説明

マイクロミラーデバイス

【課題】マイクロミラー基板が初期形状を保ったまま組み立てられるマイクロミラーデバイスを提供する。
【解決手段】マイクロミラーデバイス100は、メンブレン部111を有するマイクロミラー基板110と、マイクロミラー基板110に対向して配置された電極基板120と、マイクロミラー基板110と電極基板120の間に配置され両者の間隔を規制する中間部材130と、マイクロミラー基板110と電極基板120を接合するハンダボール150とから構成されている。中間部材130は、メンブレン部111との接触を避けるための逃げ孔131を有している。中間部材130はまた、マイクロミラー基板110に対向する面に逃げ孔131を取り囲む溝132を有している。溝132は、微小粉体である表面固着性樹脂ボール140で充てんされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロミラーデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特開2009−14762号公報に示されているように、従来技術では、可動ミラー部とミラー支持部を有するマイクロミラーチップ(以後、マイクロミラー基板と記載)と、駆動電極と配線パターンが形成された電極基板との間に厚みが均一である中間スペーサを可動ミラー部以外のところで隙間なく密着させて挟み、中間スペーサには貫通孔が複数設けられ、貫通孔には熱と荷重により溶融する接合部材が挿入配置されマイクロミラー基板と電極基板を電気的に接合し、中間スペーサがあることで可動ミラー部が駆動してもマイクロミラー基板と電極基板間のギャップ量の変動を抑制することができるマイクロミラーデバイスの提供を可能にしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−14762号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
先行技術ではマイクロミラー基板と電極基板とを厚みが均一な中間スペーサを可動ミラー部以外のところで隙間なく密着させて挟むことで、マイクロミラー基板と電極基板間のギャップ量の変動を規制している。しかし、マイクロミラー基板の厚みは薄いため、組み立ての際に、他の電極基板や中間スペーサに基板の形状がならいやすいことや、基板の反りが存在しているマイクロミラー基板を加圧することで貼り合わせた場合、マイクロミラー基板のミラー支持部が中間スペーサにならって変形されてしまう。これは、たとえば、組立後のマイクロミラーデバイスの可動ミラー部と駆動電極の間隔が予定通りにならない原因となる。
【0005】
本発明はこのような実情を考慮してなされたものであり、マイクロミラー基板が初期形状を保ったまま組み立てられるマイクロミラーデバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によるマイクロミラーデバイスは、可動ミラー部を有する第一の基板と、前記第一の基板に対向して配置される第二の基板と、前記第一の基板と前記第二の基板の間に配置され前記第一の基板と前記第二の基板の基板間隔を規制する中間部材と、前記第一の基板と前記第二の基板とを接合する接合部材とを備えている。前記中間部材は、前記可動ミラー部との接触を避けるための逃げ孔を有している。前記中間部材はまた、前記第一の基板に対向する面に前記逃げ孔を取り囲む溝を有し、したがって前記溝の内側に位置する内壁と前記溝の外側に位置する外壁とを有している。前記溝は微小粉体で充てんされている。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、マイクロミラー基板が初期形状を保ったまま組み立てられるマイクロミラーデバイスが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】第一の実施の形態のマイクロミラーデバイスの分解斜視図である。
【図2】第一の実施の形態のマイクロミラーデバイスの組立斜視図である。
【図3】第一の実施の形態においてマイクロミラー基板が凹状に沿っている例のマイクロミラーデバイスの接合前のA−A接合断面図である。
【図4】第一の実施の形態においてマイクロミラー基板が凹状に沿っている例のマイクロミラーデバイスの接合途中のA−A接合断面図である。
【図5】第一の実施の形態においてマイクロミラー基板が凹状に沿っている例のマイクロミラーデバイスの接合後のA−A接合断面図である。
【図6】第一の実施の形態においてマイクロミラー基板が凸状に沿っている例のマイクロミラーデバイスの接合前のA−A接合断面図である。
【図7】第一の実施の形態においてマイクロミラー基板が凸状に沿っている例のマイクロミラーデバイスの接合途中のA−A接合断面図である。
【図8】第一の実施の形態においてマイクロミラー基板が凸状に沿っている例のマイクロミラーデバイスの接合後のA−A接合断面図である。
【図9】微小粉体の接合前と接合後の断面概略図である。
【図10】第二の実施の形態のマイクロミラーデバイスの分解斜視図である。
【図11】第二の実施の形態のマイクロミラーデバイスの組立斜視図である。
【図12】第二の実施の形態においてマイクロミラー基板が凸状に沿っている例のマイクロミラーデバイスの接合前のB−B接合断面図である。
【図13】第二の実施の形態においてマイクロミラー基板が凸状に沿っている例のマイクロミラーデバイスの接合途中のB−B接合断面図である。
【図14】第二の実施の形態においてマイクロミラー基板が凸状に沿っている例のマイクロミラーデバイスの接合後のB−B接合断面図である。
【図15】第二の実施の形態においてマイクロミラー基板が凹状に沿っている例のマイクロミラーデバイスの接合前のB−B接合断面図である。
【図16】第二の実施の形態においてマイクロミラー基板が凹状に沿っている例のマイクロミラーデバイスの接合途中のB−B接合断面図である。
【図17】第二の実施の形態においてマイクロミラー基板が凹状に沿っている例のマイクロミラーデバイスの接合後のB−B接合断面図である。
【図18】第二の実施の形態の第一の変形例のマイクロミラーデバイスの接合前の接合断面図である。
【図19】第二の実施の形態の第一の変形例のマイクロミラーデバイスの接合後の接合断面図である。
【図20】第二の実施の形態の第二の変形例のマイクロミラーデバイスの接合前の接合断面図である。
【図21】第二の実施の形態の第二の変形例のマイクロミラーデバイスの接合後の接合断面図である。
【図22】図21の楕円内を拡大して示すマイクロミラーデバイスの接合断面の部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
【0010】
<第一の実施の形態>
本発明の第一の実施の形態を図1〜図9を用いて説明する。
【0011】
(構成)
図1と図2に示すように、本実施形態のマイクロミラーデバイス100は、第一の基板であるマイクロミラー基板110と、マイクロミラー基板110に対向して配置された第二の基板である電極基板120と、マイクロミラー基板110と電極基板120の間に配置されマイクロミラー基板110と電極基板120の基板間隔を規制する中間部材130と、マイクロミラー基板110と電極基板120とを接合する接合部材であるハンダボール150とから構成されている。
【0012】
マイクロミラー基板110は、可動ミラー部であるメンブレン部111と、メンブレン部111を取り囲みメンブレン部111を支持するミラー支持部112とを有している。
【0013】
電極基板120は、メンブレン部111に対向する位置に、メンブレン部111を静電駆動で動かすための駆動電極121が設けられている。
【0014】
中間部材130は、静電駆動によりメンブレン部111が変形されたときにメンブレン部111との接触を避けるための逃げ孔131を有している。逃げ孔131は、中間部材130を貫通して延びている。中間部材130は、マイクロミラー基板110に対向する面に逃げ孔131を取り囲む溝132を有し、したがって溝132の内側に位置する内壁133と溝132の外側に位置する外壁134とを有している。
【0015】
図3〜図8に示すように、内壁133と外壁134は、マイクロミラーデバイスに求められるマイクロミラー基板と電極基板との所定の間隔となる高さを有し、内壁133と外壁134は背の高さが同じである。中間部材130は、内壁133よりも背の高い弾性部材135が、内壁133に接して内壁133を取り囲むように設けられている。中間部材130はまた、外壁134よりも背の高い弾性部材136が、外壁134に接して外壁134の内側を周回するように設けられている。弾性部材135と弾性部材136は背の高さが同じである。
【0016】
溝132は、微小粉体である表面固着性樹脂ボール140で充てんされている。表面固着性樹脂ボール140は、図9に示すように、樹脂ボール141と、その表面に設けられた固着性樹脂142とから構成されている。樹脂ボール141は、たとえば、ジビニルベンゼンを主成分とする樹脂製のボールで構成され、最小径はたとえば3μmである。固着性樹脂142は、加熱により溶融して互いに混じり合い、冷却により硬化して樹脂ボール141を内包してマイクロミラー基板110と中間部材130とを接合する。
【0017】
再び図3〜図8を参照すると、マイクロミラー基板110と電極基板120は、それぞれ、互いに対向する位置に接合パッド113と接合パッド122を有している。接合パッド113と接合パッド122は中間部材130の外側に位置している。しかし、接合パッド113と接合パッド122は、逃げ孔131の内側に位置していてもよい。その場合はメンブレン部111と接触しないように配置される。
【0018】
図5と図8に示すように、ハンダボール150は、接合パッド113と接合パッド122の間に位置し、両者を電気的および機械的に接合している。これによりマイクロミラー基板110と電極基板120が互いに固定されている。
【0019】
マイクロミラー基板110としては、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)などの半導体があげられる。電極基板120としては、シリコンで形成された半導体基板があげられる。中間部材130の材料としては、平坦度が良く、シリコンと線膨張係数が近いホウケイ酸ガラスがあげられる。弾性部材135の材料としては、マイクロミラー基板110の重さに対して容易に収縮する物質、たとえばポリイミドがあげられる。
【0020】
(製造方法)
図3〜図5は、凹状に反ったマイクロミラー基板110を接合する例の断面を示し、図6〜図8は、凸状に反ったマイクロミラー基板110を接合する例の断面を示している。
【0021】
図3または図6に示すように、電極基板120上に中間部材130を配置して、電極基板120の接合パッド122にハンダボール150を配置する。ハンダボール150は、電極基板120の接合パッド122にハンダバンプとして予め形成してもよい。また、中間部材130の溝132に表面固着性樹脂ボール140を満たし、スキージなどで余分な表面固着性樹脂ボール140を取り除く。あるいは、後述するマイクロミラー基板110の沈み込みを見こして、ある程度の余裕を残して、表面固着性樹脂ボール140を中間部材130の溝132に入れる。
【0022】
中間部材130の上からマイクロミラー基板110を乗せる。
【0023】
マイクロミラー基板110が凹状に反っている例では、図4に示すように、マイクロミラー基板110のミラー支持部112が、中間部材130の内壁133の周囲に設けられた弾性部材135に当接する。弾性部材135はマイクロミラー基板110の重さに対して収縮する。その結果、マイクロミラー基板110は自重によって沈み込み、図5に示すように中間部材130の内壁133に当てつけられる。
マイクロミラー基板110が凸状に反っている例では、図7に示すように、マイクロミラー基板110のミラー支持部112が、中間部材130の外壁134の内側に設けられた弾性部材136に当接する。弾性部材136はマイクロミラー基板110の重さに対して収縮する。その結果、マイクロミラー基板110は自重によって沈み込み、図8に示すように中間部材130の外壁134に当てつけられる。
【0024】
このとき、マイクロミラー基板110のミラー支持部112の形状に沿って表面固着性樹脂ボール140が移動して、マイクロミラー基板110のミラー支持部112と中間部材130の隙間を埋める。
【0025】
リフロー炉に投入する。リフロー炉への投入による過熱によって、表面固着性樹脂ボール140は、図9に示すように、表面の固着性樹脂142が溶融し互いに混じり合う。その後、リフロー炉から取り出す。リフロー炉からの取り出しによる冷却によって、固着性樹脂142は樹脂ボール141を内包したまま硬化してマイクロミラー基板110のミラー支持部112と中間部材130を固定する。
【0026】
また、接合パッド122に配置されたハンダボール150は、リフロー炉への投入による過熱によって溶融し、リフロー炉からの取り出しによる冷却によって硬化してマイクロミラー基板110の接合パッド113と電極基板120の接合パッド122とを電気的および機械的に接合する。その結果、マイクロミラー基板110と電極基板120が接合される。
【0027】
(作用)
中間部材130がマイクロミラー基板110に対向する面に溝132を有し、溝132は無数の微小な表面固着性樹脂ボール140で充てんされているので、マイクロミラー基板110が中間部材130の上に乗せられたとき、表面固着性樹脂ボール140がマイクロミラー基板110のミラー支持部112に沿って移動し、マイクロミラー基板110の初期の形状を維持したまま、マイクロミラー基板110のミラー支持部112と中間部材130との隙間が表面固着性樹脂ボール140で埋められる。
【0028】
また弾性部材135または弾性部材136がマイクロミラー基板110の重さの負荷に対して収縮し、マイクロミラー基板110のミラー支持部112が中間部材130の内壁133または外壁134に当てつけられる。
【0029】
過熱と冷却により表面固着性樹脂ボール140の表面の固着性樹脂142が溶融され硬化されて、マイクロミラー基板110のミラー支持部112と中間部材130とを接合する。
【0030】
(効果)
マイクロミラー基板110と中間部材130との隙間が表面固着性樹脂ボール140で埋められるため、マイクロミラー基板110が初期形状を保ったまま、マイクロミラー基板110のミラー支持部112が電極基板120および中間部材130と接合されて、マイクロミラーデバイス100が組み立てられるので、メンブレン部111とミラー支持部112の歪の発生が抑えられ、特にメンブレン部111の平面度が良好に保たれる。
【0031】
また、マイクロミラー基板110のミラー支持部112が表面固着性樹脂ボール140によって中間部材130に隙間なく接合されているため、ミラー支持部112の全体が拘束されているので、メンブレン部111が駆動されるときに、メンブレン部111の駆動に起因するミラー支持部112の振動の発生が良好に抑えられ、メンブレン部111の安定した動作が得られる。
【0032】
マイクロミラー基板110が中間部材130の上に乗せられたときに弾性部材135または弾性部材136が収縮してマイクロミラー基板110のミラー支持部112が中間部材130の内壁133または外壁134に当てつけられるので、メンブレン部111と駆動電極121が予定通りの間隔をもってマイクロミラー基板110と電極基板120とが接合される。
【0033】
<第二の実施の形態>
本発明の第二の実施の形態を図10〜図16を用いて説明する。
【0034】
(構成)
図10と図11に示すように、本実施形態のマイクロミラーデバイス200は、第一の基板であるマイクロミラー基板210と、マイクロミラー基板210に対向して配置された第二の基板である電極基板220と、マイクロミラー基板210と電極基板220の間に配置されマイクロミラー基板210と電極基板220の基板間隔を規制する中間部材230と、マイクロミラー基板210と電極基板220とを接合するハンダボール150とから構成されている。
【0035】
マイクロミラー基板210は、可動ミラー部であるメンブレン部211と、メンブレン部211を取り囲みメンブレン部211を支持するミラー支持部212とを有している。
【0036】
電極基板220は、メンブレン部211に対向する位置に、メンブレン部211を静電駆動で動かすための駆動電極221が設けられている。
【0037】
中間部材230は、静電駆動によりメンブレン部211が変形されたときにメンブレン部211との接触を避けるための逃げ孔231を有している。逃げ孔231は、中間部材230を貫通して延びている。中間部材230は、マイクロミラー基板210に対向する面に逃げ孔231を取り囲む溝232を有し、したがって溝232の内側に位置する内壁233と溝232の外側に位置する外壁234とを有している。中間部材230は、233内壁と背の高さが同じ周壁237によって取り囲まれた複数の貫通孔238が逃げ孔231の周りに近接して設けられている。
【0038】
図12〜図16に示すように、内壁233と周壁237は背の高さが同じであり、外壁234は内壁233および周壁237よりも背が高い。中間部材230の外形はマイクロミラー基板210の外形よりも大きく、外壁234はマイクロミラー基板210の外側に位置している。中間部材230は、内壁233よりも背の高い弾性部材235が、内壁233に接して内壁233を取り囲むように設けられている。中間部材230はまた、周壁237よりも背の高い弾性部材239が、周壁237に接して周壁237を取り囲むように設けられている。弾性部材235と弾性部材239は背の高さが同じである。溝232は、表面固着性樹脂ボール140で充てんされている。マイクロミラー基板210と電極基板220は、それぞれ、接合パッド213と接合パッド222を有している。接合パッド213と接合パッド222は、中間部材230の貫通孔238を介して互いに対向している。
【0039】
図13と図16に示すように、ハンダボール150は貫通孔238の内部に収容されており、接合パッド213と接合パッド222の間に位置し、両者を電気的および機械的に接合している。これによりマイクロミラー基板210と電極基板220が互いに固定されている。
【0040】
マイクロミラー基板210や電極基板220の構成例、中間部材230や弾性部材235,239の材質などは、第1の実施の形態と同様である。
【0041】
(製造方法)
図12〜図14は、凸状に反ったマイクロミラー基板210を接合する例の断面を示し、図15〜図17は、凹状に反ったマイクロミラー基板210を接合する例の断面を示している。
【0042】
図12または図15に示すように、電極基板220上に中間部材230を配置して、電極基板220の接合パッド222上に、言い換えれば中間部材230の貫通孔238の内部にハンダボール150を配置する。また、中間部材230の溝232に表面固着性樹脂ボール140を満たし、スキージなどで余分な表面固着性樹脂ボール140を取り除く。
【0043】
中間部材230の上からマイクロミラー基板210を乗せる。
【0044】
マイクロミラー基板210が凸状に反っている例では、図13に示すように、マイクロミラー基板210のミラー支持部212が、中間部材230の貫通孔238の周壁237の周囲に設けられた弾性部材239に当接する。弾性部材239はマイクロミラー基板210の重さに対して収縮する。その結果、マイクロミラー基板210は自重によって沈み込み、図14に示すように中間部材230の貫通孔238の周壁237に当てつけられる。
【0045】
マイクロミラー基板210が凹状に反っている例では、図16に示すように、マイクロミラー基板210のミラー支持部212が、中間部材230の内壁233の周囲に設けられた弾性部材235に当接する。弾性部材235はマイクロミラー基板210の重さに対して収縮する。その結果、マイクロミラー基板210は自重によって沈み込み、図17に示すように中間部材230の内壁233に当てつけられる。
【0046】
このとき、マイクロミラー基板210のミラー支持部212の形状に沿って表面固着性樹脂ボール140が移動して、マイクロミラー基板210のミラー支持部212と中間部材230の隙間を埋める。また、過剰な表面固着性樹脂ボール140は、中間部材230の外壁234とマイクロミラー基板210の隙間に移動してたまる。
【0047】
そのあとは第1の実施の形態と同様に、リフロー炉に投入して過熱したのちにリフロー炉から取り出して冷却することにより、表面固着性樹脂ボール140の固着性樹脂142が樹脂ボール141を内包したまま硬化してマイクロミラー基板210のミラー支持部212と中間部材230を固定するとともに、ハンダボール150が溶融し硬化してマイクロミラー基板210の接合パッド213と電極基板220の接合パッド222とを電気的および機械的に接合する。その結果、マイクロミラー基板210と電極基板220が接合される。
【0048】
(作用)
マイクロミラー基板210が中間部材230の上に乗せられたとき、表面固着性樹脂ボール140がマイクロミラー基板210のミラー支持部212に沿って移動し、マイクロミラー基板210の初期の形状を維持したまま、マイクロミラー基板210のミラー支持部212と中間部材230との隙間が表面固着性樹脂ボール140で埋められる。
【0049】
また弾性部材235または弾性部材239がマイクロミラー基板210の重さの負荷に対して収縮し、マイクロミラー基板210のミラー支持部212が中間部材230の内壁233または周壁237に当てつけられる。
【0050】
過熱と冷却により表面固着性樹脂ボール140の表面の固着性樹脂142が溶融され硬化され、マイクロミラー基板210のミラー支持部212と中間部材230とを接合する。
【0051】
ハンダボール150は貫通孔238の内部に配置されているため、溶融されたハンダは貫通孔238の外に広がることなく、貫通孔238の中にとどまる。
【0052】
(効果)
マイクロミラー基板210と中間部材230との隙間が表面固着性樹脂ボール140で埋められるため、マイクロミラー基板210が初期形状を保ったまま、マイクロミラー基板210のミラー支持部212が電極基板220および中間部材230と接合されて、マイクロミラーデバイス200が組み立てられるので、メンブレン部211とミラー支持部212の歪の発生が抑えられ、特にメンブレン部211の平面度が良好に保たれる。
【0053】
また、マイクロミラー基板210のミラー支持部212が表面固着性樹脂ボール140によって中間部材230に隙間なく接合されているため、ミラー支持部212の全体が拘束されている。さらに、ハンダボール150が、メンブレン部211に近接した位置において、マイクロミラー基板210と電極基板220を接合し、ミラー支持部212を拘束している。このため、メンブレン部211が駆動されるときに、メンブレン部211の駆動に起因するミラー支持部212の振動の発生が良好に抑えられ、メンブレン部211の安定した動作が得られる。
【0054】
マイクロミラー基板210が中間部材230の上に乗せられたときに弾性部材235または弾性部材239が収縮してマイクロミラー基板210のミラー支持部212が中間部材230の内壁233または外壁234に当てつけられるので、メンブレン部211と駆動電極221が予定通りの間隔をもってマイクロミラー基板210と電極基板220とが接合される。
【0055】
中間部材230の外壁234がマイクロミラー基板210の外側に位置し、内壁233および周壁237よりも背が高いので、余剰の表面固着性樹脂ボール140がたまる空間が確保され、中間部材230の外側への表面固着性樹脂ボール140のはみ出しが抑えられる。
【0056】
<第二の実施の形態の第一の変形例>
本発明の第二の実施の形態の第一の変形例を図18と図19を用いて説明する。図18と図19において、図11〜図17に示した部材と同一の参照符号を付した部材は同様の部材であり、その詳しい説明は省略する。
【0057】
(構成)
本変形例では、図18と図19に示すように、マイクロミラー基板210は、中間部材230に対向する面上で、溝232に対向する位置に接合膜260が設けられている。接合膜260は、たとえば、金膜で構成される。
【0058】
また、中間部材230は、溝232の底面と側面に接合膜261が設けられている。接合膜261は、たとえば、金膜で構成される。溝232は、微小粉体である金属ボール262で充てんされている。金属ボール262は、金などの金属製のボールや、樹脂ボールに金などの金属をメッキしたボールで構成される。
【0059】
接合膜260,261と金属ボール262は、金属ボール262同士および金属ボール262と接合膜260,261とが金などの固相拡散によって互いに接合する構造を有している。
【0060】
(作用)
溝232を充てんする微小粉体が変形しにくい金属ボール262であるため、マイクロミラー基板210に外力が加わったときに、その応力が金属ボール262に伝わっても変形が抑えられる。
【0061】
(特有の効果)
外力に対して金属ボール262が変形しにくいため、メンブレン部211と駆動電極221の間隔の径時変化が少ない。
【0062】
本変形例は第1の実施の形態に適用されてもよい。
【0063】
<第二の実施の形態の第二の変形例>
本発明の第二の実施の形態の第二の変形例を図20〜図22を用いて説明する。図20〜図22において、図11〜図17に示した部材と同一の参照符号を付した部材は同様の部材であり、その詳しい説明は省略する。
【0064】
(構成)
本変形例では、図20〜図22に示すように、中間部材230の溝132には、表面固着性樹脂ボール140のほかに、多数の球状スペーサ263が入れられている。球状スペーサ263は、マイクロミラー基板210と電極基板220の間隔を規定し得る径を有しており、たとえば、中間部材230の内壁233および周壁237の背の高さに等しい径を有している。球状スペーサ263は、たとえば、表面固着性樹脂ボール140や金属ボール262と同様の構造体で構成される。すなわち、球状スペーサ263は、たとえば、樹脂ボールの表面に固着性樹脂が設けられた構造体、金などの金属製のボール、樹脂ボールに金などの金属メッキを施した構造体などで構成される。
【0065】
(製造方法)
上述したマイクロミラーデバイス200の製造方法において、中間部材230の溝232に表面固着性樹脂ボール140を満たす際に、溝232内にまず球状スペーサ263を配置し、つづいて溝232内の球状スペーサ263間のすき間に表面固着性樹脂ボール140を満たす。そのほかは同様である。
【0066】
(作用)
中間部材230の溝232の全面に球状スペーサ263が配置されていることで、中間部材230の溝232の高さが球状スペーサ263で構成される。また、球状スペーサ263以外の隙間が表面固着性樹脂ボール140で埋められる。
【0067】
(特有の効果)
中間部材230の溝232の全体の高さが球状スペーサ263で規定されるため、基板全面の基板間隔が制御される。
【0068】
本変形例もまた第1の実施の形態に適用されてもよい。
【0069】
これまで、図面を参照しながら本発明の実施形態を述べたが、本発明は、これらの実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において様々な変形や変更が施されてもよい。
【符号の説明】
【0070】
100…マイクロミラーデバイス、110…マイクロミラー基板、111…メンブレン部、112…ミラー支持部、113…接合パッド、120…電極基板、121…駆動電極、122…接合パッド、130…中間部材、131…逃げ孔、132…溝、133…内壁、134…外壁、135…弾性部材、136…弾性部材、140…表面固着性樹脂ボール、141…樹脂ボール、142…固着性樹脂、150…ハンダボール、200…マイクロミラーデバイス、210…マイクロミラー基板、211…メンブレン部、212…ミラー支持部、213…接合パッド、220…電極基板、221…駆動電極、222…接合パッド、230…中間部材、231…逃げ孔、232…溝、233…内壁、234…外壁、235…弾性部材、237…周壁、238…貫通孔、239…弾性部材、260…接合膜、261…接合膜、262…金属ボール、263…球状スペーサ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可動ミラー部を有する第一の基板と、
前記第一の基板に対向して配置される第二の基板と、
前記第一の基板と前記第二の基板の間に配置され前記第一の基板と前記第二の基板の基板間隔を規制する中間部材であって、前記可動ミラー部との接触を避けるための逃げ孔を有し、前記第一の基板に対向する面に前記逃げ孔を取り囲む溝を有し、したがって前記溝の内側に位置する内壁と前記溝の外側に位置する外壁とを有しており、前記溝は微小粉体で充てんされている中間部材と、
前記第一の基板と前記第二の基板とを接合する接合部材とを備えているマイクロミラーデバイス。
【請求項2】
前記中間部材は、前記内壁よりも背の高い弾性部材が前記内壁を取り囲むように設けられている請求項1に記載のマイクロミラーデバイス。
【請求項3】
前記中間部材は、前記内壁と背の高さが同じ周壁によって取り囲まれた複数の貫通孔が前記逃げ孔の周りに近接して設けられ、前記接合部材は、前記貫通孔の内部に収容されている請求項1に記載のマイクロミラーデバイス。
【請求項4】
前記微小粉体は表面固着性の樹脂ボールで構成されている請求項1〜3に記載のマイクロミラーデバイス。
【請求項5】
前記微小粉体は金属ボールで構成されている請求項1〜3に記載のマイクロミラーデバイス。
【請求項6】
前記中間部材の前記外壁は前記第一の基板の外側に位置し、前記外壁は前記内壁よりも背が高い請求項2に記載のマイクロミラーデバイス。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate


【公開番号】特開2011−209458(P2011−209458A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−76089(P2010−76089)
【出願日】平成22年3月29日(2010.3.29)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】