説明

ポリ乳酸系樹脂発泡シートの製造方法

【課題】 本発明は、連続気泡率が低くてポリ乳酸系樹脂の本来有する生分解性を維持し且つ外観性に優れたポリ乳酸系樹脂発泡シートの製造方法を提供する。
【解決手段】 本発明のポリ乳酸系樹脂発泡シートの製造方法は、ポリ乳酸系樹脂発泡シートを押出発泡にて製造するポリ乳酸系樹脂発泡シートの製造方法であって、サーキュラ金型の出口部に形成された円環状の樹脂流路は、上記押出機側の一定径を有する第一樹脂流路部と、この第一樹脂流路部に連通して押出方向に向かって徐々に樹脂流通断面積を狭めながら拡径する第二樹脂流路部とからなり、この第一、第二樹脂流路部との連設部及び第二樹脂流路の表面が、窒化チタン、炭化チタン又は炭窒化チタンからなる被覆層で被覆されており、剪断速度300〜8000sec-1で押出すことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリ乳酸系樹脂発泡シートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリ乳酸系樹脂は、天然に存在する乳酸系樹脂を重合されて得られた樹脂であり、自然界に存在する微生物によって分解可能な生分解性樹脂であると共に、常温での機械的特性についても優れていることから注目を集めている。
【0003】
ポリ乳酸系樹脂の原料となる乳酸は、分子中に不斉炭素原子を有するために光学活性を示し、D体、L体、及び、D体とL体とが等量混合してなるラセミ体の三種類が存在する。
【0004】
そのために、乳酸を重合させて得られるポリ乳酸系樹脂は、上記三種類の乳酸の混合割合と重合方法を調整することによって種々の性質を有するものとすることができ、現実に、ポリ乳酸系樹脂には、結晶性のものから非結晶性のものまで多種多様存在し、融点又は軟化点も様々である。
【0005】
一方、合成樹脂から発泡体を得る方法として、合成樹脂及び物理発泡剤を押出機に供給して溶融混練し押出機から押出発泡させる方法が挙げられるが、押出発泡時に合成樹脂が発泡ガスを保持し得る程度の張力を有している必要がある。
【0006】
ところが、上記ポリ乳酸系樹脂は、これを固化状態から加熱すると、ある温度を境にして大きく軟化又は溶融して粘度の低い状態となってしまい、そのために、ポリ乳酸系樹脂は、発泡ガスを保持し得る張力を発現させる温度領域が極めて狭く、発泡させ難い樹脂とされている。
【0007】
そこで、ポリ乳酸系樹脂を変性させて発泡性を向上させることなど、種々の方法が試みられており、特許文献1には、D−体とL−体とが、重量でそれぞれ2〜13%及び98〜87%の割合で共重合してなる結晶性ポリ乳酸系樹脂を押出機内で加熱し、溶融された樹脂に発泡剤として、ジメチルエーテルと炭化水素とが重量比で95/5ないし5/95の割合で混合されてなる混合物を圧入し、得られた溶融樹脂を押出機から押し出して発泡させる結晶性ポリ乳酸系樹脂発泡体の製造方法が開示されている。
【0008】
しかしながら、上記製造方法で得られた結晶性ポリ乳酸系樹脂発泡体は、その連続気泡率が20%よりも高く、連続気泡率を低下させるために金型温度を低くすると、金型内を流通する溶融樹脂の流れが低下し、その結果、得られる結晶性ポリ乳酸系樹脂発泡体の外観が低下するといった問題点があった。
【0009】
又、特許文献2には、ポリ乳酸系樹脂を主体成分とする熱可塑性樹脂と、(メタ)アクリル酸エステル及びグリシジルエーテルとを有機過酸化物の存在下に架橋反応させて得られる発泡用樹脂組成物を発泡成形してなる発泡体が提案されている。
【0010】
しかしながら、上記発泡体は、(メタ)アクリル酸エステル及びグリシジルエーテルを用いていることから製造工程が煩雑となるばかりか、得られるポリ乳酸系樹脂発泡体の生分解性が低下するといった問題点があった。
【0011】
【特許文献1】特開2004−307662号公報
【特許文献2】特開2004−51803号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、連続気泡率が低くてポリ乳酸系樹脂の本来有する生分解性を維持し且つ外観に優れたポリ乳酸系樹脂発泡シートの製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明のポリ乳酸系樹脂発泡シートの製造方法は、ポリ乳酸系樹脂及び発泡剤を押出機に供給して溶融混練し、押出機の先端に取り付けたサーキュラ金型から円筒状発泡体を押出発泡し、この円筒状発泡体を展開してポリ乳酸系樹脂発泡シートを製造するポリ乳酸系樹脂発泡シートの製造方法であって、上記サーキュラ金型の出口部を構成している内側ダイ及び外側ダイとの対向面間に形成された円環状の樹脂流路は、上記押出機側の一定径を有する第一樹脂流路部と、この第一樹脂流路部に連通して押出方向に向かって徐々に樹脂流通断面積を狭めながら拡径する第二樹脂流路部とからなり、この第一、第二樹脂流路部との連設部及び第二樹脂流路の表面が、窒化チタン、炭化チタン又は炭窒化チタンからなる被覆層で被覆されており、上記サーキュラ金型の出口部の第二樹脂流路から剪断速度300〜8000sec-1で押出すことを特徴とする。
【0014】
上記ポリ乳酸系樹脂は下記式1で示される。このポリ乳酸系樹脂は、L−乳酸及び/又はD−乳酸を重合させるか、或いは、L−ラクチド、D−ラクチド及びDL−ラクチドからなる群より選ばれた一又は二以上のラクチドを開環重合させることによって得ることができ、何れのポリ乳酸系樹脂であってもよい。
【0015】
【化1】

【0016】
ポリ乳酸系樹脂を製造するに際して、モノマーとしてL体又はD体のみ、或いは、モノマーとしてL体とD体とを併用した場合においてL体又はD体の何れか一方を他方に比して多量に用いた時は、得られるポリ乳酸系樹脂は結晶性となる一方、モノマーとしてL体とD体とを略同量づつ用いた場合には、得られるポリ乳酸系樹脂は非結晶性となる。そして、耐熱性に優れたポリ乳酸系樹脂発泡シートを製造したい場合には結晶性のポリ乳酸系樹脂が好ましく、又、緩衝性及び靱性に優れたポリ乳酸系樹脂発泡シートを製造したい場合には非結晶性のポリ乳酸系樹脂が好ましい。
【0017】
そして、上記ポリ乳酸系樹脂のメルトフローレートは、低いと、サーキュラ金型内におけるポリ乳酸系樹脂の流動性が低下してメルトフラクチャーが発生して得られるポリ乳酸系樹脂発泡シートの外観が低下することがある一方、高いと、ポリ乳酸系樹脂が破泡して良好なポリ乳酸系樹脂発泡シートを製造することができないことがあるので、0.1〜20g/10分が好ましい。なお、ポリ乳酸系樹脂のメルトフローレートは、JIS K7210に準拠して190℃にて公称荷重2.16kgの条件下にて測定したものをいう。
【0018】
そして、上記発泡剤としては、特に限定されず、アゾジカルボンアミド、ジニトロソペンタメチレンテトラミン、ヒドラゾイルジカルボンアミド、重炭酸ナトリウムなどの熱分解型発泡剤;プロパン、n−ブタン、i−ブタン、n−ペンタン、i−ペンタン、ヘキサンなどの飽和脂肪族炭化水素、ベンゼン、キシレン、トルエンなどの芳香族炭化水素、塩化メチル、1,1,1,2−テトラフルオロエタン、1,1−ジフルオロエタン、モノクロロジフルオロメタンなどのハロゲン化炭化水素、ジメチルエーテル、二酸化炭素、窒素などの物理発泡剤などが挙げられ、ジメチルエーテル、プロパン、n−ブタン、i−ブタンが好ましく、ジメチルエーテル、n−ブタン、i−ブタンがより好ましい。なお、発泡剤は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0019】
又、発泡剤の量は、少ないと、得られるポリ乳酸系樹脂発泡シートの発泡倍率が低下する虞れがある一方、多いと、ポリ乳酸系樹脂が破泡してしまう虞れがあるので、ポリ乳酸系樹脂100重量部に対して0.1〜10重量部が好ましく、0.2〜8重量部がより好ましく、0.3〜6重量部が特に好ましい。
【0020】
なお、ポリ乳酸系樹脂には、気泡調整剤、結晶核剤、帯電防止剤、難燃剤、着色剤などの添加剤を添加してもよい。上記気泡調整剤としては、ポリテトラフルオロエチレン、アクリル樹脂で変性されたポリテトラフルオロエチレン、タルク、炭酸カルシウム、硼砂、硼酸亜鉛、水酸化アルミニウム、シリカ、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、炭酸リチウム、炭酸カリウムなどが挙げられ、溶融状態のポリ乳酸系樹脂を分解させることなく優れた気泡微細化効果を発揮する点で、ポリテトラフルオロエチレンやアクリル樹脂で変性されたポリテトラフルオロエチレンが好ましく、又、結晶性ポリ乳酸系樹脂の結晶化を促進する点でタルクが好ましい。
【0021】
上記気泡調整剤の添加量は、少ないと、気泡調整剤を添加した効果が発現しないことがある一方、多いと、ポリ乳酸系樹脂の押出発泡時に破泡を生じる虞れがあるので、ポリ乳酸系樹脂100重量部に対して0.01〜5重量部が好ましく、0.05〜4重量部がより好ましく、0.1〜3重量部が特に好ましい。
【0022】
そして、上記ポリ乳酸系樹脂及び発泡剤を、必要に応じて上記添加剤と共に押出機に供給して溶融混練して押出機の先端に取り付けたサーキュラ金型から円筒状に押出発泡して円筒状発泡体を製造する。
【0023】
なお、上記押出機としては、従来から押出発泡に用いられていたものであれば、特に限定されず、単軸押出機、二軸押出機、複数機の押出機を直列状に接続してなるタンデム型押出機などが挙げられる。
【0024】
ここで、ポリ乳酸系樹脂発泡シートの連続気泡率を抑制するために、溶融状態のポリ乳酸系樹脂をサーキュラ金型から押出発泡させる際の樹脂温度を下げることが有効な方法の一つである。
【0025】
しかしながら、ポリ乳酸系樹脂は、上述のように、温度の変化に伴って溶融粘度が大きく変化することから、ポリ乳酸系樹脂の溶融粘度を樹脂温度の調整のみで行うことは難しく、サーキュラ金型から押出発泡させる際のポリ乳酸系樹脂の温度を下げ過ぎた場合には、ポリ乳酸系樹脂の溶融粘度が必要以上に高くなり過ぎて、サーキュラ金型内におけるポリ乳酸系樹脂の流れが悪くなり、外観の低下したポリ乳酸系樹脂発泡シートしか得ることができず、押出発泡も不安定となる虞れがある。
【0026】
特に、結晶性のポリ乳酸系樹脂の場合には、サーキュラ金型内におけるポリ乳酸系樹脂の流れの悪化に伴ってサーキュラ金型の樹脂流路内に滞留したポリ乳酸系樹脂が、過度に結晶化してしまうと、得られるポリ乳酸系樹脂発泡シートの外観が低下したり或いは押出発泡が不安定となる虞れがある。
【0027】
そこで、本発明では、サーキュラ金型の出口部の円環状樹脂流路の表面を、窒化チタン、炭化チタン又は炭窒化チタンからなる被覆層で被覆して、サーキュラ金型の出口部の樹脂流路と、この樹脂流路を流通する溶融状態のポリ乳酸系樹脂との間の摩擦抵抗を低減させることによって、ポリ乳酸系樹脂がサーキュラ金型内の樹脂流路を円滑に流通できるようにし、押出発泡時のポリ乳酸系樹脂の温度を下げてポリ乳酸系樹脂の溶融粘度を高くした場合にあっても対応できるようにし、サーキュラ金型からポリ乳酸系樹脂を円滑に押出発泡することができるように構成している。
【0028】
具体的に説明すると、本発明で用いられるサーキュラ金型1は、図1に示したように、押出機の先端に着脱自在に取り付けられる流入部2と、この流入部2の先端にボルト及びナット(図示せず)によって着脱自在に取り付けられる出口部3とからなる。
【0029】
上記流入部2における外側ダイ21と内側ダイ22との対向面間には円環状の樹脂流路23が形成されていると共に、上記出口部3の外側ダイ4と内側ダイ5との対向面間にも円環状の樹脂流路6が形成されている。
【0030】
そして、上記出口部3の円環状の樹脂流路6は、押出機側(流入部2側)の一定径を有し且つ上記流入部2の樹脂流路23の先端側開口端に連通する円環状の第一樹脂流路部61と、この第一樹脂流路部61に連通して押出方向に向かって徐々に樹脂流路断面積を狭めながら拡径する円環状の第二樹脂流路部62とからなる。
【0031】
更に、図1に示したように、上記出口部3の第一、第二樹脂流路部61、62の表面611a、611b、621a、621bが全面的に被覆層7で被覆されている。そして、この被覆層7は、耐摩耗性及び耐蝕性に優れ、発泡剤を含有する溶融状態のポリ乳酸系樹脂との摩擦抵抗が低いことから、窒化チタン、炭化チタン又は炭窒化チタンから形成されており、溶融状態のポリ乳酸系樹脂との滑り性及び耐久性の点から、炭窒化チタンから形成されていることが好ましい。なお、上記流入部2と上記出口部3とを接続した状態において、上記出口部3の樹脂流路6の表面に形成された被覆層7と、上記流入部2の樹脂流路23の樹脂流路面23aとがそれらの接続部において全周に亘って滑らかに面一状に連なった状態となるように調整されている。
【0032】
そして、サーキュラ金型1の出口部3の樹脂流路6内を流通するポリ乳酸系樹脂と樹脂流路部6との間における摩擦が原因となって静電気が発生することがある一方、上述に例示した発泡剤のうち、可燃性を有する発泡剤を用いた場合であっても、窒化チタン、炭化チタン又は炭窒化チタンから形成された被覆層7は電気伝導性に優れていることから、生じた静電気を被覆層7を介して押出機に設けたアースを通じて外部に円滑に放散させることができ、サーキュラ金型から押出された、可燃性を有する発泡剤を含むポリ乳酸系樹脂が発火するのを略防止することができる。
【0033】
上記出口部3の第一、第二樹脂流路部61、62の表面611a、611b、621a、621bに被覆層7を形成する方法としては、気相法、融液法、溶融塩法、溶液法などが挙げられるが、緻密で高純度の被覆層が得られ、複雑な形状でも均一な膜厚を有する被覆層を得ることができるので、気相法が好ましい。
【0034】
更に、上記気相法には、拡散法と蒸着法とがあり、蒸着法は、PVD法(物理蒸着法)とCDV法(化学蒸着法)とに分けられる。そして、PVD法のうち、低温で処理することからダイに歪みが発生しにくいイオンプレーティングによるPVD法が好ましく、同様の理由で、CVD法のうち、プラズマCVD法が好ましい。
【0035】
又、上記被覆層7の厚みは、薄いと、耐久性が低下することがある一方、厚いと、放熱性が低下する虞れがあるので、0.05〜5μmが好ましく、0.1〜4μmがより好ましく、0.2〜3μmが特に好ましい。
【0036】
そして、上記被覆層7の表面は、粗いと、樹脂流路を通過する溶融状態のポリ乳酸系樹脂との間の摩擦抵抗が大きくなり、得られるポリ乳酸系樹脂発泡シートの外観が低下したり或いは押出発泡の安定性が低下する虞れがあるので、仕上げ記号で▽▽▽(粗さの区分1.6S)以上が好ましく、仕上げ記号で▽▽▽▽(粗さの区分0.8S)以上がより好ましい。ここで、粗さの区分とは、基準長さに対する最大高さ(Rmax )を意味し、具体的には、粗さの区分1.6Sとは、基準長さ0.8mmに対して最大高さが1.6μmの粗さを表し、粗さの区分0.8Sとは、基準長さ0.25mmに対して最大高さが0.8μmの粗さを表す。なお、仕上げ記号及び粗さの区分は、理工学社から発行されている「JISにもとづく機械設計製図便覧 第8版」の第17章(17−12)に記載されている。
【0037】
又、図2に示したように、サーキュラ金型1の出口部3の第二樹脂流路部62における外側ダイ4側の樹脂流路面620bが、第一樹脂流路部61を流通する溶融樹脂の流通方向に対してなす開き角度αは、小さいと、サーキュラ金型1から押出発泡させた円筒状発泡体に波打ち現象が生じる虞れがある一方、大きいと、サーキュラ金型1における第二樹脂流路部62の開口端にポリ乳酸系樹脂のカスが溜まり、このカスが円筒状発泡体に付着したり或いは円筒状発泡体に接触することによって、得られるポリ乳酸系樹脂発泡シートの外観が低下することがあるので、10〜70°が好ましく、20〜60°がより好ましい。
【0038】
更に、サーキュラ金型1の出口部3の第二樹脂流路部62における内側ダイ5側の樹脂流路面620aが第一樹脂流路部61内を流通する溶融樹脂の流通方向に対してなす開き角度βが、上記外側ダイ4の樹脂流路面620bが有する開き角度αよりも1〜15°だけ大きくなっていることが好ましく、2〜10°だけ大きくなっていることがより好ましく、2.5〜8°だけ大きくなっていることが特に好ましい。
【0039】
これは、開き角度βと開き角度αとの差が小さ過ぎると、溶融状態のポリ乳酸系樹脂の発泡力を維持することが困難となる虞れがある一方、大き過ぎると、メルトフラクチャーを生じてしまい、得られるポリ乳酸系樹脂発泡シートの外観が低下することがあるからである。
【0040】
そして、押出機に供給され溶融混練された溶融状態のポリ乳酸系樹脂は、上記サーキュラ金型1の樹脂流路6を流通し、出口部3の第二樹脂流路部62における円環状の先端開口部から円筒状に押出発泡されるが、上述のように、サーキュラ金型1の第一、第二樹脂流路部61、62の表面611a、611b、621a、621bは被覆層7によって全面的に被覆されていることから、溶融状態のポリ乳酸系樹脂とサーキュラ金型1の被覆層7との間の摩擦抵抗が低減させられている。
【0041】
一方、溶融状態のポリ乳酸系樹脂をサーキュラ金型1の第二樹脂流路部62から押出発泡させた際に、ポリ乳酸系樹脂の気泡膜の張力が発泡力に負けると破泡が発生し、得られるポリ乳酸系樹脂発泡シートは連続気泡率の高いものとなってしまう。
【0042】
このような押出発泡時の破泡を防止するために、通常、サーキュラ金型の金型温度を、押出機から押出されるポリ乳酸系樹脂の温度よりも低い温度に設定して、サーキュラ金型でポリ乳酸系樹脂を冷却することによりポリ乳酸系樹脂の溶融粘度を調整している。
【0043】
ところが、サーキュラ金型を低い温度に設定し過ぎると、ポリ乳酸系樹脂の溶融粘度が高くなり過ぎて、サーキュラ金型内にてポリ乳酸系樹脂の滞留が生じ、この滞留によってサーキュラ金型の樹脂流路が狭くなり、サーキュラ金型内における樹脂圧力が許容範囲を越えて上昇したり、或いは、結晶性のポリ乳酸系樹脂の場合には、ポリ乳酸系樹脂の結晶化が進んでポリ乳酸系樹脂発泡シートの製造が不安定となる。
【0044】
特に、結晶性のポリ乳酸系樹脂の場合には、押出発泡に適した温度幅が狭く、押出機でのポリ乳酸系樹脂の温度調整では、ポリ乳酸系樹脂の樹脂温度を過度に下げてしまう虞れがあることから、安全をみて、押出機によるポリ乳酸系樹脂の温度調整はやや高めに設定しており、その分、ポリ乳酸系樹脂の押出発泡時の樹脂温度を、サーキュラ金型により微調整する必要がある。
【0045】
しかるに、本発明では、上述のように、溶融状態のポリ乳酸系樹脂とサーキュラ金型1の被覆層7との間の摩擦抵抗を低減させていることから、ポリ乳酸系樹脂の温度を下げて、ポリ乳酸系樹脂の溶融粘度を少々高くしても、ポリ乳酸系樹脂は、摩擦抵抗によりサーキュラ金型1の樹脂流路6内に不測に滞留することはなく、サーキュラ金型1の樹脂流路6内を円滑に流通する。
【0046】
従って、ポリ乳酸系樹脂を発泡に適した温度に冷却するためのサーキュラ金型1の温度範囲を広くとることができ、ポリ乳酸系樹脂の溶融粘度が押出発泡に適した温度となるように容易に調整することができる。
【0047】
しかも、ポリ乳酸系樹脂の押出発泡時における樹脂温度を下げて溶融粘度を低くして気泡膜の張力を強固なものとすることができ、押出発泡時の破泡を防止し、得られるポリ乳酸系樹脂発泡シートの連続気泡率を低く抑えることができると共に、ポリ乳酸系樹脂に更に大きな発泡力を付与して、発泡倍率が3倍以上の高発泡倍率のポリ乳酸系樹脂発泡シートを製造することができる。
【0048】
又、サーキュラ金型1の第二樹脂流路部62の先端開口部における溶融状態のポリ乳酸系樹脂の剪断速度は、小さいと、第二樹脂流路部62の先端開口部から押出発泡させる際にポリ乳酸系樹脂に充分な発泡圧を付与することができず、得られるポリ乳酸系樹脂発泡シートの外観が低下する一方、大きいと、第二樹脂流路部62の先端開口部から押出発泡させる際にメルトフラクチャーが発生して、得られるポリ乳酸系樹脂発泡シートの外観及び品質が低下するので、300〜8000sec-1に限定される。
【0049】
なお、サーキュラ金型1の第二樹脂流路部62の先端開口部における溶融状態のポリ乳酸系樹脂の剪断速度は、下記二重管での計算式に基づいて算出されたものをいう。
剪断速度(sec-1)=6Q/〔π(L22−L12)(L2 −L1 )〕
但し、Qは、ポリ乳酸系樹脂の体積押出量(cm3 /sec)(Qを質量押出量(g/sec)から算出する場合は、ポリ乳酸系樹脂の密度は1.0g/cm3 とし、L1 (cm)は(r0 −t0 /2)であり、L2 (cm)は(r0 +t0 /2)である。
【0050】
なお、r0 ,t0 は下記の通りの要領で定められる。先ず、サーキュラ金型1の出口部3における外側ダイ4のリング状先端縁4a上の任意の点Aから最も近接した距離にある内側ダイ5の表面上の点を点Bと定め、上記リング状先端縁4a上の点Aを周方向に連続的に移動させながら内側ダイ5の表面上に点Bを連続的に特定し、点Bが連続することによって内側ダイ5上に形成された円を仮想円5aとする。
【0051】
そして、上記リング状先端縁4a上の任意の点Aと、この点Aに対応する内側ダイ5の仮想円5a上の点Bとの距離をt0 とすると共に、点Aと点Bとの中間点Cと、内側ダイ5の軸芯Dとの距離をr0 とする。
【0052】
又、外側ダイ4のリング状先端円4aと、内側ダイ5の仮想円5aとの距離が一定でない場合には、図3に示したように、リング状先端円4a上において任意に点A1 〜A8 を周方向に45°の位相差毎に定め、各点A1 〜A8 に対応する点B1 〜B8 をそれぞれ特定し、点A1 〜A8 とこれに対応する点B1 〜B8 との距離t1 〜t8 の相加平均値をt0 とすると共に、各点A1 〜A8 とこれに対応する点B1 〜B8 との中間点C1 〜C8 を定め、この中間点C1 〜C8 と、内側ダイ5の軸芯Dとの距離r1 〜r8 の相加平均値をr0 とする。
【0053】
このように、サーキュラ金型1の第二樹脂流路部61の先端開口部から溶融状態のポリ乳酸系樹脂を円筒状に押出発泡させて円筒状発泡体を製造し、この円筒状発泡体を徐々に拡径させた後に円柱状のマンドレルに供給して冷却した後、この円筒状発泡体を任意の箇所にて押出方向に内外面間に亘って連続的に切断することによって展開してポリ乳酸系樹脂発泡シートを製造することができる。
【0054】
又、サーキュラ金型1の第二樹脂流路部62上の仮想円5aの直径と、マンドレルの押出機側端縁の外径との比(マンドレルの押出機側端縁の外径/仮想円5aの直径)は、2〜5が好ましく、2.5〜4.5がより好ましい。
【0055】
更に、サーキュラ金型1から押出発泡された直後の円筒状発泡体の表面に冷却風を吹きつけることによって円筒状発泡体の表面にスキン層を形成し、得られるポリ乳酸系樹脂発泡シートの外観を向上させることができる。
【0056】
上記冷却風の温度は、低いと、円筒状発泡体が固化してしまって発泡体の伸びが低下し、円筒状発泡体の表面に亀裂が入る虞れがある一方、高いと、円筒状発泡体の表面にスキン層を形成させることができないことがあるので、0〜60℃が好ましい。
【0057】
上記では、サーキュラ金型1における第一、第二樹脂流路部61、62の表面611a、611b、621a、621bを全面的に被覆層7にて被覆した場合を説明したが、サーキュラ金型1内を流通するポリ乳酸系樹脂に最も負荷が加わるのは、第一、第二樹脂流路部61、62との連設部のような屈曲部や、第二樹脂流路部62のような徐々に樹脂流通断面積が狭まる部分を通過する時である。
【0058】
従って、図4に示したように、第一、第二樹脂流路部61、62の表面のうち、上記第一、第二樹脂流路部61、62の連設部及び第二樹脂流路部62の表面6a、6b、621a、621bのみを被覆部7で全面的に被覆した場合であってもよい。なお、被覆部7とこの被覆部7で被覆されていない第一樹脂流路部61の樹脂流路面610とはそれらの境界において全周に亘って段差のない滑らかな面一状に形成されている。
【0059】
又、サーキュラ金型1の第一、第二樹脂流路部61、62内を流通するポリ乳酸系樹脂は、第一、第二樹脂流路部61、62の連設部から第二樹脂流路部62内に流入する際に、その流通方向を第一樹脂流路部61内における流通方向から所定角度だけ外方(図5における上下方向)に変位させられる。
【0060】
従って、第一、第二樹脂流路部61、62の連設部及び第二樹脂流路部62における内側ダイ5側の樹脂流路面にて、ポリ乳酸系樹脂は特に大きな負荷を受ける。よって、図5に示したように、上記第一、第二樹脂流路部61、62の連設部及び第二樹脂流路部62における内側ダイ5側の表面6a、621aのみを被覆部7によって全面的に被覆した場合であってもよい。
【0061】
更に、図6に示したように、第一、第二樹脂流路部61、62における内側ダイ5側の表面611a、621aのみを被覆層7によって全面的に被覆したものであってもよい。
【発明の効果】
【0062】
本発明のポリ乳酸系樹脂発泡シートの製造方法は、上述のように、押出機の先端に取り付けているサーキュラ金型の出口部を構成している内側ダイ及び外側ダイとの対向面間に形成された円環状の樹脂流路を、上記押出機側の一定径を有する第一樹脂流路部と、この第一流路部に連通して押出方向に向かって徐々に樹脂流通断面積を狭めながら拡径する第二樹脂流路部とから構成し、この第一、第二樹脂流路部の表面のうち少なくとも、上記第一、第二樹脂流路部の連設部及び第二樹脂流路部の表面を、窒化チタン、炭化チタン又は炭窒化チタンからなる被覆層で被覆しており、サーキュラ金型の出口部の樹脂流路と、この樹脂流路を流通する溶融状態のポリ乳酸系樹脂との摩擦抵抗を低減させている。
【0063】
従って、ポリ乳酸系樹脂の樹脂温度を下げて溶融粘度を高くしたポリ乳酸系樹脂であってもサーキュラ金型内を円滑に流通させることができ、このように溶融粘度を高くしたポリ乳酸系樹脂は発泡時における気泡膜の張力が強いため容易には破泡せず、得られるポリ乳酸系樹脂の連続気泡率は20%以下といった低いものである。
【0064】
しかも、上述のように、発泡時におけるポリ乳酸系樹脂の気泡膜の張力が強いことから、ポリ乳酸系樹脂に大きな発泡力を付与することができ、高発泡倍率のポリ乳酸系樹脂発泡シートを得ることができる。
【0065】
このように、本発明のポリ乳酸系樹脂発泡シートの製造方法によって製造されるポリ乳酸系樹脂発泡シートは、連続気泡率が低いことから、成形時における二次発泡性に優れており、食品包装材、緩衝材、工業用部材、建材、土木資材、農業用資材などとして好適に用いることができる。
【0066】
そして、本発明のポリ乳酸系樹脂発泡シートの製造方法では、サーキュラ金型の出口部の第二樹脂流路部から剪断速度300〜8000sec-1で押出していることから、ポリ乳酸系樹脂をより安定した状態にて押出発泡させることができ、連続気泡率の低く高発泡倍率のポリ乳酸系樹脂発泡シートを確実に製造することができる。
【0067】
又、上記ポリ乳酸系樹脂発泡シートの製造方法において、第二樹脂流路部における外側ダイ側の樹脂流路面が、第一樹脂流路部内を流通する溶融樹脂の流通方向に対してなす開き角度αが10〜70°であると共に、第二樹脂流路部における内側ダイ側の樹脂流路面が第一樹脂流路部内を流通する溶融樹脂の流通方向に対してなす開き角度βが、上記外側ダイ側の樹脂流路面が有する開き角度αよりも1〜15°だけ大きくなって場合には、サーキュラ金型内にポリ乳酸系樹脂を滞留させることなく、ポリ乳酸系樹脂に適度な発泡力を付与することができ、円筒状発泡体に波打ち現象やメルトフラクチャーを生じさせることなく、更に連続気泡率の低く高発泡倍率のポリ乳酸系樹脂発泡シートを製造することができる。
【0068】
更に、上記ポリ乳酸系樹脂発泡シートの製造方法において、被覆層が炭窒化チタンから形成されている場合には、溶融状態にあるポリ乳酸系樹脂と被覆層との摩擦抵抗を更に低減させることができると共に、被覆層の耐久性に優れており、長期間に亘って安定的にポリ乳酸系樹脂発泡シートの製造を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0069】
(実施例1)
結晶性のポリ乳酸系樹脂(ユニチカ社製 商品名「HV−6200」、融点:167.4℃、メルトフローレート:1.5g/10分)100重量部及び気泡調整剤としてタルク2重量部を、一段目となる口径50mmの単軸押出機と二段目となる口径65mmの単軸押出機とを接続管を介して接続してなるタンデム型の押出機の一段目の押出機に供給した。
【0070】
そして、ポリ乳酸系樹脂を一段目の押出機にて始めは190℃に加熱し、220℃まで徐々に加熱しながら溶融、混練すると共に、一段目の押出機の途中からブタン(イソブタン:ノルマルブタン(重量比)=35:65)をポリ乳酸系樹脂100重量部に対して1.7重量部の割合で圧入して、ポリ乳酸系樹脂中にブタンを均一に分散させた。
【0071】
しかる後、溶融状態のポリ乳酸系樹脂を一段目の押出機から接続管を介して二段目の押出機に連続的に供給した。二段目の押出機にて溶融状態のポリ乳酸系樹脂を161℃に冷却した後、二段目の押出機の先端に取り付けられたサーキュラ金型から剪断速度713sec-1、押出速度20kg/時間にて円筒状に押出発泡した。なお、上記樹脂温度は、二段目の押出機とサーキュラ金型との間にブレーカープレートを挿入し、そのブレーカープレートの中心部に熱電対を挿入することにより測定した。
【0072】
ここで、サーキュラ金型1は、図1に示したように、第一、第二樹脂流路部61、62における内側ダイ5側の表面611a、621aが、イオンプレーティングによるPVD法によって形成された、厚さが1μmの炭窒化チタンからなる被覆層7で全面的に被覆されていると共に、第一、第二樹脂流路部61、62における外側ダイ4側の樹脂流路面611b、621bが、厚さが30μmのクロムメッキ層で全面的に被覆されていた。なお、炭窒化チタンの表面は仕上げ記号で▽▽▽▽(粗さの区分0.8S)であった。
【0073】
又、第二樹脂流路部62における外側ダイ4側の樹脂流路面620bの開き角度αは30°で、第二樹脂流路部62における内側ダイ5側の樹脂流路面620aの開き角度βは35°であった。
【0074】
更に、サーキュラ金型1は、そのr0 が2.980cm、t0 が0.05cm、ポリ乳酸系樹脂の体積押出量Qは5.56cm3 /secであり、樹脂流路部62の先端開口部における溶融状態のポリ乳酸系樹脂の剪断速度は、713sec-1であった。又、サーキュラ金型1の第二樹脂流路部62上の仮想円5aの直径は60mmであった。
【0075】
そして、上記円筒状発泡体を徐々に拡径した後、冷却水で冷却され且つ長さ方向の全長に亘って一定の外径を有する円柱状の冷却用マンドレル(外径:205mm、長さ:400mm)に連続的に供給し冷却した上で、円筒状発泡体をその任意の部分において押出方向に連続的に切断し展開することによって長尺状のポリ乳酸系樹脂発泡シートを連続的に製造し、巻き取り機によってロール状に巻き取った。なお、サーキュラ金型から押出発泡された直後の円筒状発泡体の内外周面に35℃の冷風を吹き付けた。
【0076】
上記ポリ乳酸系樹脂発泡シートは、その密度が0.18g/cm3 、厚みが2.0mm、連続気泡率が18%であり、均一で且つ微細な気泡を有し、外観も優れており均質なものであった。
【0077】
(実施例2)
タルクを2重量部の代わりに1重量部とし、ブタンを1.7重量部の代わりに1.5重量部とし、第二押出機にて161℃の代わりに162℃に冷却したこと、樹脂流路部62の先端開口部における溶融状態のポリ乳酸系樹脂の剪断速度を713sec-1の代わりに2221sec-1としたこと、下記サーキュラ金型1を用いたこと、押出速度を20kg/時間の代わりに40kg/時間としたこと以外は実施例1と同様の要領でポリ乳酸系樹脂発泡シートを得た。
【0078】
上記サーキュラ金型1は、図1に示したように、第一、第二樹脂流路部61、62の表面611a、611b、621a、621bが、イオンプレーティングによるPVD法によって形成された、厚さが1μmの窒化チタンからなる被覆層7で全面的に被覆されていた。なお、窒化チタンの表面は仕上げ記号で▽▽▽▽(粗さの区分0.8S)であった。
【0079】
又、第二樹脂流路部62における外側ダイ4側の樹脂流路面620bの開き角度αは30°で、第二樹脂流路部62における内側ダイ5側の樹脂流路面620aの開き角度βは35°であった。
【0080】
更に、サーキュラ金型1は、そのr0 が2.984cm、t0 が0.04cm、ポリ乳酸系樹脂の体積押出量Qは11.1cm3 /secであり、樹脂流路部62の先端開口部における溶融状態のポリ乳酸系樹脂の剪断速度は、2221sec-1であった。又、サーキュラ金型1の第二樹脂流路部62上の仮想円5aの直径は60mmであった。
【0081】
なお、ポリ乳酸系樹脂発泡シートは、その密度が0.20g/cm3 、厚みが2.0mm、連続気泡率が18%であり、均一で且つ微細な気泡を有し、外観も優れており均質なものであった。
【0082】
(実施例3)
ポリ乳酸系樹脂として、ユニチカ社から商品名「TE−6100」で販売されているポリ乳酸系樹脂(融点:167.8℃、メルトフローレート1.2g/10分)を用いたこと、第二押出機にて161℃の代わりに163℃に冷却したこと、下記サーキュラ金型1を用いたこと以外は実施例1と同様にしてポリ乳酸系樹脂発泡シートを得た。
【0083】
上記サーキュラ金型1は、図1に示したように、第一、第二樹脂流路部61、62の表面611a、611b、621a、621bが、イオンプレーティングによるPVD法によって形成された、厚さが1μmの炭窒化チタンからなる被覆層7で全面的に被覆されていた。なお、炭化チタンの表面は仕上げ記号で▽▽▽▽(粗さの区分0.8S)であった。
【0084】
又、第二樹脂流路部62における外側ダイ4側の樹脂流路面620bの開き角度αは30°で、第二樹脂流路部62における内側ダイ5側の樹脂流路面620aの開き角度βは35°であった。
【0085】
更に、サーキュラ金型1は、そのr0 が2.980cm、t0 が0.05cm、ポリ乳酸系樹脂の体積押出量Qは5.56cm3 /secであり、樹脂流路部62の先端開口部における溶融状態のポリ乳酸系樹脂の剪断速度は、713sec-1であった。又、サーキュラ金型1の第二樹脂流路部62上の仮想円5aの直径は60mmであった。
【0086】
なお、ポリ乳酸系樹脂発泡シートは、その密度が0.18g/cm3 、厚みが2.0mm、連続気泡率が16%であり、均一で且つ微細な気泡を有し、外観も優れており均質なものであった。
【0087】
(実施例4)
結晶性のポリ乳酸系樹脂(島津製作所社製 商品名「LACTY 9031」、融点:138.8℃、メルトフローレート:2.6g/10分)100重量部及び気泡調整剤としてタルク2重量部を、一段目となる口径50mmの単軸押出機と二段目となる口径65mmの単軸押出機とを接続管を介して接続してなるタンデム型の押出機の一段目の押出機に供給した。
【0088】
そして、ポリ乳酸系樹脂を一段目の押出機にて始めは150℃に加熱し、180℃まで徐々に加熱しながら溶融、混練すると共に、一段目の押出機の途中からジメチルエーテルをポリ乳酸系樹脂100重量部に対して6.2重量部の割合で圧入して、ポリ乳酸系樹脂中にジメチルエーテルを均一に分散させた。
【0089】
しかる後、溶融状態のポリ乳酸系樹脂を一段目の押出機から接続管を介して二段目の押出機に連続的に供給した。二段目の押出機にて溶融状態のポリ乳酸系樹脂を111℃に冷却した後、二段目の押出機の先端に取り付けられたサーキュラ金型から剪断速度455sec-1、押出速度25kg/時間にて円筒状に押出発泡した。なお、上記樹脂温度は、二段目の押出機とサーキュラ金型との間にブレーカープレートを挿入し、そのブレーカープレートの中心部に熱電対を挿入することにより測定した。
【0090】
ここで、サーキュラ金型1は、図1に示したように、第一、第二樹脂流路部61、62の表面611a、611b、612a、612bが、イオンプレーティングによるPVD法によって形成された、厚さが1μmの炭窒化チタンからなる被覆層7で全面的に被覆されていた。なお、炭窒化チタンの表面は仕上げ記号で▽▽▽▽(粗さの区分0.8S)であった。
【0091】
又、第二樹脂流路部62における外側ダイ4側の樹脂流路面620bの開き角度αは30°で、第二樹脂流路部62における内側ダイ5側の樹脂流路面620aの開き角度βは35°であった。
【0092】
更に、サーキュラ金型1は、そのr0 が2.971cm、t0 が0.07cm、ポリ乳酸系樹脂の体積押出量Qは6.94cm3 /secであり、樹脂流路部62の先端開口部における溶融状態のポリ乳酸系樹脂の剪断速度は、455sec-1であった。又、サーキュラ金型1の第二樹脂流路部62上の仮想円5aの直径は60mmであった。
【0093】
そして、上記円筒状発泡体を徐々に拡径した後、冷却水で冷却され且つ長さ方向の全長に亘って一定の外径を有する円柱状の冷却用マンドレル(外径:205mm、長さ:400mm)に連続的に供給し冷却した上で、円筒状発泡体をその任意の部分において押出方向に連続的に切断し展開することによって長尺状のポリ乳酸系樹脂発泡シートを連続的に製造し、巻き取り機によってロール状に巻き取った。なお、サーキュラ金型から押出発泡された直後の円筒状発泡体の内外周面に15℃の冷風を吹き付けた。
【0094】
上記ポリ乳酸系樹脂発泡シートは、その密度が0.047g/cm3 、厚みが2.0mm、連続気泡率が17%であり、均一で且つ微細な気泡を有し、外観も優れており均質なものであった。
【0095】
(実施例5)
サーキュラ金型1として、第二樹脂流路部62における外側ダイ4側の樹脂流路面620bの開き角度αが22°であり、第二樹脂流路部62における内側ダイ5側の樹脂流路面620aの開き角度βが25°であり、r0 が2.977cmである以外は、実施例1で用いられたサーキュラ金型と同様の構造を有するサーキュラ金型を用いたこと、樹脂流路部62の先端開口部における溶融状態のポリ乳酸系樹脂の剪断速度を714sec-1に調整したこと以外は実施例1と同様にしてポリ乳酸系樹脂発泡シートを得た。得られたポリ乳酸系樹脂発泡シートは、その密度が0.18g/cm3 で、厚みが2.0mmで、連続気泡率が18%であり、均一で且つ微細な気泡を有し、外観も優れており均質なものであった。
【0096】
(実施例6)
サーキュラ金型1として、第二樹脂流路部62における外側ダイ4側の樹脂流路面620bの開き角度αが45°で、第二樹脂流路部62における内側ダイ5側の樹脂流路面620aの開き角度βが52°であり、r0 が2.985cmである以外は、実施例1で用いられたサーキュラ金型と同様の構造を有するサーキュラ金型を用いたこと、樹脂流路部62の先端開口部における溶融状態のポリ乳酸系樹脂の剪断速度を712sec-1に調整したこと以外は実施例1と同様にしてポリ乳酸系樹脂発泡シートを得た。得られたポリ乳酸系樹脂発泡シートは、その密度が0.18g/cm3 で、厚みが2.0mmで、連続気泡率が17%であり、均一で且つ微細な気泡を有し、外観も優れており均質なものであった。
【0097】
(比較例1)
上記サーキュラ金型1として、第一、第二樹脂流路部61、62の表面611a、611b、621a、621bが、厚さが30μmのクロムメッキ層で全面的に被覆されていたこと以外は、実施例1と同様の構造を有するサーキュラ金型を用いたこと以外は実施例1と同様の要領でポリ乳酸系樹脂発泡シートを製造したところ、ポリ乳酸系樹脂発泡シートの表面に外観ムラが発生した。
【0098】
そこで、第二押出機にて161℃の代わりに164℃に冷却したこと以外は、上述と同様の要領でポリ乳酸系樹脂発泡シートを製造した。なお、ポリ乳酸系樹脂発泡シートは、その密度が0.18g/cm3 で、厚みが2.0mmで、連続気泡率が22%であった。
【0099】
(比較例2)
上記サーキュラ金型1として、第一、第二樹脂流路部61、62の表面611a、611b、621a、621bが、厚さが30μmのクロムメッキ層で全面的に被覆されていたこと以外は、実施例2で用いられたサーキュラ金型と同様の構造を有するサーキュラ金型を用いて、実施例2と同様の要領でポリ乳酸系樹脂発泡シートを製造したところ、ポリ乳酸系樹脂発泡シートの表面に外観ムラが発生した。
【0100】
そこで、第二押出機にて162℃の代わりに166℃に冷却したこと以外は、上述と同様の要領でポリ乳酸系樹脂発泡シートを製造した。なお、ポリ乳酸系樹脂発泡シートは、その密度が0.18g/cm3 で、厚みが2.0mmで、連続気泡率が21%であった。
【0101】
(比較例3)
サーキュラ金型1として、そのr0 が2.973cm、t0 が0.08cmである以外は実施例1で用いられたサーキュラ金型と同様の構造を有するサーキュラ金型を用い、樹脂流路部62の先端開口部における溶融状態のポリ乳酸系樹脂の剪断速度を279sec-1に調整したこと以外は実施例1と同様にしてポリ乳酸系樹脂発泡シートを得た。得られたポリ乳酸系樹脂発泡シートは、その密度が0.20g/cm3 で、厚みが2.0mmで、連続気泡率が30%であった。
【0102】
(比較例4)
サーキュラ金型1として、そのr0 が2.992cm、t0 が0.02cmである以外は実施例2で用いられたサーキュラ金型と同様の構造を有するサーキュラ金型を用い、ポリ乳酸系樹脂の体積押出量Qを11.1cm3 /secとし、樹脂流路部62の先端開口部における溶融状態のポリ乳酸系樹脂の剪断速度を8861sec-1に調整したこと以外は実施例2と同様にしてポリ乳酸系樹脂発泡シートを得た。得られたポリ乳酸系樹脂発泡シートは、その密度が0.20g/cm3 で、厚みが2.0mmで、連続気泡率が32%であった。
【0103】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0104】
【図1】本発明で用いられるサーキュラ金型を示した模式縦断面図である。
【図2】サーキュラ金型の出口部を示した模式縦断面図である。
【図3】サーキュラ金型の出口部における第二樹脂流路部の先端開口部を示した模式図である。
【図4】本発明で用いられるサーキュラ金型の他の一例を示した模式縦断面図である。
【図5】本発明で用いられるサーキュラ金型の他の一例を示した模式縦断面図である。
【図6】本発明で用いられるサーキュラ金型の他の一例を示した模式縦断面図である。
【符号の説明】
【0105】
1 サーキュラ金型
2 流入部
21 外側ダイ
22 内側ダイ
23 樹脂流路
3 出口部
4 外側ダイ
5 内側ダイ
6 樹脂流路
61 第一樹脂流路部
610 樹脂流路面
611a、611b 第一樹脂流路部の表面
62 第二樹脂流路部
621a、621b 第二樹脂流路部の表面
620a、620b 樹脂流路面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリ乳酸系樹脂及び発泡剤を押出機に供給して溶融混練し、押出機の先端に取り付けたサーキュラ金型から円筒状に押出発泡して円筒状発泡体を製造し、この円筒状発泡体を展開してポリ乳酸系樹脂発泡シートを製造するポリ乳酸系樹脂発泡シートの製造方法であって、上記サーキュラ金型の出口部を構成している内側ダイ及び外側ダイとの対向面間に形成された円環状の樹脂流路は、上記押出機側の一定径を有する第一樹脂流路部と、この第一樹脂流路部に連通して押出方向に向かって徐々に樹脂流通断面積を狭めながら拡径する第二樹脂流路部とからなり、この第一、第二樹脂流路部の表面のうち少なくとも、上記第一、第二樹脂流路部の連設部及び第二樹脂流路部の表面が、窒化チタン、炭化チタン又は炭窒化チタンからなる被覆層で被覆されており、上記サーキュラ金型の出口部の第二樹脂流路部から剪断速度300〜8000sec-1で押出すことを特徴とするポリ乳酸系樹脂発泡シートの製造方法。
【請求項2】
第二樹脂流路部における外側ダイ側の樹脂流路面が、第一樹脂流路部内を流通する溶融樹脂の流通方向に対してなす開き角度αが10〜70°であると共に、第二樹脂流路部における内側ダイ側の樹脂流路面が第一樹脂流路部内を流通する溶融樹脂の流通方向に対してなす開き角度βが、上記外側ダイ側の樹脂流路面が有する開き角度αよりも1〜15°だけ大きくなっていることを特徴とする請求項1に記載のポリ乳酸系樹脂発泡シートの製造方法。
【請求項3】
被覆層が炭窒化チタンから形成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のポリ乳酸系樹脂発泡シートの製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2006−224628(P2006−224628A)
【公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−44509(P2005−44509)
【出願日】平成17年2月21日(2005.2.21)
【出願人】(000002440)積水化成品工業株式会社 (1,335)
【Fターム(参考)】