説明

マイクロポンプ、液体供給装置及び液体供給システム

【課題】 独立して逆止弁を設ける必要がなく構造が簡単であるとともに、数百ナノリットル単位での液体の搬送を精度良く行うことができるマイクロポンプと、該マイクロポンプを利用した液体供給装置及び液体供給システムを提供する。
【解決手段】 流量1μl/分から10ml/分および圧力10から10000Paの範囲の送液能力を有するマイクロポンプ11であって、液体の補給口15と吐出口16とを有するとともに内部に円筒形のポンプ室12を有するケーシング13と、外周部に螺旋状の溝17が形成され、ケーシング12内に配置されたスクリュー軸14とを有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療、化学分析等に用いられる、マイクロポンプ、液体供給装置及び液体供給システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、医療、化学分析の分野においては、センサー、分析装置等を小型化した分析システムであるμ―TAS(Micro Total Analysis System)の開発が盛んに行われている。μ―TASにおいては、従来の分析装置に比べて、反応の判定に必要な試料及び試薬の量を少なくすることができるために、分析コストを低減できるとともに、分析結果を得るまでに要する時間を短縮することができる。
μ―TASにおいては、試薬等の送液手段としてマイクロポンプが広く用いられており、従来、上記のマイクロポンプとしては、ダイヤフラム式の定量ポンプ(特許文献1参照)やインクジェット式のマイクロポンプ(特許文献2参照)が提供されている。
【0003】
図8にダイヤフラム式のマイクロポンプの一例を示す。ダイヤフラム式マイクロポンプ1は、ポンプ室2とダイヤフラム3とこのダイヤフラムを変動させるための駆動部4とで構成されている。ポンプ室2は、液体の補給口5と吐出口6とを有しており、補給口5と吐出口6とには、逆止弁7が備えられている。ポンプ室2を構成する壁面の一部が、ダイヤフラム3とされ、駆動部4は、圧電素子8と圧電素子8に電流を供給する電源システム9とで構成され、圧電素子8がダイヤフラム3と接合されている。
【0004】
このマイクロポンプにおいては、圧電素子8に電流が供給されることにより、圧電素子8が変位し、この変位に伴い、ダイヤフラム3が変動し、ポンプ室2の容積が変化する。ポンプ室2の容積が増加したときに、補給口5から逆止弁7を通じて、液体がポンプ室2内に補給される。ポンプ室2の容積が減少したときに、ポンプ室2の容積変化分の液体が、吐出口6から逆止弁7を通じて吐出される。逆止弁7により、ポンプ室2から補給口5へ、または、吐出口6からポンプ室2への液体の逆流が防止される。
【特許文献1】特開平10−110681号公報
【特許文献2】特開2003−145751号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、上記の構成のポンプでは、ポンプ室2の容量変化分のみが吐出されるため、ポンプ室2内部に吐出されない液体が残存し、使用できない液体の量、いわゆるデッドボリュームが大きく、高価な試薬を無駄にしてしまうといった問題があった。また、ダイヤフラム式ポンプ1には、吸引機能が備わっていないため、ポンプ室2に試料や試薬を予め別の手段により充填する必要がある。また、上記の構成のポンプでは、構造が複雑となり製造コストが高いといった問題があった。さらに、圧電素子8を使用したものでは、圧電素子8の駆動時において100V程度の大きな電圧を必要とするため、システム自体が大きく、複雑となるといった問題があった。
【0006】
また、従来のマイクロポンプでは、吐出口からの逆流を防止するために、逆止弁が必要となる。逆止弁は複雑な構造をしているため、微小なマイクロポンプに逆止弁を組み込むことは大変困難であり、逆止弁を組み込むためにマイクロポンプの製造コストが高くなるといった問題があった。また、逆止弁は、その使用頻度が多くなると、弁蓋部の強度が低下し、密封性が次第に劣化し、流量特性が不安定になるという問題があった。さらに、逆止弁を使用した場合には、高粘度の液体や微細な固体を含む液体に対応できないといった問題があった。
【0007】
また、上記の構成のダイヤフラム式ポンプでは、数マイクロリットル以上の単位で液体を搬送するのに適しており、また、インクジェット方式のマイクロポンプでは、数ナノリットル以下の単位で液体を搬送するのに適している。しかしながら、これらの中間領域である数百ナノリットル単位で液体を搬送するのに適したマイクロポンプはこれまで提供されていない。
今日、医療現場では、迅速な診断を行なうために、電源等を含めた診断システム全体の大きさを極力小さくすることが重要な課題となっており、液体を数百ナノリットル単位で精度良く搬送することができるマイクロポンプの開発が強く望まれている。
【0008】
本願発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであって、独立して逆止弁を設ける必要がなく構造が簡単であるとともに、数百ナノリットル単位での液体の搬送を精度良く行うことができるマイクロポンプと、該マイクロポンプを利用した液体供給装置及び液体供給システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、この発明は以下の手段を提供している。
流量1μl/分から10ml/分および圧力10から10000Paの範囲の送液能力を有するマイクロポンプであって、液体の補給口と吐出口とを有するとともに内部に円筒形のポンプ室を有するケーシングと、外周部に螺旋状の溝が形成され、前記ケーシング内に配置されたスクリュー軸とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、スクリュー軸の回転を停止するだけで、吐出口からの液体の吐出が止まるので、逆止弁を別途設ける必要がなく、マイクロポンプの構造を簡単にすることができ、その製造コストを低減することができる。また、送液能力が規定されているので、数百ナノリットル単位での液体の搬送を精度良く行うことができる
【0011】
また、前記ポンプ室の軸線に直交する断面がなす円の直径Rを10mm以下とすることにより、ケーシングの大きさを小さくすることができるとともに、前記ポンプ室の軸線に直交する断面がなす円の直径Rを0.1mm以上とすることにより、数百ナノリットル単位での液体の搬送を確実に行なうことができる。
【0012】
また、前記スクリュー軸の外周部に形成された前記溝の頂部の前記スクリュー軸の軸心からの垂直距離T1と、前記溝の底部の前記スクリュー軸の軸心からの垂直距離T2との比T1/T2を5/1から100/99の範囲内とすることにより、ポンプ室内の液体の経路を確保するとともに、ポンプ室内に残存する液体の量であるデッドボリュームを小さくすることができる。
【0013】
また、前記吐出口の断面積を、1μmから10mmの範囲内とすることにより、ポンプ室内を搬送された液体を確実に吐出口から吐出できるとともに、吐出圧力を適正に保つことができる。
【0014】
また、前記ポンプ室の内容積と前記スクリュー軸の占める体積との差を10μl以下とすることにより、ポンプ室内に残存する液体の量であるデッドボリュームを最大でも10μlと小さくすることができる。また、前記ポンプ室の内容積と前記スクリュー軸の占める体積との差を1μl以上とすることにより、ポンプ室内の液体を搬送する経路を確保することができるので、液体の搬送を確実に行なうことができる。
【0015】
また、本発明の液体供給装置では、前記マイクロポンプに、該マイクロポンプの前記スクリュー軸を駆動する駆動手段を備えることにより、前記スクリュー軸を回転させることができるので、補給口からポンプ室内に補給された液体を吐出口側へ搬送し、吐出口から液体を吐出することができる。
【0016】
また、前記マイクロポンプに、前記マイクロポンプより送液される液体の補給槽を備えることにより、補給槽内に貯留された液体を継続してマイクロポンプの補給口からポンプ室内に液体を補給することができ、吐出口側へ搬送することができる。また、補給槽内に液体を順次追加することにより、液体を連続して吐出することができる。
【0017】
また、前記補給槽を温度調節する温度調節手段を設けることにより、補給槽内の液体を温度調節しながら保管できるので、補給槽内の液体の品質を維持できるとともに、所望の温度を以って液体を外部に供給することができる。
【0018】
また、前記マイクロポンプに、該マイクロポンプより移送された液体を一時保持する貯留槽と、該貯留槽内に貯留された液体を外部に吐出させる液体吐出手段とを備えることにより、マイクロポンプによって移送された液体を貯留槽で一時保持し、液体吐出手段によって、所望のタイミングで一定量の液体を精度良く外部へ供給することができる。
【0019】
また、前記液体吐出手段を、加圧室と、加圧手段と、前記貯留槽の下流側に常態において液体の通過を阻止し一定以上の圧力下において液体の通過を許すゲートとで構成することにより、加圧手段を操作して加圧室内の圧力を調整することにより、貯留槽内の液体を所望のタイミングで外部へ供給することができる。
【0020】
また、前記マイクロポンプを複数並列に設け、該マイクロポンプの前記スクリュー軸を、連結手段を介して前記スクリュー軸の駆動手段に連結することにより、駆動手段によって複数のスクリュー軸を回動させることができるので、同時に複数の場所へ、液体を供給することができる。
【0021】
また、前記駆動手段が、前記スクリュー軸を正回転かつ逆回転させることができるように構成されることにより、スクリュー軸の逆回転駆動による液体の逆流が容易に得られ、これをもって補給槽内の液体が攪拌されるので、補給槽内の液体を均一にすることができ、特に補給槽内の液体が固形分を含む懸濁液等の場合には固形分の沈降分離を防止できるので有効である。
【0022】
また、前記スクリュー軸は、前記スクリュー軸の軸線方向に移動可能、かつ、前記吐出口または補給口を開閉可能に配置され、前記駆動手段は、前記スクリュー軸を回転させるとともに、前記スクリュー軸の軸線方向に移動できるように構成されることにより、スクリュー軸を軸線方向に移動させ、吐出口を閉止することにより、ポンプ室内の液体の漏れやポンプ室内への液体の逆流を確実に防止することができる。また、スクリュー軸を軸線方向に移動させ、補給口を閉止することにより、補給口から外部への液体の逆流を確実に防止できるとともに、補給口からポンプ室内への液体の漏れを防止できる。
【0023】
また、前記スクリュー軸をその軸線方向に移動させることにより、液体を一定容量の液滴として搬送できる構成とすることにより、別途、液体吐出手段を設けることなく、液体を所望のタイミングを以って外部の任意の場所に供給することができる。
【0024】
さらに、前記スクリュー軸の回転運動及び軸線方向の運動を制御する制御手段を設けることにより、スクリュー軸を回転させて液体を吐出口側へ搬送した後に、スクリュー軸を軸線方向に移動させ、液体を一定容量の液滴として外部に供給することができる。この動作を組み合わせて制御することにより、液体を連続的または断続的に外部に供給することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明の実施形態について図面を用いて説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。なお、本明細書においては、マイクロポンプの上流側とは、マイクロポンプの補給口側を意味し、下流側とは、マイクロポンプの吐出口側を意味する。例えば、「液体がマイクロポンプの上流側から下流側へと移動する」とは、液体がマイクロポンプの補給口から吐出口側へ移動することをいう。
【0026】
図1(a)、(b)に、本発明の第一の実施形態であるマイクロポンプを示す。マイクロポンプ11は、内部に円筒形のポンプ室12を有するケーシング13とスクリュー軸14とで構成されている。ケーシング13には、一方に補給口15と他方に吐出口16とが、ポンプ室12に連通するように設けられている。スクリュー軸14の外周部には螺旋状の溝17が形成され、ケーシング13内部のポンプ室12の内壁面とスクリュー軸14の外周部とが略接するように配置されている。そして、スクリュー軸14は、正回転(図1(a)の矢印X方向)及び逆回転(図1(a)の矢印Y方向)できる構造とされている。
【0027】
上記の構成のマイクロポンプ11は、補給口15から液体がポンプ室12内に充填され、スクリュー軸14が正回転(図1(a)の矢印X方向)されることにより、ポンプ室12の内壁面とスクリュー軸14の外周面に形成された螺旋状の溝17との間に存在する液体が吐出口16方向へと移動され、吐出口16から外部へと吐出される。また、スクリュー軸14の回転を停止することにより、ポンプ室12の内壁面とスクリュー軸14の溝17との間の空間に存在する液体の移動が停止され、吐出口16からの液体の吐出が停止される。
【0028】
ここで、円筒形のポンプ室12の内径R(図1(a)参照)は、0.1mmから10mmの範囲内とすることができ、さらに、マイクロポンプ11の送液能力とマイクロポンプ11のサイズを考慮した場合、0.5mmから5mmの範囲内とすることが好ましい。
また、スクリュー軸14の螺旋状の溝17の頂部18のスクリュー軸14の軸線Lからの垂直距離T1(図1(b)参照)と溝17の底部19のスクリュー軸14の軸線Lからの垂直距離T2(図1(b)参照)との比T1/T2は、5/1から100/99の範囲内とすることができ、さらに、デッドボリュームと液体の経路の確保とを考慮した場合には、3/2から100/95の範囲内とすることが好ましい。
【0029】
また、スクリュー軸14の溝17のピッチP(図1(b)参照)は、100/mmから0.1/mmの範囲内とすることができ、さらに、デッドボリュームと液体の経路の確保とを考慮した場合には、10/mmから0.5/mmの範囲内とすることが好ましい。
また、吐出口16の大きさは、液体の表面張力により液体が流出することのない程度の大きさであれば良く、例えば、液体が緩衝液等の場合には、吐出口16の断面積を1μmから10mmの範囲内とすることができ、好ましくは100μmから1mmの範囲内とすることが好ましい。
【0030】
したがって、上記の構成のマイクロポンプ11においては、逆止弁を別途設けなくても、液体の逆流や漏れを防止することができるので、マイクロポンプ11の構造が簡単となり、その製作コストを大きく低減することができる。
また、ポンプ室12およびスクリュー軸14の形状等を規定することにより、ポンプ室12の内容積とスクリュー軸14の占める体積との差を1μlから10μlの範囲内とすることができる。したがって、上記のマイクロポンプ11においては、ポンプ室12内に残存するデッドボリュームを最大でも10μlと小さくすることができるとともに、ポンプ室12の内壁面とスクリュー軸14の外周面に形成された螺旋状の溝とで構成される液体の経路を確保することができるので、液体の搬送を確実に行なうことができる。
また、ポンプ室12およびスクリュー軸14の形状等が規定されているので、上記のマイクロポンプ11は、数百ナノリットル単位での液体の搬送に適したものである。
【0031】
なお、本実施形態においては、スクリュー軸14の駆動手段を設けていないが、この駆動手段は、マイクロポンプ11と一体にして設けても良いし、別途独立に設けても良い。
また、ポンプ室12の内壁面またはスクリュー軸14の外周面には、親水性処理を施しても良い。この場合には、ポンプ室12内への液体の導入が確実かつ容易に行うことができる。
【0032】
図2(a)、(b)に、本発明の第二の実施形態である液体供給装置を示す。この液体供給装置21では、マイクロポンプ11の補給口15の上流側には、液体の補給槽22が補給口15と連通するように設けられている。そして、スクリュー軸14は、スクリュー軸14の軸線L方向に沿って移動できるように配置され、ポンプ室12のスクリュー軸14の先端側に対向する壁面に吐出口16が設けられている。
【0033】
上記の構成の液体供給装置21では、スクリュー軸14が正回転(図2(a)の矢印X方向)されることにより、補給槽22から補給口15を通じてポンプ室12内に液体が流入され、スクリュー軸14の溝17とポンプ室12の内壁面との間の空間に充填された液体が下流側へと押し出され、吐出口16から液体が吐出される。スクリュー軸14の回転を停止すると、補給槽22からポンプ室12への液体の流入が止まり、液体の表面張力によって吐出口16からの液体の流出が停止される。
【0034】
上記の構成の液体供給装置21においては、スクリュー軸14をその軸線L方向に移動することにより、スクリュー軸14の先端側に設けられた吐出口16をスクリュー軸14の先端部にて封止できるので、吐出口16からの液体の流出を確実に防止することができる。したがって、吐出口16に逆止弁を設けなくてもポンプ室12から外部への液体の流出を防止できるので、液体供給装置21の構造を簡単にでき、その製造コストを大幅に低減することができる。
【0035】
また、上記の構成の液体供給装置21では、スクリュー軸14が逆回転(図2(a)の矢印Y方向)されると、スクリュー軸14の溝17とポンプ室12の内壁面との間の空間に存在する液体が上流側へ逆流し、補給口15を通じて補給槽22内に流入され、補給槽22内の液体を攪拌することができる。したがって、上記の液体供給装置においては、例えば液体が懸濁液や微小粒子を含有する液体である場合には、その固形成分が補給槽22内で沈降分離することを防止でき、液体内の固形成分の分布密度を一定に維持することができる。
【0036】
図3(a)、(b)に、本発明の第三の実施形態である液体供給装置を示す。この液体供給装置31では、マイクロポンプ11と補給槽22とスクリュー軸の駆動装置32とが備えられている。補給口15は、ポンプ室12のスクリュー軸14の先端側に対向する壁面に設けられ、補給口15の上部側には、補給槽22がケーシング13の壁面を切り欠くことにより形成されている。また、吐出口16は、スクリュー軸14の後端側に設けられている。駆動装置32は、スクリュー軸14を正回転(図3(a)の矢印X方向)及び逆回転(図3(a)の矢印Y方向)させるとともに、スクリュー軸14をその軸線L方向に移動することができるように構成されている。
【0037】
上記の構成の液体供給装置31においては、スクリュー軸14をその軸線L方向に移動することにより、スクリュー軸14の先端側に設けられた補給口15をスクリュー軸14の先端部にて封止できるので、補給口15からの液体の流入を確実に防止することができる。したがって、補給口15に逆止弁を設けなくてもポンプ室12から補給槽22への液体の逆流を防止できるので、液体供給装置31の構造を簡単にでき、その製造コストを大幅に低減することができる。
【0038】
図4(a)、(b)に、本発明の第四の実施形態である液体供給装置を示す。この液体供給装置41においては、マイクロポンプ11のスクリュー軸14は、その軸線L方向に移動可能なように配置されており、ポンプ室12のスクリュー軸14の先端側に対向する壁面に吐出口16が設けられている。そして、吐出口16の下流側には、ノズル42が具備されている。
【0039】
上記の構成の液体供給装置41では、スクリュー軸14を吐出口16の方向(図4(b)の矢印Z方向)に向けて移動させることにより、吐出口16の下流側に設けられたノズル42を通じて、液体を一定量の液滴として外部に供給することができので、別途液体吐出手段を設ける必要がない。ここで、スクリュー軸14の移動速度、ノズル42の形状を調整することにより、外部に供給される液量を制御することができる。
【0040】
図5(a)、(b)、(c)に、本発明の第五の実施形態である液体供給装置を示す。この液体供給装置51においては、マイクロポンプ11の吐出口16は、ポンプ室12のスクリュー軸14の先端側に対向する壁面に形成されており、スクリュー軸14はその軸線L方向に移動可能に配置され、スクリュー軸14の先端で吐出口16を閉止できるように構成されている。
そして、吐出口16の下流側に設けられた貯留槽52の下部にゲート53が設けられ、ゲート53の下方には、配管54が接続されている。
【0041】
このゲート53は、常態においては液体の流通を阻止し、一定以上の圧力が加わった場合には液体の流通を許すものである。ゲート53は、疎水性の材料で構成されており、例えばフッ素系樹脂、より具体的にはポリテトラフルオロエチレン等で構成されている。ゲート53の形状としては、リング状、筒状、メッシュ状のものなどが使用できるが、これらの形状に限定されるものではない。
【0042】
貯留槽52の一端部は、加圧室55内に開口するように配置されており、加圧室55には、加圧手段としてヒーター56が直結されている。ここで、貯留槽52とゲート53と配管54と加圧室55とヒーター56とは、液体吐出手段57を構成している。なお、加圧室55には、ゲート53の流路断面積に対比して十分に小さい断面積を有する連通口555aが形成され、液体の加圧室55に向けた移動に際しては、液体の流入による加圧室55内の圧力上昇により加圧室55内部の気体を大気中に逃がし、かつ加圧室55内の急速な圧力上昇に際しては、加圧室55内部の気体の流出が制限されるものである。
【0043】
上記の構成の液体供給装置51においては、マイクロポンプ11から貯留槽52に液体58を移送し(図5(a))、次いで、駆動手段32によるスクリュー軸14の軸線L方向への移動によって、スクリュー軸14の先端側に形成されている吐出口16が閉止され(図5(b))、液体58はゲート53によって保持されている。この状態で、ヒーター56により加圧室55内の圧力を上昇させ、一定以上の圧力になった時点で、液体58がゲート53を通過して、配管54を通じて外部に供給される。
【0044】
また、一定量以上の液体58が貯留槽51に移送された場合、貯留槽51の上部に余剰な液体59が存在するが、ヒーター56を一気に加熱し、ヒーター室56a内の気体を急激に熱膨張させることにより、加圧室55内に気流を発生させ、余剰な液体59を除去できる(図5(c))。このようにして、上記の構成の液体供給装置51では、貯留槽51に所望の計量機能を持たせ、定量性を備えることもできる。
【0045】
なお、上記の構成の液体供給装置51において、加圧手段はヒーター56に限定されるものではなく、例えば気体供給手段を使用しても良い。気体供給手段は、例えば気体を充填した気体槽と、気体を外部に供給するためのチューブとから構成されるものであり、該チューブの一部を加圧室55内に設置するものである。このような気体供給手段を用いれば、気体を加圧室55内に導入することにより、加圧室55内の圧力を上昇させることができる。さらに別の気体供給手段としては、コンプレッサーとレギュレーターとの組み合わせからなるものであっても良い。
【0046】
図6に、本発明の第六の実施形態である液体供給装置を示す。この液体供給装置61においては、補給槽22と貯留槽52と配管54と加圧室55とヒーター室56aとが、マイクロポンプ11のケーシング13の壁面を切り欠くことによって形成されている。また、駆動装置32は、ケーシング13の内部に収容されており、スクリュー軸14を正回転及び逆回転でき、かつ軸線L方向に移動することができる構成とされている。また、貯留槽52の下流側にゲート53が装着され、液体吐出手段57を構成している。
上記の構成の液体供給装置61では、補給槽22とマイクロポンプ11と液体吐出手段57とが一体となって形成されているので、液体供給装置61の移動や保管が容易であるとともに、これらの部材を接続する必要がないので即座に使用することができる。
【0047】
図7(a)、(b)、(c)に、本発明の第七の実施形態である液体供給装置を示す。
液体供給装置71においては、マイクロポンプ11の補給口15に連通するように補給槽22が設けられ、この補給槽22の外周部を覆うように、例えば銅等の熱伝導性の良い材料からなる熱伝導性ブロック72が配置されている。また、熱伝導性ブロック72と熱的に接触して着脱可能なように、熱交換器73が設置されている。これら熱伝導性ブロック72と熱交換器73とは、温度調節手段74を構成している。
【0048】
上記の構成の液体供給装置71においては、熱伝導性ブロック72と熱交換器73とが接続されているため、熱伝導性ブロック72が一定温度に保持される。これにより、熱伝導性ブロック72で覆われた補給槽22に充填された液体75においても、その温度が一定に保持される。液体75をポンプ室12内に補給する際には、熱交換器73を分離して行なうことができる。
したがって、上記の構成の液体供給装置71では、補給槽22内の液体75が、外部の温度変化によって、その性質が変化することを防止できる。また、熱交換器73と分離できるため、熱交換器73の配置条件に制限されることなく、任意の場所に液体75を供給することができる。
【0049】
なお、本実施の形態においては、マイクロポンプがひとつだけ設置されたもので説明したが、マイクロポンプを複数並列に配置してもよい。ここで、スクリュー軸を連結手段を介して駆動手段に接続することにより、同時に複数の場所に液体を供給することが可能となる。
また、本発明のマイクロポンプまたは液体供給装置において、スクリュー軸の回転動作及び軸線方向の動作を制御することにより、連続的または間欠的に液体を供給する液体供給システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の第一の実施形態であるマイクロポンプの説明図である。
【図2】本発明の第二の実施形態である液体供給装置の説明図である。
【図3】本発明の第三の実施形態である液体供給装置の吐出口付近の詳細説明図である。
【図4】本発明の第四の実施形態である液体供給装置の説明図である。
【図5】本発明の第五の実施形態である液体供給装置の説明図である。
【図6】本発明の第六の実施形態である液体供給装置の説明図である。
【図7】本発明の第七の実施形態である液体供給装置の説明図である。
【図8】従来のダイヤフラム式ポンプの一例の説明図である。
【符号の説明】
【0051】
11 マイクロポンプ
12 ポンプ室
13 ケーシング
14 スクリュー軸
15 補給口
16 吐出口
17 溝
18 頂部
19 底部
21、31、41、51、61、71 液体供給装置
22 補給槽
32 駆動装置(駆動手段)
52 貯留槽
53 ゲート
55 加圧室
56 ヒーター(加圧手段)
57 液体吐出手段
74 温度調節手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流量1μl/分から10ml/分および圧力10から10000Paの範囲の送液能力を有するマイクロポンプであって、
液体の補給口と吐出口とを有するとともに内部に円筒形のポンプ室を有するケーシングと、外周部に螺旋状の溝が形成され、前記ケーシング内に配置されたスクリュー軸とを有することを特徴とするマイクロポンプ。
【請求項2】
請求項1に記載のマイクロポンプにおいて、
前記ポンプ室の軸線に直交する断面がなす円の直径Rが、0.1mmから10mmであることを特徴とするマイクロポンプ。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のマイクロポンプにおいて、
前記スクリュー軸の外周部に形成された前記溝の頂部の前記スクリュー軸の軸心からの垂直距離T1と、前記溝の底部の前記スクリュー軸の軸心からの垂直距離T2との比T1/T2が、5/1から100/99の範囲内であることを特徴とするマイクロポンプ。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載のマイクロポンプにおいて、
前記吐出口の断面積が、1μmから10mmの範囲内であることを特徴とするマイクロポンプ。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかに記載のマイクロポンプにおいて、
前記ポンプ室の内容積と前記スクリュー軸の占める体積との差が、1μlから10μlの範囲内であることを特徴とするマイクロポンプ。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれかに記載のマイクロポンプと、該マイクロポンプの前記スクリュー軸を駆動する駆動手段とを備えた液体供給装置。
【請求項7】
請求項1から請求項5のいずれかに記載のマイクロポンプと、前記マイクロポンプより送液される液体の補給槽を備えたことを特徴とする液体供給装置。
【請求項8】
請求項7記載の液体供給装置において、
前記補給槽を温度調節する温度調節手段が設けられたことを特徴とする液体供給装置。
【請求項9】
請求項1から請求項5のいずれかに記載のマイクロポンプと、該マイクロポンプより移送された液体を一時保持する貯留槽と、該貯留槽内に貯留された液体を外部に吐出させる液体吐出手段とを備えたことを特徴とする液体供給装置。
【請求項10】
請求項9記載の液体供給装置において、
前記液体吐出手段は、加圧室と、加圧手段と、前記貯留槽の下流側に常態において液体の通過を阻止し一定以上の圧力下において液体の通過を許すゲートとで構成されていることを特徴とする液体供給装置。
【請求項11】
請求項1から請求項5のいずれかに記載のマイクロポンプを複数並列に設け、該マイクロポンプの前記スクリュー軸が、連結手段を介して前記スクリュー軸の駆動手段に連結されていることを特徴とする液体供給装置。
【請求項12】
請求項7から請求項10のいずれかに記載の液体供給装置において、
前記マイクロポンプの前記スクリュー軸を駆動する駆動手段を設けたことを特徴とする液体供給装置。
【請求項13】
請求項6または請求項11もしくは請求項12に記載の液体供給装置において、
前記駆動手段は、前記スクリュー軸を正回転かつ逆回転させることができるように構成されたことを特徴とする液体供給装置。
【請求項14】
請求項6または請求項11から請求項13のいずれかに記載の液体供給装置において、
前記スクリュー軸は、前記スクリュー軸の軸線方向に移動可能、かつ、前記吐出口または前記補給口を開閉可能に配置され、
前記駆動手段は、前記スクリュー軸を回転させるとともに、前記スクリュー軸の軸線方向に移動できるように構成されていることを特徴とする液体供給装置。
【請求項15】
請求項14に記載の液体供給装置において、
前記スクリュー軸をその軸線方向に移動させることにより、液体を一定容量の液滴として外部に吐出できることを特徴とする液体供給装置。
【請求項16】
請求項15に記載の液体供給装置と、前記スクリュー軸の回転運動及び軸線方向の運動を制御する制御手段とを設けたことを特徴とする液体供給システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−144740(P2006−144740A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−338977(P2004−338977)
【出願日】平成16年11月24日(2004.11.24)
【出願人】(000237204)みらかホールディングス株式会社 (11)
【Fターム(参考)】