説明

ポンプおよびそのポンプを使用した冷却システム

【課題】コンパクトに構成されたポンプおよびそのポンプを使用した冷却システムを提供することである。
【解決手段】筒状に形成された本体51と、該本体51の内部に挿入され、一端側を該内部に片持ち状で支持されると共に一部に永久磁石54が設けられた煽動部材52と、出力軸60aに永久磁石62が設けられたモータ60とからなり、該モータ60の出力軸60aの回転に伴う永久磁石62の回転によって、該煽動部材52の永久磁石54に対して吸引反発を繰り返させることで、該煽動部材52を撓ませて煽り動作させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポンプおよびそのポンプを使用した冷却システムに関し、詳しくは、演算装置のCPU等で発生した熱を冷媒と熱交換させることでCPU等を冷却させるポンプおよびそのポンプを使用した冷却システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、演算装置のCPU等(例えば、パーソナルコンピュータのCPU)で発生した熱を冷却するため装置として冷媒と熱交換させる冷却システムが既に知られている。この冷却システム101は、図9に示すように、熱源であるCPU110で発生した熱を管路120内の冷媒(例えば、水)と熱交換させる吸熱部130と、この吸熱部130による熱交換で暖められた冷媒を大気と熱交換させる放熱部140と、冷媒を吸熱部130と放熱部140の間で循環させるポンプ150とから構成されている。このポンプ150の駆動源はモータ160である。そして、これらポンプ150、モータ160および放熱部140は、管路120と共にケース170の中にコンパクトに収納されユニット化されている。
【0003】
なお、この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1が知られている。
【特許文献1】特開2004−362535号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した冷却システムは、演算装置に内蔵されて使用されるため、コンパクトに構成されることが求められていた。そのため、この冷却システムを構成する各部材も、コンパクトに構成されることが求められていた。
【0005】
本発明は、このような課題を解決しようとするもので、その目的は、コンパクトに構成されたポンプおよびそのポンプを使用した冷却システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記の目的を達成するためのものであって、以下のように構成されている。
請求項1に記載の発明は、筒状に形成された本体と、該本体の内部に挿入され、一端側を該内部に片持ち状で支持されると共に一部に永久磁石が設けられた煽動部材と、出力軸に永久磁石が設けられたモータとからなり、該モータの出力軸の回転に伴う永久磁石の回転によって、該煽動部材の永久磁石に対して吸引反発を繰り返させることで、該煽動部材を撓ませて煽り動作させる構成のポンプである。
この構成によれば、煽動部材が撓ませられ往復動する煽り動作によってポンプの送液動作となり推進力が作用する。この推進力によって、本体と接続された管路内の冷媒を送り出すことができる。
【0007】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のポンプであって、前記煽動部材は、少なくとも2次振動モードとなるように撓み可能となった構成である。
この構成によれば、多くの流量の冷媒を送り出すことができる。
【0008】
また、請求項3に記載の発明は、熱源で発生した熱を管路内の冷媒と熱交換させる吸熱部と、前記吸熱部による熱交換で暖められた冷媒を大気と熱交換させる放熱部と、前記冷媒を前記吸熱部と前記放熱部の間で循環させる請求項1〜2のいずれか1項に記載のポンプとからなる冷却システムであって、前記モータの出力軸側には、その回転に伴って動作する冷却ファンが設けられており、該冷却ファンの動作によって前記管路が冷却される構成の冷却システムである。
この構成によれば、冷却ファン用のモータを新たに設ける必要が無い。これにより、部品点数の削減となり、冷却システムをコンパクトな構成とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための最良の形態を、図1〜7を用いて説明する。
図1〜4は、本発明のポンプ50の送液動作を順に表す横断面図である。図5は、振動モードを説明する図である。図6は、本発明のポンプ50を使用した冷却システム1の全体構成図である。図7は、冷却システム1のイメージを表す全体斜視図であり、ケース70の表面を切り欠いた図である。
【0010】
まず、本発明のポンプ50を説明する。図1に示すように、ポンプ50は、筒状に形成された本体51と、煽動部材52と、モータ60とから主として構成されている。煽動部材52は、ポンプ50の本体51内部に挿入され、その一端側を支持部52aに片持ち状に支持されている。また、煽動部材52の略中央部には、本体51の軸と垂直方向となるように永久磁石54が圧入、接着または一体成形のいずれかで組み付けられている。この永久磁石54は、例えばモータ60側(図1において、上側)がN極となるように組み付けられている。また、煽動部材52における永久磁石54より先の先端部位52dは、可撓性を持たせるため板厚が先端にいくにつれて薄肉となるように形成されている。この先端部位52dは、軟性を有する合成樹脂(例えば、エラストマなど)、もしくは弾性を有する金属(例えば、SUS)によって成形されている。これにより、煽動部材52を簡便な構成で製造できる。また、金属にSUSを使用することで、金属に防錆処理が不要となる。
【0011】
これに対し、煽動部材52の基端部位52eは、金属(例えば、SUS)によって形成されている。もちろん、上述した煽動部材52の先端部位52dとともに軟性を有する合成樹脂により一体成形されていても構わないし、剛性を有する合成樹脂(例えば、ポリアセタール樹脂など)により一体成形され、煽動部材52の先端部位とは一体となるように2色成形されていても構わない。
【0012】
モータ60の出力軸60aの先端には、連結部材61が設けられている。この連結部材61には、モータ60の出力軸60aと垂直となるように永久磁石62が嵌め込まれており、この永久磁石62の両端部は、連結部材61の外周面から突出している。そして、モータ60の出力軸60aが回転すると、この回転に伴って永久磁石62が回転することで、本体51の軸方向と交差する磁界が発生することになる。なお、この永久磁石62は水平状態(図2または、図4の状態)となったときに、煽動部材52の永久磁石54と同一軸線上となるように設けられている。このようにポンプ50は構成されているため、コンパクトな構成となっている。
【0013】
次に、上述したポンプ50を使用した冷却システム1を説明する。図6に示すように、冷却システム1は、熱源であるCPU10で発生した熱を管路20内の冷媒(例えば、水)と熱交換させる吸熱部30と、この吸熱部30による熱交換で暖められた冷媒を大気と熱交換させる放熱部40と、冷媒を吸熱部30と放熱部40の間で循環させるポンプ50とから主として構成されている。
【0014】
また、図1に示すように、モータ60の出力軸60aに設けられた連結部材61は、ウォームギア63の連結軸63aと連結されている。そして、ウォームギア63は、ヘリカルギア64を介して冷却ファン80と連結されている。このようにしてモータ60の出力軸60aは、冷却ファン80と機械的に連結されており、モータ60の出力軸60aが回転すると、この回転に伴って冷却ファン80が回転することになる。
【0015】
そして、図7に示すように、これらポンプ50、モータ60、冷却ファン80および放熱部40は、管路20と共にケース70の中にコンパクトに収納されユニット化されている。このケース70の表面における放熱部40の近傍位置には、冷却効率を向上させる複数本のスリット72が形成されている。このように冷却システム1は構成されているため、コンパクトな構成となっている。
【0016】
続いて、続いて、図1〜5を参照して上述したポンプ50および冷却システム1の作用を説明する。この説明をするにあたって、図1に示す連結部材61の永久磁石62のN極が、紙面手前方向を向いている状態からモータ60の出力軸60aが反負荷側から見て時計回り方向へ回転していく場合を説明する。
【0017】
図1に示す状態から図2に示すように、モータ60の出力軸60aを回転させて連結部材61の永久磁石62が90°回転した状態になると、永久磁石62の磁界は矢印M方向(図2において、下方向)へ生じることから両永久磁石54、62の間で反発力が生じるため、煽動部材52は矢印D方向へ移動する。さらに、図2に示す状態から図3に示すように、連結部材61の永久磁石62が90°回転した状態になると、永久磁石62の磁界は紙面の奥方向へと生じることから両永久磁石54、62の間での反発力が解消されるため、煽動部材52は移動前の位置(図1に示した位置)へ戻される。
【0018】
さらに、図3に示す状態から図4に示すように、連結部材61の永久磁石62が90°回転した状態になると、永久磁石62の磁界は矢印M方向(図4において、上方向)へ生じることから両永久磁石54、62の間で吸引力が生じるため、煽動部材52は矢印U方向へ移動する。さらに、図4に示す状態から、連結部材61の永久磁石62がさらに90°回転した状態になると、永久磁石62は1回転することになり、図1に示す状態へと戻り、永久磁石62の磁界は紙面の手前方向へと生じることから両永久磁石54、62の間での吸引力が解消されるため、煽動部材52は移動前の位置(図1に示した位置)へ戻される。
【0019】
このように、モータ60の出力軸60aを回転させることによる永久磁石62の回転によって、該永久磁石62と煽動部材52の永久磁石54との間で吸引反発が繰り返されることになる。これにより、煽動部材52が撓ませられ往復動する煽り動作によってポンプ50の送液動作となり、本体51内の冷媒に矢印F方向への推進力が作用する。この推進力によって、管路20内の冷媒を送り出すことができる。
【0020】
また、このとき、図5に示すように、煽動部材52は、2次振動モードとなるように撓ませられている。この2次振動モードとは、例えば、図示するように、右端が固定され左端が自由な状態な板材を振動させた場合、その振動前の板材と振動中の板材が交わる点が、板材の固定側の端部以外に1つある状態のことである。このように、2次振動モードで煽動部材52を撓ませると、多くの流量の冷媒を送り出すことができる。
【0021】
また、2次振動モードに対して、1次振動モードとは、上記説明と同様に、右端が固定され左端が自由な状態な板材を振動させた場合、その振動前の板材と振動中の板材が交わる点が、板材の固定側の端部のみである状態のことである。このように、1次振動モードで煽動部材52を撓ませると、2次振動モードで煽動部材52を撓ませた場合より、送り出す冷媒の流量が減少する。
【0022】
また、2次振動モードに対して、3次振動モードとは、上記説明と同様に、右端が固定され左端が自由な状態な板材を振動させた場合、その振動前の板材と振動中の板材が交わる点が、板材の固定側の端部以外に2つある状態のことである。このように、3次振動モードで煽動部材52を撓ませると、2次振動モードで煽動部材52を撓ませた場合より、送り出す冷媒の流量が増加する。
【0023】
このようにして、モータ60を連続して運転すると管路20内の冷媒は循環されるため、吸熱部30による熱交換で暖められた冷媒を放熱部40による熱交換で冷却させることができる。したがって、吸熱部30には、常に冷却された冷媒を送ることができる。また、このとき、既に説明したように、モータ60の出力軸60aの回転に伴って冷却ファン80が回転するため、この冷却ファン80の回転によって放熱部40が冷却される。そのため、冷却ファン80用のモータを新たに設ける必要が無い。これにより、部品点数の削減となり、冷却システム1をコンパクトな構成とすることができる。
【0024】
上述した内容は、あくまでも本発明の一実施の形態に関するものであって、本発明が上記内容に限定されることを意味するものではない。
実施例では、冷却ファン80は、ウォームギア63とヘリカルギア64を介してモータ60と連結されている構成を説明した。しかし、これに限定されるものでなく、図8に示すように、冷却ファン80は、モータ60の出力軸60aと直結されている構成でも構わない。この場合、モータ60の出力軸60aの延長線上にある管路20を冷却させることができる。
【0025】
また、他の実施形態として、冷却ファン80は、モータ60の出力軸60aと連結されたバネシャフトによって連結されていても構わない。この場合、モータ60の出力軸60aの延長線上以外にある管路20を冷却させることができる。このように、モータ60の動力の伝達手段は各種考えられる設計的事項であり、その他の例として、ベルト、チェーン等も考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】図1は、ポンプ50の送液動作を表す横断面図である。
【図2】図2は、図1の次動作を示す図である。
【図3】図3は、図2の次動作を示す図である。
【図4】図4は、図3の次動作を示す図である。
【図5】図5は、各振動モードを説明する図である。
【図6】図6は、本発明のポンプ50を利用した冷却システム1の全体構成図である。
【図7】図7は、冷却システム1のイメージを表す全体斜視図であり、ケース70の表面を切り欠いた図である。
【図8】図8は、冷却システム1の他の実施例である。
【図9】図9は、従来技術の冷却システム101の全体構成図である。
【符号の説明】
【0027】
1 冷却システム
10 CPU(熱源)
20 管路
30 吸熱部
40 放熱部
50 ポンプ
51 本体
52 煽動部材
54 永久磁石
60 モータ
60a 出力軸
62 永久磁石
80 冷却ファン




【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状に形成された本体と、
該本体の内部に挿入され、一端側を該内部に片持ち状で支持されると共に一部に永久磁石が設けられた煽動部材と、
出力軸に永久磁石が設けられたモータとからなり、
該モータの出力軸の回転に伴う永久磁石の回転によって、該煽動部材の永久磁石に対して吸引反発を繰り返させることで、該煽動部材を撓ませて煽り動作させるポンプ。
【請求項2】
請求項1に記載のポンプであって、
前記煽動部材は、少なくとも2次振動モードとなるように撓み可能となっているポンプ。
【請求項3】
熱源で発生した熱を管路内の冷媒と熱交換させる吸熱部と、
前記吸熱部による熱交換で暖められた冷媒を大気と熱交換させる放熱部と、
前記冷媒を前記吸熱部と前記放熱部の間で循環させる請求項1〜2のいずれか1項に記載のポンプとからなる冷却システムであって、
前記モータの出力軸側には、その回転に伴って動作する冷却ファンが設けられており、該冷却ファンの動作によって前記管路が冷却される冷却システム。






【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−38804(P2008−38804A)
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−215710(P2006−215710)
【出願日】平成18年8月8日(2006.8.8)
【出願人】(000227711)日邦産業株式会社 (29)
【Fターム(参考)】