説明

ポリ(ビニルアルコール)を基材とする医療用デバイス

少なくとも90%の加水分解度および少なくとも50,000ダルトンの重量平均分子量を有するポリ(ビニルアルコール)を含んでなる整形外科用インプラントおよび足場が提供される。またその作成法も提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は引用により全部、本明細書に編入する2008年、12月21日に出願された特許文献1の利益を主張する。
【0002】
発明の分野
本発明は、とりわけポリ(ビニルアルコール)を基材とする医療用デバイスおよびその作成法および使用法に関する。
【背景技術】
【0003】
最も長期間の整形外科用インプラントは合成の疎水性ポリマーを含む。例えば金属製インプラントの中には、超高分子量ポリエチレンのような疎水性ポリマーから作られた連結表面(articulating surface)を有するものもある。そのような疎水性ポリマーからの摩耗粒子は、しばしば骨溶解といった悪い免疫応答を誘導する。さらにこれらのポリマーは生体不活性ではあるが、細胞足場または軟部組織置換として使用するためには理想的には適していない。このように当該技術分野では、バルク形態または孔質構造物のいずれかにおいて、より生体に適した(bio−friendly)インプラント材料の必要性が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許出願第61/015,806号明細書
【発明の概要】
【0005】
発明の要約
幾つかの観点では、本発明はポリ(ビニルアルコール)(PVA)を含んでなるインプラントに関し、ここで該ポリ(ビニルアルコール)は、少なくとも90%の加水分解度および少なくとも50,000の重量平均分子量を有する。幾つかのインプラントはさらに治療用組成物を含んでなる。加水分解度は特定の態様では少なくとも95%または98%である。幾つかの好適なPVAは架橋結合されている。
【0006】
幾つかの態様は整形外科用インプラントに関する。本発明の整形外科用インプラントには、ポリ(ビニルアルコール)を含んでなる連結表面を有するものを含む。幾つかのインプラントは、水、グリセロールのような可塑剤、または治療用組成物のような付加材料を含むことができる。
【0007】
幾つかの観点では、本発明は本明細書に記載するポリ(ビニルアルコール)組成物を含んでなる軟部組織の修復および再生のための足場に関する。
【0008】
本発明の他の観点は、本明細書に記載するPVA組成物を含んでなる物品の形成法に関する。1つのそのような方法は、
・少なくとも50,000の重量平均分子量および少なくとも90%の加水分解度を有するポリ(ビニルアルコール)を、ポリ(ビニルアルコール)の10〜50%重量パーセントを構成する量の1もしくは複数の可塑剤と接触させ、これにより可塑化された材料を形成し;そして
・可塑化された材料を成形して硬化した物品を形成する、
ことを含んでなる。
【0009】
幾つかの態様では、この方法は硬化したグリセロール含有PVA物品を完全に水−飽和(water−saturation)状態に水和することに関する。
【0010】
特定の態様では、この方法はさらに該物品を0℃以下または−80℃に供し、次いで該物品を大気圧未満の圧に供することによりショアー(Shore)D硬度を上げることを含んでなる。ショアーD硬度の低下が望ましい場合、架橋結合PVA(cross−linked PVA)を含んでなる物品を、70℃〜95℃の温度の水溶液に接触させることができる。
【0011】
幾つかの態様では、ポリ(ビニルアルコール)はグリセロールと接触させる時に粒状である。適切な可塑剤にはグリセロールのような多価アルコールを含む。可塑剤は処理条件に適合するように適切な熱的性質を有するべきである。
【0012】
本物品を形成するために、任意の適切な硬化法を使用することができる。そのような方法には圧縮成形およびラム押出し法を含む。
【0013】
この方法はさらにポリ(ビニルアルコール)を架橋結合して架橋結合した物品を形成することを含んでなることができる。
【0014】
架橋結合は当該技術分野で既知の任意の方法により生じることができる。幾つかの態様では、架橋結合はポリ(ビニルアルコール)を高エネルギー電離照射に暴露することにより成される。
【0015】
幾つかのインプラントおよび足場は孔質であることができる。そのような物品を作成する確実な方法は、さらに塩化ナトリウムを含んでなる圧縮成形性材料を使用する。幾つかの方法では、グリセロールおよび塩化ナトリウムの少なくとも一部を除去するために効果的な時間および条件下で、架橋結合した物品を水と接触させる。幾つかの好適な態様では、少なくとも90%のグリセロールおよび少なくとも90%の塩化ナトリウムが、架橋結合した物品と水を接触させることにより除去される。
【0016】
また本発明は、少なくとも90%の加水分解度および少なくとも50,000ダルトンの重量平均分子量を有するポリ(ビニルアルコール)を含んでなる小室(chamber);該小室内の治療用組成物;および該小室に通じる電力源を含んでなるイオン浸透療法デバイスに関する。幾つかの態様では、治療用組成物は経皮的に送達される。幾つかの態様では、治療薬は正または負の電荷を有する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】実施例3の孔質の水−飽和PVAの顕微鏡写真を示す。
【図2】実施例3の孔質の水−飽和PVAの顕微鏡写真を示す。
【図3】PVA樹脂のグリセロール−可塑化に関する工程の概略を表す。
【図4】種々の非架橋結合PVAインプラント材料の作製に関する工程の概略を表す。
【図5】種々の架橋結合PVAインプラント材料の作製に関する工程の概略を表す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
具体的態様の詳細な説明
本発明は一般に、ポリ(ビニルアルコール)を含んでなるインプラントに関し、ここで該ポリ(ビニルアルコール)は少なくとも90%の加水分解度および少なくとも50,000ダルトンの重量平均分子量を有する。幾つかのインプラントはさらに、治療用組成物を含む。そのようなインプラントは動物(例えばヒト)の身体内に配置され、そして治療用組成物を経時的に放出する。そのような手順は当業者には周知である。
【0019】
一つの観点では、本発明はポリ(ビニルアルコール)(PVA)を基材とした親水性の整形外科用インプラントに関する。これらのインプラントは疎水性ポリマーからできたものとは異なり、細胞足場または軟部組織置換としても有用である。ポリ(ビニルアルコール)は、従来のインプラントを作成するために使用されるポリマーよりも生体に適している。
【0020】
幾つかの態様では、本発明の物品は10〜50重量パーセントの水を含む。別の態様では、この物品は30重量%以下の水を含む。
【0021】
本発明の一つの利点は、本発明のPVA構造が従来のPVAヒドロゲルのものよりも構造的に強い点である。幾つかの構造は少なくとも35のショアーD硬度を有する。
【0022】
ポリ(ビニルアルコール)は完全に加水分解されたPVAで、すべての反復基が--CH--CH(OH)--であるか、あるいは変動する比率(1%〜25%)のペンダントエステル基を有する一部加水分解されたPVAであることができる。ペンダントエステル基を持つPVAは、構造--CH--CH(OR)--の反復基を有し、ここでRはCOCH基であるか、または所望する特性が保持される限りさらに長いアルキル基である。幾つかの態様では、PVAは好ましくは少なくとも98%の加水分解度を有する。特定の態様では、PVAは少なくとも100,000ダルトンの分子量(Mw)を有する。
【0023】
PVAは好ましくは架橋結合される。PVAの架橋結合は、例えばガンマ線照射のような高エネルギー電離照射により行うことができる。一つのそのようなスキームが図5に提示される。あるいは化学的架橋結合も利用することができる。
【0024】
本発明の物品の硬度は、物品を1もしくは複数の凍結乾燥サイクルに供することにより調整することができる。例えば物品は凍結サイクルで0℃未満の温度、すなわち−20℃、または−50℃、または−80℃に供することができる。物品は凍結温度に数分から数時間、供することができる。例えば5分から24時間。乾燥サイクルは大気圧未満の圧で行うことができる。例えば圧は10−2トル以下、10−4トル以下または10−6トル以下であることができる。幾つかの態様では乾燥サイクルは、0℃未満の様々な温度で行うことができる。1もしくは複数の凍結/乾燥サイクルでショアーD硬度を上げることができる。幾つかの態様では、ショアーD硬度は少なくとも2単位、または5単位または10単位まで上げられる。
【0025】
また硬度は、物品を70℃より高い温度の水に浸漬(soaking)することにより調整することもできる。幾つかの態様では、物品を80℃より高い温度、すなわち90℃で浸漬させる(soaked)。物品は数分から数時間、浸漬に供することができる。例えば5分から24時間。幾つかの態様では、ショアーD硬度が少なくとも2単位、または5単位、10単位または20単位まで下げられる。
【0026】
本明細書で使用する用語「硬度」は、デュロメーターで測定した時、平らなスラブまたはボタン状態の非金属性材料の押込硬度を指す。デュロメーターは、押込荷重をスラブにかけ、これによりその硬度を感知するバネ押し圧子を有する。硬度は、引張係数、レジリ
エンス、可塑性、圧縮耐性および弾性のような他の物質特性も間接的に反映することができる。物質の硬度に関する標準試験には、ASTM D2240を含む。他に特定しない限り、本明細書で報告する物質硬度はショアーDによるものである。
【0027】
本発明の物品(インプラントおよび足場)は、真空ホイル包装することができる。そのような技術は当業者には周知である。これらの技術にはHamilton,et al.への米国特許第5,577,368号明細書に開示されているようなガンマ バキューム
ホイル(Gamma Vacuum Foil:GVF)として知られている方法を含む。
【0028】
ポリ(ビニルアルコール)は高い融点を持ち、そして一般に融解する前に分解することが知られている。一つの観点では、本発明は、圧縮成形前にグリセロールを用いてPVA樹脂を可塑化することにより、PVA成分の調製を可能にする新規圧縮成形法を提供する。可塑化法は、例えばPVA樹脂をグリセロール中で浸漬することにより行うことができる。幾つかの態様では、浸漬は最初にPVA樹脂を室温で浸漬し、続いて70℃より高い温度(態様によっては80℃より上)で4時間以上、熱浸漬(heat soak)することにより行われて可塑化PVA樹脂が製造される。次いで可塑化PVA樹脂は350゜F(176.7℃)から420゜F(215℃)の間の温度で、十分な加圧により硬化することができる。
【0029】
本明細書で使用する可塑化剤は、PVAに加えた時に柔軟性、加工性、または成形性を上げる組成物である。
【0030】
幾つかの態様では、インプラントのような物品を形成するための圧縮成形の使用を含む。圧縮成形技術は当業者には公知である。幾つかの好適な態様では、酸素を減じた環境が可塑化および/または圧縮成形に好適である。適切な酸素を減じた環境には、減圧、窒素もしくはアルゴン雰囲気、またはそれらの組み合わせを含む。
【0031】
グリセロールは生体適合性の潤滑剤であるが、整形外科用インプラントの一部として使用することができる。あるいはPVA成分中のグリセロールは、水または塩水に長時間浸漬することにより水と交換することができる。後者の工程により、PVA樹脂中にグリセロールではなく水または塩水を含有するPVA成分の生産が可能となる。幾つかの態様は、グリセロール以外の可塑化剤を利用することができる。特定の態様では、他の多価アルコールが使用される。
【0032】
【化1】

【0033】
「足場形成(scaffolding)」とは、予め定めた形状に組織が成長できるマトリックスを支持することを意味する。この形状は足場形成の形状により予め決定される。足場は、再生した組織を支持し、そして形づくるために機能する。足場の製造は当該技術分野では周知である。
【0034】
「インプラント」は、組織中への移植に適する物品(移植片、デバイス、足場または関節置換部品のような)を意味する。インプラントデバイスは、当該技術分野では周知である。本発明から有利となり得る関節には、限定するわけではないが膝、足首、肩、肘および手首を含む。
【0035】
本明細書で使用する用語「水−飽和」および「完全に水和した」とは等価であると考えられる。
【0036】
また治療薬はインプラントまたは足場に共有結合的に付いているか(attached)、または含まれることができる。治療薬は化学的または酵素的に付けられる。治療薬はさらなる修飾無しで付けられてもよく、あるいはスペーサーアームで結合させてもよい。スペーサーアームを使用する場合、スペーサーアームは穏やかな(discreet)生物学的条件下でスペーサーアームの開裂を可能にする部位を有することができる。スペーサーアームが開裂すると、次に生物作用物質がインプラントまたは足場から自由に拡散する。PVA材料と適合性の治療薬を使用することができる。
【0037】
適切な治療薬には、1もしくは複数の以下のものを含む:走化性剤;抗生物質;ステロイド系および非ステロイド系鎮痛薬;抗炎症薬;免疫抑制剤および抗ガン剤のような抗拒絶剤(anti−rejection agent);種々のタンパク質(例えば短鎖ペプチド、骨形成タンパク質、糖タンパク質およびリポタンパク質);細胞接着メディエーター;生物学的に活性なリガンド;インテグリン結合配列;リガンド;種々の増殖および/または分化作用物質(例えば上皮増殖因子、IGF−I、IGF−II、TGF−ベータ、増殖および分化因子、繊維芽細胞増殖因子、血小板由来増殖因子、インスリン様増殖因子、副甲状腺ホルモン、副甲状腺ホルモン関連ペプチド、BMP−2;BMP−4;BMP−6;BMP−7;BMP−12;ソニックヘッジホッグ;GDF5;GDF6;GDF8;PDGF);特異的な増殖因子のアップレギュレーションに影響を及ぼす低分子;テネイシン−C;ヒアルロン酸;硫酸コンドロイチン;フィブロネクチン;デコリン;トロンボエラスチン;トロンビン由来ペプチド;ヘパリン;硫酸ヘパリン;DNAフラグメントおよびDNAプラスミド。整形外科の分野で他のそのような物質が治療的価値を有するならば、少なくともそのような物質の幾つかは本開示の概念において用途を有し、そしてそのような物質は他に限定を表さない限り、「治療薬」の意味に含むべきであると考えられる。
【0038】
幾つかの態様では、本発明のデバイスはイオン浸透療法デバイスである。これらのデバイスは非侵襲的様式での患者への治療薬の投与を可能とする。幾つかの態様では、薬剤は反発する起電力を使用して経皮的に投与される。そのような力は、本明細書に記載するPVA材料を使用して構築されたイオン浸透療法小室にかけられる小さい電荷を利用することができる。イオン浸透療法デバイスは少なくとも2個の電極を含む。典型的には両電極は身体の皮膚のいくらかの(some)部分と完全に電気的に接触するように配置される。小室として機能するか、または小室に付随する1つの電極は、送達されるべき治療薬を含む。第2電極は身体を通る電気回路を完成するように機能する。小室は小室と同じ電荷を有する治療薬を含むことができる。例えば正に荷電した小室は正に荷電した薬剤をデバイスから放出するために使用できる。同様に負に荷電した小室は負に荷電した薬剤に使用することができる。幾つかの態様では、薬剤は水溶性剤である。幾つかの治療薬は、塩酸リドカインおよび塩酸フェンタニールのような局所麻酔薬である。例えばParkinson,et al,ドラッグデリバリーテクノロジー(Drug Delivery Technology),Vol.7,No.4,54−60頁(2007年4月)を参照されたい。
【0039】
従来の経皮的パッチとは対照的に、イオン浸透療法デバイスからの薬剤の送達は、デバ
イスにかける電流の制御により管理することができる。デバイスにかける電流の制御に加えて、薬剤送達はまた皮膚のpH、デバイス中の薬剤濃度、電荷、電荷濃度および分子量のような薬剤の特徴、および特定患者の皮膚耐性からも影響を受ける。
【0040】
正または負の電荷を有する治療薬の送達のための幾つかのイオン浸透療法デバイスは、(i)ポリ(ビニルアルコール)ポリマーを含んでなり、そして正または負に荷電した治療薬および対イオンを含有するリザーバー、および(ii)電導性の員がリザーバーと接触し、そして正もしくは負電圧がリザーバーにかけられた時、容易に酸化されて荷電したイオン種を形成する材料を含んでなる電導性の員を含んでなる。幾つかの態様では、PVAを含んでなるリザーバーが水和される時、これは治療薬に対して浸透性となる。
【0041】
イオン浸透療法デバイスは当業者には周知である。例えば米国特許第3,991,755号;同第4,141,359号;同第4,398,545号;同第4,250,878号および同第5,711,761号明細書を参照にされたい。イオン浸透療法デバイスに関するこれらの開示およびそれらの使用は、引用により本明細書に編入する。市販されているイオン浸透療法デバイスには、ALZA(IONSYS(商標))およびIOMEDにより製造されているものがある。多くはこのようなデバイスは、処置部位に配置され、そして患者の身体付近に配置される電極に連結されるバッテリー起動型のマイクロプロセッサーDC電流投薬コントローラーを利用する。幾つかのデバイスは、デバイスの中に組み立てられた使い捨ての低電位バッテリーを有する皮膚パッチである。
【0042】
本発明は以下の実施例により具体的に説明するが、これらは説明を意図するものであり限定するものではない。
【0043】
実施例
【実施例1】
【0044】
架橋結合PVAインプラント材料
15.0グラムのPVA(99+%加水分解、166,000ダルトンのMw)を、4.5mlのグリセロールと混合し、そして混合物を24時間、浸漬した。次いで混合物を80℃で8時間、熱浸漬した。生じた可塑化PVA樹脂を、硬化のために直径3.5”の3ピース型(3−piece mold)に移した。PVA樹脂を420゜F(215.5℃)に5〜10゜F/分の加熱速度で加熱し、そして1,000psiの圧下で10分間硬化し、続いて10〜15゜F/分の速度で冷却した。生じたPVAプラックは、50KGyガンマ線照射処理のために真空アルミニウムホイルパウチに包装された。
【0045】
グリセロール含有PVA 対 架橋結合したグリセロール含有PVAに関する引張データを表1に与える。引張試験は、V型試験片を使用してASTM D638で行った。
【0046】
【表1】

【0047】
グリセロールの存在で、PVAは架橋結合してガンマ線照射にかけた時にネットワーク構造を形成する。これは照射架橋結合後の全体的な引張特性における重要な改善である。興味深いことに、架橋結合は破壊するためのエネルギーを47in-lbから69in-lbに上げ、これは靭性および構造的結合性(integrity)における有意な改善である。
【実施例2】
【0048】
水含浸架橋結合PVAインプラント材料
30.0グラムのPVA(99+%加水分解、Mw=166,000ダルトン)を、9mlのグリセロールと混合し、そして混合物を一晩浸漬した。次いで混合物を194゜F(90℃)で6時間、熱浸漬した。次いで生じた可塑化PVAを、硬化のために3ピース型に移した。硬化は400゜F(204.4℃)で1200psi下で10分間行った(加熱速度:5〜10゜F/分、そして冷却速度:10〜15゜F/分)。生じた成形プラックは、アルミニウムホイルパウチに真空包装された。次いでプラックを75KGyのガンマ線照射で処理した。次いで成形プラックはグリセロールを置換するために蒸留水に2日間、浸漬した。
【0049】
圧縮試験は以下の方法を使用して行った。5個のディスク試験片(直径0.50”x〜0.19”高)は、0.4”/分のクロスヘッド速度で、MTS Insight5試験機上の平行プラック間で圧縮負荷した。試験は圧縮負荷がロードセル等級の95%を越えた時に止めた(950Lb)。試験片のどれも圧縮モードで失敗しなかった。
【0050】
二重ノッチ付Izod衝撃試験を、以下の手順を使用して行った。5個の長方形試験片(0.25”x0.50”x2.5”)を切欠(notched)し、そしてASTM F648に基づき試験した。この試験は、水含浸ポリビニルアルコールの靭性を、最も靭性のあるポリマーの一つである超高分子量ポリエチレンと比較して評価するために使用した。試験結果は水含浸架橋結合化ポリビニルアルコールが、衝撃強度という点で超高分子量ポリウレタン(UHMWPE)に匹敵することを示した。
【0051】
【表2】

【0052】
湿潤状態で、架橋結合PVAは柔軟性であり、そして高い圧縮強さ、および耐衝撃性を有する。
【実施例3】
【0053】
多孔質PVA
20.0グラムのPVA(99+%加水分解、146,000Mw)を、6.0mlのグリセロールと混合し、そして一晩浸漬した。次いで混合物を105℃で6時間、熱浸漬して可塑化PVA混合物が生成した。次いで10.0グラムの食卓塩を可塑化PVA樹脂とTurbulaミキサーを使用して混合した。生じた混合物の硬化は、実施例2に記載した成形サイクルを使用して行った。成形した物品は塩を浸出させ、そしてグリセロールを水と置き換えるために5日間という長期間、水に浸漬した。表3は孔質の水−含浸PVAの特性を表す(引張試験は、ASTM D638、V型試験片に従い行った)。
【0054】
【表3】

【実施例4】
【0055】
凍結−乾燥PVA材料
20.0グラムのPVA(99+%加水分解、M=166,000ダルトン)を、6mlのグリセロールと混合し、そして混合物を一晩浸漬した。次いで混合物を110℃で4時間、熱浸漬した。次いで生じた可塑化PVAは、硬化のために3.5”Dの3ピース型に移した。硬化は380゜Fで600psiの圧下にて5分間行った(加熱速度:5〜10゜F/分、そして冷却速度:10〜15゜F/分)。
【0056】
次いでこの非架橋結合PVA材料を、室温で水に2日間浸漬してグリセロールを水に置き換えた。グリセロール−可塑化PVAの硬度は、62(ショアーD)であり、そして水−含浸PVAは34.5%の含水量であり(水重量/PVA重量)、そして38の硬度(ショアーD)を有した。
【0057】
この水−含浸PVAブロックは、凍結乾燥サイクル、−80℃で一晩凍結、そして40x10−6トルで6時間乾燥に通すことによりさらに処理した。凍結−乾燥PVAは46
の硬度(ショアーD)を有した。
【実施例5】
【0058】
低減した結晶度の架橋結合PVA
40.0グラムのPVA(99+%加水分解、M=166,000ダルトン)を、12mlのグリセロールと混合し、そして混合物を一晩浸漬した。次いで混合物を176゜F(80℃)で6で時間、熱浸漬した。次いで生じた可塑化PVAは、硬化のために3.5”Dの3ピース型に移した。硬化は2段階の浸漬工程を使用して行った:220゜F(104.4℃)で1040psiにて5分間、および400゜F(204.4℃)で1560psiにて15分間(加熱速度:5〜10゜F/分、そして冷却速度:10〜15゜F/分)。生じた成形プラックはアルミホイルのパウチに真空包装し、そして50KGyでガンマ線照射した。
【0059】
架橋結合PVA材料は、工程中の損失およびPVAからのわずかな程度のグリセロール漏出により、17.3%のグリセロール(PVA重量あたりのグリセロール重量)を含んだ。この材料は比較的硬質であり、66の硬度(ショアーD)を有した。次いで架橋結合PVA材料を80℃の水に2時間、浸漬した。温水浸漬工程によりグリセロールが除去され、そして非架橋結合PVAを溶解させた。これは有意に架橋結合PVAを軟化させた。再構成されたPVAは34.4%の含水量(PVA重量あたりの水重量)、および36の硬度(ショアーD)を有した。次いで水−含浸、架橋結合PVAブロックは、凍結乾燥サイクル、−80℃で一晩凍結、そして40x10−6トルで6時間乾燥に通した。凍結−乾燥PVAブロックは42の硬度(ショアーD)を有した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
・少なくとも90%の加水分解度および少なくとも50,000ダルトンの重量平均分子量を有するポリ(ビニルアルコール):および
・治療用組成物;
を含んでなる医療用デバイスであり、該デバイスが10〜50重量パーセント含量の水および可塑剤の少なくとも1つを有する上記医療用デバイス。
【請求項2】
ポリ(ビニルアルコール)が架橋結合されている請求項1に記載の医療用デバイス。
【請求項3】
ポリ(ビニルアルコール)が少なくとも98%加水分解されている請求項1に記載の医療用デバイス。
【請求項4】
さらに可塑剤を含んでなる請求項1に記載の医療用デバイス。
【請求項5】
可塑剤がグリセロールを含んでなる請求項4に記載の医療用デバイス。
【請求項6】
さらに水を含んでなる請求項1に記載の医療用デバイス。
【請求項7】
上記医療用デバイスが整形外科用インプラントである請求項1に記載の医療用デバイス。
【請求項8】
上記ポリ(ビニルアルコール)を含んでなる連結表面を有する請求項1に記載の医療用デバイス。
【請求項9】
上記医療用デバイスが軟部組織の修復および再生のための足場である請求項1に記載の医療用デバイス。
【請求項10】
物品の形成法であって:
・少なくとも50,000ダルトンの重量平均分子量および少なくとも90%の加水分解度を有するポリ(ビニルアルコール)を、ポリ(ビニルアルコール)の10〜50%重量パーセントを構成する量の1もしくは複数の可塑剤と接触させ、これにより可塑化された材料を形成し;そして
・可塑化された材料を成形して硬化した物品を形成する、
ことを含んでなる上記形成法。
【請求項11】
可塑剤がグリセロールを含んでなる請求項10に記載の方法。
【請求項12】
さらにポリ(ビニルアルコール)を架橋結合させて架橋結合された物品を形成することを含んでなる請求項11に記載の方法。
【請求項13】
少なくとも一部のグリセロールを除去するために効果的な時間および条件下で、架橋結合された物品を水と接触させることをさらに含んでなる、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
さらに
(a)上記物品を0℃未満の温度に供し、次いで上記物品を大気圧未満の圧に供するか;または
(b)架橋結合PVAを含んでなる上記物品を、70℃より高い温度の水溶液に供する、ことにより上記物品の硬度を変更することを含んでなる、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
・少なくとも90%の加水分解度および少なくとも50,000ダルトンの重量平均分子量を有するポリ(ビニルアルコール)を含んでなる小室;
・該小室内の治療用組成物;および
・該小室に通じる電力源
を含んでなるイオン浸透療法デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2011−507622(P2011−507622A)
【公表日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−539777(P2010−539777)
【出願日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際出願番号】PCT/US2008/087351
【国際公開番号】WO2009/085905
【国際公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【出願人】(501384115)デピュイ・プロダクツ・インコーポレイテッド (216)
【Fターム(参考)】