説明

マイクロプレート、マイクロプレートキット、および、マイクロプレートキットの操作方法

【課題】微小なマイクロリアクターを有するマイクブレートにおいて、反応、洗浄などの攪拌、排出、気泡除去などが効率よく、且つ簡便な手段で行え、且つ試薬ロスの少ない、マイクロプレート、マイクロプレートキット、および、マイクロプレートキットの操作方法を提供する。
【解決手段】マイクロリアクターを備えたマイクロプレートであって、マイクロリアクターの内部に、攪拌子が収容されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、生体高分子、化学物質などの溶液同士、または、溶液などの混合、反応、分離・精製、検出を、マイクロリアクター内で行うためのマイクロリアクターを有するマイクロプレート、これらをキット化したマイクロプレートキット、および、マイクロプレートの操作方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、生体高分子や各種化学物質の操作には、各種の流体同士、または、流体とガスなどの混合、反応、分離・精製、検出などの複数の操作工程が必要である。生体高分子の操作においては、元々入手できる原料やサンプルが、非常に少量なケースが多く、必然的に、マイクロリアクターは、小容積のマイクロリアクターが使用されている。
【0003】
また、コンビナトリアルケミストリーなど多数の反応を平行に行う場合も、全体の原料や試薬量を最小化するためには、小容積のマイクロリアクターを使用するのが好ましい。
【0004】
さらに、原料や試薬量を最小化するために、基板内にマイクロ流路を形成し、それぞれの反応を基板内流路で行う、いわゆる「集積化チップ」、または、「ラボ・オン・チップ(LOC)」が、各種提案され、一部実用化されている。
【0005】
この方法は、反応がマイクロ流路内で連続して行え、原料や試薬のロスが少なく、また、微小空間で迅速な分子拡散が可能なために、反応や分離操作効率が高くなるという長所がある。
【0006】
しかしながら、従来使用されているチューブやマイクロプレートに比較すると、反応毎に流路デザインを変える必要があり、作成に時間がかかり、少量用途には非常に高価なものとなってしまうという課題がある。
【0007】
このため、生体高分子の取り扱いにおいては、多数の遠沈管、スピッツ管、テストチューブ、マイクロチューブ、試験管、または、複数の操作工程を、微小マイクロリアクターや微小マイクロリアクターの集積されたマイクロプレート内で、それぞれ個別の工程として、それぞれのマイクロリアクター中で単位操作を行い、単位操作後の溶液を、別のマイクロリアクターに分注させる、いわゆる「バッチ処理方法」が広く採用されている。
【0008】
このようなバッチ処理は、ピペットによる手動操作とともに、各種市販の分注機が使用でき、各種の反応操作に柔軟に対応できるという長所がある。
【0009】
特に、創薬スクリーニングにおいては、多数の創薬候補化合物を、短期間にスクリーニングする、「HTS(High Throughput Screening)」と称する方法が広く採用されて
おり、マイクロリアクターとしては、複数のマイクロリアクターを一枚の板状に集積した、いわゆる「マイクロプレート」が、一般的に使用されている。
【0010】
このような用途マイクロプレートでは、生体分子、原料、試薬などの溶液最小化のために、マイクロプレートの縮小化が図られ、96孔または384孔のものから、現在は、孔数が1536穴、容積5〜25μlのものが普及し始めている。
【0011】
また、96孔、384孔、1536穴のマイクロブレートについては、American Nati
onal Standards Institute から「ANSI/SBS4-2004」として、規格決定されている。
【0012】
これらの板の外形寸法は、127.76×85.48mmと規格決定されている。これらの規格では、孔数が増大するにつれ、孔径も必然的に小さくなり、96孔では、孔間ピッは、9mm、384孔では、4.5mm、1536孔では、2.25mmである。また、さらにピッチは、小さい9600孔のものも紹介され始めている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、このようなチューブなどのマイクロリアクター、または、マイクロプレートにおいては、容積量またはマイクロリアクター径が小さくなると、壁面の影響が、相対的に増し、内部の流体が、壁面との界面張力やメニスカスで移動しがたくなり、反応や洗浄などのための攪拌が、困難となる。さらに、排出も困難になる。
【0014】
また、容積が小さいために、気泡が入ると、壁面との界面張力により、壁面に付着した気泡除去が困難となり、気泡があると、反応が均一に進まなくなる。
【0015】
現在普及中の1536孔マイクロプレートでは、このような壁面との界面張力やメニスカスの影響が懸念されており、反応、攪拌、排出が、不十分で、困難になり始めている。
【0016】
また、試薬量を少なくするためには、さらに孔数の多いマイクロプレート採用が望まれているが、前記したような課題によって、微小マイクロプレートへの移行は進んでいないのが実情である。
【0017】
また、希少試薬が壁に付着して、減耗するのを防ぐためには、必要溶液とほぼ同等のマイクロリアクターを用意して、出来るだけ目いっぱい溶液を充填して、マイクロリアクター上部に空きを作らないことが望ましい。
【0018】
これらのマイクロリアクターまたはマイクロプレートの攪拌は、ボルテックス攪拌法により、容器を上下左右に振ることで、容器内部の溶液を移動させる方法が採用されている。
【0019】
しかしながら、目一杯溶液を充填した溶液収納マイクロリアクター、またはマイクロプレートを用いて、ボルテックス攪拌法によって攪拌する方法では、溶液は殆ど移動せずに、攪拌効率が極めて低くなってしまう。
【0020】
また、マイクロリアクター内溶液が、界面活性剤添加溶液などの場合で、マイクロリアクター上部に空間のある状態は、ボルテックス攪拌法では、泡立ちが起こり、泡立ちにより反応が阻害されるという課題がある。
【0021】
また、ピペットチップおよび分注機による分注操作では、反応ロットと反応操作単位数との概略積で分注操作が増えるために、スループットが上がらないという課題が存在する。
また、分注のための分注機によるピペットチップに吸い上げた溶液は、一部がピペットチップの容器壁に付着残留し、ロスとなる。微量の試薬で、反応回数が多い場合には、このようなロスは無視できないものとなる。
【0022】
本発明は、このような現状に鑑み、微小なマイクロリアクターを有するマイクロプレートにおいて、反応、洗浄などの攪拌、排出、気泡除去などが効率よく、且つ簡便な手段で
行え、且つ試薬ロスの少ない、マイクロプレート、マイクロプレートキット、および、マイクロプレートキットの操作方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明は、前述したような従来技術における課題及び目的を達成するために発明されたものであって、本発明のマイクロプレートは、
マイクロリアクターを備えたマイクロプレートであって、
前記マイクロリアクターの内部に、攪拌子が収容されていることを特徴とする。
【0024】
また、本発明のマイクロプレートは、前記マイクロリアクターの最小内径が、3mm未満であることを特徴とする。
【0025】
このように構成することによって、マイクロリアクターにおいて、特に、径が3mm未満のマイクロリアクターにおいて、攪拌子を外部エネルギーにより攪拌することで、マイクロリアクターの内部に収容した溶液の壁面との界面張力による壁面付着や壁面に付着した気泡を破壊除去し、マイクロリアクター内の溶液を移動攪拌し、反応効率を高めることが可能となり、さらに、マイクロリアクター内の溶液を排出する際も、残留溶液を最小化させることができる。
【0026】
また、本発明のマイクロプレートは、前記マイクロリアクターの底部が開放状態であって、前記底部にフィルターを備えることを特徴とする。
【0027】
このようにマイクロリアクターの底部が開放状態であって、底部にフィルターを備えることで、常圧下では、マイクロリアクター内部の溶液は、そのフィルターとの界面張力により、底部から漏出することがなく、さらに、マイクロリアクター内部の溶液の排出の際には、攪拌子にて攪拌しながら、マイクロリアクター内部を加圧することで、溶液を底部から、溶液の残留を最小化して排出することが可能となる。
【0028】
また、本発明のマイクロプレートは、前記マイクロリアクターの内部に、粒子が収容されていることを特徴とする。
【0029】
このように、マイクロリアクターの内部にフィルター径よりも大きい径の粒子を入れることで、粒子に、例えば、プローブやリガンドを結合して、溶液内の特定物質との固液反応、固液分離洗浄を行うことが可能となる。
【0030】
さらに、これらの粒子は、攪拌子の攪拌により、マイクロリアクター内を移動して、より効率の良い反応、洗浄が可能となる。
【0031】
また、本発明のマイクロプレートは、
前記マイクロリアクターが、複数個備えられており、
前記マイクロリアクターの底部に設けられたフィルターと接するとともに、その内部に、攪拌子が収容された共通流路が形成されており、
前記共通流路とマイクロプレートの外部とを連通する接続流路が形成されていることを特徴とする。
【0032】
このように、接続流路を介して、マイクロプレートの外部とを連通する共通流路が、マイクロリアクターの底部に設けられていることによって、これらの流路を通して、各マイクロプレートに共通の溶液を、共通流路から単一の操作で投入することが可能となる。
【0033】
その際、共通流路を、攪拌子で攪拌しながら、各マイクロリアクターに単一操作で溶液
を投入することで、フィルター上下面に付着する気泡を除去することができるとともに、各溶液に均一量と均一濃度の溶液を投入することができる。
【0034】
また、これらのマイクロリアクターの溶液を外部に接続する流路を減圧にして、単一操作で排出することができる。その際、排出に際して、攪拌子を使用することで、フィルター下面に付着した気泡により、特定のマイクロリアクターの溶液の排出が妨げられるのを防止することができる。
【0035】
このように、マイクロプレートの外部とを連通する接続流路と、それに連通する共通流路を介して、マイクロリアクター内に溶液を投入、排出することにより、従来の個別マイクロリアクターごとに分注する方法に比べて、高スループット処理が可能となる。
【0036】
また、本発明のマイクロプレートは、前記マイクロプレートのマイクロリアクターの表面に、針貫通可能なフィルムが張設されていることを特徴とする。
【0037】
このように、マイクロプレートのマイクロリアクターの表面に、針貫通可能なフィルムが張設されているので、各マイクロリアクターへの、それぞれ異なる溶液の投入が、針付きシリンジにて、フィルムを貫通して投入することが可能であり、フィルムによって、溶液の揮発を最小化することができるとともに、マイクロリアクター内に収容した溶液、攪拌子や粒子が、マイクロリアクター内部から、漏出または飛び出すのを防ぐことができる。
【0038】
また、フィルムによって、マイクロプレートが、共通流路と接続する外部接続流路以外は、密封されるために、マイクロプレートの内部全体を、加圧または減圧することができる。
【0039】
また、溶液投入のために、フィルムに針を刺し、溶液投入した後、針を抜くと、針穴が残り気体の漏れが生じるおそれがあるが、針の径を細くして、加圧力を漏れ気体以上とすることで、実質的に密封系を維持することができる。
【0040】
また、本発明のマイクロプレートキットは、
前述のいずれかに記載のマイクロプレートを備え、
前記マイクロリアクター内に収容された攪拌子、または、前記共通流路内に収容された攪拌子が、磁性体からなり、
前記マイクロプレートを挟んで上下の少なくともいずれか一方側に、移動可能な磁場発生機構を備えることを特徴とする。
【0041】
このように構成することによって、これらの磁場発生機構を移動させることにより、磁性体からなる攪拌子を、移動攪拌させることができる。
【0042】
また、本発明のマイクロプレートキットの操作方法は、
前述のマイクロプレートキットを用いて、
前記磁場発生機構の磁場を移動させて、前記マイクロリアクター内に収容された攪拌子、もしくは、前記共通流路内に収容された攪拌子、または、これらの両方の攪拌子を移動させることによって、
前記マイクロリアクターに収容された溶液、もしくは、共通流路に収容された溶液、または、これらの両方に収容された溶液を攪拌させることを特徴とする。
【0043】
このように、マイクロプレートの外部に設けた外部の磁場を移動させることによって、攪拌子を移動させることができるとともに、複数のマイクロリアクターであっても、同時
平行的に攪拌を行うことが可能であり、高スループットが可能となる。
【0044】
また、本発明のマイクロプレートキットの操作方法は、
マイクロリアクターを備えたマイクロプレートであって、
前記マイクロリアクターの内部に、攪拌子が収容され、
前記マイクロリアクターの底部が開放状態であって、前記底部にフィルターを備え、
前記マイクロリアクターが、複数個備えられており、
前記マイクロリアクターの底部に設けられたフィルターと接するとともに、その内部に、攪拌子が収容された共通流路が形成されており、
前記共通流路とマイクロプレートの外部とを連通する接続流路が形成されているマイクロプレートキットを用いて、
以下の(1)〜(5)の工程から選択した少なくとも3種の組み合わせ工程を行うことを特徴とするマイクロプレートキットの操作方法。
(1)前記マイクロリアクターに、マイクロリアクター上部から、個別溶液を投入する工程、
(2)前記共通流路の内部に収容された溶液を、攪拌子にて攪拌子しながらマイクロリアクター内に浸透させる工程、
(3)前記マイクロリアクターの内部に収容された溶液を、攪拌子にて攪拌する工程、
(4)前記マイクロリアクター上部から、各マイクロリアクター毎に溶液を吸い上げる工程、
(5)前記マイクロリアクターの内部に収容された溶液を、共通流路に排出する工程。
【発明の効果】
【0045】
本発明によれば、マイクロリアクターにおいて、特に、径が3mm未満のマイクロリアクターにおいて、攪拌子を外部エネルギーにより攪拌することで、マイクロリアクターの内部に収容した溶液の壁面との界面張力に伴う溶液の壁面付着、メニスカスや気泡を破壊除去し、マイクロリアクター内の溶液を移動攪拌し、反応効率を高めることが可能となり、さらに、マイクロリアクター内の溶液を排出する際も、残留溶液を最小化させることができる。
【0046】
また、本発明によれば、攪拌子と、マイクロリアクターまたはマイクロプレートの外部に、攪拌子移動手段を設けることで、前記課題を解決する事が可能であり、従来の個別に溶液をマイクロリアクター毎に投入する方法に比べて、シンプルな方法で、スループットの高い操作を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0047】
以下、本発明の実施の形態(実施例)を図面に基づいてより詳細に説明する。
【0048】
(1)本発明のマイクロプレートについて:
【0049】
図1は、本発明のマイクロプレートの実施例の断面図である。
【0050】
図1において、10は全体で本発明のマイクロプレートを示している。
【0051】
本発明のマイクロプレート10は、例えば、生体高分子、化学物質などの溶液同士、または、溶液などの混合、反応、分離・精製、検出を、マイクロリアクター内で行うためのマイクロリアクターを有するマイクロプレートである。
【0052】
すなわち、図1に示したように、本発明のマイクロプレート10は、マイクロプレート本体12を備えており、このマイクロプレート本体12の表面14に開口した状態で、マ
イクロプレート本体12の内部に、1個のマイクロリアクター16が上下方向に形成されている。
マイクロプレート本体12は、必ずしもプレート形状である必要はなく、マイクロチューブとそれを収納するラックの組み合わせでも構わない。
【0053】
そして、このマイクロリアクター16の内部に、溶液18が収容されるとともに、攪拌子20が収容されている。
【0054】
この場合、マイクロリアクター16の最小内径dは、好ましくは、3mm未満、好ましくは、2mm未満、より好ましくは、1mm未満である場合に、より本発明の効果が顕著となる。
【0055】
すなわち、最小内径が、3mm以上の場合は、径が大きいために、メニスカスによる残留溶液が相対的に小さく、問題になるレベルにはならないためである。
【0056】
しかしながら、溶液と容器との親疎水性が近似する場合は、3mm以上の場合でも、メニスカスによる残留溶液が生じる場合があるので、3mm以上の場合であっても、本発明は適用可能である。
【0057】
ここで、マイクロリアクター16の最小径dとは、マイクロリアクター16の断面の最も狭い部分dを言い、図1のような、縦に長いマイクロリアクター16の場合は、水平断面である。
【0058】
また、マイクロプレート10の形状は、どのような形状のものでも、マイクロリアクター16の最小内径dが、3mm未満のものであれば、特に問題はなく、チューブのような縦型、マイクロ流路のような横型など、いずれでも可能である。
【0059】
なお、この場合、マイクロプレート10の径および底面は、メニスカスを最小にするために、円形状、楕円,または、多角型形状であることが好ましい。
【0060】
また、マイクロリアクター16が1つのものから、集積型チューブまたはマイクロクロプレート型、の様に複数のマイクロリアクターの集合のものも可能である。
あるいは、また、多数のマイクロリアクターを1つのラックに収納したものも可能である。
【0061】
例えば、下記の図2、図3に示したような形態のマイクロプレート10とすることができる。
【0062】
すなわち、図2は、本発明の別の実施例のマイクロプレート10の断面図である。
【0063】
この実施例のマイクロプレート10では、マイクロプレート本体12の内部に、1個のマイクロリアクター16が、マイクロプレート本体12の表面14と平行に、流路形状で水平方向に形成されている。
【0064】
このような流路型の場合は、マイクロリアクター16の最小径dとは、垂直断面をあらわしている。
【0065】
また、図3は、本発明の別の実施例のマイクロプレート10の断面図である。
【0066】
この実施例のマイクロプレート10では、マイクロプレート本体12の内部に、複数の
マイクロリアクター16が、マイクロプレート本体12の表面14に開口した状態で、一定間隔離間して、上下方向に形成されている。
【0067】
また、マイクロリアクター16およびマイクロプレート本体12の材質は、一般のチューブまたはマイクロブレートの材質が使用可能であり、例えば、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロビレン、ナイロン、テフロン(登録商標)、ポリメチルペンテン、ポリMMA、ポリアクリロニトリル、ポリシクロオレフィン、フッ素樹脂などの有機ポリマー、またはガラス、金属シリコン、などの無機材料が使用可能である。
【0068】
これらのマイクロリアクター16およびマイクロプレート本体12の材質は、観察や蛍光検出のために、透明であることが好ましく、その点からは、ポリスチレン、ポリプロピレン、ナイロン、ポリメチルペンテン、ポリMMA、ポリシクロオレフィン、ガラスなどが好ましい。
【0069】
これらのマイクロリアクター16の作製は、射出成型による方法がコストからして一般的であり、他にプレス、ブロー成型、などの方法も可能である。また、無機材料を使用する場合、または、容積が小さい場合には、有機または無機プレートに対して、レーザエッチング、ナノプリント、フォトリソグラフィーによる穿孔方法を用いることが可能である。
【0070】
また、マイクロリアクター16の内部に収容される攪拌子20は、攪拌子の最大径がマイクロリアクターの最小径よりも大きい限り、どのような形状ものでも特に限定はなく、一般の、丸型、棒型、十字型、ドーナツ型など各種形状のものが使用可能である。
【0071】
また、マイクロリアクター16の内部に収容される攪拌子20の個数は、特に限定はないが、あまりに多すぎると、攪拌子20同士の衝突などにより、絡み合いなどが予想され、通常は、5個以内である。
【0072】
攪拌子20の材質は、攪拌子20を攪拌するエネルギーにより異なるが、例えば、磁気攪拌の場合には、鉄、ニッケル、クロムなどの常磁性体または強磁性体である必要がある。
【0073】
また、光エネルギーにより攪拌する場合は、軽量にして攪拌しやすくするために、樹脂が好ましい。
【0074】
また、攪拌子20の表面は、溶液中の物質との反応を避けるために、表面が溶液と反応しない材料であることが好ましい。例えば、通常は、テフロン(登録商標)、または、蛋白低吸着剤などによりコーティングされたものが好ましい。
【0075】
このように構成することによって、マイクロリアクター16において、特に、径が3mm未満のマイクロリアクター16において、攪拌子20を外部エネルギーにより攪拌することで、マイクロリアクター16の内部に収容した溶液18の壁面との界面張力に伴う溶液の壁面付着、メニスカスの、または気泡付着を低減し、マイクロリアクター16内の溶液18を移動攪拌し、反応効率を高めることが可能となり、さらに、マイクロリアクター16内の溶液18を排出する際も、残留溶液を最小化させることができる。
【0076】
図4は、本発明の別の実施例のマイクロプレート10の断面図である。
【0077】
この実施例のマイクロプレート10では、図1の実施例のマイクロプレート10と同様に、マイクロプレート本体12の表面14に開口した状態で、マイクロプレート本体12
の内部に、1個のマイクロリアクター16が上下方向に形成されている。
【0078】
そして、このマイクロリアクター16の内部に、溶液18が収容されるとともに、攪拌子20が収容されている。
【0079】
そして、この実施例のマイクロプレート10では、マイクロリアクター16の底部24が貫通し、すなわち、底部24が開放状態であって、底部24にフィルター22を備えている。
【0080】
このようにマイクロリアクター16の底部24が開放状態であって、底部24にフィルター22を備えを備えることで、常圧下では、マイクロリアクター16の内部の溶液18は、そのフィルター22とのフィルターとの界面張力またはメニスカスにより、底部24から漏出することがなく、さらに、マイクロリアクター16の内部の溶液18の排出の際には、攪拌子20にて攪拌しながら、マイクロリアクター16の内部を加圧することで、溶液18を底部24から、溶液の残留を最小化して排出することが可能となる。
【0081】
この場合、フィルター22としては、各種フィルターが使用可能であり、不織布フィルター、織布フィルター、メンブレンフィルターなどが使用可能である。フィルターの中で特に好ましいのは、ストレートの穴の開いたフィルターであり、このようなフィルターとしては、例えば、特願2003−363623号に記載の各種方法により得ることができる。
【0082】
図5は、本発明の別の実施例のマイクロプレート10の断面図である。
【0083】
この実施例のマイクロプレート10では、図3の実施例のマイクロプレート10と同様に、マイクロプレート本体12の内部に、複数のマイクロリアクター16が、マイクロプレート本体12の表面14に開口した状態で、一定間隔離間して、上下方向に形成されている。
【0084】
そして、この実施例のマイクロプレート10では、図4の実施例と同様に、マイクロリアクター16の底部24が貫通し、すなわち、底部24が開放状態であって、底部24にフィルター22を備えている。
【0085】
図6は、本発明の別の実施例のマイクロプレート10の断面図である。
【0086】
この実施例のマイクロプレート10では、図3の実施例のマイクロプレート10と同様に、マイクロプレート本体12の内部に、複数のマイクロリアクター16が、マイクロプレート本体12の表面14に開口した状態で、一定間隔離間して、上下方向に形成されている。
【0087】
そして、この実施例のマイクロプレート10では、図4の実施例と同様に、マイクロリアクター16の底部24が貫通し、すなわち、底部24が開放状態であって、底部24にフィルター22を備えている。
【0088】
この実施例の実施例のマイクロプレート10では、フィルター22が、ストレートなフィルター孔26を備えたフィルターである。
【0089】
図7は、本発明の別の実施例のマイクロプレート10の断面図である。
【0090】
この実施例のマイクロプレート10では、図5の実施例のマイクロプレート10と同様
に、マイクロプレート本体12の内部に、複数のマイクロリアクター16が、マイクロプレート本体12の表面14に開口した状態で、一定間隔離間して、上下方向に形成されている。
【0091】
また、この実施例のマイクロプレート10では、図5の実施例と同様に、マイクロリアクター16の底部24が貫通し、すなわち、底部24が開放状態であって、底部24にフィルター22を備えている。
【0092】
そして、マイクロリアクター16の内部に、フィルター孔径よりも大きい径の粒子28が収容されている。
【0093】
この場合、マイクロリアクター16の内部に収容される粒子28の数は、その用途により異なり、アフィニティー分離などを行う場合には、粒子の表面積にもよるが、通常10万個から500万個、検出を目的とする場合は、1個から500個である。
【0094】
また、このような粒子としては、無機粒子、有機粒子のいずれも使用することができる。
【0095】
すなわち、無機系の粒子としては、金属酸化物粒子、金属硫化物粒子、金属粒子を使用することができる。
【0096】
この場合、金属酸化物粒子として最も好ましいのは、シリカ粒子であり、市販の各種シリカ粒子を使用することができる。
また、有機粒子としてはポリスチレン系粒子、ポリアクリレート系粒子、グリシジル基含有ポリマーなどを使用することができる。
【0097】
この粒子表面を、アミノ基、カルボキシル基、カルボジイミド基、エポキシ基、トシル基、N−サクシイミド基、マレイミド基、チオール基、スルフィド基、ヒドロキシル基、トリメトキキシリル基、ニトリル三酢酸基、ベンゾスルホアミド基、ポリエチレンイミン基等の各種官能基、またはγ−グリシドオキシプロピルトリメトキシシランなどにより表面修飾して、プローブまたはリガンド結合サイトとすることができる。
【0098】
また、プローブまたはリガンドを担持する粒子として、有機粒子を使用する場合、その粒子径は、1μm〜120μmが好ましく、より好ましくは、3μm〜20μmである。
【0099】
すなわち、粒子径が小さい場合には、ハンドリング性に難点が生じ、これらの粒子を捕捉するフィルターの作成が困難となり、また、フィルター孔が小さいために、被検体が目詰まりしやすくなるからである。一方、粒子径が大きい場合には、立体障害のために、反応性が低下するまたは沈降しやすいなどの問題が生じる。
【0100】
さらに、粒子28を磁性体にすることで、攪拌子としての機能を兼ねそなえた構成とすることも可能である。
【0101】
その際の、粒子の大きさは、5μm以上、より好ましくは、10μm以上が好ましい。
【0102】
また、粒子に担持するプローブ、リガンドとしては、例えば、核酸、ポリ核酸、抗原、ホルモン、分子量500〜100万のタンパク質、抗体、糖鎖、多糖類、細胞、アプタマー、ウィルス、酵素、各種のアフィニティー用タグ捕捉物質、ビオチンなどの補酵素、または、特定の生理活性作用を持つか、これを持つ可能性のある化学物質などを使用することができる。
【0103】
また、核酸としては、DNA、c−DNA、オリゴDNA、RNA、mRNA、マイクロRNA、アンチセンスRNA、miRNA、siRNA、stRNAなどが挙げられる。
【0104】
また、分子量50〜100万のタンパク質としては、具体的には、合成ペプチド、膜タンパク質、核内受容体、酵素、アビジン,レクチン、キナーゼ、ホスファターゼ,ホルモン、転写因子、輸送蛋白、サイトカイン、リンフォカイン、抗体、またはルシフェリン、ルシフェラーゼ、エクオリン、蛍光タンパク質などの生物発光機能を有するものなどが挙げられる。
【0105】
脂質としては、具体的には、ホスファチジン酸、ホスファチジルイノシトーマンノシド、ウルシオール、各種のガングリオシドなどが挙げられる。
【0106】
また、アプタマーは、タンパク質、酵素、色素、アミノ酸、ヌクレオチド、成長因子、遺伝子発現調節因子、細胞接着分子、生物個体などと結合能力のある機能性核酸であり、具体的には、トランビンアプタマー、エラスターゼアプタマー、活性化プティンC,C型肝炎ウイルスのNS3プロテアーゼアプタマーなどが挙げられる。
【0107】
アフィニティータグ捕捉物質としては、酵素(GST)基質タグに対するグルタチオン、マルトース結合蛋白タグに対するアミロース、DYKDDDDK配列のFLAGペフチドタグに対する抗FLAGモノクロール抗体、ヒチスジンヘキサマータグに対するニッケル錯体、コバルト錯体、マンガン錯体、チオレドキシンタグに対するPAO(paraaminophenylarsine oxide)、ビオチンリガーゼ蛋白タグ(商品名“アビタグ”AVITAG社)にたいするストレプトアビジン、カルモデュリン結合性ペフチド融合蛋白質タグに対するカルモデュリンなどが挙げられる。
【0108】
このように、マイクロリアクター16の内部に粒子28を入れることで、粒子28に、例えば、プローブやリガンドを結合して、溶液内の特定物質との固液反応、アフィニティー分離を行うことが可能となる。
【0109】
さらに、これらの粒子28は、攪拌子20の攪拌により、マイクロリアクター16内を移動して、より効率の良い反応、洗浄が可能となる。
【0110】
図8は、本発明の別の実施例のマイクロプレート10の断面図である。
【0111】
この実施例のマイクロプレート10では、図7の実施例のマイクロプレート10と同様に、マイクロプレート本体12の内部に、複数のマイクロリアクター16が、マイクロプレート本体12の表面14に開口した状態で、一定間隔離間して、上下方向に形成されている。
【0112】
また、この実施例のマイクロプレート10では、図7の実施例と同様に、マイクロリアクター16の底部24が貫通し、すなわち、底部24が開放状態であって、底部24にフィルター22を備えている。
【0113】
そして、図7の実施例と同様に、マイクロリアクター16の内部に、フィルター径よりも大きい径の粒子28が収容されている。
【0114】
さらに、図8に示したように、マイクロリアクター16の底部24に設けられたフィルター22と接するとともに、その内部に、攪拌子30が収容された共通流路32が形成されている。
【0115】
また、共通流路32とマイクロプレート10の外部とを連通する接続流路34が形成されている。
【0116】
このように、接続流路34を介して、マイクロプレート10の外部とを連通する共通流路32が、マイクロリアクター16の底部24に設けられていることによって、これらの流路32、34を通して、各マイクロプレート10に共通の溶液を、共通流路32から単一の操作で投入することが可能となる。
【0117】
その際、共通流路32を、攪拌子30で攪拌しながら、各マイクロリアクター16に単一操作で溶液18を投入することで、フィルター22の上下面またはは共通流路に付着する気泡を、破壊または除去することができるとともに、各溶液に均一量と均一濃度の溶液を投入することができる。
【0118】
また、これらのマイクロリアクター16の溶液を外部に接続する流路32、34を減圧にして、単一操作で排出することができる。その際、排出に際して、攪拌子30を使用することで、フィルター22の下面またはは共通流路に付着した気泡により、特定のマイクロリアクター16の溶液の排出が妨げられるのを防止することができる。
【0119】
このように、マイクロプレート10の外部とを連通する接続流路34と、それに連通する共通流路32を介して、マイクロリアクター16内に溶液18を投入、排出することにより、従来の個別マイクロリアクターごとに分注する方法に比べて、高スループット処理が可能となる。
【0120】
この場合、共通流路32を形成する方法としては、マイクロリアクター16と別々に作成して接合する方法、一体成型する方法のいずれも可能である。
【0121】
また、共通流路32は、溶液投入、または溶液排出のために、外部に通じる接続流路34を有し、その接続流路34はシリンジポンプ、マイクロポンプなどに接続され、溶液の投入または排出可能とすることができる。
【0122】
これらの共通流路32の高さは、特に限定はないが、デッドボリュームとなる容量を少なくするために、3mm以下、より好ましくは、2mm以下、さらに好ましくは、1mm以下とするのが望ましい。
【0123】
また、共通流路32の形状は、平面図でメニスカス低減のため、丸または多角形が好ましい。
【0124】
図9は、本発明の別の実施例のマイクロプレート10の断面図である。
【0125】
この実施例のマイクロプレート10では、図85の実施例のマイクロプレート10と同様に、マイクロプレート本体12の内部に、複数のマイクロリアクター16が、マイクロプレート本体12の表面14に開口した状態で、一定間隔離間して、上下方向に形成されている。
【0126】
また、この実施例のマイクロプレート10では、図8の実施例と同様に、マイクロリアクター16の底部24が貫通し、すなわち、底部24が開放状態であって、底部24にフィルター22を備えている。
【0127】
そして、図8の実施例と同様に、マイクロリアクター16の内部に、フィルター径より
も大きい径の粒子28が収容されている。
【0128】
さらに、図8の実施例と同様に、マイクロリアクター16の底部24に設けられたフィルター22と接するとともに、その内部に、攪拌子30が収容された共通流路32が形成されている。
【0129】
また、共通流路32とマイクロプレート10の外部とを連通する接続流路34が形成されている。
【0130】
そして、この実施例のマイクロプレート10では、図9に示したように、マイクロプレート10のマイクロリアクター16の表面に、針貫通可能なフィルム36が張設されている。
【0131】
このように、マイクロプレート10のマイクロリアクター16の表面に、針貫通可能なフィルム36が張設されているので、各マイクロリアクター16への、それぞれ異なる溶液18の投入が、図示しない針付きシリンジにて、フィルム36を貫通して投入することが可能である。
【0132】
また、フィルム36によって、溶液の揮発を最小化することができるとともに、マイクロリアクター16内に収容した攪拌子20、粒子、または溶液が、マイクロリアクター内部から飛び出すたり、または漏出するのを防ぐことができる。
【0133】
また、フィルム36によって、マイクロプレート10が、共通流路32と接続する外部接続流路34以外は、密封されるために、マイクロプレート10の内部全体を、加圧または減圧することができる。
【0134】
また、溶液投入のために、フィルム36に針を刺し、溶液投入した後、針を抜くと、針穴が残り気体の漏れが生じるおそれがあるが、針の径を細くして、加圧力を漏れ気体以上とすることで、実質的に密封系を維持することができる。
【0135】
この場合、これらのフィルム36は、このような目的に使用されているヒートシール性のフィルムが使用可能であり、ヒートシール装置により、ヒートシールされた状態で、または必要な時点でヒートシールすることができる。
【0136】
このように予めヒートシールされている場合の溶液の投入方法としては、
・フィルム36に針つきシリンジ、またはピペット先端を貫通させて、マイクロリアクター16ごとに溶液を投入する方法、または、
・共通流路32から溶液を投入する方法、
のいずれも可能である。
【0137】
また、各マイクロリアクターに異なる溶液を投入する場合には、針にて上部からフィルム36を貫通させて投入し、共通溶液の場合は、共通流路32から投入する、などの溶液により使い分けすることが望ましい。
【0138】
(2)本発明のマイクロプレートキットについて:
【0139】
図10は、本発明のマイクロプレートキット1の実施例の断面図である。
【0140】
図10において、符号1は、全体で、本発明のマイクロプレートキットを示している。
【0141】
この実施例のマイクロプレートキット1は、図8に示した実施例のマイクロプレート10と同様な構成のマイクロプレート10を備えている。従って、マイクロプレート10については、同じ構成部材については、同じ参照番号を付して、その詳細な説明は省略する。
【0142】
そして、この実施例のマイクロプレートキット1では、マイクロリアクター16内に収容された攪拌子20、または、共通流路32内に収容された攪拌子30が、磁性体から構成されている。
【0143】
さらに、この実施例のマイクロプレートキット1は、図10に示したように、マイクロプレート10を挟んで上下のいずれか一方側に(この実施例では、上下両側に)、移動可能な磁場発生機構38、40を備えている。
【0144】
このように構成することによって、これらの磁場発生機構38、40を、移動させることにより、磁性体からなる攪拌子20、30を、移動攪拌させることができる。
【0145】
この場合、磁場発生機構38、40は、各種の方法が可能であり、
・永久磁石を機械的方法により移動させる方法、
・複数の磁場回路を有する電磁石回路を設け、電磁石回路パターンを電気的に変えることで磁場パターンを変更する方法、
・電磁パターン変更と機械的移動を組み合わせる方法、
などが使用可能である。
【0146】
すなわち、このようなマイクロプレートキット1を用いて、図11、図12の矢印に示したように、磁場発生機構38、40の磁場を移動させて、マイクロリアクター16内に収容された攪拌子20、もしくは、共通流路32内に収容された攪拌子30、または、これらの両方の攪拌子20、30を移動させればよい。
【0147】
なお、図11は、マイクロプレート10を挟んで上側に、磁場発生機構38を備えた場合、図12は、マイクロプレート10を挟んで下側に、磁場発生機構40を備えた場合について示したが、図10に示したように、マイクロプレート10を挟んで上下側に、磁場発生機構38、40を備える場合も同様である。
【0148】
これによって、マイクロリアクター16に収容された溶液、もしくは、共通流路32に収容された溶液、または、これらの両方に収容された溶液を攪拌させることができる。
このように、マイクロプレート10の外部に設けた外部の磁場を移動させることによって、攪拌子20、30を移動させることができるとともに、複数のマイクロリアクター16であっても、同時平行的に攪拌を行うことが可能であり、高スループットが可能となる。
【0149】
(3)本発明のマイクロプレートキットの操作方法について:
【0150】
本発明のマイクロプレートキットの操作方法は、図10〜図12に示したようなマイクロプレートキット1を用いる。
【0151】
すなわち、マイクロリアクター16を備えたマイクロプレート10であって、マイクロリアクター16の内部に、攪拌子20が収容され、マイクロリアクター16の底部24が開放状態であって、底部24にフィルター22を備えている。
【0152】
そして、マイクロリアクター16が、複数個備えられており、マイクロリアクター16
の底部24に設けられたフィルター22と接するとともに、その内部に、攪拌子30が収容された共通流路32が形成されている。
【0153】
さらに、共通流路32とマイクロプレート10の外部とを連通する接続流路34が形成されているマイクロプレートキット1を用いるものである。
【0154】
そして、本発明のマイクロプレートキットの操作方法は、このようなマイクロプレートキット1を用いて、以下の(1)〜(5)の工程から選択した少なくとも3種の組み合わせ工程を行うものである。すなわち、
(1)マイクロリアクターに、マイクロリアクター上部から、個別溶液を投入する工程、(2)共通流路の内部に収容された溶液を、攪拌子にて攪拌子しながらマイクロリアクター内に浸透させる工程、
(3)マイクロリアクターの内部に収容された溶液を、攪拌子にて攪拌する工程、
(4)マイクロリアクター上部から、各マイクロリアクター毎に溶液を吸い上げる工程、(5)マイクロリアクターの内部に収容された溶液を、共通流路に排出する工程、
から選択した少なくとも3種の組み合わせ工程を行うものである。
【0155】
(A)第1の組み合わせ操作方法について:
【0156】
本発明のマイクロプレートキットの第1の組み合わせ操作方法は、(1)(2)(3)(4)の組み合わせであり、
(1)各マイクロリアクター16毎に異なる溶液を、マイクロリアクター16の上部から投入し(図13(A)の矢印A参照)、
(2)共通流路32に外部接続流路34から溶液を加圧投入し、攪拌子20、30を攪拌しながら、溶液をマイクロリアクター16内の所定高さまで浸透させ(図13(B)の矢印B、C参照)、
(3)各マイクロリアクター16内の2投入溶液を攪拌子20にて攪拌し(図13(C)の矢印D参照)、
(4)各マイクロリアクター16内の混合溶液または反応溶液を、マイクロリアクター16の上部から、個別にシリンジなどで吸い上げる(図13(D)の矢印E参照)、
操作方法である。
【0157】
この本発明のマイクロプレートキットの第1の組み合わせ操作方法は、従来、個別にマイクロリアクター16毎に、溶液を逐次投入していた方法に比較して、共通溶液は共通流路32から一度に投入するために、投入スループットが上がる。
【0158】
また、共通流路32内に収容した攪拌子30によって、攪拌しながら行うために、各マイクロリアクター16に、一定量の溶液が投入される。また、フィルター22を通して浸透する共通溶液を、マイクロリアクター16内の攪拌子20によって攪拌しながら混合するために、非常に効率の良い攪拌が可能となる。
【0159】
さらに、各フィルター22から投入された溶液は、マイクロリアクター16の底面24にフィルター22があるために、フィルター22面との界面張力により、共通流路32には流れ出さない。
【0160】
ただし、時間を経過すると、拡散により移動する可能性があり、反応全体を短時間に処理することが好ましい。
【0161】
なお、このような本発明のマイクロプレートキットの第1の組み合わせ操作方法において、(1)の操作と(2)の操作を逆転することもできる。
【0162】
すなわち、先ず、(2)の操作により、共通溶液を投入し、次いで、(1)の操作により、個別溶液を投入することも可能である。
【0163】
また、このような本発明のマイクロプレートキットの第1の組み合わせ操作方法において、各マイクロリアクター16の上部からの投入、共通流路32からの投入のいずれの方法も、一回の投入に限定する必要はなく、複数回それぞれ異なる溶液を投入することも可能である。
【0164】
(B)第2の組み合わせ操作方法について:
【0165】
本発明のマイクロプレートキットの第2の組み合わせ操作方法は、図10〜図12に示したようなマイクロプレートキット1において、図6に示したような、ストレートなフィルター孔26を有するフィルター22を備え、底部が透明なマイクロプレート10を使用するものである。
【0166】
そして、上記の溶液の操作(1)(2)(3)を行った後(図14(A)〜(C)参照)に、透明なマイクロプレート10の容器底部を通じて、マイクロリアクター16の溶液の状態を光学検出する方法である(図14(D)参照)。
【0167】
このような本発明のマイクロプレートキットの第2の組み合わせ操作方法において、溶液サンプルに、蛍光ラベル付きのものを使用することで、蛍光アッセイを行うことができる。
【0168】
蛍光ラベルつき溶液は、検体に蛍光ラベルしたものを使用する場合は、共通流路32から投入する方が効率的である。一方、サンドイッチアツセイ用途などで、二次抗体に蛍光ラベルするなどの場合は、二次抗体がそれぞれの一次抗体ごとに異なるために、マイクロリアクター16ごとに、マイクロリアクター16の上部からスポットする必要がある。
【0169】
ただし、それぞれに使用する二次抗体を混合して、共通流路32から投入することも可能である。
【0170】
このような本発明のマイクロプレートキットの第2の組み合わせ操作方法によれば、従来のマイクロプレートの上部から光学アッセイする方法に比較して、底部から光学アッセイするために、底部の厚さを薄くすることで、光学測定において、焦点距離を短くすることが可能となり、より感度の良い光学測定が可能となる。
【0171】
(C)第3の組み合わせ操作方法について:
【0172】
本発明のマイクロプレートキットの第3の組み合わせ操作方法は、上記の溶液の操作(1)(2)(3)(5)の組み合わせであり、
(1)各マイクロリアクター16毎に、異なる結合プローブまたはリガンドつき粒子入り溶液を、マイクロリアクター16の上部から投入し(図15(A)の矢印A参照)、
(2)共通流路32に、外部接続流路34から、例えば、バイオ検体などの溶液を投入し、攪拌子20を攪拌しながら、溶液がマイクロリアクター16内の所定高さまで増加するまで加圧投入し(図15(B)の矢印B、C参照)
(3)各マイクロリアクター16内の2つの溶液を攪拌子20にて攪拌し(図15(C)の矢印D参照)、
(5)マイクロリアクター16の内部に収容した溶液を、共通流路32に排出する(図15(D)の矢印E、F参照)、
操作方法である。
【0173】
このような本発明のマイクロプレートキットの第3の組み合わせ操作方法において、操作(5)にて、マイクロリアクター16の内部の溶液を、共通流路32に排出しても、粒子は、フィルター22にトラップされて、マイクロリアクター16内に残留し、溶液のみを共通流路32に排出することが可能である。
【0174】
さらに、上記の操作(2)(3)(5)を、何回か繰り返すことで、共通流路32内の溶液を循環して、個別のマイクロリアクター16に送り込むことが可能となり、反応用共通溶液を効率的に使用することができる、
【0175】
次いで、全溶液を、共通流路32に接続された外部につながる流路34から排出した後に、別の共通溶液、例えば、洗浄液などを共通流路32から投入し、上記操作(2)(3)(5)、および、排出溶液のブレート外排出を行う。
【0176】
このような操作を何回か繰り返すことで、いわゆる「固液分離洗浄」を行うことができる。
【0177】
さらに、別の共通溶液、例えば、剥離液などを共通流路32から投入し、上記操作(2)(3)(4)を行うことで、個別にマイクロリアクター16内に収容した粒子から、剥離溶出できる。
【0178】
このようにして得られた剥離溶液を、各マイクロリアクター16の上部から、シリンジまたはピペットなどにより、個別に取り出すことが可能となる。
【0179】
このような操作によって、共通反応溶液を、繰り返し循環使用することができるとともに、個別のマイクロリアクター16内の個別の粒子剥離液を、個別のマイクロリアクター16から取り出す、両方の操作を行うことが可能となる。
【0180】
従って、従来フィルター付きチューブなどにより、個別に行っていたいわゆる「固液分離操作」において、洗浄液や剥離液などの共通溶液の投入をまとめて行うことができるために、スループットが向上する。
【0181】
また、共通流路の溶液を攪拌しながら、マイクロリアクター16の内部に浸透させることで、各マイクロ流路に均一量の溶液、特に微少溶液投入が可能となる。
【0182】
(D)第4の組み合わせ操作方法について:
【0183】
本発明のマイクロプレートキットの第4の組み合わせ操作方法は、図10〜図12に示したようなマイクロプレートキット1において、図6に示したような、ストレートなフィルター孔26を有するフィルター22を備え、底部が透明なマイクロプレート10を使用するものである。
【0184】
しかも、上記のマイクロプレートキットの第3の組み合わせ操作方法のように、粒子入り溶液を使用した(1)(2)(3)(5)の組み合わせ操作の固液分離操作後(図16(A)〜(D)参照)に、共通流路32の底部を通して、個別のマイクロリアクター16の粒子の状態を、光学検出する方法である(図16(D)参照)。
【0185】
このような本発明のマイクロプレートキットの第4の組み合わせ操作方法により、個別のマイクロリアクター16内の溶液を、共通流路32に排出することで、マイクロリアク
ター16内の粒子が、フィルター22のストレートなフィルター孔26に収容される。
【0186】
これにより、これらのフィルター孔26に収容された粒子の状態を、粒子ごとに個別に光学検出することが可能となる。
【0187】
また、その際に、溶液に蛍光ラベルされた溶液を使用することで、蛍光アッセイが可能となる。
【0188】
蛍光ラベルつき溶液は、検体に蛍光ラベルしたものを使用する場合は、共通流路32から投入する方が効率的である。一方、サンドイッチアツセイ用途などで二次抗体に蛍光ラベルするなどの場合は、二次抗体がそれぞれの一次抗体ごとに異なるために、マイクロリアクターごとにマイクロリアクター上部からスポットする必要がある。
【0189】
ただし、それぞれに使用する二次抗体を混合して、共通流路32から投入することも可能である。
【0190】
以上、本発明の好ましい実施の態様を説明してきたが、本発明はこれに限定されることはなく、本発明の目的を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0191】
【図1】図1は、本発明のマイクロプレートの実施例の断面図である。
【図2】図2は、本発明の別の実施例のマイクロプレート10の断面図である。
【図3】図3は、本発明の別の実施例のマイクロプレート10の断面図である。
【図4】図4は、本発明の別の実施例のマイクロプレート10の断面図である。
【図5】図5は、本発明の別の実施例のマイクロプレート10の断面図である。
【図6】図6は、本発明の別の実施例のマイクロプレート10の断面図である。
【図7】図7は、本発明の別の実施例のマイクロプレート10の断面図である。
【図8】図8は、本発明の別の実施例のマイクロプレート10の断面図である。
【図9】図9は、本発明の別の実施例のマイクロプレート10の断面図である。
【図10】図10は、本発明のマイクロプレートキット1の実施例の断面図である。
【図11】図11は、本発明のマイクロプレートキット1の別の実施例の断面図である。
【図12】図12は、本発明のマイクロプレートキット1の別の実施例の断面図である。
【図13】図13は、本発明のマイクロプレートキットの操作方法の実施例の断面図である。
【図14】図14は、本発明のマイクロプレートキットの操作方法の実施例の断面図である。
【図15】図15は、本発明のマイクロプレートキットの操作方法の実施例の断面図である。
【図16】図16は、本発明のマイクロプレートキットの操作方法の実施例の断面図である。
【符号の説明】
【0192】
1 マイクロプレートキット
10 マイクロプレート
12 マイクロプレート本体
14 表面
16 マイクロリアクター
18 溶液
20 攪拌子
22 フィルター
24 底部
26 フィルター孔
28 粒子
30 攪拌子
32 共通流路
34 接続流路
36 フィルム
38 磁場発生機構
40 磁場発生機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロリアクターを備えたマイクロプレートであって、
前記マイクロリアクターの内部に、攪拌子が収容されていることを特徴とするマイクロプレート。
【請求項2】
前記マイクロリアクターの最小内径が、3mm未満であることを特徴とする請求項1に記載のマイクロプレート。
【請求項3】
前記マイクロリアクターの底部が開放状態であって、前記底部にフィルターを備えることを特徴とする請求項1または2に記載のマイクロプレート。
【請求項4】
前記マイクロリアクターの内部に、粒子が収容されていることを特徴とする請求項3に記載のマイクロプレート。
【請求項5】
前記マイクロリアクターが、複数個備えられており、
前記マイクロリアクターの底部に設けられたフィルターと接するとともに、その内部に、攪拌子が収容された共通流路が形成されており、
前記共通流路とマイクロプレートの外部とを連通する接続流路が形成されていることを特徴とする請求項3または4に記載のマイクロプレート。
【請求項6】
前記マイクロプレートのマイクロリアクターの表面に、針貫通可能なフィルムが張設されていることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載のマイクロプレート。
【請求項7】
請求項1から6のいずれかに記載のマイクロプレートを備え、
前記マイクロリアクター内に収容された攪拌子、または、前記共通流路内に収容された攪拌子が、磁性体からなり、
前記マイクロプレートを挟んで上下の少なくともいずれか一方側に、移動可能な磁場発生機構を備えることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載のマイクロプレートキット。
【請求項8】
請求項7に記載のマイクロプレートキットを用いて、
前記磁場発生機構の磁場を移動させて、前記マイクロリアクター内に収容された攪拌子、もしくは、前記共通流路内に収容された攪拌子、または、これらの両方の攪拌子を移動させることによって、
前記マイクロリアクターに収容された溶液、もしくは、共通流路に収容された溶液、または、これらの両方に収容された溶液を攪拌させることを特徴とするマイクロプレートキットの操作方法。
【請求項9】
マイクロリアクターを備えたマイクロプレートであって、
前記マイクロリアクターの内部に、攪拌子が収容され、
前記マイクロリアクターの底部が開放状態であって、前記底部にフィルターを備え、
前記マイクロリアクターが、複数個備えられており、
前記マイクロリアクターの底部に設けられたフィルターと接するとともに、その内部に、攪拌子が収容された共通流路が形成されており、
前記共通流路とマイクロプレートの外部とを連通する接続流路が形成されているマイクロプレートキットを用いて、
以下の(1)〜(5)の工程から選択した少なくとも3種の組み合わせ工程を行うことを特徴とするマイクロプレートキットの操作方法。
(1)前記マイクロリアクターに、マイクロリアクター上部から、個別溶液を投入する工
程、
(2)前記共通流路の内部に収容された溶液を、攪拌子にて攪拌子しながらマイクロリアクター内に浸透させる工程、
(3)前記マイクロリアクターの内部に収容された溶液を、攪拌子にて攪拌する工程、
(4)前記マイクロリアクター上部から、各マイクロリアクター毎に溶液を吸い上げる工程、
(5)前記マイクロリアクターの内部に収容された溶液を、共通流路に排出する工程。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2007−111654(P2007−111654A)
【公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−307242(P2005−307242)
【出願日】平成17年10月21日(2005.10.21)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】