説明

ポリ乳酸系樹脂組成物およびその成形体

【課題】透明性・結晶性に優れたポリ乳酸系樹脂組成物および成形物の提供すること。
【解決手段】特定の構造を有するポリ乳酸系化合物(A)100重量部に対してカルボン酸アミド、脂肪族アミン、脂肪族ウレタン、脂肪族カルボン酸エステルから選ばれる少なくとも1種の透明核剤(C)を0.1〜10重量部含んでなるポリ乳酸系樹脂組成物であって、220℃で3分間融解した融液から99℃/分の速度で冷却した100℃等温結晶化での結晶化時間が5分以下であるポリ乳酸系樹脂組成物が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポリ乳酸系樹脂組成物及びそれからなる成形品に関するものであって、当該組成物の溶融状態又は固体状態からの結晶化速度を速くし、かつ、透明性を向上する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
地球環境問題への意識が高まる中、化石原料、石油資源の枯渇、二酸化炭素の増大が問題視されている結果、脂肪族ポリエステルなどの生分解性樹脂・植物を原料として合成する樹脂の研究開発が活発に行われている。脂肪族ポリエステルの中でも特に、優れた成形性を有するポリ乳酸は、とうもろこし等の穀物資源から発酵により得られる乳酸を原料とする、植物由来の樹脂として注目されている。しかしながら、ポリ乳酸は、固くて脆いという欠点に加え、結晶化速度が遅く、耐熱性が低いため、用途展開に限界があった。特に、例えば、ポリ乳酸非晶成形体の場合、軟化温度が60℃未満であるため、日常の使用環境下において、白化、変形等を生じやすいという問題点が指摘されている。また、熱処理(アニール)をして結晶性を上げると、通常、光を散乱する原因となる光の波長と同程度以上の大きさの結晶(例えば、球晶)が急速に成長して、結晶を可視光の波長以上の大きさまで成長せしめるため、ポリ乳酸の耐熱性を向上させると、不透明になる問題点がある。
【0003】
この問題を解決するため、ポリ乳酸に各種添加剤を添加することにより、耐熱性、透明性を向上させる試みが多数なされている。
【0004】
特許文献1には核剤としてリン酸エステル金属塩、含水珪酸マグネシウム等の添加が効果的であると記載されている。しかしその様な核剤を用いた場合は、透明性が損なわれるという欠点がある。また一般的に用いられるタルクは結晶化速度の観点のみならば実用範囲内であるが、そのためには必要添加量が1%以上必要である場合が多く、ポリ乳酸本来の特性である透明性を損なう欠点がある。
【0005】
特許文献2には核剤として脂肪族カルボン酸アミド、脂肪族カルボン酸塩、脂肪族アルコール及び脂肪族カルボン酸エステルから選択される少なくとも一種を透明核剤として添加する方法が記されている。しかし、この場合、結晶化度33%でヘイズ6.5%と十分な結晶化度と透明性を兼ね備える結果は得られなかった。
【0006】
特許文献3に特定の官能基を有する化合物を開始剤とするポリ乳酸と無機フィラーを用いる方法が記載されている。しかし、この方法ではスリップ性が改良されたものの、無機フィラーを添加していることで、透明性を確保することはできなかった。
【特許文献1】特開2003-192884号公報
【特許文献2】特開平9-278991号公報
【特許文献3】特開2004-285121号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、ポリ乳酸系樹脂が本来有している剛性を損なわずに、耐熱性(高結晶化性)、透明性を改良しうる樹脂組成物、および当該樹脂組成物からなる成形体を得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は以下に特定される。
本発明は、特定の構造を有するポリ乳酸系化合物(A)100重量部に対してカルボン酸アミド、脂肪族アルコール、脂肪族カルボン酸エステルから選ばれる少なくとも1種の透明核剤(C)を0.1〜10重量部含んでなるポリ乳酸系樹脂組成物であって、220℃で3分間融解した融液から100℃/分の速度で冷却した100℃等温結晶化での結晶化時間が5分以下であるポリ乳酸系樹脂組成物を提供する。
【0009】
特定の構造を有するポリ乳酸系化合物(A)が12-ヒドロキシステアリン酸アミド、エチレンビス-12-ヒドロキシステアリン酸アミド、ヘキサメチレンビス-12-ヒドロキシステアリン酸アミド、m-キシリレンビス-12-ヒドロキシステアリン酸アミド、12-ヒドロキシ-cis-9-オクタデセノアミドからなる群から選択された少なくとも1種である由来の構成単位を含んでなる前記乳酸系樹脂組成物は本発明の好ましい態様である。
【0010】
透明核剤(C)が脂肪族カルボン酸アミドである前記ポリ乳酸系樹脂組成物も本発明の好ましい態様である。
【0011】
カルボン酸アミドがラウリン酸アミド、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド、エルカ酸アミド、ベヘニン酸アミド、リシノール酸アミド、ヒドロキシステアリン酸アミド、N-オレイルパルミチン酸アミド、N-ステアリルエルカ酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミド、エチレンビス-12-ヒドロキシステアリン酸アミド、ヘキサメチレンビスカプリン酸アミド、ヘキサメチレンビスラウリン酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、ヘキサメチレンビス-12-ヒドロキシステアリン酸アミド、m-キシリレンビスカプリン酸アミド、m-キシリレンビスラウリン酸アミド、m-キシリレンビスステアリン酸アミド、m-キシリレンビスオレイン酸アミド、m-キシリレンビス-12-ヒドロキシステアリン酸アミドからなる群から選択された少なくとも1種前記ポリ乳酸系樹脂組成物も本発明の好ましい態様である。
【0012】
ポリ乳酸系樹脂100重量部に対して更にポリ乳酸系樹脂(B)10〜1000重量部を含む前記ポリ乳酸系樹脂組成物も本発明の好ましい態様である。
【0013】
ポリ乳酸系樹脂(B)がポリ乳酸である前記ポリ乳酸系樹脂組成物も本発明の好ましい態様である。
【0014】
前記ポリ乳酸系樹脂組成物からなる成形体であって、80℃〜120℃の加温下で1〜300秒熱処理を行い、厚み100μmでヘイズが0.1〜15%であり、かつ、結晶化度が35%以上である成形体も本発明の好ましい態様である。
【0015】
前記ポリ乳酸系樹脂組成物からなる成形体であって、80℃〜120℃の加温下で1〜300秒熱処理を行い、厚み100μmでヘイズが1〜15%であり、かつ、結晶化度が35%以上である成形体も本発明の好ましい態様である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によって結晶化速度ならびに透明性の改良が実現し、従来不可能であった成形サイクル短縮、耐熱性および透明性の必要とされる製品への適用が可能となり、ポリ乳酸系樹脂に代表されるグリーンプラスチックの使用拡大に貢献できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明について詳細に説明する。
[特定の構造を有するポリ乳酸系化合物(A)]
本発明で示す特定の構造を有するポリ乳酸系化合物(A)とは、後述するポリ乳酸系樹脂(B)の高分子鎖中に特定の構造を含むポリマーとのことであり、具体的にはポリ乳酸系樹脂の高分子鎖中にアミド基を含有するポリマーである。特定の構造を有するポリ乳酸系化合物(A)中のアミド基の含有量は、特に限定されないが、好ましくは0.01〜5mol%、更に好ましくは0.03〜3mol%である。特定の構造を有するポリ乳酸系化合物(A)は、公知公用の方法で得ることができる、例えば、水酸基を有するアミド化合物と、ラクチドまたは乳酸を主成分とするモノマーを重合させることで得ることができる。ラクチドおよび乳酸以外のその他のモノマーとしては、カプロラクトン、プロピオラクトン、ブチロラクトン等の環状エステル(ラクトン)類、ヒドロキシブタン酸、ヒドロキシプロパン酸等のヒドロキシアルカン酸類を用いることができる。好ましくは乳酸由来の単位と水酸機を有するアミド化合物由来の単位からなるポリマーである。
【0018】
水酸基を有するアミド化合物としては、12-ヒドロキシステアリン酸アミド、12-ヒドロキシ-cis-9-オクタデセノアミド、メチロールステアリン酸アミド、メチロールベヘニン酸アミド、2-アセトアミドエタノール、エチレンビス-12-ヒドロキシステアリン酸アミド、ブチレンビス-12-ヒドロキシステアリン酸アミド、ヘキサメチレンビス-12-ステアリン酸アミド、m-キシリレンビス-12-ヒドロキシステアリン酸アミド等が挙げられる。これらの中でもエチレンビス-12-ヒドロキシステアリン酸アミド、ブチレンビス-12-ヒドロキシステアリン酸アミド、ヘキサメチレンビス-12-ステアリン酸アミド、m-キシリレンビス-12-ヒドロキシステアリン酸アミド、12-ヒドロキシ-cis-9-オクタデセノアミドが好ましい。これらは単独、又は2種以上用いてもよい。
【0019】
水酸基を有するアミド化合物の添加量は特に限定されるものではないが、ラクチドまたは乳酸を主成分とするモノマー100重量部に対して0.001〜10重量部であり、好ましくは0.01〜5重量部、さらに好ましくは0.1〜3重量部である。
【0020】
ラクチド、乳酸またはその他のモノマーの重合を行う際に溶媒を使用しても構わない。例えばヘキサン、ヘプタン、デカンなどの脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサンなどの脂環式炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素;ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン(THF)、ジグリムなどのエーテル系溶媒などが用いられる。これらの溶媒は、1種単独または2種以上組み合わせて用いることができる。ラクチドや乳酸の溶解性、反応温度、反応速度、反応終了後の溶媒除去の容易性等の点から、芳香族炭化水素とエーテル系溶媒が好ましく用いられる。特に好ましくはキシレン、トルエンである。溶媒の使用量は、とラクチドまたは乳酸の合計量に対して、0.1〜20倍の範囲で選択される。特に好ましくは0.5〜3倍である。
また重合において用いて触媒には公知のものが使用できる。例えばオクタン酸スズ(2-エチルヘキサン酸スズ)、ジラウリン酸ジブチルスズ、塩化スズ等のスズ系触媒、塩化チタン、チタンテトライソプロポキシド等のチタン系触媒、塩化亜鉛、酢酸亜鉛等の亜鉛系触媒があげられ、好ましくはスズ系触媒であり、さらに好ましくは、オクタン酸スズである。触媒の使用量は、ラクタイド100重量部に対して、触媒0.001〜5重量部であり、好ましくは0.003〜1重量部であり、さらに好ましくは0.005〜0.1重量部である。
【0021】
重合温度は、60℃から250℃の範囲から適宜選択される。好ましくは、100℃〜230℃である。たとえば、溶媒を用いない場合、反応温度は150〜200℃程度が好ましい。また、溶媒にキシレンを用い、触媒としてオクタン酸スズを用いて重合開始剤にラクチドを反応させる場合、反応温度は110〜150℃程度が好ましい。
【0022】
重合時間は、用いる環状エステルの種類、重合温度、触媒量により異なるが、0.1〜24時間、好ましくは0.5〜12時間、さらに好ましくは1〜6時間である。
ポリ乳酸系化合物(A)の重量平均分子量は好ましくは0.5万以上50万以下であり、より好ましい重量平均分子量の範囲は1万以上40万以下である。さらに好ましい重量平均分子量は5万以上30万以下である。
なお、本発明で示す重量平均分子量とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)(カラム温度40℃、クロロホルム溶媒)により、ポリスチレン標準サンプルとの比較で求めた値をいう。
【0023】
[ポリ乳酸系樹脂(B)]
本発明で示す「ポリ乳酸系樹脂」とは、L-乳酸単位及び/またはD-乳酸単位を少なくとも50モル%以上、好ましくは75%以上含有する重合体を主成分とする重合体組成物を意味するものであり、乳酸の重縮合や乳酸の環状二量体であるラクチドの開環重合によって合成される。乳酸と共重合可能な他のモノマーが共重合されたものでもよい。好ましくは乳酸単位が100%のポリ乳酸であり、さらに好ましくはL-乳酸由来の構成単位が95%以上、より好ましくは97%以上であるポリ乳酸である。
また、ポリ乳酸系樹脂には、乳酸単位が50モル%以上含有された重合体以外に、該重合体の性質を著しく損なわない範囲で他の樹脂、添加物等が混合された組成物であってもよい。また、重量平均分子量は0.5万〜50万、好ましくは1万〜40万、さらに好ましくは5万〜30万である。
【0024】
乳酸と共重合可能なモノマーとしては、ヒドロキシカルボン酸(例えば、グリコール酸、カプロン酸等)、脂肪族多価アルコール(例えば、ブタンジオール、エチレングリコール等)や脂肪族多価カルボン酸(例えば、コハク酸、アジピン酸等)が挙げられる。ポリ乳酸系樹脂がコポリマーの場合、コポリマーの配列の様式は、ランダム共重合体、交替共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体等のいずれの様式でもよい。さらに、これらは少なくとも一部が、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、エチレングリコール/プロピレングリコール共重合体、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,9-ノナンジオール、ネオペンチルグリコール、ポリテトラメチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン等の二官能以上等の多価アルコール、キシリレンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート等のような多価イソシアネートやセルロース、アセチルセルロースやエチルセルロース等のような多糖類等が共重合されたものでもよく、少なくとも一部が、線状、環状、分岐状、星形、三次元網目構造、等のいずれの構造をとってもよく、何ら制限はない。
【0025】
[透明核剤(C)]
本発明で用いられる透明核剤とは、特定の構造を有するポリ乳酸系化合物(A)に添加した際に、結晶化の際に核剤となるものでかつ透明性を付与するものである。具体的には、カルボン酸アミド、脂肪族アルコール、脂肪族カルボン酸エステルが挙げられる。これらは一種類または二種類以上の混合物であってもよい。
【0026】
カルボン酸アミドの具体例としては、ラウリン酸アミド、パルミチン酸アミド、オレイン酸アミド、ステアリン酸アミド、エルカ酸アミド、ベヘニン酸アミド、リシノール酸アミド、ヒドロキシステアリン酸アミドのような脂肪族モノカルボン酸アミド類、N-オレイルパルミチン酸アミド、N-オレイルオレイン酸アミド、N-オレイルステアリン酸アミド、N-ステアリルオレイン酸アミド、N-ステアリルステアリン酸アミド、N-ステアリルエルカ酸アミド、メチロールステアリン酸アミド、メチロールベヘニン酸アミドのようなN-置換脂肪族モノカルボン酸アミド類、メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスエルカ酸アミド、エチレンビスベヘニン酸アミド、エチレンビスイソステアリン酸アミド、エチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド、ブチレンビスステアリン酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミド、ヘキサメチレンビスベヘニン酸アミド、ヘキサメチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド、m-キシリレンビスオレイン酸アミド、m-キシリレンビスステアリン酸アミド、m-キシリレンビスベヘニン酸アミド、m-キシリレンビスヒドロキシステアリン酸アミドのような脂肪族ビスカルボン酸アミド類、N,N’-ジオレイルセバシン酸アミド、N,N’-ジオレイルアジピン酸アミド、N,N’-ジステアリルアジピン酸アミド、N,N’-ジステアリルセバシン酸アミド、N,N’-ジステアリルイソフタル酸アミド、N,N’-ジステアリルテレフタル酸アミドのようなN-置換脂肪族カルボン酸ビスアミド類、N-ブチル-N’-ステアリル尿素、N-プロピル-N’-ステアリル尿素、N-ステアリル-N’-ステアリル尿素、N-フェニル-N’-ステアリル尿素、キシリレンビスステアリル尿素、キシリレンビスステアリル尿素、トルイレンビスステアリル尿素、ヘキサメチレンビスステアリル尿素、ジフェニルメタンビスステアリル尿素、ジフェニルメタンビスラウリル尿素のようなN-置換尿素類が挙げられる。中でもビスカルボン酸アミドが好適に用いられ、特に、エチレンビスラウリン酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミド、エチレンビス-12-ヒドロキシステアリン酸アミド、ヘキサメチレンビスラウリン酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、ヘキサメチレンビス-12-ヒドロキシステアリン酸アミド、m-キシリレンビスラウリン酸アミド、m-キシリレンビスオレイン酸アミド、m-キシリレンビス-12-ヒドロキシステアリン酸アミドが好適に用いられる。これらの中でも特に、分子内に芳香環を有しないエチレンビスラウリン酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミド、エチレンビス-12-ヒドロキシステアリン酸アミド、ヘキサメチレンビスラウリン酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、ヘキサメチレンビス-12-ヒドロキシステアリン酸アミドが、結晶化速度が優れるという点で好ましい。
【0027】
脂肪族アルコールの具体例としては、ペンタデシルアルコール、セチルアルコール、ヘプタデシルアルコール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、シクロヘキサン1,2-ジオール、シクロヘキサン1,4-ジオール等が挙げられる。
【0028】
脂肪族カルボン酸エステルの具体例としては、ラウリン酸セチルエステル、パルミチン酸セチルエステル、ステアリン酸セチルエステル、ジラウリン酸グリコール、ジパルミチン酸グリコール、モノラウリン酸グリセリンエステル、モノステアリン酸グリセリンエステル等が挙げられる。
【0029】
[ポリ乳酸系樹脂組成物]
本発明に係るポリ乳酸系樹脂組成物は、特定の構造を有するポリ乳酸系化合物(A)、及び透明核剤(C)を含んでなる樹脂組成物である。
【0030】
本発明にかかるポリ乳酸系樹脂組成物は、特定の構造を有するポリ乳酸系化合物(A)100重量部に対して、透明核剤(C)0.1〜10重量部、好ましくは0.2〜5重量部、さらに好ましくは0.3〜3重量部である。0.1〜10重量部の場合、透明核剤としての効果が大きく発現し、高い結晶化速度、透明性を兼ね備えた樹脂組成物が得られる。
【0031】
本発明に係るポリ乳酸系樹脂組成物に対しては、前述のポリ乳酸系樹脂(B)を含んでいても良い、添加量は、ポリ乳酸系樹脂組成物100重量部に対して、ポリ乳酸系樹脂(B)10〜1000重量部、好ましくは15〜500重量部、さらに好ましくは20〜300重量部である。
【0032】
本発明に係るポリ乳酸系樹脂組成物に対しては、目的(例えば成形性、二次加工性、分解性、引張強度、耐熱性、保存安定性、耐候性、難燃性等の向上)に応じて他の樹脂あるいは重合体や各種添加剤を添加する事ができる。添加する他の樹脂あるいは重合体としては、未変性ポリオレフィン、ビニル系樹脂、ポリスチレン、ポリアミド、アクリル樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエステル、ポリスルホン、ポリフェニレンオキサイド、ポリイミド、ポリエーテルイミド、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体(ABS)、エチレン・α-オレフィン共重合ゴム、共役ジエン系ゴム、スチレン系ゴム、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂などが挙げられる。これらの樹脂は1種または2種以上を含有させることができる。
【0033】
各種添加剤としては可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、熱安定剤、難燃剤、内部離型剤、無機添加剤、帯電防止剤、表面ぬれ改善剤、焼却補助剤、顔料、染料、核化剤、滑剤、天然物等を挙げることができ、好ましくは可塑剤が挙げられる。具体的な可塑剤としてはトリアセチン、トリエチレングリコールジアセテート、アセチルクエン酸トリエチル、アセチルクエン酸トリブチル、ジブチルセバケートが挙げられる。
【0034】
また、フィルム、シートのブロッキング防止やすべり性を改良するために、無機添加剤や滑剤を添加することもできる。無機添加剤としては、シリカ、マイカ、タルク、ガラス繊維、ガラスビーズ、カオリン、カオリナイト、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、水酸化マグネシウム、ワラストナイト、炭素繊維、ケイ酸カルシウム繊維、マグネシウムオキシサルフェート繊維、チタン酸カリウム繊維、亜硫酸カルシウム、ホワイトカーボン、クレー、モンモリロナイト、酸化チタン、酸化亜鉛等が挙げられ、これらは1種又は2種以上の混合物として用いる事もできる。特に無機添加剤としてガラス繊維を用いることにより、樹脂組成物の耐熱性向上が期待できる。また、有機添加剤としては、デンプン及びその誘導体、セルロース及びその誘導体、パルプ及びその誘導体、紙及びその誘導体、小麦粉、おから、ふすま、ヤシ殻、コーヒー糟、タンパク、可塑剤としてフタル酸系、脂肪族多塩基酸系、グリセリン系、クエン酸系、グリコール系、オレフィン系の低分子量体、有機繊維としてポリエチレンテレフタレート繊維、ポリエチレンナフタレート繊維、アラミド繊維等が挙げられる。これらは1種又は2種以上の混合物として用いる事もできる。
他の樹脂、重合体又は添加剤の添加量は、本発明の目的を損なわない範囲内で用途に応じて適宜選択される。
【0035】
本発明に係る特定の構造を有するポリ乳酸系化合物(A)、透明核剤(C)を含んでなるポリ乳酸系樹脂組成物を製造する場合の公知の製造方法を適宜採用することができるが、例えば、高速撹拌機、又は、低速撹拌機等を用いて予め均一に混合した後、樹脂の融点以上において十分な混練能力のある一軸あるいは多軸の押出機で溶融混練する方法や、溶融時に混合混練する方法や、溶液中で混合した後に溶媒を除く方法などを採用することができる。
【0036】
ポリ乳酸系樹脂組成物の製造は、成形体の成形前に行っても良いし、製造と成形を同時に行ってもよい。成形前に該樹脂組成物を製造する場合、樹脂組成物の形状は、通常、ペレット、棒状、粉末等が好ましい。
本発明にかかるポリ乳酸系樹脂組成物は、結晶化速度が早くという点で優れる。
【0037】
本発明で示す結晶化速度とは、示差走査熱量測定(DSC)分析において、ポリマーを昇温し融解した後、一定速度で所定の温度まで冷却し、その所定の温度で保持したとき、その所定の温度に保持しはじめた時点から結晶化のための発熱ピークが最大値となる時までの時間のことをいう。この時間が短ければ結晶化速度は速いことになる。前記所定の温度とは、測定するポリマーによって適宜選択される。例えば、本発明のように乳酸由来のユニットにより構成されている場合、DSC(島津製 DSC-60)でフィルム状のポリマーを5〜6mg秤量し、窒素シールしたパンに計り込み、窒素シールされた予め30℃
に設定されたDSC測定部に装入した後、100℃/minの昇温速度で昇温し220℃、3分間溶融後99℃/minの冷却速度で所定の結晶化温度まで冷却し、その所定の温度で保持した時、所定の温度まで冷却された時点から結晶化のための発熱ピークが最大値となる時の時間のことをいう。
【0038】
本発明に係るポリ乳酸系樹脂組成物の結晶化速度は、7分以下、好ましくは0.1〜6分、さらに好ましくは1〜5分である。
【0039】
[ポリ乳酸系樹脂組成物からなる成形体]
以下に、本発明に係るポリ乳酸系樹脂組成物からえられる成形体の製造方法は公知公用の方法を用いることができる。たとえば、以下のような方法を用いて製造することができる。
(1)押出成形においては、本発明に係るポリ乳酸系樹脂組成物を、一般的なTダイ押出成形機で成形することにより、フィルムやシートを成形することができる。
(2)射出成形においては、本発明に係るポリ乳酸系樹脂組成物のペレットを溶融軟化させて金型に充填し、成形サイクル20〜300秒で成形物が得られる。
(3)ブロー成形(射出ブロー成形、延伸ブロー成形、ダイレクトブロー成形)においては、たとえば、射出ブロー成形においては、本発明に係るポリ乳酸系樹脂組成物のペレットを、一般的な射出ブロー成形機で溶融して金型に充填することにより、予備成形体を得る。得られた予備成形体をオーブン(加熱炉)中で再加熱した後に、一定温度に保持された金型内に入れて、圧力空気を送出してブローすることによりブローボトルを成形することができる。
(4)真空成形・真空圧空成形においては、上記(1)の押出成形と同様の方法により成形したフィルムやシートを、予備成形体とする。得られた予備成形体を加熱して、一旦、軟化させた後、一般的な真空成形機を用いて、一定温度に保持された金型内で、真空成形、又は、真空圧空成形することにより、成形物を成形することができる。
(5)積層体成形においては、上記(1)の押出成形の方法で得たフィルムやシートを他の基材と接着剤や熱でラミネーションする方法や、上記(1)の押出成形の方法と同様の方法でTダイから溶融樹脂を直接、紙、金属、プラスチックなどの基材上へ押出す押出ラミネーション法、本発明の樹脂組成物などを別の押出機で各々溶融し、ダイヘッドで合流させて同時に押し出す共押出法、これらを組み合わせた共押出ラミネーションなどの方法で積層成形体を得ることができる。
(6)テープヤーン成形においては、上記(1)の押出成形と同様の方法により成形したフィルムやシートを特定の幅にスリットし、60℃〜140℃の温度範囲で一軸に熱延伸し、場合によってはさらに80℃〜160℃の温度範囲で熱固定することで成形物を成形することができる。
(7)糸成形においては、押出機を用い150〜240℃の温度で溶融させ紡糸口金から吐出させる溶融紡糸法により糸を得ることができる。所望によっては60℃〜100℃の温度範囲で一軸に熱延伸し、場合によってはさらに80℃〜140℃の温度範囲で熱固定することで糸を成形することができる。
(8)不織布成形においては、スパンボンド法またはメルトブローン法により成形体を成形することができる。スパンボンド法では、上記(7)の糸成形と同様の方法で、多孔の紡糸口金を通し溶融紡糸し、紡糸口金の下部に設置したエアーサッカを用いて延伸しウェブを形成し、捕集面に堆積させ、さらにこれをエンボスロールと平滑ロールにて圧着、熱融着させることで不織布を得ることができる。メルトブローン法では、多孔の紡糸口金を通し吐出された溶融樹脂が加熱気体吹出口から吹き出される高速度の加熱気体と接触して微細なファイバーに繊維化され、さらに移動支持体上に堆積されることで不織布を得ることができる。
【0040】
本発明にかかるポリ乳酸系樹脂組成物からなる成形体は、80℃〜120℃で1〜300秒熱処理を行った後の、厚み100μmでのヘイズが0.1〜15%、好ましくは0.1〜12%、さらに好ましくは0.1〜11%であり、かつ、結晶化度が35%以上、好ましくは38〜60%。更に好ましくは42〜55%である。
【0041】
本発明により、ポリ乳酸系樹脂組成物の透明性の向上が図られるが、これは特定の構造を有するポリ乳酸系化合物(A)、具体的にはポリ乳酸系樹脂の弘文指差中にアミド結合を有するポリマーを用いることにより、アミド基が均質に微分散して存在することに起因するものと思われる。特に、上述した透明核剤を併用する場合、添加された透明核剤が、微分散した状態で存在する特定の構造を有するポリ乳酸系化合物(A)の高分子鎖中のアミド基と水素結合によって、純粋なポリ乳酸中への添加と比較して、均質に微分散することにより、高結晶化度且つ、高い透明性(低いヘイズ)を達成するものと思われる。
【0042】
本発明で示す結晶化度とは、示差走査熱量測定(DSC)による分析であり、プレス成形によって得られた無配向フィルムを105℃のオーブンで所定時間熱処理を行ったフィルムを5〜6mg秤量し、窒素シールしたパンに計り込み、窒素シールされた予め30℃に設定されたDSC測定部に装入した後、10℃/minの昇温速度で昇温し220℃まで昇温した。結晶化エンタルピー(ΔHc)、結晶融解エンタルピー(ΔHm)を測定し、[{(ΔHm-ΔHc)/(ΔH)}×100]を求め、結晶化度とした。ここでΔHは完全理想結晶融解エンタルピーを表し、ポリ乳酸の数値93J/gを使用した。
本発明で示すヘイズとはヘイズメーターで測定した値をいう。
【0043】
[ポリ乳酸系樹脂組成物の用途]
本発明のポリ乳酸系樹脂組成物(D)は、上述した種々の成形加工方法により成形することができ、特に限定されることなく様々な用途に好適に使用することができる。
本発明にかかるポリ乳酸系樹脂組成物は、上述した種々の成形加工方法により成形することができ、特に限定されることなく様々な用途に好適に使用することができる。また、これらの成形品は、自動車部品、家電材料部品、電気・電子部品、建築部材、土木部材、農業資材および日用品、各種フィルム、通気性フィルムやシート、一般産業用途及びレクリエーション用途に好適な発泡体、糸やテキスタイル、医療又は衛生用品などの各種用途に利用することができ、好ましくは耐熱性、耐衝撃性が必要とされる自動車材料部品、家電材料部品、電気・電子材料部品に利用することができる。具体的には、自動車部品材料用途では、フロントドア、ホイルキャップなどのこれまで樹脂部品が用いられている部品への展開、家電材料部品用途ではパソコン、ヘッドホンステレオ、携帯電話などの製品の筐体部品への展開、電気・電子部品では、反射材料フィルム・シート、偏光フィルム・シートへの展開が挙げられる。
【実施例】
【0044】
[重量平均分子量]
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)(カラム温度40℃、クロロホルム溶媒)により、ポリスチレン標準サンプルとの比較で求めた。
【0045】
[結晶化速度(等温結晶化時間)]
DSC(島津製 DSC-60)により求めた。プレス成形によって得られた無配向フィルムを5〜6mg秤量し、窒素シールしたパンに計り込み、窒素シールされた予め30℃に設定されたDSC測定部に装入した後、99℃/minの昇温速度で昇温し220℃、3分間溶融した。溶融後100℃/minの冷却速度で100℃まで結晶化温度まで冷却し、100℃まで冷却した時間を開始時間として結晶化ピークが最大になる時間を求めた。
【0046】
[結晶化度]
DSC(島津製 DSC-60)により求めた。プレス成形によって得られた無配向フィルムを105℃のオーブンで所定時間熱処理を行ったフィルムを5〜6mg秤量し、窒素シールしたパンに計り込み、窒素シールされた予め30℃に設定されたDSC測定部に装入した後、10℃/minの昇温速度で昇温し220℃まで昇温した。結晶化エンタルピー(ΔHc)、結晶融解エンタルピー(ΔHm)を測定し、[{(ΔHm-ΔHc)/(ΔH)}×100]を求め、結晶化度とした。ここでΔHは完全理想結晶融解エンタルピーを表し、ポリ乳酸の数値93J/gを使用した。
【0047】
[透明性(HAZE)]
JISK7105に基づきヘイズメーター(日本電色社製 NDH2000)により求めた。
【0048】
[結晶サイズの観察]
偏光顕微鏡(Nicon MICROPHOT−FXA)により、結晶サイズを観察した。
【0049】
[製造例1]
L-ラクチド299.4g、D-ラクチド3.02g、エチレンビス-12-ヒドロキシステアリン酸アミド1.89g、オクタン酸スズ15mg(5wt%キシレン溶液を0.30g添加)を2000mlセパラブルフラスコに入れ、窒素を流しながら190℃の条件下で4時間重合を行った。重合終了後、反応物をクロロホルム1800mlに溶解させ、メタノール中で撹拌しながら沈殿させて、よく撹拌して残存するラクチドを除去し、吸引ろ過を行った。メタノールでリンス洗浄をして、50℃、2kPaで24時間乾燥させて、重量平均分子量14.8万のポリマー(A-1)を269.8g得た。また、H-NMRにより、エチレンビス-12-ヒドロキシステアリン酸アミドに由来するアミド基の水素の存在、水酸基の水素の消出を確認した。
【0050】
[製造例2]
L-ラクチド299.4g、D-ラクチド3.02g、エチレンビス-12-ヒドロキシステアリン酸アミド1.76g、オクタン酸スズ15mg(5wt%キシレン溶液を0.30g添加)を2000mlセパラブルフラスコに入れ、窒素を流しながら190℃の条件下で4時間重合を行った。重合終了後、反応物をクロロホルム1800mlに溶解させ、メタノール中で撹拌しながら沈殿させて、よく撹拌して残存するラクチドを除去し、吸引ろ過を行った。メタノールでリンス洗浄をして、50℃、2kPaで24時間乾燥させて、重量平均分子量16.8万のポリマー(A-2)を278.2g得た。また、H-NMRにより、エチレンビス-12-ヒドロキシステアリン酸アミドに由来するアミド基の水素の存在、水酸基の水素の消出を確認した。
【0051】
[実施例1〜14]
製造例1、製造例2で合成したポリマー(A-1)、ポリマー(A-2)、透明核剤及び
必要に応じてポリ乳酸(三井化学製、登録商標LACEA グレードH-100、(ポリマー(B-1))を表1に示す重量部でラボプラストミルを用いて温度200℃、時間5分、回転数50rpmの条件で混練した。混練物を200℃、10MPa、5分でプレスし厚さ100μmのフィルムを得た。等温結晶化時間を測定した後、このフィルムを105℃のオーブンに60秒(実施例9のみ90秒)入れて熱処理を行い、そのサンプルの結晶化度と透明性(ヘイズ)を測定した。結果を表1に示す。
【0052】
[比較例1〜2]
三井化学製ポリ乳酸 (登録商標LACEA グレードH-100、(ポリマー(B-1))100重量部に対して、表1記載の透明核剤を所定量用いた他は実施例1と同様に溶融・成形を行った。等温結晶化時間、結晶化度、透明性を測定した。結果を表1に示す。
【0053】
【表1】

【0054】
[実施例15]
実施例7で得られた105℃のオーブンで60秒熱処理を行った結晶化度50%、ヘイズ9.0%のフィルムのサンプルを、偏光顕微鏡により結晶サイズを観察した。およそ1μmのレベル以上のサイズの結晶は観察されなかった。(図1)
[比較例3]
比較例2で得られた105℃のオーブンで60秒熱処理を行った結晶化度49%、ヘイズ28.0のフィルムのサンプルを、偏光顕微鏡により結晶サイズを観察した。数μmのサイズの結晶が多数観察された。(図2)
実施例15および比較例3の偏光顕微鏡による結晶サイズの観察により、ほぼ同じ結晶化度のサンプルのヘイズが大きく異なり理由は、結晶サイズによるものであり、本発明により示したポリ乳酸系樹脂組成物の結晶サイズは極微少であるため、光の散乱を起こさずに透明性を維持している事を示している。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明にかかる特定の構造を有するポリ乳酸系樹脂(A)、および透明核剤(C)を含んでなるポリ乳酸系樹脂組成物から得られる成形体は高い結晶化速度と透明性を同時に付与することができ、本発明の成形体は優れた特性を活かして電子・電気部品、建築部材、自動車部品、容器、医用材料、各種包装材料、日用品など各種産業資材として使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】フィルムの偏光顕微鏡写真(実施例15)
【図2】フィルムの偏光顕微鏡写真(比較例3)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
特定の構造を有するポリ乳酸系化合物(A)100重量部に対してカルボン酸アミド、脂肪族アルコール、脂肪族カルボン酸エステルから選ばれる少なくとも1種の透明核剤(C)を0.1〜10重量部含んでなるポリ乳酸系樹脂組成物であって、220℃で3分間融解した融液から100℃/分の速度で冷却した100℃等温結晶化での結晶化時間が5分以下であることを特徴とするポリ乳酸系樹脂組成物。
【請求項2】
特定の構造を有するポリ乳酸系化合物(A)が12-ヒドロキシステアリン酸アミド、エチレンビス-12-ヒドロキシステアリン酸アミド、ヘキサメチレンビス-12-ヒドロキシステアリン酸アミド、m-キシリレンビス-12-ヒドロキシステアリン酸アミド、12-ヒドロキシ-cis-9-オクタデセノアミドからなる群から選択された少なくとも1種由来の構成単位を含んでなる請求項1記載のポリ乳酸系樹脂組成物。
【請求項3】
透明核剤(C)がカルボン酸アミドである請求項1記載のポリ乳酸系樹脂組成物。
【請求項4】
カルボン酸アミドがラウリン酸アミド、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド、エルカ酸アミド、ベヘニン酸アミド、リシノール酸アミド、ヒドロキシステアリン酸アミド、N-オレイルパルミチン酸アミド、N-ステアリルエルカ酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミド、エチレンビス-12-ヒドロキシステアリン酸アミド、ヘキサメチレンビスカプリン酸アミド、ヘキサメチレンビスラウリン酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、ヘキサメチレンビス-12-ヒドロキシステアリン酸アミド、m-キシリレンビスカプリン酸アミド、m-キシリレンビスラウリン酸アミド、m-キシリレンビスステアリン酸アミド、m-キシリレンビスオレイン酸アミド、m-キシリレンビス-12-ヒドロキシステアリン酸アミドからなる群から選択された少なくとも1種である請求項3記載のポリ乳酸系樹脂組成物。
【請求項5】
ポリ乳酸系樹脂100重量部に対して更にポリ乳酸系樹脂(B)10〜1000重量部を含む請求項1〜4記載のポリ乳酸系樹脂組成物。
【請求項6】
ポリ乳酸系樹脂(B)がポリ乳酸である請求項5記載のポリ乳酸系樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1〜6記載のポリ乳酸系樹脂組成物からなる成形体であって、80℃〜120℃の加温下で1〜300秒熱処理を行い、厚み100μmでのヘイズが0.1〜15%であり、かつ、結晶化度が35%以上である成形体。
【請求項8】
請求項1〜6記載のポリ乳酸系樹脂組成物からなる成形体であって、80℃〜120℃の加温下で1〜300秒熱処理を行い、厚み100μmでのヘイズが1〜15%であり、かつ、結晶化度が35%以上である成形体。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−332343(P2007−332343A)
【公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−209836(P2006−209836)
【出願日】平成18年8月1日(2006.8.1)
【出願人】(000005887)三井化学株式会社 (2,318)
【Fターム(参考)】