説明

マイクロチップ

【課題】簡単な流路構成であっても、圧力差に依存せずに微細流路内の液体を所定の位置に送液することが可能なマイクロチップを提供する。
【解決手段】微細流路rと、微細流路rを送液された液体を貯留する貯留部139と、
を有するマイクロチップであって、
貯留部139は、貯留部139に対する上流側の微細流路r1と下流側の微細流路r2とを連通し、断面積が上流側の微細流路r1の断面積よりも小さい側道路139s、を備えていることを特徴とするマイクロチップとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は液体を送液する微細流路を有するマイクロチップに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、マイクロマシン技術及び超微細加工技術を駆使することにより、従来の試料調製、化学分析、化学合成などを行うための装置、手段(例えばポンプ、バルブ、流路、センサーなど)を微細化して1チップ上に集積化したシステムが開発されている(例えば特許文献1)。これは、μ−TAS(Micro Total Analysis System)とも呼ばれ、マイクロチップといわれる部材に、検体(例えば、検査を受ける被験者の尿、唾液、血液を処理して抽出したDNA処理した抽出溶液など)と試薬を混合させ、その反応を検出することにより検体の特性を調べる方法である。
【0003】
マイクロチップは、樹脂材料やガラス材料からなる基体に、フォトリソプロセス(パターン像を薬品によってエッチングして溝を作成する方法)や、レーザ光を利用して溝加工を行い、試薬や検体を流すことができる微細な流路と試薬を蓄える貯留部を設けており、さまざまなパターンが提案されている。
【0004】
そして、これらマイクロチップを用いて検体の特性を調べる際は、マイクロポンプなどでマイクロチップ内に収容されている試薬や検体等の液体を流路内へ送液することにより、試薬と検体とを反応させて被検出部に導き検出を行う。被検出部では、例えば光学的な検出方法などによって目的物質の検出が行われる。
【0005】
マイクロチップにおいては、流路内の微量の液体を任意の位置で制御できるようにすることは大変重要なことである。このような課題に対して特許文献2では二つの導管を内壁面が疎水性に形成された細管で連通させた微量液体制御機構が開示されている。そして当該微量液体制御機構では、細管が疎水性で形成されていることにより液体の侵入に対しては抵抗するが気体は容易に通過できるように構成されている。そして二つの導管内の圧力差により一方の導管内において液体を任意の位置に制御するものである。
【特許文献1】特開2004−28589号公報
【特許文献2】特開2000−27813号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献2に開示された微量液体制御機構は、細管の流路抵抗により液体の侵入を防止させるものであり、このような構成においては二つの導管の圧力差が臨界圧力差△Pcを超えてしまうような場合には導管内の液体は細管を通過してしまうために、液体の位置制御を適正に行えないという問題がある。またこのような細管を複数設けた場合には流路構成が複雑になるという問題がある。
【0007】
本発明は上記問題に鑑み、簡単な流路構成であっても、圧力差に依存せずに微細流路内の液体を所定の位置に送液することが可能なマイクロチップを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的は、下記に記載する発明により達成される。
【0009】
(1)微細流路と、
前記微細流路を送液された液体を貯留する貯留部と、
を有するマイクロチップであって、
前記貯留部は、該貯留部に対する上流側の微細流路と該貯留部に対する下流側の微細流路とを連通し、断面積が前記上流側の微細流路の断面積よりも小さい側道路、を備えていることを特徴とするマイクロチップ。
【0010】
(2)前記側道路は、内壁面が撥水性であることを特徴とする(1)に記載のマイクロチップ。
【0011】
(3)前記貯留部に送液される液体は、該液体の上流側から気体を介して下流側への送液圧力を付与されることを特徴とする(1)又は(2)に記載のマイクロチップ。
【0012】
(4)微細流路と、
前記微細流路を送液された液体を貯留する貯留部と、
一方の端部を前記貯留部に対する上流側の微細流路に接続し、他方の端部を前記貯留部に対する下流側の微細流路に接続する前記上流側の微細流路よりも断面積が小さい側道路、
を有することを特徴とするマイクロチップ。
【0013】
(5)前記側道路は、内壁面が撥水性であることを特徴とする(4)に記載のマイクロチップ。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、簡単な流路構成であっても、圧力差に依存せずに微細流路内の液体を所定の位置に送液することが可能なマイクロチップを提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明を実施の形態に基づいて説明するが、本発明は該実施の形態に限られない。
【0016】
[分析システムの装置構成]
図1は、本実施形態に係るマイクロチップを用いるマイクロチップ分析システム8の外観図である。マイクロチップ分析システム8は、マイクロチップ1に予め注入された検体と試薬とを自動的に反応させ、反応結果を自動的に出力する装置である。
【0017】
マイクロチップ分析システム8の筐体82には、マイクロチップ1を装置内部に挿入するための挿入口83、表示部84、メモリカードスロット85、プリント出力口86、操作パネル87、外部入出力端子88が設けられている。
【0018】
検査担当者は、図1の矢印方向にマイクロチップ1を挿入し、操作パネル87を操作して検査を開始させる。マイクロチップ分析システム8の内部では、マイクロチップ1内の反応の検査が自動的に行われ、検査が終了すると表示部84に結果が表示される。検査結果は操作パネル87の操作により、プリント出力口86よりプリントを出力したり、メモリカードスロット85に挿入されたメモリカードに記憶したりすることができる。また、外部入出力端子88から例えばLANケーブルを使って、パソコンなどにデータを保存することができる。検査終了後、検査担当者はマイクロチップ1を挿入口83から取り出す。
【0019】
図2は、本実施形態に係るマイクロチップを用いるマイクロチップ分析システム8の概略斜視図であり、図3は構成図である。図2及び図3においては、マイクロチップが図1に示す挿入口83から挿入され、セットが完了している状態を示している。
【0020】
マイクロチップ分析システム8は、マイクロチップ1に予め注入された検体及び試薬を送液するための駆動液L0を貯留する駆動液タンク70、マイクロチップ1に駆動液L0を供給するためのマイクロポンプ5、マイクロポンプ5とマイクロチップ1とを駆動液L0が漏れないように接続するポンプ接続部6、マイクロチップ1の必要部分を温調する温度調節ユニット3、マイクロチップ1をずれないように温度調節ユニット3及びポンプ接続部6に密着させるためのチップ押圧板2、チップ押圧板2を昇降させるための押圧板駆動部21、マイクロチップ1をマイクロポンプ5に対して精度良く位置決めする規制部材22、マイクロチップ1内の検体と試薬との反応状態等を検出する光検出部4(4a及び4b)、等を備えている。
【0021】
チップ押圧板2は、初期状態においては、図3に示す位置より上方に退避している。これにより、マイクロチップ1は矢印X方向に挿抜可能であり、検査担当者は挿入口83(図1参照)から規制部材22に当接するまでマイクロチップ1を挿入する。その後、チップ押圧板2は、押圧板駆動部21により下降してマイクロチップ1に当接し、マイクロチップ1の下面が温度調節ユニット3及びポンプ接続部6に密着される。
【0022】
温度調節ユニット3は、マイクロチップ1と対向する面にペルチェ素子31及びヒータ32を備え、マイクロチップ1がマイクロチップ分析システム8にセットされたときに、ペルチェ素子31及びヒータ32がマイクロチップ1に密着するようになっている。試薬が収容されている部分をペルチェ素子31で冷却して試薬が変性しないようにしたり、検体と試薬とを合流させて反応させる貯留部139をヒータ32で加熱して反応を促進させたりする。
【0023】
発光部4a及び受光部4bから構成される光検出部4では、例えば水銀ランプからなる発光部4aからの光を特定領域の波長の光を通過させる励起フィルタを介して励起光としてマイクロチップ1に照射し、マイクロチップ1の検出部148に存在する蛍光物質から発せられた蛍光を透過させて当該透過光を受光部4bにより検出する。受光部4bはチップ押圧板2の内部に一体的に設けられている。発光部4a及び受光部4bは、図3に示すマイクロチップ1の検出部148に対向するように設けられている。
【0024】
マイクロポンプ5は、ポンプ室52、ポンプ室52の容積を変化させる圧電素子51、ポンプ室52のマイクロチップ1側に位置する第1絞り流路53、ポンプ室の駆動液タンク70側に位置する第2絞り流路54、等から構成されている。第1絞り流路53及び第2絞り流路54は絞られた狭い流路となっており、また、第1絞り流路53は第2絞り流路54よりも長い流路となっている。
【0025】
駆動液L0を順方向(マイクロチップ1に向かう方向)に送液する場合には、まず、ポンプ室52の容積を急激に減少させるように圧電素子51を駆動する。そうすると、短い絞り流路である第2絞り流路54において乱流が発生し、第2絞り流路54における流路抵抗が長い絞り流路である第1絞り流路53に比べて相対的に大きくなる。これにより、ポンプ室52内の駆動液L0は、第1絞り流路53の方に支配的に押し出され送液される。次に、ポンプ室52の容積を緩やかに増加させるように圧電素子51を駆動する。そうすると、ポンプ室52内の容積増加に伴って駆動液L0が第1絞り流路53及び第2絞り流路54から流れ込む。このとき、第2絞り流路54の方が第1絞り流路53と比べて長さが短いので、第2絞り流路54の方が第1絞り流路53と比べて流路抵抗が小さくなり、ポンプ室52内には第2絞り流路54の方から支配的に駆動液L0が流入する。以上の動作を圧電素子51が繰り返すことにより、駆動液L0が順方向に送液されることになる。
【0026】
一方、駆動液L0を逆方向(駆動液タンク70に向かう方向)に送液する場合には、まず、ポンプ室52の容積を緩やかに減少させるように圧電素子51を駆動する。そうすると、第2絞り流路54の方が第1絞り流路53と比べて長さが短いので、第2絞り流路54の方が第1絞り流路53と比べて流路抵抗が小さくなる。これにより、ポンプ室52内の駆動液L0は、第2絞り流路54の方に支配的に押し出され送液される。次に、ポンプ室52の容積を急激に増加させるように圧電素子51を駆動する。そうすると、ポンプ室52内の容積増加に伴って駆動液L0が第1絞り流路53及び第2絞り流路54から流れ込む。このとき、短い絞り流路である第2絞り流路54において乱流が発生し、第2絞り流路54における流路抵抗が長い絞り流路である第1絞り流路53に比べて相対的に大きくなる。これにより、ポンプ室52内には第1絞り流路53の方から支配的に駆動液L0が流入する。以上の動作を圧電素子51が繰り返すことにより、駆動液L0が逆方向に送液されることになる。また圧電素子51への駆動電圧を変更することにより駆動液L0の送液圧力を変更することが可能である。
【0027】
ポンプ接続部6は、必要なシール性を確保して駆動液の漏出を防止するために、ポリテトラフルオロエチレン、シリコン樹脂などの柔軟性(弾性、形状追随性)をもつ樹脂によって密着面が形成されることが好ましい。このような柔軟性を有する密着面は、例えばマイクロチップの構成基材自体によるものであってもよく、また、ポンプ接続部6における流路開口の周囲に貼着された柔軟性を有する別途の部材によるものであってもよい。
【0028】
[マイクロチップ1の構成]
図4は、本実施形態に係るマイクロチップ1の一例を示すものである。同図においてはシート状の被覆基板が取り外された状態での微細流路r及び貯留部139の主要部の配置を模式的に示している。
【0029】
マイクロチップ1には、撥水性(疎水性ともいう)の基材を用いて、液状の試薬と同じく液状の検体(試料)をマイクロチップ1上で混合・反応させるための微細流路r及び流路エレメントが配設されている。このような基材の材質として、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンビニルアルコール、ポリカーボネート、ポリメチルペンテン、フルオロカーボン、飽和環状ポリオレフィンなどの樹脂が例示される。中でもポリスチレンは、透明性、機械的特性及び成型性に優れて微細加工がしやすく、溝形成基板の形成材料として好ましい。また不図示の被覆基板にも同様に撥水性の基材を用いている。
【0030】
微細流路rはマイクロメーターオーダーで形成されており、例えば、幅wは数十〜数百μm、好ましくは50〜300μmで、高さhは25〜1000μm程度、好ましくは50〜300μmである。
【0031】
gは、マイクロチップ1の一方の面から外部へ解放された上流開口部である。これらの複数の上流開口部gはポンプ接続部6を介してマイクロチップ1をマイクロポンプ5に重ね合わせて接続した際に、マイクロポンプ5の接続面に設けられた流路開口と位置合わせされてマイクロポンプ5に連通される。そして当該上流開口部gから送液を行うための駆動液L0が注入される。
【0032】
i(i1乃至i5)は試薬或いは検体等の液体(以下、単に液体ともいう)を注入する注入孔であり、マイクロチップ1の上方の面から外部へ解放された開口となっている。各注入孔iには上流開口部gを開口した状態で液体を注入する。注入された液体は、近傍の上流開口部gに向かって微細流路を送られることになる。同図に示す本実施形態においては、下流側の注入孔i5から上流側の注入孔i1まで順番に液体を注入する。注入した当該液体は、貯留部139よりも上流側の微細流路r1に貯留させておく。液体注入時には、上流開口部g及び注入孔iが開いており、試薬注入後に注入孔iのみを封止する。そして上流開口部gに連通するマイクロポンプ5から送り込まれる駆動液L0により空気或いは不活性ガス等の気体を間に介して試薬或いは検体等の液体に送液圧力が付与されることにより、当該液体は微細流路r内を送液される。
【0033】
ここで図5乃至図7に基づいて貯留部139の構成について説明する。図5は、図4に示したマイクロチップの貯留部139周辺の拡大図であり、図5(a)は上面図、図5(b)は断面図、図5(c)はA−A断面図である。図6は、貯留部139の下流側出口周辺の拡大図であり、図6(a)は上面図、図6(b)はB−B断面図である。図7は貯留部139の中央断面の斜視図である。
【0034】
図5乃至図7に示すように、貯留部139は、主部139mと側道路139sから構成される。そして側道路139sは上流側の微細流路r1と下流側の微細流路r2に連通部CNで連通している。同図に示す例では貯留部139の主部139mの両脇にそれぞれ一つずつの側道路139sを設けているが、これに限らず片方のみに側道路139sを設けるようにしてもよい。
【0035】
同図に示す実施形態においては、側道路139sと微細流路rとは上面の位置は同じであるが、その高さ(深さ)及び幅を異ならしている。側道路139sは幅が250μm、高さ100μmの矩形形状でありその断面積は25×10-92である。微細流路r1、r2は幅が200μm、高さが250μmの矩形形状であり、その断面積は50×10-92である。つまり側道路139sの断面積は、上流側の微細流路r1よりも断面積が小さくなるように形成されている。なお、側道路139sの断面積を更に狭くして幅250μm、高さ50μmとしてもよい。
【0036】
また不図示の上面に貼り付ける被覆基板、及び側道路139sの内壁面s1、s2は共に撥水性の材質でその表面が形成されている。このように上流側の微細流路r1よりも断面積を小さくし、かつ撥水性の材質で形成していることから微細流路r1に比べて側道路139sの流路抵抗は非常に大きい。つまり側道路139sは、液体はその通過が困難であるが、気体は容易に通過可能としている。
【0037】
貯留部139の主部139mは最も断面積が大きい平坦な底面部において(図5(c)を参照)幅が2000μmで高さが1500μmであり、微細流路rよりも、幅及び高さを共に大きくしている。また貯留部139の容積は、貯留部139に送液される液体の総量よりも、十分大きくしている。なお、貯留部139の主部139mの高さを微細流路r1と同じ高さの250μmとして幅方向のみを広げた形状としてもよい。このようにすることによりマイクロチップ1を単純な形状とすることができる。
【0038】
図8は、微細流路r1に配置させた複数の異なる液体を貯留部139へ送液する手順を説明する図である。
【0039】
図8(a)は初期配置であり、注入孔i1乃至i5からそれぞれ異なる液体L1乃至L5を注入させた状態を示す図である。前述のとおり注入孔iは、液体を注入した後は封止されている。そしてそれぞれの液体Lの間には、空気airを介しているので隣接する液体L間では非接触状態が保たれているので、それぞれの液体は同図に示す初期配置においては混ざり合うことはない。
【0040】
図8(b)は上流開口部gからマイクロポンプ5により駆動液L0を注入させることにより送液している状態を示す図である。駆動液L0の送液圧力により、微細流路r1内に配置させていた液体Lは貯留部139に送液される。送液される液体の先端が貯留部139に侵入した時点では、側道路139sと微細流路r1の連通部CNは、当該液体でふさがれているために、液体の後方にある空気airは側道路139sを通過することはできない。送液される液体の後端が側道路139sと微細流路r1の連通部CNを通過した時点で、前述の連通部は開放されるので当該液体の後方にある空気は液体を追い越して下流側の微細流路r2に方に抜けていく。
【0041】
図8(b)に示す状態では、初期配置で微細流路r1の中間貯留部139側に配置されていた液体L3、L4、L5は貯留部139(主部139m)で混ざり合った状態となっており、図8(c)では全ての液体L(L1乃至L5)が貯留部139で混ざり合った状態となっている。
【0042】
そして、これらの液体Lの間に存在していた空気airは、側道路139sを経由して下流側の微細流路r2に抜けている。また微細流路r1において液体Lは、送液方向の後方に存在していた空気airを介して送液圧力が付与されていたが、貯留部139に到着することにより当該空気airは側道路139sを抜けていくために、液体Lには送液圧力は付与されなくなり、当該液体Lは後方の液体Lが到着するまでは貯留部139で停止することになる。つまり液体Lの間に存在していた空気airを取り除いた状態で貯留部139においてそれぞれの液体Lを合流させることができる。またこのような構成とすることで空気airによる送液圧力が増大しても、その送液圧力に依存せずに液体Lを貯留部139で停止させることが可能であり、更に、駆動液L0が来るまで時間的余裕を持って、マイクロポンプ5を停止させることができる。また、駆動液を用いない送液の場合、駆動液が貯留部139に入ってくることがないため、液体Lは貯留部139で停止したままとなる。この場合、貯留部139を検出部として機能させることにより当該貯留部139での反応を光学的に検出するようにしてもよい。
【0043】
また、貯留部139で停止した液体Lを送液させる場合、図8(d)に示すように、駆動液L0で液体Lを貯留部139から押し出すことができる。駆動液L0は、液体Lと同様に側道路139sを抜けることはできないので、貯留部139の主部139mに送液され、同主部139mに滞留していた液体Lを下流側の微細流路r2に押し出す。押し出された液体Lは検出部148で反応を光学的に検出され、検査工程が終了する。
【0044】
本実施形態によれば、簡単な流路構成であっても、圧力差に依存せずに微細流路内の液体を所定の位置に送液することが可能なマイクロチップを提供することが可能となる。
【0045】
[他の実施形態]
図9は、他の実施形態におけるマイクロチップ1の貯留部139周辺の拡大図である。同図に示した以外の構成は図1乃至図4と同様であり説明を省略する。
【0046】
同図に示す側道路140は貯留部139とは独立した流路を備えており、側道路の一方の端部は分岐部SPで微細流路r1及び貯留部139と接続しており、他方の端部は合流部JCで微細流路r2及び貯留部139と接続している。
【0047】
側道路140は幅が250μm、高さ100μmの矩形形状でありその断面積は25×10-92である。微細流路r1、r2は幅が200μm、高さが250μmの矩形形状であり、その断面積は50×10-92である。つまり側道路140の断面積は、上流側の微細流路r1よりも断面積が小さくなるように形成されている。
【0048】
また側道路140の内壁面は撥水性の材質でその表面が形成されている。このように上流側の微細流路r1よりも断面積を小さくし、かつ撥水性の材質で形成していることから微細流路r1に比べて側道路140の流路抵抗は非常に大きい。つまり液体はその通過が困難であるが、微細流路rを通過する気体のみを通過させることが可能な側道路140としている。
【0049】
このような構成とすることにより、簡単な流路構成であっても、圧力差に依存せずに微細流路内の液体を所定の位置に送液することが可能なマイクロチップを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本実施形態に係るマイクロチップを用いるマイクロチップ分析システム8の外観図である。
【図2】本実施形態に係るマイクロチップを用いるマイクロチップ分析システム8の概略斜視図であり
【図3】本実施形態に係るマイクロチップを用いるマイクロチップ分析システム8の構成図である。
【図4】本実施形態に係るマイクロチップ1の一例を示すものである。
【図5】図5(a)は貯留部139周辺の上面図、図5(b)は貯留部139周辺の断面図、図5(c)は図5(a)におけるA−A断面図である。
【図6】図6(a)は貯留部139の下流側出口周辺の上面図、図6(b)は図6(a)におけるB−B断面図である。
【図7】貯留部139周辺の中央断面の斜視図である。
【図8】微細流路r1に配置させた複数の異なる液体を貯留部139へ送液する手順を説明する図である。
【図9】他の実施形態におけるマイクロチップ1の貯留部139周辺の拡大図である。
【符号の説明】
【0051】
1 マイクロチップ
5 マイクロポンプ
6 ポンプ接続部
g 上流開口部
i 注入孔
JC 合流部
SP 分割部
139 貯留部
139m 主部
139s、140 側道路
148 検出部
160 廃液部
70 駆動液タンク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
微細流路と、
前記微細流路を送液された液体を貯留する貯留部と、
を有するマイクロチップであって、
前記貯留部は、該貯留部に対する上流側の微細流路と該貯留部に対する下流側の微細流路とを連通し、断面積が前記上流側の微細流路の断面積よりも小さい側道路、を備えていることを特徴とするマイクロチップ。
【請求項2】
前記側道路は、内壁面が撥水性であることを特徴とする請求項1に記載のマイクロチップ。
【請求項3】
前記貯留部に送液される液体は、該液体の上流側から気体を介して下流側への送液圧力を付与されることを特徴とする請求項1又は2に記載のマイクロチップ。
【請求項4】
微細流路と、
前記微細流路を送液された液体を貯留する貯留部と、
一方の端部を前記貯留部に対する上流側の微細流路に接続し、他方の端部を前記貯留部に対する下流側の微細流路に接続する前記上流側の微細流路よりも断面積が小さい側道路、
を有することを特徴とするマイクロチップ。
【請求項5】
前記側道路は、内壁面が撥水性であることを特徴とする請求項4に記載のマイクロチップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−150810(P2009−150810A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−329851(P2007−329851)
【出願日】平成19年12月21日(2007.12.21)
【出願人】(303000420)コニカミノルタエムジー株式会社 (2,950)
【Fターム(参考)】