説明

マイクロ波吸収発熱材

【課題】 マイクロ波の照射によって被加熱体を急速且つ均一に加熱できるマイクロ波吸収発熱材を提供すること。
【解決手段】 本発明のマイクロ波吸収発熱材は、Si、Zr、C及びOの元素で構成される炭化ケイ素系複合酸化物を含むことを特徴とする。本発明のマイクロ波吸収発熱材によれば、被加熱体の表面に塗布又は担持させてマイクロ波を照射すると、被加熱体を急速且つ均一に加熱することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロ波エネルギーを吸収して発熱するマイクロ波吸収発熱材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルエンジン、ガソリンエンジン等の内燃機関において発生する排ガスには、環境保全の観点から浄化処理が行われるのが一般的であり、浄化処理は排ガス浄化触媒を用いて行われる。ところが、内燃機関の始動時においては、暖機されていない状態では排ガス浄化触媒の触媒活性温度よりも、排ガス及び排ガス浄化装置内の温度が低いため、十分に排ガスを浄化することができず、暖機状態である定常運転時と比較し、高い濃度のNO、HC等が排出される、いわゆるコールドエミッションが生じる場合がある。環境保全の観点から、このコールドエミッションを防止する対策が検討されている。
【0003】
コールドエミッションを防止する対策として、排ガス等の温度を急速に上昇させる方法がある。このような方法として、従来から通電加熱又は電気ヒータが用いられているが、このような方法は装置全体を加熱するため大電力を必要とし、小型、軽量化できないという問題があった。
【0004】
そのため、このような問題を解決する方法として、マイクロ波エネルギーを用いて必要な部分のみを加熱する方法が提案されている。例えば、マイクロ波吸収発熱材を担持した排ガス浄化装置を加熱室に用い、マイクロ波でマイクロ波吸収発熱材を触媒活性温度付近まで急速加熱する方法が知られている。
【0005】
このようなマイクロ波加熱方法において、加熱速度は、使用するマイクロ波吸収発熱材のマイクロ波吸収効率に大きく依存するため、これまでに様々なマイクロ波吸収発熱材が開発されている。例えば、特許文献1には、La1−xSrCoOなどのペロブスカイト型複合酸化物が記載されている。このペロブスカイト型複合酸化物と金属触媒粒子を直接接触させたマイクロ波吸収発熱材にマイクロ波を照射することによって、発熱体を急速加熱する方法が記載されている。また、特許文献2には、複合酸化物からなる半導体材料、例えば、チタン−ケイ素−炭素−酸素の化合物からなる高周波吸収材料が記載されている。
【0006】
一方、マイクロ波吸収発熱材は排ガス等の加熱に使用される以外に、マイクロ波を用いた加熱炉の内壁等に使用されることが知られている。例えば、特許文献3には、マイクロ波吸収発熱材である炭化ケイ素よりなる内壁で形成された加熱炉が記載されている。
【特許文献1】特開平7−49024号公報
【特許文献2】特開平5−171919号公報
【特許文献3】特開昭59−137785号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上述した特許文献1に記載のマイクロ波吸収発熱材においては、ペロブスカイト型複合酸化物と金属触媒粒子とを直接接触させる必要があり、ペロブスカイト型複合酸化物のみでは加熱速度が約2分の1に低下し、実用的に満足のいくものではなかった。また、特許文献2及び3に記載のマイクロ波吸収発熱材においても、マイクロ波の吸収効率が不十分であるため、マイクロ波吸収発熱材によって加熱される被加熱体を急速且つ均一に加熱することができなかった。
【0008】
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、被加熱体を急速且つ均一に加熱できるマイクロ波吸収発熱材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明によるマイクロ波吸収発熱材はSi、Zr、C及びOの元素で構成される炭化ケイ素系複合酸化物(以下、「Si−Zr−C−O複合酸化物」という)を含むことを特徴とする。
【0010】
本発明のマイクロ波吸収発熱材は、マイクロ波吸収効率が高いSi−Zr−C−O複合酸化物を含んでいるため、マイクロ波の照射によってマイクロ波吸収体を急速且つ均一に加熱することが可能となる。このため、本発明のマイクロ波吸収発熱材を被加熱体に塗布又は担持させ、マイクロ波吸収発熱材にマイクロ波を照射すると、被加熱体を急速且つ均一に加熱することができる。
【0011】
また、マイクロ波吸収特性を表す指標に誘電損率があるが、上記マイクロ波吸収発熱材においては、Si−Zr−C−O複合酸化物の誘電損率は2以上であることが好ましい。
【0012】
誘電損率が2以上と大きいSi−Zr−C−O複合酸化物を含むマイクロ波吸収発熱材を被加熱体の加熱に用いることで、より急速且つ均一に被加熱体を加熱することができる。
【0013】
ここで、誘電損率は比誘電率と誘電正接の積で定義される値であり、温度、周波数等によって変化する。そこで、本明細書において、誘電損率とは、温度25℃、周波数2.45GHzの条件において測定された誘電体の誘電損率をいうものとする。この誘電損率は、マイクロ波吸収発熱材及び被加熱体のマイクロ波吸収特性を表す指標として用いられ、誘電損率の値が大きいほど、マイクロ波吸収特性が高くなり、誘電損率の値が小さいほど、マイクロ波吸収特性が低くなる。
【0014】
また、本発明のマイクロ波吸収発熱材は、炭化ケイ素を更に含むことが好ましい。このようにマイクロ波吸収発熱材が上記炭化ケイ素系複合酸化物と炭化ケイ素とを含有することにより、マイクロ波吸収特性について相乗的な効果が発現され、マイクロ波吸収発熱材中のSi−Zr−C−O複合酸化物の含有量を増加させなくとも、より急速且つ均一に被加熱体を加熱することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明のマイクロ波吸収発熱材によれば、被加熱体を急速且つ均一に加熱することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面を参照しつつ本発明のマイクロ波吸収発熱材の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面中、同一又は相当部分には同一符号を付することとする。
【0017】
図1は、本発明のマイクロ波吸収発熱材を適用したマイクロ波加熱装置の実施形態を概略的に示す模式図である。図2は、図1に示すマイクロ波加熱装置の空胴共振器を示す斜視図であり、図3は、図2に示す空胴共振器のIII−III線に沿った断面図である。
【0018】
図1〜3に示すように、マイクロ波加熱装置100は、直方体型空胴共振器110と、直方体型空胴共振器110内にマイクロ波Wを供給するマイクロ波供給手段120と、直方体型空洞共振器110を貫通するように設けられ、排ガスFを移送させるガス移送管130と、直方体型空洞共振器110内であってガス移送管130内に配置されて排ガスFを加熱する発熱体140とを主として備えている。
【0019】
直方体型空胴共振器110は、マイクロ波Wの共振器として使用される直方体形状の金属製マイクロ波導入管1であり、図1〜3に示すものはエネルギー集中型の単一モードの直方体型空胴共振器であり、TE10n(Transverse Electric Wave、図示したものはn=1)モードのものである。そして、この単一モードの直方体型空胴共振器110は、その空胴内にマイクロ波Wの進行方向と垂直な2つの方向にそれぞれ1/2波長の定在波Sが発生するように設計されている。
【0020】
マイクロ波導入管1は金属で構成されていればよく、かかる金属としては、例えばステンレス、アルミニウム、銅、黄銅等が好適に使用される。
【0021】
マイクロ波導入管1の一端には一対の可変結合窓2が図2の矢印A方向に沿ってスライド可能に設けられており、一対の可変結合窓2とマイクロ波導入管1とによりマイクロ波導入口3が形成されている。一対の可変結合窓2間の距離を調節することによりマイクロ波導入口3の大きさを調節することが可能となっている。可変結合窓2には、当該可変結合窓2を図2の矢印A方向に沿って移動させる結合窓駆動部(例えばモータ)4が接続されている。可変結合窓2の具体的な構成は特に限定されないが、可変結合窓2には、マイクロ波導入管1と同様の材料からなる金属板、例えば、ステンレス、アルミニウム、銅、黄銅等が好適に使用される。
【0022】
更に、マイクロ波導入管1内には、可変結合窓2とは反対側に、可動短絡部材5が、マイクロ波導入管1の長手方向(図2の矢印B方向)にスライド可能に設けられている。可動短絡部材5が図2の矢印B方向にスライドすることにより、直方体型空胴共振器110内の空胴の大きさが調節されるようになっている。可動短絡部材5の具体的な構成も特に限定されないが、可動短絡部材5には、マイクロ波導入管と同様の材料からなる金属板、例えば、ステンレス、アルミニウム、銅、黄銅等が好適に使用される。可動短絡部材5には、可動短絡部材5を図2の矢印B方向に移動させる短絡部材駆動部6(例えばモータ)が接続されている。
【0023】
結合窓駆動部(例えばモータ)4は、制御装置(制御手段)7に接続されており、短絡部材駆動部6は制御装置7に接続されている。ここで、制御装置7は、排ガスFの種類、流量、温度等に合わせて最適な結合状態が得られるように、結合窓駆動部4を介して可変結合窓2の移動量を調節すると共に、短絡部材駆動部6を介して可動短絡部材5の図2の矢印B方向に沿った移動量を調節する。具体的には、制御装置7は、後述するセラミック担体の加熱中に直方体型空胴共振器110内で最適な共振状態が維持されるように、可変結合窓2及び可動短絡部材5の移動量を適宜制御する。
【0024】
マイクロ波供給手段120は、マイクロ波Wを発振するマイクロ波発振器8と、マイクロ波発振器8で発振されたマイクロ波Wを伝送する同軸ケーブル9と、導波管による電力の伝送を同軸ケーブル9に変換する同軸−導波管変換器10と、方向性結合器11を有している。
【0025】
なお、本発明において、マイクロ波とは、0.3〜30GHz帯(波長10mm〜1m)の電波をいい、いわゆるセンチ波及び極超短波といわれる電波をも含むものである。マイクロ波発振器8は、上記の周波数帯のマイクロ波を発振するものであればよく、通常はマグネトロン、クライストロン、ガン・ダイオード等が用いられる。
【0026】
同軸−導波管変換器10は、直方体型空胴共振器110のマイクロ波導入口3に接続され、更に途中に方向性結合器11が設置されている同軸ケーブル9を介してマイクロ波発振器8が接続されている。そして、方向性結合器11は制御装置7に接続されており、方向性結合器11によって測定される直方体型空胴共振器110からのマイクロ波反射率{(反射電力/入射電力)×100}が最小になるように可変結合窓2と可動短絡部材5とが制御装置7によって制御されるように構成されている。マイクロ波を高出力で使用する場合には、マイクロ波発振器8とマイクロ波導入口3とが、同軸−導波管変換器10及び同軸ケーブル9の替わりに、方向性結合器11が設置されている導波管で接続されていることが好ましい。なお、直方体型空胴共振器110からのマイクロ波反射率は10%以下に維持されることが好ましい。
【0027】
ガス移送管130は、直方体型共振器110を構成するマイクロ波導入管1を貫通している。具体的には、ガス移送管130はマイクロ波Wの進行方向と直交する方向に延びている。ガス移送管130は、排ガスFが加熱される加熱管130aと、加熱管130aの両側に接続される金属管130bとで構成されており、直方体型空胴共振器110内のマイクロ波が外部に漏れない構造となっている。加熱管130aには、マイクロ波Wを吸収して発熱し排ガスFを加熱する発熱体140が収納されている。金属管130bは、排ガスFを加熱管130aに導入し、又は加熱管130a内で加熱された排ガスFを流通させるためのものであり、かかる金属管を構成する金属としては、例えばステンレス、アルミニウム、銅等が使用される。更に、金属管130bと加熱管130aの間には排ガスFが漏れないようにシール(図示せず)が施されている。
【0028】
このような加熱管130aは、マイクロ波を透過し易くかつ耐熱性が高い材料で構成されることが好ましく、高純度アルミナ、ムライト、コージェライト、ジルコニア、マグネシア、窒化ホウ素等のセラミックス製の管が好適に用いられる。また、加熱管130aの周囲は断熱材12で覆われており、このような断熱材12もマイクロ波を透過し易いものが好ましく、耐熱用アルミナファイバー等のセラミックス繊維製の断熱材が好適に用いられる。
【0029】
加熱管130aは、可変結合窓2と可動短絡部材5との間であって、後述する発熱体140が可変結合窓2から定在波Sの1/4波長の位置を含むように配置されていることが好ましい。
【0030】
発熱体140について図4を用いて説明する。図4は、発熱体140の部分断面図である。
【0031】
図4に示すように、発熱体140は、マイクロ波吸収発熱材13と、マイクロ波吸収発熱材13を担持するセラミック担体14とで構成されている。
【0032】
セラミック担体14は、繊維状の材料からなる織布又は不織布であってもよいが、多孔質体や多数の貫通孔15を有する構造であることが好ましい。本実施形態では、セラミック担体14はモノリス形状となっている。即ちセラミック担体14は、排ガスを流通させるための多数の貫通孔15を有している。貫通孔15は、排ガスFが通過し易く圧力損失をできるだけ小さくするために加熱管130aの延び方向と平行な方向に延びている。そして、貫通孔15を形成する壁面にマイクロ波吸収発熱材13が担持されている。
【0033】
マイクロ波吸収体13はSi−Zr−C−O複合酸化物を含有している。Si−Zr−C−O複合酸化物は、Zrを含んだ無機酸化物に炭化ケイ素が固溶した複合酸化物であり、優れたマイクロ波吸収特性を有している。
【0034】
Si−Zr−C−O複合酸化物は、下記組成式:
SiZr
で表され、xは50〜60であることが好ましく、yは0.5〜5であることが好ましく、zは30〜40であることが好ましく、wは5〜20であることが好ましい。
【0035】
このSi−Zr−C−O複合酸化物の誘電損率は2以上であることが好ましく、5以上であることがより好ましい。Si−Zr−C−O複合酸化物の誘電損率が2より小さい場合は、誘電損率が2未満である場合に比べて、マイクロ波エネルギーの吸収が不十分となり、十分に急速に昇温されない傾向がある。Si−Zr−C−O複合酸化物の誘電損率は、30以下であることが好ましい。
【0036】
マイクロ波吸収発熱材13は、上記Si−Zr−C−O複合酸化物単独であってもよいが、マイクロ波吸収発熱材13は、Si−Zr−C−O複合酸化物のほか、炭化ケイ素を更に含んでいることが好ましい。ここで用いる炭化ケイ素の誘電損率はその形状、純度等により異なるが、通常は1〜2程度である。またSi−Zr−C−O複合酸化物と炭化ケイ素の含有比率は、Si−Zr−C−O複合酸化物1質量部に対して、炭化ケイ素0.5〜5質量部であることが好ましい。炭化ケイ素が0.5質量部より少ない場合は、以下に説明する炭化ケイ素がさらに含まれていることによる効果が減少し、5質量を超える場合は、マイクロ波吸収発熱材13のマイクロ波の吸収特性が低下し、加熱むらが生じやすくなる傾向がある。
【0037】
上記のようにマイクロ波吸収発熱材13が、マイクロ波吸収効率の高いSi−Zr−C−O複合酸化物と、これよりマイクロ波吸収効率の低い炭化ケイ素をも含むことにより、マイクロ波吸収特性について相乗的な効果が発現される。即ち、Si−Zr−C−O複合酸化物を100%含有するマイクロ波吸収発熱材よりも、その一部においてマイクロ波吸収効率の高いSi−Zr−C−O複合酸化物がマイクロ波吸収効率の低い炭化ケイ素に置換されたマイクロ波吸収発熱材の方が、マイクロ波吸収効率がより向上する。言い換えると、比較するマイクロ波吸収発熱材の質量が同じであれば、マイクロ波吸収発熱材13中のSi−Zr−C−O複合酸化物の含有量を低減し、この低減した分を炭化ケイ素に置き換えた場合であっても、急速且つ均一にセラミック担体14を加熱することができる。
【0038】
上記相乗的な効果が発現する理由は明らかではないが、以下のような理由によるものではないかと考えられる。即ち、Si−Zr−C−O複合酸化物がマイクロ波を吸収すると、加熱されたSi−Zr−C−O複合酸化物の熱エネルギーが熱伝導性の良い炭化ケイ素側へと瞬時に拡散される。その結果、炭化ケイ素もSi−Zr−C−O複合酸化物と同様に加熱され、炭化ケイ素の誘電損率は温度依存性があるため、炭化ケイ素のマイクロ波吸収特性も温度の上昇とともに高まる。従って、室温では誘電損率が小さい炭化ケイ素でも、Si−Zr−C−O複合酸化物と混合することで、加熱とともに炭化ケイ素自体もSi−Zr−C−O複合酸化物と同等なマイクロ波吸収特性を示し、急速且つ均一にセラミック担体14を加熱することができると推測される。このようにして、相乗的な効果が発現されたと考えられる。
【0039】
また、炭化ケイ素の熱伝導率はSi−Zr−C−O複合酸化物のそれと比較すると、1桁以上高いため、マイクロ波吸収発熱材13がSi−Zr−C−O複合酸化物及び炭化ケイ素を含むことにより、マイクロ波吸収発熱材13全体の熱伝導率が高くなり、より急速且つ均一にセラミック担体14を加熱することができる。
【0040】
マイクロ波吸収体13の形状は、セラミック担体14に担持することができれば、特に限定されないが、セラミック担体14にマイクロ波吸収体13を担持させる工程において、マイクロ波吸収体13を含有するスラリー状の溶液用いることが一般的である点から、粉末であることが好ましい。
【0041】
炭化ケイ素系複合酸化物の誘電損率が2以上である場合、マイクロ波吸収発熱材13を担持するセラミック担体14の誘電損率は、0.1以下であることが好ましく、0.02以下であることがより好ましい。本実施形態のようにセラミック担体14がモノリス形状となっている場合には、マイクロ波吸収発熱材13はセラミック担体14の内部に存在することとなる。従って、セラミック担体14の誘電損率が0.1を超える場合は、セラミック担体14のマイクロ波透過性が低く、照射されたマイクロ波エネルギーがセラミック担体14の一部分に吸収されるため、マイクロ波吸収発熱材13で吸収されるマイクロ波エネルギーが過度に小さくなる傾向がある。
【0042】
またセラミック担体14は、マイクロ波吸収発熱材13により急速に加熱されるため耐熱性を有する材料で構成されることが好ましい。セラミック担体14は、低マイクロ波吸収特性及び耐熱性を有する材料であれば特に限定されないが、マグネシア、アルミナ、シリカ、コージェライト、ムライト又はこれらを複数混合して用いた複合体材料で構成されることが好ましく、この中でもコージェライト、ムライトで構成されることが特に好ましい。
【0043】
セラミック担体14に担持するマイクロ波吸収発熱材13の担持量は、セラミック担体全体を急速且つ均一に加熱するためには、貫通孔15を形成する壁面(以下、「貫通孔壁面」という)1cmあたりに担持されるマイクロ波吸収発熱材13は、1〜20mgであることが好ましく、2〜6mgであることがより好ましい。
【0044】
次に、上述したマイクロ波加熱装置100を用いたマイクロ波加熱方法について説明する。
【0045】
はじめに、マイクロ波加熱装置100においてマイクロ波発振器8を作動させる。すると、マイクロ波発振器8でマイクロ波Wが発生し、マイクロ波Wは同軸ケーブル9を通って伝送され、同軸−導波管変換器10でモード変換された後、マイクロ波導入口3から直方体型空胴共振器110内に導入される。そして、マイクロ波導入口3から可動短絡部材5の方向に向かう進行波と、可動短絡部材5からマイクロ波導入口3へ向かう反射波とにより、直方体型空洞共振器110の空胴内にマイクロ波Wの進行方向と垂直な2つの方向にそれぞれ1/2波長の定在波Sが発生する。
【0046】
このとき、直方体型空胴共振器110内であってガス移送管130の加熱管130a内に収納されている発熱体140にマイクロ波Wが照射される。
【0047】
このとき、マイクロ波Wは、セラミック担体14を透過してマイクロ波吸収発熱材13に照射される。ここで、マイクロ波吸収発熱材13は、従来のSiCに比べてマイクロ波吸収効率に優れた炭化ケイ素系複合酸化物を含んでいる。このため、マイクロ波Wを効率的に吸収して熱変換し、マイクロ波の照射によってマイクロ波吸収発熱材13が急速且つ均一に昇温される。これにより、セラミック担体14を急速且つ均一に加熱することができる。また、マイクロ波加熱装置100においては、空胴共振器が単一モードの直方体型空胴共振器110を用いているため、直方体型空胴共振器110内の共振を十分に維持することができる。またマイクロ波吸収発熱材13の材質や形状が変化しても直方体型空胴共振器110内の電磁界モードは変わることがなく、且つセラミック担体14内の電磁界分布を一様とすることができるため、セラミック担体14を均一に加熱することが可能である。従って、マイクロ波加熱装置100によれば、急速且つ均一にセラミック担体14を加熱することができる。
【0048】
よって、ガス移送管130内に排ガスを流通させると、排ガスが発熱体140の貫通孔を通過することにより、排ガスFがマイクロ波吸収発熱材13に接触し、排ガスFが急速且つ均一に加熱されることになる。
【0049】
従って、マイクロ波加熱装置100を自動車等のエンジンに適用し、ガス移送管130を排気管とした場合、発熱体140の下流側に触媒150を配置すると(図3参照)、この排ガスが急速且つ均一に触媒活性温度以上の温度にまで加熱される。このため、自動車等における暖気運転の初期段階において生じるコールドエミッション等の現象を十分に抑えることができ、環境保全に資することができる。
【0050】
またマイクロ波加熱装置100においては、加熱管130aは、可変結合窓2と可動短絡部材5との間であって、発熱体140が可変結合窓2から定在波Sの1/4波長の長さだけ離れた位置を含むように配置されている。このため、マイクロ波吸収発熱材13が直方体型空胴共振器110内の電界Eの強度が最大の位置を含むように配置されることとなる。従って、マイクロ波Wがマイクロ波吸収発熱材13に効率良く吸収され、エネルギー効率の向上が達成される。
【0051】
また、ガス移送管130は、マイクロ波Wの進行方向と直交する方向に延びているため、排ガスFの進行方向が直方体型空胴共振器110内の電界Eの方向と略一致する。従って、排ガスFの進行方向に反射板を設置する必要がなくなる。このため、圧力損失の増加を防止することができる。
【0052】
更に、本実施形態のマイクロ波加熱装置100においては、方向性結合器11によって直方体型空胴共振器110からのマイクロ波反射率{(反射電力/入射電力)×100}が測定され、そのマイクロ波反射率が最小になるように制御装置3によって可変結合窓2と可動短絡部材5とが制御される。すなわち、温度上昇に伴ってマイクロ波吸収発熱材13及び被加熱排ガスFの誘電特性が変化して直方体型空胴共振器110内の共振がとれなくなる(変動する)と直方体型空胴共振器110から反射されるマイクロ波が増えてマイクロ波反射率が増加する。そのため、方向性結合器11でマイクロ波反射率を測定することによって直方体型空胴共振器110内の共振の状態がモニターされ、そのマイクロ波反射率が最小となるように可変結合窓2と可動短絡部材5を制御してマイクロ波導入口の大きさ及び/又は空胴共振器内の空胴の大きさを調節することにより、直方体型空胴共振器110内の共振が常時最適の状態に維持される。
【0053】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
【0054】
即ち、上記実施形態においては空胴共振器としてTE101単一モードの直方体型空胴共振器でマイクロ波の進行方向に1/2波長の定在波が発生するように設計されているものを用いたが、これに限定されるものではなく、マイクロ波の進行方向に複数の定在波が存在するTE10nモードであってもよい。
【0055】
また、上記実施形態では単一モードの直方体型空胴共振器110を用いているが、本発明のマイクロ波吸収発熱材は、マイクロ波吸収特性に優れているため、空胴共振器の形状や電磁界モードに制約が少なく、必ずしも単一モードの直方体型である必要はない。即ち、電磁界モードがマルチモード、あるいは形状が円筒型である空胴共振器を用いても、従来のマイクロ波吸収発熱材と比較するとセラミック担体14を急速且つ均一に加熱することができる。従って、本発明のマイクロ波吸収発熱材を用いて被加熱体を加熱する場合は、市販の電子レンジ、マイクロ波加熱炉等のマイクロ波加熱装置を使用することができる。
【0056】
また、上記実施形態では、流体として排ガスを用いているが、排ガスに代えて液体を用いてもよい。この場合は、液体を急速且つ均一に加熱することが可能となる。
【0057】
更に上記実施形態では、マイクロ波吸収発熱材13がSi−Zr−C−O複合酸化物を含んでいるが、Si−Zr−C−O複合酸化物に代えて、Si−C−O複合酸化物、Si−Ti−C−O複合酸化物及びSi−Al−O複合酸化物から選ばれる一種又は二種以上の複合酸化物を含んでいてもよい。ここで、マイクロ波吸収発熱材13は炭化ケイ素を更に含むことが好ましい。なお、Si−C−O複合酸化物とは、Si、C及びOの元素で構成される炭化ケイ素系複合酸化物、Si−Ti−C−O複合酸化物とは、Si、Ti、C及びOの元素で構成される炭化ケイ素系複合酸化物、Si−Al−O複合酸化物とは、Si、Al及びOの元素で構成される複合酸化物をいう。
【0058】
また、上記実施形態ではマイクロ波吸収発熱材は、流体を昇温するためのセラミック担体を加熱するために用いられているが、本発明のマイクロ波吸収発熱材はマイクロ波吸収特性に優れているため加熱室の制約を受けない。このため、本発明のマイクロ波吸収発熱材は、適用範囲が広く、その用途は、流体を昇温するためのセラミック担体の加熱に限られない。本発明のマイクロ波吸収発熱材は、例えば、マイクロ波エネルギーを利用して加熱される加熱管の内壁や加熱容器等の被加熱体に塗布又は担持されてもよい。あるいは、加熱管の内壁や加熱容器等の被加熱体にマイクロ波吸収発熱材を構成する材料を分散させたり、被加熱体自体を、マイクロ波吸収発熱材を構成する材料の成型体で構成することも可能である。
【実施例1】
【0059】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0060】
(実施例1)
炭化ケイ素系複合酸化物の粉末は、有機ケイ素系ポリマーを前駆体としたポリカルボシランから合成した。ポリカルボシランにZrを含んだ金属アルコキシドを加え、約220℃で反応させて、ポリメタロカルボシランを重合させた。その後、大気中約180℃にて不融化処理を行い、さらに不活性ガス中1300〜1500℃で焼成することによって製造した。このようにして元素の組成比がSi55Zr35で表される炭化ケイ素系複合酸化物の粉末(以下、「Si−Zr−C−O粉末」と呼ぶ)を得た。Si−Zr−C−O粉末が上記の元素組成比の炭化ケイ素系複合酸化物であることを赤外吸収による化学分析法で確認した。
【0061】
一方、セラミック担体として、直径50mm、長さ10mmの円筒形状であり、貫通孔壁面総面積が600cm、誘電損率が0.01であるコージェライト製モノリスを用意し、以下の方法にてSi−Zr−C−O粉末をモノリスの貫通孔壁面に担持した。即ちまず、Si−Zr−C−O粉末にバインダを混合してスラリー状にし、このスラリーにモノリスを浸漬させ、モノリスの貫通孔壁面にSi−Zr−C−O粉末を含むスラリーを均一に塗布した。なお、モノリスの外周面にはマスキングを施し、スラリーが塗布されないようにした。スラリーが貫通孔壁面に塗布されたモノリスを110℃で24時間乾燥後、約500℃で1時間焼成し、貫通孔壁面にSi−Zr−C−O粉末が担持されたモノリス(以下、「発熱体」と呼ぶ)を得た。貫通孔壁面に担持されたSi−Zr−C−O粉末は1gであった。
【0062】
(実施例2)
Si−Zr−C−O粉末を2g担持させたこと以外は実施例1と同様にして発熱体を得た。
【0063】
(実施例3)
実施例1で得たSi−Zr−C−O粉末10gと市販のSiC粉末10gとを無機バインダを用いて1時間混合し、Si−Zr−C−O粉末とSiC粉末とを等質量混合した混合粉(以下、「SiZrCO−SiC等質量混合粉末」という)を得た。即ち、Si−Zr−C−O粉末1gとSiC粉末1gとからなるSiZrCO−SiC等質量混合粉末2gを得た。そして、Si−Zr−C−O粉末1gに代えて、SiZrCO−SiC混合粉末2gをモノリスの貫通孔壁面に担持させたこと以外は実施例1と同様にして発熱体を得た。
【0064】
(比較例1)
Si−Zr−C−O粉末1gに代えて、市販のSiC粉末1gをモノリスの貫通孔壁面に担持させたこと以外は実施例1と同様にして発熱体を得た。
【0065】
(比較例2)
SiC粉末を2g担持させたこと以外は比較例1と同様にして発熱体を得た。
【0066】
(誘電損率測定)
上記のSi−Zr−C−O粉末、SiZrCO−SiC等質量混合粉末及び市販のSiC粉末の誘電損率を以下のように測定した。即ち誘電損率は、摂動法を用いて測定し、直方体型空胴共振器110内に試料を挿入したときの共振波形の半値幅の変化から求めた。結果を表1に示す。また、表1には、実施例1〜3及び比較例1、2でのコージェライト製モノリスの貫通孔壁面へのマイクロ波吸収体の担持量も示した。
【0067】
【表1】

【0068】
(単一モードのマイクロ波照射による発熱体の温度変化測定)
実施例1〜3及び比較例1及び2の発熱体に単一モードのマイクロ波を照射し、それぞれの発熱体のマイクロ波加熱による温度変化を測定した。結果を図5に示す。ここで、発熱体の温度変化測定においては、温度は発熱体の内部における温度とし、図5の縦軸は室温からの温度上昇とした。
【0069】
発熱体のマイクロ波加熱には、図1〜3に示すマイクロ波加熱装置を用いた。図3に示すように発熱体140を直方体型空胴共振器110内に配置した。より具体的には、円筒形である発熱体140を加熱管130a内に挿入し、直方体型空胴共振器110内の電界強度が最大となる位置と発熱体140の断面円の中心とが一致するように、且つ、モノリスの貫通孔15の貫通方向と直方体型空胴共振器110内の電界ベクトルの方向とが平行になるように、発熱体140及び加熱管130aを直方体型空胴共振器110内に配置した。そして、マイクロ波発振器8を作動させ、発熱体140に対してマイクロ波を照射し、マイクロ波照射開始から5秒後の発熱体の温度を測定した。このとき、マイクロ波出力は500Wとした。
【0070】
発熱体140以外のマイクロ波加熱装置の構成要素は以下の通りとした。
・空胴共振器:TE101単一モード直方体型空胴共振器、銅製、空胴寸法110mm×55mm×75mm;
・加熱管:高純度アルミナ管(純度99.6%)、内径50mm、長さ55mm
・断熱材:アルミナファイバー製
・マイクロ波発生手段:マグネトロン発振器、周波数2.45GHz
・同軸−波導管変換器
・方向性結合器
・制御回路:反射率が0になるようにパーソナルコンピュータで自動制御
・可変結合窓:黄銅製
・可変短絡板:黄銅製
【0071】
図5に示す結果より、マイクロ波吸収体の担持量が同じであっても、比較例1及び比較例2の発熱体は単一モードのマイクロ波照射5秒間で100℃以下の温度上昇にとどまっているのに対し、実施例1及び実施例2の発熱体は、単一モードのマイクロ波照射5秒間で温度が実施例1では約200℃、実施例2では約500℃上昇しており、急速に温度上昇していることがわかる。特にSi−Zr−C−O粉末2gが担持された実施例2の発熱体は、約100℃/秒の昇温速度を示し、短時間で急速に加熱されることが分かった。また実施例1と比較例1の結果を比較すると、実施例1の方が比較例1よりも短時間で急速に加熱されることが分かった。更に、実施例1と比較例2の結果を比較すると、実施例1はマイクロ波吸収発熱材の担持量が比較例2の半分であるにもかかわらず、約2倍の温度上昇を示した。
【0072】
また実施例1と実施例3の発熱体に担持されているSi−Zr−C−O粉末は両者とも1gであるが、実施例3ではSiC粉末1gがさらに含まれていることにより、実施例3は実施例1の2倍以上の温度上昇を示し、約100℃/秒の昇温速度で急速に加熱することができた。この温度上昇はSi−Zr−C−O粉末を2g担持させた実施例2の発熱体と同程度であった。この結果並びにSiC粉末が担持されている比較例1及び2の発熱体の昇温速度が低いことから、実施例3で得られた約100℃/秒の昇温速度は、単にSiC粉末1gが実質的に加わり担持量が増加したことによる効果にとどまらず、マイクロ波吸収加熱体に含まれるSi−Zr−C−O粉末とSiC粉末との混在による相乗的な効果によるものであることが示された。このことからSi−Zr−C−O粉末とSiC粉末との混合粉体をマイクロ波吸収発熱材として使用することにより、Si−Zr−C−O粉末の担持量を増加させなくとも、より急速且つ均一に発熱体を加熱することができることが示された。
【0073】
また、図6には、単一モードのマイクロ波照射による発熱体の温度変化測定結果として、実施例2、実施例3及び比較例2の発熱体の温度上昇プロファイルを示した。図6にプロットした温度上昇プロファイルのグラフにおいては、グラフの傾きが直線的であるほど、マイクロ波吸収体の誘電損率の温度による変化が小さくなっており、モノリス内外部における加熱むら及び局部的な過熱、いわゆる温度暴走が発生せず、モノリス全体が均一に加熱されていることを示すものである。実施例2及び3の温度上昇プロファイルのグラフは、全温度測定範囲、即ち実施例2では25℃から約890℃まで、実施例3では25℃から約800℃までの範囲で直線的であることから、発熱体全体が均一に加熱されているものと考えられる。一方、比較例2の温度上昇プロファイルのグラフは、25℃から約400℃までの範囲では直線的であるが、400℃を超えるとグラフの傾きが立ち上がる傾向が見られたことから、発熱体の内外部に加熱むら及び温度暴走が発生しているものと考えられる。
【0074】
次に、マルチモードのマイクロ波照射による発熱体の温度変化測定するために、以下の実施例4、5及び比較例3、4の発熱体を準備した。
【0075】
(実施例4)
セラミック担体として、直径50mm、長さ10mmの円筒形状であり、貫通孔壁面総面積が600cm、誘電損率が0.02であるアルミナ製モノリスを用意したこと以外は実施例1と同様にして発熱体を得た。
【0076】
(実施例5)
Si−Zr−C−O粉末1gに代えてSiZrCO−SiC等質量混合粉末2gを貫通孔壁面に担持したこと以外は実施例4と同様にして発熱体を得た。
【0077】
(比較例3)
Si−Zr−C−O粉末に代えて、市販のSiC粉末を貫通孔壁面に担持したこと以外は実施例4と同様にして発熱体を得た。
【0078】
(比較例4)
市販のSiC粉末を10g担持させたこと以外は比較例3と同様にして発熱体を得た。
【0079】
表2には、実施例4、5及び比較例3、4で用いたマイクロ波吸収発熱材の誘導損率、及び、アルミナ製モノリスの貫通孔壁面へのマイクロ波吸収体の担持量をまとめて示した。
【0080】
【表2】

【0081】
(マルチモードのマイクロ波照射による発熱体の温度変化測定)
実施例4、5及び比較例3及び4の発熱体にマルチモードのマイクロ波を照射し、それぞれの発熱体のマイクロ波加熱による温度変化を測定した。
【0082】
具体的には、発熱体のマイクロ波加熱に、市販の電子レンジを用い、周波数2.45GHz、出力500Wのマイクロ波を1分間照射した。結果を図7に示す。ここで、発熱体の温度変化測定においては、温度は発熱体の内部における温度とし、図7の縦軸は室温からの温度上昇とした。
【0083】
図7に示すように、実施例4と比較例3の結果を比較すると、同じ1gの担持量であっても、Si−Zr−C−O粉末を担持した実施例4では、マルチモードのマイクロ波照射1分間で130℃温度が上昇しているが、SiC粉末を担持した比較例3では室温から20℃程度しか温度が上昇していないことが分かる。また、実施例4と比較例4の結果を比較すると、発熱体を約120℃の温度上昇させるのにSi−Zr−C−O粉末はSiC粉末の10分の1以下の担持量でよいことが分かる。
【0084】
また、実施例5の発熱体は、Si−Zr−C−O粉末1gとSiC粉末1gとを含有するSiZrCO−SiC等質量混合粉末2gが担持されているが、図7に示すように、約220℃の温度上昇を示した。上述したようにSiC粉末のみが担持された比較例3ではわずかな温度上昇であったにもかかわらず、実施例5ではSiC粉末1gがさらに含まれていることにより、実施例5は実施例4よりも100℃温度程度高いの温度上昇を示した。この結果から、実施例5の発熱体の温度上昇は、単にSiC粉末1gが実質的に加わり担持量を増加させたことによる効果にとどまらず、マイクロ波吸収加熱体に含まれるSi−Zr−C−O粉末とSiC粉末の相乗的な効果であり、マルチモードのマイクロ波加熱においてもこの効果が発現されることが示された。
【0085】
このことからSi−Zr−C−O粉末とSiC粉末との混合粉体をマイクロ波吸収発熱材として使用することにより、Si−Zr−C−O粉末の担持量を増加させなくとも、従来のマイクロ波吸収発熱材と比較すると、急速且つ均一に発熱体を加熱することができることが示された。
【0086】
また、市販の電子レンジを用いた発熱体の温度測定においても、従来のマイクロ波吸収発熱材と比較すると、良好な結果が得られた。
【0087】
従って、本発明のマイクロ波吸収発熱材はマイクロ波加熱に用いるマイクロ波加熱装置の制約を受けないことが示された。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】本発明のマイクロ波吸収発熱材を適用したマイクロ波加熱装置の一例を示す模式図である。
【図2】図1に示すマイクロ波加熱装置を構成する空胴共振器を示す斜視図である。
【図3】図2に示す空胴共振器のIII−III線に沿った断面図である。
【図4】マイクロ波吸収発熱材が担持されたセラミック担体の一実施形態を示す部分断面図である。
【図5】単一モードのマイクロ波照射による実施例1〜3及び比較例1、2の発熱体の温度変化測定結果を示すグラフである。
【図6】単一モードのマイクロ波照射による実施例2及び比較例2の発熱体の温度変化測定結果における加熱特性を示すグラフである。
【図7】マルチモードのマイクロ波照射による実施例4、5及び比較例3、4の発熱体の温度変化測定結果を示すグラフである。
【符号の説明】
【0089】
13…マイクロ波吸収発熱材、14…セラミック担体、W…マイクロ波。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
Si、Zr、C及びOの元素で構成される炭化ケイ素系複合酸化物を含むことを特徴とするマイクロ波吸収発熱材。
【請求項2】
前記炭化ケイ素系複合酸化物の誘電損率が2以上であることを特徴とする請求項1に記載のマイクロ波吸収発熱材。
【請求項3】
炭化ケイ素を更に含むことを特徴とする請求項1又は2に記載のマイクロ波吸収発熱材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−147201(P2006−147201A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−332347(P2004−332347)
【出願日】平成16年11月16日(2004.11.16)
【出願人】(000003609)株式会社豊田中央研究所 (4,200)
【Fターム(参考)】