説明

ポリマー除去組成物

【課題】 電子デバイスをはじめとする基体から、ポリマー物質を除去するため
に有用な組成物および方法を提供する。該組成物および方法は、下地金属表面の腐蝕を低減し、電子デバイス基板からのポリマー残留物の除去に特に適する。
【解決手段】 基体からポリマー物質を除去するための組成物であって、他価アルコール、グリコールエーテル溶媒およびN−メチルピロリドンを含む組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基体からのポリマー物質の除去の分野に関する。特に、本発明は、半導体装置や液晶表示装置などの電子デバイス、フラットパネルディスプレーの製造において使用される基板上に付着しているプラズマエッチングおよび灰化プロセスの後に残る残留物の除去のための組成物および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリマーを含む多くの物質が、回路、ディスクドライブ、ストレージメディアデバイス、液晶表示装置等をはじめとする電子デバイスの製造において使用される。そのようなポリマー物質はフォトレジスト、ソルダマスク、反射防止コーティング等に認められる。そのような電子デバイスの製造工程において、ポリマー物質は、ハロゲンまたはハライドプラズマエッチング、オートプラズマ(auto−plasma)灰化プロセッシング、反応性イオンエッチングおよびイオンミリングをはじめとする特別なプロセスおよび処理条件に曝される。該プロセスおよび処理条件は、フォトレジストポリマーの広範囲に渡り架橋を生じさせ、そのような架橋ポリマー物質の除去は著しく困難となる。
【0003】
例えば、ガラス基板のような基体上にラインパターンを形成させるために、フォトリソグラフィー工程においてポジ型レジスト物質を利用する。エッチングもしくは他の方法により基体上にパターンを形成することができる。レジスト物質はフィルムとして堆積され、エネルギー性放射線に該レジストフィルムが暴露されることによって所望のパターンが形成される。その後、暴露された領域は、適当な現像液による溶解処理にかけられる。パターンが基体中に形成された後、その後の操作もしくは処理工程における悪影響または妨害を回避するために、レジスト物質は基体から完全に除去されなければならない。
【0004】
そのようなフォトリソグラフィープロセスにおいては、フォトレジスト物質は、パターン描画の後に、さらなるリソグラフィー操作を可能にするために、全ての未露光領域から均一にかつ完全に除去される必要がある。さらにパターン形成されるべき領域においては、レジストの部分的な残留でさえ望ましくない。パターン形成されたライン間の望ましくないレジスト残留物は、金属層形成(metallization)をはじめとするその後の処理に有害な影響を与えるか、または望ましくない表面状態および電荷を生じさせることになる。
【0005】
プラズマエッチング、反応性イオンエッチングおよびイオンミリングは、表面形状をより微細化し、かつパターン密度を増加させるものとして必要とされる。しかし、プラズマエッチングプロセスにおいて、フォトレジストフィルムは除去困難な有機金属ポリマー残留物をエッチングされた構造の側面に形成する。さらに、エッチングチャンバー内の高い真空度および高温条件のために、フォトレジストは広範囲に渡って架橋される。公知のクリーニングプロセスでは、そのようなポリマー残留物を満足できる程度に除去することができない。例えば、アセトンまたはN−メチルピロリドンは、一般的には、高温かつ長いサイクル時間を含む過酷な条件で使用される。そのような使用条件は、しばしば溶媒の引火点を超えるものであり、環境上、健康上および安全上の問題を有している。さらに、長いプロセスサイクルは生産性に悪影響を与える。このような過酷なポリマー除去条件を用いたとしても、一般的には、微細な構造から強固なポリマー残留物を除去するため、手作業によるブラッシングなどが必要となる。
【0006】
近年、半導体製造産業は、サブハーフミクロンの構造を形成するために、金属および酸化物層のドライプラズマエッチングプロセスに移行してきた。また、回路形成に銅金属が用いられるようになってきた。その結果、微細な構造の回路ラインにダメージを与えることなく、効果的に機能するフォトレジストおよびポリマー除去剤の必要性が著しく増加している。公知のフォトレジスト除去またはストリッピング配合物は、もはや、エッチング処理により形成した架橋ポリマー除去には適用することができない。従来のストリッピング配合物に使用される典型的な有機極性溶媒としては、N−メチルピロリドン、N−エチルピロリドン、N−ヒドロキシエチルピロリドンおよびN−シクロへキシルピロリドンをはじめとするピロリドン;ジメチルアセトアミドまたはジメチルホルムアミドを含むアミド;フェノールおよびこれらの誘導体が挙げられる。そのような溶媒は、アミンまたはフォトレジストのポリマー除去に効果的な他のアルカリ成分と組み合わせて使用されている。従来の組成物は、プラズマエッチング後のポリマー除去用途には有効ではない。
【0007】
近年、異なるキレート剤を伴った、ヒドロキシルアミンおよびアルカノールアミンの水性混合物が使用されている。例えば、米国特許第5334332号は、5〜50%のヒドロキシルアミン、10〜80%のアルカノールアミンの少なくとも1種および水を含む、エッチング残留物を除去するための組成物を開示する。米国特許第4401747号は、30〜90%の2−ピロリドンおよび10〜70%のジアルキルスルフォンを含むストリッピング組成物を開示する。また、米国特許第5795702号は、2〜30%のヒドロキシルアミン、2〜20%のアミン、35〜80%の水溶性有機溶媒を、2〜20%の腐蝕防止剤を含有する水中に含むポリマー除去組成物を開示する。
【0008】
上述の組成物は、窒化チタン(TiN)をキャップ層およびバリア層として含む、典型的なAl/Siウエハーに効果的であることができるが、該組成物は100%銅デバイス、または銅の含有率が高いデバイスおよび低い誘電定数(low−k)の誘電体物質には適用することができない。これらの組成物は、現在のチップ製造技術において主として使用される、タングステン、ガリウムまたはヒ化ガリウムをはじめとする他の腐蝕感受性合金に対しても腐蝕性を示す。銅およびタングステンをはじめとする軟金属は、任意のヒドロキシルアミン含有物質によって容易に腐蝕される。さらに、銅はヒドロキシルアミンと錯体を形成する傾向が強いので、そのような生成物を100%銅または銅を高い含有率で含む合金に使用することは望ましくない。
さらに、ヒドロキシルアミンを含む公知のポリマー除去組成物は、引火性、爆発の危険性、毒性、揮発性、臭気、プロセス温度での不安定性など多くの他の欠点を有する。
【0009】
米国特許第5988186号は、少なくとも約10重量%の水、水可溶性極性溶媒、有機アミン、および、没食子酸または没食子酸エステルを含有するポリマー除去組成物を開示する。この特許は、ポリオール化合物および極性有機溶媒の組み合わせを開示していない。
米国特許第5561105号は、3.5より大きい双極子モーメントを有する有機極性溶媒、特定の式を有する化合物から選択されるアミン化合物、ポリマーまたはオリゴマーバックボーンに共有結合された1価または多価酸のリガンドを含むキレート剤、を含むフォトレジストポリマー除去組成物を開示する。この特許は、ポリオール化合物および酸型のリガンドを含有しない組成物のいずれも開示していない。
特開2002−184743号は、水、ポリオール化合物、水と混和可能なアミンおよび極性溶媒を含むポリマー除去組成物を開示する。この特許出願は、水を必須成分としている。
【0010】
【特許文献1】米国特許第5334332号
【特許文献2】米国特許第4401747号
【特許文献3】米国特許第5988186号
【特許文献4】米国特許第5561105号
【特許文献5】特開2002−184743号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
よって、ポリマー物質を効果的に除去し、環境負荷がより小さく、製造における危険性がより低く、基体における薄い金属膜および誘電体層の腐蝕を生じさせないポリマー除去組成物の必要性が存在している。
本発明者は、銅回路を持つ基体、液晶表示装置、ディスクドライブおよびストレージメディアデバイスのための薄膜ヘッド、プラズマディスプレーパネル(PDP)などのフラットパネルディスプレー基板などから、ポリマー物質を容易に除去することができる組成物を見出した。かかるポリマー除去組成物は、ポリマー物質の下方に存在する金属層、特に、銅、銅合金、アルミニウム、タングステンおよびガリウムを腐蝕することなく、ポリマー物質を除去することができる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
第1の態様として、本発明は、基体からのポリマー物質の除去のための組成物であって、ポリオール化合物の1種以上、グリコールエーテル溶媒の1種以上およびN−メチルピロリドンを含み、実質的に水を含まない前記組成物を提供する。
第2の態様においては、本発明は、基体からポリマー物質を除去するための非水溶液組成物であって、ポリオール化合物の1種以上、グリコールエーテル溶媒の1種以上、N−メチルピロリドン、腐食防止剤の1種以上、任意にノニオン性界面活性剤の1種以上および任意にアルカノールアミン化合物の1種以上からなる前記組成物を提供する。
第3の態様においては、除去されるべきポリマー物質を含む基体を、上述の組成物と接触させる工程を含む、基体からポリマー物質を除去する方法を提供する。
第4の態様においては、本発明は、除去されるべきポリマー物質および金属を含む基体を、ポリオール化合物の1種以上、グリコールエーテル溶媒の1種以上、およびN−メチルピロリドンを含む前記組成物に接触させる工程を含む、LCDおよびPDPを含むフラットパネルディスプレーを製造する方法を提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明の組成物の利点は、従来のポリマー除去組成物により除去することが困難なプラズマエッチング後のレジスト層または残留物を効果的に除去することができることである。また、本発明の組成物の他の利点は、除去困難な変性されたレジスト層またはレジスト残留物を比較的低温で短い時間において除去することができることである。
さらに、本発明の組成物は、向上されたポリマー除去能力を有するポリマー除去剤を提供し、該組成物は、基体上に存在する金属、特に、銅、銅合金、アルミニウム、タングステン、ガリウムおよびガリウム合金に対して実質的に非腐蝕性である。
本発明の組成物の他の利点は、除去が困難な有機反射防止コーティングポリマーの層上にコートされたディープUVフォトレジストの灰化後のレジスト層および残留物を完全に除去するのに、非常に有効なことである。架橋されたポリマー物質である、そのような有機反射防止コーティング残留物を、従来のレジストストリッパー溶液で洗浄することは非常に困難である。
本発明の組成物は、シリコンウエハー、フラットパネルディスプレイ基板およびドライプラズマエッチングプロセスを受ける任意の他のデバイス基体から、プラズマエッチング後のポリマーを除去することに著しく効果的である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本明細書を通じて使用される略語は、他に明示されない限り、次の意味を有する。
g=グラム;℃=摂氏度;ppm=百万分率;Å=オングストローム;wt%=重量%;min=分;cm=センチメートル;mL=ミリリットル;MPD=2−メチル−1,3−プロパンジオール;DPM=ジプロピレングリコールモノメチルエーテル;BTA=ベンゾトリアゾール;MIPA=モノイソプロパノールアミンおよびNMP=N−メチル−2−ピロリドン。全てのパーセントは重量パーセントである。全ての数値範囲は境界値を含み、さらに任意の順序で組み合わせ可能である。ただし、そのような数値範囲が合計100%にされることが明らかな場合は除く。
【0015】
本明細書を通じて用語「ポリマー除去」および「除去」は、同一の意味を持ち交換可能なものとして使用される。同様に、用語「ポリマー除去組成物」および「除去剤」は同一の意味を持ち交換可能なものとして使用される。
「ポリマー除去」とは、フォトレジストおよび反射防止コーティングをはじめとする、ポリマー物質を基体から除去すること、および/またはエッチング後のポリマー残留物を除去することを意味する。用語「ポリマー除去組成物」には、露光処理において露光した部分または非露光部分のフォトレジストを除去し、残像パターンを作成するための溶液、すなわち現像液を含まない。
「アルキル」とは、直鎖、分岐鎖および環式アルキルをいう。
【0016】
本発明の組成物は、ポリオール化合物の1種以上、グリコールエーテル溶媒の1種以上およびN−メチルピロリドンを含む。「ポリオール化合物」とは、2以上のヒドロキシル基を有する任意のアルコールをいい、例えば、(C−C20)アルカンジオール、(C−C20)アルカントリオール、置換(C−C20)アルカンジオール、置換(C−C20)アルカントリオールなどが挙げられる。好適なポリオール化合物としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、グリセロール等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。ポリオール化合物が、1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、ブタンジオールまたはグリセロールであることが好ましく、より好ましくは、1,3−プロパンジオールおよび2−メチル−1,3−プロパンジオールである。
本発明のポリオール化合物は、典型的には、組成物の総重量に基づいて、約5〜約40重量%の量で使用される。ポリオール化合物は約5〜約20重量%で存在するのが好ましく、より好ましくは、約8〜約15重量%である。このようなポリオール化合物は、商業的に入手可能であり、さらなる精製をすることなく使用されることができる。
【0017】
本発明の組成物に用いられるグリコールエーテル溶媒は、(C−C20)アルカンジオールの(C−C)アルキルエーテル、または(C−C20)アルカンジオールのジ(C−C)アルキルエーテルをはじめとするグリコールエーテルから選択される1以上の物質である。
好適なグリコールエーテルとしては、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。好適なグリコールエーテルとしては、ジプロピレングリコールモノアルキルエーテルが挙げられ、より好ましくはジプロピレングリコールモノメチルエーテルである。
本発明のグリコールエーテル溶媒は、典型的には、組成物の総重量に基づいて、約25〜約65重量%の量で使用される。グリコールエーテル溶媒は約30〜約55重量%で存在するのが好ましく、より好ましくは、約30〜約50重量%である。このようなグリコールエーテル溶媒は、商業的に入手可能であり、商品名DOWANOLとして販売されている、例えば、DOWANOL DPM、DOWANOL TPM、DOWANOL PNBおよびDOWANOL DPNBが挙げられ、これらは全て、Dow Chemical Company(Midland、Michigan、U.S.A.)から入手可能である。
【0018】
本発明の組成物に用いられるN−メチル−2−ピロリドンは、典型的には、組成物の総重量に基づいて、約25〜約65重量%の量で使用される。N−メチル−2−ピロリドンは約30〜約55重量%で存在するのが好ましく、より好ましくは、約30〜約50重量%である。このようなN−メチル−2−ピロリドンは、概して、商業的に入手可能であり、さらなる精製をすることなく使用されることができる。
【0019】
本発明の組成物において、アミン化合物を任意に使用することができる。好適なアミン化合物としては、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン、プロピレンジアミンなどをはじめとするアルキレンアミン;アミノエチルアミノエタノール、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、3−アミノ−1−プロパノールなどをはじめとするアミノアルコールが挙げられるが、本発明の組成物に溶解することが可能である限り、これらに限定されるものではない。アミノエチルアミノエタノール、3−アミノ−1−プロパノール、モノイソプロパノールアミンおよびエタノールアミンが好ましい。特に好適なアミン化合物としては、モノイソプロパノールアミンが挙げられる。
アミン化合物は、典型的には、組成物の総重量に基づいて、約0〜約10重量%の量で使用される。アミン化合物の好ましい量は約0〜約8重量%であり、より好ましくは、約0.01〜約5重量%である。アミン化合物は、例えば、Aldrich(Milwaukee、Wisconsin、U.S.A.)やDow Chemical Company(Midland、Michigan、U.S.A.)から商業的に入手可能であり、さらなる精製をすることなく使用されることができる。
【0020】
本発明の組成物は、腐蝕防止剤、湿潤剤または界面活性剤、凍結防止剤、粘度改質剤など他の成分を必要に応じて追加的に含むことができ、好ましくは腐蝕防止剤および界面活性剤の少なくとも1種を含む。本発明に好適な腐蝕防止剤としては、カテコール;メチルカテコール、エチルカテコールおよびtert−ブチルカテコールをはじめとする(C−C)アルキルカテコール;ベンゾトリアゾール;(C−C10)アルキルベンゾトリアゾール;没食子酸;没食子酸メチルおよび没食子酸プロピルをはじめとする没食子酸エステル;等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。腐蝕防止剤は、カテコール、(C−C)アルキルカテコール、ベンゾトリアゾール、または(C−C10)アルキルベンゾトリアゾールであるのが好ましく、より好ましくは、ベンゾトリアゾールである。
このような腐蝕防止剤が使用される場合には、それらは典型的には、ポリマー除去組成物の総重量に基づいて、約0〜10重量%の範囲の量で存在する。腐蝕防止剤の量が約0.01〜約5重量%であるのが好ましく、より好ましくは、約0.5〜約4重量%であり、最も好ましくは、約0.5〜約2重量%である。少なくとも1種の腐蝕防止剤が、本発明のポリマー除去組成物に使用されるのが好ましい。
そのような腐蝕防止剤は、商業的に入手可能であり、例えば、Aldrich Chemical Companyから入手可能である。
【0021】
本発明のポリマー除去組成物には、ノニオン性およびアニオン性界面活性剤が使用されることができる。ポリオキシアルキレンを付加したアルキルエーテルなどのノニオン性界面活性剤が好ましい。このような界面活性剤は、組成物の総重量に基づいて、約0〜約10重量%の量で使用され、好ましくは、約0.001〜約5重量%であり、より好ましくは、約0.005〜約2重量%である。そのような界面活性剤は、一般に商業的に入手可能であり、例えば、和光純薬(日本)から入手可能である。
【0022】
本発明の特に好適な組成物は、1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオールまたはブタンジオールから選択されるポリオール化合物を約5〜約40重量%、ジプロピレングリコールモノアルキルエーテルから選択されるグリコールエーテル溶媒を約25〜約65重量%、N−メチル−2−ピロリドンを約25〜約65重量%、アミノエチルアミノエタノール、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミンおよびトリエチレンテトラアミンから選択されるアミン化合物を約0〜約10重量%、ノニオン性界面活性剤を0〜約10重量%並びにベンゾトリアゾールまたは(C−C10)アルキルベンゾトリアゾールから選択される腐蝕防止剤を約0.2〜約5重量%含む。
【0023】
本発明の組成物は、ポリオール化合物の1種以上、グリコールエーテル溶媒の1種以上、N−メチルピロリドン、および任意成分、例えば、腐蝕防止剤または界面活性剤の1種以上を任意の順番で混合することにより調製されることができる。
【0024】
本発明の組成物は、基体からポリマー物質を除去するのに適する。本発明によって除去される好適なポリマー物質には、フォトレジスト、ソルダマスク、有機反射防止コーティングおよびこれらから生成される任意の残留物が含まれる。典型的なポリマー物質は、プラズマエッチング処理などにより除去が困難となったフォトレジスト残留物を含む。本発明の組成物は、フォトレジストをはじめとする物質をプラズマエッチング、反応性イオンエッチングまたはイオンミリングした後の、ポリマー物質およびポリマー残留物を除去するのに特に有用である。プラズマエッチング、反応性イオンエッチングまたはイオンミリングの後に残留する、そのようなポリマー物質およびポリマー残留物は、典型的には有機金属ポリマー残留物である。そのような有機金属残留物は、「サイドウォールポリマー」と呼ばれる。
基体上のポリマー物質またはポリマー残留物は、当該基体を本発明の組成物と接触させることにより除去される。基体は、任意の公知の手段、例えば、被覆されたウエハーをポリマー除去剤の温浴内に浸漬することにより、または、スプレー装備チャンバー内に該ウエハーを入れポリマー除去剤をスプレー処理することにより、本発明の組成物と接触されることができ、続いて、脱イオン水での洗浄および乾燥プロセスが行われる。
【0025】
本発明の利点の一つは、公知のポリマー除去組成物よりも、より低い温度において使用することができることである。本発明のポリマー物質の除去プロセスは、任意の温度で行われることができ、例えば、室温(約20℃)から約100℃までであり、好ましくは、約25℃〜約90℃であり、より好ましくは、約30℃〜約80℃であり、最も好ましくは、約30℃〜約70℃である。除去されるポリマーは、典型的には、該ポリマー残留物を少なくとも部分的に除去するのに充分な時間の間、本発明の組成物と接触される。除去されるポリマーの種類により異なるが、該ポリマー物質と本発明の組成物とは60分までの間接触され、好ましくは、20分までである。基板がビアホールなどのポリマー物質除去が容易でない形状を有しない場合、より短い時間でよく、ポリマー物質を有する基板と本発明の組成物との接触時間は、60分までであり、好ましくは20分まであり、より好ましくは、約40秒〜約120秒である。
よって、本発明は、除去されるべきポリマー物質を、本発明の組成物に、該ポリマー物質を除去するのに充分な時間の間接触させ、さらに該基体を洗浄する工程を含む、1種以上の金属および1種以上のポリマー物質を含む基体を含む電子デバイスを製造する方法を提供する。
【0026】
本発明の組成物は、実質的に水を含まない。「実質的に水を含まない」または「非水溶液」とは、水を組成物成分として添加しないとの意味であり、各化合物成分中に存在し得る水分を否定する意味ではない。すなわち、水は、組成物の総重量に基づいて、5重量%まで存在することができ、好ましくは、3重量%以下であり、より好ましくは1重量%以下である。また、本発明の組成物は、ヒドロキシルアミンおよび金属イオン、エチレンジアミンテトラ酢酸をはじめとする酸型キレート剤を含まない。
本発明の組成物は、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドをはじめとするテトラアルキルアンモニウムヒドロキシドを含まないことも好ましい。本発明の組成物は、アルカリ金属の水酸化物、フッ素イオン、フッ化物およびアミノ酸を含まないことがさらに好ましい。本発明の組成物は、ポリマーまたはオリゴマーバックボーンに共有結合した、1価または多価酸型リガンドを含むキレート剤を含まないことがさらにより好ましい。
【0027】
次の実施例は本発明のさらなる種々の態様を例示することを意図するものであり、如何なる態様においても、本発明の範囲を限定することを意図しない。
【実施例】
【0028】
実施例1
この実施例は、本発明の組成物のポリマー除去能の結果を示す。
評価するポリマー除去組成物を表1に示す組成比によって製造した。典型的なドライエッチングプロセスを用いてハライドケミカルエッチングされ、続いて酸素プラズマ灰化(アッシング)プロセスが行われた窒化チタン層抜き配線ビア基板(チップ)(1.5cm×2cm)を準備した。ビアホールの側面にはチタニウムリッチなポリマー残渣が形成されている。図1は、ビアホールの側面上のチタニウムリッチなポリマー残渣の存在を示すSEM写真である。
次いで、チップウエハーを、70℃に加熱した500mLの表1のポリマー除去組成物の浴に30分間浸漬した。続いてチップウエハーを脱イオン水で60秒間リンス処理し、窒素ストリーム下で乾燥した。
このようにして得られたチップウエハーのポリマー残留物を、JEOL 6320電界放出型走査型電子顕微鏡(FE−SEM)を用いて、走査電子顕微鏡写真(SEM)によりその残留を評価した。複数のチップウエハーが、サイドウォールポリマー除去について評価された。ポリマー除去の結果は図2および図3に示される。なお、図1〜3に示されるSEM写真の倍率は30,000倍である。
【0029】
【表1】

*サンプル1および2における「界面活性剤」は、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルの30%水溶液を使用した。
【0030】
図1はサンプル1または2で処理される前のSEM写真である。理想的なビアホールの側面はビアの開口部に対して垂直であるべきである(すなわち、ビアホールのいずれの部分においても内径が同じ円筒形であるべきである)。しかし、図1においては、ビアホールの下方に行くにつれてビアホールの内径が小さくなっている(すなわち、ビアホールの下方に行くほど先細りになっている)。これは、ビアホールの下方に行くほど、本来垂直であるべきビアホールの側面上に、より多くのチタンリッチなポリマー残留物が存在するためである。
サンプル1は、本発明のポリマー除去組成物として調整された。サンプル1で処理した後のSEM写真は図2である。図2においては、ビアホールの形状は、ビアの開口部に対してほぼ垂直の側面を有する円筒形であり、すなわち、ビアホール内部におけるポリマー残留物の目に見える痕跡は認めらなかった。このことから、本発明のポリマー除去組成物は、従来のプラズマエッチングの結果生じるサイドウォールポリマーを含むポリマー物質、例えばチタンリッチなポリマー残留物を効果的に除去できることが明らかとなった。
これに対して、サンプル2は、従来のポリマー除去組成物であり、本発明の組成物に対する比較として調整された。サンプル2で処理した後のSEM写真は図3である。サンプル2においては、ビアホール内部におけるポリマー残留物の若干の除去は認められるものの、その除去の程度は不充分であった。
【0031】
上述のデータは、本発明の組成物が、基体からのポリマー物質の除去、特にプラズマエッチング後のポリマー物質、および酸素プラズマアッシングで過剰にオーバーエッチングする結果生じる有機金属サイドウォールポリマー、例えばチタン富化有機金属サイドウォールポリマーの除去に有効であることを明確に示す。
【0032】
実施例2
表1に従って調製された3種類の組成物が、種々の金属基体に対する該組成物の適合性について評価された。アルミニウムおよび銅の1以上の層を含むウエハーを、40℃で、1分間、表1の組成で調整されたポリマー除去溶液に浸漬した。次いで、1分間の脱イオン水によるリンス処理を施し、ウエハー上の金属の損失について評価した。結果は、それぞれの金属表面の損失量を4ポイントプルーブを用いて測定した。エッチング速度として、表2にその結果を示す。
【0033】
【表2】

【0034】
これらのデータは、本発明の組成物が、感受性の強い金属であるアルミニウムおよび銅に対して有意に腐蝕させないことを明瞭に示す。
【0035】
実施例3
フラットパネルディスプレイガラス基体上の、インジウムスズ酸化物/タンタル(ITO/Ta)層を含むウエハーから、ポリマー物質を除去するために、実施例1のサンプル1が使用された。どの金属層においても、目立った腐蝕は認められなかった。
【0036】
これらのデータは、本発明の組成物は、除去するのが非常に困難なサイドウォールポリマー、例えば、高度に酸化されオーバーエッチングされたポリマー物質を除去するのに、特に効果的であることを明示する。これらのデータは、本発明の組成物は、従来のポリマー除去組成物よりも下地金属とくに銅金属を腐食しないことも示す。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】図1は、サイドウォールポリマーを含むビアを有するウエハーの走査電子顕微鏡写真(SEM)である。
【図2】図2は、図1に示されるウエハーについて、本発明の組成物を使用してサイドウォールポリマーを除去した後のSEMである。
【図3】図3は、図1に示されるウエハーについて、従来のサイドウォールポリマー除去剤で処理した後のSEMである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体からポリマー物質を除去するための組成物であって、ポリオール化合物の1種以上、グリコールエーテル溶媒の1種以上、N−メチルピロリドンおよび腐食防止剤の1種以上を含み、水を実質的に含まない前記組成物。
【請求項2】
基体からポリマー物質を除去するための非水溶液組成物であって、ポリオール化合物の1種以上、グリコールエーテル溶媒の1種以上、N−メチル−2−ピロリドン、腐食防止剤の1種以上、任意にノニオン性界面活性剤の1種以上および任意にアミノアルコールの1種以上からなる前記組成物。
【請求項3】
アミノアルコールが、アミノエチルアミノエタノール、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミンおよび3−アミノ−1−プロパノールからなる群から選択される請求項2記載の組成物。
【請求項4】
ポリオール化合物の1種以上が、組成物の総重量に基づいて、約5〜約40重量%の量で存在する請求項1記載の組成物。
【請求項5】
グリコールエーテル溶媒が、組成物の総重量に基づいて、約25〜約65重量%である請求項1または2に記載の組成物。
【請求項6】
N−メチルピロリドンが、組成物の総重量に基づいて、約25〜約65重量%である請求項1または2に記載の組成物。
【請求項7】
ノニオン性界面活性剤の1種以上を更に含む請求項1記載の組成物。
【請求項8】
組成物が、ヒドロキシルアミンおよびテトラアルキルアンモニウムヒドロキシドを含まない、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項9】
基体からポリマー物質を除去する方法であって、基体とポリマー除去組成物とを接触させる工程;次いで基体を水で洗浄する工程を含む方法、ただし、該ポリマー除去組成物が1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、ブタンジオールまたはグリセロールから選択されるポリオール化合物を約5〜約40重量%;エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテルおよびジプロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテルから選択されるグリコールエーテル溶媒を約25〜65重量%;N−メチル−2−ピロリドンを約25〜約65重量%;エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン、プロピレンジアミン、アミノエチルアミノエタノール、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミンおよび3−アミノ−1−プロパノールからなる群から選択されるアミン化合物の1種以上を約0〜約10重量%;ノニオン性界面活性剤を0〜約10重量%;並びにカテコール、(C−C)アルキルカテコール、ベンゾトリアゾールまたは(C−C10)アルキルベンゾトリアゾールから選択される腐蝕防止剤を約0.2〜約5重量%を含み、実質的に水を含まないものである。
【請求項10】
フラットパネルディスプレーを製造する方法であって、金属およびポリマー物質を有するフラットパネルディスプレー基体とポリマー除去組成物とを接触させる工程を含む方法、ただし、該組成物が1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、ブタンジオールまたはグリセロールから選択されるポリオール化合物を約30〜約40重量%;エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテルおよびジプロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテルから選択されるグリコールエーテル溶媒を約25〜約65重量%;N−メチル−2−ピロリドンを約25〜約65重量%;エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン、プロピレンジアミン、アミノエチルアミノエタノール、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミンおよび3−アミノ−1−プロパノールからなる群から選択されるアミン化合物の1種以上を約0〜約10重量%;ノニオン性界面活性剤を0〜約10重量%;並びにカテコール、(C−C)アルキルカテコール、ベンゾトリアゾールまたは(C−C10)アルキルベンゾトリアゾールから選択される腐蝕防止剤を約0.2〜約5重量%含むものであり、実質的に水を含まないものである。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2007−44660(P2007−44660A)
【公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−233780(P2005−233780)
【出願日】平成17年8月11日(2005.8.11)
【出願人】(591016862)ローム・アンド・ハース・エレクトロニック・マテリアルズ,エル.エル.シー. (270)
【Fターム(参考)】