ランプレンズ中で1〜60秒間、170〜600nmの波長を有するUV−VIS光で照射した(機器:Fusion 300, Lamp D for radiation)。UV−VISランプからの距離は100mmであった。次いで、表面を、60分間蒸留水中で煮沸するか又は121℃にて40分間スチーム処理した。生じた表面は、親水性であり、そして、Dragendorff試薬で染色できた。
【0036】
溶媒の選択もPVPベースのポリマーの選択もいずれも限定されない。ジメチルアセトアミド(DMAC)及びその混合物のような他の溶媒、又は、他のK値を有するPVPポリマーも、また、使用され得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種のハイドロゲル形成ポリマー及び少なくとも1種の非毒性フォトイニシエーター化合物を含有する組成物をポリマー支持体の表面へ塗布して少なくともある領域においてハイドロゲル層を形成し、次いで、ハイドロゲルがポリマー支持体の表面に固定化されるようにハイドロゲル層に電磁放射線を用いる処理を施し、ハイドロゲル層を形成する、ポリマー支持体の表面にポリマーハイドロゲルを固定化する方法。
【請求項2】
紫外から可視領域のスペクトル、好ましくは170mから600nmまでの領域の電磁放射線が固定化に使用される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ハイドロゲル形成ポリマーが、ポリビニルピロリドン−ベース、ポリアルキレン−グリコール−ベース、ポリビニル−アルコール−ベース、ポリエチレン−イミン−ベース又はポリビニル−アミン−ベースである、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
ポリビニルピロリドン−ベースのポリマーが、ポリビニルピロリドンを含むコポリマー、ポリビニルピロリドンの誘導体及びそれらのコポリマーを包含する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
ポリマー支持体が、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリビニルクロライド、ポリカーボネート、SEBS又はポリウレタン或いはその混合物から選択されるポリマー材料で作製される、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
ポリマー支持体が、ダイアライザー、ホース、カテーテル、ステント又は尿カテーテル或いはその少なくとも一部である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
非毒性フォトイニシエーター化合物が、ニコチン酸アミド及びその誘導体並びにチオキサントンに加え、フラビン、フラボン、フラボノイド及びその誘導体からなる群より選択される、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
イニシエーター化合物が、リボフラビン、モリン、ルチン又はその混合物である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
イニシエーター化合物がニコチン酸アミドである、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
イニシエーター化合物がチオキサントンである、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
その表面の少なくともある領域において固定化されたポリマーハイドロゲル層を有し、ここで、ハイドロゲル層がまた少なくとも1種の非毒性フォトイニシエーター化合物を含有する、ポリマー支持体。
【請求項12】
非毒性フォトイニシエーター化合物が、ニコチン酸アミド及びその誘導体並びにチオキサントンに加え、フラビン、フラボン、フラボノイド及びその誘導体からなる群より選択される、請求項11に記載のポリマー支持体。
【請求項13】
ポリマー支持体がポリエチレン、ポリプロピレン、ポリビニルクロライド、ポリカーボネート、SEBS又はポリウレタン或いはその混合物から選択されるポリマー材料から作製される、請求項12のポリマー支持体。
【請求項14】
ポリマー支持体がダイアライザー、ホース、カテーテル、ステント又は尿カテーテル或いはその少なくとも一部である、請求項12又は13に記載のポリマー支持体。

【公表番号】特表2006−504451(P2006−504451A)
【公表日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−536906(P2004−536906)
【出願日】平成15年7月24日(2003.7.24)
【国際出願番号】PCT/EP2003/008180
【国際公開番号】WO2004/026356
【国際公開日】平成16年4月1日(2004.4.1)
【出願人】(504203170)フレセニウス メディカル ケア ドイチェランド ゲーエムベーハー (7)
【氏名又は名称原語表記】Fresenius Medical Care Deutschland GmbH
【住所又は居所原語表記】Else−Kroener−Strasse 1, 61352 Bad Homburg, Germany
【Fターム(参考)】