説明

ポンプコンバイナ、ブリッジファイバ、及び、ファイバレーザ

【課題】ゲインファイバに入射した励起光がゲインファイバ外に漏れだし難いポンプコンバイナを実現する。
【解決手段】ブリッジファイバ30は、直径が出射端面に近づくに従って次第に小さくなる錘状部32を含む。この錘状部32に関して、太径側32aにおけるコア30aの直径を出射端面の直径よりも大きくし、更に、細径側32bにおいてコア30aを露出させ、かつ、細径側32bにおけるコア30aの直径を出射端面に近づくに従って次第に小さくする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、励起ファイバとゲインファイバとがブリッジファイバを介して接続されてなるポンプコンバイナに関する。また、そのようなポンプコンバイナに含まれるブリッジファイバ、及び、そのようなポンプコンバイナを備えたファイバレーザに関する。
【背景技術】
【0002】
ファイバレーザやファイバアンプなどの光増幅回路においては、光増幅媒体として機能するゲインファイバが用いられる。ゲインファイバは、励起光を吸収して反転分布状態に遷移するレーザ媒質(例えば、希土類元素)が添加された光ファイバであり、ゲインファイバには、光源から発せられた励起光を導く励起ファイバが接続される。特に、複数の励起ファイバをゲインファイバに接続する場合には、通常、複数の励起ファイバとゲインファイバとの間にブリッジファイバを介在させる。
【0003】
このような光増幅回路において、ゲインファイバから出射されるレーザ光の強度を上げるためには、ゲインファイバに入射させる励起光の強度を上げる必要がある。しかしながら、ゲインファイバに入射する励起光のうち、その開口数がゲインファイバのコア(ゲインファイバがダブルクラッドファイバの場合は内側クラッド)の開口数を超える励起光は、ゲインファイバから漏れ出して被覆を発熱させる。このため、ゲインファイバに入射させる励起光の強度を上げると、ゲインファイバから漏れ出す励起光の強度も上がり、場合によっては被覆の焼失という深刻な問題を招く。
【0004】
したがって、信頼性の高い光増幅回路を実現するためには、ゲインファイバから漏れ出す励起光を減少させるか、ゲインファイバから漏れ出した励起光のエネルギーを光増幅回路外に効率良く発散させることが必要になる。後者の方法は、光増幅回路の効率を低下させることがあり、また、コストも掛かることから、通常、前者の方法によって、光増幅回路の信頼性を高めることが試みられることが多い。
【0005】
特許文献1には、錘状のブリッジファイバ(マルチモードカプラ)のコアとクラッドとの間に放射光閉じ込め導波路を設け、コアから漏れ出した光がクラッドを介してブリッジファイバ外に漏れだすことを防止する構成が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−10804(2008年 1月17日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記従来のブリッジファイバにおいては、コア、放射光閉じ込め導波路、及びクラッドの直径を、ゲインファイバ(クラッドポンプファイバ)側に近づくに従って次第に小さくする構成が採用されている。このため、ゲインファイバに向かって伝播する励起光の開口数が次第に大きくなり、ゲインファイバのコア(ゲインファイバがダブルクラッドファイバの場合は内側クラッド)の開口数を超えてしまう場合がある。この場合、ゲインファイバに入射した励起光が、クラッド(ゲインファイバがダブルクラッドファイバの場合は外側クラッド)を介してゲインファイバ外に漏れ出し、被覆を発熱させる虞がある。
【0008】
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、ブリッジファイバか
らゲインファイバに入射した励起光がゲインファイバ外に漏れだし難いポンプコンバイナを実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明に係るポンプコンバイナは、複数の励起ファイバと、ゲインファイバと、上記複数の励起ファイバが接合される入射端面、及び、上記ゲインファイバが接合される出射端面を有するブリッジファイバと、を備えたポンプコンバイナであって、上記ブリッジファイバは、直径が上記出射端面に近づくに従って次第に小さくなる錘状部を含み、上記錘状部は、コアと、屈折率が該コアよりも低く、かつ、少なくとも太径側において該コアを取り囲むクラッドとを備え、上記錘状部の太径側における上記コアの直径が上記出射端面の直径よりも大きく、更に、上記錘状部の細径側において上記コアが露出しており、かつ、上記錘状部の細径側における上記コアの直径が上記出射端面に近づくに従って次第に小さくなる、ことを特徴とする。
【0010】
上記の構成によれば、上記錘状部の最太部におけるコアの直径と、上記錘状部の太径側と細径側との境界におけるコアの直径とを等しくすることができる。これにより、上記ブリッジファイバのコアに入射した励起光に関して、上記錘状部の最太部における開口数と上記錘状部の太径側と細径側との境界における開口数とを等しくすることができる。したがって、特許文献1に記載の構成と比べて、上記ブリッジファイバのコアに入射した励起光の開口数の増加が抑えられる。このため、上記ゲインファイバのコア又は内側クラッドの開口数を超える開口数となる励起光、すなわち、上記ゲインファイバのコア又は内側クラッドに結合されることなく、上記ゲインファイバ外へ漏れ出す励起光を減らすことができる。なお、上記ブリッジファイバのコアに入射した励起光の開口数がコア又は内側クラッドの開口数を超える原因としては、例えば、製造時のバラツキやエラーなどに起因して開口数がその設計値よりも大きくなることなどが挙げられる。また、上記錘状部の細径側において上記コアが露出しているので、ケミカルエッチングによって上記錘状部を容易に形成することができる。
【0011】
本発明に係るポンプコンバイナにおいては、上記錘状部の太径側において上記コアの直径が一定である、ことが好ましい。
【0012】
上記の構成によれば、上記ブリッジファイバのコアに入射した励起光の開口数は、上記錘状部の太径側を伝播する間、一定の値に保たれる。したがって、より一層、上記ブリッジファイバのコアに入射した励起光の開口数の増加を抑えることができる。
【0013】
本発明に係るポンプコンバイナにおいては、上記複数の励起ファイバの開口数が、上記ブリッジファイバの入射端面におけるコアの開口数以下である、ことが好ましい。
【0014】
上記の構成によれば、上記ブリッジファイバに入射した励起光を、より多く上記ブリッジファイバのコアに結合させることができる。したがって、上記ブリッジファイバのクラッドを通ることによって、開口数が上記ゲインファイバのコア又は内側クラッドの開口数を超える励起光、すなわち、上記ゲインファイバのコア又は内側クラッドに結合されることなく、上記ゲインファイバ外へ漏れ出す励起光を減らすことができる。
【0015】
本発明に係るポンプコンバイナにおいて、上記複数の励起ファイバは、最密に束ねられて上記ブリッジファイバの入射端面に接合されている、ことが好ましい。
【0016】
上記構成によれば、上記励起ファイバから上記ブリッジファイバに入射する励起光のうち、上記ブリッジファイバのコアに入射する励起光の割合を大きくすることができる。したがって、上記ブリッジファイバのクラッドを通ることによって、開口数が上記ゲインフ
ァイバのコア又は内側クラッドの開口数を超える励起光、すなわち、上記ゲインファイバのコア又は内側クラッドに結合されることなく、上記ゲインファイバ外へ漏れ出す励起光を減らすことができる。
【0017】
上記課題を解決するために、本発明に係るポンプコンバイナは、複数の励起ファイバと、ゲインファイバと、上記複数の励起ファイバが接合される入射端面、及び、上記ゲインファイバが接合される出射端面を有するブリッジファイバと、を備えたポンプコンバイナであって、上記ブリッジファイバは、直径が上記出射端面に近づくに従って次第に小さくなる錘状部を含み、上記錘状部は、コアと、屈折率が該コアよりも低く、かつ、少なくとも太径側において該コアを取り囲むクラッドとを備え、上記錘状部の太径側において上記コアの直径が一定であり、かつ、上記錘状部の太径側における上記コアの直径が上記出射端面の直径よりも大きく、更に、上記錘状部の細径側における上記コアの直径が上記出射端面に近づくに従って次第に小さくなる、ことを特徴とする。
【0018】
上記の構成によれば、上記ブリッジファイバのコアに入射した励起光の開口数は、上記錘状部の太径側を伝播する間、一定の値に保たれる。したがって、特許文献1に記載の構成と比べて、上記ブリッジファイバのコアに入射した励起光の開口数の増加が抑えられる。このため、上記ゲインファイバのコア又は内側クラッドの開口数を超える開口数となった励起光、すなわち、上記ゲインファイバのコア又は内側クラッドに結合されることなく、上記ゲインファイバ外へ漏れ出す励起光を減らすことができる。
【0019】
なお、上記ポンプコンバイナに含まれるブリッジファイバ、及び、上記ポンプコンバイナを備えたファイバレーザも本発明の範疇に含まれる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、ゲインファイバのコア又は内側クラッドに結合されることなく、ゲインファイバ外へ漏れ出す励起光を減らすことができる。したがって、ゲインファイバ外に漏れ出した励起光に起因する被覆の発熱を抑え、装置の信頼性を高めることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施形態に係るポンプコンバイナの斜視図である。
【図2】図1のポンプコンバイナの断面図である。
【図3】ブリッジファイバを伝播する励起光の光路を模式的に示す図である。
【図4】ブリッジファイバの変形例を示す図である。
【図5】図1のポンプコンバイナを備えたファイバレーザを模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の一実施形態について、図面に基づいて説明すれば以下のとおりである。
【0023】
なお、本実施形態に係るポンプコンバイナは、ファイバレーザ(図5参照)に適用されるものであるが、本発明に係るポンプコンバイナの適用範囲は、ファイバレーザに限定されない。例えば、本発明に係るポンプコンバイナは、ファイバアンプに適用することもできる。
【0024】
〔ポンプコンバイナの構成〕
まず、本実施形態に係るポンプコンバイナ1の構成について、図1を参照して説明する。図1は、ポンプコンバイナ1の斜視図である。
【0025】
ポンプコンバイナ1は、図1に示すように、励起ファイバ10、ゲインファイバ20、
及び、これらの間に介在するブリッジファイバ30とを備えている。本実施形態においては、図1に示すように、ブリッジファイバ30を介在させることによって、7本の励起ファイバ10をゲインファイバ20に接続する構成が採用されている。
【0026】
励起ファイバ10は、光源(例えば、半導体レーザ)から出射された励起光を、ブリッジファイバ20に導くための光ファイバである。光源から出射された励起光は、励起ファイバ10の一方の端面(以下、「入射端面」と記載)を介して励起ファイバ10内に入り、励起ファイバ10内を伝播し、励起ファイバ10の他方の端面(以下、「出射端面」と記載)を介して励起ファイバ10外に出る。励起ファイバ10の出射端面は、ブリッジファイバ30の一方の端面(以下、「入射端面」と記載)に融着されており、励起ファイバ10の出射端面を介して励起ファイバ10外に出た励起光は、ブリッジファイバ30の入射端面を介してブリッジファイバ30内に入射する。なお、ブリッジファイバ30に入射した励起光を効率良くブリッジファイバ30のコア30a(後述)に結合させるべく、励起ファイバ10の開口数は、ブリッジファイバ30の入射端面におけるコア30aの開口数以下に設定されている。
【0027】
ブリッジファイバ30は、各励起ファイバ10から出射された励起光を、ゲインファイバ20に導くための光ファイバである。各励起ファイバ10から出射された励起光は、ブリッジファイバ30の入射端面を介してブリッジファイバ30内に入り、ブリッジファイバ30内を伝播し、ブリッジファイバ30の他方の端面(以下、「出射端面」と記載)を介してブリッジファイバ30外に出る。ブリッジファイバ20の出射端面は、ゲインファイバ20の一方の端面(以下、「入射端面」と記載)に融着されており、ブリッジファイバ20の出射端面を介してブリッジファイバ30外に出た励起光は、ゲインファイバ20の入射端面を介してブリッジファイバ20内に入射する。
【0028】
ゲインファイバ20は、励起光を吸収して反転分布状態に遷移するレーザ媒質(例えば、希土類元素)がコアに添加された光ファイバ(ダブルクラッドファイバ)である。ブリッジファイバ20から出射された励起光は、ゲインファイバ20の入射端面を介してゲインファイバ20内に入り、コアに添加されたレーザ媒質を反転分布状態に遷移させる。そして、この反転分布状態に遷移したレーザ媒質から誘導放出されたレーザ光は、ゲインファイバ20内で共振して再帰的に増幅され、ゲインファイバ20の他方の端面(以下、「出射端面」と記載)を介してゲインファイバ20外に出る。なお、ゲインファイバ20に入射した励起光のうち、その開口数がゲインファイバ20の内側クラッドの開口数を超える励起光は、外側クラッドを介してゲインファイバ20から漏れ出し被覆21を発熱させる。したがって、ブリッジファイバ20から出射された励起光は、その開口数がゲインファイバ20の内側クラッドの開口数を超えないものであることが望ましい。
【0029】
なお、本実施形態においては、ブリッジファイバ30を介在させることによって、7本の励起ファイバ10をゲインファイバ20に接続する構成を採用しているが、ゲインファイバ20に接続する励起ファイバ10の本数は7本に限定されない。すなわち、例えば、図1に示す7本の励起ファイバ10の周囲に更に12本の励起ファイバ10を最密配置し、ブリッジファイバ30を介在させることによって、これら19本の励起ファイバ10をゲインファイバ20に接続する構成を採用してもよい。
【0030】
〔ブリッジファイバの構成〕
次に、本実施形態に係るポンプコンバイナ1が備えるブリッジファイバ30の構成について、図2を参照して説明する。図2は、ポンプコンバイナ1の断面図である。図2(a)は、図1に示すA−A’断面を表し、図2(b)は、図1に示すB−B’断面を表す。
【0031】
ブリッジファイバ30は、図2(a)に示すように、柱状部31と錐状部32とにより
構成される。
【0032】
柱状部31は、ブリッジファイバ30を構成する円柱状の部位であり、どの断面(柱状部31を回転体と見做したときの回転軸に直交する断面)においても、その直径はD1である。一方、錘状部32は、ブリッジファイバ30を構成する円錐台状の部位であり、最太部(柱状部31との境界面に相当)の直径はD1、最細部(ブリッジファイバ30の出射端面に相当)の直径はd(d<D1)である。すなわち、最細部に近い断面ほど直径が小さくなるように、錘状部32にダウンテーパが付けられている。このダウンテーパは、図2(a)に示すように、線形テーパである。
【0033】
また、柱状部31は、どの断面においても、同一の断面構造を有している。すなわち、どの断面においても、(1)円板状のコア30aと、(2)コア30aを取り囲む円環状のクラッド30bであって、コア30aよりも屈折率の低いクラッド30bとからなる断面構造を有している。ここで、柱状部31におけるコア30aの直径は、どの断面においてもD2(d<D2<D1)であり、柱状部31におけるクラッド30bの直径は、どの断面においてもD1である。
【0034】
一方、錘状部32は、太径側32aと細径側32bとで、互いに異なる断面構造を有している。すなわち、太径側32aにおいては、コア30aとクラッド30bとからなる断面構造を有しているのに対して、細径側32bにおいては、コア30aのみからなる断面構造(すなわち、コア30aが露出した断面構造)を有している。これは、錘状部32において、太径側32aにおけるコア30aの直径D2よりも最細部の直径dが小さくなるようにダウンテーパが付けられているためである。なお、太径側32aにおけるコア30aの直径は、どの断面(錘状部32を回転体と見做したときの回転軸に直交する断面)においてもD2であり、太径側32aにおけるクラッド30bの直径は、最太部から遠ざかる従って次第に小さくなる(D1からD2へと細径化される)。また、細径側32bにおけるコア30aの直径は、最細部に近づくに従って次第に小さくなる(D2からdへと細径化される)。
【0035】
ブリッジファイバ30の入射端面には、図2(b)に示すように、7本の励起ファイバ10が融着される。本実施形態においては、各励起ファイバ10の直径d’がD1/3となっており、7本の励起ファイバ10がブリッジファイバ30の入射端面上に最密に配置される。ブリッジファイバ30のコア30aの直径D2は、図2(b)に示すように、各励起ファイバ10の直径d’よりも大きくする。その結果、中心に位置する励起ファイバ10からブリッジファイバ30に入射した励起光の略全部がコア30aに結合するのはもちろんのこと、周辺に位置する各励起ファイバ10からブリッジファイバ30に入射した励起光の大部分もコア30aに結合することになる。
【0036】
なお、このようなブリッジファイバ30は、例えば、ケミカルエッチングにより製造することができる。具体的には、直径D2のコアと直径D1のクラッドとからなる光ファイバを、端部から徐々にエッチング液に浸けていく。そして、柱状部31と錐状部32との境界とすべきところまでエッチング液に浸けたら、この光ファイバを徐々にエッチング液から引き上げる。これにより、この光ファイバの各部がエッチング液に浸かっていた時間に応じて細径化され、図2(a)に示すダウンテーパが形成される。ただし、ブリッジファイバ30の製造方法は、ケミカルエッチングに限定されない。すなわち、ブリッジファイバ30の断面構造として、図2(a)に示す断面構造を実現可能な製造方法であれば、どのような製造方法を用いてもよい。
【0037】
また、本実施形態においては、ブリッジファイバ30が柱状部31と錐状部32とからなる構成を採用しているが、柱状部31は必須ではない。すなわち、ブリッジファイバ3
0が錘状部32のみからなる構成を採用してもよい。これにより、柱状部31において生じ得る損失(主に非線形効果による損失)を回避することができる。ただし、ブリッジファイバ30に柱状部31が含まれている場合、励起ファイバ10及びゲインファイバ20を融着する際に、ブリッジファイバ30を把持して固定することが容易になる。本実施形態においてブリッジファイバ30が柱状部31と錐状部32とからなる構成を採用しているのはこのためである。
【0038】
〔ブリッジファイバの効果〕
本実施形態に係るポンプコンバイナ1が備えるブリッジファイバ30の錘状部32においては、以下の構成を採用している。すなわち、(1)太径側32aにおいてコア30aの直径D2を一定とし、かつ、太径側32におけるコア30aの直径D2を最細部の直径dよりも大きくし、更に、(2)細径側32bにおいてコア30aを露出させ、かつ、細径側におけるコア30aの直径(錘状部32の直径と同一視される)を最細部に近づくに従って次第に小さくする構成を採用している。以下、この構成により得られる効果について、図3を参照して説明する。
【0039】
図3は、以下の4つの構成について、ブリッジファイバ30を伝播する励起光の光路を模式的に示した図である。以下の4つの構成のうち、構成Aは、本実施形態に係るブリッジファイバ30に特徴的な構成であり、構成B〜構成Dは、構成Aと比較すべき構成である。
【0040】
(構成A)錘状部32の太径側32aにおいてコア30aの直径D2が一定であり、かつ、錘状部32の太径側32aにおけるコア30aの直径D2が錘状部32の最細部の直径dよりも大きく、更に、錘状部32の細径側32bにおいてコア30aが露出し、かつ、錘状部32の細径側32bにおけるコア30aの直径が錘状部32の最細部に近づくに従って次第に小さくなる構成。なお、柱状部31においては、一定の直径D2を有するコア30aを直径(外径)D1のクラッドで取り囲む構成が採用されている。
【0041】
(構成B)ブリッジファイバ30内の屈折率を均一にした構成。
【0042】
(構成C)錘状部32全体においてコア30aの直径D2が一定であり、かつ、コア30aの直径D2が錘状部32の最細部の直径d以下である構成。なお、柱状部31においては、構成Aと同様、一定の直径D2を有するコア30aを直径(外径)D1のクラッドで取り囲む構成が採用されている。
【0043】
(構成D)錘状部32全体においてコア30aの直径D2及びクラッド30bの直径の双方が錘状部32の最細部に近づくに従って次第に小さくなる構成。なお、柱状部31においては、構成Aと同様、一定の直径D2を有するコア30aを直径(外径)D1のクラッドで取り囲む構成が採用されている。
【0044】
構成Aを採用した場合、開口数NA0(通常0.18程度)でクラッド30bに入射した励起光L1は、図3(a)に示すように、その開口数を保ったまま柱状部31を伝播した後、その開口数を次第に大きくしながら錘状部32を伝播する。その結果、ブリッジファイバ30の出射端面から出射される励起光L1の開口数NA1は、NA1=(D1/d)×NA0となる。
【0045】
一方、開口数NA0でコア30aに入射した励起光L2は、図3(a)に示すように、その開口数を保ったまま柱状部31及び錘状部32の太径側32aを伝播した後、その開口数を次第に大きくしながら錘状部32の細径側32bを伝播する。ここで、錘状部32の太径側32aにおいて励起光L2の開口数が大きくならないのは、錘状部32の太径側
32aにおいてコア30aの直径が一定であるためである。その結果、ブリッジファイバ30の出射端面から出射される励起光L2の開口数NA2は、NA2=(D2/d)×NA0となる。
【0046】
構成Bを採用した場合、開口数NA0でブリッジファイバ30に入射した励起光L1,L2は、入射端面のどこに入射したかに拠らず、図3(b)に示すように、その開口数を保ったまま柱状部31を伝播した後、その開口数を次第に大きくしながら錘状部32を伝播する。その結果、ブリッジファイバ30の出射端面から出射される励起光L1,L2の開口数NA1,NA2は、NA1=NA2=(D1/d)×NA0となる。
【0047】
構成Aと構成Bとを比較すると、以下のことが言える。すなわち、構成Aによれば、ブリッジファイバ30の出射端面から出射される励起光L2の開口数NA2を、構成BのD2/D1倍に抑えることができる。その結果、ブリッジファイバ30に入射した励起光において、ゲインファイバ20の内側クラッドの開口数を超える成分が占める割合を低下させることができる。ここで、内側クラッドの開口数を超える成分が生じる要因としては、例えば、製造時のばらつきやエラーなどに起因して開口数がその設計値よりも大きくなることなどが挙げられる。換言すれば、ブリッジファイバ30に入射した励起光のうち、ゲインファイバ20から漏れ出して被覆21を発熱させる発熱源となる励起光の割合を、構成Bと比べて小さくすることができる。これにより、ゲインファイバ20の焼失を抑制することができる。
【0048】
構成Cを採用した場合、開口数NA0でクラッド30bに入射した励起光L1は、図3(c)に示すように、その開口数を保ったまま柱状部31を伝播した後、その開口数を次第に大きくしながら錘状部32を伝播する。その結果、ブリッジファイバ30の出射端面から出射される励起光L1の開口数NA1は、NA1=(D1/d)×NA0となる。
【0049】
一方、開口数NA0でコア30aに入射した励起光L2は、図3(c)に示すように、その開口数を保ったまま柱状部31及び錘状部32を伝播する。ここで、錘状部32において、励起光L2の開口数が大きくならないのは、錘状部32においてコア30aの直径が一定であるためである。その結果、ブリッジファイバ30の出射端面から出射される励起光L2の開口数NA2は、NA2=NA0となる。
【0050】
構成Aと構成Cとを比較すると、以下のことが言える。すなわち、構成Aによれば、ブリッジファイバ30のコア30aの直径D2を、錘状部32の最細部の直径dよりも大きくすることができる。その結果、ブリッジファイバ30に入射した励起光のうち、コア30aに入射する励起光の割合を構成Cと比べて大きくすることができる。換言すれば、ブリッジファイバ30に入射した励起光のうち、クラッド30bに入射する励起光の割合を構成Cと比べて小さくすることができる。これにより、ゲインファイバ20における漏れ光の発生、及び、それに起因するゲインファイバ20の焼失を抑制することができる。
【0051】
構成Dを採用した場合、開口数NA0でクラッド30bに入射した励起光L1は、図3(d)に示すように、その開口数を保ったまま柱状部31を伝播した後、その開口数を次第に大きくしながら錘状部32を伝播する。その結果、ブリッジファイバ30の出射端面から出射される励起光L1の開口数NA1は、NA1=(D1/d)×NA0となる。
【0052】
一方、開口数NA0でコア30aに入射した励起光L2は、図3(d)に示すように、その開口数を保ったまま柱状部31を伝播した後、その開口数を次第に大きくしながら錘状部32を伝播する。その結果、ブリッジファイバ30の出射端面から出射される励起光L2の開口数NA2は、NA2=(D1/d”)×NA0となる。
【0053】
構成Aと構成Dとを比較すると、以下のことが言える。構成Aを採用した場合、ブリッジファイバ30の出射端面におけるコア30aの直径は、錘状部32の最細部の直径dと同じになる。一方、構成Dを採用した場合、ブリッジファイバ30の出射端面におけるコア30aの直径d”は、錘状部32の最細部の直径dよりも小さくなる。すなわち、d>d”が成り立つので、構成Aにおいてブリッジファイバ30の出射端面から出射される励起光L2の開口数NA2=(D2/d)×NA0は、構成Dにおいてブリッジファイバ30の出射端面から出射される励起光L2の開口数NA2=(D1/d”)×NA0よりも小さくなる。その結果、ブリッジファイバ30に入射した励起光において、ゲインファイバ20の内側クラッドの開口数を超える成分が占める割合を低下させることができる。ここで、内側クラッドの開口数を超える成分が生じる要因としては、例えば、製造時のばらつきやエラーなどに起因して開口数がその設計値よりも大きくなることなどが挙げられる。換言すれば、ブリッジファイバ30に入射した励起光のうち、ゲインファイバ20から漏れ出して被覆21を発熱させる発熱源となる励起光の割合を、構成Dと比べて小さくすることができる。これにより、ゲインファイバ20の焼失を抑制することができる。
【0054】
〔実施例〕
本実施形態に係るポンプコンバイナ1は、例えば、以下のようにして実施することができる。
【0055】
・励起ファイバ10として、外径d’=150μm、開口数NA0=0.18のポリマークラッドファイバを使用した。
【0056】
・ブリッジファイバ30として、クラッド径D1=450μm、コア径D2=400μmのポリマークラッドファイバに対して、最細部の直径dが180μmとなるようにテーパ加工を施したものを利用した。なお、コア30aの開口数が0.18となるよう、コア30a(石英)には予めドーパントを添加した。また、テーパ加工は、フッ酸を用いたケミカルエッチングによって行った。
【0057】
・ブリッジファイバ30の入射端面には、7本の励起ファイバ10…を図2(b)に示すように融着接続した。より具体的に言うと、(1)7本の励起ファイバ10…をフェルール(半割形状の管を組み合わせるタイプのもの)で束ね、(2)融着接続機を用いて7本の励起ファイバ10…を同時にブリッジファイバ30の入射端面に融着接続し、(3)融着接続を完了した後でフェルールを取り外した。
【0058】
上述した構成B(以下、「比較例に係る構成」と記載)を採用した場合、ブリッジファイバ30から出射する励起光の開口数は計算上0.45になる。一方、上述した構成A(以下、「本実施例に係る構成」と記載)を採用した場合、ブリッジファイバ30のコアに入射し、ブリッジファイバ30から出射する励起光の開口数は計算上0.4になる。また、本実施例に係る構成を採用した場合、ブリッジファイバ30に入射した励起光のうち、コア30aに入射する励起光の割合は88%、クラッド30bに入射する励起光の割合は12%となる。したがって、本実施例に係る構成を採用した場合、ブリッジファイバ30に入射した励起光のうち、ブリッジファイバ30から出射する際に開口数が0.45にまで上昇する励起光の割合を12%に抑えることができる。
【0059】
本実施例に係るポンプコンバイナ1において、各励起ファイバ10に50Wの励起光を導入したところ、ゲインファイバ20の被覆21の端部において最も顕著な温度上昇が見られた。そして、比較例に係る構成を採用した場合、ゲインファイバ20の被覆端部の温度が室温環境下で80℃まで上昇するのに対して、本実施例に係る構成を採用した場合、ゲインファイバ20の被覆端部の温度を同環境下で40℃以下に抑えられることが確認された。これは、コア30aを設けたことによって、ブリッジファイバ30に入射した励起
光のうち、大部分(350Wのうちの約310W)の励起光の開口数を0.4に抑えたことに起因する効果である。
【0060】
〔変形例〕
本実施形態においては、ブリッジファイバ30のコア30aの屈折率を一様としたが、本発明はこれに限定されるものではない。すなわち、ブリッジファイバ30のコア30aを内側コア30a1と外側コア30a2とに分け、外側コア30a2の屈折率を内側コア30a1の屈折率よりも低くする構成を採用してもよい。
【0061】
この場合、図4に示すように、外側コア30a2の直径D2を、錘状部32の最細部の直径dよりも大きくする。また、内側コア30a2の直径D3を、錘状部32の最細部の直径d以下にする。そうすると、入射端面から内側コア30a2に入射した励起光は、開口数を保ったまま出射端面から出射される。したがって、ブリッジファイバ30に入射した励起光のうち、ゲインファイバ20の内側クラッドに結合する励起光の割合を、更に高くすることができる。
【0062】
〔付記事項〕
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。すなわち、請求項に示した範囲で適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明に係るポンプコンバイナは、ファイバレーザ(図5参照)やファイバアンプなどに好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0064】
1 ポンプコンバイナ
10 励起ファイバ
20 ゲインファイバ
30 ブリッジファイバ
31 柱状部
32 錘状部
32a 太径側
32b 細径側
30a コア
30b クラッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の励起ファイバと、ゲインファイバと、上記複数の励起ファイバが接合される入射端面、及び、上記ゲインファイバが接合される出射端面を有するブリッジファイバと、を備えたポンプコンバイナであって、
上記ブリッジファイバは、直径が上記出射端面に近づくに従って次第に小さくなる錘状部を含み、
上記錘状部は、コアと、屈折率が該コアよりも低く、かつ、少なくとも太径側において該コアを取り囲むクラッドとを備え、
上記錘状部の太径側における上記コアの直径が上記出射端面の直径よりも大きく、更に、上記錘状部の細径側において上記コアが露出しており、かつ、上記錘状部の細径側における上記コアの直径が上記出射端面に近づくに従って次第に小さくなる、ことを特徴とするポンプコンバイナ。
【請求項2】
上記錘状部の太径側において上記コアの直径が一定である、ことを特徴とする請求項1に記載のポンプコンバイナ。
【請求項3】
上記複数の励起ファイバの開口数が、上記ブリッジファイバの入射端面におけるコアの開口数以下である、ことを特徴とする請求項1又は2に記載のポンプコンバイナ。
【請求項4】
上記複数の励起ファイバは、最密に束ねられて上記ブリッジファイバの入射端面に接合されている、ことを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載のポンプコンバイナ。
【請求項5】
複数の励起ファイバと、ゲインファイバと、上記複数の励起ファイバが接合される入射端面、及び、上記ゲインファイバが接合される出射端面を有するブリッジファイバと、を備えたポンプコンバイナであって、
上記ブリッジファイバは、直径が上記出射端面に近づくに従って次第に小さくなる錘状部を含み、
上記錘状部は、コアと、屈折率が該コアよりも低く、かつ、少なくとも太径側において該コアを取り囲むクラッドとを備え、
上記錘状部の太径側において上記コアの直径が一定であり、かつ、上記錘状部の太径側における上記コアの直径が上記出射端面の直径よりも大きく、更に、上記錘状部の細径側における上記コアの直径が上記出射端面に近づくに従って次第に小さくなる、ことを特徴とするポンプコンバイナ。
【請求項6】
複数の励起ファイバが接合される入射端面、及び、ゲインファイバが接合される出射端面を有するブリッジファイバであって、
直径が上記出射端面に近づくに従って次第に小さくなる錘状部を含み、
上記錘状部は、コアと、屈折率が該コアよりも低く、かつ、少なくとも太径側において該コアを取り囲むクラッドとを備え、
上記錘状部の太径側における上記コアの直径が上記出射端面の直径よりも大きく、更に、上記錘状部の細径側において上記コアが露出しており、かつ、上記錘状部の細径側における上記コアの直径が上記出射端面に近づくに従って次第に小さくなる、ことを特徴とするブリッジファイバ。
【請求項7】
複数の励起ファイバが接合される入射端面、及び、ゲインファイバが接合される出射端面を有するブリッジファイバであって、
直径が上記出射端面に近づくに従って次第に小さくなる錘状部を含み、
上記錘状部は、コアと、屈折率が該コアよりも低く、かつ、少なくとも太径側において該コアを取り囲むクラッドとを備え、
上記錘状部の太径側において上記コアの直径が一定であり、かつ、上記錘状部の太径側における上記コアの直径が上記出射端面の直径よりも大きく、更に、上記錘状部の細径側における上記コアの直径が上記出射端面に近づくに従って次第に小さくなる、ことを特徴とするブリッジファイバ。
【請求項8】
請求項1〜5の何れか1項に記載のポンプコンバイナを備えたファイバレーザ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−65704(P2013−65704A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−203603(P2011−203603)
【出願日】平成23年9月16日(2011.9.16)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】