説明

マイクロカプセル

液体洗剤組成物に使用するためのマイクロカプセルであって、前記マイクロカプセルが、コアと、ポリマーポリアニオン−ポリカチオン複合体シェルとを有し、前記ポリアニオン成分がカルシウムの存在下でゲル化可能であり、0.05モル/リットルのカルシウムとゲル化する場合に、約0.5rad/sの角振動数、及び25℃で約3.8重量%のポリアニオン濃度にて約150Pa未満の貯蔵弾性率を有するマイクロカプセル。本発明はまた、前記マイクロカプセルを製造する方法、前記マイクロカプセルを含む液体洗剤、及びこの液体洗剤を用いる洗浄方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はマイクロカプセルの分野に関し、特に本発明は、コアと、ポリマーポリアニオン−ポリカチオン複合体シェルとを有するマイクロカプセル(ここで前記ポリアニオンはカルシウムの存在下で弱いゲルを形成可能である)、それらの製造方法、前記マイクロカプセルを含む液体洗剤、並びに洗濯、食器洗い及びその他の目的のためのそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロカプセルを含む液体洗剤は、消費者にとって非常に魅力的である。液体洗剤中にマイクロカプセルを含ませることは、審美的な理由だけでなく、不相溶性成分の分離、制御放出及び/又は遅延放出などのような機能的理由のためにも望ましい。マイクロカプセルは液体洗剤中に安定に懸濁され、使用中にのみ溶解/崩壊するのが理想的である。これは、技術的にマイクロカプセルの設計を非常に困難にする。使用中の条件は、洗浄温度、洗浄水の硬度、洗浄プロセスの持続時間等を包含する多数の要因によって広く変化し得る。
【0003】
液体洗剤中にマイクロカプセルを使用することは文献から既知である。PCT国際公開特許WO02/055649には、洗い及び/又は洗浄物質と、半透過性のカプセルシェル(膜)とを含有するマイクロカプセルを好適な高分子電解質を複合化することによって製造する方法が開示されている。
【0004】
この文献から既知の半透過性タイプのマイクロカプセルは、液体洗剤の製造プロセス及び輸送に耐え、同時に残留物を残さずに使用中に崩壊可能なほど十分強くはないようである。残留物の発生は、低温、硬水及び短い洗浄持続時間のようなストレス使用条件下で悪化する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の1つの目的は、ストレス条件を包含する種々広範な条件下で溶解/崩壊できる、液体洗剤中に使用するための強いマイクロカプセルを提供することである。特に、マイクロカプセルは、ぎっしりと詰めこまれたドラム、短い洗浄サイクル、低い洗浄温度及び/又は硬水を用いる場合であっても残留物を残さずに溶解/崩壊する洗濯用液体洗剤に使用するのに好適であるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
コアと、ポリマーポリアニオン−ポリカチオン複合体シェルとを有する液体洗剤に使用するためのマイクロカプセルは、液体マトリックス中に安定に懸濁でき、製造及び輸送条件に耐え、且つ洗浄プロセス中に溶解/崩壊できるように設計されるべきである。マイクロカプセルは半透膜(シェル)を有するが、それが、コアと洗剤の液体又はゲルマトリックスとの間にて、実質的に平衡に達するまで浸透作用によりイオン移動を可能にし、その結果マトリックス中のマイクロカプセルの物理的安定性に寄与する。理論に束縛されないが、マイクロカプセルを含有する洗剤が、例えば洗浄プロセス中に新しい水に導入される場合、洗浄水とマイクロカプセルとの間のイオン強度の勾配により水がコアに引き込まれ、シェル上の圧力が高まり、その結果として崩壊すると考えられている。洗浄プロセスの間に生じる剪断力とこの機構が共に使用中のマイクロカプセルの崩壊に寄与する。
【0007】
マイクロカプセルは残留物を形成し易いことが判明している。この傾向は、ぎっしり詰めこまれたドラム、短い洗浄サイクル、低温及び硬水条件のようなストレス条件下でより悪化することが判明している。本発明のマイクロカプセルは、ストレス条件下でも残留物を生じない。
【0008】
カルシウムのような金属イオンを含有する水道水は、一般に液体洗剤と共に洗浄に使用される。液体洗剤も、洗浄成分及び/又は水性マトリックスの一部として、例えば酵素の安定性のためにカルシウムイオンを含む場合がある。理論に束縛されるものではないが、マイクロカプセルのポリアニオンは、洗浄水、液体洗剤のいずれか又はその両方からのカルシウムと相互作用、特に架橋する傾向にあると考えられている。この相互作用により、ポリアニオンのゲル化が生じ得る。形成されたゲルが強すぎると、水に溶解/崩壊せず、洗浄されたアイテムに残留物が残る。
【0009】
洗濯プロセスでは、マイクロカプセルが洗浄溶液中で、異なる供給源に由来する高濃度カルシウムに曝されることになり、その供給源は、例えば給水、洗濯物自体、以前に洗濯されて乾燥工程で水が蒸発した後に残ったカルシウムを含有し得る衣類、いくらかの汚れなどである。洗濯用液体洗剤は、全てのカルシウム及びその他の硬度イオンに対してアンダービルト(under built)となる傾向がある、すなわち洗濯用液体洗剤は、特にストレス条件下で洗浄プロセス中に存在する全てのカルシウムと結合するわけではない。
【0010】
本発明の第1の態様によれば、液体洗剤組成物に使用するためのマイクロカプセルが提供され、このマイクロカプセルは、コアと、ポリマーポリアニオン−ポリカチオン複合体シェルとを有する。水溶液中のポリアニオン成分は、カルシウムの存在下で弱いゲルを形成可能である。弱いゲルとは、約150Pa未満の貯蔵弾性率を有する、(本明細書にて以下に記載されるようなCa−EDTA溶液から、その場で放出される)0.05モル/リットルのカルシウムから形成されたポリアニオン−カルシウムゲルであると理解される。貯蔵弾性率は、本明細書にて以下で詳述されるように測定される。
【0011】
本発明のマイクロカプセルに使用するための好ましいポリアニオンは、アルギネートである。アルギネートは、アルギン酸及びその塩類に与えられる一般名称である。アルギン酸は、線状鎖にそって不規則なブロック状パターンに配置された(1,4)結合β−D−マンヌロネート(M)及びそのC−5エピマーであるα−L−グルロネート(G)残基からなる線状多糖類である。M及びGブロックの化学組成及び順序は、生物学的資源、成長及び季節条件に左右される。アルギネートには3つのディマーブロックMM、GG、及びMGがある。マンヌロン単位とグルロン単位の比はM:G比として知られている。好ましい実施形態において、ポリアニオンは、少なくとも約1:1、好ましくは少なくとも約1.1:1、より好ましくは少なくとも約1.3:1、さらにより好ましくは少なくとも約1.5:1のM:G比を有するアルギネートである。好ましくはアルギネートは、約0.5未満、より好ましくは約0.4未満、さらにより好ましくは約0.3未満のGGブロック画分を有する。好ましくはアルギネートは、約0.83ag(500KDa)未満の分子量を有する。また、理論に束縛されるものではないが、二価の及び多価のカチオンは、M残基よりもG残基、特にG残基ブロックと強いゲルを形成し、これによって溶解/崩壊特性が低下することになり、結果として残留物が形成されると考えられている。二価のカチオン、特にカルシウムイオンは、Gブロック間の鎖間結合に関与し、ゲル形態に三次元網状組織を生じる。Gブロック間の結合領域は、いわゆる「エッグボックスモデル(egg-box model)」として記載される。
【0012】
本発明のマイクロカプセルに使用するのに最も好ましいアルギネートは、i)少なくとも約1:1、好ましくは少なくとも約2:1、より好ましくは少なくとも約3:1、さらにより好ましくは少なくとも約4:1のM:G比;ii)約0.5未満、より好ましくは約0.4未満、さらにより好ましくは約0.3未満のGGブロック画分;並びにiii)約0.83ag(500KDa)未満の分子量を有するものである。
【0013】
本発明のマイクロカプセルは、好ましくは約0.1〜約10mmの直径を有する球状であるが、液体洗剤中に配置される場合は容易に視覚可能でなければならない。この視認性は、色のコントラストによって、例えば異なる色のマイクロカプセルを含む着色された透明又は半透明(すなわち透けて見える)液体を使用することによって、又は着色されたマイクロカプセルを有する無色の液体を使用することによって、若しくはその逆もまた同様に達成可能である。
【0014】
存在する場合、顔料濃度は、マイクロカプセルの好ましくは約0.001〜約0.2重量%、より好ましくは約0.06〜約0.1重量%の範囲である。好ましくは、本発明のマイクロカプセルは、約0.05重量%未満、より好ましくは約0.01重量%未満の顔料を含み、さらにより好ましくは本発明のマイクロカプセルは顔料を含まない。このように顔料濃度が低いこと、又は顔料を含まないことで、マイクロカプセルが洗浄プロセスに使用される場合に残留物をなくすことができる。
【0015】
好ましくは、本発明のマイクロカプセルはコアに乳化油を含むので、顔料も染料も含まない場合であってもマイクロカプセルに白っぽい外観を与える。
【0016】
本発明の別の態様では、液体洗剤組成物に使用するためのマイクロカプセルが提供され、このマイクロカプセルは、コアと、ポリマーポリアニオン−ポリカチオン複合体シェルとを有し、このポリアニオン成分は、少なくとも約1:1、好ましくは少なくとも約1.1:1、より好ましくは少なくとも約1.3:1、さらにより好ましくは少なくとも約1.5:1のマンヌロン単位とグルロン単位との比を有するアルギネートである。好ましくはアルギネートは、約0.5未満、より好ましくは約0.4未満、さらにより好ましくは約0.3未満のGGブロック画分を有する。好ましくはアルギネートは、約0.83ag(500KDa)未満の分子量を有する。好ましくはマイクロカプセルは、約0.05重量%未満、より好ましくは約0.01重量%未満の顔料を含み、さらにより好ましくはマイクロカプセルは顔料を含まない。好ましくは、マイクロカプセルはコアに乳化油を含む。
【0017】
好ましい実施形態において、マイクロカプセルは、(本明細書にて以下に記載されるように測定される)約20mN〜約20,000mN、好ましくは約50mN〜約15,000mN、より好ましくは約100mN〜約10,000mNの破裂前力に耐久可能である。この強度で、それらは液体洗剤製造プロセスを包含する産業上の取り扱いに適合するようになる。マイクロカプセルは、顕著な破裂なしにポンプ輸送及び混合操作に耐久可能で、さらに輸送時にも安定である。同時にマイクロカプセルはストレス条件下であっても使用中に容易に崩壊する。このマイクロカプセルは操作の幅が広く、異なる条件下で使用するために異なるマイクロカプセルを設計する必要がない。
【0018】
本発明の方法の態様によれば、液体洗剤組成物に使用するためのマイクロカプセルを製造する方法が提供され、このマイクロカプセルは、コアとポリマー電解質複合体シェルとを有する。このマイクロカプセルは、カルシウムの存在下で(本明細書にて上述されるように)水溶液中で弱いゲルを形成できるポリアニオン成分から製造される。その方法は次の、
a.ポリアニオン成分を含む第1の溶液を形成する工程と、
b.その第1の溶液の液滴を形成する工程と、
c.ポリアニオン成分と反応可能なポリマーポリカチオン成分を含む第2の溶液に前記液滴を導入し、その液滴表面に複合体を形成する工程と
を含む。
【0019】
本明細書で使用する時、「溶液」という用語は、主要な成分と、少なくともそこに溶解、分散又は乳化した第2の成分とを有する液体又はゲル組成物を包含する。
【0020】
好ましくは、ポリアニオンは、少なくとも約1:1、好ましくは少なくとも約2:1,より好ましくは少なくとも約3:1、さらにより好ましくは少なくとも約4:1のM:G比を有するアルギネートである。好ましくはアルギネートは、約0.5未満、より好ましくは約0.4未満、さらにより好ましくは約0.3未満のGGブロック画分を有する。好ましくはアルギネートは、約0.83ag(500KDa)未満の分子量を有する。好ましくはマイクロカプセルは、約0.05重量%未満、より好ましくは約0.01重量%未満の顔料を含み、さらにより好ましくはマイクロカプセルは顔料を含まない。好ましくは、マイクロカプセルはコアに乳化油を含む。
【0021】
好ましい実施形態において、第2溶液は約1〜4、より好ましくは約1.5〜約3、さらにより好ましくは約2〜約2.5のpHを有する。低いpHでは短い硬化時間が好ましく、それがマイクロカプセルの強度にプラスの影響を与える。好ましくは、ポリカチオンはキトサンであり、好ましくは約94%のアセチル化度を有するものである。
【0022】
本発明の別の態様によれば、本発明のマイクロカプセルを含む液体洗剤組成物が提供される。好ましい実施形態において、液体洗剤組成物は、組成物の約0.5〜約30重量%、好ましくは約2〜約15重量%の洗浄性ビルダーを含む。ビルダーは、本明細書の組成物の洗浄性能を改善し、封鎖、キレート、又は沈殿種のいずれかを含むことができる。こうしたビルダーの例としては、C12−18脂肪酸類及びクエン酸が挙げられ、通常アルカリ金属水酸化物類、アミン類又はアルカノールアミン類で中和されている。本明細書に用いるのに好ましいビルダーは、組成物の約2〜約15重量%のC12−18脂肪酸類とクエン酸とを約10:1〜約1:10、好ましくは約5:1〜約1:5、より好ましくは約3:1〜約1:3の重量比で含む混合物である。
【0023】
本発明者らは、洗濯用液体洗剤に使用する場合に先行技術のマイクロカプセルがもつ欠点を新たに明らかにした。既知のマイクロカプセルは、特にストレス洗浄条件下、例えばぎっしり詰めこまれたドラム、短い洗浄サイクル、低い洗浄温度及び/又は硬水下で洗浄された衣類に残留物を残すことなく完全に溶解することはない。この新たに明らかになった問題を解決するために、本発明の好ましい実施形態は、布地の洗濯に使用するのに好適な液体キャリア中にて視覚的に区別可能なマイクロカプセルの懸濁液を含む洗濯用液体洗剤を提供し、好ましくはそのマイクロカプセルは、コアと、ポリマーポリアニオン−ポリカチオン複合体シェルとを有し、このマイクロカプセルは、本明細書に定義されるストレス条件下の洗浄試験に従って約1未満、好ましくは約0.6未満、より好ましくは約0.2未満の残留指数を有する。好ましくは、本実施形態の液体洗剤は、本明細書にて上述された本発明のマイクロカプセルを含む。
【0024】
「視覚的に区別可能なマイクロカプセル」とは、液体組成物を観測者が自らの目から約30cm離して保持した場合に、肉眼で洗濯用洗剤中に見ることができるマイクロカプセル(好ましくは球状で、約0.1〜約10mmの直径を有する)を意味する。本明細書にて上記で説明されるように、視認性は、好ましくは液体洗剤とマイクロカプセルとの間での色のコントラストによって得られる。好ましくは、マイクロカプセルは着色されているが、透明なマイクロカプセルも想定される。透明なマイクロカプセルもストレス条件下で不必要な残留物を生じることがある。
【0025】
残留指数は、次の方法に従って計算される:約3.5kgの重量になる11の黒色衣類をミーレ(Miele)洗濯機タイプW8810に入れる。1重量%のマイクロカプセルを含有する180mlの重質液体(HDL)を含有する投与ボールを洗濯物の中央に置く。好ましくはHDL処方は、表3にて本明細書で以下に特定される通りである。
【0026】
洗濯機に入る水は、5℃の温度である(これは冷却システムによって達成され得る)。水の硬度は比が3:1のカルシウム及びマグネシウム4mmolである。ウールサイクル(30℃及び40分の持続時間)を使用する。洗浄された衣類は、残留物の存在を評価するために視覚的に判断される。残留物を含有する衣類の数を数える。このプロセスを4回繰り返し、残留物を含有する衣類の数を4回の洗浄について平均する。この平均を衣類の数(11)で割ることによって残留指数を得る。
【0027】
本発明の方法の態様では、汚れたアイテム又は基材を洗浄する方法が提供され、この方法は本発明の液体洗剤組成物を含む水溶液と前記アイテム又は基材を接触させる工程を含む。この方法は、硬質面洗浄−手洗い及び自動食器洗い、トイレ周縁ブロック−、洗濯などを含む種々の用途に好適である。
【0028】
この方法は、特に洗濯に好適である。本発明の液体洗剤組成物は、ストレス条件下、例えば硬水、すなわち約2mmol/l超過、好ましくは約3〜6mmol/l、より好ましくは約4mmol/lのカルシウム及びマグネシウム(好ましくは3:1の比)−及び/又は低い入口温度−約4〜6℃及び/又は低いプログラム温度−約30℃−及び/又は重い洗濯物にて使用される場合に、洗われたアイテムに残留物を残さない。
【0029】
一般に、洗濯機にて使用中の洗い温度条件を正確に制御することは、たとえプログラム温度を予め選択することが可能であっても、不可能である。洗濯機は水道管からの水で満たされ、入水温度は外部条件によって決定されるが、それは特に天候によって大きく変化する。注入された水は次いで所望のプログラム温度にまで加熱される。入口温度とプログラム温度との間には大きな差が存在し得るので、洗浄溶液の温度はサイクルの大部分では低くなる可能性がある。これらの条件がビーズのゲル化に寄与しうる。この問題は、硬水が使用される場合及び/又は洗濯機ドラムにぎっしり詰めこまれる場合に悪化することがある。
【0030】
最近の傾向は、通常、低温で、削減された攪拌、また、より長い洗浄時間の低エネルギー消費の洗濯機を設計することである。これらの条件もマイクロカプセルのゲル化に寄与する。
【0031】
本発明の別の方法の態様では、清浄な洗濯物に視覚可能な残留物を残すことなく洗濯物を洗浄する方法が提供される。洗浄は、硬水条件下、すなわち約2mmol/L超過、好ましくは約3〜6mmol/L、より好ましくは約4mmol/Lのカルシウム及びマグネシウム(好ましくは3:1の比)にて洗濯機で行われる。洗浄方法は、硬水と洗濯物を接触させ、液体洗剤を添加する工程を含む。液体洗剤は、好ましくは液体洗剤の約0.3重量%〜約3重量%、より好ましくは約0.5〜約2重量%、さらにより好ましくは約0.8〜約1.5重量%の、コア、及びポリマーポリアニオン−ポリカチオン複合体シェルを有するマイクロカプセルを含む。好ましくは、液体洗剤は、約10〜約2000ppm、より好ましくは約50〜約1200ppm、さらにより好ましくは500〜900ppmのビルダーを洗浄溶液中に提供する。
【0032】
マイクロカプセルは、以下に記載される試験に従って洗濯物に視覚可能な残留物を残さないようなものである。好ましくは、洗浄方法に使用するためのマイクロカプセルのポリアニオン成分は、カルシウムの存在下で水溶液中にて弱いゲルを形成可能で、約150Pa未満の貯蔵弾性率(本明細書にて以下に詳述されるように測定される)を有する。好ましいポリアニオンは、少なくとも約1:1、好ましくは少なくとも約1.1:1、より好ましくは少なくとも約1.3:1、さらにより好ましくは少なくとも約1.5:1のM:G比を有するアルギネートである。好ましくはGGブロック画分は約0.5未満、より好ましくは約0.4未満、さらにより好ましくは約0.3未満である。好ましくは分子量は約0.83ag(500KDa)未満である。
【0033】
洗濯プロセスが清浄な衣類に視覚可能な残留物を残すかどうかは、次の試験に従って評価される。ミーレ・ノボトロニック(Miele Novotronic)W8810洗濯機のコットン用の短いサイクルプログラムを使用して、総重量が約4〜4.5kgの約12の暗色衣類を洗浄する。入水温度は約5〜6℃であり、洗浄温度は約30℃、水の硬度は4mmol/Lである。組成物の1重量%のマイクロカプセルを含む洗濯用液体洗剤180mLを分配ボールに入れ、このボールをドラムの中央に置く。プログラムの終わりに、衣類を視覚的に点検する。20%未満、好ましくは10%未満、さらにより好ましくは5%未満の衣類に残留物が存在する場合、洗濯プロセスは視覚可能な残留物がないと判断される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
本発明は、液体洗剤中に使用するためのマイクロカプセル(ビーズと称される場合がある)、それらを製造する方法、前記マイクロカプセルを含む液体洗剤、及びその液体洗剤を用いる洗浄方法を想定する。前記マイクロカプセルは強いゲルを形成しないので、ストレス条件下であっても残留物を残すことなく使用中に溶解/崩壊する。
【0035】
マイクロカプセルは、好ましくは約0.1〜約10mmの直径を有する球状ビーズの形態をとり、膜に囲まれたコアを含有する。その膜は、周りの媒体からコア及びコア内のいずれかの活性物質を保護する。
【0036】
本明細書で使用する時、液体洗剤という用語は、洗浄特性を有する流動性のあらゆる流体を包含し、手洗い及び自動洗濯、食器洗い、硬質面洗浄、パーソナルクレンジング及びトイレの周縁ブロックに使用するための液体及びゲルを包含する。
【0037】
本発明のマイクロカプセルは、複合体を形成可能な反対の電荷の2つの高分子電解質(本明細書ではポリアニオンとポリカチオンとも称される)の反応に基づいた方法によって製造される。本発明に好適な高分子電解質は、合成又は天然の高分子電解質であってもよい。
【0038】
ポリアニオン
本発明に好適なポリアニオンは、カルシウムの存在下で弱いゲルを形成可能で、0.05モル/リットルのカルシウムとゲル化する場合に、約0.5rad/sの角振動数及び25℃で約3.8重量%のポリアニオン濃度にて約150Pa未満の貯蔵弾性率を有するという要件を満たす合成又は天然のポリアニオンであることができる。
【0039】
合成ポリアニオンは、ポリアクリレート類及びポリメタクリレート類、ポリビニルスルフェート類、ポリスチレンスルホネート類、ポリホスフェート類及びこれらの混合物から成る群から選択されてもよい。天然ポリアニオンは、アルギネート類、カラギーナン、ジェランガム、カルボキシルメチルセルロース、キサンタンガム及びこれらの混合物を包含するアニオンガム類から選択されてもよい。
【0040】
本明細書に用いるのに好ましいポリアニオンは、アルギネート、より好ましくはラミテックス(Lamitex)M45(FMCから)、及びマヌテックス(Manutex)RM、ケルギン(Kelgin)HV、マヌコール(Manucol)LH、マヌコールDM及びマヌコールDHであり、これらは全てISPから供給される。最も好ましいのは、マヌコールDM及びマヌコールDHである。
【0041】
高濃度マンヌロン酸を有する好ましいアルギネート類には、藻類のノルウェイ産ケルプ(Ascophyllum nodosum)又は藻類のマクロイスティス・フィリフェラ(Macroystis pyrifera)から誘導されるものが含まれる。
【0042】
ポリアニオンの貯蔵弾性率の測定
ポリアニオンの貯蔵弾性率は、カルシウムで架橋され、それによってゲルを形成するポリアニオン3.8重量%を含む水溶液にて測定される。カルシウム−ポリアニオンゲルは、Ca−EDTA溶液からカルシウムカチオンがその場で放出されることによって調製される。このようにして均質なポリアニオンゲルが得られ、ゲル中のカルシウム濃度勾配の問題が回避される。この方法は、X.リウ(X. Liu)ら、ポリマー(Polymer)、第44巻、407〜412頁(2003)によって開発されたものに基づく。
【0043】
まず、0.3g(99%純度)のD−グルコノ−δ−ラクトン(GDL、シグマ(Sigma))を19.7gの水に添加し、磁性攪拌器を用いて42rad/s(400rpm)にて2分間攪拌することによってグルコネート溶液を調製する。
【0044】
第2に、1gのCaCl六水和物(98%純度)及び44.69gの0.01mol/LのEDTA水溶液を21.51gの水に添加することによってCa−EDTA溶液を調製する。この溶液を42rad/s(400rpm)にて磁性攪拌器を用いて攪拌し、0.1NのNaOH水溶液(約9g)をpHが約7の値に安定するまで除々に添加する。
【0045】
3.8gのポリアニオン、好ましくはアルギネートをCa−EDTA溶液に添加することによってポリアニオン溶液を調製する。得られた溶液をturraxウルトラミキサーを用いて3分間攪拌するが、ウルトラミキサーを溶液全体に681rad/s(6,500rpm)にて最初の1分間動かし、第2の1分間は1414rad/s(13,500rpm)で、第3の1分間は2251rad/s(21,500rpm)で動かす。
【0046】
その後、前記グルコネート溶液をこのポリアニオン溶液に添加することによってカルシウムポリアニオン溶液を調製する。得られた溶液をポリアニオン溶液と同じ方法で攪拌する(すなわち、最初の1分間は681rad/s(6,500rpm)、第2の1分間は1414rad/s(13,500rpm)、第3の1分間は2251rad/s(21,500rpm)を用いる)。グルコネートはCa−EDTAのキレート化安定度定数の結果の減少で溶液のpHの低下を引きおこし、それによってカルシウムが放出される。得られたカルシウムポリアニオン溶液は20℃で24時間保管される。
【0047】
貯蔵弾性率は、コーン及びプレートフィクスチャを備えたレオメーターUDS200Paar Physicaを用いて測定される。コーンの直径及び角度はそれぞれ、50mm及び0.04radである。測定は25℃±0.1℃で行う。(説明書に示されるように)装置を較正した後、ひずみを0.5%に設定する。振動数掃引は、0.1〜100s−1の範囲で行う。25個の点を自動モードで測定する。貯蔵弾性率を振動数に対してプロットする。
【0048】
ポリアニオン分子量の測定
分子量は、データ処理用に較正された従来のGPC技術を用いてゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により決定される。分子量は、1組の分散の狭い参照物質:分子量が26、45、95、170、250、510及び913キロダルトン(ピーク分子量)のポリエチレンオキシド(PEO)標準を用いて較正することによって決定される。
【0049】
ヴィスコテック(Viscotek)トリプル検出器(従来の較正には屈折率検出を用いる)を備えたウォーターズ・アライアンス(Waters Alliance)2695分離モジュールゲル浸透クロマトグラフを使用する。制御システムは、ウォーターズ・エンパワー(Waters Empower)及びヴィスコテック(Viscotek)トリプル検出ソフトウェアである。検出はヴィスコテック(Viscotek)屈折率を用いて行う。モジュールは、2つのウォーターズ(Waters)ウルトラヒドロゲル300×7.8mmカラムを含み、一方はウルトラヒドロゲル・リニアを含有し、他方はウルトラヒドロゲル102を含有する。溶離液は、体積比90:10のアセトニトリル中NaHPOの0.1M水溶液である。サンプル注入は0.8mL/分の流量の2.5mg/mLのポリアニオン濃度を有する100μLの溶液である。
【0050】
未知のサンプルの分子量は、時間/体積軸に沿ってクロマトグラフトレースを「スライス」し、次いでスライスしたものそれぞれについてPEO較正曲線(LogMW対保持時間又は体積)からスライス分子量を読み取ることによって決定する。重量平均分子量は、スライス分子量及びそれらの相対強度に基づいて計算される。分子量の較正、スライス及び計算は全て、GPC処理ソフトウェアを介して行われる。
【0051】
ポリカチオン
好適なカチオン性の合成高分子電解質は、ポリ−(N,N,N−トリアルキルアンモニウムアルキル)アクリレート類、ポリ−(N−アルキルピリジニウム)塩類、ポリエチレンイミン類、脂肪族イオネン(ionene)類、ポリ−(ジアリルジアルキルアンモニウム)塩類、及びこれらの混合物から成る群から選択されてもよく、ここで前記アルキルは好ましくは1〜約4個の炭素原子を有する短鎖、好ましくはメチルである。
【0052】
好適なカチオン性天然高分子電解質は、キトサン、キトサン誘導体、例えば四級化キトサン及びアミノアルキル化及び四級化セルロース類及びポリ−L−リジン及びこれらの混合物から成る群から選択されてもよい。
【0053】
本明細書に用いるのに好ましいのは、アルギン酸ナトリウム(第1の溶液として)、好ましくはマヌコールDH又はDMと、ポリ−(ジアリルジメチルアンモニウム)クロライド、キトサンポリマー(約0.016〜1.66ag(約10〜1,000kDa)、好ましくは約0.083〜0.83ag(約50〜500kDa)の分子量を有する)、キトサンオリゴマー(約0.00045〜約0.015ag(約300〜約9,000Da)、好ましくは約0.00083〜約0.0083ag(約500〜約5,000Da)の分子量を有する)又はキトサンポリマー及びオリゴマー類の混合物(第2の溶液として)との組み合わせである。これらの組み合わせは、それらの短い反応時間及び得られるマイクロカプセルの低い透過性のために好ましく、特に好ましいのは、アルギン酸ナトリウムとポリ−(ジアリルジメチルアンモニウム)クロライドの組み合わせである。膜透過性は、好ましくは液体洗剤とマイクロカプセルのコアとの間の水又は溶媒の移動を可能にするが、活性物質の浸出は防止するようなものである。
【0054】
破裂前力の測定
マイクロカプセルが耐久可能である破裂前力は、ダイナミック・メカニカル・アナライザ(Dynamic Mechanical Analyser)(パーキン・エルマー(Perkin Elmer)DMA7e)を用いることによって測定できる。1つのマイクロカプセルが、保管液体(0.9%NaCl)から分離され、アナライザのサンプルプレート上に配置される。カプセルは1滴の0.9%の塩化ナトリウム溶液で覆われる。破裂点における応力を確立するために、静的ひずみ走査はマイクロカプセルの圧縮中に20mN/分で増大する応力を適用して行われる。強制応力及び圧搾カプセルの変位を自動的に記録する。破裂点は、静的応力走査曲線上の最初の肩に対応し、特にその肩の上方及び下方の横方向部分に最も合うものとして構築された2つの接線の交点に対応する。
【0055】
好ましくは、本発明のマイクロカプセルは、25℃で約900〜約1,300Kg/m、好ましくは約950〜約1,200Kg/m、より好ましくは約980〜約1,100Kg/mの密度を有する。
【0056】
マイクロカプセルの密度は、ヘリウム比重瓶(マイクロメリティクス(Micromeritics)AccuPyc1330)を用いて21℃及び172kPa(25psi)で測定される。マイクロカプセルを0.9%の塩化ナトリウム保管溶液から得て、測定を行う前にティッシュペーパーで優しくたたき過剰の液体を取り除く。
【0057】
本発明のマイクロカプセルは、特にそれらが液体洗剤に懸濁している場合は、好ましくは本質的に球状である。さらにマイクロカプセルは、好ましくは約0.2〜約8mm、好ましくは約0.5〜約5mm、より好ましくは約0.7〜約4mmの範囲の直径(等価な円直径として測定)を有し、これらの範囲はマイクロカプセルが肉眼で視覚可能であるという観点及び製造の容易さの観点から好ましい。
【0058】
マイクロカプセルの大きさ及び形状は、光学顕微鏡(レイカ(Leica)MZ8)及び画像解析システム(レイカ(Leica)Q500MC、クイップス(Quips)(イギリス))を用いて特徴付けることができる。分析を行う前に、カプセルは0.9%塩化ナトリウム溶液から得られ、顕微鏡のテーブル上に配置される。測定中、カプセルは0.9%塩化ナトリウム溶液を用いて湿潤を維持する。画像処理の前に、全てのカプセルが単一物として検出されることを確認すべきである。等価な円直径は、粒子の断面積に対応する等価な断面積を有する円直径である。
【0059】
好ましくは、マイクロカプセルは、少なくとも約30%、より好ましくは少なくとも約50%、特に少なくとも約70%の25℃での弾性率を有する。弾性率は、本明細書にて上述されたダイナミック・メカニカル・アナライザ(Dynamic Mechanical Analyser)を用いて計算できる。弾性率は、破裂前のプレートの移動方向におけるカプセルの変形として、対応する変形していないカプセル寸法の百分率で本明細書で定義される。マイクロカプセルの弾性率は、液体洗剤中の機械的安定性に寄与する。
【0060】
好ましくは、マイクロカプセルのコアは活性物質を含む。所望により、シェルも活性物質を含むことができる。好ましくは、活性物質は、約12,000を越える分子量を有する疎水性物質及び非疎水性物質から選択される。「疎水性物質」とは、本明細書において、25℃にて約1を越える、好ましくは約1.2を越える、より好ましくは約1.5を越えるオクタノール水分配係数を有する物質であると理解される。物質のオクタノール水分配係数は、25℃にてオクタノール相中の物質の濃度と水相中での濃度の比として定義される。本明細書に用いるのに好ましい疎水性物質としては、香油類、シリコーン流体類及びガム類、界面活性剤及びビタミン油類が挙げられる。約12,000を越える分子量を有する本明細書に用いるのに好ましい非疎水性物質としては酵素が挙げられる。他の好適な活性物質としては、本明細書にて次に示される物質が挙げられる。マイクロカプセルは、コア中の活性物質と液体洗剤の液体マトリックス中の物質との間の相互作用を低減又は回避するで、活性物質を保護することができ、これにより酵素及び香料のような感応性物質の化学的安定性を改善している。本発明のマイクロカプセルのコア中の活性物質の保持率は、例えば架橋剤としてカルシウムを用いてポリマー架橋により製造されるマイクロカプセルよりも高い。
【0061】
好ましくは本発明のマイクロカプセルのコアは、25℃にてマイクロカプセルの密度を少なくとも約10%、より好ましくは少なくとも約15%低減するようなレベルで密度調整剤を含む。密度調整剤は、構造剤又は増粘剤を用いることなく又は低濃度の構造剤又は増粘剤を用いて液体洗剤中に懸濁できる所与の密度のマイクロカプセルを得るのに役立つ。「低濃度」とは、洗剤マトリックスの約5重量%未満、好ましくは約1重量%未満、より好ましくは約0.2重量%未満の構造剤又は増粘剤を意味する。密度の減少は、2つの同様のマイクロカプセルを比較することによって評価され、第1のものは所与の濃度の密度調整剤を含有する溶液から製造され、第2のものは、密度調整剤が同じ重量の水で置換されている溶液からのものである。本明細書に好適な密度調整剤は、好ましくは約1,000Kg/m未満、より好ましくは約990Kg/m未満であり、約700Kg/mを越え、特に約800Kg/mを越える密度を有する。好適な密度調整剤は、疎水性物質及び約12,000を越える分子量を有する物質を含む。好ましくは密度調整剤は、不溶性であるが、水中にて、分散剤により、又は分散剤なしで分散可能である。活性物質は、上述の要件を満たす場合に密度調整剤の役割を果たすことができる。本明細書に用いるのに好ましい密度調整剤は、シリコーンオイル類、ワセリン類、植物油類、特にヒマワリ油及び菜種油、及び25℃で約1,000Kg/m未満の密度を有する疎水性溶媒、例えばリモネン及びオクタンから成る群から選択される。好ましい密度調整剤は、マイクロカプセルのコアにて乳化でき、マイクロカプセルに白みがかかった外観を与えるという付加的な機能を有する。
【0062】
方法
本発明の方法は、ポリアニオン及びポリカチオンの複合化反応を含む。ポリアニオンを含む第1溶液の液滴をポリカチオンを含む第2の溶液に滴下する。水溶液中に存在する場合、ポリアニオンは、本明細書にて上記で定義される条件下で150Pa未満の貯蔵弾性率を有するという要件を満たす。
【0063】
好ましくは、密度調整剤は、約5重量%〜約50重量%、好ましくは約10重量%〜約30重量%の濃度で第1の溶液中に存在する。
【0064】
第1及び/又は第2の溶液は、水及び有機溶媒を含むいずれかの溶媒を含むことができる。好ましくは、第1及び第2溶液は水性であり、得られたマイクロカプセルを、通常は水性である大多数の液体洗剤に対して容易に相溶性にする。好ましくは、第1及び第2の溶液は、そこに溶解する反対の電荷を有する高分子電解質を有する水性組成物である。
【0065】
本発明の方法は、好ましくは室温で行われ、それにより操作コストを低減し、熱感応性物質の封入が可能になる。
【0066】
本発明の方法は、素早く、簡便で、多用途であり、高出力が可能であるため、大規模生産に適している。
【0067】
第1の溶液の液滴は、ジェットカッティングによって発生することができる。ジェットカッティングは、生産率を高めることができ、液滴の大きさ分布を狭くでき、高粘度溶液、すなわち25℃、1s−1にて測定される場合に約200mPasを越える、好ましくは約1,000mPasを越える、より好ましくは約2,000mPasを越える粘度を有する溶液の処理を可能にする。ジェットカッティングはまた、複素レオロジーを有する溶液、例えばずり減粘流体を処理できる。
【0068】
好ましくは、第1の溶液のジェットは、約0.2mm〜約8mm、より好ましくは約0.5mm〜約4mmの直径を有するノズルに、約0.5g/s〜約20g/s、より好ましくは約1g/s〜約6g/sの処理量にて溶液を通過させることによって形成される。
【0069】
ジェットは、好ましくは機械的手段によって切断され、特に好ましいものは、約10μm〜約1,000μm、より好ましくは約50μm〜約500μmの直径及び約52rad/s(500rpm)〜約1047rad/s(10,000rpm)、より好ましくは約105rad/s(1,000rpm)〜約628rad/s(6,000rpm)の切断速度を有する回転切断ワイヤである。
【0070】
好ましくは、第1の溶液は、溶液の約1重量%〜約15重量%、より好ましくは約2重量%〜約10重量%、特に約3重量%〜約8重量%の濃度にて第1のポリアニオンを含み、この濃度は、得られるマイクロカプセルの強度及び低透過性の両方のために好ましい。好ましくは、第1の高分子電解質は、25℃で1s−1の剪断速度にて1重量%の濃度で測定される場合に、少なくとも100mPas、より好ましくは少なくとも300mPasの粘度を有し、この粘度は得られるマイクロカプセルの高い強度のために好ましい。本発明の方法に好ましいのは、約2重量%〜約7重量%、より好ましくは約3重量%〜約6重量%、特に約3.5重量%〜約5重量%のアルギン酸ナトリウムを含む第1の溶液であり、このアルギン酸ナトリウムは、25℃、1s−1の剪断速度にて1重量%濃度で測定される場合に少なくとも100mPas、好ましくは少なくとも300mPasの粘度を有する。
【0071】
本発明の方法に使用される溶液は、いずれかの溶媒を用いることによって調製できるが、利用可能性及び環境特性の理由から、並びに大多数の活性物質及び液体洗剤に対する水の相溶性から水溶液が好ましい。本方法は好ましくは室温で行われ、これは、香料及び酵素のような熱感応性物質を取り扱う場合に有利である。しかし、非熱感応性物質が封入される場合、この方法の溶液は、複合化反応の反応速度を速めるために加熱されてもよい。
【0072】
第1の溶液は、その中に溶解、懸濁又は乳化した密度調整剤及び/又は活性物質を含むのが好ましい。第1の溶液はまた、特に活性物質が疎水性である場合、懸濁又は乳化プロセスを促進するために分散剤又は乳化剤を含むことができ、本明細書に用いるのに好ましい分散剤は、ポリマー類、特にポリビニルアルコールである。本明細書に用いるのに好ましい乳化剤は、界面活性剤である。分散剤及び/又は乳化剤は、通常、低濃度で使用され、本明細書に用いるのに好適な濃度は第1の溶液の約0.1〜約5重量%、好ましくは約0.2〜約3重量%である。
【0073】
本明細書に用いるのに好適な活性物質は、界面活性剤、酵素、ビルダー及び漂白剤のような洗浄プロセスに寄与するいずれかの物質;起泡抑制剤、香料、特に香油類、ビタミン類、抗菌剤、着色保護剤、ケア添加剤、仕上げ剤、特に布地柔軟化、乾燥及び光沢添加剤のような追加の利益を提供する物質が挙げられる。
【0074】
マイクロカプセルは、液体洗剤中に配置される場合に容易に視覚可能となるように着色されるのが好ましい。
【0075】
液滴は既知のいずれかの方法によって形成できる。好ましくは液滴は、ノズルを通してコヒーレントジェット(coherent jet)に第1の溶液を押出し、そのジェットを、第2の溶液へ辿りつく途中に、切断手段によって表面張力により、後に液滴を形成する円筒形のセグメントに切断することによって形成する。好ましい切断手段としては、回転切断ワイヤが挙げられる。液滴を形成するための好適な方法及び装置は、DE4424998及びPCT国際公開特許WO00/48722に記載されている。
【0076】
第2の溶液の体積は、通常、液滴の体積よりも少なくとも10倍、好ましくは少なくとも100倍、より好ましくは少なくとも1,000倍大きく、従って第2の高分子電解質の量は、第1の高分子電解質(polyelctrolyte)よりも十分過剰であるため、第2の溶液中の高分子電解質濃度は重要でない。好ましくは、第2の高分子電解質濃度は、溶液の約0.5重量%〜約5重量%、より好ましくは約0.8重量%〜約2重量%である。第2の溶液のpHは、第2の高分子電解質の溶解のためにpH条件に応じて選択される。液滴の滞留時間は、所望のシェル厚さに応じて調整される。普通は、反応は攪拌条件下で起こる。好ましくは、第2溶液は約1〜約4、より好ましくは約1.5〜約3、さらにより好ましくは約2〜約2.5のpHを有する。
【0077】
本発明の液体洗剤は、組成物の約0.5〜約30重量%、好ましくは約0.7〜約10重量%、より好ましくは約0.8〜約2重量%のマイクロカプセルを含む。本発明の液体洗剤に使用するのに好適な界面活性剤は周知であり、洗剤の特定用途に応じて陰イオン性、非イオン性、両性及び陽イオン性界面活性剤から選択できる。
【0078】
本発明の液体洗剤に使用するのに好適なビルダーとしては、水溶性硬度イオン錯体を形成するビルダー(封鎖性ビルダー)、例えば、シトレート類、及びポリホスフェート類、例えばトリポリリン酸ナトリウム及びトリポリリン酸ナトリウム六水和物、トリポリリン酸カリウム、及びトリポリリン酸のナトリウム及びカリウム混合塩;硬度沈殿物を形成するビルダー(沈殿性ビルダー)、例えばカーボーネート類、例えば炭酸ナトリウムが挙げられる。キレート剤は、有機ホスホネート類、及びアミノホスホネート類の酸形態又は塩形態、アミノカルボキシレート、並びに多官能置換芳香族化合物、及びこれらの混合物から選択できる。また、本明細書に用いるのに好適なものは、脂肪石鹸類(Na又はK水酸化物又はアルカノールアミン類によって中和された脂肪酸類)のような沈殿性ビルダーである。
【0079】
本明細書の洗剤組成物は、1以上の洗剤活性物質又は補助成分をさらに含むことができる。洗剤活性物質は、漂白システム(漂白剤及び漂白活性化剤を含む)、アルカリ性源、酵素などのような従来の洗剤成分から選択されてもよい。洗剤補助剤は、仕上げ剤及びケア剤から選択されてもよい。これらの成分の一部は、マイクロカプセル及び液体洗剤のマトリックスのいずれか又は両方に使用できる。
【0080】
好ましくは、洗剤マトリックスは、透明又は半透明、より好ましくは透明であり、着色されたマイクロカプセルを含有し、清浄な透明又は透けて見えるパッケージに包装される。
【実施例】
【0081】
実施例1
褐藻類からのアルギン酸ナトリウム(ISPからのマヌコール(Manucol)DM−約61/39のMG比、約0.21のGG画分、及び約0.0007ag(448KDa)の分子量を有する)380g及び二酸化チタン(シグマ・アルドリッチ(Sigma Aldrich)製品コードT8141から)40gを9580gの脱イオン水に添加し、混合して溶液を形成した。
【0082】
上記溶液を、1.0mmのノズルを通して5.20g/sの処理量にて押出し、200ミクロンの厚さを有する24のワイヤを含有する回転切断ツール(ゲニアラボ(GeniaLab)からのジェットカッター(JetCutter))を用いて、356rad/s(3400rpm)の切断速度にて切断し、1750〜2250ミクロンの直径を有する球状液滴を形成した。この液滴を、HClでpHを1.5にした1%キトサン溶液(プライメックス(Primex)からのキトクリア(Chitoclear))75リットルを含有する攪拌硬化浴に落とした。
【0083】
15分間の硬化後、マイクロカプセルを濾過によりキトサン溶液から分離し、多量の水で洗浄し、1.0%NaCl溶液中に保存した。
【0084】
実施例2
実施例1の濾過されたマイクロカプセルは、以下に記載されるように調製された洗濯用液体洗剤中で攪拌された。マイクロカプセルは、液体洗剤に均質に懸濁したままであった。
【0085】
実施例3
表Aにて与えられる処方のマイクロカプセルを次の方法に従って製造した:80グラムのポリビニルアルコール((PVA)、クラリアント(Clariant)からのモウイオール(Mowiol)3−83)を500グラムの脱イオン水に添加し、70℃で攪拌して透明な溶液を形成した。実施例A1及びA2の場合は7040g、実施例A3〜A5の場合は6850gの脱イオン水を、この系を希釈するために溶液に添加した。
【0086】
褐藻類からのアルギン酸ナトリウム(実施例A1及びA2の場合はISPからのマヌコール(Manucol)DM340g−約61/39のM:G比、約0.21のGG画分、及び約0.74ag(448KDa)の分子量を有する;実施例A3及びA5の場合はISPからのマヌコール(Manucol)DH530g−約61/39のM:G比、約0.18のGG画分、及び約0.48ag(289KDa)の分子量を有する)、30gの殺菌剤(ソア・アクチサイド(Thor acticide)MBS)、10gの二酸化チタン(シグマ・アルドリッチ(Sigma Aldrich)製品コードT8141)及び前記ポリビニルアルコール水溶液を混合し、溶液を形成した。
【0087】
1000gの香料及び1000gのヒマワリ油(例えば、ASDAヒマワリ油)を5分間予備剪断し、液相を形成した。この混合物をアルギネート混合物に直ちに添加し、不透明の白色液体を形成した。
【0088】
得られた溶液を押出して液滴を形成し、それを実施例1と同様にキトサン(プリメックス(Primex)からのキトクリア(Chitoclear)FG95)溶液(表Aに示されるpHを有する)にて硬化した。
【表1】

【0089】
実施例4
実施例3の濾過されたマイクロカプセルは、以下に記載されるように調製された洗濯用液体洗剤中で攪拌された。マイクロカプセルは、液体洗剤に均質に懸濁したままであった。
【0090】
構造化された液体洗剤マトリックスを、従来の重質液体(HDL)洗剤組成物成分の水性プレミックスと構造剤プレミックスを合わせることによって調製する。これらの2つのプレミックスのそれぞれを次のように調製する:
HDLプレミックス
HDL成分プレミックスを、HDL成分と水を好適な容器にて好適な攪拌下で合わせることによって調製する。得られたプレミックスは、表Iに示される組成を有する。
【表2】

ジエチレントリアミンペンタ(メチルホスホン酸)ナトリウム
【0091】
構造剤プレミックス
構造剤プレミックスは、特定条件下で表IIに示される硬化ヒマシ油及びその他の構造剤プレミックス成分を水と合わせることによって調製される。特に、硬化ヒマシ油以外の表IIの成分を合わせ、得られた混合物を90℃に加熱する。次いで硬化ヒマシ油を添加し、硬化ヒマシ油の全てが乳化されるまで混合物を攪拌下に維持する。完全に乳化した後、混合物を70℃にフラッシュ冷却し、硬化ヒマシ油の全てが再結晶化されるまでこの温度を保つ。この時点で構造剤プレミックスを室温まで除々に冷却させる。得られた構造剤プレミックスは、表IIに示される組成を有する。
【表3】

【0092】
HDL
次の工程として、2.5部の表IIの構造剤プレミックスを、低速攪拌下にて96.5部の表IのHDL成分プレミックスに除々に添加し、構造化洗剤マトリックスを形成する。
【0093】
実施例1の手順に従って形成されたマイクロカプセルを構造化水性液体洗剤組成物マトリックスと合わせる。これは、マイクロカプセルを構造化液体マトリックスに穏やかに攪拌しながら除々に添加することによって達成される。形成された組成物の1重量%を構成するのに十分なマイクロカプセルを添加する。得られた重質液体洗濯洗剤製品は表IIIに示される組成を有する。
【表4】

【0094】
180mLのマイクロカプセル含有液体洗剤を投与ボール内に配置した。4〜4.5Kgの暗色衣類の洗濯物をミーレ・ノボトロニック(Miele Novotronic)W8810内に入れ、30℃で綿用の短いサイクルを使用した。入水の温度を5〜6℃の温度に冷却した。投与ボールを洗濯物のほぼ中央に置いた。水の硬度は4mmol/Lであった。サイクルの終わりに、洗われた衣類を視覚的に検査した。残留物は見つからなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体洗剤組成物に使用するためのマイクロカプセルであって、前記マイクロカプセルが、コアと、ポリマーポリアニオン−ポリカチオン複合体シェルとを有し、前記ポリアニオン成分が、カルシウムの存在下でゲル化可能であり、0.05モル/リットルのカルシウムとゲル化する場合に、約0.5rad/sの角振動数及び25℃で約3.8重量%のポリアニオン濃度にて約150Pa未満の貯蔵弾性率を有する、マイクロカプセル。
【請求項2】
前記ポリアニオンが、少なくとも約1:1のマンヌロン単位とグルロン単位との比(M:G比)を有するアルギネートである、請求項1に記載のマイクロカプセル。
【請求項3】
前記グルロン/グルロン(GG)ブロックの画分が、約0.5未満である、請求項1又は2に記載のマイクロカプセル。
【請求項4】
前記ポリアニオンが、約0.83ag(500KDa)未満の分子量を有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載のマイクロカプセル。
【請求項5】
約0.05重量%未満、好ましくは約0.01重量%未満の顔料を含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載のマイクロカプセル。
【請求項6】
乳化油を含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載のマイクロカプセル。
【請求項7】
液体洗剤組成物に使用するためのマイクロカプセルであって、前記マイクロカプセルが、コアと、ポリマーポリアニオン−ポリカチオン複合体シェルとを有し、前記ポリアニオン成分が、少なくとも約1:1のマンヌロン単位とグルロン単位との重量比(M:G比)を有するアルギネートであるマイクロカプセル。
【請求項8】
前記マイクロカプセルが、約20mN〜約20,000mNの破裂前力に耐久可能である、請求項1〜7のいずれか一項に記載のマイクロカプセル。
【請求項9】
液体洗剤組成物に使用するためのマイクロカプセルを製造する方法であって、前記マイクロカプセルが、コアと、ポリマー高分子電解質複合体シェルとを有し、前記方法が:
a.ポリアニオン成分を含む第1の溶液を形成する工程であって、前記ポリアニオン成分が、カルシウムの存在下でゲル化可能であり、0.05モル/リットルのカルシウムとゲル化する場合に、約0.5rad/sの角振動数及び25℃で約3.8重量%のポリアニオン濃度にて約150Pa未満の貯蔵弾性率を有する工程と、
b.前記第1溶液の液滴を形成する工程と、
c.前記ポリアニオン成分と反応可能なポリマーポリカチオン成分を含む第2の溶液に前記液滴を導入し、前記液滴の表面に複合体を形成する工程と
を含む方法。
【請求項10】
前記第1溶液の前記ポリアニオン濃度が、約2〜約6重量%である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記第2溶液が、約1〜4、好ましくは約1.5〜3、より好ましくは約2〜2.5のpHを有する、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
請求項9〜11のいずれか一項に記載の方法に従って得られる、マイクロカプセル。
【請求項13】
界面活性剤と、請求項1〜8および12のいずれか一項に記載のマイクロカプセルとを含む、液体洗剤組成物。
【請求項14】
約0.01〜約30重量%のキレート剤/ビルダーを含む、請求項13に記載の液体洗剤組成物。
【請求項15】
液体キャリア中に視覚的に区別可能なマイクロカプセルの懸濁液を含む洗濯用液体洗剤であって、前記マイクロカプセルが、本明細書にて定義されるストレス条件下での洗浄試験に従って1未満、好ましくは0.6未満、より好ましくは0.2未満の残存指数を有する、洗濯用液体洗剤。
【請求項16】
請求項1〜8のいずれか一項に記載のマイクロカプセル又は請求項9、10および11のいずれか一項に記載の方法によって製造されるマイクロカプセルを1以上含む、請求項15に記載の洗濯用液体洗剤。
【請求項17】
汚れた物品又は基材を洗浄する方法であって、請求項13〜16のいずれか一項に記載の液体洗剤組成物を含む水溶液と前記物品又は基材を接触させる工程を含む方法。
【請求項18】
硬水条件下で請求項16に記載の洗濯機にて洗濯物を洗浄する方法であって、少なくとも2mmol/Lの硬度を有する水と前記洗濯物を接触させる工程、及び請求項13〜16のいずれか一項に記載の液体洗剤組成物を添加する工程を含む方法。
【請求項19】
硬水条件下にて洗濯機で清浄な洗濯物に目に見える残留物を残さずに洗濯物を洗浄する方法であって、少なくとも2mmol/Lの硬度を有する水と前記洗濯物を接触させる工程と、コアとポリマーポリアニオン−ポリカチオン複合体シェルとを有するマイクロカプセルを液体洗剤の約0.3重量%〜3重量%で含む液体洗剤を添加する工程とを含み、ここで前記液体洗剤がその洗浄溶液に約10〜約2000ppmのビルダーを提供する方法。

【公表番号】特表2008−510858(P2008−510858A)
【公表日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−528090(P2007−528090)
【出願日】平成17年8月23日(2005.8.23)
【国際出願番号】PCT/US2005/029792
【国際公開番号】WO2006/023856
【国際公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【出願人】(590005058)ザ プロクター アンド ギャンブル カンパニー (2,280)
【Fターム(参考)】