説明

マイクロホンユニット及びそれを備えた音声入力装置

【課題】音声入力装置の多機能化に対応しやすい小型なマイクロホンユニットを提供する。
【解決手段】マイクロホンユニット1は、第1の振動部13と、第2の振動部15と、第1の振動部13と第2の振動部15とを収容するとともに、第1の音孔23と第2の音孔25とが設けられる筐体10と、を備える。筐体10は、第1の振動部13と第2の振動部15とが搭載される搭載面11aを有する搭載部11を含み、筐体10には、第1の音孔23から入力される音波を第1の振動板134の一方の面に伝達するとともに第2の振動板154の一方の面に伝達する第1の音道41と、第2の音孔25から入力される音波を第2の振動板154の他方の面に伝達する第2の音道42と、が設けられ、第1の振動板134の他方の面は、筐体10の内部に形成される密閉空間に面している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入力音を電気信号に変換して出力する機能を備えたマイクロホンユニットに関する。また、本発明は、そのようなマイクロホンユニットを備える音声入力装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、様々なタイプの音声入力装置(例えば、携帯電話機やトランシーバ等の音声通信機器、音声認証システム等の入力された音声を解析する技術を利用した情報処理システム、録音機器など)に、入力音を電気信号に変換して出力する機能を備えたマイクロホンユニットが適用されている。このようなマイクロホンユニットは、例えば背景雑音を抑圧して近接音のみを収音することが求められることもあれば、近接音のみならず遠方の音も含めて収音することが求められることもある。
【0003】
以下、マイクロホンユニットを備える音声入力装置の一例として携帯電話機を挙げて説明する。携帯電話機を用いて通話を行う場合、通常は、ユーザは携帯電話機を手で持ち、マイク部分に口を近づけて使用する。このため、携帯電話機に備えられるマイクロホンとしては、一般的に背景雑音を抑圧して近接音のみを収音する機能(接話マイクとしての機能)が求められる。このようなマイクロホンとしては、例えば特許文献1に示されるような差動マイクロホンが好適である。
【0004】
しかし、近年の携帯電話機の中には、例えば自動車の運転中等において手で持つことなく通話が行えるようにハンズフリー機能を備えたものや、ムービー録画を行える機能を備えたものがある。ハンズフリー機能を用いて携帯電話機を使用する場合には、ユーザの口の位置は携帯電話機から離れた位置(例えば50cm離れた位置)にあるために、マイクロホンの機能として、近接音のみならず遠方の音も含めて収音する機能を有することが求められる。また、ムービー録画を行う場合も、録画を行う場の雰囲気を録音する必要があるために、マイクロホンの機能として、近接音のみならず遠方の音も含めて収音する機能を有することが求められる。
【0005】
すなわち、近年においては、携帯電話機の多機能化により、携帯電話機に搭載されるマイクロホンユニットは、背景雑音を抑圧して近接音のみを収音する機能と、近接音のみならず遠方の音も含めて収音する機能と、の両方の機能を有することが求められるようになっている。このような要求に対応する構成として、接話マイクとしての機能を備えるマイクロホンユニットと、遠方の音も収音可能な全指向性のマイクロホンユニットと、を別個に携帯電話機に搭載することが挙げられる。
【0006】
また、他の手法として、例えば特許文献2に開示されるマイクロホンユニットを携帯電話機に適用することが挙げられる。特許文献2に開示されるマイクロホンユニットは、音声を入力する2つの開口部のうちの一方を開閉機構によって開放状態と閉塞状態とに切り替えられるようになっている。そして、特許文献2に開示されるマイクロホンユニットは、2つの開口部が開放されている時には両指向性の差動マイクロホンとして機能し、2つの開口部の一方が閉塞されている時には全指向性マイクロホンとして機能する。
【0007】
両指向性の差動マイクロホンとして機能する場合には、背景雑音を抑圧して近接音のみを収音できるために、携帯電話機をユーザが手に持って使用する場合に適している。一方、全指向性マイクロホンとして機能する場合には、遠方の音も収音できるためにハンズフリー機能やムービー録画機能を使用する場合に適している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009−188943号公報
【特許文献2】特開2009−135777号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上述のように接話マイクとしての機能を備えるマイクロホンユニットと、全指向性のマイクロホンユニットと、を別個に搭載する場合、携帯電話機におけるマイクロホンユニットを実装する実装基板の面積を大きくする必要が生じる。近年においては、携帯電話機の小型化の要求が強いため、マイクロホンユニットを実装する実装基板の面積の拡大する必要がある上記対応は望ましくない。
【0010】
また、特許文献2の構成の場合、メカニカルな機構を用いて、両指向性の差動マイクロホンとしての機能を発揮させるか、全指向性マイクロホンとしての機能を発揮させるかを切り替える構成となっている。メカニカルな機構は、落下時の衝撃に弱く、また磨耗し易いために、耐久性の面で懸念がある。
【0011】
以上の点に鑑みて、本発明の目的は、音声入力装置の多機能化に対応しやすい小型なマイクロホンユニットを提供することである。また、本発明の他の目的は、そのようなマイクロホンを備える高品質の音声入力装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために本発明のマイクロホンユニットは、第1の振動板の振動に基づいて音信号を電気信号に変換する第1の振動部と、第2の振動板の振動に基づいて音信号を電気信号に変換する第2の振動部と、前記第1の振動部と前記第2の振動部とを内部に収容するとともに、外部に面する第1の音孔と第2の音孔とが外部に設けられる筐体と、を備え、前記筐体は、前記第1の振動部と前記第2の振動部とが搭載される搭載面を有する搭載部を含み、前記第1の音孔と前記第2の音孔とは、前記搭載部の前記搭載面の裏面に設けられ、前記筐体には、前記第1の音孔から入力される音波を前記第1の振動板の一方の面に伝達するとともに前記第2の振動板の一方の面に伝達する第1の音道と、前記第2の音孔から入力される音波を前記第2の振動板の他方の面に伝達する第2の音道と、が設けられ、前記第1の振動板の他方の面は、前記筐体の内部に形成される密閉空間に面していることを特徴としている。
【0013】
本構成のマイクロホンユニットによれば、第1の振動部を利用して近接音のみならず遠方の音も収音できる全指向性マイクロホンとしての機能が得られると共に、第2の振動部を利用して遠方ノイズ抑圧性能に優れた両指向性の差動マイクロホンとしての機能が得られる。このために、マイクロホンユニットが適用される音声入力装置(例えば携帯電話機等)の多機能化に対応しやすい。具体例を挙げると、例えば携帯電話機の接話用途では両指向性の差動マイクロホンとしての機能を利用することで背景雑音を抑えて、ハンズフリー用途やムービー録画用途では全指向性マイクロホンとしての機能を利用するといった使い方が可能になる。そして、本構成のマイクロホンユニットは2つの機能を兼ね備えるために、2つのマイクロホンユニットを別個に搭載する必要がなく、音声入力装置の大型化を抑制しやすい。
【0014】
上記構成のマイクロホンユニットにおいて、前記筐体は、前記搭載部に被せられて、前記搭載部とともに前記第1の振動部を収容する第1の収容空間と前記第2の振動部を収容する第2の収容空間とを形成する蓋部を更に含み、前記搭載面には、前記第1の振動部に覆い隠される第1の開口部と、前記第2の振動部に覆い隠される第2の開口部と、が設けられ、前記第1の音道は、前記第1の音孔と、前記第1の開口部と、前記第2の開口部と、前記搭載部の内部に形成されて前記第1の音孔と前記第1の開口部及び前記第2の開口部とを連通する中空空間と、を用いて形成され、前記第2の音道は、前記搭載部を貫通する貫通孔である前記第2の音孔と、前記第2の収容空間とを用いて形成されていることとしてもよい。
【0015】
本構成によれば、搭載部内に中空空間を形成して音道を得る構成であり、上記の2つの機能を発揮するマイクロホンユニットの薄型化を図り易い。また、本構成によれば、第1の収容空間によって第1の振動板の他方の面に面する密閉空間(背室)が形成される。この密閉空間は、例えば蓋部に設けられる凹部空間を利用して形成できるために、その容積を大きく確保することが容易である。そして、背室の容積が大きくなると振動部の振動膜が変位しやすくなり、振動部の感度を向上させることができる。したがって、本構成によれば、全指向性マイクロホンとしての機能を得る際に利用される第1の振動部の感度を向上させ、これにより高SNR(Signal to Noise Ratio)のマイクロホンユニットが実現できる。
【0016】
上記構成のマイクロホンユニットにおいて、前記筐体は、前記搭載部に被せられて前記搭載部とともに前記第1の振動板と前記第2の振動部とを収容する収容空間を形成する蓋部を更に含み、前記搭載面には、前記第2の振動部に覆い隠される開口部が設けられ、前記第1の音道は、前記搭載部を貫通する貫通孔である前記第1の音孔と、前記収容空間とを用いて形成され、前記第2の音道は、前記第2の音孔と、前記開口部と、前記搭載部の内部に形成されて前記第2の音孔と前記開口部とを連通する中空空間と、を用いて形成されていることとしてもよい。
【0017】
本構成の場合も、搭載部内に中空空間を形成して音道を得る構成であり、上記の2つの機能を発揮するマイクロホンユニットの薄型化を図り易い。
【0018】
上記構成のマイクロホンユニットにおいて、前記搭載部に搭載されて、前記第1の振動部及び前記第2の振動部で得られた電気信号を処理する電気回路部を備えることとしてもよい。この場合において、前記電気回路部は、前記第1の振動部で得られた電気信号を処理する第1の電気回路部と、前記第2の振動部で得られた電気信号を処理する第2の電気回路部と、からなることとしてもよい。また、前記第1の振動部及び前記第2の振動部で得られた電気信号を1つの電気回路部で処理しても構わない。さらに、電気回路部を前記第1の振動部あるいは前記第2の振動部の上にモノリシックに形成するものであっても構わない。また、前記搭載部に電気回路部を搭載する場合には、前記搭載面に前記電気回路部と電気接続するための電極が形成され、さらに搭載部の表面の電極から前記搭載面の裏面に前記搭載面の電極に電気接続される裏面電極パッドが形成されているのが好ましい。これにより、マイクロホンユニットの音声入力装置への実装が行い易い。
【0019】
上記構成のマイクロホンユニットにおいて、前記搭載部の前記搭載面の裏面には、前記第1の音孔及び前記第2の音孔の各周囲を囲むように、実装基板に実装された場合に気密性を発揮するシーリング部が形成されていることとしてもよい。
【0020】
本構成によれば、マイクロホンユニットを音声入力装置の実装基板に実装する際に、別途、音響リークを防止するためのガスケットを用意する必要がないために便利である。
【0021】
上記目的を達成するために本発明の音声入力装置は、上記構成のマイクロホンユニットを備える音声入力装置であることを特徴としている。
【0022】
本構成によれば、マイクロホンユニットが、遠方の音も収音できる全指向性マイクロホンとしての機能と、遠方ノイズ抑圧性能に優れる両指向性の差動マイクロホンとしての機能とを兼ね備えるために、使用モードに応じてマイクロホン機能を使い分けられる高品質の音声入力装置を提供できる。また、そのような高品質の音声入力装置を小型とできる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、音声入力装置の多機能化に対応しやすい小型なマイクロホンユニットを提供できる。また、本発明によれば、そのようなマイクロホンユニットを備えた高品質の音声入力装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】第1実施形態のマイクロホンユニットの外観構成を示す概略斜視図
【図2】第1実施形態のマイクロホンユニットの構成を示す分解斜視図
【図3】第1実施形態のマイクロホンユニットを図1のA−A位置に沿って切断した場合の概略断面図
【図4】第1実施形態のマイクロホンユニットが備える搭載部の構成を説明するための概略平面図
【図5】第1実施形態のマイクロホンユニットが備える蓋部の構成を説明するための概略平面図
【図6】第1実施形態のマイクロホンユニットが備えるMEMSチップの構成を示す概略断面図
【図7】第1実施形態のマイクロホンユニットの構成を示すブロック図
【図8】第1実施形態のマイクロホンユニットが備える搭載部を上から見た場合の概略平面図で、MEMSチップ及びASICが搭載された状態を示す図
【図9】音圧Pと音源からの距離Rとの関係を示すグラフ
【図10】第1実施形態のマイクロホンユニットの指向特性について説明するための図
【図11】第1実施形態のマイクロホンユニットのマイク特性を説明するためのグラフ
【図12】マイクロホンにおける、背室容積とマイク感度との関係を示すグラフ
【図13】マイク感度と周波数との関係が背室容積によって変化することを説明するためのグラフ
【図14】第1実施形態のマイクロホンユニットの第1変形例を説明するための断面図
【図15】第1実施形態のマイクロホンユニットの第2変形例を説明するための斜視図
【図16】第1実施形態のマイクロホンユニットの第3変形例を説明するためのブロック図
【図17】第1実施形態のマイクロホンユニットの第3変形例の構成を説明するための図で、マイクロホンユニットが備える搭載部を上から見た場合の概略平面図
【図18】第1実施形態のマイクロホンユニットの第3変形例の別の構成を説明するための図で、マイクロホンユニットが備える搭載部を上から見た場合の概略平面図
【図19】第1実施形態のマイクロホンユニットの第4変形例を説明するためのブロック図
【図20】第1実施形態のマイクロホンユニットの第5変形例を説明するためのブロック図
【図21】第2実施形態のマイクロホンユニットの構成を示す概略断面図
【図22】第1実施形態のマイクロホンユニットが適用される携帯電話機の実施形態の概略構成を示す平面図
【図23】図22のB−B位置における概略断面図
【図24】先の出願で開示したマイクロホンユニットが実装された携帯電話機の概略断面図
【図25】本実施形態の音声入力装置の変形例を説明するためのブロック図
【図26】従来のマイクロホンユニットの構成を示す概略断面図
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明が適用されたマイクロホンユニット及び音声入力装置の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0026】
(マイクロホンユニット)
まず、本発明が適用されたマイクロホンユニットの実施形態について説明する。
【0027】
1.第1実施形態のマイクロホンユニット
図1は、第1実施形態のマイクロホンユニットの外観構成を示す概略斜視図で、図1(a)は斜め上から見た図、図1(b)は斜め下から見た図である。図1に示すように、第1実施形態のマイクロホンユニット1は、搭載部11と、搭載部11に被せられる蓋部12とによって形成される略直方体形状の筐体10を備える構成となっている。
【0028】
図2は、第1実施形態のマイクロホンユニット構成を示す分解斜視図である。図3は、第1実施形態のマイクロホンユニットを図1のA−A位置に沿って切断した場合の概略断面図である。図2及び図3に示すように、搭載部11と蓋部12とからなる筐体10の内部には、第1のMEMS(Micro Electro Mechanical System)チップ13と、第1のASIC(Application Specific Integrated Circuit)14と、第2のMEMSチップ15と、第2のASIC16と、が収容されている。以下、各部の詳細について説明する。
【0029】
図4は、第1実施形態のマイクロホンユニットが備える搭載部の構成を説明するための概略平面図で、図4(a)は搭載部を構成する第1平板の上面図、図4(b)は搭載部を構成する第2平板の上面図、図4(c)は搭載部を構成する第3平板の上面図である。なお、図4においては、搭載部11を構成する平板同士の関係についての理解を容易にするために、各図で示す平板よりも上側に配置される平板に設けられる貫通孔を破線で示している。
【0030】
図4に示すように、搭載部11を構成する3つの平板111、112、113はいずれも平面視略矩形状に設けられ、平面視した場合のサイズは略同一のサイズとなっている。図3に示すように、第3平板113、第2平板112、第1平板111の順に下から上へと積み重ねて、平板同士を例えば接着剤や接着シート等を用いて貼り合わせることにより、実施形態の搭載部11が得られる。搭載部11を構成する平板111〜113の材料は特に限定されるものではないが、基板材料として用いられる公知の材料が好適に使用され、例えばFR−4、セラミックス、ポリイミドフィルム等が用いられる。
【0031】
図4(a)に示すように、第1平板111には、その長手方向の一方端寄り(図4では左寄り)であって、その短手方向の一方端寄り(図4では下寄り)に平面視略円形状の第1の貫通孔111aが形成されている。また、第1平板111には、その略中央部から長手方向の他方端側(図4では右側)にややずれた位置に、平面視略円形状の第2の貫通孔111bが形成されている。更に、第1平板111には、その長手方向の他方端寄り(図4では右寄り)に、第1平板111の短手方向(図4では上下方向)が長手方向となる平面視略長方形状(スタジアム形)の第3の貫通孔111cが形成されている。
【0032】
図4(b)に示すように、第2平板112には、その略中央部から長手方向の一方端寄り(図4では左寄り)に亘って、平面視略T字状(正確にはTの字が横を向いている)の第4の貫通孔112aが形成されている。この第4の貫通孔112aは、第1平板111に形成される第1の貫通孔111a及び第2の貫通孔111b(破線で示す)と重なり合うように、その位置が決められている。また、第2平板112には、その長手方向の他方端寄り(図4では右寄り)に、第2平板112の短手方向(図4では上下方向)が長手方向となる平面視略長方形状の第5の貫通孔112bが形成されている。この第5の貫通孔112bは第1平板111の第3の貫通孔111cと同形状且つ同サイズに形成されており、その全体が第3の貫通孔111cに重なり合うように位置が決められている。
【0033】
図4(c)に示すように、第3平板113には、その長手方向の一方端寄り(図4では左寄り)に、第3平板113の短手方向(図4では上下方向)が長手方向となる平面視略長方形状の第6の貫通孔113aが形成されている。この第6の貫通孔113aは、その全体が第2平板112の第4の貫通孔112aと重なり合うように位置が決められている。また、第3平板113には、その長手方向の他方端寄り(図4では右寄り)に、第3平板113の短手方向(図4では上下方向)が長手方向となる平面視略長方形状の第7の貫通孔113bが形成されている。この第7の貫通孔113bは第2平板112の第5の貫通孔112bと同形状且つ同サイズに形成されており、その全体が第5の貫通孔112bに重なり合うように位置が決められている。
【0034】
このように形成される3つの平板111〜113を、上述のように第3平板113、第2平板112、第1平板111の順に下から上へと積み上げて搭載部11を形成すると、搭載部11内には次のような中空空間が形成されることになる。すなわち、図3に示すように、搭載部11の上面11aに設けられる第1の開口部21(第1の貫通孔111aの上面部)及び第2の開口部22(第2の貫通孔111bの上面部)と、搭載部11の下面11bに設けられる第3の開口部23(第6の貫通孔113aの下面部)とを連通する中空空間24が搭載部11の内部に形成される。また、3つの平板111〜113を上述のように積み上げて搭載部11を形成すると、3つの貫通孔111c、112b、113bが連なって、搭載部11を厚み方向に貫く、平面視略長方形状の1つの貫通孔25が形成される(図3参照)。
【0035】
なお、搭載部11には電極パッドや電気配線が形成されているが、これらについては後述する。また、本実施形態では搭載部11を3つの平板を貼り合わせて得る構成としているが、この構成に限定されず、搭載部11は1つの平板で構成しても構わないし、3つとは異なる複数の平板で構成しても構わない。また、搭載部11の形状は板状に限定されない。板状でない搭載部11を複数の部材で構成する場合には、搭載部11を構成する部材の中に平板ではない部材が含まれて良い。更に、搭載部11に形成される開口部21、22、23、中空空間24、及び貫通孔25の形状は本実施形態の構成に限定されず、適宜変更可能である。
【0036】
図5は、第1実施形態のマイクロホンユニットが備える蓋部の構成を説明するための概略平面図で、図5(a)は蓋部の第1構成例を示し、図5(b)は蓋部の第2構成例を示している。なお、図5は、蓋部12を下から見た場合の図である。
【0037】
蓋部12は、その外形が略直方体形状に設けられる(図1〜図3参照)。蓋部12の長手方向(図5の左右方向)及び短手方向(図5の上下方向)の長さは、蓋部12を搭載部11に被せて筐体10を構成した際に、筐体10の側面部が略面一となるように調整されている。蓋部12を構成する材料については、例えばLCP(Liquid Crystal Polymer;液晶ポリマ)やPPS(polyphenylene sulfide;ポリフェニレンスルファイド)等の樹脂とすることもできる。ここで、樹脂に導電性を持たせるため、ステンレス等の金属フィラーやカーボンを混入しても構わない。また、FR−4等、セラミックス等の基板材料としても構わない。
【0038】
図5に示すように、蓋部12は仕切り部12aで仕切られた2つの凹部12b、12cを有する。このため、蓋部12を搭載部11に被せることにより、互いに独立した2つの空間121、122(図3参照)が得られる。この2つの空間121、122は、後述のように、それぞれMEMSチップ及びASICを収容する空間として用いられるために、以下では、空間121を第1の収容空間121、空間122を第2の収容空間122と記載する。
【0039】
蓋部12に設ける凹部12b、12cは、図5(a)のようにいずれも平面視略矩形状(略直方体形状)としても良い。ただし、搭載部11に蓋部12を被せた際に音道として使用される(この点は後述する)第2の収容空間122を形成する凹部12cについては、図5(b)のように、平面視略T字状に形成するのが好ましい。
【0040】
これにより、第2の収容空間122について、音の入り口となる部分(ここでは貫通孔25とつながる部分)の開口面積を広く確保しつつ、第2の収容空間122全体の容積が小さくなるように構成でき、第2の収容空間122が持つ音響的な共振周波数を高周波数側に設定することが可能となる。この場合、第2の収容空間122に収容される第2のMEMSチップ15(図3参照)を用いたマイク特性を良好なものとできる(高周波数側において適切にノイズを抑圧できる)。
【0041】
ここで、共振周波数について、補足説明する。一般的に、第2の収容空間122と、これに繋がる音の入り口が存在するモデルを考えた場合、モデル固有の音響的な共振周波数を持つ。この共振周波数はヘルムホルツ共振と呼ばれるものである。このモデルでは、定性的には、音の入り口の面積Sが大きくなるほど、及び/又は、第2の収容空間122の体積Vが小さくなるほど、共振周波数は高くなる。逆に、音の入り口の面積Sが小さくなるほど、及び/又は、第2の収容空間122の体積Vが大きくなるほど、共振周波数は低くなる。共振周波数が低くなり、音声周波数帯域(〜10kHz)に近接してくると、マイクロホンの周波数特性、感度特性に悪影響を与える。したがって、共振周波数はできるだけ高く設定することが望ましい。
【0042】
上記において、第2の収容空間122を形成する凹部12cについて、平面視略T字状としたが、この形状に限定されるものではなく、MEMSチップ及びASICの配置に応じて、第2の収容空間122の体積Vが最小となるように設計することが望ましい。なお、搭載部11を構成するときに、3つの平板のうちの第2平板112について、平面視略T字状の貫通孔112aを形成したのも、同様の理由による。音の入り口となる部分(第6の貫通孔113aとつながる部分)の開口面積を広く確保しつつ、中空空間24の容積を小さくして、共振周波数を高く設定するようにしている。
【0043】
図2及び図3に示すように、マイクロホンユニット1においては、搭載部11に第1のMEMSチップ13と第2のMEMSチップ15との2つのMEMSチップが搭載される。この2つのMEMSチップ13、15は、いずれもシリコンチップからなって、その構成は同一である。このため、第1のMEMSチップ13の場合を例に、図6を参照しながら、マイクロホンユニット1が備えるMEMSチップの構成を説明する。なお、図6は、第1実施形態のマイクロホンユニットが備えるMEMSチップの構成を示す概略断面図である。また、図6において、括弧で示した符号は第2のMEMSチップ15に対応する符号である。また、MEMSチップは本発明の振動部の実施形態である。
【0044】
図6に示すように、第1のMEMSチップ13は、絶縁性の第1のベース基板131と、第1の固定電極132と、第1の絶縁層133と、第1の振動板134と、を有する。
【0045】
第1のベース基板131には、その中央部に平面視略円形状の貫通孔131aが形成されている。第1の固定電極132は第1のベース基板131の上に配置され、この第1の固定電極132には複数の小径の貫通孔132aが形成されている。第1の絶縁層133は第1の固定電極132の上に配置され、第1のベース基板131と同様に、その中央部に平面視略円形状の貫通孔133aが形成されている。第1の絶縁層133の上に配置される第1の振動板134は、音圧を受けて振動(図6において上下方向に振動)する薄膜で、導電性を有して電極の一端を形成している。第1の絶縁層133の存在によって間隔Gpをあけて互いに略平行となるように対向配置される、第1の固定電極132と第1の振動板134とはコンデンサを形成している。
【0046】
なお、第1のベース基板131に形成される貫通孔131a、第1の固定電極132に形成される複数の貫通孔132a、及び第1の絶縁層133に形成される貫通孔133aの存在により、第1の振動板134には、上からだけではなく、下からも音波が到達するようになっている。
【0047】
このようにコンデンサ型のマイクロホンとして構成される第1のMEMSチップ13においては、音波の到来により第1の振動板134が振動すると、第1の振動板134と第1の固定電極132との間の静電容量が変化する。この結果、第1のMEMSチップ13に入射した音波(音信号)を電気信号として取り出せる。同様に、第2のベース基板151と、第2の固定電極152と、第2の絶縁層153と、第2の振動板154と、を備える第2のMEMSチップ15も、入射した音波(音信号)を電気信号として取り出せる。すなわち、第1のMEMSチップ13及び第2のMEMSチップ15は、音信号を電気信号に変換する機能を有する。
【0048】
なお、MEMSチップ13、15の構成は、本実施形態の構成に限定されるものではなく、適宜、その構成を変更しても構わない。例えば、本実施形態では振動板134、154の方が固定電極132、152よりも上となっているが、これとは逆の関係(振動板が下で、固定電極が上となる関係)となるように構成しても構わない。
【0049】
第1のASIC14は、第1のMEMSチップ13の静電容量の変化(第1の振動板134の振動に由来する)に基づいて取り出される電気信号を増幅処理する集積回路である。第2のASIC16は、第2のMEMSチップ15の静電容量の変化(第2の振動板154の振動に由来する)に基づいて取り出される電気信号を増幅処理する集積回路である。なお、ASICは本発明の電気回路部の実施形態である。
【0050】
図7に示すように、第1のASIC14は、第1のMEMSチップ13にバイアス電圧を印加するチャージポンプ回路141を備える。チャージポンプ回路141は、電源電圧VDD(例えば1.5〜3V程度)を昇圧(例えば6〜10V程度)して、第1のMEMSチップ13にバイアス電圧を印加する。また、第1のASIC14は、第1のMEMSチップ13における静電容量の変化を検出するアンプ回路142を備える。アンプ回路142で増幅された電気信号は第1のASIC14から出力される(OUT1)。同様に、第2のASIC16も第2のMEMSチップ15にバイアス電圧を印加するチャージポンプ回路161と、静電容量の変化を検出して増幅された電気信号を出力する(OUT2)アンプ回路162を備える。なお、図7は、第1実施形態のマイクロホンユニットの構成を示すブロック図である。
【0051】
ここで、主に図8を参照して、マイクロホンユニット1における、2つのMEMSチップ13、15及び2つのASIC14、16の位置関係及び電気的な接続関係について説明しておく。なお、図8は、第1実施形態のマイクロホンユニットが備える搭載部を上から(搭載面側から)見た場合の概略平面図で、MEMSチップ及びASICが搭載された状態を示す図である。
【0052】
2つのMEMSチップ13、15は、振動板134、154が搭載部11の搭載面(上面)11aに対して略平行となる姿勢(図3参照)で搭載部11に搭載される。そして、図8に示すように、搭載部11の長手方向の一方端寄り(図8では左寄り)において、第1のMEMSチップ13と第1のASIC14とが短手方向に並んだ状態で搭載される。また、搭載部11の略中央部から長手方向の他方端側(図8では右側)にややずれた位置には第2のMEMSチップ15が搭載される。また、搭載部11には、第2のMEMSチップ15を基準にして、長手方向の他方端側(図8では右側)に第2のASIC16が搭載される。
【0053】
なお、第1のMEMSチップ13は、搭載部11の搭載面(上面)11aに形成される第1の開口部21(図2及び図3参照)を覆うように、搭載部11に搭載されている。また、第2のMEMSチップ15は、搭載部11の上面11aに形成される第2の開口部22(図2及び図3参照)を覆うように、搭載部11に搭載されている。
【0054】
また、2つのMEMSチップ13、15及び2つのASIC14、16の配置の仕方は本実施形態の構成に限定される趣旨ではなく、適宜変更可能である。例えば、MEMSチップとASICとで構成される各組について、いずれもMEMSチップとASICとが長手方向に配列される構成としたり、短手方向に配列される構成としたりしてもよい。
【0055】
2つのMEMSチップ13、15及び2つのASIC14、16は、搭載部11にダイボンディング及びワイヤボンディングにより実装されている。詳細には、第1のMEMSチップ13及び第2のMEMSチップ15は、図示しないダイボンド材(例えばエポキシ樹脂系やシリコーン樹脂系の接着剤等)によって、それらの底面と搭載部11の上面11aとの間に隙間ができないように、搭載部11の上面11aに接合されている。このように接合することにより、搭載部11の上面11aとMEMSチップ13、15の底面との間にできる隙間から音が漏れ込むという事態が発生しないようになっている。また、図8に示すように、第1のMEMSチップ13は第1のASIC14に、第2のMEMSチップ15は第2のASIC16に、各々、ワイヤ17(好ましくは金線)によって電気的に接続されている。
【0056】
また、2つのASIC14、16はいずれも、図示しないダイボンド材によって搭載部11の搭載面(上面)11aと対向する底面が、搭載部11の上面11aに接合されている。図8に示すように、第1のASIC14は、ワイヤ17によって搭載部11の上面11aに形成される複数の電極端子18a、18b、18cのそれぞれと電気的に接続されている。電極端子18aは電源電圧(VDD)入力用の電源用端子で、電極端子18bは第1のASIC14のアンプ回路142で増幅処理された電気信号を出力する第1の出力端子で、電極端子18cはグランド接続用のGND端子である。
【0057】
同様に、第2のASIC16は、ワイヤ17によって搭載部11の上面11aに形成される複数の電極端子19a、19b、19cのそれぞれと電気的に接続されている。電極端子19aは電源電圧(VDD)入力用の電源用端子で、電極端子19bは第2のASIC16のアンプ回路162で増幅処理された電気信号を出力する第2の出力端子で、電極端子19cはグランド接続用のGND端子である。
【0058】
搭載部11の搭載面11aの裏面(搭載部11の下面)11bには、図1(b)や図3に示すように外部接続用電極パッド20が形成されている。外部接続用電極パッド20には、電源用電極パッド20a、第1の出力用電極パッド20b、第2の出力用電極パッド20c、GND用電極パッド20d、及びシーリング用電極パッド20eが含まれる。
【0059】
搭載部11の上面11aに設けられる電源端子18a及び19aは搭載部11に形成される図示しない配線(貫通配線含む)を介して電源用電極パッド20aに電気的に接続される。搭載部11の上面11aに設けられる第1の出力端子18bは搭載部11に形成される図示しない配線(貫通配線含む)を介して第1の出力用電極パッド20bに電気的に接続される。搭載部11の上面11aに設けられる第2の出力端子19bは搭載部11に形成される図示しない配線(貫通配線含む)を介して第2の出力用電極パッド20cに電気的に接続される。搭載部11の上面11aに設けられるGND端子18c及び19cは搭載部11に形成される図示しない配線(貫通配線含む)を介してGND用電極パッド20dに電気的に接続される。貫通配線については基板製造で一般的に使用されるスルーホールビアにより形成が可能である。
【0060】
なお、シーリング用電極パッド20eは、マイクロホンユニット1を携帯電話機等の音声入力装置の実装基板に実装する場合に気密性を保つために用いられるものであり、その詳細は後述する。
【0061】
また、本実施形態においては、2つのMEMSチップ13、15及び2つのASIC14、16がワイヤボンディング実装される構成としたが、2つのMEMSチップ13、15及び2つのASIC14、16はフリップチップ実装しても勿論構わない。この場合、MEMSチップ13、15およびASIC14、16の下面に電極を形成し、これに対応する電極パッドを搭載部11の上面に配置し、これらの結線は搭載部11上に形成された配線パターンにより行う。
【0062】
2つのMEMSチップ13、15及び2つのASIC14、16を搭載した搭載部11(本実施形態では基板の貼り合わせによって構成されており基板部と表現してもよい)の上に、蓋部12を気密封止するように接合(例えば接着剤や接着シートが使用される)すると、筐体10内に第1のMEMSチップ13と、第1のASIC14と、第2のMEMSチップ15と、第2のASIC16と、を備えるマイクロホンユニット1が得られる。なお、マイクロホンユニット1においては、図3に示すように、第1の収容空間121に第1のMEMSチップ13及び第1のAISC14が収容され、第2の収容空間122に第2のMEMSチップ15及び第2のASIC16が収容される。
【0063】
このマイクロホンユニット1においては、図3に示すように、外部から第3の開口部23を介して入力された音波は、中空空間24及び第1の開口部21を通って第1の振動板134の下面に到達するとともに、中空空間24及び第2の開口部22を通って第2の振動板154の下面に到達する。また、外部から貫通孔25を介して入力された音波は、第2の収容空間122を通って第2の振動板154の上面に到達する。なお、第3の開口部23及び貫通孔25は筐体10内に音波を入力するために使用されるものであるため、以下では、第3の開口部23を第1の音孔23、貫通孔25を第2の音孔25と表現する。
【0064】
以上のことから、マイクロホンユニット1には、第1の音孔23から入力される音波を第1の振動板134の一方の面(下面)に伝達するとともに、第2の振動板154の一方の面(下面)に伝達する第1の音道41と、第2の音孔25から入力される音波を第2の振動板154の他方の面(上面)に伝達する第2の音道42と、が設けられている、と言える。また、マイクロホンユニット1においては、第1の振動板134の他方の面(上面)には外部から音波が入力されないようになっており、音響リークのない密閉空間(背室)が形成されている。
【0065】
なお、マイクロホンユニット1に設けられる第1の音孔23と第2の音孔25との間隔(中心間距離)は、3mm以上10mm以下とするのが好ましく、4mm以上6mm以下とするのがより好ましい。2つの音孔23、25の間隔が広すぎると、それぞれの音孔23、25から入力されて第2の振動板154に到達する音波の位相差が大きくなってマイク特性が低下(ノイズ抑圧性能が低下)するため、このような事態を抑制する趣旨である。また、2つの音孔23、25の間隔が狭すぎると、第2の振動板154の上面と下面に加わる音圧の差が小さくなって第2の振動板154の振幅が小さくなり、第2のASIC16から出力される電気信号のSNR(Signal to Noise Ratio)が悪くなるため、このような事態を抑制する趣旨である。
【0066】
また、広い周波数域で高いノイズ抑圧効果を得るために、音が第1の音孔23から第1の音道41(図3参照)を通って第2の振動板154へと至る音の伝播距離と、音が第2の音孔25から第2の音道42(図3参照)を通って第2の振動板154へと至る音の伝播距離とはほぼ等しくなるように設計するのが好ましい。
【0067】
また、マイクロホンユニット1では、筐体10に設ける第1の音孔23及び第2の音孔25が長孔形状となるように構成しているが、この構成に限定されず、例えば平面視略円形状の孔等としても構わない。ただし、本構成のように、長孔形状とすることにより、例えばマイクロホンユニット1の長手方向(図3の左右方向が該当)の長さが大きくなるのを抑制してパッケージサイズを小さくしつつ、音孔の断面積を大きくできるので好ましい。音孔の断面積を大きくすることによる効果については、すでに説明した通りである。音孔の断面積が大きくなるほど、共振周波数が高くすることができるため、マイクロホンとして広帯域に渡り平坦な性能を得ることができる。
【0068】
また、第1のMEMSチップ13における静電容量の変化を検出するアンプ回路142のアンプゲインと、第2のMEMSチップ15における静電容量の変化を検出するアンプ回路162のアンプゲインとは、異なるゲインに設定してよい。第2のMEMSチップ15の第2の振動板154は、両面(上面及び下面)に加わる音圧差により振動するため、その振動振幅は、第1のMEMSチップ13の第1の振動板134の振動振幅よりも小さくなる。このため、例えば第2のASIC16のアンプ回路162のアンプゲインを、第1のASIC14のアンプ回路142のアンプゲインよりも大きくしても構わない。より具体的には、2つの音孔23、25の中心間距離が5mm程度である場合には、第2のASIC16のアンプ回路162のアンプゲインは、第1のASIC14のアンプ回路142のアンプゲインよりも6〜14dB程度高い値に設定することが好ましい。これにより、2つのアンプ回路142、162からの出力信号振幅をほぼ等しくすることができるため、ユーザが両アンプからの出力を選択して切り替えたときに大きな出力振幅変化が生じるのを抑えることができる。
【0069】
次に、第1実施形態のマイクロホンユニット1の作用効果について説明する。
【0070】
マイクロホンユニット1の外部で音が生じると、第1の音孔23から入力された音波が第1の音道41によって第1の振動板134の下面に到達し、第1の振動板134が振動する。これにより、第1のMEMSチップ13において静電容量の変化が生じる。第1のMEMSチップ13の静電容量の変化に基づいて取り出された電気信号は、第1のASIC14のアンプ回路142によって増幅処理されて、最終的に第1の出力用電極パッド20bから出力される(以上、図3及び図7参照)。
【0071】
また、マイクロホンユニット1の外部で音が生じると、第1の音孔23から入力された音波が第1の音道41によって第2の振動板154の下面に到達すると共に、第2の音孔25から入力された音波が第2の音道42によって第2の振動板154の上面に到達する。このために、第2の振動板154は、その上面に加わる音圧と下面に加わる音圧との音圧差によって振動する。これにより、第2のMEMSチップ15において静電容量の変化が生じる。第2のMEMSチップ15の静電容量の変化に基づいて取り出された電気信号は、第2のASIC16のアンプ回路162によって増幅処理されて、最終的に第2の出力用電極パッド20cから出力される(以上、図3及び図7参照)。
【0072】
以上のように、マイクロホニンユニット1においては、第1のMEMSチップ13を用いて得られる信号と、第2のMEMSチップ15を用いて得られる信号とが、別々に外部へと出力されるようになっている。ところで、マイクロホンユニット1は、第1のMEMSチップ13のみを利用する場合と、第2のMEMSチップ15のみを利用する場合とで、異なった性質を示す。これについて、以下説明する。
【0073】
説明するに先立って、音波の性質について説明しておく。図9は、音圧Pと音源からの距離Rとの関係を示すグラフである。図9に示すように、音波は、空気等の媒質中を進行するにつれて減衰し、音圧(音波の強度・振幅)が低下する。音圧は、音源からの距離に反比例し、音圧Pと距離Rとの関係は、以下の式(1)のように表せる。なお、式(1)におけるkは比例定数である。
P=k/R (1)
【0074】
図9及び式(1)から明らかなように、音圧は音源に近い位置では急激に減衰(グラフの左側)し、音源から離れるほどなだらかに減衰(グラフの右側)する。すなわち、音源からの距離がΔdだけ異なる2つの位置(R1とR2、R3とR4)に伝達される音圧は、音源からの距離が小さいR1からR2においては大きく減衰する(P1−P2)が、音源からの距離が大きいR3からR4においてはあまり減衰しない(P3−P4)。
【0075】
図10は、第1実施形態のマイクロホンユニットの指向特性について説明するための図で、図10(a)は第1のMEMSチップ13側を利用する場合の指向特性を説明するための図、図10(b)は第2のMEMSチップ15側を利用する場合の指向特性を説明するための図である。なお、図10においては、マイクロホンユニット1の姿勢は図3に示すのと同姿勢を想定している。
【0076】
音源から第1の振動板134までの距離が一定であれば、音源がどの方向にあっても第1の振動板134に加わる音圧は一定となる。すなわち、第1のMEMSチップ13側を利用する場合、図10(a)に示すように、マイクロホンユニット1は、あらゆる方向から入射される音波を均等に受ける全指向特性を示す。
【0077】
一方、第2のMEMSチップ15側を利用する場合、マイクロホンユニット1は、全指向性特性を示さず、図10(b)に示すように両指向特性を示す。音源から第2の振動板154までの距離が一定であれば、音源が0°又は180°の方向にある時に第2の振動板154に加わる音圧が最大となる。これは、音波が第1の音孔23から第2の振動板154の下面に至る距離と、音波が第2の音孔25から第2の振動板154の上面へと至る距離との差が最も大きくなるからである。
【0078】
これに対し、音源が90°又は270°の方向にある時に第2の振動板154に加わる音圧が最小(0)になる。これは、音波が第1の音孔23から第2の振動板154の下面に至る距離と、音波が第2の音孔25から第2の振動板154の上面へと至る距離との差がほぼ0となるからである。すなわち、第2のMEMSチップ15側を利用する場合、マイクロホンユニット1は、0°及び180°の方向から入射される音波に対して感度が高く、90°及び270°の方向から入射される音波に対して感度が低い特性(両指向性)を示す。
【0079】
図11は、第1実施形態のマイクロホンユニットのマイク特性を説明するためのグラフで、横軸は音源からの距離Rを対数軸で表現したもの、縦軸はマイクロホンユニットの振動板に加わる音圧レベル(dB)を示す。なお、図11において、Aは第1のMEMSチップ13側を利用する場合のマイクロホンユニット1のマイク特性を示し、Bは第2のMEMSチップ15側を利用する場合のマイクロホンユニット1のマイク特性を示す。
【0080】
第1のMEMSチップ13では、第1の振動板134は一方の面(下面)に加わる音圧によって振動するが、第2のMEMSチップ15では、第2の振動板154は両面(上面及び下面)に加わる音圧の差によって振動する。距離減衰特性は、第1のMEMSチップ13側を利用する場合、音圧レベルは1/Rで減衰するが、第2のMEMSチップ15側を利用する場合には、第1のMEMSチップ13特性を距離Rで微分特性した特性となり、音圧レベルは1/R2で減衰するような特性となる。このために、図11に示すように、第1のMEMSチップ13側を利用する場合に比べて第2のMEMSチップ15側を利用する場合には、音源からの距離に対する振動振幅の低下が急となり、距離減衰が大きくなる。
【0081】
換言すると、第1のMEMSチップ13側を利用する場合、第2のMEMSチップ15側を利用する場合に比べて、マイクロホンユニット1は、マイクロホンユニット1から遠く離れた位置に音源がある遠距離音を収音する機能に優れる。一方、第2のMEMSチップ15側を利用する場合には、マイクロホンユニット1は、マイクロホンユニット1の近傍で発生する目的音を効率よく収音し、背景雑音(上記目的音でない音を指している)を除去する機能に優れる。
【0082】
後者について、更に説明する。マイクロホンユニット1の近傍で発生する上記目的音の音圧は、第1の音孔23と第2の音孔25との間で大きく減衰し、第2の振動板154の上面に伝達される音圧と、第2の振動板152の下面に伝達される音圧とは大きな差が生じる。一方、背景雑音は、上記目的の音に比べて音源が遠い位置にあるために、第1の音孔23と第2の音孔25との間ではほとんど減衰せず、第2の振動板154の上面に伝達される音圧と、第2の振動板154の下面に伝達される音圧との音圧差は非常に小さくなる。なお、ここでは、音源から第1の音孔23までの距離と、音源から第2の音孔25までの距離とが異なる場合を前提としている。
【0083】
第2の振動板154にて受音される背景雑音の音圧差は非常に小さいために、背景雑音の音圧は第2の振動板154にてほぼ打ち消される。これに対して、第2の振動板154にて受音される上記目的音の音圧差は大きいために、上記目的音の音圧は第2の振動板154で打ち消されない。このため、第2の振動板154の振動によって得られた信号は、背景雑音が除去された上記目的音の信号であると見なせる。このため、第2のMEMSチップ15側を利用する場合には、マイクロホンユニット1は、その近傍で発生する目的音について背景雑音を除去して収音する機能に優れることになる。
【0084】
上述のように、マイクロホンユニット1においては、第1のMEMSチップ13から取り出される信号と、第2のMEMSチップ15から取り出される信号とを、別々に処理(増幅処理)して、別々に外部に出力するようになっている。このため、このマイクロホンユニット1が適用される音声入力装置において、いずれかのMEMSチップ13、15から出力される信号を近接音源の収音あるいは遠方音源の収音のいずれかの目的に応じて適宜選択して使うようにすれば、音声入力装置の多機能に対応できる。
【0085】
具体例として、マイクロホンユニット1が携帯電話機(音声入力装置の一例)に適用される場合を挙げて説明する。携帯電話機の通話時には、通常は、ユーザはマイクロホンユニット1近傍に口を近づけて話す。このために、携帯電話機の通話時の機能としては、背景雑音を除去して目的音のみを収音できることが望まれる。このため、例えば通話時には、マイクロホニンユニット1から出力される信号のうち、第2のMEMSチップ15から取り出される信号を使用するようにすればよい。
【0086】
上述のように、最近の携帯電話機は、ハンズフリー機能やムービー録画機能を備える。このようなモードで使用する場合は、マイクロホンユニット1から離れた遠方の音を収音できる必要がある。このために、例えば、携帯電話機のハンズフリー機能やムービー録画機能を用いる場合には、マイクロホニンユニット1から出力される信号のうち、第1のMEMSチップ13から取り出される信号を使用するようにすればよい。ここで、遠方の音は近接音に対して相対的に入力音圧が低くなるため、高いSNRが要求される。
【0087】
以上のように、本実施形態のマイクロホンユニット1は、遠方ノイズ抑圧性能に優れた両指向特性の差動マイクロホンとしての機能(ニアフィールド収音機能)と、マイクロホンユニット1から離れた位置に音源がある遠距離音を収音可能な全指向性マイクロホンとしての機能(ファーフィールド収音機能)と、を兼ね備える構成となっている。このために、本実施形態のマイクロホンユニット1によれば、マイクロホンユニットが適用される音声入力装置の多機能化に対応しやすい。
【0088】
本実施形態のマイクロホンユニット1においては、第1の振動板134への音道と、第2の振動板154への音道を一部共通化すること、および筐体のスペースを共用することでパッケージの小型化を図っている。具体的には、接話マイクのみの機能を有する図26に示すような従来マイクロホンZにおいては、第1の音孔Z3と、第2の音孔Z4(いずれも搭載部Z1の下面側に形成される)との間は一定の距離(例えば5mm)が物理的に必要である。このため、第1の音孔Z3の上部において蓋部Z2に音響的に使用されない無駄な領域が発生する。本実施形態のマイクロホンユニット1では、この領域に第1の収容空間121を設け、第1のMEMSチップ13と、第1のASIC14 を配置して有効利用することで、マイクロホンユニットの小型化を実現している。なお、図26において、符号Z5はMEMSチップ、符号Z6はASICである。
【0089】
また、本実施形態のマイクロホンユニット1は上述の2つの機能を兼ね備えるために、従来のように、互いに異なる機能を有する2つのマイクロホンユニットを別個に搭載する必要がない。このため、多機能の音声入力装置を製造にするにあたって、使用部材の低減とマイクロホンを実装するための実装面積の低減(音声入力装置の大型化の抑制)を図れる。
【0090】
また、本実施形態のマイクロホンユニット1においては、第1の振動板134の上面に面する密閉空間(背室)を蓋部12に形成される凹部12bを利用して得る構成であるために、背室の容積を大きくしやすい。これは、マイクロホンのSNR向上に貢献する。
【0091】
図12は、マイクロホンにおける、背室容積とマイク感度との関係を示すグラフである。図12は、背室容積が大きくなるほどマイク感度が向上し、背室容積が小さくなると急激に感度が低下することを示している。小型のマイクロホンを扱う場合、背室の容積を十分に確保することは難しく、背室容積に対する感度変化の大きい領域で設計することが多い。こうした場合には、少しでも背室容積を大きくすることでマイク感度が格段に向上することがわかる。
【0092】
また、図13は、マイク感度と周波数との関係が背室容積によって変化することを説明するためのグラフである。図13から、背室容積が大きくなるほどマイク感度が向上すること、および背室容積が小さい場合には低周波数域においてマイク感度の減衰が発生することがわかる。上記の特性は、振動板の持つバネ係数と収容空間の空気が持つバネ係数のバランスにより決まる。上述のように、第1実施形態のマイクロホンユニット1においては、第1の振動板134の上面に面する背室容積を大きく確保することが容易であり、マイク感度の向上を図り易い。このため、第1のMEMSチップ13を用いてマイクロホンユニット1から離れた位置に音源がある遠距離音を収音する場合に、マイクロホンユニット1から出力される信号について、高SNR化が図れる。
【0093】
また、本実施形態のマイクロホンユニット1においては、蓋部12はLCP、PPS等の樹脂材、FR−4等のガラスエポキシ材、セラミックス材以外にも、アルミ、真鍮、鉄、銅などの導電性を有する金属材料で構成することも可能である、金属部を搭載部11あるいはユーザ基板のGND部と接続することで電磁シールドの効果を持たせることができる。また、樹脂材、ガラスエポキシ材、セラミックス材のような絶縁材料であっても表面に導電性メッキ処理を施すことによっても金属と同様の電磁シールドの効果を持たせることが可能である。具体的には、蓋部12の上部と側部の外壁面に導電性メッキ(金属メッキ)を施し、搭載部11あるいはユーザ基板のGND部と接続することで電磁シールドの効果を持たせることが可能である。
【0094】
マイクロホンユニットを薄型化するためには、各構成部品の厚みを薄くする必要があるが、樹脂材、ガラスエポキシ材は0.2mm以下の厚みになると強度的に非常に弱くなり、壁面が外部音圧によって外壁が振動してマイク本来の収音機能に悪影響を与える等の問題が発生する。蓋部12の外壁面に導電性の金属膜を形成することにより、蓋部12の機械的強度を高めて外部応力に対する耐性を高めることができ、また、不要な振動を抑えることでマイク本来の収音機能を発揮することができる。
【0095】
ここで、第1実施形態のマイクロホンユニット1の変形例を示しておく。
【0096】
図14は、第1実施形態のマイクロホンユニットの第1変形例を説明するための断面図である。なお、図14は図3と同様の断面図である。マイクロホンユニット1の第1変形例では、筐体10を構成する搭載部11内に設けられる音道の内壁面と、蓋部12の内壁と、にコーティング層43が形成されている。
【0097】
例えば搭載部11や蓋部12の材料としてFR4等の基板材料を使用した場合、その切断面(加工面)から繊維状のダストが発生しやすい。例えば、このようなダストがMEMEチップ13、15の固定電極132、152に設けられた貫通孔132a、152a(図6参照)から電極間内部に侵入すると、固定電極132、152と振動板134、154との間が詰まってしまい、MEMSチップ13、15が正しく機能しなくなるといった問題が発生する。この点、第1変形例のようにコーティング層43を施すと、微小なダストの発生を防止して、前記問題点を解消することができる。
【0098】
コーティング層43は基板製造で多く用いられるメッキ処理技術を利用して得てもよく、より具体的には例えばCuメッキ処理、あるいはCu+Niメッキ処理等によってコーティング層43を得てもよい。また、コーティング層43は露光現像可能なレジスト材料をコーティング処理することによって得てもよい。また、コーティング層43は複数層で構成してもよく、例えば、Cuメッキ処理後に、更にレジスト材料をコーティング処理することによって得てもよい。マイクロホンユニット1には、第1の音孔23及び第2の音孔25の周囲にシーリング用電極パッド20eが形成されている(図1(b)等参照)。この構成では、マイクロホンユニット1を携帯電話機等の音声入力装置に実装する場合に、第1の音孔23及び第2の音孔25内に半田が流れ込んで、音道が狭小化したり、塞いでしまう可能性がある。これを防ぐためにCuメッキ上にレジスト等の半田をはじく材料をコーディングし、半田の侵入を阻止する方法が有効である。
【0099】
なお、図14に示す第1変形例の構成において、搭載部11及び蓋部12に設けられるコーティング層43(具体例としてCuメッキ)を固定電位(GNDあるいは電源)に接続するようにしてもよい。搭載部11に設けられるコーティング層43により、MEMSチップ13、15の下方からの外部電磁界に対する耐性を向上させることができる。また、蓋部12に設けられるコーティング層43により、MEMSチップ13、15の上方から到来する外部電磁界に対する耐性を向上させることができる。これらにより、MEMSチップ13、15の上下の両側から電磁シールドすることが可能になり、外部電磁界から到来する耐性を大幅に向上させる(外部電磁界ノイズの混入を防止する)ことが可能になる。
【0100】
また、第1変形例では、搭載部11及び蓋部12にコーティング層43を設ける構成としているが、この構成に限らず、例えば搭載部11にのみ(すなわち、搭載部11内に設けられる音道の壁面にのみ)コーティング層43を設ける構成等としてもよい。
【0101】
図15は、第1実施形態のマイクロホンユニットの第2変形例を説明するための斜視図である。マイクロホンユニット1の第2変形例では、マイクロホンユニット1を構成する筐体10(搭載部11と蓋部12とからなる)を覆うようにシールドカバー44が設けられた構成となっている。
【0102】
導電材料(金属)で構成されるシールドカバー44は、略箱形状に設けられて蓋部12側から筐体10を覆うように被せられ、固定電位(GND)に接続されている。シールドカバー44はかしめることによって筐体10に固定されており、シールドカバー44にはかしめ領域44aが設けられている。このように筐体10をシールドカバー44で覆うことによって、外部電磁界に対する耐性を向上する(外部電磁界ノイズの混入を防止する)ことが可能である。金属の厚みは50〜200μm程度が適当である。本変形例においては、金属のプレートでマイク筐体全体を覆う構造となるため、高い電磁シールド効果が得られる。
【0103】
図16は、第1実施形態のマイクロホンユニットの第3変形例を説明するためのブロック図である。マイクロホンユニット1の第3変形例では、第1の収容空間121(図3参照)に収容される第1のASIC14と、第2の収容空間122(図3参照)に収容される第2のASIC16とが集約されて、ASICの数が1つとされている(スペース削減効果を有する)。
【0104】
このときの搭載部11へのMEMSチップおよびASICの配置の一例を図17に示す。図17は、第1実施形態のマイクロホンユニットの第3変形例の構成を説明するための図で、マイクロホンユニットが備える搭載部を上から見た場合の概略平面図である。図17では、理解を容易にするために、収容空間121、122も併せて示している。第1のMEMSチップ13とASIC45とは第1の収容空間121に配置され、第2のMEMSチップ15は第2の収容空間122に配置されている。この構成では、ASIC45とMEMSチップ15とをワイヤで直接接続することができないため、第2のMEMSチップ15から引き出されたワイヤを搭載部11上の電極端子19dに接続し、ASIC45から引き出されたワイヤを搭載部11上の電極端子18dに接続し、電極端子18dと電極端子19dとの間は搭載部11に形成された配線パターンPW(点線で示す)で結線すれば良い。なお、ASIC45は第2の収容空間122に配置してもよい。
【0105】
また、MEMSチップおよびASICの別の配置例を図18に示す。図18は、第1実施形態のマイクロホンユニットの第3変形例の別の構成を説明するための図で、マイクロホンユニットが備える搭載部を上から見た場合の概略平面図である。図18では、図17同様に、収容空間121、122も併せて示している。第1のMEMSチップ13とASIC45とは第1の収容空間121に配置され、第2のMEMSチップ15は第2の収容空間122に配置されている。この構成では、ASIC45とMEMSチップ15との電気的な接続をワイヤによって直接接続することができないため、第1のMEMSチップ13、第2のMEMSチップ15、およびASIC14の全てを搭載部11にフリップチップ実装する形態をとっている。チップの裏面には電極パッドを設けられており、搭載部11側にはチップの電極パッドに対向するように電極が設けられており、双方を半田等により接合する。搭載部11にはこれらの電極を結線するための配線パターンPW(点線で示す)が設けている。
【0106】
ASIC45は、第1のMEMSチップ13及び第2のMEMSチップ15にバイアス電圧を印加するチャージポンプ回路451を備える。チャージポンプ回路451は、電源電圧VDD(例えば1.5〜3V程度)を昇圧(例えば6〜10V程度)して、第1のMEMSチップ13及び第2のMEMSチップ15にバイアス電圧を印加する。また、ASIC45は、第1のMEMSチップ13における静電容量の変化を検出する第1のアンプ回路452と、第2のMEMSチップ15における静電容量の変化を検出する第2のアンプ回路453と、を備える。第1のアンプ回路452及び第2のアンプ回路453で増幅された電気信号は、それぞれ、独立にASIC45から出力される。
【0107】
第3変形例のマイクロホンユニット1においては、第1のMEMSチップ13の静電容量の変化に基づいて取り出された電気信号は、第1のアンプ回路452によって増幅処理されて、最終的に第1の出力用電極パッド20bから出力される。また、第2のMEMSチップ15の静電容量の変化に基づいて取り出された電気信号は、第2のアンプ回路452によって増幅処理されて、最終的に第2の出力用電極パッド20cから出力される。
【0108】
なお、ここでは、第1のMEMSチップ13と第2のMEMSチップ15とに共通のバイアス電圧が印加される構成となっているが、この構成に限られる趣旨ではない。例えば、チャージポンプ回路を2つ設けて、第1のMEMSチップ13と第2のMEMSチップ15に対して、別々にバイアス電圧を印加するようにしても構わない。このように構成することで、第1のMEMSチップ13と第2のMEMSチップ15との間でクロストークが生じる可能性を低減できる。
【0109】
また、2つのアンプ回路452、453のアンプゲインは、異なるゲインに設定して構わない。ここで、第2のアンプ回路453のアンプゲインを第1のアンプ回路452のアンプゲインよりも大きくすることが好ましい。
【0110】
図19は、第1実施形態のマイクロホンユニットの第4変形例を説明するためのブロック図である。この第4変形例のマイクロホンユニット1も第3変形例の場合と同様にASICの数が1つとされている。ただし、次の点で第3変形例とは異なる。すなわち、第4変形例のマイクロホンユニット1では、外部(マイクロホンユニット1が実装される音声入力装置)からスイッチ信号を入力するためのスイッチ用電極パッド20gが設けられて(外部接続用電極パッドとして筐体10の外部に設けられる)、スイッチ用電極パッド20gを介して与えられるスイッチ信号によってASIC45に設けられる切替回路454が動作するようになっている点で第3変形例の構成と異なる。また、外部への出力するための出力用電極パッドが1つ(出力用電極パッド20f)となっている点でも第3変形例とは異なる。
【0111】
切替回路454は、図19に示すように、第1のアンプ回路452から出力される信号と、第2のアンプ回路453から出力される信号とのうち、いずれを外部へと出力するかを切り替える回路である。すなわち、第4変形例のマイクロホンユニット1においては、第1のMEMSチップ14から取り出された信号と、第2のMEMSチップ15から取り出された信号のうちの、いずれか一方のみが出力用電極パッド20fを介して外部へ出力されるようになっている。第4変形例のように構成する場合、マイクロホンユニット1を搭載する音声入力装置側で、入力された2つの音声信号のいずれを使用するかの切替動作を行わなくて済む。
【0112】
なお、スイッチ信号による切替回路454の切替動作は、例えば信号のH(ハイレベル)、L(ローレベル)を用いる構成等とすればよい。また、第4変形例の構成では、第1のMEMSチップ13と第2のMEMSチップ15とに共通のバイアス電圧が印加される構成となっているが、これに限らず、他の構成としてもよい。すなわち、例えば、スイッチ信号及び切替回路を用いて、第1のMEMSチップ13及び第2のMEMSチップ15のうち、いずれがチャージポンプ回路451と電気的に接続されるかを切り替えられるようにしてもよい。このようにすれば、第1のMEMSチップ13と第2のMEMSチップ15との間でクロストークが生じる可能性を低減できる。
【0113】
図20は、第1実施形態のマイクロホンユニットの第5変形例を説明するためのブロック図である。第5変形例のマイクロホンユニット1は、第4変形例と同様に、外部からスイッチ信号を入力するためのスイッチ用電極パッド20gと、ASIC45に設けられてスイッチ用電極パッド20gを介して与えられるスイッチ信号によって切替動作を行う切替回路454と、を備える。ただし、第4変形例の場合と異なり、外部への出力するための出力用電極パッドは2つ(第1の出力用電極パッド20bと第2の出力用電極パッド20c)となっている。
【0114】
切替回路454は、第1のアンプ回路452から出力される信号と、第2のアンプ回路453から出力される信号とが、2つの出力用電極パッド20b、20cのうち、いずれから出力されるかを切り替えられる構成となっている。
【0115】
すなわち、スイッチ用電極パッド20eから入力されるスイッチ信号によって、切替回路454が第1のモードとなった場合には、第1の出力用電極パッド20bからは第1のMEMSチップ13に対応した信号が出力され、第2の出力用電極パッド20cからは第2のMEMSチップ15に対応した信号が出力される。一方、スイッチ信号によって、切替回路454が第2のモードとなった場合には、第1の出力用電極パッド20bからは第2のMEMSチップ15に対応した信号が出力され、第2の出力用電極パッド20cからは第1のMEMSチップ13に対応した信号が出力される。
【0116】
マイクロホンユニットと音声入力装置とを製造する製造者が異なる場合、音声入力装置を製造する製造者には、次のようなタイプの者が存在することが想定される。
(A)第1のMEMSチップ13に対応する信号と第2のMEMSチップ15に対応する信号の両方をマイクロホンユニットから出力して欲しいと考える者。
(B)第1のMEMSチップ13に対応する信号と第2のMEMSチップ15に対応する信号とのうち、いずれか一方をスイッチ信号による切り替えによって、マイクロホンユニットから出力して欲しいと考える者。
【0117】
この点、第5変形例のマイクロホンユニット1によれば、これ1つで、上記(A)、(B)のいずれの者にも対応できるので便利である。
【0118】
第1実施形態のマイクロホンユニット1の第6変形例について説明する。第6変形例では、シーリング用電極パッド20eが、例えばGND用電極パッドや電源電圧(VDD)入力用の電源用電極パッドとして使用される。具体例としては、2つあるシーリング用電極パッド20eの両方をGND用電極パッドとする構成や、一方をGND用電極パッド、他方を電源用電極パッドとする構成が挙げられる。
【0119】
このように構成することで、筐体10の外面(搭載部11の下面11b)に形成する外部接続用電極パッド20の数を減らすことが可能となる。外部接続用電極パッド20の数を減らした場合、筐体10の外面に設ける各電極パッドのサイズを大きくできるために、各電極パッドについて、音声入力装置(携帯電話機等)の実装基板への接合強度を高められる。また、2つあるシーリング用電極パッド20eの両方をGND用電極パッドとする構成においては、音孔23、25の周囲に設けられるシーリング用電極パッド20eを音孔23、25の内部まで連続形成する(音孔23、25の内壁にスルーホールメッキを施す)ことでGNDを強化して、外部電磁界に対する耐性を向上する(外部電磁界ノイズの混入を防止する)ことも可能になる。
【0120】
また第6変形例の構成は、第2変形例で示したようなシールドカバー44を筐体10に被せる構成(図15参照)に対して有利である。すなわち、筐体10が小型である場合にはかしめ領域44aの確保が難しくなる。しかし、第6変形例の構成では外部接続用電極パッド20の数を減らせるために、かしめ領域44aの確保が行い易くなる。
【0121】
2.第2実施形態のマイクロホンユニット
次に、第2実施形態のマイクロホンユニットについて説明する。図21は、第2実施形態のマイクロホンユニットの構成を示す概略断面図である。図21の切断位置は、図3と同様の位置である。なお、第1実施形態のマイクロホンユニット1と重複する部分には同一の符号を付して説明する。
【0122】
第2実施形態のマイクロホンユニット2も、第1実施形態のマイクロホンユニット1と同様に、搭載部51と蓋部52とによって構成される筐体50に、第1のMEMSチップ13と、第1のASIC14と、第2のMEMSチップ15と、第2のASIC16と、が収容された構成となっている。なお、MEMSチップ13、15及びASIC14、16の構成や、それらの位置及び接続関係は、第1実施形態のマイクロホンユニット1と同様であるために、その詳細な説明は省略する。
【0123】
搭載部51は、第1実施形態のマイクロホンユニット1と同様に、例えば複数の平板を貼り合わせることによって形成される。
【0124】
搭載部51の長手方向の一方端寄り(図21では右寄り)には、MEMSチップ13、15やASIC14、16が搭載される搭載面(上面)51aとその裏面(下面)51bとを貫く貫通孔61(平面視略長方形状)が形成されている。この貫通孔61は筐体10内部に音を入力するための音孔であり、以下では第1の音孔61と表現する。なお、この第1の音孔61の形状及び形成位置は、第1実施形態の第2の音孔25と同様である
【0125】
また、搭載部51には、搭載面51aの略中央部(正確には中央から長手方向やや右寄り)に第2のMEMSチップ15によって覆われる開口部62(平面視略円形状)が設けられている。また、搭載部51の搭載面51aの裏面51bには第2の音孔となる平面視略長方形状の開口部63(以下、第2の音孔63と表現する)が形成されている。そして、搭載部51内には、開口部62と第2の音孔63とを連通する中空空間64(平面視略T字状)が形成されている。なお、開口部62、第2の音孔63、中空空間64の形状は、それぞれ、順に、第1実施形態のマイクロホンユニット1の第2の開口部22、第1の音孔23、中空空間24と同様である。
【0126】
なお、搭載部51には、第1実施形態のマイクロホンユニット1の搭載部11と同様の配線や電極パッド(シーリング用電極パッド20eを含む)が形成されている。
【0127】
蓋部52は、その外形が略直方体形状に設けられ、その長手方向(図21の左右方向)及び短手方向(図21の紙面と垂直な方向)の長さは、蓋部52を搭載部51に被せて筐体50を構成した際に、筐体50の側面部が略面一となるように調整されている。第1実施形態のマイクロホンユニット1の蓋部12と異なって、その内部には仕切り部は設けられず、蓋部52は1つの凹部のみを有する。このため、図21に示すように、蓋部52を搭載部51に被せることによって、2つのMEMSチップ13、15及び2つのASIC14、16を収容する1つの収容空間521が得られる。
【0128】
このように構成される第2実施形態のマイクロホンユニット2においては、図21に示すように、第1の音孔61から入力された音波が、収容空間521を通って第1の振動板134の一方の面(上面)に到達するとともに、第2の振動板154の一方の面(上面)に到達する。また、第2の音孔63から入力された音波が、中空空間64及び開口部62を通って第2の振動板154の他方の面(下面)に到達する。
【0129】
すなわち、マイクロホンユニット2においては、第1の音孔61から入力される音波を第1の振動板134の一方の面に伝達するとともに、第2の振動板154の一方の面に伝達する第1の音道71が、第1の音孔61及び収容空間521を用いて形成されている。また、第2の音孔63から入力される音波を第2の振動板154の他方の面に伝達する第2の音道72が、第2の音孔63と、中空空間64と、開口部62とを用いて形成されている。なお、第1の振動板134の他方の面には、外部から音波が入力されないようになっており、音響リークのない密閉空間(背室)が形成されている。
【0130】
マイクロホンユニット2の外部で音が生じると、第1の音孔61から入力された音波が第1の音道71によって第1の振動板134の上面に到達し、第1の振動板134が振動する。これにより、第1のMEMSチップ13において静電容量の変化が生じる。第1のMEMSチップ13の静電容量の変化に基づいて取り出された電気信号は、第1のASIC14(図21においては図示されないが、第1のMEMSチップ13に対して紙面奥側に存在する)のアンプ回路142によって増幅処理されて、最終的に第1の出力用電極パッド20bから出力される。
【0131】
また、マイクロホンユニット2の外部で音が生じると、第1の音孔61から入力された音波が第1の音道71によって第2の振動板154の上面に到達すると共に、第2の音孔63から入力された音波が第2の音道72によって第2の振動板154の下面に到達する。このために、第2の振動板154は、その上面に加わる音圧と下面に加わる音圧との音圧差によって振動する。これにより、第2のMEMSチップ15において静電容量の変化が生じる。第2のMEMSチップ15の静電容量の変化に基づいて取り出された電気信号は、第2のASIC16のアンプ回路162によって増幅処理されて、最終的に第2の出力用電極パッド20cから出力される。
【0132】
第2実施形態のマイクロホンユニット2は、第1実施形態のマイクロホンユニット1と同様に、遠方ノイズ抑圧性能に優れた両指向特性の差動マイクロホンとしての機能(第2のMEMSチップ15から取り出される信号を使用することにより得られる)と、遠距離音を収音可能な全指向性マイクロホンとしての機能(第1のMEMSチップ13から取り出される信号を使用することにより得られる)と、を兼ね備える構成となっている。このために、第2実施形態のマイクロホンユニット2も、マイクロホンユニットが適用される音声入力装置の多機能化に対応しやすい。
【0133】
また、第2実施形態のマイクロホンユニット2は上述の2つの機能を兼ね備えるために、従来のようにこれらの2つの機能を確保するために互いに異なる機能を有する2つのマイクロホンユニットを別個に搭載する必要がない。このため、多機能の音声入力装置を製造にするにあたって、使用部材の低減とマイクロホンを実装するための実装面積の低減(音声入力装置の大型化の抑制)を図れる。
【0134】
なお、第2実施形態のマイクロホンユニット2においても、第1実施形態で示した変形例1〜6が適宜適用可能である。
【0135】
(本発明のマイクロホンユニットが適用された音声入力装置)
次に、本発明のマイクロホンユニットが、適用された音声入力装置の構成例について説明する。ここでは、音声入力装置が携帯電話機である場合を例に説明する。また、マイクロホンユニットが第1実施形態のマイクロホンユニット1である場合を例に説明する。
【0136】
図22は、第1実施形態のマイクロホンユニットが適用される携帯電話機の実施形態の概略構成を示す平面図である。図23は、図22のB−B位置における概略断面図である。図22に示すように、携帯電話機8の筐体81の下部側には2つの音孔811、812が設けられており、この2つの音孔811、812を介してユーザの音声が筐体81内部に配置されるマイクロホンユニット1に入力されるようになっている。
【0137】
図23に示すように、携帯電話機8の筐体81内部には、マイクロホンユニット1が実装される実装基板82が備えられる。この実装基板82には、マイクロホンユニット1が備える複数の外部接続用電極パッド20(シーリング用電極パッド20e含む)と電気的に接続される複数の電極パッドが設けられており、マイクロホンユニット1は、例えば半田等を用いて実装基板82と電気的に接続された状態で実装基板82に固定される。そして、これにより、マイクロホンユニット1に電源電圧が与えられ、また、マイクロホンユニット1から出力される電気信号が、実装基板82に設けられる音声信号処理部(図示せず)へと送られる。
【0138】
実装基板82には、携帯電話機8の筐体81に設けられる2つの音孔811、812の各々に対応した位置に貫通孔821、822が設けられている。また、携帯電話機8の筐体81と実装基板82との間には、音響的なリークを生じることなく、気密性が保てるようにガスケット83が配置されている。ガスケット83には、携帯電話機8の筐体81に設けられる2つの音孔811、812の各々に対応した位置に貫通孔831、832が設けられている。
【0139】
マイクロホンユニット1は、第1の音孔23が実装基板82に設けられる貫通孔821に重なり、第2の音孔25が実装基板82に設けられる貫通孔822に重なるように配置されている。なお、マイクロホンユニット1が実装基板82に実装される際に、第1の音孔23及び第2の音孔25の各周囲に配置されるシーリング用電極パッド20eも実装基板82に半田接合される。このために、マイクロホンユニット1と実装基板82との間で、音響的なリークを生じることなく気密性が保たれる。
【0140】
携帯電話機8は以上のように構成されるために、携帯電話機8の筐体81の外部で発生した音声は、携帯電話機8の音孔811から入力され、貫通孔831(ガスケット83に設けられる)、貫通孔821(実装基板82に設けられる)を介してマイクロホンユニット1の第1の音孔23に到達し、更に第1の音道41を通って、第1のMEMSチップ13の第1の振動板134の一方の面(図23では上面)に到達するとともに第2のMEMSチップ15の一方の面(図23では上面)に到達する。また、携帯電話機8の筐体81の外部で発生した音声は、携帯電話機8の音孔812から入力され、貫通孔832(ガスケット83に設けられる)、貫通孔822(実装基板82に設けられる)を介してマイクロホンユニット1の第2の音孔25に到達し、更に第2の音道42を通って、第2のMEMSチップ15の第2の振動板154の他方の面(図23では下面)に到達する。
【0141】
本実施形態の携帯電話機8には、図22に示すように、接話モードとハンズフリーモード(ムービー録画モードを含むようにしてもよい)とを切り替えるモード切替ボタン84が設けられている。実装基板82に設けられる音声信号処理部(図示せず)においては、モード切替ボタン84によって接話モードが選択された場合には、マイクロホンユニット1から出力される信号のうち、第2のMEMSチップ15に対応した信号を使用した処理を行う。また、モード切替ボタン84によってハンズフリーモード(或いはムービー録画モード)が選択された場合には、マイクロホンユニット1から出力される信号のうち、第1のMEMSチップ13に対応した信号を使用した処理を行う。これにより、各モードにおいて好ましい信号処理を行える。
【0142】
ところで、本出願人は、例えば接話モードとハンズフリーモードとを切替可能なマイクロホンユニットの別形態を開示した特許出願(特願2009−293989号公報)を先に行っている。図24は、先の出願で開示したマイクロホンユニットが実装された携帯電話機の概略断面図である。先の出願で開示したマイクロホンユニットXは、MEMSチップX3、X4等を搭載する搭載部X1ではなく、搭載部X1に被せられる蓋部X2に音孔(第1の音孔X5、第2の音孔X6)が設けられている点で、本願のマイクロホンユニットとは異なる。
【0143】
先の出願で開示したマイクロホンユニットXにおいては、蓋部X2に形成される第1の音孔X5と、蓋部X2を搭載部X1の上面に被せることによって形成される収容空間X7とを用いて、第1の音孔X5から入力される音波を第1の振動板X31の一方の面(図24では上面)に伝達するとともに、第2の振動板X41の一方の面(図24では上面)に伝達する第1の音道P1が形成されている。また、蓋部X2に形成される第2の音孔X6と、搭載部X1に形成される第1の開口部X11、中空空間X12、及び第2の開口部X13と、を用いて、第2の音孔X6から入力される音波を第2の振動板X41の他方の面(図24では下面)に伝達する第2の音道P2が形成されている。なお、第1の振動板X31の他方の面(下面)には、外部から音波が入力されないようになっており、音響リークのない密閉空間(背室)が形成されている。
【0144】
先の出願で開示したマイクロホンユニットXは、図24に示すように、携帯電話機Yの筐体Y1内に設けられる実装基板Y2に実装される。この実装基板Y2には、マイクロホンユニットXが備える複数の外部接続用電極パッドX8と電気的に接続される複数の電極パッドが設けられており、マイクロホンユニットXは例えば半田等を用いて実装基板Y2と電気的に接続される。そして、これにより、マイクロホンユニットXに電源電圧が与えられ、また、マイクロホンユニットXから出力される電気信号が、実装基板Y2に設けられる音声信号処理部(図示せず)へと送られる。
【0145】
マイクロホンユニットXは、第1の音孔X5が携帯電話機Yの筐体Y1に形成される音孔Y11に重なり、第2の音孔X6が携帯電話機Y1の筐体Y1に形成される音孔Y12に重なるように配置されている。なお、携帯電話機Yの筐体Y1とマイクロホンユニットXとの間には、音響的なリークを生じることなく気密性を保てるようにガスケットGが配置されている。ガスケットGには、携帯電話機Yの筐体Y1の音孔Y11と重なるように貫通孔G1が、また、携帯電話機Yの筐体Y1の音孔Y12と重なるように貫通孔G2が形成されている。
【0146】
以上のように構成されるマイクロホンユニットX(以下、上孔品と表現する)に対する、本実施形態のマイクロホンユニット1、2(以下、下孔品と表現する)の利点について説明しておく。
【0147】
下孔品は、上孔品に比べて携帯電話機の筐体と実装基板との間隔d(図23、24参照)を狭くできるために、携帯電話機の薄型化を実現し易い。また、上孔品の場合には、マイクロホンユニットXが実装基板Y2に傾いて取り付けられた場合に、ガスケットGによる気密性の確保が不十分となる可能性があるが、下孔品ではそのような問題が生じない。
【0148】
また、上孔品では、マイクロホンユニットXを実装基板Y2に実装する際に、実装基板Y2の面内方向や厚み方向に組立て誤差が発生する場合がある。上記面内方向の誤差が発生することを考慮すると、上孔品では例えばガスケットGに設けられる貫通孔G1、G2の開口面積を大きくしておく必要が生じて不利である。ガスケットGの貫通孔G1、G2の開口面積を大きくしすぎると、ガスケットGとマイクロホンユニットXとの接触面積が十分に確保できず、気密性の確保が不十分となる可能性がある。また、上記厚み方向の誤差が発生した場合にも気密性の確保が不十分となる可能性があり、ガスケットGの厚みを厚く設計する必要が生じる。下孔品の場合には、上述のようなマイクロホンユニット1、2の組立て誤差を気にせずにガスケット83を設計できるために、ガスケット83の設計余裕度が大きくなる。
【0149】
更に、上孔品の場合には、携帯電話機Yに搭載する場合に、弾性を有するガスケットGでマイクロホンユニットXを押さえつける構成となるために、MEMSチップX3、X4に応力が加わってMEMSチップX3、X4の感度が変化する可能性がある。一方、下孔品では、ガスケット83とマイクロホンユニット1、2との間に剛性の高い実装基板82が介在する構成となるために、上述のような応力がMEMSチップ13、15に加わり難い。
【0150】
(その他)
以上に示した実施形態のマイクロホンユニット1、2や音声入力装置8は、本発明の例示にすぎず、本発明の適用範囲は、以上に示した実施形態に限定されるものではない。すなわち、本発明の目的を逸脱しない範囲で、以上に示した実施形態について種々の変更を行っても構わない。
【0151】
例えば、以上に示した実施形態では、ASIC14、16(電気回路部)がマイクロホンユニット1、2内に含まれる構成としたが、電気回路部はマイクロホンユニットの外部に配置しても構わない。また、以上に示した実施形態では、MEMSチップ13、15とASIC14、16とは別チップで構成したが、ASIC14、16に搭載される集積回路はMEMSチップ13、15を形成するシリコン基板上にモノリシックで形成するものであっても構わない。
【0152】
また、以上に示した実施形態では、第1の音孔23と第2の音孔24の周囲の音響シーリング部は電極パッドと兼用し、半田接合することで実現する例を示したが、第1の音孔23と第2の音孔24の周囲に熱可塑性の接着シートを貼り付けておくことで、半田リフローと同時にシール接合されるような構成としても構わない。
【0153】
また、以上に示した実施形態では、本発明の第1の振動部及び第2の振動部が、半導体製造技術を利用して形成されるMEMSチップ13、15である構成としたが、この構成に限定される趣旨ではない。例えば、第1の振動部及び/又は第2の振動部はエレクトレック膜を使用したコンデンサマイクロホン等であっても構わない。
【0154】
また、以上の実施形態では、本発明の第1の振動部及び第2の振動部の構成として、いわゆるコンデンサ型マイクロホンを採用した。しかし、本発明はコンデンサ型マイクロホン以外の構成を採用したマイクロホンユニットにも適用できる。例えば、動電型(ダイナミック型)、電磁型(マグネティック型)、圧電型等のマイクロホン等が採用されたマイクロホンユニットにも本発明は適用できる。
【0155】
また、以上に示した本実施形態のマイクロホンユニット1が実装される音声入力装置(携帯電話機8)の変形例として、第1のMEMSチップ13に対応した信号と、第2のMEMSチップ15に対応した信号とを、音声信号処理部85(図25参照)において加算、減算、或いはフィルタ処理を行うようにしてもよい。
【0156】
このような処理を行うことによって、音声入力装置(例えば携帯電話機)の指向特性を制御し、特定のエリアの音声を収音するようにできる。例えば、全指向性、ハイパーカーディオイド、スーパーカーディオイド、単一指向性等の任意の指向特性を実現できる。
【0157】
なお、指向特性を制御する処理は、ここでは音声入力装置によって行われる構成としているが、マイクロホンユニットのASICを1チップとして、ASICに指向特性を制御する処理を行える処理部を設ける構成としてもよい。
【0158】
その他、マイクロホンユニットの形状は本実施形態の形状に限定される趣旨ではなく、種々の形状に変更可能であるのは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0159】
本発明のマイクロホンユニットは、例えば携帯電話機に好適に使用できる。
【符号の説明】
【0160】
1、2 マイクロホンユニット
8 携帯電話機(音声入力装置)
10、50 筐体
11、51 搭載部
11a、51a 搭載面
11b、51b 搭載面の裏面
12、52 蓋部
13 第1のMEMSチップ(第1の振動部)
14 第1のASIC(第1の電気回路部)
15 第2のMEMSチップ(第2の振動部)
16 第2のASIC(第2の電気回路部)
18a〜18c、19a〜19c 電極端子(搭載面の電極)
20 外部接続用電極パッド(裏面電極パッド)
20e シーリング用電極パッド(シーリング部)
21 第1の開口部
22 第2の開口部
23、61 第1の音孔
24、64 中空空間
25、63 第2の音孔
41、71 第1の音道
42、72 第2の音道
45 ASIC(電気回路部)
62 開口部
82 実装基板
121 第1の収容空間
122 第2の収容空間
134 第1の振動板
154 第2の振動板
521 収容空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の振動板の振動に基づいて音信号を電気信号に変換する第1の振動部と、
第2の振動板の振動に基づいて音信号を電気信号に変換する第2の振動部と、
前記第1の振動部と前記第2の振動部とを内部に収容するとともに、外部に面する第1の音孔と第2の音孔とが設けられる筐体と、を備え、
前記筐体は、前記第1の振動部と前記第2の振動部とが搭載される搭載面を有する搭載部を含み、
前記第1の音孔と前記第2の音孔とは、前記搭載部の前記搭載面の裏面に設けられ、
前記筐体には、前記第1の音孔から入力される音波を前記第1の振動板の一方の面に伝達するとともに前記第2の振動板の一方の面に伝達する第1の音道と、前記第2の音孔から入力される音波を前記第2の振動板の他方の面に伝達する第2の音道と、が設けられ、
前記第1の振動板の他方の面は、前記筐体の内部に形成される密閉空間に面していることを特徴とするマイクロホンユニット。
【請求項2】
前記筐体は、前記搭載部に被せられて、前記搭載部とともに前記第1の振動部を収容する第1の収容空間と前記第2の振動部を収容する第2の収容空間とを形成する蓋部を更に含み、
前記搭載面には、前記第1の振動部に覆い隠される第1の開口部と、前記第2の振動部に覆い隠される第2の開口部と、が設けられ、
前記第1の音道は、前記第1の音孔と、前記第1の開口部と、前記第2の開口部と、前記搭載部の内部に形成されて前記第1の音孔と前記第1の開口部及び前記第2の開口部とを連通する中空空間と、を用いて形成され、
前記第2の音道は、前記搭載部を貫通する貫通孔である前記第2の音孔と、前記第2の収容空間とを用いて形成されていることを特徴とする請求項1に記載のマイクロホンユニット。
【請求項3】
前記筐体は、前記搭載部に被せられて前記搭載部とともに前記第1の振動板と前記第2の振動部とを収容する収容空間を形成する蓋部を更に含み、
前記搭載面には、前記第2の振動部に覆い隠される開口部が設けられ、
前記第1の音道は、前記搭載部を貫通する貫通孔である前記第1の音孔と、前記収容空間とを用いて形成され、
前記第2の音道は、前記第2の音孔と、前記開口部と、前記搭載部の内部に形成されて前記第2の音孔と前記開口部とを連通する中空空間と、を用いて形成されていることを特徴とする請求項1に記載のマイクロホンユニット。
【請求項4】
前記搭載部に搭載されて、前記第1の振動部及び前記第2の振動部で得られた電気信号を処理する電気回路部を備えること特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のマイクロホンユニット。
【請求項5】
前記電気回路部は、前記第1の振動部で得られた電気信号を処理する第1の電気回路部と、前記第2の振動部で得られた電気信号を処理する第2の電気回路部と、からなることを特徴とする請求項4に記載のマイクロホンユニット。
【請求項6】
前記搭載面に、前記電気回路部と電気接続するための電極が形成され、さらに前記搭載部の裏面に前記搭載面の電極に電気接続される裏面電極パッドが形成されていることを特徴とする請求項4又は5に記載のマイクロホンユニット。
【請求項7】
前記搭載部の前記搭載面の裏面には、前記第1の音孔及び前記第2の音孔の各周囲を囲むように、実装基板に実装された場合に気密性を発揮するシーリング部が形成されていることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載のマイクロホンユニット。
【請求項8】
請求項1から7のいずれかに記載のマイクロホンユニットを備えることを特徴とする音声入力装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【公開番号】特開2011−254193(P2011−254193A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−125531(P2010−125531)
【出願日】平成22年6月1日(2010.6.1)
【出願人】(000201113)船井電機株式会社 (7,855)
【Fターム(参考)】